説明

内燃機関の排気ガス浄化装置

【課題】この発明は、パティキュレートフィルタの上流側端面にパティキュレートが堆積することに起因した当該パティキュレートフィルタの性能低下を防止することができる内燃機関の排気ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【解決手段】パティキュレートフィルタ20と、オゾン噴射機構30と、排気系燃料添加弁14と、堆積量センサ38と、差圧センサ34と、排気温度センサ36とを備えた排気ガス浄化装置を構成する。堆積量センサ38は、パティキュレートフィルタ20の上流側端面のパティキュレート堆積量を検出する。堆積量センサ38から得られた堆積量が所定の基準堆積量以上となり、かつ、排気ガス温度が350℃以下のとき、オゾン噴射機構30からオゾンを供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関の排気ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特開2005−307828号公報に開示されているように、排気通路にパティキュレートフィルタ(ディーゼルパティキュレートフィルタとも呼称される)を備える内燃機関の排気ガス浄化装置が知られている。パティキュレートフィルタにより、内燃機関(特にディーゼルエンジン)の燃焼行程において生じたすすなどのパティキュレートを捕捉でき、当該パティキュレートの排気系下流側への流出を防止することができる。
【0003】
パティキュレートフィルタ内のパティキュレートの捕捉量は、内燃機関の運転が継続されるのに応じて徐々に増加していく。しかしながら、パティキュレートフィルタの捕捉能力には限界がある。このため、パティキュレート捕捉量がある程度の量に達した段階で、パティキュレートフィルタ内に蓄積されたパティキュレートを取り除き、捕捉能力を回復する処理が必要となる。
【0004】
この点、上記従来の排気ガス浄化装置は、排気ガス中に燃料を噴射してパティキュレートフィルタの温度を強制的に上昇することにより、パティキュレートを酸化除去する機構を備えている。これにより、所望のタイミングでパティキュレートフィルタの能力を再生し、排気ガスの浄化を円滑に進めることができる。
【0005】
【特許文献1】特開2005−307828号公報
【特許文献2】特表2005−538295号公報
【特許文献3】特開2006−291932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
パティキュレートフィルタの各セルの内面に触媒層がコーティングされる場合、この触媒層により、パティキュレートの酸化反応が促進され、パティキュレートの酸化除去を円滑に行うことができる。一方、パティキュレートフィルタの排気ガス入口側端面(上流側端面)に付着したパティキュレートについては、触媒との接触面積が小さいため、触媒作用による酸化除去促進効果が少なくなる。
【0007】
このような場合、当該上流側端面に付着したパティキュレートの除去を円滑に進めることが困難となる。これに起因して上流側端面のパティキュレートの堆積が過度に進行すると、パティキュレートフィルタ内部へと通ずる流路(パティキュレートフィルタのセルの入口)が閉塞されてしまう。その結果、パティキュレートフィルタへのパティキュレートの流入、捕捉のプロセスが妨げられ、パティキュレートフィルタが本来有する性能を発揮できなくなってしまう。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、パティキュレートフィルタの上流側端面にパティキュレートが堆積することに起因した当該パティキュレートフィルタの性能低下を防止することができる内燃機関の排気ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、内燃機関の排気ガス浄化装置であって、
内燃機関の排気通路に配置されるパティキュレートフィルタと、
前記パティキュレートフィルタの上流側端面に堆積しているパティキュレートの量を検出する第1検出手段と、
前記パティキュレートフィルタの上流側端面に堆積しているパティキュレートおよび前記パティキュレートフィルタの内部に捕捉されているパティキュレートの量を検出する第2検出手段と、
前記上流側端面に堆積しているパティキュレートに到達するようにオゾンを供給するオゾン供給手段と、
前記パティキュレートフィルタを加熱する加熱手段と、
前記第1検出手段により検出された前記上流側端面に堆積しているパティキュレートの量が所定量以上となったときであって、かつ、前記排気通路を流れる排気ガスの温度が所定の温度以下であるときに、前記オゾン供給手段によるオゾン供給を行う第1制御手段と、
前記第2検出手段により検出された前記パティキュレートフィルタの上流側端面に堆積しているパティキュレートおよび前記パティキュレートフィルタの内部に捕捉されているパティキュレートの量と所定の基準量との比較に基づいて、前記加熱手段を制御する第2制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記第1検出手段は、前記パティキュレートフィルタの前記上流側端面の光学的な特性もしくは電気的な特性のうち少なくとも一つの特性の変化に基づいて、前記パティキュレートフィルタの上流側端面に堆積しているパティキュレートの量を検出し、
前記第2検出手段は、前記排気通路内における前記パティキュレートフィルタの上流と下流の圧力差の変化に基づいて、前記パティキュレートフィルタの上流側端面に堆積しているパティキュレートおよび前記パティキュレートフィルタの内部に捕捉されているパティキュレートの量を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明によれば、パティキュレートフィルタの上流側端面に堆積するパティキュレートの堆積量を検出し、その堆積量が過多となる前の適切なタイミングで、オゾン供給によるパティキュレート除去を行うことができる。オゾンにより付着力が低減され上流側端面から脱離したパティキュレートは、排気ガスによりパティキュレートフィルタ内部へと搬送される。これにより、パティキュレートフィルタの本来有する性能を最大限に発揮させることができる。そして、第1の発明によれば、パティキュレートフィルタ内に十分にパティキュレートが捕捉蓄積された上で加熱による再生処理を行うことができるため、パティキュレートフィルタを加熱する頻度も少なくできる。従って、第1の発明によれば、パティキュレートフィルタがその能力を最大限に発揮できるとともに、オゾン供給と加熱再生処理とを効果的に併用することができる。
【0012】
第2の発明によれば、検出対象に応じた異なる物理情報を判断の基礎として、パティキュレートフィルタの上流側端面のパティキュレート堆積量や、当該堆積量とパティキュレートフィルタ内部のパティキュレート捕捉量との合計の量(パティキュレートフィルタ全体のパティキュレートの蓄積量)を検出することができる。その結果、パティキュレートの量を確実かつ正確に検出し、対象に応じたオゾン供給と加熱再生処理の使い分けを精度良く行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施の形態1.
[実施の形態1の構成]
図1は、本発明の実施の形態1の内燃機関の排気ガス浄化装置を説明するための図である。図1に示すように、実施の形態1は、内燃機関10の排気通路12に、パティキュレートフィルタ20を備えている。なお、パティキュレートフィルタは「ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter)」とも呼称されることもあるが、本実施形態では簡略に「パティキュレートフィルタ」と呼称する。
【0014】
内燃機関10から排出された排気ガスは、排気通路12を通って、パティキュレートフィルタ20へと流入する。排気ガスは、先ず、パティキュレートフィルタ20の入口側のセルに流入する。その後、排気ガスが入口側セルから出口側のセルへと透過する過程で、排気ガス中のパティキュレート(「Particulate Matter:PM」とも呼称される)が捕捉される。最終的に、パティキュレートが除去されたガスが、パティキュレートフィルタ20の下流へと流出する。
【0015】
実施の形態1の装置は、排気通路12に、排気系燃料添加弁14を備えている。排気系燃料添加弁14は、排気通路12を流れる排気ガスに燃料を添加するために備えられる。排気系燃料添加弁14による排気ガスへの燃料添加により、パティキュレートフィルタ20を例えば650℃程度まで加熱することができる。
【0016】
上述の排気ガス流通の過程でパティキュレートフィルタ20内に蓄積されたパティキュレートは、パティキュレートフィルタ20を高温状態にすることで酸化除去できる。よって、適宜のタイミングで排気系燃料添加弁14による燃料添加を行うことで、パティキュレートフィルタ20内に蓄積されたパティキュレートを浄化し、パティキュレートフィルタ20の捕捉能力を再生することができる(以下、このような動作を「強制加熱」とも呼称する)。
【0017】
実施の形態1は、排気通路12におけるパティキュレートフィルタ20の上流の位置に、オゾン噴射機構30を備えている。オゾン噴射機構30は、オゾン(O)がパティキュレートフィルタ20の上流側端面の上流直前に噴射されるような位置に備え付けられる。オゾン噴射機構30の具体的な構成としては、例えば、オゾンが排気ガスに良好に混合するように、噴孔数と位置とを適切に設計した管を用いることができる。
【0018】
オゾン噴射機構30は、オゾン発生装置32と接続されている。オゾン発生装置32は、装置内に導入した空気中の酸素の一部を、放電等によってオゾンに転換する機能を備えている。なお、排気系のレイアウトによっては、オゾン噴射機構30の下流直近位置に、オゾンと排気ガスとの混合を促進するためのじゃま板を設置してもよい。
【0019】
実施の形態1は、パティキュレートフィルタ20の上流位置と下流位置の圧力差を検知する差圧センサ34を備えている。また、実施の形態1は、パティキュレートフィルタ20の下流に、排気温度センサ36を備えている。実施の形態1は、ECU(Electronic Control Unit)40を備えている。ECU40は、排気系燃料添加弁14、オゾン発生装置32、差圧センサ34、排気温度センサ36がそれぞれ接続されている。ECU40からの指令により、適宜、排気ガスに対して、燃料添加、オゾン添加を行うことができる。また、ECU40は、適宜、各種センサの情報を取得することができる。
【0020】
本実施形態にかかる装置は、パティキュレートフィルタ20の上流側端面のパティキュレート堆積量を検出するための堆積量センサ38を備えている。堆積量センサ38は、パティキュレートフィルタ20の上流側端面を監視する光学(電磁波)センサや、パティキュレートフィルタ20上流側端面の面方向に沿う電気特性の変化の検知する静電容量センサを含んでいる。堆積量センサ38の出力は、ECU40へと供給される。
【0021】
パティキュレート(すす)がパティキュレートフィルタ20に付着するにつれ、付着部分が黒色に覆われたり、当該覆われた付着部分の電気特性が変化したりする。この点を利用し、本実施形態では、堆積量センサ38の出力に基づいて、パティキュレートフィルタ20の上流側端面に堆積するパティキュレートの量を検出する。
【0022】
また、ECU40は、差圧センサ34の出力、および、内燃機関10の運転履歴に基づいて、パティキュレートフィルタ20全体蓄積量を推定するプログラムを記憶している。ここで、「全体蓄積量」とは、パティキュレートフィルタ20の上流側端面の堆積量と、パティキュレートフィルタ20内部に捕捉蓄積されているパティキュレートの量(捕捉量)との合計を意味する。このプログラムは、例えば、パティキュレートの発生量と運転履歴との関係や、差圧センサ出力の変化とパティキュレートの全体蓄積量の変化との関係を予め実験的に求めることにより作成することができる。
【0023】
本実施形態では、このプログラムを利用して、全体蓄積量が所定の基準量以上となったとき、上述した強制加熱を実行する(以下、このような処理を「強制加熱処理」とも呼称する)。この基準量は、例えば、パティキュレートフィルタ20の能力の回復が必要となるような場合の全体蓄積量を予め実験などにより把握し、これに基づいて設定しておくことができる。なお、全体蓄積量がある程度の量に達した段階で加熱処理を行うなどしてパティキュレートフィルタの能力を回復する処理は、例えば特開2005−307828号公報に開示されているように、既に公知となっている。本実施形態でもそのような公知技術を適宜応用すればよいため、その詳細な説明は省略する。
【0024】
[実施の形態1におけるオゾン供給手法]
以下、実施の形態1のオゾン供給手法にかかる作用効果について説明する。以下の説明では、先ず、パティキュレートフィルタの上流側端面にパティキュレートが堆積する現象について説明し、その後、この現象に対する本願発明者の考察の結果や本実施形態の作用効果などについて説明する。
【0025】
図2は、図1に示した本実施形態の装置における、パティキュレートフィルタ20近傍の拡大図である。以下、この図を用いて、パティキュレートフィルタの上流側端面にパティキュレートが堆積する現象について説明する。
【0026】
図2に示すように、また、既述したように、パティキュレートフィルタ20の内面(より具体的には、セルの内面)には、触媒層22が備えられている。パティキュレートフィルタ20内部に捕捉されてこの触媒層22と接触しているパティキュレートに対しては、強制加熱の際の酸化除去を促進する効果を得ることが可能である。
【0027】
一方、図2に示すように、パティキュレートフィルタ20の上流側端面24では触媒層22とパティキュレートとの接触面積が小さいため、上流側端面24に付着したパティキュレートについては触媒作用による酸化除去促進効果が得らない。よって、強制加熱のみでは、上流側端面24に付着したパティキュレートの除去を円滑に進めることが難しい。
【0028】
上流側端面24のパティキュレートの堆積が過度に進行すると、図2に例示するように、パティキュレートフィルタ内部へと通ずる流路(パティキュレートフィルタのセルの入口)が閉塞されるという事態が生じうる。
【0029】
図3は、DPF(つまりパティキュレートフィルタ)端面に堆積しているPM(パティキュレート)量と、触媒のパティキュレート処理量との関係を示すグラフである。パティキュレートフィルタの端面のPM堆積量が多いほど、PM処理量が少なくなっている。上流側端面に堆積するパティキュレートがパティキュレートフィルタ内部へと通ずる流路(セルの入口)を閉塞し、パティキュレートフィルタへのパティキュレートの流入、捕捉のプロセスを阻害するからである。
【0030】
そこで、本願発明者は、上記の現象による弊害に鑑み鋭意研究を重ねた結果、以下述べるような思想に想到した。図4は、パティキュレートフィルタに付着堆積するパティキュレートの状態について詳細に示す図であり、本願発明者が検討した結果を説明するための図である。それぞれ、図4(a)はパティキュレートフィルタの断面図、図4(b)はパティキュレートフィルタ上流側端面(図4(a)で円で囲った領域)近傍の拡大図、図4(c)は図4(b)のPM堆積層として示した領域の拡大図である。
【0031】
図4(c)にあるように、パティキュレートフィルタに付着するパティキュレート(PM)は、より詳細には、SOOTとも呼称されるすす成分(C:Carbon)と、SOF(HC:Hydro-Carbon)と呼称される液状成分とを含んでいる。触媒もしくはパティキュレートフィルタに付着するパティキュレートの付着力は、このSOFが関与している。
【0032】
そこで、本実施形態では、パティキュレートが過度に堆積してしまう前に、オゾンを利用することによりこのSOFを燃やし、パティキュレートの付着力を低下させることとする。図5は、オゾン供給によるパティキュレートの付着力低下の様子を説明する図である。具体的には、上流側端面に付着堆積したパティキュレートにオゾンを供給する(図5(a))。その結果、下記の式(1)の反応により、SOFに起因するSOOTの付着量が弱まる(図5(b))。
CH + O → CO + HO ・・・ (1)
【0033】
その結果、パティキュレートが端面から脱離していく(図5(c))。このパティキュレートは、その後、排気ガスの流れによりパティキュレートフィルタの内部へと流れ込み、触媒層およびパティキュレートフィルタに捕捉される。このように、上流側端面に堆積するパティキュレートに対してオゾンを供給することにより、当該パティキュレートをパティキュレートフィルタ内部へと移動させることができる。
【0034】
なお、オゾンは高温領域において熱分解するという特性がある。図6は、オゾン添加時における、排気ガス温度と、パティキュレート処理量との関係を示すグラフである。図6に示すように、200℃付近をピークにして、低温側、高温側にいくほど処理量が少なくなっている。本実施形態では、このような傾向を踏まえ、オゾンを添加する温度領域を350℃以下に制限する。これにより、オゾンが分解してしまうほどに高い温度領域ではオゾン供給を禁止し、オゾンの非効率的な使用を防ぐことができる。
【0035】
[実施の形態1の具体的処理]
以下、図7を用いて、実施の形態1の内燃機関の排気ガス浄化装置が行う具体的処理を説明する。図7は、上述した本実施形態のオゾン供給の手法を実行するルーチンの一例を示すフローチャートであり、実施の形態1の内燃機関10の運転中に実行される。
【0036】
図7に示すルーチンでは、先ず、パティキュレートフィルタ20の上流側端面に現在堆積しているパティキュレートの量が、所定堆積量以上となったか否かが判定される(ステップS100)。このステップによれば、ECU40が、堆積量センサ38の出力に基づく現時刻のパティキュレート堆積量と、予め実験などにより求めた基準堆積量との比較を行う。
【0037】
この基準堆積量は、排気ガス浄化装置の浄化性能を十分に発揮できるようなパティキュレート堆積量の範囲を予め実験などにより把握した上で、設定しておくことができる。このステップの条件が認められない場合には、パティキュレート堆積量は未だ許容範囲にある(パティキュレートフィルタ20上流が閉塞されていないか、または、その閉塞の程度が未だ許容範囲にある)との判断がなされ、今回のルーチンが終了する。
【0038】
ステップS100の条件の成立が認められた場合には、パティキュレート堆積量が過大となり、パティキュレートによる閉塞が著しいと判断できる。ステップS100の条件の成立が認められた場合には、続いて、排気ガスの温度が所定温度以下にあるか否かの判定がなされる(ステップS102)。このステップでは、具体的には、排気温度センサ36の出力に基づく排気ガス温度が、350℃以下にあるか否かの判定がなされる。
【0039】
既述したように、オゾンは高温雰囲気では速やかに熱分解してしまう。そこで、図7のルーチンでは、ステップS102の処理により、排気ガスの温度が、オゾンの効果が確実に得られる範囲内にあるか否かを判定することとしている。このステップの条件の成立が認められない場合には、オゾン供給が有効となるような温度条件が満たされていないと判断され、今回のルーチンが終了する。
【0040】
ステップS102の条件の成立が認められた場合には、オゾン供給が実行される(ステップS104)。具体的には、ECU40により、オゾン噴射機構30が制御され、所定量のオゾンが排気ガスに添加される。その結果、パティキュレートフィルタ20の上流側端面に堆積しているパティキュレートを、当該上流側端面から脱離し、パティキュレートフィルタ20の内部へと移動させることができる。その後、今回のルーチンが終了する。
【0041】
以上の処理によれば、パティキュレートフィルタの上流側端面に堆積するパティキュレートの量を検出しつつ、パティキュレート堆積量が基準堆積量以上となったときであって、かつ、排気ガスの温度が所定温度(350℃)以下であるという状況を確実に特定したうえで、オゾンの供給を行うことができる。これにより、堆積量が過多となる前の適切なタイミングで、オゾン供給によるパティキュレート除去を行うことができる。
【0042】
オゾンにより付着力が低減され端面から脱離したパティキュレートはパティキュレートフィルタ内部へと流れ込むため、パティキュレートフィルタがその捕捉能力を最大限に発揮できる。また、換言すれば、上述のオゾン供給によるパティキュレートの移動の促進によって、パティキュレートを触媒層22まで確実に搬送することができる。その結果、触媒層22が、パティキュレートの除去のために、その酸化作用を有効に発揮することができる。
【0043】
なお、上述した図7のルーチンで、ステップS100とステップS102の順序を逆にしてもよい。
【0044】
尚、上述した実施の形態1では、パティキュレートフィルタ20が、前記第1の発明における「パティキュレートフィルタ」に、堆積量センサ38が、前記第1の発明における「第1検出手段」に、差圧センサ34およびECU40が記憶する推定プログラムが、前記第1の発明における「第2検出手段」に、オゾン噴射機構30およびオゾン発生装置32が、前記第1の発明における「オゾン供給手段」に、排気系燃料添加弁14が、前記第1の発明における「加熱手段」に、それぞれ相当している。また、ECU40が上記の図7のルーチンを実行することにより、前記第1の発明における「第1制御手段」が実現され、ECU40が強制加熱処理を実行することにより、前記第1の発明における「第2制御手段」が実現されている。
【0045】
[実施の形態1の動作例]
以下、図8を用いて、実施の形態1の内燃機関の排気ガス浄化装置の動作の一例について説明する。図8は、図7のオゾン供給に関するルーチンと、パティキュレートフィルタの強制加熱処理とを同時に実行した場合の動作の一例を示す模式図である。また、図9は、比較のために例示する、上述のオゾン供給を行わずに強制加熱処理のみを行う場合の動作を時間の経過とともに示す図である。
【0046】
ここで、図8、9の縦軸のPM全体堆積量(図8、9の左方の目盛)は、パティキュレートフィルタ20全体蓄積量(上流側端面の堆積量とパティキュレートフィルタ内部の捕捉量の合計)と同じ意味である。図8中の実線は、この全体蓄積量の変化を示している。本実施形態では、構成の説明で述べたECU20の推定プログラムにより、この全体堆積量の時間変化を適宜把握している。
【0047】
また、図8中の破線は、パティキュレートフィルタ20の床温度の変化を示している(図8の右方の縦軸を目盛とする)。図8中にそれぞれハッチング施した領域は、上述のオゾン添加を行っている時間と、パティキュレートの強制処理(強制加熱処理)を行っている時間とを示している。
【0048】
また、図8中には、パティキュレートフィルタ20のパティキュレート全体蓄積量の上限値と、強制加熱処理を行う場合のパティキュレートフィルタ20の床温度の目標値とを、便宜上、同一の線で示している。
【0049】
内燃機関10の運転に伴い、上述したようにパティキュレートフィルタ20の上流側端面にパティキュレートが徐々に堆積していき、PM全体堆積量も増加していく。そこで、本実施形態では、堆積量センサ38の出力に基づいて得られるパティキュレート堆積量が所定の基準堆積量を超えた段階で、オゾン噴射機構30からオゾンを供給する。
【0050】
その結果、図8のハッチングで示した領域にあるように、パティキュレートフィルタ20の上流側端面のパティキュレートが取り除かれ、パティキュレート堆積量が減少する。上流側端面から脱離したパティキュレートは、そのままパティキュレートフィルタ20内部で捕捉される。
【0051】
その後、本実施形態では、内燃機関10の運転を更に継続し、パティキュレート全体蓄積量が上限値に達したら、強制加熱処理を行う。その結果、排気系燃料添加弁14により燃料添加を行うなどの処理により、図8に示すように床温度が所定の目標床温度まで上昇する。これにより、上流側端面に堆積したパティキュレートおよび内部に捕捉蓄積されたパティキュレートの酸化除去を行い、図8のようにパティキュレート全体蓄積量を一気に減少させ、パティキュレートフィルタ20の能力を再生することができる。
【0052】
図9は、オゾン供給を行わずに強制加熱処理のみを行う場合の動作の一例を示す図である。図9に示すように、オゾン供給を行わない場合、図8の本実施形態の場合に比して、強制加熱処理を行う周期が短くなってしまう(具体的には、図8の周期bと図9の周期aとの関係が、b>a)となっている点)。
【0053】
換言すれば、図9の場合には、例えば、パティキュレートフィルタ内部がいまだパティキュレート捕捉可能であったり、少量のパティキュレートしか捕捉されていない状況下であるにもかかわらず、比較的短い間隔で強制加熱処理を行わざるをえなくなってしまう。このような場合、排気ガスへの燃料添加に起因する燃費悪化を招き、好ましくない。
【0054】
この点、図8の本実施形態の態様によれば、オゾン添加により上流側端面に堆積したパティキュレートをパティキュレートフィルタ20内部へと移動させることができるので、パティキュレートフィルタ内に十分にパティキュレートを捕捉蓄積した上で強制加熱処理を行うことができる。このため、パティキュレートフィルタを加熱する頻度を少なくすることができる。その結果、上記のような燃費悪化を回避することができる。
【0055】
なお、パティキュレートが上流側端面に過度に堆積している状態で強制加熱を行うと、多数のパティキュレートが一気に着火し、パティキュレートフィルタに大きな高温負荷がかかるおそれもある。この点、本実施形態によれば、上流側端面に堆積したパティキュレートを脱離して分散させることができるので、上記のような過度な高温負荷を防止することができる。
【0056】
なお、本実施形態にかかるオゾン供給は、上述したように、オゾンをパティキュレートフィルタの上流側端面に付着するパティキュレートのSOFと反応させ、当該上流側端面から脱離したパティキュレートをそのままパティキュレートフィルタ内部へと移動させることを主たる目的として行うものである(但し、副次的に、触媒層22におけるパティキュレートとオゾンの反応も発生しうる)。
【0057】
そして、本実施形態では、その後パティキュレートフィルタ内部へと移動、蓄積したパティキュレートの酸化除去(浄化)を、強制加熱処理によって行うこととしている。このため、本実施形態の手法と、オゾンをパティキュレートの酸化除去を主たる目的として使用する手法とは、その思想が相違している。
【0058】
このように、実施の形態1によれば、除去すべき対象に応じてオゾン供給と加熱再生処理とを高次元に併用した排気ガス浄化装置を実現することができ、さらに、オゾンの効率良い利用、加熱再生処理の頻度の低減といった相乗効果をも得ることができる。
【0059】
なお、図8では、説明の便宜上、オゾン添加と強制加熱処理とが1回ずつ交互に行われた場合を説明している。しかしながら、本発明の制御は、図8で説明した動作内容に何ら限定、拘束されるものではない。今回の強制加熱処理と次回の強制加熱処理との間にオゾン添加を2回以上行ってもよい。つまり、時間に沿ってみた場合の、オゾン添加の回数と強制加熱処理の回数との比率は、状況に応じて変化しうる。
【0060】
なお、実施の形態1では、パティキュレートフィルタ20の強制加熱は、排気系燃料添加弁14の排気ガスへの燃料添加によって行った。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ヒータなどを用いてパティキュレートフィルタ20を加熱しても良い。その他の多くの手法について、既に多くの文献が開示されているため、これらの技術を応用すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態1の内燃機関の排気ガス浄化装置の構成を示す図である。
【図2】パティキュレートフィルタの断面図であり、パティキュレートフィルタの上流側端面にパティキュレートが堆積する現象を説明するための図である。
【図3】DPF(パティキュレートフィルタ)端面に堆積しているPM(パティキュレート)量と、パティキュレート処理量との関係を示すグラフである。
【図4】パティキュレートフィルタに付着堆積するパティキュレートの状態について詳細に示す図である。
【図5】実施の形態1のオゾン供給によるパティキュレートの付着力低下の様子を説明する図である。
【図6】オゾン添加時における、排気ガス温度と、パティキュレート処理量との関係を示すグラフである。
【図7】上述した本実施形態のオゾン供給の手法を実行するルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図8】実施の形態1の内燃機関の排気ガス浄化装置の動作の一例について説明する図である。
【図9】図8に対する比較例としての動作を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
10 内燃機関 12 排気通路
14 排気系燃料添加弁 20 パティキュレートフィルタ
22 触媒層 24 上流側端面
30 オゾン噴射機構 32 オゾン発生装置
34 差圧センサ 36 排気温度センサ
38 堆積量センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に配置されるパティキュレートフィルタと、
前記パティキュレートフィルタの上流側端面に堆積しているパティキュレートの量を検出する第1検出手段と、
前記パティキュレートフィルタの上流側端面に堆積しているパティキュレートおよび前記パティキュレートフィルタの内部に捕捉されているパティキュレートの量を検出する第2検出手段と、
前記上流側端面に堆積しているパティキュレートに到達するようにオゾンを供給するオゾン供給手段と、
前記パティキュレートフィルタを加熱する加熱手段と、
前記第1検出手段により検出された前記上流側端面に堆積しているパティキュレートの量が所定量以上となったときであって、かつ、前記排気通路を流れる排気ガスの温度が所定の温度以下であるときに、前記オゾン供給手段によるオゾン供給を行う第1制御手段と、
前記第2検出手段により検出された前記パティキュレートフィルタの上流側端面に堆積しているパティキュレートおよび前記パティキュレートフィルタの内部に捕捉されているパティキュレートの量と所定の基準量との比較に基づいて、前記加熱手段を制御する第2制御手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の排気ガス浄化装置。
【請求項2】
前記第1検出手段は、前記パティキュレートフィルタの前記上流側端面の光学的な特性もしくは電気的な特性のうち少なくとも一つの特性の変化に基づいて、前記パティキュレートフィルタの上流側端面に堆積しているパティキュレートの量を検出し、
前記第2検出手段は、前記排気通路内における前記パティキュレートフィルタの上流と下流の圧力差の変化に基づいて、前記パティキュレートフィルタの上流側端面に堆積しているパティキュレートおよび前記パティキュレートフィルタの内部に捕捉されているパティキュレートの量を検出することを特徴とする請求項1記載の内燃機関の排気ガス浄化装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−2240(P2009−2240A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−164184(P2007−164184)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】