説明

共焦点励起平面を有した広視野多光子顕微鏡のための方法およびシステム

本発明の一態様において、広視野顕微鏡は、その内部に蛍光物質を有した試料を保持するように構成されたステージと、前記蛍光物質の単一光子励起のために必要とされる吸収エネルギーよりも少ない単一光子エネルギーを有する励起光の実質的に平行なビームを生じさせるように構成された多光子励起光源と、を備える。無限遠補正対物レンズは、多光子励起光源に光学的に接続されるとともに、前記試料の予め定められた領域にわたって前記蛍光物質の多光子励起が同時に生じるように前記励起光の実質的に平行なビームを前記試料上に焦点合わせするべく構成されている。焦点レンズは、前記試料の予め定められた領域から放射された放射光を、画像検出器の少なくとも2つのピクセル上へと同時に焦点合わせするように構成されている。焦点レンズは、前記画像平面を両眼用接眼レンズあるいは画像アレイ検出器を介して見ることができるように、前記試料の予め定められた領域から放射された放射光を画像平面上に焦点合わせするように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2004年5月19日に出願の米国特許出願第10/847,862号に関連し、かつそれに基づく優先権を主張する。なお、その全ての内容がこの参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
本発明は、全般的に蛍光顕微鏡に関し、より詳しくは、共焦点平面における広視野多光子励起の提供に関する。
【背景技術】
【0003】
光学顕微鏡法は、肉眼によって明瞭に見るにはあまりに小さい対象物を調べるために長く用いられてきた。光学顕微鏡法には、試料に入射するビームを与えること、および試料からの光を拡大レンズを介して見ることが含まれる。蛍光顕微鏡法は、関心のある試料に標識を付けるために蛍光物質を用いるとともに、この蛍光物質を励起させて放射光を放出させるのに十分な単一光子エネルギーレベルを与える波長の光をその蛍光物質に照射する、他のタイプの顕微鏡法である。試料の画像は、励起光ではなく放射光を受けることによって検出される。蛍光顕微鏡法は、標準的な広視野顕微鏡法として、あるいは共焦点顕微鏡法として実施することができる。
【0004】
広視野蛍光顕微鏡法においては、アークランプのような励起光源が、試料の所望の焦点面上に収束する平行あるいは擬似平行な励起ビームをもたらす。焦点面の画像は、特定の対象物の点像分布特性によって達成される光の全てから生じる。点像分布関数は単一の焦点平面を定めないので、蛍光物質の励起が所望の焦点面の上下に生じ、試料の体積情報を識別することができない。対象物の点像分布関数のモデルを用いる、一般的に逆畳込み顕微鏡法と呼ばれている計算方法は、異なる焦点平面において取得した多くの画像からその試料の特定平面のビームを割り出すために用いることができる。このことは、定められた厚みの共焦点像スライスに近付くために、各スライスからのビームが他のスライスから受ける影響を明らかにすることによって実行される。広視野逆畳込み共焦点蛍光顕微鏡法の能力は、光学共焦点顕微鏡法と同様とすることができる。しかしながら、多くの場合、結果として得られる画像は変形している。背景放射によって生じる劣等なコントラストに起因する画像ノイズの影響のため、あるいは実際の実験条件下において対象物の点像分布関数がそのモデルから外れ得るからである。さらに、これらの問題は、試料の三次元表現の製作を困難なものとする。
【0005】
共焦点蛍光顕微鏡法においては、励起光のビームが試料の焦点に集中する。蛍光物質の単一光子励起をもたらすのに十分な波長を励起光が有している場合には、対象物の点像分布関数に近い焦点に集中している腰のくびれたビームウェストおいて励起が生じる。しかしながら、広視野蛍光顕微鏡法と異なり、共焦点性は、励起光源および放射イメージのためのピンホール開口を用いることにより得ることができる。焦点平面に由来する平行ビームだけがピンホールを通過することができるので、平行なビームを有しない(焦点平面から外れている)光子はピンホール開口によって遮断されて検出器には到達しない。したがって、ピンホール開口は、焦点ポイントの上下からの放射光を遮断し、それによって焦点平面の上下からの情報で歪められていない鮮明な画像を提供する。しかしながら、放射ピンホールはレーザビームの焦点ポイントだけからのイメージデータを与えるから、共焦点システムの励起レーザビームは、試料および各X,Y位置において受けた蛍光放射強度上についてXおよびY方向にラスター走査しなければならない。このデータから、試料の画像スライスをコンピュータ内で製作することができる。焦点平面を変更することにより、いくつかの画像を得ることができ、結果として得られた画像のスタックをコンピュータ内で再現して試料の三次元表現を得ることができる。
【0006】
広視野および共焦点蛍光顕微鏡法に共通する一つの問題は、画像データを実際に収集する焦点ポイントの上下において蛍光物質の単一光子励起が生じることである。この不必要な励起は、特定の焦点面の上下において材料の「褪色」を生じさせ、その後で新しい焦点面の一部として励起されるときに放射特性を低下させる。さらに、焦点面の上下における組織の反復した励起は、組織を損傷させることになり、特に生きている試料の画像を作成するためには望ましくない。
【0007】
近年では、褪色および組織損傷の問題を減少させるための新しいオプティカルセクショニング技術として、多光子蛍光顕微鏡法が現れてきている。この種の顕微鏡法は、蛍光物質を励起するために必要とするよりも長い波長を有したパルス照射レーザ源を用いる。例えば、500ナノメートルの励起波長を必要とする染料は、単一の光子励起が試料に生じないように、1000ナノメートルで作動しているレーザ源によって照射される。染料が1000ナノメートルのビームを吸収しないからである。しかしながら、パルス照射高出力励起レーザの使用は、焦点位置において少なくとも2つの光子が蛍光物質によって(本質的に同時に)吸収されるような十分に高い光子密度をもらたす。長波長の2つの光子のこの吸収は、短波長の単一光子の吸収に相当する励起エネルギーをもたらし、焦点位置に限定された励起に結びつく。このように、多光子励起は、焦点位置を取り囲んでいる蛍光物質を励起させず、これによってピンホール開口の必要性をなくすとともに、反復する励起から生じる褪色および組織損傷の問題を最小化する。
【0008】
図6は、米国特許第5,034,613号に開示されている多光子走査顕微鏡システムを示している。この図から判るように、この走査型顕微鏡10は、レーザのような光源16からの入射光14を物体平面18上に焦点合わせするための対物レンズ12を有している。入射光14によってもたらされる照射は、全般的に符号24で示されている収束円錐を満たし、この円錐は試料を透過して物体平面18における焦点面に到達し、焦点26を形成する。レーザ16から物体平面18への光路にはダイクロイックミラー28が有り、レーザ16からのビームがその上に向けられている。このミラー28がこのビームをミラー30へと下方に偏向させると、このミラー30は湾曲ミラー36,38を経由して一対の走査ミラー32,34へとそのビームを向ける。ミラー32,34は、静止している試料を入射ビームによって走査するべく、物体平面上の垂直なXおよびY軸に沿って入射光14を移動させるために、互いに垂直な軸線回りに回転自在である。これらの走査ミラーからのビームは、接眼レンズ40を通過し、対物レンズ12を通って物体平面18に焦点が合わされる。
【0009】
試料の物体平面18に生じた蛍光は、顕微鏡10を通って後戻りし、入射光14の光路を引き返し、したがって対物レンズ12、接眼レンズ40、走査ミラー34,32、および湾曲ミラー38,36を通過し、ミラー30によって反射されてダイクロイックミラー28に戻る。試料の蛍光物質によって放射されたビームの波長は、試料に含まれている蛍光体に特有な波長であり、したがってレーザ16に向けて反射されることなくダイクロイックミラー28を通過することができ、全般的に符号44で示される光路をたどる。このように、蛍光42はバリアフィルタ46を通過し、平面ミラー48、50および52によって光電子増倍管54のような適切な検出器へと反射される。多光子顕微鏡法では必要ないが、焦点面の上下の収束および拡散円錐において励起されるバックグラウンド蛍光を最小化するために、調節可能な共焦点ピンホール56が収集光学系44に設けられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
多光子蛍光顕微鏡法システムの上述した利点にもかかわらず、図8に示されているようなこのタイプの従来システムが、複雑で費用のかかる励起ビーム走査機構を有していることを、本発明の発明者は見出した。さらに、焦点励起光の走査は、全般的に、ビデオレートにはあまりに低速な画像獲得速度、あるいはより高速な試料イメージングに結びつく。
【0011】
したがって、本発明の一つの目的は、従来技術の多光子蛍光顕微鏡法の上述した問題に取り組むことである。
【0012】
本発明の他の目的は、試料上における励起光源の走査を減少させ、あるいは取り除くことができる、多光子顕微鏡法の方法およびシステムを提供することにある。
【0013】
さらに他の本発明の目的は、試料の画像獲得時間を減少させることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これらのあるいはまた他の目的は、共焦点平面を有した広視野多光子顕微鏡法のための方法およびシステムによって賄うことができる。本発明の一態様において、広視野顕微鏡は、その内部に蛍光物質を有した試料を保持するように構成されたステージと、前記蛍光物質の単一光子励起のために必要とされる吸収エネルギーよりも少ない単一光子エネルギーを有する励起光の実質的に平行なビームを生じさせるように構成された多光子励起光源と、を有する無限遠補正対物レンズは、多光子励起光源に光学的に接続されるとともに、前記試料の予め定められた領域にわたって前記蛍光物質の多光子励起が同時に生じるように前記励起光の実質的に平行なビームを前記試料上に焦点合わせするべく構成されている。焦点レンズは、前記試料の予め定められた領域から放射された放射光を、画像検出器の少なくとも2つのピクセル上へと同時に焦点合わせするように構成されている。
【0015】
他の態様において、広視野顕微鏡は、その内部に蛍光物質を有した試料を保持するための手段と、前記試料に含まれている前記蛍光物質の単一光子励起のために必要とされる吸収エネルギーよりも少ない単一光子エネルギーを有した励起光の実質的に平行なビームを生じさせるための手段と、を有する。また、この態様には、励起光の実質的に平行なビームを受け取るとともに、前記試料の予め定められた領域にわたって前記蛍光物質の多光子励起が同時に生じるように前記励起光を前記試料に焦点合わせする、多光子励起光源に光学的に接続された手段が含まれる。焦点合わせするための手段は、前記試料の予め定められた領域から放射された放射光を、画像検出器の少なくとも2つのピクセル上へと同時に焦点合わせする。
【0016】
本発明の別の態様には、共焦点平面全体の広視野励起を提供する方法が含まれる。この方法は、その内部に蛍光物質を有している試料を保持する段階と、前記試料に含まれている前記蛍光物質の単一光子励起のために必要とされる吸収エネルギーよりも少ない単一光子エネルギーを有した励起光の実質的に平行なビームを生じさせる段階と、前記試料の予め定められた領域にわたって前記蛍光物質の多光子励起が同時に生じるように、前記試料上に励起光を焦点合わせする無限遠補正対物レンズに励起光の実質的に平行なビームを当てる段階と、を備える。前記試料の予め定められた領域から放射された放射光は、画像検出器の少なくとも2つのピクセル上へと同時に焦点合わせされる。
【0017】
本発明の更に別の態様には、広視野顕微鏡を有したフレキシブルな顕微鏡が含まれる。この広視野顕微鏡は、その内部に蛍光物質を有した試料を保持するように構成されたステージと、前記蛍光物質の単一光子励起のために必要とされる吸収エネルギーよりも少ない単一光子エネルギーを有する励起光の実質的に平行なビームを生じさせるように構成された多光子励起光源と、を有する。無限遠補正対物レンズは、多光子励起光源に光学的に接続されるとともに、前記試料の予め定められた領域にわたって前記蛍光物質の多光子励起が同時に生じるように前記励起光の実質的に平行なビームを前記試料上に焦点合わせするべく構成されている。焦点レンズは、前記試料の予め定められた領域から放射された放射光を、画像検出器の少なくとも2つのピクセル上へと同時に焦点合わせするように構成されている。光ファイバは広視野顕微鏡に接続され、かつ光学部品ホルダが光ファイバの端部に取り付けられる。この広視野顕微鏡の少なくとも無限遠補正対物レンズが光学部品ホルダに含まれ、かつ光学部品ホルダに含まれていない広視野顕微鏡の全ての部品が光ファイバの反対側の端部に光学的に接続された外部装置に含まれる。
【0018】
本発明の別の態様において、広視野顕微鏡は、その内部に蛍光物質を有した試料を保持するように構成されたステージと、前記蛍光物質の単一光子励起のために必要とされる吸収エネルギーよりも少ない単一光子エネルギーを有する励起光の実質的に平行なビームを生じさせるように構成された多光子励起光源と、を有する。無限遠補正対物レンズは、多光子励起光源に光学的に接続されるとともに、試料の予め定められた領域にわたって蛍光物質の多光子励起が同時に生じるように励起光の実質的に平行なビームを試料上に焦点合わせするべく構成されている。焦点レンズは、画像平面を両眼用接眼レンズを介して見ることができるように、試料の予め定められた領域から放射された放射光を画像平面上に焦点合わせするように構成されている。
【0019】
本発明およびそれに付随する長所の多くのより完全な理解は、添付の図面を考慮しつつ以下の詳細な説明を参照することによってより良好に理解されるので、容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
上述したように、従来の多光子蛍光顕微鏡法システムにおいては、励起光源によって試料を走査する。本発明の発明者は、多光子顕微鏡法における走査の使用は、試料の小さな焦点だけを励起させるという広く認められた必要性に起因していることを見出した。従来の多光子顕微鏡においては、小さな励起領域が顕微鏡検出器の単一のピクセルに対応しているため、励起ビームはピクセル毎に視野の全体わたって走査されなければならない。試料の全体にわたって走査される小さな多光子励起領域の認められた必要性はまた、両眼用接眼レンズを介した画像検出の使用を妨げている。目視の前に、走査画像をコンピュータによって再現しなければならないからである。しかしながら、本発明の発明者は、試料のより大きな領域を同時に励起させることにより、励起光源を走査することの必要性を減少させあるいは取り除くことができることを見出した。そのようなシステムは、多光子顕微鏡法のために用いられる超短パルス励起レーザの効率的なパワーの使用をもたらすための努力と共に研究されて来た。例えば、Fittinghoff, Wiseman and Squier, Optics Express, Vol. 7,273-280,9 October 2000による、広視野多光子および一時的に関連付けが外された多焦点多光子顕微鏡法(以下、Fittinghoff他と言う)は、励起レーザ出力の効率的な使用を可能にするために試料の広い領域における同時励起をもたらす2つのシステムを開示している。
【0021】
図7は、Fittinghoff他に開示されている広視野多光子顕微鏡を示している。この図から判るように、励起ビーム705は、集束レンズ710によって焦点合わせされ、次いでダイクロイックミラー720、および試料740の焦点面に励起光を当てる対物レンズ730を通過する。励起ビーム705は、20フェムト秒、800ナノメートルのパルスレーザ光源によってもたらされる。試料から放射されたビーム745は対物レンズ730を通って後戻りし、ダイクロイックミラー720によりチューブレンズ750に向けて反射される。このチューブレンズ750は、画像を生成するための電荷結合検出器760上に放射光745を焦点合わせする。広視野多光子顕微鏡が試料の比較的大きな領域の同時励起を生じさせるのに対し、Fittinghoff他は、そのシステムの軸線方向の解像度が貧弱であり、したがって試料の軸方向にかなり長い領域の励起を生じさせると説明している。このことは、共焦点性の損失を生じさせ、上述した背景に記載されている広視野顕微鏡法システムと同様に、劣等な画像および三次元顕微鏡法のために必要なきれいなセクショニングを生じさせることができないことに結びつく。したがって、Fittinghoff他は、広視野多光子法が、同時に大きな領域を同時に励起する反面、明瞭なスライスおよび3Dイメージングのための共焦点励起平面をもたらすことができないことを示している。
【0022】
図8は、3Dイメージングを可能にしながら試料の線形領域の同時励起をもたらす、Fittinghoff他に開示された関連の多焦点多光子システムを示している。この図から判るように、レーザビーム805は、レンズ820に向けられる個々の焦点ビーム815の配列へとビームを分割するエタロン810に入力する。このエタロン810は、パワーの等しい焦点ビームのアレーへと入力レーザビームを分割する一連のビームスプリッタに置き換えることができる。次いで、レンズ820は、多焦点ビームアレー815を第1ミラー830、レンズ840、第2ミラー850を介してレンズ860に向ける。図8中に矢印で示したように、ミラー830,850は、多焦点アレーの走査をもたらすために互いに直角な方向に動くことができる。レンズ860からの多焦点ビームアレーは、ダイクロイックミラー870を通り、アレーの各ビームが試料の小さな領域、例えば単一ピクセルサイズの領域を励起するようにステージ890上の試料に多焦点ビームアレーを当てる対物レンズ880へと通過する。試料からの放射光は、対物レンズ880を通ってダイクロイックミラー870に戻ると、その各ピクセルが各放射光からビームを収集する電荷結合検出器898上へと放射光を焦点合わせするレンズ895に向けて反射される。この多焦点ビームアレーの使用は図7の広視野システムに対して軸線方向の解像度の改良をもたらすが、多焦点ビームアレーを走査しなければならず、上述の発明の背景部分において議論したように、時間がかかるとともに複雑で費用のかかる走査機構を必要とする。さらに、光源からの単一ビームを複数の平行ビームに分割するための複雑な光学部品を必要とする。
【0023】
かくして、Fittinghoff他は、広視野多光子顕微鏡法には米国特許第5,034,613号に最初に記載された標準的な多光子焦点走査システム固有のセクショニングが欠如しているものの、焦点合わせされた各励起ビームアレーの走査は試料の明瞭な画像セクショニングをもたらすために用いることができると結論づけている。しかしながら、本発明の発明者が見出したところによると、Fittinghoff他に開示されている広視野多光子顕微鏡法システムの軸線方向の低い解像度および画像の変形は、パルスレーザ励起ビームの拡がりによって生じている。具体的には、パルスの拡がりが励起光の光子密度を減少させて、多光子励起の減少および励起領域における軸線方向の解像度の損失に結びついている。この問題を認めたことに伴い、本発明の発明者は、図7のFittinghoff他のシステムにおける望ましくないパルスの拡がりが、対物レンズに到着する前に光学部品を通過する励起レーザパルスビームによって生じていることを見出した。
【0024】
特に、本発明の発明者は、焦点合わせした励起ビームを対象物に与えることが、図7のシステムによってもたらされる劣等な画像スライスに結びつくことを見い出した。すなわち、図7の集束レンズ710を通過するパルス励起レーザビームが対象物に到着する前に、レンズの分散特性あるいはまたはビームの収束特性に起因して、パルスビームのパルス拡がりが生じている。同様に、図6のダイクロイックミラー620を通過するパルス励起レーザビームがパルスの拡がりを生じさせ、軸線方向の解像度の低下および変形した画像スライスに至る。さらに、焦点レンズおよびミラーを通過するビームが励起光の減衰を生じさせ、それが焦点面の多光子励起をさらに減少させる。図7のシステムにこれらの問題を認めたことに伴い、本発明の発明者は、Fittinghoff他の結論に反して、広視野多光子顕微鏡法システムが、明瞭な画像スライスおよび三次元顕微鏡法のために望まれる軸線方向の解像度を維持しつつ、試料の大きな領域の同時励起を達成できることを見出した。
【0025】
ここで残りの図面を参照すると、類似の参照符号は、いくつかの図面にわたって同一あるいは対応する部品を表わしている。図1は、本発明の広視野多光子顕微鏡法システムの一実施形態を示している。この図から判るように、パルスレーザ励起光源10が励起光を出力すると、それはビームエクスパンダ20によって、ダイクロイックミラー30に当てられる実質的に平行な励起ビーム25へと拡げられる。このように、図1の実施形態においては、励起光源10およびビームエクスパンダ20は、実質的に平行な励起ビームを発生させるように構成された多光子励起光源として機能する。この分野の当業者が理解するように、実質的に平行な励起ビームを出力するために、図2のアークランプのような様々な公知の構成を用いることができる。
【0026】
ダイクロイックミラー30が、実質的に平行な励起ビーム25を対物レンズ装置40に反射すると、それはステージ50上に保持されている試料1000上に励起光を当てる。図1の実施例において、対物レンズ40は、矢印53で示したように試料1000上の励起光の焦点平面を変更するために、励起光の軸線方向に沿って可動である。試料が励起光の少なくとも2つの光子を吸収して放射光を放射すると、この放射光は対物レンズ40、ダイクロイックミラー30および放射フィルタ60を通ってチューブレンズ70に至る。チューブレンズ70が放射光55の焦点を画像平面80上に合わせると、検出器90は試料1000の一つの領域の画像1010を検出することができる。
【0027】
パルスレーザ励起光源10は、試料の励起を生じさせるには不十分な単一光子エネルギーレベルを有する、予め定められた波長の超短レーザパルスを出力する。異なる励起特性を有する多種多様な蛍光物質を試料に追加することができるが、レーザ励起光源10の動作波長は試料の蛍光放射特性によって左右される。このように、レーザ励起光源10は、約700ナノメートル〜約1100ナノメートルで作動することができるとともに、好ましくはこの範囲にわたって同調可能である。レーザ励起光源10の短パルスは、ピコ秒、フェムト秒、あるいはより短いパルス幅範囲とすることができ、かつ最高100MHzのパルス繰返数を有することができる。一つの実施例において、レーザ励起法光源10は、カリフォルニア州Mountain ViewのSpectra-Physicsによって製造された、同調可能なチタン:サファイアモードロックレーザとすることができる。しかしながら、多光子励起のための短パルス励起光源を出力するための任意の公知のレーザを用いることができる。
【0028】
上記したように、ビームエクスパンダ20は、励起レーザビームを実質的に平行な励起ビームに拡げるように構成されている。本明細書において用いる実質的に平行な励起ビームという用語は、このビームが、ビームを収束させるように設計された光学装置に通されないことを意味している。一つの実施例において、このエクスパンダは、パルス励起ビームをその最初のビーム幅の100倍まで拡げる。本発明の発明者は、試料の一つの平面全体にわたる同時多光子励起を可能としつつ、レーザのそのような拡大を達成できることを見出した。さらに、上述したように、パルス拡がりおよび出力損失の低減は、レーザビームの多光子励起特性の維持を助ける。したがって、ビームエクスパンダ20は、パルスレーザビームのパルス拡がりおよび出力損失を低減させるように設計される。
【0029】
ビームエクスパンダは、また、好ましくは、拡げられたビームエリアの全体にわたって均一な特性を有する、実質的に一様な拡大ビームを提供するように設計される。具体的には、パルス励起光源のパルス拡がりが最小化され、かつ拡大されたビーム領域の全体にわたって実質的に一定であるべきである。同様に、励起光の強度は、拡大されたビームの領域全体にわたって実質的に一定であるべきである。本発明の発明者は、この均一性が、試料の広視野励起領域全体にわたって一様な多光子励起特性をもたらすことを見出した。しかしながら、市販のビームエクスパンダは、全般的に、ビームエリア全体にわたって不均一なパルス拡がりあるいはまた出力損失を有した拡大ビームをもたらす。実際、このことは、多光子励起システムのパルスレーザ光源を拡大するためにビームエクスパンダを用いることを妨げる要因であった。
【0030】
広視野多光子顕微鏡法における低減されたパルス拡がりおよび一様な励起ビーム特性の重要性を認めたことに伴い、本発明の発明者は、市販のビームエクスパンダから得られる不均一な拡大ビームが、このビームエクスパンダに入射するレーザビームの異なる部分がビームエクスパンダの異なる量の媒質(例えば、ガラス)を通って移動するように設計されたビームエクスパンダによるものであることをさらに見出した。より詳しくは、パルス拡がりおよび光減衰は、レーザビームが移動しなければならない媒質の量の影響を受けるから、例えば、拡大ビームの周辺部分が、拡大ビームの中心部とは異なるパルス拡がりおよび減衰特性を有することになり得る。したがって、本発明のビームエクスパンダは、拡大されるビームの各位置において、レーザビームが実質的に同じ量のガラス(あるいは他のビームエクスパンダ材料)を通って移動できるように、特別に設計されている。
【0031】
このビームエクスパンダ20からの、実質的に焦点合わせされていない平行な励起光は、ある波長帯は反射するが異なる波長帯は通過させるように設計されたダイクロイックミラー30に当てられる。多光子蛍光顕微鏡法システムの一つの特徴は、試料からの蛍光放射の波長とは実質的に異なる波長を励起光が有していることにある。例えば、励起波長は、典型的に、試料の蛍光放射のために必要な波長の約2倍(すなわち単一光子エネルギーの約半分)に与えられる。2つ以上の励起光子が、試料の蛍光物質の特徴的な消減時間よりも短い時間において試料を励起させるときに、試料は、よりエネルギッシュな単一光子によって励起されたかのようにあるエネルギーレベルに励起され、したがって単一光子励起の波長よりも長い波長(より低いエネルギー)の放射光子を放射する。放射波長は、蛍光染料の物理化学的な特性によって決まる。多光子励起は、励起光の励起波長が3倍である3光子励起を用いて同様に達成することができる。多光子励起のより高い倍数を達成するために、より大きい倍数の励起波長もまた用いることができる。
【0032】
したがって、本発明の図1に示した実施形態において、ダイクロイックミラー30は、より長い波長の励起光を反射し、短い波長の放射光は通過させる。ダイクロイックミラーは、光学部品の当業者にとって周知である。さらに、ダイクロイックミラーと同じ機能を達成するために、ミラー30に代えて任意の公知の光学部品を用いることができる。
【0033】
対物レンズ40は、ダイクロイックミラー30からの実質的に焦点合わせされていない平行な励起光を受け取るためのリアレンズ領域42、および励起光を試料の焦点面に焦点合わせするためのフロントレンズ領域44を有した、無限遠補正対物レンズ装置である。上述したビームエクスパンダ20と同様に、無限遠補正対物レンズ40は、好ましくは、最小のパワー減衰および超短波励起レーザパルスの低減された拡がりをもたらすように設計される。さらに、無限遠補正対物レンズ40は、様々な開口数(NA)および拡大率特性を提供することができる。表1は、無限遠補正対物レンズ40によって提供することができる、例示的な開口数とパワー特性のリストを与えている。
【0034】
【表1】

【0035】
この分野の当業者によって理解されるべきことは、特定用途のために所望の解像度および拡大倍率を達成するべく、他の開口数および拡大出力レンズを用いることができることである。
【0036】
無限遠補正対物レンズ40のフロントレンズ領域44は、焦点面の予め定められた領域の全体わたって充分な光子密度が存在し、焦点面の予め定められた領域に対応する比較的大きな領域において蛍光物質の同時多光子励起を生じさせるように、励起光を平面領域上へ収束させる。そのような比較的大きな領域は、例えば両眼用接眼レンズのような光学式検出器を介した画像の目視を可能にする。それに加えて、試料の大きな領域の同時励起は、顕微鏡画像検出器における少なくとも2つのピクセルの同時検出を可能にする。しかしながら、上述した従来技術の広視野複数光子顕微鏡法システムとは異なり、図1の実施形態は、後述するような、明瞭な画像スライスのために望まれる軸線方向の解像度を提供する。したがって、試料を保持しているステージ50は、好ましくは、図1中に矢印53で表されているように、対物レンズに対してビームの軸線方向に可動である。この相対運動は、試料の3Dイメージングを実施することができるように、試料の異なる深さにおける励起平面の焦点合せをもたらす。
【0037】
ステージ50の相対運動は、固定された対物レンズ40に対して軸線方向にステージを移動させることにより、あるいは固定されたステージ50に対して対物レンズ40を移動させることによりもたらすことができる。ステージ50および対物40レンズの両方の移動もまたもたらすことができる。さらに、ステージ50あるいはまた対物レンズの移動は、顕微鏡法の当業者に良く知られている手動あるいは自動化された移動構造によってもたらすことができる。例えば、軸線方向の移動は、電動モータおよびギア組立体、あるいは圧電性アクチュエータ組立体によってもたらすことができる。この自動化された移動は、これもまた顕微鏡法の当業者に知られているように、コンピュータ制御することができる。
【0038】
試料の予め定められた励起領域から収集された放射光は、無限遠補正対物レンズ40のフロントレンズ領域44を通って戻るとともに、実質的に平行なビームとしてリアレンズ領域42を出て、ダイクロイックミラー30の方に向けられる。上記したように、ダイクロイックミラー30は、励起光25の波長を反射するとともに放射光55の波長は通過させるように設計されている。したがって、ダイクロイックミラー30は、放射光55を励起光25から分離させるための装置として機能する。放射フィルタ60が放射波長以外の波長をブロックし、かつフィルターをかけられた平行な放射光はそれから集束レンズ70に当てられる。放射光が実質的に平行であるので、試料の画像を検出しかつ目視することができるように、放射光を画像平面80上に収束させるために集束レンズ70が設けられている。集束レンズは、放射光の平行ビームを画像平面80に焦点合わせするために、チューブレンズあるいは他の任意の公知のレンズとすることができる。図1に示した実施例において、画像平面80は検出装置90に対応している。検出装置90は、図1に示した両眼用接眼鏡のような単純な光学式検出器、ビデオカメラ、冷却固体撮像素子カメラ、電子衝撃固体撮像素子カメラ、あるいは画像を検出するための他の任意の公知の装置とすることができる。
【0039】
図1の広視野多光子顕微鏡法システムは、図7に示されているような従来技術システムに対して改良された軸線方向解像度を有した、焦点面全体にわたる同時多光子励起をもたらす。上記したように、本発明の発明者は、図7のシステムにおける軸線方向の解像度の損失が、対物レンズに当てられる焦点合わせされた励起ビームに起因することを見出した。したがって、図7のシステムとは異なり、創意に富んだ図1の励起光は、実質的に平行なビームとして対象物40に当てられる。好ましい実施例において、実質的に平行な励起ビームはビームエクスパンダを用いてパルスレーザのビーム幅を拡げることによってもたらされ、本発明の発明者が見出したところでは、それは比較的大きな領域の共焦点平面全体を励起させるのに充分なパワーを提供する。実質的に平行なビームを対物レンズに当てることは、励起光源のパルス拡がりを減少させ、試料平面全体の共焦点励起を可能にする。パルス拡がりの減少は、図7のシステムのようにミラーを通過するのではなく、ダイクロイックミラー30によって対物レンズに向かって反射される励起ビームによってもたらされる。さらに、励起ビームが通過する2つの光学部品(図7の焦点レンズおよびダイクロイックミラー)を取り除くことにより、励起光の減衰が減少し、それによって焦点平面に沿った試料のより大きな励起を可能とする。
【0040】
励起共焦点平面をもたらすことにより、本発明の広視野顕微鏡法システムは、励起ビームの走査の必要性を減少させる。好ましい実施例においては、走査機構の必要を全くなくすために、図1の実施形態のように、励起平面が所望の可視領域をカバーする。しかしながら、所望する画像可視領域が同時多光子励起を生じさせるには大きすぎる場合には、試料の所望する領域をカバーする画像スライスを与えるために組み合わされる改良された画像を提供するために、広視野システムのXY方向におけるいくらかの走査を用いることができる。例えば、試料の同時多光子励起領域が顕微鏡検出器の少なくとも2つのピクセル領域をカバーすれば充分である。両眼用接眼レンズのような光学式検出器を用いる場合には、接眼レンズを介してユーザが目視できる一つの領域を、同時多光子励起領域がカバーすれば充分である。同時励起領域の調整は、この分野の当業者によって容易に実施することができる。例えば、この調整は、ビームエクスパンダ内の光学素子の相対的な配置を変更することによって実行することができる。走査の減少に加えて、本発明は、バックグラウンド蛍光の減少に起因して改良されたコントラストによって改良される画像スライスを生じさせるとともに、従来技術の広視野システムにおける褪色および組織損傷の問題をさらに低減させる。
【0041】
さらにまた、本発明の広視野顕微鏡法システムは、改良された画像収集時間をもたらすことができる。具体的には、励起ビームの走査の減少あるいは除去が露出のためのより多くの時間を可能にし、それがより短期間の収集時間に帰着する。さらに、画像収集時間は焦点におけるビーム強度に関係しているが、それは本発明の広視野システムでは広い領域にわたって分配されており、広視野システムによってもたらされる効率の改良は、同時に目視される広い領域のために必要な露出時間の増加を全くあるいはわずかにしか必要としない。具体的には、従来技術の焦点多光子顕微鏡法システムの励起光源は、試料の組織損傷を回避するために典型的に弱められていた。本発明の広視野多光子顕微鏡法システムは、励起光源の全出力を用いることができるとともに、領域における平均パワーが組織損傷のための閾値パワーより低くなるように、大きな平面領域にわたってこのパワーを分配する。したがって、より大きな領域のための露出時間は、従来の小さな領域の露出時間を上回って増大させる必要がない。そのような小さい領域の露出が典型的に弱められたビームを用いるのに対して、本発明はそれを回避しているからである。
【0042】
本発明によって効率向上が全くもたらされないと仮定しても、本発明の走査を減少させあるいは全く用いない顕微鏡は、より高いパワーのスポットを同じ領域で走査させる現時点の走査技術の使用に必要な時間を上回る、画像収集時間の増加が全くないあるいはわずかであることに結びつく。例えば、従来の走査型顕微鏡を用いて1000×1000ピクセル(各ピクセルは1マイクロ秒露出させる)の画像を走査するためには1秒かかる。本発明においては、ビームは、放射光を収集するべく、1000×1000ピクセルの画像全体を1秒の露出時間で露出するために拡大することができる。この拡大ビームの場合、各ピクセルが受ける励起エネルギーは1,000,000倍少ないが、露出時間は1,000,000倍増加しており、したがって正味の撮像結果は同一である。
【0043】
図2は、本発明の広視野多光子顕微鏡法システムの他の実施形態の系統図である。図2の実施例において、励起光はアークランプ210によってもたらされる。図1に記載されているレーザ光源と同様に、このアークランプ210は、試料の励起を生じさせるには不十分な単一光子エネルギーレベルを有する予め定められた波長の励起光をもたらす。しかしながら、このアークランプ210は、ビームエクスパンダを必要とすることなく、励起光の実質的に焦点合わせされていない広いビーム幅を有した平行なビームを生磁させる。アークランプ210は、好ましくは、励起ビームが試料の焦点平面に焦点合わせされたときに多光子励起を可能にするための充分なパワーを有した、実質的に平行なビームを生じさせるハイパワーアークランプである。励起光の実質的に焦点合わせされていない平行なビームが試料に当てられ、図1の実施形態と同様に放射光が試料から収集されるので、残りの光学部品の解説は繰り返さない。
【0044】
図3は、本発明の広視野多光子顕微鏡法システムの他の実施形態を示している。この図から判るように、本発明のこの実施形態は、対物レンズ70と画像平面80との間の中間の画像平面に配置されたピンホール開口375を有している。このピンホール開口375は、試料のより明瞭な画像スライスおよび三次元画像が得られるように、励起平面の共焦点性を改善する。図3は超短パルス励起光源に関連させて示しているが、ピンホール開口375は、図2に関連して説明したようにアークランプ光源と共に用いることもできる。ピンホール開口375は、XY方向に走査することができる可動性の開口として実施することができる。他の実施形態において、ピンホール開口375は、回転によって放射平面を走査する複数のピンホールを有したニポー円板として実施される。回転するニポー円板およびXY走査ピンホール開口は、共焦点顕微鏡法の当業者にとっては周知である。励起光の実質的に焦点合わせされていない平行なビームが試料に当てられ、かつ図1の実施形態と同様に放射光が試料から収集されるので、残りの光学部品の解説は繰り返さない。
【0045】
図4は、本発明の広視野多光子顕微鏡法システムのさらに他の実施形態を示している。図4の実施形態において、励起光は、第1および第2の波長をそれぞれ有した励起光を生じさせる2つの光源410,420によってもたらされる。光源410,420は、図1に記載されている超短パルスレーザ10、あるいは図2に記載されているアークランプ210として実施することができる。さらに、図4に楕円によって表されている異なる波長を有したさらなる光源を、このシステムに追加することができる。光源410,420からの励起光は、ビームコンバイナ430により、少なくとも2つの波長を有した励起光として単一の励起光440に組み合わせられる。したがって、図4のシステムは複数蛍光イメージングのために用いることができ、異なる波長のレーザパルスは、異なる放出特性を有した異なる蛍光物質で標識が付けられた試料に当てられる。
【0046】
ビームコンバイナは、光源410,420の励起光を互いに重ね合わせるように構成された光学部品を有している。例えば、ビームコンバイナは、ビーム440と軸線方向に位置合わせされた光源410からの第1の波長を通過させるとともに、ビーム440の軸線に直角に配置された光源420からの第2の波長を反射するダイクロイックミラーとすることができる。他の公知のビームコンバイナも、この分野の当業者によって実施することができる。先に述べた実施形態と同様に、少なくとも2つの波長を有した励起ビーム440は、実質的に焦点合わせされていない平行なビームである。したがって、図4には示していないが、光源を超短パルスレーザとして実施する場合には、図1に関連して述べたようにビームを拡げるためにビームエクスパンダを用いる。
【0047】
励起光の実質的に焦点合わせされていない平行なビームは、図1〜図3の実施形態に関して説明したものと同様な光学系を介して試料に当てられる。しかしながら、図4の実施例においては、試料が、励起ビームの各波長に対応した蛍光物質を有している。したがって、試料において異なる蛍光物質の多光子励起が同時に生じて異なる波長の放射光をもたらし、試料の異なる部分を比較する役割を果たす。この放射光は、前述したものと実質的に同じ方法で対物レンズにより収集されて検出器に送られる。しかしながら、この分野の当業者が理解するように、図4の実施形態のダイクロイックミラーのような光学部品は、励起光および放射光に含まれる波長の範囲に対応するように設計されなければならない。さらに、図3に記載されているピンホール開口は、図4の実施形態において実施することができる。
【0048】
本発明の図1〜図4の実施形態は、励起光源およびステージ上の試料の下方に配置されたレンズシステムを有した顕微鏡に関連して説明されて来た。しかしながら、本発明の広視野多光子顕微鏡法システムは、上記ステージの上方の励起システムおよび上記ステージの上方のレンズシステムを有する、直立型顕微鏡として実施することができる。さらに、本発明の広視野多光子顕微鏡法システムは、焦点システムに連動させて実施することができる。具体的には、焦点合わせしたビームを試料に当ててレーザアブレーションのためにラスター走査することができるが、広視野ビームは多光子励起および検出のために当てることができる。さらに、本発明による複数の広視野励起ビームは、図8に関連して説明した従来技術システムと同様の構造において平行に配置することができる。しかしながら、注目されることは、本発明のこの実施が広視野ビームアレーの走査を必要性としないことである。これらのシステムは、本願明細書に開示した本発明についての知識を有した、この分野の当業者によって容易に実施することができる。
【0049】
さらにまた、本発明の広視野多光子顕微鏡法システムは、例えば生体内イメージングに用いられる可撓性スコープとして実施することができる。図5は、本発明の広視野多光子励起技術を用いる可撓性スコープを示している。この図から判るように、このシステムは光ファイバ520に接続された外部装置510を備えており、かつこの外部装置から離れた側のファイバーの遠位端に対物レンズ530を有している。好ましい実施例において、対物レンズ530は、図1に関連した説明したフロントレンズに対応する集束レンズのみを有している。この実施例においては、無限遠補正対物レンズ、チューブレンズ、励起光源、および他の光学部品が外部装置510の内部に設けられている。しかしながら、無限遠補正対物レンズおよび他の光学部品は、パルス励起レーザビームのパルス拡がりを減少させるために、ファイバの対物レンズユニットとして実施することができる。さらに、光ファイバ520は、複数の個々のファイバとして実施することができるとともに、カテーテル管で囲むこともできる。
【実施例】
【0050】
好適な実施形態の例
(例1)
Z焦点モータによって電動化されたZeiss Axiovert 135(Carl Zeiss、ドイツ)広視野顕微鏡およびエピフロレッセンス装置は、本発明による2光子広視野蛍光のために改良することができる。対物レンズには、0.4〜1.4にわたる 開口数を有した10X、20X、40X、63Xおよび100X Plan-neofluarおよびPlan-Apcromatsが含まれる。蛍光フィルタスライダの一ヶ所には、2光子励起および放射に対応する特別なフィルタが含まれている。ダイクロイックミラーと励起および発光フィルタは励起側にフィルタを有しておらず、Chroma Technology Corporation(ヴァーモント州Rockingham)からの特殊なダイクロイックミラーは、700ナノメートルより上のビームは反射し、700ナノメートルより下のビームは通過させる。染料およびパルスレーザ照射の波長に応じ、450ナノメートルと700ナノメートルとの間の様々なバンドパス発光フィルタを用いることができる。アークランプおよび落射照明経路の光学部品は取り除かれ、Spectra Physics社(カリフォルニア州Mountain View)の700〜1100ナノメートルの範囲で調整可能なMaiTaiフェムト秒レーザがアークランプ照射系と置き換えられる。
【0051】
レーザビームのコヒーレンスおよび拡げられたレーザビーム全体におけるフェムト秒パルス幅の均一性を維持する特別な設計のビームエクスパンダが、レーザ出力と顕微鏡励起経路への入力との間に配置されている。Hamamatsu(日本)の冷却固体撮像素子カメラであるOrca-ERが、蛍光画像を記録するために顕微鏡に取り付けられている。Universal Imaging MetaMorph(Downingtown、ペンシルバニア州)あるいはScanalytics IPLab(Fall Church(ヴァージニア州))のようなソフトウェアが、顕微鏡、カメラの焦点を制御して画像を捕捉するために用いられる。レーザ特性および2光子励起の波長を選択するべくMaiTaiレーザを制御するために別個のコンピュータが用いられる。画像獲得ソフトウェアは、励起波長を選択するために、MaiTaiレーザを制御するコンピュータとシリアル回線を介して通信する。
【0052】
Attofluorステンレス鋼カバーグラスホルダ(Molecular Probes、Eugene オレゴン州)に取り付けられた25ミリメートルのカバーグラス上で成長した生きている細胞からの蛍光画像は、2光子顕微鏡によって撮像することができる。生きている細胞の場合、例えば細胞内のカルシウムは、fura-2AM(励起705ナノメートルおよび760ナノメートル、放射500ナノメートル〜520ナノメートル)あるいはfluo-4AM(励起970ナノメートル、放射520ナノメートル)の染料を加えた細胞内で撮像することができる。様々な細胞種および組織から調製された培養細胞および組織部分のスライドは、スライド上の一次抗体を検出するべく特殊な免疫血清をスライドに化学反応させるとともに蛍光性の標識が付けられた二次抗体を用いることにより、特異性抗原を撮像することができる。Alexa 350、Alexa 488およびAlexa 546で標識が付けられた二次抗体は、一次抗体を検出するために用いられる。これらの染料は、フェムト秒レーザからの700ナノメートル、976ナノメートルおよび1092ナノメートルのビームによって別々にあるいは同時に励起させることができる。各波長における放射をモニタするために、マルチバンドパス発光フィルタ(Chroma 61003m)が用いられる。
【0053】
(例2)
本発明による2光子広視野蛍光のために、Pathway HT High Content Screening microscope (Atto Bioscience, Inc.)を改良することができる。対物レンズには、Zeiss 10X、20X、40X、63Xおよび100X Plan-neofluarおよびPlan-Apcromats、およびOlympus 20X 0.75開口数および60X 1.4開口数の対物レンズが含まれる。ダイクロイックミラーおよび励起および発光フィルタホイールは励起側にフィルタを有しておらず、ヴァーモント州RockinghamのChroma Technology Corporationからの特別なダイクロイックミラーは、700ナノメートルより上の波長のビームは反射するが、700ナノメートルより下の波長のビームは通過させる。染料およびパルスレーザ照射の波長に応じ、450ナノメートルと700ナノメートルとの間の様々なバンドパス発光フィルタを用いることができる。アークランプおよび落射照明経路の光学部品は、Spectra Physics社(カリフォルニア州Mountain View)の700〜1100ナノメートルの範囲で調整可能なMaiTaiフェムト秒レーザに置き換えることができる。
【0054】
レーザビームのコヒーレンスおよび拡げられたレーザビーム全体におけるフェムト秒パルス幅の均一性を維持する、特別な設計のビームエクスパンダが、レーザ出力と顕微鏡励起経路への入力との間に配置されている。この装置のHamamatsu(日本)のOrca-ER冷却固体撮像素子カメラは、蛍光画像を記録することができる。顕微鏡、対物レンズ位置、カメラの焦点を制御するとともに画像を獲得するために、機器に特有のソフトウェアが用いられる。レーザ特性および2光子励起の波長を選択するべくMaiTaiレーザを制御するために別個のコンピュータが用いられる。画像獲得ソフトウェアは、励起波長を選択するために、MaiTaiレーザを制御するコンピュータとシリアル回線を介して通信する。
【0055】
Attofluorステンレス鋼カバーグラスホルダ(Molecular Probes、Eugene オレゴン州)に取り付けられた25ミリメートルのカバーグラス上で成長した生きている細胞からの蛍光画像は、2光子顕微鏡によって撮像することができる。生きている細胞の場合、例えば細胞内のカルシウムは、fura-2AM(励起705ナノメートルおよび760ナノメートル、放射500ナノメートル〜520ナノメートル)あるいはfluo-4AM(励起970ナノメートル、放射520ナノメートル)の染料を加えた細胞内で撮像することができる。マルチレベルプレート内の蛍光染料で標識が付けられた固定されあるいは生きている細胞は、高い処理能力あるいは高い薬物スクリーニング能力の本発明により、その蛍光発光をモニタすることができる。様々な細胞種および組織から調製された培養細胞および組織部分のスライドは、スライド上の一次抗体を検出するべく特殊な免疫血清をスライドに化学反応させるとともに蛍光性の標識が付けられた二次抗体を用いることにより、特異性抗原を撮像することができる。Alexa 350、Alexa 488およびAlexa 546で標識が付けられた二次抗体は、一次抗体を検出するために用いられる。これらの染料は、フェムト秒レーザからの700ナノメートル、976ナノメートルおよび1092ナノメートルのビームによって励起させることができる。各波長における放射をモニタするために、マルチバンドパス発光フィルタ(Chroma 61003m)が用いられる。
【0056】
前述した教示に照らすと、本発明の多くの修正および変更が可能であることは明らかである。したがって、添付の請求の範囲の範囲内において、本願明細書に具体的に説明したものとは別の方法で本発明を実施することができることは理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の多光子顕微鏡法システムの一実施形態の系統図。
【図2】本発明の多光子顕微鏡法システムの他の実施形態の系統図。
【図3】本発明の多光子顕微鏡法システムのさらに他の実施形態の系統図。
【図4】本発明の多光子顕微鏡法システムのさらに他の実施形態の系統図。
【図5】本発明の多光子顕微鏡法システムを有した可撓性スコープの系統図。
【図6】従来の多光子走査顕微鏡システム。
【図7】従来技術の広視野多光子顕微鏡法システムの系統図。
【図8】従来技術の互いに関連する多焦点多光子システムの系統図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その内部に蛍光物質を有した試料を保持するように構成されたステージと、
前記蛍光物質の単一光子励起のために必要とされる吸収エネルギーよりも少ない単一光子エネルギーを有する励起光の実質的に平行なビームを生じさせるように構成された多光子励起光源と、
前記多光子励起光源に光学的に接続されるとともに、前記試料の予め定められた領域にわたって前記蛍光物質の多光子励起が同時に生じるように前記励起光の実質的に平行なビームを前記試料上に焦点合わせするべく構成された無限遠補正対物レンズと、
前記試料の予め定められた領域から放射された放射光を、画像検出器の少なくとも2つのピクセル上へと同時に焦点合わせするように構成された焦点レンズと、
を備えることを特徴とする広視野顕微鏡。
【請求項2】
前記顕微鏡が、励起光の実質的に平行なビームを前記試料を横切るXあるいはY方向に走査するようには構成されていないことを特徴とする請求項1に記載の広視野顕微鏡。
【請求項3】
励起光を無限遠補正対物レンズに向かって反射するとともに、放射光を焦点レンズに向かって通過させるように構成されたダイクロイックミラーをさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の広視野顕微鏡。
【請求項4】
前記ダイクロイックミラーは、比較的長い波長の励起光は反射するが、より短い波長の放射光はそれを通して通過させるように構成された表面を有していることを特徴とする請求項3に記載の広視野顕微鏡。
【請求項5】
前記ダイクロイックミラーと前記焦点レンズとの間の光学通路に配設された発光フィルタをさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の広視野顕微鏡。
【請求項6】
前記無限遠補正対物レンズと前記ステージ上に保持された試料との間の距離を調整するように構成された移動システムをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の広視野顕微鏡。
【請求項7】
前記ステージが静止しており、かつ前記対物レンズ装置がX、YおよびZ方向のいずれかあるいは全ての方向に移動することを特徴とする請求項6に記載の広視野顕微鏡。
【請求項8】
前記対物レンズ装置が静止しており、かつ前記ステージがX、YおよびZ方向のいずれかあるいは全ての方向に移動することを特徴とする請求項6に記載の広視野顕微鏡。
【請求項9】
前記移動システムが手動の移動システムから構成されていることを特徴とする請求項6に記載の広視野顕微鏡。
【請求項10】
前記移動システムが、電動式の移動システムから構成されていることを特徴とする請求項6に記載の広視野顕微鏡。
【請求項11】
前記移動システムが、コンピュータ制御の移動システムから構成されていることを特徴とする請求項6に記載の広視野顕微鏡。
【請求項12】
前記移動システムが、圧電性の移動システムから構成されていることを特徴とする請求項6に記載の広視野顕微鏡。
【請求項13】
前記検出装置が、ビデオカメラから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の広視野顕微鏡。
【請求項14】
前記検出装置が、冷却固体撮像素子カメラから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の広視野顕微鏡。
【請求項15】
前記検出装置が、電子衝撃固体撮像素子カメラから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の広視野顕微鏡。
【請求項16】
前記多光子励起光源が、
励起光を放射するように構成されたレーザ、および前記励起光を前記レーザによってもたらされるものよりも広いビーム直径を具備した実質的に平行なビームに形成するように構成されたビームエクスパンダを有していることを特徴とする請求項1に記載の広視野顕微鏡。
【請求項17】
前記レーザが1ピコ秒、フェムト秒、あるいはより短いパルス幅をもたらすように構成されたパルスレーザ光源を有し、
前記ビームエクスパンダが実質的にパルス拡がりのないパルスレーザビームをもたらすように構成されていることを特徴とする請求項16に記載の広視野顕微鏡。
【請求項18】
前記レーザは、1ピコ秒、フェムト秒、あるいはより短いパルス幅をもたらすように構成されたパルスレーザ光源を有しており、
かつ前記ビームエクスパンダは、その拡げられたパルスレーザビームの領域全体にわたって実質的に一様な特性を有する拡げられたパルスレーザビームをもたらすように構成されていることを特徴とする請求項16に記載の広視野顕微鏡。
【請求項19】
前記ビームエクスパンダは、拡げられたビームのあらゆるビームに対して実質的に等しい量のビームエクスパンダ媒質を呈するように構成されていることを特徴とする請求項18に記載の広視野顕微鏡。
【請求項20】
前記ビームエクスパンダは、レーザビームの直径を100倍拡げるように構成されていることを特徴とする請求項16に記載の広視野顕微鏡。
【請求項21】
前記レーザは、約700ナノメートルと約1100ナノメートルとの間で同調できる同調可能レーザから構成されていることを特徴とする請求項16に記載の広視野顕微鏡。
【請求項22】
前記レーザは、800ナノメートルの波長を有したビームを出力するように構成されていることを特徴とする請求項16に記載の広視野顕微鏡。
【請求項23】
前記多光子励起光源は、約300ナノメートルと2000ナノメートルとの間の波長出力を有したアークランプから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の広視野顕微鏡。
【請求項24】
前記アークランプが同調可能であることを特徴とする請求項23に記載の広視野顕微鏡。
【請求項25】
前記多光子励起光源は、
第1の波長を有した励起光を発生させるように構成された第1の励起光発生装置と、
第2の波長を有した励起光を発生させるように構成された第2の励起光発生装置と、
前記第1および第2の波長を有した実質的に焦点合わせされていない励起光の平行なビームへと前記第1および第2の光発生装置の励起光を組み合わせるように構成されたビームコンバイナと、
を有していることを特徴とする請求項1に記載の広視野顕微鏡。
【請求項26】
前記光発生装置が、パルスレーザおよびアークランプの少なくとも一つから構成されていることを特徴とする請求項25に記載の広視野顕微鏡。
【請求項27】
前記ビームコンバイナがダイクロイックミラーから構成されていることを特徴とする請求項25に記載の広視野顕微鏡。
【請求項28】
前記無限遠補正対物レンズは、ビームを焦点合わせするように構成されたフロントレンズ領域と、ビームを実質的に平行に維持するように構成されたリアレンズ領域とを有していることを特徴とする請求項1に記載の広視野顕微鏡。
【請求項29】
前記無限遠補正対物レンズ装置は、倍率パワーが4倍であり、かつ開口数(NA)が0.10の対物レンズを有していることを特徴とする請求項1に記載の広視野顕微鏡。
【請求項30】
前記無限遠補正対物レンズ装置は、倍率パワーが10倍であり、かつ開口数(NA)が0.25の対物レンズを有していることを特徴とする請求項1に記載の広視野顕微鏡。
【請求項31】
前記無限遠補正対物レンズ装置は、倍率パワーが20倍であり、かつ開口数(NA)が0.75の対物レンズを有していることを特徴とする請求項1に記載の広視野顕微鏡。
【請求項32】
前記無限遠補正対物レンズ装置は、倍率パワーが32倍であり、かつ開口数(NA)が0.40の対物レンズを有していることを特徴とする請求項1に記載の広視野顕微鏡。
【請求項33】
前記無限遠補正対物レンズ装置は、倍率パワーが40倍であり、かつ開口数(NA)が1.4の対物レンズを有していることを特徴とする請求項1に記載の広視野顕微鏡。
【請求項34】
前記無限遠補正対物レンズ装置は、倍率パワーが40倍であり、かつ開口数(NA)が1.25の対物レンズを有していることを特徴とする請求項1に記載の広視野顕微鏡。
【請求項35】
前記無限遠補正対物レンズ装置は、倍率パワーが60倍であり、かつ開口数(NA)が1.4の対物レンズを有していることを特徴とする請求項1に記載の広視野顕微鏡。
【請求項36】
前記無限遠補正対物レンズ装置は、倍率パワーが63倍であり、かつ開口数(NA)が1.4の対物レンズを有していることを特徴とする請求項1に記載の広視野顕微鏡。
【請求項37】
前記無限遠補正対物レンズ装置は、倍率パワーが100倍であり、かつ開口数(NA)が1.4の対物レンズを有していることを特徴とする請求項1に記載の広視野顕微鏡。
【請求項38】
前記無限遠補正対物レンズ装置は、倍率パワーが100倍であり、かつ開口数(NA)が1.3の対物レンズを有していることを特徴とする請求項1に記載の広視野顕微鏡。
【請求項39】
前記システムは、直立顕微鏡あるいは倒立顕微鏡から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の広視野顕微鏡。
【請求項40】
前記多光子励起光源は、2つ以上の光子が蛍光物質によって実質的に同時に吸収されるときに試料の励起を生じさせる光子エネルギーを有した、実質的に焦点合わせされていない励起光の平行なビームを生じさせるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の広視野顕微鏡。
【請求項41】
前記多光子励起光源は、3つ以上の光子が蛍光物質によって実質的に同時に吸収されるときに試料の励起を生じさせる光子エネルギーを有した、実質的に焦点合わせされていない励起光の平行なビームを生じさせるように構成されていることを特徴とする請求項40に記載の広視野顕微鏡。
【請求項42】
複数の検出された画像を前記試料の三次元画像に組み合わせるように構成されたコンピュータをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の広視野顕微鏡。
【請求項43】
前記励起光の実質的に平行なビームの幅を調整するように構成された調整装置をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の広視野顕微鏡。
【請求項44】
前記調整装置は、ビームエクスパンダ内における光学素子の配置を変更するように構成された機構を備えていることを特徴とする請求項43に記載の広視野顕微鏡。
【請求項45】
その内部に蛍光物質を有した試料を保持するための手段と、
前記試料に含まれている前記蛍光物質の単一光子励起のために必要とされる吸収エネルギーよりも少ない単一光子エネルギーを有した励起光の実質的に平行なビームを生じさせるための手段と、
励起光の実質的に平行なビームを受け取るとともに、前記試料の予め定められた領域にわたって前記蛍光物質の多光子励起が同時に生じるように前記励起光を試料に焦点合わせする、多光子励起光源に光学的に接続された手段と、
前記試料の予め定められた領域から放射された放射光を、画像検出器の少なくとも2つのピクセル上へと同時に焦点合わせするための手段と、
を備えることを特徴とする広視野顕微鏡。
【請求項46】
無限遠補正対物レンズに向かって励起光を反射するとともに前記焦点レンズへと放射光を通過させるための手段をさらに備えることを特徴とする請求項45に記載の広視野顕微鏡。
【請求項47】
前記反射するための手段と前記焦点合せするための手段との間の光学通路に配設された、前記放射光にフィルターをかけるための手段をさらに備えることを特徴とする請求項46に記載の広視野顕微鏡。
【請求項48】
試料を保持するための手段と、
前記実質的に焦点合わせされていない平行なビームを受け取るための手段に対して前記試料を移動させるための手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項45に記載の広視野顕微鏡。
【請求項49】
前記画像平面に焦点合わせされた画像を検出するための手段をさらに備えることを特徴とする請求項45に記載の広視野顕微鏡。
【請求項50】
検出された画像を前記試料の三次元画像に組み合わせるための手段をさらに備えることを特徴とする請求項49に記載の広視野顕微鏡。
【請求項51】
共焦点平面全体に広視野励起をもたらす方法であって、
その内部に蛍光物質を有している試料を保持する段階と、
前記試料に含まれている前記蛍光物質の単一光子励起のために必要とされる吸収エネルギーよりも少ない単一光子エネルギーを有した励起光の実質的に平行なビームを生じさせる段階と、
前記試料の予め定められた領域にわたって前記蛍光物質の多光子励起が同時に生じるように、前記試料上に励起光を焦点合わせする無限遠補正対物レンズに励起光の実質的に平行なビームを当てる段階と、
前記試料の予め定められた領域から放射された放射光を、画像検出器の少なくとも2つのピクセル上へと同時に焦点合わせする段階と、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項52】
高い処理能力あるいは高い薬物スクリーニング能力のために蛍光染料で標識が付けられたマルチウェルプレート内の固定されあるいは生きている細胞をモニタする段階をさらに備えることを特徴とする請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記無限遠補正された対物レンズに向かって前記励起光を反射し、かつ前記焦点レンズへと前記放射光を通過させる段階をさらに備えることを特徴とする請求項49に記載の方法。
【請求項54】
前記放射光を画像平面に焦点合わせする段階をさらに備えることを特徴とする請求項50に記載の方法。
【請求項55】
画像平面より前において焦点合わせされた放射光に沿った収束点で前記放射光にフィルターをかける段階をさらに備えることを特徴とする請求項50に記載の方法。
【請求項56】
前記無限遠補正された対物レンズに対して試料を移動させることによって共焦点励起平面を焦点合わせする段階をさらに備えることを特徴とする請求項50に記載の方法。
【請求項57】
前記画像平面に焦点合わせされた画像を検出する段階をさらに備えることを特徴とする請求項50に記載の方法。
【請求項58】
複数の検出された画像を前記試料の三次元画像に組み合わせる段階をさらに備えることを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項59】
その内部に蛍光物質を有した試料を保持するように構成されたステージと、
前記蛍光物質の単一光子励起のために必要とされる吸収エネルギーよりも少ない単一光子エネルギーを有する励起光の実質的に平行なビームを生じさせるように構成された多光子励起光源と、
前記多光子励起光源に光学的に接続されるとともに、前記試料の予め定められた領域にわたって前記蛍光物質の多光子励起が同時に生じるように前記励起光の実質的に平行なビームを前記試料上に焦点合わせするべく構成された無限遠補正対物レンズ、を有した広視野顕微鏡と、
前記試料の予め定められた領域から放射された放射光を、画像検出器の少なくとも2つのピクセル上へと同時に焦点合わせするように構成された焦点レンズと、
前記広視野顕微鏡に接続された光ファイバと、
前記光ファイバの端部に取り付けられた光学部品ホルダであって、前記広視野顕微鏡の少なくとも無限遠補正された対物レンズが前記光学部品ホルダに含まれており、かつ前記光学部品ホルダに含まれていない前記広視野顕微鏡の全ての部分が、前記光ファイバの反対側の端部に光学的に接続された外部装置に含まれている光学部品ホルダと、
を備えることを特徴とする可撓性の顕微鏡。
【請求項60】
その内部に蛍光物質を有した試料を保持するように構成されたステージと、
前記蛍光物質の単一光子励起のために必要とされる吸収エネルギーよりも少ない単一光子エネルギーを有する励起光の実質的に平行なビームを生じさせるように構成された多光子励起光源と、
前記多光子励起光源に光学的に接続されるとともに、前記試料の予め定められた領域にわたって前記蛍光物質の多光子励起が同時に生じるように前記励起光の実質的に平行なビームを前記試料上に焦点合わせするべく構成された無限遠補正対物レンズと、
前記画像平面を両眼用接眼レンズを介して見ることができるように、前記試料の予め定められた領域から放射された放射光を画像平面上に焦点合わせするように構成された焦点レンズと、
を備えることを特徴とする広視野顕微鏡。
【請求項61】
その内部に蛍光物質を有した試料を保持するように構成されたステージと、
前記蛍光物質の単一光子励起のために必要とされる吸収エネルギーよりも少ない単一光子エネルギーを有する励起光の実質的に平行なビームを生じさせるように構成された多光子励起光源と、
前記多光子励起光源に光学的に接続されるとともに、前記試料の予め定められた領域にわたって前記蛍光物質の多光子励起が同時に生じるように前記励起光の実質的に平行なビームを前記試料上に焦点合わせするべく構成された無限遠補正対物レンズと、
前記画像平面を画像アレイ検出器によって見ることができるように、前記試料の予め定められた領域から放射された放射光を画像平面上に焦点合わせするように構成された焦点レンズと、
を備えることを特徴とする広視野顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−538289(P2007−538289A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527343(P2007−527343)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/017096
【国際公開番号】WO2005/116717
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(506387409)
【氏名又は名称原語表記】GARY BROOKER
【Fターム(参考)】