説明

光電気混載基板の製造方法

【課題】
光伝搬損失を大きくすることなく導体パターンを形成することができる光電気混載基板の製造方法を提供すること。
【解決手段】
離型基材1上に金属箔2が形成されてなる金属転写シート4の前記金属箔2上にアンダークラッド層3を形成し、前記アンダークラッド層3上にコア層5を形成し、前記コア層5上にオーバークラッド層6を形成した後、前記離型基材1を前記金属箔2から剥離し、前記金属箔2をエッチングすることにより、所定の導体パターンを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電気混載基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信技術において、光信号と電気信号を相互に変換して、情報通信が行われている。そのような情報通信において、電気信号を伝送する配線回路基板と光を伝送する光導波路を混載した光電気混載基板が利用されている。光電気混載基板の構成要素である導体パターンの形成方法として、セミアディティブ法が知られている。(特許文献1参照)
【特許文献1】特開2002−236228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
高密度の情報通信においては、通信機器の小型化、薄型化が求められており、光電気混載基板の伝搬損失の低下も求められている。
【0004】
しかし、光導波路の上に、セミアディティブ法で導体パターンを形成すると、スパッタリング時の熱により、光導波路を構成する樹脂が変質して、光伝搬損失が大きくなる場合がある。そこで、本発明の目的は光導波路の光伝搬損失を大きくすることなく導体パターンを形成することができる光電気混載基板の製造方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明の光電気混載基板の製造方法は、離型基材上に金属箔が形成されてなる金属転写シートの前記金属箔上にアンダークラッド層を形成する工程、
前記アンダークラッド層上にコア層を形成する工程、前記コア層上にオーバークラッド層を形成する工程、前記離型基材を前記金属箔から剥離する工程、前記金属箔をエッチングすることにより、所定の導体パターンを形成する工程とを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明の光電気混載基板の製造方法によれば、光導波路の光伝搬損失を大きくすることなく、光電気混載基板を作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の光電気混載基板の製造方法においては、まず、金属転写シートを用意する。金属転写シートは、離型基材上に金属箔が形成されてなる。
【0008】
離型基材としては、金属基材、樹脂基材のいずれでもよいが、後述のアンダークラッド層を形成する時の耐熱性を考慮すると金属基材が好ましい。離型基材は金属基材または樹脂基材の表面を離型処理することによって得られる。
【0009】
離型処理としては、例えば、金属基材または樹脂基材の表面を、プラズマ処理やコロナ処理によって、表面改質あるいは表面酸化すればよい。または、金属基材または樹脂基材の表面に、例えば、酸化珪素(SiO2)や酸化チタン(TiO2)などの金属酸化物、フッ素化合物、シリコーン系化合物、アクリル系化合物、トリアゾール類などの含窒素化合物などの電着性材料によって離型層を形成することができる。
【0010】
離型基材の厚みは10〜500μmが好ましい。
【0011】
また、金属箔を形成するための材料は、エッチングにより配線加工できる材料であれば特に制限はないが、銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔などが好ましい。
【0012】
金属箔の厚みは3〜50μmが好ましい。
【0013】
離型基材上に、金属箔を形成するには、例えば、離型基材が金属基材の場合は電解金属めっきで、離型基材が樹脂基材の場合はスパッタリングにより行うことができる。
【0014】
以下、本発明の光電気混載基板の製造方法について、図1および図2を参照して説明する。
【0015】
まず、図1(a)に示すように、金属転写シート4の金属箔2の上にアンダークラッド層3を形成する。
【0016】
アンダークラッド層3の形成方法は、アンダークラッド層3を形成するための樹脂を溶媒に溶かした溶液を、塗布し、乾燥することによって形成される。
【0017】
アンダークラッド層3を形成するための樹脂は、透明性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、ポリアミック酸樹脂、ポリイミド樹脂などが用いられる。
【0018】
アンダークラッド層3の厚みは、5〜100μmが好ましい。
【0019】
次に、図1(b)に示すように、アンダークラッド層3の上に、所定パターンのコア層5を形成する。コア層5の形成方法は、特に限定しないが、例えば、感光性樹脂を所定パターンに露光、現像することにより、行うことができる。感光性樹脂としては、感光性エポキシ樹脂、感光性ポリアミック酸樹脂、感光性ポリイミド樹脂などが好ましい。
【0020】
なお、通常、コア層5の屈折率は、アンダークラッド層3及び後述のオーバークラッド層6の屈折率より高くなるように設計されている。
【0021】
コア層5のパターンの幅は、5〜100μmが好ましく、パターンの間隔は5〜100μmが好ましい。また、コア層5の厚みは、5〜100μmが好ましい。
【0022】
次に、図1(c)に示すように、コア層5の上にオーバークラッド層6を形成する。オーバークラッド層6の形成は、アンダークラッド層3と同様に行うことができる。
【0023】
オーバークラッド層6の厚みは5〜100μmが好ましい。
【0024】
オーバークラッド層6を形成するための樹脂としては、透明性を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、ポリアミック酸樹脂、ポリイミド樹脂が用いられ、通常、アンダークラッド層3と同じ樹脂が用いられる。
【0025】
次に、図2(a)に示すように、離型基材1を剥離する。そして、金属箔2の不要な部分をエッチングする方法、いわゆるサブトラクティブ法により、図2(b)に示すような所定形状の導体パターン7を形成する。
【0026】
次に、図2(c)に示すように、必要により、導体パターン7の下に絶縁層8を作製する。絶縁層8の形成方法は、絶縁層8を形成するための樹脂を溶媒に溶かした溶液を、塗布し、乾燥することによって形成される。
【0027】
絶縁層8を形成するための樹脂としては、絶縁性を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂などの合成樹脂が用いられる。耐熱性の観点から、好ましくは、ポリイミド樹脂が用いられる。
【0028】
絶縁層8の厚みは、5〜50μmが好ましい。
【0029】
また、絶縁層8には、必要により、導体パターンが露出する開口部を設けることにより、露出した導体パターンを、電子部品を接続する端子部とすることができる。
【実施例】
【0030】
以下に、実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されるものではない。
【0031】
実施例1
まず、表1に示す処方で、各成分を、溶媒としてシクロヘキサノンを用いて混合溶解して、ワニスA及びBを調製した。なお、各ワニスを硬化した硬化物の、測定波長633nmにおける屈折率を併せて表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
【化1】

表面を離型処理した厚さ35μmの銅基材上に、厚さ5μmの銅箔が形成された金属転写シート(三井金属社製、MT35S)を用意した。
【0034】
そして、銅箔表面にワニスAをスピンコート法により塗布し、100℃で15分間乾燥し樹脂層を形成した。その後、樹脂層の全面に2000mJ/cm2の照射量にて紫外線を照射し、次いで、100℃で20分間加熱することにより、厚み20μmのアンダークラッド層を形成した(図1(a)参照)。
【0035】
次いで、ワニスBを、アンダークラッド層の上に、スピンコート法により塗布し、100℃で30分間乾燥して樹脂層を形成した。次いで、50μm幅の直線光導波路パターンが描画されたフォトマスク(合成石英系のクロムマスク)を用いて、コンタクト露光法にて、2000mJ/cm2の照射量にて紫外線を照射した。
【0036】
その後、100℃で60分間露光後、加熱した後、アセトニトリル系現像液中に浸漬して現像を行い、樹脂層をパターン形成した。その後、100℃で10分間加熱を行うことで樹脂中のアセトニトリルを除去し、厚み50μm、幅50μmの断面方形のコア層を間隔250μmで形成した(図1(b)参照)。
【0037】
そして、コア層を含むアンダークラッド層の上に、ワニスAをスピンコート法により塗布し、100℃で20分間乾燥して樹脂層を形成した。その後、樹脂層の全面に、3000mJ/cm2の照射量にて紫外線を照射し、次いで、100℃で30分間加熱することにより、厚み80μmのオーバークラッド層を形成した(図1(c)参照)。
【0038】
以上により、金属転写シートの銅箔上に、光導波路部を形成した。
【0039】
次に、上記の銅基材を剥離し(図2(a)参照)、銅箔の光導波路部が形成された反対側の表面にフォトレジストを積層し、露光および現像することで、レジストパターンを形成した。その後、レジストパターンから露出している銅箔をエッチングして幅25μm、間隔25μmの導体パターンを形成し、フォトレジストを剥離した(図2(b)参照)。
【0040】
次に、導体パターンの上にポリアミック酸溶液を塗布し、乾燥後、加熱して、イミド化することにより、ポリイミドからなる厚み25μmの絶縁層を形成した(図2(c)参照)。
【0041】
以上により、作製した光電気混載基板の導波路部の光伝搬評価を行った結果、伝搬損失は0.1dB/cmであった。
【0042】
比較例1
シリコン基板上に実施例1と同様に光導波路部を作製した。そして、その光導波路部のオーバークラッド層の表面に、セミアディティブ法を用いて導体パターンを形成した。
【0043】
即ち、オーバークラッド層上に金属箔として、厚み0.01μmのクロム箔と、厚み0.15μmの銅箔をスパッタリング法により連続して形成した後、その金属箔上に、めっきレジストを上記の導体パターンの反転パターンで形成し、その後、電解銅めっきにより、厚み20μmの銅からなる金属配線を、各金属配線の幅25μm、各金属配線の間隔25μmの導体パターンとして形成した。その後、めっきレジストを剥離し、さらに導体パターンから露出している金属薄膜をウェットエッチングにより除去した。
【0044】
そして、導体パターンの上にポリアミック酸溶液を塗布し、乾燥後、加熱して、イミド化することにより、ポリイミドからなる厚み25μmの絶縁層を形成し、光電気混載基板を得た。
【0045】
その結果、スパッタリング時の熱によりエポキシ樹脂が変色した。
【0046】
作製した光電気混載基板の導波路部の光伝搬評価を行った結果、伝搬損失は1dB/cmであった。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の光電気混載基板の製造方法を示す工程断面図であって、(a)は転写シートの金属箔上にアンダークラッド層を形成する工程、(b)はアンダークラッド層上にコア層を形成する工程、(c)はコア層上にオーバークラッド層を形成する工程を示す。
【図2】本発明の光電気混載基板の製造方法を示す工程断面図であって、(a)は転写シートの離型基材を剥離する工程、(b)は金属箔から、サブトラクティブ法を用いて、導体パターンを形成する工程、(c)は導体パターンの下に絶縁層を形成する工程を示す。
【符号の説明】
【0048】
1 離型基材
2 金属箔
3 アンダークラッド層
4 金属転写シート
5 コア層
6 オーバークラッド層
7 導体パターン
8 絶縁層




【特許請求の範囲】
【請求項1】
離型基材上に金属箔が形成されてなる金属転写シートの前記金属箔上にアンダークラッド層を形成する工程、
前記アンダークラッド層上にコア層を形成する工程、
前記コア層上にオーバークラッド層を形成する工程、
前記離型基材を前記金属箔から剥離する工程、
前記金属箔をエッチングすることにより、所定の導体パターンを形成する工程とを含むことを特徴とする、光電気混載基板の製造方法。
【請求項2】
前記離型基材が、表面を離型処理した金属基材であることを特徴とする請求項1に記載の光電気混載基板の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−156439(P2006−156439A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−340124(P2004−340124)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】