説明

内燃機関の冷却装置

【課題】電動ウォータポンプが故障した場合に、内燃機関がオーバーヒートすることを防止する。
【解決手段】冷却装置(1)は、内燃機関(11)及び電動モータ(40)を備える車両において内燃機関を冷却する。冷却装置は、内燃機関を冷却する冷却媒体が流れる循環流路(21)と、冷却媒体を循環させる電動ウォータポンプ(22)と、冷却媒体の温度を計測する温度計測手段(26)と、電動ウォータポンプが故障しているか否かを判定する故障判定手段(30)と、電動ウォータポンプが故障していると判定された場合に、計測された温度が第1所定温度より高いことを条件に、当該車両の運転モードをフェイルセーフモードへ移行させる移行制御手段(30)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の車両における電動ウォータポンプを備える内燃機関の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の冷却装置では、電動ウォータポンプが故障した場合、例えば内燃機関がオーバーヒートするという問題が生じる。
【0003】
特許文献1に記載の冷却制御装置は、電動ウォータポンプの電気モータの電流及び電圧に基づいて、該電気モータの電力値を算出し、この電力値に基づいて電動ウォータポンプの故障を判定する。故障の発生時には警告灯を点灯させて警告を行うと共に、オーバーヒートを抑制すべくフェイルセーフモードに移行して燃料噴射制御装置を介して内燃機関の燃料噴射量をリッチ化する。
【0004】
特許文献2に記載の冷却装置では、内燃機関通過後の冷却媒体温度が所定の基準温度以上である場合に、燃料供給装置による燃料供給量の増加、冷却媒体循環経路に設けられた送風機の駆動、電子スロットルの全閉処理、点火装置による点火時期制御等により内燃機関がオーバーヒートすることを防止する。
【0005】
特許文献3に記載の冷却装置は、電動ウォータポンプに加えて、内燃機関と駆動ベルトで連結された液循環ポンプ(メカニカルポンプ)を備えている。電動ウォータポンプが故障した場合、メカニカルポンプにより一般走行が可能である。また、内燃機関の水温が所定温度より高い場合に、ラジエータファンを作動させる。
【0006】
【特許文献1】特開2000−303839号公報
【特許文献2】特開2006−105105号公報
【特許文献3】特開2006−161806号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の技術では、内燃機関は停止しておらず発熱があるため、オーバーヒートする可能性があるという技術的問題点がある。
【0008】
また、特許文献2記載の技術では、冷却媒体の温度のみに基づいてフェイルセーフモードに移行している。電動ウォータポンプが故障した場合は、冷却媒体が循環しておらず温度センサの応答が遅れてしまうので、オーバーヒートしてしまってからフェイルセーフモードに移行したり、実際にはオーバーヒートしない状況でフェイルセーフモードに移行してしまったりするという技術的問題点がある。
【0009】
特許文献3記載の技術では、メカニカルポンプ及びそれに伴う配管を設置するために必要な空間を確保する必要があり、車両のレイアウトの自由度が阻害されてしまうという技術的問題点がある。
【0010】
本発明は、例えば、上述の問題点に鑑みて成されたものであり、電動ウォータポンプが故障した場合に、内燃機関がオーバーヒートすることを防止することができる冷却装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の冷却装置は、上記課題を解決するために、内燃機関及び電動モータを備える車両において前記内燃機関を冷却する冷却装置であって、前記内燃機関を冷却する冷却媒体が流れる循環流路と、前記冷却媒体を循環させる電動ウォータポンプと、前記冷却媒体の温度を計測する温度計測手段と、前記電動ウォータポンプが故障しているか否かを判定する故障判定手段と、前記電動ウォータポンプが故障していると判定された場合に、前記計測された温度が第1所定温度より高いことを条件に、当該車両の運転モードをフェイルセーフモードへ移行させる移行制御手段とを備える。
【0012】
本発明の第1の冷却装置によれば、循環流路には、例えばLLC(Long Life Coolant)等の冷却媒体が流れ内燃機関を冷却する。電動ウォータポンプは、循環流路内の冷却媒体を強制的に循環させ冷却効率を高める。例えば温度センサである温度計測手段は、冷却媒体の温度を計測する。例えばECU(Electronic Control Unit)である故障判定手段は、電動ウォータポンプが故障しているか否かを判定する。尚、本発明に係る「電動ウォータポンプの故障」とは、例えばロック故障等の電動ウォータポンプのモータが停止し、冷却媒体の循環流量がゼロになる故障をいう。
【0013】
電動ウォータポンプが故障していると判定された場合、例えばECUである移行制御手段は、計測された冷却媒体の温度が第1所定値より高いことを条件に、車両の運転モードをフェイルセーフモードへ移行させる。ここに本発明に係る「フェイルセーフモード」とは、車両を内燃機関による駆動力を用いることなく、電動モータのみにより走行させる、或いは、例えば減筒して、内燃機関の負荷を極端に落として主に電動モータの駆動力により走行させる等の運転モードをいい、内燃機関及び電動モータに安全に退避走行を行わせるための運転モードである。
【0014】
電動ウォータポンプが故障している場合、冷却媒体の循環流量はゼロとなるので、冷却媒体の循環、即ち強制対流による熱伝達が無くなり、主に冷却媒体中の熱伝導により熱が伝達される。従って、内燃機関の燃焼室壁付近の冷却媒体の温度が高くなっていても、温度計測手段により計測される冷却媒体の温度は低い値を示す。或いは、燃焼室壁付近の冷却媒体の温度が低くなっていても、計測される冷却媒体の温度は高い値を示す。即ち、計測される冷却媒体の温度の応答性が悪化する。
【0015】
そこで、本発明では、第1所定温度を、計測される冷却媒体の温度の応答性が悪化することを考慮して、電動ウォータポンプが故障していない場合、即ち通常時或いは通常走行モード時にフェイルセーフモードに移行する温度(例えば摂氏105度や摂氏115度など)より低い温度に設定すれば、例えば摂氏80度や摂氏90度に設定すれば、電動ウォータポンプが故障した場合に、内燃機関がオーバーヒートすることを、確実に防止することができる。
【0016】
一方、故障判定手段が、例えば、一時的な電動ウォータポンプの停止、或いは電動ウォータポンプの動作状態を検出するセンサ又は故障判定手段の故障により、電動ウォータポンプが故障していると判定する可能性がある。この場合は、所謂誤判定であり、電動ウォータポンプが故障したものとして直ちにフェイルセーフモードに移行してしまうと、運転手、整備士等にとって、不利不便或いは不都合である。即ち、電動ウォータポンプが故障していると判定されたからといって、冷却媒体の温度を無視して直ちにフェイルセーフモードに移行したのでは、誤判定の存在まで考慮すれば適切な対応とはいえない。誤判定の場合には、実際に故障していないのに、或いは実際に高温でない(即ち、オーバーヒートが発生していない)のに、通常走行を止めた上で、整備や修理へ行くことを余儀なくされるのである。
【0017】
そこで、誤判定の可能性を考慮して、第1所定温度を、例えば、サーモスタットよる冷却媒体の流量制御によって温度制御可能な上限温度に設定してもよい。誤判定であれば、正常に電動ウォータポンプが作動しているので、冷却媒体の循環があり、サーモスタットにより温度制御が可能である。また、電動ウォータポンプが実際に故障している場合でも、通常時より低い温度でフェイルセーフモードに移行するので、フェイルセーフについての支障はない。
【0018】
このように第1所定温度を設定すれば、電動ウォータポンプが故障した場合に、内燃機関のオーバーヒートを防止できる。更に、オーバーヒートしてしまってからフェイルセーフモードに移行することを防止でき、誤判定の場合で、即ち実際にはオーバーヒートしない状況でフェイルセーフモードに移行することを防止できる。
【0019】
以上の結果、本発明の第1の冷却装置によれば、電動ウォータポンプが故障した場合に、内燃機関がオーバーヒートすることを防止することができる。
【0020】
本発明の第1の冷却装置の一態様では、前記故障判定手段は、前記電動ウォータポンプの動作状態を監視する監視手段を含み、前記監視された動作状態に基づいて、前記電動ウォータポンプが故障しているか否かを判定する。
【0021】
この態様によれば、例えばセンサである監視手段は、電動ウォータポンプの動作状態を監視する。具体的には、監視手段は、監視の対象となる動作状態として、例えば電動ウォータポンプの回転数を監視する。言い換えれば、回転数を計数又は検出する。或いは、監視の対象となる動作状態として、例えば電動ウォータポンプの電流値を監視する。言い換えれば、電流値を計測又は検出する。
【0022】
ここに本発明に係る「動作状態」とは、動作状態が監視可能な形式で表現されたもの或いは顕在化しているものであり、典型的には、動作状態に係る何らかの物理量やパラメータにより表現されている。本発明に係る「監視」とは、典型的には、このような動作状態を示す何らかの物理量やパラメータを、直接的に又は間接的に“検出”、“測定”、“計測”、“モニタリング”等することを意味する。更に、このような動作状態を示す何らかの物理量やパラメータの、標準値或いは基準値に対する変化や差(変化の仕方、差の度合)を、直接的に又は間接的に“検出”、“測定”、“計測”、“モニタリング”等することを含んでもよい。
【0023】
故障判定手段は、監視された動作状態に基づいて、電動ウォータポンプが故障しているか否かを判定する。ここに本発明に係る「動作状態に基づいて」とは、典型的には、監視された動作状態を示す何らかの物理量やパラメータに基づいて、という意味である。具体的には、故障判定手段は、監視された動作状態が電動ウォータポンプの回転数であれば、該回転数に基づいて、電動ウォータポンプが故障しているか否かを判定する。或いは、監視された動作状態が電動ウォータポンプの電流値であれば、該電流値に基づいて、電動ウォータポンプが故障しているか否かを判定する。
【0024】
より具体的には、例えば、監視された動作状態を示す物理量やパラメータと所定閾値との大小関係を判定して、電動ウォータポンプが故障しているか否かを判定する。これにより、容易にして故障しているか否かが判定できるので、実用上非常に有利である。
【0025】
本発明の第1の冷却装置の他の態様では、前記移行制御手段は、前記電動ウォータポンプが故障していると判定された場合に、前記計測された温度が前記第1所定温度より高いか否かを判定する温度判定手段を含み、前記計測された温度が前記第1所定温度より高いと判定された場合に、前記運転モードを前記フェイルセーフモードへ移行させ、前記計測された温度が前記第1所定温度より低いと判定された場合に、前記運転モードを前記フェイルセーフモードへ移行させない。
【0026】
この態様によれば、温度判定手段は、電動ウォータポンプが故障していると判定された場合に、温度計測手段により計測された冷却媒体の温度が、第1所定温度より高いか否かを判定する。移行制御手段は、計測された温度が第1所定温度より高いと判定された場合に、運転モードをフェイルセーフモードへ移行させる。これにより、速やかにフェイルセーフモードに移行することができ、内燃機関がオーバーヒートすることを防止することができる。
【0027】
また、移行制御手段は、計測された温度が第1所定温度より低いと判定された場合に、運転モードをフェイルセーフモードへ移行させない、即ち、通常走行モードのままとする。言い換えれば、計測された温度が第1所定温度以下ならば、フェイルセーフモードへの移行を禁止する。これにより、冷却媒体の温度が第1所定温度になるまでは、内燃機関を使用して走行することができるので、運転モードをフェイルセーフモードへ移行させるまでの時間又は走行距離を長くすることができる。
【0028】
尚、温度判定手段による温度の高低に係る判定は、電動ウォータポンプが故障していないと判定された場合も含めて、或いはかかる故障の判定と無関係に、常時行われていてもよい。そして、電動ウォータポンプが故障している判定された場合に、判定のその時点における結果に基づいて、フェイルセーフモードへ移行すれば又はしなければよい。
【0029】
本発明の第1の冷却装置の他の態様では、前記移行制御手段は、前記電動ウォータポンプが故障していないと判定された場合に、前記計測された温度が、前記第1所定温度より高い第2所定温度より高いことを条件に、前記運転モードを前記フェイルセーフモードへ移行させる。
【0030】
この態様によれば、第2所定温度は、電動ウォータポンプが故障していない場合、即ち通常時或いは通常走行モード時に、フェイルセーフモードに移行する温度、例えば摂氏105度や摂氏115度として設定される。これにより、電動ウォータポンプが故障していない通常時に内燃機関がオーバーヒートすることやオーバーヒートしてしまってからフェイルセーフモードに移行すること、更にオーバーヒートしない状況でフェイルセーフモードに移行することを確実に防止できる。
【0031】
本発明の第1の冷却装置の他の態様では、前記車両は、前記内燃機関への空気の供給量を調節する電動スロットルを更に備え、前記フェイルセーフモードは、前記車両が前記電動モータにより走行するモードであり、前記移行制御手段は、前記電動ウォータポンプが故障していると判定された場合に、前記計測された温度が、前記第1所定温度より低く且つ前記第1所定温度より低い第3所定温度より高いことを条件に、前記運転モードを、前記電動スロットルの開度を制限する制限走行モードへ移行させる。
【0032】
この態様によれば、移行制御手段は、電動ウォータポンプが故障していると判定された場合に、温度計測手段により計測された冷却媒体の温度が、第1所定温度より低く且つ、第3所定温度より高いことを条件に、即ち第3所定温度及び第1所定温度間の温度範囲に入ることを条件として、運転モードを電動スロットルの開度を制限する制限走行モードへ移行させる。即ち、電動スロットルにより、内燃機関への空気の供給量を制限する。具体的には、内燃機関への空気の供給量を減らし、内燃機関の回転数を下げることにより、内燃機関の温度上昇を抑制する。このような「制限走行モード」は、広義にはフェイルセーフモードの一つとして扱うことも可能である。しかし、ここでは「制限走行モード」を、上述の如く電動ウォータポンプの故障時に第1所定温度に到達しない限り移行されることのない「フェイルセーフモード」(言い換えれば「狭義のフェイルセーフモード」)とは別の運転モードとして扱うこととする。
【0033】
制限走行モードへ移行する温度である第3所定温度は、フェイルセーフモードへ移行する温度である第1所定温度よりも低い。例えば、第3所定温度は、摂氏70度や摂氏80度といった、第1所定温度より10度程度低い温度に設定される。従って、冷却媒体の温度が第1所定温度になるまでは、通常走行モードとまではいかないものの、内燃機関を使用して、概ね通常の或いは通常走行に近い状態で、走行することができる。更に、制限走行を行っているので、内燃機関の温度上昇が抑制され、運転モードをフェイルセーフモードへ移行させるまでの時間又は走行距離をより長くすることができる。この際、フェイルセーフモードに移行しない限り、制限走行モードから通常走行モードへの復帰は、温度が降下したのに応じて、比較的容易に行われる。
【0034】
尚、第3所定温度は、計測される冷却媒体の温度の応答性が悪化することを考慮して設定されている。
【0035】
加えて、この態様では、前記移行制御手段は、前記電動ウォータポンプが故障していないと判定された場合に、前記計測された温度が、前記第3所定温度より高い第4所定温度(例えば、摂氏95度や摂氏105度)より高いことを条件に、前記運転モードを、前記制限走行モードへ移行させるように構成してもよい。このように構成すれば、温度上昇を抑制する或いは温度降下に貢献する制限走行モードへの移行が、通常走行時におけるオーバーヒートを回避するための対策として極めて有効に機能する。更に、このように制限走行モードへ移行させた場合であっても、第2所定温度(例えば、摂氏105度や摂氏115度)より高いことを条件に、前記運転モードを、フェイルセーフモードへ移行させてもよい。
【0036】
本発明の第1の冷却装置の他の態様では、複数の点火遅角マップを有する記憶手段を更に備え、前記移行制御手段は、前記電動ウォータポンプが故障していると判定された場合に、前記点火遅角マップを切換える。
【0037】
この態様によれば、例えばメモリである記憶手段は、車両の走行状態に応じた複数の点火遅角マップを有している。ここで、点火遅角マップとは、例えば冷却媒体の温度、又は内燃機関の温度に応じて、点火時期の遅角量を定めるマップである。このようなマップは、例えば実験、シミュレーション等により取得したデータにより構成すればよい。具体的には例えば、様々な遅角量における、冷却媒体の温度の上昇又は下降の度合いのデータを取得し、該データ等に基づいて最適な遅角量を特定することで、このようなマップを構成すればよい。
【0038】
電動ウォータポンプが故障していると判定された場合に、移行制御手段は、点火遅角マップを切換える。具体的には、故障していると判定された場合には、冷却媒体の循環がないので、温度計測手段により計測される冷却媒体の温度の応答性が悪化することを考慮して、低い温度、例えば摂氏60度から点火時期を遅角するような点火遅角マップに切換え、内燃機関の温度上昇を抑制する。これにより、電動ウォータポンプが故障した場合に、内燃機関を使用して走行可能な距離又は時間を長くすることができる。このような「点火遅角を切り替える」運転モードは、広義にはフェイルセーフモードの一つとして扱うことも可能である。しかし、ここでは、「点火遅角を切り替える」運転モードを、上述の如き「フェイルセーフモード」とは別の運転モードとして扱うこととする。
【0039】
この態様では、前記フェイルセーフモードは、前記車両が前記電動モータにより走行するモードであり、前記移行制御手段は、前記電動ウォータポンプが故障していると判定された場合に、前記計測された温度が、前記第1所定温度より低く且つ前記第1所定温度より低い第3所定温度(摂氏70度や摂氏80度といった、第1所定温度より低い温度)より高いことを条件に、前記運転モードを、かかる点火遅角を切り替えての運転モードへ移行させるように構成してもよい。或いは、前記フェイルセーフモードは、前記車両が前記電動モータにより走行するモードであり、前記移行制御手段は、前記電動ウォータポンプが故障していると判定された場合に、前記計測された温度が、前記第3所定温度より低く且つ前記第3所定温度より低い第5所定温度(摂氏60度や摂氏70度といった、第3所定温度より低い温度)より高いことを条件に、前記運転モードを、かかる点火遅角を切り替えての運転モードへ移行させるように構成してもよい。このように構成すれば、冷却媒体の温度が上昇しても第1所定温度になるまでは、(通常走行モードとまではいかないものの)点火遅角を利用して、温度上昇を抑制しつつ或いは温度降下を促進しつつ、概ね通常の或いは通常走行に近い状態で、走行することができる。この際、フェイルセーフモードに移行しない限り、点火時期を通常の時期へ切り替えることは、温度が降下したのに応じて、比較的容易に行われる。
【0040】
加えて、この態様では、前記移行制御手段は、前記電動ウォータポンプが故障していないと判定された場合に、前記計測された温度が、前記第3所定温度より高い第4所定温度(例えば、摂氏105度や摂氏115度)より高いことを条件に、前記運転モードを、前記点火遅角を切り替えての運転モードへ移行させるように構成してもよい。或いは、前記移行制御手段は、前記電動ウォータポンプが故障していないと判定された場合に、前記計測された温度が、前記第5所定温度より高い第6所定温度(例えば、摂氏80度や摂氏90度)より高いことを条件に、前記運転モードを、前記点火遅角を切り替えての運転モードへ移行させるように構成してもよい。このように構成すれば、温度上昇を抑制する或いは温度降下に貢献する点火遅角を切り替えての運転モードへの移行が、通常走行時におけるオーバーヒートを回避するための対策として極めて有効に機能する。更に、このように点火遅角を切り替えた場合であっても、第2所定温度(例えば、摂氏105度や摂氏115度)より高いことを条件に、前記運転モードを、フェイルセーフモードへ移行させてもよい。
【0041】
本発明の第1の冷却装置の他の態様では、前記内燃機関を冷却する電動ファンを更に備え、前記移行制御手段は、前記電動ウォータポンプが故障していると判定された場合に、前記電動ファンを作動させる。
【0042】
この態様によれば、例えばラジエータファンである電動ファンは、内燃機関と循環流路に設けられたラジエータとの間に設けられている。ここで、電動ファンとは、内燃機関の例えば回転数等の動作状態から独立して、必要性に応じて作動させることが可能なファンのことをいう。電動ウォータポンプが故障していると判定された場合に、移行制御手段は、冷却媒体の温度に関係なく電動ファンを作動させ、積極的に内燃機関を空冷することにより、内燃機関の温度上昇を抑制する。これにより、電動ウォータポンプが故障した場合に、内燃機関を使用して走行可能な距離又は時間を長くすることができる。このような「電動ファンを作動させる」運転モードは、広義にはフェイルセーフモードの一つとして扱うことも可能である。しかし、ここでは「電動ファンを作動させる」運転モードを、上述の如き「フェイルセーフモード」とは別の運転モードとして扱うこととする。
【0043】
この態様では、前記フェイルセーフモードは、前記車両が前記電動モータにより走行するモードであり、前記移行制御手段は、前記電動ウォータポンプが故障していると判定された場合に、温度と無関係に、前記運転モードを、かかる電動ファンを作動させる運転モードへ移行させるように構成してもよい。このように構成すれば、冷却媒体の温度が上昇しても第1所定温度になるまでは、(通常走行モードとまではいかないものの)電動ファンを利用して、温度上昇を抑制しつつ或いは温度降下を促進しつつ、概ね通常の或いは通常走行に近い状態で、走行することができる。この際、フェイルセーフモードに移行しない限り、電動ファンを通常の運転状態へ切り替えることは、温度が降下したのに応じて、比較的容易に行われる。
【0044】
加えて、この態様では、前記移行制御手段は、前記電動ウォータポンプが故障していないと判定された場合に、前記計測された温度が、前記第3所定温度より高い第7所定温度(例えば、摂氏90度や摂氏100度)より高いことを条件に、前記運転モードを、前記電動ファンを作動させる運転モードへ移行させるように構成してもよい。このように構成すれば、温度上昇を抑制する或いは温度降下に貢献する電動ファンを作動させる運転モードへの移行が、通常走行時におけるオーバーヒートを回避するための対策として極めて有効に機能する。
【0045】
本発明の第2の冷却装置は、上記課題を解決するために、内燃機関及び電動モータを備える車両において前記内燃機関を冷却する冷却装置であって、前記内燃機関を冷却する冷却媒体が流れる循環流路と、前記冷却媒体を循環させる電動ウォータポンプと、前記冷却媒体の温度を計測する温度計測手段と、前記内燃機関に吸入される空気量を検出する空気量検出手段と、前記電動ウォータポンプが故障しているか否かを判定する故障判定手段と、前記電動ウォータポンプが故障していると判定された場合に、前記電動ウォータポンプが故障していると判定された際に計測された前記冷却媒体の温度と、前記検出された空気量の累積値が所定累積値に達した際に計測された前記冷却媒体の温度との差が、所定温度差より大きいことを条件に、当該車両の運転モードをフェイルセーフモードへ移行させる移行制御手段とを備える。
【0046】
本発明の第2の冷却装置によれば、空気量検出手段は、内燃機関に吸入される空気量を検出する。具体的には例えば、エアフローメータにより直接的に空気量を検出してもよいし、スロットル開度、吸気通路内の圧力、及び内燃機関の回転数を夫々検出することにより間接的に空気量を検出してもよい。ここで「空気量」は、単位時間当たりの空気量でもよいし、計測基準時や計測開始時からの積算された空気量でもよい。
【0047】
移行制御手段は、電動ウォータポンプが故障していると判定された場合に、電動ウォータポンプが故障していると判定された際に計測された冷却媒体の温度と、検出された空気量の累積値が所定累積値に達した際に計測された冷却媒体の温度との差が、所定温度差より大きいことを条件に、当該車両の運転モードをフェイルセーフモードへ移行させる。
【0048】
ここに本発明に係る「所定温度差」とは、運転モードをフェイルセーフモードへ移行させるか否かを判定するための基準値、即ち、電動ウォータポンプが故障していない場合に見られる筈の温度変化と電動ウォータポンプが故障している場合に見られる筈の温度変化とを区別するための基準値或いは閾値である。これは、固定値であってもよいし、例えば電動ウォータポンプが故障していると判定された際に計測された冷却媒体の温度に応じて可変であってもよい。具体的には例えば、判定された際に計測された冷却媒体の温度が摂氏70度である場合は、所定温度差は摂氏5度等と設定すればよい。
【0049】
このような所定温度差は、例えば、電動ウォータポンプの通常運転中の冷却媒体の温度及び温度変化と、停止時(即ち、故障時)の冷却媒体の温度及び温度変化とを、実験により測定し、通常運転では起こらない温度変化の値として設定すればよい。尚、「差」又は「温度差」は、直接的な温度の差に限らず、例えば、間接的に温度を示す指標値の差であってもよく、百分率又は割合、或いは比によって表される差分であってもよい。いわば広義の温度差を意味してよい。
【0050】
本願発明者の研究によれば、一般に、電動ウォータポンプの故障時における冷却媒体の温度は、燃焼室壁及びバルブシートの温度が支配的となり、該燃焼室壁及びバルブシートの温度は、内燃機関に吸入される空気量によって、その温度変化の程度が変わることが判明している。そこで、本発明では、電動ウォータポンプが故障していると判定された際に、冷却媒体の温度を計測してから、次に冷却媒体の温度を計測するまでの期間を空気量によって定めることにより、例えば内燃機関がオーバーヒートしてしまってから冷却媒体の温度を計測することを防止することができる。
【0051】
ここで「電動ウォータポンプが故障していると判定された際」とは、電動ウォータポンプが故障していると判定された時点に限らず、例えば、故障判定手段における判定に費やされた時間を考慮して、判定された時点から多少時間的に遡った実際に電動ウォータポンプが故障した時点であってもよいし、内燃機関の温度が冷却媒体に反映されるまでの時間遅れを考慮して、判定された時点から所定の微少時間をおいた時点であってもよい。
【0052】
また、「所定累積値に達した際」とは、空気の累積値が所定累積値以上になった場合、又は所定累積値より大きくなった若しくは所定累積値を超えた場合を意味する。尚、本発明に係る「所定累積値」とは、電動ウォータポンプが故障していると判定された際に、冷却媒体の温度を計測してから、次に冷却媒体の温度を計測するまでの期間を定めるパラメータである。このような所定累積値は、例えば、電動ウォータポンプ停止時(即ち、故障時)における、吸入空気量と冷却媒体の温度変化との関係を実験により測定し、冷却媒体の温度変化が計測誤差の範囲を超える空気量とすればよい。
【0053】
また、「空気量の累積値」とは、電動ウォータポンプが故障していると判定されてから内燃機関に吸入される空気量の累積値である。累積値を求める場合の基準時或いは計測開始時は、電動ウォータポンプが故障していると判定された時点に限らず、例えば、判定された時点から多少時間的に遡った時点であってもよいし、判定された時点から所定の微少時間をおいた時点であってもよい。尚、空気量検出手段が単位時間当たりの空気量を検出している場合には、検出された空気量を積算して累積値を求めればよい。或いは、空気量検出手段が積算された空気量を検出している場合には、検出された空気量を累積値とすればよい。
【0054】
本発明の第2の冷却装置では、冷却媒体温度の温度差、即ち温度変化の程度に基づいて運転モードをフェイルセーフモードへ移行させている。これにより、仮に、電動ウォータポンプが故障していると判定された際に計測された冷却媒体の温度が低い場合(例えば、摂氏60度)であっても、温度変化の程度により、直ちに運転モードをフェイルセーフモードへ移行させ、内燃機関がオーバーヒートすることを確実に防止することができる。
【0055】
一方、故障判定手段における判定が所謂誤判定である場合、検出される冷却媒体の温度差は小さい、或いは内燃機関の温度が下降する方向への変化となる。従って、温度差に基づいて運転モードをフェイルセーフモードへ移行させることにより、故障判定手段における判定結果を確認することができる。即ち、電動ウォータポンプの故障を二重に確認することができ、判定結果の信頼性を向上させることが可能となる。
【0056】
以上の結果、本発明の第2の冷却装置によれば、電動ウォータポンプが故障した場合に、内燃機関がオーバーヒートすることを防止することができる。加えて、オーバーヒートしてしまってからフェイルセーフモードに移行したり、実際にはオーバーヒートしない状況でフェイルセーフモードに移行してしまったりすることを防止することができる。即ち、適切に車両の運転モードをフェイルセーフモードへ移行させることが可能となる。
【0057】
尚、計測された冷却媒体の温度差によっては、上述した制限走行モード等へ運転モードを移行させてもよい。
【0058】
本発明の第2の冷却装置の他の態様では、前記移行制御手段は、少なくとも前記電動ウォータポンプが故障していると判定された際に計測された前記冷却媒体の温度を記憶する記憶手段を含む。
【0059】
この態様によれば、例えばメモリである記憶手段に記憶された電動ウォータポンプが故障していると判定された際に計測された冷却媒体の温度を、検出された空気量の累積値が所定累積値に達した際に計測された冷却媒体の温度との差を求めるために使用するだけでなく、例えば、判定された際に計測された冷却媒体の温度が摂氏90度であった場合に、温度差を求めるまでもなく、別の制御手段により運転モードをフェイルセーフモードへ移行させることも可能となる。
【0060】
また、記憶手段には、定期的に又は不定期的に、或いは連続して、冷却媒体の温度が記憶されてもよい。このようにすれば、判定された時点以後であって、検出された空気量の累積値が所定累積値に達する前に、冷却媒体の温度が大きく変化した場合、即ち、電動ウォータポンプが故障したことにより、一定の時間遅れを伴って内燃機関の温度が、温度計測手段により計測された冷却媒体の温度に反映された場合、その時点における冷却媒体の温度に基づいて、或いは該温度と判定された際に計測された冷却媒体の温度との差に基づいて、運転モードをフェイルセーフモードへ移行させることもでき、迅速な対応が可能となる。
【0061】
本発明の第2の冷却装置の他の態様では、前記移行制御手段は、前記差が、前記所定温度差より大きいか否かを判定する温度差判定手段を含み、前記差が前記所定温度差より大きいと判定された場合に、前記運転モードを前記フェイルセーフモードへ移行させ、前記差が前記所定温度差より小さいと判定された場合に、前記運転モードを前記フェイルセーフモードへ移行させない。
【0062】
この態様によれば、温度差判定手段は、電動ウォータポンプが故障していると判定された場合に、電動ウォータポンプが故障していると判定された際に計測された冷却媒体の温度と、検出された空気量の累積値が所定累積値に達した際に計測された冷却媒体の温度との差が、所定温度差より大きいか否かを判定する。移行制御手段は、前記差が所定温度差より大きいと判定された場合に、運転モードをフェイルセーフモードへ移行させる。これにより、速やかにフェイルセーフモードに移行することができ、内燃機関がオーバーヒートすることを防止することができる。
【0063】
また、移行制御手段は、前記差が所定温度差より小さいと判定された場合に、運転モードをフェイルセーフモードへ移行させない、即ち、通常走行モードのままとする。言い換えれば、前記差が所定温度差以下ならば、フェイルセーフモードへの移行を禁止する。
【0064】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための最良の形態から明らかにされよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0065】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0066】
<第1実施形態>
本発明の冷却装置に係る第1実施形態を、図1及び2を参照して説明する。
【0067】
先ず、図1を参照して本実施形態に係る冷却装置の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る冷却装置のブロック図である。
【0068】
図1において、冷却装置1は、例えば自動車等の車両にエンジンとしての内燃機関11と共に搭載される。冷却装置1は、内燃機関11を冷却する例えばLLC等の冷却媒体が流れる循環流路21と、冷却媒体を循環させる電動ウォータポンプ22とを備えている。循環流路21は、ラジエータ25と、サーモスタット24と、ラジエータ25を経るラジエータ流路21aと、ラジエータ25を迂回するバイパス流路21bと、内燃機関11に設けられているウォータジャケット21cとを備えている。
【0069】
冷却装置1は、更に、冷却媒体の温度を計測する温度センサ26と、電動ウォータポンプ22の動作状態を監視するポンプセンサ23と、該監視された動作状態に基づいて電動ウォータポンプ22が故障しているか否かを判定するEFIECU(Electronic Fuel Injection Engine Control Unit)30と、ラジエータ25と内燃機関11との間に設けられている、本発明に係る「電動ファン」の一例としてのラジエータファン50とを備えて構成されている。EFIECU30は、このような電動ウォータポンプ22の故障判定の他に、内燃機関11における或いは内燃機関11が搭載された車両における、各種電子制御を行うように構成されている。言い換えれば、本実施形態では、各種電子制御用のEFIECU30の一部を、冷却装置1の一部として用いている。尚、本実施形態に係るポンプセンサ23、温度センサ26及びEFIECU30は、夫々、本発明に係る「監視手段」、「温度計測手段」及び「故障判定手段」の一例である。
【0070】
EFIECU30は、CPU301と、例えば、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)、バックアップROM、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである、本発明に係る「記憶手段」の一例としてのメモリ302と、各センサ等の信号を入出力する入出力回路303とを有する。
【0071】
この冷却装置1を備える車両は、内燃機関11及び電動モータ40を備えている。内燃機関11には、該内燃機関11に空気を供給する吸気通路12が接続されている。吸気通路12は、内燃機関11への空気の供給量を調節する電動スロットル13、及び内燃機関11へ吸入される空気量を検出する、本発明に係る「空気量検出手段」の一例としてのエアフローメータ14を有している。
【0072】
ウォータジャケット21cは、ラジエータ流路21aを介してラジエータ25に接続される。ウォータジャケット21cの入口(図1の左側)近傍には、電動ウォータポンプ22が設けられる。該電動ウォータポンプ22により冷却媒体はラジエータ流路21aを図1に矢印で示す方向に循環する。この循環中に、冷却媒体は、ウォータジャケット21cを通過する過程で、内燃機関11から熱を吸収して昇温する。昇温した冷却媒体は、ラジエータ25を通過する過程で熱を放出して温度を下げる。
【0073】
ラジエータ流路21aには、バイパス流路21bが接続されている。バイパス流路21bの一端は、ウォータジャケット21cの出口(図1の右側)とラジエータ25との間に接続されている。バイパス流路21bの他端は、ラジエータ25と電動ウォータポンプ22との間に接続されている。
【0074】
バイパス流路21bの他端とラジエータ流路22aとの接続部分には、サーモスタット24が設けられている。該サーモスタット24は、冷却媒体の温度によりその開度が変化し、ラジエータ流路21a及びバイパス流路21bを流れる冷却媒体の流量を調整する。
【0075】
ポンプセンサ23は、電動ウォータポンプ22の動作状態を監視して、該動作状態を示す監視信号をEFIECU30に送信する。具体的には、ポンプセンサ23は、監視の対象となる動作状態として、電動ウォータポンプ22の回転数を監視する、言い換えれば、回転数を計数或いは検出してもよい。この場合には、回転数を示す監視信号(即ち、回転数信号)が出力される。或いは、ポンプセンサ23は、監視の対象となる動作状態として、電動ウォータポンプ22を駆動するための電流値を監視する、言い換えれば、電流値を計測或いは検出してもよい。この場合には、電流値を示す監視信号(即ち、電流値信号)が出力される。尚、電動ウォータポンプ22の回転数を計数する場合は、ポンプセンサ23は、カウンタであってもよく、電流値を計測する場合は、ポンプセンサ23は電流計であってもよい。
【0076】
EFIECU30は、ポンプセンサ23からの監視信号が示す電動ウォータポンプ22の動作状態に基づいて、電動ウォータポンプ22が故障しているか否かを判定する。具体的には、例えば、ポンプセンサ23からの監視信号としての回転数信号により示される、電動ウォータポンプ22に係る回転数に基づいて、或いは、電流値信号により示される、電動ウォータポンプ22に係る電流値に基づいて、電動ウォータポンプ22が故障しているか否かを判定する。
【0077】
より具体的には、例えば、ポンプセンサ23が電動ウォータポンプの回転数を監視しているならば、該回転数が所定値以下であるか否かを判定し、或いは、電流値を監視しているならば、該電流値が所定値以下であるか否かを判定し、電動ウォータポンプ22が故障しているか否かを判定する。電動ウォータポンプ22の故障判定における所定値は、ポンプセンサ23が監視している電動ウォータポンプ22の動作状態が、回転数であっても電流値であっても、電動ウォータポンプ22のモータが停止してしまうので、理論的にはゼロである。しかしながら、実際には、例えばポンプセンサ23の監視精度等による誤差があるので、該誤差等を考慮した値に設定されている。
【0078】
EFIECU30が、電動ウォータポンプ22が故障していると判定した場合、EFIECU30は、温度センサ26により計測された冷却媒体の温度と、メモリ302に格納されている、所定温度T1とを比較する。ここで、本実施形態に係る所定温度T1は、冷却媒体の循環がないことにより、計測される冷却媒体の温度の応答性が悪化することを考慮して例えば摂氏80度に設定されており、本発明に係る「第1所定温度」の一例である。
【0079】
冷却媒体の温度が所定温度T1よりも高いと判定された場合に、EFIECU30は、当該車両の運転モードをフェイルセーフモードへ移行させる。即ち、内燃機関11を停止させ、電動モータ40により走行するモードへ移行させる。また、冷却媒体の温度が所定温度T1より低いと判定された場合には、運転モードをフェイルセーフモードへ移行させない。尚、本実施形態に係るEFIECU30は、本発明に係る「温度判定手段」及び「移行制御手段」の一例である。
【0080】
次に、以上のように構成された冷却装置1において、EFIECU30が実行する温度制御処理を図2のフローチャートを用いて説明する。この温度制御処理は、主に車両が走行中に、例えば定期的に又は不定期的にコンマ数秒毎〜数秒毎に周期的に実行される。
【0081】
図2において、先ず、EFIECU30は、車両が電動モータ40により走行するモード(Electric Vehicle走行:EV走行)、即ちフェイルセーフモードであるか否かを判定する(ステップS101)。フェイルセーフモードである場合(ステップS101:Yes)、処理を終了する。フェイルセーフモードでない場合(ステップS102:No)、車両は内燃機関11と電動モータ40とを併用する走行(Hybrid Vehicle走行:HV走行)である(ステップS102)。即ち、通常時における走行モードである通常走行モードである。このため、続いてポンプセンサ23により監視された電動ウォータポンプ22の動作状態に基づいて、電動ウォータポンプ22が故障しているか否かを判定する(ステップS103)。
【0082】
電動ウォータポンプ22が故障していると判定された場合(ステップS103:Yes)、続いて、温度センサ26により計測された冷却媒体の温度と、メモリ302に格納されている所定温度T1と比較する(ステップS104)。この比較の結果、冷却媒体の温度が所定温度T1よりも高いと判定された場合(ステップS104:Yes)、EFIECU30は、車両をフェイルセーフモードに移行させ(ステップS106)、処理を終了する。冷却媒体の温度が所定温度T1よりも低い場合は(ステップS104:No)、HV走行を維持して処理を終了する。即ち、通常走行モードによる走行が続けられる。
【0083】
電動ウォータポンプ22が故障していないと判定された場合(ステップS103:No)、続いて、温度センサ26により計測された冷却媒体の温度と、メモリ302に格納されている、本発明に係る「第2所定温度」の一例としての所定温度T2と比較する(ステップS105)。ここで所定温度T2は、例えば摂氏115度であり、通常時にフェイルセーフモードに移行するか否かを判定する温度である。
【0084】
冷却媒体の温度が所定温度T2よりも高いと判定された場合(ステップS105:Yes)、EFIECU30は、車両をフェイルセーフモードに移行させ(ステップS106)、処理を終了する。冷却媒体の温度が所定温度T2よりも低いと判定された場合は(ステップS105:No)、HV走行を維持して処理を終了する。即ち、通常走行モードによる走行が続けられる。
【0085】
以上のように、本実施形態では、電動ウォータポンプ22の回転数や電流値等のポンプセンサ23により監視された動作状態に基づいて、EFIECU30が、電動ウォータポンプ22が故障しているか否かを判定する。故障していると判定した場合には、冷却媒体の循環がないことにより、計測される温度の応答性が悪化することを考慮した所定温度T1より高いか否かを判定し、所定温度T1よりも高いと判定された場合に、車両をフェイルセーフモードに移行させる。従って、本実施形態によれば、電動ウォータポンプ22が故障した場合に、内燃機関11がオーバーヒートすることを防止することができる。
【0086】
<第2実施形態>
本発明の冷却装置に係る第2実施形態を、図3を参照して説明する。第2実施形態では、EFIECU30における温度制御処理が異なる以外は、第1実施形態の構成と同様である。よって、第2実施形態について、第1実施形態と重複する説明を省略する。
【0087】
本実施形態において、電動ウォータポンプ22が故障していると判定された場合、先ず、EFIECU30において、CPU301は、温度センサ26により計測された冷却媒体の温度と、メモリ302に格納されている、所定温度T3とを比較する。ここで、本実施形態に係る所定温度T3は、冷却媒体の循環がないことにより、計測される冷却媒体の温度の応答性が悪化することを考慮して例えば摂氏80度に設定されており、本発明に係る「第3所定温度」の一例である。
【0088】
冷却媒体の温度が所定温度T3よりも大きい場合、EFIECU30は電動スロットル13の開度を、アクセルの開度に関係なく、例えば8度にする。即ち、車両の運転モードを制限走行モードへ移行させる。ここで、電動スロットル13の開度とは、スロットルバルブが全閉状態のときを開度0度としたときのスロットルバルブの角度をいう。電動スロットル13の開度は、固定値でもよいし、例えば冷却媒体の温度等に応じて可変であってもよい。
【0089】
次に、EFIECU30は、改めて温度センサ26により計測された冷却媒体の温度と、メモリ302に格納されている、所定温度T4とを比較する。ここで、本実施形態に係る所定温度T4は、冷却媒体の循環がないことにより、計測される冷却媒体の温度の応答性が悪化することを考慮して例えば摂氏90度に設定されており、本発明に係る「第1所定温度」の他の一例である。冷却媒体の温度が所定温度T4よりも高い場合、EFIECU30は車両をフェイルセーフモードへ移行させる。
【0090】
次に、本実施形態において、EFIECU30が実行する温度制御処理について、図3のフローチャートを参照して説明する。この温度制御処理は、主に車両が走行中に、例えば定期的に又は不定期的にコンマ数秒毎〜数秒毎に周期的に実行される。
【0091】
図3において、先ず、EFIECU30は車両がフェイルセーフモード(EV走行)であるか否かを判定する(ステップS201)。フェイルセーフモードである場合(ステップS201:Yes)、処理を終了する。フェイルセーフモードでない場合(ステップS202:No)、車両は内燃機関11と電動モータ40とを併用する走行(HV走行)、即ち、通常時における走行モードである通常走行モードである(ステップS202)。このため、続いてポンプセンサ23により監視された電動ウォータポンプ22の動作状態に基づいて、電動ウォータポンプ22が故障しているか否かを判定する(ステップS203)。
【0092】
電動ウォータポンプ22が故障していると判定された場合は(ステップS203:Yes)、続いて、制限走行モードであるか否かを判定する(ステップS204)。制限走行モードである場合は(ステップS204:Yes)、既に温度制御処理における従前のサイクルにて制限走行モードに移行されているので、次に後述するステップS207の処理を行う。
【0093】
制限走行モードでない場合(ステップS204:No)、温度センサ26により計測された冷却媒体の温度と、メモリ302に格納されている所定温度T3と比較する(ステップS205)。冷却媒体の温度が所定温度T3よりも低い場合は(ステップS205:No)、HV走行を維持して処理を終了する。即ち、通常走行モードによる走行が続けられる。
【0094】
冷却媒体の温度が所定温度T3より高い場合(ステップS205:Yes)、EFIECU30は、運転モードを制限走行モードへ移行させ、電動スロットル13の開度を例えば8度に制限する(ステップS206)。続いて、改めて温度センサ26により計測された冷却媒体の温度と、メモリ302に格納されている、所定温度T4と比較する(ステップS207)。冷却媒体の温度が所定温度T4よりも低い場合は(ステップS207:No)、制限走行モードを維持して処理を終了する。
【0095】
冷却媒体の温度が所定温度T4よりも高い場合(ステップS207:Yes)、EFIECU30は、フェイルセーフモードへ移行させ、(ステップS212)処理を終了する。
【0096】
電動ウォータポンプ22が故障していないと判定された場合は(ステップS203:No)、続いて、制限走行モードであるか否かを判定する(ステップS208)。制限走行モードである場合は(ステップS208:Yes)、既に温度制御処理における従前のサイクルにて制限走行モードに移行されているので、次に後述するステップS211の処理を行う。
【0097】
制限走行モードでない場合(ステップS208:No)、温度センサ26により計測された冷却媒体の温度と、メモリ302に格納されている、本発明に係る「第4所定温度」の一例としての所定温度T5と比較する(ステップS209)。ここで所定温度T5は、例えば摂氏105度であり、通常時に制限走行モードへ移行する温度である。冷却媒体の温度が所定温度T5より低い場合は(ステップS209:No)、HV走行を維持して処理を終了する。即ち、通常走行モードによる走行が続けられる。
【0098】
冷却媒体の温度が所定温度T5よりも高い場合(ステップS209:Yes)、EFIECU30は、運転モードを制限走行モードへ移行させ、電動スロットル13の開度を、例えば8度に制限する(ステップS210)。続いて、改めて温度センサ26により計測された冷却媒体の温度と、メモリ302に格納されている、本発明に係る「第2所定温度」の他の一例としての所定温度T6と比較する(ステップS211)。ここで所定温度T6は、例えば摂氏115度であり、通常時にフェイルセーフモードへ移行する温度である。冷却媒体の温度が所定温度T6よりも低い場合は(ステップS211:No)、制限走行モードを維持して処理を終了する。
【0099】
冷却媒体の温度が所定温度T6よりも高い場合(ステップS211:Yes)、EFIECU30は、運転モードをフェイルセーフモードへ移行させ(ステップS212)、処理を終了する。
【0100】
以上のように、本実施形態では、電動ウォータポンプ22の回転数や電流値等のポンプセンサ23により監視された動作状態に基づいて、EFIECU30が、電動ウォータポンプ22が故障しているか否かを判定する。故障していると判定した場合には、先ず、冷却媒体の温度が所定温度T3より高いか否かを判定し、所定温度T3よりも高い場合に、運転モードを制限走行モードへ移行させる。次に、改めて冷却媒体の温度が所定温度T4より高いか否かを判定し、所定温度T4よりも高い場合に、運転モードをフェイルセーフモードへ移行させる。従って、本実施形態によれば、電動ウォータポンプ22が故障した場合に、内燃機関11がオーバーヒートすることを防止することができる。加えて、冷却媒体の温度が所定温度T4になるまでは内燃機関11も使用して走行することができるので、運転モードをフェイルセーフモードへ移行させるまでの時間又は走行距離を長くすることができる。
【0101】
<第3実施形態>
本発明の冷却装置に係る第3実施形態を、図4及び5を参照して説明する。第3実施形態では、EFIECU30における温度制御処理が異なる以外は、第1実施形態の構成と同様である。よって、第3実施形態について、第1実施形態と重複する説明を省略する。
【0102】
本実施形態では、メモリ302は、図4に示すような複数の点火遅角マップを有している。ここで、図4(a)及び(b)は、夫々、通常時高水温点火遅角マップ及び故障時高水温点火遅角マップの一例である。ここで、「通常時」及び「故障時」とは、夫々、電動ウォータポンプ22が「故障していないとき」及び「故障しているとき」をいう。このようなマップは、例えば実験、シミュレーション等により取得したデータにより構成すればよい。具体的には例えば、様々な遅角量における、冷却媒体の温度の上昇又は下降の度合いのデータを取得し、該データ等に基づいてマップを構成すればよい。
【0103】
電動ウォータポンプ22が故障していると判定された場合は、EFIECU30において、CPU301は、温度センサ26により計測された冷却媒体の温度と、メモリ302に格納されている所定温度T7とを比較する。冷却媒体の温度が所定温度T7よりも高い場合、EFIECU30において、CPU301はメモリ302から故障時高水温点火遅角マップを選択する。これにより、冷却媒体の流量がゼロになる電動ウォータポンプ22の故障時において、温度センサ26の応答が遅くなることを考慮して、通常時と比べて低い温度、例えば摂氏60度以上で点火時期を遅角することにより、内燃機関11の燃焼室壁の温度上昇を抑制する。尚、本実施形態に係る所定温度T7は、本発明に係る「第5所定温度」の一例である。
【0104】
次に、本実施形態において、EFIECU30が実行する温度制御処理について、図5のフローチャートを参照して説明する。本実施形態では、第2実施形態における図3の温度制御処理のステップS203とステップS204との間、及びステップS203とステップS208との間の処理が図5のように変形されている。他の部分に関しては、第2実施形態と同様である。よって、第3実施形態について、第2実施形態と重複する説明を省略する。この温度制御処理は、主に車両が走行中に、例えば定期的に又は不定期的にコンマ数秒毎〜数秒毎に周期的に実行される。
【0105】
図5において、EFIECU30が、ポンプセンサ23により監視された電動ウォータポンプ22の動作状態に基づいて、該電動ウォータポンプ22が故障していると判定した場合(ステップS203:Yes)、温度センサ26により計測された冷却媒体の温度と、メモリ302に格納されている所定温度T7と比較する(ステップS301)。ここで所定温度T7は、例えば摂氏60度であり、故障時高水温点火遅角マップへ切換える温度である。
【0106】
冷却媒体の温度が所定温度T7よりも高い場合(ステップS301:Yes)、EFIECU30は、図4(b)に示すような故障時高水温点火遅角マップを選択する(ステップS302)。即ち、運転モードは、通常走行モードから、故障時高水温点火遅角モードに切り替えられるか、又は故障時高水温点火遅角モードのまま維持される。冷却媒体の温度が所定温度T7よりも低い場合は(ステップS301:No)、処理を終了する。即ち、通常走行モードによる走行が続けられる。
【0107】
電動ウォータポンプ22が故障していないと判定された場合(ステップS203:No)、温度センサ26により計測された冷却媒体の温度と、メモリ302に格納されている、本発明に係る「第6所定温度」の一例としての所定温度T8と比較する(ステップS303)。ここで所定温度T8は、例えば摂氏80度であり、通常時高水温点火遅角マップへ切換える温度である。
【0108】
冷却媒体の温度が所定温度T8よりも高い場合(ステップS303:Yes)、EFIECU30は、図4(a)に示すような通常時高水温点火遅角マップを選択する(ステップS304)。即ち、運転モードは、通常走行モードから通常時高水温点火遅角モードに切り替えられるか、又は通常時高水温点火遅角モードのまま維持される。冷却媒体の温度が所定温度T8よりも低い場合は(ステップS303:No)、処理を終了する。即ち、通常走行モードによる走行が続けられる。
【0109】
以上のように、本実施形態では、電動ウォータポンプ22が故障していると判定された場合、点火遅角マップを切換え、電動ウォータポンプ22が故障していない通常時と比べて低い温度から点火時期を遅角することにより、内燃機関11の燃焼室壁の温度上昇を抑制する。更に、冷却媒体の温度に応じて、運転モードを制限走行モードやフェイルセーフモードへ移行させる。従って、本実施形態によれば、電動ウォータポンプ22が故障した場合に、内燃機関11がオーバーヒートすることを防止することができる。更に、フェイルセーフモードに移行する温度(例えば、摂氏90度)になるまでは、点火時期を遅角することにより、内燃機関11の温度上昇を抑制しつつ或いは温度降下を促進しつつ、概ね通常の或いは通常走行に近い状態で走行することができる。
【0110】
<第4実施形態>
本発明の冷却装置に係る第4実施形態を、図6を参照して説明する。第4実施形態では、EFIECU30における温度制御処理が異なる以外は、第1実施形態の構成と同様である。よって、第4実施形態について、第1実施形態と重複する説明を省略する。
【0111】
本実施形態では、電動ウォータポンプ22が故障していると判定された場合、EFIECU30は、冷却媒体の温度に関係なく、ラジエータファン50を作動させ、内燃機関11を空冷し、内燃機関11の温度上昇を抑制する。
【0112】
次に、本実施形態において、EFIECU30が実行する温度制御処理について、図6のフローチャートを参照して説明する。本実施形態では、第2実施形態における図3の温度制御処理のステップS203とステップS204との間、及びステップS203とステップS208との間の処理が図6のように変形されている。他の部分に関しては、第2実施形態と同様である。よって、第4実施形態について、第2実施形態と重複する説明を省略する。この温度制御処理は、主に車両が走行中に、例えば定期的に又は不定期的にコンマ数秒毎〜数秒毎に周期的に実行される。
【0113】
EFIECU30が、ポンプセンサ23により監視された電動ウォータポンプ22の動作状態に基づいて、電動ウォータポンプ22が故障していると判定した場合(ステップS203:Yes)、EFIECU30は、冷却媒体の温度に関係なくラジエータファン50を作動させる(ステップS401)。
【0114】
電動ウォータポンプ22が故障していないと判定された場合(ステップS203:No)、温度センサ26により計測された冷却媒体の温度と、メモリ302に格納されている、所定温度T9と比較する(ステップS402)。ここで、本実施形態に係る所定温度T9は、例えば摂氏100度であり、本発明に係る「第7所定温度」の一例である。即ち、通常走行時におけるオーバーヒートを回避するために、ラジエータファン50を作動させる温度である。
【0115】
冷却媒体の温度が所定温度T9よりも高い場合(ステップS402:Yes)、EFIECU30は、ラジエータファン50を作動させる(ステップS403)。冷却媒体の温度が所定温度T9よりも低い場合は(ステップS402:No)、処理を終了する。即ち、通常走行モードによる走行が続けられる。
【0116】
以上のように、本実施形態では、電動ウォータポンプ22が故障していると判定された場合、EFIECU30は、冷却媒体の温度に関係なく、ラジエータファン50を作動させ、内燃機関11の温度上昇を抑制する。更に、冷却媒体の温度に応じて、運転モードを制限走行モードやフェイルセーフモードへ移行させる。従って、本実施形態によれば、電動ウォータポンプ22が故障した場合に、内燃機関11がオーバーヒートすることを防止することができる。更に、フェイルセーフモードに移行する温度(例えば、摂氏90度)になるまでは、ラジエータファン50を利用して、内燃機関11の温度上昇を抑制しつつ或いは温度降下を促進しつつ、概ね通常の或いは通常走行に近い状態で走行することができる。
【0117】
<第5実施形態>
本発明の冷却装置に係る第5実施形態を、図7を参照して説明する。第5実施形態では、EFIECU30における温度制御処理が異なる以外は、第1実施形態の構成と同様である。よって、第5実施形態について、第1実施形態と重複する説明を省略する。
【0118】
本実施形態では、電動ウォータポンプ22が故障していると判定された場合、先ず、EFIECU30において、CPU301は、温度センサ26により計測された冷却媒体の温度と、メモリ302に格納されている所定温度T10とを比較する。ここで、本実施形態に係る所定温度T10は、例えば、サーモスタット24による冷却媒体の流量制御によって温度制御可能な上限温度であり、本発明に係る「第1所定温度」の一例である。
【0119】
冷却媒体の温度が所定温度T10より大きい場合、EFIECU30は、運転モードをフェイルセーフモードへ移行させる。ここに、フェイルセーフモードの典型例は、第1実施形態等におけるEV走行(ステップS106)或いは狭義のフェイルセーフモードである。しかし、これに限らず、ここでの「フェイルセーフモード」は、制限走行モード、点火遅角を切り替える運転モード、電動ファンを作動させる運転モード等までも含めた、広義のフェイルセーフモードであってもよい。
【0120】
このように構成すれば、例えば、一時的に電動ウォータポンプ22が停止したり、ポンプセンサ23が故障したりして、電動ウォータポンプ22が故障したと判定された場合、即ち、誤判定された場合において、車両が直ちにフェイルセーフモードに移行することを防止することができる。また、電動ウォータポンプ22が故障していた場合であっても、内燃機関11がオーバーヒートすることを防止することができる。
【0121】
次に、本実施形態において、EFIECU30が実行する温度制御処理について、図7のフローチャートを参照して説明する。この温度制御処理は、主に車両が走行中に、例えば定期的に又は不定期的にコンマ数秒毎〜数秒毎に周期的に実行される。
【0122】
図7において、先ず、EFIECU30は、ポンプセンサ23により監視された電動ウォータポンプ22の動作状態に基づいて、該電動ウォータポンプ22が故障しているか否かを判定する(ステップS501)。電動ウォータポンプ22が故障していないと判定された場合は(ステップS501:No)、引き続き通常の走行を行い(ステップS506)、処理を終了する。ここで、本実施形態に係る通常の走行とは、内燃機関11と電動モータ40とを併用するHV走行のこと(即ち、通常走行モードの走行)をいう。
【0123】
電動ウォータポンプ22が故障していると判定された場合(ステップS501:Yes)、温度センサ26により計測された冷却媒体の温度と、メモリ302に格納されている所定温度T10と比較する(ステップS502)。ここで、本実施形態に係る所定温度T10は、例えば摂氏95度である。
【0124】
冷却媒体の温度が所定温度T10よりも高い場合(ステップS502:Yes)、EFIECU30は、運転モードをフェイルセーフモードに移行させ(ステップS503)、処理を終了する。冷却媒体の温度が所定温度T10よりも低い場合(ステップS502:No)、続いて、運転モードがフェイルセーフモードであるか否かが判定される(ステップS504)。フェイルセーフモードでない場合(ステップS504:No)、引き続き通常の走行を行い(ステップS506)、処理を終了する。
【0125】
フェイルセーフモードである場合(ステップS504:Yes)、温度センサ26により計測された冷却媒体の温度と、メモリ302に格納されている所定温度T11と比較する(ステップS505)。ここで、所定温度T11は、例えば摂氏92度である。冷却媒体の温度が所定温度T11よりも高い場合(ステップS505:Yes)、フェイルセーフモードを維持して、処理を終了する。冷却媒体の温度が所定温度T11より低い場合(ステップS505:No)、通常の走行に移行し(ステップS506)、即ち通常走行モードに復帰し、処理を終了する。
【0126】
以上のように、本実施形態では、電動ウォータポンプ22が故障していると判定された場合、サーモスタット24による冷却媒体の流量制御によって温度制御可能な上限温度以上で、フェイルセーフモードに移行させる。これにより、誤判定であれば、正常に電動ウォータポンプ22が駆動しているので、冷却媒体の循環があり、サーモスタット24により温度制御が可能である。一方、電動ウォータポンプ22が故障している場合であっても、フェイルセーフモードに移行する冷却媒体の温度が、通常時よりも低いので、内燃機関11がオーバーヒートすることを防止することができる。
【0127】
従って、本実施形態によれば、実際にはオーバーヒートしない状況でフェイルセーフモードに移行してしまうことを防止することができる。また、冷却媒体の温度が所定温度より高い場合は、速やかにフェイルセーフモードに移行するので、内燃機関11がオーバーヒートすることを防止することができる。
【0128】
<第6実施形態>
本発明の冷却装置に係る第6実施形態を、図8及び図9を参照して説明する。第6実施形態では、EFIECU30における温度制御処理が異なる以外は、第1実施形態の構成と同様である。よって、第6実施形態について、第1実施形態と重複する説明を省略する。
【0129】
本実施形態では、電動ウォータポンプ22が故障していると判定された場合、温度センサ26により、電動ウォータポンプ22が故障していると判定された際における冷却媒体の第1温度が計測され、メモリ302に記憶される。第1温度の計測と相前後して、EFIECU30は、エアフローメータ14からの内燃機関11に吸入される空気量を示す信号に基づいて、本発明に係る「空気量の累積値」の一例としての累積空気量Vaの検出を開始する。
【0130】
累積空気量Vaがメモリ302に格納されている所定累積値Vathに達した際に、EFIECU30は、温度センサ26により測定された、冷却媒体の第2温度とメモリ302に記憶されている第1温度との温度差を求める。該温度差がメモリ302に格納されている所定温度差ΔTより大きい場合、EFIECU30は、車両の運転モードをフェイルセーフモードへ移行させる。ここに、本実施形態に係るEFIECU30は、本発明に係る「温度差判定手段」の一例である。
【0131】
ここで、図8を参照して、電動ウォータポンプ22が故障しているとき(即ち、故障時)及び故障していないとき(即ち、正常時)における、内燃機関11の燃焼室壁温度及び冷却媒体温度の時間変化について説明を加える。ここに図8は、燃焼室壁温度及び冷却媒体温度の時間変化の一例を示すグラフである。図8において、実線a及び破線cは、夫々、故障時における燃焼室壁温度及び冷却媒体温度であり、一点鎖線b及び二点鎖線dは、夫々、正常時における燃焼室壁温度及び冷却媒体温度である。
【0132】
図8からわかるように、正常時における燃焼室壁温度及び冷却媒体温度は、ある温度でほぼ一定に推移している。従って、ある期間における温度変化、即ち温度差は殆どない。これに対して、故障時においては、温度は上昇し続けるため温度差が生じることとなる。尚、仮にグラフの立ち上がり付近(即ち、図8に示すグラフの左側近傍)において、電動ウォータポンプ22が故障したとしても、故障時及び正常時で温度上昇の程度が異なるので、例えば、内燃機関11を始動させてからの時間や電動ウォータポンプ22が故障していると判定された際に計測される冷却媒体の第1温度によって、所定温度差ΔTを変化させることにより対応することが可能である。
【0133】
次に、本実施形態において、EFIECU30が実行する温度制御処理について、図9のフローチャートを参照して説明する。この温度制御処理は、主に車両が走行中に、例えば定期的に又は不定期的にコンマ数秒毎〜数秒毎に周期的に実行される。
【0134】
図9において、先ず、EFIECU30は、ポンプセンサ23により監視された電動ウォータポンプ22の動作状態に基づいて、該電動ウォータポンプ22が故障しているか否かを判定する(ステップS601)。電動ウォータポンプが故障していないと判定された場合は(ステップS601:No)、引き続き通常の走行を行い(ステップS609)、処理を終了する。ここで、本実施形態に係る通常の走行とは、内燃機関11と電動モータ40とを併用するHV走行のこと(即ち、通常走行モードの走行)をいう。
【0135】
電動ウォータポンプ22が故障していると判定された場合(ステップS601:Yes)、温度センサ26により冷却媒体の第1温度が計測され(ステップS602)、EFIECU30は、エアフローメータ14からの内燃機関11に吸入される空気量を示す信号に基づいて、累積空気量Vaの検出する(ステップS603)。
【0136】
続いて、累積空気量Vaが所定空気量Vath以上か否かが判定される(ステップS604)。累積空気量Vaが、所定空気量Vathより少ない場合(ステップS604:No)、引き続き通常の走行を行い(ステップS609)、処理を一旦終了する。尚、本実施形態に係る温度制御処理は、周期的に実行されているため、仮に今回実行された温度制御処理において、累積空気量Vaが所定空気量Vathより少なかったとしても、次回以降に実行される温度制御処理において、累積空気量Vaが所定空気量Vath以上になれば、後述するステップS605以降の処理が行われる。この場合、例えば電動ウォータポンプ22が故障していると判定されたというflagを立て、次回以降の温度制御処理はステップS603から開始するようにしてもよい。
【0137】
累積空気量Vaが、所定空気量Vath以上である場合(ステップS604:Yes)、温度センサ26により冷却媒体の第2温度が計測(ステップS605)され、EFIECU30により第1及び第2温度の温度差が求められる(ステップS606)。
【0138】
続いて、温度差が所定温度差ΔTより大きいか否かが判定され(ステップS607)、温度差が所定温度差ΔTより大きい場合(ステップS607:Yes)、EFIECU30は、運転モードをフェイルセーフモードに移行させ(ステップS608)、処理を終了する。温度差が所定温度差ΔTより小さい場合(ステップS607:No)、引き続き通常の走行を行い(ステップS609)、処理を終了する。
【0139】
以上のように、本実施形態では、電動ウォータポンプ22が故障していると判定された場合、温度差が所定温度差ΔTより大きければ、運転モードをフェイルセーフモードへ移行させ、温度差が所定温度差ΔTより小さければ、運転モードをフェイルセーフモードへ移行させない、即ち通常の運転モードを維持させる。
【0140】
従って、本実施形態によれば、電動ウォータポンプ22が故障した場合に、内燃機関11がオーバーヒートすることを防止することができる。加えて、オーバーヒートしてしまってからフェイルセーフモードに移行したり、実際にはオーバーヒートしない状況でフェイルセーフモードに移行してしまったりすることを防止することができる。
【0141】
尚、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う冷却装置もまた、本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】本発明の第1実施形態に係る冷却装置のブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るEFIECUにおける処理を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第2実施形態に係るEFIECUにおける処理を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第3実施形態に係る通常時高水温点火遅角マップ(a)、及び故障時高水温点火遅角マップ(b)の一例である。
【図5】本発明の第3実施形態に係るEFIECUにおける処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第4実施形態に係るEFIECUにおける処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第5実施形態に係るEFIECUにおける処理を示すフローチャートである。
【図8】内燃機関の燃焼室壁温度及び冷却媒体温度の時間変化の一例を示すグラフである。
【図9】本発明の第6実施形態に係るEFIECUにおける処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0143】
1…冷却装置、11…内燃機関、12…吸気通路、13…電動スロットル、14…エアフローメータ、21…循環流路、22…電動ウォータポンプ、23…ポンプセンサ、24…サーモスタット、25…ラジエータ、26…温度センサ、30…EFIECU、40…電動モータ、50…ラジエータファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関及び電動モータを備える車両において前記内燃機関を冷却する冷却装置であって、
前記内燃機関を冷却する冷却媒体が流れる循環流路と、
前記冷却媒体を循環させる電動ウォータポンプと、
前記冷却媒体の温度を計測する温度計測手段と、
前記電動ウォータポンプが故障しているか否かを判定する故障判定手段と、
前記電動ウォータポンプが故障していると判定された場合に、前記計測された温度が第1所定温度より高いことを条件に、当該車両の運転モードをフェイルセーフモードへ移行させる移行制御手段と
を備えることを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記故障判定手段は、
前記電動ウォータポンプの動作状態を監視する監視手段を含み、
前記監視された動作状態に基づいて、前記電動ウォータポンプが故障しているか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記移行制御手段は、
前記電動ウォータポンプが故障していると判定された場合に、前記計測された温度が前記第1所定温度より高いか否かを判定する温度判定手段を含み、
前記計測された温度が前記第1所定温度より高いと判定された場合に、前記運転モードを前記フェイルセーフモードへ移行させ、前記計測された温度が前記第1所定温度より低いと判定された場合に、前記運転モードを前記フェイルセーフモードへ移行させない
ことを特徴する請求項1又は2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記移行制御手段は、前記電動ウォータポンプが故障していないと判定された場合に、前記計測された温度が、前記第1所定温度より高い第2所定温度より高いことを条件に、前記運転モードを前記フェイルセーフモードへ移行させる
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記車両は、前記内燃機関への空気の供給量を調節する電動スロットルを更に備え、
前記フェイルセーフモードは、前記車両が前記電動モータにより走行するモードであり、
前記移行制御手段は、前記電動ウォータポンプが故障していると判定された場合に、前記計測された温度が、前記第1所定温度より低く且つ前記第1所定温度より低い第3所定温度より高いことを条件に、前記運転モードを、前記電動スロットルの開度を制限する制限走行モードへ移行させる
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の冷却装置。
【請求項6】
複数の点火遅角マップを有する記憶手段を更に備え、
前記移行制御手段は、前記電動ウォータポンプが故障していると判定された場合に、前記点火遅角マップを切換えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の冷却装置。
【請求項7】
前記内燃機関を冷却する電動ファンを更に備え、
前記移行制御手段は、前記電動ウォータポンプが故障していると判定された場合に、前記電動ファンを作動させることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の冷却装置。
【請求項8】
内燃機関及び電動モータを備える車両において前記内燃機関を冷却する冷却装置であって、
前記内燃機関を冷却する冷却媒体が流れる循環流路と、
前記冷却媒体を循環させる電動ウォータポンプと、
前記冷却媒体の温度を計測する温度計測手段と、
前記内燃機関に吸入される空気量を検出する空気量検出手段と、
前記電動ウォータポンプが故障しているか否かを判定する故障判定手段と、
前記電動ウォータポンプが故障していると判定された場合に、前記電動ウォータポンプが故障していると判定された際に計測された前記冷却媒体の温度と、前記検出された空気量の累積値が所定累積値に達した際に計測された前記冷却媒体の温度との差が、所定温度差より大きいことを条件に、当該車両の運転モードをフェイルセーフモードへ移行させる移行制御手段と
を備えることを特徴とする冷却装置。
【請求項9】
前記移行制御手段は、少なくとも前記電動ウォータポンプが故障していると判定された際に計測された前記冷却媒体の温度を記憶する記憶手段を含むことを特徴とする請求項8に記載の冷却装置。
【請求項10】
前記移行制御手段は、
前記差が、前記所定温度差より大きいか否かを判定する温度差判定手段を含み、
前記差が前記所定温度差より大きいと判定された場合に、前記運転モードを前記フェイルセーフモードへ移行させ、前記差が前記所定温度差より小さいと判定された場合に、前記運転モードを前記フェイルセーフモードへ移行させない
ことを特徴とする請求項8又は9に記載の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−121656(P2008−121656A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−351317(P2006−351317)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】