説明

内装材

【課題】 本発明の課題は、防音性に優れた内装材1を提供することにある。
【解決手段】 立毛不織布2に剛性不織布3を裏打ちして成形形状を安定にし、更に通気性プラスチックシート4を接着して、中空二重壁構造の形成を回避し、更に吸音性とクッション性を向上させるためにフェルト5を積層する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主として自動車の床に敷設される敷設材に使用される内装材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
〔発明の背景〕
例えば自動車の敷設材としては、意匠性の向上、表面の触感を柔らかくすることによる快適性の向上、室内の騒音低減等を目的としてカーペット等が使用される。
【0003】
〔従来の技術〕
従来、カーペットによる車室内の騒音低減の手段としては、カーペット層と、該カーペット層の下に配設された通気性のない質量層と、該質量層の下に配設された異なる流れ抵抗を有する複数の弾性体層とからなる構成Aが提供されている(特許文献1参照)。
更に表皮材層と、不織布からなる吸音層とを熱可塑性樹脂パウダーを加熱溶融することにより形成された通気性樹脂層によって接着した構成Bが提供されている(特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開昭61−70085号公報
【特許文献2】特開2002−219989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
構成Aにあっては、床パネルと質量層とにより二重壁構造が形成されており、同じ質量の一重壁構造に比べると高周波数域では遮音性が向上するが、低周波数域では二重壁構造の共鳴透過により遮音性が低下する周波数が生じることが避けられない。
このような周波数域は更に質量層の質量を増大せしめるか、あるいはパネルと質量層の間の距離を増大させることによって騒音低減が必要のない周波数域に調節することが出来るが自動車の軽量化、省スペースの観点からみてこのような手段は望ましいものではない。
構成Bは構成Aのように連続した質量層のような非通気層を設けないようにして上記構成Aの問題点を解消しようとするものであり、上記表皮材層と吸音層とを接着する樹脂層を通気性にするために完全な遮音壁を形成することがなく、したがって共鳴透過周波数域での透過損失の低下を回避することが出来る。
しかしながら構成Bにあっては、上記通気性樹脂層を形成するために、接着面に熱可塑性樹脂パウダーを散布する工程が必要になり、そのために工程数が増えて生産合理化に反するものとなる。また熱可塑性樹脂パウダーはパウダー化のためにコスト高になる。
更にパウダーを均一な密度で精度良く散布することが困難であり、その結果、カーペットの通気性にむらが生じ、通気性の制御が難しくなる。
また通気性を制御するためには、パウダーの散布量を変える必要があるため、敷設材料の設計質量の変化を伴う。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記従来の課題を解決するための手段として、立毛不織布2と、該立毛不織布2の裏面に積層される低融点繊維含有剛性不織布3と、該低融点繊維含有剛性不織布3の裏面に接着される通気性プラスチック発泡体シート4と、該通気性プラスチック発泡体シート4の裏面に積層されるフェルト5とからなる内装材1を提供するものである。
【0007】
該通気性プラスチック発泡体シート4は、発泡性熱可塑性プラスチックを発泡押出成形によって製造され、押出方向に沿って多数の長孔状気孔4Aが形成されていることが望ましい。 通常、該低融点繊維含有剛性不織布3は融点200℃以下の低融点繊維を10〜100質量%含有しているものが用いられる。
また通常該立毛不織布2と該低融点繊維含有剛性不織布3とは、ニードルパンチングによって結合されており、該通気性プラスチック発泡体シート4は、該低融点繊維含有剛性不織布3と該フェルト5とにそれぞれ熱融着されている。
【発明の効果】
【0008】
〔作用〕
本発明にあっては、立毛不織布2の裏面に低融点繊維含有剛性不織布3が積層されるから、該剛性不織布3に含まれる空気のために、内装材1の吸音性を向上させることが出来る。更に該剛性不織布3は内装材1の剛性を高め成形形状安定性を向上せしめるから、剛性を付与するための通気性プラスチック発泡体シート4の厚みを薄くすることが出来る。通気性プラスチック発泡体シート4の厚みが大であると、通気性プラスチック発泡体シート4に設けた多孔が成形の際につぶれてしまうと云う不具合が生ずる。本発明では通気性プラスチック発泡体シート4の厚みを50μm〜200μmの薄いものとすることが出来る。
更に本発明では、該剛性不織布3の裏面に通気性プラスチック発泡体シート4を接着するので、非通気な遮断層が存在せず、従来構成Aのような二重壁構造が解消され、共鳴透過周波数域における遮音性の低下の問題がなくなり、また該通気性プラスチック発泡体シート4の開孔の径、数により通気性を調節出来るため、吸音特性を調節出来る。
該通気性プラスチック発泡体シート4を発泡性熱可塑性プラスチックの発泡押出成形によって製造すれば、得られるシート4には押出方向に沿って多数の長孔4Aが形成されるので高度に通気性となり、シート4にパンチング加工等で孔明けする必要がなくなる。
該内装材1にあっては、該立毛不織布2の裏面に剛性不織布3を配してニードリングすることによって結合することが望ましく、上記方法にあっては、接着剤の使用は必要でなく、内装材1の通気性が全く阻害されず、内装材1の全体の通気性を5cc〜300cc/cm2/secとして、自動車室内において200〜5000Hzの周波数域の騒音に対して最適な防音対策を採ることが容易に出来る。
このように本発明では立毛不織布2と剛性不織布3を構成する繊維の絡合、および立毛不織布2と該剛性不織布3との結合をニードリングと云う一つの工程で行うことが出来るので、工程数が大巾に削減され、生産合理化が実現され、生産コストが低減される。
【0009】
〔効果〕
本発明にあっては、内装材は剛性不織布によって良好な成形形状安定性を付与され、また通気性プラスチック発泡体は高度に通気性を有するので、二重壁構造の共鳴透過による遮音性の低下を回避することが出来、広い範囲の周波数にわたって優れた防音を発揮することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を以下に詳細に説明する。
本発明の一実施例を図1に示す。図1に示す内装材1において、2は立毛不織布であり、該立毛不織布2の裏面には低融点繊維含有剛性不織布3が積層され、更に該剛性不織布3の裏面には通気性プラスチック発泡体シート4が接着される。そして該シート4の裏面には更にフェルト5が積層される。
以下に上記構成に使用する各要素について詳細に説明する。
【0011】
〔立毛不織布〕
立毛不織布2としては、不織布の一面にニードリングによって立毛層を形成したもの(ニードルカーペット)、上記不織布の一面にタフティングにより立毛層を形成したもの(タフトカーペット)のいずれも使用されてよい。また立毛層としては、ループパイルからなるもの、カットパイルからなるもの等いずれでもよい。
生産性と価格の点からみて、望ましい立毛不織布2はニードルパンチカーペットである。ニードルパンチカーペットは繊維ウエブをニードリングして繊維を絡合し、更にニードリングして一面に立毛層を形成することによって製造され、タフトカーペットのように基布を使用しないので風合いが良好であり、柔軟で延伸性も良いので所望の形状に成形し易い。また製織の必要がなく、高速で生産することが出来る。
【0012】
ニードルパンチカーペットの中でもディロアニードルパンチカーペットは本発明にとって望ましいものである。該ディロアニードルパンチカーペットにあっては、ブラシヘッド上に繊維フェルトをセットし、上からニードリングを行い、ニードリングにより下面に形成されたパイルがブラシヘッド中に突入することによってパイル倒れが防止されるので、風合いが更に良好になり感触も柔らかになり、本発明にとって特に適するものである。
【0013】
上記立毛不織布2に使用される繊維としては、例えばポリエステル繊維、脂肪族または芳香族ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン繊維、ビニリデン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリウレタン繊維、ビニロン、レーヨン、キュプラ、アセテート繊維等のような有機合成繊維であり、上記繊維は2種以上混合されてもよいし、またガラス繊維、岩綿、セラミック繊維、カーボン繊維等の無機繊維、あるいはパルプ、木片等の木質繊維、木綿、竹繊維、ヤシ繊維、ケナフ繊維、麻繊維等の植物繊維の若干量が混合されてもよい。繊維太さは通常2d〜30d、繊維長さは通常31mm〜102mmのものが使用され、該立毛不織布2の目付け量は通常150〜600g/m2 である。
【0014】
〔低融点繊維含有剛性不織布〕
本発明に使用される低融点繊維含有剛性不織布(以下剛性不織布と云う)3は、内装材1の剛性を高めかつ通気性を制御する効果もあり、低融点繊維100%あるいは低融点繊維を通常繊維に混合したニードル不織布が使用される。低融点繊維からなるニードル不織布あるいは低融点繊維を混合したニードル不織布はニードル密度を立毛不織布に使用するニードルカーペットよりも高くして繊維を強固に絡合し突き固める。該低融点繊維としては融点200℃以下のポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維等が例示され、該ニードル不織布中該低融点繊維は10〜100質量%混合される。該剛性不織布3の剛性は、曲げ強さが0.5N/50mm〜1.5N/50mmになるように設定し、目付け量を100g/m2 〜600g/m2 、密度を60kg/m3 〜200kg/m3 、厚みを4.0mm〜6.0mmにすることが望ましい。また通気性は、音響的観点から50cc/cm2/sec以上とすることが望ましい。
【0015】
〔通気性プラスチック発泡体シート〕
本発明に使用される通気性プラスチック発泡体シート4としては、主としてポリプロピレン、ポリエチレン、低融点ポリエステル、低融点ポリアミド等の融点が200℃以下の熱接着可能な低融点樹脂シートがある。該シートは例えばTダイ押出し成形法および/またはカレンダー法あるいはインフレーション法によって製造され、通常厚さは50μm〜300μmで単位面積当り質量50g/m2 〜300g/m2 のものが使用される。
該通気性プラスチック発泡体シート4には例えばニードリングやパンチングによって多孔が設けられるが、該開孔の径は0.01mm〜3.5mm、望ましくは0.01mm〜3mm、より望ましくは0.01mm〜2.5mmに設定し、また孔の数は1cm2あたり3.0個以上、より望ましくは5.0個以上に設定する。この開孔は音響的な観点から該通気性プラスチック発泡体シート4を使用して製造される内装材1の通気性が5〜40cc/cm2/secになるようにする。
望ましい通気性プラスチック発泡体シート4の製造方法としては、発泡剤を混合した発泡性熱可塑性プラスチックを、該発泡剤の分解温度以上でかつ該熱可塑性プラスチックの融点以上の温度でTダイから押出してシートを成形する方法がある。このような方法では図2に示すように多数の長孔状気孔4Aが押出方向に沿って多数形成されており、高度な通気性を有し、またニードリングやパンチングの必要はない。
前記したように本発明では剛性不織布3によって内装材1の剛性を補強するから、該通気性プラスチック発泡体シート4の厚みは50μm〜200μmと云う薄いものに設定出来、このような薄いシート4にあっては、成形の際のシートの厚み方向の縮小によって気孔がつぶれることが殆んどなく、好ましい通気性が維持される。
【0016】
〔フェルト〕
本発明に使用されるフェルト5は、内装材1にクッション性、断熱性、吸音性を付与するものであって、合成樹脂をバインダーとして使用したレジンフェルトやニードルパンチングによって繊維を絡合したニードルパンチンフェルト等が使用され、該フェルト5の目付け量は通常300g/m2 〜2000g/m2 、密度は70kg/m3 以下とされる。
【0017】
〔内装材の製造〕
本発明の内装材1を連続的に製造するには、図3に示すように立毛不織布2のロール7から立毛不織布2を引出し、ガイドローラー8を介して矢印方向に進行するベルトコンベア6上に裏面を上にして導入し、更に剛性不織布3のロール9から剛性不織布3を引出してガイドローラー10を介して該立毛不織布2の上側(裏面)に重ね、この状態でニードリング装置11に導入してニードリングを行い。該立毛不織布2の裏面に該剛性不織布3を結合する。
【0018】
その後該剛性不織布3の上面(裏面)にTダイ12から発泡性熱可塑性プラスチックを溶融しかつ発泡せしめてシート状に押出し、通気性プラスチック発泡体シート4を形成する。
【0019】
更に該通気性プラスチック発泡体シート4が軟化状態を維持しているうちに、ロール13からフェルト5を引出し、圧着ローラー14によって該プラスチック発泡体シート4の裏面に圧着する。このようにして製造された内装材1の原反1Aは、カッター15によって所定の寸法にカットされ、所望なれば所定形状に成形される。成形は該原反1Aを加熱して剛性不織布3の低融点繊維と、通気性プラスチック発泡体シート4とを軟化せしめ、プレス成形を行う方法を採るのが一般的である。
【0020】
上記方法において、立毛不織布2の代わりに立毛不織布2を形成するためのフリースAを使用し、あるいは剛性不織布3の代わりに剛性不織布3を形成するためのフリースBを使用し、ニードルパンチングによってフリースAの繊維を絡合すると共に立毛し、あるいはフリースBを絡合して剛性不織布3を形成し、同時に該立毛不織布2と該剛性不織布3を結合してもよい。
【0021】
また上記方法において、原反1Aは直ちにカットすることなくロールに巻き取って保管あるいは輸送してもよい。
【0022】
〔実施例〕
以下に本発明の実施例を示す。
図1に示す内装材1を下記の材料を用いて製造する。
(1) 立毛不織布2
ポリエステル繊維ディロアニードルパンチカーペット:目付け量250g/m2
(2) 剛性不織布3
融点150℃の低融点ポリエステル繊維と、融点270℃の高融点ポリエステル 繊維との6:3質量比混合物をニードルパンチングによって絡合し、更に200 ℃、5分間の熱処理を行ったもの。目付け量600g/m2 、厚み5mm、密度 150kg/m3 、曲げ強さ0.8N/50mm。
(3) 通気性プラスチック発泡体シート4
発泡性ポリエチレンをTダイから押出し発泡成形した。目付け量100g/m2 、厚み110μm、気孔数平均300個/m2
(4) フェルト5
反毛繊維のニードルパンチフェルト、目付け量1000g/m2 、厚み20mm 、密度50kg/m3
【0023】
上記構成において、立毛不織布2と剛性不織布3とはニードルパンチングによって結合し、剛性不織布3と通気性プラスチック発泡体シート4とフェルト5との接着は、熱接着によって行った。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の内装材は、広い範囲の周波数にわたって優れた防音遮音効果を有し、自動車用敷設材料として極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施例を示す側断面図
【図2】通気性プラスチック発泡体シートの平面図
【図3】内装材製造装置システム説明図
【符号の説明】
【0026】
1 内装材
2 立毛不織布
3 剛性不織布
4 通気性プラスチック発泡体シート
4A 長孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立毛不織布と、該立毛不織布の裏面に積層される低融点繊維含有剛性不織布と、該低融点繊維含有剛性不織布の裏面に接着される通気性プラスチック発泡体シートと、該通気性プラスチック発泡体シートの裏面に積層されるフェルトとからなることを特徴とする内装材。
【請求項2】
該通気性プラスチック発泡体シートは、発泡性熱可塑性プラスチックを発泡押出成形によって製造され、押出方向に沿って多数の長孔状気孔が形成されている請求項1に記載の内装材。
【請求項3】
該低融点繊維含有剛性不織布層は融点200℃以下の低融点繊維を10〜100質量%含有している請求項1または2に記載の内装材。
【請求項4】
該立毛不織布と該低融点繊維含有剛性不織布とは、ニードルパンチングによって結合されており、該通気性プラスチック発泡体シートは、該低融点繊維含有剛性不織布と該フェルトとにそれぞれ熱融着されている請求項1〜3のいずれかに記載の内装材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−8082(P2007−8082A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−193751(P2005−193751)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(000106254)サンケミカル株式会社 (6)
【Fターム(参考)】