円筒形スパッタリングターゲット
【課題】使用率を向上させ、In等の半田材の注入を容易にし、半田等の割れやクラック、剥離を著しく低減できる円筒形スパッタリングターゲットを提供する。
【解決手段】ITOまたはAZO等のセラミックス焼結体からなる複数個の円筒形ターゲットの、少なくとも一方の端部に、内周に向かってテーパ状及び/又は段状の形状を形状とし、円筒形ターゲットと円筒形基材との間隙にIn等の接合材(半田材)を容易にかつ円滑に注入して接合し、スパッタリングターゲットと成した後、使用効率が高く、割れやクラック、剥離のないことを特徴とする、円筒形スパッタリングターゲット。
【解決手段】ITOまたはAZO等のセラミックス焼結体からなる複数個の円筒形ターゲットの、少なくとも一方の端部に、内周に向かってテーパ状及び/又は段状の形状を形状とし、円筒形ターゲットと円筒形基材との間隙にIn等の接合材(半田材)を容易にかつ円滑に注入して接合し、スパッタリングターゲットと成した後、使用効率が高く、割れやクラック、剥離のないことを特徴とする、円筒形スパッタリングターゲット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマグネトロン型回転カソードスパッタリング装置等に用いられる円筒形スパッタリングターゲットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
マグネトロン型回転カソードスパッタリング装置は、円筒形スパッタリングターゲットの内側に磁場発生装置を有し、ターゲットの内側から冷却しつつ、ターゲットを回転させながらスパッタを行うものである。この装置では、ターゲット材の全面がエロージョン面となって均一に削られていくため、従来の平板型マグネトロンスパッタリング装置におけるターゲットの使用効率(20〜30%)に比べて格段に高いターゲット使用効率(60%以上)が得られる。さらに、ターゲットを回転させることで、従来の平板型マグネトロンスパッタリング装置に比べて単位面積当り大きなパワーを投入できることから高い成膜速度が得られる。
【0003】
しかしながら、円筒形ターゲットの外縁部は、スパッタされにくいため均一なエロージョンにならず、さらに高い使用効率が望まれていた。
【0004】
このような円筒形スパッタリングターゲットのうち、ITO(Indium Tin Oxide)等のセラミックスターゲットの製造方法の一例として、あらかじめ製造したセラミックス焼結体からなる円筒形ターゲット材と円筒形基材とを半田材等の接合材を用いて接合する方法がある。この方法は、セラミックス材料を溶射等により円筒形基材に形成する方法に比べて高密度なセラミックス焼結体を直接使用できることから、スパッタリングにより得られる膜が高品位なものとなり、又、製造歩留まりが高い等の利点もある。ITOの円筒形焼結体の製造方法としては、例えば鋳込み成形法あるいは冷間静水圧プレス(CIP)法が開示されている。
【0005】
一方、セラミックス焼結体からなる円筒形ターゲット材と円筒形基材とを半田材等を用いて接合する方法としては、例えば、円筒形ターゲット材及び円筒形基材の一方の端を封止し、溶融状態の半田材を入れた円筒形ターゲット材に、封止した面を下にして円筒形基材を挿入する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この方法において、複数個の円筒形ターゲット材を接合する場合には、円筒形ターゲット材間を耐熱テープで封止し一体化することが提案されている。
【0006】
しかし、この方法では、円筒形ターゲット材同士が接触してしまうため、冷却時に円筒形ターゲット材と円筒形基材の熱膨張係数の違いから割れ、剥離が発生することがあった。また、封止に使用した耐熱テープが円筒形ターゲット材の内側に残ってしまい、その部分での電気伝導不良、熱伝導不良から使用時に割れ、剥離が発生することがあった。
【0007】
又、他の方法として、スパッタ時にターゲットの割れや剥離が発生しない接合方法として、円筒形基材と円筒形ターゲット材との間に空隙層を設けて半田で接合する方法(例えば、特許文献2参照)や複数の円筒形スパッタリングターゲットを接合する際に、円筒形スパッタリングターゲット材同士の接続部に所定量の間隙を有する方法(例えば、特許文献3参照)が開示されている。
【0008】
しかし、これらの方法では円筒形ターゲット材と円筒形基材との間の空隙層に接合材を注入する場合、空隙層が1mm程度と狭いため、低融点半田等の接合材をターゲット端面から注入する際に空気を取り込み、鬆(す)が入った状態になったり、ひけ(凹み)が生じ、均一な接合層を得ることは容易でなかった。そこで、接合材を注入する際に円筒形ターゲットの外周部に振動を与えた状態で注入することが試みられているが、この方法では注入に長時間を要し、また、端面近傍に接合材が余分に付着、固化するために円滑な注入が妨げられた。
【0009】
【特許文献1】特許第3618005号公報
【特許文献2】特開2008−184627号公報
【特許文献3】特開2008−184640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、円筒形スパッタリングターゲットにおける外縁部をも実質均一なエロージョン面として、円筒形ターゲット使用効率を格段に向上させ、前述のような接合材の鬆、ひけ(凹み)をなくし、均一な接合層を形成し、割れ、剥離を著しく低減できる円筒形スパッタリングターゲットおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、以下のことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、円筒形基材の外周面にセラミックス焼結体からなる円筒形ターゲット材を接合材を用いて接合してなる円筒形スパッタリングターゲットにおいて、円筒形ターゲット材の少なくとも一方の端面の内周面の少なくとも一部が、端面から円筒形ターゲット材の内側に向かって、テーパ状及び/又は段状とすることにより、円筒形スパッタリングターゲット全面を、実質上均一なエロージョン領域とし、円筒形ターゲットの利用効率を格段に向上させることが可能となった。
【0013】
さらに、円筒形ターゲット材の端面の内周面をテーパ状及び/又は段状としたことにより、低融点半田等の接合材が空気層を取り込むことなく、また、脈動等により断続することなく、円筒形ターゲット材と円筒形基材との間に形成される空隙層に円滑に短時間で注入され、均一な接合層を形成することが可能となる。
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明において、円筒形ターゲット材はセラミックス焼結体からなるものであり、種々のセラミックス材料が使用可能であるが、例えば、In、Sn、Zn、Al、Ta、Nb、Tiの少なくとも1種を主成分とする酸化物等が挙げられる。より具体的には、例えば、インジウム、スズ及び酸素からなるITO焼結体、亜鉛、アルミニウム及び酸素からなるAZO焼結体(Aluminium Zinc Oxide)、インジウム、亜鉛及び酸素からなるIZO焼結体(Indium Zinc Oxide)、Ta2O5、Nb2O5、TiO2等が挙げられ、これらの焼結体にはさらなる放電特性の向上や抵抗率の改善のために、構成元素以外の他の元素が添加されていてもよい。
【0016】
本発明では、円筒形ターゲット材の端面がスパッタされ難いことに注目し、円筒形ターゲット材の少なくとも一方の端面の内周面の少なくとも一部を、端面から円筒形ターゲット材の内側に向かって、テーパ状及び/又は段状とすることで実質上、円筒形ターゲットのエロージョン領域を均一とすることが可能となった。円筒形スパッタリングターゲットの全長が長尺ものとなった場合、円筒形ターゲット材を複数に分割して円筒形基材に接合してもよい。この場合、テーパ状及び/又は段状の加工は、ターゲットの最外端に存在するターゲット材の端面に施せばよく、その他のターゲットはテーパ状及び/又は段状に加工する必要はない。
【0017】
円筒形ターゲットの端面に設けるテーパ状または段状の形状の一例の断面図を図1〜6に示す。これらの例においては、円筒形基材10に1個の円筒形ターゲット材30を接合材20を介して接合しているものであり、図1及び図2では端面内周面がテーパー状形状、図3では端面内周面が段状形状となっている。
【0018】
一方、図4〜6では、テーパー状形状と段状形状とが組み合わされた形状を示しているものである。なお、図1〜6において、端面の加工は円筒形ターゲット材の両端に対して行われているが、勿論、片端面だけに行われていても何ら問題はない。
【0019】
また、テーパ状形状又は段状形状は、図示したような一段のみならず、多段であっても構わない。
【0020】
円筒形ターゲット材に設けられたテーパ状形状又は段状形状部分の厚さは、図7に示すように、テーパ状形状や段状形状が形成されている円筒形ターゲット材の端部における、円筒形ターゲット材の肉厚(b)が、テーパ状及び/又は段状形状が形成されていない部分の円筒形ターゲット材の肉厚(a)の2/3以下であることが望ましい。
【0021】
例えば、図1のようなテーパ形状を円筒形ターゲット材に設けた場合、円筒形ターゲット材の端部における肉厚(b)は0であり、図2のようなテーパ形状や図3のような段状形状を円筒形ターゲット材に設けた場合における端部の肉厚(b)は、例えば、肉厚(a)の2/3に設定すればよい。肉厚(b)が肉厚(a)の2/3を超えると、円筒形ターゲット材中央部のエロージョン厚みに較べ、端部が厚いままとなってしまい、均一なエロージョン領域が得られない場合がある。
【0022】
また、円筒形ターゲット材のテーパ状及び/又は段状の形状は、円筒形ターゲット材の端面から10〜20mmの範囲内に設けることが望ましい。これらの形状を形成する範囲が円筒形ターゲット材の端面から10mm未満の範囲内であるとエロージョン残りが起き易くなる場合がある。一方、円筒形ターゲット材の端面から20mmを超える範囲までこれらの形状を設けてしまうと、スパッタリングによるターゲット材の消費によって、円筒形ターゲット材の中央部が最深部に到達する前に、ターゲット材端部が最深部までスパッタされてしまうため、中央部近傍のエロージョン残りが多くなり、かえって利用効率が低下するおそれがある。
【0023】
円筒形基材に複数個の円筒形ターゲット材を配する一例を図8及び図9に示す。テーパ状形状又は段状形状は、図8に示すように複数個接合した円筒形ターゲット材の一方の最外端に位置するターゲット材に設けてもよく、また、図9に示すように複数個接合した円筒形ターゲットの両端に設けてもよい。
【0024】
一方、円筒形ターゲットの端面から内周部に向かって設けられたテーパ形状および段状の形状は、低融点半田等の接合材を、円筒形ターゲット材と円筒形基材との間に形成された空隙部に注入しターゲット材と基材との接合を行うのに好都合な形状である。即ち、円筒形ターゲット材の端面にテーパ形状や段状形状がない場合には、上記した空隙部が狭いため、接合材の注入を円滑に行うことが難しかった。そのため、ターゲット材に振動を与えて、接合材が流れ易くする必要があったが、本発明によれば、何らの脈動もなく、端面近傍で接合材が固化することもない。この場合、上記したように、円筒形ターゲット材の端部における肉厚(b)が肉厚(a)の2/3以下であることが望ましい。肉厚(b)の厚さが2/3を超えると、円筒形基体と円筒形ターゲット材との間の約1mm程の空隙に円滑に接合材が注入されないことがあり、端面近傍に接合材が溢れてしまうおそれがある。
【0025】
また、円筒形ターゲット材のテーパ状及び/又は段状の形状は、円筒形ターゲット材の端面から10〜20mmの範囲内に設けることが望ましい。これらの形状を形成する範囲が円筒形ターゲット材の端面から10mm未満の範囲内であると接合材の導入部が小さいため、円滑な注入が難しい場合があり、一方、円筒形ターゲット材の端面から20mmを超える範囲までこれらの形状を設けてしまうと、接合材の導入部が大きすぎて、例えば、ターゲット材下端から注入された接合材が一気に上端面から溢れ出てしまうおそれがある。
【0026】
本発明の円筒形スパッタリングターゲットによれば、円筒形ターゲット材のエロージョンは実質的に端部まで均一となり、使用効率が格段に向上するだけでなく、円筒形ターゲット材と円筒形基材との間に低融点半田等の接合材を注入することが容易になり、かつ連続的に円滑な注入を行うことが可能なため、接合層に鬆やひけの発生しない均一な接合層が形成され、製造時やスパッタ時の不均一な熱分布による割れ、剥離を低減できる。
【0027】
上記したようなテーパ状及び/又は段状形状を有する円筒形ターゲットは、例えば、当該形状が得られるように設計した成形型を用いて鋳込み成形法やプレス成形法により、または、通常の円筒形ターゲットを製造した後、旋盤等の加工装置を用いて端部を切削加工することにより、製造することができる。
【0028】
本発明の円筒形スパッタリングターゲットは、円筒形基材の外周面にセラミックス焼結体からなる円筒形ターゲット材を接合材を用いて接合してなるものであるが、この円筒形スパッタリングターゲットは、例えば、以下のような方法で製造することができる。
【0029】
即ち、円筒形基材に1個の円筒形ターゲット材を接合する場合には、少なくとも一端を上記のように加工した円筒形ターゲットを基材の中心を考慮しながら挿入し、基材とターゲット材との間に形成された空隙部の上端又は下端から接合材を流し込む方法を例示でき、円筒形基材に複数の円筒形ターゲット材を接合する場合には、少なくとも一方の最外端に、一端を上記のように加工した円筒形ターゲットを挿入し、その他は上記のような加工を施していない円筒形ターゲット材を挿入し、各ターゲット材を基材中心を考慮しながら、基材と各ターゲット材との間に形成された空隙部の上端又は下端から接合材を流し込む方法を例示できる。
【0030】
複数の円筒形ターゲット材を接合する場合、並列する円筒形ターゲット間に間隙を設けるためにスペーサー等を配してもよい。
【0031】
本発明で使用可能な円筒形基材としては、例えば、Cu、Ti、Al、Mo、これらの金属の少なくとも1種を含む合金、SUS等を挙げることができ、適当な熱伝導性、電気伝導性、強度等を備えているものであれば良い。
【0032】
本発明の円筒形スパッタリングターゲットにおいては、円筒形基材及び円筒形ターゲット材の長さは特に限定されるものではなく、また、複数の円筒形ターゲット材を接合する場合、その個数も特に限定されるものではない。
【0033】
接合材としては、一般に半田材として使用されるものであれば使用可能である。好ましくは、低融点半田であり、具体的にはIn、In合金、Sn、Sn合金等が挙げられる。
【0034】
円筒形基材と円筒形ターゲット材との間に形成される空隙部への接合材の充填方法としては、例えば、円筒形ターゲット材及び円筒形基材の一方の端を封止し、溶融状態の接合材を入れた円筒形ターゲット材に円筒形基材を挿入し接合材を這い上がらせる方法や、予め円筒形基材の外側に円筒形ターゲット材を配置した後、円筒形ターゲット材の下部を封止し、上部より溶融状態の接合材を流し込む方法等が挙げられる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、円筒形スパッタリングターゲットの使用効率が格段に向上し、スパッタ時の割れ、剥離を著しく低減することができる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の実施例をもって説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0037】
実施例1
外径88mmφ、内径68mmφ、長さ180mmの円筒形ITOターゲット材を、図1に示すテーパ部(端部〜テーパ部終了の距離:18mm)を有する円筒形ターゲットに
旋盤加工装置により加工した。外径65mmφ、内径61mmφ、長さ400mmのSUS304製円筒形基材を用意し、円筒形基材の下部より20mmの位置に、加工した円筒形ITOターゲット材の下端がくるように治具で保持し、円筒形ITOターゲット材の下端を封止した後、円筒形ITOターゲット材と円筒形基材の間隙の上部より、接合材として溶融状態のInを流し込んだ。流し込み時には脈動がなく、円滑に所定量のInが注入された。次いでInを固化させ、円筒形ITOスパッタリングターゲットを得た。
【0038】
このようにして得られた円筒形ターゲットについて、図11に示すようにX線透過撮影で接合材であるInの状態を確認したが、鬆、ひけ(凹み)は認められかなった。さらに、48時間の連続放電試験を実施、48時間後もターゲットに割れやクラック、剥離の発生は認められなかった。
【0039】
さらにライフエンドまで放電をおこなったところ、円筒形ターゲット材の両端の外周部もテーパ状となっていた。
【0040】
実施例2
実施例1と同様の大きさの円筒形ITOターゲットの形状を図2のようなテーパ部(端部〜テーパ部終了の距離:15mm、最端部のターゲット材の厚さ:6mm)を持つように加工した以外は、実施例1と同様に溶融Inの流し込みを行い、円筒形ITOスパッタリングターゲットを得た。流し込み時には脈動がなく、円滑に所定量のInが注入された。次いでInを固化させ、円筒形ITOスパッタリングターゲットを得た。
【0041】
このようにして得られた円筒形ターゲットについて、X線透過撮影で接合材であるInの状態を確認したが、鬆、ひけ(凹み)は認められかなった。さらに、48時間の連続放電試験を実施した。48時間後もターゲットに割れやクラック、剥離の発生は認められなかった。
【0042】
実施例3
実施例1と同様の大きさの円筒形ITOターゲットの形状を図5のような段部(端部〜テーパ部終了の距離:12mm、段状部の幅:3mm)を持つように加工した以外は、実施例1と同様に溶融半田の流し込みを行い、円筒形ITOターゲット材を得た。流し込み時には脈動がなく、円滑に所定量のInが注入された。次いでInを固化させ、円筒形ITOスパッタリングターゲットを得た。
【0043】
このようにして得られた円筒形ターゲットについて、X線透過撮影で接合材であるInの状態を確認したが、鬆、ひけ(凹み)は認められかなった。さらに、48時間の連続放電試験を実施した。48時間後もターゲットに割れやクラック、剥離の発生は認められなかった。
【0044】
比較例1
円筒形ITOターゲット材の端部形状を図10のように、何ら加工せずに実施例1と同様に溶融Inの流し込みを行い、円筒形ITOスパッタリングターゲットを得た。流し込み時には、円筒形ITOターゲット材と円筒形基材との空隙部で溶融Inが薄い酸化膜を形成し、酸化膜を除去しなければ、溶融Inの注入が困難であり、一部のInはターゲット材の外側に溢れ出した。
【0045】
このようにして得られた円筒形ターゲットについて、図12に示すようにX線透過撮影で接合材であるInの状態を確認したが、溶融Inを注入した側に鬆が認められた。さらに、6時間の連続放電試験を実施したところ、鬆の部分に相当する部分に、ターゲット材の表面粗れが発生し、その部分からクラックが発生した。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明において、円筒形ターゲット材に設けるテーパ形状の一例を示す図である。
【図2】本発明において、円筒形ターゲット材に設けるテーパ形状の一例を示す図である。
【図3】本発明において、円筒形ターゲット材に設ける段状形状の一例を示す図である。
【図4】本発明において、円筒形ターゲット材に設けるテーパ形状及び段状形状が組み合わさった形状の一例を示す図である。
【図5】本発明において、円筒形ターゲット材に設けるテーパ形状及び段状形状が組み合わさった形状の一例を示す図である。
【図6】本発明において、円筒形ターゲット材に設けるテーパ形状及び段状形状が組み合わさった形状の一例を示す図である。
【図7】円筒形ターゲット材端部におけるテーパ状及び/又は段状形状を設ける位置を示す図である。
【図8】本発明において、複数の円筒形ターゲット材を接合した場合における円筒形ターゲット材に設けるテーパ形状の一例を示す図である。
【図9】本発明において、複数の円筒形ターゲット材を接合した場合における円筒形ターゲット材に設けるテーパ形状の一例を示す図である。
【図10】従来の円筒形スパッタリングターゲットの構造の一例を示す図である。
【図11】実施例1における円筒形スパッタリングターゲットの接合状態を示す図である。
【図12】比較例1における円筒形スパッタリングターゲットの接合状態を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
10:円筒形基体
20:接合材
30:円筒形ターゲット材
【技術分野】
【0001】
本発明はマグネトロン型回転カソードスパッタリング装置等に用いられる円筒形スパッタリングターゲットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
マグネトロン型回転カソードスパッタリング装置は、円筒形スパッタリングターゲットの内側に磁場発生装置を有し、ターゲットの内側から冷却しつつ、ターゲットを回転させながらスパッタを行うものである。この装置では、ターゲット材の全面がエロージョン面となって均一に削られていくため、従来の平板型マグネトロンスパッタリング装置におけるターゲットの使用効率(20〜30%)に比べて格段に高いターゲット使用効率(60%以上)が得られる。さらに、ターゲットを回転させることで、従来の平板型マグネトロンスパッタリング装置に比べて単位面積当り大きなパワーを投入できることから高い成膜速度が得られる。
【0003】
しかしながら、円筒形ターゲットの外縁部は、スパッタされにくいため均一なエロージョンにならず、さらに高い使用効率が望まれていた。
【0004】
このような円筒形スパッタリングターゲットのうち、ITO(Indium Tin Oxide)等のセラミックスターゲットの製造方法の一例として、あらかじめ製造したセラミックス焼結体からなる円筒形ターゲット材と円筒形基材とを半田材等の接合材を用いて接合する方法がある。この方法は、セラミックス材料を溶射等により円筒形基材に形成する方法に比べて高密度なセラミックス焼結体を直接使用できることから、スパッタリングにより得られる膜が高品位なものとなり、又、製造歩留まりが高い等の利点もある。ITOの円筒形焼結体の製造方法としては、例えば鋳込み成形法あるいは冷間静水圧プレス(CIP)法が開示されている。
【0005】
一方、セラミックス焼結体からなる円筒形ターゲット材と円筒形基材とを半田材等を用いて接合する方法としては、例えば、円筒形ターゲット材及び円筒形基材の一方の端を封止し、溶融状態の半田材を入れた円筒形ターゲット材に、封止した面を下にして円筒形基材を挿入する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この方法において、複数個の円筒形ターゲット材を接合する場合には、円筒形ターゲット材間を耐熱テープで封止し一体化することが提案されている。
【0006】
しかし、この方法では、円筒形ターゲット材同士が接触してしまうため、冷却時に円筒形ターゲット材と円筒形基材の熱膨張係数の違いから割れ、剥離が発生することがあった。また、封止に使用した耐熱テープが円筒形ターゲット材の内側に残ってしまい、その部分での電気伝導不良、熱伝導不良から使用時に割れ、剥離が発生することがあった。
【0007】
又、他の方法として、スパッタ時にターゲットの割れや剥離が発生しない接合方法として、円筒形基材と円筒形ターゲット材との間に空隙層を設けて半田で接合する方法(例えば、特許文献2参照)や複数の円筒形スパッタリングターゲットを接合する際に、円筒形スパッタリングターゲット材同士の接続部に所定量の間隙を有する方法(例えば、特許文献3参照)が開示されている。
【0008】
しかし、これらの方法では円筒形ターゲット材と円筒形基材との間の空隙層に接合材を注入する場合、空隙層が1mm程度と狭いため、低融点半田等の接合材をターゲット端面から注入する際に空気を取り込み、鬆(す)が入った状態になったり、ひけ(凹み)が生じ、均一な接合層を得ることは容易でなかった。そこで、接合材を注入する際に円筒形ターゲットの外周部に振動を与えた状態で注入することが試みられているが、この方法では注入に長時間を要し、また、端面近傍に接合材が余分に付着、固化するために円滑な注入が妨げられた。
【0009】
【特許文献1】特許第3618005号公報
【特許文献2】特開2008−184627号公報
【特許文献3】特開2008−184640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、円筒形スパッタリングターゲットにおける外縁部をも実質均一なエロージョン面として、円筒形ターゲット使用効率を格段に向上させ、前述のような接合材の鬆、ひけ(凹み)をなくし、均一な接合層を形成し、割れ、剥離を著しく低減できる円筒形スパッタリングターゲットおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、以下のことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、円筒形基材の外周面にセラミックス焼結体からなる円筒形ターゲット材を接合材を用いて接合してなる円筒形スパッタリングターゲットにおいて、円筒形ターゲット材の少なくとも一方の端面の内周面の少なくとも一部が、端面から円筒形ターゲット材の内側に向かって、テーパ状及び/又は段状とすることにより、円筒形スパッタリングターゲット全面を、実質上均一なエロージョン領域とし、円筒形ターゲットの利用効率を格段に向上させることが可能となった。
【0013】
さらに、円筒形ターゲット材の端面の内周面をテーパ状及び/又は段状としたことにより、低融点半田等の接合材が空気層を取り込むことなく、また、脈動等により断続することなく、円筒形ターゲット材と円筒形基材との間に形成される空隙層に円滑に短時間で注入され、均一な接合層を形成することが可能となる。
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明において、円筒形ターゲット材はセラミックス焼結体からなるものであり、種々のセラミックス材料が使用可能であるが、例えば、In、Sn、Zn、Al、Ta、Nb、Tiの少なくとも1種を主成分とする酸化物等が挙げられる。より具体的には、例えば、インジウム、スズ及び酸素からなるITO焼結体、亜鉛、アルミニウム及び酸素からなるAZO焼結体(Aluminium Zinc Oxide)、インジウム、亜鉛及び酸素からなるIZO焼結体(Indium Zinc Oxide)、Ta2O5、Nb2O5、TiO2等が挙げられ、これらの焼結体にはさらなる放電特性の向上や抵抗率の改善のために、構成元素以外の他の元素が添加されていてもよい。
【0016】
本発明では、円筒形ターゲット材の端面がスパッタされ難いことに注目し、円筒形ターゲット材の少なくとも一方の端面の内周面の少なくとも一部を、端面から円筒形ターゲット材の内側に向かって、テーパ状及び/又は段状とすることで実質上、円筒形ターゲットのエロージョン領域を均一とすることが可能となった。円筒形スパッタリングターゲットの全長が長尺ものとなった場合、円筒形ターゲット材を複数に分割して円筒形基材に接合してもよい。この場合、テーパ状及び/又は段状の加工は、ターゲットの最外端に存在するターゲット材の端面に施せばよく、その他のターゲットはテーパ状及び/又は段状に加工する必要はない。
【0017】
円筒形ターゲットの端面に設けるテーパ状または段状の形状の一例の断面図を図1〜6に示す。これらの例においては、円筒形基材10に1個の円筒形ターゲット材30を接合材20を介して接合しているものであり、図1及び図2では端面内周面がテーパー状形状、図3では端面内周面が段状形状となっている。
【0018】
一方、図4〜6では、テーパー状形状と段状形状とが組み合わされた形状を示しているものである。なお、図1〜6において、端面の加工は円筒形ターゲット材の両端に対して行われているが、勿論、片端面だけに行われていても何ら問題はない。
【0019】
また、テーパ状形状又は段状形状は、図示したような一段のみならず、多段であっても構わない。
【0020】
円筒形ターゲット材に設けられたテーパ状形状又は段状形状部分の厚さは、図7に示すように、テーパ状形状や段状形状が形成されている円筒形ターゲット材の端部における、円筒形ターゲット材の肉厚(b)が、テーパ状及び/又は段状形状が形成されていない部分の円筒形ターゲット材の肉厚(a)の2/3以下であることが望ましい。
【0021】
例えば、図1のようなテーパ形状を円筒形ターゲット材に設けた場合、円筒形ターゲット材の端部における肉厚(b)は0であり、図2のようなテーパ形状や図3のような段状形状を円筒形ターゲット材に設けた場合における端部の肉厚(b)は、例えば、肉厚(a)の2/3に設定すればよい。肉厚(b)が肉厚(a)の2/3を超えると、円筒形ターゲット材中央部のエロージョン厚みに較べ、端部が厚いままとなってしまい、均一なエロージョン領域が得られない場合がある。
【0022】
また、円筒形ターゲット材のテーパ状及び/又は段状の形状は、円筒形ターゲット材の端面から10〜20mmの範囲内に設けることが望ましい。これらの形状を形成する範囲が円筒形ターゲット材の端面から10mm未満の範囲内であるとエロージョン残りが起き易くなる場合がある。一方、円筒形ターゲット材の端面から20mmを超える範囲までこれらの形状を設けてしまうと、スパッタリングによるターゲット材の消費によって、円筒形ターゲット材の中央部が最深部に到達する前に、ターゲット材端部が最深部までスパッタされてしまうため、中央部近傍のエロージョン残りが多くなり、かえって利用効率が低下するおそれがある。
【0023】
円筒形基材に複数個の円筒形ターゲット材を配する一例を図8及び図9に示す。テーパ状形状又は段状形状は、図8に示すように複数個接合した円筒形ターゲット材の一方の最外端に位置するターゲット材に設けてもよく、また、図9に示すように複数個接合した円筒形ターゲットの両端に設けてもよい。
【0024】
一方、円筒形ターゲットの端面から内周部に向かって設けられたテーパ形状および段状の形状は、低融点半田等の接合材を、円筒形ターゲット材と円筒形基材との間に形成された空隙部に注入しターゲット材と基材との接合を行うのに好都合な形状である。即ち、円筒形ターゲット材の端面にテーパ形状や段状形状がない場合には、上記した空隙部が狭いため、接合材の注入を円滑に行うことが難しかった。そのため、ターゲット材に振動を与えて、接合材が流れ易くする必要があったが、本発明によれば、何らの脈動もなく、端面近傍で接合材が固化することもない。この場合、上記したように、円筒形ターゲット材の端部における肉厚(b)が肉厚(a)の2/3以下であることが望ましい。肉厚(b)の厚さが2/3を超えると、円筒形基体と円筒形ターゲット材との間の約1mm程の空隙に円滑に接合材が注入されないことがあり、端面近傍に接合材が溢れてしまうおそれがある。
【0025】
また、円筒形ターゲット材のテーパ状及び/又は段状の形状は、円筒形ターゲット材の端面から10〜20mmの範囲内に設けることが望ましい。これらの形状を形成する範囲が円筒形ターゲット材の端面から10mm未満の範囲内であると接合材の導入部が小さいため、円滑な注入が難しい場合があり、一方、円筒形ターゲット材の端面から20mmを超える範囲までこれらの形状を設けてしまうと、接合材の導入部が大きすぎて、例えば、ターゲット材下端から注入された接合材が一気に上端面から溢れ出てしまうおそれがある。
【0026】
本発明の円筒形スパッタリングターゲットによれば、円筒形ターゲット材のエロージョンは実質的に端部まで均一となり、使用効率が格段に向上するだけでなく、円筒形ターゲット材と円筒形基材との間に低融点半田等の接合材を注入することが容易になり、かつ連続的に円滑な注入を行うことが可能なため、接合層に鬆やひけの発生しない均一な接合層が形成され、製造時やスパッタ時の不均一な熱分布による割れ、剥離を低減できる。
【0027】
上記したようなテーパ状及び/又は段状形状を有する円筒形ターゲットは、例えば、当該形状が得られるように設計した成形型を用いて鋳込み成形法やプレス成形法により、または、通常の円筒形ターゲットを製造した後、旋盤等の加工装置を用いて端部を切削加工することにより、製造することができる。
【0028】
本発明の円筒形スパッタリングターゲットは、円筒形基材の外周面にセラミックス焼結体からなる円筒形ターゲット材を接合材を用いて接合してなるものであるが、この円筒形スパッタリングターゲットは、例えば、以下のような方法で製造することができる。
【0029】
即ち、円筒形基材に1個の円筒形ターゲット材を接合する場合には、少なくとも一端を上記のように加工した円筒形ターゲットを基材の中心を考慮しながら挿入し、基材とターゲット材との間に形成された空隙部の上端又は下端から接合材を流し込む方法を例示でき、円筒形基材に複数の円筒形ターゲット材を接合する場合には、少なくとも一方の最外端に、一端を上記のように加工した円筒形ターゲットを挿入し、その他は上記のような加工を施していない円筒形ターゲット材を挿入し、各ターゲット材を基材中心を考慮しながら、基材と各ターゲット材との間に形成された空隙部の上端又は下端から接合材を流し込む方法を例示できる。
【0030】
複数の円筒形ターゲット材を接合する場合、並列する円筒形ターゲット間に間隙を設けるためにスペーサー等を配してもよい。
【0031】
本発明で使用可能な円筒形基材としては、例えば、Cu、Ti、Al、Mo、これらの金属の少なくとも1種を含む合金、SUS等を挙げることができ、適当な熱伝導性、電気伝導性、強度等を備えているものであれば良い。
【0032】
本発明の円筒形スパッタリングターゲットにおいては、円筒形基材及び円筒形ターゲット材の長さは特に限定されるものではなく、また、複数の円筒形ターゲット材を接合する場合、その個数も特に限定されるものではない。
【0033】
接合材としては、一般に半田材として使用されるものであれば使用可能である。好ましくは、低融点半田であり、具体的にはIn、In合金、Sn、Sn合金等が挙げられる。
【0034】
円筒形基材と円筒形ターゲット材との間に形成される空隙部への接合材の充填方法としては、例えば、円筒形ターゲット材及び円筒形基材の一方の端を封止し、溶融状態の接合材を入れた円筒形ターゲット材に円筒形基材を挿入し接合材を這い上がらせる方法や、予め円筒形基材の外側に円筒形ターゲット材を配置した後、円筒形ターゲット材の下部を封止し、上部より溶融状態の接合材を流し込む方法等が挙げられる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、円筒形スパッタリングターゲットの使用効率が格段に向上し、スパッタ時の割れ、剥離を著しく低減することができる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の実施例をもって説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0037】
実施例1
外径88mmφ、内径68mmφ、長さ180mmの円筒形ITOターゲット材を、図1に示すテーパ部(端部〜テーパ部終了の距離:18mm)を有する円筒形ターゲットに
旋盤加工装置により加工した。外径65mmφ、内径61mmφ、長さ400mmのSUS304製円筒形基材を用意し、円筒形基材の下部より20mmの位置に、加工した円筒形ITOターゲット材の下端がくるように治具で保持し、円筒形ITOターゲット材の下端を封止した後、円筒形ITOターゲット材と円筒形基材の間隙の上部より、接合材として溶融状態のInを流し込んだ。流し込み時には脈動がなく、円滑に所定量のInが注入された。次いでInを固化させ、円筒形ITOスパッタリングターゲットを得た。
【0038】
このようにして得られた円筒形ターゲットについて、図11に示すようにX線透過撮影で接合材であるInの状態を確認したが、鬆、ひけ(凹み)は認められかなった。さらに、48時間の連続放電試験を実施、48時間後もターゲットに割れやクラック、剥離の発生は認められなかった。
【0039】
さらにライフエンドまで放電をおこなったところ、円筒形ターゲット材の両端の外周部もテーパ状となっていた。
【0040】
実施例2
実施例1と同様の大きさの円筒形ITOターゲットの形状を図2のようなテーパ部(端部〜テーパ部終了の距離:15mm、最端部のターゲット材の厚さ:6mm)を持つように加工した以外は、実施例1と同様に溶融Inの流し込みを行い、円筒形ITOスパッタリングターゲットを得た。流し込み時には脈動がなく、円滑に所定量のInが注入された。次いでInを固化させ、円筒形ITOスパッタリングターゲットを得た。
【0041】
このようにして得られた円筒形ターゲットについて、X線透過撮影で接合材であるInの状態を確認したが、鬆、ひけ(凹み)は認められかなった。さらに、48時間の連続放電試験を実施した。48時間後もターゲットに割れやクラック、剥離の発生は認められなかった。
【0042】
実施例3
実施例1と同様の大きさの円筒形ITOターゲットの形状を図5のような段部(端部〜テーパ部終了の距離:12mm、段状部の幅:3mm)を持つように加工した以外は、実施例1と同様に溶融半田の流し込みを行い、円筒形ITOターゲット材を得た。流し込み時には脈動がなく、円滑に所定量のInが注入された。次いでInを固化させ、円筒形ITOスパッタリングターゲットを得た。
【0043】
このようにして得られた円筒形ターゲットについて、X線透過撮影で接合材であるInの状態を確認したが、鬆、ひけ(凹み)は認められかなった。さらに、48時間の連続放電試験を実施した。48時間後もターゲットに割れやクラック、剥離の発生は認められなかった。
【0044】
比較例1
円筒形ITOターゲット材の端部形状を図10のように、何ら加工せずに実施例1と同様に溶融Inの流し込みを行い、円筒形ITOスパッタリングターゲットを得た。流し込み時には、円筒形ITOターゲット材と円筒形基材との空隙部で溶融Inが薄い酸化膜を形成し、酸化膜を除去しなければ、溶融Inの注入が困難であり、一部のInはターゲット材の外側に溢れ出した。
【0045】
このようにして得られた円筒形ターゲットについて、図12に示すようにX線透過撮影で接合材であるInの状態を確認したが、溶融Inを注入した側に鬆が認められた。さらに、6時間の連続放電試験を実施したところ、鬆の部分に相当する部分に、ターゲット材の表面粗れが発生し、その部分からクラックが発生した。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明において、円筒形ターゲット材に設けるテーパ形状の一例を示す図である。
【図2】本発明において、円筒形ターゲット材に設けるテーパ形状の一例を示す図である。
【図3】本発明において、円筒形ターゲット材に設ける段状形状の一例を示す図である。
【図4】本発明において、円筒形ターゲット材に設けるテーパ形状及び段状形状が組み合わさった形状の一例を示す図である。
【図5】本発明において、円筒形ターゲット材に設けるテーパ形状及び段状形状が組み合わさった形状の一例を示す図である。
【図6】本発明において、円筒形ターゲット材に設けるテーパ形状及び段状形状が組み合わさった形状の一例を示す図である。
【図7】円筒形ターゲット材端部におけるテーパ状及び/又は段状形状を設ける位置を示す図である。
【図8】本発明において、複数の円筒形ターゲット材を接合した場合における円筒形ターゲット材に設けるテーパ形状の一例を示す図である。
【図9】本発明において、複数の円筒形ターゲット材を接合した場合における円筒形ターゲット材に設けるテーパ形状の一例を示す図である。
【図10】従来の円筒形スパッタリングターゲットの構造の一例を示す図である。
【図11】実施例1における円筒形スパッタリングターゲットの接合状態を示す図である。
【図12】比較例1における円筒形スパッタリングターゲットの接合状態を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
10:円筒形基体
20:接合材
30:円筒形ターゲット材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形基材の外周面にセラミックス焼結体からなる円筒形ターゲット材を接合材を用いて接合してなる円筒形スパッタリングターゲットにおいて、円筒形ターゲット材の少なくとも一方の端面の内周面の少なくとも一部が、端面から円筒形ターゲット材の内側に向かって、テーパ状及び/又は段状となっていることを特徴とする円筒形スパッタリングターゲット。
【請求項2】
テーパ状及び/又は段状形状が形成されている円筒形ターゲット材の端部における、円筒形ターゲット材の肉厚が、テーパ状及び/又は段状形状が形成されていない部分の円筒形ターゲット材の肉厚の2/3以下であることを特徴とする請求項1に記載の円筒形スパッタリングターゲット。
【請求項3】
セラミックス焼結体がITOまたはAZOであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の円筒形スパッタリングターゲット。
【請求項4】
円筒形ターゲット材を円筒形基材の外周面に複数個接合してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の円筒形スパッタリングターゲット。
【請求項1】
円筒形基材の外周面にセラミックス焼結体からなる円筒形ターゲット材を接合材を用いて接合してなる円筒形スパッタリングターゲットにおいて、円筒形ターゲット材の少なくとも一方の端面の内周面の少なくとも一部が、端面から円筒形ターゲット材の内側に向かって、テーパ状及び/又は段状となっていることを特徴とする円筒形スパッタリングターゲット。
【請求項2】
テーパ状及び/又は段状形状が形成されている円筒形ターゲット材の端部における、円筒形ターゲット材の肉厚が、テーパ状及び/又は段状形状が形成されていない部分の円筒形ターゲット材の肉厚の2/3以下であることを特徴とする請求項1に記載の円筒形スパッタリングターゲット。
【請求項3】
セラミックス焼結体がITOまたはAZOであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の円筒形スパッタリングターゲット。
【請求項4】
円筒形ターゲット材を円筒形基材の外周面に複数個接合してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の円筒形スパッタリングターゲット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−150610(P2010−150610A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331175(P2008−331175)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】
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