説明

内燃機関のオイル浄化装置

【課題】フィルターの劣化を抑制することが可能な内燃機関のオイル浄化装置を提供すること。
【解決手段】本発明は、エンジンオイルが循環する循環油路26に配置され、エンジンオイルを浄化する機能を有すると共に、流入するエンジンオイルの油温に応じて浄化効率が変化するフィルター32と、フィルター32に流入するエンジンオイルの油温が、フィルター32が所定の浄化効率を発揮できる温度範囲内になるように、フィルター32に向かうエンジンオイルの流れを変更する第1バルブ36と、を備えることを特徴とする内燃機関のオイル浄化装置24である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のオイル浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジンの潤滑および冷却にはエンジンオイルが用いられている。エンジンオイルは、例えばエンジンの下部に設けられたオイルパンに貯留され、オイルポンプによってエンジン各部に供給される。エンジン各部を循環したエンジンオイルは、オイルパン内に滴下する。オイルパン内に滴下したエンジンオイルは、再度オイルポンプによってエンジン各部に循環される。この間、エンジンオイルはエンジン各部から熱を受け取って各部を冷却する。また、エンジンオイルは、エンジン各部で油膜を形成して各部品間の潤滑を促進すると共に、部品の酸化を防止するなどの役目もある。
【0003】
エンジン各部を循環したエンジンオイルには不純物が混入する。この不純物を取り除くために、エンジンオイルが流れる油路にオイルフィルターを設けている。例えば、オイルフィルター内にイオン交換樹脂などのフィルターを配置し、エンジンオイルがオイルフィルターを通過する際に、イオン交換樹脂に結合していた添加剤がエンジンオイル中に放出されることで、エンジンオイルの劣化を抑制する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−540123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
イオン交換樹脂などのフィルターの浄化効率は、フィルターを流れるエンジンオイルの油温により変化する。エンジンオイルの油温はエンジンの状態に応じて低温から高温まで変動する。このため、フィルターの浄化効率が十分でない状態においても、エンジンオイルがフィルターを流れてしまい、フィルターに初期付着していたイオン等がエンジンオイルに流出してしまうことでフィルターの寿命が早まる場合がある。
【0006】
また、エンジンオイルの油温が、フィルターの耐熱限界温度以上の高温になる場合がある。このような高温のエンジンオイルがフィルターを流れると、フィルターが破壊され、性能劣化を引き起こす場合がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、フィルターの劣化を抑制することが可能な内燃機関のオイル浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、エンジンオイルが循環する循環油路に配置され、前記エンジンオイルを浄化する機能を有すると共に、流入する前記エンジンオイルの油温に応じて浄化効率が変化するフィルターと、前記フィルターに流入する前記エンジンオイルの油温が、前記フィルターが所定の前記浄化効率を発揮できる温度範囲内になるように、前記フィルターに向かう前記エンジンオイルの流れを変更する第1バルブと、を備えることを特徴とする内燃機関のオイル浄化装置によって達成できる。これによれば、フィルターの劣化を抑制できる。
【0009】
上記構成において、前記循環油路に設けられたオイルクーラよりも下流側且つエンジン各部よりも上流側で前記循環油路に接続し、前記オイルクーラを通過し且つエンジン各部を流れる前の前記エンジンオイルが、前記フィルターが設けられたオイルパンに流入できるようにする第1油路を有し、前記第1バルブは、前記エンジンオイルの油温が、前記フィルターが前記所定の浄化効率を発揮できる温度範囲を外れた場合に、前記オイルクーラを通過し且つ前記エンジン各部を流れる前の前記エンジンオイルが前記オイルパンに流入する弁状態になる構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記第1バルブを制御する制御部を有し、前記制御部は、前記オイルパン内の前記エンジンオイルの油温が、前記フィルターが前記所定の浄化効率を発揮できる温度範囲を外れた場合に、前記第1バルブを、前記オイルクーラを通過し且つ前記エンジン各部を流れる前の前記エンジンオイルが前記オイルパンに流入する弁状態にする構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記第1バルブは、前記エンジンオイルの油圧に応じて開閉するリリーフバルブである構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記循環油路に分岐部で分岐し、前記分岐部よりも下流側の合流部で前記循環油路に合流すると共に、前記フィルターが設けられた第2油路を有し、前記第1バルブは、前記エンジンオイルの油温が、前記フィルターが前記所定の浄化効率を発揮できる温度範囲を外れた場合に、前記エンジンオイルが前記第2油路に設けられた前記フィルターに流入しない弁状態になる構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記第1バルブは、サーモスタットである構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記フィルターをバイパスする第3油路と、前記エンジンオイルが、前記フィルターが設けられた前記第2油路側を流れるか前記第3油路側を流れるかの切替えをする第2バルブと、前記第1バルブと前記第2バルブとを制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記エンジンオイルの油温が、前記フィルターが前記所定の浄化効率を発揮できる温度範囲を外れた場合に、前記第1バルブを、前記エンジンオイルが前記第2油路に流入しない弁状態にすると共に、前記第2バルブを、前記エンジンオイルが前記第3油路に流入し、前記フィルターが設けられた前記第2油路に流入しない弁状態にする構成とすることができる。この構成によれば、第1バルブが壊れた場合であっても、エンジンオイルの循環を滞らせることなく、且つ低高温のエンジンオイルがフィルターを流れることを抑制できる。
【0015】
上記構成において、前記フィルターは筒形状をしていて、前記エンジンオイルは前記筒形状の中央の空洞部に流入する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、フィルターの劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、実施例1に係るオイル浄化装置を含むエンジンの概略構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、ECUの制御を示すフローチャートである。
【図3】図3は、フィルターを流れるエンジンオイルの油温と浄化機能の効率との関係を示す模式図である。
【図4】図4(a)は、ECUの制御を示す図であり、図4(b)は、ECUの制御によるオイルパン内のエンジンオイルの油温の変化を示す図である。
【図5】図5は、第1油路とフィルターとの位置関係を示す図である。
【図6】図6は、実施例2に係るオイル浄化装置を含むエンジンの概略構成を示すブロック図である。
【図7】図7は、エンジンの回転数とエンジンオイルの油圧との関係を示す図である。
【図8】図8は、サーモスタットである第1バルブについて説明する図である。
【図9】図9は、高温用サーモスタットと低温用サーモスタットとの開閉について説明する図である。
【図10】図10は、実施例4に係るオイル浄化装置が備わるエンジンの概略構成を説明するブロック図である。
【図11】図11は、エンジンオイルが低温から高温に変化する場合の、第1バルブから第3バルブの弁状態を説明するフローチャートである。
【図12】図12(a)は、エンジンオイルが低温から高温に変化する場合の、循環油路、第2油路、および第3油路でのエンジンオイルの油温を示し、図12(b)は、循環油路、第2油路、および第3油路を流れるエンジンオイルの流量を示す図である。
【図13】図13は、エンジンオイルが高温から低温に変化する場合の、第1バルブから第3バルブの弁状態を説明するフローチャートである。
【図14】図14(a)は、エンジンオイルが高温から低温に変化する場合の、循環油路、第2油路、および第3油路でのエンジンオイルの油温を示し、図14(b)は、循環油路、第2油路、および第3油路を流れるエンジンオイルの流量を示す図である。
【図15】図15(a)は、フィルターの斜視図であり、図15(b)は、断面図である。
【図16】図16は、実施例4の変形例1に係るオイル浄化装置が備わるエンジンの概略構成を示すブロック図である。
【図17】図17は、エンジンオイルが低温から高温に変化する場合の、ECUの制御を示すフローチャートである。
【図18】図18は、エンジンオイルが高温から低温に変化する場合の、ECUの制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明に係る実施例について説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は、実施例1に係るオイル浄化装置を含むエンジンの概略構成を示すブロック図である。図1のように、エンジン10は、オイルパン12と、オイルポンプ14と、オイルクーラ16と、ピストンやクランクシャフトなどのエンジン各部18と、ラジエータ20と、ウォータポンプ22と、オイル浄化装置24と、エンジンオイルが循環する循環油路26と、冷却水が流れる水路28と、を有する。
【0020】
オイルパン12内にはオイルストレーナ30の吸入口が配置されている。オイルストレーナ30は、金属製の網であり、エンジンオイル中の大きな異物を取り除く作用をする。オイルパン12内に貯留されたエンジンオイルは、オイルポンプ14が駆動されることにより、循環油路26を通って、オイルクーラ16を通過した後、エンジン各部18に供給される。エンジン各部18に供給されたエンジンオイルは、エンジン各部18を循環した後、オイルパン12に戻る。このように、オイルパン12も循環油路26の一態様である。
【0021】
エンジン各部18の冷却のために冷却水が流れている。エンジン各部18を循環して高温となった冷却水は、水路28を通って、ラジエータ20に送られる。高温の冷却水はラジエータ20で冷やされ、冷やされた冷却水は、ウォータポンプ22が駆動されることにより、水路28を通って、オイルクーラ16を通過した後、またはオイルクーラ16を通過せずに、エンジン各部18に供給される。
【0022】
オイルクーラ16は、エンジンオイルと冷却水との間での熱交換により、例えばエンジンオイルを冷却させる働きをする。即ち、高温のエンジンオイルがオイルクーラ16に送られると、ラジエータ20から送られてきた冷却水との間で熱交換がなされてエンジンオイルが冷やされ、冷やされたエンジンオイルがエンジン各部18に供給されるようになる。
【0023】
エンジンオイルも冷却水もエンジン各部18に供給されることから、エンジン各部18から戻ったオイルパン12内のエンジンオイルの油温To1と、エンジン各部18の出口での冷却水の水温Tw1とは、同じような温度変化の軌跡となる。つまり、オイルパン12内のエンジンオイルの油温To1とエンジン各部18の出口での冷却水の水温Tw1とには相関がある。このため、エンジン各部18の出口での冷却水の水温Tw1を測定することで、オイルパン12内のエンジンオイルの油温To1を求めることができる。
【0024】
エンジン10の冷間始動時などでは、オイルパン12内のエンジンオイルの油温To1もエンジン各部18の出口での冷却水の水温Tw1も低温である。この場合、オイルクーラ16の入り口でのエンジンオイルの油温To2は、オイルクーラ16の入り口での冷却水の水温Tw2よりも低くなる。よって、オイルクーラ16でのエンジンオイルと冷却水との間の熱交換により、オイルクーラ16を通過したエンジンオイルの油温To3は、オイルクーラ16の入り口でのエンジンオイルの油温To2よりも高くなる。
【0025】
一方、エンジン10が高負荷にある場合等では、オイルパン12内のエンジンオイルの油温To1もエンジン各部18の出口での冷却水の水温Tw1も高温となる。冷却水は、ラジエータ20を通ることで冷やされるため、オイルクーラ16の入り口での冷却水の水温Tw2は、オイルクーラ16の入り口でのエンジンオイルの油温To2よりも低くなる。よって、オイルクーラ16でのエンジンオイルと冷却水との間の熱交換により、オイルクーラ16を通過したエンジンオイルの油温To3は、オイルクーラ16の入り口でのエンジンオイルの油温To2よりも低くなる。
【0026】
このように、オイルパン12内のエンジンオイルの油温To1が低温の場合は、オイルクーラ16でエンジンオイルが温められ、オイルクーラ16を通過したエンジンオイルの油温To3は、オイルパン12内のエンジンオイルの油温To1よりも高くなる。一方、オイルパン12内のエンジンオイルの油温To1が高温の場合は、オイルクーラ16でエンジンオイルが冷やされ、オイルクーラ16を通過したエンジンオイルの油温To3は、オイルパン12内のエンジンオイルの油温To1よりも低くなる。
【0027】
オイル浄化装置24は、オイルを浄化する機能を有するフィルター32と、第1油路34と、例えば電磁弁である第1バルブ36と、第1バルブ36を制御する制御部であるECU38と、を有する。フィルター32は、オイルパン12内に設けられていて、例えばイオン交換樹脂や無機イオン交換樹脂などのイオン交換体を有する。フィルター32がオイルパン12内に設けられていることで、フィルター32を常にエンジンオイルで満たすことができ、また、フィルター32を交換する際に、循環油路26にフィルター32が設置されている場合に比べて、容易に交換が可能となり、圧損にもならない。第1油路34は、一端がオイルクーラ16よりも下流側且つエンジン各部18よりも上流側で循環油路26に接続し、他端はフィルター32周辺のオイルパン12に配置されている。これにより、オイルクーラ16を通過し且つエンジン各部18を流れる前のエンジンオイルが、第1油路34を通ってフィルター32周辺のオイルパン12に流入することが可能となる。第1バルブ36は、ECU38による制御の下、オイルクーラ16を通過し且つエンジン各部18を流れる前のエンジンオイルが、第1油路34を通ってオイルパン12に流入するかどうか、エンジンオイルの流れを変更する。
【0028】
次に、ECU38の制御について説明する。ECU38の制御は、CPUなどのハードウエアとROMなどに記憶されたソフトウェアとの協働によって実行される。図2は、ECU38の制御を示すフローチャートである。図2のように、ECU38は、エンジン10が始動すると(ステップS10)、エンジン各部18の出口での冷却水の水温Tw1を測定し、冷却水の水温Tw1が第1所定温度以上であって、第2所定温度以下であるかを判断する(ステップS12)。
【0029】
ここで、第1所定温度および第2所定温度について説明する。図3は、フィルター32に流入するエンジンオイルの油温と浄化効率との関係を示す模式図である。図3のように、浄化効率は、エンジンオイルの油温に対して一定ではなく、エンジンオイルの油温に応じて変化する。例えば、エンジンオイルが低温では低効率となり、エンジンオイルがある温度のときに、浄化効率はピークとなる。また、フィルター32は耐熱限界温度Tzを有しており、例えばフィルター32として、三菱化学株式会社製のダイヤイオン(登録商標)、製品名WA30を用いた場合、耐熱限界温度Tzは100℃である。フィルター32は、上記以外にも、三菱化学株式会社製のダイヤイオン(登録商標)、製品名WA20、WA21J、WA40C、WK10、WK10Sなどを用いることができる。耐熱限界温度Tzを超えると、フィルター32は破壊され、性能劣化を生じる。
【0030】
例えば浄化効率がα%以上の場合を、所定の浄化効率が発揮できる状態(高効率状態)であるとすると、浄化効率をα%以上にするには、エンジンオイルの油温を適正温度範囲X以内とする必要がある。つまり、適正温度範囲Xの下限温度をTa、上限温度をTbとすると、エンジンオイルの油温を下限温度Ta以上かつ上限温度Tb以下とする必要がある。言い換えると、エンジンオイルの油温が下限温度Taよりも低い場合、および上限温度Tbよりも高い場合は、浄化効率がα%より小さくなり、低効率状態となってしまう。
【0031】
フィルター32はオイルパン12内に設けられていることから、浄化効率を高効率にするには、オイルパン12内のエンジンオイルの油温To1を、下限温度Ta以上かつ上限温度Tb以下とすればよい。前述したように、オイルパン12内のエンジンオイルの油温To1とエンジン各部18の出口での冷却水の水温Tw1とには相関がある。このため、オイルパン12内のエンジンオイルの油温To1が下限温度Ta、上限温度Tbとなる場合を、エンジン各部18の出口での冷却水の水温Tw1で定めることができる。オイルパン12内のエンジンオイルの油温To1が下限温度Taとなる場合のエンジン各部18の出口での冷却水の水温Tw1を第1所定温度とする。また、オイルパン12内のエンジンオイルの油温To1が上限温度Tbとなる場合のエンジン各部18の出口での冷却水の水温Tw1を第2所定温度とする。
【0032】
したがって、エンジン各部18の出口での冷却水の水温Tw1が、第1所定温度以上であって、第2所定温度以下の場合は、オイルパン12内のエンジンオイルの油温To1は、フィルター32が所定の浄化効率を発揮できる適正温度範囲X内にあることとなる。言い換えると、エンジン各部18の出口での冷却水の水温Tw1が、第1所定温度より低い場合、および第2所定温度よりも高い場合は、オイルパン12内のエンジンオイルの油温To1は、フィルター32が所定の浄化効率を発揮できる適正温度範囲Xを外れた温度域にあることとなる。
【0033】
図2に戻り、エンジン各部18の出口での冷却水の水温Tw1が、第1所定温度以上かつ第2所定温度以下でない場合(ステップS12でNoの場合)、ECU38は、第1バルブ36を開弁する(ステップS14)。これにより、オイルクーラ16を通過し且つエンジン各部18を流れる前のエンジンオイルが、第1油路34を通って、フィルター32周辺のオイルパン12に流入するようになる。
【0034】
エンジン各部18の出口での冷却水の水温Tw1が第1所定温度よりも低い場合は、オイルパン12内のエンジンオイルの油温To1は下限温度Taより低い状態にある。エンジン10の冷間始動時など、オイルパン12内のエンジンオイルの油温To1が低温の場合は、前述したように、オイルクーラ16の出口でのエンジンオイルの油温To3は、オイルパン12内のエンジンオイルの油温To1よりも高くなる。このため、エンジン各部18の出口での冷却水の水温Tw1が第1所定温度よりも低い場合に第1バルブ36を開弁することで、オイルクーラ16で温められたエンジンオイルをフィルター32周辺のオイルパン12に流入させることができる。これにより、フィルター32に流入するエンジンオイルの油温が、フィルター32が所定の浄化効率を発揮できる適正温度範囲X内となることを促進させることができる。
【0035】
一方、エンジン各部18の出口での冷却水の水温Tw1が第2所定温度よりも高い場合は、オイルパン12内のエンジンオイルの油温To1は上限温度Tbより高い状態にある。オイルパン12内のエンジンオイルの油温To1が高温の場合は、前述したように、オイルクーラ16の出口でのエンジンオイルの油温To3は、オイルパン12内のエンジンオイルの油温To1よりも低くなる。このため、エンジン各部18の出口での冷却水の水温Tw1が第2所定温度よりも高い場合に第1バルブ36を開弁することで、オイルクーラ16で冷やされたエンジンオイルをフィルター32周辺のオイルパン12に流入させることができる。これにより、フィルター32に流入するエンジンオイルの油温が、フィルター32が所定の浄化効率を発揮できる適正温度範囲X内となることを促進させることができる。
【0036】
次いで、ECU38は、エンジン各部18の出口での冷却水の水温Tw1が、第1所定温度以上かつ第2所定温度以下になったかを判断する(ステップS16)。エンジン各部18の出口での冷却水の水温Tw1が、第1所定温度以上かつ第2所定温度以下の場合(ステップS12およびステップS16でYesの場合)、ECU38は、第1バルブ36を閉弁する(ステップS18)。これにより、オイルクーラ16を通過し且つエンジン各部18を流れる前のエンジンオイルが、第1油路34を通ってオイルパン12に流入することはなくなる。
【0037】
次いで、ECU38は、エンジン各部18の出口での冷却水の水温Tw1が、第2所定温度より高くなったかを判断する(ステップS20)。第2所定温度よりも高くなったと判断した場合(Yesの場合)、ECU38は、第1バルブ36を開弁する(ステップS22)。これにより、前述したように、オイルクーラ16で冷やされたエンジンオイルが、フィルター32周辺のオイルパン12に流入する。
【0038】
次いで、ECU38は、エンジン各部18の出口での冷却水の水温Tw1が、第2所定温度以下になったかを判断し(ステップS24)、第2所定温度以下になったと判断した場合(Yesの場合)、第1バルブ36を閉弁する(ステップS26)。
【0039】
図4(a)は、ECU38の制御を示す図である。図4(b)は、ECU38の制御によるオイルパン12内のエンジンオイルの油温To1の変化を示す図である。図4(a)のように、エンジン各部18の出口での冷却水の水温Tw1が第1所定温度よりも低い場合、ECU38は第1バルブ36を開弁する。これにより、図4(b)のように、エンジンオイルの油温To1が、下限温度Ta以上であって上限温度Tb以下になることを促進させることができる。図4(a)のように、冷却水の水温Tw1が第1所定温度以上かつ第2所定温度以下になった場合、ECU38は第1バルブ36を閉弁する。これは、オイルパン12内の油温To1が適正温度範囲X内となっているため第1バルブ36を開弁する必要はなく、また、第1バルブ36を閉弁して、エンジン各部18に供給されるエンジンオイルの油量を増やすためである。その後、冷却水の水温Tw1が第2所定温度よりも高くなった場合、ECU38は第1バルブ36を開弁する。これにより、図4(b)のように、エンジンオイルの油温To1が、下限温度Ta以上であって上限温度Tb以下になることを促進させることができる。
【0040】
実施例1によれば、図1に示すように、オイルクーラ16よりも下流側且つエンジン各部18よりも上流側で循環油路26に接続し、オイルクーラ16を通過し且つエンジン各部18を流れる前のエンジンオイルがフィルター32周辺のオイルパン12に流入できるように第1油路34が設けられている。そして、ECU38は、オイルパン12内のエンジンオイルの油温To1が、フィルター32が所定の浄化効率を発揮できる適正温度範囲Xを外れた場合(下限温度Taより低い場合または上限温度Tbより高い場合)に、オイルクーラ16を通過し且つエンジン各部18を流れる前のエンジンオイルがフィルター32周辺のオイルパン12に流入するように、第1バルブ36を開弁状態にする。つまり、オイルパン12内に設けられたフィルター32に流入するエンジンオイルの油温が、フィルター32が所定の浄化効率が発揮できる適正温度範囲X内になるように、フィルター32に向かうエンジンオイルの流れを変更する。これにより、フィルター32が所定の浄化効率を発揮できる適正温度範囲Xを外れた油温のエンジンオイルが、フィルター32を流れることを抑制できる。よって、フィルター32に初期付着したイオン等が、無駄にエンジンオイルに流出することを抑制できる。
【0041】
また、実施例1によれば、図3に示すように、フィルター32の浄化効率α%を適正に設定することで、浄化効率がα%以上となるエンジンオイルの油温の上限温度Tbは、フィルター32の耐熱限界温度Tzよりも低くなる。したがって、実施例1に示す制御を行なうことで、フィルター32を流れるエンジンオイルの油温が耐熱限界温度Tzよりも高くなることを抑制できる。したがって、高温のエンジンオイルがフィルター32を流れることによるフィルター32の破壊、特性劣化を抑制できる。
【0042】
図5は、第1油路34とフィルター32との位置関係を示す図である。図5のように、フィルター32は、中央に空洞部40を有する筒形状をしている。第1油路34の端部は空洞部40に位置し、第1油路34を流れてきたエンジンオイルは空洞部40に流入する。これにより、オイルクーラ16を通過したエンジンオイルが、より直接的にフィルター32に流入することが可能となる。また、第1油路34からエンジンオイルは放射状に噴出する。エンジンオイルが放射状に噴出することで、フィルター32全体をエンジンオイルが定期的に流れることになり、フィルター32の目詰まりを抑制できる。
【0043】
実施例1では、ECU38は、オイルパン12内のエンジンオイルの油温To1と相関があるエンジン各部18から排出された冷却水の水温Tw1に基づいて、第1バルブ36の制御をしたが、これに限られる訳ではない。ECU38は、オイルパン12内のエンジンオイルの油温To1に基づいて第1バルブ36を制御することができれば、その他のパラメータによって第1バルブ36を制御してもよい。
【実施例2】
【0044】
図6は、実施例2に係るオイル浄化装置を含むエンジンの概略構成を示すブロック図である。図6のように、オイル浄化装置24は、フィルター32と、第1油路34と、油圧に応じて開閉する例えばリリーフバルブである第1バルブ36と、を有する。第1バルブ36は、循環油路26を流れるエンジンオイルの油圧に応じて自動的に開閉がなされる。その他の構成については、実施例1と同じであり、図1に示しているため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0045】
図7は、エンジンの回転数とエンジンオイルの油圧との関係を示す図である。図7のように、エンジンオイルの油温が、0℃、20℃、40℃、50℃のいずれの場合であっても、エンジンの回転数が増加するに連れて、エンジンオイルの油圧は上昇する。また、エンジンオイルが低温であるほど、エンジンの回転数が一定の場合に、エンジンオイルの油圧は高くなる。また、エンジンの回転数が高回転となりエンジンオイルが高温となった場合でも、エンジンオイルの油圧は高い状態になる。これらのことから、エンジンオイルの油温To1が低温である場合は、循環油路26を流れるエンジンオイルの油圧は高い状態にある。また、エンジンの回転数が高回転となりエンジンオイルの油温To1が高温となった場合でも、循環油路26を流れるエンジンオイルの油圧は高い状態にある。
【0046】
よって、第1バルブ36の開弁油圧の設定値に応じて、エンジンオイルの油温To1が低温の場合と高温の場合とで、オイルクーラ16を通過し且つエンジン各部18を流れる前のエンジンオイルをフィルター32周辺のオイルパン12に流入させることが可能となる。つまり、第1バルブ36が開弁する油圧を、フィルター32が所定の浄化効率を発揮できる適正温度範囲Xに基づいて適切に設定することで、フィルター32に流入するエンジンオイルの油温を、フィルター32が所定の浄化効率を発揮できる適正温度範囲X内になるように、フィルター32に向かうエンジンオイルの流れを変更することができる。
【0047】
実施例2では、第1バルブ36は、エンジンオイルの油圧に応じて開閉するリリーフバルブである場合を説明したが、この場合であっても、オイルパン12内に設けられたフィルター32に流入するエンジンオイルの油温が、フィルター32が所定の浄化効率が発揮できる適正温度範囲X内になることを促進できる。よって、フィルター32が所定の浄化効率を発揮できる適正温度範囲Xを外れた油温のエンジンオイルが、フィルター32を流れることを抑制できると共に、高温のエンジンオイルがフィルター32を流れることによるフィルター32の破壊、特性劣化を抑制できる。
【0048】
なお、エンジンが高回転の場合には、エンジンオイルの油温が適正温度範囲X内であっても、エンジンオイルの油圧が高くなり、第1バルブ36が開弁する場合がある。この場合であっても、エンジンが高回転の場合にはエンジンオイルの油温は上昇する傾向にあるため、第1バルブ36が開弁することで、オイルクーラ16で冷やされたエンジンオイルをオイルパン12内に流入させることができ、フィルター32に流入するエンジンオイルの油温が、フィルター32が所定の浄化効率を発揮できる適正温度範囲X内になることを促進できる。
【0049】
また、一般的なオイルポンプは、エンジンオイルの油圧が上がり過ぎるのを抑制するために、油圧をコントロールするためのリリーフバルブを備えている。例えばエンジンオイルが低温の場合には油圧が高いことから、リリーフバルブにより油圧の上昇を抑制している。このように、一般的なオイルポンプでは、エンジンオイルが低温の場合に、オイルポンプのなした仕事を一部無駄にしている。しかしながら、実施例2のように、第1バルブ36をリリーフバルブとすることで、オイルポンプ14内にリリーフバルブを設けることなく、エンジンオイルの油圧の上昇を抑制できると共に、リリーフしたエンジンオイルは、フィルター32周辺のオイルパン12に流入させて、フィルター32に流入するエンジンオイルの温度を適正温度範囲X内となるようにしているため、オイルポンプのなした仕事が無駄になることを抑制できる。
【実施例3】
【0050】
実施例3に係るオイル浄化装置は、第1バルブ36をサーモスタットとする場合の例である。第1バルブ36をサーモスタットとする以外は、実施例2と同じであり、図6に示しているため、ここでは説明を省略する。
【0051】
図8は、サーモスタットである第1バルブ36について説明する図である。図8のように、第1バルブ36は、高温用サーモスタット46と低温用サーモスタット48とを有する。高温用サーモスタット46と低温用サーモスタット48とはサーモ感温部50を有し、サーモ感温部50の上方に、循環油路26から分岐した分岐油路52が配置されている。これにより、オイルクーラ16を通過したエンジンオイルの油温To3を、サーモ感温部50で感温することができ、オイルクーラ16を通過したエンジンオイルの油温To3に基づき、高温用サーモスタット46と低温用サーモスタット48とは開閉する。
【0052】
高温用サーモスタット46と低温用サーモスタット48とのワックス溶解温度を選択することで、高温用サーモスタット46と低温用サーモスタット48とは夫々、所望の温度で開くように設定することができる。例えば、高温用サーモスタット46は、オイルクーラ16を通過したエンジンオイルの油温To3が、上限温度Tbに基づいて定められた温度Tdより高い温度で開くように設定されている。低温用サーモスタット48は、オイルクーラ16を通過したエンジンオイルの油温To3が、下限温度Taに基づいて定められた温度Tcより低い温度で開くように設定されている。
【0053】
図9は、高温用サーモスタット46と低温用サーモスタット48との開閉について説明する図である。図9のように、オイルクーラ16を通過したエンジンオイルの油温To3が温度Tcより低い場合、低温用サーモスタット48は開弁し、オイルクーラ16で温められたエンジンオイルがフィルター32周辺のオイルパン12に流入する。オイルクーラ16を通過したエンジンオイルの油温To3が温度Tc以上かつ温度Td以下である場合は、高温用サーモスタット46と低温用サーモスタット48とは共に閉弁し、オイルクーラ16を通過し且つエンジン各部18を流れる前のエンジンオイルはオイルパン12に流入しない。オイルクーラ16を通過したエンジンオイルの油温To3が温度Tdよりも高くなると、高温用サーモスタット46は開弁し、オイルクーラ16で冷やされたエンジンオイルがフィルター32周辺のオイルパン12に流入する。
【0054】
このように、実施例3では、第1バルブ36は、オイルクーラ16を通過したエンジンオイルの温度To3に基づき開閉するサーモスタットである。これによっても、オイルパン12内に設けられたフィルター32に流入するエンジンオイルの油温が、フィルター32が所定の浄化効率が発揮できる適正温度範囲X内になることを促進できる。よって、フィルター32が所定の浄化効率を発揮できる適正温度範囲Xを外れた油温のエンジンオイルが、フィルター32を流れることを抑制できると共に、高温のエンジンオイルがフィルター32を流れることによるフィルター32の破壊、特性劣化を抑制できる。また、第1バルブ36をサーモスタットとすることで、電磁弁とした実施例1や、リリーフバルブとした実施例2に比べて、コスト面で優れる。
【実施例4】
【0055】
図10は、実施例4に係るオイル浄化装置が備わるエンジンの概略構成を説明するブロック図である。図10のように、エンジン10は、オイルパン12と、オイルポンプ14と、オイルフィルター54と、ピストンやクランクシャフトなどのエンジン各部18と、オイル浄化装置24と、エンジンオイルが流れる循環油路26と、を有する。
【0056】
オイルパン12内にはオイルストレーナ30の吸入口が配置されている。オイルパン12内に貯留されたエンジンオイルは、オイルポンプ14が駆動されることにより、循環油路26を通って、オイルフィルター54および/またはオイル浄化装置24とを通過した後、エンジン各部18に供給される。エンジン各部18に供給されたエンジンオイルは、エンジン各部18を循環した後、オイルパン12に戻る。
【0057】
オイルフィルター54は、不織布などのろ紙が何層にも重ねられ折り畳まれていて、エンジンオイル内の金属粉や汚れなどを取り除く作用をする。
【0058】
オイル浄化装置24は、第2油路60と、第3油路64と、フィルター32と、第1バルブ36と、第2バルブ70と、第3バルブ72と、を有する。第2油路60は、分岐部56で循環油路26から分岐し、分岐部56よりも下流側の合流部62で循環油路26に合流する。ここで、分岐部56から合流部62の間の循環油路26を、循環油路26aと表すこととする。フィルター32は、第2油路60に設けられている。第3油路64は、フィルター32をバイパスするように設けられていて、第1接続部66および第2接続部68で第2油路60に接続する。第1接続部66は、第2接続部68に対して上流側に位置する。
【0059】
第1バルブ36、第2バルブ70、および第3バルブ72は、例えばサーモスタットであり、流れるエンジンオイルの油温に応じて自動的に開閉がなされる。第1バルブ36は、分岐部56に設けられている。第2バルブ70は、第1接続部66に設けられている。第3バルブ72は、フィルター32よりも下流側であって、第2接続部68よりも上流側の第3油路60に設けられている。なお、第1バルブ36は、合流部62に設けられている場合でもよい。
【0060】
以下において、第1バルブ36の開閉状態をa1からa3を用いて説明することとする。例えば、第1バルブ36がa1−a2開弁、a1−a3閉弁である場合は、エンジンオイルは循環油路26a側に流れる。a1−a2閉弁、a1−a3開弁である場合は、エンジンオイルは第2油路60側に流れる。a1−a2およびa1−a3半開弁である場合は、エンジンオイルは循環油路26a側と第2油路60側との両方に流れる。
【0061】
同様に、第2バルブ70の開閉状態をb1からb3を用いて説明することとする。例えば、第2バルブ70がb1−b2開弁、b1−b3閉弁である場合は、エンジンオイルは第3油路64側に流れる。b1−b2閉弁、b1−b3開弁である場合は、エンジンオイルはフィルター32が設けられた第2油路60側に流れる。
【0062】
同様に、第3バルブ72の開閉状態をc1およびc2を用いて説明することとする。例えば、第3バルブ72がc1−c2開弁である場合は、エンジンオイルは第2油路60を流れ、c1−c2閉弁である場合は、エンジンオイルは第2油路60を流れない。
【0063】
図11は、エンジンオイルが低温から高温に変化する場合の、第1バルブ36から第3バルブ72の弁状態を説明するフローチャートである。図11のように、エンジンオイルの油温が、適正温度範囲Xの下限温度Taより補正量xだけ高い温度であるTa+xより低い場合(ステップS30でYesの場合)、第1バルブ36はa1−a2、a1−a3半開弁、第2バルブ70はb1−b2開弁、b1−b3閉弁、第3バルブ72はc1−c2開弁となる(ステップS32)。これにより、エンジンオイルの油温がTa+xより低い場合、エンジンオイルは循環油路26aと第3油路64とを流れ、フィルター32には流入しない。
【0064】
エンジンオイルの油温が、Ta+x以上になった場合(ステップS34でYesの場合)、第1バルブ36はa1−a2、a1−a3半開弁、第2バルブ70はb1−b2閉弁、b1−b3開弁、第3バルブ72はc1−c2開弁となる(ステップS36)。これにより、エンジンオイルの油温がTa+x以上となると、エンジンオイルは循環油路26aと第2油路60とを流れる。つまり、フィルター32にエンジンオイルが流入することになる。
【0065】
エンジンオイルの油温が、適正温度範囲Xの上限温度Tbより補正量xだけ低い温度であるTb−xより高くなった場合(ステップS38でYesの場合)、第1バルブ36はa1−a2開弁、a1−a3閉弁、第2バルブ70はb1−b2閉弁、b1−b3開弁、第3バルブ72はc1−c2閉弁となる(ステップS40)。これにより、エンジンオイルの油温がTb−x以上となると、エンジンオイルは循環油路26aのみを流れ、フィルター32には流れなくなる。
【0066】
図12(a)に、エンジンオイルが低温から高温に変化する場合の、分岐部56より上流側の循環油路26、第2油路60、および第3油路64でのエンジンオイルの油温を示す。図12(a)のように、エンジンオイルの油温がTa+xより低い場合は、図11のステップS32で説明したように、エンジンオイルは循環油路26aと第3油路64とを流れる。したがって、第3油路64を流れるエンジンオイルの油温は、分岐部56より上流側の循環油路26の油温と同様に上昇する。エンジンオイルの油温がTa+x以上になると、図11のステップS36で説明したように、エンジンオイルは循環油路26aと第2油路60とを流れ、第3油路64を流れなくなる。第3油路64の下流側にはバルブが設けられていないため、第3油路64にはエンジンオイルが滞留しない。したがって、第3油路64におけるエンジンオイルの油温としては0になる。その後、エンジンオイルの油温がTb−xより高くとなると、図11のステップS40で説明したように、エンジンオイルは循環油路26aのみを流れることになる。第2油路60の下流側には第3バルブ72があり、第3バルブ72はc1−c2閉弁状態である。このため、第2油路60では流れていたエンジンオイルがそのまま滞留することになり、第2油路60におけるエンジンオイルの油温は、Tb−x以上には上昇しない。
【0067】
図12(b)に、エンジンオイルが低温から高温に変化する場合の、分岐部56より上流側の循環油路26、第2油路60、および第3油路64を流れるエンジンオイルの流量を示す。図12(b)では、エンジンオイルの油温がTa+x以上となり、図11のステップS36を実行して、エンジンオイルが循環油路26aと第2油路60とを流れるようになった後について示している。図12(b)のように、図11のステップS36を実行した後は、エンジンオイルは循環油路26aと第2油路60とを流れ、第3油路64には流れない。つまり、第3油路64を流れるエンジンオイルの流量は0である。その後、エンジンオイルの油温がTb−xより高くなると、図11のステップS40で説明したように、エンジンオイルは循環油路26aのみを流れ、第2油路60と第3油路64とには流れないため、第2油路60と第3油路64とを流れるエンジンオイルの流量は0である。このとき、フィルター32を流れていたエンジンオイルが、フィルター32を流れなくなるため、エンジンオイルの流れに対する圧力負荷が弱まり、分岐部56より上流側での循環油路26を流れるエンジンオイルの流量は増加する。なお、図12(b)中の二点鎖線は適正流量範囲を示しており、第2油路60を流れるエンジンオイルの流量が適正流量範囲内になっていることを示している。適正流量範囲を外れた場合は、過剰な流量のエンジンオイルがフィルター32に流れ込み部品が破損することや、流量が不足することでフィルター32での浄化機能の効率が低下することなどが生じ得る。
【0068】
次に、図13のフローチャートを用いて、エンジンオイルが高温から低温に変化する場合の、第1バルブ36から第3バルブ72の弁状態を説明する。図13のように、エンジンオイルの油温がTb−xよりも高い場合(ステップS50でYesの場合)、第1バルブ36はa1−a2開弁、a1−a3閉弁、第2バルブ70はb1−b2閉弁、b1−b3開弁、第3バルブ72はc1−c2閉弁となる(ステップS52)。
【0069】
エンジンオイルの油温がTb−x以下になった場合(ステップS54でYesの場合)、第1バルブ36はa1−a2、a1−a3半開弁、第2バルブ70はb1−b2閉弁、b1−b3開弁、第3バルブ72はc1−c2開弁となる(ステップS56)。
【0070】
エンジンオイルの油温がTa+xよりも低くなった場合(ステップS58でYesの場合)、第1バルブ36はa1−a2、a1−a3半開弁、第2バルブ70はb1−b2開弁、b1−b3閉弁、第3バルブ72はc1−c2開弁となる(ステップS60)。
【0071】
図14(a)に、エンジンオイルが高温から低温に変化する場合の、分岐部56より上流側の循環油路26、第2油路60、および第3油路64でのエンジンオイルの油温を示す。図14(a)のように、エンジンオイルの油温がTb−xよりも高い場合、図13のステップS52で説明したように、エンジンオイルは循環油路26aを流れ、第2油路60および第3油路64には流れない。第3バルブ72はc1−c2閉弁になっているため、第2油路60ではエンジンオイルが滞留しており、第2油路60でのエンジンオイルは低温になっている。一方、第3油路64の下流側にはバルブが設けられていないため、第3油路64にはエンジンオイルが滞留しておらず、エンジンオイルの油温としては0になる。その後、エンジンオイルの油温がTb−x以下となると、図13のステップS56で説明したように、エンジンオイルは循環油路26aと第2油路60とを流れる。このため、第2油路60におけるエンジンオイルの油温が上昇し、分岐部56より上流側の循環油路26におけるエンジンオイルの油温と等しくなる。
【0072】
図14(b)に、エンジンオイルが高温から低温に変化する場合の、分岐部56より上流側の循環油路26、第2油路60、および第3油路64とを流れるエンジンオイルの流量を示す。図14(b)のように、エンジンオイルの油温がTb−xより高い場合、図13のステップS52で説明したように、エンジンオイルは循環油路26aのみを流れ、第2油路60と第3油路64とには流れないため、第2油路60と第3油路64とを流れるエンジンオイルの流量は0である。その後、エンジンオイルの油温がTb−x以下となると、図13のステップS56で説明したように、エンジンオイルは循環油路26aと第2油路60とを流れ、第3油路64には流れないままである。このとき、エンジンオイルが第2油路60を流れるようになることで、フィルター32を通過して圧力負荷が強まり、分岐部56より上流側の循環油路26におけるエンジンオイルの流量は減少する。
【0073】
実施例4によれば、循環油路26から分岐し、フィルター32が配置された第2油路60と、フィルター32をバイパスする第3油路64が設けられている。第2バルブ70は、エンジンオイルがフィルター32が設けられた第2油路60を流れるか第3油路64を流れるかの切替えをする。第1バルブ36と第2バルブ70との材料を適切に選択して、第1バルブ36と第2バルブ70とを、エンジンオイルの油温が、フィルター32が所定の浄化効率を発揮できる適正温度範囲Xを外れた場合に、エンジンオイルが第2油路60に設けられたフィルター32に流入しない弁状態にしている。これにより、フィルター32が所定の浄化効率を発揮できる適正温度範囲Xを外れた油温のエンジンオイルが、フィルター32を流れることを抑制できると共に、高温のエンジンオイルがフィルター32を流れることによるフィルター32の破壊、特性劣化を抑制できる。
【0074】
図15(a)は、フィルター32の斜視図である。図15(a)のように、筒形状をした金属面76の内壁に、筒形状をしたフィルター32が設けられている。筒形状をしたフィルター32の中央の空洞部40にエンジンオイルが流入すると、イオン交換などの化学反応によりエンジンオイル中の不純物イオンが吸着した吸着イオンの濃度分布は、エンジンオイルの流入口から流出口にかけて大きくなる(図15(a)の網線部)。これにより、エンジンオイル中の不純物を有効に低減することが可能となる。
【0075】
図15(b)は、フィルター32の断面模式図である。図15(b)のように、金属面76上に設けられたフィルター32は、例えば発泡ウレタン、塩化ビニル、ウレタンなどの樹脂バインダで結合されたイオン交換体80や多孔質性のビーズを固定化させたイオン交換体80と、例えば繊維性の網や金属製の金網などのメッシュ82と、を有する。メッシュ82は、イオン交換体80が漏出しないために設けられている。
【0076】
図16は、実施例4の変形例1に係るオイル浄化装置が備わるエンジンの概略構成を示すブロック図である。図16のように、実施例4の変形例1では、オイル浄化装置24が有する第1バルブ36、第2バルブ70、および第3バルブ72は電磁弁であり、第1バルブ36、第2バルブ70、および第3バルブ72を制御する制御部であるECU38を有する。その他の構成については、実施例4と同じであり、図10に示しているため、ここでは説明を省略する。
【0077】
図17は、エンジンオイルが低温から高温に変化する場合の、ECU38の制御を示すフローチャートである。ECU38の制御は、CPUなどのハードウエアとROMなどに記憶されたソフトウェアとの協働によって実行される。図17のように、ECU38は、分岐部56より上流側の循環油路26におけるエンジンオイルの油温がTa+xより低いかを判断し(ステップS70)、低いと判断した場合(Yesの場合)、第1バルブ36をa1−a2開弁、a1−a3閉弁、第2バルブ70をb1−b2開弁、b1−b3閉弁、第3バルブ72をc1−c2閉弁とする(ステップS72)。これにより、エンジンオイルの油温がTa+xより低い場合、エンジンオイルは循環油路26aのみを流れ、フィルター32には流れない。
【0078】
次いで、ECU38は、分岐部56より上流側の循環油路26におけるエンジンオイルの油温がTa+x以上になったかを判断し(ステップS74)、Ta+x以上になったと判断した場合(Yesの場合)、第1バルブ36をa1−a2閉弁、a1−a3開弁、第2バルブ70をb1−b2閉弁、b1−b3開弁、第3バルブ72をc1−c2開弁とする(ステップS76)。これにより、エンジンオイルの油温がTa+x以上となると、エンジンオイルは第2油路60を流れるようになり、フィルター32にエンジンオイルが流入することになる。
【0079】
次いで、ECU38は、分岐部56より上流側の循環油路26におけるエンジンオイルの油温がTb−xより高くなったかを判断し(ステップS78)、Tb−xより高くなったと判断した場合(Yesの場合)、第1バルブ36をa1−a2開弁、a1−a3閉弁、第2バルブ70をb1−b2開弁、b1−b3閉弁、第3バルブ72をc1−c2閉弁とする(ステップS80)。これにより、エンジンオイルの油温がTb−x以上になると、エンジンオイルは循環油路26aのみを流れ、フィルター32には流入しない。
【0080】
図18は、エンジンオイルが高温から低温に変化する場合の、ECU38の制御を示すフローチャートである。図18のように、ECU38は、分岐部56より上流側の循環油路26におけるエンジンオイルの油温がTb−xより高いかを判断し(ステップS90)、高いと判断した場合(Yesの場合)、第1バルブ36をa1−a2開弁、a1−a3閉弁、第2バルブ70をb1−b2開弁、b1−b3閉弁、第3バルブ72をc1−c2閉弁とする(ステップS92)。
【0081】
次いで、ECU38は、分岐部56より上流側の循環油路26におけるエンジンオイルの油温がTb−x以下になったかを判断し(ステップS94)、Tb−x以下になったと判断した場合(Yesの場合)、第1バルブ36をa1−a2閉弁、a1−a3開弁、第2バルブ70をb1−b2閉弁、b1−b3開弁、第3バルブ72をc1−c2開弁とする(ステップS96)。
【0082】
次いで、ECU38は、分岐部56より上流側の循環油路26におけるエンジンオイルの油温がTa+xより低くなったかを判断し(ステップS98)、Ta+xより低くなったと判断した場合(Yesの場合)、第1バルブ36をa1−a2開弁、a1−a3閉弁、第2バルブ70をb1−b2開弁、b1−b3閉弁、第3バルブ72をc1−c2閉弁とする(ステップS100)。
【0083】
実施例4の変形例1では、エンジンオイルの油温が、フィルター32が所定の浄化効率を発揮できる適正温度範囲Xを外れている場合に、ECU38により第1バルブ36の弁状態を制御することで、エンジンオイルが、第2油路60に流入しないようにしている。これにより、フィルター32が所定の浄化効率を発揮できる適正温度範囲Xを外れた油温のエンジンオイルが、フィルター32を流れることを抑制できると共に、高温のエンジンオイルがフィルター32を流れることによるフィルター32の破壊、特性劣化を抑制できる。
【0084】
また、ECU38は、エンジンオイルの油温が、フィルター32が所定の浄化効率を発揮できる適正温度範囲Xを外れている場合に、第1バルブ36をa1−a2開弁、a1−a3閉弁としてエンジンオイルが第2油路60に流入しない弁状態にすると共に、第2バルブ70をb1−b2開弁、b1−b3閉弁としてエンジンオイルが第3油路64に流入し、フィルター32が設けられた第2油路60に流入しない弁状態としている。これにより、例えば第1バルブ36が壊れた場合でも、エンジンオイルの循環を滞らせることなく、且つ適正温度範囲X外の油温のエンジンオイルがフィルター32を流れることを抑制できるという、フェールセーフ機構を有する。
【0085】
実施例4および実施例4の変形例1においては、オイル浄化装置24は、オイルフィルター54とエンジン各部18との間に備わる場合を例に示したが、これに限られる訳ではない。オイルパン12とオイルポンプ14との間や、オイルポンプ14とオイルフィルター54との間に備わる場合でもよい。また、第3油路64、第2バルブ70、第3バルブ72が設けられていない場合でもよい。この場合でも、フィルター32が所定の浄化効率を発揮できる適正温度範囲Xを外れた油温を有するエンジンオイルが、フィルター32を流れることを抑制できる。なお、実施例4では、エンジンオイルの油温がTa+xよりも低い場合では、第1バルブ36はa1−a2、a1−a3半開弁である場合を説明したが、第3油路64、第2バルブ70、第3バルブ72が設けられていない場合は、エンジンオイルの油温がTa+xよりも低い場合では、第1バルブ36はa1−a2開弁、a1−a3閉弁となるように設定することができる。
【0086】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0087】
10 エンジン
12 オイルパン
14 オイルポンプ
16 オイルクーラ
18 エンジン各部
20 ラジエータ
22 ウォータポンプ
24 オイル浄化装置
26 循環油路
28 水路
30 オイルストレーナ
32 フィルター
34 第1油路
36 第1バルブ
38 ECU
40 空洞部
46 高温用サーモスタット
48 低温用サーモスタット
50 サーモ感温部
52 分岐油路
54 オイルフィルター
56 分岐部
60 第2油路
62 合流部
64 第3油路
66 第1接続部
68 第2接続部
70 第2バルブ
72 第3バルブ
76 金属面
80 イオン交換体
82 メッシュ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンオイルが循環する循環油路に配置され、前記エンジンオイルを浄化する機能を有すると共に、流入する前記エンジンオイルの油温に応じて浄化効率が変化するフィルターと、
前記フィルターに流入する前記エンジンオイルの油温が、前記フィルターが所定の前記浄化効率を発揮できる温度範囲内になるように、前記フィルターに向かう前記エンジンオイルの流れを変更する第1バルブと、を備えることを特徴とする内燃機関のオイル浄化装置。
【請求項2】
前記循環油路に設けられたオイルクーラよりも下流側且つエンジン各部よりも上流側で前記循環油路に接続し、前記オイルクーラを通過し且つエンジン各部を流れる前の前記エンジンオイルが、前記フィルターが設けられたオイルパンに流入できるようにする第1油路を有し、
前記第1バルブは、前記エンジンオイルの油温が、前記フィルターが前記所定の浄化効率を発揮できる温度範囲を外れた場合に、前記オイルクーラを通過し且つ前記エンジン各部を流れる前の前記エンジンオイルが前記オイルパンに流入する弁状態になることを特徴とする請求項1記載の内燃機関のオイル浄化装置。
【請求項3】
前記第1バルブを制御する制御部を有し、
前記制御部は、前記オイルパン内の前記エンジンオイルの油温が、前記フィルターが前記所定の浄化効率を発揮できる温度範囲を外れた場合に、前記第1バルブを、前記オイルクーラを通過し且つ前記エンジン各部を流れる前の前記エンジンオイルが前記オイルパンに流入する弁状態にすることを特徴とする請求項2記載の内燃機関のオイル浄化装置。
【請求項4】
前記第1バルブは、前記エンジンオイルの油圧に応じて開閉するリリーフバルブであることを特徴とする請求項2記載の内燃機関のオイル浄化装置。
【請求項5】
前記循環油路に分岐部で分岐し、前記分岐部よりも下流側の合流部で前記循環油路に合流すると共に、前記フィルターが設けられた第2油路を有し、
前記第1バルブは、前記エンジンオイルの油温が、前記フィルターが前記所定の浄化効率を発揮できる温度範囲を外れた場合に、前記エンジンオイルが前記第2油路に設けられた前記フィルターに流入しない弁状態になることを特徴とする請求項1記載の内燃機関のオイル浄化装置。
【請求項6】
前記第1バルブは、サーモスタットであることを特徴とする請求項2または5記載の内燃機関のオイル浄化装置。
【請求項7】
前記フィルターをバイパスする第3油路と、
前記エンジンオイルが、前記フィルターが設けられた前記第2油路を流れるか前記第3油路を流れるかの切替えをする第2バルブと、
前記第1バルブと前記第2バルブとを制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記エンジンオイルの油温が、前記フィルターが前記所定の浄化効率を発揮できる温度範囲を外れた場合に、前記第1バルブを、前記エンジンオイルが前記第2油路に流入しない弁状態にすると共に、前記第2バルブを、前記エンジンオイルが前記第3油路に流入し、前記フィルターが設けられた前記第2油路に流入しない弁状態にすることを特徴とする請求項5記載の内燃機関のオイル浄化装置。
【請求項8】
前記フィルターは筒形状をしていて、前記エンジンオイルは前記筒形状の中央の空洞部に流入することを特徴とする請求項2から7のいずれか一項記載の内燃機関のオイル浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−57529(P2012−57529A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201270(P2010−201270)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】