説明

内燃機関の過給システム

【課題】HCの排出量を抑制しつつ、排気浄化装置の温度の上昇を促進することが可能な内燃機関の過給システムを提供する。
【解決手段】吸気側端部20aに設けられる吸気吐出口25、28bと、排気側端部20bに設けられる排気導入口26と、を有する圧力波過給機20を備えたエンジン1の過給システムであって、圧力波過給機20のロータ22を回転駆動する第1モータ29と、排気導入口26に対する吸気吐出口28bの位置を変更可能なバルブプレート28及び第2モータ30と、エンジン1の温度が所定の機関状態判定温度未満であることを含む所定の暖機条件が成立した場合、エンジン1の温度が所定の機関状態判定温度以上の場合よりも、ロータ22の回転数を上昇させるように第1モータ29を制御するとともに、排気導入口26に対する吸気吐出口28bの位置を近づけるようにバルブプレート28及び第2モータ30を制御する制御装置40とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース内に設けた複数のセル内に空気と排気とを交互に導入し、セル内に導入した排気の圧力波でそのセル内の空気の圧力を高めて過給を行う圧力波過給機を備えた内燃機関の過給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
吸気通路と排気通路とに跨るように設けられ、排気の圧力波を利用して過給を行う圧力波過給機が知られている。この圧力波過給機では、ケース内に設けた複数のセル内に空気と排気とを交互に導入し、セル内に導入した排気の圧力波でそのセル内の空気の圧力を高める。そして、その圧力を高めた空気を吸気通路に吐出して過給を行う。このような圧力波過給機を備えた内燃機関では、圧力波過給機の内部を介して排気通路から吸気通路に排気の一部を再循環することができる。また、例えば、圧力波過給機の内部を介して吸気通路から排気通路に吸気の一部を供給すると、吸気と排気とが混ぜられ、排気浄化装置の温度の上昇を促進することができる圧力波過給機を備えた内燃機関が知られている(特許文献1参照)。その他、本発明に関連する先行技術文献として特許文献2が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−515169号公報
【特許文献2】特開平4−19327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内燃機関の暖機が完了する前に、排気の一部を再循環すると、炭化水素(HC)の排出量が増加するという問題が生じる。また、特許文献1の圧力波過給機を備えた内燃機関においては、排気浄化装置の温度が排気浄化性能を発揮する触媒活性温度未満の場合には、吸気によってさらに排気浄化装置の温度が低下し、排気浄化装置の温度の上昇に時間がかかるという問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明は、HCの排出量を抑制しつつ、排気浄化装置の温度の上昇を促進することが可能な内燃機関の過給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の内燃機関の過給システムは、軸線回りに回転可能なようにケース内に設けられたロータと、前記ケースの前記軸線方向の一方の端部から他方の端部まで貫通するように前記ケース内に設けられて前記ロータと一体に回転する複数のセルと、前記ケースの前記一方の端部に設けられて内燃機関の吸気通路と接続される吸気吐出部と、前記ケースの前記一方の端部に設けられた吸気導入部と、前記ケースの前記他方の端部に設けられて前記内燃機関の第1排気通路と接続される排気導入部と、前記ケースの前記他方の端部に設けられた排気吐出部と、を有する圧力波過給機を備えた内燃機関の過給システムであって、前記ロータの回転数を変更可能な回転数変更手段と、前記排気導入部及び前記吸気吐出部の少なくともいずれか一方を前記軸線回りに回転させて前記排気導入部に対する前記吸気吐出部の位置を変更可能な位相変更機構と、前記内燃機関の温度が所定の機関状態判定温度未満であることを含む所定の暖機条件が成立した場合、前記内燃機関の温度が前記機関状態判定温度以上の場合よりも、前記ロータの回転数を上昇させるように前記回転数変更手段を制御するとともに、前記排気導入部に対する前記吸気吐出部の位置を近づけるように前記位相変更機構を制御する制御手段と、を備えたものである(請求項1)。
【0007】
本発明の内燃機関の過給システムにおいては、所定の暖機条件が成立した場合、内燃機関の温度が所定の機関状態判定温度以上の場合よりも、ロータの回転数を上昇させるとともに排気導入部に対する吸気吐出部の位置を近づけると、排気の吸気側への吹き抜け、すなわち、排気の一部が再循環するのを抑制することができる。これにより、HCの排出量を抑制することができる。
【0008】
本発明の内燃機関の過給システムの一態様においては、前記排気吐出部には、排気を浄化する排気浄化装置が設けられた第2排気通路が接続され、前記制御手段は、前記内燃機関の温度が前記機関状態判定温度未満であること、前記排気浄化装置の温度が所定の暖機判定温度未満であること、又は前記内燃機関の温度が前記機関状態判定温度未満であり前記排気浄化装置の温度が前記暖機判定温度未満であることを含む前記所定の暖機条件が成立した場合、前記内燃機関の温度が前記機関状態判定温度以上の場合、かつ、前記排気浄化装置の温度が前記暖機判定温度以上の場合よりも、前記ロータの回転数を上昇させるように前記回転数変更手段を制御するとともに、前記排気導入部に対する前記吸気吐出部の位置を近づけるように前記位相変更機構を制御してもよい(請求項2)。この形態によれば、所定の暖機条件が成立した場合、内燃機関の温度が所定の機関状態判定温度以上の場合、かつ、排気浄化装置の温度が所定の暖機判定温度以上の場合よりも、ロータの回転数を上昇させるとともに排気導入部に対する吸気吐出部の位置を近づけると、排気がロータを通過する時間を短縮することができる。そのため、排気温度の低下を抑制することができる。この排気により、排気浄化装置の温度の上昇を促進することができる。
【0009】
本発明の内燃機関の過給システムの一態様においては、前記回転数変更手段として、前記ロータを回転駆動する電動モータが設けられていてもよい(請求項3)。この形態によれば、容易にロータの回転数を変更できる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明の内燃機関の過給システムにおいては、所定の暖機条件が成立した場合、内燃機関の温度が所定の機関状態判定温度以上の場合よりも、ロータの回転数を上昇させるとともに排気導入部に対する吸気吐出部の位置を近づけると、排気の吸気側への吹き抜け、すなわち、排気の一部が再循環するのを抑制することができる。これにより、HCの排出量を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一形態に係る過給システムが組み込まれた内燃機関の要部を概略的に示す図。
【図2】図1の圧力波過給機を拡大して示す図。
【図3】圧力波過給機の吸気側端部を図2の矢印III方向から見た図。
【図4】圧力波過給機の排気側端部を図2の矢印IV方向から見た図。
【図5】圧力波過給機のバルブプレートを図2の矢印V方向から見た図。
【図6】制御装置が実行する制御を示すフローチャート。
【図7】セルから下流側区間に排気及び空気の両方が吐出されるように圧力波過給機が運転されているときの圧力波過給機の内部をロータの回転方向に沿って展開した図。
【図8】図7に示した状態からロータの回転数を上昇させるとともに、排気導入口に対する吸気吐出口の位置を近づけるようにバルブプレートを回転させた状態の圧力波過給機の内部をロータの回転方向に沿って展開した図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の一形態に係る過給システムが組み込まれた内燃機関の要部を概略的に示している。内燃機関(以下、エンジンと称することがある。)1は、車両に走行用動力源として搭載されるディーゼルエンジンであり、複数(図1では4つ)の気筒2aを有する機関本体2を備えている。各気筒2aには、吸気通路3及び排気通路4がそれぞれ接続されている。また、エンジン1には、エンジン1の回転速度を変速する変速装置5が連結されている。
【0013】
吸気通路3には、吸気の流れ方向上流側から順に、吸気を濾過するためのエアクリーナ6と、圧力波過給機20の吸気側端部20aと、吸気を冷却するためのインタークーラ7と、吸気通路3を通過する吸気の流量を調整するためのスロットルバルブ8と、吸気マニホールド9と、が設けられている。
【0014】
排気通路4の途中には、圧力波過給機20の排気側端部20bが設けられている。排気通路4は、排気通路4のうち圧力波過給機20よりも排気の流れ方向上流側の区間としての第1排気通路4aと、排気通路4のうち圧力波過給機20よりも排気の流れ方向下流側の区間としての第2排気通路4bと、を備えている。第1排気通路4aには、排気マニホールド10が設けられている。第2排気通路4bには、排気を浄化する排気浄化装置11が設けられている。また、第1排気通路4aには、排気の一部を吸気通路3にEGRガスとして導くためのEGR通路12が接続されている。EGR通路12の途中には、EGRガスの流量を調整するためのEGR弁12aが設けられている。
【0015】
圧力波過給機20について説明する。図2に拡大して示したように圧力波過給機20は、吸気側端部20aが吸気通路3に接続されるとともに排気側端部20bが排気通路4に接続された円筒状のケース21を備えている。ケース21内には、ケース21に軸線Ax回りに回転自在に支持されたロータ22が設けられている。なお、図2では便宜上ケース21とロータ22との間の隙間を拡大して示している。実際には、この隙間は殆ど無い。ロータ22には、その一端から他端まで軸線Ax方向に延びる複数の隔壁22aが設けられている。ケース21内は、これら隔壁22aにて軸線Ax方向に貫通する複数のセル23に区分されている。
【0016】
図3は、ケース21の吸気側端部21aを図2の矢印III方向から見た図である。この図3に示したように吸気側端部21aには、2個の吸気導入口24及び2個の吸気吐出口25が設けられている。この図3に示したように吸気導入口24と吸気吐出口25とはケース21の一方の端面に周方向に交互に並ぶように設けられている。また、2個の吸気導入口24は、軸線Axを挟んで対称に設けられている。同様に2個の吸気吐出口25も軸線Axを挟んで対称に設けられている。各吸気導入口24には、吸気通路3のうち圧力波過給機20よりも吸気の流れ方向上流側の部分(以下、上流側区間と称することがある。)3aがそれぞれ接続されている。一方、各吸気吐出口25には、吸気通路3のうち圧力波過給機20よりも吸気の流れ方向下流側の部分(以下、下流側区間と称することがある。)3bがそれぞれ接続されている。
【0017】
図4は、ケース21の排気側端部21bを図2の矢印IV方向から見た図である。この図4に示したように排気側端部21bには、排気導入部としての2個の排気導入口26及び排気吐出部としての2個の排気吐出口27が設けられている。この図4に示したように排気導入口26と排気吐出口27とは周方向に交互に並ぶように設けられている。また、この図4に示したように2個の排気導入口26は、軸線Axを挟んで対称に設けられている。同様に2個の排気吐出口27も軸線Axを挟んで対称に設けられている。そして、排気導入口26はセル23を介して吸気吐出口25と接続可能な位置に配置され、排気吐出口27はセル23を介して吸気導入口24と接続可能な位置に配置されている。各排気導入口26には、第1排気通路4aがそれぞれ接続されている。一方、各排気吐出口27には、第2排気通路4bがそれぞれ接続されている。
【0018】
図2に示したようにケース21内には、バルブプレート28が設けられている。この図2に示したようにバルブプレート28は、ケース21の吸気側端部21aとロータ22との間に挟まれるように設けられている。なお、図2では便宜上バルブプレート28とケース21及びロータ22との間の隙間を拡大して示している。実際には、これらの隙間は殆ど無い。バルブプレート28は、軸線Ax回りに回転自在にケース21に支持されている。図5は、バルブプレート28を図2の矢印V方向から見た図である。この図5に示したようにバルブプレート28には、ケース21の吸気側端部21aと同様に2個の吸気導入口28a及び2個の吸気吐出口28bが設けられている。これら吸気導入口28a及び吸気吐出口28bは、周方向に交互に並ぶように設けられている。また、2個の吸気導入口28a及び2個の吸気吐出口28bは、それぞれ軸線Axを挟んで対称に設けられている。バルブプレート28は、吸気導入口28aがケース21の吸気導入口24と、吸気吐出口28bがケース21の吸気吐出口25とそれぞれ重なるようにケース21内に設けられている。バルブプレート28の吸気導入口28aは、ケース21の吸気導入口24よりも周方向の長さが短い。同様にバルブプレート28の吸気吐出口28bも、ケース21の吸気吐出口25より周方向の長さが短い。そのため、バルブプレート28が回転しても所定角度以内であれば吸気導入口24、28a同士、及び吸気吐出口25、28b同士はそれぞれ重なった状態に維持される。この圧力波過給機20では、ケース21の吸気導入口24及びバルブプレート28の吸気導入口28aの両方を介してガスがセル23内に導入される。そのため、これら両方が本発明の吸気導入部に対応する。また、セル23内のガスは、ケース21の吸気吐出口25及びバルブプレート28の吸気吐出口28bの両方を介して排出される。そのため、これら両方が本発明の吸気吐出部に対応する。
【0019】
図2に示したように圧力波過給機20は、ロータ22を回転駆動する回転数変更手段としての第1モータ29と、ケース21の吸気側端部21aに対するバルブプレート28の位置を調整するための第2モータ30とを備えている。第1モータ29は公知の電動モータである。この第1モータ29は、各セル23が吸気導入口28a、排気導入口26、吸気吐出口28b、排気吐出口27の順に接続されるようにロータ22を所定方向に回転駆動する。第2モータ30は、バルブプレート28を右回り及び左回りにそれぞれ回転駆動し、これにより排気導入口26に対する吸気吐出口28bの位置を変更する。第2モータ30としては、例えば公知のステッピングモータが使用される。このように排気導入口26に対する吸気吐出口28bの位置を変更することにより、バルブプレート28及び第2モータ30が本発明の位相変更機構に対応する。
【0020】
エンジン1の動作は、エンジン1の運転状態を制御するコンピュータとして構成された制御手段としての制御装置40によって制御される。図示は省略したが、制御装置40は、マイクロプロセッサ及びその動作に必要なRAM、ROM等の周辺機器を備えている。制御装置40には、エンジン1の冷却水の温度(冷却水温)に対応する信号を出力する冷却水温センサ50、排気浄化装置11の温度(床温)に対応する信号を出力する床温センサ51、車両1の車速に応じた信号を出力する車速センサ52、及びアクセル開度に応じた信号を出力するアクセル開度センサ53等が接続されている。この他にも制御装置40には各種のセンサ等の周辺機器が接続されているが、それらの図示は省略した。制御装置40は、冷却水温センサ50及び床温センサ51等の各種のセンサから取得した数値により、エンジン1の運転状態を取得する。
【0021】
図6のフローチャートは、制御装置が実行する制御を示している。以下、図6のフローチャートについて説明する。図6のフローチャートは、所定の周期で繰り返し実行する。図6を実行することにより、制御装置40が本発明の制御手段として機能する。
【0022】
制御装置40は、運転の開始とともに、ステップS1の「start」から図6のフローチャートの制御を開始する。
【0023】
次に、ステップS2に進み、制御装置40は、エンジン1の運転状態を取得する。冷却水温センサ50及び床温センサ51のそれぞれから出力された信号から、冷却水温及び床温を取得することにより、エンジン1の運転状態を取得する。なお、冷却水温が本発明のエンジン1の温度に対応し、床温が本発明の排気浄化装置11の温度に対応する。
【0024】
続いてステップS3に進み、暖機条件が成立したか否かを判定する。暖機条件とは、ステップS2で取得した冷却水温が所定の機関状態判定温度未満であること、ステップS2で取得した床温が所定の暖機判定温度未満であること、又はステップS2で取得した冷却水温が所定の機関状態判定温度未満でありステップS2で取得した冷却水温が所定の暖機判定温度未満であることを含む条件である。この暖機条件が、本発明の所定の暖機条件に対応する。所定の機関状態判定温度とは、エンジン1の暖機が完了したときの温度、例えば冷却水温が上昇し始める温度である。所定の暖機判定温度とは、排気浄化装置11の暖機が完了したときの温度、例えば排気浄化性能を発揮する触媒活性温度である。ステップS2で取得した冷却水温が所定の機関状態判定未満の場合には、エンジン1の暖機が不十分ということになる。ステップS2で取得した床温が所定の暖機判定温度未満の場合、排気浄化装置11の暖機が不十分ということになる。ステップS2で取得した冷却水温とステップS2で取得した床温との両方がそれらの所定の温度未満の場合には、エンジン1と排気浄化装置11との両方の暖機が不十分ということになる。まず、制御装置40は、ステップS2で取得した冷却水温(Tw)が、所定の機関状態判定温度(Twa)未満か否かを判定する。次に、制御装置40は、ステップS2で取得した床温(Tc)が、所定の暖機判定温度(Tca)未満か否かを判定する。冷却水温(Tw)が所定の機関状態判定温度(Twa)未満の場合、床温(Tc)が所定の暖機判定温度(Tca)未満の場合、又は冷却水温(Tw)と床温(Tc)との両方が所定のそれらの温度未満の場合には、暖機条件が成立したことになり、ステップS4に進む。冷却水温(Tw)が所定の機関状態判定温度(Twa)以上の場合、かつ、床温(Tc)が所定の暖機判定温度(Tca)以上の場合には、暖機条件が不成立ということになり、ステップS5に進む。
【0025】
先に、ステップS5の通常制御について説明する。ステップS5は、上述したように冷却水温(Tw)が所定の機関状態判定温度(Twa)以上の場合、かつ、床温(Tc)が所定の暖機判定温度(Tca)以上の場合、すなわちエンジン1及び排気浄化装置11の暖機が完了した場合である。図7は、セル23から下流側区間3bに排気及び空気の両方が吐出されるように圧力波過給機20が運転されているときの圧力波過給機20の内部をロータ22の回転方向に沿って展開した図である。すなわち、この図7は排気の再循環を行っているときの圧力波過給機20を示している。以下、この制御を、通常制御と称することがある。なお、各セル23は、矢印Fで示したようにこの図7の上から下に向かって移動する。この図7において一番上に示したセル23には空気が充填されている。この状態でセル23の排気端が排気導入口26と接続されると、セル23内に排気が導入される。そして、排気はセル23内を排気端から吸気端に移動する。この図7では、破線Eが排気と空気との境界の移動を示している。この図7に示したように、通常制御では、セル23の吸気端と吸気吐出口28bとの接続が遮断されるよりも前に排気と空気との境界がセル23の吸気端に到達するようにロータ22の回転数及びバルブプレート28の位置が、それぞれの第1モータ29及び第2モータ30を介して制御装置40によって制御される。なお、図示は省略したがセル23は、この後排気吐出口27と接続される。セル23内の排気はこのときに第2排気通路4bに排出される。その後、セル23は吸気導入口28aと接続される。そして、これによりセル23内に吸気が充填される。以降、これらの繰り返しによりエンジン1の過給が行われる。なお、この際の第1モータ29の回転数は、公知の圧力波過給機と同様にエンジン1の回転数に応じて設定すればよい。その後、今回の制御を終了する。
【0026】
一方、図6に戻って、ステップS4の暖機制御について説明する。ステップS4は、上述したように冷却水温(Tw)が所定の機関状態判定温度(Twa)未満の場合、床温(Tc)が所定の暖機判定温度(Tca)未満の場合、又は冷却水温(Tw)と床温(Tc)との両方が所定のそれらの温度未満の場合、すなわちエンジン1、排気浄化装置11、又はエンジン1と排気浄化装置11との両方とも、暖機が不十分な場合である。図8は、通常制御のときよりも、ロータ22の回転数を上昇させるとともに、排気導入口26に対する吸気吐出口28bの位置を近づけるようにバルブプレート28を矢印Fvで示したようにロータ22の回転方向と逆方向に回転させた状態の圧力波過給機20の内部をロータ22の回転方向に沿って展開した図である。以下、この制御を、暖機制御と称することがある。なお、この図8において図7と共通の部分には同一の符号を付して説明を省略する。ロータ22の回転数の上昇、及びバルブプレート28を矢印Fvで示したようにロータ22の回転方向と逆方向への回転は、それぞれの第1モータ29及び第2モータ30を介して制御装置40によって制御される。排気導入口26に対する吸気吐出口28bの位置を近づけるようにバルブプレート28を矢印Fvで示したようにロータ22の回転方向と逆方向に回転させたことにより、排気導入口26と吸気吐出口28bとの位相差が、通常制御よりも小さくなる。この図8に示したように、暖機制御の場合、通常制御の場合よりも、排気の一部が再循環される量が少なくなる。その後、今回の制御を終了する。
【0027】
以上に説明したように、本発明の内燃機関の過給システムによれば、ロータ22の回転数を変更することができるので、通常制御の場合及び暖機制御の場合において、それぞれロータ22の回転数を調整することができる。また、本発明の内燃機関の過給システムによれば、排気導入口26に対する吸気吐出口28bの位置を変更することができるので、排気導入口26に対する吸気吐出口28bの位置をそれぞれ調整することができる。そのため、暖機制御の場合、通常制御の場合よりも、ロータ22の回転数を上昇させるとともに排気導入口26に対する吸気吐出口28bの位置を近づけるようにそれぞれの第1モータ29及び第2モータ30を介して制御装置40によって調整すると、排気の吸気側への吹き抜け、すなわち、排気の一部が再循環するのを抑制することができる。これにより、HCの排出量を抑制することができる。また、ロータ22の回転数を上昇させるので、排気がロータ22を通過する時間を短縮することができる。そのため、排気の温度の低下を抑制することができる。この排気により、床温の上昇を促進することができる。
【0028】
本発明は、上述した形態に限定されることなく、種々の形態にて実施することができる。上述した形態では、吸気吐出口を軸線回りに回転させて排気導入口に対する吸気吐出口の位置を変更したが、吸気吐出口の代わりに排気導入口を軸線回りに回転させてこれらの相対位置を変更してもよい。この場合は、ケースの排気側端部とロータとの間にバルブプレートを設ければよい。また、吸気吐出口及び排気導入口の両方の位置を軸線回りに回転させてこれらの相対位置を変更可能としてもよい。この場合はロータの両側にバルブプレートを設ければよい。
【0029】
上述した形態では電動モータでロータを回転駆動したが、内燃機関のクランク軸の回転を利用してロータを回転駆動してもよい。この場合は、クランク軸からロータまでの動力伝達経路中に無段変速機等の変速機構を設け、これにてロータの回転数を変更すればよい。この場合は変速機構が本発明の回転数変更手段に相当する。
【0030】
上述した形態では、本発明のエンジン1の温度を冷却水温とし、本発明の排気浄化装置11の温度を床温としたが、これらに限られない。
【0031】
上述した形態では、図6のステップS3の暖機条件を、ステップS2で取得した冷却水温が所定の機関状態判定温度未満であること、ステップS2で取得した床温が所定の暖機判定温度未満であること、又はステップS2で取得した冷却水温が所定の機関状態判定温度未満でありステップS2で取得した冷却水温が所定の暖機判定温度未満であること含むとしたが、この暖機条件を、ステップS2で取得した冷却水温が所定の機関状態判定温度未満であることを含むとしてもよい。この場合の図6のフローチャートのステップS2では、制御装置40は、冷却水温センサ50から出力された信号から、冷却水温を取得することにより、エンジン1の運転状態を取得すればよい。また、ステップS3における暖機条件として、制御装置40は、ステップS2で取得した冷却水温(Tw)が、所定の機関状態判定温度(Twa)未満か否かを判定すればよい。すなわち、冷却水温(Tw)が所定の機関状態判定温度(Twa)未満である場合には、暖機条件が成立したことになり、ステップS4に進む。また、冷却水温(Tw)が所定の機関状態判定温度(Twa)以上の場合には、暖機条件が不成立ということになり、ステップS5に進む。そして、ステップS4及びステップS5における制御は、上述した形態と同様でよい。なお、この場合のフローチャートを実行することにより、制御装置40が本発明の制御手段として機能する。これにより、冷却水温が所定の機関状態判定温度以下の場合(暖機条件成立の場合)に、通常制御の場合よりも、ロータ22の回転数を上昇させるとともに排気導入口26に対する吸気吐出口28bの位置を近づけるようにそれぞれの第1モータ29及び第2モータ30を介して制御装置40によって調整すると、排気の吸気側への吹き抜け、すなわち、排気の一部が再循環するのを抑制することができる。これにより、HCの排出量を抑制することができる。
【0032】
また、本発明の過給システムが適用される内燃機関はディーゼルエンジンに限定されない。気筒内に導入した燃料混合気に点火プラグで着火する火花点火式の内燃機関に適用してもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 エンジン(内燃機関)
2 機関本体
3 吸気通路
3a 上流側区間(吸気通路のうち圧力波過給機よりも吸気の流れ方向上流側の部分)
3b 下流側区間(吸気通路のうち圧力波過給機よりも吸気の流れ方向下流側の部分)
4 排気通路
4a 第1排気通路(排気通路のうち圧力波過給機よりも排気の流れ方向上流側の区間)
4b 第2排気通路(排気通路のうち圧力波過給機よりも排気の流れ方向下流側の区間)
11 排気浄化装置
20 圧力波過給機(過給システム)
22 ロータ
24 吸気導入口(吸気導入部)
25 各吸気吐出口(吸気吐出部)
26 排気導入口(排気導入部)
27 排気吐出口(排気吐出部)
28 バルブプレート(位相変更機構)
28a 吸気導入口(吸気導入部)
28b 吸気吐出口(吸気吐出部)
29 第1モータ(回転数変更手段)
30 第2モータ(位相変更機構)
40 制御装置(制御装置)
50 冷却水温センサ
51 床温センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転可能なようにケース内に設けられたロータと、前記ケースの前記軸線方向の一方の端部から他方の端部まで貫通するように前記ケース内に設けられて前記ロータと一体に回転する複数のセルと、前記ケースの前記一方の端部に設けられて内燃機関の吸気通路と接続される吸気吐出部と、前記ケースの前記一方の端部に設けられた吸気導入部と、前記ケースの前記他方の端部に設けられて前記内燃機関の第1排気通路と接続される排気導入部と、前記ケースの前記他方の端部に設けられた排気吐出部と、を有する圧力波過給機を備えた内燃機関の過給システムであって、
前記ロータの回転数を変更可能な回転数変更手段と、
前記排気導入部及び前記吸気吐出部の少なくともいずれか一方を前記軸線回りに回転させて前記排気導入部に対する前記吸気吐出部の位置を変更可能な位相変更機構と、
前記内燃機関の温度が所定の機関状態判定温度未満であることを含む所定の暖機条件が成立した場合、前記内燃機関の温度が前記機関状態判定温度以上の場合よりも、前記ロータの回転数を上昇させるように前記回転数変更手段を制御するとともに、前記排気導入部に対する前記吸気吐出部の位置を近づけるように前記位相変更機構を制御する制御手段と、
を備えた内燃機関の過給システム。
【請求項2】
前記排気吐出部には、排気を浄化する排気浄化装置が設けられた第2排気通路が接続され、
前記制御手段は、前記内燃機関の温度が前記機関状態判定温度未満であること、前記排気浄化装置の温度が所定の暖機判定温度未満であること、又は前記内燃機関の温度が前記機関状態判定温度未満であり前記排気浄化装置の温度が前記暖機判定温度未満であることを含む前記所定の暖機条件が成立した場合、前記内燃機関の温度が前記機関状態判定温度以上の場合、かつ、前記排気浄化装置の温度が前記暖機判定温度以上の場合よりも、前記ロータの回転数を上昇させるように前記回転数変更手段を制御するとともに、前記排気導入部に対する前記吸気吐出部の位置を近づけるように前記位相変更機構を制御する請求項1に記載の内燃機関の過給システム。
【請求項3】
前記回転数変更手段として、前記ロータを回転駆動する電動モータが設けられている請求項1又は2に記載の内燃機関の過給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−153542(P2011−153542A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14463(P2010−14463)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】