説明

免疫調節性腫瘍壊死因子受容体25(TNFR25)のアゴニスト、アンタゴニスト及び免疫毒素

免疫系を刺激する場合か、免疫系を間接的に増強する場合か、他の場合には免疫抑制効果を有する場合かがある免疫調節剤を利用する新規な組成物及び方法を提供することが本発明の目的である。本明細書で開示されるTNFR25のアゴニストは、抗炎症効果及び治癒効果を有する。中でも前記TNFR25のアゴニストは、例えば喘息と、潰瘍性大腸炎及びクローン病を含む炎症性腸疾患のような慢性炎症とにより引き起こされる疾病を治療するために使用される場合がある。本明細書で開示されるTNFR25のアンタゴニストは、CD8T細胞に仲介される細胞性免疫応答を阻害する能力を有し、例えば組織移植後の臓器又は組織の拒絶反応を軽減する場合がある。本明細書で開示されるTNFR25のアゴニストは、腫瘍ワクチンといっしょに与えられるときに癌と戦うための身体能力を高める目的か、方向づける目的か、回復させる目的かのために、身体の細胞性免疫防御と癌細胞との間の相互作用を変化させる生物学的応答調節剤を提供する。本明細書で開示されるTNFR25特異的免疫毒素は、癌患者から自然発生の免疫抑制細胞を除去することにより化学療法剤の投与計画の有効性を増大させる能力を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー25(TNFR25)のアゴニストと、免疫毒素と、アンタゴニストと、癌及び炎症を治療すること、並びに、免疫抑制をもたらすことのそれぞれにおけるそれらの使用とに関する。
【背景技術】
【0002】
優先権
本出願は、その全体が引用により本明細書に取り込まれる2005年8月30日出願の特許文献1に係る出願を基礎とする優先権を主張する。
【特許文献1】米国特許出願60/712,084号明細書
【0003】
背景
ヒト免疫系に係る多くの疾患は、免疫応答の減衰を特徴とするカテゴリーと、免疫応答の過剰を特徴とするカテゴリーとの2種類の広範なカテゴリーに分類される。免疫不全は、免疫応答の減衰を特徴とする。先天的な(生まれつきの)免疫不全の形態と、後天的な免疫不全の形態とがある。貪食細胞が病原体を破壊する能力に問題を有する慢性肉芽腫症は、前者の例である。CD4+T細胞を破壊するHIVウイルスにより引き起こされる感染症であるAIDS(後天性免疫不全症候群)は、後者の例である。免疫応答の減衰を特徴とする場合がある付加的な疾病は、癌である。健康な個体とは対照的に癌患者の免疫系は、腫瘍細胞を効果的に認識及び/又は破壊する能力をもはや有さない。
【0004】
強い期待にも関わらず、免疫系の活性を直接増大させる薬物療法は今まで存在しない。しかし癌のような疾病と戦うために直接的又は間接的に免疫系を動員する目的で、生物学的療法が最近使用されている。モノクローナル抗体(MAb)が生物学的療法として現在使用されることが多い。例えばモノクローナル抗体は特定の型の癌細胞と反応する場合があり、直接的又は間接的な抗腫瘍効果を有する。
【0005】
腫瘍ワクチンが、治療か、一次治療後の予防かのために使用される場合がある。抗腫瘍ワクチンは、CD4表現型又はCD8表現型の腫瘍特異的な細胞障害性T細胞の形態で細胞性免疫を誘導することを必要とする場合がある。有効な抗腫瘍免疫は、かかる細胞障害性細胞の長期間にわたる産生及び維持を必要とすると考えられる。加えて証拠は、有効な抗腫瘍ワクチンを産生するために免疫系の生まれつきの武器(innate arm)が活性化されなければならないことを示す。液性応答を促進又は産生するワクチンは、比較的長期間にわたり検出される場合がある抗体を産生する。有効であるためにこれらの抗体は、生細胞アッセイにおいて細胞表面抗原を標的とする能力を有する必要がある。抗原のエピトープに対する特異的な細胞性免疫応答を維持すること(獲得免疫)はより頻繁な免疫を必要とする場合があるが、免疫記憶細胞は前記免疫エピトープに応答及び再攻撃する能力を持続する場合がある。それにより腫瘍ワクチンに対する癌特異的細胞性免疫応答を高める能力を有する治療方法を手に入れることは、実質的な利点がある。
【0006】
物差しの対極では、過活動な免疫系が、他の多数の疾患、特にエリテマトーデスと、(ときに「若年性糖尿病」と呼ばれる)I型糖尿病と、多発性硬化症と、乾癬と、リウマチ様関節炎と、クローン病及び潰瘍性大腸炎(UC)のような炎症性腸疾患とのような自己免疫疾患を提示する。これらの疾患においては免疫系は自己と非自己とを適切に識別することができず、患者自身の身体の一部を攻撃する。疾病における免疫応答の過剰の他の例は、アレルギー及び喘息のような過敏症を含む。
【0007】
自己免疫疾患又は炎症が過度の組織損傷を引き起こすとき、免疫系の抑制が自己免疫疾患又は炎症を制御するために使用されることが多い。免疫抑制薬は、移植される臓器の拒絶反応を予防するために免疫不全を意図的に誘発する。慣用される免疫抑制剤は、グルココルチコイド、アザチオプリン、メトトレキサート、シクロスポリン、シクロホスファミド及びメルカプトプリンを含む。臓器移植においては選択的なT細胞阻害が臓器の拒絶反応を予防し、シクロスポリンと、タクロリムスと、ミコフェノール酸モフェチルと、他のさまざまな薬物が使用される。
【0008】
Tリンパ球は、免疫応答を調節する際に中心的な役割を果たす。ヘルパーT細胞はCD4表面マーカーを発現し、抗体産生のためのB細胞に助けを提供し、CD8T細胞が細胞障害活性を発現するのを助ける。他のCD4T細胞は、抗体産生及び細胞障害性を阻害する。T細胞は、感染細胞又は腫瘍原性細胞の攻撃と、体細胞への寛容との間の平衡を調節する。免疫応答性の減弱は慢性感染症及び癌を引き起こすのに対して、無調節な免疫攻撃は自己免疫を引き起こす場合がある。
【0009】
本明細書では交換可能な用語としてデスレセプター3(DR3)とも呼ばれる腫瘍壊死因子受容体25(TNFR25)は、本明細書で論じられるように、T細胞の機能の調節因子である。デスレセプター3(DR3、非特許文献1)は、TNF受容体ファミリーの一員である。デスレセプター3は、TRAMP(非特許文献2)、wsl−1(非特許文献3)、Apo−3(非特許文献4)及びLARD(非特許文献5)としても知られ、典型的なデスドメインを含む。ヒトDR3(hDR3)での293個の細胞の形質移入は、アポトーシスを誘発し、NF−κBを活性化した。DR3に対する同種リガンドが最近TL1Aとして同定され(非特許文献6)、NF−κBの誘導とcIAP2の発現によるアポトーシスの抑制とを通じたT細胞上のDR3に対する同時刺激活性を有することが示された(非特許文献7)。TL1Aはおとり受容体3(DcR3/TR−6)にも結合し、生物学的なTL1Aの到達性の微調整が非常に重要であることを示す。ヒトDR3のmRNAに係る多数のスプライシングされた形態が観察されており、転写後レベルでの調節を示す(非特許文献8)。
【非特許文献1】Chinnaiyan et al.,Science 274:990,1996
【非特許文献2】Bodmer et al.,Immunity 6:79,1997
【非特許文献3】Kitson et al.,Nature 384:372,1996
【非特許文献4】Marsters et al.,Curr Biol 6:1669,1996
【非特許文献5】Screaton et al,Proc Natl Acad Sci USA 94:4615,1997
【非特許文献6】Migone et al.,Immunity 16:479,2002
【非特許文献7】Wen et al.,J Biol Chem 25:25,2003
【非特許文献8】Screaton et al.,Proc Natl Acad Sci USA 94:4615,1997
【0010】
多くのTNF−受容体ファミリーのメンバーが、アポトーシスにより細胞死を誘発する能力か、T細胞の機能のための同時刺激シグナルを誘発する能力かを有する。これらの反対の経路の調節が最近、受容体陽性T細胞のアポトーシス又は増殖を引き起こす場合がある原型的なデスドメイン含有受容体であるTNF−R1について明らかになっている(非特許文献9)。TRADD、TRAF2及びRIPを介しTNF−R1からなるシグナル伝達複合体によるNF−κBの活性化は、TNFRI、TRADD及びFADDからなるからなる第二のシグナル伝達複合体とのFLIPLの会合を誘発し、NF−κBのシグナル伝達が持続する限りにおいてカスパーゼ8の活性化を妨げる。DR3は、形質移入された細胞においてアポトーシスを誘発することができること、及び、NF−κBと3種類全てのMAP−キナーゼ経路とを誘導することができることが示される(非特許文献10−15)。NF−κBを阻害するがMAP−キナーゼは阻害しないこととタンパク質合成の阻害とがDR3に仲介される細胞死を引き起こし、NF−κBのシグナルが抗アポトーシスタンパク質の合成を通じて抗アポトーシス効果を仲介することを示した。
【非特許文献9】Micheau and Tschopp.Cell 114:181,2003
【非特許文献10】Chinnaiyan et al.,Science 274:990,1996
【非特許文献11】Bodmer et al.,Immunity 6:79,1997
【非特許文献12】Kitson et al.,Nature 384:372,1996
【非特許文献13】Marsters et al.,Curr Biol 6:1669,1996
【非特許文献14】Screaton et al.,Proc Natl Acad Sci USA 94:4615,1997
【非特許文献15】Wen et al.,J Biol Chem 25:25,2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ヒトDR3のmRNAの発現は、主に脾臓、リンパ節、胸腺及び小腸のようなリンパ組織で顕著であり、リンパ球におけるDR3の重要な役割を示す。マウスのDR3は、胚性幹細胞の相同組換えにより除去された(Wang et al.,MoI Cell Biol 21:3451,2001)。DR3−/−マウスは胸腺中において抗CD3抗体によるネガティブ選択の減少を示すが、スーパー抗原による通常のネガティブ選択と、胸腺細胞の未障害のポジティブ選択とを示す。成熟した抹消T細胞は、DR3の欠損により影響を受けなかった。顕著な量の予備的研究に関わらずDR3の生理学的機能の特徴づけは不十分なままである。
【0012】
本明細書で引用される特許文献を含む全ての科学出版物は、全ての目的のためにその全体が引用により本明細書に取り込まれる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の概要
本発明のある局面は、腫瘍壊死因子受容体25(TNFR25)抗原と結合し、TNFR25のアゴニストとして働く場合がある抗体に関する。ある実施態様では前記抗体は、gp96−Ig−オボアルブミンによりクロスプライミングされたときのOT−I CD8細胞の増殖を、対照抗体と比較して増大させる能力を有する。さらなる実施態様では前記抗体は、精製モノクローナル抗体4C12である。
【0014】
本発明の別の局面は、前記TNRF25受容体に結合するポリペプチドと結合した毒性物質を含むTNFR25特異的毒素に関する。本局面のある実施態様では前記毒素を含む部分は、前記モノクローナル抗体4C12か、4C12の免疫特異的部分かを含む。別の実施態様では前記毒性物質は、放射性同位体、リシン、アブリン、ジフテリア毒素、緑膿菌外毒素又は金属イオンから選択される。さらなる実施態様では前記TNRF25受容体に結合するポリペプチドは、前記TL1Aタンパク質又はフラグメントか、それらの変異体かである。
【0015】
本発明の別の局面では前記TNFR25特異的毒素は、患者の癌を治療する方法で使用される。具体的には前記方法は、患者に前記TNFR25特異的毒素を提供することにより該患者からCD4+/CD25+制御性T細胞(Tregs)を除去するステップと、また該患者に化学療法剤を提供するステップとを含む。
【0016】
本発明のさらに別の局面は、細胞をTNFR25のアゴニストと接触させるステップを含む、該細胞上で発現したTNFR25受容体を活性化させる方法に関する。前記アゴニストは、モノクローナル抗体4C12か、TNFR25と結合しgp96−Ig−オボアルブミンによりクロスプライミングされたときのOT−I CD8細胞の増殖を対照抗体と比較して増大させる場合がある抗体か、可溶性TL1Aタンパク質か、TNFR25のアゴニスト抗体の遺伝子導入による発現を促進する能力を有する発現カセットを有する発現ベクターか、可溶性TL1Aの遺伝子導入による発現を促進する能力を有する発現カセットを有する発現ベクターか、TNFR25の遺伝子導入による発現を促進する能力を有する発現カセットを有する発現ベクターかから選択される場合がある。本方法は、TNFR25受容体のシグナル伝達の増大を観察するステップをさらに含む。
【0017】
本発明の付加的な局面は、TNFR25のアンタゴニストとして働く能力を有する抗体に関する。ある実施態様では前記抗体はTL1Aと結合し、gp96−Ig−オボアルブミンによりクロスプライミングされたときのOT−I CD8細胞の増殖を、対照抗体と比較して減少させる能力を有する。さらなる実施態様では前記抗体は、精製モノクローナル抗体L4G6である。
【0018】
本発明のさらなる局面は、細胞内でのTNFR25受容体のシグナル伝達を阻害する方法に関する。前記方法は、前記細胞をTNFR25のアンタゴニストと接触させるステップを含む。前記方法は、TNFR25受容体のシグナル伝達の減少を観察するステップをさらに含む。
【0019】
本発明の別の局面は、腫瘍抗原と、生物学的応答調節剤としてのTNFR25のアゴニストとを含む腫瘍ワクチンに関する。前記ワクチンのさらなる実施態様は、アジュバント剤も含む。
【0020】
本発明のさらに別の局面では、腫瘍特異的抗原を単離した後、腫瘍特異的抗原とTNFR25のアゴニストとを含むワクチンが、前記腫瘍に対する免疫を患者に付与するために使用される。
【0021】
本発明のさらなる局面は、消化管の炎症の治療及び/又は予防を必要とする患者にTNFR25のアゴニストを含む治療用組成物の有効量を提供するステップを含む、消化管の炎症を治療及び/又は予防する方法に関する。
【0022】
本発明のさらなる局面は、TNFR25のアンタゴニストと免疫抑制剤とを含む臓器移植の円滑化のための治療用組成物に関する。本局面に係るある実施態様では前記免疫抑制剤は、グルココルチコイド、アザチオプリン、メトトレキサート、シクロスポリン、シクロホスファミド、メルカプトプリン、タクロリムス又はミコフェノール酸モフェチルである。
【0023】
本発明の別の局面ではTNFR25のアンタゴニスト組成物は、ドナーから宿主へ組織を移植する方法において使用される。前記方法は、ドナーから組織を取得するステップと、宿主にTNFR25のアンタゴニスト組成物を提供するステップと、該組織を該宿主に移植するステップとを含む。
【0024】
本発明の別の局面は、同種CD8T細胞集団のクローン性増殖を阻害する方法に関する。前記方法は、前記CD8T細胞を該細胞のコグネイト(cognate)抗原に曝露するステップと、前記CD8T細胞をTNFR25のアンタゴニストに曝露するステップとを含む。さらなる実施態様では前記コグネイト抗原は、ドナーから宿主へ移植される組織と関連する。
【0025】
本発明の別の局面は、配列番号4、5、6及び/又は16と厳密な(stringent)条件下でハイブリダイズする配列含む核酸によりエンコードされるポリペプチドを含み、前記配列はTL1Aタンパク質と結合する能力を有するアミノ酸配列をエンコードする、単離されたTNFR25のアンタゴニストに関する。ある実施態様では前記配列は、配列番号4と厳密な条件下でハイブリダイズする。別の実施態様では前記配列は、配列番号5と厳密な条件下でハイブリダイズする。さらなる実施態様では前記配列は、配列番号6と厳密な条件下でハイブリダイズする。さらなる実施態様では前記配列は、配列番号16と厳密な条件下でハイブリダイズする。さらに別の実施態様では前記TL1Aは、ヒト又はマウスのTL1Aである。
【0026】
本発明の別の局面は、配列番号4、5、6及び/又は16と厳密な条件下でハイブリダイズする配列であって、TL1Aタンパク質と結合する能力を有するアミノ酸配列をエンコードする配列を含む核酸によりエンコードされるポリペプチドを含むTNFR25のアンタゴニストを含む治療用組成物の有効量を、肺の炎症の治療及び/又は予防を必要とする患者に提供するステップを含む、肺の炎症を治療及び/又は予防する方法に関する。
【0027】
本発明の別の局面は、組織をドナーから取得するステップと、配列番号4、5、6及び/又は16と厳密な条件下でハイブリダイズする配列であってTL1Aタンパク質と結合する能力を有するアミノ酸配列をエンコードする配列を含む核酸によりエンコードされるポリペプチドを含むTNFR25のアンタゴニストを宿主に提供するステップと、前記組織を該宿主へ移植するステップとを含む、ドナーから宿主へ組織を移植する方法に関する。
【0028】
本発明の別の局面は、配列番号3及び/又は7と厳密な条件下でハイブリダイズする配列によりエンコードされるポリペプチドと、毒性物質とを含み、前記配列はTNFR25受容体タンパク質に結合する能力を有するアミノ酸配列をエンコードする、組成物に関する。ある実施態様では前記毒性物質は、放射性同位体、リシン、アブリン、ジフテリア毒素、緑膿菌外毒素及び金属イオンからなる群から選択される。
【0029】
本発明の別の局面は、請求項39に記載の毒素を含む組成物を患者に提供することにより該患者からCD4+/CD25+制御性T細胞(Tregs)を除去するステップと、患者に化学療法剤を提供するステップとを含む、患者の癌を治療する方法に関する。
【0030】
本発明のさらなる局面は、配列番号3及び/又は7と厳密な条件下でハイブリダイズする配列によりエンコードされるポリペプチドを含む組成物の有効量を消化管の炎症の治療及び/又は予防を必要とする患者に提供するステップを含み、前記配列はTNFR25受容体タンパク質に結合する能力を有するアミノ酸配列をエンコードする、消化管の炎症を治療及び/又は予防する方法に関する。ある実施態様では前記炎症は、過敏性腸症候群の結果発生する症状である。別の実施態様では前記消化管の炎症は、クローン病の結果発生する症状である。
【0031】
本発明のさらなる局面は、腫瘍抗原と、配列番号3及び/又は7と厳密な条件下でハイブリダイズする配列によりエンコードされる生物学的応答調節剤としてのポリペプチドとを含み、前記配列はTNFR25受容体タンパク質に結合する能力を有するアミノ酸配列をエンコードする、腫瘍ワクチンに関する。
【0032】
本発明のさらに別の局面は、配列番号3及び/又は7と厳密な条件下でハイブリダイズする核酸配列を含む発現ベクターであって、前記配列はTNFR25受容体タンパク質に結合する能力を有するアミノ酸配列をエンコードする、発現ベクターに関する。
【0033】
本発明のさらなる局面は、配列番号4、5、6及び/又は16と厳密な条件下でハイブリダイズする核酸を含む発現ベクターであって、前記配列はTL1Aタンパク質と結合する能力を有するアミノ酸配列をエンコードする、発現ベクターに関する。
【0034】
本発明の付加的な利点は、本発明の実施に係る意図される最良の様式を単に例示する目的で本発明の好ましい実施態様のみが示され説明される以下の詳細な説明から、当業者には容易に明らかとなるだろう。当然のことながら本発明は他の異なる実施態様を有する可能性があり、その複数の詳細は、本発明から全く逸脱することなくさまざまな明らかな観点で修正することが可能である。本発明は、これらの具体的な詳細な説明の幾つか又は全てがなくとも実施される場合がある。他の例では、本発明を不必要に不明瞭にしない目的で、周知のプロセス操作は詳細に説明されない。したがって図面及び説明は、実際上例示目的とみなされるべきであり、限定目的とみなされるべきではない。
【0035】
図面の簡単な説明
図1Aは、リンパ節細胞内でのマウスTNFR25の発現を示すグラフである。MFIは、一次抗体としてのアイソタイプ対照抗体については黒数字により、抗TNFR25抗体に対しては影付き数字で、示される。TNFR25の検出は、一次ハムスター抗TNFR25モノクローナル抗体と、その後ヤギ抗ハムスタービオチンと、PE標識ストレプトアビジンとの三重サンドイッチ法を必要とした。図1Bは、活性化リンパ球でのTNFR25の発現を示すグラフである。脾細胞の活性化が、固定化抗CD3抗体(5μg/mL)及び固定化CD28抗体(1μg/mL)か、LPS(1μg/mL)かで24時間実施された。細胞は、CD4陽性若しくはCD8陽性又はB220陽性でありかつ7−AAD陰性である細胞に対してゲートをかけられた。(下付きのaは、活性化CD4細胞、活性化CD8細胞又は活性化B細胞を表す。)ヒストグラムでは、休止脾細胞及び活性化脾細胞内でのTNFR25の発現についてのMFIが示される。図1Cは、胸腺細胞でのTNFR25の発現を示すグラフである。胸腺細胞は、CD4/CD8ダブル陰性細胞か、ダブル陽性細胞か、シングル陽性細胞かに対してゲートをかけられ、抗TNFR25に係る蛍光について評価された。
【0036】
図2Aは、マウスTNFR25のスプライシング形態を示す図である。スプライシング形態は、マウスの休止脾細胞と、マウスの株細胞とから取得されたmRNAのRT−PCRにより取得された。CRDはシステインリッチドメインであり、TMは膜貫通ドメインであり、DDはデスドメインであり、アスタリスクはインフレームの終止コドンである。スプライシング形態1−4では、エキソン2とエキソン3との間のイントロンはスプライシングされず中途終止コドンを含む。スプライシング形態1−4は、非機能性タンパク質のようである。(ヒトのΔ6及びΔ6,7に対応する)マウスのΔ5及びΔ6は、完全な膜貫通ドメインを欠き、TL1Aに対する可溶性おとり受容体として働く場合がある分泌形態であると予想される。(ヒトA3に対応する可能性がある)Δ5,6スプライシング形態及びFLスプライシング形態は、本報告で導入遺伝子として研究される。(ヒトでのホモログは存在しない)Δ5,6,8及びΔ5,6,9は、膜に固定されているが前記デスドメインを欠くと予想され、変化したシグナル伝達特性を有する場合か、ドミナントネガティブなスプライシング形態として働く場合かがある。本明細書で開示される好ましいDN TNFR25は、TMドメインの後ろで切断された。図2Bは、TNFR25の活性化誘発性オルタナティブスプライシングを示す図である。マウス及びヒトの両方のTNFR25が活性化後にスプライシングされる。ヒトのTNFR25のスプライシング形態はマウスのスプライシング形態よりも、ゲル電気泳動後においてサイズでよく分離されるので、ヒトのスプライシングがここで示される。スプライシング形態はシーケンシングにより確認された。PBLが、Ficoll−Hypaque勾配遠心分離により単離された。各々の試料において5百万個の細胞が使用され、mRNAsが抽出され、Invitrogen cDNA synthesis kitを使用してcDNAに変換された。PHA(5μg/mL)か、固定化抗CD3抗体(5μg/mL)及び可溶性抗CD28抗体(1μg/mL)か、PMA(10ng/mL)及びイオノマイシン(400ng/mL)かによるPBLの活性化が、表示されたように行われた。前記細胞は表示された時間で回収され、RT−PCRsが実施された。β−アクチンが内部標準として使用された。図2Cは、活性化誘発性スプライシングがPKC依存性でありタンパク質合成非依存性であることを示す図である。新たに単離されたPBL細胞が、PMA(10ng/mL)単体か、イオノマイシン(400ng/mL)単体か、その組合せかで刺激された。PBLはH7(50μM)かシクロヘキシミド(10μg/mL)かで30分間前処理され、その後PMA及びイオノマイシンが前記細胞培養液中に添加された。前記細胞は、12時間後にRT−PCR分析のために回収された。
【0037】
図3は、CD2プロモーター及びエンハンサーの存在下でのTNFR25導入遺伝子の発現及び機能を例示する。図3Aは、B6野生型マウス及びアイソタイプ対照と比較した遺伝子導入マウスでのTNFR25の発現を示すグラフである。鼠径部のリンパ節細胞が、CD4、CD8、B220、CD11c陽性細胞か、NK1.1陽性かつCD3陰性な細胞か、NK1.1/CD3ダブル陽性細胞かに対してゲートをかけられた。対応するMFIが表示される。FL TNFR25と、Δ5,6 TNFR25と、DN TNFR25とについての発現プロファイルは同一であった。図3Bは、オルタナティブスプライシングを受けたTNFR25を導入された腫瘍細胞のウェスタンブロットを示す図である。TNFR25の3種類のスプライシング形態を形質移入されたP815細胞可溶化液由来のタンパク質50μgが装荷され、抗TNFR25抗体1OD1でブロッティングされた。レーン1はDN TNFR25であり、レーン2はΔ5,6 TNFR25であり、レーン3はFL TNFR25である。前記抗体は、ウェスタンブロッティングにおいてΔ5,6 TNFR25を検出しない。図3Cは、同腹の野生型細胞と比較したFL TNFR25遺伝子導入リンパ節細胞及び胸腺細胞におけるCD4及びCD8陽性細胞の細胞性の減少を例示するグラフである(n=5)。*:p<0.05、**:p<0.01、***:p<0.001。図3Dは、FL及びΔ5,6 TNFR25遺伝子導入細胞の活性化誘発性増殖の障害を示すグラフである。精製CD4又はCD8細胞の増殖が、刺激の3日後に、最後の6時間に係るチミジンの取り込みにより測定された。細胞はマイクロタイタープレート中で、可溶性抗CD28抗体(1μg/mL)といっしょに又は単体で使用する固定化抗CD3抗体(2μg/mL)か、PMA(10ng/mL)及びイオノマイシン(400ng/mL)かで活性化された。組換えマウスIL−2が1000U/mLで使用された。図3Eは、FL TNFR25及びΔ5,6 TNFR25がNF−κBを活性化することを例示する図である。NF−κB活性化は、TNFR25のトリガリングに応答するFL TNFR25(上側のパネル)又はΔ5,6 TNFR25(下側のパネル)が形質移入されたEL4細胞において測定された。細胞は、アゴニストのTNFR25抗体4C12(5μg/mL)で50分間処理された。可溶性TL1Aは、TL1Aが形質移入されたEL4細胞由来の上清を25%含む溶液という形態で、表示されたように25分間、50分間又は75分間与えられた。膜結合性TL1A(MTL1A)は、TL1Aを形質移入されたEL4細胞を、TNFR25を発現しているEL4細胞に直接添加することにより、50分間与えられた。対照は、(形質移入されない)EL4細胞の上清を50分間受け入れた。核抽出物が調製され、EMSAにより分析された。矢印は活性化NF−κBを指し示す。図3Fは、野生型CD4T細胞、FL TNFR25遺伝子導入CD4T細胞、Δ5,6 TNFR25遺伝子導入CD4T細胞によるTh2に偏った主要なサイトカイン産生を示すグラフである。脾臓由来のCD4T細胞がネガティブ選択により精製され、固定化抗CD3抗体(2μg/mL)及び可溶性抗CD28抗体(1μg/mL)で3日間活性化された。上清がサイトカインのELISA分析のために収集された。図は、3回の独立した実験を代表する。n.s.:有意差無し。*:p<0.05、**:p<0.01、***:p<0.001。図3Gは、TNFR25がTh1又はTh2のサイトカイン産生を同時刺激する場合があることを例示するグラフである。再刺激されたFL TNFR25遺伝子導入CD4T細胞のサイトカイン産生が、非分極条件(Th中性条件)、Th1分極条件又はTh2分極条件下で決定された。CD4細胞は、Th1分極のためにIL−12(5ng/mL)及び抗IL−4抗体(20μg/mL)と組み合せて、Th2分極条件のためにIL−4(10ng/mL)、抗IFN−γ抗体(10μg/mL)及び抗IL−12抗体(10μg/mL)と組み合せて、又は、単体で(Th中性)使用する固定化抗CD3抗体(2μg/mL)及び可溶性抗CD28抗体(1μg/mL)で4日間活性化された。前記細胞は回収され、洗浄され、再度抗CD3抗体プレート上に24時間播かれ、上清がサイトカインのELISA分析のために収集された。
【0038】
図4は、TNFR25遺伝子導入細胞の増殖の減少がアポトーシスのためではなく、IL−2又はIL−2受容体の発現の欠損のためであることを示す。図4Aは、遺伝子導入CD4及びCD8細胞において、活性化によるIL−2−Ra(CD25)に係る正常な上向き調節を例示するグラフである。固定化抗CD3抗体及び可溶性抗CD28抗体での72時間の活性化後、脾細胞は回収され、洗浄され、抗CD25抗体−FITC、抗CD8抗体−PE及び抗CD4抗体−CYで染色された。上側のパネルは野生型を、下側のパネルはΔ5,6 TNFR25遺伝子導入細胞を示す。図4Bは、遺伝子導入細胞が活性化によりアポトーシスの増大を被らないことを示すグラフである。CD4細胞が、可溶性抗mCD28抗体(1μg/mL)と固定化抗マウスCD3抗体(2μg/mL)とで3日間活性化され、アネキシンV−PE及び7−AADで染色された。アネキシンV−PE陽性かつ7−AAD陰性の細胞がアポトーシス細胞を表した。図4Cは、Δ5,6 TNFR25遺伝子導入T細胞によるIL−2の産生の減少を例示する図である。T細胞がネガティブ選択により精製され、固定化抗CD3抗体及び可溶性抗CD28抗体で3日間活性化された。上清が、ELISA分析によりIL−2産生について分析された。**p=0.0078。図4Dは、ドミナントネガティブなTNFR25遺伝子導入細胞が一次応答においてTh2分極していないことを例示するグラフである。脾臓由来のCD4T細胞がネガティブ選択により精製され、固定化抗CD3抗体(2μg/mL)及び可溶性抗CD28抗体(1μg/mL)で3日間活性化された。上清が、サイトカインのELISA分析のために収集された。図は、3回の独立した実験を代表する。図4Eは、DN TNFR25遺伝子導入マウス及び野生型マウスの同じ抗体アイソタイプの応答を示すグラフである。マウスが無菌PBS中の100μgのDNP−KLHで腹腔内免疫され、血清中のDNP特異的IgG1及びIgG2a抗体が免疫の3週間後にELISAにより評価された。抗DNP特異的抗体を検出するために、高結合96ウェルプレートが0.8μg/mLのDNP−BSAでコーティングされた。図は、3回の独立した実験のうちの1回を表す。
【0039】
図5は、TNFR25遺伝子導入マウスがin vivoでの負荷後にTh2に偏った応答を行うことを例示する。図5Aは、免疫されたTNFR25遺伝子導入マウスでは抗体アイソタイプがTh2に偏っていることを示すグラフである。マウスが、アジュバント剤を含まない無菌PBS中の100μgのDNP−KLHで腹腔内免疫された。血清中のDNP特異的IgG1及びIgG2a抗体が、免疫の1週間後にELISAにより評価された。抗DNP特異的抗体を検出するために、高結合96ウェルプレートが0.8μg/mLのDNP−BSAでコーティングされた。データは、3回の独立した実験のうちの1回を表す。**:p<0.01。n.s.:有意差無し。図5Bは、TNFR25のシグナルが気管支肺胞洗浄液(BALF)中の好酸球増加症を調節することを例示するグラフである。野生型マウス及びΔ5,6 TNFR25遺伝子導入マウスの免疫及び気道負荷が、実施例10−15で説明されるように実施された。気道は洗浄され、Wright−Giemsa染色サイトスピン標本から細胞数差が取得された。*:p<0.05。n.s.:有意差無し。図5Cは、TNFR25遺伝子導入マウスにおける肺の炎症の増大を示す図である。オボアルブミンで腹腔内感作され気道負荷されたマウスの肺の組織学的検査結果。気管支洗浄後、肺が除去され10%中性緩衝ホルマリン中で固定された。前記肺はその後パラフィン中に包埋され、5μm厚に切断され、粘液産生を検出するためにH&E(左側のパネル)又は過ヨウ素酸シッフ試薬(右側のパネル)で染色された。上側の2枚のパネルは野生型B6マウスについて、下側の2枚のパネルはΔ5,6 TNFR25遺伝子導入マウスについての結果を示す。図5Dは、TNFR25のシグナルが血清IgEレベルを制御することを例示するグラフである。マウスは、0日目と噴霧負荷の3日後(15日目)とに採血された。血清は分離され、サンドイッチELISA法によりオボアルブミン特異的IgEについて分析された。オボアルブミン特異的IgEに対して利用可能な標準タンパク質がないため、結果はO.D.単位で表される。図は、3回の独立した実験のうちの1回を表す。**:p<0.01。図5Eは、TNFR25遺伝子導入マウスでの気管支リンパ節細胞によるTh2サイトカインの産生の増大を示すグラフである。気管支リンパ節細胞が空路負荷の1日後(13日目)に回収され、細胞はin vitroで100μg/mLのオボアルブミンで4日間再刺激された。上清はその後ELISAによりサイトカイン産生について分析された。図は2回の独立した実験を代表する。*:p<0.05、**:p<0.01、***:p<0.001。
【0040】
図6は、ドミナントネガティブなTNFR25がTh2分極と肺の炎症とを抑制することを例示する。図6Aは、DN TNFR25導入遺伝子が内在のTNFR25によるサイトカインの同時刺激を阻害することを例示するグラフである。野生型及びDN TNFR25遺伝子導入CD4細胞が、抗CD3抗体か、アゴニストの抗TNFR25抗体4C12と抗CD3抗体との組合せかで3日間刺激され、上清がELISAによりサイトカインについて分析された。図6Bは、DN TNFR25が内在のTNFR25による増殖の同時刺激を阻害することを例示するグラフである。増殖アッセイでは野生型及びDN TNFR25遺伝子導入CD4細胞が、抗CD3抗体か、4C12か、抗CD3抗体及び4C12の組合せかで3日間活性化され、最後の8時間に係るチミジンの取り込みが測定された。図6Cは、DN TNFR25遺伝子導入CD4T細胞が二次活性化におけるTh2サイトカインの減少を引き起こすことを例示するグラフである。野生型及び遺伝子導入CD4T細胞がネガティブ選択により精製され、固定化抗CD3抗体(2μg/mL)及び可溶性抗CD28抗体(1μg/mL)で3日間活性化された。細胞はその後回収され、洗浄され、再度プレート上に播かれ、固定化抗CD3抗体(1μg/mL)で2日間再刺激された。上清はサイトカインのELISA分析のために収集された。n.s.:有意差無し。***:p<0.001。図6Dは、DN TNFR25遺伝子導入CD4T細胞がin vitroでTh2分極に耐性を示すことを示すグラフである。野生型及びDN TNFR25遺伝子導入CD4細胞が精製され、中性条件(ThN)又は(IL−4を添加すること、及び、IFN−γを抗体で阻害することによる)Th2分極条件下で、抗CD3抗体及び抗CD28抗体で4日間活性化された。細胞は回収され、洗浄され、再度抗CD3抗体プレート上に24時間播かれ、上清が回収され、サイトカインがELISAにより分析された。図6Eは、野生型マウスと比較したDN TNFR25遺伝子導入マウスにおけるBALF中での細胞の浸出の減少を例示するグラフである。マウスは、標準的プロトコールに従いオボアルブミンで一次刺激され、その後噴霧負荷された。n=5。*:p<0.05。図6Fは、免疫及び気道負荷の後でのDN TNFR25遺伝子導入マウスにおける肺の炎症の抑制を示す図である。上側のパネル:抗原の噴霧曝露後のDN TNFR25遺伝子導入マウスでは血管周囲の浸潤物がない。下側のパネル:DN TNFR25遺伝子導入マウスでは粘液の過剰産生と、杯細胞の過剰形成とがない。肺の炎症は、図5で説明されるようにオボアルブミン免疫と、その後の噴霧曝露とにより誘発された。野生型対照マウスは、図5で示されるように典型的な炎症を有した。図6Gは、DN TNFR25遺伝子導入マウスにおけるオボアルブミン特異的IgE産生の抑制を例示するグラフである。血清中のオボアルブミン特異的IgEは、ELISAにより決定された。**:p<0.01。図6Hは、気管支リンパ節におけるDN TNFR25によるTh1サイトカインではなくTh2サイトカインの産生抑制を示すグラフである。気管支リンパ節は、噴霧負荷の1日後に回収され、細胞は1001tg/mLのオボアルブミンで4日間再刺激された。上清はその後ELISAによりサイトカインの産生について分析された。図は2回の独立した実験の代表である。n.d.:検出されなかった。n.s.:有意差無し。*:p<0.05。
【0041】
図7は、TL1A阻害抗体が肺の炎症を抑制し、肺でのTh2サイトカイン産生を減少させることを例示する。図7A−Dは、抗TL1A抗体L4G6がTL1Aの機能的アンタゴニストであることを示すグラフである。図7Aは、適当な抗体で染色されたFL TNFR25形質移入P815細胞のフローサイトメトリー結果である。図7Bは、適当な抗体で染色されたΔ5,6 TNFR25形質移入P815細胞のフローサイトメトリー結果である。図7Cは、適当な抗体で染色されたTL1A形質移入P815細胞のフローサイトメトリー結果である。図7Dは、TNFR25を形質移入された細胞に係るTL1Aに仲介される細胞障害性をL4G6が阻害することを示すグラフである。TL1A形質移入P815細胞の上清から回収され段階希釈された可溶性TL1Aが、51Cr標識TNFR25形質移入P815標的細胞と混合された。さまざまな抗マウスTL1Aモノクローナル抗体がアッセイに添加され、51Crの放出が5時間後に分析された。図7Eは、TL1A阻害抗体L4G6が野生型C57B16マウスにおいてin vivoで粘液産生と肺の炎症とを抑制することを例示する図である。模式図:オボアルブミンでの一次刺激及び噴霧負荷と、阻害抗体(L4G6)又は対照抗体の投与とのスケジュール。対照IgG(左)及びL4G6−IgG(右)でのPAS染色後の肺の組織学的検査結果。L4G6処理マウスにおける粘液産生の欠如に留意せよ。(矢印は対照IgGで処理されたマウスにおける粘液を指す。)図7Fは、対照IgG処理マウスと比較したL4G6処理マウスにおけるBALF中での細胞の浸出の減少を示すグラフである。*:p<0.05、**:p<0.01。n.s.:有意差無し。図7Gは、L4G6でのTL1A阻害後の、オボアルブミンで再刺激された気管支リンパ節細胞によるIL−5及びIL−13の産生の減少を例示するグラフである。**:p<0.01。***:p<0.001。詳細な実験方法は図5で説明されたのと同様である。図7Hは、肺におけるCD11c陽性細胞の亜集団(矢印)に対する噴霧負荷後のTL1Aの発現を示すグラフである。気管支リンパ節がOVA噴霧負荷の前後に回収され、CD11c細胞はTL1A発現について分析された。他の全ての気管支リンパ節細胞は、TL1A陰性であった。図7Iは、気道負荷後のオボアルブミン免疫マウスの気管支リンパ節細胞由来のリンパ球におけるTL1A発現の欠如を例示するグラフである。単一細胞懸濁液が、抗TL1A抗体を一次モノクローナル抗体として使用する三重サンドイッチ法で染色された。細胞は、集団マーカーとしてそれぞれの標識抗体を使用してゲートをかけられ、TL1Aヒストグラムが表示された。抗TL1A抗体は、アイソタイプ対照である。図7Jは、TL1Aがin vitroで活性化Tリンパ球において発現されることを例示するグラフである。脾細胞が、プレートに結合した抗CD3抗体かLPSかで24時間活性化され、その後図1に示されるように、また表示される集団マーカーを使用して、抗TL1A抗体を使用する三重サンドイッチ法で染色された。B細胞は、LPS活性化の後でさえもTL1A陰性である。前記集団マーカーでゲートをかけ、活性化細胞でのTL1A発現が示される。
【0042】
図8は、NKT細胞における肺の炎症の誘発のためにTNFR25のシグナルが必要とされることを示すグラフである。NKT欠損Jα18ノックアウトマウス(Cui,J.et al.Science 278,1623−6(1997))が、材料及び方法における標準的プロトコールに示されるようにオボアルブミン及びミョウバンで一次刺激された。11日目に前記マウスは、静脈内養子移植により、310万個の部分的に精製された野生型NKT細胞又はDN TNFR25遺伝子導入NKT細胞か、PBSかを表示されるように受け入れた。前記マウスは12日目にオボアルブミンを噴霧され、14日目に分析された。野生型マウスは肺の炎症の誘発についての陽性対照の役割を果たし、Jα18ノックアウトマウスは陰性対照として細胞養子移植を受けずに免疫されオボアルブミン噴霧を受けた。データは、2回の独立した実験における各群4匹のマウスについてのものである。Jαは、NKT欠損マウスである(Cui,J.et al.Science 278,1623−6(1997))。
【0043】
図9は、TL1A/TNFR25に仲介される、肺におけるNKT細胞のトリガリングと、CD4細胞のTh2分極とについてのモデルを例示する図である。前記モデルは、IL−13産生とAHRの誘発とに寄与する場合があるTL1A及びTNFR25の間の相互作用の可能性を示す。NKT細胞によるIL−13産生の必要性についての証拠は、過去に提供された(Akbari,O.et al.Nat Med 9,582−8(2003))。現在の情報は、肺の炎症についてのNKT細胞へのTNFR25のシグナルの必要性と、CD11c+細胞によるTL1Aの発現と、TNFR25によるCD4 Th2エフェクターの同時刺激とを示す。CD4エフェクターはTL1Aを発現する場合があるので、CD4細胞及びNKT細胞の間のTL1A/TNFR25相互作用が喘息における相乗効果のための分子結合を提供する可能性がある。加えて他の肺関連細胞がTL1Aを発現し、肺の炎症のトリガリングを助ける場合がある。
【0044】
図10は、マウスが100万個のOT−I−gfpを静脈内投与された実験の結果を示す図である。2日後にマウスは、PBS中の表示される用量のオボアルブミン(青色の曲線)か、EG7−gp96−Ig又は3T3−ova−gp96−Ig(前記細胞数の注射された細胞により24時間以内に分泌されたgp96−Igの量(単位:ng)は横軸に表示される。)か、3T3−ova(前記細胞数の注射された細胞により24時間以内に分泌されたオボアルブミンの量は横軸に表示される。)かで、腹腔内免疫された。5日後、腹膜腔(PEC)及び脾臓におけるOT−Iの増殖がフローサイトメトリーにより決定された。3T3−ova−gp96−Ig免疫によるCD8細胞におけるOT−Iの出現頻度は、PECでは50%までであり、脾臓では8%までであった。
【0045】
図11Aは、抗TNFR25モノクローナル抗体4C12がTNFR25を形質移入されたEL4細胞に対してはアゴニストとして作用し殺すが、野生型EL4細胞に対してはそのように作用しない実験の結果を示す図である。図11Bでは、50μgのアゴニストの4C12か、アンタゴニストの抗TL1A抗体L4G6か、対照IgGかが、EG7−gp96−Ig免疫の24時間後及び72時間後に腹腔内投与された。4C12はOT−I増殖の8−10倍の増加と、腹膜浸出細胞の倍増とを引き起こした(1群当たりのマウス数は、n=4である。)。抗TL1A抗体はCD8の増殖を阻害した。
【0046】
図12は、熱ショックタンパク質gp96によるCD8細胞のクロスプライミングを示す図である。(同種又は同系の)ワクチン細胞がgp96−Ig及びオボアルブミンを形質移入されるとすぐに、オボアルブミンペプチドと結合したgp96−Igを分泌した。Gp96は、その結合ペプチドといっしょにgp96−Igの活性化及び貪食をもたらすDC上でCD91及びTLR2/4により検出された。活性化DCは、(CD40−Lと関係なく)B7を上向き調節し、(B6マウスでは)gp96結合ペプチドをKbを介して交差提示(cross−resent)する。OT−Iは、Kb−OVAに特異的なB6マウスに養子移植されるgfpを発現するTCR遺伝子導入CD8細胞である。前記細胞の増殖は、緑色蛍光タンパク質により容易に測定される場合がある。
【0047】
図13は、TNFR25を発現するFoxP3陽性CD4+CD25+Tregsを示すグラフである。CD4細胞がB細胞、CD8細胞及び単球を除去することにより精製され、その後CD25に対する磁気選別によりポジティブ選択され、その後活性化された。
【0048】
図14は、DN TNFR25遺伝子導入マウスがDSS誘発性大腸炎から回復できないことを示すグラフである。各群につき5匹のマウスが、飲料水中の2%DSSを8日間受け入れ、その後通常の水に交換された。
【0049】
図15は、TNFR25のシグナルがTreg阻害を消失させることを示すグラフである。
【0050】
図16は、gp96−Igの腹腔内免疫後に粘膜に位置するGfp−OT−Iを示すグラフである。マウスは、100万個のgfp−OT−Iを養子移植により静脈内投与された。2日後前記マウスは、400万個のEG7−gp96−Ig(左側のパネル)か、400万個のEG7(右側のパネル)かを刺激として腹腔内投与された。4日後、PEC、脾臓及びリンパ節における細胞の通常の分析に加えて、IEL、パイエル板及びLPLにおけるgfp−OT−Iの出現頻度が分析された。
【0051】
図17は、配列番号1−7及び配列番号16と、選択される公開データベースのアクセッション番号とを示す。
【0052】
発明の詳細な説明
免疫系を刺激する場合か、免疫系を間接的に増強する場合か、他の場合には免疫抑制効果を有する場合かがある免疫調節剤を利用する新規な組成物及び方法を提供することが本発明の目的である。本明細書で開示されるTNFR25のアゴニストは、腫瘍ワクチンといっしょに与えられるときに癌と戦うための身体能力を高める目的か、方向づける目的か、回復させる目的かのために、身体の細胞性免疫防御と癌細胞との間の相互作用を変化させる生物学的応答調節剤を提供する。本明細書で開示されるTNFR25特異的毒性物質は、癌患者から自然発生の免疫抑制細胞を除去することにより化学療法の投与計画の有効性を増大させる能力を有する。本明細書で開示されるTNFR25のアゴニストは、治癒効果を有する場合もある。中でも前記TNFR25のアゴニストは、炎症性腸疾患のような慢性炎症により引き起こされる疾病を治療するために使用される場合がある。本明細書で開示されるTNFR25のアンタゴニストは、CD8T細胞に仲介される細胞性免疫応答を阻害する能力を有し、例えば喘息を治療する場合と、組織移植後の臓器又は組織の拒絶反応を軽減する場合とがある。
【0053】
1.定義
本発明の説明に際し以下の用語が使用され、以下に示されるように定義されることが意図される。
【0054】
「抗原」は、抗体分子により特異的に結合される場合があるいずれかの物質を含む。したがって「抗原」という用語は、単純な中間代謝産物、糖、脂質、オータコイド(autoacids)及びホルモンと、複雑な炭水化物、リン脂質、核酸及びタンパク質のような高分子とを含むがこれらに限定されない生体分子を包含する。
【0055】
「抗原組成物」は、(例えばペプチド又はポリペプチドのような)抗原か、(例えば抗原発現ベクターのような)抗原をエンコードする核酸か、抗原を発現又は提示する細胞かを含む場合がある。その全体が引用により本明細書に取り込まれる米国特許出願公開公報第2003/0185840号明細書を参照せよ。
【0056】
「免疫原」は、抗原特異的免疫応答をもたらすリンパ球活性化を開始する能力を有する高分子の抗原である。したがって免疫原は、宿主の免疫系を刺激して分泌性、液性及び/又は細胞性の抗原特異的応答を開始する1個又は2個以上のエピトープを含むいずれかの分子を含む。
【0057】
「抗体」という用語は、ポリクローナル及びモノクローナル抗体調製物を包含する。本発明の抗体は、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ及びヒトを含むいずれかの哺乳類において調製される場合がある。前記抗体は、IgG、IgM、IgA、IgD又はIgEと、それらのサブクラスとのような免疫グロブリンのクラスの1つのメンバーの場合があり、好ましくはIgG1抗体である。
【0058】
「抗体」という用語は、本明細書で説明される抗体の機能的等価物も指す。機能的等価物は、抗体の結合特性に匹敵する結合特性を有し、例えばキメラ抗体、ハイブリッド抗体、ヒト化抗体及び一本鎖抗体と、それらのフラグメントとを含む。かかる機能的等価物を作成する方法は、PCT出願国際公開公報第93/21319号明細書、欧州特許出願第239,400号明細書、PCT出願国際公開公報第89/09622号明細書、欧州特許出願第338,745号明細書及び欧州特許出願第332,424号明細書に開示される。機能的等価物は、本発明の抗体の可変領域又は超可変領域のアミノ酸配列と実質的に同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。本明細書では「実質的に同じ」アミノ酸配列は、Pearson and Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85,2444−2448(1988)に従うFASTA検索法により決定される相同性であって、別のアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%の相同性を有するアミノ酸配列と定義される。
【0059】
本明細書で用いられるところの「モノクローナル抗体」という用語は、均一な抗体集団を有する抗体組成物を指す。前記用語は前記抗体の種又は出所に関して限定されず、作成方法により限定されることも意図されない。前記用語は、全部の免疫グロブリンを包含する。
【0060】
ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を作成する方法は当業者に既知である。ポリクローナル抗体は、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ又はヤギのような適切な動物を目的の抗原で免疫することにより産生される。免疫原性を亢進させるために前記抗原は、免疫の前にキャリアーと結合させられる場合がある。適切なキャリアーは典型的には、大きく緩徐に代謝されるタンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマー性アミノ酸、アミノ酸共重合体、(油滴又はリポソームのような)脂質凝集体及び不活性ウィルス粒子のような高分子である。かかるキャリアーは当業者に周知である。さらに前記抗原は、その免疫原性を亢進させるためにジフテリア、テタヌス、コレラ等由来のトキソイドのような細菌性トキソイドと結合させられる場合がある。
【0061】
ウサギ、ヒツジ及びヤギは、大量の血清が必要とされる場合におけるポリクローナル血清の調製にとって好ましい。これらの動物は、標識抗ウサギ抗体、標識抗ヒツジ抗体、標識抗ヤギ抗体の利用可能性のためにも良好な設計上の選択である。一般的には免疫は、生理食塩水中で、好ましくはフロイント完全アジュバント(FCA)のようなアジュバント剤中で前記抗原を混合又は乳化するステップと、前記混合液又は乳化液を非経口で(一般的には皮下又は筋肉内に)注射するステップとにより実施される。一般的には前記動物は2−6週間後に、好ましくはフロイント不完全アジュバント(FIA)を使用して、生理食塩水中の抗原の1回又は2回以上の注射により追加免疫される。抗体は、当業者に既知の方法を使用するin vitroでの免疫により産生される場合もある。ポリクローナル抗血清は、その後前記免疫された動物から取得される。
【0062】
モノクローナル抗体は、一般的にはKohler and Milstein,Nature(1975)256:495−497に記載の方法、その修正された方法、又は、Campbell in“Monoclonal Antibody Technology,The Production and Characterization of Rodent and Human Hybridomas”in Burdon et al.,Eds.,Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology,Volume 13,Elsevier Science Publishers,Amsterdam(1985)に記載の方法と、Huse et al in Science 246,1275−1281(1989)に記載の組換えDNA法とを使用して調製される。
【0063】
典型的にはマウス又はラットは、上述のように免疫される。しかし血清を抽出するために前記動物から採血するというよりも、脾臓(と任意に複数の大きなリンパ節と)が除去され、単一細胞にまで分離される。必要に応じて前記脾臓細胞は、前記抗原でコーティングされたプレート又はウェルに細胞懸濁液を適用することにより(非特異的接着細胞の除去後)スクリーニングされる場合がある。前記抗原に特異的な膜結合性免疫グロブリンを発現するB細胞は前記プレートに結合し、前記懸濁液の残りといっしょに洗浄除去されない。結果として得られるB細胞か、全ての分離された脾臓細胞かは、その後ハイブリドーマを形成するために骨髄腫細胞との融合を誘発され、(例えばヒポキサンチン アミノプテリン チミジン培地、「HAT」のような)選択培地で培養される。結果として得られるハイブリドーマは、限界希釈によりプレートに播かれ、免疫抗原に特異的に結合する(また、関係のない抗原には結合しない)抗体の産生についてアッセイされる。選択されたモノクローナル抗体分泌性ハイブリドーマは、その後(例えば組織培養ボトル又は中空糸型反応器においてというように)in vitro又は(例えばマウスの腹水においてというように)in vivoで培養される。
【0064】
「抗原結合部位」又は「結合部分」は、抗原結合に参加する免疫グロブリン分子の一部を指す。前記抗原結合部位は、重鎖(H鎖)及び軽鎖(L鎖)のN末端の可変領域(V領域)のアミノ酸残基により形成される。前記重鎖及び軽鎖のV領域内の3箇所の高度に変化する配列は、「フレームワーク領域」又は「FRs」として知られるより保存性の高い隣接配列の間に挿入される「超可変領域」と呼ばれる。したがって「FR」という用語は、免疫グロブリンにおける超可変領域の間に自然に見出され、該超可変領域に隣接するアミノ酸配列を指す。抗体分子では、抗原結合表面を形成するために、軽鎖の3箇所の超可変領域と重鎖の3箇所の超可変領域とがお互いに対して3次元空間に配置される。前記抗原結合表面は、結合する抗原の3次元表面に対して相補的であり、前記重鎖及び軽鎖の各々の3箇所の超可変領域は「相補性決定領域」又は「CDRs」と呼ばれる。
【0065】
本明細書で用いられるところの「免疫特異的な」、「免疫学的結合」及び「免疫学的結合特性」という用語は、免疫グロブリン分子と該免疫グロブリンが特異的である抗原との間に生じるタイプの非共有型相互作用を指す。免疫学的結合相互作用の強度又は親和性は、該相互作用の解離定数(Kd)という用語で表現される場合があり、より小さいKdはより大きな親和性を表す。選択されたポリペプチドの免疫学的結合特性は、当業者に周知の方法を使用して定量される場合がある。かかる方法の1つは、抗原結合部位/抗原複合体の形成速度及び解離速度を測定するステップを含み、これらの速度は該複合体形成パートナーの濃度と、前記相互作用の親和性と、両方向の速度に等しく影響を与える幾何学パラメーターとに依存する。したがって「正方向の速度定数(on rate constant)」(Kon)及び「逆方向の速度定数(off rate constant」(Koff)の両方が、前記濃度と、実際の結合速度及び解離速度との計算により決定される場合がある。Koff/Konの比が親和性に関係のない全てのパラメーターの削除を可能にし、したがってKoff/Konの比は解離定数Kdに等しい。概説としてはDavies et al.(1990)Annual Rev.Biochem.59:439−473を参照せよ。
【0066】
抗体分子の免疫学的結合特性を示す能力を有する、抗原結合部位を含む多数の治療上有用な分子が、当業者に周知である。タンパク質分解酵素パパインは複数のフラグメントを生成するためにIgG分子を選択的に切断し、該複数のフラグメントのうちの2本(「F(ab)」フラグメント)は各々がインタクトな抗原結合部位を含む共有型ヘテロ二量体を含む。酵素ペプシンは、両方の抗原結合部位を含む「F(ab’)2」フラグメントを含む複数のフラグメントを提供するためにIgG分子を切断することができる。「Fv」フラグメントは、IgM免疫グロブリン分子の、まれな場合ではIgG又はIgA免疫グロブリン分子の選択的なタンパク質切断により生成される場合がある。しかしFvフラグメントは、当業者に既知の組換え技術を使用して誘導されるのがより一般的である。前記Fvフラグメントは、ネイティブの抗体分子に係る抗原の認識及び結合の容量の多くを保持する抗原結合部位を含む非共有型VH::VLヘテロ二量体を含む。Inbar et al.(1972)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 69:2659−2662と、Hochman et al.(1976)Biochem 15:2706−2710と、Ehrlich et al.(1980)Biochem 19:4091−4096とを参照せよ。
【0067】
一本鎖Fv(sFv)ポリペプチドは、ペプチドをエンコードするリンカーにより連結されるVH領域及びVL領域をエンコードする遺伝子を含む遺伝子融合から発現される共有結合したVH::VLヘテロ二量体である。Huston et al.(1988)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 85(16):5879−5883を参照せよ。もともと凝集しているが化学的には別個のものである抗体V領域由来の軽鎖及び重鎖ポリペプチドを抗原結合部位の構造と実質的に類似する3次元構造に折り畳めるsFv分子に変換するための化学構造を識別するために、多数の方法が説明される。例えばHustonらの米国特許公報第5,091,513号及び第5,132,405号明細書と、Ladnerらの米国特許公報第4,946,778号明細書とを参照せよ。
【0068】
本明細書で用いられるところの「コグネイト抗原(cognate antigen)」は、CD8T細胞受容体(TCR)が免疫特異的である抗原を指す。例えば病原体と、移植された組織(アロ抗原)と、腫瘍細胞とから一般的に導かれるかかる抗原は、前記免疫系により非自己として認識される。前記コグネイト抗原のCD8T細胞受容体への結合は、かかるT細胞のクローン性増殖をもたらす。増殖する同種CD8T細胞集団は、その後有害なコグネイト抗原の源に対して細胞性免疫学的応答を開始することができる。
【0069】
本発明の抗体は、「免疫毒素」を作成するために使用される場合もある。前記ハイブリッド分子は、抗体又は抗原の特異性を前記毒素の毒性と組み合わせる。それにより免疫毒素分子は、抗原結合部分と毒性物質部分とを有する。免疫毒素は、好ましくは例えばTNFR25のような細胞表面分子に対して特異的であり、該細胞表面分子を発現する細胞への毒性物質の送達を促進する。
【0070】
好ましくは前記「毒性物質」は、該毒性物質が送達される細胞に対する細胞増殖抑制効果及び/又は細胞障害効果を有する。好ましい毒性物質は例えば、放射性同位体、蛍光物質(fluorescers)、化学発光物質(chemiluminescers)、酵素、酵素基質、酵素補因子、酵素阻害剤、色素及び金属イオンである。毒性物質は、ヨウ素131、インジウム111及びテクネチウム99mと、テクネチウム99mと、インジウム111と、イットリウム90と、ドキソルビシン(Yang et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:1189−1193)と、ダウノルビシン(Diener et al.(1985)Science 231:148−150;Dillman et al.(1988)Cancer Res.48:6097−6102)と、メトトレキサート(Uadia et al.(1985)J Nati Cancer Inst.74:29−35;Deguchi et al.(1986)Cancer Res.46:3751−3755)と、クロラムブシル(Symth et al.(1986)J.Immunol.137:3361−3366)とを含むがこれらに限定されない。他の毒性物質は、リシン、アブリン、ジフテリア毒素及び緑膿菌外毒素か、それらの酵素活性部分(A鎖)かを含む。例えばFrankelらの米国特許公報第4,753,894号明細書と、Nevelle,et al.(1982)Immunol Rev 62:75−91と、Ross et al.(1980)European J Biochem 104と、Vitteta et al.(1982)Immunol Rev 62:158−183と、Raso et al.(1982)Cancer Res 42:457−464と、Trowbridge et al.(1981)Nature 294:171−173とを参照せよ。モデクシン(modeccin)、アルファ−サルシン(sarcin)、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、アメリカヤマゴボウ(Phytolacca americana)タンパク質(PAPI、PAPII及びPAP−S)、ツルレイシ(momordica charantia)阻害剤、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、サパオナリア・オフィシナリス(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン(gelonin)、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)及び/又はエノマイシン(enomycin)のような酵素活性毒素及びそれらのフラグメントも含まれる。
【0071】
「毒性物質」は化学療法剤の場合もある。本明細書で用いられるところの「化学療法剤」という用語は総じて、不要な細胞増殖を停止、遅延又は逆行させるために投与される化合物に関する。好ましくはかかる化学療法剤は、抗増殖効果を有する。
【0072】
化学療法剤は、例えば5−FUのような抗代謝剤の場合がある。5−FUに基づく化学療法は、ロイコボリンのような他の化学療法剤、又は、ウラシル、5−エチニルウラシル、ブロモビニルウラシル、チミン、ベンジルオキシベンジルウラシル(BBU)若しくは5−クロロ−2,4−ジヒドロキシピリジンのようなDPD阻害剤といっしょに行う5−FU又はその誘導体の投与か、単体で行う5−FU又はその誘導体の投与かを含む。さらに、化学式(I)の5’−デオキシ−シチジン誘導体と、5−FU又はその誘導体との同時投与が、5−FU又はその誘導体とDPD阻害剤5−エチニルウラシルとの組合せと比較して、化学療法剤の腫瘍組織への選択的な送達を有意に向上させることが見出された。
【0073】
代替的に遺伝毒性物質は、持続的なゲノムの病変を形成する物質であり、不要な細胞増殖の臨床的管理においては化学療法剤としての使用が好まれる。遺伝毒性物質に誘発されるDNA損傷の細胞修復の速度と、細胞分裂周期を介する細胞増殖の速度とは、遺伝毒性物質両方の成果に影響を及ぼす。多くの癌を治療するために使用される遺伝毒性化合物の一般的なクラスは、DNAアルキル化剤及びDNA挿入剤である。ソラレンは、乾癬、白斑症、真菌感染症及び皮膚T細胞リンパ腫のような皮膚疾患の光化学療法での治療において有用であることが知られる遺伝毒性化合物である。Harrison’s Principles of Internal Medicine,Part 2 Cardinal Manifestations of Disease,Ch.60(12th ed.1991)を参照せよ。そのメンバーがDNAをアルキル化する場合か、DNAの間に介入する場合かがある遺伝毒性化合物の別の一般的なクラスは、合成及び天然の抗生物質を含む。アムサクリンと、アクチノマイシンA、C、(別名ダクチノマイシンとして知られる)D又は(別名KS4として知られる)Fと、アザセリンと、ブレオマイシンと、カルミノマイシン(carminomycin、カルビシン)、ダウノマイシン(ダウノルビシン)又は14−ヒドロキシダウノマイシン(アドリアマイシン又はドキソルビシン)と、マイトマイシンA、B又はCと、ミトキサントロンと、プリカマイシン(ミトラマイシン)と、これらに類するものとに代表される化合物のクラスを含むがこれらに限定されない抗腫瘍性抗生物質は、本明細書では特に関心がある。DNAをアルキル化する慣用される遺伝毒性物質のさらに別の一般的なクラスは、ハロエチルニトロソ尿素、特にクロロエチルニトロソ尿素を含むクラスである。この広範なクラスの代表的なメンバーは、カルムスチン、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン及びストレプトゾトシンを含む。ハロエチルニトロソ尿素の第一薬剤(first agents)は、前述の代表的な化合物のいずれかに係る類縁体又は誘導体の場合がある。
【0074】
シスプラチン又はオキサリプラチンのような白金配位化合物により現在対処可能となっている腫瘍は、髄芽細胞腫及び神経芽細胞腫に加えて、精巣癌、子宮内膜癌、頸部癌、胃癌、扁平上皮癌、副腎皮質癌及び小細胞性肺癌を含む。他の細胞障害性抗癌治療薬は、例えば精巣癌治療のためのBEP(ブレオマイシン、エトポシド、シスプラチン)、膀胱癌治療のためのMVAC(メトトレキサート、ビンブラスチン、ドキソルビシン、シスプラチン)、非小細胞肺癌治療のためのMVP(ミトマイシンC、ビンブラスチン、シスプラチン)を含む。
【0075】
そのメンバーがDNAをアルキル化する場合がある遺伝毒性物質のさらに別の一般的なクラスは、硫黄マスタード及びナイトロジェンマスタードを含む。これらの化合物は、主にグアニンの7位の窒素原子に共有結合付加体を形成することによりDNAを損傷する。この広範なクラスの代表的なメンバーは、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、メクロレタミン、ノベムビシン(novembicin)、トロホスファミド及びこれらに類するものを含む。ゲノムの病変の位置として1種類又は2種類以上の所定のゲノム標的を選択することが望まれる場合には、選択された細胞のゲノムの特定の配列と共有的又は非共有的に相互作用するオリゴヌクレオチド又はその類縁体が、遺伝毒性物質として使用される場合もある。
【0076】
そのメンバーがDNAをアルキル化する場合がある遺伝毒性物質の別のクラスは、エチレンイミン及びメチルメラミンを含む。これらのクラスは、例えばアルトレタミン(ヘキサメチルメラミン)、トリエチレンホスホラミド(TEPA)、トリエチレンチオホスホラミド(ThioTEPA)及びトリエチレンメラミンを含む。
【0077】
DNAアルキル化剤の付加的なクラスは、ブスルファンに代表されるスルホン酸アルキルと、ベンゾデパ(benzodepa)に代表されるアジニジン(azinidines)と、例えばミトグアゾン、ミトキサントロン及びプロカルバジンに代表されるその他とを含む。各々のこれらのクラスは、それぞれのクラスに代表的な化合物の類縁体及び誘導体を含む。
【0078】
1つの実施態様では化学療法剤は、EGFR及びHER2−neuのような受容体チロシンキナーゼの阻害剤であり、細胞増殖の選択的阻害剤として使用される。例えばEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤であるアーブスタチン(erbstatin)は、EGFRを発現するヒト癌細胞の増殖を低減する。スチレンのさまざまな誘導体も、チロシンキナーゼ阻害特性を有すること、及び、抗腫瘍剤として有用であることが説明される。2種類のかかるスチレン誘導体は、ヌードマウスに注射されたヒト扁平上皮癌の増殖を減少させることによりその有効性が示されるClass I RTK阻害剤である。特定の4−アニリノキナゾリン誘導体が受容体チロシンキナーゼの阻害剤として有用である。これらの化合物により示される非常に緊密な構造−活性の関係は、特徴の明確な結合様式を表示し、前記キナゾリン環はアデニンポケットにおいて結合し、前記アニリノ環は隣接する独特の親油性ポケットにおいて結合する。(2種類は可逆的阻害剤であり1種類は不可逆阻害剤である)3種類の4−アニリノキナゾリン類縁体は、抗癌薬として臨床的に評価されている。加えて、HER2−neu過剰発現転移性乳癌の治療のためのモノクローナル抗体トラスツズマブ(ハーセプチン(商標))。Scheurle,et al.,Anticancer Res 20:2091−2096,2000を参照せよ。
【0079】
「発現ベクター」は、該発現ベクターが含む別のポリヌクレオチドセグメントの複製及び/又は発現をもたらすために、(例えば自己制御下で複製する能力を有する)細胞内のポリヌクレオチド複製の自律的単位として振舞う、又は、宿主細胞クロモソームへの挿入により複製能力を与えられる、前記別のポリヌクレオチドセグメントを含む例えばプラスミド、クロモソーム、ウィルスのようないずれかの遺伝因子である。適切なベクターは、ウイルス、プラスミド及びコスミドを含むがこれらに限定されない。
【0080】
発現ベクターは、該ベクターの目的の宿主細胞への連結又は挿入をもたらすために、また、発現されるポリヌクレオチドの転写をもたらすために必要なポリヌクレオチド配列と、操作可能なように結合させられる、転写されるポリヌクレオチド配列を含む「発現カセット」を含む。かかる配列は、転写をもたらすプロモーター配列と、転写を増大させるエンハンサー配列と、リボソーム結合部位配列と、転写及び翻訳終結配列とを含む。代替的に発現ベクターは、該ベクターの宿主細胞DNA配列への連結又は組み込みなしに、そこにエンコードされる核酸配列産物を直接的に発現する能力を有する場合がある。
【0081】
「操作可能なように結合させられる」という用語は、DNAセグメントが意図されたように機能することを可能にするようになされる、該DNAセグメントの別のDNAセグメントへの結合を指す。遺伝子産物をエンコードするDNA配列は、直接的又は間接的に該DNA配列の転写の変調を可能にするように例えばプロモーター、エンハンサー及び/又はサイレンサーのような調節配列と結合させられるときには、該調節配列と操作可能なように結合させられる。例えばDNA配列は、プロモーターの転写開始部位に関して下流で該プロモーターと結合させられるときには、該転写開始部位に関して正しい読み枠で該プロモーターと操作可能なように結合させられ、転写伸長が前記DNA配列を通じて進行することを可能にする。エンハンサー又はサイレンサーは、遺伝子産物をコードするDNA配列と結合させられるときには、該DNA配列の転写をそれぞれ増大又は減少させるように該DNA配列と操作可能なように結合させられる。エンハンサー及びサイレンサーは、DNA配列のコード領域の上流に位置する場合か、下流に位置する場合か、該領域内に包埋される場合かがある。シグナル配列についてのDNAは、該シグナル配列がポリペプチドの分泌に参加する前タンパク質として発現される場合は、該ポリペプチドをコードするDNAと操作可能なように結合させられる。DNA配列の調節配列との結合は典型的には、当業者に既知の制限エンドヌクレアーゼを使用して、適切な制限部位での結合により、又は、前記DNA配列に挿入されるアダプター若しくはリンカーを介して、達成される。
【0082】
本明細書で用いられるところの「小分子」は、一定の疾病の症状に関与することが知られる特定のタンパク質と相互作用するように設計された分子量の合成化合物を指す。かかる化合物のライブラリーは、例えばコンビナトリアルケミストリーにより容易に合成される場合があり、従来技術を使用してTNFR25のアゴニスト/アンタゴニスト活性に対してスクリーニングされる場合がある。
【0083】
「TNFR−SF25」、「TNFR25」又は「DR3」という用語は、本明細書では全てが、その完全な生物学的機能は過去に知られていなかったTNF受容体ファミリーのメンバーに対する交換可能な用語として使用される。その全体が引用により本明細書に取り込まれる米国特許公報第6,713,061号明細書と、Borysenko,et al.,Biochem Biophys Res Commun.2005 Mar 18;328(3):794−9と、Sheikh,et al.,Curr.Cancer Drug Targets.2004 Feb;4(1):97−104とを参照せよ。しかし本発明者らは、多数の重要な発見をした。マウスTNFR25をエンコードするcDNA配列は、配列番号1として示される。ヒトTNFR25をエンコードするcDNAは、配列番号2として示される。
【0084】
TNFRファミリーの他のいずれかのメンバーの発現と異なり、DR3の発現は、mRNAのオルタナティブスプライシングにより制御されることが見出された。休止T細胞は、DR3タンパク質をほとんど又は全く発現しないが、高いレベルの、ランダムにスプライシングされたDR3 mRNAを含んだ。T細胞受容体を介するT細胞活性化により、プロテインキナーゼC(PKC)が活性化される。PKC活性化は全長のDR3の正しいスプライシングと、前記タンパク質の表面活性化とを次々に仲介する。DR3の発現に係るこの独特の調節は、T細胞上における迅速なDR3タンパク質の発現を可能にし、DR3のスプライシング及び発現の原因となるPKCレベルに影響を与えることを介してDR3の発現の環境調節を可能とする。
【0085】
DR3は、T細胞の分極を同時刺激すること、及び、Th2分極細胞におけるIL−13及びIL−10の産生を刺激することに関与する場合もある。中でもIL−10産生は炎症性腸疾患を抑制するときに重要な役割を果たすので、これは重要な観察結果である。
【0086】
T細胞におけるTNFR25の遺伝子導入による発現は、サイトカインのTh2分極と、T細胞活性化及び抗原曝露による抗体産生とを仲介する。加えて遺伝子導入によるTNFR25は、TCRに促進されるCD4及びCD8細胞の増殖を部分的に阻害し、リンパ器官におけるT細胞の総数をアポトーシスを誘発することなく低減する。CD8細胞は、CD4細胞よりもより強くTNFR25により影響される。それによりTNFR25のシグナルは、Th2又は混合Th1/Th2応答に向うその後の分極を形成することによる病原体に対するエフェクター応答において重要である。
【0087】
TNFR25遺伝子導入マウスは、マウスでの喘息モデルにおいて抗原誘発性気道炎症に非常になりやすく、吸入による抗原曝露で肺中のIL−13及び好酸球の量の増大をもたらした。TNFR25のドミナントネガティブ形態を発現する遺伝子導入マウスは、野生型マウスと比較して気道過敏性への耐性の増大を示した。
【0088】
「TL1A」は本明細書では、デスドメイン含有受容体であるDR3への結合を通じてIFN−γ分泌の同時刺激剤として働くTNF様因子を指す。TNFと類似するTL1Aは、ホモ三量体の可溶性形態として循環することも推定される。それにより本明細書で用いられるところの「可溶性TL1A」は、ホモ三量体TL1Aを指す。前記用語は、いずれかの種特異的形態に限定されない。しかしヒトTL1A単量体に対するcDNA配列は配列番号7として、マウスTL1A単量体に対するcDNA配列は配列番号3として提供される。
【0089】
TL1Aは、Th1分極サイトカインとして機能することにより炎症性腸疾患(IBD)において一定の役割を果たすことが示唆されている。TL1Aタンパク質量及びTL1A陽性細胞数は、最も顕著にはクローン病(CD)のような炎症の重篤度と相関することが示されている。CD患者由来のPHA刺激された単核細胞固有層の培養液への組換えヒトTL1Aの添加が、IFN−γ産生を4倍まで有意に増大させたが、対照患者では最小の効果が観察されたことも示されている。付加的に、抗TL1A抗体の阻害が野生型マウスにおいて喘息を改善することができ、TNFR25及びTL1Aが喘息の発病に関与することが示された。
【0090】
人体に係る受容体は、(ホルモン、サイトカイン及び神経伝達物質のような)天然又は(例えば抗体又は小分子のような薬剤のような)合成のアゴニストにより刺激又は阻害されることにより機能する。
【0091】
本明細書では「TNFR25のアゴニスト」は、該TNFR25受容体に結合し、該TNFR25受容体が発現される細胞において例えばTL1Aのような天然のTNFR25リガンドに該細胞を曝露することにより観察される応答と同様の応答をトリガリングする物質を指す。アゴニストは、アンタゴニストは前記受容体に結合する場合もあるが該受容体を活性化することはできず実際上完全又は部分的に該受容体の内在又は外来のアゴニストによる活性化を阻害するという意味で、アンタゴニストの正反対である。部分アゴニストは受容体を活性化するが、完全アゴニストがもたらすような生理学的変化をもたらさない。
【0092】
可溶性TL1Aは、TNFR25のアゴニストとして一定の細胞集団における前記TNFR25受容体の活性を増大させるために、患者に治療用形態で与えられる場合がある。代替的にTNFR25のアゴニストの別の例は、TNFR25に結合し活性化させる能力を有する抗体である。例えば前記モノクローナル抗体4C12は、TNFR25に結合しTNFR25のシグナル伝達を活性化させる。別の実施態様では、また、本発明との関連では、TNFR25のアゴニストは、選択された場所か選択された時間かにおけるTNFR25のアゴニスト抗体及び/又はTL1Aタンパク質の遺伝子導入による発現を異所的に促進する能力を有する発現カセットを有する発現ベクターから誘導される場合がある。さらに別の実施態様では、組織におけるTNFR25のシグナル伝達の増大をもたらすTNFR25のアゴニストは、TNFR25自身の遺伝子導入による発現を促進する能力を有する発現カセットを有する発現ベクターにより提供される。これは、受容体と比較して過剰量の外来又は内在のTNFR25のアゴニストが存在する組織においてTNFR25のシグナル伝達の増大が必要とされる状況で有用である。
【0093】
本明細書では「TNFR25のアンタゴニスト」は、TNFR25受容体の正常な生理学的機能を阻害する物質を指す。かかる薬剤は、TL1Aのような内在の受容体に係るアゴニスト/リガンドのTNFR25受容体との結合を妨害することにより機能する。TNFR25のアンタゴニストの一例は、ドミナントネガティブなTNFR25受容体である。好ましくは本明細書で使用される前記TNFR25のアンタゴニストは、TL1Aの前記TNFR25受容体を活性化する能力を妨げるTL1Aに特異的な抗体である。最も好ましくは前記抗体は、モノクローナル抗体L4G6である。別の実施態様では前記TNFR25のアンタゴニストは、TNFR25の細胞外部分又はオルタナティブスプライシング形態と、免疫グロブリンのFc部分、又は、他のいずれかの適切な融合パートナーとの融合タンパク質である。別の実施態様では前記TNFR25のアンタゴニストは、オルタナティブスプライシング形態又は人工構成体として、膜貫通結合ドメイン上での切断により作成されるTNFR25の可溶性形態である。別の実施態様では前記TNFR25のアンタゴニストは、TNFR25に特異的に結合し、TNFR25の天然のリガンドへの結合を妨害する抗体である。別の実施態様ではTNFR25のアンタゴニストは、選択された場所か選択された時間かにおける内在のTNFR25及び/又はTL1AのmRNAの転写及び/又は翻訳をノックダウンする能力を有するアンチセンスmRNA、RNAi又はリボザイムの遺伝子導入による発現を促進する能力を有する発現カセットを有する発現ベクターの場合がある。さらに別の実施態様ではあるTNFR25のアンタゴニストは、ドミナントネガティブなTNFR25の遺伝子導入による発現を促進する能力を有する発現カセットを有する発現ベクターを提供することにより、組織におけるTNFR25のシグナル伝達を減少させる場合がある。
【0094】
TNFR25のアンタゴニスト又はアゴニストは、アプタマーの形態の場合がある。「アプタマー」は、他の分子に結合するその能力に基づく無作為のプールから選択されるDNA又はRNA分子である。ある実施態様ではアプタマーは、例えばTL1Aのような天然のリガンドの結合を阻害するためにTNFR25に特異的に結合し、又は、TL1A自身に結合してTNFR25に結合するのを妨害する。別の実施態様ではアプタマーは、前記TNFR25受容体に特異的に結合しそれを活性化する。
【0095】
本明細書で用いられるところの「ドミナントネガティブ」又は「DN」は、内在のTNFR25を阻害するために働く、外から提供されるTNFR25の構造変異体を指す。例えばモル過剰量のDNは、例えばTL1AのようなTNFR25のリガンドの結合について内在のTNFR25を打ち負かす。好ましくは前記DNは、細胞内ドメインを欠損している以外は野生型TNFR25と同じである。代替的に前記DNは、膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインを欠損している以外は野生型TNFR25と同じである。マウスDN TNFR25についてのコード配列は、配列番号4に提供される。ヒトDN TNFR25についてのコード配列は、配列番号5に提供される。細胞外ドメインのみを含むヒトDN TNFR25についてのコード配列は、配列番号6に提供される。
【0096】
本発明は、配列番号3−7と実質的に同一のコード配列も含む。当業者は、少なくとも1個のヌクレオチド塩基の同一性に関して、配列番号3−7と実質的に同一のオリゴヌクレオチド配列が配列番号3−7とそれぞれ異なる場合があることも認識するだろう。しかし配列番号3−7と実質的に同一の全てのオリゴヌクレオチド配列が、配列番号3−6(すなわち標的配列)の相補配列の全て又は一部分と、それぞれ(本明細書で定義されるところの)厳密な条件下でハイブリダイズする。「特異的にハイブリダイズする」という用語は、(例えばプライマー又は標識プローブのような)オリゴヌクレオチド及び標的配列の間の相補的ハイブリダイゼーションを指す。前記用語は、PCRポリメラーゼのための望ましいプライマー設定か、ハイブリダイゼーションシグナルの望ましい検出かを実現するために、ハイブリダイゼーション培地の厳密性を低減することにより調整される場合がある少数のミスマッチを特異的に包含する。
【0097】
厳密なハイブリダーゼーション条件下では、高度に相補的な、換言すれば実質的に同一の、核酸配列のみがハイブリダイズする。好ましくはかかる条件は、20個の隣接するヌクレオチドのうち3個又は4個以上のミスマッチ、より好ましくは20個の隣接するヌクレオチドのうち2個又は3個以上のミスマッチ、最も好ましくは20個の隣接するヌクレオチドのうち1個又は2個以上のミスマッチを有する核酸のハイブリダーゼーションを妨げる。ハイブリダイズする核酸のハイブリダイズ部分は、標的配列又はその相補配列と少なくとも約90%、好ましくは少なくとも約95%、最も好ましくは少なくとも約98%同一である。
【0098】
厳密な条件下での核酸の核酸試料へのハイブリダイゼーションは、下に定義される。核酸の二本鎖又はハイブリッドの安定性は、前記プローブが標的DNAから解離する温度である融解温度(Tm)として表現される。前記融解温度は、必要とされる厳密な条件を定義するために使用される。配列が前記プローブと同一というよりもむしろ実質的に同一であると特定される場合には、そのときは(例えばSSC又はSSPEを使用する)特定の塩濃度で相同ハイブリダイゼーションのみが起こる最も低い温度を最初に設定するのが有用である。それから1%のミスマッチが1°CのTmの減少をもたらすと仮定すると、ハイブリダイゼーション反応における最終洗浄温度は相応に低減される。(例えば前記プローブと>95%の同一性を有する配列が探索される場合、前記最終洗浄温度は5°C減少される。)実際上はTmの変化は、1%のミスマッチ当たり0.5°C及び1.5°Cの間の場合がある。
【0099】
最も厳密な条件は、5xSSC/5xDenhart’s溶液/1.0%SDS中において68°Cでハイブリダイズするステップと、0.2xSSC/0.1%SDS中において室温で洗浄するステップとを含む。中程度に厳密な条件は、3xSSC中において42°Cで洗浄するステップを含む。塩濃度及び温度のパラメーターは、前記プライマー及び前記標的核酸の間の同一性に係る最適レベルを実現するために変更される場合がある。かかる条件に関する付加的なガイダンスは、例えばSambrook,Fischer and Maniatis,Molecular Cloning,a laboratory manual,(2nd ed.),Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York,(1989)と、F.M.Ausubel et al eds.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons(1994)とのように、当業者が容易に利用可能である。
【0100】
本明細書で用いられる用語としての「免疫抑制剤」は、炎症性疾患の治療と臓器移植の円滑化とに必要な重要な薬剤である。例えばシクロスポリンA(CsA)は、相当な免疫抑制活性を有する。それは臓器移植に革命をもたらし、自己免疫疾患の治療に慣用されている。CsAの使用とその作用機序との最近のレビューについては、Wenger et al;Cyclosporine Chemistry,Structure−activity relationships and Mode of Action,Progress in Clinical Biochemistry and Medicine,Vol.2,176(1986)を参照せよ。しかしCsAは、腎不全、骨髄抑制及び不妊症のような重度の副作用を有する場合がある強力な薬物である。
【0101】
副腎皮質ステロイドもその抗炎症効果のために炎症の症状において使用される。副腎皮質ステロイドは作用開始が迅速であり、他のほとんどの身体組織と同様に免疫系の多くの部分に大いに影響を及ぼす。副腎皮質ステロイドはほとんどの型の血管炎の治療の基礎であり、他の免疫抑制剤と組み合わせて使用されることが多い。しかし副腎皮質ステロイドの長期間の使用は、高血圧と、体重増加と、挫瘡と、顔の腫れとを含む重度の副作用を有する場合もある。他の免疫抑制剤は、アザチオプリン、メトトレキサート、シクロホスファミド、メルカプトプリン、タクロリムス及びミコフェノール酸モフェチルを含む。
【0102】
一般的な方法として、前記アゴニスト及びアンタゴニストは、嚥下、注射若しくは吸入される、又は、座薬を経由して提供される組成物として患者に提供される場合がある。代替的に前記組成物は点耳薬又は点眼薬中に処方される場合がある。
【0103】
本明細書で用いられるところの「喘息」という用語は、気管支の痙攣性収縮(いわゆる「気管支痙攣」)のために喘嗚を伴う発作性呼吸困難(すなわち「可逆性閉塞性気道通過障害」)の再発性発作に特徴づけられるいずれかの喘息の症状を含む。本発明に従い治療又は予防される場合がある喘息の症状は、特に激しい運動のような運動(「運動誘発性気管支痙攣」)と、刺激性粒子(花粉、埃、綿、ネコのふけ)と、軽度から中程度の喘息と、慢性喘息と、重度の慢性喘息と、重度かつ不安定な喘息と、夜間喘息と、精神的ストレスとを含むさまざまな因子により引き起こされる、感作された人における症状を特徴とするアレルギー性喘息及び気管支アレルギーを含む。本発明の方法は、例えば下気道通過及び肺に係る可逆性閉塞性障害と、運動誘発性気管支痙攣とに苦しむヒトのような哺乳類における喘息の開始を予防する際に特に有用な場合がある。本明細書で開示される喘息を治療するための方法において、本発明のアンタゴニストを送達する好ましい方法は、吸入による。
【0104】
吸入用噴霧剤を生産するために総合的にさまざまな機構及び方法論を使用する複数のさまざまなタイプの装置が存在する。最も慣用される装置は、低沸点の噴霧剤を含む製剤を有する製剤容器を含む定量噴霧式吸入器(MDI)である。前記製剤は加圧下で前記容器中に保持され、前記容器上のバルブが開けられると定量の製剤が噴霧剤として放出される。前記製剤が前記容器の外側で大気圧に曝されると、前記低沸点の噴霧剤は迅速に蒸発又は「フラッシュ(flashes)」する。前記噴霧剤を有さず前記薬剤を含む製剤の粒子が、患者の肺に吸入され、その後該患者の循環系に移動する。多数のさまざまなタイプのMDI装置が存在する。このタイプの装置は1995年4月11日に発行された米国特許公報第5,404,871号明細書と、1994年11月15日に発行された米国特許公報第5,364,838号明細書とに開示される。
【0105】
別のタイプの装置は、乾燥粉末吸入(DPI)装置である。その名が示すとおりかかる装置は、ガスの爆発により吹き飛ばされ噴霧化した雲となる乾燥粉末の剤形を使用する。典型的なDPI装置は、1998年7月7日に発行された米国特許公報第5,775,320号明細書と、1998年4月21日に発行された米国特許公報第5,740,794号明細書とに開示される。
【0106】
さらに別のタイプの噴霧剤送達装置は、強制的に剤形を多孔質膜に通過させる。前記孔を通過する剤形は、前記患者により吸入される小粒子を形成するために破壊される。このタイプの装置は、1996年8月13日に発行された米国特許公報第5,554,646号明細書と、1996年6月4日に発行された米国特許公報第5,522,385号明細書とに開示される。
【0107】
吸入用組成物に関して、適切なキャリアー物質は、非晶質粉末か、結晶粉末か、非晶質粉末及び結晶粉末の組合せかの形態の場合がある。適切な物質は、例えばフルクトース、ガラクトース、グルコース、D−マンノース、ソルボース及びこれらに類するもののような単糖類と、ラクトース、トレハロース、セロビオース及びこれらに類するもののような二糖類と、2−ヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンのようなシクロデキストリンと、ラフィノース、マルトデキストリン、デキストラン及びこれらに類するもののような多糖類とのような炭水化物と、(b)グリシン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、リシン及びこれらに類するもののようなアミノ酸と、(c)クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、グルコン酸マグネシウム、グルコン酸ナトリウム、塩酸トロメタミン及びこれらに類するもののような、有機酸及び塩基から調製される有機酸塩と、(d)アスパルテーム、ヒト血清アルブミン、ゼラチン及びこれらに類するもののようなペプチド及びタンパク質と、(e)マンニトール、キシリトール及びこれらに類するもののようなアルジトールとを含む。キャリアーの好ましい群は、ラクトース、トレハロース、ラフィノース、マルトデキストリン、グリシン、クエン酸ナトリウム、塩酸トロメタミン、ヒト血清アルブミン及びマンニトールを含む。
【0108】
かかるキャリアー物質は、噴霧乾燥の前に、すなわち、噴霧乾燥のために調製される緩衝液に該キャリアー物質を添加することにより、本発明のアゴニスト又はアンタゴニストと組み合わされる場合がある。そのようにして前記キャリアー物質は、本発明のアゴニスト又はアンタゴニスト粒子といっしょに、又は、該粒子の一部として、同時に形成される。典型的には前記キャリアーが本発明のアゴニスト又はアンタゴニストといっしょに噴霧乾燥により形成されるときには、本発明のアゴニスト又はアンタゴニストは、個々の粒子中に5重量%から95重量%まで、好ましくは20重量%から80重量%までの範囲で存在する。前記粒子の残りは、基本的には(典型的には5重量%から95重量%まで、通常は20重量%から80重量%までの)キャリアー物質であるが緩衝液も含み、上述の他の成分を含む場合がある。肺の肺胞領域に送達される粒子中(すなわち10μm未満の必要サイズ範囲の粒子)におけるキャリアー物質の存在は、本発明のアゴニスト又はアンタゴニストに係る全身の吸収を有意には妨害しないことが見出されている。
【0109】
代替的に前記キャリアーは、乾燥粉末形態で別々に調製され、乾燥粉末状の本発明のアゴニスト又はアンタゴニストと混合することにより組み合わされる場合がある。前記別々に調製された粉末キャリアーは、(水吸収を避けるために)通常は結晶であるが、ある場合には非晶質か、結晶及び非晶質の混合物かの場合がある。前記キャリアー粒子のサイズは、本発明のアゴニスト又はアンタゴニスト粉末の流動性を向上させるために選択される場合があり、典型的には25μmから100μmまでの範囲にある。このサイズ範囲のキャリアー粒子は、一般的には肺の肺胞領域に浸透せず吸入前に送達装置中の本発明のアゴニスト又はアンタゴニストから分離することが多い。したがって肺の肺胞領域に浸透する粒子は、本質的には本発明のアゴニスト又はアンタゴニストと緩衝液とからなる。好ましいキャリアー物質は、上述の範囲のサイズを有する結晶マンニトールである。
【0110】
本発明の乾燥粉末組成物は、好ましくは従来の方法で流動する空気か他の生理学的に許容可能な気体の蒸気かへの分散により噴霧剤とされる。かかる分散に適するあるシステムが、その全ての開示が引用により本明細書に取り込まれる国際公開公報第93/00951号として公開される同時係属出願第07/910,048号に係る明細書に記載される。
【0111】
無菌注射溶液は、必要量の本発明の組成物及び剤形を、濾過滅菌されたリン酸ナトリウム緩衝生理食塩水のような適当な溶媒中に取り込むことにより調製される。本明細書で用いられるところの「生理学的に許容可能なキャリアー」は、いずれか及び全ての溶媒と、分散媒と、ヒトには無毒の抗細菌剤及び抗真菌剤と、これらに類するものとを含む。医薬品として活性な物質に対するかかる培地及び薬品の使用は、当業者に周知である。前記培地又は薬品は、本発明のタンパク質鎖の適切なな立体構造の維持と、治療用組成物における該タンパク質鎖の使用とに対して適合的でなければならない。補助的な活性成分が前記組成物に取り込まれる場合もある。代表的な医薬品として許容可能なキャリアー及び希釈剤と、医薬品の剤形との記載は、Remington‘s Pharmaceutical Sciencesの本分野の標準的なテキストと、USP/NFとに見出される場合がある。
【0112】
特許請求の範囲に記載の組成物の投与量及び投与様式は、投与の特性、剤形及び径路と、当業者に既知の、又は、当業者が容易に識別可能な他の関連する特性とにしたがい調整されるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0113】
2.T細胞分極と肺の炎症との直接の増強剤としてのTNFR25のアゴニスト
TNFR25とそのリガンドTL1Aとが、T細胞分極と肺の炎症との直接の増強剤であることが発見された。肺疾患におけるTL1A及びTNFR25の重要な役割は、アゴニストのTNFR25遺伝子導入マウスにおいて観察される肺の炎症の肥大化により支持される。TNFR25の過剰発現は、活性化によるCD4細胞のTh2への強い偏りをもたらす。この偏りはすなわち、オボアルブミンモデルにおける肺の炎症の増大の原因のようである。
【0114】
本発明者らは、喘息マウスモデルにおけるTNFR25のシグナル伝達の阻害が、肺の炎症を抑制するTh2サイトカイン産生の低減をもたらすことを観察した。CD4細胞におけるTNFR25がTh1分極細胞及びTh2分極細胞の両方におけるIL−13の分泌をトリガリングし、肺の炎症を開始及び促進するNKT−細胞においてTNFR25のシグナルが必要とされる。TNFR25によりトリガリングされる慢性IL−13産生は、気道リモデリング及び繊維症につながる慢性喘息を含むがこれに限定されない肺の慢性炎症の後遺症の原因にもなる。養子移植実験における、ドミナントネガティブなTNFR25変異体によるNKT細胞内でのTNFR25のシグナルの阻害は、肺の炎症を抑制する。このようなTNFR25のシグナル伝達の阻害は、急性喘息及び慢性喘息と、他の肺疾患との治療において有用であろう。
【0115】
肺の炎症をもたらす一連の事象において、NKT細胞によるIL−13産生は初期のステップである(Akbari,O.et al.Nat Med 9,582−8(2003))。肺の炎症を誘発するためにNKT細胞により使用される主要な分子スイッチの1つはTNFR25であることを前記養子移植実験は示したので、喘息におけるNKT細胞の重要な役割は本研究により支持される。TNFR25は、PKCに仲介されるTCR活性化細胞でのTNFR25のスプライシングを通じて抗原特異的CD4記憶細胞により初期のエフェクター応答を変調する付加的な能力を有する。したがってTNFR25は、肺における記憶応答の開始に係る非常に初期段階で働く。したがって抗TL1A抗体か他の手順かによるTNFR25のシグナル伝達の阻害は、喘息性発作の原因であると考えられる肺の急性炎症を引き起こす事象のカスケードを阻害する。
【0116】
TNFR25の阻害が遺伝的に、及び、抗体阻害により野生型マウスで実現され、2種類の独立した方法が同様の結果を与えた。In vivoでのTNFR25のシグナルの阻害が、抗原に再刺激された気管支流入領域リンパ節によるIL−13、IL−5及びIL−4産生の減少と、肺の炎症の抑制とを引き起こす。重要なことに一次刺激されTh2分極したマウスの気道抗原負荷の段階における抗TL1A抗体の阻害が肺の炎症の抑制に有効であり、肺におけるエフェクター段階でのTNFR25の直接的な役割を示した。
【0117】
3.NKT細胞におけるTNFR25の構成的発現、及び、活性化T細胞における誘導性発現
TNFR25とその同種リガンドTL1Aの生物学的機能的を研究するために、ハムスター抗マウスモノクローナル抗体が標準的プロトコールにより作成された。フローサイトメトリーにより初代細胞における低レベルのTNFR25の発現を確実に検出するために、三層サンドイッチ分析法を開発することが必要であった。細胞を活性化せずともTNFR25は、ナイーブCD4T細胞においては低いレベルで、CD8T細胞においてもさらに低いレベルで検出されたが、B細胞においては検出されなかった(図1a)。加えてCD11c+細胞の亜集団がTNFR25を発現した。僅かな割合のCD3陰性NK11+細胞のみがTNFR25の発現を示したのに対して、NKT細胞は相対的に高いレベルのTNFR25を構成的に発現した(図1a)。胸腺ではシングル陽性のCD4細胞及びCD8細胞が抹消T細胞と同様のTNFR25を発現した。CD4、CD8に係るダブル陽性胸腺細胞及びダブル陰性胸腺細胞はTNFR25を発現しなかった(図1c)。
【0118】
抗CD3抗体及び抗CD28抗体での抹消T細胞の活性化によりCD4+細胞及びCD8+細胞の両方でTNFR25の発現は上向き調節された(図1b)。一方でB細胞のLPS活性化は、TNFR25の発現をもたらさなかった。マウスTNFR25mRNAはT細胞において構成的に発現されるが、ヒトTNFR25と同様にランダムにスプライシングされる(Screaton,G.R.et al.Proc Natl Acad Sci USA 94,4615−9.(1997)、図2)。活性化T細胞でのTNFR25タンパク質の発現の増大は、ランダムにスプライシングされたTNFR25のmRNA由来の全長TNFR25に係る活性化誘発性スプライシングと関連した。T細胞内でのTNFR25の活性化誘発性スプライシングは化学的阻害剤H7により阻害され、スプライシングにおけるPKCの役割を表示した(図2)。
【0119】
NKT細胞及び活性化T細胞でのTNFR25の優先的発現と、その活性化とは全長TNFR25のスプライシングを誘発し、表面発現における迅速な増大は免疫系におけるTNFR25の生物学的機能に係る問題を提起した。マウスにおけるTNFR25遺伝子の切断は、胸腺でのネガティブ選択における軽度の欠損以外にはTNFR25欠損についての明確な表現型を明らかにしなかった。したがってCD2プロモーター及びエンハンサーにより促進されるT細胞で発現されるTNFR25導入遺伝子の生物学的効果が分析された。
【0120】
全長TNFR25(図2におけるFL TNFR25)と、エキソン5及びエキソン6を欠くTNFR25のオルタナティブスプライシング産物(図2におけるΔ5,6 TNFR25)とが、遺伝子導入による発現のために使用された。Δ5,6 TNFR25は、第4のシステインリッチな細胞外ドメインの部分をエンコードするエキソン5及びエキソン6を欠く。しかしΔ5,6 TNFR25は膜に固定されており、FL TNFR25様の完全な細胞内シグナル伝達ドメインを有し、TL1Aとアゴニストの抗TNFR25抗体(4C12)とに結合する。加えてドミナントネガティブな変異体であり膜貫通ドメインの直ぐ後ろで切断されるDN TNFR25は、導入遺伝子として発現され、以下で説明される。
【0121】
4.TNFR25の遺伝子導入による過剰発現が、CD4細胞のTh2分極を促進し、AHRのオボアルブミンモデルにおいて肺の炎症の増大を仲介する。
各々のTNFR25導入遺伝子に対する4種類の独立した初代遺伝子(founder)が、取得及び分析された。初代遺伝子Δ5,6 TNFR25、FL TNFR25及びDN TNFR25の全てにおける、前記CD2プロモーター及びエンハンサーに支持される位置に無関係な導入遺伝子発現は、休止T細胞と、NKT細胞と、NK細胞、CD11c+細胞の亜集団とにおける高レベルの発現を明らかにした。B細胞は前記導入遺伝子を発現しなかった(図3a)。フローサイトメトリーによる抗体検出の信頼性は、形質移入された腫瘍細胞のウェスタンブロットにより確認され(図3b)、遺伝子導入脾細胞で同一のウェスタンブロットのバンドが検出されたが、内在の分子はウェスタンブロットによる検出のレベルに満たなかった。Δ5,6のスプライシング形態は、ウェスタンブロットにおいて前記抗体10D1により検出されず(図3b)、前記抗体がエキソン5又はエキソン6に結合を表示した。FL TNFR25の遺伝子導入による過剰発現は、遺伝子を導入しない同腹細胞と比較した一次及び二次リンパ器官におけるT細胞数の減少と関係がある(図3c)。細胞性に及ぼすΔ5,6導入遺伝子の効果は、胸腺では中程度であり、二次リンパ器官では顕著でなかった。遺伝子導入マウスにおけるT細胞数の減少は、同数の精製遺伝子導入CD4及びCD8細胞と遺伝子を導入しない同腹細胞とを比較すると、抗CD3抗体及び抗CD28抗体の刺激に応答する増殖の減少と同時に起こった(図3d)。増殖の減少は、24時間から72時間までの全ての時間において見られた。しかしホルボールエステルであるPMAとCa−イオノフォアであるイオノマイシンとでのTNFR25遺伝子導入CD4細胞又はTNFR25遺伝子導入CD8細胞の刺激は正常な増殖を回復させ、遺伝子導入細胞が固有の性質として増殖能力を欠損しているのではないことを示した。CD3/CD28活性化TNFR25遺伝子導入T細胞はCD25を正常に上向き調節したが、同腹の対照細胞と比較して約半分の量のIL−2しか産生しなかった(図4)。過剰量のIL−2の外からの添加は、増殖を回復させなかった(図3d)。TNFR25遺伝子導入T細胞は、アネキシンV染色により測定されるアポトーシスの増大を被らず(図4)、増殖性の欠陥は細胞死のためのTNFR25のシグナルのためではないことを示した。
【0122】
FL TNFR25及びΔ5,6 TNFR25を形質移入されたEL4細胞が、可溶性TL1Aか、膜結合性TL1A(EL4−TL1A)か、アゴニストの抗TNFR25抗体(4C12)かでトリガリングされるスプライシング変異体のシグナル伝達特性を比較するために使用された。3種類全てのリガンドが、EMSAにより検出される25分以内のNF−κB活性化を迅速に誘発した(図3e)。
【0123】
プレートに結合した抗CD3抗体と可溶性抗CD28抗体とによる一次活性化の後、FL TNFR25及びΔ5,6 TNFR25遺伝子導入細胞は、遺伝子を導入しない同腹細胞と比較してIL−4、IL−5、IL−13及びIL−10を含むTh2サイトカインの産生量を有意に増加させた(図3f)。FL TNFR25遺伝子導入CD4細胞が活性化されたときはIFN−γは減少したが、Δ5,6 TNFR25遺伝子導入細胞では減少せず、スプライシング変異体の機能における僅かな差異を示した。TNFR25遺伝子導入CD4細胞の増殖は減少したが、Th2サイトカイン産生の増大は活性化24時間以内で既に検出可能であり後日増加し続け、活性化の前にTh2の偏りが存在することを示した。
【0124】
次にFL TNFR25遺伝子導入CD4細胞のTh2への偏りが、Th1分極条件下で覆される場合があるかどうかについて決定された。Th中性条件下でTNFR25遺伝子導入CD4細胞は、Th2分極条件下での野生型CD4細胞と同程度の量のIL−4を産生した(図3g)。Th2分極条件下でのFL TNFR25遺伝子導入細胞のインキュベーションは、IL−4又はIL−13産生に対して付加的な影響を有さず、Th中性条件下での一次活性化の間に該細胞が既に最大限にTh2分極していることを示した。しかしFL TNFR25遺伝子導入CD4細胞は、IL−4に対する抗体を培養液に含めること、及び、外からIL−12を添加することにより、Th1に分極する場合がある。これらの条件下でFL TNFR25遺伝子導入細胞は、Th1分極野生型細胞よりも高いレベルのIFN−γを産生し(図3g)、該TNFR25導入遺伝子がTh1サイトカインを同時刺激する場合もあることを示した。Th1分極FL TNFR25遺伝子導入CD4細胞は、野生型Th1細胞と異なり、IL−13も産生したがIL−4は最小限の量しか産生しなかった。TNFR25の遺伝子導入による過剰発現は、自発的にTh2へ偏っているときにもなお、適当な分極条件下でTh1又はTh2のタイプのサイトカイン産生を同時刺激する場合がある。加えてTNFR25のシグナルは、Th1又はTh2分極条件下でIL−13産生を同時刺激する。
【0125】
免疫と抗体アイソタイプ産生の分析とにより、in vivoでのTNFR25遺伝子導入マウスの自発的なTh2への偏りが見出された。in vivo研究は、Δ5,6 TNFR25遺伝子導入マウスで実施された。Δ5,6 TNFR25は、NF−κB誘導(図3e)とアポトーシスの誘発とに関してはFL TNFR25と同じシグナル伝達特性を示し、同様のTh2に偏ったサイトカインプロファイルをもたらす。しかしFL遺伝子導入マウスと異なりΔ5,6遺伝子導入マウスは、リンパ節(図3c)及び脾臓において正常なCD4T細胞に係る細胞性を有し、したがってin vivo実験についてより正確にTNFR25機能を表現する場合がある。
【0126】
DNP−KLHで免疫されたTNFR25遺伝子導入マウスは、遺伝子を導入しない同腹細胞と比較して抗原特異的IgG1/IgG2a抗体の比率を増大させ、in vivoでのTh2型の抗体比率の増大を示した(図5a)。免疫しないときは、野生型マウス及び遺伝子導入マウスに係るIgG1及びIgG2aのレベルは同一であり、Th2への偏りを明らかにするためには活性化が必要であることの証拠を示した。
【0127】
IL−13は肺のアレルギー性炎症の状態に特徴的なサイトカインである(Elias,J. A.et al.Am J Respir Cell Mol Biol 28,401−4(2003))ので、TNFR25遺伝子導入CD4細胞のTh2への偏りとIL−13産生の増大とは、TNFR25の過剰発現が喘息に特徴的な肺のアレルギー性炎症を増大させやすくする場合があることを示唆した。この仮説が、マウスにおける実験的な肺の炎症の古典的なオボアルブミンモデルを使用して試験された。TNFR25遺伝子導入B6マウス及び野生型対照マウスが、0日目及び5日目にオボアルブミン及びミョウバンで腹腔内を一次刺激された。12日目に前記マウスは、噴霧剤化オボアルブミンで気道負荷され、1ないし3日後に分析された。TNFR25遺伝子導入マウスは、気管支肺胞洗浄液(BALF)中の好酸球数を劇的に増加させており(図5b)、血清中のオボアルブミン特異的IgEレベルの増大(図5d)と、気管支リンパ節細胞のオボアルブミン再刺激によるTh2サイトカイン産生の増大(図5e)とに関連した。IFN−γ産生は、野生型細胞と比較して遺伝子導入気管支リンパ節細胞で減少した。TNFR25遺伝子導入マウスの肺に係る組織病理学的分析は、好酸球による血管周囲性肺浸潤の異常な増大と、気管支の粘液産生の増大と、PASで染色された杯細胞の過剰形成(図5c)とを示したが、これらの結果はT細胞でのTNFR25の過剰発現による肺の炎症の悪化に矛盾しない。
【0128】
5.一次刺激されたマウスの気道負荷の間におけるTNFR25の遺伝的阻害又は抗体阻害は、肺の炎症を抑制する。
TNFR25のドミナントネガティブな変異体であるDN TNFR25が、気道負荷の間のTNFR25のシグナル伝達を阻害するために作成され、CD2プロモーター及びエンハンサーの存在下で導入遺伝子としてその構成体を発現した。前記DN TNFR25導入遺伝子は細胞内シグナル伝達ドメインの全体を欠くが、その膜貫通ドメイン及び細胞外ドメインにおいてはFL TNFR25と同一である。
【0129】
DN TNFR25導入遺伝子は、フローサイトメトリーにより決定されるアゴニストのTNFR25導入遺伝子として同一のレベルで発現された(図3a)。発現された分子の数に対する測定値として表面蛍光強度を使用して、内在のTNFR25に対して3倍ないし4倍モル過剰量のTNFR25導入遺伝子の発現量が決定された。DN TNFR25に係るこのレベルの過剰発現が、内在のTNFR25の活性を沈静化した。野生型CD4細胞及びDN遺伝子導入CD4細胞に係る抗CD3抗体での一次活性化が、Th1及びTh2サイトカインの両方の分泌を刺激する(図4、パネルd)。野生型細胞に係る抗CD3抗体での一次活性化の間におけるアゴニスト抗体(4C12)でのTNFR25のトリガリングがTh1及びTh2サイトカインの両方の産生を同時刺激するが、このTNFR25の同時刺激効果はDN TNFR25導入遺伝子により阻害され(図6a)、DN TNFR25導入遺伝子が内在のTNFR25遺伝子の機能を阻害することを示す。同様に4C12のアゴニスト効果は、DN TNFR25遺伝子導入CD4細胞では阻害された野生型CD4細胞の増殖を同時刺激し(図6b)、内在のTNFR25は沈静化されることを示す。重要なことにはCD4細胞におけるDN TNFR25の発現は、Th中性条件下で一次刺激された細胞の二次活性化による通常観察されるTh2サイトカイン産生の上向き調節を著しく減弱させ(図6c)、TNFR25のシグナルがTh2分極を強く促進する、又は、Th2分極に必要とされること、並びに、これらのシグナルがDN導入遺伝子により阻害されることを示した。さらに重要なことにはDN TNFR25遺伝子導入細胞は、IL−4と、IFN−γ及びIL−12に対する阻害抗体との添加により提供されるTh2分極条件下でさえもTh2分極する場合がなかった(図6d)。一方でDN TNFR25遺伝子導入CD4細胞のTh1分極は、非分極(Th中性、ThN)条件下でさえも影響を受けなかった。したがってTNFR25はCD4細胞の一次活性化のときにTh1及びTh2サイトカインの両方の産生を刺激するが、in vitroでのTh2分極を促進するためにはTNFR25のシグナルが必要なようである。Th1分極はTNFR25に依存しないが、Th1細胞内でのTNFR25のシグナルはIL−13産生を促進する(図3g)。DN TNFR25遺伝子導入マウスにおけるin vivoでのTNFR25のシグナルの消失は、DNP−KLHでのDN TNFR25遺伝子導入マウスの免疫後、野生型マウスで見出される通常のIgG1対IgG2a抗体の比率に影響を及ぼさない(図4)。
【0130】
次にDN TNFR25遺伝子導入マウスが、肺炎症モデルにおいて応答を変化させるかどうかについて決定された。気道負荷されたDN TNFR25遺伝子導入マウスは、組織病理学及びPAS染色により試験されたとき、野生型マウスと比較してBALF中における好酸球浸潤の有意な減少と、肺の炎症の消失と、血清中のIgE産生の減少とを示した(図6e−g)。オボアルブミンを気道負荷されたDN TNFR25遺伝子導入マウス由来の気管支流入領域リンパ節に係る再刺激は、Th2サイトカイン産生の減少と、正常なIFN−γ産生とを示した(図6h)。前記データは、肺の免疫応答においてTNFR25が重要な役割を果たすことを示唆する。
【0131】
野生型マウスにおけるTNFR25阻害の遺伝的データを有効にするために、マウスTL1Aに対するモノクローナル抗体が開発された。TNFR25及びTL1Aを形質移入された細胞(図7a、b)を使用して、TNFR25のシグナル伝達を抑制するTL1A阻害抗体が特定された。TL1Aを形質移入された細胞は、その表面にTL1Aを発現(図7c)し、他のTNFスーパーファミリーのメンバーと同様にTL1Aを上清中に分泌する。TL1Aを含む上清は、過去に報告された(Chinnaiyan,A.M.et al.Science 274,990−2.(1996);Kitson,J.et al.Nature 384,372−5.(1996);Screaton,G.R.et al.Proc Natl Acad Sci USA 94,4615−9.(1997);Bodmer,J.L.et al.Immunity 6,79−88.(1997);Marsters,S.A.et al.Curr Biol 6,1669−76.(1996);Tan,K.B.et al.Gene 204,35−46(1997))ようにアポトーシスを通じて、FL TNFR25又はΔ5,6 TNFR25を形質移入された腫瘍細胞からの51Crの迅速な放出を引き起こした(図7d)。抗TL1A抗体の1つであるL4G6はTL1Aに仲介されるTNFR25を形質移入された細胞の溶解を完全に阻害したが、他の複数の抗TL1A抗体は溶解阻害効果を有さないか、不完全な溶解阻害を仲介するにすぎなかった(図7d)。したがってL4G6抗体は、遺伝的に変更されていない野生型マウスにおけるTNFR25のシグナル伝達を阻害するために、TL1Aのin vivoでの阻害に係る使用のために選択された。マウスは通常のとおりミョウバン及びオボアルブミンで2度免疫された。気道負荷の1日前と気道負荷後の3日間とに、50μgのL4G6が腹腔内注射され、その後前記マウスは分析された(図7e)。対照マウスは、ハムスターのIgGを同量及び同スケジュールで受け入れた。噴霧負荷期間の間及び後にこのように投与されたL4G6は、in vitroでのオボアルブミンでの再負荷によるBALF中への好酸球の浸出を阻害し、過剰な粘液産生を阻害し、気管支リンパ節細胞のTh2サイトカイン産生を減少させた(図7e−g)。
【0132】
噴霧負荷の間の抗TL1A抗体による肺の炎症の抑制は、気道におけるTL1A発現の証拠である。中程度のレベルのTL1Aが、気道負荷後の気管支流入領域リンパ節におけるCD11c+細胞の亜集団で発現されるが気道負荷前には発現されないことが見出された(図7h)。気管支リンパ節における他の全ての細胞集団は、噴霧負荷の前後でTL1A陰性であった(図7i)。鼠径部のリンパ節は、オボアルブミンでの一次刺激又は気道負荷の前後のいずれかの時間で、CD11c+細胞か他のいずれかの細胞タイプかにおいてTL1Aを発現しなかった。しかしTL1A発現は、抗CD3抗体及び抗CD28抗体での活性化により、精製CD4+脾臓細胞又はリンパ節細胞と、精製CD8+脾臓細胞又はリンパ節細胞とにおいて24時間以内にin vitroで誘導される場合がある(図7j)。LPSにより活性化される増殖中のB細胞はTL1Aを発現しない(図7j)。
【0133】
6.DN TNFR25遺伝子導入NKT細胞は、抗原一次刺激及び噴霧負荷されたNKT欠損マウスにおいて肺の炎症を支持できない。
野生型NKT細胞のNKT欠損マウスへの養子移植がオボアルブミンモデルにおいて肺の炎症と気道過敏性とを回復させること、及び、NKT細胞によるIL−13産生が必要とされることが示されている(Akbari,O.et al.Nat Med 9,582−8(2003);Lisbonne,M.et al.J Immunol 171,1637−41(2003);Meyer,E.H.et al.Proc Natl Acad Sci USA 103,2782−7(2006))。NKT細胞は、喘息患者の病態生理学にも関与する(Sen,Y.et al.J Immunol 175,4914−26(2005).Akbari,O.et al.N Engl J Med 354,1117−29(2006))。NKT細胞で構成的に発現する(図1a)TNFR25が肺の炎症のトリガリングに関与するかどうかについて決定するために、野生型NKT細胞及びDN TNFR25遺伝子導入NKT細胞が、オボアルブミンで一次刺激されたNKT欠損マウス(Cui,J.et al.Science 278,1623−6(1997)、Jα18k.o.)に養子移植された(図8)。養子移植された野生型NKT細胞は気道抗原負荷による肺の炎症を回復させたが、同数のDN TNFR25遺伝子導入NKT細胞は肺の炎症を回復させることができなかった。前記データは、NKT細胞内でのTNFR25のシグナルが、感作されたマウスに係る気道抗原曝露の間の肺の炎症のトリガリングに重要であることを実証する。
【0134】
7.抗腫瘍免疫応答の直接の増強剤としてのTNFR25のアゴニスト
成熟樹状細胞は、腫瘍特異的ペプチドに対して特異的なT−細胞障害性細胞を効果的に一次刺激することを可能にする「交差提示」と呼ばれる重要なプロセスを実行する。腫瘍抗原は分解され、MHCクラスIタンパク質上で循環CD8T細胞に対して提示される。
【0135】
TNFR25のアゴニストが有効な腫瘍ワクチンBRMsであることを実証するために、マウスは、EG7腫瘍細胞及びOT−I細胞といっしょに注射された。OT−I細胞はその後、クローン性増殖について観察された。EG7は、ニワトリの卵白の主要なタンパク質構成要素であるオボアルブミンを発現するために遺伝的に変更されたEL4マウス腹水リンパ腫リンパ芽球細胞である。マウスはEG7細胞を接種され、オボアルブミン特異的T細胞受容体遺伝子導入細胞(OT−I)の養子移植を受け入れた。OT−I細胞は、前記腫瘍特異的オボアルブミン抗原に応答することによりin vivoで指標細胞として働く。理論上はマウスの樹状細胞は、前記オボアルブミン特異的(OT−I)T細胞に腫瘍特異的オボアルブミンを提示し、活性化する。しかしこれらの環境下では、また、ヒト腫瘍ワクチン試験で頻繁に観察されるように、OT−I細胞は前記EG7腫瘍細胞と活発に反応する。
【0136】
対照的に、分泌型熱ショックタンパク質gp96(gp−96−Ig)をエンコードする構成体のEG7細胞への同時形質移入は、gp96Igを分泌し代理抗原(surrogate antigen)としてオボアルブミンを含む腫瘍を提供した。前記腫瘍特異的オボアルブミンと組合せた分泌シャペロン熱ショックタンパク質へのCD8 OT−I細胞の曝露は、一次注射と、分泌されたgp96Igによる1回の追加免疫との後で、全CD8細胞の0.5%から50%超までの初期出現頻度でのOT−Iの増殖をもたらした。したがってインタクトなオボアルブミンタンパク質によるクロスプライミングと比較して、gp96−Ig−OVAによるCD8細胞のクロスプライミングは、10,000ないし1,000,000倍増強される。実施例19と図10及び図12とを参照せよ。Am J Reprod Immunol.2002 October;48(4):220−5も参照せよ。
【0137】
OT−I CD8細胞がTNFR25アゴニスト抗体4C12の存在下でgp96−Ig−OVAによりクロスプライミングされるとき、OT−I CD8増殖は、対照抗体と比較して付加的に10倍に増大した。しかしOT−I CD8細胞がTL1A阻害抗体L4G6の存在下でgp96−Ig−OVAによりクロスプライミングされるとき、OT−I CD8増殖は対照抗体と比較して10分の1に減少した。図11を参照せよ。
【0138】
それにより、TNFR25のアンタゴニストがT細胞活性化を阻害又は抑制するのに対して、TNFR25のアゴニストはT細胞の活性化と、腫瘍特異的抗原への細胞性免疫応答とを高めるので、腫瘍ワクチンに対する有効な生物学的応答調節剤である。したがって本発明の別の局面は、腫瘍ワクチンの有効性を増大させる方法及び治療薬に関する。
【0139】
腫瘍ワクチンは、癌と戦うために身体の天然の免疫系の要素を使用することを試みる。腫瘍ワクチンは、1種類又は2種類以上の腫瘍特異的抗原を含み、また、アジュバント剤及び生物学的応答調節剤を含む場合がある。腫瘍特異的抗原は、腫瘍細胞内又は腫瘍細胞上における発現に実質的に限定されるポリペプチドであって、前記腫瘍細胞を標的とすることが意図される免疫応答を刺激するために使用される場合があるポリペプチドである。さまざまなタイプの癌を治療するためにさまざまなタイプのワクチンが使用される。抗原組成物がワクチンとして有用であるために、抗原組成物は細胞又は組織中で抗原に対する免疫応答を誘発しなければならない。本明細書で用いられるところの「抗原組成物」は、(例えばペプチド又はポリペプチドのような)抗原か、(例えば抗原発現ベクターのような)抗原をエンコードする核酸か、抗原を発現又は提示する細胞かを含む場合がある。その全体が引用により本明細書に取り込まれる米国特許出願公開公報第2003/0185840号明細書を参照せよ。
【0140】
T細胞免疫を上向き調節することか、サプレッサー細胞の活性を下向き調節することかが示されている生物学的応答調節剤(BRM)。かかるBRMsは、シメチジン(CIM、1200mg/d、Smith/Kline、PA)か、低用量シクロホスファミド(CYP、300mg/m2、Johnson/Mead、NJ)か、g−インターフェロン、IL−2又はIL−12のようなサイトカインか、B−7のような免疫ヘルパー機能に関与するタンパク質をエンコードする遺伝子かを含むがこれらに限定されない。
【0141】
本発明のこの局面のある実施態様では、前記腫瘍ワクチン組成物は、腫瘍抗原組成物とTNFR25のアゴニストとを含む。別の実施態様では前記TNFR25のアゴニストは、前記抗体4C12である。好ましい実施態様ではTNFR25のアゴニストは、生物学的応答調節剤として腫瘍ワクチンに添加される。さらにより好ましくは前記TNFR25のアゴニストは、前記抗体4C12である。別の実施態様では前記腫瘍ワクチンは、アジュバント剤を含む。
【0142】
腫瘍ワクチンアジュバント剤は、IL−1と、IL−2と、IL−4と、IL−7と、IL−12と、γ−インターフェロンと、GMCSPと、BCGと、水酸化アルミニウムと、thur−MDP及びnor−MDPのようなMDP化合物と、CGP(MTP−PE)と、脂質Aと、モノホスホリル脂質A(MPL)とを含む場合がある。2%スクアレン/Tween80エマルション中の、MPL、トレハロースジマイコレート(trehalose dimycolate、TDM)及び細胞壁骨格(CWS)という細菌から抽出された3種類の成分を含むRIBIも意図される。MHC抗原組成物が使用される場合すらある。代表的にはよく好まれるアジュバント剤は、フロイント完全アジュバント(殺菌されたMycobacterium tuberculosisを含む免疫応答の非特異的刺激剤)、フロイント不完全アジュバント及び水酸化アルミニウムアジュバントを含む。
【0143】
活性成分としてペプチド配列を含むワクチンの調製物は概して当業者によく理解され、その全てが引用により本明細書に取り込まれる米国特許公報第4,608,251号、第4,601,903号、第4,599,231号、第4,599,230号、第4,596,792号及び第4,578,770号明細書により例示される。典型的にはかかるワクチンは注射可能なように調製される。液体溶液又は懸濁液か、注射前に液体中の溶液又は懸濁液にするのに適した固体形態かが調製される場合もある。前記調製物は乳化される場合もある。前記活性免疫原性成分は、医薬品として許容可能であり該活性成分と適合する賦形剤と混合されることが多い。適切な賦形剤は例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール又はこれらに類するものか、それらの組合せかである。加えて、必要に応じて前記ワクチンは、湿潤剤又は乳化剤か、pH緩衝剤か、該ワクチンの有効性を増強するアジュバント剤かのような補助剤かを少量含む場合がある。
【0144】
8.生来の抗腫瘍免疫応答の間接的な増強剤としてのTNFR25の免疫毒素
多くの疾病の治療に及ぼすその莫大なインパクトの可能性のために、多くの科学者及び企業がCD4+/CD25+制御性T細胞(Tregs)について研究する。多くの人々が同じ環境アレルゲンに曝され、アレルゲンへの感作が日常的であるのに、ごく僅かの割合の人々だけが喘息のようなアレルギー性疾患を発症する。この理由は現在は明らかではないが、アレルゲンに曝された健康な個体における気道炎症を抑制する効率的な制御性Tregsの存在に関連する場合がある。それによりTregsは、自己及び非自己に対する抹消寛容の維持に寄与することが知られる。しかしTregsは、癌と戦うための身体能力を妨害することも実証されている。そのような場合にはTregsは前記身体の腫瘍殺傷免疫細胞を妨害する。それによりTregsは、献身的なサプレッサー細胞として機能し、例えば頭頸部扁平上皮癌のような腫瘍が免疫系により認識されるのを妨げるのに一定の役割を果たす場合がある。Br J Cancer,2005 Mar.14;92(5):913−20を参照せよ。
【0145】
本発明者らは、Tregsが活性化されることを示唆する特性をTregsが有するのを観察した。他のTNF受容体がTregsにおいて発現されることが報告されている。GITRは活性化Tregsにより発現される。その結合がTregsの阻害活性を消失させることが見出されている(Nocentini et al.,Eur J.Immunol.2005 April;35(4):1016−22)。TNFR25は、自身をTregs細胞の多用途な調節因子にする多くの特性を有する。a)TNFR25タンパク質の発現は、PKC誘発性mRNAスプライシングにより迅速に上向き調節される。b)おとり受容体とドミナントネガティブ形態とを含む複数の機能的スプライシング種が調節に係る微調整を可能にする。c)TL1Aの発現が、クローン病において高度に調節されるようである。加えて活性化リンパ球におけるTL1Aの発現は、リンパ球密度の検知を可能にする。結局それらは、TNFR25のシグナルによりトリガリングされるサイトカインであるIL−10及びIL−13を分泌することにより、少なくとも部分的にその調節機能を発揮する。本発明者らは、FoxP3を発現するCD4+/CD25+Tregs培養細胞が異常に高いレベルのTNFR25を発現することを最初に指摘した者である。それにより本発明者らは、TNFR25がTregの機能を変調させること、及び、TNFR25がTregsをin vivoで除去するための分子タグとして使用される場合があることを結論した。実施例20を参照せよ。さらにTNFR25のアゴニストはTreg阻害を消失させる。図15を参照せよ。
【0146】
したがって本発明の別の局面は、患者からCD4+/CD25+制御性T細胞(Tregs)を除去することにより抗癌療法の効力を増大させるのに有用な方法及び治療薬に関する。本発明のこの局面のある実施態様ではTregsを除去するために免疫毒素が使用される。この実施態様では前記免疫毒素はTNFR25に特異的な抗原結合部分を有し、毒性物質に結合させられる。代わりの実施態様では前記患者は、毒性物質に結合した可溶性TL1Aを提供される。さらに別の実施態様は、化学療法剤及びTNFR25特異的免疫毒素を有する化学療法組成物に関する。さらに別の実施態様は、化学療法剤と毒性物質に結合したTL1Aとを有する化学療法組成物に関する。
【0147】
本発明の別の局面は、CD4+/CD25+制御性T細胞(Tregs)により仲介される阻害を低減するTNFR25のアゴニストを患者に提供することにより抗癌療法の効力を増大させるのに有用な方法及び治療薬に関する。
【0148】
9.抗炎症剤としてのTNFR25のアゴニスト
細胞内デスドメインを欠くTNFR25のドミナントネガティブ形態(DN−TNFR25)と、第4の細胞外システインリッチドメインをエンコードするエキソン5及びエキソン6を欠くTNFR25のオルタナティブスプライシング形態(Δ5,6−TNFR25)とを使用して、本発明者らは、粘膜の傷害後に恒常性バランスを回復させるためにTNFR25の機能が必要とされることを見出した。具体的には本発明者らは、マウスにおいてCD2プロモーターの存在下で、TNFR25のドミナントネガティブ形態(DN−TNFR25)を遺伝子導入により発現させた。前記マウスは、ヒトクローン病についてのモデルとしての大腸炎を誘発させるために、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を与えられた。野生型C57Bl/6マウスは、2%DSSを含む水の飲用の5日後に大腸炎及び下痢を発症し、体重が減少した。しかし通常の水に交換すると1週間以内に野生型マウスは回復し体重を回復したのに対して、DN TNFR25導入遺伝子発現マウスは野生型マウスと同様に疾病を発症したが下痢はより重篤なようであった。加えて通常の水への交換はDN TNFR25導入遺伝子発現マウスの回復をもたらさなかった。それどころか全てのDN TNFR25導入遺伝子発現マウスは体重を減少させ続け、2週間以内に死亡した。(全長TNFR25か、スプライシング形態であるΔ5,6 TNFR25かのような)TNFR25の機能的な導入遺伝子を発現するマウスは、野生型マウスと同様に回復した。実施例21及び22と、図14とを参照せよ。
【0149】
クローン病の現在の治療は、抗炎症剤、免疫抑制剤及びTNF阻害剤を使用する。これらの全ては対症的である。TNFR25のシグナル伝達を刺激することは、病原性連鎖の事象における1つの段階を動かす。活性化TNFR25は、恒常性の回復をもたらすTGF−β産生を次々と刺激するIL−10及びIL−13の産生を刺激する。かかる治療は治癒的である、又は、治癒に向わせる。
【0150】
したがって本発明の別の局面は、TNFR25のアゴニストの治療量を患者に投与することにより患者の炎症性腸疾患を治療する方法に関する。別の実施態様は、腸内の粘膜領域におけるIL−10レベルを上昇させることにより患者の炎症性腸疾患を治療する方法に関する。別の実施態様では前記TNFR25のアゴニストは、抗体4C12である。さらなる実施態様では前記TNFR25のアゴニストは、TL1Aの可溶性形態である。好ましい実施態様では炎症性腸疾患はクローン病である。
【0151】
TNFR25のアゴニストの抗炎症活性を考慮すると、炎症の低減を必要とする患者に方法及び治療薬を提供することは本発明の別の局面である。ある実施態様では患者は、炎症を減少させ治癒を促進するために、TNFR25のアゴニストを含む組成物を提供される。ある実施態様では患者は、TNFR25のアゴニスト4C12を含む組成物を提供される。かかる実施態様は、(例えばアテローム性動脈硬化症のような)循環器系疾患と、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症(MS)、(特にI型糖尿病のような)糖尿病、強直性脊椎炎、(特にリウマチ様関節炎のような)関節炎、喘息及びアレルギーを含む自己免疫疾患と、骨吸収疾患と、網膜症を含む眼科疾患と、繊維症とを含む、細胞レベルでの慢性炎症反応に仲介される疾患の症状を軽減するのに有用である。
【0152】
10.免疫抑制剤としてのTNFR25のアンタゴニスト
現在では多くの臓器及び組織が、あるヒトから別のヒトへごく普通に移植される。ドナーとレシピエントとが一卵性の「同一な」双子であるまれな場合を除いて、かかる移植は同種移植と呼ばれる。組織のレシピエントは全ての非自己タンパク質に対して強力な液性及び細胞性免疫反応を開始するため、ある個体から別の個体への組織の移植についての組織の適合は重要である。組織適合検査は、ドナー及びレシピエントの細胞の両方についてのMHC抗原を特定するステップと、レシピエントのMHC対立遺伝子と同一なMHC対立遺伝子をできる限り多く有するドナーの細胞を使用するステップとを含む。(特にHLA−Bのような)MHCクラスI対立遺伝子とクラスII HLA−DR対立遺伝子とを適合させることは、移植の成功のためには、他のMHC抗原を適合させることよりも重要である。またMHCを適合させることは、マイナー組織適合抗原を適合させることよりも重要である。
【0153】
HLA適合は移植片の生残性を向上させるが、(一卵性双生児を除く)MHCが同一の兄弟においてさえも拒絶反応を防止しない。同種MHCはCD8T細胞(クラスI)又はCD4T細胞(クラスII)により認識される。一定の同種MHCは自己のMHC+外来ペプチドに類似するために、10%までのT細胞が一定の同種MHCを認識する場合がある。
【0154】
移植の成功の増加は、技術的専門知識の増加と、HLA適合の実施と臓器送達時間の最小化とのための移植センターの利用可能性の増大と、アロ抗原に対するT細胞活性化を阻害する(シクロスポリン及びタクロリムスのような)免疫抑制剤の利用可能性の増大とのためである。さらなる問題は、臓器不足と、移植後の臓器を破壊する現存する疾病(糖尿病及びHBV感染は2つの例である。)の能力と、免疫抑制剤の副作用と、高い費用とである。
【0155】
T細胞活性化を阻害する現在の免疫抑制剤に関連する主要な副作用と、TL1A阻害抗体L4G6のようなTNFR25のアンタゴニストが同種CD8T細胞のクローン性増殖の有効な阻害剤となるという観察結果(図11、実施例19を参照せよ。)とを考慮すると、本発明の別の局面は、組織の拒絶反応を防止し組織移植を円滑化するためのTNFR25のアンタゴニストの使用を含む。ある実施態様ではTNFR25のアンタゴニストは、アロ抗原特異的T細胞受容体(TCRs)を有するCD8T細胞のクローン性増殖を抑制するために、また、TNFR25によるTregsの抑制を取り除くために、移植片のレシピエントに提供される。別の実施態様ではTNFR25のアンタゴニストは、免疫抑制剤と組み合わせて移植片のレシピエントに提供される。
【実施例1】
【0156】
培地及び試薬
細胞は、10%の熱不活性化FBS(Invitrogen)と、10μg/mLのゲンタマイシン(Invitrogen)と、50μMのβ−メルカプトエタノール(Bio−Rad)とを添加したIscove’s Modified Dulbecco’s Minimal Essential Medium(Invitrogen)中で培養された。モノクローナル抗マウスCD3抗体及び抗ヒトCD3抗体は、それぞれ2C11株細胞及びOKT3株細胞(ATCC、Manassas、Va.)の培養上清から精製された。モノクローナル抗マウスCD28抗体及び抗ヒトCD28抗体は、eBioscience(San Diego、Calif.)から購入された。ConA、PHA及びLPSは、Sigma(St.Louis、Mo.)から購入された。組換えマウスIL−2は、BioSource International(Camarillo、Calif.)から購入された。PMA,イオノマイシン、H7及びシクロヘキシミドはCalbiochem (San Diego、Calif.)から購入された。
【0157】
FITC−CD4、Cychrome−CD4、PE−CD8a、Cychrome−CD8a、FITC−B220、PE−B220、FITC−CD25、PE−CD11c、PEDX5、FITC−CD3、PE−NK1.1、PE−アネキシンV及び7−AADを含む直接結合型のモノクローナル抗体はBD/PharMingen(San Diego、Calif.)から購入された。ハムスターIgG対照抗体は、eBioscienceから購入された。
【実施例2】
【0158】
mTNFR25及びmTL1Aに対するモノクローナル抗体の作成
アルメニアハムスターが、フロイントアジュバント中の50μgのmTNFR25−Ig又はmTL1A−MBP(マルトース結合タンパク質)で、隔週で(biweekly)3回腹腔内免疫された。融合の3日前にハムスターは、50μgのそれぞれのタンパク質で、静脈内に追加免疫された。ハムスターの脾細胞がマウス骨髄腫SP20細胞とPEGで融合され、その後ClonaCell−HY kit(StemCell Technologies Inc.、BC、Canada)を使用して2週間メチルセルロース培地中でプレート培養された。1千個のコロニーがピックアップされ、免疫用の融合タンパク質か、対照タンパク質−Ig融合タンパク質かでコーティングされたプレート中でELISAにより分析された。陽性クローン由来の上清が、フローサイトメトリー及びウェスタンブロッティングにより形質移入された細胞におけるmTNFR25アイソフォームを検出する能力について試験された。抗体はプロテインGカラム上のNutridoma−SP(Roche、Indianapolis、Ind.)上清から精製され、PBS中で透析され、濾過滅菌された。
【実施例3】
【0159】
mTNFR25及びmTL1Aの発現についてのフローサイトメトリー分析
単一細胞懸濁液が、個別の実験において表示されるリンパ器官から調製された。染色の前に細胞は、FcRsへの非特異的結合を阻害するために、精製抗マウスCD16/CD32(Fc−γIII/II受容体;BD)と、精製ヒトIgG(Jackson ImmunoResearch、West Grove、Pa.)とで処理された。細胞は、アルメニアハムスター抗マウスTNFR25抗体又は抗マウスTL1A抗体で30分間、4°Cで染色された。細胞はFACS緩衝液(0.5%のBSAと2mMのEDTAとを含むPBS)で洗浄され、その後ビオチン標識ヤギ抗アルメニアハムスターIgG(Jackson ImmunoResearch)で30分間、4°Cで染色された。細胞は洗浄され、その後ストレプトアビジン−PE又はストレプトアビジン−Cychrome(BD)で30分間、4°Cで染色された。細胞は洗浄され、その後相異なる細胞集団について直接結合型の細胞表面マーカーで染色された。試料は、Becton Dickinson FACS LSR instrumentとCELLQuest.TM.softwareとを使用して分析された。
【実施例4】
【0160】
RT−PCR
mTNFR25のスプライシング形態の同定。メッセンジャーRNAはMicro Fast−Track kit(Invitrogen、Carlsbad、Calif.)でマウス株細胞又は組織から抽出され、cDNAはSuperscript II kit(Invitrogen)を使用して逆転写された。RT−PCR産物は、TOPO cloning kit(Invitrogen)を使用してPCR IIベクターにサブクローニングされ、DNAシーケンシングによりmTNFR25のスプライシング形態として確認された。マウスTNFR25のスプライシング分析のために、上流プライマーであるエキソン2(CAG TGA GTC CCA GAA GAG GT、配列番号8)と、下流プライマーであるエキソン7(GGA TAG CCC CAA AAA GGA AC、配列番号9)と、上流プライマーであるエキソン7(TCC TTT TTG GGG CTA TCC TG、配列番号10)と、下流プライマーであるエキソン10(GGT ATT TCT CCA TGA CGC TT、配列番号11)とのようなプライマーが使用された。
【0161】
マウスではさまざまなスプライシング形態のPCR産物がアガロースゲル上で識別し難かったがヒトでのスプライシング形態と類似しているようであったため、ヒトTNFR25の活性化誘発性オルタナティブスプライシングが分析された。上流プライマーであるエキソン4(TTC ACC CTT CTA CTG CCA AC、配列番号12)と、下流プライマーであるエキソン7(TAA CCA GGG GCT TGT GAG GC、配列番号13)とのようなPCRプライマーが使用された。ヒト抹消血単核細胞が、Ficoll−Hypaque密度勾配遠心分離により、健康なドナーから単離された。1試料当たり5百万個の細胞が、PHA(5μg/mL)か、固定化抗CD3抗体(OKT3、5μg/mL)及び抗CD28抗体(1μg/mL)か、PMA(10ng/mL)及びイオノマイシン(400ng/mL)かで活性化された。前記細胞は表示された時間で回収され、mRNAが抽出され前記Invitrogenのキットを使用してcDNAに返還された。ヒトβ−アクチンが内部標準として使用された。PCR産物の定量は、Molecular Analyst software(BioRad)を使用して実施された。
【実施例5】
【0162】
遺伝子導入マウスの作成
マウスTNFR25構成体が、(NIHのA.Singer博士から供与を受けた)ヒトCD2プロモーター及び局在制御領域の存在下で、制限エンドヌクレアーゼ部位EcoRI及びSalIを使用してクローニングされた。3種類のmTNFR25構成体が、校正酵素を使用するPCRにより作成された。前記構成体は、マウスTNFR25の全長分子(FL TNFR25)と、第5及び第6のエキソンを欠くTNFR25のスプライシング変異体(Δ5,6 TNFR25)と、膜貫通ドメインの終点で終結し細胞内ドメイン全体を欠くTNFR25のドミナントネガティブ形態(1−234に示される(as 1−234)DN TNFR25)とである。前記PCR産物の配列はシーケンシングにより確認された。受精卵へのDNAの微量注入が、マイアミ大学医学部の遺伝子導入設備により実施された。有望な初代遺伝子が、尾部バイオプシー(tail biopsies)由来のDNAのPCRによりスクリーニングされた。前記プライマー対がクローニング部位の上流及び下流に位置づけられたので、全てのmTNFR25導入遺伝子に対して同じプライマー対が使用された。前記上流プライマーは5’CGC TCT TGC TCT CTG TGT ATG 3’(配列番号14)であり、前記下流プライマーは5’CTG CCA GCC CTC TTC CAT C 3’(配列番号15)である。遺伝子導入マウスは、半接合性遺伝子導入マウスを野生型C57BL/6J(Jackson Laboratories、Bar Harbor、Me.)と順次交配させることにより、C57BL/6Jバックグラウンドを有する状態まで繁殖させられた。全てのマウスは6−12週齢で使用され、病原体のいない施設で維持された。マイアミ大学動物管理使用委員会が、全ての動物使用手順を承認した。
【実施例6】
【0163】
NFκB活性化のための核抽出物調製及び電気泳動移動度シフト解析
107個のΔ5,6 TNFR25 EL4細胞又はFL TNFR25 EL4細胞が、図の説明文に表示されたように可溶性又は膜結合性TL1Aか、TNFR25のアゴニスト抗体4C12かで処理され、その後800g、5分間の遠心分離により収集された。核抽出物はミニプレパレーションプロトコールを使用して単離され、Harhaj,E.W.et al.Virology 333,145−58(2005)で説明されるEMSAに供された。核抽出物(6μg)は32P標識高親和性κBプローブといっしょに室温で20分間インキュベーションされ、その後ネイティブの5%のポリアクリルアミドゲル上で前記DNA−複合体が分離された。
【実施例7】
【0164】
T細胞増殖アッセイ
脾細胞は、96ウェルの平底プレートに、1ウェル当たり1x105個の細胞数かつ三重で(in triplicate)播かれた。細胞は、可溶性抗CD28抗体(1μg/mL)といっしょに又は単体で使用する固定化抗CD3抗体(2μg/mL)か、ConA(5μg/mL)か、PMA(1μg/mL)及びイオノマイシン(400ng/mL)かで活性化された。T細胞増殖に対しては、1ウェル当たり1x105個の細胞数の精製CD4T細胞か、1ウェル当たり5x104個の細胞数の精製CD8T細胞かが、コーティングされた抗CD3抗体(2μg/mL)と可溶性抗CD28抗体(1μg/mL)とで刺激された。組換えmIL−2が、表示される実験において1000U/mLで前記培養液に添加された。細胞は72時間培養され、培養の最後の6時間は1ウェル当たり1μCiの3H−チミジン(Perkin Elmer,Boston,Mass.)といっしょに振とうされ、チミジンの取り込みがシンチレーションカウンターを使用して定量された。
【0165】
マウスCD4T細胞又はCD8T細胞は、製造業者のプロトコールに従うSpinSep kit(StemCell Technology Inc.)を使用するネガティブ選択により脾細胞及び/又はリンパ節から精製された。前記純度はFACS分析により検査され、常に約90−96%であった。
【実施例8】
【0166】
DNP−KLHでのマウスの免疫、抗体アイソタイプ決定、サイトカインELISA
成体(6−10週齢)の遺伝子導入マウス及び野生型マウスが、100μgのDNP結合型スカシ貝ヘモシアニン(DNP−KLH、CalBiochem)で腹腔内免疫された。免疫の1週間後及び3週間後にマウスは採血され、製造業者のプロトコール(BD)に従うELISAによる抗DNP特異的IgG1、IgE及びIgG2a抗体の分析のために、血清が分離された。個々のマウス由来の血清は、0.8μg/mLのDNP−アルブミン(DNP−BSA、CalBiochem)でコーティングされた96ウェルプレートに吸収され、結合した抗体のアイソタイプがELISAにより決定された。
【0167】
細胞培養上清におけるサイトカイン産生を試験するために、製造業者の説明書によるサンドイッチELISA法が実施された。BDから入手された抗体の対が、IL−2、IFN−γ及びIL−4の分析のために使用された。IL−13に係るELISAのための試薬はR&D Systems(Minneapolis、Minn.)から購入され、IL−5及びIL−10に係るELISAのための試薬はeBioscienceから購入された。
【実施例9】
【0168】
CD4T細胞のTh1細胞又はTh2細胞へのin vitroでの分極
CD4T細胞は、上述のネガティブ選択により精製された。CD4T細胞は、Th1分化についてはIL−12(10ng/mL)及び抗mIL−4抗体(20μg/mL)の存在下で、Th2分化についてはIL−4(10ng/mL)、抗mIFN−γ抗体(10μg/mL)及び抗mIL−12抗体(10μg/mL)の存在下で、又は、単体で使用する固定化抗mCD3抗体(2μg/mL)及び可溶性抗mCD28抗体(1μg/mL)で7日間活性化された。前記細胞は回収され、洗浄され、1ウェル当たり1x105個の細胞数となるように再びプレートに播かれ、固定化抗CD3抗体で再刺激された。24時間後前記上清は回収され、ELISAによりサイトカイン産生について評価された。
【実施例10】
【0169】
アレルギー性喘息のマウスモデルに対する免疫プロトコール
上述のように作成され、C57BL/6Jのバックグラウンドを有する状態まで少なくとも7世代にわたり戻し交配された(配列番号16に係るヌクレオチド配列によりエンコードされる)DN TNFR25遺伝子導入マウスと、Δ5,6 TNFR25遺伝子導入マウスと、FL TNFR25遺伝子導入マウスとは、National Cancer Institution(Frederick、Md.)から購入された野生型C57BL/6Jマウスと比較された。マウスは0日目に、200μLのPBS中における6.6mgの硫酸カリウムアルミニウム(ミョウバン、Sigma)に吸収された66μgのオボアルブミン(結晶化ニワトリ卵白アルブミン、grade V、Sigma)の腹腔内注射により感作された。5日目にマウスは、ミョウバン中の同用量のオボアルブミンで腹腔内に追加免疫された。12日目にマウスは、Ultrasonic Nebulizer(MABIS Healthcare Inc.、Lake Forest、IL.)を使用してPBS中の0.5%のオボアルブミンで、1時間噴霧負荷された。マウスは、前記単回噴霧曝露の3日後に肺のアレルギー性炎症について評価された。マウスはCO2の吸入により屠殺された。気管のカニューレ挿入後、肺は1mLのPBSで4回洗浄された。気管支肺胞洗浄液から回収された細胞は計数され、(スライド1枚当たり50,000個以下の細胞数の)サイトスピン標本として使用された。マクロファージ、好酸球、リンパ球及び好中球についての細胞数差を決定するために、Wright−Giemsa stain(Sigma)で染色された各々のサイトスピンスライドについて、>200個の細胞が計数された。
【実施例11】
【0170】
肺の組織学的検査
肺は、前記気管支洗浄手順の後にマウスから除去され、10%中性緩衝ホルマリン中で固定された。試料は、マイアミ大学医学部Sylvester Cancer CenterのHistopathology Coreへ提出され、包埋され、切断され、ヘマトキシリン及びエオシンで染色された。切片は、粘液産生を決定するために過ヨウ素酸シッフ試薬(PAS)でも染色された。
【実施例12】
【0171】
血清総IgE及びオボアルブミン特異的IgについてのELISA
マウスは感作前(0日目)と、噴霧負荷の3日後(15日目)と、幾つかの実験では噴霧負荷の1日前(11日目)とに採血された。前記総IgEレベルは製造業者のプロトコール(BD)に従うELISAにより定量された。オボアルブミン特異的IgEは、最初にプレートをPBS中の0.01%のOVAでコーティングすること、その後希釈された血清試料を装荷すること、及び、その後ビオチン標識抗IgE2次抗体(BD)を装荷することによるサンドイッチELISA法で決定された。
【実施例13】
【0172】
気管支リンパ節細胞のin vitroでの再刺激、及び、サイトカイン産生
噴霧負荷の1日後又は3日後に気管支リンパ節は回収され、単一細胞懸濁液が調製された。細胞は1ウェル当たり1x106個の細胞数となるように丸底96ウェルプレートに播かれ、100μg/mLのオボアルブミンといっしょに4日間培養された。その後上清が、上述のようにサイトカインELISA分析のために収集された。
【実施例14】
【0173】
細胞障害性アッセイ
TL1A形質移入P815細胞から回収され段階希釈された可溶性mTL1A上清が、51Cr標識TNFR25形質移入P815標的細胞に添加された。TL1A阻害活性について試験するために、さまざまな抗TL1Aモノクローナル抗体が前記培養液中に添加され、4時間後に三重の試料中のCr放出が決定された。自発的放出が、51Cr標識標的細胞のみを含むウェルから算出された。100%の放出(陽性対照)は、51Cr標識標的細胞と1%のSDSとを含むウェルから算出された。細胞障害性活性の百分率は、(試料の読みの平均値 − 自発的放出の読みの平均値)/陽性対照の読みの平均値 として算出された。同様のデータがEL−4形質移入体でも取得された。
【実施例15】
【0174】
アンタゴニストの抗mTL1A抗体による肺の炎症の抑制
マウスは、0日目及び5日目にミョウバン中のオボアルブミンで腹腔内感作され、その後12日目にPBS中の0.5%のオボアルブミンで1時間噴霧負荷された。マウスは、L4G6か、当量の対照ハムスターIgG(Jackson Immuno Research)かを、11日目から14日目までの各日に、マウス1匹当たり50μgの腹腔内注射により与えられた。肺のアレルギー性炎症は15日目に評価された。
【実施例16】
【0175】
NKT細胞の養子移植
Jα18k.o.マウス(Cui,J.et al.Science 278,1623−6(1997))は、M.Taniguchi(Ciba University、Japan)から親切な許可を得てMichael Lotze(U.Pittsburgh)から供与を受けたものである。野生型マウス及びDN TNFR25遺伝子導入マウス由来のNKT細胞が、製造業者のプロトコールに従うEasySep mouse Pan NK Positive Selection Kit(StemCell Technologies、Vancouver、Canada)を使用するポジティブ選択により10匹のマウス由来のプールされた脾臓細胞から単離された。
【実施例17】
【0176】
統計解析
両側スチューデントt検定を使用する統計解析は、GraphPad Prism Software(San Diego、Calif.)により実施された。p<0.05は有意であると考えられる。文中のデータは平均値±SEMとして表される。
【実施例18】
【0177】
DR3及びTL1A抗体の作成
DR3−Ig融合タンパク質が作成され、精製され、ハムスターを免疫するために使用された。ハイブリドーマ上清が取得され、スクリーニング剤としてDR3−Ig融合タンパク質を使用するELISAによりスクリーニングされた。前記ハイブリドーマの性質は、DR3を形質移入された腫瘍細胞のフローサイトメトリーと、ウェスタンブロットと、機能的研究とにより、確認された。FACSにより前記抗体の全てが、形質移入された細胞上の全長DR3と、オルタナティブスプライシングされたDR3とを検出し、該抗体のうち1つはウェスタンブロットでDR3を検出し、前記抗体(4C12)はアゴニスト活性を示し、TL1Aの不在下でDR3のシグナル伝達を仲介した。
【0178】
TL1Aモノクローナル抗体は、TL1A−マルトース結合タンパク質に係る融合タンパク質でハムスターを免疫することにより取得された。前記TL1A抗体は、形質移入されたTL1Aをフローサイトメトリーにより検出した。前記抗体(L4G6)はアンタゴニスト活性を示し、TL1AのDR3への結合を阻害した。
【実施例19】
【0179】
TNFR25を通じたシグナル伝達がCD8のクロスプライミングを増強する。
新規な熱ショックタンパク質gp96に基づく、強力な抗原特異的CD8−CTL増殖をin vivoで仲介する系が、Strbo et al.,Am J Reprod Immunol.2002 October;48(4):220−5で最近説明された。このモデル系では、(分泌されるように設計され)放出されたgp96−Igは、樹状細胞を活性化し、CD8細胞への交差提示とCD8細胞のクロスプライミングとのための結合型ペプチドを提供する(図12)。前記系はCD4の助けに依存しないため非常に有用である。分泌されたgp96は、CD4細胞上でCD40−Lにより提供されることもあるCD91及びTLR2/4を通じてDCに活性化シグナルを提供する。したがってこの系でのCD8(OT−I)の増殖は、CD40−L欠損マウスにおいて十分に機能する。これは、粘膜免疫を研究するために、また、CD8増殖におけるTNFR25の役割を決定するために使用される。
【0180】
EG7−gp96は、オボアルブミン及びgp96−Igでの形質移入によりEL4リンパ腫から誘導された株細胞である。前記細胞は、オボアルブミンペプチドと結合したgp96−Igを分泌する。gp96−Igと結合したオボアルブミンペプチドは、CD8細胞のクロスプライミングを、オボアルブミン単体と比較して約10,000倍増強する(図10)。100ngのova−gp96−Igは、EG7−gp96−Ig免疫後の脾臓において移動後のCD8細胞の0.5%から20%までの出現頻度で、B6マウス中のOT−Iを増殖させる。
【0181】
CD8増殖に及ぼすTNFR25のシグナルの影響を決定するために、上述のTCR遺伝子導入OT−Iモデルが、EG7−gp96−Igに仲介される刺激といっしょに使用された。TNFR25のシグナルの影響を決定するために前記マウスは、EG7−gp96−Ig免疫の24h及び72h後に、アゴニストの抗TNFR25抗体(4C12)か、TNFR25に結合するがアゴニストではない抗体(L4G6)か、対照IgGかを受け入れた。OT−I増殖は、免疫後5日目に腹膜腔中で監視された。4C12は、EG7−gp96−Igによる腹膜腔中への細胞動員数の増大を引き起こし、細胞数の倍増をもたらした。加えて4C12は特に、OT−Iの増殖の8倍以上の増大を引き起こした。前記L4G6抗TNFR25抗体は、腹膜腔への細胞動員数の増大を誘発せず、OT−I増殖を阻害した。
【0182】
これらのデータは、アゴニストの抗TNFR25抗体がCD8細胞を同時刺激すること、及び/又は、該抗体がTNFR25を介してTregsの抑制効果を阻害することを示す。TNFR25によるナイーブT細胞の同時刺激は、二次活性化による増殖の増大とTh2分極とをもたらす。加えて制御性T細胞に及ぼすTNFR25のシグナル伝達は、抑制の一時的阻害をもたらす。前記組合せの効果は、その後図11に見られるCD8増殖及び細胞動員の増大の原因となる。
【実施例20】
【0183】
CD4+CD25+制御性T細胞は高レベルのTNFR25を発現する。
TNFR25の発現を決定するために、CD4+CD25TregsがCD4細胞のネガティブ選択により脾臓から精製され、その後抗CD25抗体で磁気選別された。前記細胞は、ビーズ対細胞比率が3対1の抗CD3抗体ビーズ、抗CD28抗体ビーズといっしょに培養され、2000u/mLのヒトIL−2が添加された。これらの条件下で前記細胞は3−4日後に増殖し始め、約3週間増殖し続ける。培養された細胞は、CD4及びCD25についてはFACS分析により、FoxP3の発現とTNFR25の表面解析とについては細胞内蛍光定量(intracellular cytofluorimetry)により、分析された。図13は、このようにして取得されたTregsが本質的に純粋でありFoxP3及びTNFR25の両方を発現することを示す。
【実施例21】
【0184】
TNFR25の阻害は、デキストラン硫酸ナトリウム誘発性大腸炎に係る死を引き起こす。
デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)モデルは、幾つかの点でクローン病と類似する大腸炎モデルとして広範に使用されている。最初の傷害は、通常腸上皮により提供される透過性障壁に及ぼすDSSの損傷効果である。このDSSの効果は、結腸クローン病と類似する炎症性免疫学的反応を引き起こす粘膜免疫系における部位への正常な腸内菌叢の接近を可能にする。2%のDSSを含む飲料水への8日間の曝露過程の間に、野生型B6マウスは下痢を発症し、体重を減少させた。通常の水への交換によりB6マウスは回復し正常な体重を取り戻した。TNFR25は、大腸炎における疾病の過程にも影響を及ぼす。今回の実験では野生型マウス及び遺伝子導入マウスは、2%のDSSを含む水に7日間曝された。図14に示されるようにDN TNFR25遺伝子導入マウスは、野生型マウスと同様の疾病を発症したが、通常の水に交換されたときDN TNFR25遺伝子導入マウスは野生型マウスと同様には回復しなかった。それどころかDN TNFR25遺伝子導入マウスは体重を減少させ続け、12日目及び16日目の間に死亡した。Δ5,6 TNFR25遺伝子導入マウスは野生型マウスと類似したが、1匹のマウスの死亡は免疫応答の阻害も示唆する場合があった。2つの結論が導かれた。DN TNFR25遺伝子導入マウスでは後に続く免疫応答が野生型マウスよりずっと強く死をもたらし、野生型マウスにおける正常な健康及び恒常性の回復は正常に機能する制御性T(Treg)細胞に依存する。Tregの機能は、DN TNFR25遺伝子導入マウスでは阻害される。栄養及び正常腸内菌叢とへの寛容と、腸内病原体への正常な免疫応答との間の適正なバランスを維持することにより粘膜免疫系の恒常性を維持するためにTregの機能が非常に重要であることは既知であるので、後者の結論には実現可能性がある。
【実施例22】
【0185】
EG7−gp96−Igでの免疫は、OT−I細胞を粘膜部のパイエル板、固有層リンパ球(LPL)及び上皮内リンパ球(IEL)に移動させるように誘導する。
図16の右の列に示されるようにEG−7細胞は、OT−Iのクローン性増殖か、粘膜部への移動かを引き起こすことができない。一方でgp96−Igを分泌するEG−7細胞は、脾臓、リンパ節及び腹膜腔におけるOT−Iのクローン性増殖(データは示されない。)と、それらの粘膜部への移動(図16)とを引き起こす。パイエル板では前記細胞の8%がCD8+であり、CD8細胞の6.7%がOT−I細胞である。IELでは前記細胞の61%がCD8+であり、CD8細胞の9%がOT−I細胞である。LPLではCD8細胞の29%がOT−I細胞である。その大部分がCD8ααと50%のTCRγδとである常在CD8 IELと異なり、免疫後にIELに移動するOT−I細胞は、αEb7+及びα4β7+であるがCD8αβ及びTCRαβの状態を維持する。
【0186】
本開示では、多用途な2,3の実施例を除き本発明の好ましい実施態様のみが説明される。本発明が他のさまざまな組合せ及び環境において使用され得ること、及び、本明細書で説明される本発明の概念の範囲内で本発明が変更又は修正され得ることが理解されるべきである。したがって当業者は例えば、定型的な実験のみを使用して、本明細書で説明される特定の物質及び手順との多数の均等物を認識又は確認することができるだろう。かかる均等物は本発明の範囲内であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0187】
【図1】(A)リンパ節細胞におけるマウスTNFR25の発現を示すグラフ。(B)活性化リンパ球でのTNFR25の発現を示すグラフ。(C)胸腺細胞でのTNFR25の発現を示すグラフ。
【図2−A】マウスTNFR25のスプライシング形態を示す図。
【図2−B】TNFR25の活性化誘発性オルタナティブスプライシングを示す図。
【図2−C】活性化誘発性スプライシングがPKC依存性でありタンパク質合成非依存性であることを示す図。
【図3−A】B6野生型マウス及びアイソタイプ対照と比較した遺伝子導入マウスでのTNFR25の発現を示すグラフ。
【図3−B】オルタナティブスプライシングを受けたTNFR25を導入された腫瘍細胞のウェスタンブロットを示す図。
【図3−C】同腹の野生型細胞と比較したFL TNFR25遺伝子導入リンパ節細胞及び胸腺細胞におけるCD4及びCD8陽性細胞の細胞性の減少を例示するグラフ。
【図3−D】FL及びΔ5,6 TNFR25遺伝子導入細胞の活性化誘発性増殖の障害を示すグラフ。
【図3−E】FL TNFR25及びΔ5,6 TNFR25がNF−κBを活性化することを例示する図。
【図3−F】野生型CD4T細胞、FL TNFR25遺伝子導入CD4T細胞、Δ5,6 TNFR25遺伝子導入CD4T細胞によるTh2に偏った主要なサイトカイン産生を示すグラフ。
【図3−G】TNFR25がTh1又はTh2のサイトカイン産生を同時刺激する場合があることを例示するグラフ。
【図4−A】遺伝子導入CD4及びCD8細胞において、活性化によるIL−2−Ra(CD25)に係る正常な上向き調節を例示するグラフ。
【図4−B】遺伝子導入細胞が活性化によりアポトーシスの増大を被らないことを示すグラフ。
【図4−C】Δ5,6 TNFR25遺伝子導入T細胞によるIL−2の産生の減少を例示する図。
【図4−D】ドミナントネガティブなTNFR25遺伝子導入細胞が一次応答においてTh2分極していないことを例示するグラフ。
【図4−E】DN TNFR25遺伝子導入マウス及び野生型マウスの同じ抗体アイソタイプの応答を示すグラフ。
【図5−A】免疫されたTNFR25遺伝子導入マウスでは抗体アイソタイプがTh2に偏っていることを示すグラフ。
【図5−B】TNFR25のシグナルが気管支肺胞洗浄液(BALF)中の好酸球増加症を調節することを例示するグラフ。
【図5−C】TNFR25遺伝子導入マウスにおける肺の炎症の増大を示す図。
【図5−D】TNFR25のシグナルが血清IgEレベルを制御することを例示するグラフ。
【図5−E】TNFR25遺伝子導入マウスでの気管支リンパ節細胞によるTh2サイトカインの産生の増大を示すグラフ。
【図6−A】DN TNFR25導入遺伝子が内在のTNFR25によるサイトカインの同時刺激を阻害することを例示するグラフ。
【図6−B】DN TNFR25が内在のTNFR25による増殖の同時刺激を阻害することを例示するグラフ。
【図6−C】DN TNFR25遺伝子導入CD4T細胞が二次活性化におけるTh2サイトカインの減少を引き起こすことを例示するグラフ。
【図6−D】DN TNFR25遺伝子導入CD4T細胞がin vitroでTh2分極に耐性を示すことを示すグラフ。
【図6−E】野生型マウスと比較したDN TNFR25遺伝子導入マウスにおけるBALF中での細胞の浸出の減少を例示するグラフ。
【図6−F】免疫及び気道負荷の後でのDN TNFR25遺伝子導入マウスにおける肺の炎症の抑制を示す図。
【図6−G】DN TNFR25遺伝子導入マウスにおけるオボアルブミン特異的IgE産生の抑制を例示するグラフ。
【図6−H】気管支リンパ節におけるDN TNFR25によるTh1サイトカインではなくTh2サイトカインの産生抑制を示すグラフ。
【図7−A−C】適当な抗体で染色されたFL TNFR25形質移入P815細胞、Δ5,6 TNFR25形質移入P815細胞及びTL1A形質移入P815細胞のフローサイトメトリー結果。
【図7−D】TNFR25を形質移入された細胞に係るTL1Aに仲介される細胞障害性をL4G6が阻害することを示すグラフ。
【図7−E】TL1A阻害抗体L4G6が野生型C57B16マウスにおいてin vivoで粘液産生と肺の炎症とを抑制することを例示する図。
【図7−F】対照IgG処理マウスと比較したL4G6処理マウスにおけるBALF中での細胞の浸出の減少を示すグラフ。
【図7−G】L4G6でのTL1A阻害後の、オボアルブミンで再刺激された気管支リンパ節細胞によるIL−5及びIL−13の産生の減少を例示するグラフ。
【図7−H】肺におけるCD11c陽性細胞の亜集団に対する噴霧負荷後のTL1Aの発現を示すグラフ。
【図7−I】気道負荷後のオボアルブミン免疫マウスの気管支リンパ節細胞由来のリンパ球におけるTL1A発現の欠如を例示するグラフ。
【図7−J】TL1Aがin vitroで活性化Tリンパ球において発現されることを例示するグラフ。
【図8】NKT細胞における肺の炎症の誘発のためにTNFR25のシグナルが必要とされることを示すグラフ。
【図9】TL1A/TNFR25に仲介される、肺におけるNKT細胞のトリガリングと、CD4細胞のTh2分極とについてのモデルを例示する図。
【図10】マウスが100万個のOT−I−gfpを静脈内投与された実験の手順及び結果を示す図。
【図11】TNFR25の同時刺激によるOT−I細胞の増殖の増強を示すグラフ。
【図12】熱ショックタンパク質gp96によるCD8細胞のクロスプライミングを示す図。
【図13】TNFR25を発現するFoxP3陽性CD4+CD25+Tregsを示すグラフ。
【図14】DN TNFR25遺伝子導入マウスがDSS誘発性大腸炎から回復できないことを示すグラフ。
【図15】TNFR25のシグナルがTreg阻害を消失させることを示すグラフ。
【図16】gp96−Igの腹腔内免疫後に粘膜に位置するGfp−OT−Iを示すグラフ。
【図17−A】配列番号1−2に係るヌクレオチド配列、並びに、選択される公開データベースのアクセッション番号。
【図17−B】配列番号2(続き)−5に係るヌクレオチド配列、並びに、選択される公開データベースのアクセッション番号。
【図17−C】配列番号6−16に係るヌクレオチド配列、並びに、選択される公開データベースのアクセッション番号。
【図17−D】配列番号16(続き)に係るヌクレオチド配列、並びに、選択される公開データベースのアクセッション番号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍壊死因子受容体25(TNFR25)のアゴニストとして働く能力を有することを特徴とする、TNFR25抗原に結合する単離抗体。
【請求項2】
gp96−Ig−オボアルブミンによりクロスプライミングされたときのOT−I CD8細胞の増殖を対照抗体と比較して増大させる能力を有することを特徴とする、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記腫瘍壊死因子受容体25(TNFR25)抗原はヒト又はマウス由来であることを特徴とする、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
腫瘍壊死因子受容体25(TNFR25)受容体に結合するポリペプチドと結合した毒性物質を含むことを特徴とする、TNFR25−特異的毒素。
【請求項5】
前記ポリペプチドは、モノクローナル抗体4C12か、該抗体の免疫特異的部分かを含むことを特徴とする、請求項4に記載の毒素。
【請求項6】
前記毒性物質は、放射性同位体、リシン、アブリン、ジフテリア毒素、緑膿菌外毒素及び金属イオンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項4に記載の毒素。
【請求項7】
前記ポリペプチドは、TL1Aタンパク質か、該タンパク質のTNFR25結合部分かを含むことを特徴とする、請求項4に記載の毒素。
【請求項8】
細胞において発現される腫瘍壊死因子受容体25(TNFR25)受容体を活性化する方法であって、(a)前記細胞をTNFR25のアゴニストと接触させるステップと、(b)TNFR25受容体のシグナル伝達の増大を観察するステップとを含み、前記TNFR25のアゴニストは、(i)モノクローナル抗体4C12と、(ii)gp96−Ig−オボアルブミンによりクロスプライミングされたときのOT−I CD8細胞の増殖を対照抗体と比較して増大させる能力を有する、腫瘍壊死因子受容体25(TNFR25)と結合する抗体と、(iii)可溶性TL1Aと、(iv)TNFR25のアゴニスト抗体の遺伝子導入による発現を促進する能力を有する発現カセットを有する発現ベクターと、(v)可溶性TL1Aの遺伝子導入による発現を促進する能力を有する発現カセットを有する発現ベクターと、(vi)TNFR25の遺伝子導入による発現を促進する能力を有する発現カセットを有する発現ベクターとからなる群から選択されることを特徴とする、細胞において発現される腫瘍壊死因子受容体25(TNFR25)受容体を活性化する方法。
【請求項9】
腫瘍壊死因子受容体25(TNFR25)のアンタゴニストとして働く能力を有することを特徴とする、TNFR25抗原に結合する単離抗体。
【請求項10】
TL1A抗原と結合すること、及び、gp96−Ig−オボアルブミンによりクロスプライミングされたときのOT−I CD8細胞の増殖を対照抗体と比較して減少させる能力を有することを特徴とする、請求項9に記載の抗体。
【請求項11】
前記腫瘍壊死因子受容体25(TNFR25)抗原はヒト又はマウス由来であることを特徴とする、請求項9に記載の抗体。
【請求項12】
細胞内での腫瘍壊死因子受容体25(TNFR25)受容体のシグナル伝達を阻害する方法であって、(a)該細胞をTNFR25のアンタゴニストと接触させるステップと、(b)TNFR25受容体のシグナル伝達の減少を観察するステップとを含み、該TNFR25のアンタゴニストは、(i)モノクローナル抗体L4G6と、(ii)gp96−Ig−オボアルブミンによりクロスプライミングされたときのOT−I CD8細胞の増殖を対照抗体と比較して減少させる能力を有する、腫瘍壊死因子受容体25(TNFR25)と結合する抗体と、(iii)可溶性TL1Aに対して特異的な抗体と、(iv)TNFR25の細胞外部分を含む融合タンパク質と、(v)TNFR25の細胞外部分の遺伝子導入による発現を促進する能力を有する発現カセットを有する発現ベクターと、(vi)可溶性TL1Aに対して特異的な抗体の遺伝子導入による発現を促進する能力を有する発現カセットを有する発現ベクターと、(vii)L4G6の遺伝子導入による発現を促進する能力を有する発現カセットを有する発現ベクターとからなる群から選択されることを特徴とする、細胞内での腫瘍壊死因子受容体25(TNFR25)受容体のシグナル伝達を阻害する方法。
【請求項13】
腫瘍抗原と、生物学的応答調節剤としてのTNFR25のアゴニストとを含むことを特徴とする、腫瘍ワクチン。
【請求項14】
前記TNFR25のアゴニストは、(a)モノクローナル抗体4C12と、(b)gp96−Ig−オボアルブミンによりクロスプライミングされたときのOT−I CD8細胞の増殖を対照抗体と比較して増大させる能力を有する、腫瘍壊死因子受容体25(TNFR25)と結合する抗体と、(c)可溶性TL1Aと、(d)TNFR25のアゴニスト抗体の遺伝子導入による発現を促進する能力を有する発現カセットを有する発現ベクターと、(e)可溶性TL1Aの遺伝子導入による発現を促進する能力を有する発現カセットを有する発現ベクターと、(f)TNFR25の遺伝子導入による発現を促進する能力を有する発現カセットを有する発現ベクターとからなる群から選択されることを特徴とする、請求項12に記載の腫瘍ワクチン。
【請求項15】
アジュバント剤を含むことを特徴とする、請求項14に記載の腫瘍ワクチン。
【請求項16】
腫瘍に対する免疫を患者に付与する方法であって、前記腫瘍から腫瘍特異的抗原を単離するステップと、請求項14に記載の腫瘍ワクチンを前記患者に投与するステップとを含むことを特徴とする、腫瘍に対する免疫を患者に付与する方法。
【請求項17】
請求項4に記載の毒素を含む組成物を患者に提供することにより該患者からCD4+/CD25+制御性T細胞(Tregs)を除去するステップと、前記患者に化学療法剤を提供するステップとを含むことを特徴とする、患者の癌を治療する方法。
【請求項18】
消化管の炎症の治療及び/又は予防を必要とする患者にTNFR25のアゴニストを含む治療用組成物の有効量を提供するステップを含むことを特徴とする、消化管の炎症を治療及び/又は予防する方法。
【請求項19】
前記消化管の炎症の症状は、炎症性腸疾患、クローン病及び潰瘍性大腸炎からなる群から選択されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記TNFR25のアゴニストは、(a)可溶性TL1Aと、(b)モノクローナル抗体4C12と、(c)TNFR25のアゴニスト抗体の遺伝子導入による発現を促進する能力を有する発現カセットを有する発現ベクターと、(d)可溶性TL1Aの遺伝子導入による発現を促進する能力を有する発現カセットを有する発現ベクターと、(e)TNFR25の遺伝子導入による発現を促進する能力を有する発現カセットを有する発現ベクターとからなる群から選択されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
TNFR25のアンタゴニストと免疫抑制剤とを含むことを特徴とする、臓器移植の円滑化のための治療用組成物。
【請求項22】
前記免疫抑制剤は、グルココルチコイド、アザチオプリン、メトトレキサート、シクロスポリン、シクロホスファミド、メルカプトプリン、タクロリムス及びミコフェノール酸モフェチルからなる群から選択されることを特徴とする、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記TNFR25のアンタゴニストは、(a)モノクローナル抗体L4G6と、(b)gp96−Ig−オボアルブミンによりクロスプライミングされたときのOT−I CD8細胞の増殖を対照抗体と比較して減少させる能力を有する、腫瘍壊死因子受容体25(TNFR25)と結合する抗体と、(c)可溶性TL1Aに対して特異的な抗体と、(d)TNFR25の細胞外部分を含む融合タンパク質と、(e)TNFR25の細胞外部分の遺伝子導入による発現を促進する能力を有する発現カセットを有する発現ベクターと、(f)可溶性TL1Aに対して特異的な抗体の遺伝子導入による発現を促進する能力を有する発現カセットを有する発現ベクターと、(g)L4G6の遺伝子導入による発現を促進する能力を有する発現カセットを有する発現ベクターとからなる群から選択されることを特徴とする、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
(a)ドナーから組織を取得するステップと、(b)請求項21に記載の組成物を宿主に提供するステップと、(c)前記組織を前記宿主に移植するステップとを含むことを特徴とする、ドナーから宿主へ組織を移植する方法。
【請求項25】
(a)CD8T細胞を該細胞のコグネイト抗原に曝露するステップと、(b)前記CD8T細胞をTNFR25のアンタゴニストに曝露するステップとを含むことを特徴とする、コグネイトCD8T細胞集団のクローン性増殖を阻害する方法。
【請求項26】
前記TNFR25のアンタゴニストは、(a)モノクローナル抗体L4G6と、(b)gp96−Ig−オボアルブミンによりクロスプライミングされたときのOT−I CD8細胞の増殖を対照抗体と比較して減少させる能力を有する、腫瘍壊死因子受容体25(TNFR25)と結合する抗体と、(c)可溶性TL1Aに対して特異的な抗体と、(d)TNFR25の細胞外部分を含む融合タンパク質と、(e)TNFR25の細胞外部分の遺伝子導入による発現を促進する能力を有する発現カセットを有する発現ベクターと、(f)可溶性TL1Aに対して特異的な抗体の遺伝子導入による発現を促進する能力を有する発現カセットを有する発現ベクターと、(g)L4G6の遺伝子導入による発現を促進する能力を有する発現カセットを有する発現ベクターとからなる群から選択されることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記コグネイト抗原は、ドナーから宿主へ移植される組織と関連することを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
肺の炎症の治療及び/又は予防を必要とする患者にTNFR25のアンタゴニストを含む治療用組成物の有効量を提供するステップを含むことを特徴とする、肺の炎症を治療及び/又は予防する方法。
【請求項29】
前記炎症の症状は喘息の結果発生する症状であることを特徴とする、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記TNFR25のアンタゴニストは、(a)モノクローナル抗体L4G6と、(b)gp96−Ig−オボアルブミンによりクロスプライミングされたときのOT−I CD8細胞の増殖を対照抗体と比較して減少させる能力を有する、腫瘍壊死因子受容体25(TNFR25)と結合する抗体と、(c)可溶性TL1Aに対して特異的な抗体と、(d)TNFR25の細胞外部分を含む融合タンパク質と、(e)TNFR25の細胞外部分の遺伝子導入による発現を促進する能力を有する発現カセットを有する発現ベクターと、(f)可溶性TL1Aに対して特異的な抗体の遺伝子導入による発現を促進する能力を有する発現カセットを有する発現ベクターと、(g)L4G6の遺伝子導入による発現を促進する能力を有する発現カセットを有する発現ベクターとからなる群から選択されることを特徴とする、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
配列番号4、5、6及び/又は16と厳密な条件下でハイブリダイズする配列を含む核酸によりエンコードされるポリペプチドを含み、前記配列はTL1Aタンパク質に結合する能力を有するアミノ酸配列をエンコードすることを特徴とする、単離されたTNFR25のアンタゴニスト。
【請求項32】
前記配列は配列番号4と厳密な条件下でハイブリダイズすることを特徴とする、請求項31に記載の単離されたTNFR25のアンタゴニスト。
【請求項33】
前記配列は配列番号5と厳密な条件下でハイブリダイズすることを特徴とする、請求項31に記載の単離されたTNFR25のアンタゴニスト。
【請求項34】
前記配列は配列番号6と厳密な条件下でハイブリダイズすることを特徴とする、請求項31に記載の単離されたTNFR25のアンタゴニスト。
【請求項35】
前記TL1AはヒトTL1Aであることを特徴とする、請求項31に記載の単離されたTNFR25のアンタゴニスト。
【請求項36】
前記TL1AはマウスTL1Aであることを特徴とする、請求項31に記載の単離されたTNFR25のアンタゴニスト。
【請求項37】
肺の炎症の治療及び/又は予防を必要とする患者に、請求項31に記載のTNFR25のアンタゴニストを含む治療用組成物の有効量を提供するステップを含むことを特徴とする、肺の炎症を治療及び/又は予防する方法。
【請求項38】
(a)ドナーから組織を取得するステップと、(b)請求項31に記載のTNFR25のアンタゴニストを宿主に提供するステップと、(c)前記組織を前記宿主に移植するステップとを含むことを特徴とする、ドナーから宿主へ組織を移植する方法。
【請求項39】
配列番号3及び/又は7と厳密な条件下でハイブリダイズする配列によりエンコードされるポリペプチドと、毒性物質とを含み、前記配列はTNFR25受容体タンパク質に結合する能力を有するアミノ酸配列をエンコードすることを特徴とする、組成物。
【請求項40】
前記毒性物質は、放射性同位体、リシン、アブリン、ジフテリア毒素、緑膿菌外毒素及び金属イオンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
請求項39に記載の毒素を含む組成物を患者に提供することにより該患者からCD4+/CD25+制御性T細胞(Tregs)を除去するステップと、前記患者に化学療法剤を提供するステップとを含むことを特徴とする、患者の癌を治療する方法。
【請求項42】
配列番号3及び/又は7と厳密な条件下でハイブリダイズする配列によりエンコードされるポリペプチドを含む組成物の有効量を、消化管の炎症の治療及び/又は予防を必要とする患者に提供するステップを含み、前記配列はTNFR25受容体タンパク質に結合する能力を有するアミノ酸配列をエンコードすることを特徴とする、消化管の炎症を治療及び/又は予防する方法。
【請求項43】
前記消化管の炎症は過敏性腸症候群に関連することを特徴とする、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記消化管の炎症はクローン病に関連することを特徴とする、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
腫瘍抗原と、配列番号3及び/又は7と厳密な条件下でハイブリダイズする配列によりエンコードされる生物学的応答調節剤としてのポリペプチドとを含み、前記配列はTNFR25受容体タンパク質に結合する能力を有するアミノ酸配列をエンコードすることを特徴とする、腫瘍ワクチン。
【請求項46】
配列番号3及び/又は7と厳密な条件下でハイブリダイズする核酸配列を含む発現ベクターであって、前記配列はTNFR25受容体タンパク質に結合する能力を有するアミノ酸配列をエンコードすることを特徴とする、発現ベクター。
【請求項47】
配列番号4、5、6及び/又は16と厳密な条件下でハイブリダイズする核酸配列を含む発現ベクターであって、前記配列はTL1Aタンパク質と結合する能力を有するアミノ酸配列をエンコードすることを特徴とする、発現ベクター。

【図17−A】
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【図17−B】
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【図17−C】
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【図17−D】
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【図1】
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【図2−A】
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【図2−B】
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【図2−C】
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【図3−A】
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【図3−B】
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【図3−C】
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【図3−D】
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【図3−E】
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【図3−F】
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【図3−G】
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【図4−A】
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【図4−B】
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【図4−C】
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【図4−D】
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【図4−E】
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【図5−A】
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【図5−B】
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【図5−C】
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【図5−D】
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【図5−E】
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【図6−A】
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【図6−B】
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【図6−C】
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【図6−D】
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【図6−E】
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【図6−F】
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【図6−G】
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【図6−H】
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【図7−A−C】
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【図7−D】
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【図7−E】
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【図7−F】
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【図7−G】
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【図7−H】
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【図7−I】
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【図7−J】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2009−505678(P2009−505678A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529225(P2008−529225)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/033828
【国際公開番号】WO2007/027751
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(508063738)ユニバーシティー オブ マイアミ (1)
【Fターム(参考)】