説明

内装材の取付構造

【課題】
部品点数を少なくし、突出部自身が屈曲することにより、クリップが飛散することがなく、又、クリップによって、カーテンシールドエアバッグにダメージが付与されることはない内装材の取付構造を提供する。
【解決手段】
クリップ70は天井トリム40に対して固定された固定板72と、固定板72から展開経路に対して交差するように突出され、カーテンシールドエアバッグ30の非展開時にはルーフサイドレール50側に設けられたクリップ55に保持されるとともに、カーテンシールドエアバッグ30k展開によりクリップ55から離脱可能に設けられた突出板75を備える。クリップ55は、突出板75と固定板72間に設けられ、展開時のカーテンシールドエアバッグ30に接触されて突出板75を展開経路下流側に屈曲するヒンジ部73を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、カーテンシールドエアバッグが車両のフレームと内装材との間に配置されて内装材がクリップを介してフレームに対して取付けられた内装材の取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、カーテンシールドエアバッグは、車両のフロントピラー部、ルーフサイドレール部及びリヤピラー部に折り畳まれた状態で格納されている。図7は、カーテンシールドエアバッグ100が、車両のフレームであるルーフサイドレール110と内装材である天井トリム120との間に配置されている例が示されている。カーテンシールドエアバッグ100は、折り畳まれた状態で、図示しないブラケット等を介してルーフサイドレール110に取り付けられている。前記カーテンシールドエアバッグ100は、ガスを噴出するインフレータ(図示しない)により、膨張可能になっている。
【0003】
ルーフサイドレール110の下部には、フレーム側クリップ140が基端に設けられた嵌合部142により取付固定されている。嵌合部142の車室外側には、ウェザーストリップ150が装着されている。フレーム側クリップ140の室内側には、一対の挟持片144,145が設けられている。両挟持片144,145は、互いに接近及び離間する方向に弾性的に撓み可能とされ、天井トリム120に設けられたクリップ130の突出板134を挟持及び離脱可能な形状を有する。
【0004】
一方、天井トリム120の端部には、クリップ130が取り付けられている。クリップ130は、図8に示すように、天井トリム120のルーフサイドレール110側の側面に固定された平板状の固定板132と固定板132の中央から突出した突出板134を備える。固定板132は、天井トリム120に対して、ホットメルト接着剤にて接着されるとともに、固定板132の上面には、図8に示すように、不織布からなる飛散防止シート135が掛けられている。飛散防止シート135の周部は、図8に示すように、天井トリム120に対してホットメルト接着剤により接着されるとともに、固定板132に掛けられた部分は固定板132に対してホットメルト接着剤により接着されている。前記突出板134は、飛散防止シート135の略中央部を貫通して突出している。
【0005】
図7に示すように突出板134は、カーテンシールドエアバッグ100の非展開時に前記挟持片144,145により着脱自在に挟持(すなわち、保持)されている。又、突出板134は、カーテンシールドエアバッグ100の展開経路上、すなわち、展開中のカーテンシールドエアバッグ100に対しては突出方向とは交差する方向に配置され、展開中のカーテンシールドエアバッグ100に対して接触可能となっている。
【0006】
図示しないセンサが車両の側突を検出した場合、図示しないインフレータからカーテンシールドエアバッグ100にガスが供給される。そして、折り畳み状態のカーテンシールドエアバッグ100がルーフサイドレール110と天井トリム120間の収納スペース以上に膨らむと、天井トリム120にカーテンシールドエアバッグ100からの力が付与されて挟持片144,145間の突出板134の保持が解除される。この結果、ルーフサイドレール110の縁部と天井トリム120の縁部との隙間から車両室内に広がって、サイドウィンドウ廻りにカーテン状に展開する。このとき、図7の二点鎖線で示すように、クリップ130の突出板134は、カーテンシールドエアバッグ100が接触して力を受けるが、クリップ130の飛散防止シート135により、クリップ130の飛散が防止される。
【0007】
従来は、このように飛散防止シート135により、クリップ130の飛散防止を図るようにしている。
しかし、この従来技術の場合、飛散防止シート135が必要となるため、クリップ130及び飛散防止シート135の両部材の天井トリムに対する組み付け工数が増えるとともに、部品点数が増加し、コスト高となる問題がある。
【0008】
この飛散防止シートを使用しないで、内装材(例えば、上記天井トリム120)側のクリップの飛散防止を図る技術が特許文献1、特許文献2により提案されている。
特許文献1では、内装材側のクリップを、内装材に固定された第1結合材と、ルーフサイドレール側のクリップに対して着脱自在に係合される第2結合部材とを互いに係合して、カーテンシールドエアバッグが膨らんだときに、両結合部材間の連結が解除するようにされている。
【0009】
特許文献2では、内装材に対してクリップと平坦部材を可撓性の連結部材で連結した状態で接着剤等により固定しておき、カーテンシールドエアバッグが膨らんだときには、クリップのみ天井トリムから離脱させた状態にするとともに前記クリップが平坦部材に対して連結部材にて連結されて飛散しないようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−168651号公報
【特許文献2】特開2009−173243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、特許文献1は、互いに分離した第1結合部材と第2結合部材とによりクリップを構成する必要があるため部品点数が増えるとともに、両部材間の組み付工数も増加して、コスト高となる。
【0012】
特許文献2では、平坦部材とクリップとはそれぞれ離間して内装材に接着等の固定手段により取付けする必要があり、このため、両部材の内装材に対する組み付け工数が増加し、コスト高となる問題がある。
【0013】
この発明は、部品点数を少なくでき、クリップが飛散することがなく、又、クリップによって、カーテンシールドエアバッグにダメージが付与されることはない内装材の取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、車両のボディを構成するフレームと前記フレームの車室内側に対向配置された内装材との間にカーテンシールドエアバッグが配置されて、前記内装材に固定されたクリップにより前記内装材が前記フレームに取付けられている内装材の取付構造において、前記クリップは、前記カーテンシールドエアバッグの展開経路の下流側において、前記内装材に対して固定された固定部と、前記固定部から、前記展開経路に対して交差するように突出され、前記カーテンシールドエアバッグの非展開時には前記フレーム側に設けられた保持手段に保持されるとともに、前記カーテンシールドエアバッグの展開により前記保持手段から離脱可能に設けられた突出部と、前記突出部と前記固定部間に設けられ、展開時の前記カーテンシールドエアバッグに接触されて前記突出部を展開経路下流側に屈曲するヒンジ部を備えたことを特徴とする内装材の取付構造を要旨としている。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1において、前記突出部が前記展開経路と交差するように平板状に形成され、前記ヒンジ部が、前記展開経路と交差する方向に延出されていることを特徴とする。
【0016】
請求項3の発明は、請求項2において、前記固定部の展開経路上流側の部位には、前記内装材に対し、前記カーテンシールドエアバッグの非展開時に固定されているとともに展開時のカーテンシールドエアバッグが前記突出部に当接した時に前記固定が解除される拡張固定部が前記ヒンジ部を間にするように形成されており、前記突出部は、前記ヒンジ部よりも前記拡張固定部側に形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項4の発明は、請求項3において、前記拡張固定部は、前記内装材との固定が解除されてヒンジ部にて前記突出部とともに屈曲した際、前記ヒンジ部とは反対側の自由端部の端面にはアールが形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、展開時のカーテンシールドエアバッグが展開経路上の突出部に接触すると、突出部はヒンジ部にて屈曲することにより、接触時のカーテンシールドエアバッグからの力を受け流すことができる。このとき、突出部がヒンジ部により屈曲したクリップは、内装材に対して固定部により固定されているため、クリップが飛散することがない。又、突出部自身が屈曲する構成となっているため、クリップにより、カーテンシールドエアバッグにダメージが付与されることはない。又、請求項1の発明によれば、クリップ単体という簡単な構成で、内装材に対して取付固定できるばかりか、部品点数を少なくした状態で飛散防止を図ることができる。
【0019】
請求項2の発明によれば、展開するカーテンシールドエアバッグが、展開経路と交差する方向に延びる平板状の突出部に対して接触することにより、前記突出部を屈曲する。このとき、平板状の突出部は、カーテンシールドエアバッグに対して広く接触できるため、カーテンシールドエアバッグに対する接触箇所の応力集中を抑制するため、カーテンシールドエアバッグに対するダメージを与えることがない。
【0020】
請求項3の発明によれば、カーテンシールドエアバッグの非展開時には、固定部と拡張固定部とにより、クリップが内装材に対して確実に固定されて、内装材をフレームに対して安定して取付保持ができる。又、カーテンシールドエアバッグの展開時には、拡張固定部が内装材との固定が解除でき、突出部のヒンジ部での屈曲の妨げになることはない。
【0021】
請求項4の発明によれば、拡張固定部は、内装材との固定が解除されてヒンジ部にて突出部とともに屈曲した際、前記ヒンジ部とは反対側の自由端部の端面にはアールが形成されていることにより、自由端部の端面による展開中のカーテンシールドエアバッグへの傷つきが抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】一実施形態のカーテンシールドエアバッグの配置を示す説明図。
【図2】図1のA−A線断面図。
【図3】一実施形態のルーフサイド部の断面図。
【図4】一実施形態のクリップの斜視図。
【図5】一実施形態のクリップの作用を示す断面図。
【図6】他の実施形態のクリップの断面図。
【図7】従来のルーフサイドの断面図。
【図8】従来のクリップの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した一実施形態を、図1〜図5を参照して説明する。
図1に示すように、カーテンシールドエアバッグ30は、車両のフロントピラー部10、ルーフサイドレール部12及びリヤピラー部14においてそれぞれ折り畳まれた状態で格納されている。本実施形態では、前記各部のトリムと車両のフレーム間に前記カーテンシールドエアバッグ30が配置されて、前記トリムがフレームに取り付けられる取付構造は同様であるため、以下では、図3を参照してルーフサイドレール部12に配置されるカーテンシールドエアバッグ30の周辺の内装材としての天井トリム40の取付構造について説明する。
【0024】
図3では、カーテンシールドエアバッグ30が、車両のフレームであるルーフサイドレール50と内装材である天井トリム120との間に配置されている状態が示されている。前記カーテンシールドエアバッグ30は、折り畳まれた状態で、図示しないブラケット等を介してルーフサイドレール50に取り付けられている。カーテンシールドエアバッグ30は、図示しないセンサが車両の側突を検出した場合、図示しないインフレータからガスが供給されるようになっている。
【0025】
ルーフサイドレール50はインナーパネル51とアウターパネル52及び両部材間に配置された補強部材53とから構成されており、インナーパネル51とアウターパネル52とにより閉断面を画成するようにインナーパネル51、アウターパネル52及び補強部材53の各フランジが接合している。
【0026】
そして、車両の前後方向において、ルーフサイドレール50のサイドウィンドウ側のフランジ54には、フレーム側の複数個のクリップ55が、基端に設けられた嵌合部56により取付固定されている。なお、図3、図5では1つのクリップ55のみが図示されている。クリップ55は、保持手段に相当する。
【0027】
嵌合部56の車室外側面には、ゴム製のウェザーストリップ57が装着されている。ウェザーストリップ57は、図示しない閉状態のサイドドアの車室内側面と嵌合部56の外面との間で圧縮状態で挟持されることにより、車室内への水の浸入を阻止することが可能である。
【0028】
前記クリップ55を介して、天井トリム40の端部がルーフサイドレール50に固定されている。フレーム側のクリップ55の室内側には、一対の挟持片58,59が設けられている。両挟持片58,59は、互いに接近及び離間する方向に弾性的に撓み可能とされるとともに、内装材側のクリップ70の突出板75を挟持及び離脱可能な形状を有する。本実施形態では、図3に示すように両挟持片58,59の挟持面側にそれぞれ突部58a,59aが形成されている。なお、挟持及び離脱可能な形状は前記形状に限定されるものではない。天井トリム40は、基材層41と、基材層41の車室内側面に形成された表皮層42とから構成されている。前記基材層41は、ガラス繊維、木質繊維、あるいはケナフなどの靭皮植物繊維に対してポリプロピレン等の熱可塑性樹脂が含浸して形成されている。表皮層42は、合成皮革、天然皮革あるいは繊維によって形成されている。天井トリム40は、インナーパネル51に対して所定間隔を空けて配置されている。
【0029】
天井トリム40には、図3に示すように、フレーム側のクリップ55の下方に位置するようには、横方向(すなわち、車幅方向)に延びる取付部44が形成されている。取付部44のフランジ54に相対する部位からはやや上方に向けて折り返し形成された折り返し部45が設けられている。この折り返し部45の先端には室外側から覆うようにして前記ウェザーストリップ57が配置されている。
【0030】
天井トリム40において、取付部44のルーフサイドレール50側面には、図2に示すように、複数のクリップ70が取り付けられている。クリップ70は、合成樹脂製からなる。
【0031】
クリップ70は、図3、図4に示すように、取付部44に固定された平板状の固定板72と、固定板72に対してヒンジ部73を介して一体に連結されて取付部44に対して取付固定された拡張板74と、拡張板74において、ヒンジ部73に近接する部位から立設された平板状の突出板75を備える。ここで、固定板72は、固定部に相当し、拡張板74は、拡張固定部に相当し、突出板75は、突出部に相当する。
【0032】
拡張板74は、図3に示すように、固定板72において、前記カーテンシールドエアバッグ30の展開経路上流側の部位に対してヒンジ部73を介して連結されている。固定板72及び拡張板74の内装材(天井トリム40)に対する固定方法の1つとしては、ホットメルト接着剤を挙げることができる。接着剤は、内装材とクリップ70の材質に変化を与えないものであれば限定されるものではない。
【0033】
カーテンシールドエアバッグ30が非展開時には、拡張板74は、前記接着剤により取付部44に固定されている。又、拡張板74は、カーテンシールドエアバッグ30が展開時に接触された際、取付部44との接着固定が容易に破壊されてヒンジ部73が展開経路の下流側に屈曲できるように、固定板72と取付部44との接着力(固定力)よりも弱くなるように接着されている。
【0034】
拡張板74の取付部44に対する接着力を、固定板72の取付部44に対する接着力よりも弱くするためには、例えば、拡張板74側の接着面積を小さくしたり、或いは、使用する接着剤の量を拡張板74の方が固定板72よりも少なくしたりすることにより、可能である。又、拡張板74のカーテンシールドエアバッグ30に向かう端部は、拡張板74と取付部44との接着固定が解除された場合、自由端部となる。この自由端部の端面74aには端部形状をなめらかにするアールが形成されている。
【0035】
ヒンジ部73は、固定板72,拡張板74の板厚よりも薄く形成されており、ヒンジ部73の剛性は固定板72及び拡張板74の剛性より弱くされている。本実施形態では、ヒンジ部73は、反天井トリム40側の側面に凹溝が形成されることにより、板厚が薄く形成されている。なお、ヒンジ部73の板厚を薄くする場合、天井トリム40側の側面に凹溝が形成されることにより、板厚が薄く形成されていてもよい。或いは、天井トリム40側及び反天井トリム側の両側面にそれぞれ凹溝が形成されることにより、薄肉に形成されてヒンジ部を形成するようにしてもよい。
【0036】
又、ヒンジ部73、すなわち、前記凹溝は、カーテンシールドエアバッグ30の展開時(すなわち、膨張時)の展開経路と交差する方向(本実施形態においては、車両前後方向)に延出されている。又、突出板75は、ヒンジ部73に沿って配置されることにより、カーテンシールドエアバッグ30の展開時(すなわち、膨張時)の展開経路と交差する方向に延出されている。
【0037】
突出板75の先端の両側面には、図3,図4に示すように、クリップ55の両挟持片58,59の各突部58a,59aに間に係合する突条形状の膨出部75a,75bが形成されている。
【0038】
又、図3に示すように突出板75は、カーテンシールドエアバッグ30の非展開時に前記挟持片58,59に挟持(すなわち、保持)されている。又、突出板75は、カーテンシールドエアバッグ30の展開経路上、すなわち、展開中のカーテンシールドエアバッグ30に対しては突出方向とは交差する方向に配置され、展開中のカーテンシールドエアバッグ30に対して接触可能となっている。
【0039】
そして、ヒンジ部73は、カーテンシールドエアバッグ30が展開した時、拡張板74の接着固定が解除されることにより、カーテンシールドエアバッグ30に接触されて突出板75を展開経路下流側に屈曲可能となっている。
【0040】
(作用)
次に、本実施形態の作用を、図3、図5を参照しながら説明する。
図示しないセンサが車両の側突を検出した場合、カーテンシールドエアバッグ30に図示しないインフレータからガスが供給される。そして、折り畳み状態のカーテンシールドエアバッグ30がルーフサイドレール50と天井トリム40間の収納スペース以上に膨らむと、天井トリム40にカーテンシールドエアバッグ30からの力が付与されて挟持片58,59間の突出板75の保持が解除される。この結果、ルーフサイドレール50の縁部と天井トリム40の縁部との隙間から車両室内に広がって、サイドウィンドウ廻りにカーテン状に展開する。
【0041】
この展開時において、膨張するカーテンシールドエアバッグ30が突出板75に当接すると、突出板75に印加される当接力は、まず突出板75が設けられた拡張板74に加わり、ヒンジ部73を介してカーテンシールドエアバッグ30の展開方向に突出板75を屈曲させようとする。このため、拡張板74と取付部44(内装材)との固定が解除されて、突出板75が屈曲して、当接力を展開側に逃がすため固定板72には、大きな力が印加されない。この結果、クリップ70の突出板75は、カーテンシールドエアバッグ30が接触して力を受けるが、突出板75がヒンジ部73にて屈曲することにより、固定板72と取付部44との固定は保持されるため、クリップ70の飛散が防止される。
【0042】
この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) 本実施形態の内装材の取付構造では、クリップ70は、カーテンシールドエアバッグ30の展開経路の下流側において、天井トリム40(内装材に)対して固定された固定板72(固定部)を備えている。又、クリップ70は、固定板72から、展開経路に対して交差するように突出され、カーテンシールドエアバッグ30の非展開時にはルーフサイドレール50(フレーム)側に設けられたクリップ55(保持手段)に保持されるとともに、カーテンシールドエアバッグ30の展開によりクリップ55から離脱可能に設けられた突出板75(突出部)を備えている。さらに、クリップ70は、突出板75と固定板72間に設けられ、展開時のカーテンシールドエアバッグ30に接触されて突出板75を展開経路下流側に屈曲するヒンジ部73を備えている。
【0043】
この結果、展開時のカーテンシールドエアバッグ30が展開経路上の突出板75に接触すると、突出板75はヒンジ部73にて屈曲することにより、接触時のカーテンシールドエアバッグ30からの力を受け流すことができる。このとき、突出板75がヒンジ部73により屈曲したクリップ70は、天井トリム40に対して固定板72により固定されているため、クリップ70が飛散することがない。又、突出板75自身が屈曲する構成となっているため、クリップ70により、カーテンシールドエアバッグ30にダメージが付与されることはない。又、本実施形態によれば、クリップ単体という簡単な構成であるため、内装材に対する取付固定を簡単にできるばかりか、部品点数を少なくした状態で飛散防止を図ることができる。
【0044】
(2) 本実施形態では、クリップ70の突出板75がカーテンシールドエアバッグ30の展開経路と交差するように平板状に形成されるとともに、ヒンジ部73が、展開経路と交差する方向に延出されている。この結果、本実施形態によれば、展開するカーテンシールドエアバッグ30が、展開経路と交差する方向に延びる平板状の突出板75に対して接触することにより、突出板75を屈曲する。このとき、平板状の突出板75は、カーテンシールドエアバッグ30に対して広く接触できるため、カーテンシールドエアバッグ30に対する接触箇所の応力集中を抑制するため、カーテンシールドエアバッグ30に対するダメージを与えることがない。
【0045】
(3) 本実施形態では、クリップ70の固定板72の展開経路上流側の部位には、天井トリム40(内装材)に対し、カーテンシールドエアバッグ30の非展開時に固定されているとともに展開時のカーテンシールドエアバッグ30が突出板75に当接した時に固定が解除される拡張板74がヒンジ部73を間にするように形成されている。そして、突出板75は、ヒンジ部73よりも拡張板74側に形成されている。この結果、カーテンシールドエアバッグ30の非展開時には、固定板72と拡張板74とにより、クリップ70が天井トリム40(内装材)に対して確実に固定されて、天井トリム40をフレームに対して安定して取付保持ができる。又、カーテンシールドエアバッグ30の展開時には、拡張板74が天井トリム40との固定が解除でき、突出板75のヒンジ部73での屈曲の妨げになることはない。
(4) 本実施形態では、拡張板74は、天井トリム40(内装材)との固定が解除されてヒンジ部73にて突出板75とともに屈曲した際、ヒンジ部73とは反対側の自由端部の端面74aにはアールが形成されている。この結果、本実施形態によれば、拡張板74は、天井トリム40(内装材)との固定が解除されてヒンジ部73にて突出板75とともに屈曲した際、ヒンジ部73とは反対側の自由端部の端面74aにはアールが形成されていることにより、自由端部の端面により展開中のカーテンシールドエアバッグ30への傷つきが抑制できる。
【0046】
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 前記実施形態では、内装材として天井トリム40の取付構造に具体化したが、内装材として伝承トリムに限定されるものではなく、カーテンシールドエアバッグが配置されるフロントピラーのトリム、リアピラーのトリム等の内装材の取付構造に具体化することも勿論可能である。
【0047】
・ 前記実施形態ではクリップ70は合成樹脂製としたが、ヒンジ部が形成できるものであれば、クリップ70の材質は、合成樹脂製に限定されるものではなく、他の材質、例えば金属で形成されていてもよい。
【0048】
・ 前記実施形態において、接着剤を使用する場合、拡張板74のみが内装材と離間しやすいように拡張板74の内装材に対する接着面積を、固定板72よりも狭くしたり、接着剤の接着力を拡張板74に使用する接着材の接着力が弱くなるように接着力の異なるものを使用してもよい。
【0049】
・ 前記実施形態において、固定部及び拡張固定部の内装材に対する固定方法として、他の例としては、ビス等の締め付け手段でもよい。この場合、前記突出部に展開するカーテンシールドエアバッグが当接した際に拡張固定部のみが内装材との固定が解除されるようにする。
【0050】
固定部と拡張固定部とを締め付け手段により締め付けする場合は、拡張固定部の締め付け手段の締め付け力を弱くしたり、拡張固定部の締め付け手段が貫通する部位を薄肉にして脆弱部とし、固定部の締め付け手段が貫通する部位を、前記脆弱部よりも肉厚の部位に形成し、拡張固定部に内装材から離間する方向に負荷が加わったときは前記脆弱部が破壊されて、拡張固定部が内装材から離間するようにしてもよい。
【0051】
又、固定部のみ、ビス等の締め付け部材により内装材に対して締め付け固定し、拡張固定部を接着剤を使用するようにしてよい。この場合においても、拡張固定部と内装材との固定力は、固定部と内装材との固定力と同等、若しくは弱くしておけば良い。
【0052】
・ 前記実施形態では、クリップ70に拡張板74を設けたが、図6に示すように、拡張板74を省略してもよい。
・ 前記実施形態では拡張固定部、固定部、突起部をそれぞれ板状にしたが、板状に限定されるものではなく、棒状等の形状にしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
30…カーテンシールドエアバッグ、40…天井トリム(内装材)、
55…クリップ(保持手段)、70…クリップ(本発明のクリップ)、
72…固定板(固定部)、73…ヒンジ部、
74…拡張板(拡張固定部)、74a…端面、
75…突出板(突出部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のボディを構成するフレームと前記フレームの車室内側に対向配置された内装材との間にカーテンシールドエアバッグが配置されて、前記内装材に固定されたクリップにより前記内装材が前記フレームに取付けられている内装材の取付構造において、
前記クリップは、
前記カーテンシールドエアバッグの展開経路の下流側において、前記内装材に対して固定された固定部と、
前記固定部から、前記展開経路に対して交差するように突出され、前記カーテンシールドエアバッグの非展開時には前記フレーム側に設けられた保持手段に保持されるとともに、前記カーテンシールドエアバッグの展開により前記保持手段から離脱可能に設けられた突出部と、
前記突出部と前記固定部間に設けられ、展開時の前記カーテンシールドエアバッグに接触されて前記突出部を展開経路下流側に屈曲するヒンジ部を備えたことを特徴とする内装材の取付構造。
【請求項2】
前記突出部が前記展開経路と交差するように平板状に形成され、前記ヒンジ部が、前記展開経路と交差する方向に延出されていることを特徴とする請求項1に記載の内装材の取付構造。
【請求項3】
前記固定部の展開経路上流側の部位には、前記内装材に対し、前記カーテンシールドエアバッグの非展開時に固定されているとともに展開時のカーテンシールドエアバッグが前記突出部に当接した時に前記固定が解除される拡張固定部が前記ヒンジ部を間にするように形成されており、
前記突出部は、前記ヒンジ部よりも前記拡張固定部側に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の内装材の取付構造。
【請求項4】
前記拡張固定部は、前記内装材との固定が解除されてヒンジ部にて前記突出部とともに屈曲した際、前記ヒンジ部とは反対側の自由端部の端面にはアールが形成されていることを特徴とする請求項3に記載の内装材の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−131345(P2012−131345A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284835(P2010−284835)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】