説明

共役ジエン化合物、硬化性組成物およびその硬化物

【課題】本発明は、硬化後に、熱分解可能であり、より優れたリサイクル性を有し、さらに、分解温度を制御することができる硬化性組成物およびそれに用いられる共役ジエン化合物を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の共役ジエン化合物は、1分子中に1個のケイ素原子と2個以上のアルコキシ基とを有するアルコキシシラン化合物と、式(1)で表される化合物との反応により得られる共役ジエン化合物である。また、本発明の硬化性組成物は、共役ジエン化合物と、1分子中に2個以上のジエノフィル構造を有するジエノフィル化合物とを含有する。
1−XH (1)
(式中、R1は、共役ジエン構造を含有する1価の炭化水素基を表す。Xは、酸素原子または硫黄原子を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共役ジエン化合物、硬化性組成物およびその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境にやさしく、コストも低減できる点から、熱硬化性樹脂の分野においてもリサイクル性が要求されている。しかし、熱硬化性樹脂は、その性質上、リサイクルすることが難しい。
熱硬化性樹脂(例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等)は、一般的に、硬化すると不融不溶となり、硬化後に損傷した場合はもとに戻すことができない。
【0003】
また、熱硬化性樹脂は、耐熱性、機械的特性、接着特性などに優れているので、接着剤、シーラント、防水材、塗料、発泡体等、広い用途に用いられている。このような熱硬化性樹脂を、例えば、接着剤として使用し、金属、ガラス、プラスチックなどの部材を接着させた場合、熱硬化性樹脂の接着剤は、部材を強固に接着させることができる。しかし、その一方で、リサイクルするために、部材を接着面から取り外すことは難しい。
【0004】
熱硬化性樹脂を加熱して分解することも可能ではあるが、熱硬化性樹脂は、分解温度が高く、分解すると有毒ガスを発生させてしまうという問題がある。
例えば、熱硬化性樹脂の1つであるウレタン樹脂は、貯蔵安定性に優れ、一液で湿気硬化でき、接着剤、シーラント等に広く用いられる。従来のウレタン樹脂は、ポリエーテルポリオール系、ポリエステルポリオール系、ポリマーポリオール系等のポリオールとポリイソシアネートとを反応させることにより製造される。これらのウレタン結合は比較的安定であり、200℃超に加熱することにより、青酸等の有毒ガスを発生しながら分解することが知られている。
【0005】
また、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂は、貯蔵安定性、耐候性等に優れ、接着剤、防水材等に広く用いられている。
エポキシ樹脂は、エポキシ基の開環(硬化)反応により生成する結合(例えば、1−アルキルアミノ−2−ヒドロキシエチル基等)を有し、この結合も300℃超の高温でなければ分解しないことが知られている。
シリコーン樹脂は、シロキサン結合を有し、当該シロキサン結合もまた、300℃超の高温でなければ分解しないことが知られている。
【0006】
出願人は、以前に、硬化後の分解が可能な熱硬化性樹脂であって、当該熱硬化性樹脂が分解するときの分解温度を下げ、分解しても有毒ガスを発生させないようにすることを目的として、例えば、特許文献1に記載の硬化性化合物を提案している。
前記硬化性化合物は、共役ジエン構造とジエノフィル構造とからディールス−アルダー反応によって形成されるディールス−アルダー反応付加部と、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、アルコキシシリル基およびエポキシ基からなる群より選択される官能基とを有し;前記官能基によって硬化することができ、前記官能基が架橋反応してなる硬化物を形成する。そして、当該硬化物を加熱することにより、前記ディールス−アルダー反応付加部が解離し、該硬化物が分解する。
特許文献1に記載の硬化性化合物は、1分子中に、共役ジエン構造および/またはジエノフィル構造と官能基とを含有し、1分子で前記ディールス−アルダー反応および硬化反応をすることができる。
【0007】
一方、非特許文献1には、下記式(I)で表される4個のフラン骨格を有するジエン化合物と、下記式(II)で表される3個のマレイミド骨格を有するジエノフィル化合物とを、ディールス−アルダー反応させることにより、三次元的な構造を有する硬化物が得られることが記載されている。硬化物は、フラン骨格とマレイミド骨格との間のディールス−アルダー反応によって形成される結合を有する。
さらに、当該硬化物は、フラン骨格とマレイミド骨格との間のディールス−アルダー反応によって形成された結合が、約130℃で、解離反応して、ジエン化合物とジエノフィル化合物とを生成する。
【0008】
【化1】

【0009】
【化2】

【0010】
非特許文献1に記載されている硬化物は、付加と解離とを繰り返すことができる。非特許文献1に記載されている硬化物は、電子材料、接着剤、構造材料などの用途に使用可能である。
【0011】
【特許文献1】特開2003−183348号公報
【非特許文献1】Xiangxu Chen et al.,Science 295,1698(2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述した特許文献1に記載された硬化性化合物は、加熱されると硬化物を生成する。硬化物は、ディールス−アルダー反応付加部と、官能基の硬化反応による三次元網目構造とを有し、官能基の硬化反応による三次元網目構造は、硬化物全体に連続的に広がっていると考えられる。当該硬化物を加熱すると、硬化物はディールス−アルダー反応付加部が解離して、分解物が得られる。
【0013】
しかしながら、分解物には、連続的な三次元網目構造が維持されたままの熱硬化性樹脂が含まれており、この熱硬化性樹脂の分子量は比較的大きい。このため、分解物は、液状化等しにくいと考えられ、硬化後の熱硬化性樹脂の分子量をより低くすることが必要であった。
また、非特許文献1に記載されているジエン化合物は、これを製造する方法が多段階であり、収率が低く、製造しにくいという問題があった。
【0014】
したがって、本発明は、硬化後に、熱により分解可能であり、より優れたリサイクル性を有し、さらに、分解温度を制御することができる硬化性組成物およびそれに用いられる共役ジエン化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、硬化後に、熱分解可能であり、より優れたリサイクル性を有し、さらに、分解温度を制御することができる硬化性組成物およびそれに用いられる共役ジエン化合物に関し、鋭意研究した結果、以下のことを見出した。
特定の共役ジエン化合物が、1分子中に2個以上のジエノフィル構造を有するジエノフィル化合物とディールス−アルダー反応して硬化物を生成することができること、硬化物は、ジエノフィル構造がマレイミド骨格であるとき硬化後に熱分解可能であること、硬化物を分解した後に得られる分解組成物が、液状化、流動化または軟化(以下、液状化、流動化または軟化を「軟化等」と言うことがある)し、よって硬化物がリサイクル性により優れていること、さらに、共役ジエン化合物の構造によって硬化物の分解温度を制御することが可能であることを見出した。
そして、本発明者は、これらの知見に基づき、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下の(i)〜(xiii)を提供する。
【0016】
(i)本発明の第1の態様の共役ジエン化合物として、1分子中に1個のケイ素原子と2個以上のアルコキシ基とを有するアルコキシシラン化合物と、下記式(1)で表される化合物との反応により得られる共役ジエン化合物を提供する。
【0017】
1−XH (1)
【0018】
(式中、R1は、共役ジエン構造を含有する1価の炭化水素基を表す。Xは、酸素原子または硫黄原子を表す。)
(ii)上記(i)の共役ジエン化合物は、前記共役ジエン構造がフラン環であり、前記Xが酸素原子であることが好適である。
【0019】
(iii)本発明の第2の態様の共役ジエン化合物として、下記式(2)で表される共役ジエン化合物を提供する。
【0020】
SiR2n(XR14-n (2)
【0021】
(式中、R1は、それぞれ独立に、共役ジエン構造を含有する1価の炭化水素基を表す。R2は、それぞれ独立に、水素原子が熱硬化性樹脂と反応する官能基で置換されていてもよいアルキル基を表す。nは0〜2の整数である。Xは、それぞれ独立に、酸素原子または硫黄原子を表す。)
(iv)上記(iii)に記載の共役ジエン化合物において、前記共役ジエン構造がすべてフラン環であり、前記Xがすべて酸素原子であることが好適である。
【0022】
(v)本発明の第3の態様の共役ジエン化合物として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、下記式(3)で表される化合物との反応により得られる共役ジエン化合物を提供する。
【0023】
1−XH (3)
【0024】
(式中、R1は、共役ジエン構造を含有する1価の炭化水素基を表す。Xは、酸素原子または硫黄原子を表す。)
(vi)上記(v)に記載の共役ジエン化合物が、前記共役ジエン構造がフラン環であり、前記Xが硫黄原子であることが好適である。
【0025】
(vii)本発明の第4の態様の共役ジエン化合物として、1分子中に2個以上のα,β−不飽和結合を有する化合物と、下記式(4)で表される化合物との反応により得られる共役ジエン化合物を提供する。
【0026】
1−XH (4)
【0027】
(式中、R1は、共役ジエン構造を含有する1価の炭化水素基を表す。Xは、酸素原子または硫黄原子を表す。)
(viii)上記(vii)に記載の共役ジエン化合物は、前記共役ジエン構造がフラン環であり、前記Xが硫黄原子であることが好適である。
【0028】
(ix)本発明は、上記(i)〜(viii)のいずれかに記載の共役ジエン化合物と、1分子中に2個以上のジエノフィル構造を有するジエノフィル化合物とを含有する硬化性組成物を提供する。
(x)上記(ix)に記載の硬化性組成物は、前記ジエノフィル構造が、マレイミド骨格であることが好適である。
【0029】
(xi)上記(ix)または(x)に記載の硬化性組成物は、さらに、熱硬化性樹脂を含有することが好適である。
(xii)上記(ix)〜(xi)のいずれかに記載の硬化性組成物は、前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂であり、さらに、硬化剤を含有することが好適である。
【0030】
(xiii)本発明は、上記(ix)〜(xii)のいずれかに記載の硬化性組成物の前記共役ジエン化合物と前記ジエノフィル化合物との間でディールス−アルダー反応により結合を形成させて硬化させてなる硬化物であって、
熱により前記結合が解離しうる硬化物を提供する。
【発明の効果】
【0031】
本発明の共役ジエン化合物(上記(i)〜(viii)のいずれかに記載の共役ジエン化合物)は、1分子中に2個以上のジエノフィル構造を有するジエノフィル化合物とディールズ−アルダー反応することにより、硬化物を形成する。
本発明の硬化物は、熱により分解可能であり、より優れたリサイクル性を有し、硬化物の分解温度を制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明の共役ジエン化合物について、4つの態様をそれぞれ順に説明する。
本発明の第1の態様の共役ジエン化合物は、1分子中に1個のケイ素原子と2個以上のアルコキシ基とを有するアルコキシシラン化合物と、
式(1)で表される化合物との反応により得られる共役ジエン化合物である。
【0033】
1−XH (1)
【0034】
(式中、R1は、共役ジエン構造を含有する1価の炭化水素基を表す。Xは、酸素原子または硫黄原子を表す。)
【0035】
1分子中に1個のケイ素原子と2個以上のアルコキシ基を有するアルコキシシラン化合物について、以下に説明する。
本発明の第1の態様の共役ジエン化合物は、1分子中に1個のケイ素原子と2個以上のアルコキシ基を有するアルコキシシラン化合物を原料とする。
アルコキシシラン化合物は、1分子中に1個のケイ素原子と2個以上のアルコキシ基を有するものであれば、特に制限されず、例えば、従来公知のものを用いることができる。
【0036】
アルコキシ基は、その数が、2〜4個であるのが好ましく、より好ましくは3個または4個である。
アルコキシ基は、炭素原子数1〜6のアルコキシ基であるのが好ましい態様の1つである。
炭素原子数1〜6のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基が挙げられる。
炭素原子数3以上のアルコキシ基は、各異性体(例えば、イソプロポキシ基)を含む。
【0037】
アルコキシシラン化合物において、ケイ素原子に結合している、アルコキシ基以外の置換基は、水素原子が熱硬化性樹脂と反応する官能基で置換されていてもよいアルキル基であるのが好ましい態様の1つである。
アルキル基の数は、0〜2個であるのが好ましく、0〜1個であるのがより好ましい。
【0038】
アルキル基としては、例えば、炭素原子数1〜10の直鎖状アルキル基、炭素原子数3〜10の分岐状アルキル基が挙げられる。
炭素原子数1〜10の直鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基が挙げられる。
【0039】
炭素原子数3〜10の分岐状アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、イソヘキシル基、イソヘプチル基、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基が挙げられる。
【0040】
アルキル基は、水素原子が熱硬化性樹脂と反応する官能基で置換されていてもよい。
官能基としては、例えば、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、カルボキシ基、ビニル基、メタクリロキシ基、ハロゲン原子が挙げられる。エポキシ基が好ましい態様の1つである。
ブロックイソシアネート基は、イソシアネート基が保護基でブロックされ、例えば、熱または湿気によりブロックが外れてイソシアネート基を発生しうる基である。このようなブロックイソシアネート基としては、例えば、アルコール類、フェノール類、オキシム類、トリアゾール類、カプロラクタム類等のブロック剤でブロックされたイソシアネート基が挙げられる。
官能基は、それぞれ単独で、または、2種類以上を組み合わせてアルキル基の水素原子に置換されることができる。
官能基はアルキル基の末端に結合するのが、反応性の面から好ましい。
【0041】
アルキル基は、エーテル結合、イミノ基等を含有することができる。エーテル結合を含有するアルキル基が好ましい態様の1つとして挙げられる。
このようなアルキル基としては、例えば、末端の水素原子がエポキシ基で置換され、かつ、エーテル結合を含有する直鎖状アルキル基が挙げられる。
末端の水素原子がエポキシ基で置換され、かつ、エーテル結合を含有する直鎖状アルキル基としては、例えば、γ−グリシドキシメチル基、γ−グリシドキシエチル基、γ−グリシドキシプロピル基、γ−グリシドキシブチル基が挙げられる。γ−グリシドキシプロピル基が好ましい態様の1つである。
【0042】
原料であるアルコキシシラン化合物としては、例えば、テトラアルコキシシラン化合物、トリアルコキシシラン化合物、ジアルコキシシラン化合物が挙げられる。
テトラアルコキシシラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが挙げられる。
【0043】
トリアルコキシシラン化合物としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランのようなエポキシ基含有トリアルコキシシラン化合物;γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートエチルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートエチルトリエトキシシランのようなイソシアネート基含有トリアルコキシシラン化合物;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランのようなアミノ基含有トリアルコキシシラン化合物;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランのようなメルカプト基含有トリアルコキシシラン化合物が挙げられる。
【0044】
ジアルコキシシラン化合物としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシランのようなエポキシ基含有ジアルコキシシラン化合物;γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートエチルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートエチルメチルジメトキシシランのようなイソシアネート基含有ジアルコキシシラン化合物;γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランのようなアミノ基含有ジアルコキシシラン化合物;γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシランのようなメルカプト基含有ジアルコキシシラン化合物が挙げられる。
【0045】
式(1)で表される化合物について、以下に説明する。
本発明の第1の態様の共役ジエン化合物には、その原料として、下記式(1)で表される化合物が用いられる。
【0046】
1−XH (1)
【0047】
式(1)中のXは、酸素原子または硫黄原子を表し、好ましくは、酸素原子である。
式(1)中のR1は、共役ジエン構造を含有する1価の炭化水素基を表す。
【0048】
共役ジエン構造としては、例えば、鎖状共役ジエン構造、環状共役ジエン構造が挙げられる。中でも、熱等に対する安定性が優れていることから、環状共役ジエン構造を含有する1価の炭化水素基であるのが好ましい。具体的な共役ジエン構造を含有する1価の炭化水素基を第1表に列記する。
【0049】
【表1】

【0050】
(第1表中、R3〜R8は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアルキレン基を表す。)
【0051】
第1表中、R3〜R8で表されるアルキル基としては、例えば、炭素原子数1〜10の直鎖状アルキル基、炭素原子数3〜10の分岐状アルキル基が挙げられる。
炭素原子数1〜10の直鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基が挙げられる。
炭素原子数3〜10の分岐状アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、イソヘキシル基、イソヘプチル基、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基が挙げられる。
【0052】
第1表中、R3〜R8で表されるアルキレン基としては、例えば、炭素原子数1〜10の直鎖状アルキレン基、炭素原子数3〜10の分岐状アルキレン基が挙げられる。炭素原子数1〜10の直鎖状アルキレン基が好ましい態様の1つである。中でも、炭素原子数1〜4の直鎖状アルキレン基が好ましい。
炭素原子数1〜4の直鎖状アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基が挙げられる。中でも、メチレン基が好ましい。
1価の炭化水素基に含有される共役ジエン構造としては、例えば、第1表の中で表される鎖状共役ジエン構造、環状共役ジエン構造が挙げられる。中でも、ヘテロ原子を有する環状共役ジエン構造が好ましい。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子が挙げられ、中でも酸素原子が好ましい。酸素原子を有する環状共役ジエン構造としては、フラン環であるのが好ましい。
フラン環を含有する1価の炭化水素基は、例えば、下記式(5)で表される。
【0053】
【化3】

【0054】
(式中、R3〜R6は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアルキレン基を表す。)
【0055】
式(5)の中のR3〜R6で表されるアルキル基は、第1表中のR3〜R8で表されるアルキル基と同様である。
式(5)の中のR3〜R6で表されるアルキレン基は、第1表中のR3〜R8で表されるアルキレン基と同様である。
【0056】
アルキレン基がフラン環に結合する置換位置は、フラン環の2位または3位である。アルキレン基がフラン環に結合する置換位置は、この後に行うディールス−アルダー反応において立体障害による反応性の低下を防ぐことができ、入手しやすい点から、2位が好ましい。
また、フラン環に結合する、アルキレン基以外の置換基は、この後に行うディールス−アルダー反応において立体障害による反応性の低下を防ぐことができ、また入手しやすい点から、すべて水素原子であることが好ましい。
【0057】
具体的なRの構造としては、例えば、フルフリル基、3−フリルメチル基、2−フリルエチル基、3−フリルエチル基、2−フリルプロピル基、3−フリルプロピル基が挙げられる。中でもフルフリル基が好ましい。
式(1)で表される化合物としては、例えば、従来公知のものを用いることができる。具体的には、例えば、フルフリルアルコール、フルフリルチオール、3−フリルメチルアルコール、3−フリルメチルチオールが挙げられる。中でもフルフリルアルコールが好ましい。
【0058】
本発明の第1の態様の共役ジエン化合物は、1分子中に1個のケイ素原子と2個以上のアルコキシ基とを有するアルコキシシラン化合物と、式(1)で表される化合物との反応により得られる共役ジエン化合物である。この反応は、アルコキシシラン化合物に含有される2個以上のアルコキシ基と式(1)で表される化合物との交換反応である。このような交換反応は、その方法について、特に制限されない。例えば、以下のような方法が挙げられる。
反応に使用される触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、有機酸のような酸性触媒、塩基性触が挙げられる。中でも塩基性触媒が好ましい。前記塩基性触媒としては、例えば、アンモニア、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミンが挙げられる。第三級アミンが好ましい態様の1つである。
第三級アミンとしては、例えば、モノアミン類、ジアミン類、トリアミン類、ポリアミン類、脂肪族アミン、芳香族アミン、環状アミン類、アルコールアミン類、エーテルアミン類が挙げられる。中でも、脂肪族アミン、芳香族アミンが好ましい態様の1つである。
【0059】
具体的な第三級脂肪族アミンとしては、例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルプロパン−1,3−ジアミン、テトラメチルグアニジン、N,N′−ジメチルピペラジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテルが挙げられる。
具体的な第三級芳香族アミンとしては、例えば、ピリジンが挙げられる。
【0060】
これらの中でも、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセンが好ましい。
触媒は、それぞれ単独で、または、2種類以上を組み合わせて使用することができる。
触媒の使用量は、原料としてのアルコキシシラン化合物100質量部に対して、0.01〜20質量部が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。
【0061】
反応は、溶媒を使用して、または、無溶媒で行うことができる。無溶媒で行うのが好ましい。
溶媒を使用する場合は、当該反応によって生成するアルコール(例えば、メタノール、エタノール)と共沸する化合物を使用することができる。このような化合物としては、例えば、メチルプロピルエーテル、メチルブチルエーテル、エチルプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、エトキシメトキシメタン等のエーテル化合物;n−ペンタン、n−ヘキサン、2,3,3−トリメチルブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、トランス−1,3−ジメチルシクロペンタンのような脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素が挙げられる。
反応は、生成するアルコール(例えば、メタノール、エタノール)を反応系外に留去しながら行うことが好ましい。
【0062】
反応温度は、好ましくは30〜100℃、より好ましくは60〜90℃である。
反応は、通常、常圧で行うが、必要に応じ、減圧下または加圧下で行うことができる。
【0063】
本発明の第1の態様の共役ジエン化合物は、下記の本発明の第2の態様の共役ジエン化合物であるのが好ましい。本発明の第2の態様の共役ジエン化合物の具体的な構造については後述する。
【0064】
次に、本発明の第2の態様である共役ジエン化合物について説明する。
本発明の第2の態様の共役ジエン化合物は、下記式(2)で表される共役ジエン化合物である。
【0065】
SiR2n(XR14-n (2)
【0066】
(式中、R1は、それぞれ独立に、共役ジエン構造を含有する1価の炭化水素基を表す。R2は、それぞれ独立に、水素原子が熱硬化性樹脂と反応する官能基で置換されていてもよいアルキル基を表す。nは0〜2の整数である。Xは、それぞれ独立に、酸素原子または硫黄原子を表す。)
【0067】
式(2)中、R1は、それぞれ独立に、共役ジエン構造を含有する1価の炭化水素基を表す。
式(2)のR1で表される共役ジエン構造を含有する1価の炭化水素基は、式(1)で表される化合物のR1で表される共役ジエン構造を含有する1価の炭化水素基と同様である。中でも、式(2)のR1中の共役ジエン構造は、すべてフラン環であるのが好ましい。
式(2)中のXは、それぞれ独立に、酸素原子または硫黄原子を表し、酸素原子であることが好ましい。中でも、式(2)中のXはすべて酸素原子であるのが好ましい。
【0068】
式(2)の中の置換基XR1としては、例えば、フルフリロキシ基、3−フリルメトキシ基、2−フリルエトキシ基、3−フリルエトキシ基、2−フリルプロポキシ基、3−フリルプロロポキシ基のようなフラン環を含有するアルキレンオキシ基;フルフリルチオ基、3−フリルメチルチオ基、2−フリルエチルチオ基、3−フリルエチルチオ基、2−フリルプロピルチオ基、3−フリルプロピルチオ基のようなフラン環を含有するアルキレンチオ基が挙げられる。中でもフルフリロキシ基が好ましい。
【0069】
式(2)中、R2は、それぞれ独立に、水素原子が熱硬化性樹脂と反応する官能基で置換されていてもよいアルキル基を表す。
式(2)のR2で表される水素原子が熱硬化性樹脂と反応する官能基で置換されていてもよいアルキル基は、上記の本発明の第1の態様の共役ジエン化合物において、原料としてのアルコキシシラン化合物で説明されている、水素原子が熱硬化性樹脂と反応する官能基で置換されていてもよいアルキル基と同様である。
【0070】
式(2)の中のnは、0〜2の整数であり、好ましくは、0または1である。
本発明の第2の態様の共役ジエン化合物は、(4−n)個の置換基XR1を含有するので、(4−n)個の共役ジエン構造を含有する。
本発明の第2の態様の共役ジエン化合物に含有される共役ジエン構造の数は、好ましくは2〜4個、さらに好ましくは3〜4個である。なぜなら、3個以上の共役ジエン構造を有する共役ジエン化合物は、1分子中に2個以上のジエノフィル構造を有するジエノフィル化合物とディールス−アルダー反応して、3次元的網目構造を有する硬化物を形成することができるからである。
【0071】
ここで、本発明の第1の態様の共役ジエン化合物と、本発明の第2の態様の共役ジエン化合物との関係について説明する。
本発明の第1の態様の共役ジエン化合物は、上記アルコキシシラン化合物と式(1)で表される化合物との反応によって得られる共役ジエン化合物である。
このとき、原料であるアルコキシシラン化合物が、1分子中に1個のケイ素原子と、2〜4個のアルコキシ基と、水素原子が熱硬化性樹脂と反応する官能基で置換されていてもよいアルキル基とを有し、当該ケイ素原子に当該アルコキシ基と当該アルキル基とが結合している場合がある。
そして、当該アルコキシシラン化合物と、式(1)で表される化合物とを反応させると、アルコキシシラン化合物のアルコキシ基と式(1)で表される化合物(式(1):R1−XH)が交換反応し、1分子中、1個のケイ素原子に、2〜4個の置換基XR1と、水素原子が熱硬化性樹脂と反応する官能基で置換されていてもよいアルキル基とが結合している共役ジエン化合物となる。
ここで、水素原子が熱硬化性樹脂と反応する官能基で置換されていてもよいアルキル基は、式(2)の中のR2と一致する。
つまり、本発明の第1の態様の共役ジエン化合物が上記のアルコキシシラン化合物から得られる場合、得られる共役ジエン化合物は、本発明の第2の共役ジエン化合物に該当する。
【0072】
本発明の第2の態様の共役ジエン化合物としては、例えば、1分子中に、4個の共役ジエン構造を含有するシラン化合物、3個の共役ジエン構造を含有するシラン化合物、2個の共役ジエン構造を含有するシラン化合物が挙げられる。中でも、4個の共役ジエン構造を含有するシラン化合物、3個の共役ジエン構造を含有するシラン化合物が好ましい。
【0073】
4個の共役ジエン構造を含有するシラン化合物としては、例えば、下記式(6)で表されるテトラフルフリロキシシラン、テトラ(3−フリルメトキシ)シラン、テトラ(2−フリルエトキシ)シラン、テトラ(3−フリルエトキシ)のようなテトラアルコキシシラン化合物;テトラフルフリルチオシラン、テトラ(3−フリルメチルチオ)シラン、テトラ(2−フリルエチルチオ)シラン、テトラ(3−フリルエチルチオ)シランのようなテトラアルキルチオシラン化合物が挙げられる。中でも、下記式(6)で表されるテトラフルフリロキシシランが好ましい。
【0074】
【化4】

【0075】
3個の共役ジエン構造を含有するシラン化合物としては、例えば、下記式(7)で表されるγ−グリシドキシプロピルトリフルフリロキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリ(3−フリルメトキシ)シラン、γ−グリシドキシプロピルトリ(2−フリルエトキシ)シラン、γ−グリシドキシプロピルトリ(3−フリルエトキシ)シランのようなエポキシ基含有トリアルコキシシラン化合物;
γ−グリシドキシプロピルトリフルフリルチオシラン、γ−グリシドキシプロピルトリ(3−フリルメチルチオ)シラン、γ−グリシドキシプロピルトリ(2−フリルエチルチオ)シラン、γ−グリシドキシプロピルトリ(3−フリルエチルチオ)シランのようなエポキシ基含有トリアルキルチオシラン化合物;
メチルトリフルフリロキシシラン、メチルトリ(3−フリルメトキシ)シラン、メチルトリ(2−フリルエトキシ)シラン、メチルトリ(3−フリルエトキシ)シラン、エチルトリフルフリロキシシラン、エチルトリ(3−フリルメトキシ)シラン、エチルトリ(2−フリルエトキシ)シラン、エチルトリ(3−フリルエトキシ)シランのようなアルキルトリアルコキシシラン化合物;
メチルトリフルフリルチオシラン、メチルトリ(3−フリルメチルチオ)シラン、メチルトリ(2−フリルエチルチオ)シラン、メチルトリ(3−フリルエチルチオ)シラン、エチルトリフルフリルチオシラン、エチルトリ(3−フリルメチルチオ)シラン、エチルトリ(2−フリルエチルチオ)シラン、エチルトリ(3−フリルエチルチオ)シランのようなアルキルトリアルキルチオシラン化合物が挙げられる。中でも、下記式(7)で表されるγ−グリシドキシプロピルトリフルフリロキシシランが好ましい。
【0076】
【化5】

【0077】
2個の共役ジエン構造を含有するシラン化合物としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルメチルジフルフリロキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジフルフリロキシシランのようなエポキシ基およびアルキル基を含有するジアルコキシシラン化合物;
γ−グリシドキシプロピルメチルジフルフリルチオシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジフルフルチオシランのようなエポキシ基およびアルキル基を含有するジアルキルチオシラン化合物;
ジメチルジフルフリロキシシラン、エチルメチルジフルフリロキシシラン、ジエチルジフルフリロキシシランのようなジアルキルジアルコキシシラン化合物;
ジメチルジフルフリルチオシラン、エチルメチルジフルフリルチオシラン、ジエチルジフルフルチオシランのようなジアルキルジアルキルチオシラン化合物が挙げられる。
【0078】
本発明の第2の態様の共役ジエン化合物は、その製法について、特に制限されない。例えば、本発明の第1の態様の共役ジエン化合物の製造方法に従って製造することができる。
このとき原料として使用されるアルコキシシラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0079】
次に、本発明の第3の態様の共役ジエン化合物について説明する。
本発明の第3の態様の共役ジエン化合物は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、下記式(3)で表される化合物との反応により得られる共役ジエン化合物である。
【0080】
1−XH (3)
【0081】
(式中、R1は、共役ジエン構造を含有する1価の炭化水素基を表す。Xは、酸素原子または硫黄原子を表す。)
【0082】
エポキシ化合物について、以下に説明する。
本発明の第3の態様の共役ジエン化合物は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物が、原料として使用される。
エポキシ化合物は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物である。このようなエポキシ化合物として、例えば、従来公知のエポキシ樹脂を使用することができる。また、例えば、エポキシ当量が、100〜1000のエポキシ樹脂を使用することができる。
【0083】
エポキシ樹脂としては、例えば、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、グリシジルアミノ型のようなエポキシ樹脂が挙げられる。
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールS型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型のようなビスフェニル基を有するエポキシ化合物、ポリアルキレングリコール型、アルキレングリコール型のエポキシ化合物、ナフタレン環を有するエポキシ化合物、フルオレン基を有する2官能のエポキシ化合物、下記式(8)で表されるエポキシ化合物、下記式(9)で表されるテトラフェニロールエタン型のエポキシ化合物、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、DPPノボラック型、トリス・ヒドロキシフェニルメタン型のエポキシ化合物が挙げられる。
【0084】
【化6】

【0085】
【化7】

【0086】
グリシジルエステル型エポキシ樹脂としては、例えば、ダイマー酸のような合成脂肪酸のエポキシ樹脂が挙げられる。
グリシジルアミノ型エポキシ樹脂としては、例えば、N,N−ジグリシジルアニリン、トリグリシジルイソシアヌレート(TGIC)、トリグリシジル−p−アミノフェノール、N,N,N′,N′−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)、テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンが挙げられる。
【0087】
中でも、耐熱性が高く、比較的低粘度であることから、3官能または4官能グリシジルアミノ型エポキシ樹脂が好ましい。
3官能グリシジルアミノ型エポキシ樹脂としては、例えば、トリグリシジルイソシアヌレート(TGIC)、トリグリシジル−p−アミノフェノールが挙げられる。
4官能グリシジルアミノ型エポキシ樹脂としては、例えば、N,N,N′,N′−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)、テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンが挙げられる。中でも、N,N,N′,N′−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)が好ましい。
【0088】
式(3)で表される化合物について、以下に説明する。
本発明の第3の態様の共役ジエン絵化合物には、原料として下記式(3)で表される化合物が使用される。
【0089】
1−XH (3)
【0090】
式(3)中のR1は、共役ジエン構造を含有する1価の炭化水素基を表し、式(1)の中のR1と同様である。
式(3)中のXは、酸素原子または硫黄原子を表し、硫黄原子が好ましい。
式(3)で表される化合物は、特に制限されず、例えば、従来公知のものを用いることができる。例えば、フルフリルアルコール、フルフリルチオール、3−フリルメチルアルコール、3−フリルメチルチオールが挙げられる。中でも、フルフリルチオールが好ましい。
【0091】
本発明の第3の態様の共役ジエン化合物としては、例えば、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物としてN,N,N′,N′−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)と、式(3)で表される化合物とを反応させて得られる下記式(10)で表される共役ジエン化合物であるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0092】
【化8】

【0093】
(式中、R1は、共役ジエン構造を含有する1価の炭化水素基を表す。Xは、酸素原子または硫黄原子を表す。)
【0094】
式(10)中のR1は、共役ジエン構造を含有する1価の炭化水素基を表し、式(3)の中のR1と同様である。
式(10)の中のXは、酸素原子または硫黄原子を表し、硫黄原子が好ましい。
式(10)の中の置換基XR1としては、例えば、フルフリロキシ基、3−フリルメトキシ基、2−フリルエトキシ基、3−フリルエトキシ基、2−フリルプロポキシ基、3−フリルプロポキシ基のようなフラン環を含有するアルキレンオキシ基;フルフリルチオ基、3−フリルメチルチオ基、2−フリルエチルチオ基、3−フリルエチルチオ基、2−フリルプロピルチオ基、3−フリルプロピルチオ基のようなフラン環を含有するアルキレンチオ基が挙げられる。中でもフルフリルチオ基が好ましい。
式(10)の中の置換基XR1がフルフリルチオ基である場合の共役ジエン化合物は、下記式(11)で表される共役ジエン化合物である。
【0095】
【化9】

【0096】
本発明の第3の態様の共役ジエン化合物は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、式(3)で表される化合物との反応により得られる共役ジエン化合物であれば、その製法について、特に制限されない。例えば、下記の条件に従って製造することが可能である。
反応は、溶媒を使用して、または、無溶媒で実施することができる。無溶媒で実施するのが好ましい。
溶媒を使用する場合、使用される溶媒は、原料であるエポキシ化合物と式(3)で表される化合物とを均一に溶解するものであれば、特に限定されない。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルのようなエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類;テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテルのようなエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサンのような脂肪族炭化水素類が挙げられる。
【0097】
反応に用いられる触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、有機酸のような酸性触媒、塩基性触媒が挙げられる。中でも塩基性触媒が好ましい。
塩基性触媒としては、例えば、アンモニア、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミンが挙げられる。第三級アミンが好ましい態様の1つである。
第三級アミンとしては、例えば、モノアミン類、ジアミン類、トリアミン類、ポリアミン類、脂肪族アミン、芳香族アミン、環状アミン類、アルコールアミン類、エーテルアミン類が挙げられる。脂肪族アミン、芳香族アミンが好ましい態様の1つである。
【0098】
第三級脂肪族アミンとしては、例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルプロパン−1,3−ジアミン、テトラメチルグアニジン、N,N′−ジメチルピペラジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテルが挙げられる。
第三級芳香族アミンとしては、例えば、ピリジンが挙げられる。
【0099】
中でも、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン、トリエチルアミンが好ましい。
これらの触媒は、それぞれ単独で、または、2種類以上を組み合わせて使用することができる。
触媒の使用量は、原料であるエポキシ化合物100質量部に対して、0.01〜20質量部が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。
反応の反応温度は、30〜100℃が好ましく、より好ましくは60〜90℃である。
反応は、通常、常圧で行い、必要に応じ、減圧下または加圧下で行うことができる。
【0100】
次いで、本発明の第4の態様の共役ジエン化合物について説明する。
本発明の第4の態様の共役ジエン化合物は、1分子中に2個以上のα,β−不飽和結合を有する化合物と、下記式(4)で表される化合物との反応により得られる共役ジエン化合物である。
【0101】
1−XH (4)
【0102】
(式中、R1は、共役ジエン構造を含有する1価の炭化水素基を表す。Xは、酸素原子または硫黄原子を表す。)
【0103】
1分子中に2個以上のα,β−不飽和結合を有する化合物について、以下に説明する。
本発明の第4の態様の共役ジエン化合物には、原料として、1分子中に2個以上のα,β−不飽和結合を有する化合物が使用される。
1分子中に2個以上のα,β−不飽和結合を有する化合物は、α位に官能基を有する。このような官能基としては、例えば、カルボニル基、カルボニルオキシ基、アミノ基、イミノ基、アミド基、チオカルボニル基、スルホニル基、オキシ基、チオ基が挙げられる。中でもカルボニルオキシ基が好ましい。
α位に結合する残りの置換基としては、例えば、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基のような脂肪族炭化水素基;フェニル基のような芳香族炭化水素基が挙げられる。中でも、水素原子、メチル基が好ましい。
【0104】
1分子中に2個以上のα,β−不飽和結合を有する化合物において、β位の基としては、例えば、単結合、水素原子、官能基が挙げられる。官能基としては、例えば、上記のα位の官能基と同様のものが挙げられる。中でも、式(4)で表される化合物との反応性から、水素原子が好ましい。
α,β−不飽和結合において、α位とβ位との間の炭素−炭素不飽和結合は、二重結合または三重結合である。中でも、二重結合が好ましい。
α,β−不飽和結合は、炭素−炭素不飽和結合が、当該化合物の末端にあることが、反応性を高くするために好ましい。
【0105】
α,β−不飽和結合としては、例えば、二重結合が末端に位置し、β位に2個の水素原子が結合し、α位の官能基がカルボニルオキシ基であり、カルボニルオキシ基のオキシ基にさらに炭素原子数1〜4のアルキレン基が結合されているのが好ましい態様の1つである。このようなα,β−不飽和結合としては、例えば、−CH2−O−CO−CH=CH2、−CH2−O−CO−C(CH3)=CH2、−CH2−O−CO−C(CH2CH3)=CH2、−CH2CH2−O−CO−CH=CH2、−CH2CH2−O−CO−C(CH3)=CH2、−CH2CH2−O−CO−C(CH2CH3)=CH2、−CH2CH2CH2−O−CO−CH=CH2、−CH2CH2CH2−O−CO−C(CH3)=CH2、−CH2CH2CH2−O−CO−C(CH2CH3)=CH2、−CH2CH2CH2CH2−O−CO−CH=CH2、−CH2CH2CH2CH2−O−CO−C(CH3)=CH2、−CH2CH2CH2CH2−O−CO−C(CH2CH3)=CH2が挙げられる。中でも、−CH2−O−CO−CH=CH2が好ましい。
【0106】
1分子中に2個以上のα,β−不飽和結合を有する化合物は、α,β−不飽和結合が当該化合物の1分子中でどのように結合しているかについて、特に限定されない。例えば、α,β−不飽和結合が繰り返し単位として結合している構造、α,β−不飽和結合が当該化合物の中の異なる原子に結合している構造、α,β−不飽和結合が1つの原子に結合している構造が挙げられる。α,β−不飽和結合が1つの原子上に結合している構造が好ましい。α,β−不飽和結合が結合している原子としては、例えば、炭素原子、窒素原子、硫黄原子が挙げられ、中でも炭素原子であるのが好ましい態様の一つである。
1分子中のα,β−不飽和結合は、その数が2個以上であり、好ましくは2〜4個、さらに好ましくは3個である。
【0107】
1分子中に2個以上のα,β−不飽和結合を有する化合物は、特に限定されず、例えば、従来公知のものを使用することができる。
1分子中に2個以上のα,β−不飽和結合を有する具体的な化合物として、例えば、1分子中、二重結合が末端に位置し、α位の置換基がカルボニルオキシ基であり、カルボニルオキシ基のオキシ基にさらにメチレン基が結合されているα,β−不飽和結合であって、当該α,β−不飽和結合が3個、1つの炭素原子上に結合している化合物が挙げられる。このような化合物としては、例えば、下記式(12)で表される化合物が挙げられる。
【0108】
【化10】

【0109】
(式中、R9〜R11は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基またはエチル基を表す。)
【0110】
式(12)で表される化合物としては、例えば、R9〜R11がすべて水素原子であるトリアクリレート化合物、R9がすべてメチル基であり、かつ、R10〜R11がすべて水素原子であるトリメタクリレート化合物が挙げられる。中でも、式(4)で表される化合物との反応性から、R9〜R11がすべて水素原子であるトリアクリレート化合物が好ましい態様の1つである。
式(12)のR9〜R11がすべて水素原子であるトリアクリレート化合物は、具体的には、下記式(13)で表されるトリアクリレート化合物である。
【0111】
【化11】

【0112】
式(4)で表される化合物について、以下に説明する。
本発明の第4の態様の共役ジエン化合物には、原料として、下記式(4)で表される化合物が使用される。
【0113】
1−XH (4)
【0114】
式(4)の中のR1は、共役ジエン構造を含有する1価の炭化水素基を表し、式(1)の中のR1と同様である。
式(4)の中のXは、酸素原子または硫黄原子を表し、硫黄原子が好ましい。
式(4)で表される化合物として、例えば、フルフリルアルコール、フルフリルチオール、3−フリルメチルアルコール、3−フリルメチルチオールが挙げられる。中でもフルフリルチオールが好ましい。
【0115】
本発明の第4の態様の共役ジエン化合物の具体例としては、例えば、1分子中に2個以上のα,β−不飽和結合を有する化合物としての式(13)で表される化合物と、式(4)で表される化合物とを反応させて得られる下記式(14)で表される共役ジエン化合物が挙げられる。
【0116】
【化12】

【0117】
(式中、R1は、共役ジエン構造を含有する1価の炭化水素基を表す。Xは、酸素原子または硫黄原子を表す。)
【0118】
式(14)の中のR1は、共役ジエン構造を含有する1価の炭化水素基を表し、式(4)で表される化合物の中のR1と同様である。
式(14)中のXは、酸素原子または硫黄原子を表し、硫黄原子が好ましい。
式(14)の中の置換基XR1としては、例えば、フルフリロキシ基、3−フリルメトキシ基、2−フリルエトキシ基、3−フリルエトキシ基、2−フリルプロポキシ基、3−フリルプロポキシ基のようなフラン環を含有するアルキレンオキシ基;フルフリルチオ基、3−フリルメチルチオ基、2−フリルエチルチオ基、3−フリルエチルチオ基、2−フリルプロピルチオ基、3−フリルプロピルチオ基のようなフラン環を含有するアルキレンチオ基が挙げられる。中でもフルフリルチオ基が好ましい。
式(14)の中の置換基XR1がフルフリルチオ基である共役ジエン化合物は、下記式(15)で表される共役ジエン化合物である。
【0119】
【化13】

【0120】
本発明の第4の態様の共役ジエン化合物は、1分子中に2個以上のα,β−不飽和結合を有する化合物と、式(4)で表される化合物との反応により得られる共役ジエン化合物であれば、その製法について、特に限定されない。例えば、上記の本発明の第3の態様の共役ジエン化合物の製造方法に従って製造することが可能である。
【0121】
次に、本発明の硬化性組成物について説明する。
本発明の硬化性組成物は、本発明の第1〜4の態様の共役ジエン化合物のいずれかと、1分子中に2個以上のジエノフィル構造を有するジエノフィル化合物とを含有する硬化性組成物である。
【0122】
本発明の硬化性組成物は、例えば加熱されると、共役ジエン化合物の共役ジエン構造と、ジエノフィル化合物のジエノフィル構造との間でディールス−アルダー反応による結合が形成され、硬化物を生成するものである。
【0123】
共役ジエン化合物について、以下に説明する。
共役ジエン化合物は、本発明の第1〜4の態様の共役ジエン化合物であれば、特に限定されない。中でも、式(6)で表されるテトラフルフリロキシシラン、式(7)で表されるγ−グリシドキシプロピルトリフルフリロキシシラン、式(11)で表される共役ジエン化合物、式(15)で表される共役ジエン化合物が好ましい。
共役ジエン化合物は、それぞれ単独で、または、2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0124】
ジエノフィル化合物について、以下に説明する。
ジエノフィル化合物は、1分子中に2個以上のジエノフィル構造を有するジエノフィル化合物である。
ジエノフィル構造は、共役ジエン化合物と、ディールス−アルダー反応による結合を形成させることができる。
【0125】
ジエノフィル化合物、および、ジエノフィル化合物に含有されるジエノフィル構造の具体例を第2表に示す。なお、第2表中の各ジエノフィル化合物において、各ジエノフィル化合物の括弧内に表される構造がジエノフィル構造である。
【0126】
【表2】

【0127】
第2表の中のR12〜R16は、それぞれ独立に、単結合、水素原子、炭化水素基またはハロゲン原子を表し、R17は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基を表し、nは2以上の整数である。
【0128】
第2表の中のR12〜R16で表される炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜10の直鎖状アルキル基、炭素原子数3〜10の分岐状アルキル基が挙げられる。炭素原子数1〜10の直鎖状アルキル基が好ましい態様の1つである。
炭素原子数1〜10の直鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基が挙げられる。
【0129】
炭素原子数3〜10の分岐状アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、イソヘキシル基、イソヘプチル基、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基が挙げられる。
第2表の中のR12〜R16で表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0130】
17は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基を表す。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子が挙げられる。ヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基は、2価以上の炭化水素基であれば特に制限されない。例えば、ヘテロ原子を含んでいてもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含んでいてもよい3価の炭化水素基、ヘテロ原子を含んでいてもよい4価の炭化水素基が挙げられる。ヘテロ原子を含んでいてもよい2価の炭化水素基としては、例えば、後述する第3表に示される基が挙げられる。
nは2以上の整数であり、2〜4の整数であるのが好ましい。nは、各ジエノフィル化合物に含有されるジエノフィル構造(括弧内の構造)の数を示す。
【0131】
ジエノフィル構造は、共役ジエン化合物とのディールス−アルダー反応により形成された結合が、熱により解離しうることが好ましい。
また、ジエノフィル構造は、マレイミド骨格であることが好ましい態様の1つである。マレイミド骨格と共役ジエン化合物との間でディールス−アルダー反応により形成された結合は、熱により解離することができ、これにより硬化物が分解可能となるからである。
マレイミド骨格は、例えば、下記式(16)で表される骨格である。
【0132】
【化14】

【0133】
(式中、R18およびR19は、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基またはハロゲン原子を表す。)
【0134】
式(16)のなかのR18およびR19で表される炭化水素基は、第2表の中のR12〜R16で表される炭化水素基と同様である。
式(16)のなかのR18およびR19で表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
なお、式(16)で表されるマレイミド骨格は、第2表に示されているジエノフィル化合物(I)の括弧内のジエノフィル構造と同様である。
【0135】
置換基R18およびR19は、この後のディールスアルダー反応が進行しやすい観点、ディールスアルダー反応によって形成される結合の解離温度の観点、入手のしやすさから、水素原子が好ましい。
ジエノフィル化合物は、マレイミド骨格を有し、さらに、マレイミド骨格の窒素原子が、ヘテロ原子を含有してもよい2価以上の炭化水素基と結合し、さらに他のジエノフィル構造と結合していることが好ましい態様の1つである。
他のジエノフィル構造としては、例えば、第2表に列挙されているジエノフィル構造が挙げられる。中でも、マレイミド骨格が好ましい。このような場合、ジエノフィル化合物は、1分子中に2個以上のマレイミド骨格を有することとなる。このようなジエノフィル化合物としては、例えば、第2表に示されるジエノフィル化合物(I)が挙げられる。
【0136】
1分子中にジエノフィル化合物に含有されるマレイミド骨格の数(第2表に示されるジエノフィル化合物(I)のn)は、2個以上であり、好ましくは2〜4個であり、より好ましくは2〜3個であり、さらに好ましくは2個である。
1分子中に2個のマレイミド骨格を有するジエノフィル化合物としては、例えば、下記式(17)で表されるジエノフィル化合物が好ましい態様の1つとして挙げられる。1分子中のジエノフィル化合物に含まれる2個のマレイミド骨格は、同一であっても、異なっていてもよい。
【0137】
【化15】

【0138】
(式中、R20〜R23は、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基またはハロゲン原子を表す。Yは、第3表に列記する群から選ばれる基を表し、第3表中、pおよびqは1以上の整数を表す。)
【0139】
式(17)中のR20〜R23で表される炭化水素基は、式(16)の中のR18〜R19で表される炭化水素基と同様である。
式(17)中のR20〜R23で表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
式(17)中のR20〜R23は、この後のディールスアルダー反応が進行しやすい観点、ディールスアルダー反応によって形成される結合の解離温度の観点、入手のしやすさから、水素原子であるのが好ましい。
【0140】
【表3】

【0141】
【表4】

【0142】
【表5】

【0143】
【表6】

【0144】
中でも、Yは、下記式(18)で表される基であるのが好ましい。
【0145】
【化16】

【0146】
1分子中に2個のマレイミド骨格を有するジエノフィル化合物としては、例えば、4,4′−ビスマレイミドジフェニルメタンが挙げられる。
ジエノフィル化合物は、それぞれ単独で、または、2種類以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の硬化性組成物は、共役ジエン化合物1当量に対して、ジエノフィル化合物を、好ましくは0.4〜2当量、より好ましくは0.8〜1.2当量含有する。
【0147】
本発明の硬化性組成物は、共役ジエン化合物とジエノフィル化合物とを含有し、さらに、熱硬化性樹脂を含有するのが好ましい態様の1つである。
使用される熱硬化性樹脂としては、例えば、従来公知のものを用いることができる。中でも鎖状構造または三次元構造となるものが好ましい。具体的な熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、変成シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂が挙げられる。中でもエポキシ樹脂が好ましい。
【0148】
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有することが好ましい。また、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、100〜1000であることが好ましい。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、従来公知のエポキシ樹脂を用いることができる。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールS型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型のようなビスフェニル基を有するエポキシ化合物、ポリアルキレングリコール型、アルキレングリコール型のエポキシ化合物、下記式(19)で表されるナフタレン環を有するエポキシ化樹脂、フルオレン基を有するエポキシ化合物のような2官能型のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;
フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、DPPノボラック型、トリス・ヒドロキシフェニルメタン型、式(8)で表される3官能型、テトラフェニロールエタン型のような3官能以上のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;
ダイマー酸のような合成脂肪酸のグリシジルエステル型エポキシ樹脂;
N,N,N′,N′−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、N,N−ジグリシジルアニリン、下記式(20)で表されるトリグリシジル−p−アミノフェノールのようなグリシジルアミノ型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0149】
【化17】

【0150】
【化18】

【0151】
上記で例示した各種エポキシ樹脂のうち、常温(15〜30℃)で液体であるものが、溶媒成分を用いずに硬化性組成物を硬化させることが可能となる理由から好ましい。
中でも、耐熱性が高く、比較的低粘度であることから、例えば、ビスフェノールA型、N,N,N′,N′−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)、式(19)で表されるナフタレン環を有するエポキシ化合物、式(20)で表されるトリグリシジル−p−アミノフェノールが好ましい態様として挙げられる。
熱硬化性樹脂は、それぞれ単独で、または、2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0152】
熱硬化性樹脂の配合割合は、共役ジエン化合物100質量部に対して、好ましくは1〜1000質量部、より好ましくは50〜200質量部である。共役ジエン化合物に対する熱硬化性樹脂の配合割合がこの範囲である場合、当該硬化性組成物からなる硬化物は、ディールス−アルダー反応によって形成された結合がより熱解離しやすくなるので、硬化物の分解がより進みやすく、さらに容易に液状化、流動化または軟化させることができる。
【0153】
本発明の硬化性組成物は、共役ジエン化合物と、ジエノフィル化合物との配合比を自由に調節するより、得られる硬化物を分解しやくすし、リサイクル性をさらに向上させることができる。
また、本発明の硬化性組成物は、熱硬化性樹脂をさらに含有する場合、共役ジエン化合物と、ジエノフィル化合物と、熱硬化性樹脂とを別々の化合物として配合することができる。したがって、本発明の硬化性組成物は、共役ジエン化合物と、ジエノフィル化合物と、熱硬化性樹脂との配合比を、自由に、より簡単に変えることができる。
これに対して、従来は、ディールス−アルダー反応が可能な硬化性組成物に配合される化合物としては、1分子中に、熱硬化性樹脂由来の官能基と、共役ジエン構造および/またはジエノフィル構造とを有する硬化性化合物が用いられており、共役ジエン構造と、ジエノフィル構造と、熱硬化性樹脂由来の官能基との配合比を簡単に変えることができず、硬化物を分解させることが困難であった。
【0154】
本発明の硬化性組成物は、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂であるとき、さらに、硬化剤を含有することが好ましい。
硬化剤は、特に制限されない。例えば、エポキシ樹脂の硬化剤として従来公知のものを用いることができる。例えば、アミン系硬化剤、酸または酸無水物系硬化剤、ポリメルカプタン系硬化剤、ジシアンジアミド類、イミダゾール化合物、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ルイス酸が挙げられる。
【0155】
アミン系硬化剤としては、例えば、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、オレイルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、ブチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、グアニジンのような鎖状脂肪族アミン;シクロヘキシルアミン、トリエチレンジアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセン、イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、N−アミノエチルピペラジン、3,3−ジメチル−4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタン、メンセンジアミン、4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンのような環状脂肪族アミン;ベンジルアミン、m−キシレンジアミンのような脂肪芳香族アミン;
m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジフェニルグアニジンのような芳香族アミン;
アミンアダクト(ポリアミンエポキシ樹脂アダクト)、ポリアミン−エチレンオキシドアダクト、脂肪族アミンとケトンとの反応物であるケチミン;
ジブチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルグアニジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ピペリジン、ピリジンのような第二級アミンまたは第三級アミン;
これらのアミン化合物のカルボン酸塩;
ダイマー酸と、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンのようなポリアミンとを反応させてなるポリアミドアミン;
ベンジルトリエチルアンモニウムアセタートのような第四級アンモニウム塩が挙げられる。
【0156】
酸または酸無水物系硬化剤としては、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸のようなポリカルボン酸;
無水フタル酸、無水トリメリット酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンドロトリメリテート)、無水ピロメリット酸、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物のような芳香族酸無水物;
無水マレイン酸、無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸のような環状脂肪族酸無水物;
ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物、ドデセニル無水コハク酸、ポリ(エチルオクタデカン二酸)無水物のような脂肪族酸無水物;
テトラブロム無水フタル酸、無水ヘット酸のようなハロゲン化酸無水物が挙げられる。
【0157】
ポリメルカプタン系硬化剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート、ジペンタエリスリトールヘキサチオグリコレートのようなチオグリコール酸のエステル;末端にメルカプト基を有するポリスルフィドゴムのようなメルカプト基を有する化合物が挙げられる。
ジシアンジアミド類としては、例えば、ジシアンジアミド、ジシアンジアミドと芳香族アミンとの反応付加物が挙げられる。
イミダゾール化合物としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾールが挙げられる。
フェノール樹脂としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、フェノールポリマーが挙げられる。
ルイス酸としては、例えば、BF3モノエチルアミン、BF3ピペラジンが挙げられる。
【0158】
硬化剤は、用途等に応じて適宜選択することができ、中でも、ディールス−アルダー反応の反応温度より高い温度で硬化し、硬化物の耐熱性を向上させることができるものが好ましい。
このような硬化剤としては、例えば、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルメタン、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、イミダゾール化合物、ノボラック型フェノール樹脂、BF3モノエチルアミンが挙げられる。中でも、ジアミノジフェニルスルホンが好ましい。
これらの硬化剤は、それぞれ単独で、または、2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記硬化剤の配合割合は、上記エポキシ樹脂1当量に対して、好ましくは0.4〜2当量、より好ましくは0.8〜1.2当量である。
【0159】
本発明の硬化性組成物は、硬化剤以外を主剤とし、使用前に、主剤と硬化剤とを常法に従って混合して用いる2液型の硬化性組成物として使用され、また、必要に応じて、1液型の硬化性組成物として使用することもできる。
本発明の硬化性組成物は、上述の各成分に加え、例えば、本発明の目的を損なわない範囲で、種々の充填剤、可塑剤、硬化触媒、脱水剤、軟化剤、安定剤、着色剤、難燃剤、補強剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料のような添加剤を配合することができる。
また、本発明の硬化性組成物は、その製法について、特に限定されず、共役ジエン化合物およびジエノフィル化合物以外に、熱硬化性樹脂、硬化剤、各種添加剤を使用して、これらを、例えば、ロール、ニーダー、押出し機、万能かくはん機により混合する方法が挙げられる。
【0160】
本発明の硬化性組成物は、非常に広い範囲に用いることができる。なぜなら、本発明の硬化性組成物によりなる硬化物は、ディールス−アルダー反応の反応温度以上、熱硬化性樹脂が分解する温度以下の温度範囲で分解することができるからである。硬化物の分解温度は、例えば、共役ジエン化合物に含まれる共役ジエン構造およびその数、硬化性組成物の共役ジエン化合物と熱硬化性樹脂との配合比を調節することによって、制御することができる。
本発明の硬化性組成物は、例えば、リサイクル性が要求される用途に対して好適に使用することができる。具体的な用途としては、例えば、プリプレグ、接着剤(土木建築用、コンクリート用、木材用、金属用、ガラス用、プラスチック用等)、シーラント、防水剤、塗料、発泡体、ホットメルト用材料(ホットメルト接着剤、ホットメルト塗料等)が挙げられる。
【0161】
本発明の硬化性組成物は、熱によって、硬化し、硬化物を生成することができる。
本発明の硬化性組成物を加熱すると、共役ジエン化合物とジエノフィル化合物とがディールス−アルダー反応し、共役ジエン化合物とジエノフィル化合物との間に結合が形成され、硬化し、硬化物を生成する。生成した硬化物は、鎖状構造または三次元構造を有する。例えば、1つの共役ジエン化合物に含有される共役ジエンが2個であり、1つのジエノフィル化合物に含有されるジエンが2個である場合、生成する硬化物は鎖状構造となる。また、1つの共役ジエン化合物に含有される共役ジエンが3個以上であり、1つのジエノフィル化合物に含有されるジエンが2個以上である場合、および、1つの共役ジエン化合物に含有される共役ジエンが2個以上であり、1つのジエノフィル化合物に含有されるジエンが3個以上である場合、生成する硬化物は三次元構造となる。
本発明の硬化性組成物が、さらに熱硬化性樹脂を含有する場合、当該硬化性組成物を湿気または硬化剤の存在下で加熱すると、共役ジエン化合物とジエノフィル化合物とがディールス−アルダー反応し、共役ジエン化合物とジエノフィル化合物との間に結合が形成され、さらに、熱硬化性樹脂が硬化反応して、硬化物を生成する。熱硬化性樹脂が硬化して得られる樹脂は熱硬化性樹脂の官能基の数によって鎖状構造または三次元構造となる。このように本発明の硬化性組成物がさらに熱硬化性樹脂を含有する場合、得られる硬化物は、ディールス−アルダー反応によって得られる鎖状構造または三次元構造(以下、「ディールス−アルダー反応による構造」ということがある。)と、熱硬化性樹脂が硬化反応することによって得られる熱硬化性樹脂の鎖状構造または三次元構造(以下、「熱硬化性樹脂の硬化反応による構造」ということがある。)とを有する。
【0162】
硬化性組成物の硬化は、通常のディールス−アルダー反応に用いられる条件で実施することができる。
反応の圧力は、好ましくは常圧である。
反応温度は、好ましくは室温〜100℃、より好ましくは80〜90℃である。
反応時間は、好ましくは1〜10時間、より好ましくは1〜2時間である。
反応は、硬化性組成物が熱硬化性樹脂を含有する場合、湿気または硬化剤の存在下で行うことが好ましい。
【0163】
特に、硬化性組成物が熱硬化性樹脂を含有する場合、当該硬化性組成物の硬化は、反応温度を2段階にして、行うことが好ましい。はじめの反応温度を低めにし、その後、ディールス−アルダー反応による構造が解離しない温度まで反応温度を上げて反応させる。なぜなら、反応温度をこのようにすることによって、主にディールス−アルダー反応を先に反応させて、次に熱硬化性樹脂を硬化反応させることができるからである。このような順序で反応させると、まず、低温で、共役ジエン化合物とジエノフィル化合物とがディールス−アルダー反応して、ディールス−アルダー反応による構造が先に形成される。このとき、系内には熱硬化性樹脂がすでに含有されており、ディールス−アルダー反応による構造のなかに熱硬化性樹脂が入り込んだ状態となる。次いで、反応温度を上げ、熱硬化性樹脂を硬化させる。
【0164】
先ほど述べたように、熱硬化性樹脂は、ディールス−アルダー反応による構造のなかに入り込んでいるので、自由に硬化反応することができない。よって、このような場合、熱硬化性樹脂は十分に架橋することができず、硬化物全体としては、熱硬化性樹脂は、硬化物の中で、比較的不連続な構造(例えば、鎖状構造、三次元構造、分岐状構造で、比較的不連続なものが挙げられる。)として硬化すると考えられる。つまり、このような不十分な硬化しかできない熱硬化性樹脂は、その分子量が小さいと思われる。したがって、このような硬化物は、不十分に硬化した熱硬化性樹脂の周囲のディールス−アルダー反応による構造が解離されれば、硬化物を効果的に分解して、軟化等できることを本発明者は見出した。
【0165】
反応温度を2段階にする場合、はじめの反応温度は、好ましくは室温〜100℃、より好ましくは80〜90℃である。2段階目の反応温度は、好ましくは室温〜100℃、より好ましくは90〜100℃である。
反応時間は、はじめの反応時間は、ディールス−アルダー反応が適当な構造を形成することができる程度であり、好ましくは1〜10時間、より好ましくは1〜2時間である。2段階目の反応温度は、好ましくは1〜10時間、より好ましくは1〜2時間である。
【0166】
以下に、本発明の硬化物について説明する。
本発明の硬化物は、上記の本発明の硬化性組成物の前記共役ジエン化合物と前記ジエノフィル化合物との間でディールス−アルダー反応により結合を形成させて硬化させてなる硬化物であって、熱により前記結合が解離しうる硬化物である。
本発明の硬化物で使用される硬化性組成物は、本発明の硬化性組成物と同様である。また、本発明の硬化物においては、使用される硬化性組成物が、さらに、熱硬化性樹脂を含有することが好ましい態様の1つである。熱硬化性樹脂は、上記の本発明の硬化性組成物で記載されている熱可塑性樹脂と同様である。また、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂であり、さらに、硬化剤を含有するのが好ましい態様の1つである。エポキシ樹脂は、上記の本発明の硬化性組成物で記載されているエポキシ樹脂と同様である。また、硬化剤は、上記の本発明の硬化性組成物で記載されている硬化剤と同様である。
【0167】
本発明の硬化物は、本発明の硬化性組成物に含有されるジエノフィル化合物を適宜選択することによって、前記結合を熱解離させることが可能となる。
ジエノフィル化合物は、硬化性組成物に使用されるジエノフィル化合物の中でも、マレイミド骨格を有することが好ましい。マレイミド骨格を有するジエノフィル化合物と共役ジエン化合物との間でディールス−アルダー反応により形成された結合は、より容易に解離することができるからである。
本発明の硬化物は、前記結合が熱解離することにより、分解し、容易に、液状化、流動化または軟化した状態となることができると考えられる。
熱硬化性樹脂を含有する硬化性組成物を硬化させて形成された硬化物を熱分解させた場合は、共役ジエン化合物とジエノフィル化合物との間でディールス−アルダー反応によって形成された結合が解離され、硬化した熱硬化性樹脂はそのままの状態を保つ。つまり、ディールス−アルダー反応による構造は解離により失われ、熱硬化性樹脂の硬化反応による構造は維持される。上述のとおり、本発明硬化物に使用される硬化性組成物に熱硬化性樹脂が含まれる場合、得られる硬化物中の熱硬化性樹脂の硬化は不十分で、熱硬化性樹脂の硬化反応による構造は不連続であり、熱硬化性樹脂の分子量は比較的小さい。したがって、硬化物のなかの前記結合が熱解離すると、当該硬化物は容易に分解して、液状化、流動化または軟化した状態となることができると考えられる。
なお、本発明の硬化物について上記のようなメカニズムは本発明者の推測であり、仮にメカニズムが上記のものとは別であっても本発明の範囲内である。
【0168】
硬化物が分解した後に得られる分解組成物は、共役ジエン化合物と、ジエノフィル化合物とを含有する分解組成物である。硬化物の原料として熱硬化性樹脂が使用されている場合は、さらに、硬化したままの熱硬化性樹脂とを含有する。
当該分解組成物のなかには、ディールス−アルダー反応により形成された結合が解離されず、部分的に残っていてもよい。残留するディールス−アルダー反応により形成された結合は、当該結合全体のうち、10〜50%が好ましく、より好ましくは10〜20%である。
【0169】
硬化物の分解温度は、好ましくは120〜180℃、より好ましくは120〜130℃である。
熱硬化性樹脂を含有する硬化物の分解温度は、好ましくは120〜180℃である。
分解反応の反応時間は、好ましくは1〜3時間、より好ましくは0.5〜1時間である。
分解組成物は、再度冷却することによって、共役ジエン化合物とジエノフィル化合物とがディールス−アルダー反応し、再び硬化することができる。このように本発明の硬化物は、何度も硬化と軟化等とを繰り返すことができ、優れたリサイクル性を有する。
【実施例】
【0170】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0171】
分解温度の測定:硬化物の分解温度を、示差走査熱量測定法により測定した。測定中、吸熱ピークを観測し、このときの温度を、硬化物中のディールス−アルダー反応によって形成された結合が解離を開始した温度と考え、硬化物の分解温度とした。測定時の加熱速度は、10℃/分で行った。結果を第4表に示す。
【0172】
分解組成物の状態の確認:硬化物を加熱し、分解後の分解組成物の状態を確認した。結果を第4表に示す。
【0173】
(実施例1)テトラフルフリロキシシラン(共役ジエン化合物a)の合成
テトラエトキシシラン(信越化学工業社製)20g(96.0ミリモル)とフルフリルアルコール(関東化学社製、以下同様)37.67g(384.0ミリモル)に、塩基性触媒である1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(関東化学社製、以下同様)0.5g(3.3ミリモル)を加え、減圧下で加熱し、60℃で3時間、その後、90℃で1時間反応させた。反応後、1H−NMR分析によりエトキシ基が略完全に消失していることを確認し、上記式(6)で表されるテトラフルフリロキシシラン(共役ジエン化合物a)が略定量的に得られた。
【0174】
得られたテトラフルフリロキシシランについて、IR分析、1H−NMR分析、FAB−MS分析を行った。
図1は、IR分析によりテトラフルフリロキシシランについて測定されたIRスペクトルを示すチャートである。
【0175】
1H−NMR分析によるテトラフルフリロキシシランについての測定(CDCl3、270MHz)の結果、δ=4.72ppm、6.23ppm、6.35ppm、7.39ppmのシグナルが得られた。得られた各シグナルは、テトラフルフリロキシシランの各プロトンを下記式(21)に示されるHa〜Hdとすると、δ=4.72ppm(Ha)、δ=6.23ppm(Hc)、δ=6.35ppm(Hb)、δ=7.39ppm(Hd)と帰属することができた。
また、FAB−MS分析による質量分析値は415.6(精密質量数416.09)であった。
【0176】
【化19】

【0177】
(実施例2)γ−グリシドキシプロピルトリフルフリロキシシラン(共役ジエン化合物b)の合成
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、シランカップリング剤 A−187)69.74g(0.295モル)とフルフリルアルコール86.86g(0.885モル)に、塩基性触媒である1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン0.5g(3.3ミリモル)を加え、減圧下で加熱し、60℃で3時間、その後、90℃で1時間反応させた。反応後、1H−NMR分析によりメトキシ基が略完全に消失していることを確認し、下記式(7)で表されるγ−グリシドキシプロピルトリフルフリロキシシラン(共役ジエン化合物b)が略定量的に得られた。
【0178】
【化20】

【0179】
(実施例3)共役ジエン化合物(共役ジエン化合物c)の合成
N,N,N′,N′−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)(HUNTSMAN社製、エポキシ樹脂 MY−721、以下同様)(エポキシ当量112g/当量)14.7g(0.131モル/当量)とフルフリルチオール15.0g(0.131モル)に、塩基性触媒であるトリエチルアミン0.1g(1.0ミリモル)を加え、常圧で加熱し、85℃で2時間反応させた。1H−NMR分析により、反応が終了し、下記式(11)で表される共役ジエン化合物(共役ジエン化合物c)が略定量的に得られたことを確認した。
【0180】
【化21】

【0181】
(実施例4)共役ジエン化合物(共役ジエン化合物d)の合成
下記式(13)で表されるトリアクリレート10.0g(33.7ミリモル)(東亞合成社製、トリアクリレート M−309)とフルフリルチオール11.56g(101.2ミリモル)に、塩基性触媒であるトリエチルアミン0.1g(1.0ミリモル)を加え、常圧で加熱し、80℃で3時間反応させた。1H−NMR分析により、反応が終了し、下記式(15)で表される共役ジエン化合物(共役ジエン化合物d)が略定量的に得られたことを確認した。
【0182】
【化22】

【0183】
【化23】

【0184】
(実施例5)硬化物1の調製
実施例1で合成した共役ジエン化合物a(1.5g 3.6ミリモル)と4,4′−ビスマレイミドジフェニルメタン(ケーアイ化成社製、以下同様)2.58g(7.2ミリモル)と85℃で1時間硬化反応させて、硬化物1を調製した。
【0185】
得られた硬化物1について、IRスペクトルを測定した。得られた硬化物1について測定されたIRスペクトルのチャートを図2に示す。図2のIRチャートにより、フラン環の吸収(1504cm-1)が減少し、ディールス−アルダー反応により生成した、下記式(22)で表わされる結合部の吸収を1777cm-1に確認した。このことより、硬化物1が、ディールス−アルダー反応による生成物であることを確認した。
また、得られた硬化物1について、示差走査熱量測定法により分解温度を測定し、DSC曲線を得た。得られたDSC曲線を図3に示す。
【0186】
【化24】

【0187】
(実施例6)硬化物2の調製
実施例2で合成した共役ジエン化合物b(1.0g 2.3ミリモル)と4,4′−ビスマレイミドジフェニルメタン1.24g(3.45ミリモル)との混合物を加熱し、85℃で1時間硬化反応させて、硬化物2を調製した。
(実施例7)硬化物3の調製
実施例3で合成した共役ジエン化合物c(2.0g 2.27ミリモル)と4,4′−ビスマレイミドジフェニルメタン1.63g(4.54ミリモル)との混合物を加熱し、85℃で1時間硬化反応させて、硬化物3を調製した。
【0188】
(実施例8)硬化物4の調製
実施例4で合成した共役ジエン化合物d(1.0g 1.56ミリモル)と4,4′−ビスマレイミドジフェニルメタン0.84g(2.35ミリモル)との混合物を加熱し、85℃で1時間硬化反応させて、硬化物4を調製した。
【0189】
(実施例9)硬化物5の調製
実施例1で合成した共役ジエン化合物a1.5g(3.6ミリモル)と4,4′−ビスマレイミドジフェニルメタン2.58g(7.2ミリモル)に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(東都化成社製、YD−128、以下同様)0.68g(3.6ミリモル、エポキシ当量で計算)と4,4′−ジアミノジフェニルスルホン(和歌山精化工業社製、以下同様)0.3g(エポキシに対し1.0eq)とを加え、加熱し、80℃で1時間、その後150℃で5時間、硬化反応させて、硬化物5を調製した。
得られた硬化物5について、示差走査熱量測定法により分解温度を測定し、DSC曲線を得た。得られたDSC曲線を図4に示す。
【0190】
(実施例10)硬化物6の調製
実施例1で合成した共役ジエン化合物a(1.5g 3.6ミリモル)と4,4′−ビスマレイミドジフェニルメタン2.58g(7.2ミリモル)に、N,N,N′,N′−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)1.61g(14.4ミリモル、エポキシ当量で計算)と4,4′−ジアミノジフェニルスルホン0.89g(エポキシに対し1.0eq)とを加え、加熱し、80℃で1時間、その後150℃で5時間、硬化反応させて、硬化物6を調製した。
【0191】
(実施例11)硬化物7の調製
実施例1で合成した共役ジエン化合物a(1.0g 2.4ミリモル)と4,4′−ビスマレイミドジフェニルメタン1.72g(4.8ミリモル)に、下記式(20)で表されるトリグリシジル−p−アミノフェノール(HUNTSMAN社製、MY−0500、以下同様)0.76g(7.2ミリモル、エポキシ当量で計算)と4,4′−ジアミノジフェニルスルホン0.45g(エポキシに対し1.0eq)とを加え、加熱し、80℃で1時間、その後150℃で5時間、硬化反応させて、硬化物7を調製した。
【0192】
【化25】

【0193】
(実施例12)硬化物8の調製
実施例1で合成した共役ジエン化合物a(1.0g 2.4ミリモル)と4,4′−ビスマレイミドジフェニルメタン1.72g(4.8ミリモル)に、下記式(19)で表される2官能のナフタレン環含有型エポキシ樹脂(大日本インキ化学社製、HP−4032、以下同様)0.69g(4.8ミリモル、エポキシ当量で計算)と4,4′−ジアミノジフェニルスルホン0.30g(エポキシに対し1.0eq)とを加え、加熱し、80℃で1時間、その後150℃で5時間、硬化反応させて、硬化物8を調製した。
【0194】
【化26】

【0195】
(実施例13)硬化物9の調製
実施例2で合成した共役ジエン化合物b(1.0g 2.3ミリモル)と4,4′−ビスマレイミドジフェニルメタン1.24g(3.45ミリモル)に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂0.87g(4.6ミリモル、エポキシ当量で計算)と4,4′−ジアミノジフェニルスルホン0.43g(エポキシに対し1.0eq)とを加え、加熱し、80℃で1時間、その後150℃で5時間、硬化反応させて、硬化物9を調製した。
【0196】
【表7】


【0197】
第4表の結果から明らかなように、ジエノフィル構造として、2個のマレイミド骨格を有するジエノフィル化合物からなる硬化物は、第4表に記載された分解温度で、分解することができた。
実施例5と実施例6とを比較すると、共役ジエン化合物に含有されるフルフリル基が多いほど、硬化物の分解温度が高くなることが分かる。これは、共役ジエン化合物のフルフリル基が多くなる(実施例5では1分子中の共役ジエン化合物のフルフリル基は4個、実施例6では1分子中の共役ジエン化合物のフルフリル基は3個)と、硬化物のディールス−アルダー反応による三次元網目構造がより複雑になるからと考えられる。
【0198】
また、実施例5と実施例7とを比較すると、共役ジエン化合物が同じ数のフルフリル基を有していても(この場合は4個)、共役ジエン化合物の中のフラン環同士の位置が近い(実施例5で使用される共役ジエン化合物aの方が、実施例7で使用される共役ジエン化合物cより、フラン環同士が接近している)と、分解温度が高くなることが分かる。これは、共役ジエン化合物の中のフラン環同士の位置が近いと、硬化物のディールス−アルダー反応による三次元網目構造の網目がより密になるからと考えられる。
実施例5と実施例9とを比較して分かるように、本発明の共役ジエン化合物とジエノフィル化合物との混合物から調製される実施例5の硬化物1の分解温度より、これにさらにエポキシ樹脂を加えた混合物から調製される実施例9の硬化物5の分解温度の方が高い。これは、実施例9の硬化物5が、ディールス−アルダー反応による三次元網目構造と、さらにエポキシ樹脂の架橋とを含有することにより、実施例9の硬化物5が分解するときに、ディールス−アルダー反応による三次元網目構造が、エポキシ樹脂の架橋によって、分子運動を阻害されるからと考えられる。
また、図4(実施例9で得られた硬化物5についての示差走査熱量測定法によるDSC曲線)に示されるDSC曲線において、2段階目の反応温度が150℃であるため、ディールス−アルダー反応の一部が解離し、その一方でエポキシ樹脂が硬化しているため、DSC分析によって検出された分解温度(191.2℃)はディールス−アルダー反応の一部の解離によるものであると考えられる。
【0199】
実施例9と実施例10を比較することにより、実施例10のように、エポキシ樹脂のエポキシ基の数が多く、エポキシ基同士の位置が近い場合、分解温度が下がることが分かる。実施例10で使用されているエポキシ樹脂(TGDDM)は、4個のエポキシ基を有し、2個の窒素原子上にそれぞれ2個のγ−グリシジル基が結合している。同一の窒素原子に結合した2個のγ−グリシジル基は、硬化剤と硬化するとき、周囲のディールス−アルダー反応による三次元網目構造に阻害されて、硬化反応がより進みにくく、連続した三次元架橋となりにくいため、硬化後は比較的低分子量のエポキシ樹脂となると考えられる。
使用されるエポキシ樹脂のエポキシ基の数が同じでも、実施例9と実施例12を比較することにより、実施例12のように、使用されるエポキシ樹脂の構造が、嵩高く、また、ナフタレン環を有することにより剛直である場合は、分解温度が下がることが分かる。これは、実施例12で使用されているエポキシ樹脂が、ディールス−アルダー反応による三次元網目構造に阻害されて、硬化反応が進みにくいため、硬化後は比較的低分子量のエポキシ樹脂となるためと考えられる。
【0200】
実施例9の硬化物5と実施例13の硬化物9とを分解温度で比較すると、実施例13の硬化物9では、共役ジエン化合物bとジエノフィル化合物とのディールス−アルダー反応の硬化と、エポキシ樹脂の硬化とのほかに、共役ジエン化合物bに含有される1個のエポキシ基と4,4′−ジアミノジフェニルスルホンとの硬化が加わって硬化物となる。このため、硬化物5(実施例9)の硬化は、実施例13の硬化物9より複雑となり、その結果、硬化物9の分解温度が変化していると考えられる。
【0201】
このように、本発明の共役ジエン化合物と2個のマレイミド骨格を有するジエノフィル化合物とからなる硬化物は、熱により分解しやすく、容易に軟化等することができるので、優れたリサイクル性を有する。
また、本発明の共役ジエン化合物は、その構造によって、本発明の共役ジエン化合物から得られる硬化物の分解温度を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0202】
【図1】図1は、実施例1で得られたテトラフルフリロキシシラン(共役ジエン化合物a)について、IR分析により測定されたIRスペクトルを示すチャートである。
【図2】図2は、実施例5で得られた硬化物1について、IR分析により測定されたIRスペクトルを示すチャートである。
【図3】図3は、実施例5で得られた硬化物1について、示差走査熱量測定法により測定されたDSC曲線である。
【図4】図4は、実施例9で得られた硬化物5について、示差走査熱量測定法により測定されたDSC曲線である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中に1個のケイ素原子と2個以上のアルコキシ基とを有するアルコキシシラン化合物と、
下記式(1)で表される化合物との反応により得られる共役ジエン化合物。
1−XH (1)
(式中、R1は、共役ジエン構造を含有する1価の炭化水素基を表す。Xは、酸素原子または硫黄原子を表す。)
【請求項2】
前記共役ジエン構造がフラン環であり、前記Xが酸素原子である請求項1に記載の共役ジエン化合物。
【請求項3】
下記式(2)で表される共役ジエン化合物。
SiR2n(XR14-n (2)
(式中、R1は、それぞれ独立に、共役ジエン構造を含有する1価の炭化水素基を表す。R2は、それぞれ独立に、水素原子が熱硬化性樹脂と反応する官能基で置換されていてもよいアルキル基を表す。nは0〜2の整数である。Xは、それぞれ独立に、酸素原子または硫黄原子を表す。)
【請求項4】
前記共役ジエン構造がすべてフラン環であり、前記Xがすべて酸素原子である請求項3に記載の共役ジエン化合物。
【請求項5】
1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、
下記式(3)で表される化合物との反応により得られる共役ジエン化合物。
1−XH (3)
(式中、R1は、共役ジエン構造を含有する1価の炭化水素基を表す。Xは、酸素原子または硫黄原子を表す。)
【請求項6】
前記共役ジエン構造がフラン環であり、前記Xが硫黄原子である請求項5に記載の共役ジエン化合物。
【請求項7】
1分子中に2個以上のα,β−不飽和結合を有する化合物と、
下記式(4)で表される化合物との反応により得られる共役ジエン化合物。
1−XH (4)
(式中、R1は、共役ジエン構造を含有する1価の炭化水素基を表す。Xは、酸素原子または硫黄原子を表す。)
【請求項8】
前記共役ジエン構造がフラン環であり、前記Xが硫黄原子である請求項7に記載の共役ジエン化合物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の共役ジエン化合物と、
1分子中に2個以上のジエノフィル構造を有するジエノフィル化合物とを含有する硬化性組成物。
【請求項10】
前記ジエノフィル構造が、マレイミド骨格である請求項9に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
さらに、熱硬化性樹脂を含有する請求項9または10に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂であり、さらに、硬化剤を含有する請求項11に記載の硬化性組成物。
【請求項13】
請求項9〜12のいずれかに記載の硬化性組成物の前記共役ジエン化合物と前記ジエノフィル化合物との間でディールス−アルダー反応により結合を形成させて硬化させてなる硬化物であって、
熱により前記結合が解離しうる硬化物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−193628(P2006−193628A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−7082(P2005−7082)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】