説明

内燃機関

【課題】低燃費・低有害ガス・快適性をより高い次元で成立することのできる内燃機関を提供する。
【解決手段】内燃機関1は、燃焼室12に隣接して設けられた発熱室41と、発熱室41と燃焼室12との間を連通状態および遮断状態のいずれともすることができる発熱室弁42と、燃焼室12に導入された気体の熱を回収して、その回収した熱を暖機に利用する熱回収管43を備える。さらに、その発熱室41に、発熱室点火プラグ45を備え、且つ、発熱室点火プラグ45と熱回収管43との間に触媒部46を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば冷間始動時に、早期暖機に有効な内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関は、燃料(主に液体)の化学反応エネルギ(熱エネルギ)を運動エネルギーとして取り出すべく、およそ100年前に発明された技術である。こうした内燃機関では、燃料としてガソリンや軽油等が使用され、燃料としてガソリンが使用される場合には、内燃機関のサイクルは公知のオットーサイクルとなる。そして、この100年間、オットーサイクル中の圧縮行程から燃焼行程に至るPV線図上の正の仕事部分(後述する図8における斜線部)を広げる技術が多数発明されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−296447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただし、上記正の仕事部分を広げる従来技術には、下記課題(1)〜(3)があった。
(1)冷間始動時において、内燃機関本体・冷却水・潤滑オイルの温度が低いことから、内燃機関の摩擦力(例えばピストンとシリンダとの摺接部等)が大きく、燃料の燃焼が不安定となり、燃費が悪く、有害ガスの排出量が多い。
(2)内燃機関が自動車に搭載される場合、冷間始動時の暖房が遅い。
(3)例えばアイドルストップや、内燃機関に加えて駆動力源としてモータを用いるハイブリッド車両等の低燃費技術は機関暖機後に作動するため、低燃費技術の効果が機関暖機前に十分に発揮されない。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、低燃費・低有害ガス
・快適性をより高い次元で成立することのできる内燃機関を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
こうした目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、シリンダと、シリンダ内を往復動するピストンと、そのピストンに連結されて、ピストンの往復動による運動エネルギーを外部に出力する動力出力部と、シリンダおよびピストンによって構成され、燃料と空気との混合気が燃焼する燃焼室と、その燃焼室に設けられ、混合気を燃焼させるための火花を発生させる燃焼室点火プラグと、燃焼室へ空気を導入する吸気ポートと燃焼室との間に設けられた吸気弁と、燃焼室で混合気が燃焼して生じる燃焼ガスを排出する排気ポートと燃焼室との間に設けられた排気弁とを備えた内燃機関において、燃焼室に隣接して設けられた発熱室と、発熱室と燃焼室との間を連通状態および遮断状態のいずれともすることができる発熱室弁と、発熱室に導入された気体の熱を回収して、その回収した熱を暖機に利用する発熱室熱回収部とを備え、さらに、燃焼ガスに含まれているハイドロカーボンを酸化させるHC浄化部と、そのHC浄化部に隣接して設けられ、HC浄化部でハイドロカーボンが酸化されることにより発生する熱と機関冷却水の熱との熱交換を行うことで、HC浄化部で発生した熱を回収する浄化部熱回収部とを備えることを特徴とする。
【0007】
上記請求項1に記載の内燃機関は、燃焼室に隣接する発熱室と発熱室弁とを有しているので、発熱室弁を開けて発熱室と燃焼室との間を連通状態にした場合には、通常のオットーサイクルの圧縮を極めて低い状態として、混合気を燃焼させた後の燃焼ガスを発熱室に導入して発熱室熱回収部にて熱を回収することが可能となる。そして、圧縮が極めて低い状態で熱を回収することから、燃焼によって発生する熱エネルギーをほとんど動力に変換しないことになるので、熱を取り出す効率が向上する。その結果、暖機時間を短縮することができる。
【0008】
さらに、本発明ではHC浄化部と浄化部熱回収部を備えており、これらによっても熱回収効率が向上する。具体的には、燃焼室で混合気を燃焼させた場合、周知のように、混合気を完全に燃焼させることはできず、燃焼ガスには未燃焼のハイドロカーボンが含まれる。そこで、本発明では、燃焼ガスに含まれているハイドロカーボンを酸化させるHC浄化部を備える。このHC浄化部により燃焼ガスに含まれているハイドロカーボンが酸化されると、その酸化の際にも熱が発生する。この熱が、HC浄化部に隣接して設けられている浄化部熱回収部によって回収される。よって、熱回収効率がさらに向上するのである。
【0009】
請求項2に係る発明では、HC浄化部は発熱室に設けられている。HC浄化部が発熱室に設けられている場合、HC浄化部で発生した熱を発熱室熱回収部で回収することができる。そこで、請求項2に係る発明では、発熱室熱回収部が浄化部熱回収部としても機能する。このようにすれば、2つの熱回収部を別々に設けるよりも構成が簡単になる。
【0010】
請求項3に係る発明では、発熱室に、発熱室内の混合気を燃焼させるための発熱室点火プラグが配置されており、HC浄化部は、発熱室内において、発熱室点火プラグよりも発熱室弁から遠い位置に配置されており、発熱室熱回収部は、HC浄化部よりもさらに発熱室弁から遠い位置において熱を回収する。このようにすれば、発熱室熱回収部は、発熱室点火プラグが発生させた火花でガスが燃焼することによって発生した熱、および、HC浄化部でハイドロカーボンが酸化されることで発生した熱をまとめて回収することができるので、より多くの熱を回収することができる。
【0011】
請求項4に係る発明では、HC浄化部は前記排気ポートに設けられ、浄化部熱回収部は、HC浄化部よりも燃焼ガス流路の下流においてそのHC浄化部に隣接して設けられている。排気ポートを流れる燃焼ガスにも未燃焼のハイドロカーボンが含まれるので、このように、HC浄化部および浄化部熱回収部を排気ポートに配置しても、未燃焼のハイドロカーボンを酸化させて熱を回収することができる。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項3に係る発明および請求項4に係る発明を組み合わせたものである。すなわち、請求項5に係る発明は、請求項3において、HC浄化部は、発熱室に設けられていることに加えて、排気ポートにも設けられており、発熱室熱回収部が、発熱室に設けられているHC浄化部に対応する浄化部熱回収部として機能し、排気ポートに設けられているHC浄化部に隣接して、そのHC浄化部で発生した熱を回収する浄化部熱回収部が設けられている。このようにすれば、発熱室および排気ポートの両方において熱を回収することができる。また、一般的な内燃機関と同様に、シリンダブロック内に機関冷却水の流路を設ければ、発熱室でも燃焼熱を回収することができる。よって、内燃機関の広い範囲で熱を回収することができ、また、広い範囲で熱を回収することができることから、内燃機関の1サイクルのうちの比較的長い間にわたり効率よく熱を回収することができる。
【0013】
請求項6に係る発明は、本発明の内燃機関は、当該内燃機関以外に駆動力源を備えている車両に、駆動力源として搭載される。内燃機関以外に駆動力源としては例えばモータがあり、内燃機関以外の駆動力源が車両に搭載される場合、車両始動時に内燃機関以外の駆動力源が利用されて内燃機関の暖機が遅れる可能性があり、その結果、暖機後に作動する種々の低燃費制御の作動が遅れる可能性がある。従って、早期に暖機を行うことができる本発明を適用することが特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る内燃機関の一実施形態について、その全体構造を模式的に示す斜視図である。
【図2】本実施形態の内燃機関について、その平面構造を模式的に示す平面図である。
【図3】本実施形態の内燃機関について、その側面構造を模式的に示す側面図である。
【図4】本実施形態の内燃機関を制御する制御装置について、その構成例を示すブロック図である。
【図5】機関出力モードが選択された場合において、燃焼室圧力および発熱室圧力等の推移を示す作動図である。
【図6】熱回収モードが選択された場合において、燃焼室圧力および発熱室圧力等の推移を示す作動図である。
【図7】本実施形態について、熱回収モードが選択された場合におけるピストン、吸気弁、排気弁、発熱室弁等の状態の推移を示す作動図である。
【図8】本実施形態について、機関出力モードが選択された場合のPV線図である。
【図9】本実施形態について、熱回収モードが選択された場合のPV線図である。
【図10】本実施形態において、(a)は機関出力モードが選択された場合における各損失割合を示す模式図であり、(b)は熱回収モードが選択された場合における各損失割合を示す模式図である。
【図11】本実施形態の変形例であって、排気ポート13にも、熱回収管43および触媒部46が設けられている例である。
【図12】本実施形態のその他の変形例について、全体構造を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態の内燃機関1について、図1〜図11を参照しつつ説明する。図1は内燃機関1の全体構造を模式的に示す斜視図である。図2は内燃機関1の平面構造を模式的に示す平面図であり、図3は内燃機関1の側面構造を模式的に示す側面図である。はじめに、これら図1〜図3を参照して、内燃機関1の構造について説明する。なお、本実施形態の内燃機関1は、図示しない車両に搭載されるものである。
【0016】
内燃機関1は複数のシリンダを有しており、各シリンダは、従来の内燃機関において行われている、いわゆるオットーサイクル(後述する機関出力モード)を実現することができる構成を備えている。ただし、内燃機関1を構成する各シリンダは、後述する発熱室41、発熱室弁42、バルブ駆動システム、および熱回収管43を有している点では従来のシリンダと異なっており、オットーサイクルとは異なる新サイクル(後述する熱回収モード)も実現可能な機関として構成されている。
【0017】
以下、詳しく説明する。内燃機関1は、機関ヘッド10および機関ブロック20を有して構成されている(図3)。機関ヘッド10の各シリンダには、外部から吸入された空気の通路であり、この空気を燃焼室12へ導入する吸気ポート11と、この吸気ポート11によって導入される空気と燃料との混合気が燃焼される燃焼室12(の一部)と、混合気が燃焼した燃焼ガスが排出される排気ポート13とが形成されている。なお、燃焼室12は、機関ヘッド10および機関ブロック20の組み付け後に、機関ブロック20に形成されたシリンダの側壁と、このシリンダ内を往復動可能に配設されたピストン30の上面とによって区画形成される。
【0018】
ここで、吸気ポート11は、図示しない吸気通路に接続されている。この吸気通路には、吸気通路内の空気の温度を検出する吸気温センサや、吸気ポート11に吸入される空気量を検出するエアーフローメータが配設されている。また、排気ポート13は、図示しない排気通路に接続されている。この排気通路には、その内部を流れる排気の酸素含有量に基づいて、燃焼室12での燃焼に供された混合気の空燃比を検出する空燃比センサが配設されているとともに、その下流側に排気を浄化する触媒装置が配設されている。
【0019】
機関ヘッド10の吸気ポート11には、外部から吸入された空気に対し燃料を噴射供給する燃料噴射弁14が配設されている。燃料噴射弁14によって燃料が噴射供給されるタイミングや噴射供給される燃料量については、上記エアーフローメータの出力値、上記吸気温センサの出力値、上記空燃比センサの出力値、後述する水温センサの出力値、後述する運転モードに関する情報(機関出力モード及び熱回収モードのいずれのモードが選択されたかについての情報)に基づいて、後述する制御装置50によって決定される。なお、本実施形態では、燃料噴射弁14を吸気ポート11に配設して吸気ポート11内の吸入空気に対して燃料を噴射供給したが、機関ブロック20のシリンダの側壁等に燃料噴射弁14を配設して燃焼室12内に燃料を直接供給してもよい。
【0020】
機関ヘッド10の燃焼室12には、吸気ポート11から導入された混合気を燃焼させるために火花を発生させる燃焼室点火プラグ15が配設されている。この燃焼室点火プラグ15によって混合気を火花点火するタイミングは制御装置50によって決定される。
【0021】
機関ヘッド10の吸気ポート11と燃焼室12との間には、吸気弁17が配設されている。吸気弁17は、例えば直動式やロッカーアーム式等の公知のバルブ駆動システムによって駆動され、吸気ポート11と燃焼室12との間を連通状態および遮断状態のいずれともすることができる。
【0022】
機関ヘッド10の燃焼室12と排気ポート13の間には、排気弁18が配設されている。排気弁18も、吸気弁17と同様に、例えば直動式やロッカーアーム式等の公知のバルブ駆動システムによって駆動され、燃焼室12と排気ポート13との間を連通状態および遮断状態のいずれともすることができる。
【0023】
機関ブロック20には、機関冷却用の冷却水の流路であるウォータジャケット21が形成されており、このウォータジャケット21には、その内部を流れる冷却水の温度を検出する図示しない水温センサが配設されている。
【0024】
ピストン30は、シリンダ内を往復動可能に構成されており、図示しないクランクシャフトに連結されている。このクランクシャフトによって、ピストン30の往復動が回転運動に変換され、運動エネルギーが内燃機関1の外部に出力される。したがって、クランクシャフトが特許請求の範囲に記載の動力出力部に相当する。
【0025】
ピストン30は、内燃機関1が機関出力モードにて運転される場合には、燃焼室12の混合気の燃焼によってシリンダ内を往復動する一方、内燃機関1が熱回収モードにて運転される場合には、例えばスタータモータによってシリンダ内を往復動する。なお、本実施形態では、ピストン30は、内燃機関1が熱回収モードにて運転される場合には、スタータモータによってシリンダ内を往復動することとしたが、スタータモータに限らない。ピストン30を駆動する専用のモータを設け、この専用のモータによってシリンダ内を往復動することとしてもよい。あるいは、内燃機関1に加えて動力源としてモータを用いるいわゆるハイブリッド車両に搭載される場合には、当該ハイブリッド車両の動力源として搭載されるモータであるハイブリッドモータによってシリンダ内を往復動することとしてもよい。またあるいは、複数のシリンダのうち燃焼室12を設けたシリンダ及び燃焼室12を設けていないシリンダが含まれる場合には、(燃焼室12を設けたシリンダの)ピストン30は、燃焼室12を設けていないシリンダのクランクシャフトによって、(燃焼室12を設けた)シリンダ内を往復動すること、すなわち自立運転することとしてもよい。
【0026】
機関ヘッド10には、上記燃焼室12および上記吸気ポート11に隣接して発熱室41が形成されているとともに発熱室弁42が配設されている。発熱室弁42は、上記吸気弁17および排気弁18と同様に、例えば直動式やロッカーアーム式等の公知のバルブ駆動システムによって駆動され、燃焼室12と発熱室41との間を連通状態および遮断状態のいずれともすることができる。なお、上記発熱室41の容積については、極めて低い圧縮の実現と内燃機関1へ搭載することを考慮して、シリンダ容積の「0.5倍」〜「2.0倍」に設定することが望ましい。
【0027】
上記発熱室41は、発熱室弁42が設けられている側が開口し他端が閉じており、軸方向が径方向よりも長い長筒形状を有している。また、この発熱室41は、その軸が吸気ポート11の軸と平行となるように配置されている。この発熱室41の閉じている側の端には、熱回収水の流路である熱回収管43が配設されている。この熱回収管43は特許請求の範囲の発熱室熱回収部として機能するとともに、浄化部熱回収部としても機能するものである。この熱回収管43は、流入側熱回収管43a、熱交換部43b、流出側熱回収管43cから構成されている。このうち、流入側熱回収管43aおよび流出側熱回収管43cは、発熱室41の閉じている側の端壁を貫通することで、発熱室41の内外を連通させている。また、これら流入側熱回収管43aおよび流出側熱回収管43cは上記ウォータジャケット21に接続されている。一方、熱交換部43bは発熱室41内に配置されて螺旋状に形成されている。本実施形態では、熱交換部43bが発熱室41において占める範囲は、発熱室41の軸方向において、その発熱室41の軸方向の長さの半分よりもやや短い程度となっている。
【0028】
また、発熱室41には、発熱室弁42に比較的近い位置に、発熱室点火プラグ45が配置されている。より詳しくは、発熱室点火プラグ45は、発熱室41の筒壁の発熱室弁42に比較的近い位置においてその筒壁を略垂直に貫通し、先端(火花発生部)が発熱室内に位置するように配置されている。発熱室41には、後述するように、燃焼室12で燃焼した燃焼ガスが導入されるが、燃焼ガスには未燃焼のハイドロカーボンが含まれている。発熱室点火プラグ45が発生させる火花により、燃焼ガスに含まれている未燃焼のハイドロカーボンは、一部または大部分が燃焼することになる。
【0029】
しかし、発熱室点火プラグ45からの火花によっても一部のハイドロカーボンは未燃焼のまま残る。この未燃焼のハイドロカーボンを酸化させるために、発熱室41には、熱回収管43に隣接して触媒部46が配置されている。この触媒部46は、たとえば、多孔質セラミックスなどの担体に白金等の触媒物質が担持された構造であり、触媒としては、排ガス浄化に用いられる公知の種々の触媒を用いることができる。この触媒部46は特許請求の範囲のHC浄化部に相当する。
【0030】
なお、上述のように、触媒部46は熱回収管43に隣接して配置されているが、ここでの隣接とは、触媒部46において発生する熱が効率的に熱回収管43に伝達する程度の距離であり、要求される熱回収効率等により適宜設定される。本実施形態のように、発熱室41に触媒部46が設けられる場合、発熱室46の内部であれば、どこであっても、触媒部46は熱回収管46に隣接していると言える。また、本実施形態の触媒部46の外形形状は、発熱室41を軸方向に塞ぐような円盤形状である。ただし、必ずしもこの形状、大きさである必要はなく、熱回収管43と発熱室点火プラグ45とが連通するような大きさでもよい。
【0031】
熱回収管43は、燃焼室12における燃焼により温度上昇し、次に発熱室41内にて発熱室点火プラグ45の火花により燃焼されることにより温度上昇し、触媒部46により酸化させられることによりさらに温度上昇した燃焼ガスから熱を回収する。例えば内燃機関1の冷間始動時等、内燃機関1を暖機する必要がある場合には、低温の熱回収水は、ウォータジャケット21から流入側熱回収管43a内を移動して熱交換部43bに流入し、この熱交換部43bにおいて発熱室41に導入された燃焼ガス(気体)との間で熱交換を行って(熱を回収して)高温となり、流出側熱回収管43c内を移動してウォータジャケット21に流出する。そして、内燃機関1は、ウォータジャケット21内の高温となった冷却水によって暖機される。このようにして、熱回収水は内燃機関1の暖機に利用される。なお、本実施形態では、熱交換部43bは螺旋状に形成されていたがこれに限らず、発熱室41内で排気との間で熱交換が可能であれば、その形状は任意である。また、熱回収管43として公知の熱交換器を採用することができる。
【0032】
図4に、上述の構造を有する内燃機関1を制御する制御装置50の構成例を示す。この制御装置50は、マイクロコンピュータを主体として構成され、内蔵されたROMに記憶された各種の制御プログラムを実行する。以下では、制御装置50は、モード選択部51、機関出力制御実行部52、および熱回収制御実行部53を備えるものとして説明する。
【0033】
制御装置50は、エンジンスイッチ60、暖房操作スイッチ61、および各種センサに接続されている。このうち、エンジンスイッチ60は、内燃機関1に対して始動を指示するための公知のスイッチであり、車室内の適宜の箇所に設けられたプッシュスイッチである。暖房操作スイッチ61は、内燃機関1に対して暖房を要求するための公知のスイッチであり、例えばインスツルメントパネル等に設けられたプッシュスイッチである。各種センサとは、上記吸気温センサ、空燃比センサ、水温センサ等々である。
【0034】
制御装置50は、燃料噴射弁14に接続されており、この燃料噴射弁14を制御することにより吸入空気に対して供給される燃料の噴射供給量を制御する。また、制御装置50は、燃焼室点火プラグ15に接続されており、この燃焼室点火プラグ15を制御することにより、燃焼室12内の混合気の点火時期を制御する。また、制御装置50は、上記バルブ駆動システムに接続されており、このバルブ駆動システムを制御することにより、吸気弁17、排気弁18,19、および発熱室弁42のバルブ量を制御する。また、制御装置50は、スタータモータに接続されており、このスターターモータを制御することにより、ピストン30をシリンダ内で往復動させる。
【0035】
モード選択部51は、内燃機関1の運転状態に基づいて内燃機関1を暖機する必要があるか否かを判断する。具体的には、モード選択部51は、上記エンジンスイッチ60がオン操作されると、水温センサのセンサ出力値が所定の閾値以下であるか否か、すなわち、内燃機関1の冷却水温が所定温度(例えば「60度」)以下であるか否かを判断する。ここで、エンジンスイッチ60のオン操作時に内燃機関1の冷却水温が所定温度以下である場合とは、内燃機関1の前回の運転停止から時間がかなり経過して冷却水温が低温である状態でエンジンスイッチ60がオン操作されたこと、すなわち内燃機関1の冷間始動であることを意味する。エンジンスイッチ60のオン操作時に内燃機関1の冷却水温が所定温度よりも高い場合とは、内燃機関1の前回の運転停止からそれほど時間が経過しておらず冷却水温は低温ではない状態でエンジンスイッチ60がオン操作されたことを意味する。そのため、水温センサのセンサ出力値が所定の閾値以下であると判断した場合、モード選択部51は、内燃機関1を暖機する必要があると判断し、生成された熱を回収する熱回収モードを選択する。一方、水温センサのセンサ出力値が所定の閾値を上回ると判断した場合、モード選択部51は、内燃機関1を暖機する必要がないと判断し、機関出力を生成する機関出力モードを選択する。
【0036】
なお、本実施形態では、上記エンジンスイッチ60がオン操作されると、水温センサのセンサ出力値が所定の閾値以下であるか否かを判断していたが、エンジンスイッチ60がオン操作されることに加えて、あるいは、エンジンスイッチ60がオン操作されることに替えて、上記暖房操作スイッチ61が操作されると、水温センサのセンサ出力値が所定の閾値以下であるか否かを判断してもよい。ここで、暖房操作スイッチ61の操作時に内燃機関1の冷却水温が所定温度以下である場合とは、内燃機関1がまだ暖機されていない状態で暖房を行うことが要求されたことを意味する。暖房操作スイッチ61の操作時に内燃機関1の冷却水温が所定温度よりも高い場合とは、内燃機関1が既に暖機された状態で暖房を行うことが要求されたことを意味する。そのため、水温センサのセンサ出力値が所定の閾値以下であると判断した場合、モード選択部51は、暖房するにあたってまずは内燃機関1を暖機する必要があると判断し、生成された熱を回収する熱回収モードを選択する。一方、水温センサのセンサ出力値が所定の閾値を上回ると判断した場合、モード選択部51は、暖房するにあたって内燃機関1を暖機する必要はないと判断し、機関出力を生成する機関出力モードを選択する。
【0037】
また、本実施形態では、水温センサのセンサ出力値に基づいて内燃機関1を暖機する必要があるか否かを判断していたが、水温センサのセンサ出力値に限らない。他に例えば、吸気温センサのセンサ出力値に基づいて内燃機関1を暖機する必要があるか否かを判断してもよい。あるいは、内燃機関1の運転停止時にも計時可能な計時手段を備え、内燃機関1の前回の運転停止時を起点とした経過時間に基づいて内燃機関1を暖機する必要があるか否かを判断してもよい。
【0038】
機関出力制御実行部52は、上記モード選択部51によって機関出力モードが選択された場合に、バルブ駆動システムを制御することにより発熱室弁42を常閉として、「吸気行程→圧縮行程→燃焼行程→排気行程」からなる1サイクルを繰り返し実行する。
【0039】
図5に、機関出力モードが選択された場合について、燃焼室12内の圧力、発熱室41内の圧力、吸気弁17のリフト量、排気弁18のリフト量、発熱室弁42のリフト量の推移を示す。以下、この図5を用いて、機関出力モードにて実行されるサイクル(オットーサイクル)について説明する。
【0040】
機関出力制御実行部52は、上記バルブ駆動システムを制御することにより吸気弁17および排気弁18を閉じた状態とし、吸気行程を開始する。この吸気行程を開始すると、機関出力制御実行部52は、ピストン30が上死点から下死点へ下降することに伴って、上記バルブ駆動システムを制御することにより吸気弁17を開く。吸気弁17を開くと、ピストン30の下降に伴って吸気ポート11内の混合気が燃焼室へ吸気される。混合気が燃焼室12へ吸気されると、機関出力制御実行部52は、ピストン30が下死点(クランク角「180度」)近傍となることに合わせて、上記バルブ駆動システムを制御することにより吸気弁17を閉じてこの吸気行程を終了する。
【0041】
上記吸気行程を終了すると、機関出力制御実行部52は、この吸気行程に続けて圧縮行程を開始する。詳しくは、機関出力制御実行部52は、上記バルブ駆動システムを制御することにより吸気弁17および排気弁18を閉じた状態のままとする。吸気弁17および排気弁18を閉じた状態のままピストン30が下死点から上死点へ上昇することで、燃焼室12内の混合気が圧縮され、燃焼室12内の圧力が上昇する。機関出力制御実行部52は、ピストン30が上死点(クランク角「360度」)近傍まで上昇すると、この圧縮行程を終了する。
【0042】
上記圧縮行程を終了すると、機関出力制御実行部52は、この圧縮行程に続けて燃焼行程を開始する。詳しくは、機関出力制御実行部52は、吸気弁17および排気弁18を閉じた状態のままとし、ピストン30が上死点近傍となること(すなわち、燃焼行程が開始されること)に合わせて燃焼室点火プラグ15に火花を発生させる。火花が発生することから、上記圧縮行程にて圧縮された燃焼室12内の混合気が燃焼して燃焼ガスとなる。混合気が燃焼して燃焼ガスとなることで体積が増大することから、燃焼室12内の圧力が急激に上昇し、その後、ピストン30は上死点から下死点へ向けて下降する。機関出力制御実行部52は、ピストン30が下死点(クランク角「540度」)近傍まで下降すると、この燃焼行程を終了する。
【0043】
上記燃焼行程を終了すると、機関出力制御実行部52は、この燃焼行程に続けて排気行程を開始する。詳しくは、機関出力制御実行部52は、吸気弁17および排気弁18を閉じた状態のままとし、ピストン30が下死点近傍となること(すなわち、排気行程が開始されること)に合わせて、バルブ駆動システムを制御することにより排気弁18を開く。排気弁18を開くと、ピストン30の上昇に伴って燃焼室12内の燃焼ガスが排気ポート13に排出される。燃焼ガスが排気ポート13へ排気されると、機関出力制御実行部52は、ピストン30が上死点(クランク角「720度(=0度)」)近傍となることに合わせて、上記バルブ駆動システムを制御することにより排気弁18を閉じてこの排気行程を終了する。そして、この排気行程を終了すると、機関出力制御実行部52は、上記モード選択部51によって選択されているモードの吸気行程を実行する。
【0044】
熱回収制御実行部53は、上記モード選択部51によって熱回収モードが選択された場合に、「吸気行程→発熱モード時燃焼行程→燃焼ガス保持行程→排気行程」からなる1サイクルを繰り返し実行する。
【0045】
図6に、熱回収モードが選択された場合における、燃焼室12圧力、発熱室41圧力、吸気弁17のリフト量、排気弁18のリフト量、発熱室弁42のリフト量の推移を示し、図7に、熱回収モードが選択された場合における、ピストン30、吸気弁17、排気弁18、発熱室弁42等の状態の推移を示す作動図である。以下、これら図6および図7を用いて、熱回収モードにて実行されるサイクルについて説明する。
【0046】
これら図6および図7に示されるように、熱回収制御実行部53は、上記バルブ駆動システムを制御することにより吸気弁17、排気弁18、および発熱室弁42を閉じた状態とし、吸気行程を開始する。この吸気行程を開始すると、熱回収制御実行部53は、ピストン30が下降することに伴って、上記バルブ駆動システムを制御することにより吸気弁17を開く。吸気弁17を開くと、ピストン30の下降に伴って吸気ポート11内の混合気が燃焼室12へ吸気される。混合気が燃焼室12へ吸気されると、熱回収制御実行部53は、ピストン30が下死点(クランク角「180度」)近傍となることに合わせて、上記バルブ駆動システムを制御することにより吸気弁17を閉じてこの吸気行程を終了する。
【0047】
上記吸気行程を終了すると、熱回収制御実行部53は、この吸気行程に続けて熱回収モード時燃焼行程を開始する。詳しくは、熱回収制御実行部53は、上記バルブ駆動システムを制御することにより吸気弁17、排気弁18、および発熱室弁42を閉じた状態のままとする。そして、熱回収制御実行部53は、ピストン30が下死点近傍となること(すなわち、熱回収モード時燃焼行程が開始されること)に合わせて、燃焼室点火プラグ15に火花を発生させるとともに、上記バルブ駆動システムを制御することにより発熱室弁42を開状態とする。火花が発生することから、上記吸気行程にて吸気された燃焼室12内の混合気が燃焼し燃焼ガスとなる。発熱室弁42が開状態となること、および、燃焼による体積膨張により、燃焼ガスは発熱室41へ導入される。そして、熱回収制御実行部53は、上記バルブ駆動システムを制御することにより発熱室弁42が完全に開状態となった時点でこの熱回収モード時燃焼行程を終了する。
【0048】
上記熱回収モード時燃焼行程を終了すると、熱回収制御実行部53は、この熱回収モード時燃焼行程に続けて燃焼ガス保持行程を開始する。詳しくは、熱回収制御実行部53は、上記バルブ駆動システムを制御することにより吸気弁17および排気弁18を閉じた状態のままとするとともに、発熱室弁42を開いた状態のままとする。そして、この状態のまま、ピストン30が下死点から上死点(クランク角「360度)へ上昇することにより、燃焼ガスが発熱室41に強制的に導入される。
【0049】
この燃焼ガス保持行程における適宜のタイミングで、発熱室点火プラグ45から火花を発生させる。たとえば、このタイミングとしては、燃焼ガス保持行程の開始時点とすることができる。ただし、この時点に限らず、燃焼ガス保持行程の途中の時点でもよい。また、複数回点火を行ってもよい。さらに、発熱室点火プラグ45の点火に合わせて、燃焼室点火プラグ15を点火させてもよい。或いは、燃焼ガス保持行程において、燃焼室点火プラグ15を発熱室点火プラグ45とは異なるタイミングで点火させてもよい。この燃焼ガス保持行程において燃焼ガスが発熱室41に保持されることで、発熱室41に導入された燃焼ガスと熱交換部43bを流れる熱回収水との間で熱交換が行われ、熱が回収される。
【0050】
燃焼ガスが発熱室41に強制的に導入された後、ピストン30が上死点から下死点(クランク角「540度」)へ下降し、さらに下死点から上死点(クランク角度「720度(=0度」)」へ上昇する適宜の時点(例えばクランク角度「660度」)でこの燃焼ガス保持行程を終了する。
【0051】
上記燃焼ガス保持行程を終了すると、熱回収制御実行部53は、この燃焼ガス保持行程に続けて排気行程を開始する。詳しくは、熱回収制御実行部53は、上記バルブ駆動システムを制御することにより吸気弁17および排気弁18を閉じた状態のままとするとともに、発熱室弁42を開いた状態のままとする。そして、熱回収制御実行部53は、ピストン30が下死点近傍となること(すなわち、排気行程が開始されること)に合わせて、バルブ駆動システムを制御することにより排気弁18を開く。排気弁18を開くと、ピストン30の上昇に伴って燃焼室12および発熱室41内の燃焼ガスが排気ポート13に排出される。燃焼ガスが排気ポート13へ排気されると、熱回収制御実行部53は、ピストン30が上死点(クランク角「720度(=0度)」)近傍となることに合わせて、上記バルブ駆動システムを制御することにより排気弁18および発熱室弁42を閉じてこの排気行程を終了する。そして、この排気行程を終了すると、熱回収制御実行部53は、上記モード選択部51によって選択されているモードの吸気行程を実行する。
【0052】
図8に、上記機関出力モードが選択された場合におけるPV線図を示し、図9に、上記熱回収モードが選択された場合におけるPV線図を示す。以下、これら図8および図9も併せ参照して説明する。
【0053】
内燃機関1は、機関出力モードが選択された場合、従来のオットーサイクルを実行することから、「正の仕事(図8に斜線にて示す部分)」を行うことができる。そして、内燃機関1は、この「正の仕事」を変換することにより機関出力を生成する。
【0054】
一方、内燃機関1は、熱回収モードが選択された場合、従来のオットーサイクルとは異なる上記新サイクルを実行することから、「正の仕事(図9に零として示す部分)」を行うことがほとんどできない。そして、内燃機関1は、この「正の仕事」をほとんど行っていないため、機関出力を生成することはほとんどできない。詳しくは、熱回収制御実行部53は、吸気行程に続き、発熱室弁42を開状態とし、燃焼室12内の混合気を燃焼させる発熱モード時燃焼行程を行う。この発熱モード時燃焼行程では、圧縮行程の場合と同様に、シリンダが上昇し燃焼室12の容積が減少する。しかし、発熱モード時燃焼行程では燃焼室弁42を開状態とする。燃焼室弁42が開状態となることで、燃焼室12と発熱室41とが連通状態となって、燃焼ガスは燃焼室12から発熱室41へ流れることができるので、シリンダが上昇して燃焼室12の容積が減少しても、燃焼室12内の混合気はそれほど圧縮されない。その結果、混合気が燃焼して生じる熱エネルギーが駆動エネルギーに変換されてしまう分が少なくなるので、混合気の燃焼により生じる熱エネルギーを熱回収管43にて熱として効率よく回収することができる。
【0055】
燃焼ガスが燃焼室12から発熱室41へ流れることにより熱エネルギーが駆動エネルギーに変換されてしまう分が少なくなることに加えて、さらに、発熱室41には触媒部46が設けられており、この触媒部46により、未燃焼のハイドロカーボンが酸化させられることでも熱が発生する。このことによっても、回収できる熱量を多くすることができる。加えて、燃焼ガス保持行程において発熱室点火プラグ45(さらには燃焼室点火プラグ15)を点火させることにより燃焼行程において未燃焼だったハイドロカーボンを燃焼させるようにすれば、回収できる熱量をさらに多くすることができる。
【0056】
以上説明した本実施形態の内燃機関1によって得られる効果について、図10および図11を参照しつつ説明する。
【0057】
次に、図10を用いて本実施形態による熱回収効率の改善効果を説明する。図10(a)は、機関出力モードが選択された場合における各損失割合を示ず模式図であり、図10(b)、(C)は、いずれも、熱回収モードが選択された場合における各損失割合を示す模式図である。ただし、図10(c)が本実施形態の内燃機関1における損失割合を示す図である。図10(b)は、この図10(b)を図10(c)と比較することで触媒部46の効果を示すためのものであり、本実施形態の内燃機関1から触媒部46を除いた構成において熱回収モードを実行した場合の損失割合を示している。
【0058】
まず、図10(a)と図10(b)を比較する。これら図10(a)及び(b)は、いずれも、燃料ガスの持つ化学エネルギーが熱エネルギーに変換される機会は、燃焼室点火プラグ15の1回のみであることから、内燃機関1に投入された燃料の損失割合のうち、未燃損失、摩擦損失、および排気損失が占める割合は、機関出力モードが選択されている場合でも、熱回収モードが選択されている場合でも、ほぼ同程度となっている。一方、冷却損失、ポンプ損失、正味仕事については両者で大きく異なる。熱回収モードでは、ポンプ損失、正味仕事はほとんどなく、これらの損失分も冷却損失となっている。すなわち、機関出力モードが選択されている場合における冷却損失、ポンプ損失、および正味仕事が占める割合と、熱回収モードが選択されている場合における冷却損失が占める割合とがほぼ同程度となっている。
【0059】
これらのことから、機関出力モードが選択されている場合におけるポンプ損失分および正味仕事分が熱回収モードが選択されている場合における冷却損失分となったことが分かる。換言すれば、本実施形態では、内燃機関1は、熱回収モードが選択された場合、機関出力を生み出すことは無く、供給された燃料は当該内燃機関1を暖機するために主に使用されることが分かる。
【0060】
次に、図10(b)と図10(c)とを比較する。摩擦損失、排気損失は、図10(b)と図10(c)とでほぼ同じ割合であるが、触媒部46がある図10(c)では、未燃損失が触媒部46がない図10(b)よりも減少しており、未燃損失分も冷却損失となっていることが分かる。この図10(b)と図10(c)の比較から、触媒部46を設けることにより熱回収効率が一層向上していることが分かる。
【0061】
このように、熱回収モードでは、機関出力モードよりも熱回収効率が非常によい。そのため、本実施形態の内燃機関1は、従来のオットーサイクル式の内燃機関に比較して、早期に暖機することができる。したがって、従来のオットーサイクル式の内燃機関では、(1)内燃機関の摩擦力が大きく、燃料の燃焼が不安定となり、燃費が悪く、有害ガスの排出量が多い、(2)内燃機関が自動車に搭載される場合、冷間始動時の暖房が遅い、(3)低燃費技術の効果が機関段気前に充分に発揮されない、といった課題があったが、本実施形態の内燃機関1では、早期に暖機することができることから、低燃費・低有害ガス・快適性をより高い次元で成立することができるようになる。
【0062】
なお、本発明に係る内燃機関および制御装置は、上記実施形態にて例示した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々に変形して実施することが可能である。すなわち、上記実施形態を適宜変更した例えば次の形態として実施することもできる。
【0063】
たとえば、図11に示すように、排気ポート13にも、熱回収管43および触媒部46が設けられていてもよい。図11に示すこれら熱回収管43および触媒部46の配置は、よく詳しくは、排気ポート13において機関ヘッド10に近接する部分に触媒部46が配置され、その触媒部46よりも燃焼ガス流路の下流においてその触媒部46に隣接して熱回収部43が配置されている。排気ポート13を流れる燃焼ガスにも未燃焼のハイドロカーボンが含まれることから、このように、排気ポート13にも、熱回収管43および触媒部46を設ければ、排気ポート13においても未燃焼のハイドロカーボンを酸化させて熱を発生させて回収することができる。
【0064】
よって、図11の構成では、発熱室41においても、その発熱室41に設けられた熱回収管43により熱を回収することができ、排気ポート13でも、その排気ポート13に設けられた熱回収管43によって熱を回収することができる。また、燃焼室12においても、ウォータジャケット21により熱を回収することができる。よって、内燃機関1の広い範囲で熱を回収することができる。また、このことを換言すれば、燃焼行程、燃焼ガス保持行程、排気行程でそれぞれ熱を回収する事ができると言える。つまり、内燃機関の1サイクルのうちの比較的長い間にわたり効率よく熱を回収することができる。なお、図11の構成では2つの触媒部46を有するが、いずか一方の触媒部46を設けない構成とすることもできる。
【0065】
また、前述の実施形態では、発熱室41は、吸気ポート11に隣接して設けられていたがこの発熱室41を排気ポート13に隣接して設けてもよい。なお、この場合にも、発熱室41には、熱回収管43や触媒部46が設けられる。
【0066】
また、上記実施形態では、図1に示されるように、内燃機関1は複数のシリンダを備えており、発熱室41、発熱室弁42、および熱回収管43は、これら複数のシリンダに対してそれぞれ設けられていたが、これに限らない。内燃機関が複数のシリンダを備えていても、発熱室41、発熱室弁42、および熱回収管43を、これら複数のシリンダのうち一部、たとえば1つのみのシリンダにのみ設けられていることとしてもよい。
【0067】
また、図1に対応する図として図12に示すように、内燃機関1aは、発熱室41、発熱室弁42、および熱回収管43を複数のシリンダに対して備え、且つ、それら複数の発熱室41が互いに連通管16にて接続されていることとしてもよい。これにより、混合気は連通管16を通って発熱室41間を移動することができるため、発熱室41に残留する混合気の排出を促すことができるようになる。なお、発熱室41、発熱室弁42、および熱回収管43を備えている複数のシリンダのうち「全て」のシリンダの発熱室41が連通管にて接続されている必要はなく、発熱室41、発熱室弁42、および熱回収管43を備えている複数のシリンダのうち少なくとも「2つ」のシリンダの発熱室41が連通管にて接続されていればよい。
【0068】
上記実施形態では、制御装置50は、熱回収モードが選択された場合、ピストン30が下死点(クランク角が「180度」)近傍となることに合わせて、燃焼室点火プラグ15に火花を発生させていたが、火花を発生させるタイミングはこれに限らない。制御装置50は、熱回収モードが選択された場合、機関出力モードが選択された場合に燃焼室点火プラグ15に火花を発生させるタイミングよりも早いタイミングにて、燃焼室点火プラグ15に火花を発生させればよい。
【0069】
また、前述の熱回収モードでは、1サイクルは「吸気行程→発熱モード時燃焼行程→燃焼ガス保持行程→排気行程」からなっていたが、「吸気行程→混合気流入行程→発熱室燃焼行程→燃焼ガス保持行程→排気行程」からなる1サイクルとしてもよい。このサイクルでは、制御装置50は、吸気行程に続き、発熱室弁42を開状態とし、燃焼室12内の混合気を発熱室41に流入させる混合気流入行程を行い、続いて、発熱室点火プラグ45に火花を発生させて発熱室41内の混合気を燃焼させる発熱室燃焼行程を行う。そして、制御装置50は、吸気弁17は閉じており、ピストン30の上昇に伴い排気弁18が開き燃焼室12内の燃焼ガスが排気される排気行程の開始までの排気弁18が閉じている間、燃焼ガスが保持される燃焼ガス保持行程において、発熱室弁42の開状態を維持し、排気行程の終了に合わせて発熱室弁42が閉じるように、バルブ駆動システムを制御する。
【0070】
上記発熱室燃焼行程では、圧縮行程の場合と同様に、ピストン30が上昇し燃焼室12の容積が減少する。しかし、混合気流入行程により混合気を燃焼室12から発熱室41に流入させて、混合気への点火は発熱室41にて行う。そのため、ピストン30が上昇して燃焼室12の容積が減少しても、発熱室41内の気体はそれほど圧縮されない。その結果、混合気が燃焼して生じる熱エネルギーが駆動エネルギーに変換されてしまう分が少なくなるので、混合気の燃焼により生じる熱エネルギーを熱回収部にて熱として効率よく回収することができるようになる。
【0071】
また、前述の実施形態における熱回収モードでも、また、上述の混合気流入行程を有する1サイクルでも、発熱室弁42の開閉を行っていたが、熱回収モードにおいては発熱室弁42を常時開とするようにしてもよい。また、前述の実施形態の触媒部46に代えてサーマルリアクタを用いてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1,1a…内燃機関、10…機関ヘッド、11…吸気ポート、12…燃焼室、13…排気ポート、14…燃料噴射弁、15…燃焼室点火プラグ、16…連通管、17…吸気弁、18…排気弁、20…機関ブロック、21…ウォータジャケット、30…ピストン、41…発熱室、42…発熱室弁、43…熱回収管(発熱室熱回収部、浄化部熱回収部)、43a…流入側熱回収管、43b…流出側熱回収管、43c…熱交換部、45…発熱室点火プラグ、46…触媒部(HC浄化部)、50…制御装置、51…機関出力制御実行部、52…熱回収制御実行部、60…操作スイッチ、61…暖房スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
シリンダ内を往復動するピストンと、
そのピストンに連結されて、ピストンの往復動による運動エネルギーを外部に出力する動力出力部と、
前記シリンダおよびピストンによって構成され、燃料と空気との混合気が燃焼する燃焼室と、
その燃焼室に設けられ、前記混合気を燃焼させるための火花を発生させる燃焼室点火プラグと、
前記燃焼室へ空気を導入する吸気ポートと前記燃焼室との間に設けられた吸気弁と、
前記燃焼室で前記混合気が燃焼して生じる燃焼ガスを排出する排気ポートと前記燃焼室との間に設けられた排気弁とを備えた内燃機関において、
前記燃焼室に隣接して設けられた発熱室と、
前記発熱室と前記燃焼室との間を連通状態および遮断状態のいずれともすることができる発熱室弁と、
前記発熱室に導入された気体の熱を回収して、その回収した熱を暖機に利用する発熱室熱回収部とを備え、
さらに、前記燃焼ガスに含まれているハイドロカーボンを酸化させるHC浄化部と、
そのHC浄化部に隣接して設けられ、前記HC浄化部でハイドロカーボンが酸化されることにより発生する熱と機関冷却水の熱との熱交換を行うことで、HC浄化部で発生した熱を回収する浄化部熱回収部とを備えることを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
請求項1において、
前記HC浄化部が前記発熱室に設けられており、前記発熱室熱回収部が前記浄化部熱回収部としても機能することを特徴とする内燃機関。
【請求項3】
請求項2において、
前記発熱室に、発熱室内の前記混合気を燃焼させるための発熱室点火プラグが配置されており、
前記HC浄化部は、前記発熱室内において、前記発熱室点火プラグよりも前記発熱室弁から遠い位置に配置されており、
前記発熱室熱回収部は、前記HC浄化部よりもさらに前記発熱室弁から遠い位置において熱を回収することを特徴とする内燃機関。
【請求項4】
請求項1記載の内燃機関において、
前記HC浄化部は前記排気ポートに設けられ、
前記浄化部熱回収部は、前記HC浄化部よりも燃焼ガス流路の下流においてそのHC浄化部に隣接して設けられていることを特徴とする内燃機関。
【請求項5】
請求項3において、
前記HC浄化部は、前記発熱室に設けられていることに加えて、前記排気ポートにも設けられており、
前記発熱室熱回収部が、前記発熱室に設けられているHC浄化部に対応する浄化部熱回収部として機能し、
前記排気ポートに設けられているHC浄化部に隣接して、そのHC浄化部で発生した熱を回収する前記浄化部熱回収部が設けられていることを特徴とする内燃機関。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の内燃機関であって、
当該内燃機関は、当該内燃機関以外に駆動力源を備えている車両に、駆動力源として搭載されることを特徴とする内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−241523(P2012−241523A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109044(P2011−109044)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】