説明

全データセットを生成するための方法

本発明は、個別データセットを統合することによって、少なくとも1つの特徴を決定すべく、物体の少なくとも1つの部分の全データセットを生成するための方法であって、個別データセットは、物体に相対して動く光学センサおよび画像処理装置によって決定され、物体の連続的な画像の個別データセットは、該個別データセットの統合のために適合される冗長データを含んでなる方法に関する。物体のスキャンの際に得られたデータの量が、十分であって、最適な評価がなされることができるが、余りに多いデータ量を処理することがないように、光学センサと物体との間の相対運動の大きさに従って、単位時間当たりに決定された個別データセットを変化させることが提案される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個別データセットを統合することによって、少なくとも1つの特徴、例えば形状および位置を決定すべく、物体、例えば顎領域の少なくとも1つの部分の全データセットを生成するための方法であって、個別データセットは、物体に相対して動く光学センサ、例えば3Dカメラおよび画像処理装置によって決定され、物体の連続的な画像の個別データセットは、該個別データセットの統合のために適合される冗長データを含んでなる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
顎領域を口腔内でスキャンすることによって、CAD/CAM法で義歯を製造することができるための基礎となる3Dデータを生成することができる。しかしながら、歯を口腔内でスキャンする際には、1本の歯または顎部分の、目に見える部分領域は、3Dデータが測定される対象であって、通常は、全体の歯または顎よりも遥かに小さい。それ故に、複数の画像、または該画像から派生したデータを纏めて、歯または顎部分の全データセットを形成する必要性が存するのである。
【0003】
通常は、3Dカメラのような光学センサは、手動で操作される。その目的は、顎の関連領域を連続的に検出し、次に、画像処理装置によって、個別画像から、3Dデータを生成し、続いて、該3Dデータから全データセットを作成するためである。手動によって動きがなされるので、センサの迅速な移動の際に、十分なデータが使用されることは、保証されない。動きが余りに緩慢なときは、物体の所定の領域に余りに大きな冗長データが生じる。この場合、冗長データは、連続する画像の重なりから生じるデータである。すなわち、冗長データは、重なり領域から作成されるデータである。
【0004】
このようなリスクを排除するためには、迅速な動きの場合でも個別データセットの十分な重なり度を有する十分なデータを得るための、高い一定のフレームレートが必要である。高いフレームレートの結果は、高い帯域幅および大容量を有する高価な電子機器である。
【0005】
特許文献1からは、2D点群から決定されてなる3Dデータセットを決定するための方法が読み取れる。この目的のために、歯のような物体がスキャンされる。フレームレートは、記録を行なうために用いられるスキャナの速度に依存している。
【0006】
特許文献2は、口腔内空洞をスキャンするための方法に関する。ここでは、スキャン装置と、測定される領域との間の距離は、データセットの評価のために考慮される。
【0007】
特許文献3の主題は、物体を3次元的に無接触でスキャンするための方法および装置である。表面の3Dデータを得るために、複数の個別画像が重なり合う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】US-A-2006/0093206
【特許文献2】US-A-2006/0212260
【特許文献3】US-B-6,542,249
【発明の概要】
【0009】
本発明の課題は、明細書の最初の部分に記載のタイプの方法を、物体のスキャンの際に得られたデータの量が、十分であって、最適な評価がなされることができるのであるが、高い帯域幅および大容量を有する高価な電子機器をもたらす余りに多いデータ量を処理することがないように、改善することである。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、光学センサと物体との間の相対運動の大きさに従って、単位時間当たりに決定された個別データセットを変化させることを実質的に意図する。
【0011】
本発明によれば、データ収集速度を光学センサと物体との間の相対運動に従って変化させることが意図されている。個別データセットは、不連続的に決定される。このことは、フレームレートが、スキャンプロセス中に、一定でなく、パラメータに依存していることを意味する。パラメータ依存は、ここでは、例えば、物体と光学センサとの間の相対速度および/またはセンサと、測定される物体との距離および/または2つの連続的な画像の重なり度が考慮されることを意味する。
【0012】
特に意図されているのは、連続するデータセットの冗長データの数に従って、単位時間あたりに決定される個別データセットの数が閉ループ制御されることである。しかしながら、物体と光学センサとの間の相対速度に従って、決定される個別データの数が開ループ制御される可能性もある。
【0013】
しかしながら、連続的に高いデータ転送速度による収集後に、高い重なり度を有する冗長データを登録プロセス中に省略するという考えも、本発明から排除されない。しかし、このことによって、データ収集中の高帯域幅の問題は、完全には解決されない。
【0014】
従って、本発明により特に意図されているのは、2つのまたはそれより多い連続的なデータセットからはじめて、重なり度を計算することができる故に、データ収集速度の、後で生じる変化が、なされないことであり、データ収集速度の、後で生じる変化は、リアルタイムの登録プロセス中の実際の重なり度による開ループ制御に当てはまる。
【0015】
単位時間当たりの個別データセットの数の依存は、光学センサと物体との間の相対運動に依存しているので、センサの動きに加えて、物体の動きも考慮される。この場合、物体の動きを、慣性プラットフォームまたは適切な加速度センサによって、決定することができる。この措置によって、センサと物体の間の相対運動および物体自体の動きを決定することができ、必要な場合には、データ収集速度を適合させることができる。
【0016】
本発明の実施の形態では、相対運動が回転運動によってなされるときは、決定される個別データセットの数を、光学センサと、測定される物体または物体の部分との間の距離に応じて変化させることが意図されている。
【0017】
特に、方法は、CCDチップのようなチップを有する3Dカメラによって実行される。該チップは、読み出され、次に、データは、画像処理装置によって評価される。この場合、チップは、光学センサと物体との間の相対運動に従って、読み出される。特には、チップのフレームレートは、センサと物体との間の相対速度に従って開ループ制御される。しかしながら、チップのフレームレートが、該チップによって記録されたかつ連続する画像の重なり領域に従って閉ループ制御される可能性もある。
【0018】
光学センサと、測定される物体との間の距離は、2mmと20mmの間にあるほうがよい。更に、間隔を、測定領域が10mm×10mmであるように、取るほうがよい。
【0019】
本発明に係わる教示に基づいて、3Dカメラのような光学センサの実際の動きから、データ収集速度を不連続的に最適に定める。その目的は、記憶装置および帯域幅への要求が最小限である際に、最善の登録結果、すなわち適合結果を達成するためである。
【0020】
個別データセット同士を、適切なソフトウェアによって適合させ、すなわち登録し、次に、全データセットを生成する。この全データセットは、歯科用途の際には、顎領域の形状および位置を表わしている。顎領域には、義歯を装着することが意図され、かつ、顎領域は、例えばCAD/CAM法で義歯を製造するための基礎となる。
【0021】
収集カメラのような光学センサの縦軸に対する回転の、すなわち回転運動の制御は、特に重要かつ有利であると見なされる。何故ならば、速い回転速度が、比較的迅速に達成されるからである。コスト最適化システムでは、この軸の検出を、他のすべての軸よりも優先するほうがよい。
【0022】
回転の検出の際に、更に、検出される物体と、3Dカメラのような光学センサとの間の距離の測定は、有意義である。何故ならば、達成可能な重なり度は、該距離に依存しているからである。
【0023】
このことは、カメラと、測定される物体のわずかな個別測定点のすべてまたは少数との間の距離に関するヒストグラム機能の評価によってなされる。
【0024】
次に、物体距離を、有効な測定点の平均値と見なすことができる。次に、実際の回転速度と共に、必要なデータ収集速度を調整することができる。
【0025】
以下、表を参照して、10mm×10mmの測定領域を前提として、データ収集速度(Hz)を、並進速度または回転速度および必要な重なり度に従って、如何に変化させることができるかを説明する。
【0026】
表1は、並進運動に関して、並進速度および必要な重なり度に従ったデータ収集速度(Hz)を示す。
【表1】

【0027】
表2は、回転速度に関して、回転速度、物体との距離および必要な重なり度に従ったデータ収集速度(Hz)を示す。
【表2】

【0028】
これらの表からは、物体を十分な程度に測定することができるように、例えば90%の重なり度が、2つの連続的な画像の間で必要であると見なされるとき、並進速度が1mm/secである限り、1秒当たり1つの画像を記録せねばならないことが読み取れる。1mm/secより速い、例えば50mm/secの速度および99%の重なり度では、フレームレートは、500/secであるだろう。
【0029】
表2は、例えば、30°/secの回転速度および95%の重なり度の場合では、単位秒当たり21の画像が取られねばならないことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】並進運動の際の2つの画像の重なりを示す。
【図2】縦軸22を中心とした光学センサ20の回転が、各々の測定領域24,26に如何に影響を与えるかを模式的に示す。
【図3】本発明に係わる教示の原理を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
並進運動の際の2つの画像の重なりは、図1から読み取ることができる。測定領域10と、該測定領域に重なる続きの第2の測定領域12とが認められる。重なり領域には、参照符号14が付されている。重なりは、並進運動および光学センサに基づいてなされる。これらの画像は、2つの、順次的な、従って順々に記録される測定領域である。
【0032】
重なり度と、該重なり度に対応し、かつ、画像処理システムによって濃淡値のような画像の値から得られるデータとに従って、次に、画像記録、従ってまたデータ収集速度を変化させることができる。重なり領域を小さく選択すれば、データ収集速度を一層小さく調整することができる。この場合、本発明に係わる教示によれば、データ収集速度を、並進速度に従って制御することができる。
【0033】
図2は、縦軸22を中心とした光学センサ20の回転によって、各々の測定領域24,26、すなわち、画像収集領域従ってまたデータ収集領域は、縦軸22を中心とした回転に応じて変化される。物体を測定するために、同様に、チップにおける画像繰り返し速度(Bildwiederhohlrate)すなわちフレームレートを、重なり領域に従って変化させることが必要であって、重なりの度合いは、回転速度に依存している。回転速度が高ければ高いほど、重なり領域が一定であることが意図される限りは、フレームレートは一層高くなければならない。
【0034】
図3からは、再度、本発明に係わる教示の原理が見て取れる。この図では、加速度度センサまたは慣性プラットフォームには、参照符号1が付されている。その目的は、物体、例えば歯または顎領域への3Dセンサまたはスキャナ2の動きを測定するためである。物体3が同様に動くときは、物体も、対応の加速度センサを有し、あるいは、該加速度センサに割り当てられているほうがよい。
【0035】
スキャナ2は、画像記録センサ5を有し、該画像記録センサは、コンピュータ4に接続されている。前に説明したように、該コンピュータによって、センサ5の画像読み出し速度が閉ループ制御および/または開ループ制御される。実際また、コンピュータ4は、画像処理装置を有する。その目的は、センサ5によって記録された画像から、または個々のピクセルの内容から、全データセットの登録または決定のために必要になるデータを生成するためである。
【0036】
測定領域またはデータ収集領域には、参照符号6が付されている。スキャナ2が並進運動されるとき、運動速度に応じて、複数の画像が、時間的にずれて記録される。個別画像または個別データセットの適合を可能にする冗長データを得るための重なりは、必要な範囲で、なされる。互いにずれて延びているデータ収集領域は、図から原理的に見て取れる。かくして、第1のデータ領域には、参照符号6が付され、第2のデータ領域には参照符号7が付されている。8の場合に応じて並進運動がなされるとき、第2のデータ領域は、画像6の手前で記録された。
【0037】
図3からは、更に、運動が、矢印9によっても示されるように、矢印8の方向のみならず、xyz座標系のいずれの方向にも、なされることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 加速度度センサ、慣性プラットフォーム
2 スキャナ
3 歯
4 コンピュータ
5 センサ
6 第1のデータ領域
7 第2のデータ領域
8 矢印
9 矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個別データセットを統合することによって、少なくとも1つの特徴、例えば形状および位置を決定すべく、物体、例えば顎領域の少なくとも1つの部分の全データセットを生成するための方法であって、前記個別データセットは、前記物体に相対して動く光学センサ、例えば3Dカメラおよび画像処理装置によって決定され、前記物体の連続的な画像の個別データセットは、該個別データセットの統合のために適合される冗長データを含んでなる方法において、
前記光学センサと前記物体との間の相対運動の大きさに従って、単位時間当たりに決定された個別データセットを変化させることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記個別データセットを不連続的に決定することを特徴とする請求項1に記載の全データセットを生成するための方法。
【請求項3】
単位時間当たりの前記個別データセットの数を閉ループ制御および/または開ループ制御によって変化させることを特徴とする請求項1または2に記載の全データセットを生成するための方法。
【請求項4】
連続的なデータセットの前記冗長データの数に従って、単位時間当たりに決定される個別データセットを閉ループ制御させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の全データセットを生成するための方法。
【請求項5】
前記物体と前記光学センサとの間の相対運動に従って、前記決定される個別データセットの数を開ループ制御することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の全データセットを生成するための方法。
【請求項6】
単位時間当たりの前記個別データセットの数の、前記光学センサと、前記物体との間の相対運動への依存に追加して、前記物体の動きを考慮することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の全データセットを生成するための方法。
【請求項7】
前記物体の動きを、慣性プラットフォームによって決定することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の全データセットを生成するための方法。
【請求項8】
前記物体と前記光学センサとの間の相対運動を、少なくとも1つの加速度センサおよび/または少なくとも1つの回転センサによって決定することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の全データセットを生成するための方法。
【請求項9】
前記物体と前記光学センサとの間の相対運動を、少なくとも1つの慣性プラットフォームによって決定することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の全データセットを生成するための方法。
【請求項10】
特に、回転運動によってなされる相対運動の際の、前記決定される個別データセットの数を、前記光学センサと、前記測定される物体と、前記物体の部分との間の距離に従って変化させることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の全データセットを生成するための方法。
【請求項11】
前記光学センサによって記録された2つの連続的な画像の重なり領域のデータは、冗漫なデータであることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の全データセットを生成するための方法。
【請求項12】
前記物体を、3Dカメラのような光学センサの、CCDチップのようなチップ上に結像させ、かつ、該チップを、前記光学センサと前記物体との間の相対運動に従って読み出すことを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の全データセットを生成するための方法。
【請求項13】
前記チップのフレームレートを、前記センサと前記物体との間の相対速度に従って開ループ制御することを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項に記載の全データセットを生成するための方法。
【請求項14】
前記チップのフレームレートを、前記チップによって記録されかつ連続する複数の画像の重なり領域に従って、閉ループ制御することを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項に記載の全データセットを生成するための方法。
【請求項15】
前記光学センサを、前記物体から間隔aをあけて動かし、但し、2mm≦a≦20mmであることを特徴とする請求項1ないし14のいずれか1項に記載の全データセットを生成するための方法。
【請求項16】
前記光学センサを、基本的に10mm×10mmの測定領域が生じるように、前記物体に対し位置決めすることを特徴とする請求項1ないし15のいずれか1項に記載の全データセットを生成するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−500463(P2013−500463A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520993(P2012−520993)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059819
【国際公開番号】WO2011/009736
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(504013395)デグデント・ゲーエムベーハー (22)
【Fターム(参考)】