内燃機関の点火装置
【課題】異常なタイミングでの点火に起因したエンジンや周辺機器等の損傷を軽減することのできる内燃機関の点火装置を提供する。
【解決手段】火花点火式の内燃機関を対象にして所定の開始信号(点火信号IGt1,IGt2,…の立ち下がり)の発生により点火を指示する内燃機関の点火装置(ECU及び駆動回路)として、開始信号の発生タイミングを監視して、その開始信号が異常なタイミングで発生した場合に、上記開始信号に基づく点火を禁止する回路を備える構成とする。具体的には、上記開始信号が所定の開始タイミングで発生したか否かを判断する回路(回路11,12、及びRSフリップフロップ13)と、この回路により開始信号が上記開始タイミングで発生していない旨判断された場合に、その開始信号に基づく点火を禁止する回路(トランジスタ14)と、を備える構成とする。
【解決手段】火花点火式の内燃機関を対象にして所定の開始信号(点火信号IGt1,IGt2,…の立ち下がり)の発生により点火を指示する内燃機関の点火装置(ECU及び駆動回路)として、開始信号の発生タイミングを監視して、その開始信号が異常なタイミングで発生した場合に、上記開始信号に基づく点火を禁止する回路を備える構成とする。具体的には、上記開始信号が所定の開始タイミングで発生したか否かを判断する回路(回路11,12、及びRSフリップフロップ13)と、この回路により開始信号が上記開始タイミングで発生していない旨判断された場合に、その開始信号に基づく点火を禁止する回路(トランジスタ14)と、を備える構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の点火装置に関し、特に1回の燃焼サイクル中に複数回の点火放電を点火プラグに生じさせる多重放電点火式の点火装置として採用して有益な点火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火花点火式の内燃機関にあっては、点火コイル等からなる点火装置の駆動によって燃焼室における点火プラグに点火放電が生じ、その点火放電により、燃焼室に導入された燃料が燃焼される。そして近年、燃焼室での燃焼状態を改善したり、あるいは消費電力を低減したりする目的で、1回の燃焼サイクル中に複数回の点火放電を点火プラグに生じさせる、いわゆる多重放電点火式の点火装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図10に、多重放電点火式の点火装置の一例を回路図として示す。この点火装置は、例えば車載内燃機関の点火装置に適用される。ここでは、内燃機関として、シリンダ#1,#3,#4,#2の順に点火が逐次実行される4気筒エンジンを想定して説明を行う。
【0004】
同図10に示されるように、この点火装置は、大きくは、ECU(電子制御ユニット)と駆動回路(いわゆるイグナイタ)とを備えて構成されている。このうちECUは、周知のマイクロコンピュータを主体として構成され、エンジン回転速度やアクセル操作量(運転者によるアクセルペダルの踏み込み量)などのエンジン運転状態を取得し、これを信号出力部101に入力する。そして、信号出力部101は、エンジン運転状態に基づいて最適な点火時期(通常制御における点火タイミングに相当)を算出するとともに、その点火時期に対応した点火信号IGt1,IGt2,IGt3,IGt4(各シリンダ#1,#3,#4,#2に対応する信号)を生成する。さらに同信号出力部101は、エンジン運転状態に基づいて多重放電期間(多重放電点火を継続的に行う期間)を算出するとともに、その多重放電期間に対応した多重期間信号IGwを生成する。一方、駆動回路は、内燃機関の点火に関わる所定の制御を行うための回路である制御部201を備える。この制御部201は、エネルギー蓄積制御部201a及び多重点火制御部201bを有して構成されるものであり、これら各制御部により、信号出力部101からの上記点火信号IGt1,IGt2,…及び多重期間信号IGwに基づいて、点火コイルL1の通電/非通電を制御することができるようになっている。
【0005】
詳しくは、この駆動回路においては、車載バッテリB1(直流電源)と、エネルギーを蓄積するためのコイルL10と、スイッチング素子としてのトランジスタTr11とが、互いに直列接続されている。さらに上記コイルL10に対しては、これに直列的に(ただしトランジスタTr11とは並列的に)、整流作用により電流の逆流を防止するダイオードD1と、1次側点火コイルL1aと、ゲートに対して論理H(ハイ)の電位が与えられることによりオンするノーマリオフ型のトランジスタTr21(一端は接地)との直列回路が電気的に接続されている。また、上記ダイオードD1に対しては、これに直列的に(ただし1次側点火コイルL1aとは並列的に)、コンデンサC1(一端は接地)が電気的に接続されている。
【0006】
ここで、1次側点火コイルL1aは、2次側点火コイルL1bと対になって、点火コイルL1を構成するものである。こうした点火コイルL1は、エンジン(内燃機関)の各シリンダについて、それぞれ(4気筒エンジンなら4つ)設けられている。この点火装置では、こうした点火コイルL1により、1次側点火コイルL1aによる電磁誘導を利用して2次側点火コイルL1bに高電圧を誘起させ、同コイルL1bに接続される点火プラグ(内燃機関の燃焼室に対して設けられた点火プラグ)に対し、高電圧、ひいては点火放電を生じさせるようになっている。
【0007】
図11に、多重点火制御部201bの構成の詳細を示す。
【0008】
同図11に示されるように、この多重点火制御部201bでは、シリンダ#1についてAND回路211及び気筒判別回路221を備え、ドライブ信号Dr2と気筒判別信号G11とが、AND回路211に入力されるとともに、そのAND回路211の出力が、スイッチング信号G21としてトランジスタTr21のゲートに入力されるようになっている。ここで、ドライブ信号Dr2は、多重期間信号IGwとドライブ信号Dr1とを入力とするAND回路210の出力である。またここで、ドライブ信号Dr1は、点火信号IGt1,IGt2,…の立ち下がりから多重期間信号IGwの立ち下がりまでの期間において、所定周期で交互にオン/オフを繰り返すパルス信号である。また、気筒判別信号G11は、点火対象のシリンダを示す信号であり、気筒判別回路221が、上記点火信号IGt1に基づいて作成している。詳しくは、点火信号IGt1の立ち下がりから所定時間経過するまでの期間において論理H(ハイ)となる信号である。
【0009】
またシリンダ#3についても、AND回路211及び気筒判別回路221に準ずるものとして、AND回路212及び気筒判別回路222を備え、上記ドライブ信号Dr2と気筒判別信号G12とが、AND回路212に入力されるとともに、そのAND回路212の出力が、スイッチング信号G22としてトランジスタTr22のゲートに入力されるようになっている。なお、図示は割愛しているものの、この点火装置は、シリンダ#2,#4についても同様のAND回路及び気筒判別回路を備える。
【0010】
こうした多重点火制御部201bを有して構成される駆動回路では、図10に示されるように、上記信号出力部101からの点火信号IGt1及び多重期間信号IGwに基づくタイミングで、上記コンデンサC1に蓄えられた電荷の放電を通じて1次側点火コイルL1aを通電し、点火プラグに初回の点火放電を生じさせる。その後、トランジスタTr11とトランジスタTr21とを一定周期で交互にオン/オフさせる。こうすることにより、トランジスタTr21がオフされトランジスタTr11がオンされた状態において、コイルL10に電流が流れ、結果としてコイルL10に誘導性エネルギー(電気エネルギー)が蓄積される。そして、トランジスタTr11がオフされトランジスタTr21がオンされた状態において、コイルL10に蓄えられた誘導性エネルギーが放電され、結果として1次側点火コイルL1aに電流が流れる。この点火装置では、こうして多重放電期間において2次側点火コイルL1bに正逆両方向に電気を流し、点火コイルL1に点火放電を繰り返し生じさせることで、点火コイルL1(詳しくは2次側点火コイルL1b)に電気的に接続される点火プラグにより多重放電を行うようにしている。
【0011】
図12は、こうした点火装置の動作態様を示すタイミングチャートである。ここでは、複数のシリンダのうち、1つのシリンダ(シリンダ#1)に対する点火に特に注目して、その動作態様について説明する。ただし、他のシリンダについても、基本的には同様の動作に基づき点火制御が行われる。この図12において、(a)は点火信号IGt1、(b)は多重期間信号IGw、(c)はトランジスタTr21に対するスイッチング信号G21、(d)〜(g)は、それぞれコイルL10、トランジスタTr11、1次側点火コイルL1a、2次側点火コイルL1bを流れる電流量i11、電流量i12、電流量i1、電流量i2、の各推移をそれぞれ示している。
【0012】
同図12(a)に示されるように、この例では、点火信号IGt1が、タイミングt101でオンされる(論理H(ハイ)となる)。これにより、トランジスタTr11(図10)がオンされ、(d)(e)に示されるように、電流量i11,i12が漸増する。
【0013】
その後、タイミングt102で、その点火信号IGt1のオン状態が、オフ状態(論理L(ロー))に戻される。そして、(b)に示されるように、点火信号IGt1の立ち下がりに同期して、多重期間信号IGwがオンされ、この多重期間信号IGwがオンされている期間t102〜t109(点火信号IGt1の立ち下がりから多重期間信号IGwの立ち下がりまでの期間)にあっては、(c)に示されるように、トランジスタTr21に対するスイッチング信号G21が、所定周期で交互にオン/オフを繰り返すパルス信号となる。そしてこれにより、トランジスタTr21がオン/オフされるとともに、(d)(e)に示されるように、それに対応して電流量i11,i12が増減を繰り返すようになる。
【0014】
詳しくは、タイミングt102で、トランジスタTr11がオフされる。これにより、コイルL10及びコンデンサC1に蓄積された電気エネルギーが、1次側点火コイルL1a、ひいては2次側点火コイルL1bに放電され、このコイルL1bに電気的に接続される点火プラグによって放電がなされることになる。なお、コンデンサC1に蓄積されたエネルギーを有効に利用する上では、この最初のパルス幅(期間t102〜t103)を、続く他のパルス幅(期間t103〜t104,t104〜t105,…)よりも大きな幅に設定することが有効である。
【0015】
さらに、その所定期間経過後のタイミングt103で、トランジスタTr21がオフ、トランジスタTr11がオンされ、コイルL10にエネルギーがそれぞれ蓄積される。そして、続くタイミングt104で、トランジスタTr11がオフ、トランジスタTr21がオンされることにより、コイルL10に蓄積された電気エネルギーが1次側点火コイルL1a、ひいては2次側点火コイルL1bに放電され、上述のように、点火プラグによって放電がなされることになる。そうしてその後も、タイミングt105〜t109の各タイミングで、上記エネルギーの蓄積とそのエネルギーの放電とが交互に行われることにより、いわゆる多重放電点火が実現されることになり、続くタイミングt109で、多重期間信号IGwがオフされ、スイッチング信号G21のオン/オフ駆動も止まる。
【0016】
次に、図13を参照して、多重放電点火式の点火装置の別の一例について説明する。なお、この図13は、先の図10に対応する回路図であり、ここでは、図10中に示した要素と同一の要素には各々同一の符号を付して示し、その説明を割愛する。ちなみに、この点火装置も、例えば車載内燃機関の点火装置に適用されるものである。
【0017】
同図13に示されるように、この点火装置も、図10に示した装置と同様、大きくは、ECU(電子制御ユニット)と駆動回路とを備えて構成されている。そして、この装置には、先の図10に示した装置の、信号出力部101、制御部201、エネルギー蓄積制御部201a、多重点火制御部201bに準ずるものとして、信号出力部102、制御部202、エネルギー蓄積制御部202a、多重点火制御部202bが設けられている。このうち、多重点火制御部202bは、先の図11に示した多重点火制御部201bの構成と同様の構成を有するものである。ただしこの装置では、先の図10に示した装置の、トランジスタTr11及びコイルL10に代えて、Vdc昇圧機構302a及びVcdi昇圧機構302bを設けることで、より精密な点火制御を実現するようにしている。
【0018】
Vdc昇圧機構302aは、大容量のコンデンサを有しており、このコンデンサを所定電圧で充電するようになっている。ここで、点火装置において、トランジスタTr21がオンされると、2次側点火コイルL1bにおいて高電圧が発生することにより、1次側点火コイルL1aにおいて励起電圧が発生する。この点、Vdc昇圧機構302aによれば、上記コンデンサを励起電圧よりも大きな電圧(例えば50V)で充電することにより、1次側点火コイルL1aに流れる電流i1を一定時間維持することができる。なお、Vdc昇圧機構302aは、ダイオードD1を介してコンデンサC1に接続されている。これにより、コンデンサC1からVdc昇圧機構302aへ電流が逆流することを防止している。
【0019】
Vcdi昇圧機構302bは、コンデンサC1を充電する機能を有している。この場合、コンデンサC1と1次側点火コイルL1aとの接点電圧が、点火コイルL1の巻線比(「1次側点火コイルL1aの巻線数」/「2次側点火コイルL1bの巻線数」)と再点火要求電圧との乗算により得た電圧よりも大きな電圧(例えば「250V」)となるまで、Vcdi昇圧機構302bによりコンデンサC1を充電させ、その後コンデンサC1を放電させることにより、再点火を行うことができる。
【0020】
図14は、こうした点火装置の動作態様を示すタイミングチャートである。なお、この図14において、(a)は点火信号IGt1、(b)は多重期間信号IGw、(c)はトランジスタTr21に対するスイッチング信号G21、(d)はコンデンサC1に蓄積された電荷量VC1、(e)は1次側点火コイルL1aに流れる電流量i1、(f)は2次側点火コイルL1bに流れる電流量i2、の各推移をそれぞれ示している。
【0021】
同図14(a)に示されるように、この例では、点火信号IGt1が、タイミングt201でオンされ(論理Hとなり)、タイミングt202でオフされる(論理Lとなる)。そして、先の図12に示した期間t102〜t109に準ずる期間t202〜t209において、スイッチング信号G21が、所定周期で交互にオン/オフを繰り返すパルス信号となる。ただしこの装置では、(c)(d)(f)に示されるように、トランジスタTr21のオン/オフの切り替えを、電流量i2及び電荷量VC1に基づいて行うようにしている。詳しくは、電流量i2が所定の閾値(例えば「50mA」)になった時にトランジスタTr21をオフし、電荷量VC1が所定の閾値(例えば「250V」)になった時にトランジスタTr21をオンする。なお、電流量i2の閾値(例えば「50mA」)は、燃焼室での燃焼が失火しない程度の値に設定される。
【特許文献1】特許第2811781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
このように、上記各点火装置では、点火信号IGt1,IGt2,…の立ち下がりに基づいて、各シリンダの点火制御をそれぞれ行っている。しかしながら、こうした点火制御に関わる上記各種の信号については、エンジンストール(エンスト)、外乱(ノイズ)等に起因して、例えば図15に示されるように、点火信号IGt1が異常に長く出力されることが考えられる。このような場合、上記各点火装置では、その点火信号IGt1の立ち下がったタイミングt202を点火タイミングと認識(誤認)してしまい、所望のタイミングt202aではないタイミングに点火されることが懸念される。そして、点火タイミングが遅れることで、エンジン吸気バルブの開動作に伴いバックファイヤ等が生じ、エンジンや周辺機器(例えばインジェクタやセンサ等)に大きな損傷を与えてしまうことなどが懸念されるようになる。
【0023】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、異常なタイミングでの点火に起因したエンジンや周辺機器等の損傷を軽減することのできる内燃機関の点火装置を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
以下、上記課題を解決するための手段、及び、その作用効果について記載する。
【0025】
請求項1に記載の発明では、火花点火式の内燃機関を対象にして所定の開始信号の発生により点火を指示する内燃機関の点火装置として、前記開始信号が所定の開始タイミングで発生したか否かを判断するタイミング判断手段と、前記タイミング判断手段により開始信号が前記開始タイミングで発生していない旨判断された場合に、その開始信号に基づく点火を禁止する禁止手段と、を備えることを特徴とする。
【0026】
また、請求項20に記載の発明では、火花点火式の内燃機関を対象にして所定の開始信号の発生により点火を指示する内燃機関の点火装置として、前記開始信号の発生タイミングを監視して、同開始信号が異常なタイミングで発生した場合に、前記開始信号に基づく点火を禁止する手段を備えることを特徴とする。
【0027】
これらの構成であれば、開始信号が異常なタイミングで発生した場合に、その開始信号に基づく異常なタイミングでの点火を禁止して、異常点火に起因したエンジンや周辺機器等の損傷を軽減することができるようになる。
【0028】
請求項2に記載の発明では、上記請求項1に記載の装置において、前記開始タイミングが、所定基準信号の発生から所定時間だけ経過した時のタイミングとして設定されており、前記タイミング判断手段が、前記基準信号の発生から前記開始信号が発生するまでの時間に基づいて、前記開始信号が前記開始タイミングで発生したか否かを判断するものであることを特徴とする。こうした構成であれば、前記基準信号の発生から前記開始信号が発生するまでの時間に基づいて、前記開始信号が前記開始タイミングで発生したか否かを容易且つ的確に判断することが可能になる。
【0029】
またこの場合、前記タイミング判断手段についてはこれを、請求項3に記載の発明のように、前記基準信号の発生により所定の計時用コンデンサに対して充電を開始し、前記開始信号が発生するまでにその計時用コンデンサの充電量が許容レベルよりも大きくなったか否かに基づいて、前記開始信号が前記開始タイミングで発生したか否かを判断するものとすることが有効である。こうすることで、コンデンサの充電量に基づいて、前記開始信号が前記開始タイミングで発生したか否かを、より容易且つ的確に判断することが可能になる。
【0030】
さらにこの場合、前記タイミング判断手段についてはこれを、請求項4に記載の発明のように、前記計時用コンデンサの充電量に相当する電位と、前記許容レベルに相当する所定電位とを入力とする比較器の出力電位の大小に基づいて、前記開始信号が前記開始タイミングで発生したか否かを判断するものとすれば、周知の回路をもって、より容易且つ的確に上記構成を実現することが可能になる。
【0031】
請求項2に記載の発明では、前記タイミング判断手段についてはこれを、請求項5に記載の発明のように、一定周期で発生する周期信号の発生回数をカウントするカウンタ回路の計数値に基づいて、前記開始信号が前記開始タイミングで発生したか否かを判断するものとしてもよい。
【0032】
この場合、前記カウンタ回路ではその計数値が周期信号の発生回数に応じてカウントアップ又はカウントダウンされる。そのため、前記カウンタ回路の計数値によって、前記基準信号の発生タイミングから前記開始信号の発生タイミングまでの正確な経過時間が分かる。これにより、前記開始信号が前記開始タイミングで発生したか否かを正確に判断することができる。
【0033】
さらに、請求項6に記載の発明のように、前記カウンタ回路の計数値が前記基準信号の発生タイミングで基準値とされる場合には、前記タイミング判断手段は、前記カウンタ回路の計数値と許容値との比較に基づいて、前記開始信号が前記開始タイミングで発生したか否かを容易に判断することができる。
【0034】
そして、上記請求項2〜6のいずれか一項に記載の装置に関しては、請求項7に記載の発明のように、前記タイミング判断手段についてはこれを、前記基準信号が発生した時にリセット信号が入力され、且つ、前記基準信号の発生から前記開始信号が発生するまでの時間が許容レベルよりも長くなった時にセット信号が入力されるRSフリップフロップの出力として、前記開始信号が所定の開始タイミングで発生したか否かの判断結果を出力するものとすることが有効である。こうすることで、前記タイミング判断手段を、周知の回路をもって、より容易且つ的確に実現することが可能になる。
【0035】
また、上記請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置に関し、前記開始信号の発生により指示される点火が、1燃焼サイクル中に複数回の点火を行う多重放電点火である場合には、請求項8に記載の発明のように、前記開始信号が発生したことに応じて、前記多重放電点火を継続的に行う期間を示す多重期間信号を出力する手段と、前記多重期間信号の出力中に、前記多重放電点火を指示するパルス信号を出力する手段と、前記パルス信号の出力中に、そのパルス信号に基づいて、前記多重放電点火を実行する手段と、を備え、前記禁止手段についてはこれを、前記タイミング判断手段により開始信号が前記開始タイミングで発生していない旨判断された場合に、前記パルス信号の出力を禁止するもの、とすることが有効である。こうすることで、多重放電点火を好適に実現しつつ、前述の異常なタイミングでの点火についてもこれを、的確に禁止することが可能になる。
【0036】
ところで、上記請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置について、一般的なエンジンシステムへの適用を考えた場合には、請求項9に記載の発明のように、前記内燃機関が、点火プラグの通電により前記点火を行うものであり、前記点火プラグが、所定のスイッチング素子(例えばトランジスタ)である点火スイッチのオン/オフ状態に応じて通電の有無が切り替わるものであり、当該点火装置が、1乃至複数の所定パラメータに基づいて前記点火スイッチのオン/オフ状態を切り替えるスイッチ制御回路を備える構成とすることが有効である。
【0037】
請求項10に記載の発明では、上記請求項9に記載の装置において、前記点火スイッチのオン/オフ態様を示すスイッチ信号と、前記開始信号と、の両方が発生しているか否かを判断する信号判断手段を備え、前記点火スイッチが、ノーマリオフ型のスイッチング素子であり、前記スイッチ制御回路が、前記信号判断手段により前記信号の両方が発生している旨判断されたことに基づいて、前記スイッチ信号に対応したオン/オフ態様で前記点火スイッチのオン/オフ状態を切り替えるものであり、前記禁止手段が、前記禁止を実行している場合に、前記スイッチ信号及び前記開始信号の少なくとも一方を無効化して前記信号判断手段によりそれら信号の少なくとも一方が発生していない旨判断させるものであることを特徴とする。
【0038】
こうした構成であれば、前記禁止手段による禁止がなされている期間においては、前記スイッチ制御回路が前記点火スイッチを制御できなくなり、前記点火スイッチがオフ状態に保持されることになる。そしてこれにより、前記点火プラグの通電、ひいては同プラグによる点火の実行が禁止されることになる。したがって、こうした構成によれば、前記禁止手段が容易且つ的確に実現されることになる。
【0039】
また、上記請求項9又は10に記載の装置について、前記点火プラグの通電の有無を制御するための装置構成としては、請求項11に記載の発明のように、前記点火プラグの通電の有無を制御するものとして、1次側コイルと2次側コイルとを有して構成される点火コイルを有し、この点火コイルのうち、前記1次側コイルが、前記点火スイッチのオン/オフ状態に応じて通電の有無が切り替わるように設けられ、前記2次側コイルが、前記点火プラグの通電経路に設けられてなる回路構成が有効である。こうした構成であれば、前記点火プラグの通電の有無を好適に制御することができる。
【0040】
また、上記請求項11に記載の装置について、多重放電点火を行うための装置構成としては、請求項12に記載の発明のように、前記開始信号の発生に基づいて、前記点火スイッチを繰り返しオン/オフさせて前記1次側コイルに断続的に1次電流を流すことにより前記2次側コイルに2次電流を繰り返し発生させることで、前記点火プラグに多重放電を行わせる多重放電実行手段を備える構成が有効である。こうした構成であれば、多重放電点火を好適に実現することができる。
【0041】
また、上記請求項11又は12に記載の装置について、前記1次側コイルに対して点火に必要な大きさの電圧を印加するための装置構成としては、請求項13に記載の発明のように、前記1次側コイルに、前記点火スイッチが直列に、所定の点火用コンデンサが並列に、それぞれ接続されており、同1次側コイルが、前記点火スイッチがオンされることで、前記点火用コンデンサに蓄えられた電荷の供給を受けるものである構成が有効である。こうした構成であれば、前記1次側コイルに対して十分大きな電圧を容易且つ的確に印加することができる。
【0042】
また、上記請求項9〜13のいずれか一項に記載の装置において、前記禁止手段としては、請求項14に記載の発明のように、前記禁止を実行していない場合に、前記開始信号の発生による前記点火スイッチのオンを許容し、前記禁止を実行している場合に、前記開始信号が発生しても前記点火スイッチをオンさせないものが有効である。こうした構成であれば、前記点火スイッチが、前記禁止手段による禁止が実行されていない場合には、前記開始信号の発生によりオンされ、前記禁止手段による禁止が実行されている場合には、前記開始信号が発生してもオンしないようになる。したがって、前述の異常なタイミングでの点火が的確に禁止されることになる。
【0043】
なお、前述したECU(図10、図13)のように、マイクロコンピュータ等を用いて制御を行う場合には、前記禁止手段による点火の禁止を、例えばソフトウェア(プログラム)上で行うようにしてもよい。しかしながら、こうした禁止をより確実に行う上では、ハードウェア上(特に回路上)で行う構成が有益である。具体的には、上記請求項14に記載の装置において、前記禁止手段についてはこれを、請求項15に記載の発明のように、前記禁止を実行している場合に、前記点火スイッチのオンを回路上で禁止するものとした構成が有効である。さらにこの場合、請求項16に記載の発明のように、前記点火スイッチが、ゲートに対して論理H(ハイ)の電位が与えられることによりオンするノーマリオフ型のトランジスタであり、前記禁止手段が、前記禁止を実行している場合に、前記ゲートの電位を論理L(ロー)の電位に固定するものである構成とすることで、上記禁止が、より容易且つ的確に実現されることになる。
【0044】
また、上記請求項1〜16のいずれか一項に記載の装置について、前記内燃機関が複数のシリンダを有する多気筒エンジンである場合には、請求項17に記載の発明のように、
・前記複数のシリンダのうち、その時に前記点火を実行すべき対象シリンダが、それらシリンダのいずれのシリンダであるかを判別して、前記禁止手段による禁止が実行されていない場合に、その対象シリンダについて前記開始信号に基づく点火を行う手段を備え、前記タイミング判断手段が、前記対象シリンダについて、前記開始信号が所定の開始タイミングで発生したか否かを判断するものであり、前記禁止手段が、前記タイミング判断手段により開始信号が前記開始タイミングで発生していない旨判断された場合に、その判断をされた対象シリンダだけについて、前記開始信号に基づく点火を禁止するものである構成。
あるいは請求項19に記載の発明のように、
・前記複数のシリンダのうち、その時に前記点火を実行すべき対象シリンダが、それらシリンダのいずれのシリンダであるかを判別して、前記禁止手段による禁止が実行されていない場合に、その対象シリンダについて前記開始信号に基づく点火を行う手段を備え、前記タイミング判断手段が、前記対象シリンダについて、前記開始信号が所定の開始タイミングで発生したか否かを判断するものであり、前記禁止手段が、前記タイミング判断手段により開始信号が前記開始タイミングで発生していない旨判断された場合に、その判断をされた対象シリンダを含む前記複数のシリンダの全てについて、それぞれ前記開始信号に基づく点火を禁止するものである構成。
といった構成が有効である。こうした構成であれば、多気筒エンジンについてそれぞれ上記禁止が好適に実現されることになる。特に請求項17に記載の装置によれば、対象シリンダだけについて選択的に上記禁止が実行されることになり、各シリンダについて個別に上記禁止を行うことが可能になる。そして、この請求項17に記載の装置に関しては、請求項18に記載の発明のように、前記複数のシリンダのうち、いずれのシリンダが前記禁止手段により点火を禁止されたかを示す情報を保存する手段を備える構成とすることで、データ蓄積によるデータ解析のほか、エンジン点火系の故障診断等についてもこれを、より容易且つ的確に行うことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
(第1の実施形態)
以下、図1〜図6を参照して、本発明に係る内燃機関の点火装置を具体化した第1の実施形態について説明する。なお、本実施形態の装置も、概略的な構成としては、先の図10に示した構成と同様の構成を有し、多重点火制御部201bの構成としても、先の図11に示した構成に準ずる構成を有する。そのため、ここでは説明の便宜上、共通の構成及び動作に関する説明は割愛し、先の図11に示した構成と本実施形態の装置との相違点について主に説明する。
【0046】
まず図1を参照して、本実施形態に係る点火装置の概略構成について説明する。この図1は、先の図11に対応する回路図であり、ここでは、図11中に示した要素と同一の要素には各々同一の符号を付して示し、その説明を割愛する。
【0047】
なお、この装置の制御対象とするエンジン(図示略)としては、4輪自動車に搭載される多気筒(例えば直列4気筒)エンジンを想定している。このエンジンにおいては、各シリンダの吸気通路(詳しくは吸気ポート)に、それぞれインジェクタ(燃料噴射弁)が設けられており、それらインジェクタにより供給された燃料を各シリンダ内でそれぞれ燃焼させるようになっている。このエンジンは、その燃料燃焼によるエネルギーを回転運動に変換して出力軸(クランク軸)を回転させる、いわゆる4ストローク(4×ピストン行程)のレシプロ式ガソリンエンジン(火花点火式の内燃機関)である。すなわちこのエンジンでは、吸排気弁のカム軸に設けられた気筒判別センサ(電磁ピックアップ)にてその時の対象シリンダが逐次判別され、4つのシリンダ#1〜#4について、それぞれ吸入・圧縮・燃焼(点火)・排気の4行程による1燃焼サイクルが「720°CA」周期で、詳しくは例えば各シリンダ間で「180°CA」ずらして、シリンダ#1,#3,#4,#2の順に逐次実行される。
【0048】
同図1に示されるように、この多重点火制御部201bでも、図11に示した構成と同様、シリンダ#1についてAND回路211及び気筒判別回路221を備え、ドライブ信号Dr2と気筒判別信号G11とが、AND回路211に入力されるとともに、そのAND回路211の出力が、スイッチング信号G21としてトランジスタTr21のゲートに入力されるようになっている。また、シリンダ#3についても、AND回路211及び気筒判別回路221に準ずるものとして、AND回路212及び気筒判別回路222を備え、ドライブ信号Dr2と気筒判別信号G12とが、AND回路212に入力されるとともに、そのAND回路212の出力が、スイッチング信号G22としてトランジスタTr22のゲートに入力されるようになっている。また、図示は割愛しているものの、この点火装置は、シリンダ#2,#4についても同様のAND回路及び気筒判別回路を備える。このことも、先の図11に示した構成と同様である。ただし本実施形態では、こうした構成に対し、新たに誤点火防止回路251を設けるようにしている。そして、この回路251により、所定の期間については、上記各シリンダのAND回路(AND回路211,212,…)に対するドライブ信号Dr2の入力が禁止される(常に論理L(ロー)状態になる)ようになっている。
【0049】
詳しくは、ここでドライブ信号Dr2は、多重期間信号IGwとドライブ信号Dr1とを入力とするAND回路210の出力である。またここで、ドライブ信号Dr1は、点火信号IGt1,IGt2,…の立ち下がりから多重期間信号IGwの立ち下がりまでの期間において、所定周期で交互にオン/オフを繰り返すパルス信号である。また、気筒判別信号G11は、気筒判別回路221が、上記点火信号IGt1に基づいて作成する信号であり、詳しくは点火信号IGt1の立ち下がりから所定時間経過後までの期間において論理H(ハイ)となる信号である。
【0050】
また、誤点火防止回路251は、時間幅検出回路11と、立ち上がりタイミング検出回路12と、RSフリップフロップ13と、トランジスタ14と、を有して構成されるものである。この回路251では、点火信号IGt1〜4(点火信号IGt1,IGt2,…のいずれかがオンされればオンされる信号)が、時間幅検出回路11、及び立ち上がりタイミング検出回路12に対してそれぞれ入力され、これら回路11,12の出力信号(FF−S信号、FF−R信号)が、それぞれRSフリップフロップ13のS(セット)端子、R(リセット)端子に対して入力されるようになっている。そして、RSフリップフロップ13のQ端子から出力されるFF−Q信号が、トランジスタ14のゲートに入力されるようになっている。この点火装置では、こうしてFF−Q信号が論理H(ハイ)状態になっている間はトランジスタ14がオンされ、上記各シリンダのAND回路(AND回路211,212,…)に対するドライブ信号Dr2の入力が禁止される(換言すればグランドに落とされて論理L(ロー)状態に固定される)ことになる。なお、RSフリップフロップ13は、R(リセット)端子が論理L状態の時にS(セット)端子が論理Lから論理Hへ変化する(論理L→H)ことによって、Q端子の出力を論理Hにするものである。そしてこの「Q端子=論理H」の状態は、R端子が論理Hになるまで保持されるようになっている。
【0051】
図2に、時間幅検出回路11の構成の詳細を示す。
【0052】
図2に示されるように、この回路11は、定電流源11aを有し、この定電流源11aは、その一端が車載バッテリに接続されるとともに、他端がスイッチング素子11bを介して、定電流源11e、コンデンサ11f、及び比較器11g(詳しくはその非反転入力端子)の並列回路に電気的に接続されている。ここで、互いに並列接続される定電流源11e、コンデンサ11f、及び比較器11gのうち、コンデンサ11fは、スイッチング素子11bとは反対側の一端が接地されている。また、定電流源11eは、スイッチング素子11bとは反対側の一端が、スイッチング素子11dを介して接地されている。
【0053】
また、比較器11gは、その非反転入力端子が、接続点P11を交点として、3つの電気経路に接続され、それら各電気経路の状態によって当該非反転入力端子の電位(コンデンサ11fの電位に相当)が変化するようになっている。詳しくは、1つは、非反転入力端子(接続点P11)から、スイッチング素子11b、定電流源11a、及び車載バッテリが、この記載の順に、直列接続される経路である。また、別の1つは、接続点P11から、コンデンサ11f、及びグランドが、この記載の順に、直列接続される経路である。また、もう1つは、接続点P11から、定電流源11e、スイッチング素子11d、及びグランドが、この記載の順に、直列接続される経路である。また一方、この比較器11gの反転入力端子には、基準電位Vtが印加されている。
【0054】
この回路11はこうした構成を有し、上記スイッチング素子11bの導通制御端子には点火信号IGt1〜4が、またスイッチング素子11dの導通制御端子には点火信号IGt1〜4の論理反転信号(インバータ11cを通じて反転された信号)が、それぞれ与えられるようになっている。こうして、点火信号IGt1〜4により、上記比較器11gの非反転入力端子の電位を制御することができるようになっている。また、比較器11gは、非反転入力端子に入力される信号と、反転入力端子に入力される信号(基準電位Vt)と、を比較して出力を生成するようになっている。例えば非反転入力端子の信号が基準電位Vt以上の場合には論理H(ハイ)の信号をFF−S信号として出力する。他方、非反転入力端子の信号が基準電位Vtよりも小さい場合には論理L(ロー)の信号をFF−S信号として出力する。なお、上記基準電位Vtについては、各シリンダでの点火が所望のタイミングで指示された(点火信号IGt1,IGt2,…が所望のタイミングで立ち下がった)場合には、コンデンサ11fの電位VC2が当該基準電位Vtの値を超えない一方、各シリンダでの点火が所望のタイミングで行われない場合には、コンデンサ11fの電位VC2が当該基準電位Vtの値を超えるように、その値(電位)を設定(例えば固定値として設定)することとする。
【0055】
次に、図10を併せ参照して、こうした多重点火制御部201bを有して構成される駆動回路の動作、ひいては本実施形態に係る点火装置による点火制御について説明する。
【0056】
図10に示されるように、この装置でも、前述した従来の装置と同様、上記信号出力部101からの点火信号IGt1及び多重期間信号IGwに基づくタイミングで、コンデンサC1に蓄えられた電荷の放電を通じて1次側点火コイルL1aを通電し、2次側点火コイルL1bに接続される点火プラグ(内燃機関の燃焼室に対して設けられた点火プラグ)に初回の点火放電を生じさせる。そしてその後、トランジスタTr11とトランジスタTr21とを一定周期で交互にオン/オフさせる。こうすることにより、トランジスタTr21がオフされトランジスタTr11がオンされた状態において、コイルL10に電流が流れ、結果としてコイルL10に誘導性エネルギー(電気エネルギー)が蓄積される。そして、トランジスタTr11がオフされトランジスタTr21がオンされた状態において、そのコイルL10に蓄えられた誘導性エネルギーが放電され、結果として1次側点火コイルL1aに電流が流れる。この点火装置では、こうして多重放電期間において2次側点火コイルL1bに正逆両方向に電気を流し、点火コイルL1に点火放電を繰り返し生じさせることで、点火コイルL1(詳しくは2次側点火コイルL1b)に電気的に接続される点火プラグにより多重放電を行うようにしている。
【0057】
次に、図3〜図6を参照して、本実施形態に係る点火装置の動作について、さらに詳しく説明する。ここでは、複数のシリンダのうち、2つのシリンダ(シリンダ#1,#3)に対する点火に特に注目して、その動作態様について説明する。ただし、他のシリンダ(シリンダ#2,#4)についても、基本的には同様の動作に基づき点火制御が行われる。
【0058】
図3は、点火コイルL1の通電制御に関する信号のうち、誤点火防止回路251に関わる信号以外に注目して、本実施形態に係る点火装置の動作の一態様を示すタイミングチャートである。なお、この図3において、(a)は点火信号IGt1、(b)は点火信号IGt2、(c)(d)(e)は、それぞれAND回路211,212の入力信号であるドライブ信号Dr2、気筒判別信号G11,G12、(f)(g)は、それぞれトランジスタTr21,Tr22に対するスイッチング信号G21,G22、の各推移をそれぞれ示している。
【0059】
同図3(a)に示されるように、この例では、シリンダ#1に係る点火信号IGt1が、タイミングt11でオンされ(論理H(ハイ)となり)、タイミングt12でオフされる(論理L(ロー)となる)。そして、点火信号IGt1の立が下がりタイミングt12で、(d)に示されるように、気筒判別信号G11がオンされる(シリンダ#1以外のシリンダに係る気筒判別信号はオフのまま)とともに、(f)に示されるように、スイッチング信号G21がオン/オフされ、トランジスタTr21が所定周期で交互にオン/オフを繰り返すようになる。そしてこれにより、期間t12〜t13において、シリンダ#1における多重放電が行われることになる。なお、気筒判別信号G11は、タイミングt14で点火信号IGt2がオンされるまで、論理H状態に保持される。
【0060】
また、シリンダ#3についても同様に、シリンダ#3に係る点火信号IGt2が、タイミングt14でオンされ、タイミングt15でオフされると、その立が下がりタイミングt15で、(e)に示されるように、気筒判別信号G12がオンされる(シリンダ#3以外のシリンダに係る気筒判別信号はオフのまま)とともに、(g)に示されるように、スイッチング信号G22がオン/オフされ、トランジスタTr22が所定周期で交互にオン/オフを繰り返すようになる。そしてこれにより、期間t15〜t16において、シリンダ#3における多重放電が行われることになる。
【0061】
図4は、本実施形態に係る点火装置の動作の別の一態様を示すタイミングチャートである。なお、この図4において、(a)(b)は、先の図3の(a)(b)に、(d)〜(h)は、先の図3の(c)〜(g)に、それぞれ対応するものであり、また(c)は多重期間信号IGwの推移を示している。
【0062】
同図4に示されるように、この例でも、その基本的な動作は、先の図3に示した例と同様である。しかしながら、この例では、気筒判別信号G11,G12が、多重期間信号IGwに基づいてオン/オフされるようになっている。なおこの場合も、期間t12〜t13,t15〜t16,…において、各シリンダにおける多重放電が行われることになる。
【0063】
続けて図5及び図6を参照して、本実施形態の点火装置による点火が正常なタイミング(所望のタイミング)で指示された場合と異常なタイミング(所望のタイミングよりも遅延したタイミング)で指示された場合とを対比しつつ、本実施形態に係る点火装置の動作についてさらに説明する。
【0064】
まず図5を参照して、本実施形態の点火装置による点火が正常なタイミングで指示された場合について説明する。この図5は、点火コイルL1の通電制御に関する信号のうち、誤点火防止回路251に関わる信号に注目して、本実施形態に係る点火装置の動作の一態様を示すタイミングチャートである。なお、この図5において、(a)は点火信号IGt1、(b)は点火信号IGt2、(c)は点火信号IGt1〜4(点火信号IGt1,IGt2,…のいずれかがオンされればオンされる信号)、(d)はコンデンサ11f(図2)の電位VC2、(e)(f)(g)は、それぞれRSフリップフロップ13のFF−S信号、FF−R信号、FF−Q信号、(h)はドライブ信号Dr2、の各推移をそれぞれ示している。
【0065】
同図5に示されるように、この例では、タイミングt21において、(c)に示されるように、点火信号IGt1〜4がオンされ(論理H(ハイ)となり)、また(f)に示されるように、RSフリップフロップ13(図1)のR端子に対して、リセット信号(詳しくは「FF−R信号=論理H」のワンショット信号)が入力される。そして、続くタイミングt22で、上記点火信号IGt1〜4がオフされる(論理L(ロー)となる)。なお、この期間t21〜t22においては、図2に示したスイッチング素子11bがオン状態で保持され、コンデンサ11fに対してバッテリによる充電が行われることになる。
【0066】
この例では、(a)に示されるように、シリンダ#1の点火が正常なタイミングt22で行われ(点火信号IGt1が正常なタイミングt22で立ち下がり)、また(h)に示されるように、期間t22〜t23において、シリンダ#1における多重放電が行われることになる。この場合、(d)に示されるように、コンデンサ11fの電位VC2は、基準電位Vtの値を超えない。
【0067】
また、シリンダ#3についても同様に、シリンダ#3に係る点火信号IGt2が、タイミングt24でオンされるとともに、正常なタイミングt25でオフされ、期間t25〜t26において、シリンダ#3における多重放電が行われることになる。
【0068】
次に、図6を参照して、本実施形態の点火装置による点火(特にシリンダ#1での点火)が異常なタイミングで指示された場合について説明する。なお、この図6において、(a)〜(h)は、先の図5の(a)〜(h)に、それぞれ対応するものである。
【0069】
同図6に示されるように、この例では、点火信号IGt1が異常に長く出力され、シリンダ#1の点火が異常なタイミングt22(所望の開始タイミングt22aよりも遅延したタイミング)で指示される。そしてこれにより、(d)に示されるように、コンデンサ11fの電位VC2(充電量)が基準電位Vtの値を超えて、その電位VC2が基準電位Vtを超えたタイミングt22aで、比較器11g(図2)の出力(FF−S信号)が論理Hとなる。そして、こうしてFF−S信号が論理Hとなることで、RSフリップフロップ13のFF−Q信号についても、これが論理Hとなり、このFF−Q信号に基づきトランジスタ14がオンされることになる。そして、このトランジスタ14がオンされている間(次にRSフリップフロップ13のR端子にリセット信号が入力されるまで)は、各シリンダのAND回路(AND回路211,212,…)に対するドライブ信号Dr2の入力が禁止(論理L状態に固定)され、ひいては各シリンダの点火コイルに対する通電、いわば各シリンダにおける点火の実行が禁止(4つのシリンダ全てについて同時に禁止)されることになる。
【0070】
こうした禁止は、次の対象シリンダであるシリンダ#3の点火制御に先立ち、RSフリップフロップ13のR端子にリセット信号が入力されることで、解除される。したがって、(b)に示されるように、シリンダ#3の点火が正常なタイミングt25で指示された場合には、(h)に示されるように、期間t25〜t26において、通常どおり、シリンダ#3における多重放電が行われることになる。
【0071】
以上説明した本実施形態に係る内燃機関の点火装置によれば、以下のような優れた効果が得られるようになる。
【0072】
(1)火花点火式の内燃機関を対象にして所定の開始信号(点火信号IGt1,IGt2,…の立ち下がり)の発生により点火を指示する内燃機関の点火装置(図10のECU及び駆動回路)として、開始信号の発生タイミングを監視して、その開始信号が異常なタイミング(例えば図6のタイミングt22a以外のタイミング)で発生した場合に、上記開始信号に基づく点火を禁止する回路を備える構成とした。具体的には、上記開始信号が所定の開始タイミング(例えば図6のタイミングt22a)で発生したか否かを判断する回路(タイミング判断手段、図1の回路11,12、及びRSフリップフロップ13)と、この回路により開始信号が上記開始タイミングで発生していない旨判断された場合に、その開始信号に基づく点火を禁止する回路(禁止手段、図1のトランジスタ14)と、を備える構成とした。これにより、開始信号(点火信号IGt1,IGt2,…の立ち下がり)が異常なタイミングで発生した場合に、その開始信号に基づく異常なタイミングでの点火を禁止して、異常点火に起因したエンジンや周辺機器等の損傷を軽減することができるようになる。
【0073】
(2)上記開始タイミングについてはこれを、所定基準信号(点火信号IGt1,IGt2,…の立ち上がり)の発生(例えば図5及び図6のタイミングt21)から所定時間(例えば図6のパルス幅に相当する時間t21〜t22a)だけ経過した時のタイミング(例えば図6のタイミングt22a)として設定するようにした。そして、時間幅検出回路11(図2)についてはこれを、上記基準信号の発生から開始信号が発生するまでの時間(例えば図5及び図6のパルス幅に相当する時間t21〜t22)に基づいて、開始信号が上記開始タイミングで発生したか否かを判断するものとした。こうした構成であれば、上記基準信号の発生から開始信号が発生するまでの時間に基づいて、上記開始信号が開始タイミングで発生したか否かを容易且つ的確に判断することが可能になる。
【0074】
(3)時間幅検出回路11(図2)についてはこれを、上記基準信号の発生(例えば図5及び図6のタイミングt21)により所定の計時用コンデンサ(図2のコンデンサ11f)に対して充電を開始し、上記開始信号が発生するまでにその計時用コンデンサの充電量が許容レベルよりも大きくなった(電位VC2が基準電位Vtの値を超えた)か否かに基づいて、開始信号が上記開始タイミングで発生したか否かを判断するものとした。こうすることで、コンデンサ11fの充電量に基づいて、開始信号が開始タイミングで発生したか否かを、より容易且つ的確に判断することが可能になる。
【0075】
(4)時間幅検出回路11(図2)についてはこれを、コンデンサ11fの充電量に相当する電位VC2と、上記許容レベルに相当する所定電位(基準電位Vt)とを入力とする比較器11gの出力電位(FF−S信号)の大小(論理H/論理L)に基づいて、開始信号が開始タイミングで発生したか否かを判断するものとした。こうすることで、周知の回路をもって、より容易且つ的確に、上記判断を行うことが可能になる。
【0076】
(5)時間幅検出回路11(図2)についてはこれを、上記基準信号が発生した時(例えば図5及び図6のタイミングt21)にリセット信号(FF−R信号)が入力され、且つ、上記基準信号の発生から上記開始信号が発生するまでの時間(例えば図5及び図6のパルス幅に相当する時間t21〜t22)が許容レベル(例えば図6のパルス幅に相当する時間t21〜t22a)よりも長くなった時にセット信号(FF−S信号)が入力されるRSフリップフロップ13の出力(FF−Q信号)として、上記開始信号(点火信号IGt1,IGt2,…の立ち下がり)が所定の開始タイミング(例えば図6のタイミングt22a)で発生したか否かの判断結果を出力するものとした。こうすることで、周知の回路をもって、より容易且つ的確に、上記判断を行うことが可能になる。
【0077】
(6)上記開始信号(点火信号IGt1,IGt2,…の立ち下がり)の発生により指示される点火を、断続的に複数回の点火を行う多重放電点火とした。また、上記開始信号(例えば図4における点火信号IGt1の立ち下がり)が発生したことに応じて、多重放電点火を継続的に行う期間(例えば図4の期間t12〜t13)を示す多重期間信号IGwを出力するプログラム(図10のECUに搭載)と、多重期間信号IGwの出力中に、上記多重放電点火を指示するパルス信号(ドライブ信号Dr2)を出力する回路(図1のAND回路210)と、ドライブ信号Dr2の出力中に、そのドライブ信号Dr2に基づいて、上記多重放電点火を実行する回路(図1のAND回路211,212,…、トランジスタTr21,Tr22,…、点火コイルL1,…など)と、を備える構成とした。そして、上記トランジスタ14(図1)についてはこれを、上記回路11,12、及びRSフリップフロップ13により開始信号が開始タイミングで発生していない旨判断された場合(RSフリップフロップ13からFF−Q信号として論理Hの信号が出力された場合)に、ドライブ信号Dr2の出力を禁止(論理L状態に固定)するものとした。こうすることで、多重放電点火を好適に実現しつつ、異常なタイミングでの点火についてもこれを、的確に禁止することが可能になる。
【0078】
(7)内燃機関が、点火プラグの通電により点火を行うものであり、その点火プラグが、所定のスイッチング素子である点火スイッチ(トランジスタTr21,Tr22,…)のオン/オフ状態に応じて通電の有無が切り替わるものであり、当該点火装置が、所定パラメータ(図1の多重期間信号IGw、ドライブ信号Dr1、及び点火信号IGt1〜4)に基づいて上記点火スイッチのオン/オフ状態を切り替えるスイッチ制御回路(図1の多重点火制御部201b)を備える構成とした。こうすることで、周知の回路をもって、より容易且つ的確に、上記構成の実現が可能になる。
【0079】
(8)上記点火スイッチ(トランジスタTr21,Tr22,…)のオン/オフ態様を示すスイッチ信号(ドライブ信号Dr2)と、上記開始信号(点火信号IGt1,IGt2,…の立ち下がり)と、の両方が発生しているか否かを判断する回路(信号判断手段、図1のAND回路211,212,…)を備える構成とした。また、上記点火スイッチが、ノーマリオフ型のスイッチング素子であり、上記スイッチ制御回路が、図1のAND回路211,212,…により上記信号の両方が発生している旨判断された(同AND回路211,212,…により論理Hの信号が出力された)ことに基づいて、上記ドライブ信号Dr2に対応したオン/オフ態様で上記点火スイッチのオン/オフ状態を切り替えるものである構成とした。そして、トランジスタ14(図1)についてはこれを、上記禁止を実行している場合に、ドライブ信号Dr2を無効化して上記AND回路211,212,…により論理Lの信号を出力させるものとした。こうした構成によれば、異常なタイミングでの点火を、より的確に禁止することが可能になる。
【0080】
(9)点火プラグの通電の有無を制御するものとして、1次側コイル(1次側点火コイルL1a)と2次側コイル(2次側点火コイルL1b)とを有して構成される点火コイルL1を有し、この点火コイルのうち、1次側点火コイルL1aが、上記点火スイッチ(トランジスタTr21,Tr22,…)のオン/オフ状態に応じて通電の有無が切り替わるように設けられ、2次側点火コイルL1bが、点火プラグの通電経路に設けられた回路構成とした。こうした構成であれば、点火プラグの通電の有無を好適に制御することができるようになる。
【0081】
(10)上記開始信号(点火信号IGt1,IGt2,…の立ち下がり)の発生に基づいて、上記点火スイッチ(トランジスタTr21,Tr22,…)を繰り返しオン/オフさせて1次側点火コイルL1aに断続的に1次電流を流すことにより2次側点火コイルL1bに2次電流を繰り返し発生させることで、点火プラグに多重放電を行わせる回路(多重放電実行手段、図1のAND回路211,212,…)を備える構成とした。こうした構成であれば、多重放電点火を好適に実現することができるようになる。
【0082】
(11)1次側点火コイルL1a,…に対して、上記点火スイッチ(トランジスタTr21,Tr22,…)が直列に、また所定の点火用コンデンサ(図10のコンデンサC1,…)が並列に、それぞれ接続された構成とした。そして、1次側点火コイルL1a,…についてはこれを、上記点火スイッチがオンされることで、コンデンサC1,…に蓄えられた電荷の供給を受けるものとした。こうした構成であれば、1次側点火コイルL1a,…に対して十分大きな電圧を容易且つ的確に印加することができるようになる。
【0083】
(12)トランジスタ14(図1)についてはこれを、上記禁止を実行していない(トランジスタ14がオンされていない)場合に、上記開始信号(点火信号IGt1,IGt2,…の立ち下がり)の発生による上記点火スイッチ(トランジスタTr21,Tr22,…)のオンを許容し、上記禁止を実行している(トランジスタ14がオンされている)場合に、上記開始信号が発生しても上記点火スイッチをオンさせないものとした。こうした構成であれば、異常なタイミングでの点火が的確に禁止されることになる。
【0084】
(13)トランジスタ14(図1)についてはこれを、上記禁止を実行している(トランジスタ14がオンされている)場合に、上記点火スイッチのオンを回路上で禁止するものとした。こうした構成であれば、上記禁止をソフトウェア(プログラム)上で行う場合と比較して、上記禁止をより確実に行うことが可能になる。
【0085】
(14)上記点火スイッチ(トランジスタTr21,Tr22,…)についてはこれを、ゲートに対して論理H(ハイ)の電位が与えられることによりオンするノーマリオフ型のトランジスタとして、上記トランジスタ14(図1)についてはこれを、上記禁止を実行している(トランジスタ14がオンされている)場合に、トランジスタTr21,Tr22,…のゲートの電位を論理L(ロー)の電位に固定するものとした。こうすることで、上記禁止が、より容易且つ的確に実現されることになる。
【0086】
(15)複数のシリンダ(4つのシリンダ)を有する多気筒エンジン(詳しくは直列4気筒エンジン)を対象として、それらシリンダのうち、その時に点火を実行すべき対象シリンダが、それらシリンダのいずれのシリンダであるかを判別して、上記トランジスタ14による禁止が実行されていない(同トランジスタ14がオンされていない)場合に、その対象シリンダについて上記開始信号(点火信号IGt1,IGt2,…の立ち下がり)に基づく点火を行う回路(図1の気筒判別回路221,222,…、AND回路211,212,…、トランジスタTr21,Tr22,…、点火コイルL1,…など)を備える構成とした。そして、上記回路11,12、及びRSフリップフロップ13(図1)についてはこれを、対象シリンダについて、上記開始信号が所定の開始タイミングで発生したか否かを判断するものとし、上記トランジスタ14(図1)についてはこれを、上記回路11,12、及びRSフリップフロップ13により開始信号が上記開始タイミングで発生していない旨判断された(RSフリップフロップ13からFF−Q信号として論理Lの信号が出力された)場合に、その判断をされた対象シリンダを含む4つのシリンダの全てについて、それぞれ上記開始信号に基づく点火を禁止するものとした。こうした構成であれば、多気筒エンジンについてそれぞれ上記禁止が好適に実現されることになる。
【0087】
(第2の実施形態)
次に、図7〜図9を参照して、先の図1に示した装置に準ずる構成をもった点火装置として、本発明に係る点火装置を具体化した第2の実施形態について説明する。ただしここでは、第1の実施形態との相違点を中心に、本実施形態について説明する。
【0088】
まず図7を参照して、本実施形態に係る点火装置の概略構成について説明する。なお、この図7は、先の図1に対応する回路図であり、ここでは、図1中に示した要素と同一の要素には各々同一の符号を付して示し、その説明を割愛する。
【0089】
同図7に示されるように、本実施形態の装置では、各シリンダのAND回路(AND回路211,212,…)に対する入力のうち、各シリンダの気筒判別信号G11,G12,…について、上述の誤点火防止回路251を設けるようにしている。このため、同回路251は、各シリンダに対して、それぞれ用意されている。なお、これらシリンダ#1,#3,…に係る誤点火防止回路251,252,…の構成は、基本的には各シリンダについて同様の構成となっているため、ここでは回路251の構成に注目して、それら誤点火防止回路の構成についての説明を行う。
【0090】
例えば回路251は、第1の実施形態の装置と同様、時間幅検出回路11と、立ち上がりタイミング検出回路12と、RSフリップフロップ13と、トランジスタ14と、を有して構成されるものである(詳細構成は図2を参照)。ただし、本実施形態の回路251では、点火信号IGt1(回路252では点火信号IGt2)が、気筒判別回路221に加え、時間幅検出回路11、及び立ち上がりタイミング検出回路12に対しても、それぞれ入力されるようになっている。そして、RSフリップフロップ13のFF−Q1信号に応じてオン/オフするトランジスタ14がオンした場合には、上記AND回路211に対する気筒判別信号G11(回路252では気筒判別信号G12)の入力、ひいてはトランジスタTr21(回路252ではトランジスタTr22)のオン駆動が禁止される(換言すればグランドに落とされて論理L状態になる)ようになっている。
【0091】
次に、図8及び図9を参照して、本実施形態の点火装置による点火が正常なタイミング(所望のタイミング)で指示された場合と異常なタイミング(所望のタイミングよりも遅延したタイミング)で指示された場合とを対比しつつ、本実施形態に係る点火装置の動作についてさらに説明する。なお、図8は先の図3に示したタイプの点火装置について、また図9は先の図4に示したタイプの点火装置について、それぞれ本実施形態の誤点火防止回路を適用した場合の動作態様を示すタイミングチャートである。
【0092】
まず図8を参照して、先の図3に示したタイプの点火装置の動作態様について説明する。なお、この図8において、(a)は点火信号IGt1、(b)は点火信号IGt2、(c)は誤点火防止回路251に係るコンデンサ11f(図2)の電位VC2、(d)(e)(f)は、それぞれ誤点火防止回路251に係るRSフリップフロップ13のFF−S1信号、FF−R1信号、FF−Q1信号、(g)はドライブ信号Dr2、(h)(i)は、それぞれAND回路211,212の入力信号である気筒判別信号G11,G12、の各推移をそれぞれ示している。
【0093】
同図8に示されるように、この例では、タイミングt21において、(a)に示されるように、点火信号IGt1がオンされ(論理H(ハイ)となり)、また(e)に示されるように、RSフリップフロップ13(図7)のR端子に対して、リセット信号(詳しくは「FF−R信号=論理H」のワンショット信号)が入力される。そして、続くタイミングt22で、上記点火信号IGt1〜4がオフされる(論理Lとなる)。なお、この期間t21〜t22においては、図2に示したスイッチング素子11bがオン状態で保持され、コンデンサ11fに対してバッテリによる充電が行われることになる。
【0094】
この例では、(a)に示されるように、シリンダ#1の点火が異常なタイミングt22(所望のタイミングよりも遅延したタイミング)で指示される。そしてこれにより、(c)に示されるように、コンデンサ11fの電位VC2(充電量)が基準電位Vtの値を超えて、(d)に示されるように、比較器11g(図2)の出力(FF−S1信号)が論理Hとなる。そして、こうしてFF−S1信号が論理Hとなることで、RSフリップフロップ13のFF−Q1信号が論理Hとなり、トランジスタ14がオンされることになる。そして、このトランジスタ14がオンされている間(次に回路251に係るRSフリップフロップ13のR端子にリセット信号が入力されるまで)は、シリンダ#1のAND回路(AND回路211)に対する気筒判別信号G11の入力が禁止(論理L状態に固定)され、ひいては同シリンダ#1の点火コイルに対する通電、いわば同シリンダ#1における点火の実行が禁止(シリンダごと個別に禁止)されることになる。なお、こうしたシリンダ#1に係る気筒判別信号G11の入力禁止は、図中(h)に破線にて示すように、回路252(シリンダ#3の回路)に係るRSフリップフロップのリセット信号があっても解除されない。本実施形態の装置では、こうした構成により、シリンダごとの状態(特に異常・故障に関する情報)を個別に管理し易くなっている。
【0095】
一方、次の対象シリンダであるシリンダ#3の点火制御は、シリンダ#1の点火制御とは別に行われる。すなわち、直前の点火制御によりシリンダ#1での点火が禁止されていても、それによってシリンダ#3の点火が禁止されることはない。そして図示される例では、シリンダ#3についての前回の点火制御において、シリンダ#3の点火が正常なタイミングで指示された場合を想定している。このため、(i)中に実線にて示すように、今回のシリンダ#3の点火制御に先立ち、詳しくは点火信号IGt2の立が上がりタイミングt24で、回路252に係るRSフリップフロップのR端子にリセット信号が入力されることにより、気筒判別信号G12が論理Lとなる。ちなみに(i)中の破線は、前回の点火制御による同シリンダ#3の点火が、異常なタイミングで指示された場合を想定したものであり、この場合は、気筒判別信号G12が論理Lの状態で維持されることになる。そして、今回の点火制御においては、シリンダ#3の点火が正常なタイミングt25で指示されている。したがって、(c)に示されるように、回路252に係るコンデンサ11f(図2)の電位VC2は基準電位Vtの値を超えず、期間t25〜t26において、通常どおり(正常な制御として)、シリンダ#3における多重放電が行われることになる。
【0096】
次に、図9を参照して、先の図4に示したタイプの点火装置の動作態様について説明する。なお、この図9において、(a)(b)は、先の図8の(a)(b)に、(d)〜(j)は、先の図3の(c)〜(i)に、それぞれ対応するものであり、また(c)は多重期間信号IGwの推移を示している。
【0097】
同図9に示されるように、この例でも、その基本的な動作は、先の図8に示した例と同様である。しかしながら、この例では、気筒判別信号G11,G12が、多重期間信号IGwに基づいてオン/オフされるようになっている。そしてこの場合も、各シリンダの点火が異常なタイミングで指示されたときには、そのシリンダのAND回路に対する気筒判別信号の入力が禁止(論理L状態に固定)され、ひいてはそのシリンダにおける点火の実行が禁止(シリンダごと個別に禁止)されることになる。
【0098】
以上説明したように、本実施形態に係る内燃機関の点火装置によれば、第1の実施形態による前記(1)〜(7)及び(9)〜(14)の効果と同様の効果もしくはそれに準じた効果に加え、さらに次のような効果も得られるようになる。
【0099】
(16)上記点火スイッチ(トランジスタTr21,Tr22,…)のオン/オフ態様を示すスイッチ信号(ドライブ信号Dr2)と、上記開始信号(点火信号IGt1,IGt2,…の立ち下がり)と、の両方が発生しているか否かを判断する回路(信号判断手段、図7のAND回路211,212,…)を備える構成とした。また、上記点火スイッチが、ノーマリオフ型のスイッチング素子であり、上記スイッチ制御回路が、図7のAND回路211,212,…により上記信号の両方が発生している旨判断された(同AND回路211,212,…により論理Hの信号が出力された)ことに基づいて、上記ドライブ信号Dr2に対応したオン/オフ態様で上記点火スイッチのオン/オフ状態を切り替えるものである構成とした。そして、トランジスタ14(図7)についてはこれを、上記禁止を実行している場合に、上記開始信号(点火信号IGt1,IGt2,…の立ち下がり)を無効化して上記AND回路211,212,…により論理Lの信号を出力させるものとした。こうした構成によれば、異常なタイミングでの点火を、より的確に禁止することが可能になる。
【0100】
(17)複数のシリンダ(4つのシリンダ)を有する多気筒エンジン(詳しくは直列4気筒エンジン)を対象として、それらシリンダのうち、その時に点火を実行すべき対象シリンダが、それらシリンダのいずれのシリンダであるかを判別して、上記トランジスタ14による禁止が実行されていない(同トランジスタ14がオンされていない)場合に、その対象シリンダについて上記開始信号(点火信号IGt1,IGt2,…の立ち下がり)に基づく点火を行う回路(図7の気筒判別回路221,222,…、AND回路211,212,…、トランジスタTr21,Tr22,…、点火コイルL1,…など)を備える構成とした。そして、上記回路11,12、及びRSフリップフロップ13(図7)についてはこれを、対象シリンダについて、上記開始信号が所定の開始タイミングで発生したか否かを判断するものとし、上記トランジスタ14(図7)についてはこれを、上記回路11,12、及びRSフリップフロップ13により開始信号が上記開始タイミングで発生していない旨判断された(RSフリップフロップ13からFF−Q信号として論理Lの信号が出力された)場合に、その判断をされた対象シリンダだけについて、上記開始信号に基づく点火を禁止するものとした。こうした構成であれば、多気筒エンジンについてそれぞれ上記禁止が好適に実現されることになる。
【0101】
(第3実施形態)
次に、図16〜図19を参照して、先の図1に示した装置に準ずる構成をもった点火装置として、本発明に係る点火装置を具体化した第3の実施形態について説明する。ただしここでは、第1の実施形態との相違点を中心に、本実施形態について説明する。
【0102】
まず図16及び図17を参照して、本実施形態に係る点火装置の構成について説明する。図16は先の図1に対応する回路図であり、ここでは、図1中に示した要素と同一の要素には各々同一の符号を付して示し、その説明を割愛する。
【0103】
本実施形態の点火装置では、誤点火防止回路351の構成が第1実施形態の誤点火防止回路251と異なる。また、第1実施形態の多重点火制御部201bにクロック回路400、インバータ401及びAND回路402が追加されて、多重点火制御部301bが構成されている。クロック回路400は一定周期のパルス信号を出力する回路である。クロック回路400のパルス信号は誤点火防止回路351の時間幅検出回路311に入力されている。
【0104】
誤点火防止回路351では、時間幅検出回路311が第1実施形態の時間幅検出回路11と異なっている。その他、誤点火防止回路351では、第1実施形態の立ち上がりタイミング検出回路12に代えてインバータ403を備えて構成されている。すなわち、誤点火防止回路351では、点火信号IGt1〜4の反転信号(インバータ403の出力信号)がRSフリップフロップ13のFF−R信号とされている。このFF−R信号は、時間幅検出回路311にも入力されている。
【0105】
図17は、時間幅検出回路311の構成を示す回路図である。時間幅検出回路311は、クロック回路400のパルス信号のパルス数をカウントするカウンタ回路404と、同カウンタ回路404をリセット状態に遷移させるリセット回路405と、を備えている。そして、時間幅検出回路311では、点火信号IGt1〜4が論理Hである時間がカウンタ回路404により計時され、その計時結果に基づいてFF−S信号が出力されるようになっている。なお、「リセット状態」とは、カウンタ回路404において、その計数値が0に戻り、且つ、パルス信号のパルス数がカウントされない状態である。
【0106】
ここで、時間幅検出回路311について詳しく説明すると、カウンタ回路404は、複数のDフリップフロップDFF0〜DFFn−1からなるnビットのカウンタ回路である。カウンタ回路404では、各ビットのDフリップフロップにおいてD(データ入力)端子及びnQ(ネガティブ出力)端子が互いに接続され、隣り合うビットのDフリップフロップのうち下位側のDフリップフロップのnQ端子に上位側のDフリップフロップのCLK(クロック入力)端子が互いに接続されている。そして、カウンタ回路404では、最下位ビットのDフリップフロップのCLK端子がパルス入力端子PINとなり、各ビットのDフリップフロップのD端子及びQ(ポジティブ出力)端子がそれぞれデータ入力端子DI0〜DIn−1及びデータ出力端子DO0〜DOn−1となっている。パルス入力端子PINにはクロック回路400出力端が接続され、データ入力端子DI0〜DIn−1にはリセット回路405が接続され、最上位ビットのデータ出力端子DOn−1にはRSフリップフロップ13のS端子が接続されている。これにより、最上位ビットのデータ出力信号がFF−S信号としてRSフリップフロップ13へ入力される。
【0107】
リセット回路405は、FF−R信号が論理Hである場合(点火信号IGt1〜4が論理Lである場合)にカウンタ回路404をリセット状態とし、FF−R信号が論理Lである場合(点火信号IGt1〜4が論理Hである場合)にカウンタ回路404のリセット状態を解除する。本実施形態では、リセット回路405は、カウンタ回路404の各ビットに対応するトランジスタTR0〜TRn−1を主体として構成されている。詳しくは、リセット回路405において、各トランジスタTR0〜TRn−1のベース端子にFF−Q信号が入力されるようになっている。そして、各トランジスタTR0〜TRn−1のコレクタ端子にカウンタ回路404のデータ入力端子DI0〜DIn−1が接続され、各トランジスタTR0〜TRn−1のエミッタ端子にグランドが接続されている。この場合、FF−R信号が論理L(点火信号IGt1〜4が論理H)になると、リセット回路405においてトランジスタTR0〜TRn−1がオフ状態となり、カウンタ回路404においてデータ入力端子DI0〜DIn−1がハイインピーダンスとなり、カウンタ回路404のリセット状態が解除される。一方、FF−R信号が論理H(点火信号IGt1〜4が論理L)になると、リセット回路405においてトランジスタTR0〜TRn−1がオン状態となり、カウンタ回路404においてデータ入力端子DI0〜DIn−1が論理Lとなり、カウンタ回路404がリセット状態となる。
【0108】
以上説明した誤点火防止回路351では、点火信号IGt1〜4が論理Hである時間がカウンタ回路404により計時され、カウンタ回路404の最上位ビットのデータ出力信号がFF−S信号として出力される。そして、点火信号IGt1〜4の立ち上がりタイミングからの経過時間が異常判定時間未満である場合には、カウンタ回路404の最上位ビットのデータ出力信号(FF−S信号)が論理Lとなり(図18(f)参照)、点火信号IGt1〜4の立ち上がりタイミングからの経過時間が異常判定時間以上である場合には、カウンタ回路404の最上位ビットのデータ出力信号(FF−S信号)が論理Hとなる(図19(f)参照)。上記異常判定時間は、カウンタ回路404の段数(ビット数)及びクロック回路400のパルス信号の発生周期とにより設定されている。
【0109】
なお、点火信号IGt1〜4の立ち上がりタイミングからの経過時間が異常判定時間を超えて更に大きくなると、カウンタ回路404の最上位ビットのデータ出力信号(FF−S信号)が論理Lへ戻ってしまうが、RSフリップフロップ13によるラッチ機能により、誤点火防止回路351の出力信号(FF−Q信号)は論理Hに保持される。これにより、点火信号IGt1〜4の立ち上がりタイミングからの経過時間が異常判定時間であるにも拘わらず、誤点火防止回路351の出力信号が点火許可を示す(FF−Q信号が論理Lとなる)事態を防ぐことができる。この意味で、本実施形態において、上述の如く時間幅検出回路311の後段にRSフリップフロップ13を設けることの効果は特に大きいと言える。
【0110】
図16に示すように、多重点火制御部301bでは、誤点火防止回路351のFF−Q信号の反転信号(インバータ401の出力信号)とAND回路210の出力信号との論理積信号が、ドライブ信号Dr2として、AND回路402からAND回路211,212,…へ出力されるようになっている。この場合、誤点火防止回路351のFF−Q信号が論理Lとなると、多重期間信号IGw及びドライブ信号Dr1に応じたドライブ信号Dr2により点火制御が実施される。すなわち、各シリンダにおいて点火の実行が許可される。一方、誤点火防止回路351のFF−Q信号が論理Hとなると、多重期間信号IGw及びドライブ信号Dr1に拘わらずドライブ信号Dr2が論理Lに固定される。すなわち、各シリンダにおいて点火の実行が禁止される。
【0111】
続いて、図18及び図19を参照して、本実施形態の点火装置による点火が正常なタイミングで指示された場合と異常なタイミングで指示された場合とを対比しつつ、本実施形態に係る点火装置の動作について説明する。図18及び図19において、(a)はクロック回路400のパルス信号、(b)は点火信号IGt1〜4、(c)〜(e)はそれぞれカウンタ回路404の第0(最下位)ビット〜第2ビットのデータ出力信号Dout0〜Dout2、(f)〜(h)はそれぞれFF−S信号、FF−R信号、FF−Q信号を示している。なお、図18及び図19では、カウンタ回路404が4ビットのカウンタ回路であることを想定している。
【0112】
まず、図18を参照して、本実施形態の点火装置による点火が正常なタイミングで指示された場合について説明する。
【0113】
この例では、タイミングt31以前の期間において点火信号IGt1〜4が論理Lとなっている(図18(a)参照)。そのため、同期間(タイミングt31以前の期間)ではFF−R信号が論理Hとなる(図18(g)参照)。これにより、RSフリップフロップ13のR端子への入力が論理Hとなる(図18(g)参照)。その結果、RSフリップフロップ13がリセット状態となり、RSフリップフロップ13のFF−Q信号が論理Lとなる(図18(h)参照)。また、時間幅検出回路311のリセット回路405への入力が論理Hとなる。その結果、タイミングt31以降のクロック回路400のパルス信号の立ち上がりに伴って、カウンタ回路404がリセット状態となり、カウンタ回路404のデータ出力信号Dout0〜Dout2及びFF−S信号が論理Lとなる(図18(c)〜(f)参照)。
【0114】
タイミングt31において、点火信号IGt1〜4が論理Hになると、FF−R信号が論理Lとなり、リセット回路405への入力が論理Lとなる(図18(a),(g)参照)。これにより、カウンタ回路404のリセット状態が解除され、カウンタ回路404において点火信号IGt1〜4が論理Hである時間の計時が開始される(図18(c)〜(f)参照)。
【0115】
その後、タイミングt32において、点火信号IGt1〜4が論理Lになると、FF−R信号が論理Hとなり、リセット回路405への入力が論理Hとなる(図18(a),(g)参照)。これにより、タイミング32以降のクロック回路400のパルス信号の立ち上がりに伴って、カウンタ回路404が再びリセット状態となる(図18(c)〜(f)のタイミングt33参照)。
【0116】
この例では、点火信号IGt1〜4の立ち上がりタイミングからの経過時間が異常判定時間未満のタイミングt32において、点火信号IGt1〜4が立ち下がる。そのため、点火信号IGt1〜4の立ち下がりタイミングにおける誤点火防止回路351の出力信号(FF−Q信号)は論理Lとなっている。すなわち、点火信号IGt1〜4の立ち下がりタイミングでは点火が許可されている。そのため、点火信号IGt1〜IGt4のいずれかの立ち下がりタイミングで点火が実行される。
【0117】
次に、図19を参照して、本実施形態の点火装置による点火が異常なタイミングで指示された場合の点火装置の動作について説明する。
【0118】
タイミングt41において、点火信号IGt1〜4が論理Hになると、カウンタ回路404において点火信号IGt1〜4が論理Hである時間の計時が開始される(図19(c)〜(f)参照)。
【0119】
タイミングt42において、点火信号IGt1〜4の立ち上がりタイミングからの経過時間が異常判定時間になると、カウンタ回路404の最上位ビットのデータ出力信号(FF−S信号)が論理Lから論理Hへ変化し、それに伴ってRSフリップフロップ13のFF−Q信号が論理Hとなる。
【0120】
タイミングt43において、点火信号IGt1〜4の立ち上がりタイミングからの経過時間が異常判定時間の倍の時間になると、カウンタ回路404の最上位ビットのデータ出力信号(FF−S信号)が論理Hから論理Lへ変化するが、RSフリップフロップ13のラッチ機能によりFF−Q信号は論理Hに保持される。
【0121】
これにより、タイミングt42以降では、誤点火防止回路351の出力信号(FF−Q信号)が論理Hとなって、点火が禁止されている。そのため、タイミングt42以降のタイミングで点火信号IGt1〜IGt4のいずれかが立ち下がったとしても、そのタイミングでは点火は実行されない。
【0122】
以上説明したように、本実施形態に係る内燃機関の点火装置によれば、第1の実施形態による前記(1),(2)及び(5)〜(15)の効果と同様の効果もしくはそれに準じた効果に加え、さらに次のような効果も得られるようになる。
【0123】
(18)時間幅検出回路311についてこれを、所定基準信号(点火信号IGt1,IGt2,…の立ち上がり)の発生によりカウンタ回路404のカウントアップを開始し、その計数値に基づいて、所定開始信号(点火信号IGt1,IGt2,…の立ち下がり)が開始タイミングで発生したか否かを判断するものとした。この場合、カウンタ回路404の計数値に基づいて、開始信号の発生タイミングを正確に判断することができる。
【0124】
(19)時間幅検出回路311についてこれを、基準信号の発生タイミング前にカウンタ回路404がリセット状態となり、基準信号の発生タイミングでカウンタ回路404のリセット状態が解除されるものとした。この場合、カウンタ回路404の計数値が所定の許容値よりも大きくなったか否かに基づいて、開始信号の発生タイミングを容易に判断することができる。
【0125】
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0126】
・上記第2の実施形態について、4つのシリンダのうち、いずれのシリンダが上記トランジスタ14により点火を禁止されたかを示す情報を保存する手段を備える構成とすることも有効である。例えばRSフリップフロップ13のFF−Q信号(FF−Q1信号,…)をシリンダごとに区別して保存(例えば所定の記憶装置に格納)するようにする。こうすることで、シリンダごとに区別して、禁止の頻度に関するデータ、いわば異常発生の頻度に関するデータを蓄積することができ、ひいてはどのシリンダの点火系に特に異常が発生し易いかなどの情報を把握することが可能になる。また、特定のシリンダについて異常が連続して発生する場合には、そのシリンダの点火系について修理や部品交換などを行うことで、その異常発生に起因したエンジン性能の低下などを早期に修復することなども可能になる。そしてこの場合は、必要に応じて所定のパラメータ(例えばデータ取得日時など)に関連付けつつ、ECUの主電源停止後もデータを保持可能とする所定の記憶装置(例えばEEPROMやバックアップRAM)に対して、データを保存することが有効である。こうすることで、例えばエンジンが停止され、当該ECUに対する給電が遮断された後も消去されずに、記憶装置内にデータが不揮発に保持されるようになり、長期にわたるデータの保存、ひいてはそのデータの読み出しが可能になる。また、データを保存する際に所定パラメータに対して関連付けを行っておけば、データ読み出しの際にそのパラメータを利用することで必要なデータを容易に取り出すことが可能になり、データ解析等をより容易且つ的確に行うことができるようになる。
【0127】
・上記第3の実施形態の誤点火防止回路351を、第2の実施形態の点火装置に適用してもよい。すなわち、第2の実施形態の誤点火防止回路251,252,…に代えて、第3の実施形態の誤点火防止回路351を採用し、第2の実施形態の各気筒用の気筒判別回路221,222,…の出力信号と各気筒用の誤点火防止回路351のFF−Q信号の反転信号との論理積信号が各気筒用のAND回路211,212,…に入力されるようにしてもよい。
【0128】
・RSフリップフロップ13の出力(FF−Q信号)と1次側点火コイルL1aに流れる電流量i1との整合性に基づいて、上述の禁止が確実に行われているか否かを診断するようにしてもよい。例えばRSフリップフロップ13のFF−Q信号として論理Hの信号が出力されている(上記禁止を実行している)にもかかわらず、1次側点火コイルL1aに許容レベルよりも大きな電流(例えば所定値以上の電流)が流れた場合には、上記誤点火防止回路251,252,…に異常が発生している旨判断する。
【0129】
・上記基準信号の発生から開始信号が発生するまでの時間を検出する手段としては、任意の計時手段(例えばプログラム又は回路等によるタイマ装置など)を用いることができる。
【0130】
・上記基準電位Vtが固定値であることは必須の構成ではない。例えばこの基準電位Vtについてはこれを、システム(エンジン点火系)の劣化状態等の所定パラメータに基づいて可変設定するようにしてもよい。
【0131】
・上記誤点火防止回路251,252,…の適用は、図10に示した構成への適用に限定されることはなく、例えば図13に示した構成に対して適用するようにしてもよい。また、多重放電点火式の点火装置にも限定されず、例えば1燃焼サイクル中に1回だけ点火を行う点火装置としてもよい。
【0132】
・上記誤点火防止回路251,252,…に代えて、例えばECU等によりソフトウェア(プログラム)上で上述の禁止処理を行うようにしてもよい。しかしながら、こうした禁止をより確実に行う上では、ハードウェア上(特に回路上)で行う構成が有益である。
【0133】
・点火対象とする内燃機関の種類やシステム構成も、用途等に応じて適宜に変更可能である。例えば火花点火式の筒内噴射ガソリンエンジン(直噴エンジン)を点火対象としてもよい。要は、火花点火式の内燃機関であれば任意のものを、当該装置の点火対象とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】本発明に係る内燃機関の点火装置の第1の実施形態について、該装置の概略を示す回路図。
【図2】同点火装置の詳細構成を示す回路図。
【図3】(a)〜(g)は、同点火装置の動作の一態様を示すタイミングチャート。
【図4】(a)〜(h)は、同点火装置の動作の別の一態様を示すタイミングチャート。
【図5】(a)〜(h)は、同点火装置の動作の一態様を示すタイミングチャート。
【図6】(a)〜(h)は、同点火装置の動作の一態様を示すタイミングチャート。
【図7】本発明に係る内燃機関の点火装置の第2の実施形態について、該装置の概略を示す回路図。
【図8】(a)〜(i)は、同点火装置の動作の一態様を示すタイミングチャート。
【図9】(a)〜(j)は、同点火装置の動作の別の一態様を示すタイミングチャート。
【図10】多重放電点火式の点火装置の一例を示す回路図。
【図11】同点火装置の詳細構成を示す回路図。
【図12】(a)〜(g)は、同点火装置の動作の一態様を示すタイミングチャート。
【図13】多重放電点火式の点火装置の別の一例を示す回路図。
【図14】(a)〜(f)は、同点火装置の動作の一態様を示すタイミングチャート。
【図15】(a)〜(f)は、同点火装置の動作の別の一態様を示すタイミングチャート。
【図16】本発明に係る内燃機関の点火装置の第3の実施形態について、該装置の概略を示す回路図。
【図17】同点火装置の詳細構成を示す回路図。
【図18】(a)〜(h)は、同点火装置の動作の一態様を示すタイミングチャート。
【図19】(a)〜(h)は、同点火装置の動作の一態様を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
【0135】
11、311…時間幅検出回路、11a、11e…定電流源、11b…スイッチング素子、11c…インバータ、11d…スイッチング素子、11f…コンデンサ(計時用コンデンサ)、11g…比較器、12…タイミング検出回路、13…RSフリップフロップ、14、Tr11、Tr21、Tr22…トランジスタ、101…信号出力部、201…制御部、201a…エネルギー蓄積制御部、201b、301b…多重点火制御部、210、211、212…AND回路、221、222…気筒判別回路、251、252、351…誤点火防止回路、400…クロック回路、404…カウンタ回路、405…リセット回路、B1…車載バッテリ、C1…コンデンサ(点火用コンデンサ)、D1…ダイオード、L1…点火コイル、L10…コイル、L1a…1次側点火コイル、L1b…2次側点火コイル。
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の点火装置に関し、特に1回の燃焼サイクル中に複数回の点火放電を点火プラグに生じさせる多重放電点火式の点火装置として採用して有益な点火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火花点火式の内燃機関にあっては、点火コイル等からなる点火装置の駆動によって燃焼室における点火プラグに点火放電が生じ、その点火放電により、燃焼室に導入された燃料が燃焼される。そして近年、燃焼室での燃焼状態を改善したり、あるいは消費電力を低減したりする目的で、1回の燃焼サイクル中に複数回の点火放電を点火プラグに生じさせる、いわゆる多重放電点火式の点火装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図10に、多重放電点火式の点火装置の一例を回路図として示す。この点火装置は、例えば車載内燃機関の点火装置に適用される。ここでは、内燃機関として、シリンダ#1,#3,#4,#2の順に点火が逐次実行される4気筒エンジンを想定して説明を行う。
【0004】
同図10に示されるように、この点火装置は、大きくは、ECU(電子制御ユニット)と駆動回路(いわゆるイグナイタ)とを備えて構成されている。このうちECUは、周知のマイクロコンピュータを主体として構成され、エンジン回転速度やアクセル操作量(運転者によるアクセルペダルの踏み込み量)などのエンジン運転状態を取得し、これを信号出力部101に入力する。そして、信号出力部101は、エンジン運転状態に基づいて最適な点火時期(通常制御における点火タイミングに相当)を算出するとともに、その点火時期に対応した点火信号IGt1,IGt2,IGt3,IGt4(各シリンダ#1,#3,#4,#2に対応する信号)を生成する。さらに同信号出力部101は、エンジン運転状態に基づいて多重放電期間(多重放電点火を継続的に行う期間)を算出するとともに、その多重放電期間に対応した多重期間信号IGwを生成する。一方、駆動回路は、内燃機関の点火に関わる所定の制御を行うための回路である制御部201を備える。この制御部201は、エネルギー蓄積制御部201a及び多重点火制御部201bを有して構成されるものであり、これら各制御部により、信号出力部101からの上記点火信号IGt1,IGt2,…及び多重期間信号IGwに基づいて、点火コイルL1の通電/非通電を制御することができるようになっている。
【0005】
詳しくは、この駆動回路においては、車載バッテリB1(直流電源)と、エネルギーを蓄積するためのコイルL10と、スイッチング素子としてのトランジスタTr11とが、互いに直列接続されている。さらに上記コイルL10に対しては、これに直列的に(ただしトランジスタTr11とは並列的に)、整流作用により電流の逆流を防止するダイオードD1と、1次側点火コイルL1aと、ゲートに対して論理H(ハイ)の電位が与えられることによりオンするノーマリオフ型のトランジスタTr21(一端は接地)との直列回路が電気的に接続されている。また、上記ダイオードD1に対しては、これに直列的に(ただし1次側点火コイルL1aとは並列的に)、コンデンサC1(一端は接地)が電気的に接続されている。
【0006】
ここで、1次側点火コイルL1aは、2次側点火コイルL1bと対になって、点火コイルL1を構成するものである。こうした点火コイルL1は、エンジン(内燃機関)の各シリンダについて、それぞれ(4気筒エンジンなら4つ)設けられている。この点火装置では、こうした点火コイルL1により、1次側点火コイルL1aによる電磁誘導を利用して2次側点火コイルL1bに高電圧を誘起させ、同コイルL1bに接続される点火プラグ(内燃機関の燃焼室に対して設けられた点火プラグ)に対し、高電圧、ひいては点火放電を生じさせるようになっている。
【0007】
図11に、多重点火制御部201bの構成の詳細を示す。
【0008】
同図11に示されるように、この多重点火制御部201bでは、シリンダ#1についてAND回路211及び気筒判別回路221を備え、ドライブ信号Dr2と気筒判別信号G11とが、AND回路211に入力されるとともに、そのAND回路211の出力が、スイッチング信号G21としてトランジスタTr21のゲートに入力されるようになっている。ここで、ドライブ信号Dr2は、多重期間信号IGwとドライブ信号Dr1とを入力とするAND回路210の出力である。またここで、ドライブ信号Dr1は、点火信号IGt1,IGt2,…の立ち下がりから多重期間信号IGwの立ち下がりまでの期間において、所定周期で交互にオン/オフを繰り返すパルス信号である。また、気筒判別信号G11は、点火対象のシリンダを示す信号であり、気筒判別回路221が、上記点火信号IGt1に基づいて作成している。詳しくは、点火信号IGt1の立ち下がりから所定時間経過するまでの期間において論理H(ハイ)となる信号である。
【0009】
またシリンダ#3についても、AND回路211及び気筒判別回路221に準ずるものとして、AND回路212及び気筒判別回路222を備え、上記ドライブ信号Dr2と気筒判別信号G12とが、AND回路212に入力されるとともに、そのAND回路212の出力が、スイッチング信号G22としてトランジスタTr22のゲートに入力されるようになっている。なお、図示は割愛しているものの、この点火装置は、シリンダ#2,#4についても同様のAND回路及び気筒判別回路を備える。
【0010】
こうした多重点火制御部201bを有して構成される駆動回路では、図10に示されるように、上記信号出力部101からの点火信号IGt1及び多重期間信号IGwに基づくタイミングで、上記コンデンサC1に蓄えられた電荷の放電を通じて1次側点火コイルL1aを通電し、点火プラグに初回の点火放電を生じさせる。その後、トランジスタTr11とトランジスタTr21とを一定周期で交互にオン/オフさせる。こうすることにより、トランジスタTr21がオフされトランジスタTr11がオンされた状態において、コイルL10に電流が流れ、結果としてコイルL10に誘導性エネルギー(電気エネルギー)が蓄積される。そして、トランジスタTr11がオフされトランジスタTr21がオンされた状態において、コイルL10に蓄えられた誘導性エネルギーが放電され、結果として1次側点火コイルL1aに電流が流れる。この点火装置では、こうして多重放電期間において2次側点火コイルL1bに正逆両方向に電気を流し、点火コイルL1に点火放電を繰り返し生じさせることで、点火コイルL1(詳しくは2次側点火コイルL1b)に電気的に接続される点火プラグにより多重放電を行うようにしている。
【0011】
図12は、こうした点火装置の動作態様を示すタイミングチャートである。ここでは、複数のシリンダのうち、1つのシリンダ(シリンダ#1)に対する点火に特に注目して、その動作態様について説明する。ただし、他のシリンダについても、基本的には同様の動作に基づき点火制御が行われる。この図12において、(a)は点火信号IGt1、(b)は多重期間信号IGw、(c)はトランジスタTr21に対するスイッチング信号G21、(d)〜(g)は、それぞれコイルL10、トランジスタTr11、1次側点火コイルL1a、2次側点火コイルL1bを流れる電流量i11、電流量i12、電流量i1、電流量i2、の各推移をそれぞれ示している。
【0012】
同図12(a)に示されるように、この例では、点火信号IGt1が、タイミングt101でオンされる(論理H(ハイ)となる)。これにより、トランジスタTr11(図10)がオンされ、(d)(e)に示されるように、電流量i11,i12が漸増する。
【0013】
その後、タイミングt102で、その点火信号IGt1のオン状態が、オフ状態(論理L(ロー))に戻される。そして、(b)に示されるように、点火信号IGt1の立ち下がりに同期して、多重期間信号IGwがオンされ、この多重期間信号IGwがオンされている期間t102〜t109(点火信号IGt1の立ち下がりから多重期間信号IGwの立ち下がりまでの期間)にあっては、(c)に示されるように、トランジスタTr21に対するスイッチング信号G21が、所定周期で交互にオン/オフを繰り返すパルス信号となる。そしてこれにより、トランジスタTr21がオン/オフされるとともに、(d)(e)に示されるように、それに対応して電流量i11,i12が増減を繰り返すようになる。
【0014】
詳しくは、タイミングt102で、トランジスタTr11がオフされる。これにより、コイルL10及びコンデンサC1に蓄積された電気エネルギーが、1次側点火コイルL1a、ひいては2次側点火コイルL1bに放電され、このコイルL1bに電気的に接続される点火プラグによって放電がなされることになる。なお、コンデンサC1に蓄積されたエネルギーを有効に利用する上では、この最初のパルス幅(期間t102〜t103)を、続く他のパルス幅(期間t103〜t104,t104〜t105,…)よりも大きな幅に設定することが有効である。
【0015】
さらに、その所定期間経過後のタイミングt103で、トランジスタTr21がオフ、トランジスタTr11がオンされ、コイルL10にエネルギーがそれぞれ蓄積される。そして、続くタイミングt104で、トランジスタTr11がオフ、トランジスタTr21がオンされることにより、コイルL10に蓄積された電気エネルギーが1次側点火コイルL1a、ひいては2次側点火コイルL1bに放電され、上述のように、点火プラグによって放電がなされることになる。そうしてその後も、タイミングt105〜t109の各タイミングで、上記エネルギーの蓄積とそのエネルギーの放電とが交互に行われることにより、いわゆる多重放電点火が実現されることになり、続くタイミングt109で、多重期間信号IGwがオフされ、スイッチング信号G21のオン/オフ駆動も止まる。
【0016】
次に、図13を参照して、多重放電点火式の点火装置の別の一例について説明する。なお、この図13は、先の図10に対応する回路図であり、ここでは、図10中に示した要素と同一の要素には各々同一の符号を付して示し、その説明を割愛する。ちなみに、この点火装置も、例えば車載内燃機関の点火装置に適用されるものである。
【0017】
同図13に示されるように、この点火装置も、図10に示した装置と同様、大きくは、ECU(電子制御ユニット)と駆動回路とを備えて構成されている。そして、この装置には、先の図10に示した装置の、信号出力部101、制御部201、エネルギー蓄積制御部201a、多重点火制御部201bに準ずるものとして、信号出力部102、制御部202、エネルギー蓄積制御部202a、多重点火制御部202bが設けられている。このうち、多重点火制御部202bは、先の図11に示した多重点火制御部201bの構成と同様の構成を有するものである。ただしこの装置では、先の図10に示した装置の、トランジスタTr11及びコイルL10に代えて、Vdc昇圧機構302a及びVcdi昇圧機構302bを設けることで、より精密な点火制御を実現するようにしている。
【0018】
Vdc昇圧機構302aは、大容量のコンデンサを有しており、このコンデンサを所定電圧で充電するようになっている。ここで、点火装置において、トランジスタTr21がオンされると、2次側点火コイルL1bにおいて高電圧が発生することにより、1次側点火コイルL1aにおいて励起電圧が発生する。この点、Vdc昇圧機構302aによれば、上記コンデンサを励起電圧よりも大きな電圧(例えば50V)で充電することにより、1次側点火コイルL1aに流れる電流i1を一定時間維持することができる。なお、Vdc昇圧機構302aは、ダイオードD1を介してコンデンサC1に接続されている。これにより、コンデンサC1からVdc昇圧機構302aへ電流が逆流することを防止している。
【0019】
Vcdi昇圧機構302bは、コンデンサC1を充電する機能を有している。この場合、コンデンサC1と1次側点火コイルL1aとの接点電圧が、点火コイルL1の巻線比(「1次側点火コイルL1aの巻線数」/「2次側点火コイルL1bの巻線数」)と再点火要求電圧との乗算により得た電圧よりも大きな電圧(例えば「250V」)となるまで、Vcdi昇圧機構302bによりコンデンサC1を充電させ、その後コンデンサC1を放電させることにより、再点火を行うことができる。
【0020】
図14は、こうした点火装置の動作態様を示すタイミングチャートである。なお、この図14において、(a)は点火信号IGt1、(b)は多重期間信号IGw、(c)はトランジスタTr21に対するスイッチング信号G21、(d)はコンデンサC1に蓄積された電荷量VC1、(e)は1次側点火コイルL1aに流れる電流量i1、(f)は2次側点火コイルL1bに流れる電流量i2、の各推移をそれぞれ示している。
【0021】
同図14(a)に示されるように、この例では、点火信号IGt1が、タイミングt201でオンされ(論理Hとなり)、タイミングt202でオフされる(論理Lとなる)。そして、先の図12に示した期間t102〜t109に準ずる期間t202〜t209において、スイッチング信号G21が、所定周期で交互にオン/オフを繰り返すパルス信号となる。ただしこの装置では、(c)(d)(f)に示されるように、トランジスタTr21のオン/オフの切り替えを、電流量i2及び電荷量VC1に基づいて行うようにしている。詳しくは、電流量i2が所定の閾値(例えば「50mA」)になった時にトランジスタTr21をオフし、電荷量VC1が所定の閾値(例えば「250V」)になった時にトランジスタTr21をオンする。なお、電流量i2の閾値(例えば「50mA」)は、燃焼室での燃焼が失火しない程度の値に設定される。
【特許文献1】特許第2811781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
このように、上記各点火装置では、点火信号IGt1,IGt2,…の立ち下がりに基づいて、各シリンダの点火制御をそれぞれ行っている。しかしながら、こうした点火制御に関わる上記各種の信号については、エンジンストール(エンスト)、外乱(ノイズ)等に起因して、例えば図15に示されるように、点火信号IGt1が異常に長く出力されることが考えられる。このような場合、上記各点火装置では、その点火信号IGt1の立ち下がったタイミングt202を点火タイミングと認識(誤認)してしまい、所望のタイミングt202aではないタイミングに点火されることが懸念される。そして、点火タイミングが遅れることで、エンジン吸気バルブの開動作に伴いバックファイヤ等が生じ、エンジンや周辺機器(例えばインジェクタやセンサ等)に大きな損傷を与えてしまうことなどが懸念されるようになる。
【0023】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、異常なタイミングでの点火に起因したエンジンや周辺機器等の損傷を軽減することのできる内燃機関の点火装置を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
以下、上記課題を解決するための手段、及び、その作用効果について記載する。
【0025】
請求項1に記載の発明では、火花点火式の内燃機関を対象にして所定の開始信号の発生により点火を指示する内燃機関の点火装置として、前記開始信号が所定の開始タイミングで発生したか否かを判断するタイミング判断手段と、前記タイミング判断手段により開始信号が前記開始タイミングで発生していない旨判断された場合に、その開始信号に基づく点火を禁止する禁止手段と、を備えることを特徴とする。
【0026】
また、請求項20に記載の発明では、火花点火式の内燃機関を対象にして所定の開始信号の発生により点火を指示する内燃機関の点火装置として、前記開始信号の発生タイミングを監視して、同開始信号が異常なタイミングで発生した場合に、前記開始信号に基づく点火を禁止する手段を備えることを特徴とする。
【0027】
これらの構成であれば、開始信号が異常なタイミングで発生した場合に、その開始信号に基づく異常なタイミングでの点火を禁止して、異常点火に起因したエンジンや周辺機器等の損傷を軽減することができるようになる。
【0028】
請求項2に記載の発明では、上記請求項1に記載の装置において、前記開始タイミングが、所定基準信号の発生から所定時間だけ経過した時のタイミングとして設定されており、前記タイミング判断手段が、前記基準信号の発生から前記開始信号が発生するまでの時間に基づいて、前記開始信号が前記開始タイミングで発生したか否かを判断するものであることを特徴とする。こうした構成であれば、前記基準信号の発生から前記開始信号が発生するまでの時間に基づいて、前記開始信号が前記開始タイミングで発生したか否かを容易且つ的確に判断することが可能になる。
【0029】
またこの場合、前記タイミング判断手段についてはこれを、請求項3に記載の発明のように、前記基準信号の発生により所定の計時用コンデンサに対して充電を開始し、前記開始信号が発生するまでにその計時用コンデンサの充電量が許容レベルよりも大きくなったか否かに基づいて、前記開始信号が前記開始タイミングで発生したか否かを判断するものとすることが有効である。こうすることで、コンデンサの充電量に基づいて、前記開始信号が前記開始タイミングで発生したか否かを、より容易且つ的確に判断することが可能になる。
【0030】
さらにこの場合、前記タイミング判断手段についてはこれを、請求項4に記載の発明のように、前記計時用コンデンサの充電量に相当する電位と、前記許容レベルに相当する所定電位とを入力とする比較器の出力電位の大小に基づいて、前記開始信号が前記開始タイミングで発生したか否かを判断するものとすれば、周知の回路をもって、より容易且つ的確に上記構成を実現することが可能になる。
【0031】
請求項2に記載の発明では、前記タイミング判断手段についてはこれを、請求項5に記載の発明のように、一定周期で発生する周期信号の発生回数をカウントするカウンタ回路の計数値に基づいて、前記開始信号が前記開始タイミングで発生したか否かを判断するものとしてもよい。
【0032】
この場合、前記カウンタ回路ではその計数値が周期信号の発生回数に応じてカウントアップ又はカウントダウンされる。そのため、前記カウンタ回路の計数値によって、前記基準信号の発生タイミングから前記開始信号の発生タイミングまでの正確な経過時間が分かる。これにより、前記開始信号が前記開始タイミングで発生したか否かを正確に判断することができる。
【0033】
さらに、請求項6に記載の発明のように、前記カウンタ回路の計数値が前記基準信号の発生タイミングで基準値とされる場合には、前記タイミング判断手段は、前記カウンタ回路の計数値と許容値との比較に基づいて、前記開始信号が前記開始タイミングで発生したか否かを容易に判断することができる。
【0034】
そして、上記請求項2〜6のいずれか一項に記載の装置に関しては、請求項7に記載の発明のように、前記タイミング判断手段についてはこれを、前記基準信号が発生した時にリセット信号が入力され、且つ、前記基準信号の発生から前記開始信号が発生するまでの時間が許容レベルよりも長くなった時にセット信号が入力されるRSフリップフロップの出力として、前記開始信号が所定の開始タイミングで発生したか否かの判断結果を出力するものとすることが有効である。こうすることで、前記タイミング判断手段を、周知の回路をもって、より容易且つ的確に実現することが可能になる。
【0035】
また、上記請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置に関し、前記開始信号の発生により指示される点火が、1燃焼サイクル中に複数回の点火を行う多重放電点火である場合には、請求項8に記載の発明のように、前記開始信号が発生したことに応じて、前記多重放電点火を継続的に行う期間を示す多重期間信号を出力する手段と、前記多重期間信号の出力中に、前記多重放電点火を指示するパルス信号を出力する手段と、前記パルス信号の出力中に、そのパルス信号に基づいて、前記多重放電点火を実行する手段と、を備え、前記禁止手段についてはこれを、前記タイミング判断手段により開始信号が前記開始タイミングで発生していない旨判断された場合に、前記パルス信号の出力を禁止するもの、とすることが有効である。こうすることで、多重放電点火を好適に実現しつつ、前述の異常なタイミングでの点火についてもこれを、的確に禁止することが可能になる。
【0036】
ところで、上記請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置について、一般的なエンジンシステムへの適用を考えた場合には、請求項9に記載の発明のように、前記内燃機関が、点火プラグの通電により前記点火を行うものであり、前記点火プラグが、所定のスイッチング素子(例えばトランジスタ)である点火スイッチのオン/オフ状態に応じて通電の有無が切り替わるものであり、当該点火装置が、1乃至複数の所定パラメータに基づいて前記点火スイッチのオン/オフ状態を切り替えるスイッチ制御回路を備える構成とすることが有効である。
【0037】
請求項10に記載の発明では、上記請求項9に記載の装置において、前記点火スイッチのオン/オフ態様を示すスイッチ信号と、前記開始信号と、の両方が発生しているか否かを判断する信号判断手段を備え、前記点火スイッチが、ノーマリオフ型のスイッチング素子であり、前記スイッチ制御回路が、前記信号判断手段により前記信号の両方が発生している旨判断されたことに基づいて、前記スイッチ信号に対応したオン/オフ態様で前記点火スイッチのオン/オフ状態を切り替えるものであり、前記禁止手段が、前記禁止を実行している場合に、前記スイッチ信号及び前記開始信号の少なくとも一方を無効化して前記信号判断手段によりそれら信号の少なくとも一方が発生していない旨判断させるものであることを特徴とする。
【0038】
こうした構成であれば、前記禁止手段による禁止がなされている期間においては、前記スイッチ制御回路が前記点火スイッチを制御できなくなり、前記点火スイッチがオフ状態に保持されることになる。そしてこれにより、前記点火プラグの通電、ひいては同プラグによる点火の実行が禁止されることになる。したがって、こうした構成によれば、前記禁止手段が容易且つ的確に実現されることになる。
【0039】
また、上記請求項9又は10に記載の装置について、前記点火プラグの通電の有無を制御するための装置構成としては、請求項11に記載の発明のように、前記点火プラグの通電の有無を制御するものとして、1次側コイルと2次側コイルとを有して構成される点火コイルを有し、この点火コイルのうち、前記1次側コイルが、前記点火スイッチのオン/オフ状態に応じて通電の有無が切り替わるように設けられ、前記2次側コイルが、前記点火プラグの通電経路に設けられてなる回路構成が有効である。こうした構成であれば、前記点火プラグの通電の有無を好適に制御することができる。
【0040】
また、上記請求項11に記載の装置について、多重放電点火を行うための装置構成としては、請求項12に記載の発明のように、前記開始信号の発生に基づいて、前記点火スイッチを繰り返しオン/オフさせて前記1次側コイルに断続的に1次電流を流すことにより前記2次側コイルに2次電流を繰り返し発生させることで、前記点火プラグに多重放電を行わせる多重放電実行手段を備える構成が有効である。こうした構成であれば、多重放電点火を好適に実現することができる。
【0041】
また、上記請求項11又は12に記載の装置について、前記1次側コイルに対して点火に必要な大きさの電圧を印加するための装置構成としては、請求項13に記載の発明のように、前記1次側コイルに、前記点火スイッチが直列に、所定の点火用コンデンサが並列に、それぞれ接続されており、同1次側コイルが、前記点火スイッチがオンされることで、前記点火用コンデンサに蓄えられた電荷の供給を受けるものである構成が有効である。こうした構成であれば、前記1次側コイルに対して十分大きな電圧を容易且つ的確に印加することができる。
【0042】
また、上記請求項9〜13のいずれか一項に記載の装置において、前記禁止手段としては、請求項14に記載の発明のように、前記禁止を実行していない場合に、前記開始信号の発生による前記点火スイッチのオンを許容し、前記禁止を実行している場合に、前記開始信号が発生しても前記点火スイッチをオンさせないものが有効である。こうした構成であれば、前記点火スイッチが、前記禁止手段による禁止が実行されていない場合には、前記開始信号の発生によりオンされ、前記禁止手段による禁止が実行されている場合には、前記開始信号が発生してもオンしないようになる。したがって、前述の異常なタイミングでの点火が的確に禁止されることになる。
【0043】
なお、前述したECU(図10、図13)のように、マイクロコンピュータ等を用いて制御を行う場合には、前記禁止手段による点火の禁止を、例えばソフトウェア(プログラム)上で行うようにしてもよい。しかしながら、こうした禁止をより確実に行う上では、ハードウェア上(特に回路上)で行う構成が有益である。具体的には、上記請求項14に記載の装置において、前記禁止手段についてはこれを、請求項15に記載の発明のように、前記禁止を実行している場合に、前記点火スイッチのオンを回路上で禁止するものとした構成が有効である。さらにこの場合、請求項16に記載の発明のように、前記点火スイッチが、ゲートに対して論理H(ハイ)の電位が与えられることによりオンするノーマリオフ型のトランジスタであり、前記禁止手段が、前記禁止を実行している場合に、前記ゲートの電位を論理L(ロー)の電位に固定するものである構成とすることで、上記禁止が、より容易且つ的確に実現されることになる。
【0044】
また、上記請求項1〜16のいずれか一項に記載の装置について、前記内燃機関が複数のシリンダを有する多気筒エンジンである場合には、請求項17に記載の発明のように、
・前記複数のシリンダのうち、その時に前記点火を実行すべき対象シリンダが、それらシリンダのいずれのシリンダであるかを判別して、前記禁止手段による禁止が実行されていない場合に、その対象シリンダについて前記開始信号に基づく点火を行う手段を備え、前記タイミング判断手段が、前記対象シリンダについて、前記開始信号が所定の開始タイミングで発生したか否かを判断するものであり、前記禁止手段が、前記タイミング判断手段により開始信号が前記開始タイミングで発生していない旨判断された場合に、その判断をされた対象シリンダだけについて、前記開始信号に基づく点火を禁止するものである構成。
あるいは請求項19に記載の発明のように、
・前記複数のシリンダのうち、その時に前記点火を実行すべき対象シリンダが、それらシリンダのいずれのシリンダであるかを判別して、前記禁止手段による禁止が実行されていない場合に、その対象シリンダについて前記開始信号に基づく点火を行う手段を備え、前記タイミング判断手段が、前記対象シリンダについて、前記開始信号が所定の開始タイミングで発生したか否かを判断するものであり、前記禁止手段が、前記タイミング判断手段により開始信号が前記開始タイミングで発生していない旨判断された場合に、その判断をされた対象シリンダを含む前記複数のシリンダの全てについて、それぞれ前記開始信号に基づく点火を禁止するものである構成。
といった構成が有効である。こうした構成であれば、多気筒エンジンについてそれぞれ上記禁止が好適に実現されることになる。特に請求項17に記載の装置によれば、対象シリンダだけについて選択的に上記禁止が実行されることになり、各シリンダについて個別に上記禁止を行うことが可能になる。そして、この請求項17に記載の装置に関しては、請求項18に記載の発明のように、前記複数のシリンダのうち、いずれのシリンダが前記禁止手段により点火を禁止されたかを示す情報を保存する手段を備える構成とすることで、データ蓄積によるデータ解析のほか、エンジン点火系の故障診断等についてもこれを、より容易且つ的確に行うことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
(第1の実施形態)
以下、図1〜図6を参照して、本発明に係る内燃機関の点火装置を具体化した第1の実施形態について説明する。なお、本実施形態の装置も、概略的な構成としては、先の図10に示した構成と同様の構成を有し、多重点火制御部201bの構成としても、先の図11に示した構成に準ずる構成を有する。そのため、ここでは説明の便宜上、共通の構成及び動作に関する説明は割愛し、先の図11に示した構成と本実施形態の装置との相違点について主に説明する。
【0046】
まず図1を参照して、本実施形態に係る点火装置の概略構成について説明する。この図1は、先の図11に対応する回路図であり、ここでは、図11中に示した要素と同一の要素には各々同一の符号を付して示し、その説明を割愛する。
【0047】
なお、この装置の制御対象とするエンジン(図示略)としては、4輪自動車に搭載される多気筒(例えば直列4気筒)エンジンを想定している。このエンジンにおいては、各シリンダの吸気通路(詳しくは吸気ポート)に、それぞれインジェクタ(燃料噴射弁)が設けられており、それらインジェクタにより供給された燃料を各シリンダ内でそれぞれ燃焼させるようになっている。このエンジンは、その燃料燃焼によるエネルギーを回転運動に変換して出力軸(クランク軸)を回転させる、いわゆる4ストローク(4×ピストン行程)のレシプロ式ガソリンエンジン(火花点火式の内燃機関)である。すなわちこのエンジンでは、吸排気弁のカム軸に設けられた気筒判別センサ(電磁ピックアップ)にてその時の対象シリンダが逐次判別され、4つのシリンダ#1〜#4について、それぞれ吸入・圧縮・燃焼(点火)・排気の4行程による1燃焼サイクルが「720°CA」周期で、詳しくは例えば各シリンダ間で「180°CA」ずらして、シリンダ#1,#3,#4,#2の順に逐次実行される。
【0048】
同図1に示されるように、この多重点火制御部201bでも、図11に示した構成と同様、シリンダ#1についてAND回路211及び気筒判別回路221を備え、ドライブ信号Dr2と気筒判別信号G11とが、AND回路211に入力されるとともに、そのAND回路211の出力が、スイッチング信号G21としてトランジスタTr21のゲートに入力されるようになっている。また、シリンダ#3についても、AND回路211及び気筒判別回路221に準ずるものとして、AND回路212及び気筒判別回路222を備え、ドライブ信号Dr2と気筒判別信号G12とが、AND回路212に入力されるとともに、そのAND回路212の出力が、スイッチング信号G22としてトランジスタTr22のゲートに入力されるようになっている。また、図示は割愛しているものの、この点火装置は、シリンダ#2,#4についても同様のAND回路及び気筒判別回路を備える。このことも、先の図11に示した構成と同様である。ただし本実施形態では、こうした構成に対し、新たに誤点火防止回路251を設けるようにしている。そして、この回路251により、所定の期間については、上記各シリンダのAND回路(AND回路211,212,…)に対するドライブ信号Dr2の入力が禁止される(常に論理L(ロー)状態になる)ようになっている。
【0049】
詳しくは、ここでドライブ信号Dr2は、多重期間信号IGwとドライブ信号Dr1とを入力とするAND回路210の出力である。またここで、ドライブ信号Dr1は、点火信号IGt1,IGt2,…の立ち下がりから多重期間信号IGwの立ち下がりまでの期間において、所定周期で交互にオン/オフを繰り返すパルス信号である。また、気筒判別信号G11は、気筒判別回路221が、上記点火信号IGt1に基づいて作成する信号であり、詳しくは点火信号IGt1の立ち下がりから所定時間経過後までの期間において論理H(ハイ)となる信号である。
【0050】
また、誤点火防止回路251は、時間幅検出回路11と、立ち上がりタイミング検出回路12と、RSフリップフロップ13と、トランジスタ14と、を有して構成されるものである。この回路251では、点火信号IGt1〜4(点火信号IGt1,IGt2,…のいずれかがオンされればオンされる信号)が、時間幅検出回路11、及び立ち上がりタイミング検出回路12に対してそれぞれ入力され、これら回路11,12の出力信号(FF−S信号、FF−R信号)が、それぞれRSフリップフロップ13のS(セット)端子、R(リセット)端子に対して入力されるようになっている。そして、RSフリップフロップ13のQ端子から出力されるFF−Q信号が、トランジスタ14のゲートに入力されるようになっている。この点火装置では、こうしてFF−Q信号が論理H(ハイ)状態になっている間はトランジスタ14がオンされ、上記各シリンダのAND回路(AND回路211,212,…)に対するドライブ信号Dr2の入力が禁止される(換言すればグランドに落とされて論理L(ロー)状態に固定される)ことになる。なお、RSフリップフロップ13は、R(リセット)端子が論理L状態の時にS(セット)端子が論理Lから論理Hへ変化する(論理L→H)ことによって、Q端子の出力を論理Hにするものである。そしてこの「Q端子=論理H」の状態は、R端子が論理Hになるまで保持されるようになっている。
【0051】
図2に、時間幅検出回路11の構成の詳細を示す。
【0052】
図2に示されるように、この回路11は、定電流源11aを有し、この定電流源11aは、その一端が車載バッテリに接続されるとともに、他端がスイッチング素子11bを介して、定電流源11e、コンデンサ11f、及び比較器11g(詳しくはその非反転入力端子)の並列回路に電気的に接続されている。ここで、互いに並列接続される定電流源11e、コンデンサ11f、及び比較器11gのうち、コンデンサ11fは、スイッチング素子11bとは反対側の一端が接地されている。また、定電流源11eは、スイッチング素子11bとは反対側の一端が、スイッチング素子11dを介して接地されている。
【0053】
また、比較器11gは、その非反転入力端子が、接続点P11を交点として、3つの電気経路に接続され、それら各電気経路の状態によって当該非反転入力端子の電位(コンデンサ11fの電位に相当)が変化するようになっている。詳しくは、1つは、非反転入力端子(接続点P11)から、スイッチング素子11b、定電流源11a、及び車載バッテリが、この記載の順に、直列接続される経路である。また、別の1つは、接続点P11から、コンデンサ11f、及びグランドが、この記載の順に、直列接続される経路である。また、もう1つは、接続点P11から、定電流源11e、スイッチング素子11d、及びグランドが、この記載の順に、直列接続される経路である。また一方、この比較器11gの反転入力端子には、基準電位Vtが印加されている。
【0054】
この回路11はこうした構成を有し、上記スイッチング素子11bの導通制御端子には点火信号IGt1〜4が、またスイッチング素子11dの導通制御端子には点火信号IGt1〜4の論理反転信号(インバータ11cを通じて反転された信号)が、それぞれ与えられるようになっている。こうして、点火信号IGt1〜4により、上記比較器11gの非反転入力端子の電位を制御することができるようになっている。また、比較器11gは、非反転入力端子に入力される信号と、反転入力端子に入力される信号(基準電位Vt)と、を比較して出力を生成するようになっている。例えば非反転入力端子の信号が基準電位Vt以上の場合には論理H(ハイ)の信号をFF−S信号として出力する。他方、非反転入力端子の信号が基準電位Vtよりも小さい場合には論理L(ロー)の信号をFF−S信号として出力する。なお、上記基準電位Vtについては、各シリンダでの点火が所望のタイミングで指示された(点火信号IGt1,IGt2,…が所望のタイミングで立ち下がった)場合には、コンデンサ11fの電位VC2が当該基準電位Vtの値を超えない一方、各シリンダでの点火が所望のタイミングで行われない場合には、コンデンサ11fの電位VC2が当該基準電位Vtの値を超えるように、その値(電位)を設定(例えば固定値として設定)することとする。
【0055】
次に、図10を併せ参照して、こうした多重点火制御部201bを有して構成される駆動回路の動作、ひいては本実施形態に係る点火装置による点火制御について説明する。
【0056】
図10に示されるように、この装置でも、前述した従来の装置と同様、上記信号出力部101からの点火信号IGt1及び多重期間信号IGwに基づくタイミングで、コンデンサC1に蓄えられた電荷の放電を通じて1次側点火コイルL1aを通電し、2次側点火コイルL1bに接続される点火プラグ(内燃機関の燃焼室に対して設けられた点火プラグ)に初回の点火放電を生じさせる。そしてその後、トランジスタTr11とトランジスタTr21とを一定周期で交互にオン/オフさせる。こうすることにより、トランジスタTr21がオフされトランジスタTr11がオンされた状態において、コイルL10に電流が流れ、結果としてコイルL10に誘導性エネルギー(電気エネルギー)が蓄積される。そして、トランジスタTr11がオフされトランジスタTr21がオンされた状態において、そのコイルL10に蓄えられた誘導性エネルギーが放電され、結果として1次側点火コイルL1aに電流が流れる。この点火装置では、こうして多重放電期間において2次側点火コイルL1bに正逆両方向に電気を流し、点火コイルL1に点火放電を繰り返し生じさせることで、点火コイルL1(詳しくは2次側点火コイルL1b)に電気的に接続される点火プラグにより多重放電を行うようにしている。
【0057】
次に、図3〜図6を参照して、本実施形態に係る点火装置の動作について、さらに詳しく説明する。ここでは、複数のシリンダのうち、2つのシリンダ(シリンダ#1,#3)に対する点火に特に注目して、その動作態様について説明する。ただし、他のシリンダ(シリンダ#2,#4)についても、基本的には同様の動作に基づき点火制御が行われる。
【0058】
図3は、点火コイルL1の通電制御に関する信号のうち、誤点火防止回路251に関わる信号以外に注目して、本実施形態に係る点火装置の動作の一態様を示すタイミングチャートである。なお、この図3において、(a)は点火信号IGt1、(b)は点火信号IGt2、(c)(d)(e)は、それぞれAND回路211,212の入力信号であるドライブ信号Dr2、気筒判別信号G11,G12、(f)(g)は、それぞれトランジスタTr21,Tr22に対するスイッチング信号G21,G22、の各推移をそれぞれ示している。
【0059】
同図3(a)に示されるように、この例では、シリンダ#1に係る点火信号IGt1が、タイミングt11でオンされ(論理H(ハイ)となり)、タイミングt12でオフされる(論理L(ロー)となる)。そして、点火信号IGt1の立が下がりタイミングt12で、(d)に示されるように、気筒判別信号G11がオンされる(シリンダ#1以外のシリンダに係る気筒判別信号はオフのまま)とともに、(f)に示されるように、スイッチング信号G21がオン/オフされ、トランジスタTr21が所定周期で交互にオン/オフを繰り返すようになる。そしてこれにより、期間t12〜t13において、シリンダ#1における多重放電が行われることになる。なお、気筒判別信号G11は、タイミングt14で点火信号IGt2がオンされるまで、論理H状態に保持される。
【0060】
また、シリンダ#3についても同様に、シリンダ#3に係る点火信号IGt2が、タイミングt14でオンされ、タイミングt15でオフされると、その立が下がりタイミングt15で、(e)に示されるように、気筒判別信号G12がオンされる(シリンダ#3以外のシリンダに係る気筒判別信号はオフのまま)とともに、(g)に示されるように、スイッチング信号G22がオン/オフされ、トランジスタTr22が所定周期で交互にオン/オフを繰り返すようになる。そしてこれにより、期間t15〜t16において、シリンダ#3における多重放電が行われることになる。
【0061】
図4は、本実施形態に係る点火装置の動作の別の一態様を示すタイミングチャートである。なお、この図4において、(a)(b)は、先の図3の(a)(b)に、(d)〜(h)は、先の図3の(c)〜(g)に、それぞれ対応するものであり、また(c)は多重期間信号IGwの推移を示している。
【0062】
同図4に示されるように、この例でも、その基本的な動作は、先の図3に示した例と同様である。しかしながら、この例では、気筒判別信号G11,G12が、多重期間信号IGwに基づいてオン/オフされるようになっている。なおこの場合も、期間t12〜t13,t15〜t16,…において、各シリンダにおける多重放電が行われることになる。
【0063】
続けて図5及び図6を参照して、本実施形態の点火装置による点火が正常なタイミング(所望のタイミング)で指示された場合と異常なタイミング(所望のタイミングよりも遅延したタイミング)で指示された場合とを対比しつつ、本実施形態に係る点火装置の動作についてさらに説明する。
【0064】
まず図5を参照して、本実施形態の点火装置による点火が正常なタイミングで指示された場合について説明する。この図5は、点火コイルL1の通電制御に関する信号のうち、誤点火防止回路251に関わる信号に注目して、本実施形態に係る点火装置の動作の一態様を示すタイミングチャートである。なお、この図5において、(a)は点火信号IGt1、(b)は点火信号IGt2、(c)は点火信号IGt1〜4(点火信号IGt1,IGt2,…のいずれかがオンされればオンされる信号)、(d)はコンデンサ11f(図2)の電位VC2、(e)(f)(g)は、それぞれRSフリップフロップ13のFF−S信号、FF−R信号、FF−Q信号、(h)はドライブ信号Dr2、の各推移をそれぞれ示している。
【0065】
同図5に示されるように、この例では、タイミングt21において、(c)に示されるように、点火信号IGt1〜4がオンされ(論理H(ハイ)となり)、また(f)に示されるように、RSフリップフロップ13(図1)のR端子に対して、リセット信号(詳しくは「FF−R信号=論理H」のワンショット信号)が入力される。そして、続くタイミングt22で、上記点火信号IGt1〜4がオフされる(論理L(ロー)となる)。なお、この期間t21〜t22においては、図2に示したスイッチング素子11bがオン状態で保持され、コンデンサ11fに対してバッテリによる充電が行われることになる。
【0066】
この例では、(a)に示されるように、シリンダ#1の点火が正常なタイミングt22で行われ(点火信号IGt1が正常なタイミングt22で立ち下がり)、また(h)に示されるように、期間t22〜t23において、シリンダ#1における多重放電が行われることになる。この場合、(d)に示されるように、コンデンサ11fの電位VC2は、基準電位Vtの値を超えない。
【0067】
また、シリンダ#3についても同様に、シリンダ#3に係る点火信号IGt2が、タイミングt24でオンされるとともに、正常なタイミングt25でオフされ、期間t25〜t26において、シリンダ#3における多重放電が行われることになる。
【0068】
次に、図6を参照して、本実施形態の点火装置による点火(特にシリンダ#1での点火)が異常なタイミングで指示された場合について説明する。なお、この図6において、(a)〜(h)は、先の図5の(a)〜(h)に、それぞれ対応するものである。
【0069】
同図6に示されるように、この例では、点火信号IGt1が異常に長く出力され、シリンダ#1の点火が異常なタイミングt22(所望の開始タイミングt22aよりも遅延したタイミング)で指示される。そしてこれにより、(d)に示されるように、コンデンサ11fの電位VC2(充電量)が基準電位Vtの値を超えて、その電位VC2が基準電位Vtを超えたタイミングt22aで、比較器11g(図2)の出力(FF−S信号)が論理Hとなる。そして、こうしてFF−S信号が論理Hとなることで、RSフリップフロップ13のFF−Q信号についても、これが論理Hとなり、このFF−Q信号に基づきトランジスタ14がオンされることになる。そして、このトランジスタ14がオンされている間(次にRSフリップフロップ13のR端子にリセット信号が入力されるまで)は、各シリンダのAND回路(AND回路211,212,…)に対するドライブ信号Dr2の入力が禁止(論理L状態に固定)され、ひいては各シリンダの点火コイルに対する通電、いわば各シリンダにおける点火の実行が禁止(4つのシリンダ全てについて同時に禁止)されることになる。
【0070】
こうした禁止は、次の対象シリンダであるシリンダ#3の点火制御に先立ち、RSフリップフロップ13のR端子にリセット信号が入力されることで、解除される。したがって、(b)に示されるように、シリンダ#3の点火が正常なタイミングt25で指示された場合には、(h)に示されるように、期間t25〜t26において、通常どおり、シリンダ#3における多重放電が行われることになる。
【0071】
以上説明した本実施形態に係る内燃機関の点火装置によれば、以下のような優れた効果が得られるようになる。
【0072】
(1)火花点火式の内燃機関を対象にして所定の開始信号(点火信号IGt1,IGt2,…の立ち下がり)の発生により点火を指示する内燃機関の点火装置(図10のECU及び駆動回路)として、開始信号の発生タイミングを監視して、その開始信号が異常なタイミング(例えば図6のタイミングt22a以外のタイミング)で発生した場合に、上記開始信号に基づく点火を禁止する回路を備える構成とした。具体的には、上記開始信号が所定の開始タイミング(例えば図6のタイミングt22a)で発生したか否かを判断する回路(タイミング判断手段、図1の回路11,12、及びRSフリップフロップ13)と、この回路により開始信号が上記開始タイミングで発生していない旨判断された場合に、その開始信号に基づく点火を禁止する回路(禁止手段、図1のトランジスタ14)と、を備える構成とした。これにより、開始信号(点火信号IGt1,IGt2,…の立ち下がり)が異常なタイミングで発生した場合に、その開始信号に基づく異常なタイミングでの点火を禁止して、異常点火に起因したエンジンや周辺機器等の損傷を軽減することができるようになる。
【0073】
(2)上記開始タイミングについてはこれを、所定基準信号(点火信号IGt1,IGt2,…の立ち上がり)の発生(例えば図5及び図6のタイミングt21)から所定時間(例えば図6のパルス幅に相当する時間t21〜t22a)だけ経過した時のタイミング(例えば図6のタイミングt22a)として設定するようにした。そして、時間幅検出回路11(図2)についてはこれを、上記基準信号の発生から開始信号が発生するまでの時間(例えば図5及び図6のパルス幅に相当する時間t21〜t22)に基づいて、開始信号が上記開始タイミングで発生したか否かを判断するものとした。こうした構成であれば、上記基準信号の発生から開始信号が発生するまでの時間に基づいて、上記開始信号が開始タイミングで発生したか否かを容易且つ的確に判断することが可能になる。
【0074】
(3)時間幅検出回路11(図2)についてはこれを、上記基準信号の発生(例えば図5及び図6のタイミングt21)により所定の計時用コンデンサ(図2のコンデンサ11f)に対して充電を開始し、上記開始信号が発生するまでにその計時用コンデンサの充電量が許容レベルよりも大きくなった(電位VC2が基準電位Vtの値を超えた)か否かに基づいて、開始信号が上記開始タイミングで発生したか否かを判断するものとした。こうすることで、コンデンサ11fの充電量に基づいて、開始信号が開始タイミングで発生したか否かを、より容易且つ的確に判断することが可能になる。
【0075】
(4)時間幅検出回路11(図2)についてはこれを、コンデンサ11fの充電量に相当する電位VC2と、上記許容レベルに相当する所定電位(基準電位Vt)とを入力とする比較器11gの出力電位(FF−S信号)の大小(論理H/論理L)に基づいて、開始信号が開始タイミングで発生したか否かを判断するものとした。こうすることで、周知の回路をもって、より容易且つ的確に、上記判断を行うことが可能になる。
【0076】
(5)時間幅検出回路11(図2)についてはこれを、上記基準信号が発生した時(例えば図5及び図6のタイミングt21)にリセット信号(FF−R信号)が入力され、且つ、上記基準信号の発生から上記開始信号が発生するまでの時間(例えば図5及び図6のパルス幅に相当する時間t21〜t22)が許容レベル(例えば図6のパルス幅に相当する時間t21〜t22a)よりも長くなった時にセット信号(FF−S信号)が入力されるRSフリップフロップ13の出力(FF−Q信号)として、上記開始信号(点火信号IGt1,IGt2,…の立ち下がり)が所定の開始タイミング(例えば図6のタイミングt22a)で発生したか否かの判断結果を出力するものとした。こうすることで、周知の回路をもって、より容易且つ的確に、上記判断を行うことが可能になる。
【0077】
(6)上記開始信号(点火信号IGt1,IGt2,…の立ち下がり)の発生により指示される点火を、断続的に複数回の点火を行う多重放電点火とした。また、上記開始信号(例えば図4における点火信号IGt1の立ち下がり)が発生したことに応じて、多重放電点火を継続的に行う期間(例えば図4の期間t12〜t13)を示す多重期間信号IGwを出力するプログラム(図10のECUに搭載)と、多重期間信号IGwの出力中に、上記多重放電点火を指示するパルス信号(ドライブ信号Dr2)を出力する回路(図1のAND回路210)と、ドライブ信号Dr2の出力中に、そのドライブ信号Dr2に基づいて、上記多重放電点火を実行する回路(図1のAND回路211,212,…、トランジスタTr21,Tr22,…、点火コイルL1,…など)と、を備える構成とした。そして、上記トランジスタ14(図1)についてはこれを、上記回路11,12、及びRSフリップフロップ13により開始信号が開始タイミングで発生していない旨判断された場合(RSフリップフロップ13からFF−Q信号として論理Hの信号が出力された場合)に、ドライブ信号Dr2の出力を禁止(論理L状態に固定)するものとした。こうすることで、多重放電点火を好適に実現しつつ、異常なタイミングでの点火についてもこれを、的確に禁止することが可能になる。
【0078】
(7)内燃機関が、点火プラグの通電により点火を行うものであり、その点火プラグが、所定のスイッチング素子である点火スイッチ(トランジスタTr21,Tr22,…)のオン/オフ状態に応じて通電の有無が切り替わるものであり、当該点火装置が、所定パラメータ(図1の多重期間信号IGw、ドライブ信号Dr1、及び点火信号IGt1〜4)に基づいて上記点火スイッチのオン/オフ状態を切り替えるスイッチ制御回路(図1の多重点火制御部201b)を備える構成とした。こうすることで、周知の回路をもって、より容易且つ的確に、上記構成の実現が可能になる。
【0079】
(8)上記点火スイッチ(トランジスタTr21,Tr22,…)のオン/オフ態様を示すスイッチ信号(ドライブ信号Dr2)と、上記開始信号(点火信号IGt1,IGt2,…の立ち下がり)と、の両方が発生しているか否かを判断する回路(信号判断手段、図1のAND回路211,212,…)を備える構成とした。また、上記点火スイッチが、ノーマリオフ型のスイッチング素子であり、上記スイッチ制御回路が、図1のAND回路211,212,…により上記信号の両方が発生している旨判断された(同AND回路211,212,…により論理Hの信号が出力された)ことに基づいて、上記ドライブ信号Dr2に対応したオン/オフ態様で上記点火スイッチのオン/オフ状態を切り替えるものである構成とした。そして、トランジスタ14(図1)についてはこれを、上記禁止を実行している場合に、ドライブ信号Dr2を無効化して上記AND回路211,212,…により論理Lの信号を出力させるものとした。こうした構成によれば、異常なタイミングでの点火を、より的確に禁止することが可能になる。
【0080】
(9)点火プラグの通電の有無を制御するものとして、1次側コイル(1次側点火コイルL1a)と2次側コイル(2次側点火コイルL1b)とを有して構成される点火コイルL1を有し、この点火コイルのうち、1次側点火コイルL1aが、上記点火スイッチ(トランジスタTr21,Tr22,…)のオン/オフ状態に応じて通電の有無が切り替わるように設けられ、2次側点火コイルL1bが、点火プラグの通電経路に設けられた回路構成とした。こうした構成であれば、点火プラグの通電の有無を好適に制御することができるようになる。
【0081】
(10)上記開始信号(点火信号IGt1,IGt2,…の立ち下がり)の発生に基づいて、上記点火スイッチ(トランジスタTr21,Tr22,…)を繰り返しオン/オフさせて1次側点火コイルL1aに断続的に1次電流を流すことにより2次側点火コイルL1bに2次電流を繰り返し発生させることで、点火プラグに多重放電を行わせる回路(多重放電実行手段、図1のAND回路211,212,…)を備える構成とした。こうした構成であれば、多重放電点火を好適に実現することができるようになる。
【0082】
(11)1次側点火コイルL1a,…に対して、上記点火スイッチ(トランジスタTr21,Tr22,…)が直列に、また所定の点火用コンデンサ(図10のコンデンサC1,…)が並列に、それぞれ接続された構成とした。そして、1次側点火コイルL1a,…についてはこれを、上記点火スイッチがオンされることで、コンデンサC1,…に蓄えられた電荷の供給を受けるものとした。こうした構成であれば、1次側点火コイルL1a,…に対して十分大きな電圧を容易且つ的確に印加することができるようになる。
【0083】
(12)トランジスタ14(図1)についてはこれを、上記禁止を実行していない(トランジスタ14がオンされていない)場合に、上記開始信号(点火信号IGt1,IGt2,…の立ち下がり)の発生による上記点火スイッチ(トランジスタTr21,Tr22,…)のオンを許容し、上記禁止を実行している(トランジスタ14がオンされている)場合に、上記開始信号が発生しても上記点火スイッチをオンさせないものとした。こうした構成であれば、異常なタイミングでの点火が的確に禁止されることになる。
【0084】
(13)トランジスタ14(図1)についてはこれを、上記禁止を実行している(トランジスタ14がオンされている)場合に、上記点火スイッチのオンを回路上で禁止するものとした。こうした構成であれば、上記禁止をソフトウェア(プログラム)上で行う場合と比較して、上記禁止をより確実に行うことが可能になる。
【0085】
(14)上記点火スイッチ(トランジスタTr21,Tr22,…)についてはこれを、ゲートに対して論理H(ハイ)の電位が与えられることによりオンするノーマリオフ型のトランジスタとして、上記トランジスタ14(図1)についてはこれを、上記禁止を実行している(トランジスタ14がオンされている)場合に、トランジスタTr21,Tr22,…のゲートの電位を論理L(ロー)の電位に固定するものとした。こうすることで、上記禁止が、より容易且つ的確に実現されることになる。
【0086】
(15)複数のシリンダ(4つのシリンダ)を有する多気筒エンジン(詳しくは直列4気筒エンジン)を対象として、それらシリンダのうち、その時に点火を実行すべき対象シリンダが、それらシリンダのいずれのシリンダであるかを判別して、上記トランジスタ14による禁止が実行されていない(同トランジスタ14がオンされていない)場合に、その対象シリンダについて上記開始信号(点火信号IGt1,IGt2,…の立ち下がり)に基づく点火を行う回路(図1の気筒判別回路221,222,…、AND回路211,212,…、トランジスタTr21,Tr22,…、点火コイルL1,…など)を備える構成とした。そして、上記回路11,12、及びRSフリップフロップ13(図1)についてはこれを、対象シリンダについて、上記開始信号が所定の開始タイミングで発生したか否かを判断するものとし、上記トランジスタ14(図1)についてはこれを、上記回路11,12、及びRSフリップフロップ13により開始信号が上記開始タイミングで発生していない旨判断された(RSフリップフロップ13からFF−Q信号として論理Lの信号が出力された)場合に、その判断をされた対象シリンダを含む4つのシリンダの全てについて、それぞれ上記開始信号に基づく点火を禁止するものとした。こうした構成であれば、多気筒エンジンについてそれぞれ上記禁止が好適に実現されることになる。
【0087】
(第2の実施形態)
次に、図7〜図9を参照して、先の図1に示した装置に準ずる構成をもった点火装置として、本発明に係る点火装置を具体化した第2の実施形態について説明する。ただしここでは、第1の実施形態との相違点を中心に、本実施形態について説明する。
【0088】
まず図7を参照して、本実施形態に係る点火装置の概略構成について説明する。なお、この図7は、先の図1に対応する回路図であり、ここでは、図1中に示した要素と同一の要素には各々同一の符号を付して示し、その説明を割愛する。
【0089】
同図7に示されるように、本実施形態の装置では、各シリンダのAND回路(AND回路211,212,…)に対する入力のうち、各シリンダの気筒判別信号G11,G12,…について、上述の誤点火防止回路251を設けるようにしている。このため、同回路251は、各シリンダに対して、それぞれ用意されている。なお、これらシリンダ#1,#3,…に係る誤点火防止回路251,252,…の構成は、基本的には各シリンダについて同様の構成となっているため、ここでは回路251の構成に注目して、それら誤点火防止回路の構成についての説明を行う。
【0090】
例えば回路251は、第1の実施形態の装置と同様、時間幅検出回路11と、立ち上がりタイミング検出回路12と、RSフリップフロップ13と、トランジスタ14と、を有して構成されるものである(詳細構成は図2を参照)。ただし、本実施形態の回路251では、点火信号IGt1(回路252では点火信号IGt2)が、気筒判別回路221に加え、時間幅検出回路11、及び立ち上がりタイミング検出回路12に対しても、それぞれ入力されるようになっている。そして、RSフリップフロップ13のFF−Q1信号に応じてオン/オフするトランジスタ14がオンした場合には、上記AND回路211に対する気筒判別信号G11(回路252では気筒判別信号G12)の入力、ひいてはトランジスタTr21(回路252ではトランジスタTr22)のオン駆動が禁止される(換言すればグランドに落とされて論理L状態になる)ようになっている。
【0091】
次に、図8及び図9を参照して、本実施形態の点火装置による点火が正常なタイミング(所望のタイミング)で指示された場合と異常なタイミング(所望のタイミングよりも遅延したタイミング)で指示された場合とを対比しつつ、本実施形態に係る点火装置の動作についてさらに説明する。なお、図8は先の図3に示したタイプの点火装置について、また図9は先の図4に示したタイプの点火装置について、それぞれ本実施形態の誤点火防止回路を適用した場合の動作態様を示すタイミングチャートである。
【0092】
まず図8を参照して、先の図3に示したタイプの点火装置の動作態様について説明する。なお、この図8において、(a)は点火信号IGt1、(b)は点火信号IGt2、(c)は誤点火防止回路251に係るコンデンサ11f(図2)の電位VC2、(d)(e)(f)は、それぞれ誤点火防止回路251に係るRSフリップフロップ13のFF−S1信号、FF−R1信号、FF−Q1信号、(g)はドライブ信号Dr2、(h)(i)は、それぞれAND回路211,212の入力信号である気筒判別信号G11,G12、の各推移をそれぞれ示している。
【0093】
同図8に示されるように、この例では、タイミングt21において、(a)に示されるように、点火信号IGt1がオンされ(論理H(ハイ)となり)、また(e)に示されるように、RSフリップフロップ13(図7)のR端子に対して、リセット信号(詳しくは「FF−R信号=論理H」のワンショット信号)が入力される。そして、続くタイミングt22で、上記点火信号IGt1〜4がオフされる(論理Lとなる)。なお、この期間t21〜t22においては、図2に示したスイッチング素子11bがオン状態で保持され、コンデンサ11fに対してバッテリによる充電が行われることになる。
【0094】
この例では、(a)に示されるように、シリンダ#1の点火が異常なタイミングt22(所望のタイミングよりも遅延したタイミング)で指示される。そしてこれにより、(c)に示されるように、コンデンサ11fの電位VC2(充電量)が基準電位Vtの値を超えて、(d)に示されるように、比較器11g(図2)の出力(FF−S1信号)が論理Hとなる。そして、こうしてFF−S1信号が論理Hとなることで、RSフリップフロップ13のFF−Q1信号が論理Hとなり、トランジスタ14がオンされることになる。そして、このトランジスタ14がオンされている間(次に回路251に係るRSフリップフロップ13のR端子にリセット信号が入力されるまで)は、シリンダ#1のAND回路(AND回路211)に対する気筒判別信号G11の入力が禁止(論理L状態に固定)され、ひいては同シリンダ#1の点火コイルに対する通電、いわば同シリンダ#1における点火の実行が禁止(シリンダごと個別に禁止)されることになる。なお、こうしたシリンダ#1に係る気筒判別信号G11の入力禁止は、図中(h)に破線にて示すように、回路252(シリンダ#3の回路)に係るRSフリップフロップのリセット信号があっても解除されない。本実施形態の装置では、こうした構成により、シリンダごとの状態(特に異常・故障に関する情報)を個別に管理し易くなっている。
【0095】
一方、次の対象シリンダであるシリンダ#3の点火制御は、シリンダ#1の点火制御とは別に行われる。すなわち、直前の点火制御によりシリンダ#1での点火が禁止されていても、それによってシリンダ#3の点火が禁止されることはない。そして図示される例では、シリンダ#3についての前回の点火制御において、シリンダ#3の点火が正常なタイミングで指示された場合を想定している。このため、(i)中に実線にて示すように、今回のシリンダ#3の点火制御に先立ち、詳しくは点火信号IGt2の立が上がりタイミングt24で、回路252に係るRSフリップフロップのR端子にリセット信号が入力されることにより、気筒判別信号G12が論理Lとなる。ちなみに(i)中の破線は、前回の点火制御による同シリンダ#3の点火が、異常なタイミングで指示された場合を想定したものであり、この場合は、気筒判別信号G12が論理Lの状態で維持されることになる。そして、今回の点火制御においては、シリンダ#3の点火が正常なタイミングt25で指示されている。したがって、(c)に示されるように、回路252に係るコンデンサ11f(図2)の電位VC2は基準電位Vtの値を超えず、期間t25〜t26において、通常どおり(正常な制御として)、シリンダ#3における多重放電が行われることになる。
【0096】
次に、図9を参照して、先の図4に示したタイプの点火装置の動作態様について説明する。なお、この図9において、(a)(b)は、先の図8の(a)(b)に、(d)〜(j)は、先の図3の(c)〜(i)に、それぞれ対応するものであり、また(c)は多重期間信号IGwの推移を示している。
【0097】
同図9に示されるように、この例でも、その基本的な動作は、先の図8に示した例と同様である。しかしながら、この例では、気筒判別信号G11,G12が、多重期間信号IGwに基づいてオン/オフされるようになっている。そしてこの場合も、各シリンダの点火が異常なタイミングで指示されたときには、そのシリンダのAND回路に対する気筒判別信号の入力が禁止(論理L状態に固定)され、ひいてはそのシリンダにおける点火の実行が禁止(シリンダごと個別に禁止)されることになる。
【0098】
以上説明したように、本実施形態に係る内燃機関の点火装置によれば、第1の実施形態による前記(1)〜(7)及び(9)〜(14)の効果と同様の効果もしくはそれに準じた効果に加え、さらに次のような効果も得られるようになる。
【0099】
(16)上記点火スイッチ(トランジスタTr21,Tr22,…)のオン/オフ態様を示すスイッチ信号(ドライブ信号Dr2)と、上記開始信号(点火信号IGt1,IGt2,…の立ち下がり)と、の両方が発生しているか否かを判断する回路(信号判断手段、図7のAND回路211,212,…)を備える構成とした。また、上記点火スイッチが、ノーマリオフ型のスイッチング素子であり、上記スイッチ制御回路が、図7のAND回路211,212,…により上記信号の両方が発生している旨判断された(同AND回路211,212,…により論理Hの信号が出力された)ことに基づいて、上記ドライブ信号Dr2に対応したオン/オフ態様で上記点火スイッチのオン/オフ状態を切り替えるものである構成とした。そして、トランジスタ14(図7)についてはこれを、上記禁止を実行している場合に、上記開始信号(点火信号IGt1,IGt2,…の立ち下がり)を無効化して上記AND回路211,212,…により論理Lの信号を出力させるものとした。こうした構成によれば、異常なタイミングでの点火を、より的確に禁止することが可能になる。
【0100】
(17)複数のシリンダ(4つのシリンダ)を有する多気筒エンジン(詳しくは直列4気筒エンジン)を対象として、それらシリンダのうち、その時に点火を実行すべき対象シリンダが、それらシリンダのいずれのシリンダであるかを判別して、上記トランジスタ14による禁止が実行されていない(同トランジスタ14がオンされていない)場合に、その対象シリンダについて上記開始信号(点火信号IGt1,IGt2,…の立ち下がり)に基づく点火を行う回路(図7の気筒判別回路221,222,…、AND回路211,212,…、トランジスタTr21,Tr22,…、点火コイルL1,…など)を備える構成とした。そして、上記回路11,12、及びRSフリップフロップ13(図7)についてはこれを、対象シリンダについて、上記開始信号が所定の開始タイミングで発生したか否かを判断するものとし、上記トランジスタ14(図7)についてはこれを、上記回路11,12、及びRSフリップフロップ13により開始信号が上記開始タイミングで発生していない旨判断された(RSフリップフロップ13からFF−Q信号として論理Lの信号が出力された)場合に、その判断をされた対象シリンダだけについて、上記開始信号に基づく点火を禁止するものとした。こうした構成であれば、多気筒エンジンについてそれぞれ上記禁止が好適に実現されることになる。
【0101】
(第3実施形態)
次に、図16〜図19を参照して、先の図1に示した装置に準ずる構成をもった点火装置として、本発明に係る点火装置を具体化した第3の実施形態について説明する。ただしここでは、第1の実施形態との相違点を中心に、本実施形態について説明する。
【0102】
まず図16及び図17を参照して、本実施形態に係る点火装置の構成について説明する。図16は先の図1に対応する回路図であり、ここでは、図1中に示した要素と同一の要素には各々同一の符号を付して示し、その説明を割愛する。
【0103】
本実施形態の点火装置では、誤点火防止回路351の構成が第1実施形態の誤点火防止回路251と異なる。また、第1実施形態の多重点火制御部201bにクロック回路400、インバータ401及びAND回路402が追加されて、多重点火制御部301bが構成されている。クロック回路400は一定周期のパルス信号を出力する回路である。クロック回路400のパルス信号は誤点火防止回路351の時間幅検出回路311に入力されている。
【0104】
誤点火防止回路351では、時間幅検出回路311が第1実施形態の時間幅検出回路11と異なっている。その他、誤点火防止回路351では、第1実施形態の立ち上がりタイミング検出回路12に代えてインバータ403を備えて構成されている。すなわち、誤点火防止回路351では、点火信号IGt1〜4の反転信号(インバータ403の出力信号)がRSフリップフロップ13のFF−R信号とされている。このFF−R信号は、時間幅検出回路311にも入力されている。
【0105】
図17は、時間幅検出回路311の構成を示す回路図である。時間幅検出回路311は、クロック回路400のパルス信号のパルス数をカウントするカウンタ回路404と、同カウンタ回路404をリセット状態に遷移させるリセット回路405と、を備えている。そして、時間幅検出回路311では、点火信号IGt1〜4が論理Hである時間がカウンタ回路404により計時され、その計時結果に基づいてFF−S信号が出力されるようになっている。なお、「リセット状態」とは、カウンタ回路404において、その計数値が0に戻り、且つ、パルス信号のパルス数がカウントされない状態である。
【0106】
ここで、時間幅検出回路311について詳しく説明すると、カウンタ回路404は、複数のDフリップフロップDFF0〜DFFn−1からなるnビットのカウンタ回路である。カウンタ回路404では、各ビットのDフリップフロップにおいてD(データ入力)端子及びnQ(ネガティブ出力)端子が互いに接続され、隣り合うビットのDフリップフロップのうち下位側のDフリップフロップのnQ端子に上位側のDフリップフロップのCLK(クロック入力)端子が互いに接続されている。そして、カウンタ回路404では、最下位ビットのDフリップフロップのCLK端子がパルス入力端子PINとなり、各ビットのDフリップフロップのD端子及びQ(ポジティブ出力)端子がそれぞれデータ入力端子DI0〜DIn−1及びデータ出力端子DO0〜DOn−1となっている。パルス入力端子PINにはクロック回路400出力端が接続され、データ入力端子DI0〜DIn−1にはリセット回路405が接続され、最上位ビットのデータ出力端子DOn−1にはRSフリップフロップ13のS端子が接続されている。これにより、最上位ビットのデータ出力信号がFF−S信号としてRSフリップフロップ13へ入力される。
【0107】
リセット回路405は、FF−R信号が論理Hである場合(点火信号IGt1〜4が論理Lである場合)にカウンタ回路404をリセット状態とし、FF−R信号が論理Lである場合(点火信号IGt1〜4が論理Hである場合)にカウンタ回路404のリセット状態を解除する。本実施形態では、リセット回路405は、カウンタ回路404の各ビットに対応するトランジスタTR0〜TRn−1を主体として構成されている。詳しくは、リセット回路405において、各トランジスタTR0〜TRn−1のベース端子にFF−Q信号が入力されるようになっている。そして、各トランジスタTR0〜TRn−1のコレクタ端子にカウンタ回路404のデータ入力端子DI0〜DIn−1が接続され、各トランジスタTR0〜TRn−1のエミッタ端子にグランドが接続されている。この場合、FF−R信号が論理L(点火信号IGt1〜4が論理H)になると、リセット回路405においてトランジスタTR0〜TRn−1がオフ状態となり、カウンタ回路404においてデータ入力端子DI0〜DIn−1がハイインピーダンスとなり、カウンタ回路404のリセット状態が解除される。一方、FF−R信号が論理H(点火信号IGt1〜4が論理L)になると、リセット回路405においてトランジスタTR0〜TRn−1がオン状態となり、カウンタ回路404においてデータ入力端子DI0〜DIn−1が論理Lとなり、カウンタ回路404がリセット状態となる。
【0108】
以上説明した誤点火防止回路351では、点火信号IGt1〜4が論理Hである時間がカウンタ回路404により計時され、カウンタ回路404の最上位ビットのデータ出力信号がFF−S信号として出力される。そして、点火信号IGt1〜4の立ち上がりタイミングからの経過時間が異常判定時間未満である場合には、カウンタ回路404の最上位ビットのデータ出力信号(FF−S信号)が論理Lとなり(図18(f)参照)、点火信号IGt1〜4の立ち上がりタイミングからの経過時間が異常判定時間以上である場合には、カウンタ回路404の最上位ビットのデータ出力信号(FF−S信号)が論理Hとなる(図19(f)参照)。上記異常判定時間は、カウンタ回路404の段数(ビット数)及びクロック回路400のパルス信号の発生周期とにより設定されている。
【0109】
なお、点火信号IGt1〜4の立ち上がりタイミングからの経過時間が異常判定時間を超えて更に大きくなると、カウンタ回路404の最上位ビットのデータ出力信号(FF−S信号)が論理Lへ戻ってしまうが、RSフリップフロップ13によるラッチ機能により、誤点火防止回路351の出力信号(FF−Q信号)は論理Hに保持される。これにより、点火信号IGt1〜4の立ち上がりタイミングからの経過時間が異常判定時間であるにも拘わらず、誤点火防止回路351の出力信号が点火許可を示す(FF−Q信号が論理Lとなる)事態を防ぐことができる。この意味で、本実施形態において、上述の如く時間幅検出回路311の後段にRSフリップフロップ13を設けることの効果は特に大きいと言える。
【0110】
図16に示すように、多重点火制御部301bでは、誤点火防止回路351のFF−Q信号の反転信号(インバータ401の出力信号)とAND回路210の出力信号との論理積信号が、ドライブ信号Dr2として、AND回路402からAND回路211,212,…へ出力されるようになっている。この場合、誤点火防止回路351のFF−Q信号が論理Lとなると、多重期間信号IGw及びドライブ信号Dr1に応じたドライブ信号Dr2により点火制御が実施される。すなわち、各シリンダにおいて点火の実行が許可される。一方、誤点火防止回路351のFF−Q信号が論理Hとなると、多重期間信号IGw及びドライブ信号Dr1に拘わらずドライブ信号Dr2が論理Lに固定される。すなわち、各シリンダにおいて点火の実行が禁止される。
【0111】
続いて、図18及び図19を参照して、本実施形態の点火装置による点火が正常なタイミングで指示された場合と異常なタイミングで指示された場合とを対比しつつ、本実施形態に係る点火装置の動作について説明する。図18及び図19において、(a)はクロック回路400のパルス信号、(b)は点火信号IGt1〜4、(c)〜(e)はそれぞれカウンタ回路404の第0(最下位)ビット〜第2ビットのデータ出力信号Dout0〜Dout2、(f)〜(h)はそれぞれFF−S信号、FF−R信号、FF−Q信号を示している。なお、図18及び図19では、カウンタ回路404が4ビットのカウンタ回路であることを想定している。
【0112】
まず、図18を参照して、本実施形態の点火装置による点火が正常なタイミングで指示された場合について説明する。
【0113】
この例では、タイミングt31以前の期間において点火信号IGt1〜4が論理Lとなっている(図18(a)参照)。そのため、同期間(タイミングt31以前の期間)ではFF−R信号が論理Hとなる(図18(g)参照)。これにより、RSフリップフロップ13のR端子への入力が論理Hとなる(図18(g)参照)。その結果、RSフリップフロップ13がリセット状態となり、RSフリップフロップ13のFF−Q信号が論理Lとなる(図18(h)参照)。また、時間幅検出回路311のリセット回路405への入力が論理Hとなる。その結果、タイミングt31以降のクロック回路400のパルス信号の立ち上がりに伴って、カウンタ回路404がリセット状態となり、カウンタ回路404のデータ出力信号Dout0〜Dout2及びFF−S信号が論理Lとなる(図18(c)〜(f)参照)。
【0114】
タイミングt31において、点火信号IGt1〜4が論理Hになると、FF−R信号が論理Lとなり、リセット回路405への入力が論理Lとなる(図18(a),(g)参照)。これにより、カウンタ回路404のリセット状態が解除され、カウンタ回路404において点火信号IGt1〜4が論理Hである時間の計時が開始される(図18(c)〜(f)参照)。
【0115】
その後、タイミングt32において、点火信号IGt1〜4が論理Lになると、FF−R信号が論理Hとなり、リセット回路405への入力が論理Hとなる(図18(a),(g)参照)。これにより、タイミング32以降のクロック回路400のパルス信号の立ち上がりに伴って、カウンタ回路404が再びリセット状態となる(図18(c)〜(f)のタイミングt33参照)。
【0116】
この例では、点火信号IGt1〜4の立ち上がりタイミングからの経過時間が異常判定時間未満のタイミングt32において、点火信号IGt1〜4が立ち下がる。そのため、点火信号IGt1〜4の立ち下がりタイミングにおける誤点火防止回路351の出力信号(FF−Q信号)は論理Lとなっている。すなわち、点火信号IGt1〜4の立ち下がりタイミングでは点火が許可されている。そのため、点火信号IGt1〜IGt4のいずれかの立ち下がりタイミングで点火が実行される。
【0117】
次に、図19を参照して、本実施形態の点火装置による点火が異常なタイミングで指示された場合の点火装置の動作について説明する。
【0118】
タイミングt41において、点火信号IGt1〜4が論理Hになると、カウンタ回路404において点火信号IGt1〜4が論理Hである時間の計時が開始される(図19(c)〜(f)参照)。
【0119】
タイミングt42において、点火信号IGt1〜4の立ち上がりタイミングからの経過時間が異常判定時間になると、カウンタ回路404の最上位ビットのデータ出力信号(FF−S信号)が論理Lから論理Hへ変化し、それに伴ってRSフリップフロップ13のFF−Q信号が論理Hとなる。
【0120】
タイミングt43において、点火信号IGt1〜4の立ち上がりタイミングからの経過時間が異常判定時間の倍の時間になると、カウンタ回路404の最上位ビットのデータ出力信号(FF−S信号)が論理Hから論理Lへ変化するが、RSフリップフロップ13のラッチ機能によりFF−Q信号は論理Hに保持される。
【0121】
これにより、タイミングt42以降では、誤点火防止回路351の出力信号(FF−Q信号)が論理Hとなって、点火が禁止されている。そのため、タイミングt42以降のタイミングで点火信号IGt1〜IGt4のいずれかが立ち下がったとしても、そのタイミングでは点火は実行されない。
【0122】
以上説明したように、本実施形態に係る内燃機関の点火装置によれば、第1の実施形態による前記(1),(2)及び(5)〜(15)の効果と同様の効果もしくはそれに準じた効果に加え、さらに次のような効果も得られるようになる。
【0123】
(18)時間幅検出回路311についてこれを、所定基準信号(点火信号IGt1,IGt2,…の立ち上がり)の発生によりカウンタ回路404のカウントアップを開始し、その計数値に基づいて、所定開始信号(点火信号IGt1,IGt2,…の立ち下がり)が開始タイミングで発生したか否かを判断するものとした。この場合、カウンタ回路404の計数値に基づいて、開始信号の発生タイミングを正確に判断することができる。
【0124】
(19)時間幅検出回路311についてこれを、基準信号の発生タイミング前にカウンタ回路404がリセット状態となり、基準信号の発生タイミングでカウンタ回路404のリセット状態が解除されるものとした。この場合、カウンタ回路404の計数値が所定の許容値よりも大きくなったか否かに基づいて、開始信号の発生タイミングを容易に判断することができる。
【0125】
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0126】
・上記第2の実施形態について、4つのシリンダのうち、いずれのシリンダが上記トランジスタ14により点火を禁止されたかを示す情報を保存する手段を備える構成とすることも有効である。例えばRSフリップフロップ13のFF−Q信号(FF−Q1信号,…)をシリンダごとに区別して保存(例えば所定の記憶装置に格納)するようにする。こうすることで、シリンダごとに区別して、禁止の頻度に関するデータ、いわば異常発生の頻度に関するデータを蓄積することができ、ひいてはどのシリンダの点火系に特に異常が発生し易いかなどの情報を把握することが可能になる。また、特定のシリンダについて異常が連続して発生する場合には、そのシリンダの点火系について修理や部品交換などを行うことで、その異常発生に起因したエンジン性能の低下などを早期に修復することなども可能になる。そしてこの場合は、必要に応じて所定のパラメータ(例えばデータ取得日時など)に関連付けつつ、ECUの主電源停止後もデータを保持可能とする所定の記憶装置(例えばEEPROMやバックアップRAM)に対して、データを保存することが有効である。こうすることで、例えばエンジンが停止され、当該ECUに対する給電が遮断された後も消去されずに、記憶装置内にデータが不揮発に保持されるようになり、長期にわたるデータの保存、ひいてはそのデータの読み出しが可能になる。また、データを保存する際に所定パラメータに対して関連付けを行っておけば、データ読み出しの際にそのパラメータを利用することで必要なデータを容易に取り出すことが可能になり、データ解析等をより容易且つ的確に行うことができるようになる。
【0127】
・上記第3の実施形態の誤点火防止回路351を、第2の実施形態の点火装置に適用してもよい。すなわち、第2の実施形態の誤点火防止回路251,252,…に代えて、第3の実施形態の誤点火防止回路351を採用し、第2の実施形態の各気筒用の気筒判別回路221,222,…の出力信号と各気筒用の誤点火防止回路351のFF−Q信号の反転信号との論理積信号が各気筒用のAND回路211,212,…に入力されるようにしてもよい。
【0128】
・RSフリップフロップ13の出力(FF−Q信号)と1次側点火コイルL1aに流れる電流量i1との整合性に基づいて、上述の禁止が確実に行われているか否かを診断するようにしてもよい。例えばRSフリップフロップ13のFF−Q信号として論理Hの信号が出力されている(上記禁止を実行している)にもかかわらず、1次側点火コイルL1aに許容レベルよりも大きな電流(例えば所定値以上の電流)が流れた場合には、上記誤点火防止回路251,252,…に異常が発生している旨判断する。
【0129】
・上記基準信号の発生から開始信号が発生するまでの時間を検出する手段としては、任意の計時手段(例えばプログラム又は回路等によるタイマ装置など)を用いることができる。
【0130】
・上記基準電位Vtが固定値であることは必須の構成ではない。例えばこの基準電位Vtについてはこれを、システム(エンジン点火系)の劣化状態等の所定パラメータに基づいて可変設定するようにしてもよい。
【0131】
・上記誤点火防止回路251,252,…の適用は、図10に示した構成への適用に限定されることはなく、例えば図13に示した構成に対して適用するようにしてもよい。また、多重放電点火式の点火装置にも限定されず、例えば1燃焼サイクル中に1回だけ点火を行う点火装置としてもよい。
【0132】
・上記誤点火防止回路251,252,…に代えて、例えばECU等によりソフトウェア(プログラム)上で上述の禁止処理を行うようにしてもよい。しかしながら、こうした禁止をより確実に行う上では、ハードウェア上(特に回路上)で行う構成が有益である。
【0133】
・点火対象とする内燃機関の種類やシステム構成も、用途等に応じて適宜に変更可能である。例えば火花点火式の筒内噴射ガソリンエンジン(直噴エンジン)を点火対象としてもよい。要は、火花点火式の内燃機関であれば任意のものを、当該装置の点火対象とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】本発明に係る内燃機関の点火装置の第1の実施形態について、該装置の概略を示す回路図。
【図2】同点火装置の詳細構成を示す回路図。
【図3】(a)〜(g)は、同点火装置の動作の一態様を示すタイミングチャート。
【図4】(a)〜(h)は、同点火装置の動作の別の一態様を示すタイミングチャート。
【図5】(a)〜(h)は、同点火装置の動作の一態様を示すタイミングチャート。
【図6】(a)〜(h)は、同点火装置の動作の一態様を示すタイミングチャート。
【図7】本発明に係る内燃機関の点火装置の第2の実施形態について、該装置の概略を示す回路図。
【図8】(a)〜(i)は、同点火装置の動作の一態様を示すタイミングチャート。
【図9】(a)〜(j)は、同点火装置の動作の別の一態様を示すタイミングチャート。
【図10】多重放電点火式の点火装置の一例を示す回路図。
【図11】同点火装置の詳細構成を示す回路図。
【図12】(a)〜(g)は、同点火装置の動作の一態様を示すタイミングチャート。
【図13】多重放電点火式の点火装置の別の一例を示す回路図。
【図14】(a)〜(f)は、同点火装置の動作の一態様を示すタイミングチャート。
【図15】(a)〜(f)は、同点火装置の動作の別の一態様を示すタイミングチャート。
【図16】本発明に係る内燃機関の点火装置の第3の実施形態について、該装置の概略を示す回路図。
【図17】同点火装置の詳細構成を示す回路図。
【図18】(a)〜(h)は、同点火装置の動作の一態様を示すタイミングチャート。
【図19】(a)〜(h)は、同点火装置の動作の一態様を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
【0135】
11、311…時間幅検出回路、11a、11e…定電流源、11b…スイッチング素子、11c…インバータ、11d…スイッチング素子、11f…コンデンサ(計時用コンデンサ)、11g…比較器、12…タイミング検出回路、13…RSフリップフロップ、14、Tr11、Tr21、Tr22…トランジスタ、101…信号出力部、201…制御部、201a…エネルギー蓄積制御部、201b、301b…多重点火制御部、210、211、212…AND回路、221、222…気筒判別回路、251、252、351…誤点火防止回路、400…クロック回路、404…カウンタ回路、405…リセット回路、B1…車載バッテリ、C1…コンデンサ(点火用コンデンサ)、D1…ダイオード、L1…点火コイル、L10…コイル、L1a…1次側点火コイル、L1b…2次側点火コイル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火花点火式の内燃機関を対象にして所定の開始信号の発生により点火を指示する内燃機関の点火装置において、
前記開始信号が所定の開始タイミングで発生したか否かを判断するタイミング判断手段と、
前記タイミング判断手段により開始信号が前記開始タイミングで発生していない旨判断された場合に、その開始信号に基づく点火を禁止する禁止手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の点火装置。
【請求項2】
前記開始タイミングが、所定基準信号の発生から所定時間だけ経過した時のタイミングとして設定されており、
前記タイミング判断手段は、前記基準信号の発生から前記開始信号が発生するまでの時間に基づいて、前記開始信号が前記開始タイミングで発生したか否かを判断するものである請求項1に記載の内燃機関の点火装置。
【請求項3】
前記タイミング判断手段は、前記基準信号の発生により所定の計時用コンデンサに対して充電を開始し、前記開始信号が発生するまでにその計時用コンデンサの充電量が許容レベルよりも大きくなったか否かに基づいて、前記開始信号が前記開始タイミングで発生したか否かを判断するものである請求項2に記載の内燃機関の点火装置。
【請求項4】
前記タイミング判断手段は、前記計時用コンデンサの充電量に相当する電位と、前記許容レベルに相当する所定電位とを入力とする比較器の出力電位の大小に基づいて、前記開始信号が前記開始タイミングで発生したか否かを判断するものである請求項3に記載の内燃機関の点火装置。
【請求項5】
前記タイミング判断手段は、一定周期で発生する周期信号の発生回数をカウントするカウンタ回路の計数値に基づいて、前記開始信号が前記開始タイミングで発生したか否かを判断するものである請求項2に記載の内燃機関の点火装置。
【請求項6】
前記カウンタ回路の計数値が前記基準信号の発生タイミングで基準値とされ、
前記タイミング判断手段は、前記カウンタ回路の計数値と許容値との比較に基づいて、前記開始信号が前記開始タイミングで発生したか否かを判断するものである請求項5に記載の内燃機関の点火装置。
【請求項7】
前記タイミング判断手段は、前記基準信号が発生した時にリセット信号が入力され、且つ、前記基準信号の発生から前記開始信号が発生するまでの時間が許容レベルよりも長くなった時にセット信号が入力されるRSフリップフロップの出力として、前記開始信号が所定の開始タイミングで発生したか否かの判断結果を出力するものである請求項2〜6のいずれか一項に記載の内燃機関の点火装置。
【請求項8】
前記開始信号の発生により指示される点火は、1燃焼サイクル中に複数回の点火を行う多重放電点火であり、
前記開始信号が発生したことに応じて、前記多重放電点火を継続的に行う期間を示す多重期間信号を出力する手段と、
前記多重期間信号の出力中に、前記多重放電点火を指示するパルス信号を出力する手段と、
前記パルス信号の出力中に、そのパルス信号に基づいて、前記多重放電点火を実行する手段と、
を備え、前記禁止手段は、前記タイミング判断手段により開始信号が前記開始タイミングで発生していない旨判断された場合に、前記パルス信号の出力を禁止するものである請求項1〜7のいずれか一項に記載の内燃機関の点火装置。
【請求項9】
前記内燃機関が、点火プラグの通電により前記点火を行うものであり、
前記点火プラグが、所定のスイッチング素子である点火スイッチのオン/オフ状態に応じて通電の有無が切り替わるものであり、
当該点火装置は、1乃至複数の所定パラメータに基づいて前記点火スイッチのオン/オフ状態を切り替えるスイッチ制御回路を備える請求項1〜8のいずれか一項に記載の内燃機関の点火装置。
【請求項10】
前記点火スイッチのオン/オフ態様を示すスイッチ信号と、前記開始信号と、の両方が発生しているか否かを判断する信号判断手段を備え、
前記点火スイッチは、ノーマリオフ型のスイッチング素子であり、
前記スイッチ制御回路は、前記信号判断手段により前記信号の両方が発生している旨判断されたことに基づいて、前記スイッチ信号に対応したオン/オフ態様で前記点火スイッチのオン/オフ状態を切り替えるものであり、
前記禁止手段は、前記禁止を実行している場合にあっては、前記スイッチ信号及び前記開始信号の少なくとも一方を無効化して前記信号判断手段によりそれら信号の少なくとも一方が発生していない旨判断させるものである請求項9に記載の内燃機関の点火装置。
【請求項11】
前記点火プラグの通電の有無を制御するものとして、1次側コイルと2次側コイルとを有して構成される点火コイルを有し、この点火コイルのうち、前記1次側コイルが、前記点火スイッチのオン/オフ状態に応じて通電の有無が切り替わるように設けられ、前記2次側コイルが、前記点火プラグの通電経路に設けられてなる請求項9又は10に記載の内燃機関の点火装置。
【請求項12】
前記開始信号の発生に基づいて、前記点火スイッチを繰り返しオン/オフさせて前記1次側コイルに断続的に1次電流を流すことにより前記2次側コイルに2次電流を繰り返し発生させることで、前記点火プラグに多重放電を行わせる多重放電実行手段を備える請求項11に記載の内燃機関の点火装置。
【請求項13】
前記1次側コイルには、前記点火スイッチが直列に、所定の点火用コンデンサが並列に、それぞれ接続されており、
同1次側コイルは、前記点火スイッチがオンされることで、前記点火用コンデンサに蓄えられた電荷の供給を受けるものである請求項11又は12に記載の内燃機関の点火装置。
【請求項14】
前記禁止手段は、前記禁止を実行していない場合には、前記開始信号の発生による前記点火スイッチのオンを許容し、前記禁止を実行している場合には、前記開始信号が発生しても前記点火スイッチをオンさせないものである請求項9〜13のいずれか一項に記載の内燃機関の点火装置。
【請求項15】
前記禁止手段は、前記禁止を実行している場合にあっては、前記点火スイッチのオンを回路上で禁止するものである請求項14に記載の内燃機関の点火装置。
【請求項16】
前記点火スイッチは、ゲートに対して論理H(ハイ)の電位が与えられることによりオンするノーマリオフ型のトランジスタであり、
前記禁止手段は、前記禁止を実行している場合にあっては、前記ゲートの電位を論理L(ロー)の電位に固定するものである請求項15に記載の内燃機関の点火装置。
【請求項17】
前記内燃機関が複数のシリンダを有する多気筒エンジンであり、
前記複数のシリンダのうち、その時に前記点火を実行すべき対象シリンダが、それらシリンダのいずれのシリンダであるかを判別して、前記禁止手段による禁止が実行されていない場合に、その対象シリンダについて前記開始信号に基づく点火を行う手段を備え、
前記タイミング判断手段は、前記対象シリンダについて、前記開始信号が所定の開始タイミングで発生したか否かを判断するものであり、
前記禁止手段は、前記タイミング判断手段により開始信号が前記開始タイミングで発生していない旨判断された場合に、その判断をされた対象シリンダだけについて、前記開始信号に基づく点火を禁止するものである請求項1〜16のいずれか一項に記載の内燃機関の点火装置。
【請求項18】
前記複数のシリンダのうち、いずれのシリンダが前記禁止手段により点火を禁止されたかを示す情報を保存する手段を備える請求項17に記載の内燃機関の点火装置。
【請求項19】
前記内燃機関が複数のシリンダを有する多気筒エンジンであり、
前記複数のシリンダのうち、その時に前記点火を実行すべき対象シリンダが、それらシリンダのいずれのシリンダであるかを判別して、前記禁止手段による禁止が実行されていない場合に、その対象シリンダについて前記開始信号に基づく点火を行う手段を備え、
前記タイミング判断手段は、前記対象シリンダについて、前記開始信号が所定の開始タイミングで発生したか否かを判断するものであり、
前記禁止手段は、前記タイミング判断手段により開始信号が前記開始タイミングで発生していない旨判断された場合に、その判断をされた対象シリンダを含む前記複数のシリンダの全てについて、それぞれ前記開始信号に基づく点火を禁止するものである請求項1〜16のいずれか一項に記載の内燃機関の点火装置。
【請求項20】
火花点火式の内燃機関を対象にして所定の開始信号の発生により点火を指示する内燃機関の点火装置において、
前記開始信号の発生タイミングを監視して、同開始信号が異常なタイミングで発生した場合に、前記開始信号に基づく点火を禁止する手段を備えることを特徴とする内燃機関の点火装置。
【請求項1】
火花点火式の内燃機関を対象にして所定の開始信号の発生により点火を指示する内燃機関の点火装置において、
前記開始信号が所定の開始タイミングで発生したか否かを判断するタイミング判断手段と、
前記タイミング判断手段により開始信号が前記開始タイミングで発生していない旨判断された場合に、その開始信号に基づく点火を禁止する禁止手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の点火装置。
【請求項2】
前記開始タイミングが、所定基準信号の発生から所定時間だけ経過した時のタイミングとして設定されており、
前記タイミング判断手段は、前記基準信号の発生から前記開始信号が発生するまでの時間に基づいて、前記開始信号が前記開始タイミングで発生したか否かを判断するものである請求項1に記載の内燃機関の点火装置。
【請求項3】
前記タイミング判断手段は、前記基準信号の発生により所定の計時用コンデンサに対して充電を開始し、前記開始信号が発生するまでにその計時用コンデンサの充電量が許容レベルよりも大きくなったか否かに基づいて、前記開始信号が前記開始タイミングで発生したか否かを判断するものである請求項2に記載の内燃機関の点火装置。
【請求項4】
前記タイミング判断手段は、前記計時用コンデンサの充電量に相当する電位と、前記許容レベルに相当する所定電位とを入力とする比較器の出力電位の大小に基づいて、前記開始信号が前記開始タイミングで発生したか否かを判断するものである請求項3に記載の内燃機関の点火装置。
【請求項5】
前記タイミング判断手段は、一定周期で発生する周期信号の発生回数をカウントするカウンタ回路の計数値に基づいて、前記開始信号が前記開始タイミングで発生したか否かを判断するものである請求項2に記載の内燃機関の点火装置。
【請求項6】
前記カウンタ回路の計数値が前記基準信号の発生タイミングで基準値とされ、
前記タイミング判断手段は、前記カウンタ回路の計数値と許容値との比較に基づいて、前記開始信号が前記開始タイミングで発生したか否かを判断するものである請求項5に記載の内燃機関の点火装置。
【請求項7】
前記タイミング判断手段は、前記基準信号が発生した時にリセット信号が入力され、且つ、前記基準信号の発生から前記開始信号が発生するまでの時間が許容レベルよりも長くなった時にセット信号が入力されるRSフリップフロップの出力として、前記開始信号が所定の開始タイミングで発生したか否かの判断結果を出力するものである請求項2〜6のいずれか一項に記載の内燃機関の点火装置。
【請求項8】
前記開始信号の発生により指示される点火は、1燃焼サイクル中に複数回の点火を行う多重放電点火であり、
前記開始信号が発生したことに応じて、前記多重放電点火を継続的に行う期間を示す多重期間信号を出力する手段と、
前記多重期間信号の出力中に、前記多重放電点火を指示するパルス信号を出力する手段と、
前記パルス信号の出力中に、そのパルス信号に基づいて、前記多重放電点火を実行する手段と、
を備え、前記禁止手段は、前記タイミング判断手段により開始信号が前記開始タイミングで発生していない旨判断された場合に、前記パルス信号の出力を禁止するものである請求項1〜7のいずれか一項に記載の内燃機関の点火装置。
【請求項9】
前記内燃機関が、点火プラグの通電により前記点火を行うものであり、
前記点火プラグが、所定のスイッチング素子である点火スイッチのオン/オフ状態に応じて通電の有無が切り替わるものであり、
当該点火装置は、1乃至複数の所定パラメータに基づいて前記点火スイッチのオン/オフ状態を切り替えるスイッチ制御回路を備える請求項1〜8のいずれか一項に記載の内燃機関の点火装置。
【請求項10】
前記点火スイッチのオン/オフ態様を示すスイッチ信号と、前記開始信号と、の両方が発生しているか否かを判断する信号判断手段を備え、
前記点火スイッチは、ノーマリオフ型のスイッチング素子であり、
前記スイッチ制御回路は、前記信号判断手段により前記信号の両方が発生している旨判断されたことに基づいて、前記スイッチ信号に対応したオン/オフ態様で前記点火スイッチのオン/オフ状態を切り替えるものであり、
前記禁止手段は、前記禁止を実行している場合にあっては、前記スイッチ信号及び前記開始信号の少なくとも一方を無効化して前記信号判断手段によりそれら信号の少なくとも一方が発生していない旨判断させるものである請求項9に記載の内燃機関の点火装置。
【請求項11】
前記点火プラグの通電の有無を制御するものとして、1次側コイルと2次側コイルとを有して構成される点火コイルを有し、この点火コイルのうち、前記1次側コイルが、前記点火スイッチのオン/オフ状態に応じて通電の有無が切り替わるように設けられ、前記2次側コイルが、前記点火プラグの通電経路に設けられてなる請求項9又は10に記載の内燃機関の点火装置。
【請求項12】
前記開始信号の発生に基づいて、前記点火スイッチを繰り返しオン/オフさせて前記1次側コイルに断続的に1次電流を流すことにより前記2次側コイルに2次電流を繰り返し発生させることで、前記点火プラグに多重放電を行わせる多重放電実行手段を備える請求項11に記載の内燃機関の点火装置。
【請求項13】
前記1次側コイルには、前記点火スイッチが直列に、所定の点火用コンデンサが並列に、それぞれ接続されており、
同1次側コイルは、前記点火スイッチがオンされることで、前記点火用コンデンサに蓄えられた電荷の供給を受けるものである請求項11又は12に記載の内燃機関の点火装置。
【請求項14】
前記禁止手段は、前記禁止を実行していない場合には、前記開始信号の発生による前記点火スイッチのオンを許容し、前記禁止を実行している場合には、前記開始信号が発生しても前記点火スイッチをオンさせないものである請求項9〜13のいずれか一項に記載の内燃機関の点火装置。
【請求項15】
前記禁止手段は、前記禁止を実行している場合にあっては、前記点火スイッチのオンを回路上で禁止するものである請求項14に記載の内燃機関の点火装置。
【請求項16】
前記点火スイッチは、ゲートに対して論理H(ハイ)の電位が与えられることによりオンするノーマリオフ型のトランジスタであり、
前記禁止手段は、前記禁止を実行している場合にあっては、前記ゲートの電位を論理L(ロー)の電位に固定するものである請求項15に記載の内燃機関の点火装置。
【請求項17】
前記内燃機関が複数のシリンダを有する多気筒エンジンであり、
前記複数のシリンダのうち、その時に前記点火を実行すべき対象シリンダが、それらシリンダのいずれのシリンダであるかを判別して、前記禁止手段による禁止が実行されていない場合に、その対象シリンダについて前記開始信号に基づく点火を行う手段を備え、
前記タイミング判断手段は、前記対象シリンダについて、前記開始信号が所定の開始タイミングで発生したか否かを判断するものであり、
前記禁止手段は、前記タイミング判断手段により開始信号が前記開始タイミングで発生していない旨判断された場合に、その判断をされた対象シリンダだけについて、前記開始信号に基づく点火を禁止するものである請求項1〜16のいずれか一項に記載の内燃機関の点火装置。
【請求項18】
前記複数のシリンダのうち、いずれのシリンダが前記禁止手段により点火を禁止されたかを示す情報を保存する手段を備える請求項17に記載の内燃機関の点火装置。
【請求項19】
前記内燃機関が複数のシリンダを有する多気筒エンジンであり、
前記複数のシリンダのうち、その時に前記点火を実行すべき対象シリンダが、それらシリンダのいずれのシリンダであるかを判別して、前記禁止手段による禁止が実行されていない場合に、その対象シリンダについて前記開始信号に基づく点火を行う手段を備え、
前記タイミング判断手段は、前記対象シリンダについて、前記開始信号が所定の開始タイミングで発生したか否かを判断するものであり、
前記禁止手段は、前記タイミング判断手段により開始信号が前記開始タイミングで発生していない旨判断された場合に、その判断をされた対象シリンダを含む前記複数のシリンダの全てについて、それぞれ前記開始信号に基づく点火を禁止するものである請求項1〜16のいずれか一項に記載の内燃機関の点火装置。
【請求項20】
火花点火式の内燃機関を対象にして所定の開始信号の発生により点火を指示する内燃機関の点火装置において、
前記開始信号の発生タイミングを監視して、同開始信号が異常なタイミングで発生した場合に、前記開始信号に基づく点火を禁止する手段を備えることを特徴とする内燃機関の点火装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2009−36190(P2009−36190A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95789(P2008−95789)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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