説明

入退管理システム

【課題】前室に隣接する検査室等の主室に対する入退管理を行うための入退管理システムであって、認証作業を容易に行うことが可能となる入退管理システムを提供すること。
【解決手段】前室12の外部と当該前室12の相互間に設けられた第1扉15の開閉を検知する侵入検知装置40aと、前室12と検査室13の相互間に設けられた第2扉18の開閉を検知する侵入検知装置40bと、第2扉18の解錠又は施錠を行う電気錠装置50と、入退管理に関する報知出力を行う警報装置60と、検査室13の入室者に関する入室者情報を読み取るICタグ読取装置30と、入室者の入室権限情報を記憶する入室権限情報テーブル85aと、入室者情報と入室権限情報とに基づいて電気錠装置50又は警報装置60を制御するシステム制御装置80と、侵入検知装置40aと侵入検知装置40bの検知結果に基づいて電気錠装置50又は警報装置60を制御する扉連動制御部84bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入室者に対して入退管理を行うための入退管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療施設における検査装置(例えば、MRI、CT、又はPET等)が備えられた検査室には、人が当該検査室に無断で入ることで発生し得る磁性体持込事故や放射線被爆事故を防止するために、入退管理システムが用いられることがある。このような入退管理システムは、許可された医療関係者(医師、看護士、又は技師等)のみが検査室に入ることができるように、入室者の認証を行うものである。
【0003】
従来のこのような入退管理システムにおいては、例えば、入室が許可された入室者に、当該入室者を一意に識別するためのIDが記憶されたIDカード等の認証デバイスを所持させておき、検査室への入室時に、この検査室の入り口扉の近傍に設けたカード情報読取装置にIDカードを挿入してIDを読み取らせ、入退管理システム側において、当該読み取ったIDを予め登録されたIDと照合することにより、入室の可否を判定することが行われていた。例えば、特許文献1には、検査室に関するものではないが、識別情報を磁気的に記録したIDカードを用いて入退室管理を行うシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−037458
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の入退管理システムは、医療施設の検査室という特殊環境を考慮することなく、一般のオフィスビル等に適用されているシステムと同様に構成されていたので、特殊環境における利用者のニーズを反映したものとは言えなかった。
【0006】
例えば、医療施設の検査室に入室する医療関係者は、単独で入室する場合のみではなく、検査を行う患者を補助しながら一緒に入室する場合も多く、このような場合には医療関係者の手が塞がっているためにIDカードをカード情報読取装置に挿入等することが困難であった。このため、医療関係者は、患者を椅子等に座らせて待機させた状態で認証作業を行わなければならず、当該認証作業が煩雑となっていた。
【0007】
さらに、上述のような特殊な検査室とその外部(例えば廊下等)との間には、前室が設けられていることが多い。この前室は、検査装置の操作を行うための操作スペースとして利用されたり、患者が検査準備を行う待合スペースとして利用される部屋である。このような前室を伴う検査室において、廊下から前室に入室する扉と、及び前室から検査室に入室する扉の各々において、入室者の入退管理を行うとすると、認証作業が二重になり一層煩雑となっていた。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、前室に隣接する検査室等の主室に対する入退管理を行うための入退管理システムであって、認証作業を容易に行うことが可能となる入退管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の入退管理システムは、前室に隣接する主室に対する入退管理を行うための入退管理システムであって、前記前室の外部と当該前室の相互間に設けられた第1扉の開閉を検知する第1扉開閉検知手段と、前記前室と前記主室の相互間に設けられた第2扉の開閉を検知する第2扉開閉検知手段と、前記第2扉の解錠又は施錠を行う錠手段と、入退管理に関する報知出力を行う報知出力手段と、前記主室へ入室しようとする入室者に関する入室者情報を所定方法で読み取る入室者情報読取手段と、前記主室へ入室しようとする入室者の入室権限の有無を判定するための情報であって、前記入室者情報と関連付けられた入室権限情報を記憶する入室権限情報記憶手段と、前記入室者情報読取手段にて読み取られた前記入室者情報と、前記入室権限情報記憶手段にて記憶された前記入室権限情報とに基づいて、前記主室へ入室しようとする入室者の入室権限の有無を判定し、当該判定結果に基づいて、前記錠手段又は前記報知出力手段を制御する入室権限制御手段と、前記第1扉開閉検知手段の検知結果と、前記第2扉開閉検知手段の検知結果に基づいて、前記錠手段又は前記報知出力手段を制御する扉連動制御手段とを備える。
【0010】
請求項2に記載の入退管理システムは、請求項1に記載の入退管理システムにおいて、前記入室者情報読取手段は、前記入室者が保持する携帯端末に記憶された前記入室者情報を、当該入室者の人体を介した人体通信により読み取る。
【0011】
請求項3に記載の入退管理システムは、請求項1又は2に記載の入退管理システムにおいて、前記前室から前記主室に向う入室者の有無を検知する入室者検知手段と、前記入室者検知手段の検知結果に基づいて、前記錠手段又は前記報知出力手段を制御する入室者連動制御手段とを備える。
【0012】
請求項4に記載の入退管理システムは、請求項1から3のいずれか一項に記載の入退管理システムにおいて、前記主室に配置された発生源から発生される電磁気又は放射線を低減するために前記前室と前記主室の相互間に設けられたシールド壁を介して、前記主室と前記前室の相互間における情報伝達を行う壁情報伝達手段と、前記壁情報伝達手段にて伝達された情報に基づいて、前記錠手段又は前記報知出力手段を制御する壁情報制御手段と、を備える。
【0013】
請求項5に記載の入退管理システムは、請求項4に記載の入退管理システムにおいて、前記壁情報伝達手段は、前記前室に配置された投光手段及び受光手段と、前記主室に配置された反射手段を備え、前記投光手段にて投光され、前記シールド壁に設けられた透光性部材を介して前記反射手段にて反射された光を、前記受光手段にて受光する光伝送手段である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の入退管理システムによれば、入室者情報と入室権限情報とに基づく入室制御と、第1扉開閉検知手段の検知結果と第2扉開閉検知手段の検知結果に基づく第1扉と第2扉の連動制御との2種類の入退管理を両方行うことにより、主室に対する入退管理を従来に比べて一層確実に行うことができる。
【0015】
請求項2に記載の入退管理システムによれば、携帯端末に記憶された入室者情報を人体通信によって読み取ることで、入室者の認証の手間を省けるので、前室と主室において二重扉構造を有する場合であっても、主室に対する入退管理を容易且つスムーズに行うことができる。
【0016】
請求項3に記載の入退管理システムによれば、前室から主室に向かう入室者の検知結果に基づく入室者連動制御によって、前室と主室において二重扉構造を有する場合であっても、各扉を通過する入室者の動向を的確に検知することができるので、主室に対する入退管理を一層確実に行うことができる。
【0017】
請求項4に記載の入退管理システムによれば、主室がシールドルームとして構成されているために、主室と前室との相互間で電気信号や電波を介して情報伝達を行うことができない場合であっても、シールド壁を介した情報伝達を壁情報伝達手段によって行うことができるので、主室と前室との相互間の情報伝達が可能となり、例えば、主室での異常発生時には主室側からの操作によって第2扉を非常解錠できる等、安全性や利便性を向上させることができる。
【0018】
請求項5に記載の入退管理システムによれば、シールド壁の透光性部材を介した情報伝達を光伝送手段によって行うことができるので、主室と前室の相互間で情報伝達を容易且つ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1に係る入退管理システムを適用した検査室及びその周辺の平面図である。
【図2】実施の形態1に係る入退管理システムのブロック図である。
【図3】図2のICタグのブロック図である。
【図4】図2のICタグ読取装置のブロック図である。
【図5】図2の侵入検知装置のブロック図である。
【図6】図2の電気錠装置のブロック図である。
【図7】図2の警報装置のブロック図である。
【図8】図2の光伝送装置のブロック図である。
【図9】図8の光伝送装置の動作状態を示す概要図であり、(a)は非常解錠OFF状態の光伝送装置を簡略的に示した平面図、(b)は非常解錠ON状態の光伝送装置を簡略的に示した平面図である。
【図10】図2のシステム制御装置のブロック図である。
【図11】図10の入室権限情報テーブルの構成例である。
【図12】入退管理処理のフローチャートである。
【図13】インタロック処理のフローチャートである。
【図14】侵入者検知処理のフローチャートである。
【図15】非常解錠処理のフローチャートである。
【図16】実施の形態2に係る金属検知器のブロック図である。
【図17】入退管理処理のフローチャートである。
【図18】実施の形態3に係る金属検知器のブロック図である。
【図19】入退管理処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照して、この発明の本実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕各実施の形態に共通の基本的概念を説明した後、〔II〕各実施の形態の具体的内容について説明し、〔III〕最後に、各実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、各実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0021】
〔I〕各実施の形態に共通の基本的概念
まず、各実施の形態に共通の基本的概念について説明する。各実施の形態に係る入退管理システムは、入室者に対して入退管理を行うためのものである。
【0022】
本実施の形態に係る入退管理システムの設置対象となる「主室」の具体的な目的や構成は特記するものを除いて任意であり、例えば、医療施設において検査装置が備えられた検査室に限定されず、強磁場を利用する電子顕微鏡が備えられた実験室や、半導体工場における強磁場下の作業室にも適用することができ、あるいは、一般のオフィスビル等に適用して入退管理の利便性等を一層向上させることも可能である。例えば、医療施設の検査装置が備えられた検査室を対象とする場合としては、この検査室内に無許可の人が立ち入ることで発生し得る磁性体持込事故や放射線被爆事故を防止するために、入室者の管理を行う場合が挙げられる。以下では、「主室」が、医療施設のMRIが備えられた「検査室」である場合について説明する。
【0023】
また、主室には、当該主室に隣接するように「前室」が設けられていることを前提とする。この「前室」の具体的な目的や構成は特記するものを除いて任意であり、例えば、医療施設の場合には、検査装置の操作を行うための操作スペースや、患者が検査準備を行う待合スペースとして利用される部屋が該当する。あるいは、実験室や半導体工場の場合には、入室者に付着している可能性がある埃等を空気噴射等にて除去するためのエアシャワー室として利用される部屋が該当する。「隣接する」とは、前室の少なくとも一部と主室の少なくとも一部が壁を隔てて相互に接していることを意図している。以下では、「前室」が、医療施設のMRIが備えられた検査室に隣接されるものであって、検査装置の操作を行うための操作スペース及び患者が検査準備を行う待合スペースとして利用される部屋である場合について説明する。また、以下では、前室に隣接する主室以外のスペースであって前室への入退室を行うスペースを「廊下」として説明する。さらに、以下では、前室及び主室に入退室する可能性がある者を「入室者」と称し、この「入室者」には、「医療関係者」と「患者」が含まれるものとする。
【0024】
各実施の形態に係る入退管理システムの特徴の一つは、概略的に、入室者情報と入室権限情報とに基づく入室制御と、第1扉開閉検知手段の検知結果と第2扉開閉検知手段の検知結果に基づく第1扉と第2扉の連動制御との2種類の入退管理を両方行うものであり、このことにより、主室に対する入退管理を従来に比べて一層確実に行うことができる。
【0025】
〔II〕本実施の形態の具体的内容
次に、入退管理システムの各実施の形態の具体的内容について説明する。
【0026】
〔実施の形態1〕
まず、実施の形態1について説明する。この実施の形態1は、主室に入る入室者の入退室を管理すると共に、第1扉と第2扉の連動制御を行う形態である。
【0027】
(構成)
図1は実施の形態1に係る入退管理システムを適用した検査室及びその周辺の平面図である。図1に示すように、廊下11、前室12、検査室13が順次隣接されている。前室12を区画する壁、床、及び天井は、後述するシールド壁を除いては、鉄筋コンクリート等にて構成されており、前室12と廊下11との相互間のコンクリート壁14には、第1扉15が設けられている。検査室13の内部にはMRI16が設置されており、このMRI16によって形成される強磁場が検査室13の外部に漏洩しないように、当該検査室13はいわゆるシールドルームとして構成されており、当該検査室13を区画する壁、床、及び天井は、それぞれ、磁気をシールドするためのシールド壁、シールド床、及びシールド天井として構成されている。検査室13と前室12との相互間のシールド壁17には、第2扉18と、前室12から検査室13の内部を目視可能としつつ電磁波を遮断するための電磁波シールド用のシールドガラス19が設けられている。なお、これらシールド壁17やシールドガラス19等の具体的構成は既知のものを利用できるため、その詳細な説明を省略する。
【0028】
(構成−入退管理システム)
次に、入退管理システムの機械的及び電気的構成について説明する。図2は、実施の形態1に係る入退管理システムのブロック図である。図1及び図2に示すように、入退管理システム1は、ICタグ20、ICタグ読取装置30、侵入検知装置40a、40b、電気錠装置50、警報装置60、光伝送装置70、及びシステム制御装置80を備えて構成されている。
【0029】
ここで、これら各装置は、基本的には前室12のみに配置されている。この理由は、検査室13の内部は、強磁場環境(検査室13がPET室である場合には放射能環境)であるため、このような特殊な環境に耐え得る仕様となっていない電子機器を設置した場合にはその基本性能が劣化する等の問題が生じ得るためである。ただし、ICタグ20は医療関係者に装着された状態でこれら検査室13、前室12、及び廊下11のいずれにも持ち運ばれる可能性があり、また、光伝送装置70の一部の構成は検査室13の内部に配置されているが、この点は後述する。
【0030】
(構成−ICタグ)
ICタグ20は、医療関係者に着脱自在に装着されるもので、当該ICタグ20を一意に識別するための入室者情報としてのタグID23aを、当該医療関係者を媒体とした人体通信等により送信する携帯端末である。このICタグ20は、図3のブロック図に示すように、人体通信部21、制御部22、及び記憶部23を備えて構成されている。
【0031】
人体通信部21は、人体通信を行う通信モジュールである。具体的には、この人体通信部21は、記憶部23に記憶されているタグID23aを、医療関係者の人体表面の微弱な変動電界を用いた人体通信にてICタグ読取装置30に送信する。例えば、ICタグ20を持っている医療関係者がICタグ読取装置30の一部に触れることで、ICタグ20とICタグ読取装置30との相互間の通信が可能となる。
【0032】
制御部22は、ICタグ20の各部を制御する制御手段である。この制御部22の具体的な構成は任意であり、例えば、OS(Operating System)などの制御プログラム、各種の処理手順などを規定した組み込みプログラム、所要データを格納するための内部メモリ、及び、これらのプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)を備えて構成される(後述する図4〜8、10、16、18の制御部に対応する構成も同様であるため、重複説明を省略する)。
【0033】
記憶部23は、タグID23aを記憶する記憶手段である。このタグID23aの構成や決定方法は任意であるが、各ICタグ20の記憶部23には相互に異なるタグID23aが一つのみ記憶される。例えば、タグID23aは、4桁の数字により「0005」のように構成される。この記憶部23の具体的な構成は任意であり、例えばROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリ等の記憶手段を用いて構成することができる。
【0034】
このように構成されたICタグ20には、検査室13の内部における特殊な環境下でも基本性能の劣化がないように、特殊な対策が施されている。具体的には、強磁場対策としてICタグ20の内部の電子部品をアルミや銅等の非磁性体部品(放射能対策の場合には鉛等)で覆っている。
【0035】
(構成−ICタグ読取装置)
図2のICタグ読取装置30は、ICタグ20の記憶部23に記憶されたタグID23aを所定方法で読み取るための入室者情報読取手段である。ICタグ読取装置30の配置は任意であり、例えば、シールド壁17の前室12側の側面における第2扉18の近傍位置や、又は第2扉18の前室12側の側面(但し、後者の場合には、第2扉18の開閉に伴ってICタグ読取装置30が検査室13内に入り込まないことを前提とする)に設置される。
【0036】
このICタグ読取装置30は、図4のブロック図に示すように、人体通信部31及び制御部32を備えて構成されている。人体通信部31は、ICタグ20から医療関係者を媒体とした人体通信によりタグID23aを受信する人体通信手段である。制御部32は、ICタグ読取装置30の各部を制御する制御手段である。
【0037】
このICタグ読取装置30は、ICタグ20を装着した医療関係者によって当該ICタグ読取装置30が直接触れられることで、タグID23aを読み取るように構成することもできるが、医療関係者が検査室13に入室する際に入退管理を意図することなく自然に触れる物を介して、タグID23aを読み取るように構成してもよい。後者の場合としては、例えば、ICタグ読取装置30の人体通信部31は、第2扉18のドアノブに接続又は内蔵されており、医療関係者が検査室13に入室する際に当該ドアノブに触れることにより、医療関係者及びドアノブを介した通信によってタグID23aの読取を行う。以下では、後者の場合について説明する。
【0038】
(構成−侵入検知装置)
図2の侵入検知装置40a、40bは、前室12から検査室13に向う入室者の有無を検知する入室者検知手段である。具体的には、侵入検知装置40aは、前室12の壁や天井における第1扉15の近傍位置に設置され、侵入検知装置40bは、前室12の壁や天井における第2扉18の近傍位置に設置されており、これら侵入検知装置40a、40bは、常時又は一定のタイミングで医療関係者の有無を検知し、検知した情報を出力する。また、この侵入検知装置40aは、第1扉15の開閉状態を検知する第1扉開閉検知手段でもあり、この侵入検知装置40bは、第2扉18の開閉状態を検知する第2扉開閉検知手段としても機能する。
【0039】
これら侵入検知装置40a、40bは、図5のブロック図に示すように、検知部41及び制御部42を備えて構成されている。検知部41は、侵入者の有無を所定の方法で検知すると共に、第1扉15及び第2扉18の状態を検知する検知手段である。この検知部41の具体的構成は任意であるが、例えば、侵入者の有無を検知するための温度センサや赤外線センサとして構成される。あるいは、検知部41は、第1扉15及び第2扉18の開閉状態を検知するため、赤外線ビームが第1扉15及び第2扉18により遮断されることでその開閉状態を検知する赤外線センサや、後述する電気錠装置からの出力に基づいて第2扉18が閉鎖状態であるか否かを判定する手段として構成される。制御部42は、侵入検知装置40a、40bの各部を制御する制御手段である。
【0040】
(構成−電気錠装置)
図2の電気錠装置50は、第2扉18の解錠又は施錠を行う錠手段である。この電気錠装置50の種類は任意であるが、例えば、通電時施錠型、通電時解錠型、又はモータを使用して施錠や解錠を行うモータ施解錠型のものが用いられる。
【0041】
この電気錠装置50は、図6のブロック図に示すように、錠開閉部51及び制御部52を備えて構成されている。錠開閉部51は、第2扉18に内蔵されて当該第2扉18の解錠又は施錠を行う電動施錠機構であり、公知の機構にて構成されている。制御部52は、第2扉18の施錠又は解錠等を制御するための制御手段である。
【0042】
(構成−警報装置)
図2の警報装置60は、検査室13の入退管理に関する報知出力を行う報知出力手段である。具体的には、この警報装置60は、前室12の壁面や天井面等に配置されており、前室12又は検査室13に在室している医療関係者に対して、システム制御装置80からの制御に基づく報知出力を行う。
【0043】
この警報装置60は、図7のブロック図に示すように、音声出力部61、表示部62、及び制御部63を備えて構成されている。音声出力部61は、音声により報知出力を行う音声出力手段であり、例えば、スピーカ等を含んで構成されている。音声出力部61の報知出力方法は任意であり、例えば、報知出力する内容に応じて音声の種類や音量等を変えてもよい。表示部62は、表示により報知出力を行う表示手段であり、例えば、LED表示灯や液晶ディスプレイ等を含んで構成されている。表示部62の報知出力方法は任意であり、例えば、報知出力する内容に応じて表示の種類や表示のタイミング等を変えてもよい。制御部63は、警報装置60の各部を制御する制御手段である。
【0044】
(構成−光伝送装置)
図2の光伝送装置70は、シールド壁17を介して前室12と検査室13との相互間における情報伝達を行うための光伝送手段及び壁情報伝達手段である。ここで、検査室13内は特殊な強磁場環境(PET室の場合には放射線環境)なので、一般的な電子機器では劣化や誤作動が発生する可能性があり、検査室13内に電子機器は設置できない。また、検査室13はシールド壁17等で囲われているおり、このシールド壁17を貫通する通信線を敷設するとシールド壁17の遮蔽性能が低下するため、電気配線により前室12と検査室13とを相互に接続することはできない。さらに、前室12と検査室13とは相互に電磁的に遮蔽されているため、検査室13内のICタグ20を前室12から読み取ることはできない。しかしながら、検査室13の内部で異常が発生した場合等には、検査室13の内部からの操作によって第2扉18を解錠したい場合もある。
【0045】
そこで、本実施の形態においては、電気通信を行うことなく検査室13の内部からの操作によって第2扉18を解錠するため、シールド壁17のシールドガラス19を介した光通信を行うこととし、さらに、電子機器は前室12のみに配置すると共に非電子機器を検査室13に配置することで、特殊な環境下において情報伝達を行うことを可能としている。具体的には、光伝送装置70は、図8のブロック図に示すように、前室12に配置された投光部71及び受光部72と、検査室13に配置された非電子的な非常解錠スイッチとして機能する反射板73と、光伝送装置70の各部を制御する制御部74を備えて構成されている。そして、投光部71にて投光され、シールド壁17に設けられたシールドガラス19を介して反射板73にて反射された光を、受光部72にて受光し、この受光部72の受光状況をシステム制御装置80へ出力する。この光伝送装置70の種類は任意であるが、例えば、赤外線レーザー等を用いて、前室12と検査室13との相互間で光伝送を行うものが該当する。
【0046】
図9は、光伝送装置70の動作状態を示す概要図であり、(a)は非常解錠OFF状態の光伝送装置70を簡略的に示した平面図、(b)は非常解錠ON状態の光伝送装置70を簡略的に示した平面図である。図9(a)に示すように、非常解錠OFF状態の光伝送装置70は、投光部71にて投光された光が受光部72に向けて反射されるように反射板73が配置された状態となっている。一方、図9(b)に示すように、非常解錠ON状態の光伝送装置70は、投光部71にて投光された光が受光部72に向けて反射されないように反射板73が配置された状態となっている。すなわち、検査室13に入った入室者が反射板73の向きを手動等にて変えることで、受光部72に対する光の入射状態を切り替えることができ、この受光部72からの入射光量に応じた出力に基づいて、制御部74が非常解錠のON/OFF状態を判定する。このように、光伝送装置70を用いることで、強磁場下における検査室13に通信機器が設けられなくても、前室12と検査室13との相互間において情報伝達を行うことができる。また、検査室13の内部には非電子的手段である反射板73のみが配置されることで、強磁場等の特殊環境下でもその機能性能が劣化すること等が防止できる。なお、反射板73の向きを変えるための具体的構成は任意であり、例えば、図示しない鉛直回転軸の上端に反射板73を固定することで、反射板73を鉛直回転軸を中心に回転可能としてもよい。あるいは、受光部72に対する光の入射状態を切り替えることができればよいため、反射板73の向きを必ずしも変える必要はなく、例えば、反射板73とシールドガラス19との相互間に遮光板等を出し入れ可能としてもよい。
【0047】
(構成−システム制御装置)
図2のシステム制御装置80は、検査室13に対する入退管理を制御するための制御手段であり、前室12内に設けられている。システム制御装置80は、図10のブロック図に示すように、機能概念的に、通信部81、入力部82、出力部83、制御部84、及び記憶部85を備えて構成されている。
【0048】
通信部81は、ICタグ読取装置30にて取得された入室者情報や、侵入検知装置40a、40bや光伝送装置70の動作情報を受信し、又は電気錠装置50や警報装置60の動作情報を各々の機器へ送信する通信手段であり、これら各装置と有線又は無線で通信可能に接続されている。
【0049】
入力部82は、任意の情報をシステム制御装置80に対して入力するための入力手段であり、例えば、マウス、キーボード、あるいはネットワーク端子を含んで構成されている。
【0050】
出力部83は、任意の情報を外部に向けて出力するための出力手段であり、例えば、表示灯、モニタ、及びネットワーク端子を含んで構成されている。
【0051】
制御部84は、システム制御装置80の各部を制御する制御手段であり、機能概念的に、入室権限制御部84a、扉連動制御部84b、入室者連動制御部84c、及び壁情報制御部84dを備えている。入室権限制御部84aは、ICタグ読取装置30にて読み取られた入室者情報と、後述する入室権限情報テーブルにて記憶された入室権限情報とに基づいて、検査室13へ入室しようとする医療関係者の入室権限の有無を判定し、当該判定結果に基づいて、電気錠装置50又は警報装置60を制御する入室権限制御手段である。扉連動制御部84bは、侵入検知装置40aの検知結果と、侵入検知装置40bの検知結果に基づいて、電気錠装置50又は警報装置60を制御する扉連動制御手段である。入室者連動制御部84cは、侵入検知装置40a、40bの検知結果に基づいて、電気錠装置50又は警報装置60を制御する入室者連動制御手段である。壁情報制御部84dは、光伝送装置70にて伝達された情報に基づいて、電気錠装置50又は警報装置60を制御する壁情報制御手段である。
【0052】
記憶部85は、制御部84によって実行される各種処理に必要なデータを記憶する記憶手段であり、特に、検査室13へ入室しようとする入室者の入室権限の有無を判定するための情報であって入室者情報と関連付けられた入室権限情報を記憶する入室権限情報記憶手段であり、具体的には、入室権限情報テーブル85aを記憶している。この入室権限情報テーブル85aの構成例を図11に示す。この入室権限情報テーブル85aは、入室権限情報を管理するためのテーブルであり、例えば「タグID」及び「入室権限情報」の項目と、各項目に対応する情報を対応付けて構成されている。項目「タグID」に対応する情報は、ICタグ20の記憶部85に記憶されたタグID23aと同じである。また、項目「入室権限情報」に対応する情報は、検査室13へ入室しようとする医療関係者の入室権限の有無を判定するための情報であり、例えば、入室権限の有無を示すフラグが該当する。図11の例では、フラグ=「0」が入室権限無し、フラグ=「1」が入室権限有を示している。なお、記憶部85の具体的な構成は任意であり、例えばHD(Hard Disk)の如き書き換え可能な記憶手段を用いて構成することができる。
【0053】
(処理)
次に、この入退管理システム1の制御部84において行われる各種の処理について説明する。この処理は、検査室13に対する入退管理を行うための入退管理処理、第1扉15及び第2扉18の開閉制御を行うインタロック処理、及び検査室13内から第2扉18の解錠を行うための非常解錠処理に大別される。以下の説明においては、特記するタイミングを除いて任意のタイミングにて各処理が行われ、特記する主体を除いてシステム管理装置80の制御部84にて処理が行われ、情報の取得元や取得経路を特記しない場合については、公知のタイミング及び公知の方法にて、システム管理装置80の入力部82やその他の任意の手段を介して入力されるものとする。また、「ステップ」を「S」と略記する。
【0054】
(処理−入退管理処理)
最初に、入退管理処理について説明する。図12は入退管理処理のフローチャートである。まず、制御部84は、ICタグ20に記憶されたタグID23aがICタグ読取装置30によって読み取られたか否かを監視している(SA1)。例えば、廊下11から第1扉15を介して前室12に入室した医療関係者が、さらに検査室13に入室するために第2扉18のドアノブに触れると、当該医療関係者が装着しているICタグ20の人体通信部21からICタグ読取装置30の人体通信部31にタグID23aが人体通信にて送信され、このタグID23aがシステム管理装置80の通信部81に送信される。これによって、制御部84は、タグID23aを取得したと判定してSA2に移行する(SA1、Yes)。一方、医療関係者が第2扉18のドアノブに触れていない場合、あるいは触れた場合であっても当該医療関係者がICタグ20を装着していない場合には、ICタグ20からタグID23aが読み取られないので、制御部84は、タグID23aを取得していないと判定してSA1の監視を継続する(SA1、No)。
【0055】
SA2に移行した場合、入室権限制御部84aは、SA1で取得したタグID23aと同一のタグID23aに関連付けて入室権限情報テーブル85aに格納されている入室権限情報があるか否かを判定し、入室権限情報がある場合には、当該入室権限情報が「入室権限有り」を示す情報であるか否かを判定する。「入室権限有り」ではない場合(SA2、No)、制御部84は、警報装置60によって当該判定結果を表示させ(SA3)、入退管理処理を終了する。この表示方法は任意であるが、例えば、警報装置60は、「タグIDが一致しません」等の表示出力や音声出力を行う。
【0056】
一方、「入室権限有り」である場合(SA2、Yes)、制御部84は、警報装置60によって当該判定結果を表示させる(SA4)。この表示方法は任意であるが、例えば、警報装置60は、「タグIDが一致しました」等の表示出力や音声出力を行う。次いで、制御部84は、電気錠装置50に制御信号を出力し、第2扉18を解錠させる(SA5)。これにより、医療関係者が患者を抱えながら前室12から検査室13に入室する場合であっても、医療関係者がICタグ20をICタグ読取装置30に触れさせる等の手間を要することなく、検査室13に入室することができる。
【0057】
次に、制御部84は、第2扉18が開放されたか否かを侵入検知装置40bからの出力に基づいて判定する(SA6)。例えば、医療関係者によって第2扉18が開けられると、侵入検知装置40bの検知部41によって第2扉18の開放が検知され、その情報がシステム管理装置80の通信部81に送信されるため、制御部84は、この情報に基づいて第2扉18が開放されたと判定する。
【0058】
第2扉18が開放されたと判定された場合には(SA6、Yes)、所定時間経過後、制御部84は、第2扉18が閉鎖されたか否かを侵入検知装置40bからの出力に基づいて判定する(SA7)。例えば、医療関係者が患者を前室12から検査室13に搬送したり、又は前室12と検査室13を行き来しながら検査準備を行っている間、第2扉18が開放された状態のままとされることがあるが、これらの作業が終了した後に、医療関係者によって第2扉18が閉鎖されると、侵入検知装置40bの検知部41によって第2扉18の閉鎖が検知され、その情報がシステム管理装置80の通信部81に送信されるため、制御部84は、この情報に基づいて第2扉18が閉鎖されたと判定する。
【0059】
第2扉18が開放されてから所定時間以内に第2扉18の閉鎖が検知されない場合(SA7、No)、制御部84は、警報装置60に警報を出力させる(SA8)。この警報装置60の警報方法は任意であるが、例えば、警報装置60は、音声出力部61に「第2扉を閉めてください」等の音声を出力したり、ブザー音等を出力する。
【0060】
第2扉18が閉鎖されたと判定された場合(SA7、Yes)、制御部84は、電気錠装置50に制御信号を出力して、第2扉18を施錠させ(SA9)、入退管理処理を終了する。なお、このように第2扉18が施錠されたことを条件の一つとして、MRI16の起動を許可するようにしてもよい。例えば、第2扉18を施錠させた場合、制御部84は施錠完了信号を検査室13の図示しないMRI操作盤に出力し、図示しないMRI操作盤が施錠完了信号を条件の一つとしてMRI16の起動を可能としてもよい。
【0061】
(インタロック処理)
次に、インタロック処理について説明する。図13は、インタロック処理のフローチャートである。このインタロック処理は、入退管理処理と同様に、医療関係者が廊下11から前室12に入室した後に自動的に開始される。扉連動制御部84bは、第1扉15が開放されたか否かを侵入検知装置40aからの出力に基づいて監視する(SB1)。例えば、医療関係者によって第1扉15が開けられると、侵入検知装置40aの検知部41によって第1扉15の開放が検知され、その情報がシステム管理装置80の通信部81に送信される。これによって、扉連動制御部84bは、第1扉15が開放されたと判定する。
【0062】
第1扉15が開放されたと判定された場合(SB1、Yes)、扉連動制御部84bは、侵入検知装置40bによって第2扉18が開放されたか否かを判定する(SA2)。例えば、医療関係者が第2扉18を開けると、侵入検知装置40bの検知部41によって第2扉18の開放が検知され、その情報がシステム管理装置80の通信部81に送信される。これによって、扉連動制御部84bは、第2扉18が開放されたと判定する。
【0063】
第2扉18が開放されたと判定された場合(SB2、Yes)、扉連動制御部84bは、警報装置60に警報を出力させる(SB3)。この警報装置60の警報方法は任意であるが、例えば、警報装置60は、音声出力部61に「第1扉と第2扉が開放されています」等の音声を出力したり、又は連続的なブザー音等を出力する。
【0064】
ただし、医療関係者が前室12や検査室13への入室後に第1扉15や第2扉18を閉めること等によって、第1扉15が開放されていないと判定された場合(SB1、No)や第2扉18が開放されていないと判定された場合(SB2、No)、扉連動制御部84bは、警報出力を行うことなくインタロック処理を終了する。
【0065】
(侵入者検知処理)
次に、侵入者検知処理について説明する。図14は、侵入者検知処理のフローチャートである。入室者連動制御部84cは、入室者が第1扉15を通過したか否かを侵入検知装置40aからの出力に基づいて監視する(SC1)。例えば、入室者が第1扉15を通過すると、侵入検知装置40aの検知部41によって第1扉15を通過したことが検知され、その情報がシステム管理装置80の通信部81に送信される。これによって、入室者連動制御部84cは、第1扉15を通過したと判定する。
【0066】
入室者が第1扉15を通過したと判定された場合(SC1、Yes)、入室者連動制御部84cは、侵入検知装置40aによって入室者が第2扉18を通過したか否かを判定する(SC2)。そして、入室者が第2扉18を通過したと判定された場合(SC2、Yes)、図12の入退管理処理のSA2において当該入室者が第2扉18の通過時に入室権限を有していることが確認済みであるか否かを判定する(SC3)。確認済みであると判定された場合(SC3、Yes)、入室者連動制御部84cは、警報出力を行うことなく、侵入者検知処理を終了する。
【0067】
一方、確認済みでないと判定された場合(SC3、No)、入室者連動制御部84cは、警報装置60によって警報を所定時間出力させる(SC4)。この警報装置60の警報方法は任意であるが、例えば、警報装置60は、音声出力部61に「侵入者が侵入しました」等の音声を出力したり、又は連続的なブザー音等を出力する。例えば、入室権限を有する医療関係者が第1扉15と第2扉18を通過して開けっ放しにした状態で、入室権限を有していない入室者が第1扉15と第2扉18を通過した場合に、このような警報出力が行われることとなる。これにて侵入者検知処理が終了する。
【0068】
(非常解錠処理)
次に、非常解錠処理について説明する。図15は、非常解錠処理のフローチャートである。壁情報制御部84dは、非常解錠ONとされたか否かを光伝送装置70からの出力に基づいて監視する(SD1)。例えば、検査室13に在室中の患者の体調が優れない場合に、当該患者が非常解錠スイッチとしての反射板73に触れて当該反射板73の向きを変えること等したことで、投光部71から投光された光を受光部72が受光できなくなると、この受光部72の受光状況が光伝送装置70からシステム制御装置80へ出力される。
【0069】
そして非常解錠ONとされたものと判定された場合(SD1、Yes)、壁情報制御部84dは、電気錠装置50に制御信号を出力して、第2扉18を緊急的に解錠させる(SD2)。なお、このように非常解錠ONとなった場合には、MRI16の運転を自動停止するようにしてもよい。例えば、非常解錠ONとなった場合、制御部84は非常停止信号を検査室13の図示しないMRI操作盤に出力し、図示しないMRI操作盤は、MRI16の運転を停止したり、又は警報装置60によって警報を出力させることで前室12にいる医療関係者に対して異常を知らせるようにしてもよい。これにて、非常解錠処理が終了する。
【0070】
(効果)
このように実施の形態1によれば、入室者情報と入室権限情報とに基づく入室制御と、侵入検知装置40aの検知結果と侵入検知装置40bの検知結果に基づく第1扉15と第2扉18の連動制御との2種類の入退管理を両方行うことにより、検査室13に対する入退管理を従来に比べて一層確実に行うことができる。
【0071】
また、ICタグ20に記憶された入室者情報を人体通信によって読み取ることで、入室者の認証の手間を省けるので、前室12と検査室13において二重扉構造を有する場合であっても、検査室13に対する入退管理を容易且つスムーズに行うことができる。
【0072】
また、前室12から検査室13に向かう入室者の検知結果に基づく入室者連動制御によって、前室12と検査室13において二重扉構造を有する場合であっても、各扉を通過する入室者の動向を的確に検知することができるので、検査室13に対する入退管理を一層確実に行うことができる。
【0073】
また、検査室13がシールドルームとして構成されているために、検査室13と前室12との相互間で電気信号や電波を介して情報伝達を行うことができない場合であっても、シールド壁17を介した情報伝達を光伝送装置70によって行うことができるので、検査室13と前室12との相互間の情報伝達が可能となり、例えば、検査室13での異常発生時には検査室13側からの操作によって第2扉18を非常解錠できる等、安全性や利便性を向上させることができる。
【0074】
また、シールド壁17のシールドガラス19を介した情報伝達を光伝送装置70によって行うことができるので、検査室13と前室12の相互間で情報伝達を容易且つ確実に行うことができる。
【0075】
〔実施の形態2〕
次に、実施の形態2について説明する。この実施の形態2は、検査室13がMRI室である場合において、金属を不用意に検査室13に持ち込んだ際に発生し得る磁性体持込事故を防止するために、入室者に対して行った金属検知の検知結果を用いて入退室管理を行う形態である。ただし、特記した場合を除いて、実施の形態2に示す構成及び処理は、実施の形態1に示す構成及び処理と同様であり、実施の形態1に示す構成及び処理と同じ内容については、必要に応じて、実施の形態1の説明で使用したものと同じ符号を用いることで、その説明を省略する。
【0076】
(構成−金属検知器)
この実施の形態2に係る入退管理システム1は、実施の形態1に係る入退管理システム1に対して、さらに金属検知器90を備えて構成されている。この金属検知器90は、検査室13への入室者に対する金属検知を行うための金属検知手段であり、例えば空港のセキュリティゲートと同様に、人が通過可能な大きさ及び形状のゲート型に構成されており、検査室13に入室する際には当該金属検知器90を必ず通過するように、前室12の内部における第2扉18の直近位置に配置されている。
【0077】
この金属検知器90は、図16のブロック図に示すように、金属検知部91及び制御部92を備えて構成されている。金属検知部91は、例えば電磁誘導を利用したものであり、検知コイルを金属が通過した際に生じる渦電流に伴う磁場を検知することによって当該金属を検知する。制御部92は、金属検知器90の各部を制御する制御手段であり、金属検知部91によって金属が検知された場合には、検知信号をシステム制御装置80に出力する。
【0078】
(処理)
次に、この入退管理システム1の制御部84において行われる入退管理処理について説明する。図17は入退管理処理のフローチャートである。ただし、図17のSE1及びSE5〜SE10は、図12のSA1及びSA4〜SA9とそれぞれ同じであるため、その説明は省略する。まず、制御部84は、SE1においてタグID23aが取得されたと判定した場合(SE1、Yes)、その時点における金属検知部91からの検知信号の有無を判定することにより、検査室13への入室者に金属反応がないか否かを判定する(SE2)。すなわち、ここでは、第2扉18のドアノブに入室者が触れるのと同時に、当該入室者が金属検知部91を通過することを想定しているため、SE1におけるタグID23aの取得タイミングとほぼ同時に、金属反応の判定タイミングを決定している。ただし、この他の方法で金属反応の判定タイミングを決定してもよく、例えば、金属検知部91には当該金属検知器90を人が通過したことを感知する人感センサを設け、この人感センサからの検知出力があった時点で金属反応を判定してもよい。
【0079】
そして、金属反応がある場合(SE2、No)、制御部84は、警報装置60によって当該判定結果を表示させ(SE3)、入退管理処理を終了する。この表示方法は任意であるが、例えば、警報装置60は、「金属を持ち込むことはできません」等の表示出力や音声出力を行う。一方、金属反応がない場合(SE2、Yes)、制御部84は、SE4に移行して、SE1で取得されたタグID23aに基づく入室権限認証を行い、入室権限有りと判定された場合には(SE4、Yes)、SE5に移行する。
【0080】
(効果)
このように実施の形態2によれば、タグID23aによる入室権限認証をクリアするという条件に加えて、金属検知器90により金属反応がないことを条件として検査室13への入室を可能とするので、入室権限のある医療関係者が、検査室13への金属持ち込みの危険性を知りながらも誤って金属持ち込みを行ってしまう事態を回避でき、安全性を一層向上させることができる。
【0081】
〔実施の形態3〕
次に、実施の形態3について説明する。この実施の形態3は、実施の形態2と同様に、入室者に対して行った金属検知の検知結果を用いて入退室管理を行う場合において、ゲート型ではなく、ハンディ型(携帯型)の金属検知器90を用いて金属検知を行う形態である。ただし、特記した場合を除いて、実施の形態3に示す構成及び処理は、実施の形態2に示す構成及び処理と同様であり、実施の形態2に示す構成及び処理と同じ内容については、必要に応じて、実施の形態2の説明で使用したものと同じ符号を用いることで、その説明を省略する。
【0082】
(構成−金属検知器)
この実施の形態3に係る入退管理システム1は、実施の形態2に係る入退管理システム1と同様に、金属検知器100を備えて構成されている。この金属検知器100は、検査室13への入室者に対する金属検知を行うための金属検知手段であり、例えば20cm〜60cm程度の長さの棒状体として構成されている。
【0083】
この金属検知器100は、図18のブロック図に示すように、金属検知部101、人体通信部102、無線通信部103、及び制御部104を備えて構成されている。金属検知部101は、例えば電磁誘導を利用したものであり、検知コイルを金属が通過した際に生じる渦電流に伴う磁場を検知することによって当該金属を検知する。人体通信部102は、ICタグ20から医療関係者を媒体とした人体通信によりタグID23aを受信する人体通信手段である。無線通信部103は、検知信号をシステム制御装置80に無線送信する送信手段である。制御部104は、金属検知器100の各部を制御する制御手段であり、金属検知部101によって金属が検知された場合には、検知信号を無線通信部103を介してシステム制御装置80に出力する。なお、図示は省略するが、システム制御装置80にも、金属検知器100の無線通信部103と無線通信を行う無線通信部が設けられる。ただし、金属検知器100とシステム制御装置80を有線接続してもよく、この場合には無線通信部等を省略することができる。
【0084】
(処理)
次に、この入退管理システム1の制御部84において行われる入退管理処理について説明する。図19は入退管理処理のフローチャートである。ただし、図19のSF4〜SF9は、図12のSA4〜SA9とそれぞれ同じであるため、その説明は省略する。前室12に入室した医療関係者は、当該前室12に配置されている金属検知器100を手で保持し、当該金属検知器100を自己(及び患者を伴っている場合には当該患者)の周囲にかざすことで、金属検知を行う。このように医療関係者が金属検知器100を手で保持した際、当該医療関係者が装着しているICタグ20の人体通信部21から金属検知器100の人体通信部102にタグID23aが人体通信にて送信され、このタグID23aが金属検知器100の無線通信部103を介してシステム管理装置80に無線送信される。一方、医療関係者が金属検知器100に触れていない場合、あるいは触れた場合であっても当該医療関係者がICタグ20を装着していない場合には、ICタグ20からタグID23aが読み取られないので、金属検知器100からシステム管理装置80へのタグID23aの送信は行われない。
【0085】
システム管理装置80の制御部84は、金属検知器100からのタグID23aの送信を監視しており、タグID23aが送信された場合(SF1、Yes)、ICタグ読取装置30からのタグID23aの送信を監視する(SF2)。例えば、金属検知を終えた医療関係者が検査室13に入室するために第2扉18のドアノブを触れた際、当該医療関係者が装着しているICタグ20の人体通信部21からICタグ読取装置30の人体通信部31にタグID23aが人体通信にて送信され、このタグID23aがシステム管理装置80の通信部81に送信される。
【0086】
ICタグ読取装置30からのタグID23aの送信があった場合(SF2、Yes)、入室権限制御部84aは、SF1で取得したタグID23aとSF2で取得したタグID23aとが相互に同一であるか否かを判定すると共に、相互に同一である場合には、当該タグID23aと同一のタグID23aに関連付けて入室権限情報テーブル85aに格納されている入室権限情報があるか否かを判定することにより、入室権限の有無を判定する(SF3)。そして、SF1で取得したタグID23aとSF2で取得したタグID23aとが相互に同一であり、かつ、当該タグID23aに基づいて入室権限が有ることが確認できた場合にのみ(SF3、Yes)、SF4に移行して第2扉18を解錠し、その他の場合には(SF3、No)、SF10において警報装置60によって「タグIDが一致しないか、金属検知が終了していません」等の判定結果を表示させて、入退管理処理を終了する。
【0087】
(効果)
このように実施の形態3によれば、タグID23aによる入室権限認証をクリアするという条件に加えて、入室権限を有する者が金属検知器100に触れることを条件として検査室13への入室を可能とするので、入室権限のある医療関係者に対して金属検知器100の使用を意識付けることが可能となり、検査室13への金属持ち込みの危険性を知りながらも誤って金属持ち込みを行ってしまう事態を回避でき、安全性を一層向上させることができる。
【0088】
〔III〕各実施の形態に対する変形例
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0089】
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0090】
(ICタグについて)
上記各実施の形態では、安全性等について十分な知識を持った医療関係者にICタグ20を装着させ、患者はICタグ20の装着を行わなくても入室権限が有る医療関係者と共に検査室13に入室できるようにしているが、患者にもICタグ20を装着させてもよい。また、上記各実施の形態では、ICタグ20のタグID23aを人体通信にて通信するようにしているが、ICタグ20を非接触無線通信機能を持ったアクティブタグ、セミアクティブタグ、あるいはUHF帯の電波を使うパッシブタグ等として構成してもよく、あるいは、生体認証(静脈認証、声紋認証、顔認証、網膜認証等)を用いてもよい。ただし、医療関係者の顔や手はマスクや手袋等によって覆われていることも多いため、生体認証よりも、人体通信や非接触無線通信を行うことが好ましい。
【0091】
あるいは、人体通信を行う場合であっても、医療関係者の手や第2扉18のドアノブ以外の部分を介して通信を行うようにしてもよく、例えば、医療関係者の腕、肘、肩、頭、背中、お尻、脚等のいずれかが、第2扉18のドアノブ以外の部分や第2扉18の近傍に配置した電極(例えば、前室12における第2扉18の近傍位置の床面に敷設したフロアマットに埋め込んだ電極や、当該近傍位置の床下に埋設した電極)に対して、直接的あるいは洋服や靴を介して間接的に接触した場合に、通信が行われるようにしてもよい。
【0092】
また、上記各実施の形態では、検査室13の内部に持ち込み可能となるようにICタグ20を構成してるが、ICタグ20を持ち込まないことがより好ましいことには代わりがない。このため、ICタグ20の持ち込み不要とするように、例えば、第2扉18の前室12側の側面等に、ICタグ20を置いておくためのICタグ受容手段を設けておき、このICタグ受容手段にICタグ20を置いてあることを、入退室管理の条件に加えてもよい。例えば、ICタグ受容手段には、ICタグ20と接触通信するための通信手段を設けておき、ICタグ20との接触通信によって当該ICタグ20からタグID23aを受信した場合には、ICタグ受容手段にICタグ20が置かれている状態であると判定する。そして、ICタグ受容手段は、このように取得したタグID23aを、ICタグ20の受容完了信号と共にシステム制御装置80に送信し、システム制御装置80は、当該受容完了信号と共にタグID23aを受信した場合にのみ、当該受信したタグID23aに基づいて入室者の入室権限の有無を判定し、入室権限が有る場合にのみ第2扉18を解錠してもよい。このようなシステムによれば、ICタグ20の持ち込みを確実に防止できるので、安全性を一層高めることが可能となる。
【0093】
(侵入検知装置について)
上記各実施の形態では、侵入検知装置40a、40bに、侵入者の有無を検知する機能と、第1扉15及び第2扉18の状態を検知する機能の両方を持たせることとしているが、いずれか一方の機能のみを持たせてもよい。例えば、侵入者の有無を検知する機能のみを持たせる場合には、検査室13への侵入者が検知されたこと、及び当該侵入者の検査室13への入室権限が確認できていないことを条件として、警報出力を行うようにする。
【0094】
(入室時間管理について)
また、上記各実施の形態において、検査室13への医療関係者の入室時間を管理する機能を付加してもよい。例えば、システム制御装置80は、第2扉18が開放されてから閉鎖されるまでの時間を計測し、この時間が所定時間以上となった場合には警報装置60を介して警報を出力することで、医療関係者が強磁場環境や放射能環境に長時間晒されることを警告してもよい。
【0095】
(第1扉及び第2扉について)
上記各実施の形態では、第1扉15及び第2扉18の2つの扉を設置することを前提としているが、第2扉18のみを用いることを前提として各処理を行ってもよい。例えば、侵入者検知処理においては、侵入者の第2扉18の通過が検知されたこと、及び、当該侵入者の検査室13への入室権限が確認できていないことを条件として、警報出力を行うようにしてもよい。また、このような処理を行う場合には、インタロック処理を省略してもよい。
【符号の説明】
【0096】
1 入退管理システム
11 廊下
12 前室
13 検査室
14 コンクリート壁
15 第1扉
16 MRI
17 シールド壁
18 第2扉
19 シールドガラス
20 ICタグ
21、31、102 人体通信部
22、32、42、52、63、74、84、92、104 制御部
23、85 記憶部
24 タグID
30 ICタグ読取装置
40a、40b 侵入検知装置
41 検知部
50 電気錠装置
51 錠開閉部
60 警報装置
61 音声出力部
62 表示部
70 光伝送装置
71 投光部
72 受光部
73 反射板
80 システム制御装置
81 通信部
82 入力部
83 出力部
84a 入室権限制御部
84b 扉連動制御部
84c 入室者連動制御部
84d 壁情報制御部
85a 入室権限情報テーブル
90、100 金属検知器
91、101 金属検知部
103 無線通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前室に隣接する主室に対する入退管理を行うための入退管理システムであって、
前記前室の外部と当該前室の相互間に設けられた第1扉の開閉を検知する第1扉開閉検知手段と、
前記前室と前記主室の相互間に設けられた第2扉の開閉を検知する第2扉開閉検知手段と、
前記第2扉の解錠又は施錠を行う錠手段と、
入退管理に関する報知出力を行う報知出力手段と、
前記主室へ入室しようとする入室者に関する入室者情報を所定方法で読み取る入室者情報読取手段と、
前記主室へ入室しようとする入室者の入室権限の有無を判定するための情報であって、前記入室者情報と関連付けられた入室権限情報を記憶する入室権限情報記憶手段と、
前記入室者情報読取手段にて読み取られた前記入室者情報と、前記入室権限情報記憶手段にて記憶された前記入室権限情報とに基づいて、前記主室へ入室しようとする入室者の入室権限の有無を判定し、当該判定結果に基づいて、前記錠手段又は前記報知出力手段を制御する入室権限制御手段と、
前記第1扉開閉検知手段の検知結果と、前記第2扉開閉検知手段の検知結果に基づいて、前記錠手段又は前記報知出力手段を制御する扉連動制御手段と、
を備える入退管理システム。
【請求項2】
前記入室者情報読取手段は、前記入室者が保持する携帯端末に記憶された前記入室者情報を、当該入室者の人体を介した人体通信により読み取る、
請求項1に記載の入退管理システム。
【請求項3】
前記前室から前記主室に向う入室者の有無を検知する入室者検知手段と、
前記入室者検知手段の検知結果に基づいて、前記錠手段又は前記報知出力手段を制御する入室者連動制御手段と、
を備える請求項1又は2に記載の入退管理システム。
【請求項4】
前記主室に配置された発生源から発生される電磁気又は放射線を低減するために前記前室と前記主室の相互間に設けられたシールド壁を介して、前記主室と前記前室の相互間における情報伝達を行う壁情報伝達手段と、
前記壁情報伝達手段にて伝達された情報に基づいて、前記錠手段又は前記報知出力手段を制御する壁情報制御手段と、
を備える請求項1から3のいずれか一項に記載の入退管理システム。
【請求項5】
前記壁情報伝達手段は、前記前室に配置された投光手段及び受光手段と、前記主室に配置された反射手段を備え、前記投光手段にて投光され、前記シールド壁に設けられた透光性部材を介して前記反射手段にて反射された光を、前記受光手段にて受光する光伝送手段である、
請求項4に記載の入退管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−275791(P2010−275791A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130165(P2009−130165)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(503362463)アドソル日進株式会社 (18)
【Fターム(参考)】