説明

写真現像型ハイブリッド材料を利用する微細光学素子の製作方法

本発明は、基板上に重合可能な有機官能基を含有するオリゴ−シロキサンと、重合体形成の可能な光活性単量体または/および光照射の時に二量体を形成することによって重合を開始する光化学開始単量体を含有する写真現像型ハイブリッドコーティング層を形成する工程と、前記写真現像型ハイブリッドコーティング層に光を照射して望む形態の構造を有する微細光学素子を形成することを特徴とする微細光学素子の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細光学素子を作製するための写真現像型(Photo−imageable)ハイブリッド材料に関し、より詳細には、直接的な光照射を通じて屈折率の調整のみならず、他の誘電領域間で滑らかな体積の変化を可能にする写真現像型ハイブリッド材料を利用して微細光学素子をエッチング工程なしに簡便な工程を通じて製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロレンズのような微細光学素子は、液晶表示装置、光受信機及び光通信システムで光連結素子としての活用度が急激に増加しており、より拘束の光信号の伝送のために、特に、複雑な光情報の保存、センサー、イメージシステムにおける信号処理の容易性のために多くの要求がある。このような要求条件を満足するために、高効率及び光学的物性の制御が容易な微細光学素子の作製が、非常に重要な問題として認識され、現在活発な研究が進められている。
現在、マイクロレンズのような微細光学素子の代表的な製造方法を検討してみると、およそ下記の通りである。
まず、シリコンウエハーまたはガラス基板のような平板基板上にフォトレジストをコーティングする。このフォトレジストをフォトマスクによってパターニングした後、現像と洗浄過程を通じて基板上に円筒状のフォトレジストパターンを形成する。基板上で円筒状にパターニングされたフォトレジストは、ガラス転移温度以上の所定温度、例えば、約150℃の温度での加熱加熱によってリフローされる。このとき、液状のフォトレジストに作用する表面張力によって半球形状を有することになり、熱処理工程を通じてマイクロレンズ作製のためのマスクが基板上に形成されるようになる。真空チャンバー内で反応性イオンエッチングのようなプラズマエッチングによってマスクと基板とをエッチングし、アレイ状に配列されたマイクロレンズを基板上に形成する。
これらの工程でパターニングされたような、半球型に形成されるフォトレジストをマスクに適用して適切な条件でプラズマエッチングなどによってドライエッチングを行うと、フォトレジストの半球形状がそのままエッチングされて基板に転写され、球面の屈折曲面を有するマイクロレンズが得られる。
【0003】
特に、特許文献1には、パターニングされたフォトレジストを利用してプラズマエッチングによってマイクロレンズを得る方法について提案しているが、マスクと基板物質(例えば、SiO)とはエッチングする時に反応物質及び生成物質が互に異なる。そのために、エッチング途中の化学反応は、非常に複雑であり、時間の経過に従って連続的に変化する。したがって、実際にガスの種類及び混合比率をエッチング工程中に変化させながら、設計どおりの非球面形状を得ることは極めて困難であり、工程も非常に複雑であるという問題がある。
【0004】
また、特許文献2、特許文献3には、フォトレジスト及び樹脂を利用してフォトリソグラフィー法によって基板上に円筒状のフォトレジストまたは樹脂パターンを形成した後、熱によってリフローさせて半球状のマイクロレンズパターンを形成する方法が提案されている。この方法もやはりエッチング、現像または洗浄工程のような複雑な製作工程が要求されるため、最終的に製造された微細光学素子のコストアップのみならず、信頼性を低下させるという問題がある。
このように、微細光学素子の製作工程を削減するための方法などが多く提案されてきたが、最近、単純で活用性の高い、かつ低コストの新しい微細作製技術が提案されている。特に、エッチング工程なしに微細構造を直接転写する直接作製技術の開発が今後の研究開発方向となっている。
【0005】
このような単純な直接作製技術の代表的な技術として、微細表面構造を有するマスターをレジスト材料の表面に転写させるレプリカ法による製造技術が最近注目を集めている。
特に、特許文献4は、直接転写のためのマスター作製についての方法を提案しているが、レジスト材料の熱的、機械的脆弱性と透光度のような光学的物性とが非常に劣るため、直接素子への適用に限界がある。また、マスターと構造材料とが接触させなければならないという接触式であることから限界を有しているだけでなく、マスター作製の複雑な工程と製造されたマスターの使用頻度とに対する限界点が顕著になってきている実情である。
これによって、微細光学素子の製作工程を減らすために提案された方法のうち、光の照射によって屈折率及び厚さが恒久的に変化する感光性材料をコーティング層上に直接光パターニングして微細光学素子を形成する技術が最も単純な方法として知られている。
【0006】
特許文献5には、少なくとも光反応性化合物を1つ以上含有するポリマー材料の膜を利用する選択的光照射によって、微細光学素子を形成する方法が記載されている。しかし、このポリマーだけを材料として導入する場合には、熱に弱く、光照射による光透過度のような光特性の低下のみならず、ベースのバインディングポリマーの低い感光性によって微細光学素子の直接光作製の効率に問題を招く。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来技術に対する問題を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、写真現像型ハイブリッド材料を利用することによって、微細光学素子の製造において複雑な工程が要求されるフォトリソグラフィー工程のエッチング工程を利用せずに、微細光学素子を簡便に製造する方法と、工程上のメリットを通じて微細光学素子の光特性を自由に制御することのできる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基板上に重合可能な有機官能基を含有するオリゴ−シロキサンと、重合体形成の可能な光活性単量体または/および光照射のときに二量体を形成することによって重合を開始する光化学開始単量体とを含有する写真現像型ハイブリッドコーティング層を形成する工程と;前記写真現像型ハイブリッドコーティング層に光を照射して所定の形態の構造を有する微細光学素子を形成することを特徴とする微細光学素子の製造方法を提供する。
重合可能な有機官能基を含有するオリゴ−シロキサンは、次のような化学式で表わされる化合物を包む。

式中、R、Rは、アクリル基、メタクリル基、アリル基、ビニル基及びエポキシ基を単独または2種以上有する直鎖、分岐または環状のC1〜12の炭化水素基である。
コーティング層の所定領域に対する光照射によって、光反応による写真現像型ハイブリッド材料を構成するオリゴ−シロキサンと、単量体などの分子変形によって、光照射されていない部分との分子量、構造、濃度及び化学的エネルギーの差異を誘発し、この結果、写真現像型ハイブリッド材料がコーティングされた層内の重合可能の有機官能基を有するオリゴ−シロキサン及びドープされた光活性単量体が、光照射されていない領域から光照射された領域への光移動(photo−migration)を誘発し、光照射された領域においては、十分な光反応によってドープされた光活性単量体の揮発性が十分に減少する。結果的に、写真現像型ハイブリッド材料がコーティングされた層の光照射領域と、光非照射領域との連続的な体積の変化とともに屈折率の差異を発生させる。これによって、屈折率と体積との変化を同時に有する微細光学素子が製造されることになる。
【0009】
写真現像型ハイブリッド材料内の光活性単量体の屈折率は、好ましくは、重合可能な有機官能基を有するオリゴ−シロキサンの屈折率より高い物質から選択される。
一般に、光活性単量体の濃度が大きいほど、より大きい屈折率と厚さの増加を得ることができる。このとき、添加されるドーパントの量は特に限定されないが、10〜50質量%が一般的である。
【0010】
写真現像型ハイブリッド材料内で重合体形成可能な光活性単量体は、例えば、メタクリルレートを包含するアクリレート単量体系がある。アクリレート単量体のアクリレートの数、すなわち、官能基の数に従ってドーパントを分類すると、官能基の数が1である単量体は、ブチルアクリレート、エチルへキシルアクリレート、オクチル/デシルアクリレート、ヒドロキシアルキルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートなどであり、官能基の数が2である単量体は、ブタンジオールジアクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレートなどであり、官能基の数が3である単量体は、トリメチロプロパントリアクリレート、トリメチロプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、グリセリルプロポキシレイティッドトリアクリレートなどであり、官能基の数が4以上である単量体は、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジトリメチロプロパンテトラアクリレートなどを挙げることができる。
【0011】
さらに、光活性単量体の例として、桂皮酸メチル(methyl cinnamate)、桂皮酸エチル(ethyl cinnamate)、桂皮酸ビニル(vinyl cinnamate)、桂皮酸アリル(allyl cinnamate)、桂皮酸シンナミル(cinnamyl cinnamate)、桂皮酸ベンジル(benzyl cinnamate)のような桂皮酸(cinnamic acid)及び桂皮エステル(cinnamic esters)系、ジカルボン酸シンナミル(dicarboxylic acid cinnamyl)、メタクリル酸シンナミル(methacrylic acid cinnamyl)のようなカルボン酸シンナミル(carboxylic acid cinnamyls)系、マレイン酸(maleic acid)系、無水マレイン酸(maleic anhydride)系、フマル酸(fumaric acid)系、イタコン酸(itaconic acid)系、イタコン酸無水物(itaconic anhydride)系、シトラコン酸(citraconic acid)系、無水シトラコン酸(citraconic anhydride)系と、その他に、桂皮酸メチル(methyl cinnamic acid)、シンナミルクロリド(cinnamyl chloride)、スチルベン(stilbene)、メタクリレート(methacrylate)系などを挙げることができる。本発明においては、これらの光活性単量体から選択される少なくとも1種以上の光活性単量体を使用することができる。
【0012】
感光性ハイブリッド材料内で二量体形成により重合を開始する光化学開始単量体は、例えば、ベンゾインエーテル系、ベンジルケタール系、ジアルコキシアセトンフェノン系、ヒドロキシアルキルフェノン系、アミノアルキルフェノン系などの単量体から選択される少なくとも1種以上の単量体を挙げることができる。
前記重合体形成の可能な光活性単量体または二量体形成により重合を開始する光化学開始単量体の例は、本発明に使用されることのできる物質の一例にすぎず、これらの物質に限定されない。
【0013】
以下、本発明の内容を図面を参照してより詳細に説明する。
図1(左側)は、重合可能な有機官能基を有するオリゴ−シロキサンに光活性単量体がドープされた透明な写真現像型ハイブリッド材料を利用してマイクロレンズを製造する工程を図示している。
まず、基板1上に重合可能な有機官能基を有するオリゴ−シロキサンに光活性単量体がドープされた透明な写真現像型ハイブリッド材料を利用して層2をコーティングする。このとき、基板1と写真現像型ハイブリッド層2は、通常の方法によって形成することができる。例えば、均一な厚さを有する層を形成することのできるスピンコーティング法を利用することができる。溶液をコーティングする前に、コーティングされる面に対する綿密な洗浄が必要である。このような洗浄工程は、層の質に影響を与える可能性のある微塵またはその他の外部物質を除去するために有用な工程である。
【0014】
光4とを照射してパターニング工程を行う。この場合、パターニング工程は、マスクの代りにレーザーを利用して行うことができる。
光を照射する工程において、所定の微細光学素子パターンは、ドープされた単量体の中、光開始剤が反応する波長に相当する光を使用して作製することができる。一般的には、紫外線に該当する波長領域を利用し、要求される模様に従って特別な形態の微細光学素子を作製することも可能である。
前記のように光反応を使用するためには、単純な光活性単量体の代りに重合可能な有機官能基を有するオリゴ−シロキサンの架橋に包まれて固定される反応に関与することができる有機単量体を使用することができる。
【0015】
層に対して部分的に光を照射することによって、ドーパントの分子構造の変形は、光を照射した部分のみに発生される。光が照射された層においては、重合可能なオリゴ−シロキサンに単量体が結合するか、単量体の二量体形成または単量体の重合に対応する遷移が発生することになり、これによって、光が照射されなかった部分とのマトリックス及びドープされた単量体間の分子量及び構造の差異が発生し、この結果、光活性単量体の濃度勾配が、光が照射された層と、照射されていない層との間において選択的に起るようになる。
層において継続的に区別化された光照射によって、ドープされた光活性単量体は、光が照射されていない部分から照射された部分への光移動が継続的に行われる。これに反して、光が照射された部分における単量体は、オリゴ−シロキサンに結合するか、単量体の二量体形成または単量体の重合に対応する遷移が継続的に発生し、光が照射された写真現像型ハイブリッド材料内においてはドープされた光活性単量体の移動性と揮発性とが十分に減少または完全な減少をもたらす。
【0016】
以下、光照射の時に発生する写真現像型ハイブリッド材料内における分子構造の遷移に関して具体的な例を挙げて説明する。
【化1】

前記図式的な構造で示したように、写真現像型ハイブリッド材料内の光重合開始単量体は、まず、光を照射すると(1)のように2つのラジカルを形成し、形成されたラジカルは重合体形成が可能であるとともに有機網目を有しているアクリレート系単量体に各官能基の数に従って、1官能基の場合(2)、2官能基である場合(3)、3官能基である場合(4)、1官能基と2官能基の混合である場合(5)のように結合することになる。
マトリックス内の重合可能なアクリレート系光活性単量体が写真現像型ハイブリッド材料を構成する鎖の多様なポイントにおける光重合反応を通じて容易に絡み合うことのできるランダムに整列された鎖を形成するようになる。したがって、このような反応の結果、光が照射された部分と、照射されていない部分とのドープされた単量体の分子構造及びマトリックスの構造が異なることになり、これによって単量体の光移動が行われて、光が照射された部分ではマトリックスとの光重合及び多様な形態の光反応が行われる。
したがって、光が照射された部分における体積と屈折率とが、光が照射されていない部分に比べて顕著に増加されることになる。
【0017】
以上のような分子遷移過程は、多様な模様の形態で表すことができ、前記で説明した分子遷移過程の他にも他の形態の反応を包含することができる。
光を照射する工程において、一般に入射ビームの強度が増加するほど、光が照射された領域での重合可能な有機官能基を有するオリゴ−シロキサンに固定及び重合される単量体分子の数がさらに増加する。したがって、入射ビームの強度が増加するほど、光を照射した領域の体積と屈折率との変化がさらに大きくなる。
また、層において光の断面直径と軸の方向とは、光の集中性または入射角の角度を変えることによって調節することができる。
したがって、より広い線幅を望む時には、より長い波長が好ましく、入射ビームの角度またはビームの集中性は、層において光の直径が増加することによって、減少させることができる。
【0018】
露光ビームの波長は、層において重合可能なオリゴ−シロキサン自体には明確な効果がないとともに、光重合開始単量体で所定の分子遷移を十分開始することができるように選択しなければならない。したがって、選択される特定の波長は、それぞれの場合における出発物質として使用される特定の単量体と重合可能な有機官能基を有するオリゴ−シロキサンの構成物質とに依存する。さらに、層の成分を分解するか、最終素子の質に悪影響を与える波長は排除されなければならない。
【0019】
前記で示された光反応による微細光学素子の製造方法は、層に対して高い透過率を有する波長領域の光を、所定微細光学素子のパターンを含むマスクを通じて照射する過程を含むことができる。このようなマスクを利用する技術は広く知られており、一般的にフォトレジストを使用する半導体素子の製作において利用される方法である。また、レーザーを利用する場合には、前記マスクの利用なしに、直接照射することができる。
【0020】
光照射の工程は、単純な光源だけでなく、電子、イオン、中性子などを使用することができる。ある出発物質に対しては粒子の照射が大きい空間解像力を得ることに有用である。
次の工程は、層において光に露出された微細光学素子パターンの現像と関連する。現像は、単純に光に露出されていない部分のドープされた単量体を揮発させるために層を加熱することによって行われる。この工程は、層に光を照射した部分の光反応に関与した単量体を残して次のような結果をもたらす。すなわち、層の厚さは、光に露出されていないドーパントの除去によって、露出されていない領域で減少し、層の屈折率は光に露出されてマトリックスとドーパントとの間及びドーパント内の光反応によって屈折率の値が増加されることになり、光が照射されていない部分は相対的に減少することになり、光照射部分と光照射が行われていない部分との滑らかな変化をもたらす。
【0021】
現像の時の最大温度は、実験に使用された光活性単量体と重合可能な有機官能基を有するオリゴ−シロキサンとの多様な物理的、化学的性質によって制限されるかもしれない。ここで、考慮する事項は、重合可能な有機官能基を有するオリゴ−シロキサンのガラス転移温度、重合可能な有機官能基を有するオリゴ−シロキサン内に固定されるドーパントの温度によって誘導される拡散と、物質の熱によって誘導される好ましくない化学的な変化などである。現像は、最終素子の望む特性に影響を殆ど与えない温度によって行われることが好ましい。このような理由で、光活性単量体は現像が比較的適当な温度で行われるようにするための適当な揮発性を有することが好ましい。
【0022】
このような過程を経て、自然に微細光学素子5が形成される。図1(右側)は、重合可能な有機官能基を有するオリゴ−シロキサンに光活性単量体がドープされた透明な写真現像型ハイブリッド材料を基板1上にコーティングした状態2にレーザー3を利用するホログラフィー干渉計(holographic interferometer)によって多様なサイズ及び模様を有する回折光学素子(diffraction gratings)4の製造工程を図示している。形成機構(メカニズム)は、前記図1(左側)の処理手段と同一である。
図1c(左側及び右側)に示したように、写真現像型ハイブリッド材料の光反応を通じて発生する分子構造の変化によって誘導される濃度勾配と、化学的エネルギー(chemical potential)の差異を通じて発生する光移動によって製造された微細光学素子のメリットは、素子から他の誘電領域間において滑らかな体積だけでなく屈折率分布を有する微細光学素子の作製が可能であることにある。一般に、露出光強度の断面積変化に対応する屈折率の柔らかでかつ軸方向を基準にして対称的に横断する変化が得られる。固定的でバルキー(bulky)でありながら高屈折率の光活性単量体の濃度は、光反応とこれによって誘導される光移動によって、一般に照射ビームの軸に沿って最大になり、軸から漸次減少する。
【0023】
なお、現像の後、層の厚さ分布もやはり光の移動によって一般に照射ビームの軸に沿って最大になり、軸から漸次減少されるようになり、層の厚さは一般に光反応に関与した単量体の濃度に比例する。
また、写真現像型ハイブリッド材料の微細光学素子による直接的光作製のための主要な機器である光の移動は、光強度を包含する光照射量だけでなく、層の厚さ、組成、光照射でなる所定領域のサイズに非常に敏感であり、このような変数の制御を通じてより多様な形態の微細光学素子を製造することができるとともに、このような特徴を通じて従来多く使用されている方法として製造される微細光学素子に比べて高い効率を発揮するようになる。
【0024】
前記のように、光移動によって作製された微細光学素子は、本発明によれば、常温で1ヵ月以上の期間も安定と観察され、固定されたドーパントの拡散が殆ど発生していなかった。
前記では、バルキーでかつ高屈折率のドーパントを選択領域の厚さと屈折率を増加させるために使用したが、本発明の記載から、当業者であれば高屈折率のマトリックスに低い屈折率のドーパントもやはり光移動させることができることを容易に知見することができる。ただし、光移動によって厚さの分布のみを得ようとする場合には、ドーパントとマトリックスの屈折率とを同様にするだけで足りる。前記のような方法は、層において規則的な変化を有する微細光学素子を作製することにおいて非常に有用である。
前記のように製造されたマイクロレンズおよびアレイ、周期的な配列を有する回折光学素子のような微細光学素子は、光通信素子とCMOSおよびCCDにおいてイメージセンサーにおけるフィルファクター(fill factor)を向上させることのできる非常に重要なインターライン・トランスファ(interline−transfer)素子への適用において非常に有用である。
【0025】
前記では、重合可能な有機官能基を有するオリゴ−シロキサンと光活性単量体と関連して光移動を主にして微細光学素子の作製に対して記述したが、光移動の他にも高密度化(densification)、縮合(condensation)など、他のいろいろな処理手段による製作方法も本発明の請求範囲内に存在する。
【発明の効果】
【0026】
前記本発明の説明から分るように、本発明によれば、微細光学素子の製造において、複雑な工程が要求されるフォトリソグラフィー工程のエッチング工程を利用しなくても高効率の微細光学素子を簡単に製造することができ、工程上のメリットを通じて微細光学素子の光特性を自由に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による微細光学素子の製造工程図である。
【図2】本発明によって観察された写真現像型ハイブリッド材料の光照射量に依存する微細光学構造(円2a、線2b)の光移動現象に対する表面プロファイラー3D写真と、光照射量に依存する微細光学構造(円2a、線2b)の光移動現象に対する高さと幅の変化を示した図面である。
【図3】本発明によって製造されたマイクロレンズ3a及びアレイ3bの表面プロファイラー3D写真図である。
【図4】本発明によって製造されたマイクロレンズ4bの焦点面における焦点ビームに対するCCDカメラのイメージと、マイクロレンズの焦点ビームの分布4aを示した図面である。
【図5】写真現像型ハイブリッド層の厚さの変化による、本発明によって製造されたマイクロレンズアレイパターンの高さの増加を3D表面プロファイラーで測定して示した図面である。
【図6】写真現像型ハイブリッド層の厚さの変化による、本発明によって製造されたマイクロレンズアレイパターンの高さの変化によるマイクロレンズアレイの焦点距離の変化を示した図面である。
【図7】写真現像型ハイブリッド層の組成変化による、本発明によって製造されたマイクロレンズアレイパターンの高さの増加を3D表面プロファイラーで測定して示した図面である。
【図8】写真現像型ハイブリッド層の組成変化による、本発明によって製造されたマイクロレンズアレイパターンの高さの変化によるマイクロレンズアレイの焦点距離の変化を示した図面である。
【図9】本発明による、マスクなしで直接レーザーのホログラフィー干渉計(holographic interferometer)の照射を通じて製造された回折格子の光学顕微鏡写真図である(1−ビームによるフレネル型レンズ9a、2−ビームによる2D線形回折格子9b、3−ビームによる2D六方晶系型の回折格子9c、4−ビームによる2D長方形の回折格子9d)。
【図10】本発明による、マスクなしで直接レーザーのホログラフィー干渉計の照射を通じて製造された回折格子らの回折効果に対するCCDカメラのイメージ図面である(フレネル型レンズ10a、2D線形回折格子10b、2D六方晶系型の回折格子10c、2D長方形の回折格子10d)。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の内容を実施形態を通じて詳細に説明する。ただ、下記の実施形態は本発明の内容を説明するためであって、本発明の権利範囲がこれに限定されるものではない。
【0029】
(実施例1)
3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)に0.01N塩酸を1:1モル比で添加して常温で1時間攪拌した。その後、ペルフルオロデシルトリメトキシシラン(PFAS)をMPTMSとモル比3:1になるように添加した。さらに20分間攪拌し、0.01N塩酸を前記添加した量と同一量を添加して2時間攪拌した。続いて、メタクリル酸(MMA)にモル比1:1で修飾されたジルコニウムノーマルプロポキシド(ZPO)をMPTMS:PFASにモル比3:1:0.7になるように添加した。さらに60分間攪拌し、0.01N塩酸を前記添加した量と同一量を添加して20時間攪拌することによって、メタクリル−フルオロ−シリカ−ジルコニア−ハイブリッド材料を得た。
重合のための光活性単量体としてメチルメタクリレートを全アルコキシドの15モル%程度添加した。重合のための二量体形成の可能な光化学開始単量体としてベンジルジメチルケタール(BDK)を体アルコキシドの15モル%程度添加した後、単量体が完全に溶解するまでさらに攪拌して写真現像型ハイブリッド溶液を製造した。完成された写真現像型ハイブリッド溶液をシリコンウエハー上にスピンコーターを利用してコーティングした。その後、ハロゲンランプを利用してコーティング層に光を照射して150℃で5時間乾燥させた。紫外線照射量による屈折率と、厚さの増加をプリズム結合器(prism coupler)によって測定し、その変化量を表1に記載した。
【表1】

【0030】
(実施例2)
前記実施例1において添加した重合のための光活性単量体としてメチルメタクリレートを15モル%に固定し、光化学開始単量体としてベンジルジメチルケタール(BDK)を下記表2のような全アルコキシドに対するモル比で配合したことの他は、前記実施例1と同様の方法によって実施した。最終的に光照射後の屈折率と厚さの増加量を測定し、実施例2による結果を下記表2に示した。
【表2】

【0031】
(実施例3)
前記実施例1において得たメタクリル−フルオロ−シリカ−ジルコニア−ハイブリッド材料に添加した光開始剤BDKを全アルコキシドの15モル%に固定し、アクリレート系の単量体を、官能基数に従ってメチルメタクリレート、ブタンジオールアクリレート、トリメチロプロパントリアクリレートをそれぞれ全アルコキシドの15モル%を入れて配合したことの他は、前記実施例1と同様の方法によって実施し、実施例3による結果を下記表3に示した。
【表3】

【0032】
(実施例4)
前記実施例1において得たメタクリル−フルオロ−シリカ−ジルコニア−ハイブリッド材料に全アルコキシドのメチルメタクリレート15モル%とBDK15モル%とを添加した写真現像型ハイブリッド溶液をウエハー上にスピンコーターでコーティングした。微細光学構造のパターンを有するマスク上にランプをぞれぞれ異なる照射量で照射した後、150℃で5時間の間熱処理した。
図2は、前記のような方法によって観察された写真現像型ハイブリッド材料の光照射量に依存する微細光学構造(円、線パターン)の光移動現象に対する表面プロファイラー3D写真である。
【0033】
(実施例5)
前記実施例1において得たメタクリル−フルオロ−シリカ−ジルコニア−ハイブリッド材料に、全アルコキシドのメチルメタクリレート15モル%とBDK15モル%とを添加した写真現像型ハイブリッド溶液をウエハー上にスピンコーターでコーティングし、マイクロレンズ及びアレイ構造のパターンを有するマスクにランプを照射した後、150℃で5時間熱処理した。
図3は、前記製作方法によって製造されたマイクロレンズ3a及びアレイ3bの表面プロファイラー3D写真である。
図4は、前記製作方法によって製造されたマイクロレンズ4a及びアレイ4bの焦点面における焦点ビームに対するCCDカメラのイメージである。
【0034】
(実施例6)
前記実施例1において得たメタクリル−フルオロ−シリカ−ジルコニア−ハイブリッド材料に、全アルコキシドのメチルメタクリレート15モル%とBDK15モル%とを添加した写真現像型ハイブリッド溶液をウエハー上にスピンコーターでコーティングする。 コートするときそれぞれ異なる速度でコーティングすることによって、相異する厚さを有する層を形成した後、マイクロレンズ及びアレイ構造のパターンを有するマスクにランプを照射した。続いて、150℃で5時間の間熱処理した。層の厚さによるマイクロレンズアレイパターンの高さの増加を3D表面プロファイラーで測定してその変化を図5に示した。また、高さの変化によるマイクロレンズアレイの焦点距離の変化を図6に示した。
【0035】
(実施例7)
前記実施例1において得たメタクリル−フルオロ−シリカ−ジルコニア−ハイブリッド材料に、全アルコキシドの光活性単量体のメチルメタクリレートを15モル%に固定し、光開始剤BDKを全アルコキシドに対して5%、10%、15%、25%にそれぞれ配合したものを添加した写真現像型ハイブリッド溶液をウエハー上にスピンコーターでコーティングした。その後、マイクロレンズ及びアレイ構造のパターンを有するマスクにランプを照射し、150℃で5時間熱処理した。層の組成変化によるマイクロレンズアレイパターンの高さの増加を3D表面プロファイラーで測定して、その変化を図7に示した。また、高さの変化によるマイクロレンズアレイの焦点距離の変化を図8に示した。
【0036】
(実施例8)
前記実施例1において得たメタクリル−フルオロ−シリカ−ジルコニア−ハイブリッド材料に、全体アルコキシドのメチルメタクリレート15モル%とBDK15モル%とを添加した溶液をウエハー上にスピンコーターでコーティングし、マスクなしに325nmの波長を有するHe−Cdレーザーを利用してビームの数に従ってそれぞれホログラフィー干渉計を設計した。その後、直接レーザー光を照射し、150℃で5時間熱処理した。
【0037】
図9は、前記の製作方法であるマスクなしに、直接レーザーのホログラフィー干渉計の照射を通じて製造された回折格子の光学顕微鏡写真である(1−ビームによるフレネル型レンズ9a、2−ビームによる2D線形回折格子9b、3−ビームによる2D六方晶系型の回折格子9c、4−ビームによる2D長方形の回折格子9d)。
【0038】
図10は、前記製作方法によるマスクなしに、直接レーザーのホログラフィー干渉計の照射を通じて製造された回折格子らの回折効果に対するCCDカメラのイメージ図面である(フレネル型レンズ10a、2D線形回折格子10b、2D六方晶系型の回折格子10c、2D長方形の回折格子10d)。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によれば、微細光学素子の製造において、複雑な工程を要するフォトリソグラフィー工程のエッチング工程を利用せずに、高効率の微細光学素子を簡単に製造することができ、工程上のメリットを通じて微細光学素子の光特性を自由に制御することができる。
【符号の説明】
【0040】
1、11:基板
2、12:写真現像型ハイブリッド材料
3:パターンマスク
4:光
5:形成されたマイクロレンズ及びアレイ
13:レーザーによるホログラフィー干渉計
14:形成された回折格子
【先行技術文献】
【特許文献】
【0041】
【特許文献1】米国特許第5,286,338号
【特許文献2】米国特許第5,298,366号
【特許文献3】米国特許第5,324,623号
【特許文献4】米国特許第2003−0209819号
【特許文献1】米国特許第4,877,717号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に重合可能な有機官能基を含有するオリゴ−シロキサンと、重合体形成の可能な光活性単量体または/および光照射の時に二量体を形成することによって重合を開始する光化学開始単量体とを含有する写真現像型ハイブリッドコーティング層を形成する工程と;
前記写真現像型ハイブリッドコーティング層に光を照射して所定の形態の構造を有する微細光学素子を形成することを特徴とする微細光学素子の製造方法。
【請求項2】
前記微細光学素子は、光照射領域と光非照射領域間の屈折率及び厚さ変化の特性を有する請求項1に記載の微細光学素子の製造方法。
【請求項3】
前記光活性単量体の屈折率は、重合可能な有機官能基を有するオリゴ−シロキサンの屈折率より高い物質から選択される請求項1に記載の微細光学素子の製造方法。
【請求項4】
前記重合可能な有機官能基を含有するオリゴ−シロキサン化合物は、下記の式で表わされる化合物である請求項1に記載の微細光学素子の製造方法。


(式中、R、Rは、アクリル基、メタクリル基、アリル基、ビニル基及びエポキシ基を単独または2種以上有する直鎖、分岐または環状のC1〜12の炭化水素基である。)
【請求項5】
前記重合可能な有機官能基を含有するオリゴ−シロキサン化合物は、シリコンの一部が他の金属によって置換されている請求項1に記載の微細光学素子の製造方法。
【請求項6】
前記他の金属は、チタニウム、ジルコニウム、アルミニウム及びゲルマニウムで構成される群から選択される少なくとも1種の金属である請求項5に記載の微細光学素子の製造方法。
【請求項7】
前記重合体形成の可能な光活性単量体は、アクリレート系、桂皮酸系、桂皮エステル系、カルボン酸シンナミル系、マレイン酸系、無水マレイン酸系、フマル酸系、イタコン酸系、イタコン酸無水物系、シトラコン酸系、無水シトラコン酸系、桂皮酸メチル、シンナミルクロリド、スチルベン、メタクリレート系の単量体から選択される少なくとも1種の光活性単量体である請求項1に記載の微細光学素子の製造方法。
【請求項8】
二量体形成によって重合を開始する光化学開始単量体は、ベンゾインエーテル系、ベンジルケタール系、ジアルコキシアセトンフェノン系、ヒドロキシアルキルフェノン系及びアミノアルキルフェノン系で構成される群から選択される少なくとも1種の光化学開始単量体である請求項1に記載の微細光学素子の製造方法。
【請求項9】
前記光の照射は、写真現像型ハイブリッドコーティング層の上部に所定のパターンのマスクを形成して行われる請求項1に記載の微細光学素子の製造方法。
【請求項10】
前記光の照射は、マスクなしに写真現像型ハイブリッドコーティング層の上部にレーザーを直接照射して行われる請求項1に記載の微細光学素子の製造方法。
【請求項11】
前記光の照射は、マスクなしにレーザーのホログラフィー干渉計を直接照射して行われる請求項1に記載の微細光学素子の製造方法。
【請求項12】
前記微細光学素子は、マイクロレンズ及びアレイ、回折格子、光導波路である請求項1に記載の微細光学素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−545766(P2009−545766A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522698(P2009−522698)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【国際出願番号】PCT/KR2007/000941
【国際公開番号】WO2008/016207
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(504441831)コリア アドバンスド インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー (15)
【Fターム(参考)】