説明

全方向移動車輪および移動装置

【課題】各回転体の回転軸方向の位置によらず、横行する走行面上にある障害物の乗越え性能が高く、直進性を高めることができ、安定した動作が可能な全方向移動車輪および移動装置を提供する。
【解決手段】各回転体2が、回転軸を湾曲可能な可撓性および回転軸に垂直な方向に撓み抵抗性を有する強度異方性の構造体を有している。各回転体2は、ホイール3の外周をリング状に包囲するよう湾曲して、ホイール3に設けられている。各回転体2は、それぞれホイール3の回転軸に対する同一垂直面に沿った曲線の回転軸を中心として回転可能である。各回転体2は、その回転軸方向に圧縮されている。ブレーキ4が、各回転体2を選択的に固定または回転可能に、ホイール3に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全方向移動車輪、および、全方向移動車輪を有する移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、全方向に移動可能な移動装置で使用される全方向移動車輪は、ホイールの外周に設置される複数の回転体の材質が、金属や硬質ゴムのような剛性のある構造体から成っている(例えば、特許文献1,2または3参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第3421290号公報
【特許文献2】特開2001−213103号公報
【特許文献3】特開2002−137602号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1乃至3に記載の全方向移動車輪では、各回転体が剛体から成るため、各回転体の回転軸が可撓性を持たない直線となる。この場合、ホイールの外周をリング状に形成するためには、各回転体を、外径が回転体の回転軸方向で変化する太鼓状や釣鐘状に形成する必要がある。しかし、このような各回転体の回転によって横行しようとすると、各回転体の回転軸方向の位置によって外径が変化し、外径が小さくなるときには、横行する走行面上にある障害物の乗越え性能が極端に悪化したり、更に外径が小さい場合には回転体が回転できず摺動するという課題があった。
【0005】
また、各回転体が自在に回転して全方向へ移動できるため、路面に傾斜がある場合、意図しなくとも、あるいは意図に反して、重力によって低い方向へ移動してしまう。このように、直進性が悪く、動作が安定しないという課題もあった。
【0006】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、各回転体の回転軸方向の位置によらず、横行する走行面上にある障害物の乗越え性能が高く、直進性を高めることができ、安定した動作が可能な全方向移動車輪および移動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る全方向移動車輪は、複数の回転体とホイールとブレーキとを有し、各回転体は、回転軸を湾曲可能な可撓性および前記回転軸に垂直な方向に撓み抵抗性を有する強度異方性の構造体を有し、前記ホイールの外周をリング状に包囲するよう湾曲してそれぞれ前記ホイールの回転軸に対する同一垂直面に沿った曲線の回転軸を中心として回転可能に、各回転体の回転軸方向に圧縮されて前記ホイールに設けられ、前記ブレーキは各回転体を選択的に固定または回転可能に前記ホイールに取り付けられていることを、特徴とする。
【0008】
本発明に係る全方向移動車輪では、各回転体が回転軸を湾曲可能な可撓性を有しているため、各回転体を概ね円筒状に形成しても、ホイールの外周をリング状に形成することができる。このため、各回転体の回転軸方向で外径が変化せず、全方向移動車輪が横行する走行面上にある障害物の乗越えは、常に各回転体の最大径の部分によって行われ、各回転体の最大の乗越え性能が常に発揮される。このように、本発明に係る全方向移動車輪は、各回転体の回転軸方向の位置によらず、横行する走行面上にある障害物の乗越え性能が高い。
【0009】
各回転体がそれぞれホイールの回転軸に対する同一垂直面に沿った曲線の回転軸を中心として回転可能にホイールに設けられているため、各回転体をホイールの回転方向に対して垂直方向に回転させることができる。これにより、車軸を固定しても任意の方向に方向転換することができる。このため、キャスターに求められるような車輪の方向転換のためのスペースが不要であり、車輪の径を大きくして、悪路での走破性を高めることができる。また、車軸姿勢が変らないので駆動機構を盛込むことが容易であり、その場合走破性をさらに向上させることができる。
【0010】
また、各回転体がホイールの外周をリング状に包囲するよう湾曲して設けられているため、点接触で接地することができる。このため、走行する面が平滑な一平面でなくてもよく、凹凸を有する悪路や曲面などでも走行することができる。各回転体が回転軸方向に圧縮されているため、各回転体に引張応力が加わるときに比べ、その耐久性を向上させることができる。また、接地面からの反力で、各回転体が回転軸方向に変位したり、回転軸の湾曲のたわみ量が変化したりするのを抑制することもできる。
【0011】
ブレーキが、各回転体を選択的に固定または回転可能に、ホイールに取り付けられているため、使用の状況に応じて、固定車輪としてホイール回転方向にのみ移動可能に機能させたり、自在車輪として全方向に移動可能に機能させたりする選択が可能となる。このため、例えば路面に傾斜がある場合、重力によって低い方向へ移動しないよう各回転体を固定して直進することができる。このように、本発明に係る全方向移動車輪は、直進性を高めることができ、安定した動作が可能である。
【0012】
本発明に係る全方向移動車輪は、例えば、狭い通路内を安全に直進走行し、時には幅寄せして障害物を回避する鉄道車両内での販売車や、積載物の受渡しのために微妙な位置合せを必要とする工場内の搬送台車、机に正対したまま僅かにサイドスリップして作業性が良い姿勢を選択しようとする車椅子などの車輪として使用されると、非常に有用である。
【0013】
本発明に係る全方向移動車輪は、複数の回転体とホイールとブレーキとを有し、各回転体はコイルスプリングを弾性体で被覆して成り、回転軸を湾曲可能な可撓性を有し、前記ホイールの外周をリング状に包囲するよう湾曲してそれぞれ前記ホイールの回転軸に対する同一垂直面に沿った曲線の回転軸を中心として回転可能に、各回転体の回転軸方向に圧縮されて前記ホイールに設けられ、前記ホイールは各回転体の両端を回転可能に支持する回転体支持部を有し、前記ブレーキは各回転体を選択的に固定または回転可能に前記ホイールに取り付けられていてもよい。この場合、各回転体に荷重が加えられたとき、回転体支持部により、その回転軸の変位を乗り心地に影響しないよう小さくすることができる。また、回転軸の曲率を概ね維持したまま、各回転体を回転させることができる。
なお、本発明に係る全方向移動車輪で、各回転体は、前記構造体が回転軸方向に伸縮可能なベローズから成っていてもよい。
【0014】
本発明に係る全方向移動車輪で、前記ブレーキは複数のブレーキシューとカムリングと操作部とを有し、各ブレーキシューは、カムフォロワを有し、各回転体に当接する制動位置と各回転体から離れた解放位置とに移動可能に前記ホイールの外周に設けられており、前記カムリングは前記ホイールにそのホイールの回転軸と同軸で回転可能に設けられ、各カムフォロワと係合して前記ホイールに対する回転角度により前記ブレーキシューを前記制動位置と前記解放位置とに選択的に移動可能なカム形状を有し、前記操作部は前記カムリングを前記ホイールに対し回転可能に設けられていることが好ましい。この場合、操作部によりカムリングをホイールに対して回転させると、そのホイールに対する回転角度により、カムリングに係合されたカムフォロワとともに、ブレーキシューを制動位置と開放位置とに選択的に移動させることができる。ブレーキシューが制動位置のとき、各回転体にブレーキシューが当接し、各回転体がその回転軸を中心として回転しないよう、各回転体を固定することができる。ブレーキシューが解放位置のとき、各回転体からブレーキシューが離れ、各回転体をその回転軸を中心として自在に回転可能にすることができる。
【0015】
本発明に係る移動装置は、本体に、本発明に係る全方向移動車輪を有することを特徴とする。
本発明に係る移動装置は、本発明に係る全方向移動車輪を有しているため、各回転体の回転軸方向の位置によらず、横行する走行面上にある障害物の乗越え性能が高い。また、ブレーキにより各回転体を選択的に固定または回転可能であるため、直進性を高めることができ、安定した動作が可能である。本発明に係る移動装置は、好適には、鉄道車両内での販売車や、工場内の搬送台車、車椅子などである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、各回転体の回転軸方向の位置によらず、横行する走行面上にある障害物の乗越え性能が高く、直進性を高めることができ、安定した動作が可能な全方向移動車輪および移動装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至図6は、本発明の実施の形態の全方向移動車輪および移動装置を示している。
図1乃至図4に示すように、全方向移動車輪1は、複数の回転体2とホイール3とブレーキ4とを有している。
【0018】
図1(b)に示すように、ホイール3は、金属製またはプラスチック製で、ホイール本体11と、ホイール本体11の外周に放射状に固定された複数の回転体支持部12とを有している。
各回転体2は、コイルスプリングから成る構造体を、弾性体で被覆して成っている。コイルスプリングは、強度異方性の構造体で、回転軸を湾曲可能な可撓性および回転軸に垂直な方向に撓み抵抗性を有している。
【0019】
図1および図2に示すように、各回転体2は、各回転体2の回転軸方向に圧縮され、ホイール3の外周をリング状に包囲するよう湾曲して、各回転体支持部12の間に設けられている。各回転体2は、それぞれホイール3の回転軸13に対する同一垂直面に沿った曲線の回転軸を中心として回転可能に、両端が各回転体支持部12に支持されている。各回転体2は、ホイール本体11との間に隙間を有して、各回転体支持部12の間に設けられている。
【0020】
図1乃至図4に示すように、ブレーキ4は、複数のブレーキシュー14とカムリング15とカムリングホルダ16と操作部17とを有している。各ブレーキシュー14は、それぞれ各回転体支持部12の間の、ホイール本体11の外周に設けられている。各ブレーキシュー14は、各回転体2とホイール本体11との隙間に設けられ、ブレーキユニットベース18とブレーキアーム19とブレーキアーム揺動軸20とブレーキスプリング21とシュー部22とカムフォロワ23とを有している。
【0021】
図2および図3に示すように、ブレーキユニットベース18は、ホイール本体11の外周に固定されている。ブレーキアーム19は、各回転体2の回転軸方向に伸びて設けられている。ブレーキアーム19は、一端19aがホイール本体11と回転体2との間で移動可能に、他端19bがブレーキアーム揺動軸20によってブレーキユニットベース18に回転可能に設けられている。ブレーキスプリング21は、ブレーキアーム19を回転体2側に付勢するよう、ブレーキユニットベース18とブレーキアーム19とを連結して設けられている。シュー部22は、回転体2の外面に密着して当接可能に、ブレーキアーム19の一端19aの回転体2側に設けられている。カムフォロワ23は、ブレーキアーム19の一端19aに、ホイール3の回転軸13に平行に突出して設けられている。カムフォロワ23は、ホイール3の一方の側面3aの方向に突出して設けられている。
【0022】
図4(a)に示すように、カムリング15は、円環状を成している。カムリング15は、内周のカム面24が回転体2の数と同じ数の繰り返し形状から成るカム形状を成している。図4(b)に示すように、カムリング15は、カム面24の各繰り返し形状の一端に内径が大きいブレーキ制動ロック位置25を有し、他端に内径が小さいブレーキ解除ロック位置26を有し、ブレーキ制動ロック位置25とブレーキ解除ロック位置26との間に内径が滑らかに変化する移行区間27を有している。なお、カムリング15は、ブレーキ制動ロック位置25およびブレーキ解除ロック位置26と、移行区間27との境界に、カムリング15の中心方向に僅かに突出した突出部28を有している。また、カムリング15は、カム面23の各繰り返し形状の境界に、カムリング15の中心方向に突出した境界部29を有している。
【0023】
図2に示すように、カムリング15は、ホイール3の一方の側面3aに設けられている。カムリング15は、カム面24の各繰り返し形状に、それぞれ各ブレーキシュー14のカムフォロワ23が係合するよう設けられている。カムリング15は、ホイール3の回転軸13と同軸で回転可能に設けられている。カムリング15は、カムフォロワ23が移行区間27を介してブレーキ制動ロック位置25とブレーキ解除ロック位置26との間を相対的に往復するよう、ホイール3に対して回転可能になっている。カムリング15は、カムフォロワ23がブレーキ制動ロック位置25に係合しているとき、ブレーキスプリング21によりブレーキアーム19が回転体2側に付勢され、シュー部22が回転体2の外面に当接するようになっている。また、カムリング15は、カムフォロワ23がブレーキ解除ロック位置26に係合しているとき、ブレーキスプリング21の付勢力に抗してブレーキアーム19がホイール本体11側に押し戻され、シュー部22が回転体2から離れるようになっている。こうして、カムリング15は、ホイール3に対する回転角度により、各ブレーキシュー14を各回転体2に当接する制動位置と各回転体2から離れた解放位置とに、選択的に移動可能に構成されている。
【0024】
図1(a)および図2に示すように、カムリングホルダ16は、円盤状で、ホイール本体11との間にカムリング15を配するよう、ホイール3の一方の側面3a側に設けられている。カムリングホルダ16は、外周部にカムリング15が固定され、カムリング15とともにホイール3に対して回転可能に設けられている。
【0025】
操作部17は、複数の棒状のブレーキハンドルから成り、カムリングホルダ16に設けられている。操作部17は、ホイール3の一方の側面3aに沿って、等角度間隔で放射状に設けられている。操作部17は、ホイール3の回転方向に沿ってホイール3に対して正転および反転させることにより、カムリング15をホイール3に対し正逆に回転可能に構成されている。なお、操作部17は、棒状ハンドルを例としたが、カムリングホルダ16を正逆に回転できる機構であれば、グリップハンドルによって操作されるワイヤや電磁マグネット、モーター、圧縮ガスによって駆動されるアクチュエータなどによっていても良い。
【0026】
次に、作用について説明する。
全方向移動車輪1は、操作部17によりカムリング15をホイール3に対して回転させると、そのホイール3に対する回転角度により、カムリング15に係合されたカムフォロワ23とともに、ブレーキシュー14を制動位置と開放位置とに選択的に移動させることができる。ブレーキシュー14が制動位置のとき、各回転体2にブレーキシュー14が当接し、各回転体2がその回転軸を中心として回転しないよう、各回転体2を固定することができる。ブレーキシュー14が解放位置のとき、各回転体2からブレーキシュー14が離れ、各回転体2をその回転軸を中心として自在に回転可能にすることができる。
【0027】
このように、ブレーキ4が、各回転体2を選択的に固定または回転可能に、ホイール3に取り付けられているため、使用の状況に応じて、固定車輪として前後方向にのみ移動可能に機能させたり、自在車輪として全方向に移動可能に機能させたりする選択が可能となる。このため、例えば全輪に全方向移動車輪を用いた移動装置において、路面に傾斜がある場合でも、重力によって低い方向へ移動しないよう各回転体2を固定して直進することができる。このように、全方向移動車輪1は、直進性を高めることができ、安定した動作が可能である。
【0028】
全方向移動車輪1では、各回転体2が回転軸を湾曲可能な可撓性を有しているため、各回転体2を概ね円筒状に形成しても、ホイール3の外周をリング状に形成することができる。このため、各回転体2の回転軸方向で外径が変化せず、全方向移動車輪1が横行する走行面上にある障害物の乗越えは、常に各回転体2の最大径の部分によって行われ、各回転体2の最大の乗越え性能が常に発揮される。このように、全方向移動車輪1は、各回転体2の回転軸方向の位置によらず、横行する走行面上にある障害物の乗越え性能が高い。
【0029】
各回転体2がそれぞれホイール3の回転軸13に対する同一垂直面に沿った曲線の回転軸を中心として回転可能にホイール3に設けられているため、各回転体2をホイール3の回転方向に対して垂直方向に回転させることができる。これにより、車軸を固定しても任意の方向に方向転換することができる。このため、キャスターに求められるような車輪の方向転換のためのスペースが不要であり、車輪の径を大きくして、悪路での走破性を高めることができる。また、車軸姿勢が変らないので駆動機構を盛込むことが容易であり、その場合走破性をさらに向上させることができる。
【0030】
また、各回転体2がホイール3の外周をリング状に包囲するよう湾曲して設けられているため、点接触で接地することができる。このため、走行する面が平滑な一平面でなくてもよく、凹凸を有する悪路や曲面などでも走行することができる。各回転体2が回転軸方向に圧縮されているため、各回転体2に引張応力が加わるときに比べ、その耐久性を向上させることができる。また、接地面からの反力で、各回転体2が回転軸方向に変位したり、回転軸の湾曲のたわみ量が変化したりするのを抑制することもできる。
【0031】
また、全方向移動車輪1は、各回転体2に荷重が加えられたとき、回転体支持部12により、その回転軸の変位を乗り心地に影響しないよう小さくすることができる。また、回転軸の曲率を概ね維持したまま、各回転体2を回転させることができる。
【0032】
全方向移動車輪1は、例えば、狭い通路内を安全に直進走行し、時には幅寄せして障害物を回避する鉄道車両内での販売車や、積載物の受渡しのために微妙な位置合せを必要とする工場内の搬送台車、机に正対したまま僅かにサイドスリップして作業性が良い姿勢を選択しようとする車椅子などの移動装置の車輪として使用されると、非常に有用である。
【0033】
鉄道車両内での販売車に使用される場合、例えば図5に示すように、全方向移動車輪1から成る後輪と、ブレーキ4を有さない全方向移動車輪50から成る前輪と、対応する前輪と後輪とに巻き掛けられた駆動力伝達ベルト51とを有している。この構成により、車輪1,50の姿勢が変らなくてよいので、キャスターのように占有スペースを大きくとらずとも大径車輪が装着でき、四輪駆動もできるため、車両連結部のカバーなど路面の凹凸の乗越えが容易になる。大径車輪を使用しても、商品を積載するスペースが余分に確保できる。車輪1,50を台車カバー内に収納してはみ出しをなくすことができるので、安全である。通路幅等の理由から車幅制限があっても、キャスターに較べ車輪1,50の接地有効幅が大きく取れ、すわりが安定するので転倒しにくく、安全である。通路内で通行する人と交換するとき、簡単に幅寄せして充分な空間を空けることができる。収納のとき、幅寄せによって壁面にぴたりと押し付けることができスペースを節約することができる。
【0034】
また、航空機内のミールサービス台車に使用される場合、ミールサービス台車を所定の収納スペースに容易に格納できる。工場内の搬送台車に使用される場合、前後走行による微妙な位置合せなしで、所定の受渡位置へぴたりと寄せることができる。トラック荷台・エレベータ・搬送機などへの収納効率を向上させることができる。
【0035】
車椅子に使用される場合、例えば図6に示すように、全方向移動車輪1から成る後輪と、ブレーキ4を有さない全方向移動車輪50から成る前輪と、対応する前輪と後輪とに巻き掛けられた駆動ベルト52とを有している。この構成により、机作業で容易に微妙なサイドスリップが可能となり、正しい作業姿勢が保てるため、疲れない。エレベータ等で壁際に寄ることができ、空間占有感が軽減し気持ちの負担が軽くなる。物理的に無効スペースが削減できる。狭い入口で位置が会わないときの再進入動作が不要になる。室内の移動が容易になり、リラックスすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態の全方向移動車輪を示す(a)正面図、(b)カムリングホルダを外した状態の正面図である。
【図2】図1に示す全方向移動車輪の(a)A−A線断面図、(b)そのブレーキの拡大断面図である。
【図3】図1に示す全方向移動車輪のカムリングを外した状態のブレーキの拡大正面図である。
【図4】図1に示す全方向移動車輪のカムリングを示す(a)正面図、(b)カム形状の拡大正面図である。
【図5】図1に示す全方向移動車輪の鉄道車両内での販売車への使用状態を示す(a)一部切り欠き側面図、(b)一部切り欠き背面図である。
【図6】図1に示す全方向移動車輪の車椅子への使用状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 全方向移動車輪
2 回転体
3 ホイール
4 ブレーキ
11 ホイール本体
12 回転体支持部
14 ブレーキシュー
15 カムリング
16 カムリングホルダ
17 操作部
18 ブレーキユニットベース
19 ブレーキアーム
20 ブレーキアーム揺動軸
21 ブレーキスプリング
22 シュー部
23 カムフォロワ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の回転体とホイールとブレーキとを有し、
各回転体は、回転軸を湾曲可能な可撓性および前記回転軸に垂直な方向に撓み抵抗性を有する強度異方性の構造体を有し、前記ホイールの外周をリング状に包囲するよう湾曲してそれぞれ前記ホイールの回転軸に対する同一垂直面に沿った曲線の回転軸を中心として回転可能に、各回転体の回転軸方向に圧縮されて前記ホイールに設けられ、
前記ブレーキは各回転体を選択的に固定または回転可能に前記ホイールに取り付けられていることを、
特徴とする全方向移動車輪。
【請求項2】
複数の回転体とホイールとブレーキとを有し、
各回転体はコイルスプリングを弾性体で被覆して成り、回転軸を湾曲可能な可撓性を有し、前記ホイールの外周をリング状に包囲するよう湾曲してそれぞれ前記ホイールの回転軸に対する同一垂直面に沿った曲線の回転軸を中心として回転可能に、各回転体の回転軸方向に圧縮されて前記ホイールに設けられ、
前記ホイールは各回転体の両端を回転可能に支持する回転体支持部を有し、
前記ブレーキは各回転体を選択的に固定または回転可能に前記ホイールに取り付けられていることを、
特徴とする全方向移動車輪。
【請求項3】
前記ブレーキは複数のブレーキシューとカムリングと操作部とを有し、
各ブレーキシューは、カムフォロワを有し、各回転体に当接する制動位置と各回転体から離れた解放位置とに移動可能に前記ホイールの外周に設けられており、
前記カムリングは前記ホイールにそのホイールの回転軸と同軸で回転可能に設けられ、各カムフォロワと係合して前記ホイールに対する回転角度により前記ブレーキシューを前記制動位置と前記解放位置とに選択的に移動可能なカム形状を有し、
前記操作部は前記カムリングを前記ホイールに対し回転可能に設けられていることを、
特徴とする請求項1または2記載の全方向移動車輪。
【請求項4】
本体に請求項1,2または3に記載の全方向移動車輪を有することを特徴とする移動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−106254(P2007−106254A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−299066(P2005−299066)
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(304020225)
【Fターム(参考)】