説明

内燃機関の制御装置

【課題】本発明は、内燃機関の制御装置に関し、オイル消費量が過多である場合の弊害の発生を確実に回避することを目的とする。
【解決手段】本発明の内燃機関の制御装置は、内燃機関のオイル消費の速さを検出するオイル消費検出手段(ステップ102〜106)と、オイル消費検出手段により検出されたオイル消費の速さが所定の基準を超えている場合に、内燃機関の負荷が制限されるようにするための制御を実行する負荷制限手段(ステップ114)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のオイル量が不足すると、エンジンの焼き付きなどの重大な故障が発生するおそれがある。特開2003−201905号公報には、エンジンオイルの不足を運転者等に認識させてエンジンの焼き付き発生を防止するために、エンジンオイルの量が所定値以下と検出された場合に、エンジン始動時には該エンジンの始動を一時的に抑止するエンジン制御システムが開示されている。また、このエンジン制御システムでは、エンジンオイルの量が所定値以下と検出された場合、エンジン運転時には該エンジンの運転停止を抑止することにより、エンジン運転中における急なエンジン停止を防止して、運転者にとっての不具合発生を防止ないし抑制することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−201905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術は、エンジンオイルの量が不足した場合の問題に備えたものである。これに対し、エンジンオイルの不足に至らなくても、エンジンオイルの消費量が多すぎる場合には次のような問題がある。製品出荷時には、オイル消費量が適正な範囲となるように品質管理されているが、例えば経年によりピストンリングやシリンダボアの摩耗が進んだような場合には、いわゆるオイル上がりによるオイル消費量が増大することがある。オイル消費量が過多のときは、燃焼室内で過剰な量のオイルが燃焼していることになる。燃焼室内で燃焼するオイル量が過剰であると、プレイグニションや過大なノックなどの異常燃焼が発生し易い。これらの異常燃焼が発生すると、異常な騒音が発生したり、エンジンにダメージを与えたりするおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、オイル消費量が過多である場合の弊害の発生を確実に回避することのできる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、内燃機関の制御装置であって、
内燃機関のオイル消費の速さを検出するオイル消費検出手段と、
前記オイル消費検出手段により検出されたオイル消費の速さが所定の基準を超えている場合に、前記内燃機関の負荷が制限されるようにするための制御を実行する負荷制限手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
第1の発明によれば、内燃機関のオイル消費が速く、燃焼室内でのオイルの燃焼によって異常燃焼のおそれがあると予測される場合には、内燃機関の負荷を制限することにより、異常燃焼の発生を未然に防止することができる。このため、異常燃焼の弊害、すなわち異常な騒音が発生したり、エンジンにダメージを与えたりすることを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための図である。
【図2】本発明の実施の形態1において実行されるルーチンのフローチャートである。
【図3】オイル消費の速さを判定する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための図である。図1に示すエンジン(内燃機関)10は、図示しない車両に動力源として搭載されるものとする。エンジン10の各気筒には、往復移動可能なピストン15と、燃焼室16と、吸気弁24と、排気弁25と、吸気ポート内に燃料を噴射するインジェクタ28と、点火プラグ32とが設けられている。なお、本発明では、エンジン10は、図示のようなポート噴射式のものに限らず、燃料を燃焼室16内に直接的に噴射する筒内インジェクタを備えたものであってもよい。また、ポート噴射と筒内噴射とを併用するものであってもよい。
【0010】
エンジン10のクランクシャフト17の近傍には、クランク角や機関回転速度を検出するクランク角センサ20が配設されている。吸気通路26には、吸入空気量を調量する電子制御スロットルバルブ(以下、単に「スロットルバルブ」という)36が設けられている。スロットルバルブ36は、スロットルバルブモータ37によって開閉制御される。スロットルバルブモータ37は、後述するECU(Electronic Control Unit)50からの信号により電気的にその駆動が制御される。スロットルバルブ36の開度(以下「スロットル開度」という)は、スロットルセンサ37aによって検出され、その検出結果がECU50に取り込まれる。車両の運転席のアクセルペダル38の近傍には、アクセルペダル38の踏み込み量(以下「アクセル開度」という)を検出するアクセル開度センサ39が設けられている。また、エンジン10には、図示しないオイルパン内のエンジンオイル(潤滑油)の量(油面の高さ)を検出するオイルレベルセンサ40が設置されている。
【0011】
ECU50には、上述したものを含む各種のセンサおよびアクチュエータが電気的に接続されている。ECU50は、各センサの検出結果に基づいて各アクチュエータを駆動制御することにより、エンジン10の運転を制御する。
【0012】
本実施形態のエンジン10には、自動変速機44が連結されている。エンジン10のクランクシャフト17は、トルクコンバータ41のポンプインペラー46と連結されており、この両者は一体となって回転する。トルクコンバータ41のタービンランナー47は、自動変速機44の変速機構への入力軸42と連結されており、この両者は一体となって回転する。自動変速機44の出力軸48は、図示しないディファレンシャルギアおよびドライブシャフトを介して、図示しない駆動輪に連結されている。自動変速機44の変速機構は、有段式、無段式の何れでもよい。
【0013】
自動変速機44は、ECU50により制御される。ECU50には、自動変速機44のギヤ段または変速比を決定するための変速線が記憶されている。ECU50は、図示しない車速センサによって検出される車速情報と、スロットル開度(または図示しない吸気管圧力センサにより検出される吸気管圧)などの情報と、上記変速線とに基づいて、自動変速機44のギヤ段または変速比を決定し、自動変速機44に変速を実行させる。
【0014】
経年によりエンジン10のピストンリングやシリンダボアの摩耗が進んだような場合には、いわゆるオイル上がりによるオイル消費量が増大する場合がある。また、エンジン10の個体差によって、オイル消費量の多い傾向が生ずる場合もある。あるいは、エンジンブレーキを多用するなど、ユーザーの運転の仕方によって、オイル消費量が増大する場合もある。オイル消費量が過多のときは、燃焼室16内で過剰な量のオイルが燃焼していることになる。燃焼室16内で燃焼するオイル量が過剰であると、プレイグニションや過大なノックなど(以下、総称して「異常燃焼」と言う)が発生し易い。このような異常燃焼が発生すると、異常な騒音が発生したり、エンジン10にダメージを与えたりするおそれがある。過剰なオイルの燃焼に起因する異常燃焼は、エンジン10が高負荷領域で運転されている場合に発生し易い。このため、オイル消費量が過多の場合であっても、エンジン10が高負荷領域で運転されないようにすれば、異常燃焼の発生を防止することができる。
【0015】
以上のような事項に鑑みて、本実施形態では、エンジン10のオイル消費の速さを検出し、その検出されたオイル消費の速さを所定の基準と比較することにより、オイル消費量が過多であるかどうかを判定することとした。そして、オイル消費量が過多である場合には、異常燃焼の発生を防止するため、エンジン10の負荷を制限する制御を実行することとした。
【0016】
図2は、上記の機能を実現するために本実施形態においてECU50が実行するルーチンのフローチャートである。図2に示すルーチンによれば、まず、オイルレベルセンサ40の出力に基づいてオイルパン内のオイル量を検出するための所定の条件が成立しているかどうかが判断される(ステップ100)。オイル消費量を正確に検出するためには、オイルパン内のオイル量を毎回同じ条件で検出する必要がある。このステップ100は、その条件を判断するものである。例えば、エンジン10の始動時にオイル量を検出することとしている場合には、始動時であるかどうかがステップ100で判断される。
【0017】
上記ステップ100で、オイル量の検出条件が成立していると判定された場合には、オイルレベルセンサ40の出力に基づいてオイルパン内のオイル量が算出される(ステップ102)。続いて、前回算出されたオイル量と、今回算出されたオイル量との差が、オイル消費量として算出される(ステップ104)。そして、その算出されたオイル消費量に基づいて、オイル消費の速さが所定の基準より速いかどうかが以下のようにして判断される(ステップ106)。
【0018】
図3は、オイル消費の速さを判定する方法を説明するための図である。図3の横軸は、車両の走行距離である。走行距離は、図示しない走行距離計により検出され、その検出結果はECU50に入力される。図3の縦軸は、上記ステップ104により算出されたオイル消費量の積算値である。図3に示すように、本実施形態では、走行距離の伸びに対するオイル消費量の伸びの傾きが、正常範囲内として想定される傾きの上限を超えている場合には、オイル消費の速さが基準を超えていると判定する。そこで、上記ステップ106では、走行距離の伸びに対するオイル消費量の伸びの傾きQlocを算出し、このQlocと、正常範囲内として想定される傾きの上限に相当する規定値Qtとを比較することにより、オイル消費の速さが基準を超えているかどうかが判定される。
【0019】
上記ステップ106で、Qloc>Qtが成立する場合には、オイル消費の速さが基準を超えていると判定され、その旨を表すオイル消費大フラグXlocがONとされる(ステップ108)。これに対し、Qloc>Qtが不成立の場合、すなわちQloc≦Qtである場合には、オイル消費の速さは正常範囲内であるので、オイル消費大フラグXlocがOFFとされる(ステップ110)。
【0020】
続いて、オイル消費大フラグXlocの値が判断される(ステップ112)。このステップ112において、オイル消費大フラグXlocがOFFである場合には、エンジン10の負荷を制限する必要はないので、本ルーチンの処理がそのまま終了される。これに対し、オイル消費大フラグXlocがONである場合には、エンジン10の負荷を所定負荷以下に制限する負荷制限制御が実行される(ステップ114)。
【0021】
ステップ114の負荷制限制御としては、例えば、スロットル開度を制限する制御を行うことができる。スロットル開度を制限することにより、吸入空気量が制限されるので、エンジン10の負荷を制限することができる。また、電子制御式ウェイストゲート弁を有するターボチャージャを備えたエンジンの場合には、スロットル開度を制限する制御に代えて、ウェイストゲート弁を開くことによってエンジン10の負荷を制限する制御を行ってもよい。ウェイストゲート弁を開くことにより、過給圧の上昇が抑制されるので、エンジン10の負荷を制限することができる。
【0022】
また、ステップ114の負荷制限制御としては、上記のようなエンジン側の制御に代えて、自動変速機44の変速線を変更する制御を行うことによってエンジン10の負荷を制限するようにしてもよい。この場合には、通常の変速線と比べて低いギヤ段または大きな変速比が選択されるように変速線を変更することにより、エンジン10の使用領域が低負荷側にシフトするので、エンジン10の負荷を制限することができる。
【0023】
以上説明したように、本実施形態によれば、オイル消費量が過多となる状態が生じている場合には、エンジン10の負荷を制限することができる。これにより、過剰なオイルの燃焼による異常燃焼が発生することを未然に回避することができる。このため、異常な騒音が発生したり、エンジン10にダメージを与えたりするなどの、異常燃焼の弊害を確実に防止することができる。
【0024】
上述した実施の形態1においては、ECU50が、上記ステップ102〜106の処理を実行することにより前記第1の発明における「オイル消費検出手段」が、上記ステップ114の処理を実行することにより前記第1の発明における「負荷制限手段」が、それぞれ実現されている。
【符号の説明】
【0025】
10 エンジン
15 ピストン
16 燃焼室
24 吸気弁
25 排気弁
26 吸気通路
28 インジェクタ
32 点火プラグ
36 スロットルバルブ
44 自動変速機
50 ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のオイル消費の速さを検出するオイル消費検出手段と、
前記オイル消費検出手段により検出されたオイル消費の速さが所定の基準を超えている場合に、前記内燃機関の負荷が制限されるようにするための制御を実行する負荷制限手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−112300(P2012−112300A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261460(P2010−261460)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】