説明

内燃機関の吸気口に排気ガスを再導入する方法、及びそれを使用した機関

【課題】排気ガス再導入を行う内燃機関において、燃焼の改善、熱交換機の汚染防止等を図る。
【解決手段】内燃機関の吸気口に排気ガスを再導入する方法では、機関排気行程中に、機関の気筒10の燃焼室60に入っている排気ガスの一部が、機関の運転範囲において、第1の流体循環回路C1に送り込まれ、ガスの残りの部分が排気回路24に排出される。機関吸気行程中に、第1の流体循環回路C1に送り込まれた排気ガスが冷却され、冷却され再循環された排気ガスが、機関の空気供給回路から供給された新気AFと混合され、再循環された排気ガスと新気との混合物が第2の流体循環回路C2に送り込まれ、第2の流体循環回路C2に送り込まれた混合物が燃焼室60に送り込まれる前に冷却される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の吸気口に排気ガスを再導入する方法、及びそれを使用した機関に関する。
【0002】
この種の内燃機関では、排気ガスを吸気口に再導入することによって、大気中に排出される酸化窒素(NOx)の割合を大幅に削減することができる。
【背景技術】
【0003】
再循環は一般に、機関の排気多岐管をその吸気分配器に連結する管と、この管内に配置されたEGR(排気ガス再循環)弁と呼ばれる弁と、を有する、EGR回路と呼ばれる回路によって行われる。
【0004】
広く知られているように、大気へのNOx排出を最小限に抑えられるようにするために、再循環ガスは一般に、機関吸気口に送られる前に冷却される。従って、管上に熱交換器が配置され、排気ガスは、熱交換器内を流れながら冷却される。
【0005】
このEGR回路構成は、当業者に公知であり、「外部EGR」としてよりよく知られている。
【0006】
特許文献1に記載されているように、一般に「IGR」(内部ガス循環または内部ガス残留)と呼ばれ、特別な外部排気ガス再循環回路を使用せずに機関吸気口に排気ガスを再導入することができる「内部EGR」も公知である。
【0007】
このように、内燃機関は、燃焼室を備えた気筒と、排気弁を含む排気手段と、排気多岐管と、吸気弁を含む吸気手段と、吸気分配器と、吸気分配器内に配置された再循環排気ガス冷却交換機または冷却器と、を有している。
【0008】
この種の機関では、排気ガスが吸気口に再導入され、機関吸気行程中に流入する新気と混合される。
【0009】
従って、排気弁が開いている機関排気行程中に、吸気弁も所定の時間に渡って開かれる。燃焼室に入っている排気ガスは、排気多岐管と吸気分配器とに同時に排出される。上記の例では、吸気弁は、排気行程が終了する前、好ましくは排気弁が閉じる前に閉じる。特許文献1に示す例では、吸気分配器に入っている排気ガスは、冷却器によって冷却され、分配器内で所望の温度に維持される。
【0010】
機関吸気行程中に、吸気弁は、実質的に排気弁が閉じたときに再び開く。分配器に入っている冷却された排気ガスと流入する新気は、燃焼サイクルの残りの部分で、吸気弁を通して機関燃焼室に送り込まれる。
【特許文献1】国際公開第2006/018699号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この構成は、満足行くものであるが、いくつかのかなり顕著な欠点を伴っている。
【0012】
実際、再循環排気ガス及び新気を燃焼室に導入しても、2つの流体を均質に混合することはできない。このため、機関圧縮行程の終了時の近くで燃料噴射が行われた時に、混合物の燃焼が乱される。
【0013】
さらに、冷却器内を排気ガスが流れる際に、ガスによって運ばれる粒子が付着して、冷却器が汚染される。従って、冷却器はその交換容量を失い、従って、その性能が低下する。
【0014】
さらに、排気ガスが冷却器内を流れるときに、ガス中に存在する水蒸気が凝縮することがある。水蒸気は次に、吸気行程中に気筒内に再導入され、燃料混合物の燃焼を妨害する可能性がある。
【0015】
同様に、冷却器内を流れる排気ガスの量を調節することは困難であり、かなりの量のガスが冷却されないことがある。
【0016】
本発明の目的は、簡素な構成の内燃機関の吸気口に排気ガスを再導入するという方法によって、前述の欠点を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
従って、本発明は、内燃機関の吸気口に排気ガスを再導入する方法であって、機関排気行程中に、機関の気筒の燃焼室に入っている排気ガスの一部が、機関の運転範囲において、第1の流体循環回路に送り込まれ、排気ガスの残りの部分が排気回路に排出される方法において、機関吸気行程中に、第1の流体循環回路に送り込まれた排気ガスを冷却することと、冷却され再循環された排気ガスを、機関の空気供給回路から供給された新気と混合することと、再循環された排気ガスと新気との混合物を第2の流体循環回路に送り込むことと、第2の流体循環回路に送り込まれた混合物を燃焼室に送り込む前に冷却することと、を有することを特徴とする方法に関する。
【0018】
この方法は、第1の流体循環回路の少なくとも一部を閉鎖することと、第1の流体循環回路の閉鎖された部分に排気ガスの一部を送り込んで、排気ガスを加圧することと、を有していてもよい。
【0019】
この方法は、排気ガスの冷却と、混合物の冷却とを、第1及び第2の流体循環回路に共通する熱交換器によって行うことができる。
【0020】
本発明は、燃焼室を含む少なくとも1本の気筒を有する内燃機関であって、各々が吸気弁を含む少なくとも2つの吸気手段と、各吸気手段に連結された分配器と、各分配器を新気の供給回路に連結する出口管と、を有することを特徴とする内燃機関にも関する。
【0021】
2本の出口管上に配置された熱交換器を有していてもよい。
【0022】
熱交換器は複流冷却器であることが有利である。
【0023】
2本の出口管は、合流ゾーン内で、新気の供給回路と合流していてもよい。
【0024】
望ましくは、出口管のうちの1本は絞り手段を備えている。
【0025】
絞り手段は、分配器と熱交換器との間に配置されていてもよい。
【0026】
吸気弁の少なくとも一方の揚程特性を変更することができる制御手段を有していてもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、上述の課題を解決することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1を参照すると、直接燃料噴射ディーゼル型の内燃機関は、少なくとも2つの吸気手段12,14を備えた少なくとも1つの気筒10を有し、各吸気手段12,14は、各々の吸気手段12,14用の吸気弁16,18と、吸気管20,22と、を含んでいる。以下の説明では、弁16と管20とを含む吸気手段12を吸気/排気手段と呼び、弁18と管22とを含む吸気手段14に対して、吸気手段12をより適切に区別している。気筒は少なくとも1つの排気手段24を含む排気回路も有しており、排気手段24は、排気弁26と、排気管28と、不図示の排気多岐管と、を有している。
【0029】
吸気/排気手段12の弁16、及び場合によっては吸気弁18の開閉は、VVA(可変弁作動)手段と呼ばれる手段などの、これらの弁の揚程特性を特に弁の開閉時に互いに独立して変更することができる手段30,32によって制御される。
【0030】
同様に、排気弁26は、VVA型手段などの、弁の揚程特性を変更することができる手段34によって制御することができる。
【0031】
手段30,32,34は、あらゆる機関が通常備える制御ユニットまたは機関計算機(不図示)によって制御され、制御ユニットまたは機関計算機は、特にこれらの弁の揚程特性を、機関作動条件または作動範囲に応じて制御することができる。
【0032】
図1により分かりやすく示されているように、吸気管20は、吸気/排気分配器と呼ばれる分配器36で終端し、管22は、分配器36とは別の他の吸気分配器38で終端している。
【0033】
これらの分配器の出口管40,42は、新気の供給回路に含まれる管46に連結された分岐配管44で構成される合流ゾーンで終端している。新気は、大気圧の空気、または過給された空気、すなわち、ターボコンプレッサなどの任意の手段によって圧縮された空気とすることができる。
【0034】
複流熱交換器48、すなわち冷却器が、分配器36,38と分岐配管44との間の2本の出口管40,42に配置されており、これらの管内を流れる流体を冷却することができる。この冷却器は、エンジンの作動中に、入口50を通して冷却器の一端に導入され、出口52を通して冷却器の他端から流出する冷却液(または熱伝達媒体)を絶えず保持している。この冷却器はシングルパス冷却器と呼ばれ、従って、管40内を第1の方向に流れる任意の流体を冷却し、次に管42を同じ方向または他の方向、一般には逆方向に流れることによって管42内を流れるこの流体または他の流体を冷却することができる。
【0035】
入口50を通して冷却器に送り込まれた冷却液が管42内を流れる流体との熱交換によって加熱され、冷却液が、入口温度より高い冷却液温度で冷却器48の残りの部分に到達し、管40内を流れる流体と熱交換することが分るであろう。
【0036】
冷却器に使用される冷却液は、機関冷却回路のバイパス配管または低温水回路から送られることが好ましい。
【0037】
必須ではないが、冷却器48と分岐配管44との間の出口管40上に弁54が設けられていることが有利である。この弁は、吸気/排気分配器36と冷却器48との間に設けることもできる。
【0038】
弁は、出口管40の全開位置(図では点線)と全閉位置(鎖線)との間のすべての位置をとることができるが、全開位置と全閉位置の2つの位置だけをとる弁であってもよい。
【0039】
このように、機関は、吸気/排気手段12と、吸気/排気分配器36と、弁54と冷却器48の一部を保持する出口管40と、を含む第1の流体循環回路C1を有している。またこの機関は、吸気手段14と、吸気分配器38と、冷却器48の残りの部分を保持する出口管42と、を含む第2の流体循環回路C2を有している。
【0040】
さらに、広く知られているように、気筒10は、機関が通常備える、クランクシャフト(不図示)のクランクピンに連結されたロッド58によって、下死点(BDC)と呼ばれる下方位置と上死点(TDC)と呼ばれる上方位置との間を往復並進運動で移動可能なピストン56を有している。
【0041】
この気筒はまた、ピストンの頂部と、気筒壁と、ピストンと向かい合う気筒ヘッド62の壁と、によって画定された燃焼室60を有している。吸気手段12,14及び排気手段24は、燃焼室内で燃料混合物を得るのを可能にする燃料噴射手段(不図示)と共に、この燃焼室内に開放されている。
【0042】
本発明に関連して説明する例では、機関は、吸気、圧縮、膨張、及び排気行程を含む4気筒モードに従って作動すると考える。
【0043】
従って、機関が排気ガスの一部を吸気口に再循環させることが必要となる条件、たとえば、低負荷または中負荷での作動に対応する条件の下で作動するときは、機関計算機は、機関の吸気口に排気ガスを再循環させながら機関が作動するように、機関を制御する。
【0044】
図1に示されている構成からは、対応する吸気弁16,18及び排気弁26の揚程特性(実線)を示す図3も関連して参照すると、ピストン56は、機関排気行程の開始時には、排気下死点(図3のPMBe)の近傍に位置している。次に、制御手段30,34は、吸気/排気手段12の吸気弁16及び排気弁26を開くように、機関計算機によって制御される。燃焼室60に入っている高温の排気ガスは、矢印Eで示す上死点の方へ向かうピストン56の作用によって、弁16及び吸気/排気分配器36を通して、循環回路C1の少なくとも一部、すなわち吸気配管20の少なくとも一部に排出されると共に、排気弁26を通して、機関が通常備える排気多岐管内に排出される。
【0045】
図3に示されているように、吸気弁16は次に、制御手段30の作用によって、クランク角度V1で閉じるが、排気弁26は、ピストンの吸気上死点(PMHa)の近傍で閉じるまで開いたままである。
【0046】
もちろん、機関計算機は手段30を制御し、吸気上死点PMHaの前に吸気弁16がクランク角度V1で閉じるように吸気弁16を制御して、排気ガスが吸気/排気分配器36の先、または場合によっては分岐配管44の先まで流れないようにする。
【0047】
もちろん、この排気行程中に、弁54は開位置の1つに位置しており、全開位置に達していてもよい。
【0048】
従って、吸気弁16及び排気弁26が閉じた後には、ピストンは吸気上死点PMHaの近傍にあり、高温の排気ガスが、吸気管20内及び吸気/排気分配器36内、並びに場合によっては管40内及び冷却器48内に存在している。
【0049】
次の機関吸気行程時には、図2に示すように、そしてさらに図3も関連して参照すると、ピストン56は、吸気上死点PMHaから圧縮下死点PMBcへの、矢印Aに示す下降運動を行う。ピストンが吸気上死点PMHaの近傍に位置しているこの吸気行程の開始時には、機関計算機は、吸気弁16及び排気弁26が閉じたままで、かつ吸気弁18が開くように、弁制御手段を制御する。
【0050】
ピストンの下降運動の作用によって、吸気弁18を通して減圧が行われ、吸気/排気管20及び吸気/排気分配器36に入っている排気ガスは、出口管40内を流れるように導かれる。この流れ時には、排気ガスは冷却器48を通って流れ(矢印R1)、冷却状態で分岐配管44に達する。このとき、弁54は全開位置にある。
【0051】
管46に導入された新気(矢印AF)は分岐配管44に達し、そこで冷却された排気ガスと混合される。この混合物は次に、冷却器48を通って管40内の排気ガスの流れ方向と逆方向(矢印R2)に流れることによって、第2の流体循環回路C2、より正確には出口管42内を流れ、吸気分配器38に至る。
【0052】
従って、この分配器には、冷却器を通過して冷却された新気と排気ガスの混合物が入っている。
【0053】
このことは、圧縮によって過給され、圧縮時に温度が上昇する新気を用いる場合に、特に有利である。過給された空気はその後、密度などの圧縮空気に求められるすべての特性を回復するために、冷却されなければならない。
【0054】
新気と排気ガスの混合物は次に、吸気管22を通して開位置にある吸気弁18に送られ、燃焼室60に送り込まれる。この混合物の導入は、弁18が圧縮下死点PMBcに対応するピストンの位置の近傍で閉じるまで継続する。
【0055】
吸気弁が閉じたときには、燃焼室に存在する混合物は準均質状態であり、機関作動サイクルの所望の温度で、引き続き混合物の圧縮行程に入る。
【0056】
有利なことに、弁54は、上述のように、吸気管、吸気/排気分配器36、及び管40の一部に入っている排気ガスを加圧するのに使用することができる。従って、機関排気行程の開始時には、吸気/排気手段12の吸気弁16と排気弁26は開いており、一方、弁54は出口管40の閉位置(図1に鎖線で示されている。)にあり、従って、管40は分岐配管44から隔離されている。燃焼室60から出る排気ガスの圧力と、矢印Eで示すピストン56の動きとの組み合わせ効果によって、吸気管20と、吸気/排気分配器36と、吸気/排気分配器36と弁54との間の出口管40の一部と、によって画定される体積は、管46内の新気よりも高い圧力となる。加圧された排気ガスは、このように、少なくとも、弁16と弁54との間の回路C1の閉じられた部分に入っている。
【0057】
従って、図2に示す次の吸気行程中では、排気弁26及び吸気弁16は閉位置にあり、吸気弁18は開き、弁54は開位置(図2の点線)となるように作動させられる。この弁の(吸気/排気弁16から分岐配管44への流れ方向を考えたときの)上流側における圧力と、ピストン56が矢印Aで示す方向に移動する際にピストン56によって生じる、この弁の下流側の減圧状態とが組み合わされた効果によって、排気ガスは、冷却器48を通って流れることによって分岐配管44の方向に流れる。
【0058】
この冷却された排気ガスは次に、管46に送り込まれた新気と混合され、上述のようにプロセスが継続する。
【0059】
特に高負荷または最大負荷での、排気ガスの再循環を伴わない機関作動時には、排気ガスを機関吸気口に送る必要はなく、機関は従来の条件の下で作動する。
【0060】
この場合の吸気弁16,18及び排気弁26の揚程特性が図3に点線で示されているが、排気行程中には制御手段34によって排気弁26のみが作動させられる。この弁は、排気下死点PMBeの近傍で開き、吸気上死点PMHaの近傍で閉じる。従って、燃焼室に入っている排気ガスを排気多岐管に排出することができる。
【0061】
吸気行程中には、吸気弁16,18の一方または他方、好ましくは両方が吸気上死点PMHaの近傍の開位置と圧縮下死点PMBcの近傍の閉位置との間で作動させられる。この2つの吸気弁が開いている間、管46に送り込まれた新気は分岐配管44に到達し、そこで2つの流れ、すなわち、管40内の回路C1を吸気弁16の方向に流れる流れと、管42内の第2の回路C2を弁18の方向に流れるもう一つの流れとに、分かれる。この2つの流れは、冷却器48を通って同じ方向に流れ、分配器36,38に到達する前に冷却される。冷却された空気流は、これらの分配器から吸気管20,22内を流れ、その後吸気弁16,18を通して燃焼室60に送り込まれる。
【0062】
この構成によって、新気は、過給空気である場合には、燃焼室に送り込まれる前に冷却される。さらに、加圧された過給空気が出口管40内を排気ガスの流れ方向(方向R1)と逆方向に流れるため、排気ガス中に存在し、このガスに接触する冷却器の構成部材に付着する不純物、たとえば煤(すす)の大部分を除去することができる。
【0063】
本発明ではさらに、再循環排気ガスと過給された新気の両方を同じ場所から冷却する単一の熱交換機を用いることもできる。
【0064】
排気ガスの機関吸気口への再循環に関する上述の説明の例では、排気弁26と吸気弁16は、排気行程の開始時にほぼ同時に開くが、これらの排気弁26及び吸気弁16の揚程特性は上述の揚程特性と異なるものであってもよい。重要なことは、吸気/排気弁16の開位置から閉位置までの区間が機関排気行程中に生じることである。
【0065】
そこで、図3に破線で示されているように、排気弁26が排気下死点PMBeで開き、次にクランク角度V2で閉じ、燃焼室に入っている排気ガスの一部を排気多岐管の方へ排出する。この角度V2の近傍で、吸気/排気弁16が開き、次に、吸気上死点PMHaの近傍で閉じ、まだ燃焼室60に入っている排気ガスが吸気/排気分配器36に排出される。次の機関吸気行程では、吸気18が上述のように作動する。
【0066】
機関の低温運転時など、いくつかの機関作動範囲では、冷却されていない排気ガスの吸気口への再導入が必要になることがあることに留意されたい。
【0067】
従って、図1に示す排気行程に続く吸気行程中には、弁16,18は、吸気行程全体にわたって開いたままである。管20及び吸気/排気分配器36に入っている高温の排気ガスは、吸気弁16を通して燃焼室60に送り込まれ、新気供給管46から供給され回路C2内を流れる新気は吸気弁18を通して燃焼室に送り込まれる。
【0068】
従って、吸気行程の終了時には、新気と再循環排気ガスとの層化混合物が燃焼室内に存在している。
【0069】
本発明によれば、従来のEGR回路を不要にするか、または少なくとも簡略化することができる。
【0070】
さらに、高温の排気ガスを吸気口に再導入する場合、特に機関の低温作動範囲では冷却器を迂回する必要がなくなる。
【0071】
さらに、機関が、排気ガスを再循環させずに、管40と管42の両方で新気を流しながら作動するとき、弁54を渦流制御弁として使用して、新気が気筒の鉛直軸の周りで回転運動(または渦流)を受けるように、新気を燃焼室に送り込むことができる。
【0072】
さらに、複流冷却器は、ガスが冷却器を通って流れるときに排気ガス中に存在する水蒸気の凝縮を回避または制限することを可能にする。排気ガスの冷却に使用される熱伝達流体は、入口温度よりも高い温度で冷却をしながら、冷却器の関連する部分に到達する。再循環排気ガス及び空気/再循環排気ガス混合物の冷却は段階的に行われ、ガス中及び混合物中の水蒸気の凝縮が回避または制限される。まず、再循環排気ガスが適度に冷却され、次に空気/再循環ガス混合物がより強く冷却される。
【0073】
過給された新気の場合、本発明では、圧縮器下流側の吸気圧より低いタービン上流側の排気圧で作動することのできるターボコンプレッサを使用することもできる。
【0074】
本発明は、上述の例に限定されず、任意の変形実施形態及び等価な実施形態を包含する。
【0075】
特に、VVA型制御手段の代わりにカムシャフトを有さない制御手段を使用することができる。この場合、電磁、油圧、電磁油圧、空気圧、または電空アクチュエータなどの各弁専用の作動手段が、吸気弁及び排気弁の弁ロッドに直接または間接的に作用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】排気行程中の、本発明による方法を使用した内燃機関を示す図である。
【図2】図1の機関の、本発明による方法の別の段階における状態を示す図である。
【図3】本発明による方法を用いた機関における、吸気弁及び排気弁の様々な揚程特性を示す曲線図である。
【符号の説明】
【0077】
10 気筒
12,14 吸気手段
16,18 吸気弁
20,22 吸気管
26 排気弁
30,32,34 手段
36,38 分配器
40,42 出口管
44 分岐配管
46 管
48 複流熱交換器
54 弁
60 燃焼室
C1 第1の流体循環回路
C2 第2の流体循環回路
PMBc 圧縮下死点
PMBe 排気下死点
PMHa 吸気上死点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の吸気口に排気ガスを再導入する方法であって、機関排気行程中に、前記機関の気筒(10)の燃焼室(60)に入っている排気ガスの一部が、該機関の運転範囲において、第1の流体循環回路(C1)に送り込まれ、前記排気ガスの残りの部分が排気回路に排出される方法において、
機関吸気行程中に、前記第1の流体循環回路(C1)に送り込まれた前記排気ガスを冷却することと、
冷却され再循環された前記排気ガスを、機関の空気供給回路(44)から供給された新気(AF)と混合することと、
再循環された前記排気ガスと前記新気との混合物を第2の流体循環回路(C2)に送り込むことと、
前記第2の流体循環回路(C2)に送り込まれた前記混合物を前記燃焼室(60)に送り込む前に冷却することと、
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1の流体循環回路(C1)の少なくとも一部を閉鎖することと、
前記第1の流体循環回路(C1)の前記閉鎖された部分に前記排気ガスの一部を送り込んで、該排気ガスを加圧することと、
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記排気ガスの冷却と、前記混合物の冷却とを、前記第1及び第2の流体循環回路(C1,C2)に共通する熱交換器(48)によって行う、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
燃焼室(60)を含む少なくとも1本の気筒(10)を有する内燃機関であって、
各々が吸気弁(16,18)を含む少なくとも2つの吸気手段(12,14)と、
各吸気手段に連結された分配器(36,38)と、
各分配器を新気の供給回路(46)に連結する出口管(40,42)と、
を有することを特徴とする内燃機関。
【請求項5】
前記2本の出口管(40,42)上に配置された熱交換器(48)を有する、請求項4に記載の内燃機関。
【請求項6】
前記熱交換器(48)は複流冷却器である、請求項5に記載の内燃機関。
【請求項7】
前記2本の出口管(40,42)は、合流ゾーン(44)内で、前記新気の供給回路(46)と合流している、請求項4または5に記載の内燃機関。
【請求項8】
前記出口管のうちの1本(40)は絞り手段(54)を備えている、請求項4から7のいずれか1項に記載の内燃機関。
【請求項9】
前記絞り手段(54)は、前記分配器(36)と前記熱交換器(48)との間に配置されている、請求項8に記載の内燃機関。
【請求項10】
前記吸気弁(16,18)の少なくとも一方の揚程特性を変更することができる制御手段(30,32,34)を有している、請求項4に記載の内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−47166(P2009−47166A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207716(P2008−207716)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(591007826)イエフペ (261)
【Fターム(参考)】