説明

入力装置及び電子機器

【課題】比較的近距離に存在する比較的小さな検出対象の3次元的な位置、形状、速度を正確に検出することができ、検出対象の検出結果に対応した入力を行うことができる入力装置と、その入力装置を備えた電子機器を提供する。
【解決手段】超音波を発信して反射された超音波を受信する超音波センサーユニット1Aを備え、超音波センサーユニット1Aから発信された超音波と、検出対象により反射され超音波センサーユニット1Aにより受信された超音波と、に基づいて検出対象の位置、形状及び速度を算出する制御演算部を備え、超音波センサーユニット1Aは、複数の開口部11aが形成された基部11と、基部11に設けられ開口部11aを閉塞する振動板と、開口部11aの各々に対応して振動板に設けられた圧電体と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波センサーを備えた入力装置及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、超音波を発信して障害物により反射された超音波を受信する超音波センサーが知られている。このような超音波センサーとして、自動車に搭載された障害物センサーが開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の超音波センサーは、超音波の送受信が可能な素子から超音波を送信して、被検出体に当って反射された超音波をこの素子によって受信する。これにより、自動車の周囲にある物体の位置測定又は距離測定や、その物体の2次元形状または3次元形状の測定などを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−99103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の超音波センサーを例えばPDA(Personal Data Assistance)や、PC(Personal Computer)等の電子機器の入力装置に用いる場合には、以下のような課題がある。
【0005】
特許文献1の超音波センサーは車載用として用いられ、比較的遠距離に存在する大きな障害物の位置、距離、形状等を検出するためのものである。超音波センサーによって遠距離の障害物を測定するためには、超音波の減衰を避けるため周波数を低下させ波長を長くする必要がある。超音波の波長が長くなると、検出対象の3次元的な位置の測定や動作を検出する分解能が低下する。したがって、このような超音波センサーでは、例えば人の手の動きや入力用のペン等の動作等、比較的近距離に存在する比較的小さな検出対象の3次元的な位置、形状、速度を正確に検出することができないという課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、比較的近距離に存在する比較的小さな検出対象の3次元的な位置、形状、速度を正確に検出することができ、測定対象の検出結果に対応した入力を行うことができる入力装置と、その入力装置を備えた電子機器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の入力装置は、超音波を発信して反射された前記超音波を受信する超音波センサーユニットを備え、前記超音波センサーユニットから発信された超音波と、検出対象により反射され前記超音波センサーユニットにより受信された前記超音波と、に基づいて前記検出対象の位置、形状及び速度を算出する制御演算部を備え、前記超音波センサーユニットは、複数の開口部が形成された基部と、前記基部に設けられ前記開口部を閉塞する振動板と、前記開口部の各々に対応して前記振動板に設けられた圧電体と、を有することを特徴とする。
【0008】
このように構成することで、制御演算部により所定の周波数の超音波を発生するための電圧波形を圧電体に印加して、圧電体により基部の開口部を閉塞する振動板を振動させることができる。そして、超音波センサーユニットの基部の開口部から所定の周波数の超音波を発信することができる。
超音波センサーユニットから発信された超音波は、超音波が到達する領域内に検出対象が存在する場合には、その検出対象により反射される。検出対象によって反射され超音波センサーユニットの振動板に到達した超音波は、振動板を振動させる。振動板の振動は、圧電体により電気信号に変換され、制御演算部に伝達される。
【0009】
これにより、制御演算部は、発信された超音波の波形、複数の開口部の各々に対応する圧電体によって受信された超音波の波形、超音波が発信されてから受信されるまでの時間等に基づいて、検出対象の位置、形状及び速度を算出することができる。
また、開口部の寸法及び振動板の厚さを調整することで、開口部における振動板の固有振動数を調整することができる。これにより、超音波センサーユニットによって波長の短い高周波数の超音波を発信及び受信し、比較的近距離に存在する検出対象の分解能を向上させることができる。
したがって、本発明の入力装置によれば、超音波センサーユニットにより比較的近距離に存在する比較的小さな検出対象の3次元的な位置、形状、速度を正確に検出することができ、電子機器等に超音波センサーユニットの検出結果に対応した入力を行うことができる。
【0010】
また、本発明の入力装置は、前記超音波センサーユニットが発信する前記超音波の周波数は100kHz以上であることを特徴とする。
【0011】
このように構成することで、超音波センサーユニットが発信する超音波の波長が十分に短くなり、比較的近距離に存在する検出対象の分解能が向上する。したがって、超音波センサーユニットによって比較的近距離に存在する比較的小さな検出対象の3次元的な位置、形状、速度を正確に検出することができる。
【0012】
また、本発明の入力装置は、前記超音波センサーユニットは、前記超音波を発信する発信素子と、前記超音波を受信する受信素子と、を有することを特徴とする。
【0013】
このように構成することで、発信素子における振動板の固有振動数と受信素子における振動板の固有振動数とを異ならせることができる。これにより、発信素子によって所定の周波数で発信され、検出対象により反射してドップラー効果により周波数が変化した超音波を、受信素子により検出することができる。したがって、検出対象の速度をより正確に算出することができる。
【0014】
また、本発明の入力装置は、前記振動板の前記基部とは反対側に反射板が設けられ、前記反射板は前記圧電体の周囲を覆う反射室を有することを特徴とする。
【0015】
このように構成することで、反射板によって超音波を反射させ、超音波の発信をより効率よく行うことができる。
【0016】
また、本発明の入力装置は、前記受信素子に属する前記開口部は前記振動板から遠ざかるほど拡大するテーパー形状に形成されていることを特徴とする。
【0017】
このように構成することで、測定対象に反射された超音波が基部によって遮られることを防止できる。
【0018】
また、本発明の入力装置は、前記基部はシリコンにより形成され、前記振動板はシリコン酸化物により形成されていることを特徴とする。
【0019】
このように構成することで、フォトリソグラフィ法、エッチング法等の微細加工技術を用いて基部を高密度で精密に加工することが可能になる。また、基部を熱酸化させ、あるいはスパッタ法等によりシリコン酸化物を堆積させて振動板の厚さを精密に制御することが可能となる。したがって、高周波数の超音波を発信及び受信することが可能な超音波センサーユニットを容易に製造することが可能になる。
【0020】
また、本発明の電子機器は、上記いずれかの入力装置を備えたことを特徴とする。
【0021】
このように構成することで、入力装置が備える超音波センサーユニットにより比較的近距離に存在する比較的小さな検出対象の3次元的な位置、形状、速度を正確に検出し、入力装置が備える制御演算部により電子機器に対して超音波センサーユニットの測定結果に対応した入力を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第一実施形態におけるPDAの斜視図である。
【図2】本発明の第一実施形態における超音波センサーユニットの斜視図である。
【図3】図2に示す入力装置の制御回路部のシステム構成図である。
【図4】図2のA−A’線に沿う超音波センサーの拡大断面図である。
【図5】本発明の第二実施形態における超音波センサーの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第一実施形態>
以下、本発明の第一実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各図面では、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や部材毎に縮尺を適宜変更している。
図1は本実施形態のPDA(Personal Data Assistance)100の構成を模式的に表す斜視図である。図2は本実施形態のPDA100が備える入力装置10の構成を模式的に表す分解斜視図である。図3は本実施形態の入力装置10の制御回路部40のシステム構成を模式的に表すシステム構成図である。
【0024】
図1に示すように、本実施形態のPDA(電子機器)100は本体30に表示部20を備えている。表示部20は例えば液晶パネルや有機ELパネル等からなり、本体30内部に収容された制御・演算部に接続され、種々の操作画像やその他の情報を表示するように構成されている。また、本体30の外周には、超音波センサーユニット1A(図2参照)を備えた入力装置10が設置されている。入力装置10は、例えば人の手、指、入力用のペン等の位置、形状、速度を超音波センサーユニット1Aにより検出して、それらに対応する信号をPDA100へ入力する。
【0025】
図2に示すように、超音波センサーユニット1Aは複数の開口部11aがアレイ状に形成された基部11を備えている。基部11は例えば単結晶シリコン基板等により形成されている。開口部11aの各々には、超音波センサー1が設けられている。すなわち、超音波センサーユニット1Aは基部11の一面に複数の超音波センサー1がアレイ状に配置された構成となっている。
【0026】
各々の超音波センサー1にはそれぞれ配線(図示略)が接続され、各配線は基部11に接続されたフレキシブルプリント基板12を介して制御基板13の端子部13aに接続されている。制御基板13には制御演算部、記憶部等からなる制御回路部40が設けられている。制御回路部40は、超音波センサー1に入力する入力信号を制御すると共に、超音波センサー1から出力された出力信号を処理するように構成されている。
【0027】
図3に示すように、制御回路部40は超音波センサーユニット1Aに接続され、主に制御演算部41と、記憶部42と、超音波発生部43と、超音波検出部44と、送受信を切り替えるT/Rスイッチ45とを備えている。超音波発生部43は、サイン波を発生させるサイン波発生部43aと、個々の超音波センサー1に対して設けられサイン波の位相を変化させる位相部43bと、ドライバー43cとにより構成されている。超音波検出部44は、主に増幅部44aと、A/D変換部44bとにより構成されている。尚、超音波発生波形はサイン波に拘らず、たとえば回路簡略化のため矩形波や三角波を適宜組み合わせて用いたものでもよい。
【0028】
制御演算部41は、超音波センサーユニット1Aによる超音波の発信時には、サイン波発生部43aによりサイン波を発生させ、位相部43bによりサイン波を個々の超音波センサー1に対応する位相に変化させる。また、制御演算部41は、超音波センサーユニット1Aの超音波の受信時には、T/Rスイッチ45を切り換えて超音波センサーユニット1Aから出力された出力信号を増幅部44aに伝送させる。また、制御演算部41は、記憶部42に記憶された情報をPDA100の制御・演算部(図示略)に出力可能に構成されている。
【0029】
また、制御演算部41は、超音波センサーユニット1Aから発信された超音波と、検出対象により反射され超音波センサーユニット1Aにより受信された超音波と、に基づいて検出対象の位置、形状、速度を算出するように構成されている。
具体的には、制御演算部41は、超音波センサー1によって超音波を発信した後、検出対象により反射された超音波が複数の超音波センサー1によって検出されるまでの時間から、各超音波センサー1と検出対象との距離を算出するようになっている。これにより、検出対象の3次元形状及び位置を算出するようになっている。
【0030】
また、制御演算部41は、超音波の発信と受信を所定の周期で繰り返すことで、検出対象の速度、動作を検出する。さらに、移動する検出対象によって反射され、ドップラー効果により周波数が変化した超音波を超音波センサー1により検出し、検出対象の移動方向及び速度を算出する。
【0031】
図4は、図2に示す超音波センサーアレイをA−A’線で切断し、超音波センサー1を拡大して表した拡大断面図である。
ここで、図2では基部11に設けられた開口部11aの形状を平面視で矩形状に表したが、以下では開口部11aの形状が平面視で円形状である場合について説明する。
【0032】
図4に示す本実施形態の超音波センサー1は、超音波を発信又受信する超音波センサーである。超音波センサー1は、開口部11aが形成された基部11と、基部11の開口部11aを閉塞するように設けられた振動板2と、振動板2の基部11と反対側に設けられた圧電体3と、圧電体3に接続された下部電極4及び上部電極5とを備えている。
基部11に形成された開口部11aの深さdは、例えば約100μm程度である。
【0033】
振動板2は、基部11側に設けられ例えばSiOにより形成された第1酸化膜2aと、第1酸化膜2aの基部11とは反対側に積層され例えばZrOにより形成された第2酸化膜2bとの二層構造となっている。第1酸化膜2aは例えば単結晶シリコン基板の表面を熱酸化させることにより約3μm程度の厚さに形成されている。第2酸化膜2bは例えばCVD(化学気相成長)法等により約400nm程度の厚さに形成されている。
【0034】
振動板2が開口部11aと平面的に重なって開口部11aに露出された領域は、振動板2の振動領域Vとなっている。開口部11aの径Dは振動領域Vの振動板2の固有振動数に応じて例えば約100μm〜数百μm程度の範囲で適宜設定されている。振動板2の振動領域Vで基部11と反対側の面には下部電極4が設けられている。
【0035】
下部電極4は、超音波センサーユニット1Aの制御回路部40に接続された配線(図示略)に接続されている。下部電極4は例えばIr等の導電性金属材料により約200nm程度の厚さに形成されている。下部電極4上には振動領域Vに対応して圧電体3が設けられている。
【0036】
圧電体3は振動板2の基部11とは反対側で開口部11aと平面的に重なる振動領域Vに島状に設けられている。圧電体3は例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、BaTiO(チタン酸バリウム)等により約1.4μm程度の厚さに形成されている。圧電体3の上には上部電極5が形成されている。
【0037】
上部電極5は例えばIr等の導電性金属材料により形成され、圧電体3に接触して電気的に接続されている。上部電極5の厚さは例えば約50nm程度となっている。また、上部電極5は配線(図示略)を介して入力装置10の制御回路部40に接続されている。
【0038】
次に、本実施形態のPDA100及び入力装置10の作用について説明する。
図1に示すように、PDA100において人の手や指の位置、形状、速度を検出する際には、入力装置10の超音波センサーユニット1A(図2参照)により、所定の検出領域に超音波を発信する。
【0039】
まず、入力装置10の制御回路部40により、超音波センサー1の上部電極5と下部電極4との間に電圧を印加する。
具体的には、図3に示すようにサイン波発生部43aに所定の周波数の超音波を発生するためのサイン波を発生させる。そして、制御演算部41によって、位相部43b、T/Rスイッチ45を制御する。これにより、超音波センサーユニット1Aの各々の超音波センサー1の下部電極4と上部電極5との間に少しずつ位相をずらしたサイン波電圧を印加する。
【0040】
図4に示すように振動板2の振動領域Vに形成された圧電体3は、上部電極5と下部電極4との間にサイン波電圧が印加されると、振動板2の面方向に伸長されたり圧縮されたりする。圧電体3が振動板2の面方向に伸長されると、振動板2の圧電体3側が面方向に伸長され、振動板2の振動領域Vが基部11側に凹(図の上方向に凸)となるように撓む。
【0041】
また、圧電体3が振動板2の面方向に圧縮されると、振動板2の圧電体3側が面方向に圧縮され、振動板2の振動領域Vが基部11側に凸(図の上方向に凹)となるように撓む。これにより、振動領域Vの振動板2が法線方向に振動し、各々の超音波センサー1の振動領域Vからサイン波電圧の周期に応じた振動数の超音波が発信される。本実施形態において発信される超音波の周波数は100kHz以上であり、解像度を向上させるためは200kHz以上であることが好ましい。また、検出領域を実用的な範囲とするためには、周波数は1MHz以下であることが好ましい。
【0042】
各々の超音波センサー1の下部電極4aに少しずつ位相をずらしたサイン波電圧を印加することで、各々の超音波センサー1の振動領域Vの振動板2は、少しずつ位相がずれた状態で振動する。各々の超音波センサー1の振動領域Vの振動板2が少しずつ位相のずれた状態で振動することで、各々の超音波センサー1から発せられる超音波が干渉する。この超音波の干渉により、超音波の進行方向が振動板2の法線方向に対して傾いた状態となり、超音波に指向性が付与される。
【0043】
この超音波の指向性の変化を利用し、各々の超音波センサー1の圧電体3に印加するサイン波電圧の位相のずれを変化させることで、図1に示す入力装置10の超音波センサーユニット1Aから発信される超音波の方向を変化させ、入力装置10の検出領域を走査する。
検出領域の範囲は、超音波センサーユニット1Aから発信される超音波の周波数に依存する。例えば、発信する超音波の周波数が100kHz以上の場合には、検出領域は超音波が到達する範囲でかつ超音波センサーユニット1Aからの距離が約2000mm以内の領域となる。また、発信する超音波の周波数が200kHz以上の場合には、検出領域は超音波が到達する範囲でかつ超音波センサーユニット1Aからの距離が約500mm以内の領域となる。
【0044】
例えば、開口部11aのピッチPを約250μm、開口部11aの径Dを200μm、振動板2の振幅を約3μm以上かつ約10μm以下の範囲とし、超音波センサーユニット1Aの一辺の寸法を約4mmとする。そして、発信する超音波の振動数を340kHz、音圧を約50dB以上かつ約130dB以下の範囲とした場合には、検出領域は超音波センサーユニット1Aからの距離が約500mm以内の範囲となる。このときの入力装置10の解像度(分解能)は約1mmとなる。
【0045】
また、開口部11aのピッチPを約220μm、開口部11aの径Dを170μm、振動板2の振幅を約2μm以上かつ約8μm以下の範囲とし、超音波センサーユニット1Aの一辺の寸法を約3.5mmとする。そして、発信する超音波の周波数を500kHz、音圧を約30dB以上かつ約100dB以下の範囲とした場合には、検出領域は超音波センサーユニット1Aからの距離が約200mm以内の範囲となる。このときの入力装置10の解像度(分解能)は約0.7mmとなる。
【0046】
図1に示すように検出領域内に例えば人の手や指が存在すると、入力装置10の超音波センサーユニット1Aから発信された超音波は人の手や指によって反射する。人の手や指によって反射した超音波が超音波センサーユニット1Aの超音波センサー1に到達すると、超音波センサー1の振動領域Vの振動板2が振動する。振動領域Vの振動板2が振動すると、圧電体3が振動板2の面方向の伸縮に伴って伸縮され、圧電体3に電位差が発生する。
【0047】
圧電体3に発生した電位差は、上部電極5及び下部電極4に接続された配線(図示略)によって超音波センサー1の出力信号として入力装置10の制御回路部40に伝送される。入力装置10の制御回路部40に伝送された個々の超音波センサー1からの出力信号は、T/Rスイッチ45、増幅部44a、A/D変換部44bを介して記憶部42に記録される。制御演算部41は、超音波センサーユニット1Aから発信された超音波の情報と、検出対象により反射され超音波センサーユニット1Aにより受信された超音波の情報と、に基づいて検出領域の人の手や指の形状、距離、移動速度を算出して出力する。
【0048】
具体的には、制御演算部41は、超音波センサー1によって超音波を発信した後、発信した超音波の情報を記憶部42に記録する。また、人の手や指によって反射され複数の超音波センサー1によって検出された超音波の情報をそれぞれ記憶部42に記録する。そして、発信した超音波が人の手や指によって反射され受信されるまでの時間から、各々の超音波センサー1と人の手や指との距離を算出する。これにより、人の手や指の3次元形状及び位置を算出する。
【0049】
また、制御演算部41は、超音波の発信と受信を所定の周期で繰り返すことで、人の手や指の移動を検知し、その速度、動作を算出する。さらに、手や指が所定の動作を行う場合には、動作中の手や指によって反射され、ドップラー効果により周波数が変化した超音波の情報を超音波センサー1により検出して記憶装置24に記録し、人の手や指の移動方向及び速度を算出する。そして、これら移動方向及び速度の情報を人の手や指の状態や動作の情報として出力する。
【0050】
PDA100の制御・演算部(図示略)は、入力装置10によって入力された手や指の状態や動作と、予め登録された手や指の状態や動作とを比較する。比較の結果、入力装置10によって入力された人の手や指の状態や動作が予め登録されたものと一致すれば、人の手や指の形状や動作を所定の入力として認識し、例えば表示部20に画像を表示させる等、予め登録された所定の動作を実行する。
【0051】
人の手や指の動作を検出してPDA100が実行する動作の一例としては、例えば親指と人差し指を擦り合わせる動作を検出して、PDA100おいてページめくり動作を実行させる。また、人差し指と中指の先端を円運動させる動作を検出して、PDA100おいてオブジェクトの回転動作を実行する。また、人差し指の動作を検出することで、PDA100おいてポインティング動作を実行する。また、親指の先端と人差し指の先端を接触させる動作を検出して、PDA100おいてクリック動作を実行する、等である。
【0052】
本実施形態の入力装置10によれば、従来のタッチパネルに代わる非接触の入力装置を提供することができ、上記したような3次元の豊かな表現による入力が可能となる。したがって、表示部20の表示パネルの透過度を向上させることができ、タッチパネルを用いる場合と比較して表示品質を著しく向上させることができる。また、表示部20に触れる必要がないので、表示部20に指紋等が付着することを防止できる。
【0053】
また、超音波センサーユニット1Aの開口部11aの径D及び振動板2の厚さを調整することで、開口部11aにおける振動板2の固有振動数を調整し、波長の短い高周波数の超音波を発信及び受信可能にして、比較的近距離に存在する検出対象の分解能を向上させることができる。
【0054】
また、超音波センサーユニット1Aから発信される超音波の周波数を100kHz以上とすることで、超音波センサーユニット1Aが発信する超音波の波長が十分に短くなり、比較的近距離に存在する検出対象の分解能が向上する。したがって、超音波センサーユニット1Aによって比較的近距離に存在する比較的小さな人の手や指、あるいはタッチペン等の3次元的な位置、形状、速度を正確に検出することができる。
また、超音波センサーユニット1Aから発信される超音波の周波数を200kHz以上とすることで、解像度をさらに向上させることができる。また、発信される周波数を1MHz以下とすることで検出領域をPDA100を用いる際に実用的な範囲とすることができる。
【0055】
また、入力装置10の超音波センサーユニット1Aは、単結晶シリコン基板により形成された基部11を備えている。そのため、フォトリソグラフィ法、エッチング法等の微細加工技術を用いて基部11の開口部11aを精密に加工することが可能になる。
【0056】
また、振動板2はSiO等のシリコン酸化物により形成された第1酸化膜2aと、ZrO等により形成された第2酸化膜2bとにより形成されている。そのため、基部11の表面を熱酸化させて振動板2の第1酸化膜2aを形成し、CVD法、スパッタリング法等により第2酸化膜2bを形成することができる。これにより、振動板の厚さを精密に制御することが可能となる。したがって、高周波数の超音波を発信及び受信することが可能な超音波センサーユニット1Aを容易に製造することが可能になる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態の入力装置10によれば、比較的近距離である検出領域に存在する比較的小さな人の手や指、ペン等の3次元的な位置、形状、速度を超音波センサーユニット1Aにより正確に検出することができ、PDA100等の電子機器に超音波センサーユニット1Aの検出結果に対応した入力を行うことができる。
【0058】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態について、図1〜図3を援用し、図5を用いて説明する。本実施形態では、超音波センサーユニットに反射板が設けられ、超音波センサーの発信素子と受信素子の開口部の形状が異なっている点で上述の第一実施形態で説明した入力装置と異なっている。その他の点は第一実施形態と同様であるので、同一の部分には同一の符号を付して説明は省略する。
【0059】
図5は、第一実施形態の図4に相当する本実施形態の超音波センサーの拡大図断面図である。
図5に示すように、本実施形態の超音波センサーユニット1Bは、振動板2の基部11とは反対側に反射板14が設けられている。反射板14は、例えば基部11と同様の単結晶シリコン基板により形成されている。反射板14には、個々の超音波センサー1に対応して、内部に圧電体3を収容する空洞状の反射室15が形成されている。反射室15の径D1は開口部11aの径Dと略等しいかそれよりもやや大きく形成されている。また、振動板2の表面から反射室15の反射面15aまでの距離D2は、発信する超音波の波長λに基づいて決定され、例えば、nを自然数として(n+1/2)λに設定されている。
【0060】
また、本実施形態では、超音波センサーユニット1Bは超音波センサー1として、超音波を発信する発信素子1aと、超音波を受信する受信素子1bと、を有している。
受信素子1bの開口部11bは、内側面が振動板2に対して傾斜して設けられ、振動板2から遠ざかるほど拡大するテーパー形状に形成されている。すなわち、振動板2の近傍の径Dは発信素子1aの開口部11aの径Dと略等しく、開口縁近傍の開口部11bの径D3はそれよりも大きくなっている。
【0061】
次に、この実施の形態の作用について説明する。
超音波センサーユニット1Bの発信素子1aにより超音波を発信すると、振動板2の基部11側に超音波が発信されると共に、基部11と反対側にも超音波が発信される。ここで、本実施形態では、反射室15を有する反射板14が振動板2の基部11と反対側に設けられている。したがって、振動板2の基部11と反対側に発信された超音波は、反射室15の反射面15aによって反射され、振動板2に入射する。
【0062】
ここで、振動板2の表面から反射室15の反射面15aまでの距離がnを自然数として(n+1/2)λに設定されている。そのため、反射室15の反射面15aで反射した超音波は、振動板2から発信され波長λの整数倍の経路を経て再び振動板2に入射する。したがって、振動板2に入射した超音波の位相は、振動板2の振動の位相と一致して振動板2の振動を増幅させるように作用する。これにより、超音波の発信をより効率よく行うことができる。
【0063】
また、本実施形態では、例えば発信素子1aと受信素子1bの径Dを異ならせ、発信素子1aにおける振動板2の固有振動数と受信素子1bにおける振動板2の固有振動数とを異ならせることができる。これにより、発信素子1aによって所定の周波数で発信され、人の手や指により反射してドップラー効果により周波数が変化した超音波を、受信素子1bにより検出することができる。したがって、制御演算部41により検出対象の速度をより正確に算出することができる。
【0064】
また、受信素子1bの開口部11bは、内側面が振動板2に対して傾斜して設けられ、振動板2から遠ざかるほど拡大するテーパー形状に形成されている。したがって、人の手や指等の測定対象に反射され、受信素子1bの開口部11bに対して角度を持って入射する超音波が基部11によって遮られることを防止することができる。
【0065】
尚、この発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、電子機器はPDAに限られない。本発明の入力装置は、例えば人の指の動きを検出することで、パーソナルコンピュータのバーチャルキーボードとして利用することも可能である。また、血流等の液体の速度検出装置として用いてもよい。また、手話の翻訳機等にも応用することができる。
【0066】
また、振動板の材料としては、シリコン酸化物以外にも、ニッケル、クロム、アルミニウムのような金属材料及び、それらの酸化物であるセラミック材料、シリコン、有機樹脂を用いた高分子有機物等を用いることができる。また、酸化膜は基板表面の熱酸化以外に、CVD、スパッタリング、蒸着、塗布等、或いはこれらの金属膜成膜と熱酸化の組み合わせにより形成してもよい。
また、基部に形成する開口部の平面形状は矩形状や円形状に限られない。
また、入力装置は複数の超音波センサーユニットを備えていてもよい。これにより、検出対象の複数の方向の速度をより正確に検出することが可能になる。
【符号の説明】
【0067】
2 振動板、3 圧電体、1a 発信素子、1b 受信素子、1A,1B 超音波センサーユニット、11 基部、11a,11b 開口部、14 反射板、15 反射室、100 PDA(電子機器)、10 入力装置、41 制御演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を発信して反射された前記超音波を受信する超音波センサーユニットを備え、
前記超音波センサーユニットから発信された超音波と、検出対象により反射され前記超音波センサーユニットにより受信された超音波と、に基づいて前記検出対象の位置、形状及び速度を算出する制御演算部を備え、
前記超音波センサーユニットは、複数の開口部が形成された基部と、前記基部に設けられ前記開口部を閉塞する振動板と、前記開口部の各々に対応して前記振動板に設けられた圧電体と、を有することを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記超音波センサーユニットが発信する前記超音波の周波数は100kHz以上であることを特徴とする請求項1記載の入力装置。
【請求項3】
前記超音波センサーユニットは、前記超音波を発信する発信素子と、前記超音波を受信する受信素子と、を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の入力装置。
【請求項4】
前記振動板の前記基部とは反対側に反射板が設けられ、前記反射板は前記圧電体の周囲を覆う反射室を有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項記載の入力装置。
【請求項5】
前記受信素子に属する前記開口部は前記振動板から遠ざかるほど拡大するテーパー形状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の入力装置。
【請求項6】
前記基部はシリコンにより形成され、前記振動板はシリコン酸化物により形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の入力装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の入力装置を備えた電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−164331(P2010−164331A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4774(P2009−4774)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】