内面溝付管の製造方法,製造装置及び内面溝付管
【課題】高さが高くかつリード角の大きい内面フィンを有する内面溝付管を、より生産性よく製造することができる製造方法及び製造装置を提供すること。
【解決手段】素管に対して一定方向へ引抜き力を連続的に付与し、縮経ダイスと前記素管内に挿入されたフローティングプラグとにより前記素管を縮経する縮経工程と、前記フローティングプラグへ回転自在に連結され外周面に螺旋状の平行な多数の溝.を有する溝付プラグと、当該溝付プラグ側へ押圧された状態で前記素管の外周を遊転しつつ遊星回転する複数のボール又はロールからなる転造工具とにより、前記素管内へ前記溝付プラグの溝に沿った多数のフィンを転写する転造工程とを含み、前記引抜き力を検出しながら、その検出値に基づいて前記素管に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御することを最も主用な特徴としている。
【解決手段】素管に対して一定方向へ引抜き力を連続的に付与し、縮経ダイスと前記素管内に挿入されたフローティングプラグとにより前記素管を縮経する縮経工程と、前記フローティングプラグへ回転自在に連結され外周面に螺旋状の平行な多数の溝.を有する溝付プラグと、当該溝付プラグ側へ押圧された状態で前記素管の外周を遊転しつつ遊星回転する複数のボール又はロールからなる転造工具とにより、前記素管内へ前記溝付プラグの溝に沿った多数のフィンを転写する転造工程とを含み、前記引抜き力を検出しながら、その検出値に基づいて前記素管に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御することを最も主用な特徴としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空調機や冷凍機等の熱交換器に組み込まれる内面溝付管(伝熱管)の製造方法と、その製造装置及び前記製造方法により製造された内面溝付管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空調機や冷凍機等の熱交換器には、管内面に管軸に対して所定のリード角(ねじれ角)をもつ多数の平行な溝が形成された銅又は銅合金製の内面溝付管が用いられている。
この種の内面溝付管は、以下のように転造加工部を有する製造装置(転造加工法)により製造される。
前記製造装置は、銅又は銅合金からなる素管に対して一定方向へ連続的に引抜く引抜き手段を備え、当該引抜き手段による引抜き方向に沿って、縮径加工部,転造加工部及び仕上げダイス(整形ダイス)を順に備えている。
縮径加工部では、縮径ダイスと前記素管内に挿入されたフローティングプラグとにより前記素管を縮径する。
転造加工部では、前記フローティングプラグへ回転自在に連結され外周面に螺旋状の平行な多数の溝を有する溝付プラグと、当該溝付プラグ側へ押圧された状態で前記素管の外周を遊転しつつ遊星回転する複数のボール又はロールからなる転造工具とにより、前記素管内へ前記溝付プラグの溝に沿った多数のフィンを転写する。
フィンが転写された管は、仕上げダイスに通してさらに縮径される。
【0003】
ところで、ルームエアコンに代表される空調機や冷凍機には、近年の地球環境問題を背景として一層の高性能化,省エネルギー化が求められているため、これらに使用される内面溝付管にもさらなる高性能化が要請されている。
内面溝付管の一層の高性能化には、例えば管内面のフィンをシャープに高く(0.2〜0.4mm)かつ密に形成し(後記特許文献1)、フィンリード角を30〜60度とすることが有効である(後記特許文献2)ことが知られている。
また、最近内面溝付管の製造コストを極力抑えるため、ルームエアコン等へ一般的に使用されているR410a冷媒に対して、耐圧強度を確保できる最小限度の肉厚(溝底肉厚)tで内面溝付管を製造することが要請されている。このR410a冷媒を使用する場合、冷媒の設計作動圧力にもよるが、内面溝付管の外径を4〜7mm程度と想定すると、管の肉厚tは設計上0.18mm以上とする必要があると考えられる。他方、所定以上の伝熱性能を発揮させるためフィンの高さhは少なくとも0.15mmは必要(後記特許文献2)であるから、内面溝付管はフィン高さhと肉厚tとの比h/tが1.2以下であるのが好ましい。
【0004】
前記のような構成の内面溝付管を前記従来方法で製造すると、素管金属材料の加工(変形)効率が極めて低く、管の破断を避けるためには加工速度(引抜き速度)を内面フィンの形状やリード角に応じて極端に落とさなければならず、生産性に問題があった。
特に、熱交換器の製造現場に供給される内面溝付管は、1000m以上の長さのものを円筒状に整列多層巻き(レベルワウンドコイル:LWC)形態に仕上げるのが好ましい。しかし、前記高性能構成であって前記のように極めて長尺の内面溝付管は、前記製造方法による加工時に、素管に加わる加工力が素管の破断強度よりも若干低いかほぼ同等になって、加工設備の振動その他のわずかな外因により素管が破断し易いため、生産性よく製造することは極めて困難であった。
【0005】
前記構成の内面溝付管を生産性よく製造するために、種々の工夫がなされている。
その第1は、例えばフィンリード角の大きい内面溝付管の加工性(フィンの加工性)を向上させるため、フィンの根元部(溝底部)に大きいR部(凹部)を形成することである(後記特許文献2)。
しかし、上記フィン根元のR部は管の伝熱性能には寄与せず、全体の平均肉厚が厚くなって金属材料を多く必要とするので、内面溝付管の製造コストを増大させる。
【0006】
その第2は、前記縮径加工部と転造加工部との間に補助引抜き装置を設置し、この補助引抜き装置により加工時に素管へ補助的引抜き力を付与する製造方法である(後記特許文献3)。
前記補助引抜き装置は、それぞれプーリに保持された状態で素管を挟み、かつ、前記素管の引抜き方向に沿って回転する一対の無端状のタイミングベルトを備え、一方のタイミングベルトは押圧手段により前記素管へ押付けられる。また、各タイミングベルトの素管への接触面には、当該素管が押し込まれる円弧状断面の溝が形成されている。
前記製造方法は、前記補助引抜き装置を、縮径ダイスの出側における素管移動速度の1.0倍以上となる速度で素管を引っ張るように制御する(整形ダイスの出側の引抜き力は低減する。)ことにより、管の破断(断管)を防止しようとするものである。
しかし、加工済み管の引抜き力を低減させることはできるが、補助引抜き装置の制御は引抜き速度基準による制御であるため、管に対する全体の引抜き力の変動幅は大きく、加工中の管の破断を防止するのには不十分である。特に、加工開始段階や加工終了段階のように加工速度が大きく変動し易い領域における引抜き力の変動は大きく、管の破断や折れが発生し易い。
【特許文献1】特開2003−166794号公報
【特許文献2】特開2004−230450号公報
【特許文献3】特開平11−000711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、伝熱性能の優れた前記のようなフィン構成の内面溝付管における生産性の改善にあり、その目的とするところは、高さが高くかつリード角の大きい内面フィンを有する内面溝付管を、より生産性よく製造することができる製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、本発明に係る製造方法を円滑かつ確実に実施することができる内面溝付管の製造装置を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、本発明に係る製造方法により製造された管であって、伝熱性能を一層高めた内面溝付管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る内面溝付管の製造方法は、前記課題を解決するため、
素管に対して一定方向へ引抜き力を連続的に付与し、
縮径ダイスと前記素管内に挿入されたフローティングプラグとにより前記素管を縮径する縮径工程と、
前記フローティングプラグへ回転自在に連結され外周面に螺旋状の平行な多数の溝.を有する溝付プラグと、当該溝付プラグ側へ押圧された状態で前記素管の外周を遊転しつつ遊星回転する複数のボール又はロールからなる転造工具とにより、前記素管内へ前記溝付プラグの溝に沿った多数のフィンを転写する転造工程とを含み、
前記引抜き力を検出しながら、その検出値に基づいて前記素管に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御することを最も主要な特徴としている。
【0009】
本発明に係る内面溝付管の製造装置は、前記課題を解決するため、
素管に対して一定方向へ引抜き力を連続的に付与する引抜き手段と、
縮径ダイスと前記素管内に挿入されたフローティングプラグとにより前記素管を縮径する縮径加工部と、
前記縮径加工部よりも素管の引抜き方向下流側に設置され、前記フローティングプラグへ回転自在に連結され外周面に螺旋状の平行な多数の溝を有する溝付プラグと、当該溝付プラグ側へ押圧された状態で前記素管の外周を遊転しつつ遊星回転する複数のボール又はロールからなる転造工具とにより、前記素管内へ前記溝付プラグの溝に沿った多数のフィンを転写する転造加工部と、
前記引抜き力を検出する引抜き力検出手段と、
前記引抜き力検出手段の検出値に基づいて、前記素管に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御する制御手段とを備えたことを最も主要な特徴としている。
【0010】
本発明に係る内面溝付管は、前記課題を解決するため、前記本発明に係る製造方法により製造され、内面に管軸に対して40〜60度のリード角をもつ多数のフィンを有し、フィン高さhが0.20mm以上であって、前記フィン高さhと隣合うフィン間の溝底肉厚tとの比h/tが1.2以下であることを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る内面溝付管の製造方法によれば、管に対する引抜き力を検出しながら、その検出値に基づいて前記素管に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御するので、加工中管に対する引抜き力の変動幅をより小さくすることができる。そのため、高さが高くかつリード角の大きい内面フィンを有する内面溝付管を、より生産性よく製造することが可能になる。
【0012】
本発明に係る内面溝付管の製造装置によれば、管に対する引抜き力を検出する引抜き力検出手段と、前記引抜き力検出手段の検出値に基づいて、前記素管に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御する制御手段とを備えたので、前記本発明に係る製造方法を円滑かつ確実に実施することができる。
【0013】
本発明に係る内面溝付管はによれば、内面に管軸に対して40〜60度のリード角をもつ多数のフィンを有し、フィン高さhが0.20mm以上であって、前記フィン高さhと隣合うフィン間の溝底肉厚tとの比h/tが1.2以下であるので、伝熱性能を一層高めた内面溝付管を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
第1実施形態
図1は本発明に係る内面伝熱管の製造装置の第1実施形態と、当該製造装置を用いた製造方法を説明するための部分断面図である。
この製造装置は、金属製の素管1に対して一定方向へ引抜き力を連続的に付与する引抜き手段2と、素管1の引抜き方向(図の左側から右方向)に沿って順に設置された縮径加工部3、転造加工部4及び整形ダイス5を備え、さらに力検出手段7、及び制御手段6を具備している。
【0015】
前記縮径加工部3は、縮径ダイス30と前記素管1内に挿入されたフローティングプラグ31とにより前記素管1を縮径する。
前記転造加工部4は、フローティングプラグ31へロッド31aを介して回転自在に連結され外周面に螺旋状の平行な多数の溝を有する溝付プラグ40と、当該溝付プラグ40側へ押圧された状態で前記素管1の外周を遊転しつつ遊星回転する複数のボール又はロールからなる転造工具41とにより、素管1内へ前記溝付プラグ40の溝に沿った多数のフィン1bを転写する。
整形ダイス5では、転造加工部4で内面にフィン1bが加工された素管1をさらに縮径するとともに所定の外径となるように整形し、内面に管軸に対して所定のリード各βを有する多数のフィンが形成された内面溝付管1aを仕上げる。
前記の連続した製造工程において、引抜き力検出手段7により素管1に対する引抜き力(引抜き力の変動量を含む。以下同じ。)を連続的に検出し、当該検出値に基づいて制御手段6により前記素管1に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御する。
以上の構成は、請求項9及び請求項1と対応している。
【0016】
この実施形態においては、引抜き手段2は転造加工部4よりも引抜き方向下流側に設置されていて、加工済みの内面溝付管1aを巻き取る巻取りドラムを兼ねており、前記引抜き力検出手段7は前記巻取り手段2を回転させるモータM1への電流を検出する電流計であり、当該電流計の検出値から前記引抜き手段2のトルクを演算するように構成されている(請求項10,2と対応)。
制御手段6は、制御部60、入力部61、演算部62及び図示しない出力部(表示装置やプリンター等を含む)を備えており、制御手段6には入力部61から引抜き力の目標範囲(目標制御範囲又は範囲のない目標制御値。好ましくは目標制御値。)が入力される。
電流計である引抜き力検出手段7の検出信号(電気信号)は演算部62へ入力され、この入力信号に基づいて前記演算部62で引抜き手段2のトルクが演算される。
【0017】
転造加工部4における転造工具41は素管1の管軸を中心として等角度間隔に配置された複数のボールであり、これらのボールは、引抜き方向下流側へ向けて拡大した急角度の円錐面を有するリング状の加工ヘッド42内へ保持されている。
各ボールは、ベアリング43とともに加工ヘッド42内の出側へ設置されたリング状の押圧部材44と、加工ヘッド42の前記円錐面とにより、管軸方向(溝付プラグ40側)へ押付けられている。符号45は、押圧部材44を介して各ボールに対し圧力を付与する加圧手段である。
この実施形態における制御手段6の制御部60は、検出された前記トルクに基づいて、前記加圧手段45を介して転造工具41の前記素管1への押圧力を加減することにより、素管1に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御する。(請求項14、6と対応)。
上記制御では、前記押圧力の増減に応じて引抜き力は増減する。
前記管の製造中他の条件(素管1の引抜き速度や転造工具41の遊星回転数)は、一定又は一定範囲内に保たれるよう制御される。
この実施形態において、引抜き手段2を兼ねた巻取りドラムに巻き取られた加工済みの内面溝付管1aは、図示しないバスケットその他の収容部に収容され、円筒状の整列多層巻き状に巻き直される。
【0018】
第1実施形態の製造装置を用いた前記製造方法によれば、加工中に素管1の引抜き力の変動幅を狭い範囲内に抑制することができるので、管1の引抜き速度を極端に抑えることなく、かつ、管1の破断や折れを防止しつつ後記のような高性能の内面溝付管を生産性よく製造することができる。
すなわち、前記の製造方法により、図8で示すように、内面に管軸に対して40〜60度のリード角β(図1)をもつ多数のフィン1bを有し、フィン高さhが0.20mm以上であって、フィン高さhと隣合うフィン間の溝底肉厚tとの比h/tが1.2以下である高性能の内面溝付管1aが、工業的な引抜き速度により製造される。
【0019】
第1実施形態では、素管1に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御するため、前記のように転造工具41の素管1への押圧力を加減する構成を採用したが、これに代えて、モータM1を介して素管1の引抜き速度を加減するように構成することができる。(請求項5,13と対応。)
上記制御では、引抜き速度の増減に応じて引抜き力は増減する。
上記管の製造中他の条件(転造工具41の素管1への押圧力や転造工具41の遊星回転数)は一定又は一定範囲内に保たれるよう制御される。
【0020】
第2実施形態
図2は本発明に係る内面伝熱管の製造装置の第2実施形態と、当該製造装置を用いた製造方法を説明するための部分断面図である。
この実施形態において、引抜き力検出手段7は、転造加工部4よりも引抜き方向下流側において、引抜き方向へ移動しつつある加工済みの内面溝付管1aの外周面へ管軸に向けて押付けられた荷重測定器70と、当該押付け部分における前記押付け方向への管軸の変位量を検出する変位計71とを備えている。変位計71は、荷重測定器70の押付けによる素管1の管軸の押付け方向への変位量を検出するのであるから、その検出ヘッドが前記押付け方向と直交する方向から素管1の管軸へ向く状態に設置される。
この実施形態では、移動中の内面溝付管1a外周部へ管軸に向けて押付けられている荷重測定器70はその検出荷重(押付け圧力)を、前記変位計71は検出した管軸の変位量を、それぞれ電気信号に変換して出力し、これらの電気信号が入力された制御手段6の演算部62により、前記荷重と変位量との関係から素管1への引抜き力が演算される。(請求項11,3と対応)。
具体的な検出方法としては、荷重測定器70の管1aへの押付け力を一定に保って管1aの管軸変位量の変動から引抜き力を検出するか、あるいは、管軸変位量を一定に保って荷重測定器70の検出荷重の変動から引抜き力を検出するのが好ましい。
【0021】
この実施形態では、前記のように検出された引抜き力に基づき、転造加工部4の加工ヘッド42を回転させる回転伝達手段46(プーリとベルト)のモータM2を通じて、転造工具41の遊星回転速度(回転数)を加減することにより、素管1に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御する。(請求項14,6と対応)。
上記制御では、転造工具41の遊星回転速度の増減に応じて引抜き力は増減する。
前記管の製造中他の条件(素管1の引抜き速度、転造工具41の素管1への押圧力)は、一定又は一定範囲内に保たれるよう制御される。
【0022】
第2実施形態における他の構成や作用効果は第1実施形態と同様であるので、それらの説明は省略する。
【0023】
第3実施形態
図3は本発明に係る内面伝熱管の製造装置の第3実施形態と、当該製造装置を用いた製造方法を説明するための部分断面図である。
この実施形態において、縮径加工部3には、縮径ダイス30の回転させるための回転伝達手段(プーリとベルト)33とモータM3を含む回転駆動手段32が設けられている。
そして、第2実施形態の装置と同様な引抜き力検出手段7により引抜き力を検出し、当該検出値に基づいて、制御手段6の制御部60により、前記回転駆動手段32のモータM3を通じて縮径ダイス30の回転を制御することにより、素管1に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御する。(請求項15,7と対応)。
すなわち、縮径ダイス30を回転させ(引抜き力は停止時よりも減少する)又は停止させ(引抜き力は回転時よりも増加する)、あるいはその回転速度(回転数)を加減することにより制御するのである。この場合、回転速度が速くなると引抜き力が減少し、回転速度が遅くなると引抜き力が増加する。
前記管の製造中他の条件(素管1の引抜き速度、転造工具41の素管1への押圧力や遊星回転数)は一定又は一定範囲内に保たれるよう制御される。
この実施形態における他の構成や作用効果は第1実施形態と同様であるので、それらの説明は省略する。
【0024】
第4実施形態
図4は本発明に係る内面伝熱管の製造装置の第4実施形態と、当該製造装置を用いた製造方法を説明するための部分断面図である。
この実施形態では、引抜き手段2を除く製造装置は機枠9へ取り付けられており、この機枠9はレール91へ素管1の引抜き方向に沿って可動に載置された可動台90の上に設置されている。
可動台90には、当該可動台90の素管引抜き方向への荷重を測定する荷重測定器70により構成された引抜き力検出手段7が取り付けられ、この検出手段7が検出した荷重は電気信号に変換されて制御手段6へ素管1の引抜き力として入力される。すなわち、素管1への引抜き力は、機枠9及び可動台90を介して検出手段7である荷重測定器70で検出される。(請求項12,4と対応)。
なお、この実施形態では後記のように補助引抜き装置8が設置されているが、当該装置8は補助的引抜き力を素管1へ付与しかつ引抜き力を制御する手段として設置されているものであるから、例えば図1〜図3のような製造装置であって、引抜き手段2及び引抜き力検出手段7を除いた部分を同様な機枠に取り付け、これを前記可動台90へ設置しても実施することができる。
【0025】
この実施形態では、前記縮径加工部3と前記転造加工部4との間には、それぞれ少なくとも一対のプーリ81,81に保持された状態で素管1を挟み、かつ、素管1の引抜き方向に沿って回転する一対の無端状のベルト80,80を含む補助引抜き装置8が設置されている。
前記補助引抜き装置8は、少なくとも一方のベルト80(この実施形態では両方のベルト80,80)を前記素管1に押付ける押圧手段83を備えており、各ベルト80,80は、押圧手段83により素管1を押圧した状態でモータM4により素管1の引抜き方向へ回転し、当該素管1へ補助的引抜き力を付与する。
制御手段6の制御部は、前記ベルト80の素管への押圧力又は各ベルト80の回転速度を制御して前記補助引抜き力を加減することにより、前記素管1に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御する。(請求項16,8と対応)。
すなわち、荷重測定器70では補助引抜き装置8の補助引抜き力を除いた引抜き力が検出されるが、補助引抜き力が減少すると引抜き手段2の負荷が増大して荷重測定器70の測定値が大きくなる。これに伴って、制御部6の制御により補助引抜き力が増大すると引抜き手段2の負荷が減少し荷重測定器70の測定値は小さくなる。当該測定値が所定値以下になると、制御部6により補助引抜き力が減少方向へ制御されるので、この繰り返しにより引抜き力が目標範囲内におさまるように制御される。
前記管の製造中他の条件(素管1の引抜き速度、転造工具41の素管1への押圧力や遊星回転数)は一定又は一定範囲内に保たれるよう制御される。
【0026】
この実施形態において、各ベルト80を保持するそれぞれの対のプーリ81,81は、それぞれ機枠9に対して素管1の方向へ往復スライド可能に設置された各対の保持板84,84へ取り付けられている。そして、前記押圧手段83は、各対の保持板84,84を素管1の方向へ加圧することにより、各ベルト80を前記素管1へ調整可能に押付けるように構成してある。
【0027】
前記各ベルト80,80には、それらの素管1への接触面側へ前記のような回転に支障がない状態に多数のパッド82が長さ方向へ並ぶように取り付けられており、これらのパッド82には、図5で示すように補助引抜き装置8の設置部分を移動する素管1が適合して嵌る寸法で円弧状のガイド溝82aがそれぞれ形成されている。
各パッド82の材質は素管1の材質よりも硬質のものが選ばれ、好ましくは工具鋼が使用される。材質が工具鋼である場合、前記ガイド溝82aの曲率半径/素管半径は1.0〜1.005(好ましくは1.001〜1.003)であるのが好ましい。
【0028】
この実施形態における他の構成や作用効果は第1実施形態と同様であるので、それらの説明は省略する。
【0029】
転造加工部の変形形態
図6は、本発明に係る製造装置における転造加工部4の変形形態を示す部分断面図である。
各転造工具41はロールであり、素管1の引抜き方向上流側へ僅かに広がるように傾斜した円錐状内面を有する加工ヘッド42内へ、それぞれホルダ41aへ回転自在に保持された状態で、等角度の間隔で取り付けられている。
各ホルダ41aの外周面と加工ヘッド42の円錐状内面との間には楔状のスペーサ41bが、加工ヘッド42の入口方向からそれぞれ挿入されており、ベアリング43及び押圧部材44を介して各スペーサ41bを図示しない加圧手段により加工ヘッド42内へ押し込むことにより、各ロールを素管1の外周面へ押圧している。
なお、加工ヘッド42の向きは図の逆向き(右向き)でも実施できる。
【0030】
転造加工部の他の変形形態
図7は、本発明に係る製造装置における転造加工部4の他の変形形態を示す部分断面図である。
転造加工部4の加工ヘッド42は、素管1が中心を通過しかつ小さな間隙を介して並ぶように配置された二つ割状のリング42a,42bから構成され、一方のリング42aはリング状の回転伝達手段45の内面ヘ固定され、他方のリング42bは回転伝達手段45の内面へ、素管1の管軸方向へのみ可動な状態に取り付けてある。
各リング42a,42bの相対面内側には、中心方向に向かって広がる状態の円錐状内面を有し、複数のボールからなる転造工具41は、両方の円錐状内面と素管1の外周面へ接触しかつ等角度間隔に並ぶようにリング42a、42bの相対面間に配置されている。
一方の可動なリング42bを、ベアリング43及び押圧部材44を介して図示しない加圧手段により他方の固定側リング42aへ押し付けることにより、各ボールを素管1の外周面へ押圧している。
なお、リング42a,42bの位置関係は図の逆でも実施できる。
【0031】
その他の実施形態
前記各実施形態において、引抜き力検出手段7と引抜き力の制御対象(素管に対する引抜き速度、転造工具の素管への押圧力、転造工具の遊星回転速度、縮径ダイスの回転、補助引抜き装置の素管への補助的引抜き力等)との組み合わせは限定的なものではなく、いずれの組み合わせでも実施することができる。
【0032】
試験例1
表1で示すように、管(仕上り管)外径、溝底肉厚及びフィンリード角をそれぞれ一定とし、溝数(フィン数)とフィン高さがそれぞれ異なるサンプル管No.1〜5を製造した。
他方表2で示すように、管外径、溝底肉厚、溝数及びフィン高さをそれぞれ一定とし、フィンリード角がそれぞれ異なるサンプル管No.4,6〜11(但し、表1のサンプル管No.4はそのまま表2に併記)を試作した。
なお、管材質はりん脱酸銅である。
【0033】
前記各サンプル管を、それぞれ水平に設置した二重管式熱交換器サンプルの内管として挿入し、それらのサンプル内へ冷媒(R410a)を流すとともに、外管と内管の間の二重管部に冷却水を冷媒に対して対抗流となるように流し、冷却水と冷媒とで熱交換させることにより、冷媒を冷却させた。
そのときの熱交換量から、冷媒の質量流速300kg/m2secにおける管内熱(凝縮熱)伝達率を算出(管自体の熱伝達率も含めて管外面積基準で算出)し、それらを表1,2へ併記した。
【0034】
表1
【0035】
表2
【0036】
表1のように、溝数44以上において、フィン高0.2mm未満の領域ではフィン高さの増大に伴う管内熱伝達率の増加割合が大きく、フィン高さが0.2mmを超える領域ではフィン高さの増大に伴う管内熱伝達率の増加割合は小さくなる傾向を示した。
また、表2のように、フィンリード角40度未満の領域ではリード角の増大に伴う管内熱伝達率の増加割合が大きく、リードが角40度を超える領域ではリード角の増大に伴う管内熱伝達率の増加割合は小さくなる傾向を示し、リード角が60度を越えると管内熱伝達率はリード角増大によっても変化がないことが判明した。
これらのことは、小径で高い伝熱性能の内面溝付管は、フィン高さが0.2mm以上でフィンリード角が40〜60度であって、しかも生産性よく(引抜き速度を落とさないで)製造されることが必要であることを示している。
【0037】
試験例2
本発明方法では、管の引抜き力が常に一定となるように制御されるのが望ましいが、種々の条件により実際の引抜き力の値は一定にはならず所定の範囲内で変動する。
そこで、第1実施形態の製造装置を用い、外径11mm、肉厚0.25mmのりん脱酸銅管を素管として、前記サンプル管No.2を、引抜き速度40m/min、引抜き力目標値1700Nに設定して引抜き試験(仕上げ管長さ1000mm)を行なった。
第1例は管の引抜き力目標値のみを設定して引抜き力を制御しないで、第2例は引抜き力の制御幅目標をややラフ(制御幅は目標値の±10%以下を目指す)にして、第3例は引抜き力制御幅目標を最小にして(制御幅は目標値の±3%以下を目指す)、それぞれ引抜き試験を行なった。引抜き力は、転造工具への押圧力を加減することにより制御した。
それらの管引抜き試験中の引抜き力の実際の変動幅を、巻取りドラムのモータの出力を測定(電流計による)し、その変動幅を連続的に測定してグラフ化出力した。その結果、引抜き力無制御の第1例では図9で示すように変動幅が極めて大きかったが、第2例では図10で示すように変動幅±10以内を、第3例では図11で示すように変動幅±3%以内をそれぞれ達成することができた。
【実施例】
【0038】
次に、外径11mm、肉厚0.27〜0.31mmのりん脱酸銅管を素管とし、長さ2000mの前記サンプル管No.3,4,5,8,9,10(各サンプル管No.1,2,6,7は管形態が単純で引抜き力制御無しで製造することができ、また、No.11は本発明方法によっても生産性よく製造することが実験上困難であったので外した。)を、第1〜第4実施形態の製造装置を用いた製造方法と、特許文献3の公報記載の試作製造装置を用いた製造方法とにより、それぞれ各5サンプル製造した。それらの結果を表3〜8に示した。
ここで素管の肉厚を変化させたのは、内面溝付管の肉厚を一定値(ここでは0.20mm)として溝深さを変化させた場合には製造し易くなるためであり、その値は、サンプル管No.3の素管では0.27mm、サンプル管No.4,8,9,10の素管では0.29mm、サンプル管No.5の素管では0.31mmとした。実際にはこの値に拘わらず、素管の内径は適宜変化させることができる。
なお、各表の結果欄における「○」は円滑に引抜き内面溝付管を製造できたことを、「×」は引抜き開始後備考に記載の長さ前後で断管したことを、「△」は、断管はしなかったが溝付管の長手方向または径方向における肉厚変動、凹み、亀裂などが一部に発生したサンプルがあったことをそれぞれ示している。
【0039】
この実施例において、第1実施形態の装置を用いた各製造例では、転造工具の素管への押圧力を加減することにより引抜き力を制御した。
第2実施形態の装置を用いた各製造例では、転造工具の遊星回転速度(回転数)を加減することにより引抜き力を制御した。
第3実施形態の装置を用いた各製造例では、縮径ダイスの回転を制御することにより引抜き力を制御した。
第4実施形態の製造装置を用いた各製造例では、補助引抜き装置の引抜き力を1000Nに設定するとともに、全体としての引抜き力目標値は各表記載のとおりに設定し、補助引抜き装置の補助引抜き力を加減(ベルトの回転速度を制御)することにより引抜き力を制御した。
また、特許文献3の公報記載の試作製造装置では、補助引抜き装置において素管に1000Nの引抜き力を付与するように設定し、当該補助引抜き装置を、縮径ダイスの出側における素管移動速度の1.1倍となる速度で素管を引っ張るように制御し、全体としての引抜き力を各表記載のとおりに設定するとともに引抜き力制御は行なわなかった。
【0040】
表3
【0041】
表4
【0042】
表5
【0043】
表6
【0044】
表7
【0045】
表8
【0046】
以上表3〜8で示したように、本発明方法の実施例によれば、小径でフィン高さが0.2mm以上かつフィンリード角が40度以上の高性能の内面溝付管を、生産性よく製造することができた。ただし、表5,8で見られるように、比較的小径の管で管内面形態が厳しい(フィン高さ,フィンリード角ともに相対的に高い値である)場合には、引抜き力目標値に対して制御幅を最小にするように精確な制御が必要である。
なお、前記実施例では本発明方法にける引抜き力の具体的な制御手段全部の実施例は記載されていないが、前記各実施形態で説明した他の具体的な引抜き力制御手段によっても、実験上前記実施例と同様な効果を達成することができたのでそれらは割愛した。
また、管の引抜き速度を加減することにより引抜き力が目標値になるように制御する場合、引抜き速度の基準値を設定しておくが、引抜き力制御のためには引抜き速度を加減する。この方法によっても、引抜き速度を一時的に加減した場合、検出引抜き力により当該引抜き速度はさらに加減されて設定基準値近傍の値に戻るので、内面溝付管を1000m以上引抜く間の平均的な引抜き速度は前記基準値をほぼ達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る内面溝付管製造装置の第1実施形態と、当該製造装置を用いた製造方法を説明するための部分断面図である。
【図2】本発明に係る内面溝付管製造装置の第2実施形態と、当該製造装置を用いた製造方法を説明するための部分断面図である。
【図3】本発明に係る内面溝付管製造装置の第3実施形態と、当該製造装置を用いた製造方法を説明するための部分断面図である。
【図4】本発明に係る内面溝付管製造装置の第4実施形態と、当該製造装置を用いた製造方法を説明するための部分断面図である。
【図5】第4実施形態の製造装置における補助引抜き装置のベルトパッドの拡大断面図である。
【図6】本発明に係る製造装置における転造加工部の変形形態を示す部分断面図である。
【図7】本発明に係る製造装置における転造加工部の他の変形形態を示す部分断面図である。
【図8】本発明に係る製造方法によって製造された内面溝付管を説明するための引抜き管の部分拡大断面図である。
【図9】引抜き力無制御状態で引抜き試験を行なった場合の引抜き力の実際の変動幅を連続的に測定してグラフ化出力した線図である。
【図10】本発明方法の一形態により引抜き力を制御しつつ引抜き試験を行なった場合の引抜き力の実際の変動幅を連続的に測定してグラフ化出力した線図である。
【図11】本発明方法の一形態により引抜き力を制御しつつ引抜き試験を行なった場合の引抜き力の実際の変動幅を連続的に測定してグラフ化出力した別の線図である。
【符号の説明】
【0048】
β リード角
1 素管
1a 内面溝付管
1b フィン
2 引抜き手段
3 縮径部
30 縮径ダイス
31 フローティングプラグ
31a ロッド
32 回転駆動手段
33 回転伝達手段
4 転造加工部
40 溝付プラグ
41 転造加工具
41a ホルダ
41b スペーサ
42 加工ヘッド
42a,42b リング
43 ベアリング
44 押圧部材
45 加圧手段
46 回転伝達手段
5 整形ダイス
6 制御手段
60 制御部
61 入力部
62 演算部
7 引抜き力検出手段
70 荷重測定器
71 変位計
8 補助引抜き装置
80 ベルト
81 プーリ
82 パッド
82a ガイド溝
83 押圧手段
84 保持版
9 機枠
90 可動台
91 レール
M1〜M4 モータ
【技術分野】
【0001】
本発明は空調機や冷凍機等の熱交換器に組み込まれる内面溝付管(伝熱管)の製造方法と、その製造装置及び前記製造方法により製造された内面溝付管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空調機や冷凍機等の熱交換器には、管内面に管軸に対して所定のリード角(ねじれ角)をもつ多数の平行な溝が形成された銅又は銅合金製の内面溝付管が用いられている。
この種の内面溝付管は、以下のように転造加工部を有する製造装置(転造加工法)により製造される。
前記製造装置は、銅又は銅合金からなる素管に対して一定方向へ連続的に引抜く引抜き手段を備え、当該引抜き手段による引抜き方向に沿って、縮径加工部,転造加工部及び仕上げダイス(整形ダイス)を順に備えている。
縮径加工部では、縮径ダイスと前記素管内に挿入されたフローティングプラグとにより前記素管を縮径する。
転造加工部では、前記フローティングプラグへ回転自在に連結され外周面に螺旋状の平行な多数の溝を有する溝付プラグと、当該溝付プラグ側へ押圧された状態で前記素管の外周を遊転しつつ遊星回転する複数のボール又はロールからなる転造工具とにより、前記素管内へ前記溝付プラグの溝に沿った多数のフィンを転写する。
フィンが転写された管は、仕上げダイスに通してさらに縮径される。
【0003】
ところで、ルームエアコンに代表される空調機や冷凍機には、近年の地球環境問題を背景として一層の高性能化,省エネルギー化が求められているため、これらに使用される内面溝付管にもさらなる高性能化が要請されている。
内面溝付管の一層の高性能化には、例えば管内面のフィンをシャープに高く(0.2〜0.4mm)かつ密に形成し(後記特許文献1)、フィンリード角を30〜60度とすることが有効である(後記特許文献2)ことが知られている。
また、最近内面溝付管の製造コストを極力抑えるため、ルームエアコン等へ一般的に使用されているR410a冷媒に対して、耐圧強度を確保できる最小限度の肉厚(溝底肉厚)tで内面溝付管を製造することが要請されている。このR410a冷媒を使用する場合、冷媒の設計作動圧力にもよるが、内面溝付管の外径を4〜7mm程度と想定すると、管の肉厚tは設計上0.18mm以上とする必要があると考えられる。他方、所定以上の伝熱性能を発揮させるためフィンの高さhは少なくとも0.15mmは必要(後記特許文献2)であるから、内面溝付管はフィン高さhと肉厚tとの比h/tが1.2以下であるのが好ましい。
【0004】
前記のような構成の内面溝付管を前記従来方法で製造すると、素管金属材料の加工(変形)効率が極めて低く、管の破断を避けるためには加工速度(引抜き速度)を内面フィンの形状やリード角に応じて極端に落とさなければならず、生産性に問題があった。
特に、熱交換器の製造現場に供給される内面溝付管は、1000m以上の長さのものを円筒状に整列多層巻き(レベルワウンドコイル:LWC)形態に仕上げるのが好ましい。しかし、前記高性能構成であって前記のように極めて長尺の内面溝付管は、前記製造方法による加工時に、素管に加わる加工力が素管の破断強度よりも若干低いかほぼ同等になって、加工設備の振動その他のわずかな外因により素管が破断し易いため、生産性よく製造することは極めて困難であった。
【0005】
前記構成の内面溝付管を生産性よく製造するために、種々の工夫がなされている。
その第1は、例えばフィンリード角の大きい内面溝付管の加工性(フィンの加工性)を向上させるため、フィンの根元部(溝底部)に大きいR部(凹部)を形成することである(後記特許文献2)。
しかし、上記フィン根元のR部は管の伝熱性能には寄与せず、全体の平均肉厚が厚くなって金属材料を多く必要とするので、内面溝付管の製造コストを増大させる。
【0006】
その第2は、前記縮径加工部と転造加工部との間に補助引抜き装置を設置し、この補助引抜き装置により加工時に素管へ補助的引抜き力を付与する製造方法である(後記特許文献3)。
前記補助引抜き装置は、それぞれプーリに保持された状態で素管を挟み、かつ、前記素管の引抜き方向に沿って回転する一対の無端状のタイミングベルトを備え、一方のタイミングベルトは押圧手段により前記素管へ押付けられる。また、各タイミングベルトの素管への接触面には、当該素管が押し込まれる円弧状断面の溝が形成されている。
前記製造方法は、前記補助引抜き装置を、縮径ダイスの出側における素管移動速度の1.0倍以上となる速度で素管を引っ張るように制御する(整形ダイスの出側の引抜き力は低減する。)ことにより、管の破断(断管)を防止しようとするものである。
しかし、加工済み管の引抜き力を低減させることはできるが、補助引抜き装置の制御は引抜き速度基準による制御であるため、管に対する全体の引抜き力の変動幅は大きく、加工中の管の破断を防止するのには不十分である。特に、加工開始段階や加工終了段階のように加工速度が大きく変動し易い領域における引抜き力の変動は大きく、管の破断や折れが発生し易い。
【特許文献1】特開2003−166794号公報
【特許文献2】特開2004−230450号公報
【特許文献3】特開平11−000711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、伝熱性能の優れた前記のようなフィン構成の内面溝付管における生産性の改善にあり、その目的とするところは、高さが高くかつリード角の大きい内面フィンを有する内面溝付管を、より生産性よく製造することができる製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、本発明に係る製造方法を円滑かつ確実に実施することができる内面溝付管の製造装置を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、本発明に係る製造方法により製造された管であって、伝熱性能を一層高めた内面溝付管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る内面溝付管の製造方法は、前記課題を解決するため、
素管に対して一定方向へ引抜き力を連続的に付与し、
縮径ダイスと前記素管内に挿入されたフローティングプラグとにより前記素管を縮径する縮径工程と、
前記フローティングプラグへ回転自在に連結され外周面に螺旋状の平行な多数の溝.を有する溝付プラグと、当該溝付プラグ側へ押圧された状態で前記素管の外周を遊転しつつ遊星回転する複数のボール又はロールからなる転造工具とにより、前記素管内へ前記溝付プラグの溝に沿った多数のフィンを転写する転造工程とを含み、
前記引抜き力を検出しながら、その検出値に基づいて前記素管に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御することを最も主要な特徴としている。
【0009】
本発明に係る内面溝付管の製造装置は、前記課題を解決するため、
素管に対して一定方向へ引抜き力を連続的に付与する引抜き手段と、
縮径ダイスと前記素管内に挿入されたフローティングプラグとにより前記素管を縮径する縮径加工部と、
前記縮径加工部よりも素管の引抜き方向下流側に設置され、前記フローティングプラグへ回転自在に連結され外周面に螺旋状の平行な多数の溝を有する溝付プラグと、当該溝付プラグ側へ押圧された状態で前記素管の外周を遊転しつつ遊星回転する複数のボール又はロールからなる転造工具とにより、前記素管内へ前記溝付プラグの溝に沿った多数のフィンを転写する転造加工部と、
前記引抜き力を検出する引抜き力検出手段と、
前記引抜き力検出手段の検出値に基づいて、前記素管に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御する制御手段とを備えたことを最も主要な特徴としている。
【0010】
本発明に係る内面溝付管は、前記課題を解決するため、前記本発明に係る製造方法により製造され、内面に管軸に対して40〜60度のリード角をもつ多数のフィンを有し、フィン高さhが0.20mm以上であって、前記フィン高さhと隣合うフィン間の溝底肉厚tとの比h/tが1.2以下であることを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る内面溝付管の製造方法によれば、管に対する引抜き力を検出しながら、その検出値に基づいて前記素管に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御するので、加工中管に対する引抜き力の変動幅をより小さくすることができる。そのため、高さが高くかつリード角の大きい内面フィンを有する内面溝付管を、より生産性よく製造することが可能になる。
【0012】
本発明に係る内面溝付管の製造装置によれば、管に対する引抜き力を検出する引抜き力検出手段と、前記引抜き力検出手段の検出値に基づいて、前記素管に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御する制御手段とを備えたので、前記本発明に係る製造方法を円滑かつ確実に実施することができる。
【0013】
本発明に係る内面溝付管はによれば、内面に管軸に対して40〜60度のリード角をもつ多数のフィンを有し、フィン高さhが0.20mm以上であって、前記フィン高さhと隣合うフィン間の溝底肉厚tとの比h/tが1.2以下であるので、伝熱性能を一層高めた内面溝付管を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
第1実施形態
図1は本発明に係る内面伝熱管の製造装置の第1実施形態と、当該製造装置を用いた製造方法を説明するための部分断面図である。
この製造装置は、金属製の素管1に対して一定方向へ引抜き力を連続的に付与する引抜き手段2と、素管1の引抜き方向(図の左側から右方向)に沿って順に設置された縮径加工部3、転造加工部4及び整形ダイス5を備え、さらに力検出手段7、及び制御手段6を具備している。
【0015】
前記縮径加工部3は、縮径ダイス30と前記素管1内に挿入されたフローティングプラグ31とにより前記素管1を縮径する。
前記転造加工部4は、フローティングプラグ31へロッド31aを介して回転自在に連結され外周面に螺旋状の平行な多数の溝を有する溝付プラグ40と、当該溝付プラグ40側へ押圧された状態で前記素管1の外周を遊転しつつ遊星回転する複数のボール又はロールからなる転造工具41とにより、素管1内へ前記溝付プラグ40の溝に沿った多数のフィン1bを転写する。
整形ダイス5では、転造加工部4で内面にフィン1bが加工された素管1をさらに縮径するとともに所定の外径となるように整形し、内面に管軸に対して所定のリード各βを有する多数のフィンが形成された内面溝付管1aを仕上げる。
前記の連続した製造工程において、引抜き力検出手段7により素管1に対する引抜き力(引抜き力の変動量を含む。以下同じ。)を連続的に検出し、当該検出値に基づいて制御手段6により前記素管1に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御する。
以上の構成は、請求項9及び請求項1と対応している。
【0016】
この実施形態においては、引抜き手段2は転造加工部4よりも引抜き方向下流側に設置されていて、加工済みの内面溝付管1aを巻き取る巻取りドラムを兼ねており、前記引抜き力検出手段7は前記巻取り手段2を回転させるモータM1への電流を検出する電流計であり、当該電流計の検出値から前記引抜き手段2のトルクを演算するように構成されている(請求項10,2と対応)。
制御手段6は、制御部60、入力部61、演算部62及び図示しない出力部(表示装置やプリンター等を含む)を備えており、制御手段6には入力部61から引抜き力の目標範囲(目標制御範囲又は範囲のない目標制御値。好ましくは目標制御値。)が入力される。
電流計である引抜き力検出手段7の検出信号(電気信号)は演算部62へ入力され、この入力信号に基づいて前記演算部62で引抜き手段2のトルクが演算される。
【0017】
転造加工部4における転造工具41は素管1の管軸を中心として等角度間隔に配置された複数のボールであり、これらのボールは、引抜き方向下流側へ向けて拡大した急角度の円錐面を有するリング状の加工ヘッド42内へ保持されている。
各ボールは、ベアリング43とともに加工ヘッド42内の出側へ設置されたリング状の押圧部材44と、加工ヘッド42の前記円錐面とにより、管軸方向(溝付プラグ40側)へ押付けられている。符号45は、押圧部材44を介して各ボールに対し圧力を付与する加圧手段である。
この実施形態における制御手段6の制御部60は、検出された前記トルクに基づいて、前記加圧手段45を介して転造工具41の前記素管1への押圧力を加減することにより、素管1に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御する。(請求項14、6と対応)。
上記制御では、前記押圧力の増減に応じて引抜き力は増減する。
前記管の製造中他の条件(素管1の引抜き速度や転造工具41の遊星回転数)は、一定又は一定範囲内に保たれるよう制御される。
この実施形態において、引抜き手段2を兼ねた巻取りドラムに巻き取られた加工済みの内面溝付管1aは、図示しないバスケットその他の収容部に収容され、円筒状の整列多層巻き状に巻き直される。
【0018】
第1実施形態の製造装置を用いた前記製造方法によれば、加工中に素管1の引抜き力の変動幅を狭い範囲内に抑制することができるので、管1の引抜き速度を極端に抑えることなく、かつ、管1の破断や折れを防止しつつ後記のような高性能の内面溝付管を生産性よく製造することができる。
すなわち、前記の製造方法により、図8で示すように、内面に管軸に対して40〜60度のリード角β(図1)をもつ多数のフィン1bを有し、フィン高さhが0.20mm以上であって、フィン高さhと隣合うフィン間の溝底肉厚tとの比h/tが1.2以下である高性能の内面溝付管1aが、工業的な引抜き速度により製造される。
【0019】
第1実施形態では、素管1に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御するため、前記のように転造工具41の素管1への押圧力を加減する構成を採用したが、これに代えて、モータM1を介して素管1の引抜き速度を加減するように構成することができる。(請求項5,13と対応。)
上記制御では、引抜き速度の増減に応じて引抜き力は増減する。
上記管の製造中他の条件(転造工具41の素管1への押圧力や転造工具41の遊星回転数)は一定又は一定範囲内に保たれるよう制御される。
【0020】
第2実施形態
図2は本発明に係る内面伝熱管の製造装置の第2実施形態と、当該製造装置を用いた製造方法を説明するための部分断面図である。
この実施形態において、引抜き力検出手段7は、転造加工部4よりも引抜き方向下流側において、引抜き方向へ移動しつつある加工済みの内面溝付管1aの外周面へ管軸に向けて押付けられた荷重測定器70と、当該押付け部分における前記押付け方向への管軸の変位量を検出する変位計71とを備えている。変位計71は、荷重測定器70の押付けによる素管1の管軸の押付け方向への変位量を検出するのであるから、その検出ヘッドが前記押付け方向と直交する方向から素管1の管軸へ向く状態に設置される。
この実施形態では、移動中の内面溝付管1a外周部へ管軸に向けて押付けられている荷重測定器70はその検出荷重(押付け圧力)を、前記変位計71は検出した管軸の変位量を、それぞれ電気信号に変換して出力し、これらの電気信号が入力された制御手段6の演算部62により、前記荷重と変位量との関係から素管1への引抜き力が演算される。(請求項11,3と対応)。
具体的な検出方法としては、荷重測定器70の管1aへの押付け力を一定に保って管1aの管軸変位量の変動から引抜き力を検出するか、あるいは、管軸変位量を一定に保って荷重測定器70の検出荷重の変動から引抜き力を検出するのが好ましい。
【0021】
この実施形態では、前記のように検出された引抜き力に基づき、転造加工部4の加工ヘッド42を回転させる回転伝達手段46(プーリとベルト)のモータM2を通じて、転造工具41の遊星回転速度(回転数)を加減することにより、素管1に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御する。(請求項14,6と対応)。
上記制御では、転造工具41の遊星回転速度の増減に応じて引抜き力は増減する。
前記管の製造中他の条件(素管1の引抜き速度、転造工具41の素管1への押圧力)は、一定又は一定範囲内に保たれるよう制御される。
【0022】
第2実施形態における他の構成や作用効果は第1実施形態と同様であるので、それらの説明は省略する。
【0023】
第3実施形態
図3は本発明に係る内面伝熱管の製造装置の第3実施形態と、当該製造装置を用いた製造方法を説明するための部分断面図である。
この実施形態において、縮径加工部3には、縮径ダイス30の回転させるための回転伝達手段(プーリとベルト)33とモータM3を含む回転駆動手段32が設けられている。
そして、第2実施形態の装置と同様な引抜き力検出手段7により引抜き力を検出し、当該検出値に基づいて、制御手段6の制御部60により、前記回転駆動手段32のモータM3を通じて縮径ダイス30の回転を制御することにより、素管1に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御する。(請求項15,7と対応)。
すなわち、縮径ダイス30を回転させ(引抜き力は停止時よりも減少する)又は停止させ(引抜き力は回転時よりも増加する)、あるいはその回転速度(回転数)を加減することにより制御するのである。この場合、回転速度が速くなると引抜き力が減少し、回転速度が遅くなると引抜き力が増加する。
前記管の製造中他の条件(素管1の引抜き速度、転造工具41の素管1への押圧力や遊星回転数)は一定又は一定範囲内に保たれるよう制御される。
この実施形態における他の構成や作用効果は第1実施形態と同様であるので、それらの説明は省略する。
【0024】
第4実施形態
図4は本発明に係る内面伝熱管の製造装置の第4実施形態と、当該製造装置を用いた製造方法を説明するための部分断面図である。
この実施形態では、引抜き手段2を除く製造装置は機枠9へ取り付けられており、この機枠9はレール91へ素管1の引抜き方向に沿って可動に載置された可動台90の上に設置されている。
可動台90には、当該可動台90の素管引抜き方向への荷重を測定する荷重測定器70により構成された引抜き力検出手段7が取り付けられ、この検出手段7が検出した荷重は電気信号に変換されて制御手段6へ素管1の引抜き力として入力される。すなわち、素管1への引抜き力は、機枠9及び可動台90を介して検出手段7である荷重測定器70で検出される。(請求項12,4と対応)。
なお、この実施形態では後記のように補助引抜き装置8が設置されているが、当該装置8は補助的引抜き力を素管1へ付与しかつ引抜き力を制御する手段として設置されているものであるから、例えば図1〜図3のような製造装置であって、引抜き手段2及び引抜き力検出手段7を除いた部分を同様な機枠に取り付け、これを前記可動台90へ設置しても実施することができる。
【0025】
この実施形態では、前記縮径加工部3と前記転造加工部4との間には、それぞれ少なくとも一対のプーリ81,81に保持された状態で素管1を挟み、かつ、素管1の引抜き方向に沿って回転する一対の無端状のベルト80,80を含む補助引抜き装置8が設置されている。
前記補助引抜き装置8は、少なくとも一方のベルト80(この実施形態では両方のベルト80,80)を前記素管1に押付ける押圧手段83を備えており、各ベルト80,80は、押圧手段83により素管1を押圧した状態でモータM4により素管1の引抜き方向へ回転し、当該素管1へ補助的引抜き力を付与する。
制御手段6の制御部は、前記ベルト80の素管への押圧力又は各ベルト80の回転速度を制御して前記補助引抜き力を加減することにより、前記素管1に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御する。(請求項16,8と対応)。
すなわち、荷重測定器70では補助引抜き装置8の補助引抜き力を除いた引抜き力が検出されるが、補助引抜き力が減少すると引抜き手段2の負荷が増大して荷重測定器70の測定値が大きくなる。これに伴って、制御部6の制御により補助引抜き力が増大すると引抜き手段2の負荷が減少し荷重測定器70の測定値は小さくなる。当該測定値が所定値以下になると、制御部6により補助引抜き力が減少方向へ制御されるので、この繰り返しにより引抜き力が目標範囲内におさまるように制御される。
前記管の製造中他の条件(素管1の引抜き速度、転造工具41の素管1への押圧力や遊星回転数)は一定又は一定範囲内に保たれるよう制御される。
【0026】
この実施形態において、各ベルト80を保持するそれぞれの対のプーリ81,81は、それぞれ機枠9に対して素管1の方向へ往復スライド可能に設置された各対の保持板84,84へ取り付けられている。そして、前記押圧手段83は、各対の保持板84,84を素管1の方向へ加圧することにより、各ベルト80を前記素管1へ調整可能に押付けるように構成してある。
【0027】
前記各ベルト80,80には、それらの素管1への接触面側へ前記のような回転に支障がない状態に多数のパッド82が長さ方向へ並ぶように取り付けられており、これらのパッド82には、図5で示すように補助引抜き装置8の設置部分を移動する素管1が適合して嵌る寸法で円弧状のガイド溝82aがそれぞれ形成されている。
各パッド82の材質は素管1の材質よりも硬質のものが選ばれ、好ましくは工具鋼が使用される。材質が工具鋼である場合、前記ガイド溝82aの曲率半径/素管半径は1.0〜1.005(好ましくは1.001〜1.003)であるのが好ましい。
【0028】
この実施形態における他の構成や作用効果は第1実施形態と同様であるので、それらの説明は省略する。
【0029】
転造加工部の変形形態
図6は、本発明に係る製造装置における転造加工部4の変形形態を示す部分断面図である。
各転造工具41はロールであり、素管1の引抜き方向上流側へ僅かに広がるように傾斜した円錐状内面を有する加工ヘッド42内へ、それぞれホルダ41aへ回転自在に保持された状態で、等角度の間隔で取り付けられている。
各ホルダ41aの外周面と加工ヘッド42の円錐状内面との間には楔状のスペーサ41bが、加工ヘッド42の入口方向からそれぞれ挿入されており、ベアリング43及び押圧部材44を介して各スペーサ41bを図示しない加圧手段により加工ヘッド42内へ押し込むことにより、各ロールを素管1の外周面へ押圧している。
なお、加工ヘッド42の向きは図の逆向き(右向き)でも実施できる。
【0030】
転造加工部の他の変形形態
図7は、本発明に係る製造装置における転造加工部4の他の変形形態を示す部分断面図である。
転造加工部4の加工ヘッド42は、素管1が中心を通過しかつ小さな間隙を介して並ぶように配置された二つ割状のリング42a,42bから構成され、一方のリング42aはリング状の回転伝達手段45の内面ヘ固定され、他方のリング42bは回転伝達手段45の内面へ、素管1の管軸方向へのみ可動な状態に取り付けてある。
各リング42a,42bの相対面内側には、中心方向に向かって広がる状態の円錐状内面を有し、複数のボールからなる転造工具41は、両方の円錐状内面と素管1の外周面へ接触しかつ等角度間隔に並ぶようにリング42a、42bの相対面間に配置されている。
一方の可動なリング42bを、ベアリング43及び押圧部材44を介して図示しない加圧手段により他方の固定側リング42aへ押し付けることにより、各ボールを素管1の外周面へ押圧している。
なお、リング42a,42bの位置関係は図の逆でも実施できる。
【0031】
その他の実施形態
前記各実施形態において、引抜き力検出手段7と引抜き力の制御対象(素管に対する引抜き速度、転造工具の素管への押圧力、転造工具の遊星回転速度、縮径ダイスの回転、補助引抜き装置の素管への補助的引抜き力等)との組み合わせは限定的なものではなく、いずれの組み合わせでも実施することができる。
【0032】
試験例1
表1で示すように、管(仕上り管)外径、溝底肉厚及びフィンリード角をそれぞれ一定とし、溝数(フィン数)とフィン高さがそれぞれ異なるサンプル管No.1〜5を製造した。
他方表2で示すように、管外径、溝底肉厚、溝数及びフィン高さをそれぞれ一定とし、フィンリード角がそれぞれ異なるサンプル管No.4,6〜11(但し、表1のサンプル管No.4はそのまま表2に併記)を試作した。
なお、管材質はりん脱酸銅である。
【0033】
前記各サンプル管を、それぞれ水平に設置した二重管式熱交換器サンプルの内管として挿入し、それらのサンプル内へ冷媒(R410a)を流すとともに、外管と内管の間の二重管部に冷却水を冷媒に対して対抗流となるように流し、冷却水と冷媒とで熱交換させることにより、冷媒を冷却させた。
そのときの熱交換量から、冷媒の質量流速300kg/m2secにおける管内熱(凝縮熱)伝達率を算出(管自体の熱伝達率も含めて管外面積基準で算出)し、それらを表1,2へ併記した。
【0034】
表1
【0035】
表2
【0036】
表1のように、溝数44以上において、フィン高0.2mm未満の領域ではフィン高さの増大に伴う管内熱伝達率の増加割合が大きく、フィン高さが0.2mmを超える領域ではフィン高さの増大に伴う管内熱伝達率の増加割合は小さくなる傾向を示した。
また、表2のように、フィンリード角40度未満の領域ではリード角の増大に伴う管内熱伝達率の増加割合が大きく、リードが角40度を超える領域ではリード角の増大に伴う管内熱伝達率の増加割合は小さくなる傾向を示し、リード角が60度を越えると管内熱伝達率はリード角増大によっても変化がないことが判明した。
これらのことは、小径で高い伝熱性能の内面溝付管は、フィン高さが0.2mm以上でフィンリード角が40〜60度であって、しかも生産性よく(引抜き速度を落とさないで)製造されることが必要であることを示している。
【0037】
試験例2
本発明方法では、管の引抜き力が常に一定となるように制御されるのが望ましいが、種々の条件により実際の引抜き力の値は一定にはならず所定の範囲内で変動する。
そこで、第1実施形態の製造装置を用い、外径11mm、肉厚0.25mmのりん脱酸銅管を素管として、前記サンプル管No.2を、引抜き速度40m/min、引抜き力目標値1700Nに設定して引抜き試験(仕上げ管長さ1000mm)を行なった。
第1例は管の引抜き力目標値のみを設定して引抜き力を制御しないで、第2例は引抜き力の制御幅目標をややラフ(制御幅は目標値の±10%以下を目指す)にして、第3例は引抜き力制御幅目標を最小にして(制御幅は目標値の±3%以下を目指す)、それぞれ引抜き試験を行なった。引抜き力は、転造工具への押圧力を加減することにより制御した。
それらの管引抜き試験中の引抜き力の実際の変動幅を、巻取りドラムのモータの出力を測定(電流計による)し、その変動幅を連続的に測定してグラフ化出力した。その結果、引抜き力無制御の第1例では図9で示すように変動幅が極めて大きかったが、第2例では図10で示すように変動幅±10以内を、第3例では図11で示すように変動幅±3%以内をそれぞれ達成することができた。
【実施例】
【0038】
次に、外径11mm、肉厚0.27〜0.31mmのりん脱酸銅管を素管とし、長さ2000mの前記サンプル管No.3,4,5,8,9,10(各サンプル管No.1,2,6,7は管形態が単純で引抜き力制御無しで製造することができ、また、No.11は本発明方法によっても生産性よく製造することが実験上困難であったので外した。)を、第1〜第4実施形態の製造装置を用いた製造方法と、特許文献3の公報記載の試作製造装置を用いた製造方法とにより、それぞれ各5サンプル製造した。それらの結果を表3〜8に示した。
ここで素管の肉厚を変化させたのは、内面溝付管の肉厚を一定値(ここでは0.20mm)として溝深さを変化させた場合には製造し易くなるためであり、その値は、サンプル管No.3の素管では0.27mm、サンプル管No.4,8,9,10の素管では0.29mm、サンプル管No.5の素管では0.31mmとした。実際にはこの値に拘わらず、素管の内径は適宜変化させることができる。
なお、各表の結果欄における「○」は円滑に引抜き内面溝付管を製造できたことを、「×」は引抜き開始後備考に記載の長さ前後で断管したことを、「△」は、断管はしなかったが溝付管の長手方向または径方向における肉厚変動、凹み、亀裂などが一部に発生したサンプルがあったことをそれぞれ示している。
【0039】
この実施例において、第1実施形態の装置を用いた各製造例では、転造工具の素管への押圧力を加減することにより引抜き力を制御した。
第2実施形態の装置を用いた各製造例では、転造工具の遊星回転速度(回転数)を加減することにより引抜き力を制御した。
第3実施形態の装置を用いた各製造例では、縮径ダイスの回転を制御することにより引抜き力を制御した。
第4実施形態の製造装置を用いた各製造例では、補助引抜き装置の引抜き力を1000Nに設定するとともに、全体としての引抜き力目標値は各表記載のとおりに設定し、補助引抜き装置の補助引抜き力を加減(ベルトの回転速度を制御)することにより引抜き力を制御した。
また、特許文献3の公報記載の試作製造装置では、補助引抜き装置において素管に1000Nの引抜き力を付与するように設定し、当該補助引抜き装置を、縮径ダイスの出側における素管移動速度の1.1倍となる速度で素管を引っ張るように制御し、全体としての引抜き力を各表記載のとおりに設定するとともに引抜き力制御は行なわなかった。
【0040】
表3
【0041】
表4
【0042】
表5
【0043】
表6
【0044】
表7
【0045】
表8
【0046】
以上表3〜8で示したように、本発明方法の実施例によれば、小径でフィン高さが0.2mm以上かつフィンリード角が40度以上の高性能の内面溝付管を、生産性よく製造することができた。ただし、表5,8で見られるように、比較的小径の管で管内面形態が厳しい(フィン高さ,フィンリード角ともに相対的に高い値である)場合には、引抜き力目標値に対して制御幅を最小にするように精確な制御が必要である。
なお、前記実施例では本発明方法にける引抜き力の具体的な制御手段全部の実施例は記載されていないが、前記各実施形態で説明した他の具体的な引抜き力制御手段によっても、実験上前記実施例と同様な効果を達成することができたのでそれらは割愛した。
また、管の引抜き速度を加減することにより引抜き力が目標値になるように制御する場合、引抜き速度の基準値を設定しておくが、引抜き力制御のためには引抜き速度を加減する。この方法によっても、引抜き速度を一時的に加減した場合、検出引抜き力により当該引抜き速度はさらに加減されて設定基準値近傍の値に戻るので、内面溝付管を1000m以上引抜く間の平均的な引抜き速度は前記基準値をほぼ達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る内面溝付管製造装置の第1実施形態と、当該製造装置を用いた製造方法を説明するための部分断面図である。
【図2】本発明に係る内面溝付管製造装置の第2実施形態と、当該製造装置を用いた製造方法を説明するための部分断面図である。
【図3】本発明に係る内面溝付管製造装置の第3実施形態と、当該製造装置を用いた製造方法を説明するための部分断面図である。
【図4】本発明に係る内面溝付管製造装置の第4実施形態と、当該製造装置を用いた製造方法を説明するための部分断面図である。
【図5】第4実施形態の製造装置における補助引抜き装置のベルトパッドの拡大断面図である。
【図6】本発明に係る製造装置における転造加工部の変形形態を示す部分断面図である。
【図7】本発明に係る製造装置における転造加工部の他の変形形態を示す部分断面図である。
【図8】本発明に係る製造方法によって製造された内面溝付管を説明するための引抜き管の部分拡大断面図である。
【図9】引抜き力無制御状態で引抜き試験を行なった場合の引抜き力の実際の変動幅を連続的に測定してグラフ化出力した線図である。
【図10】本発明方法の一形態により引抜き力を制御しつつ引抜き試験を行なった場合の引抜き力の実際の変動幅を連続的に測定してグラフ化出力した線図である。
【図11】本発明方法の一形態により引抜き力を制御しつつ引抜き試験を行なった場合の引抜き力の実際の変動幅を連続的に測定してグラフ化出力した別の線図である。
【符号の説明】
【0048】
β リード角
1 素管
1a 内面溝付管
1b フィン
2 引抜き手段
3 縮径部
30 縮径ダイス
31 フローティングプラグ
31a ロッド
32 回転駆動手段
33 回転伝達手段
4 転造加工部
40 溝付プラグ
41 転造加工具
41a ホルダ
41b スペーサ
42 加工ヘッド
42a,42b リング
43 ベアリング
44 押圧部材
45 加圧手段
46 回転伝達手段
5 整形ダイス
6 制御手段
60 制御部
61 入力部
62 演算部
7 引抜き力検出手段
70 荷重測定器
71 変位計
8 補助引抜き装置
80 ベルト
81 プーリ
82 パッド
82a ガイド溝
83 押圧手段
84 保持版
9 機枠
90 可動台
91 レール
M1〜M4 モータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素管に対して一定方向へ引抜き力を連続的に付与し、
縮径ダイスと前記素管内に挿入されたフローティングプラグとにより前記素管を縮径する縮径工程と、
前記フローティングプラグへ回転自在に連結され外周面に螺旋状の平行な多数の溝を有する溝付プラグと、当該溝付プラグ側へ押圧された状態で前記素管の外周を遊転しつつ遊星回転する複数のボール又はロールからなる転造工具とにより、前記素管内へ前記溝付プラグの溝に沿った多数のフィンを転写する転造工程とを含み、
前記引抜き力を検出しながら、その検出値に基づいて前記素管に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御する、
ことを特徴とする内面溝付管の製造方法。
【請求項2】
前記転造工程よりも引抜き方向下流側において、加工済みの内面溝付管を巻き取る巻取りドラムを兼ねた引抜き手段により前記素管に対して引抜き力を付与し、当該引抜き手段のトルクを測定することにより前記引抜き力を検出することを特徴とする、請求項1に記載の内面溝付管の製造方法。
【請求項3】
前記転造工程よりも引抜き方向下流側において、引抜き方向へ移動しつつある加工済みの内面溝付管の外周面へ管軸に向けて荷重を付与し、当該部分の管軸の変位量と当該荷重の大きさとの関係から前記引抜き力を検出することを特徴とする、請求項1に記載の内面溝付管の製造方法。
【請求項4】
前記内面溝付管の製造方法を実施するための製造装置の中、前記素管へ引抜き力を付与する引抜き手段以外の部分における前記素管の引抜き方向への荷重を測定することにより、前記引抜き力を測定することを特徴とする、請求項1に記載の内面溝付管の製造方法。
【請求項5】
前記素管の引抜き速度を加減することにより、前記素管に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の内面溝付管の製造方法。
【請求項6】
前記転造工具の素管への押圧力又は/及び前記転造工具の遊星回転速度を加減することにより、前記素管に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の内面溝付管の製造方法。
【請求項7】
前記縮径ダイスを回転可能に構成するとともに当該縮径ダイスの回転を制御することにより、前記素管に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の内面溝付管の製造方法。
【請求項8】
前記縮径工程よりも引抜き方向下流側かつ前記転造工程より引抜き方向上流側において、素管に対し補助的引抜き力を付与しながら、当該補助的引抜き力を加減することにより、前記素管に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御することを特徴とする、
請求項1〜4のいずれかに記載の内面溝付管の製造方法。
【請求項9】
素管に対して一定方向へ引抜き力を連続的に付与する引抜き手段と、
縮径ダイスと前記素管内に挿入されたフローティングプラグとにより前記素管を縮径する縮径加工部と、
前記縮径加工部よりも素管の引抜き方向下流側に設置され、前記フローティングプラグへ回転自在に連結され外周面に螺旋状の平行な多数の溝を有する溝付プラグと、当該溝付プラグ側へ押圧された状態で前記素管の外周を遊転しつつ遊星回転する複数のボール又はロールからなる転造工具とにより、前記素管内へ前記溝付プラグの溝に沿った多数のフィンを転写する転造加工部と、
前記引抜き力を検出する引抜き力検出手段と、
前記引抜き力検出手段の検出値に基づいて、前記素管に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御する制御手段とを備えた、
ことを特徴とする内面溝付管の製造装置。
【請求項10】
前記引抜き手段は前記転造加工部よりも引抜き方向下流側に設置されて加工済みの内面溝付管を巻き取る巻取りドラムを兼ねており、前記引抜き力検出手段は前記巻取り手段を回転させるモータへの電流を検出する電流計であり、当該電流計の検出値から前記引抜き手段のトルクを演算することを特徴とする、請求項9に記載の内面溝付管の製造装置。
【請求項11】
前記引抜き力検出手段は、前記転造加工部よりも引抜き方向下流側において、引抜き方向へ移動しつつある加工済みの内面溝付管の外周面へ管軸に向けて押付けられた荷重測定器と、当該押付け部分における前記管軸の押付け方向への変位量を検出する変位計とを含むことを特徴とする、請求項9に記載の内面溝付管の製造装置。
【請求項12】
前記縮径部と転造加工部は前記素管の引抜き方向に沿って可動に設けられた可動台の上に設置され、前記引抜き力測定手段は前記可動台の素管引抜き方向への荷重を測定する荷重測定器であることを特徴とする、請求項9に記載の内面溝付管の製造装置。
【請求項13】
前記制御手段は、前記素管の引抜き速度を加減することにより前記素管に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御することを特徴とする、請求項9〜12のいずれかに記載の内面溝付管の製造装置。
【請求項14】
前記制御手段は、前記転造工具の素管への押圧力又は/及び前記転造工具の遊星回転速度を加減することにより、前記素管に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御することを特徴とする、請求項9〜12のいずれかに記載の内面溝付管の製造装置。
【請求項15】
前記縮径加工部には前記縮径ダイスを回転させるモータを含む回転駆動手段を設け、前記制御手段は、前記回転駆動手段を通じて前記縮径ダイスの回転を制御することにより、前記素管に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御することを特徴とする、請求項9〜12のいずれかに記載の内面溝付管の製造装置。
【請求項16】
前記縮径加工部と前記転造加工部との間に、それぞれ少なくとも一対のプーリに保持された状態で前記素管を挟み、かつ、前記素管の引抜き方向に沿って回転する一対の無端状のベルトを含む補助引抜き装置を設置し、
前記補助引抜き装置は少なくとも一方のベルトを前記素管に押付ける押圧手段を備え、
前記制御手段は、前記ベルトの素管への押圧力又は各ベルトの回転速度を制御して前記補助引抜き装置による素管への補助引抜き力を加減することにより、前記素管に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御することを特徴とする、請求項9〜12のいずれかに記載の内面溝付管の製造装置。
【請求項17】
前記請求項1〜8のいずれかの内面溝付管の製造方法により製造され、内面に管軸に対して40〜60度のリード角をもつ多数のフィンを有し、フィン高さhが0.20mm以上であって、前記フィン高さhと隣合うフィン間の溝底肉厚tとの比h/tが1.2以下であることを特徴とする内面溝付管。
【請求項18】
長さが1000m以上であることを特徴とする、請求項17に記載の内面溝付管。
【請求項19】
円筒状に整列多層巻きされていることを特徴とする、請求項18に記載の内面溝付管。
【請求項1】
素管に対して一定方向へ引抜き力を連続的に付与し、
縮径ダイスと前記素管内に挿入されたフローティングプラグとにより前記素管を縮径する縮径工程と、
前記フローティングプラグへ回転自在に連結され外周面に螺旋状の平行な多数の溝を有する溝付プラグと、当該溝付プラグ側へ押圧された状態で前記素管の外周を遊転しつつ遊星回転する複数のボール又はロールからなる転造工具とにより、前記素管内へ前記溝付プラグの溝に沿った多数のフィンを転写する転造工程とを含み、
前記引抜き力を検出しながら、その検出値に基づいて前記素管に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御する、
ことを特徴とする内面溝付管の製造方法。
【請求項2】
前記転造工程よりも引抜き方向下流側において、加工済みの内面溝付管を巻き取る巻取りドラムを兼ねた引抜き手段により前記素管に対して引抜き力を付与し、当該引抜き手段のトルクを測定することにより前記引抜き力を検出することを特徴とする、請求項1に記載の内面溝付管の製造方法。
【請求項3】
前記転造工程よりも引抜き方向下流側において、引抜き方向へ移動しつつある加工済みの内面溝付管の外周面へ管軸に向けて荷重を付与し、当該部分の管軸の変位量と当該荷重の大きさとの関係から前記引抜き力を検出することを特徴とする、請求項1に記載の内面溝付管の製造方法。
【請求項4】
前記内面溝付管の製造方法を実施するための製造装置の中、前記素管へ引抜き力を付与する引抜き手段以外の部分における前記素管の引抜き方向への荷重を測定することにより、前記引抜き力を測定することを特徴とする、請求項1に記載の内面溝付管の製造方法。
【請求項5】
前記素管の引抜き速度を加減することにより、前記素管に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の内面溝付管の製造方法。
【請求項6】
前記転造工具の素管への押圧力又は/及び前記転造工具の遊星回転速度を加減することにより、前記素管に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の内面溝付管の製造方法。
【請求項7】
前記縮径ダイスを回転可能に構成するとともに当該縮径ダイスの回転を制御することにより、前記素管に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の内面溝付管の製造方法。
【請求項8】
前記縮径工程よりも引抜き方向下流側かつ前記転造工程より引抜き方向上流側において、素管に対し補助的引抜き力を付与しながら、当該補助的引抜き力を加減することにより、前記素管に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御することを特徴とする、
請求項1〜4のいずれかに記載の内面溝付管の製造方法。
【請求項9】
素管に対して一定方向へ引抜き力を連続的に付与する引抜き手段と、
縮径ダイスと前記素管内に挿入されたフローティングプラグとにより前記素管を縮径する縮径加工部と、
前記縮径加工部よりも素管の引抜き方向下流側に設置され、前記フローティングプラグへ回転自在に連結され外周面に螺旋状の平行な多数の溝を有する溝付プラグと、当該溝付プラグ側へ押圧された状態で前記素管の外周を遊転しつつ遊星回転する複数のボール又はロールからなる転造工具とにより、前記素管内へ前記溝付プラグの溝に沿った多数のフィンを転写する転造加工部と、
前記引抜き力を検出する引抜き力検出手段と、
前記引抜き力検出手段の検出値に基づいて、前記素管に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御する制御手段とを備えた、
ことを特徴とする内面溝付管の製造装置。
【請求項10】
前記引抜き手段は前記転造加工部よりも引抜き方向下流側に設置されて加工済みの内面溝付管を巻き取る巻取りドラムを兼ねており、前記引抜き力検出手段は前記巻取り手段を回転させるモータへの電流を検出する電流計であり、当該電流計の検出値から前記引抜き手段のトルクを演算することを特徴とする、請求項9に記載の内面溝付管の製造装置。
【請求項11】
前記引抜き力検出手段は、前記転造加工部よりも引抜き方向下流側において、引抜き方向へ移動しつつある加工済みの内面溝付管の外周面へ管軸に向けて押付けられた荷重測定器と、当該押付け部分における前記管軸の押付け方向への変位量を検出する変位計とを含むことを特徴とする、請求項9に記載の内面溝付管の製造装置。
【請求項12】
前記縮径部と転造加工部は前記素管の引抜き方向に沿って可動に設けられた可動台の上に設置され、前記引抜き力測定手段は前記可動台の素管引抜き方向への荷重を測定する荷重測定器であることを特徴とする、請求項9に記載の内面溝付管の製造装置。
【請求項13】
前記制御手段は、前記素管の引抜き速度を加減することにより前記素管に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御することを特徴とする、請求項9〜12のいずれかに記載の内面溝付管の製造装置。
【請求項14】
前記制御手段は、前記転造工具の素管への押圧力又は/及び前記転造工具の遊星回転速度を加減することにより、前記素管に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御することを特徴とする、請求項9〜12のいずれかに記載の内面溝付管の製造装置。
【請求項15】
前記縮径加工部には前記縮径ダイスを回転させるモータを含む回転駆動手段を設け、前記制御手段は、前記回転駆動手段を通じて前記縮径ダイスの回転を制御することにより、前記素管に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御することを特徴とする、請求項9〜12のいずれかに記載の内面溝付管の製造装置。
【請求項16】
前記縮径加工部と前記転造加工部との間に、それぞれ少なくとも一対のプーリに保持された状態で前記素管を挟み、かつ、前記素管の引抜き方向に沿って回転する一対の無端状のベルトを含む補助引抜き装置を設置し、
前記補助引抜き装置は少なくとも一方のベルトを前記素管に押付ける押圧手段を備え、
前記制御手段は、前記ベルトの素管への押圧力又は各ベルトの回転速度を制御して前記補助引抜き装置による素管への補助引抜き力を加減することにより、前記素管に対する引抜き力を目標範囲内に収まるように制御することを特徴とする、請求項9〜12のいずれかに記載の内面溝付管の製造装置。
【請求項17】
前記請求項1〜8のいずれかの内面溝付管の製造方法により製造され、内面に管軸に対して40〜60度のリード角をもつ多数のフィンを有し、フィン高さhが0.20mm以上であって、前記フィン高さhと隣合うフィン間の溝底肉厚tとの比h/tが1.2以下であることを特徴とする内面溝付管。
【請求項18】
長さが1000m以上であることを特徴とする、請求項17に記載の内面溝付管。
【請求項19】
円筒状に整列多層巻きされていることを特徴とする、請求項18に記載の内面溝付管。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−87004(P2008−87004A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−267986(P2006−267986)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
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