説明

内装部品縫製部構造

【課題】主に、縫製部の有無に拘らず共通の芯材を使用し得るようにする。
【解決手段】表皮材22とクッション材23と芯材24とを表面側から順に有する少なくとも三層構造の内装部品21が設けられ、内装部品21が、表面に、表皮材22の合せ目と成る縫製ライン25と、縫製ライン25の側部に沿って延びる側部縫製線部26とを有する縫製部27を備えた内装部品縫製部構造であって、表皮材22の裏面側にクッション材23を予め貼付けて成る複層シート31を設けると共に、複層シート31を芯材24の表面に貼付けることによって内装部品21を構成し、複層シート31にクッション材23を平らに押潰して成る押潰部33を設けると共に、縫製部27を押潰部33またはその周辺に形成し、縫製部27を、芯材24の凹部のない芯材平坦部分34に貼付けて、凹凸のないフラット状縫製部35を構成するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内装部品縫製部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、車室内の各部に各種の内装部品が取付けられている。このような内装部品には、表皮材と芯材とを表面側から順に有する二層構造のものや、表皮材と芯材との間にクッション材を有して、より触感や装飾性などを高めた三層構造のものなどが存在している。
【0003】
そして、このような内装部品には、縫製部を備えたものも存在している。このような縫製部は、少なくとも、表面に、表皮材の合せ目と成る縫製ラインと、縫製ラインの側部に沿って延びる側部縫製線部とを有している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
従来の縫製部を有する三層構造の内装部品には、例えば、図7、図9、図11に示すようなものがある。
【0005】
まず、図7のものの場合、まず、図8(a)に示すように、二枚の表皮材1,1を、端部を揃えた状態で互いに重ね合せて配置する。そして、重ね合わされた二枚の表皮材1,1の、上記端部から縫代2,2に必要な幅寸法3を有した内側の位置を互いに縫合して地縫線部4を設ける。
【0006】
次に、図8(b)に示すように、地縫線部4を中心に二枚の表皮材1,1を開いた状態にして、表皮材1,1の表面側に縫製ライン5を形成する(出現させる)。また、二枚の表皮材1,1の縫代2,2を開いた状態にして、対応する表皮材1,1の裏面側に重ね合わせると共に、表皮材1,1と対応する縫代2,2とを縫製して(重ね縫い)、側部縫製線部6,6を形成する。
【0007】
そして、図8(c)に示すように、縫製された二枚の表皮材1,1の裏面側に、一枚の共通のクッション材7を貼付け、クッション材7を一枚の芯材8の表面に貼付けて、内装部品9(9a)を完成するようにしている。
【0008】
また、図9のものの場合、まず、図10(a)に示すように、二枚の表皮材1,1を、端部を揃えた状態で互いに重ね合せて配置する。そして、重ね合わされた二枚の表皮材1,1の、上記端部からクッション材7の厚みと等しい幅寸法11の突合代12,12を有した内側の位置を互いに縫合して地縫線部4を設ける。
【0009】
次に、図10(b)に示すように、地縫線部4を中心に二枚の表皮材1,1を開いた状態にして、表皮材1,1の表面側に縫製ライン5を形成する(出現させる)。また、二枚の表皮材1,1の端部の突合代12,12を、表皮材1,1の他の部分に対し面直方向へ曲げて突合せた状態とする。更に、二枚の表皮材1,1の地縫線部4の側部を縫製して(一重縫い)、側部縫製線部6,6を形成する。
【0010】
そして、図10(c)に示すように、縫製された二枚の表皮材1,1および各突合代12,12の裏面側に、各表皮材1,1に対応する二枚のクッション材7,7を個別に貼付け、クッション材7,7を一枚の芯材8の表面に貼付けて、内装部品9(9b)を完成するようにしている。
【0011】
或いは、図11のものの場合、まず、図12(a)に示すように、表皮材1の裏面側にクッション材7を予め貼付けて成る複層シート15を設ける。そして、二枚の複層シート15,15を、端部を揃えた状態で表皮材1,1どうしが内面側にて重なり合うように配置する。そして、重ね合わされた二枚の複層シート15,15の、上記端部から縫代2,2に必要な幅寸法3を有した内側の位置を互いに縫合して地縫線部4を設ける。
【0012】
次に、図12(b)に示すように、地縫線部4を中心に二枚の複層シート15,15を開いた状態にして、表皮材1,1の表面側に縫製ライン5を形成する(出現させる)。また、二枚の複層シート15,15の縫代2,2を開いて、対応する複層シート15,15の裏面側に重ね合わせた状態とし、複層シート15,15と対応する縫代2,2とを圧縮させた状態で縫製して(重ね縫い)側部縫製線部6,6を形成する。
【0013】
そして、図12(c)に示すように、縫製された二枚の複層シート15,15を一枚の芯材8の表面に貼付けて、内装部品9(9c)を完成するようにしている。
【特許文献1】特開2002−79852
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
縫製部を有する三層構造の内装部品では、縫製部をフラットに仕上げることが品質上必要となるので、図7の場合には、芯材8の縫製ライン5や側部縫製線部6,6の位置にフラット化に必要な凹み量を有する凹部18を設ける必要があった。
【0015】
しかし、このようにすると、縫製部がある仕様と、縫製部がない仕様とで形状の異なる二種類の芯材を用意する必要が生じるため、即ち、凹部18のある芯材8と、凹部18のない芯材8とが必要になるため、生産コストがかかるという問題があった。
【0016】
また、図9の場合には、凹部18のない芯材8を用いることができるという利点がある反面、各表皮材1,1に対してクッション材7,7をそれぞれ個別に貼付ける必要が生じるので、貼付工数が2倍になると共に、各表皮材1,1と対応するクッション材7,7との間に、高度な位置合せが必要となり、図7の場合とは別の意味で、生産コストがかかるという問題があった。
【0017】
そして、図7や図9の場合、表皮材1にクッション材7を貼付けるのにコストがかかっているため、図11のように、予め、表皮材1にクッション材7が貼付けられた複層シート15を用いることが推進されているが、複層シート15は、単体の表皮材1の何倍もの厚みを有しているため、芯材8に、より大きな凹部18が必要となってしまい、図7と同様の問題を回避することができなかった。
【0018】
なお、上記した以外にも、本発明に至る過程で新たな問題やその他の問題などが生じることが考えられるが、そのようなものについては、本発明の中で説明することによって、この欄での記載に代えることができるものとする。但し、必要な場合には、この欄に流用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、表皮材とクッション材と芯材とを表面側から順に有する少なくとも三層構造の内装部品が設けられ、該内装部品が、表面に、表皮材の合せ目と成る縫製ラインと、該縫製ラインの側部に沿って延びる側部縫製線部とを有する縫製部を備えた内装部品縫製部構造において、表皮材の裏面側にクッション材を予め貼付けて成る複層シートを設けると共に、該複層シートを芯材の表面に貼付けることによって前記内装部品を構成し、前記複層シートに前記クッション材を平らに押潰して成る押潰部を設けると共に、前記縫製部を前記押潰部またはその周辺に形成し、前記縫製部を、芯材の凹部のない芯材平坦部分に貼付けて、凹凸のないフラット状縫製部を構成したことを特徴としている。
【0020】
請求項2に記載された発明は、上記において、二枚の複層シートを、端部を揃えた状態で表皮材どうしが内面側に重なり合うように配置し、重ね合わされた二枚の複層シートの外面側に位置する両クッション材の上記端部に、縫代の二倍またはそれよりも複層シートの厚み分程度大きい幅寸法を有する押潰部を形成し、該押潰部の幅中央部に二枚の複層シートを互いに縫合して成る地縫線部を設け、該地縫線部を中心に二枚の複層シートを開いた状態にして、表面側に縫製ラインを形成すると共に、地縫線部を折目として押潰部を裏面側へ半折にして複層シートと同じ厚みになるように互いに重ね合わせた状態とし、重ね合わされた半折状態の押潰部に、前記側部縫製線部を形成したことを特徴としている。
【0021】
請求項3に記載された発明は、上記において、二枚の複層シートを、端部を揃えた状態で表皮材どうしが内面側に重なり合うように配置し、重ね合された二枚の複層シートの外面側に位置する両クッション材の上記端部に、クッション材の厚み程度の幅寸法を有する押潰部を形成し、該押潰部に二枚の複層シートの両表皮材を接合する接合部を設け、該接合部を中心に二枚の複層シートを開いた状態にして、表面側に縫製ラインを形成すると共に、押潰部のコーナー部分を折曲げてコーナー部分の両辺を近接させ、複層シートの前記接合部の側部に、前記側部縫製線部を形成したことを特徴としている。
【0022】
請求項4に記載された発明は、上記において、前記接合部が、二枚の複層シートの両表皮材の、押潰部の境界部どうしを互いに縫合して成る地縫線部であることを特徴としている。
【0023】
請求項5に記載された発明は、上記において、前記接合部が、二枚の複層シートの両表皮材の、押潰部の部分を互いに溶着して成る溶着部であることを特徴としている。
【0024】
なお、上記は、それぞれ、所要の作用効果を発揮するための必要最小限の構成であり、上記構成の詳細や、上記されていない構成については、それぞれ自由度を有しているのは勿論である。そして、上記構成の記載から読取ることが可能な事項については、特に具体的に記載されていない場合であっても、その範囲内に含まれるのは勿論である。また、上記以外の構成を追加した場合には、追加した構成による作用効果が加わることになるのは勿論である。
【発明の効果】
【0025】
請求項1の発明によれば、上記構成により、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、複層シートの押潰部またはその周辺に縫製部を形成することにより、複層シートの厚みに影響を与えずに縫製部を形成することができるようになるので、芯材に凹部が不要となり、縫製部の有無に拘らず共通の芯材を使用できるようになる。また、複層シートを用いることにより、表皮材とクッション材との貼付けが不要となるので、その分、生産コストを低減することができる。更に、内装部品が立体形状を有しているような場合であっても、容易に縫製部を形成することが可能となる。
【0026】
請求項2の発明によれば、上記構成により、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、地縫線部を折目として押潰部を裏面側へ半折にすることで複層シートと同じ厚みとすることができるので、芯材に凹部がなくてもフラット状縫製部を達成することができるようになる。また、半折状態の押潰部が縫代となるので、縫代を重ね縫いした状態の側部縫製線部を得ることができる。
【0027】
請求項3の発明によれば、上記構成により、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、押潰部の幅寸法を小さくすることにより、縫製部周辺の構成が簡略化され、また、複層シートの重なり合いがなくなるので、芯材に凹部がなくてもフラット状縫製部を達成することができるようになる。
【0028】
請求項4の発明によれば、上記構成により、地縫線部によって二枚の複層シートを確実に接合することができる。
【0029】
請求項5の発明によれば、上記構成により、地縫線部をなくすことができると共に、押潰部と溶着部とを同時に形成することができるので、製造工程を簡略化してコストを下げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明は、主に、縫製部の有無に拘らず共通の芯材を使用できるようにすることなどを目的としている。
【0031】
以下、本発明を具体化した実施例について、図示例と共に説明する。
【0032】
なお、以下の実施例は、上記した背景技術や発明が解決しようとする課題などと密接な関係があるので、必要が生じた場合には、互いに、記載を流用したり、必要な修正を伴って流用したりすることができるものとする。
【実施例】
【0033】
図1〜図6は、この発明の実施例およびその変形例などを示すものである。
【0034】
まず、構成について説明する(主に、図1を参照のこと)。
【0035】
「基本構成」
自動車などの車両には、車室内の各部に各種の内装部品21が取付けられている。このような内装部品21には、表皮材22とクッション材23と芯材24とを表面側から順に有する少なくとも三層構造のものが存在している。なお、表皮材22には、皮革、合成皮革、ウレタン合皮、PVC材などが用いられる。
【0036】
このような三層構造の内装部品21には、表面に、表皮材22の合せ目と成る縫製ライン25と、縫製ライン25の側部に沿って延びる側部縫製線部26とを有する縫製部27を備えたものが存在する。
【0037】
そして、以上のような基本構成に対し、この実施例のものでは、以下の構成を備えている。
【0038】
「各実施例に共通の構成」
表皮材22の裏面側にクッション材23を予め貼付けて成る複層シート31を設ける。そして、複層シート31を芯材24の表面に貼付けることによって内装部品21を構成する。この際、複層シート31にクッション材23を平らに押潰して成る押潰部33を設ける。そして、縫製部27を押潰部33またはその周辺に形成する。更に、縫製部27を、芯材24の凹部のない芯材平坦部分34に貼付けて、凹凸のないフラット状縫製部35を構成させるようにする。
【0039】
以上は、以下の各実施例に共通の構成である。以下、各実施例について説明する。
【0040】
「実施例1」
図1の内装部品21では、まず、図2(a)に示すように、二枚の複層シート31を、端部を揃えた状態で表皮材22どうしが内面側にて重なり合うように配置する。
【0041】
次に、図2(b)に示すように、重ね合わされた二枚の複層シート31の外面側に位置する両クッション材23の上記端部に、縫代41(図2(d)参照)の二倍またはそれよりも複層シート31の厚み分程度大きい幅寸法42を有する押潰部33を形成する。
【0042】
この押潰部33は、溶着装置43を用いた溶着工法(超音波(熱)溶着、熱溶着など)によって形成する(以下同様)。
【0043】
更に、図2(c)に示すように、押潰部33の幅中央部に二枚の複層シート31を互いに縫合して成る地縫線部45を設ける。この地縫線部45は、複層シート31の上記端部に沿って形成される。
【0044】
そして、図2(d)に示すように、地縫線部45を中心に二枚の複層シート31を開いた状態にして、表面側に縫製ライン25を形成する(出現させる)。同時に、地縫線部45を折目として押潰部33を裏面側へ半折にして、複層シート31と同じ厚みになるように互いに重ね合わせた状態とする。そして、重ね合わされた半折状態の押潰部33を縫製して(重ね縫い)、側部縫製線部26を形成する。この側部縫製線部26は、上記した縫代41の部分に設けるようにする。
【0045】
最後に、図1に示すように、縫製された二枚の複層シート31,31を一枚の芯材24の表面に貼付けて、内装部品21(21a)を完成する。このようにして構成された内装部品21aは、縫代41を有するものとなる。
【0046】
「実施例2」
図3の内装部品21では、まず、図4(a)に示すように、二枚の複層シート31を、端部を揃えた状態で表皮材22どうしが内面側にて重なり合うように配置する。
【0047】
次に、図4(b)に示すように、重ね合された二枚の複層シート31の外面側に位置する両クッション材23の上記端部に、クッション材23の厚み程度の幅寸法46を有する押潰部33を形成する。
【0048】
更に、図4(c)に示すように、押潰部33に、二枚の複層シート31の両表皮材22を接合する接合部47を設ける。
【0049】
この際、接合部47を、二枚の複層シート31の両表皮材22の、押潰部33(と他の部分と)の境界部どうしを互いに縫合して成る地縫線部45とする。
【0050】
そして、図4(d)に示すように、接合部47を中心に二枚の複層シート31を開いた状態にして、表面側に縫製ライン25を形成する(出現させる)。また、押潰部33のコーナー部分を折曲げて、コーナー部分の両辺を近接させ(折当てるようにし)、複層シート31の接合部47の側部に、側部縫製線部26を形成する。この側部縫製線部26は、押潰部33ではない部分に形成される。
【0051】
最後に、図3に示すように、縫製された二枚の複層シート31,31を一枚の芯材24の表面に貼付けて、内装部品21(21b)を完成する。このようにして構成された内装部品21bは、縫代41を有さないと共に、地縫線部45を有するものとなる。
【0052】
「実施例3」
図5の内装部品21では、まず、図6(a)に示すように、二枚の複層シート31を、端部を揃えた状態で表皮材22どうしが内面側にて重なり合うように配置する。
【0053】
次に、図6(b)に示すように、重ね合された二枚の複層シート31の外面側に位置する両クッション材23の上記端部に、クッション材23の厚み程度の幅寸法46を有する押潰部33を形成する。
【0054】
更に、押潰部33に、二枚の複層シート31の両表皮材22を接合する接合部47を設ける。
【0055】
この際、接合部47を、二枚の複層シート31の両表皮材22の、押潰部33の部分を互いに溶着して成る溶着部51とする。
【0056】
そして、図6(c)に示すように、接合部47を中心に二枚の複層シート31を開いた状態にして、表面側に縫製ライン25を形成する(出現させる)。また、押潰部33のコーナー部分を折曲げて、コーナー部分の両辺を近接させ(折当てるようにし)、複層シート31の接合部47の側部に、側部縫製線部26を形成する。この側部縫製線部26は、押潰部33ではない部分に形成される。
【0057】
最後に、図5に示すように、縫製された二枚の複層シート31,31を一枚の芯材24の表面に貼付けて、内装部品21(21c)を完成する。このようにして構成された内装部品21cは、縫代41を有さないと共に、地縫線部45を有さないものとなる。
【0058】
「作用」
次に、この実施例の作用について説明する。
【0059】
この実施例によれば、以下のような作用効果が得られる。
【0060】
(1)表皮材22とクッション材23と芯材24とを表面側から順に有する少なくとも三層構造の内装部品21が設けられ、内装部品21が、表面に、表皮材22の合せ目と成る縫製ライン25と、縫製ライン25の側部に沿って延びる側部縫製線部26とを有する縫製部27を備えた内装部品縫製部構造において、表皮材22の裏面側にクッション材23を予め貼付けて成る複層シート31を設けると共に、複層シート31を芯材24の表面に貼付けることによって内装部品21を構成し、複層シート31にクッション材23を平らに押潰して成る押潰部33を設けると共に、縫製部27を押潰部33またはその周辺に形成し、縫製部27を、芯材24の凹部のない芯材平坦部分34に貼付けて、凹凸のないフラット状縫製部35を構成したことにより、以下のような作用効果を得ることができる。
【0061】
即ち、複層シート31の押潰部33またはその周辺に縫製部27を形成することにより、複層シート31の厚みに影響を与えずに縫製部27を形成することができるようになるので、芯材24に凹部が不要となり、縫製部27の有無に拘らず共通の芯材24を使用できるようになる。即ち、縫製部27のある仕様と、縫製部27のない仕様(特に図示せず)とで、同じ芯材24を使用することが可能となる。また、複層シート31を用いることにより、表皮材22とクッション材23との貼付けが不要となるので、その分、生産コストを低減することができる。更に、内装部品21が立体形状を有しているような場合であっても、容易に縫製部27を形成することが可能となる。
【0062】
(2)二枚の複層シート31を、端部を揃えた状態で表皮材22どうしが内面側にて重なり合うように配置し、重ね合わされた二枚の複層シート31の外面側に位置する両クッション材23の上記端部に、縫代41の二倍またはそれよりも複層シート31の厚み分程度大きい幅寸法42を有する押潰部33を形成し、押潰部33の幅中央部に二枚の複層シート31を互いに縫合して成る地縫線部45を設け、地縫線部45を中心に二枚の複層シート31を開いた状態にして、表面側に縫製ライン25を形成すると共に、地縫線部45を折目として押潰部33を裏面側へ半折にして複層シート31と同じ厚みになるように互いに重ね合わせた状態とし、重ね合わされた半折状態の押潰部33に、側部縫製線部26を形成したことにより、以下のような作用効果を得ることができる。
【0063】
即ち、地縫線部45を折目として押潰部33を裏面側へ半折にすることで複層シート31と同じ厚みとすることができるので、芯材24に凹部がなくてもフラット状縫製部35を達成することができるようになる。また、半折状態の押潰部33が縫代41となるので、縫代41を重ね縫いした状態の側部縫製線部26を得ることができる。
【0064】
(3)二枚の複層シート31を、端部を揃えた状態で表皮材22どうしが内面側にて重なり合うように配置し、重ね合された二枚の複層シート31の外面側に位置する両クッション材23の上記端部に、クッション材23の厚み程度の幅寸法46を有する押潰部33を形成し、押潰部33に二枚の複層シート31の両表皮材22を接合する接合部47を設け、接合部47を中心に二枚の複層シート31を開いた状態にして、表面側に縫製ライン25を形成すると共に、押潰部33のコーナー部分を折曲げてコーナー部分の両辺を近接させ、複層シート31の接合部47の側部に、側部縫製線部26を形成したことにより、以下のような作用効果を得ることができる。
【0065】
即ち、押潰部33の幅寸法46を小さくすることにより、縫製部27周辺の構成が簡略化され、また、複層シート31の重なり合いがなくなるので、芯材24に凹部がなくてもフラット状縫製部35を達成することができるようになる。
【0066】
(4)接合部47が、二枚の複層シート31の両表皮材22の、押潰部33の境界部どうしを互いに縫合して成る地縫線部45であることにより、地縫線部45によって二枚の複層シート31を確実に接合することができる。
【0067】
(5)接合部47が、二枚の複層シート31の両表皮材22の、押潰部33の部分を互いに溶着して成る溶着部51であることにより、地縫線部45をなくすことができると共に、押潰部33と溶着部51とを同時に形成することができるので、製造工程を簡略化してコストを下げることができる。
【0068】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施例1にかかる内装部品縫製部構造の断面図である。
【図2】(a)(b)(c)(d)は、図1の製造工程図である。
【図3】本発明の実施例2にかかる内装部品縫製部構造の断面図である。
【図4】(a)(b)(c)(d)は、図3の製造工程図である。
【図5】本発明の実施例3にかかる内装部品縫製部構造の断面図である。
【図6】(a)(b)(c)は、図5の製造工程図である。
【図7】従来例にかかる内装部品縫製部構造の図である。
【図8】(a)(b)(c)は、図7の製造工程図である。
【図9】他の従来例にかかる内装部品縫製部構造の図である。
【図10】(a)(b)(c)は、図9の製造工程図である。
【図11】別の従来例にかかる内装部品縫製部構造の図である。
【図12】(a)(b)(c)は、図11の製造工程図である。
【符号の説明】
【0070】
21 内装部品
22 表皮材
23 クッション材
24 芯材
25 縫製ライン
26 側部縫製線部
27 縫製部
31 複層シート
33 押潰部
34 芯材平坦部分
35 フラット状縫製部
41 縫代
42 幅寸法
45 地縫線部
46 幅寸法
47 接合部
51 溶着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表皮材とクッション材と芯材とを表面側から順に有する少なくとも三層構造の内装部品が設けられ、
該内装部品が、表面に、表皮材の合せ目と成る縫製ラインと、該縫製ラインの側部に沿って延びる側部縫製線部とを有する縫製部を備えた内装部品縫製部構造において、
表皮材の裏面側にクッション材を予め貼付けて成る複層シートを設けると共に、該複層シートを芯材の表面に貼付けることによって前記内装部品を構成し、
前記複層シートに前記クッション材を平らに押潰して成る押潰部を設けると共に、前記縫製部を前記押潰部またはその周辺に形成し、
前記縫製部を、芯材の凹部のない芯材平坦部分に貼付けて、凹凸のないフラット状縫製部を構成したことを特徴とする内装部品縫製部構造。
【請求項2】
二枚の複層シートを、端部を揃えた状態で表皮材どうしが内面側に重なり合うように配置し、
重ね合わされた二枚の複層シートの外面側に位置する両クッション材の上記端部に、縫代の二倍またはそれよりも複層シートの厚み分程度大きい幅寸法を有する押潰部を形成し、
該押潰部の幅中央部に二枚の複層シートを互いに縫合して成る地縫線部を設け、
該地縫線部を中心に二枚の複層シートを開いた状態にして、表面側に縫製ラインを形成すると共に、
地縫線部を折目として押潰部を裏面側へ半折にして複層シートと同じ厚みになるように互いに重ね合わせた状態とし、
重ね合わされた半折状態の押潰部に、前記側部縫製線部を形成したことを特徴とする請求項1記載の内装部品縫製部構造。
【請求項3】
二枚の複層シートを、端部を揃えた状態で表皮材どうしが内面側に重なり合うように配置し、
重ね合された二枚の複層シートの外面側に位置する両クッション材の上記端部に、クッション材の厚み程度の幅寸法を有する押潰部を形成し、
該押潰部に二枚の複層シートの両表皮材を接合する接合部を設け、
該接合部を中心に二枚の複層シートを開いた状態にして、表面側に縫製ラインを形成すると共に、
押潰部のコーナー部分を折曲げてコーナー部分の両辺を近接させ、
複層シートの前記接合部の側部に、前記側部縫製線部を形成したことを特徴とする請求項1記載の内装部品縫製部構造。
【請求項4】
前記接合部が、二枚の複層シートの両表皮材の、押潰部の境界部どうしを互いに縫合して成る地縫線部であることを特徴とする請求項3記載の内装部品縫製部構造。
【請求項5】
前記接合部が、二枚の複層シートの両表皮材の、押潰部の部分を互いに溶着して成る溶着部であることを特徴とする請求項3記載の内装部品縫製部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−196610(P2009−196610A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−43393(P2008−43393)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】