説明

共生メープルの生成組成物および方法

本発明は、新たなメープル生成組成物に関する。特に、本発明は、メープル樹液、メープル濃縮物、メープルシロップまたは希釈メープルシロップと、プロバイオティクス、プレバイオティクスまたはこれらの配合とを含む新たな組成物に関する。本発明は、また、メープル樹液、メープル濃縮物、メープルシロップまたは希釈メープルシロップと、プロバイオティクス、プレバイオティクスまたはこれらの配合とを有する組成物を含む機能性飲料を含む、胃腸管へのプロバイオティクスおよびプレバイオティクスの供給のための媒体としてのメープル生成物の製造方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年3月6日に出願した米国仮特許出願第61/158,151号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、新たなメープル生成組成物に関する。特に、本発明は、メープル樹液、メープル濃縮物またはメープルシロップと、プロバイオティクス、プレバイオティクスまたはこれらの配合とを含む新たな組成物に関し、また、第1としてメープル樹液、メープル濃縮物、メープルシロップまたは希釈メープルシロップを含み、第2としてプロバイオティクス、プレバイオティクスまたはこの配合を含む組成物を含む、胃腸管へのプロバイオティクスおよびプレバイオティクスの供給用媒体としての機能性飲料の製造方法および安定化方法に関する。
【背景技術】
【0003】
市場にはプロバイオティクスおよび/またはプレバイオティクスを含む多くの健康飲料がある。ほぼ全ての主たる商業乳製品のブランドは、プロバイオティクスおよび/またはプレバイオティクスで強化した乳製品を少なくとも1つ有し、例えばDanone DanActive(商標)、Astro Biobest Maximmunite(商標)およびNatrel Pro(商標)などがある。一般的に、プロバイオティクスの市場は2種類ある:(1)食品(特に、冷却を必要とする食品)および(2)サプリメントである。一般的に前記食品には2つのカテゴリーがある:(A)ヨーグルトなどの乳培養製品と(B)乳培養とは別の乳発酵食品である。乳培養のカテゴリー(A)の製品は固形食品を含み(例えば明治乳業のBULGARIA YOGURT(商標)やLG21(商標)、またはフジッコ株式会社のCASPIAN SEA YOGURT(商標))、また、液体ヨーグルト製品などの液体食品を含む。カテゴリー(B)による乳培養ではない乳発酵食品は、ヤクルト本社が販売するYAKULT(商標)などの牛乳由来の乳酸菌に基づく飲料;カゴメが販売するLABRE(商標)などの乳酸菌の他の形態の飲料;およびSpyafarmが販売する豆乳ヨーグルトなどの他の乳発酵製品を含む。サプリメントは一般的にタブレット(森下仁丹から販売されているBIFINA(商標)ブランド製品など)や、藻類由来の乳酸菌などの液体を含む。
【0004】
天然ミネラル水および果汁は、他のものを混ぜ合わせていない形態で販売されるか、いくらかの強化ミネラルおよび/またはビタミンで風味をつけて販売されている。しかしながら、プロバイオティクスおよび/またはプレバイオティクスで強化されるものがないのは、主に、水源の化学組成がこのタイプの強化を支持しないからである。
【0005】
中性pHのミルク、その脂肪やタンパク質は、保護効果を奏し、胃腸系にプロバイオティック作用を可能にする成分である。果汁が酸性だと、プロバイオティクスを植えつけたり生存させたりすることができない。
【0006】
メープル樹液が天然蒸留純水源であることが知られている。例えばメープルシロップの製造中に樹液中の水を除去して、その水を非炭酸の「純水で天然な蒸留濃縮メープルスチーム」(例えば、Vermont Maple Water社、イーストアーリントン、Vt.05252からVERMONT MAPLE WATER(商標)として市販)として市場で販売することも当業者には知られている。
【0007】
特許文献1は、生物反応器中での培地としてメープル樹液を用いて、37℃での連続攪拌下で、豆乳飲料などの窒素が豊富な基質の存在下でプロバイオティクスを育成することを開示する。特許文献1は、プロバイオティクス、プレバイオティクスまたはこの配合の供給媒体として、組成物中で、純粋・無添加樹液、メープル濃縮物、メープルシロップまたは希釈メープルシロップを使用することを示唆も教示もしていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】カナダ特許出願公開第2,594,937号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
プロバイオティクスおよび/またはプレバイオティクスの供給媒体として、機能性飲料中でメープル樹液、メープル濃縮物、メープルシロップまたは希釈メープルシロップを用いることには、従来技術において解決されていない多くの課題が存在する。すなわち:(1)樹液、メープル濃縮物、メープルシロップまたは希釈メープルシロップ中に植菌されたプロバイオティック株の生存を保証すること;(2)環境に耐久性のある商業的プロバイオティック株を選択すること;(3)組成物中に十分な量のプロバイオティック株を植菌して、良好な生存率を維持しつつ、官能特性および環境を維持すること;(4)十分な保存可能期間を有する生成物を製造すること;(5)共生組成物を摂取する対象者の胃腸系(胃および小腸)においてプロバイオティクスの良好な生存率を維持することである。胆汁塩、酵素、pHおよび温度などの胃腸系中のいくつかの因子は、プロバイオティクスの作用を減少させ、阻害しさえする。本発明の目的はこれらの課題を克服することにある。
【0010】
本発明の目的は、健康利益をもたらす飲料を提供することにある。本発明を本明細書で説明するまで、プレバイオティクスおよびプロバイオティクスによるメープル樹液、メープル濃縮物、メープルシロップまたは希釈メープルシロップの強化は一度も実施されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
メープル樹液、メープル濃縮物、メープルシロップまたは希釈メープルシロップと、プロバイオティック、プレバイオティックまたはこれらの配合の少なくとも1つと、を含む新たな組成物は開発され、これは健康組成物として有用である。
【0012】
従って、本発明の一様態では、メープル樹液、メープル濃縮物、メープルシロップまたは希釈メープルシロップと、少なくとも1つのプロバイオティックとを含む、哺乳類の消化管への供給に適した組成物を提供する。
【0013】
本発明の別の様態では、メープル樹液、メープル濃縮物、メープルシロップまたは希釈メープルシロップと、少なくとも1つのプレバイオティックとを含む、哺乳類の消化管への供給に適した組成物を提供する。
【0014】
本発明のさらに別の様態では、メープル樹液、メープル濃縮物、メープルシロップまたは希釈メープルシロップと、少なくとも1つのプロバイオティックと、少なくとも1つのプレバイオティックとを含む、哺乳類の消化管への供給に適した組成物を提供する。
【0015】
本発明のさらに別の様態では、哺乳類の消化管への供給に適した組成物を含む機能性飲料であって、該組成物が、メープル樹液、メープル濃縮物、メープルシロップまたは希釈メープルシロップと、プロバイオティック、プレバイオティックまたはこれらの配合のうち少なくとも1つとを含む、機能性飲料を提供する。
【0016】
一様態では、メープル樹液、メープル濃縮物、メープルシロップまたは希釈メープルシロップと、プロバイオティック、プレバイオティックまたはこれらの配合のうち少なくとも1つと、を含む組成物の製造方法を提供する。
【0017】
別の様態では、メープル樹液、メープル濃縮物、メープルシロップまたは希釈メープルシロップと、プロバイオティック、プレバイオティックまたはこれらの配合のうち少なくとも1つと、を含む組成物の使用方法を提供する。
【0018】
本発明の組成物には以下の利点がある。:
(1)リフレッシュでき、水分補給でき、健康利益を付加した、カロリーのない共生飲料を提供できる。
(2)単一の生成物中にプロバイオティクスおよびプレバイオティクスを提供できる。(これは常にあてはまるわけではない。)
(3)4℃で維持したときに最長30日までの保存可能期間を有するプロバイオティック含有生成物を提供できる。
(4)胃腸系でプロバイオティクスの良好な生存率を維持できること。
(5)植物原料から天然生成物の一部として、かような生成物の良好な特性とともにプロバイオティクスおよび/またはプレバイオティクスを供給できる。
(6)ラクトース不耐の需要者にプレバイオティクスおよびプロバイオティクスの代替源をもたらす天然の植物飲料を提供し、ここで、プレバイオティック株またはプロバイオティック株はラクトース源中で培養されない。
(7)プロバイオティックおよびプレバイオティック有効成分を提供するための、天然栄養素(例えば複雑な炭糖、ミネラル、ビタミン、フェノール、アミノ酸、有機酸、ペプチド、植物ホルモンのうちの1つ)で強化されたマトリクスまたは基剤を提供する観点で優れた生成物
【0019】
本発明のこれらおよびさらに他の目的および利点は以下の記載から明らかとなるであろう。
【0020】
本発明は、本明細書における詳細な記載と添付の図からより十分に理解できるが、これらは説明のためのみにあり、本発明の意図する範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】2%イヌリンを添加または非添加の、メープル樹液中のL.rhamnosusおよびB.lactis Bb12の、4℃で30日間の貯蔵生存率を示す。
【図2】イヌリンを添加しないメープル樹液サンプルの消化中における、胃腸の多区画動的モデル(TIM-1)でのB. lactisの生存率を示すグラフである。
【図3】イヌリンを添加しないメープル樹液サンプルの消化中における、胃腸の多区画動的モデル(TIM-1)でのL. rhamnosusの生存率を示すグラフである。
【図4】2%(w/v)イヌリンを添加したメープル樹液サンプルの消化中における、胃腸の多区画動的モデル(TIM-1)でのB. lactisの生存率を示すグラフである。
【図5】2%(w/v)イヌリンを添加したメープル樹液サンプルの消化中における、胃腸の多区画動的モデル(TIM-1)でのL. rhamnosusの生存率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
新たな組成物を提供する。一態様において、本発明の組成物は、メープル樹液、メープル濃縮物、メープルシロップまたは希釈メープルシロップと、プロバイオティック、プレバイオティックまたはこれらの配合の少なくとも1つと、を含む。別の態様において、本発明は、メープル樹液、メープル濃縮物、メープルシロップまたは希釈メープルシロップと、プロバイオティック、プレバイオティックまたはこれらの配合の少なくとも1つと、を含む組成物の製造方法を提供する。更なる別の態様において、本発明は、メープル樹液、メープル濃縮物、メープルシロップまたは希釈メープルシロップと、プロバイオティック、プレバイオティックまたはこれらの配合の少なくとも1つと、を含む組成物の使用方法を提供する。
【0023】
本発明の組成物は、改良飲料、改良食料および改良餌、並びに哺乳類の消化管における、健康に良いバクテリアおよび/またはプレバイオティクスのレベルを増大させる他の改良製品を製造するために使用できる。
【0024】
本出願において、次の用語は次の意味を有する。
【0025】
「プロバイオティック」は、国際連合食糧農業機関および世界保健機関によって「生きている微生物であって、適正な量で投与すると、宿主に健康効果を与えるもの」と、定義される。「プレバイオティック」は、任意の関連するプロバイオティックに対して基質として機能する任意の物質、または、関連するプロバイオティックの生存を維持する若しくは増殖を刺激するのに役立つ任意の物質を意味し、ムコ多糖、オリゴ糖、多糖、アミノ酸、ビタミン、栄養素の前駆体、およびタンパク質を含む。プロバイオティクスのプレバイオティクスとのつながりは、用語「共生」によって一般的に定義される組成物/生成物を生じさせる。
【0026】
メープル樹液は天然に生じる未処理の透明な液体であり、水と調和し、水の透明さを有し、サトウカエデの木から得られる。メープル樹液は、およそ1°から5°ブリックスの糖含量を有する。樹液中の糖含量は、収穫の時期、温度、太陽の照射、メープルの地帯、メープルのサイズおよび樹齢に依存する。樹液の収穫は、気温が夜に凝固点を下回り日中に0℃より高い時期の、3月から4月の間の春に行われる。メープル樹液中の糖含量の大部分は、スクロースとグルコースを含む。メープル樹液の内容の残り(95〜98%)は、天然に生じる水、および、メープル風味の一因となる極微量の有機酸からなる。樹液中の窒素含量は0.25%であり、アミノ酸およびタンパク質由来の有機窒素の形態である。糖はプロバイオティック株が非常に好む炭素源である。アラビノガラクタンもまたメープル生成物中で同定された(Desjardins,Y.2007. Caracterisation de produits d'erable lyophilises. In. Quebec :INAF / Universite Laval. 94pages)。アラビノガラクタンは、胃腸管中でプロバイオティクスの増殖を促すプレバイオティックとして広く使用されるポリサッカライドである。同じ出版物によると、他の生成物としては、有機酸、ビタミン、ミネラル、フラボノイドおよびフェノール性の化合物も見つかった。メープル樹液のpHは、6.5〜7の範囲で、メープルシロップ作りのシーズンの終わりに向かって減少する傾向がある。樹液への微生物の汚染は、主に10〜10のシュードモナス型からなり、シーズンの終わりに向けて増加する。メープルシロップは、メープル樹液の濃縮および熱処理によって得られた粘性の液体である。
【0027】
「メープル濃縮物」は、メープル樹液から糖および栄養素を濃縮する効果を有する逆浸透膜を通過させ、例えば10°ブリックスに濃縮したメープル樹液である。濃縮した樹液は、その後メープルシロップの製造に使用する。
【0028】
「希釈メープルシロップ」は、水または他の溶媒(例えばジュース、ミルクまたは任意の他の栄養液)などの滅菌溶液で種々の濃度(66°ブリックス〜2°ブリックス)に希釈したメープルシロップである。
【0029】
本明細書における「メープル生成物」とは、メープル樹液、メープル濃縮物またはメープルシロップを意味し、また、メープル樹液、メープル濃縮物、メープルシロップまたは希釈メープルシロップから得た任意の生成物を意味する。
【0030】
本明細書および添付の請求項において使用される、単数形の「a」、「an」、および「the」は、別に明らかに定める場合でなければ、単数形および複数形の両方を含む。例えば、「プロバイオティック(a probiotic)」を含む組成物は、1つのプロバイオティックまたは2つ以上のプロバイオティクスを含み、「プレバイオティック(a prebiotic)」は、1つのプレバイオティックまたは2つ以上のプレバイオティクスを含む。「含む(includes)」、「含む(include)」、「含む(comprises)」、「含む(comprise)」の各用語は、「少なくとも含む(includes at least)」を意味する。例えば「イヌリンを含むプレバイオティック(a prebiotic comprising inulin)」は、少なくともイヌリンを含むプレバイオティックを意味し、他のプレバイオティクスおよび/または他の物質を含みうる。
【0031】
本発明は次のうち1つ以上を含む:(a)メープル樹液、メープル濃縮物またはメープルシロップと、プロバイオティック、プレバイオティックまたはこれらの組合せのうち少なくとも1つと、を含む新たな組成物、(b)メープル樹液、メープル濃縮物またはメープルシロップと、プロバイオティック、プレバイオティックまたはこれらの組合せのうち少なくとも1つと、を含む組成物を含む新たな飲料、(c)メープル樹液、メープル濃縮物、メープルシロップまたは希釈メープルシロップと、プロバイオティック、プレバイオティックまたはこれらの組合せのうち少なくとも1つと、を含む組成物の製造方法および使用方法。
【0032】
本発明を実施するのに使用できるプロバイオティクスは、メープル生成物中で生存でき、哺乳類(特にヒト)の健康、特に胃腸の健康に役立つ微生物である。本発明を実施するのに使用できるプロバイオティックは、例えば1つ以上のラクトバシルおよびビフィドバクテリアを含む。使用できる特定のプロバイオティクスは、制限しない例として、Lactobacillus(略して「L」) rhamnosus、L. acidophilus, L. plantarum ,L. reuteri, L. curvatus, L. bulgaricus, L. grasseri, L. casei, L. fermentum, L. caveasicus, L. helveticus, L. lactis, L. salivarius, L. brevis, L. leichmanni, L. cellobiosus, L. buchneri, Bifidobacterium (略して「B」) laterosporus, B. lactis Bb12, B. longum, B. breve, B. subtilus, L. sporigenes (Bacillus coagulansとしても知られる), pediocossus acidilactici, pediococcus pentosaceus, enterococcus faecium, B. adolescentis, B. infantic, B. thermophilum, B. animalis, およびB. bifidumの1つ以上を含む。Steptococcus thermphiliusもまた用いられ、これはラクトース消化を向上し、宿主に微量栄養素をより利用できるようにすると考えられる。使用できる他のプロバイオティクスは、Lactococcus lactis cremoris、S. diacetylactis、およびS. intermediusを含む。プロバイオティックの別の例は、大便連鎖球菌およびブタン酸バクテリアを含む。本発明で留意すべきは、バクテリアおよび酵母の培養など、共生して生存する微生物の配合をメープル生成物に植菌することを検討するもので、例えば水ケフィアグレイン、糖ケフィアグレインまたはJapanese water crystalsとしても知られているティビコス(tibicos)と同様であることである。
【0033】
本発明の一態様では、本発明を実施するのに使用できるプロバイオティック株はL. rhamnosus、L. acidophilus、L. plantarum、B. lactis Bb12およびB. longumを含む。本発明の別の様態では、本発明を実施するのに使用できるプロバイオティック株はL. rhamnosusおよびB. lactis Bb12を含む。
【0034】
市販のラクトバシル株およびビフィドバクテリア株は、Chris Hansen(米国)から取得できる。
【0035】
プロバイオティクスの最小有効投与量は、正確には知られていないが、健康効果を得るためには、1日に10コロニー形成単位(cfu)以上の経口量が必要であろう。酵素、胆汁塩、膵臓分泌物、pH、温度および胃腸管での経過時間は、プロバイオティクスの生存に直接影響を及ぼす。一般的に、消化系中を通ると、プロバイオティクスに1logの阻害をもたらされる。
【0036】
さらに、飲料または生成物中のプロバイオティクスの濃度は、摂取した飲料および生成物の量に直接関連しうる。例えば、1010cfuのプロバイオティクスを植菌した100mlの飲料は10cfu/mlの濃度である。その飲料の摂取後、約1logの損失があり、摂取者は10cfuのプロバイオティクスを吸収すると思われ、期待される健康効果が与えられる。少なくとも10cfu/mlのプロバイオティック濃度であれば、消化系中の最終量が10cfuであることが確保されるであろう。
【0037】
本発明を実施するのに使用できるプレバイオティクスは、次のうちから1つ以上を含む;(a)オリゴ糖、(b)大豆フルクトオリゴ糖、イヌリンまたはバナナ繊維などのフルクトオリゴ糖(「FOS」)、(c)ペクチンまたはペクチン多糖類、(d)グアーガム、ローカストビーンガム、コンニャクまたはキサンタンガムなどのマンナン、(e)ペントサン、ベータグルカン、アラビナン、およびカラマツアラビノガラクタンなどのガラクタン(f)血清ペプチド、および(g)これらの混合物。
【0038】
FOSは、1-β-Dフルクトフラノシル結合によって互いに結合したフルクトース単糖類を主成分とする長鎖多糖類である。摂取において、フルクトオリゴ糖は、口、胃、および小腸を通過する時に部分的にのみ加水分解する。大腸において、フルクトオリゴ糖は、例えばL. acidophilusおよびB. infantisなどのいくつかのプロバイオティクスの食料になり、SCFAS、主に酢酸、プロピオン酸、酪酸、および乳酸に代謝される。この発酵の結果、かなりの量のバクテリア集団が生じる。これにより、プロバイオティック数の増量、腸のpHの低下を生じ、病原体を阻害すると思われる。pHの減少は、カルシウムおよび他のミネラルの溶解性を増大させ、カルシウムおよびマグネシウムの吸収を高めうる。実例となるフルクトオリゴ糖はイヌリン、バナナ繊維、および大豆フルクトオリゴ糖を含み、ハチミツ、ビール、たまねぎ、アスパラガス、ニラ、メープルシュガー、オートムギ、およびキクイモから発見される。
【0039】
イヌリンは、たまねぎ、アスパラガス、チョウセンアザミ、および多くの穀草類を含む、およそ36,000以上の世界中の植物中で、天然に生じている。チコリの根およびキクイモはそれぞれ、かなりの量のイヌリンを含む。プロバイオティックスの増殖を促すのに加え、いくつかの動物およびヒトの研究によれば、イヌリンオリゴ糖はカルシウムおよびマグネシウムの小腸での吸収量を高める効果をもたらすことが示唆された。
【0040】
本発明を実施するのに使用できるいくつかの特定のプレバイオティクスは、(1)FOS;(2)短鎖FOS;(3)イヌリン;(4)難消化性でんぷん;(5)天然コーンスターチ由来のスターチなどのスターチ;(6)カラマツアラビノガラクタン;(7)水素化ラクトースおよび(8)血清タンパク質を含む。他のプレバイオティクスは、ガラクトオリゴ糖(GOS)、キシロオリゴ糖(XOS)、ラクトスクロースまたはラクツロースを含む。
【0041】
一態様において、本発明による組成物は、メープル生成物、プロバイオティックおよびプレバイオティックを含む共生組成物である。一態様では、プレバイオティックは、共生組成物中のプロバイオティックを補うが、プレバイオティックは、組成物中にはないが腸中にあるような他のプロバイオティックを補うこともできる。
【0042】
本発明者らは、非滅菌樹液および濃縮メープル中に植菌したプロバイオティクスは、その樹液および濃縮メープルの内因性微生物叢の作用によって生存することができないことを見出した。樹液、メープル濃縮物、メープルシロップまたは希釈メープルシロップにプロバイオティクスを植菌して、植菌の長期間の生存を期待するためには、樹液、メープル濃縮物、メープルシロップまたは希釈メープルシロップの内因性の栄養補助化合物(固有品質)を変えない滅菌処理によって、内因性微生物叢(樹液中のバクテリア)を不活性化することが必須であり、それは、内因性栄養補助化合物は植菌したプロバイオティクスが生存するための必須栄養素を含むからである。発明者らは、UVまたは精密ろ過法と組み合わせて、長い55℃/30分や121℃/15分などの、いくつかの熱処理を試験した。本発明の一態様では、内因性微生物叢を減少させ、生成物(樹液、メープルの濃縮樹液、メープルシロップまたは希釈メープルシロップ)の固有の品質を維持する滅菌工程は、穏やかな熱処理(63℃/20分または80℃/10分)後に例えばナイロン薄膜(0.8m)上での精密ろ過工程を連続して組み合わせた滅菌工程である。滅菌処理は、向精神薬、酵母およびカビを含む処理生成物の微生物負荷を除去することができる。平均的に、約7logの内因性微生物叢の減少が得られ、4℃での4ヶ月の貯蔵後に微生物は検出されなかった。物理化学分析によれば、この新たな滅菌工程は、生成物の特性に関するごくわずかな変化しかもたらさず、全固形物のわずかな減少と、転化糖の増加とが生じたことがわかった。pHレベルの変化は見られず、貯蔵中、pHは6〜7の間を安定して維持した。これらのわずかな変化は、生成物の完全性や味、プロバイオティクスの生存に影響を与えなかった。約121℃で15分の高温での滅菌工程(いくつかの精密ろ過ではより低い温度でもよいが)を施したメープル樹液およびメープル濃縮物でも、既述の工程すなわち、穏やかな熱処理(63℃/20分または80℃/10分)後に例えばナイロン薄膜(0.8m)上での精密ろ過工程を組み合わせた処理による、低温滅菌したメープル樹液またはメープル濃縮物の生存率と同程度の生存率で、プロバイオティクスおよびプレバイオティクスを植菌できる培地を提供できる。当然ながら、メープルシロップまたは希釈メープルシロップも、その製造方法によって無菌性であるという条件で、用いることもできる。本発明の特定の態様では、この滅菌工程の後に精密ろ過工程を行い、その滅菌工程は121℃よりも低い温度でメープル生成物の処理を伴う。
【0043】
本発明は、食品産業で使用される様々な滅菌方法の使用が期待できることに注目すべきである。本明細書にて記載する、特定の温度および時間に基づく食品処理方法は、包括的であることを意味するものではなく、むしろ、従来の食品処理方法に基づいてメープル生成物を製造してもよいことを示し、本発明者らの発見によれば、プロバイオティクスおよびプレバイオティクスが生存する培地を提供する。
【0044】
メープル生成物の糖含量は、添加したプロバイオティクスの生存率に影響を与えうる。従って、一態様で、本発明は、メープル生成物と、プロバイオティック、プレバイオティックまたはこれらの配合のうち少なくとも1つとを含む組成物であり、そのメープル生成物は1°から20°ブリックスである。他の態様では、本発明は、メープル生成物と、プロバイオティック、プレバイオティックまたはこれらの配合のうち少なくとも1つとを含む組成物であり、そのメープル生成物は1°から10°ブリックスである。他の態様では、本発明は、メープル生成物と、プロバイオティック、プレバイオティックまたはこれらの配合のうち少なくとも1つとを含む組成物であり、そのメープル生成物は1°から5°ブリックスである。研究では、種々の糖濃度(40、20、10、2°ブリックス)に希釈した66°ブリックスの純粋メープルシロップ中で、4℃にて45日経過後、プロバイオティクスは例えば1logなどの比較的安定な生存率を有することを示した。メープルマトリクスは、従って、同様に作用する、プロバイオティクスおよびプレバイオティクスの生存を保証する優れた培地を提供する。その一方、純水培地中にて4℃で貯蔵して15日経過後のマトリクスでは、生存率にかなりの減少が見られた(3〜5logの損失)。
【0045】
メープル生成物と、プロバイオティック、プレバイオティックまたはこれらの配合のうち少なくとも1つとを有し、十分な保存可能期間を有する組成物を提供することが望ましい。従って、本発明の別の態様において、メープル生成物と、プロバイオティック、プレバイオティックまたはこれらの配合のうち少なくとも1つとを有する組成物を提供し、ここで既述の組成物は4℃で少なくとも45日間の保存可能期間を有する。
【0046】
本発明の他の態様で、本発明の組成物の貯蔵期間は、本発明の組成物に冷凍工程を行うことによって増加させることができる。調査によると、プロバイオティクス(LGGおよびBb12)の2つのマトリクスの温度に対する耐性が、変化(−20℃での冷凍から4℃での解凍で)することがわかった。解凍後、マトリクス中の活性の損失は見られなかった。これは、メープル培地が、プロバイオティクスの生存を保護する役割をもつからである。本発明は、従って、温度変化にいくらかの耐性を有するように、プロバイオティクスまたはプレバイオティクスを含む生成物を保存および輸送できる手段を提供する。
【0047】
本発明の一態様で、本発明の共生組成物は最大1010cfu/mlまでのプロバイオティックおよび最大3%までのプレバイオティックを含む。一態様において、プロバイオティックおよびプレバイオティックは、組成物の2%までに相当する。組成物は、経腸栄養食品などの任意の他の物質または化合物と共に供給してもよいが、他の物質または化合物が共生組成物の有益な効果を与える能力を損なわない限りである。例えば、この組成物は、明確に上述した以外のプレバイオティクスを含んでもよく、例えばビヒダス因子(現在人乳のみから得られる)、ミネラル、ビタミン、植物化学物質、酵素、ラクトペルオキシダーゼ、チオシアン酸塩、ラクトフェリン、グルコン酸、植物化学物質、アミノ酸および/または選択したプロバイオティックの利益になるか、対象物の利益になりうる他の物質である。
【0048】
本発明に従う共生組成物は、例えば健康飲料のような、プロバイオティクスおよび/またはプレバイオティクスを含む他の生成物の機能的マトリクスとして使用してもよく、健康飲料としてはミネラル飲料、豆乳飲料、酢飲料、野菜飲料、茶、食品サプリメント含有水、および栄養飲料が挙げられる。本発明の組成物は、シャンプー、軟膏、美容クリームなどのような美容製品に用いることもできる。
【0049】
本発明の組成物は、飲料のように経口で摂取してもよい。しかしながら、組成物は錠剤、ゲル、ゲルカプセル、トローチ剤、丸薬、または粉などの他の形態で摂取してもよい。
【0050】
プロバイオティックを少なくとも部分的に保護するのに適した任意のカプセルまたは錠剤を用いることができ、カプセルまたは錠剤は胃を通過して、その結果、カプセルまたは錠剤を用いない場合よりも非常に多量のプロバイオティックを大腸に入れることができる。かような錠剤は、概して均質な組成物を有してもよいし、錠剤の様々な成分(例えばプロバイオティックおよびプレバイオティック)を個別に含有する層を含んでもよい。
【0051】
本発明の好適な実施形態を説明してきたが、本発明の範囲内での変更や改良を他に行ってもよい。本発明の範囲は、好ましい実施形態として開示する特定の例、製造工程または材料に限定されず、それよりも添付の特許請求の範囲およびその法律的均等物で規定される。
【実施例】
【0052】
(実施例1-メープル樹液の処理)
メープル樹液、メープル濃縮物、メープルシロップおよび希釈メープルシロップは、穏やかな熱処理(63℃/20分または80℃/10分)と、その後のナイロン膜(0.8m)上での精密ろ過工程と、その後の63℃での15分または30分間の処理を連続的に組み合わせた滅菌工程によって滅菌した。
【0053】
滅菌処理では約7logの内因性微生物の減少を生じ、4℃での4ヶ月の貯蔵後には内因性微生物は検出されなかった。物理化学分析によれば、開発した処理は、生成物の特性に関するごくわずかな変化しかもたらさず、全固形物のわずかな現象と、転化糖の増加とが生じたことがわかった。pHレベルの変化は見られず、前記貯蔵中にpHは6〜7の間で安定維持した。これらのわずかな変化は、生成物の完全性や味、プロバイオティクスの生存に影響を与えなかった。
【0054】
低温滅菌のこの処理は、プロバイオティクスおよびプレバイオティクスの植菌前の樹液またはメープル濃縮物に用いるべきである。
【0055】
(実施例2-プロバイオティクスで強化したメープル樹液)
ラクトバシル属(L. rhamnosus、L. acidophilusおよびL. plantarum)およびビフィドバクテリア属(B. lactis)の市販株の、メープル水で生存できる能力を試験した。これらの株は、Chris Hansen社(USA)から得て、凍結乾燥して用いた。低温滅菌(実施例1)の処理で先に滅菌した樹液に、プレバイオティクスを添加してまたは添加せずに、プロバイオティック株を(単一でまたは配合して)異なる濃度(10、10、10CFU/ml)で植菌した。
【0056】
(実施例3-プレバイオティクスで強化したメープル樹液)
プレバイオティクスでの強化の効果を測定して、実施例2のように植菌したプロバイオティクスの生存率に対するプレバイオティクスの影響を評価した。試験した市販のプレバイオティクスは、アラビノガラクタン、イヌリンおよび血清タンパク質を含む。プレバイオティックの終濃度は、血清タンパクは2.5%であり、イヌリンは2.5%であった。
【0057】
(実施例4-プレバイオティクスを添加または非添加の、プロバイロティクスで強化したメープル生成物の生存率)
シーズンの初めおよびシーズンの終わりのメープル生成物を、実施例2および実施例3のように強化し、4℃で貯蔵し、プレバイオティックを添加または非添加のプロバイオティクスの培養後、0、2、7、14、21および30日でのプロバイオティックの生存を試験した。2つのプロバイオティクス株だけが、4℃で30日後もメープル水中で生存できた。それはLactobacillus rhamnosusおよびBifidobacterium lactis Bb12である。図1に示す結果は、樹液中で最も高い生存率を示した微生物プロバイオティック株、すなわちLactobacillus rhamnosusおよびBifidobacterium lactis Bb12の評価である。図1によれば、B. Lactis Bb12は、低い初期濃度(4×10cfu/ml)で植菌したにもかかわらず、ブレバイオテックのイヌリンが有りの場合なしの場合の両方で、4℃の貯蔵で30日間生存することができることが明らかになった。30日間の貯蔵後にかなりの損失がみられ、これは植菌した生成物の特性(主に糖が2°ブリックスのメープル樹液濃縮物)を考えると例外的である。L. rhamnosusはその一部で、30日間の培養で約1logの損失があり、より低い生存率を示した。この損失にもかかわらず、検出された終濃度は比較的高く維持し、胃腸管での有益な効果を及ぼすのに十分であった。
【0058】
(実施例5-プロバイオティクスで強化したメープル生成物の物理化学的分析)
分析を行って、生成物の物理化学特性および官能内因性特性に対する、プロバイオティクスでのメープル生成物の強化の影響を測定した。行った分析は、pH(pHメーターAccumet)、全固形物(Beckman 96157 酸化ホルミウムフィルター分光光度計、屈折計Reichert AR200を用いた560nmでの透過、)、転化糖含量(Ascensia Contour Glucometer)およびメイラード反応(分光光度計Beckman96157)の測定である。
【0059】
プロバイオティクスで強化した後に全固形物の量に変化は見られなかった(樹液に対して2.3%、濃縮したメープル、メープルシロップ(66°ブリックス)、または種々の濃度で希釈したメープルシロップに対して10%)。
【0060】
樹液のpH分析では、プロバイオティクス有りまたは無しの両方で、シーズンの始めおよび終わりの樹液は中性(7)に近い値を示した。
【0061】
さらに、微生物的な許容品質を有するサンプルに対して官能分析を行った。一般的に、選択したプロバイオティック株(L. rhamnosusおよびB. lactis Bb12)の両方によるメープル生成物の強化は、生成物の官能特性および感覚特性に著しい変化をもたらすことはなかった。
【0062】
プレバイオティクスで共に強化したメープル生成物の物理化学的、官能的および感覚的な分析を評価するために行った試験は、先に提示したものと同じであった。
【0063】
共生のイヌリン、血清タンパクまたは両方の混合を含むサンプルでは、より高い濃度(樹液および濃縮メープルに対してそれぞれ4.1〜6%の間)が検出された。この増加は、単純に、これらのプレバイオティック物質でのサンプルの強化に起因する。試験の30日間、全固形物の量に変化は見られなかった。
【0064】
2%濃度でのイヌリンによる樹液の強化は、プロバイオティクスを含むまたは含まない樹液のpH(7)付近と比較してpH(4)に大きく減少することに付随して起こった。
【0065】
さらに、プレバイオティック強化樹液では、樹液中のメープル味の消失が起きた。この問題を改善するために、最終生成物中に最大2%濃度のメープルシロップの市販フレーバーを使用した。これらのフレーバーの添加によって、添加したプロバイオティック株の生存に影響を及ぼさないように、樹液の特徴的風味を再現することができた。
【0066】
低温滅菌工程の前にメープル樹液に天然または人工の香料原料を添加して、生成物に対して補助的フレーバーを提供することも好ましい。果実フレーバーは、メープル生成物を補助するために特に有利であると認められ、オレンジ、アップル、グレープフルーツ、パイナップル、ストロベリー、ラズベリー、クランベリー、ライム、レモン、グレープ、若しくはピーチのうち任意の1つまたは配合、または、バニラまたはチョコレートなどのように、飲料のリフレッシュ感を増大させる任意の他の好適なフレーバーを含んでも良い。一般的に、これらの原料は、フレーバー量、すなわち、メープル樹液の天然の味およびフレーバーを超えない量で、メープル樹液生成物に加え、これは一般的に最終生成物の約1質量%より少ない量である。
【0067】
(実施例6-共生飲料の有効性および保護効果:インビトロ研究)
胃腸の動的シミュレータ(TIM-1モデル)
動的胃腸TIM-1モデル(TNO Nutrition and Food Research Institute, Zeist, Netherlands)は、Minekusらによって以前に記載された(1995)。そのモデルは、胃、十二指腸、空腸および回腸を擬似する4つの区画からなり、それらはコンピュータ制御された蠕動バルブポンプで接続されている。各区画は、フレキシブル膜を設置した2つのガラスジャケットからなる。膜とガラスジャケットとの間の空間は温水で満たし、各区画での粥状液の温度を37℃に昇温することを促す。このフレキシブル膜の収縮は、水圧を変化させることにより行う。これらの収縮は胃や小腸の蠕動運動を擬似再現し、その結果、各区画中の粥状液を混合することができる。毎分の収縮頻度は、胃区画および十二指腸区画でそれぞれ5回および6回、空腸区画および回腸区画で7回/分である。消化中、温度は37℃で一定に保ち、胃区画および小腸区画に接続した2つの独立したセンサーでモニターする。腎臓機能を再現するため、2つの中空繊維モジュールを空腸区画および回腸区画に接続する。これらのモジュールは、小腸の電解質溶液に対して各区画の含有物を透析することができる。胃区画および小腸区画のpHは、コンピュータに接続した4つの独立したpH電極でモニターする。様々な区画でのpH制御をするための胃区画でのHClの分泌または小腸での炭酸水素ナトリウムの分泌は、コンピュータで完全に制御して投与した。
【0068】
メープル樹液サンプル作製
(実施例1のように)フィルターし低温滅菌し、(実施例3のように)2%イヌリンを添加または非添加のメープル樹液サンプルに、(実施例2のように)各々およそ10〜10cfu/mlのLactobacillus rhamnosusおよびBifidobacterium lactisを植菌した。すぐに、300gの植菌したメープル樹液サンプルをTIM-1モデルの胃区画に導入した。
【0069】
サンプル採取
消化の初めの2時間、胃区画から1mlの一定分量を0、20、40、60および80分で採取し、LactobacillusおよびBifidovacteriumの生存率に対する胃の環境の影響を評価した。十二指腸区画からの1mlの一定分量(30、60、90、120および180分で)と、空腸区画および回腸区画からの1mlの一定分量(60、120、180、240および300分で)も、同じ目的で採取した。回腸に送られたLactobacillus rhamnosusおよびBifidobacterium lactisの定量のため、1mlの回腸に送られた流出物を1時間ごとに微生物分析のために取得した。
【0070】
微生物分析
一連の10倍希釈の各サンプルをペプトン水(0.15%、w/v)で調製し、2つのBeerens agarの培養皿にまき、Bifidobacterium lactisの計数のために、大気生成システム(Oxoid AnaeroGenTM、Oxoid社、ベイジングストーク、ハンプシャー、イングランド)を用いて、ジャー内で好気的に37℃で48時間培養した。Lactobacillus rhamnosusの計数用に、各サンプルの適切なペプトン水希釈液をMRS-バンコマイシンアガー(1mg/lの濃度でバンコマイシンを含有する)の2つの培養皿にまいた。これらの培養皿は42℃で72時間好気的に培養した。
【0071】
データ解釈および結論
2%イヌリンを添加または非添加のメープル樹液サンプルのインビトロ消化中の、Bifidobacterium lactisおよびLactobacillus rhamnosusの生存率に対する胃腸環境の影響を、図2〜5に示す。図は、各微生物の生存率が胃区画(酸分泌による)および十二指腸区画(胆汁分泌による)で非常に減少したことを明らかに示す。しかしながら、このような各微生物の生存率の顕著な減少は、空腸区画と回腸区画のでは見られず、それは両区画で起こる、酸の中和および胆汁の希釈に起因する。一方で、特に、イヌリンを添加していないメープル樹液サンプル中で、Lactobacillus rhamnosusはBifidobacterium lactisよりも胆汁に感受性が高いようであった。Lactobacillus rhamnosusは十二指腸区画で検出されなかった(図3)。イヌリンは胃腸ストレスに対する各微生物の耐性を非常に向上したようであった。L. rhamnosusおよびB. lactisの生存に対するイヌリンの寄与は、Bifidobacterium lactisについての図2と図4、Lactobacillus rhamnosusについての図3と図5を比較することによっても明らかである。回腸流出物中で測定されたかような微生物の数は、イヌリンを添加していないサンプル(図2および3)よりも、イヌリンを添加したサンプル(図4および5)のほうが極めて高かった。イヌリンを添加しない場合、微生物はTIM-1中でおよそ10〜10cfuレベルで生存した。これらのcfuレベルは健康利益を発揮するのに十分ではないかもしれない。しかしながら、イヌリンの添加は、TIM-1中で微生物が10cfuに近いレベルで生存するのに寄与し、このレベルは健康利益を発揮すると当業者に知られている。従って、この生体外モデルは、健康利益を発揮するためには、10〜10cfuレベルのL. rhamnosusおよびB. lactisを植菌した樹液サンプルに、イヌリンの添加が必要であろうことを示唆する。あるいは、健康利益を発揮するために、樹液サンプルには、L. rhamnosusおよびB. lactisを10cfuよりもより高いレベルで、例えば、10以上のレベルで植菌してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)メープル樹液、メープル濃縮物、メープルシロップ、および希釈メープルシロップのうち1つ以上を含むメープル培地と、
(b)該メープル培地にあるプロバイオティック、プレバイオティックまたはプロバイオティック−プレバイオティック配合のうち少なくとも1つと、
を有する組成物であることを特徴とする、哺乳類の消化管への供給に好適な組成物。
【請求項2】
前記組成物が共生組成物であり、前記メープル培地が前記プロバイオティック、プレバイオティックまたはプロバイオティック−プレバイオティック配合と共生している、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記プレバイオティックが前記プロバイオティックに共生であり、および/または、前記プロバイオティックが前記プレバイオティックに共生である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記メープル培地中にある、前記プロバイオティック、前記プレバイオティック、または前記プロバイオティック−プレバイオティック配合は、効果的な保存可能期間を得る働きをする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物または前記組成物を含有する生成物が4℃で貯蔵される場合、前記保存可能期間が最長30日までである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記メープル培地が、前記組成物または前記組成物を含有する生成物中の前記プロバイオティック、前記プレバイオティックまたは前記プロバイオティック−プレバイオティック配合の生存を促進する働きをする、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記メープル培地の前記プロバイオティック/プレバイオティック/プロバイオティック−プレバイオティック配合に対する比率を選択して、前記組成物または前記組成物を含有する前記生成物中の前記プロバイオティック/プレバイオティック/プロバイオティック−プレバイオティック配合の生存を促進させる、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物は、プロバイオティクス、プレバイオティクスまたはプロバイオティック−プレバイオティック配合を含む飲料、食品または皮膚若しくは毛髪に応用するための調製物のための機能的マトリクスを提供する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記飲料は健康飲料、ミネラル飲料、豆乳飲料、酢飲料、野菜飲料、茶、食品サプリメント含有水または栄養飲料からなる、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物は、哺乳類による、錠剤、ゲル、ゲルカプセル、トローチ剤、丸薬、または粉としての摂取用に処方される、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
哺乳類の消化管への供給に好適な組成物の製造方法であって、前記組成物はプロバイオティック、プレバイオティックまたはプロバイオティック−プレバイオティック配合のうち少なくとも1つを含み、前記製造方法が、
(a)メープル樹液、メープル濃縮物、メープルシロップおよび希釈メープルシロップのうち1つ以上を含む滅菌されたメープル培地を供給する工程または該メープル培地を滅菌する工程と、
(b)前記メープル培地に、プロバイオティック、プレバイオティックまたはプロバイオティック−プレバイオティック配合のうち少なくとも1つを植菌し、前記メープル培地が前記プロバイオティック、プレバイオティックまたはプロバイオティック−プレバイオティックの生存用の保護マトリクスとして働く工程と、
を含むことを特徴とする、哺乳類の消化管への供給に好適な組成物の製造方法。
【請求項12】
前記メープル培地の前記プロバイオティック/プレバイオティック/プロバイオティック−プレバイオティック配合に対する比率を選択して、前記組成物または前記組成物を含有する生成物中の前記プロバイオティック/プレバイオティック/プロバイオティック−プレバイオティック配合の生存を促進させる、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記滅菌が、前記メープル培地の内因性栄養性化合物を変化させないまたは最小限しか変化させないように行う、請求項11に記載の製造方法。
【請求項14】
前記滅菌が、高温工程および随意に更なる精密ろ過を含む食品滅菌方法を含む、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記方法が、前記メープル生成物を1つ以上の他の滅菌溶媒で希釈する更なる工程を有し、または該メープル生成物/溶媒溶液を滅菌する更なる工程を随意に有する、請求項11に記載の製造方法。
【請求項16】
前記組成物が最大1010cfu/mlまでの前記プロバイオティックおよび最大3%までの前記プレバイオティックを含む、請求項12に記載の製造方法。
【請求項17】
前記組成物中に、前記プロバイオティックおよびプレバイオティックが前記組成物の最大2%まで存在する、請求項12に記載の製造方法。
【請求項18】
前記方法が、前記組成物を1つ以上の他の生成物と混合して、プロバイオティクス、プレバイオティクスまたはプロバイオティック−プレバイオティック配合を含む飲料、食品または皮膚もしくは毛髪に応用するための調製物を作製する更なる工程を含む、請求項11に記載の製造方法。
【請求項19】
前記メープル生成物が、前記組成物または前記組成物を含有する生成物中の前記プロバイオティック、プレバイオティック、またはプロバイオティック−プレバイオティック配合の生存の促進に効果的な、水に対する糖の質量比を有する、請求項11に記載の製造方法。
【請求項20】
前記メープル生成物は水に対する糖の質量比が1°から66°ブリックスのメープル溶液である、請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
プロバイオティック、プレバイオティックまたはプロバイオティック−プレバイオティック配合を哺乳類の消化管に供給する方法であって、
(a)飲料または食料を哺乳類が摂取し、または哺乳類による摂取を開始する工程を有し、該飲料または食料は、メープル樹液、メープル濃縮物、メープルシロップ、および希釈メープルシロップのうち1つ以上を含むメープル培地と、該メープル培地にあるプロバイオティック、プレバイオティックまたはプロバイオティック−プレバイオティック配合のうち少なくとも1つと、からなる、該プロバイオティック、プレバイオティックまたはプロバイオティック−プレバイオティック配合のための機能的マトリクスを含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−519659(P2012−519659A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552291(P2011−552291)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【国際出願番号】PCT/CA2010/000308
【国際公開番号】WO2010/099617
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(511216569)
【氏名又は名称原語表記】FEDERATION DES PRODUCTEURS ACERICOLES DU QUEBEC
【Fターム(参考)】