説明

入退室管理システム

【課題】退室者が残留者の有無を確実に確認して最終退室処理を行うことができる入退室管理システムを提供する。
【解決手段】入室履歴および退室履歴から残留者を検知し、残留者の有無に関する情報を室外に設けられる入側端末側に表示する表示手段を備える。さらに、残留者が居ないことを示す情報が表示手段に表示される場合、警戒状態設定手段からの設定入力待ちとし、設定入力が入力されると、防犯センサの検知信号により警報信号が発報される警戒状態に設定する手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認証情報に基づいて出入口の開閉を制御する入退室管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ビルや工場に導入されている入退室管理システムは、IDカードや生体情報などの認証情報を利用してセキュリティエリアへの入退室を制限する機能を有している。さらにセキュリティを高めるために、夜間など無人状態となる時間帯においては、不正な侵入者を検知するために、扉の不正な解錠,こじ開け、エリア内に移動体が存在するかどうかといったパッシブセンサなどの防犯センサの反応によって外部に警報を出力する警戒状態を設定する機能を有するものもある。
【0003】
このような警戒状態は、退室者がカードリーダなどの認証端末を最終退室操作することにより設定される。この時、室内の照明の光量を変化させたり、室内に音声放送を流したりすることにより、残留者に最終退室処理がなされていることを報知する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−353569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術においては、残留者が照明の変化や放送に気付かない場合、室内に残留者を残したまま、最終退室処理が完了し、警戒状態が設定される。このため、防犯センサが残留者に反応して、不要な警報が発せられるという問題が有る。
【0006】
本発明は、上述の問題点を考慮してなされたものであり、退室者が残留者の有無を確実に確認して最終退室処理を行うことができる入退室管理システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による入退室管理システムにおいては、入室履歴および退室履歴から残留者を検知し、残留者の有無に関する情報を室外に設けられる入側認証端末側に表示する表示手段を備える。さらに、本システムは、残留者が居ないことを示す情報が表示手段に表示される場合、警戒状態設定手段からの設定入力待ちとし、設定入力が入力されると、防犯センサの検知信号により警報信号が発報される警戒状態を設定する手段を備える。
【0008】
なお、本発明による入退室管理システムは、好ましくは、残留者が居ることに関する情報が表示手段に表示される場合、入側端末側からの操作入力待ちとし、操作入力が入力されると、警戒状態が解除された通常状態を維持する手段を備える。警戒状態設定手段としては、例えば、IDカードおよびカードリーダ部を含む手段を用いることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、最終退室者が室外において残留者の有無を確実に確認してから、警戒状態を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態である入退室管理システムを示す。
【図2】記録装置に記録される入退室履歴データの構成を示す。
【図3】セキュリティエリアの室外において出入口付近に設けられる入側認証端末1aの外観を模式的に示す。
【図4】図1の入退室管理システムのデータ処理フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の一実施形態である入退室管理システムを示す。
【0012】
セキュリティエリアの室外において出入口付近には、入室者が自己の認証情報を入力するための入側認証端末1aが設けられる。入出者が入側認証端末1aのカードリーダ部に認証媒体である非接触IDカードを近接させると、IDカードに記録されている認証情報であるIDデータが入側認証端末1aによって読み取られ、コントローラ2を介して管理端末4に伝送される。管理端末4は、入室を許可された者のIDが登録されたデータベース6を備え、伝送されたIDデータとデータベース6に登録されたIDとを照合し、同じIDが登録されていれば、入室可であることを示す信号をコントローラ2に発信し、入室履歴として入室者のIDデータおよび入室時刻を記録装置7に記録する。未登録のIDであれば、管理端末4は、入室不可であることを示す信号をコントローラ2に発信する。コントローラ2は、管理端末4から受けた入室可の信号および入室不可の信号に応じて、それぞれ、電気錠5a〜5nの内、出入口に設けられる電気錠の開錠および施錠を制御する。
【0013】
セキュリティエリアの室内において出入口付近には、退室者が自己の認証情報を入力するための出側認証端末1bが設けられる。退室者が出側認証端末1bのカードリーダ部に認証媒体である非接触IDカードを近接させると、IDカードに記録されている認証情報であるIDデータが出側認証端末1bによって読み取られ、コントローラ2を介して管理端末4に伝送される。管理端末4は、記録装置7に記録された入室履歴を検索して、伝送されたIDデータと同じIDデータが抽出されれば、退室可であることを示す信号をコントローラ2に発信し、退室履歴として退室者のIDデータおよび退室時刻を記録装置7に記録する。コントローラ2は、管理端末4から退室可であることを示す信号を受け取ると、出入口に設けられる電気錠を制御して開錠する。伝送されたIDデータと同じIDデータが抽出されない場合、管理端末4は、退室不可である信号をコントローラ2に発信する。コントローラ2は、退室不可である信号を受け取ると、電気錠の開錠制御を実施せず施錠を維持する。この時、コントローラ2は、出側認証端末1bに指令信号を送り、出側認証端末1bからアラームを発生させる。
【0014】
ここで、管理端末4は、記録装置7に記録された入室履歴を検索するとともに、出側認証端末1bによって読み取られたIDデータとデータベース6に登録されたIDとを照合しても良い。この場合、未登録のIDであれば、管理端末4はコントローラ2に警報信号を送信する。コントローラ2は、警報信号を受信すると、管理人室や警備員室あるいは警備会社などに不審者が入室した旨の情報をメールや音声によって報知する。
【0015】
図2は、管理端末4が備える記録装置7に記録される入退室履歴データの構成を示す。入室履歴の記録領域には、入室者のIDデータと入室時刻が対で記録される。また、退室履歴を記録する領域には、退室者のIDデータと退室時刻が対で記録される。入退室の時刻は、管理端末4が備えるタイマーで計測し、管理端末4が入退室可である者のIDデータであると判定した時のタイマーの値が入退室時刻として記録される。なお、コントローラ2から管理端末4にIDデータと時刻データを対にして伝送し、入退室可である場合に、そのデータ対を記録するようにしても良い。
【0016】
管理端末4は、記録装置7に図2に示したような入室履歴および退室履歴が記録されるたびに、入室履歴の数と退室履歴の数との差分すなわち履歴差を演算して記録装置7あるいは他の記憶装置に記録する。
【0017】
図3は、セキュリティエリアの室外において出入口付近に設けられる入側認証端末1aの外観を模式的に示す。なお、出側認証端末1bの外観もほぼ同様であるが、残留者情報表示部1a3および警戒ボタンスイッチ1a2は不要である。
【0018】
上述したように、入側認証端末1aは、通常、入室者がセキュリティエリア内に入室する時に電気錠を開錠するために用いられるが、その際、入室者は入側認証端末1aのカードリーダ部1a1に非接触IDカードを近接させる。また、最終退室者が出側認証端末1bを操作して室外に出て出入口を閉じた後、最終退室者が、所定の操作入力として、警戒ボタンスイッチ1a2を押下すると、入側認証端末1aはコントローラ2を介して管理端末4に残留者情報確認指令を送信する。管理端末4は、残留者情報確認指令を受けると、記録装置7または他の記憶装置から入退室履歴の履歴差を読み出してコントローラ2に送信する。コントローラ2は、受信した履歴差が0であるか否かを判定し、履歴差が0である場合は、入側認証端末1aにセキュリティエリア内に残留者が居ないことを示す情報を表示するための表示指令信号を送る。入側認証端末1aは、表示指令信号を受けると、残留者情報表示部1a3に残留者が居ないことを示す文字情報や記号情報を表示する。例えば、「空室」というような文字情報が表示される。
【0019】
他方、受信した履歴差が0でない場合、コントローラ2は、入側認証端末1aにセキュリティエリア内に残留者が居ることを示す情報を表示するための表示指令信号を送る。入側認証端末1aは、表示指令信号を受けると、残留者情報表示部1a3に残留者が居ることを示すための文字情報や記号情報を表示する。例えば、「使用中」というような文字情報が表示される。
【0020】
最終退室者が、残留者情報表示部1a3に残留者が居ないことを示す情報が表示されたことを確認後、非接触IDカードをカードリーダ部1a1に近接させると、コントローラ2はシステムを警戒状態に設定する。この警戒状態においては、パッシブセンサ3a〜3nが人体を検知すると、コントローラ2はセキュリティエリア内に異常が発生したことを示す警報を管理人室や警備員室あるいは警備会社などに発報する。なお、残留者がいる場合には、コントローラ2は、パッシブセンサ3a〜3nからの信号を無効と判定し、警報は発報されない。残留者情報表示部1a3に残留者が居ることを示す情報が表示された場合は、再度警戒ボタンスイッチ1a2を押下することにより、警戒状態が解除されている状態、すなわち上述したような入退室時の認証動作及び電気錠の開閉動作が実行されるシステムの通常状態が維持される。
【0021】
図4は、最終退室者によって警戒状態が設定される際における、図1の入退室管理システムのデータ処理フローを示すフローチャートである。
【0022】
警戒ボタンスイッチ1a2が押下されると(ステップS1)、コントローラ2が入退室履歴の履歴差データを読み出す(ステップS2)。コントローラ2は履歴差が0であるか否かを判定し(ステップS3)、履歴差が0でなければ残留者が室内に居ることを表示し(ステップS31)、警戒ボタンスイッチ再押下待ちとする(ステップS32)。警戒ボタンスイッチが再度押下されると(ステップS33)、警戒解除状態を維持したままで処理が終了する。履歴差が0である場合は、コントローラ2はパッシブセンサの異常診断を行い(ステップ4)、異常が検出されればセンサが異常であることを表示して(ステップS41)、さらに、履歴差が0でない場合と同様にステップS32,S33を実行して、警戒解除状態を維持したままで処理が終了する。パッシブセンサが正常である場合、コントローラ2は、次に各電気錠の施錠状態を検出して(ステップS5)、いずれかの電気錠が開錠状態であることが検出されると、電気錠が異常であることを表示して(ステップS51)、さらにステップS32,S33を実行して、警戒解除状態を維持したままで処理が終了する。すべての電気錠が施錠状態であることが検出されると、残留者が居ないことを表示して(ステップS6)、最終退室者による警戒状態設定入力待ちすなわち本実施例ではIDデータ入力待ちとする(ステップS7)。そして、最終退室者が入退室管理システムにIDデータを入力すると(ステップS8)、この入力に応じて警戒状態が設定されパッシブセンサの信号の受付を有効化し(ステップS9)、処理が終了する。
【0023】
以上説明した実施形態に限らず、本発明の技術的思想の範囲内において、種々の実施形態が可能である。例えば、認証端末は、指紋認証や指静脈認証など生体情報を用いるものでも良い。警戒ボタンスイッチや、警戒状態を設定する際のIDカード入力についても、それぞれ他のスイッチ手段や他の入力手段でも良い。パッシブセンサ以外にも、人感センサなどの各種防犯センサを用いることができる。また、入退室履歴データは、時刻を記録せず、IDデータを時系列あるいは記録順にスタック状に記録しても良い。また、さらに、IDカードによりIDデータを入力して警戒状態を設定する際に、退室履歴を検索して、入力されたIDデータが最終退室者のIDデータであることが検出されたり、あるいはデータベースと照合して登録されたIDであることが認証されたりしたら警戒状態を設定しても良い。
【符号の説明】
【0024】
1a 入側認証端末
1a1 カードリーダ部
1a2 警戒ボタンスイッチ
1a3 残留者情報表示部
1b 出側認証端末
2 コントローラ
3a〜3n パッシブセンサ
4 管理端末
5a〜5n 電気錠
6 データベース
7 記録装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外に設けられる入側認証端末に警戒状態設定手段を備える入退室管理システムにおいて、
前記入側認証端末から入力される認証データに基づいて、入室履歴が記録され、かつ室内に設けられる出側認証端末から入力される前記認証データに基づいて退室履歴が記録される記録手段と、
前記入側端末側からの操作入力に応じて、前記入室履歴および前記退室履歴から残留者を検知し、前記残留者の有無に関する情報を前記入側端末側に表示する表示手段と、
前記残留者が居ないことに関する情報が前記表示手段に表示される場合、前記警戒状態設定手段からの設定入力待ちとし、前記設定入力が入力されると、防犯センサの検知信号により警報信号が発報される警戒状態に設定する手段と、
を備えることを特徴とする入退室管理システム。
【請求項2】
請求項1において、前記残留者が居ることに関する情報が前記表示手段に表示される場合、前記入側端末側からの操作入力待ちとし、前記操作入力が入力されると、前記警戒状態が解除された通常状態を維持する手段と、
を備えることを特徴とする入退室管理システム。
【請求項3】
請求項1または請求項3において、前記警戒状態設定手段はIDカードおよびカードリーダ部を含むことを特徴とする入退室管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−205092(P2010−205092A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51456(P2009−51456)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】