説明

円環状部分に芯金をインサートした樹脂製品の射出成形用金型及び前記製品の製造方法並びに円環状部分に芯金をインサートした樹脂保持器

【課題】樹脂と芯金とを強固に結合させて芯金による補強効果を高めることができ、所要の精度を確保することができるとともにコストを低減することができる、円環状部分に芯金をインサートした樹脂保持器を提供する。
【解決手段】型板2からキャビティC内へ突出する、周方向に離間して軸方向に延びる2個以上の径方向位置決めピン4及び周方向に離間して軸方向に延びる3個以上の軸方向位置決めピン5を備え、径方向位置決めピン4に係合する係合穴21aが形成された円環状の芯金21を、径方向位置決めピン4を係合穴21aに係合させることにより径方向に位置決めし、キャビティC内へ流入した溶融樹脂Pの圧力を受ける芯金21の軸方向端面21Aに対し、その裏側の軸方向端面21Bに軸方向位置決めピン5を当止することにより軸方向に位置決めする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円環状部分に芯金をインサートした樹脂製品に関わり、更に詳しくは、前記製品を製造するための射出成形用金型及び前記製品の製造方法並びに前記製品である円環状部分に芯金をインサートした樹脂保持器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば工作物を所望の形状及び寸法に加工にする工作機械において、加工効率を向上するために主軸の高速回転化が進んでおり、主軸用転がり軸受には優れた高速回転性が要求される。
このような高速回転及び急加減速下で使用される転がり軸受の保持器には、高い真円度が必要であるとともに、軽量化及び高剛性化(遠心力に対する寸法安定性)並びに耐熱性等の厳しい特性が要求されるため、このような特性を備えたPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)材を用いた樹脂保持器が使用されることが多くなっている。
【0003】
また、芯金(円環状金属板)をインサートして剛性を高めることにより遠心力に基づく変形を防止するようにした樹脂保持器として、合成樹脂製の円環状主部における転動体を保持するポケットが形成された軸方向端面と反対側の軸方向端面に対し、芯金を、その円周方向複数箇所に形成されたテーパ穴に射出成形時に樹脂を貫通させることにより非分離状態で添設するようにしたもの(例えば、特許文献1参照。)、芯金に穴をあけることなく、円環状主部における転動体を保持するポケットが形成された軸方向端面と反対側の軸方向端面に形成された凹部に芯金を埋め込んで一体化するようにしたもの(例えば、特許文献2参照。)、固定側型板及び可動側型板から突き出した保持ピンにより芯金を挟み込んで位置決めした状態で射出成形を行うことにより芯金を包み込むように成形するもの等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−145061号公報
【特許文献2】国際公開第07/058351号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のような従来技術において、芯金を用いずに成形されたPEEK材製の樹脂保持器では、PEEK材の卓越した機械的特性及び耐熱性により、高速回転仕様の転がり軸受に適した樹脂保持器を得ることができるが、材料が非常に高価であるためコストが増大する。
その上、さらなる高速回転化への要求に対しては、金型形状や非常に厳しい成形条件の設定等の工夫を行っても、対応が困難になっている。
【0006】
また、特許文献1及び2のような芯金をインサートした樹脂保持器では、芯金の強度及び剛性により樹脂保持器を補強することはできるが、芯金を樹脂により包み込んでいないことから、樹脂と芯金との結合力が強固ではなく比較的弱いため、芯金による補強効果は限定的なものとなっており、さらなる高速回転化への要求に応えることは困難である。
さらに、保持ピンにより芯金を挟み込んで位置決めした状態で射出成形を行う芯金をインサートした樹脂保持器では、芯金を樹脂により包み込むことにより樹脂と芯金とを強固に結合することができるが、保持ピンにより芯金を挟み込んで位置決めしていることから、樹脂が固化した後に保持ピンを芯金から離間させた際に芯金の弾性変形の復元力が生じるため、樹脂と芯金との結合力が強固であることから、剛性の高い芯金の影響を受けて却って樹脂部分を変形させることに繋がり、樹脂保持器に所要の精度を確保することができない場合がある。
【0007】
そこで本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、コストが増大することなく、樹脂と芯金とを強固に結合させて芯金による補強効果を高めることができ、所要の精度を確保することができる、円環状部分に芯金をインサートした樹脂製品の射出成形用金型及び円環状部分に芯金をインサートした樹脂製品の製造方法並びに円環状部分に芯金をインサートした樹脂保持器を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る円環状部分に芯金をインサートした樹脂製品の射出成形用金型は、前記課題解決のために、型板からキャビティ内へ突出する、周方向に離間して軸方向に延びる2個以上の径方向位置決めピン及び周方向に離間して軸方向に延びる3個以上の軸方向位置決めピンを備え、前記径方向位置決めピンに係合する係合穴が形成された円環状の芯金を、前記径方向位置決めピンを前記係合穴に係合させることにより径方向に位置決めし、前記キャビティ内へ流入した溶融樹脂の圧力を受ける前記芯金の軸方向端面に対し、その裏側の軸方向端面に前記軸方向位置決めピンを当止することにより軸方向に位置決めする。
このような構成によれば、この射出成形用金型を用いて円環状部分に芯金をインサートした樹脂製品の射出成形を行うことにより、芯金を樹脂により包み込むことにより樹脂と芯金とを強固に結合することができるため、芯金による補強効果を高めることができる。
【0009】
その上、芯金の径方向及び軸方向の位置決めが、芯金の係合穴に径方向位置決めピンを係合すること、及び、キャビティ内へ流入した溶融樹脂の圧力を受ける芯金の軸方向端面に対し、その裏側の軸方向端面に軸方向位置決めピンを当止することにより行われることから、従来技術のような固定側型板及び可動側型板から突き出した保持ピンにより芯金を挟み込んで拘束した状態にすることがない。
よって、樹脂が固化した後に径方向位置決めピン及び軸方向位置決めピンを芯金から離間させても芯金の弾性変形の復元力が生じることがないことから、樹脂製品の精度が剛性の高い芯金の影響を受けて低下することいがない。
その上さらに、芯金の補強効果の向上及び精度の向上を図ることができることから、PEEK材等の卓越した機械的特性を持つ高価な樹脂材料を使用する必要がなくなるため、コストを低減することができる。
【0010】
本発明に係る円環状部分に芯金をインサートした樹脂製品の製造方法は、前記課題解決のために、前記射出成形用金型を使用して前記キャビティ内へ前記芯金を収容した状態で溶融樹脂を前記キャビティ内へ充填することにより製品を成形する。
よって、本発明に係る円環状部分に芯金をインサートした樹脂製品の製造方法によれば、上述の射出成形用金型を用いて行う円環状部分に芯金をインサートした樹脂製品の射出成形と同様の特徴がある。
【0011】
本発明に係る円環状部分に芯金をインサートした樹脂保持器は、前記課題解決のために、前記樹脂製品の製造方法により製造されたくし型保持器又は冠型保持器であり、ポケットが形成された軸方向端面の裏側の軸方向端面に前記径方向位置決めピン及び軸方向位置決めピンの抜き穴が形成されたものである。
また、前記樹脂製品の製造方法により製造された大径円環状部分と小径円環状部分との間を柱部で連結した形状の円錐ころ軸受用保持器であり、前記大径円環状部分及び小径円環状部分のそれぞれに円環状の芯金がインサートされるとともに、前記大径円環状部分及び小径円環状部分の両方に、これらの軸方向両端面の軸方向の同一側端面に前記径方向位置決めピン及び軸方向位置決めピンの抜き穴が形成されたものである。
これらのような構成によれば、ころ軸受用くし型保持器及び玉軸受用冠型保持器並びに大径円環状部分と小径円環状部分との間を柱部で連結した形状の円錐ころ軸受用保持器において、強度及び剛性並びに精度の向上により転がり軸受のさらなる高速回転化への要求に応えることができるとともに、このような特性を向上しながらコストを低減することができるため、これらの製品価値を大きく向上することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明に係る円環状部分に芯金をインサートした樹脂製品の射出成形用金型及び前記製品の製造方法並びに円環状部分に芯金をインサートした樹脂保持器によれば、芯金をインサートした樹脂製品(樹脂保持器)が、芯金を樹脂により包み込むことにより樹脂と芯金とが強固に結合されるため、芯金の補強効果が高く、強度及び剛性を向上することができ、芯金を拘束した状態で射出成形を行わないため、樹脂製品の精度が剛性の高い芯金の影響を受けて低下することがなく、PEEK材のような高価な樹脂材料を使用する必要がない。したがって、ポリアミド樹脂のような汎用のエンジニアリングプラスチック材料が使用できることから樹脂材料の選択の幅が広がるため、コストを低減することができるという顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1に係る射出成形用金型の縦断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る環状部分に芯金をインサートした樹脂製品の例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は縦断正面図、(c)は底面図である。
【図3】同じく斜視図である。
【図4】同じく要部を拡大して示す縦断斜視図である。
【図5】(a)は芯金の平面図、(b)は芯金の縦断正面図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る環状部分に芯金をインサートした樹脂製品の例を示す図であり、(a)はゲート位置の説明図、(b)は縦断正面図、(c)は左側面図、(d)は右側面図である
【図7】図6からゲート位置を変更した例を示す図であり、(a)はゲート位置の説明図、(b)は縦断正面図、(c)は左側面図、(d)は右側面図である
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明するが、本発明は、添付図面に示された形態に限定されず特許請求の範囲に記載の要件を満たす実施形態の全てを含むものである。
なお、図中の矢印Rは、円環状部分に芯金をインサートした樹脂製品の中心から半径方向に向かう方向を示している。
【0015】
実施の形態1.
図1に示す本発明の実施の形態1に係る射出成形用金型1は、図2〜図4に示す本発明の実施の形態1に係る環状部分に芯金をインサートした樹脂製品であるころ軸受用くし型保持器11を成形するものであり、横型射出成形機に取り付けられる固定側FXの型板2及び可動側MVの型板3間のキャビティC内へ、スプルー6から注入された溶融樹脂Pが、ランナー7及びゲート8を通って注入される。
固定側FXの型板2には、周方向に離間して軸方向に延びる、径方向位置決めピン4,4,…及び軸方向位置決めピン5,5,…が取り付けられ、型板2からキャビティC内へ可動側MVの型板3に向かって突出している。
ここで、径方向位置決めピン4,4,…は、図3の抜き穴17A,17A,…に対応するものであり、例えば3個設けられ、軸方向位置決めピン5,5,…は、図3の抜き穴17B,17B,…に対応するものであり、例えば周方向に27個設けられる。
なお、径方向位置決めピン4,4,…は2個以上、軸方向位置決めピン5,5,…は3個以上であればよく、これらの個数は要求仕様等に応じて設定され、これらの個数に応じて円周を等分して設けるのが好ましい実施態様である。
また、径方向位置決めピン4,4,…及び軸方向位置決めピン5,5,…は、型板2と別体に製作して型板2に圧入して植え込んでもよいし、型板2と一体に製作してもよい。
さらに、軸方向位置決めピン5,5,…の断面形状は、角形状又は楕円形状等の非円形断面であってもよく、また、同一形状のものを用いる必要もなく、軸方向の長さが揃っていればよい。
【0016】
図5に示すように、鋼板等の金属板を用いて例えばプレス成形により製作される円環状の芯金21には、径方向位置決めピン4,4,…に係合する(径方向位置決めピン4,4,…が挿通される)係合穴21a,21a,…が形成されているため、図1に示すように径方向位置決めピン4,4,…を係合穴21a,21a,…に係合させた状態で、芯金21は型板2(キャビティC)に対して径方向の位置決めがされる。
また、ゲート8から注入された溶融樹脂Pは、載置された芯金21と軸方向反対側のキャビティC内の柱部の先端側から流動して充填されるので、芯金21の軸方向端面21Aがゲート8からキャビティC内へ流入した溶融樹脂Pの圧力を受け、芯金21の軸方向端面21Aの裏側の軸方向端面21Bに軸方向位置決めピン5,5,…が当止されるため、芯金21は型板2(キャビティC)に対して軸方向(水平方向)の位置決めがされる。
ここで、径方向位置決めピン4,4,…と係合穴21a,21a,…とのクリアランスは、熱膨張の差を吸収するため、例えば0.2mm〜0.5mm程度としている。
なお、径方向位置決めピン4,4,…が係合する芯金21に形成した係合穴21a,21a,…は、図5に示すような貫通穴である必要はなく、貫通していない穴(窪み)も含むものである。
【0017】
そして、溶融樹脂Pを冷却・固化させた後、パーティングラインPLから可動側MVの型板3を開くとともに、エジェクターピン10により押し出すことにより、円環状部分13に芯金21をインサートした樹脂製品であるくし型保持器11が成形品として型板2,3から取り出される。
このように射出成形用金型1により成形されたくし型保持器11は、芯金21を樹脂で包み込むことにより、射出成形時に溶融樹脂材料が合流して円環部に形成される、樹脂保持器の弱点であるウエルド部の弱さを補える構造であるとともに、転動体との金属接触が無くなるため、樹脂保持器の摺動特性を損なうことがない。
また、射出成形用金型1により成形されたくし型保持器11には、円筒ころが挿入されるポケット11A,11A,…が形成された円環状部分13の軸方向端面13Aの裏側の軸方向端面13Bに、径方向位置決めピン4,4,…及び軸方向位置決めピン5,5,…の抜き穴17A,17A,…及び17B,17B,…が形成される。
このように、くし型保持器11の軸方向端面13Bに穴が形成されており、この穴がグリースなどの潤滑剤の保持溜り部として機能するので、焼き付き防止に有効である。
【0018】
以上のような構成の径方向位置決めピン4,4,…及び軸方向位置決めピン5,5,…を備えた射出成形用金型1によれば、この射出成形用金型1を用いて円環状部分13に芯金21をインサートした樹脂製品(例えば、ころ軸受用くし型保持器11)の射出成形を行うことにより、芯金21を樹脂により包み込むことにより樹脂と芯金21とを強固に結合することができるため、芯金21による補強効果を高めることができる。
また、芯金21の径方向及び軸方向の位置決めが、芯金21の係合穴21a,21a,…に径方向位置決めピン4,4,…を係合すること、及び、キャビティC内へ流入した溶融樹脂Pの圧力を受ける芯金21の軸方向端面21Aに対し、その裏側の軸方向端面21Bに軸方向位置決めピン5,5,…を当止することにより行われることから、従来技術のような固定側型板及び可動側型板から突き出した保持ピンにより芯金21を挟み込んで拘束した状態にすることがない。
【0019】
よって、樹脂が固化した後に径方向位置決めピン4,4,…及び軸方向位置決めピン5,5,…を芯金21から離間させても芯金21の弾性変形の復元力が生じることがないことから、剛性の高い芯金21の影響を受けて樹脂製品(くし型保持器11)の精度が低下することいがない。
さらに、芯金21の補強効果の向上及び精度の向上を図ることができることから、PEEK材等の卓越した機械的特性を持つ高価な樹脂材料を使用する必要がなく、ポリアミド樹脂のような汎用のエンジニアリングプラスチック材料が使用できるため、コストを低減することができる。
例えば、ナイロン66等のポリアミド樹脂(PA)にガラス繊維を25重量パーセント添加した樹脂材料等を使用することができる。
【0020】
以上の説明においては、環状部分に芯金をインサートした樹脂製品の例として、ころ軸受用くし型保持器11について説明したが、玉軸受用冠型保持器であってもよい。
以上のような環状部分に芯金をインサートした樹脂製品であるくし型保持器及び冠型保持器は、上述の強度及び剛性並びに精度の向上により転がり軸受のさらなる高速回転化への要求に応えることができるとともに、このような特性を向上しながらコストを低減することができるため、その製品価値を大きく向上することができる。
【0021】
実施の形態2.
図6及び図7は、本発明の実施の形態2に係る環状部分に芯金をインサートした樹脂製品である、大径円環状部分14と小径円環状部分15との間を柱部16,16,…で連結した形状の円錐ころ軸受用保持器12を示しており、柱部16,16,…間のポケット12A,12A,…に円錐ころが挿入される。
また、図6と図7はゲート位置を変更した場合の例であり、図6は小径円環状部分15の軸方向端面15Bに設けたゲート9A又は小径円環状部分15の内周面に設けたゲート9Bから溶融樹脂をキャビティ内へ注入する例を、図7は大径円環状部分14の外周面に設けたゲート9Cから溶融樹脂をキャビティ内へ注入する例を示している。
【0022】
図6及び図7に示す円錐ころ軸受用保持器12は、大径円環状部分14及び小径円環状部分15のそれぞれに、鋼板等の金属板を用いて例えばプレス成形により製作され、柱部16,16,…の付け根付近を補強するための凸部を保持器の各柱の対応部分に設けた略円環状の芯金22,23が、実施の形態1と同様の機能を有する径方向位置決めピン及び軸方向位置決めピンを備えた射出成形用金型によりインサート成形される。
すなわち、図6の例では、射出成形用金型のキャビティ内で、芯金22,23の図示しない係合穴に周方向に離間して軸方向に延びる2個以上の径方向位置決めピンを係合させることにより、芯金22,23の径方向の位置決めがされ、ゲート9A又はゲート9Bからキャビティ内へ流入した溶融樹脂の圧力を受ける芯金22,23の軸方向端面22B,23Bに対し、その裏側の軸方向端面22A,22Aに軸方向位置決めピンを当止することにより軸方向(水平方向)の位置決めがされる。
したがって、このような射出成形金型により成形された図6に示す円錐ころ軸受用保持器12には、大径円環状部分14の軸方向端面14A及び小径円環状部分15の軸方向端面15Aのそれぞれに、図示しない径方向位置決めピンの抜き穴並びに軸方向位置決めピンの抜き穴18B,18B,…及び19B,19B,…が形成される。
【0023】
また、図7の例では、射出成形用金型のキャビティ内で、芯金22,23の図示しない係合穴に周方向に離間して軸方向に延びる2個以上の径方向位置決めピンを係合させることにより、芯金22,23の径方向の位置決めがされ、ゲート9Cからキャビティ内へ流入した溶融樹脂の圧力を受ける芯金22,23の軸方向端面22A,23Aに対し、その裏側の軸方向端面22B,22Bに軸方向位置決めピンを当止することにより軸方向(水平方向)の位置決めがされる。
したがって、このような射出成形金型により成形された図7に示す円錐ころ軸受用保持器12には、大径円環状部分14の軸方向端面14B及び小径円環状部分15の軸方向端面15Bのそれぞれに、図示しない径方向位置決めピンの抜き穴並びに軸方向位置決めピンの抜き穴18B,18B,…及び19B,19B,…が形成される。
【0024】
以上のような実施の形態2の射出成形用金型を用いて、大径円環状部分14及び小径円環状部分15のそれぞれに芯金22,23がインサート成形された、大径円環状部分14と小径円環状部分15との間を柱部16,16,…で連結した形状の円錐ころ軸受用保持器12においても、実施の形態1と同様の作用効果を奏するものであり、円錐ころ軸受用保持器12は、強度及び剛性並びに精度の向上により円錐ころ軸受のさらなる高速回転化への要求に応えることができるとともに、このような特性を向上しながらコストを低減することができるため、その製品価値を大きく向上することができる。
なお、実施の形態2の円錐ころ軸受用保持器12においても、実施の形態1のくし型保持器11と同様に、例えば、ナイロン66等のポリアミド樹脂(PA)にガラス繊維を25重量パーセント添加した樹脂材料等を使用することができる。
【符号の説明】
【0025】
C キャビティ
FX 固定側
MV 可動側
P 溶融樹脂
PL パーティングライン
R 径方向
1 射出成形用金型
2,3 型板
4 径方向位置決めピン
5 軸方向位置決めピン
6 スプルー
7 ランナー
8,9A,9B,9C ゲート
10 エジェクターピン
11 ころ軸受用くし型保持器(円環状部分に芯金をインサートした樹脂製品)
12 円錐ころ軸受用保持器(円環状部分に芯金をインサートした樹脂製品)
11A,12A ポケット
13 円環状部分
13A,13B 軸方向端面
14 大径円環状部分
14A,14B 軸方向端面
15 小径円環状部分
15A,15B 軸方向端面
16 柱部
17A,17B,18B,19B 抜き穴
21 芯金
21a 係合穴
21A,21B 軸方向端面
22 大径側芯金
23 小径側芯金
22A,22B,23A,23B 軸方向端面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
型板からキャビティ内へ突出する、周方向に離間して軸方向に延びる2個以上の径方向位置決めピン及び周方向に離間して軸方向に延びる3個以上の軸方向位置決めピンを備え、前記径方向位置決めピンに係合する係合穴が形成された円環状の芯金を、前記径方向位置決めピンを前記係合穴に係合させることにより径方向に位置決めし、前記キャビティ内へ流入した溶融樹脂の圧力を受ける前記芯金の軸方向端面に対し、その裏側の軸方向端面に前記軸方向位置決めピンを当止することにより軸方向に位置決めする、円環状部分に芯金をインサートした樹脂製品の射出成形用金型。
【請求項2】
請求項1に記載の射出成形用金型を使用して前記キャビティ内へ前記芯金を収容した状態で溶融樹脂を前記キャビティ内へ充填することにより製品を成形することを特徴とする、円環状部分に芯金をインサートした樹脂製品の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の樹脂製品の製造方法により製造されたくし型保持器又は冠型保持器であり、ポケットが形成された軸方向端面の裏側の軸方向端面に前記径方向位置決めピン及び軸方向位置決めピンの抜き穴が形成された、円環状部分に芯金をインサートした樹脂保持器。
【請求項4】
請求項2に記載の樹脂製品の製造方法により製造された大径円環状部分と小径円環状部分との間を柱部で連結した形状の円錐ころ軸受用保持器であり、前記大径円環状部分及び小径円環状部分のそれぞれに円環状の芯金がインサートされるとともに、前記大径円環状部分及び小径円環状部分の両方に、これらの軸方向両端面の軸方向の同一側端面に前記径方向位置決めピン及び軸方向位置決めピンの抜き穴が形成された、円環状部分に芯金をインサートした樹脂保持器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−161702(P2011−161702A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25034(P2010−25034)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000211695)中西金属工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】