説明

免震システム

【課題】本発明は複数の流体圧緩衝器の設置作業を効率良く行えることを課題とする。
【解決手段】震動減衰装置20は、一対のシリンダ22A、22Bの間が第1の固定部材80の締結部材40により連結される。締結部材40は、左右両側に起立するフランジ42、44をシリンダ22A、22Bのフランジ23A、23Bに固定される。ピストンロッド24A、24Bは、先端部26A、26Bが第2の固定部材81の接続機構90を介して締結部100に締結される。第2の固定部材81は、球面軸受62が圧入される軸受支持部材64を有する。軸受支持部材64は、球面軸受62を貫通する取付ピン66を介して左側のブラケット68に連結される。締結部材40の端部46は、シリンダ22A、22Bの端部よりも軸方向に突出するように延在形成され、軸受支持部材52を有する。軸受支持部材52は、球面軸受50を貫通する取付ピン54を介してブラケット56に連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地震による建物の震動を免震すると共に、震動減衰装置により震動を減衰するように構成された免震システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地震による震動がビル等の大きな建物に伝達されないように構成された免震システムでは、建物を積層ゴムにより揺動可能に支持すると共に、建物の複数の箇所に油圧緩衝器などからなる震動減衰装置を多数配置することで建物の震動を減衰させている。従来の震動減衰装置としては、例えば、1000kNの減衰力を発生させるように構成された大型の油圧緩衝器がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−257661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記免震システムにおいては、多数の震動減衰装置を建物と基礎との間に設置する場合、設置スペースの制約から震動減衰装置の小型化、省スペース化が要望されている。
【0005】
また、免震システムでは、建物が大きくなるほど震動減衰装置の設置数が増加するため、設置作業にかなりの労力を要することになることから、設置工事にかかる手間を削減することも要望されている。
【0006】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、上記課題を解決した免震システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は以下のような手段を有する。
(1)本発明は、建物を支持する免震部材と、前記建物と地盤との間に設置され、前記地盤から入力された震動を減衰する震動減衰手段を備えた免震システムであって、
前記震動減衰手段は、
一端側が前記建物または前記地盤の何れか一方と締結される第1固定手段と、
一端側が前記建物または前記地盤の何れか他方と締結される第2固定手段と、
前記第1固定手段の他端側と前記第2固定手段の他端側との間に接続される複数の流体圧緩衝器と、
前記第1、第2の固定手段の一端側と他端側の間にそれぞれ設けられる自在継手と、を備え、
前記第1固定手段の他端側は、並列に複数配される前記流体圧緩衝器の隣接する間に設けることを特徴とする。
(2)本発明の前記流体圧緩衝器は、
作動流体が充填されるシリンダと、
該シリンダ内に挿入されて前記シリンダ内を2つの圧力室に画成するピストンと、
一端が前記ピストンに連結され、他端が前記シリンダの一端部から外部に延出されたピストンロッドと、
を備えることを特徴とする。
(3)本発明は、前記第1、第2の固定手段の少なくとも一方には、前記流体圧緩衝器の軸方向への移動を規制し、軸方向と直交する側への移動を許容する接続機構を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数の流体圧緩衝器を並列に連結すると共に、複数の流体圧緩衝器の間に第1の固定部材の他端側を配することにより、全長を短くして小型化及び省スペース化を図ることができると共に、各流体圧緩衝器のピストン動作による減衰力を合計することで減衰力を数倍に増大することができるので、多数の震動減衰装置を設置する場合の設置数を削減して設置作業の手間を大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による免震システムの一実施例を模式的に示す構成図である。
【図2】震動減衰装置の一実施例を示す平面図である。
【図3】図2中Y1−Y1線に沿う縦断面図である。
【図4】図2中X−X線に沿う縦断面図である。
【図5】震動減衰装置の変形例を示す平面図である。
【図6】図2中Y2−Y2線に沿う縦断面図である。
【図7】震動減衰装置の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
図1は本発明による免震システムの一実施例を模式的に示す構成図である。図1に示されるように、建物10は、例えば、マンションやオフィスビルなどの建築物からなり、基礎12上に複数の免震部材14を介して支持されている。免震部材14としては、例えば、ゴム板と鉄板とを交互に積層された積層ゴムが用いられる。また、建物10と基礎12との間には、流体圧緩衝器などからなる震動減衰装置(震動減衰手段)20が設けられている。本実施例では、上記免震部材14と震動減衰装置20とにより免震システム30が構成される。
【0012】
ここで、震動減衰装置20の構成について説明する。
【0013】
図2は本発明による震動減衰装置の一実施例を示す平面図である。図3は図2中Y1−Y1線に沿う縦断面図である。図4は図2中X−X線に沿う縦断面図である。
【0014】
図2乃至図4に示されるように、震動減衰装置20は、1本あたり1000kNの減衰力を発揮する一対の流体圧緩衝器20A、20Bを組み合わせて最大減衰力を2000kNとするように構成したものである。流体圧緩衝器20A、20Bは、夫々シリンダ22A、22Bと、ピストンロッド24A、24Bとを有する油圧緩衝器からなる。
【0015】
尚、本実施例では、一対の油圧緩衝器を平行に配置し、シリンダ間を連結する構成を一例として説明するが、油圧緩衝器以外のものとして例えば、空圧緩衝器を用いても良い。また、連結された緩衝器数は、2つに限らず、2つ以上の緩衝器を平行に配置して連結する構成としても良い。
【0016】
図6に示すように、各シリンダ22A、22Bは、中空円筒形状に形成され、内部には作動流体としての作動油が充填されている。シリンダ22A、22Bの内部は、後述するように、ピストンロッド24A、24Bの端部に連結されたピストンにより2つの圧力室に画成されている。また、シリンダ22A、22Bの上側には、作動油をシリンダ22A、22B内に補給するための補助タンク25A、25Bが設けられている。
【0017】
一対のシリンダ22A、22Bの間は、延在方向が同一方向(X方向)となるように平行に配された状態で、外周が側方から締結部材40により連結される。締結部材40は、鉄などの金属板からなり、シリンダ22A、22Bの外周に対向するように軸方向(X方向)に延在する直線状のフランジ42、44を有する。
【0018】
また、シリンダ22A、22Bは、互いに対向する外周側方に突出するフランジ23A、23Bを有する。締結部材40は、左右両側に起立するフランジ42、44をシリンダ22A、22Bのフランジ23A、23Bに対向させた状態で突き合わせ、シリンダ22A、22Bと締結部材40との両フランジ間を溶接によって一体的に固定する。尚、両フランジの接合手段としては、溶接に限らず、例えば、ボルトとナットなどの締結部材を用いても良い。
【0019】
締結部材40の端部46は、シリンダ22A、22Bの端部よりも軸方向(X方向)に延出するように延在形成されている。端部46は、自在継手を構成する球面軸受50が圧入される軸受支持部材52を有する。軸受支持部材52は、球面軸受50を貫通する取付ピン54を介して右側のブラケット56に揺動可能に連結される。尚、右側のブラケット56は、例えば、建物の基礎側(固定側)の埋込みボルトなどに締結される。このように、第1の固定部材80は、自在継手を構成する球面軸受50が圧入される軸受支持部材52を有する締結部材40、取付ピン54、ブラケット56から構成される。
【0020】
したがって、締結部材40は、シリンダ22A、22Bとの間に挿入されて側方で重なり合う状態にシリンダ22A、22Bの外周に固定されるため、シリンダ22A、22Bから軸方向(X方向)への突出長さが短くなるように設けられている。よって、震動減衰装置20は、軸方向の全長が短くなるように構成されており、取付スペースが小さくなり、省スペース化が図られている。
【0021】
シリンダ22A、22Bの左端から軸方向(Xa方向)に延出するピストンロッド24A、24Bは、先端部26A、26Bが接続機構90を介して鉄骨またはコンクリート壁などからなる締結部100に連結される。また、締結部100と、ピストンロッド24A、24Bの間は自在継手を構成する球面軸受62が圧入される軸受支持部材64と軸受支持部材64の内周側に設けられる球面軸受62と、球面軸受62を貫通する取付ピン66と、取付ピン66を介して左側のブラケット68とが設けられ、締結部100に対して揺動可能に連結される。尚、左側の締結部100は、例えば、積層ゴムなどにより免震支持された建物の可動側の埋込みボルトなどに締結される。このように、第2の固定部材81は、自在継手を構成する球面軸受62が圧入される軸受支持部材64、球面軸受62を貫通する取付ピン66、接続機構90、ブラケット68、締結部100から構成される。
【0022】
ここで、接続機構90について詳述する。一対の流体圧緩衝器20A、20Bをピストンロッド24A、24Bの延在方向が同一方向となるように平行に配置した構成では、一体にした場合、減衰力や摩擦力の違いにより初期作動時に同時に伸縮せず、何れか一方のピストンロッドに曲げ力(モーメント)が加わることで軸受け部分或いは摺動部分にかじり(2部材が擦れ合う現象)が発生する可能性が考えられる。
【0023】
本実施の形態では、その対応として、ブラケット68と締結部100との間に、軸方向の移動を規制すると共に、軸方向(X方向)と直交する半径方向への移動を許容する接続機構90を設ける。
【0024】
接続機構90は、ブラケット68のフランジ69と、フランジ収納ハウジング94と、滑り部材98とを有する。
【0025】
フランジ収納ハウジング94は、ブラケット68のフランジ69の外周を移動可能に支持するように箱状に形成されている。また、フランジ収納ハウジング94の蓋部94aは、フランジ69の側面と当接して軸方向への移動を規制する。
【0026】
滑り部材98は、締結部100の側面に対してブラケット収納ハウジング94が軸方向と直交する半径方向(Y方向を含む垂直面の延在方向)に移動できるようにブラケット収納ハウジング94の内周側に当接する低摩擦部材である。
【0027】
ブラケット収納ハウジング94のフランジ部94bは、締結部100にボルト101で固定される。そして、ブラケット収納ハウジング94は、その内壁が軸方向と直交する半径方向に隙間Sを介してブラケット68のフランジ部69と対向するように形成されている。そのため、ブラケット収納ハウジング94は、上記隙間Sの範囲で軸方向と直交する半径方向に移動可能に保持されている。尚、上記隙間Sは、ピストンロッド24A、24Bが同時に作動するための逃げであり、Y方向(左右方向)だけでなくZ方向(上下方向)にも設けられているので、ピストンロッド24A、24Bの先端部26A、26Bは軸方向と直交するどの方向にも移動可能である。
【0028】
このような接続機構90を設けることにより、初期作動時に一対の流体圧緩衝器20A、20Bが同時に伸縮しない場合、ブラケット68が球面軸受62を介して揺動し、その後にブラケット収納ハウジング94内をブラケット68のフランジ部69が軸方向と直交する半径方向に移動することにより逃げる余地を作ることができる。その結果、一対の流体圧緩衝器20A、20Bの個体差や経年劣化により同時に伸縮しない場合が生じても、接続機構90により初期作動時に逃げる余地があるので、ピストンロッド24A、24Bに曲げ力(モーメント)が作用することを回避でき、曲げ力によってシリンダ22A、22B内でピストンがかじることを防止することができる。
【0029】
また、流体圧緩衝器20A、20Bは、夫々個別に組立てられ、組立て完了後は個別に性能試験が行なわれる。流体圧緩衝器20A、20Bの性能試験を行なうときは、接続機構90およびシリンダ22A、22Bの端部に試験用の取付部を介して試験装置に取り付けられる。そして、性能試験に合格した流体圧緩衝器20A、20Bは、第1の固定部材80及び第2の固定部材81により連結されて震動減衰装置20となる。
【0030】
従って、震動減衰装置20では、流体圧緩衝器20A、20Bのそれぞれが1000kNの減衰力を同時に発生させることができるので、合計2000kNの減衰力を発生させることが可能になる。
【0031】
次に、図5を用いて第2固定部材の変形例を説明する。図5に示す変形例では、ピストンロッド24A、24Bの先端部26A、26Bと締結部100の間に接続機構90を配した構成になっている。また、締結部100の接続機構90'と反対側に自在継手を構成する球面軸受62が圧入される軸受支持部材64と軸受支持部材64の内周側に設けられる球面軸受62と、球面軸受62を貫通する取付ピン66と、取付ピン66を介して左側のブラケット68とが設けられている。また、ブラケット68は、例えば図示せぬ積層ゴムなどにより免震支持された建物の可動側の埋込みボルトなどに締結される。
【0032】
接続機構90'内は、図2に示す構成と同様に、ピストンロッド24A、24Bの先端部26A、26Bと接続され、内部に球面軸受62が圧入される軸受支持部材64、球面軸受62を貫通する取付ピン66、取付ピン66を介して揺動可能に連結されるブラケット68、ブラケットの軸方向への移動を許容、規制するブラケット収納ハウジング94から構成される。
【0033】
また、接続機構90'の別の変形例として、軸受支持部材64、球面軸受62、取付ピン66を廃止し、ピストンロッド24A、24Bの先端部26A、26Bに直接ブラケット68を固定し、ブラケット68とブラケット収納ハウジング94により構成してもよい。
【0034】
ここで、流体圧緩衝器20A、20Bの内部の構造について図6を参照して説明する。図6は図2中Y2−Y2線に沿う縦断面図である。
【0035】
図6に示されるように、震動減衰装置20は、アウタケース122の内部に、作動流体(作動油)135が充填されたシリンダ22Aと、シリンダ22A内にXa、Xb方向に摺動可能に嵌合されたピストン137とを有する。ピストン137には、ピストンロッド24Aの基端部が固定される。また、震動減衰装置20は、補助タンク25Aと、液通路129Aと、逆止弁130と、吸込弁131と、減衰弁132A、132B(減衰力発生手段)とを有する。
【0036】
補助タンク25Aは、粘性を有する作動油からなる作動流体135が充填されており、ピストン137の移動に伴う圧力室(左室)136aと圧力室(右室)136bとの容積変化に応じた作動流体135の吸排を補助するためのリザーバタンクである。
【0037】
液通路129A、129Bは、夫々ピストン137により画成されたシリンダ22A内の2つの圧力室136a、136bの一方と補助タンク25Aとの間で作動流体135を流通させるための通路である。
【0038】
逆止弁130は、圧力室(左室)136aと圧力室(右室)136bとの圧力差によって開弁または閉弁するようにピストン137の左側に設けられ、圧力室(右室)136bから圧力室(左室)136aへの作動流体135の流れのみを許容するように開弁する。
【0039】
吸込弁131は、アウタケース122の右端側に設けられ液通路129Bから圧力室136bへの作動流体135の流れのみを許容するように開閉動作する。
【0040】
減衰弁132A、132Bは、アウタケース122の左端部側に設けられて液通路129A、129Bを流通する作動流体135の差圧に応じた減衰力を発生させるように開閉動作する減衰力発生手段であり、2個以上設けられている。
【0041】
なお、左側の圧力室136aと液通路129Aとの間を連通する経路には、減衰弁132Aを有するA系統と、減衰弁132Bを有するB系統との2系統がある。
【0042】
ここで、上記構成とされた震動減衰装置20の動作について説明する。ピストン137及びピストンロッド24Aがアウタケース122に対して伸長方向(Xa方向)に移動する際は、ピストン137の逆止弁130が閉弁し、左側の圧力室136aの圧力が上昇する。ピストン137の移動に伴って移動分の作動流体135が圧力室136aから減衰弁132A、132Bを通過して液通路129A、129Bに排出される。その際、減衰弁132A、132Bの差圧に応じた弁開度(絞り量)による減衰力がピストン137に付与される。
【0043】
これと共に右側の圧力室136bにおいては、負圧が発生するため、吸込弁131が開弁し、液通路129A、129Bを介して補助タンク25Aの作動流体135が圧力室136bに供給される。
【0044】
また、ピストン137及びピストンロッド24Aがアウタケース122に対して圧縮方向(Xb方向)に移動する際は、吸込弁131が閉弁して、右側の圧力室136bの圧力が上昇する。ピストン137の圧縮動作に伴って圧力室136bの容積が減少するため、ピストン移動分の作動流体135が右側の圧力室136bからピストン137の逆止弁130を介して左側の圧力室136aに流出される。そして、ピストンロッド24Aが左側の圧力室136aに挿入された体積分の作動流体が減衰弁132A、132Bを通過して液通路129A、129Bに排出される。その際、減衰弁132A、132Bの差圧に応じた弁開度(絞り量)による減衰力がピストン137に付与される。
【0045】
図7は震動減衰装置の変形例である。図7に示されるように、変形例では、2つの補助タンク25A、25Bを一つの補助タンク25Cに一体化するように構成されている。一対の流体圧緩衝器20A、20Bを並列に連結した震動減衰装置20では、一対の流体圧緩衝器20A、20Bが同時に同方向に作動することで2倍の減衰力を発生させることができる。そして、性能試験に合格した流体圧緩衝器20A、20Bから補助タンク25A、25Bを外し、流体圧緩衝器20A、20Bが並列状態で締結部材40及び第2の固定部材60により連結された後、一体化された補助タンク25Cを流体圧緩衝器20A、20Bの上部に取り付ける。これで、当該変形例の構成が完成する。
【0046】
例えば、使用中の震動減衰装置20に外力が加わった場合、震動減衰装置20が損傷し、シリンダ内部の作動流体135は外部へ流出することが考えられる。作動流体135の流出量が増加すると、補助タンク25Cの油面の位置が下がる。さらに、油面がシリンダ上部の油吸い込み口より低くなると、流体圧緩衝器20A、20Bが地震による震動により伸長動作または圧縮動作を行なうと、吸い込弁131から空気をシリンダ22A、22Bの内部に吸い込み、シリンダ22A、22B内部の作動流体135に空気が混入し、圧縮動作に入った瞬間無効ストロークを生じ、減衰力が立ち上がらなくなるおそれがある。また、振幅が小さい場合は、減衰力が上がらない、若しくは設定より低いまま圧縮動作に行程が切り替わることになる。
【0047】
このように、流体圧緩衝器20A、20Bを並列に連結した構成の震動減衰装置20では、何れか一方で作動流体の漏れが発生し、他方が正常に作動する場合には、作動時にモーメントが発生し、シリンダ22A、22Bやピストンロッド24A、24Bに曲げ荷重が加わってしまうことになる。
【0048】
しかしながら、本変形例では、2つの流体圧緩衝器20A、20Bに共通の補助タンク25Cを設ける構成としたため、作動流体135が何れか一方のシリンダから漏れた場合、2つの流体圧緩衝器20A、20Bの減衰力が同時に小さくなって作動時にモーメントを発生することがない。従って、作動流体135の漏洩が発生した場合でも震動減衰装置20の減衰力が低下するものの、装置全体が動作不能になることが防止される。
【0049】
上記実施の形態では、油圧緩衝器からなる複数の流体圧緩衝器を並列に連結する構成を例に挙げたが、これに限らず、油圧緩衝器以外の流体圧緩衝器(例えば、油圧以外の液圧を用いた緩衝器、あるいは空圧緩衝器)を用いた構成のものにも適用できるのは勿論である。
【符号の説明】
【0050】
10 建物
12 基礎
14 免震部材
20 震動減衰装置(震動減衰手段)
20A、20B 流体圧緩衝器
22A、22B シリンダ
24A、24B ピストンロッド
25A、25B、25C 補助タンク
30 免震システム
40 締結部材
42、44 フランジ
50、62 球面軸受
52、64 軸受支持部材
54、66 取付ピン
56、68 ブラケット
69 フランジ部
80 第1の固定部材
81 第2の固定部材
90、90' 接続機構
92 ボールジョイント
94 フランジ収納ハウジング
96 蓋体
98 滑り部材
100 締結部
122 アウタケース
129A、129B 液通路
130 逆止弁
131 吸込弁
132A,132B 減衰弁
135 作動流体(作動油)
136a、136b 圧力室
137 ピストン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物を支持する免震部材と、前記建物と地盤との間に設置され、前記地盤から入力された震動を減衰する震動減衰手段を備えた免震システムであって、
前記震動減衰手段は、
一端側が前記建物または前記地盤の何れか一方と締結される第1固定手段と、
一端側が前記建物または前記地盤の何れか他方と締結される第2固定手段と、
前記第1固定手段の他端側と前記第2固定手段の他端側との間に接続される複数の流体圧緩衝器と、
前記第1及び第2固定手段の一端側と他端側の間にそれぞれ設けられる自在継手と、を備え、
前記第1固定手段の他端側は、並列に複数配される前記流体圧緩衝器の隣接する間に設けることを特徴とする免震システム。
【請求項2】
前記流体圧緩衝器は、
作動流体が充填されるシリンダと、
該シリンダ内に挿入されて前記シリンダ内を2つの圧力室に画成するピストンと、
一端が前記ピストンに連結され、他端が前記シリンダの一端部から外部に延出されたピストンロッドと、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の免震システム。
【請求項3】
前記第1、第2の固定手段の少なくとも一方には、前記流体圧緩衝器の軸方向への移動を規制し、軸方向と直交する側への移動を許容する接続機構を設けることを特徴とする請求項1、2の何れかに記載の免震システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−112216(P2011−112216A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272558(P2009−272558)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(307041573)三菱FBRシステムズ株式会社 (13)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】