説明

冷光放射性高分子材料

【課題】冷光放射性ランタニドアクリレートモノマーの欠点を減少あるいは除去したモノマーから導かれた冷光放射性高分子材料を提供する。
【解決手段】励起によって可視領域での冷光放射を行う、次の一般式で表されるモノマー:Mn+(L)n-(CL)x。この式において、n+は、Mの価数を表し、(L)は、1又は2以上の総計n−の価数を有するアニオンリガンドを表し、前記リガンドの少なくとも1つは次の式を有する:Ch−X−Y。この式において、Chは、キレート結合部及びキレート結合部が共役されたリガンドの残りの部分からなるリガンドの断片であるキレート/イオン結合基であり、Yは、オレフィン基を表し、Xは、少なくとも4の炭素及びヘテロ原子の鎖からなるスペーサー又は結合部であり、xは0,1又は2であり、CLは中性コリガンドであり、Mは2,12,13、d−ブロック又はf−ブロックの金属原子を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機金属系冷光放射性高分子材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高分子構造に組み込まれた冷光放射性金属錯体は、イオンの拡散及び冷光放射層の結晶化が高分子燐光体によって妨げられるため、十分に改善されたEL特性を有する。これはより安定した装置構造をもたらす。さらに、この金属モノマー錯体は、化学作用を有する露光(UV光、可視光、電子線又はX線)によって、容易にパター形成することができる。
一般的に、金属イオン含有高分子材料には4つのグループがある。
(1)配位高分子材料及び電解質高分子材料
(2)金属錯体をドープした中立極性基を含有する高分子材料
(3)高分子材料の脱プロトン化とこれに続く金属塩との反応により用意された高分子金
属錯体、及び
(4)金属モノマー錯体の重合によって用意された金属高分子錯体
【0003】
これらのグループの大半は重大な欠点があり、それがEL装置への応用の障害になっている。具体的には、配位高分子材料は、その塩類似の構造によって有機溶媒に溶解しにくい傾向にある。高分子材料のドーピング、例えば、ランタニドジケトナド添加エポキシ樹脂、ランタニドハロゲン化物添加ポリ(ポリピレンオキサイド)、金属窒化物添加ポリ(エチレングリコール)、Eu(2)塩添加高分子材料系クラウンエーテルは、卑金属等配位環境での定義されない混合物をもたらし、低質な冷光放射特性を示す。他の欠点は、このタイプの高分子材料の電気的絶縁特性であり、これによって電荷放出を困難にしている。金属高分子錯体の最大のグループは、酸性又はβ−ジケトナド含有高分子材料からなり、これは、ランタニド又はアルミニウムイオンによる強力なイオン結合を形成するために容易に脱プロトン化される。公知の錯体としては、カルボン酸単独又は共重合、例えば、ポリ(スチレンアクリル酸)、ポリ(ジカルボン酸スチレン)、ポリ(ジケトナド)及び側鎖に8−ヒドロキシキノリンを有するポリ(アリーレンエーテル)並びにドープされたポリ(ピリジン)である。これらの主な欠点は、通常、低いドープレベルしか得られない(一般的には、最大で10重量%)。
【0004】
このような大きな欠点を避けるために、第4のアプローチが使われている。金属錯体は、重合可能な基、例えば、アクリレートを含むリガンドから用意される。モノマー金属錯体の重合は、高分子材料に明確な構造を与える。化合物のこれらのタイプは、選ばれた有機金属錯体の発光特性の有利性、例えば、ランタニド発光の発色純度に、高分子の利点を結合させることによって、EL装置における優れた特性を示す潜在性を有している。この分類の高分子材料としては、ポリ(ランタニドメタクリレート)及びポリ(ランタニドオクタノート)があげられるが、これは冷光放射性を有しない。感光リガンドを有するヘテロレプティックアクリレート、例えば、β−ジケトネート、サリシレート、ナフトネート、並びにこれらのメチルメタキシレート及びスチレンとの共重合体が報告されている。このタイプの材料を用いるEL装置は非常に非効率的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような冷光放射性ランタニドアクリレートモノマーの使用は、欠点をもたらす。特に、立体構造の形成が困難なため単独重合では使えない。したがって、ランタニドモノマーはメチルメタクリレート又はスチレンと共重合されてきた。これによって、ランタニドを低く含有する絶縁性高分子材料が必要となる。他の欠点としては、非配位性溶媒におけるアクリレート錯体の非常に低い溶解性、並びに、アクリル酸及び高蒸発圧を有する類似のモノマーの非常に強い毒性がある。
【0006】
したがって、これらの欠点が減少あるいは除去されたモノマーから導かれた冷光放射性高分子材料が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、次の一般式で表されるモノマーが提供される。

(化6) Mn+(L)n-(CL)x

【0008】
この式において、n+は、Mの価数を表し、(L)は、1又は2以上の総計−n価を有するアニオンリガンドを表し、前記リガンドの少なくとも1つは次の式を有する。

(化7) Ch−X−Y

【0009】
この式において、Chは、キレート結合部及びキレート結合部が共役されたリガンドの残りの部分からなるリガンドの断片であるキレート/イオン結合基であり、Yは、オレフィン基を表し、Xは、少なくとも4の炭素及びヘテロ原子の鎖からなるスペーサー又は結合部であり、xは0,1又は2であり、CLは中性コリガンドであり、Mは2,12,13、d−ブロック又はf−ブロックの金属原子を表し、ここで、Yがスチレン又は置換されているスチレン基の一部であるときはMがf−ブロック又はd−ブロック金属であり、前記モノマーは露光により可視光を放射する、すなわち可視領域での冷光放射を行う。
【0010】
キレートの定義は、IUPAC Copedium of Chemical Technology,2nd Ed.1997において見ることができる。
【0011】
このようなモノマーは、これまでに提案されたものよりすぐれた利点を有する。特に、キレート/イオン結合とリガンドのオレフィン基の間のスペーサーの存在によって、貴金属モノマーの均質な重合が可能となった。また、これらモノマーは、非配位有機溶液の広い範囲にわたって溶解可能であるため、溶液プロセスが一般的には非常に容易であり、また、特に、モノマーにおいてかさばった有機基が存在するときに優れた薄膜形成能を示す。オレフィン基は、化学作用を有する露光によって重合化できる。モノマー薄膜の考えられる露光は、励起によって可視光を発する不溶なパターン化された高分子薄膜を提供する。これは、長いライフタイムを有するパターン化された多色ELディスプレイの生産を容易にする。さらに、オレフィンリガンドの毒性はこれら化合物の低い揮発性のため十分に低下されている。
【0012】
中央のイオンは、周期律表の2,12,13、d−ブロック又はf−ブロックのグループの金属原子である(Inorganic Chemistry, Striver Atkins,Langford,OUP,1990 参照)。好ましい金属としては、ベリリウム、アルミニウム、亜鉛、イリジウム、プラチナ、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、ヨウロピウム、サマリウム、テルビウム、イットリウム、ジスポジウム、セリウム及びガドリニウムである。これに関連して、イオンは通常3価であるが、モノマーがBe2+、Zn2+及びEu2+のような2価のイオン、又はCe4+のような4価にイオンを有することも可能である。
【0013】
本発明のモノマーの特徴点は、これらが一般式Ch−X−Yで表される少なくとも1つのリガンドを有することである。示されているように、スペーサーXの存在は、均質な高分子を得ることを可能にし、一方、Yグループは、重合化を生起せしめることを可能にする。
【0014】
キレートグループ、Chの性質は、特に重要ではなく、金属イオンの公知の結合グループは、カルボン酸、ジカルボン酸、水酸化カルボン酸、β−ジケトナト、又はアシルフェノルズ及びイミノアシル基を含むカルボン酸、又は、アシルフェノール及びイミノアシールグループを含むシッフ塩基リガンドである。好ましいキレートグループは、カルボン酸グループである。Mが2,12若しくは13、又はd−ブロックのグループの金属の場合、金属キレートグループは、メタアクリル酸−2−(8−ヒドロキノ−ル−5−ylメトキシ)エチルエステル、シッフ塩基、及び誘導体のようなヒドロキシキノリン又は誘導体である。キレートグループの一部を形成する追加の金属グループは、β−ジケトナト、カルボン酸、アルコキシド、アミド、イミド、アリール及びアリールオキシドである。Mがd−ブロック金属であるときは、他の金属キレートグループは、2-フェニルピリジン及び誘導体、2-ピリジルチオフェン及び誘導体、又は7,8−ベンゾキノリン及び誘導体である。誘導体は、典型的には、アルキル、ハロ、ハロアルキル及びアルキロキシのような従来の電子誘引又は供与基によって置換された調和する化合物である。Chグループは、結合部に加えて、例えば、それに入った結合部が共役されているカルボン酸基囲原子を含む。このように、Chは、例えば、次のような化合物であり、単に、−COO、又は、
−COOHではない。
【0015】
【化8】

これは、スペーサーにおける原子の数を計算する上で重要である。フタレート基における原子は、スペーサーの一部を形成することはない。示されているように、スペーサーは、少なくとも4つの炭素及び/又はヘテロ原子の鎖からなる。これは、オレフィン基におけるオレフィン2重結合とキレート基の間の原子の数を表している。典型的には、スペーサーは、4から30の原子、より一般的には4から20の原子、好ましくは6から16、より好ましくは6から12、特に、6から10原子を含有する。一般的には、鎖は、窒素、硫黄及びリンを含む他のヘテロ原子の存在を排除しないが、炭素原子、及び、選択的に酸素を含有する。このように、スペーサーは、例えば、ジオール又はジアミン、例えば、エチレンジアミンから導かれ、又はアルキル/アリール鎖であり得る。下記にさらに詳細に示すように、スペーサーは、Mに配位することができる1または2以上のドナー基を有することができる。
【0016】
オレフィングループ、Yは、典型的には、アクリル化合物、例えば、アクリレート、メタクリレート、アクリロ窒化物、メタクリロ窒化物、アクリルアミド及びメタクリルアミドの一部である。この他に、有益なのは、モノカルボン酸及びポリカルボン酸のビニルエステル、N−ビニルピロリドンのようなN−ビニルラクタン、並びにモノヒドロキシ及びポリヒドロキシ化合物のビニルエーテルがある。すなわち、アリール化合物、例えば、モノカルボン酸及びポリカルボン酸のアリールエステル、並びに、モノヒドロキシ又はポリヒドロキシ化合物のアリールエーテル及びアリール環状エーテルがある。スチレン、ビニルナフタレン、又はN−ビニルカルバゾールのような芳香族化合物は、冷光放射性のモノマーの重合化が光により開始する場合は好ましくない。スチレンは、例えば、冷光放射性モノマーを活性化するために用いられる可視光活性化開始剤の3重項エネルギーに比較して、非常に低い3重項エネルギーレベル、〜463nm(Handbook of Photochemistry,NewYork,1973)を有する。これによって、スチレンは可視活性化開始剤を抑制してしまい、効率的に光重合することができない。冷光放射性モノマーはUV領域における光を吸収し、その結果、重合は不完全であり、また、UV光は材料を損相するから、可視活性化開始剤が好ましい。より短い波長を吸収するランタニド錯体の場合、スチレンと両立し得るより高い3重項エネルギーを有する開始剤を使うことが可能であろう。しかしながら、2、12及び13グループの場合、スチレン及び低い3重項エネルギーを有する他のビニル芳香族基は適切でない。
Yグループは、次の一般式で表すことができる。
【0017】
【化9】

この式において、R1及びR2は、同じか異なるが、水素原子又は1から6の炭素原子のアルキル基である。ビニル芳香族化合物と共に、例えば、芳香族基は結合部の一部を形成するものと評価される。好ましい実施例において、Yは、メタクリリレート基かなる。この関連において、カルボニル炭素原子はスペーサ鎖Xの第1員を表し、一方、カルボキシレート酸素原子はスペーサー鎖の第2員を表すことは指摘されるべきである。
【0018】
一般式で示されるように、本発明のモノマーは、総計−n価(Mイオンに架かる電荷がバランスされるように)の1又は2以上のアニオンリガンドからなる。金属3+イオンの典型的場合に、これは、アニオンリガンドの総電荷が−3となることを意味する。示されるように、1又は2以上のリガンドCh−X−Yが存在し得る。Ch−X−Yでないいずれのリガンドも通常のアニオンリガンドではなく、好ましくは、酸素又は窒素供与システムを有し、典型的には、芳香族カルボン酸、ジカルボン酸、βジケトネート又はヒドキシカルボン酸又はシッフ塩基を有する。具体例としては、イソキノリンカルボン酸、1−ナフト酸及び4−t−ブチル安息香酸がある。Mがd−ブロック金属のとき、Ch−X−Yでないいずれのリガンドは、2−フェニルピリジン及び誘導体のような炭素窒素供与システムであり得る。全てのL基が同じであるとき、ホモ乳酸発酵錯体が形成される。少なくとも1つのL基が異なるとき、ヘテロ乳酸発酵錯体が形成される。
【0019】
Mがf−ブロック、特にランタニド、イオンのとき、増感基がリガンドCh−X−Y中に存在すべきであり、そうでないときは他のリガンドL中に存在する。よく知られているように、適切な感光リガンドはランタニド原子の第1励起状態より高い第3重項エネルギーを有し、発光色はランタニド金属の選択によって決められる。Mが主要グループ又はd−ブロック金属の場合、可視光を放射する、又は錯体からの発光を基礎にした電荷移送を可能とするリガンドを基礎とした部分はリガンドCh−X−Y又は他のリガンドLに存在する。発光の中心のバンドギャップは、可視領域になるように750nmより長くない波長において発光を提供するに十分な大きさである。例えば、化合物のバンドギャップが長すぎると、電子供与配位基はそれを減少させるために組み込まれる。一般的に、しかしながら、電子供与基の存在は、非常に狭いバンドギャップをもたらす。適切なリガンドを基礎とした断片又は感光基は、置換β-ジケトナト、シッフ塩基、水酸化フェノール及び誘導体、芳香族及びヘテロ芳香族基並びにベンゼン、ナフタリン、ベンゾフェノール、キノリン、ピロール、ピラゾール、ピラゾローン、ポルフィリン、フラン、チオフェン、インドールのようなこれらの誘導体を含む。適切な感光リガンドの具体例としては、ヨウロピウムのための1−ナフトイック酸及びイソキノリンカルボン酸、テルビウムのための4−t−ブチル安息香酸、アルミニウムのためのヒドロキシキノリン、イリジウムのための2−フェニルピリジン、2−フェニルベンゾクサゾール、2−フェニルベンゾチアゾール又は2−ピリジルチアナフテンがある。好ましい実施例において、感光基は、リガンドCh−X−Yに存在し、例えば、次の一般式のキレート基として存在する。
【0020】
【化10】

ランタニド金属にとって特に好ましいリガンドは、次の式を有するモノ−2−[メタクリロキシ]エチルフタレート[H(MEP)]から導かれるものである。
【0021】
【化11】

この化合物において、キレート基Chはフタレートであり、Yはメタクリレート基であり、一方、結合基Xは4原子鎖を有し、炭素及び酸素原子であり、より詳しくは3炭素原子及び1酸素原子で、炭素原子の1つはカルボニル基として存在する。このリガンド、H(MEP)は、ランタニド金属に適合し、しかし、2、12,13グループ又はd−ブロック金属と共に用いるには適当ではない。HMEPの3重項レベルは、結果として発光ランタニド錯体において、Eu又はTbのための感光リガンドとして働くために適切に位置されている。しかしながら、バンドギャップは、HMEPが2、12、13グループ又はd−ブロック金属を有する発光錯体を形成するには大きすぎる。
【0022】
本発明のモノマーは、水又は他の溶媒分子が金属イオンに配位するのを防ぐための1又は2の中性リガンドを含み得る。通常のコリガンドは、この目的のために使用され得る。このような中性コリガンドは、中央のMイオンの周囲の配位軌動範囲を満たす。これは、ランタニドイオンが2、12,13グループ又はd−ブロック金属イオンより高い配位数を有する傾向にあるため、Mがランタニドのときに特に関係する。適当なコリガンドはランタニドイオンを感知しモノマーの溶解性を改良する。コリガンドは、単座配位子又は二座配位子であり得る。適切なコリガンドは、1,10−フェナントロリン及びその誘導体、2,2’−ビピリジル及びその誘導体、ジメトキシエタン、エチレングリコール、ホスフィンオキサイド、1又は2供与原子を含むアミンを有するエチレンジアミンを含む。原子リガンドが感光要素として働かないときは、感光要素を含むコリガンドが存在すべきである。感光コリガンドは、1,10−フェナントリン、2,2’−ビピリジル、ピリジンN−オキシド、バスフェナントリン並びにベンゾフェノン及びその誘導体を含む。アニオンリガンドの一部である(及び結合基の一部であり得る)追加の供与基により、金属の配位軌道を飽和することも可能である。
【0023】
Mが3価のランタニドイオンであるとき、発光は金属から生じ、金属の選択が発光色を決める。そうでない場合は、発光色はリガンド(L)の選択だけでなく金属の選択に依存する。金属Mが、ベリリウム、亜鉛又はアルミニウムのような2、12又は13金属グループ、又はd−ブロック軽金属であるとき、錯体は蛍光を発する。Alについての好ましい例においては、Ch−X−YリガンドはCh基として8−ヒドロキシキノリンを含有し、ここで、スペーサーXは6原子鎖からなり、より詳細には、炭素原子の1つがカルボニル基として存在する4炭素原子と2酸素原子からなる。このように、このタイプの好ましいモノマーは次の式を有する。
【0024】
【化12】

この式において、ORはアルミニウムに結合するリガンドであり、第3のメタクリル酸−2−(8−ヒドロキシキノリン−5−ylメトキシ)エチルエステルリガンド、又は2,4,6−トリフェニルフェノラトのような代替的リガンド又は米国特許5,141,671号に開示されている他の適切な公知例であり得る。金属Mが、イリジウム、ロジウム、オスミウム、プラチナ又はルテニウムのとき、スピン軌道結合は燐光を生じさせる(3重項からの放射)。知られているように、このような錯体は有機発光装置(OLED)において燐光を放射することができ、これは明確な効率上の利点を有することができる。基本的には、OLEDにおいては、1重項励起の3倍の3重項励起が形成される。ランタニド錯体及び他の重金属燐光放射体は3重項励起を収穫し、放射性発光を行う状態に遷移する。そこでは、蛍光化合物によって1重項励起だけが放射的に減衰し、残留エネルギーは、非放射プロセスにおいて失われる。d−ブロック重金属の好ましい実施例においては、Ch−X−Yリガンドはβ−ジケトナトCh基を包含し、2つの他のフェニル−ピリジンアニオンリガンドが存在する。このように、このタイプの好ましいイオンは次の式を有する。
【0025】
【化13】

ここで、R、R’及びR”の1つは、X−Yに対応し、他の置換基は、水素、炭素数1から6のアルキル、ハロゲン、フェニル及びチオニルを含む。
【0026】
金属含有モノマーは、本技術の関係者に知られている標準的な方法によって用意される。本発明のモノマーは、一般的には、Ch−X−Y式で表される化合物及び選択的に他のアニオンリガンド化合物を脱プロトン化し、選択的に1又は2の中性リガンド化合物の存在下で脱プロトンした化合物をMイオン塩と反応させることによって用意される。モノマーは、典型的には、Ch−X−Y式の化合物をエタノール又は他の水溶性溶媒に溶解することによって用意される。次いでCh−X−Yが脱プロン化される。例えば、カルボン酸リガンドはCOO-に転換される。これは、カルボネート、窒化物、ハロゲン化物又は酢酸塩のようなカルボン酸のような金属塩によって達成される。典型的な金属は、ナトリウム及びカリウムである。カルボン酸が使われるときはリガンドよりも弱い酸であることが望ましい。そうでない場合は、過剰なリガンドが用いられるべきである。一般的には、リガンド含有化合物のほぼ等モル量及び脱プロン化要素が使われるべきである。他のアニオンリガンドが使われる場合は、これらは同様に扱われ、また、中性のコリガンドも組み込まれるべきである。金属イオンが次いで添加され、典型的には滴下される。ランタニド又は他の金属イオンが、通常、水溶性塩、典型的には塩化物のようなハロゲン化物の形で提供される。反応は通常、自然進行するが、ゆるやかな加熱が必要であろう。望まれる製品は、離隔されるべきであり、例えば、水の添加によって溶媒から沈殿させ、ろ過される。錯体は、非水溶性有機溶媒を用いて、当業者に慣用の技術によって準備され得る。
【0027】
示されるように、本発明のモノマーは容易に高分子に転化される。これらの高分子は次の式の繰り返し単位を有する。
【0028】
(化14) Mn+(L)n-(CL)x
この式において、M、CL、n及びxは上記のように定義され、少なくとも1つのリガンドは次の式を有するように、(L)は総計n−価の1又は2以上のアニオンリガンドを表す。
【0029】
【化15】

この式において、Ch及びXは上記で定義され、R1及びR2は、同じか又は異なり、水素原子、炭素数1から6、好ましくは1又は2のアルキル基を表す。好ましくは、R2は水素、R1はメチルを表す。
【0030】
本発明の高分子は、均質な高分子でよく、又は、例えば、(L)に関して上述したタイプのN−ビニルカルバゾール及びアクリルモノマーのような単官能基モノマーを含む1又は2以上のオレフィンコノマー、及び、ジ、トリ又はテトラから選ばれる官能基モノマーから導かれ得る。
【0031】
高分子が、不溶性、好ましくは架橋された高分子材料を生じせしめるラジカル開始剤によって容易に得られることは、本発明の優位点である。架橋高分子は、一般に、モノマーに1又は2以上のCh−X−Yタイプのリガンドが存在すれば、製造することができる。モノマー層は、熱的に、又は、特に好ましくは、UV光、可視光、電子線及びX線を含む化学線により重合される。典型的には、モノマーの重合はそのままの状態で行われる。別の言い方をすれば、モノマーの溶液はLEDにおける高分子の望まれる位置に注入し、重合することができる。露光による重合の場合は、層はパターン化した露光により形成することができる。架橋を基礎とした光による構造形成のシステムは、例えば、印刷版およびフォトレジストに関連した産業においては公知である(例えば、US−A−5922481号参照)。
【0032】
最初に、適切な基板がモノマー溶液によって被覆される。適切な基板の例としては、伝達層、さらに、選択的に正孔放出及び輸送層が提供されるガラス及び薄膜がある。選択的にコモノマー、架橋剤並びに熱開始剤又は光開始剤を加えた金属含有モノマーを含む非配位溶液の適当な溶媒をスピン若しくはディップコーティングにより、ナイフコーター又は印刷により基板に適用され、好ましくは化学線によって重合される。光重合は、酸素が存在しない雰囲気、例えば、窒素雰囲気中で行われるのが好ましい。パターン露光の場合、未露光部はモノマーに対すよう溶媒によって洗浄除去される。意図する構造によって、層の相互混合が生じないように、スピン若しくはナイフコート又は蒸着によって更なる層が積層される。
【0033】
好ましい実施例においては、典型的には20から500、例えば、50から100nmの厚さの高分子層を得るために、モノマー溶液がスピン注入される。モノマーは、ゆっくりと蒸発し、良質な薄膜を生成するように、望ましくは相対的に高い沸点を有する非配位溶媒に溶解される。典型的な溶媒は、クロロホルム、キシレン、トルエン及びハロベンゼン、特に、オルトジクロロベンゼンのようなクロロベンゼンを含む沸点70から150℃を有するものである。典型的には、しかしながら、濃度は5から100mg/mlである。ディップコート及び印刷など他の方法も用いることができる。
【0034】
本発明の高分子は発光装置における発光層の形成に有益である。一番簡単な形では、有機発光又は電子冷光放射装置は、少なくとも1つが放射光を透過する2つの電極に挟まれた発光層から形成される。このような装置は、透明基板、透明電極層、発光層及び背面電極層からなる従来の構成を有することができる。この目的のためには標準の材料を用いることができる。このように、透明基板は、PET,アクリル樹脂典のような透明材料及びナイロンのようなポリアミドモ使用することができるが、典型的にはガラスからなる。
【0035】
アノードを典型的に形成する透明電極は、酸化インジウム/酸化錫、酸化錫/アンチモン及び酸化亜鉛/アルミニウムを用いることもできるが、好ましくは、酸化インジウム錫(ITO)から製造することができる。PANI(ポリアニリン)のような導電性高分子も用いることができる。
【0036】
背面電極は、通常、Al、Ca、Mg、Li又はMgAgのような低い仕事関数を有する金属又は合金からなる。よく知られているように、正孔輸送材料及び/又は電子輸送材料を含む他の層も存在させることが可能である。代替的な構成として、基板をSiのような不透明の材料とし、光は反対の電極を通して放出することも可能である。
【0037】
本発明の特に有利な点は、本発明の高分子層はそのままの状態で組み込むことが可能であることにある。典型的には、したがって、モノマーの溶液が透明な電極層上に適用され、重合され、そして、他の層が適用される前に重合されない材料が除去される。重合材料は、典型的には不溶性であり、高分子層を損壊することなく他の溶媒を積層させることができる。知られているように、PEDOT/PSSのような正孔輸送材料は透明アノード電極と発光層の間に選択的に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明の好ましい実施例を以下に示す。
【実施例1】
【0039】
[Eu(MEP)3浴]の合成
200ml中のモノ−2−(メタクリロキシ)エチルフタレート(MEP)の4.57g (16.4 mmol)が10mlのH2O中のNa2CO3870mg(8.2mmol)と反応させた。次いで、2.2g(1.2当量、6.6mol)のバトフェナントリンがこの反応混合物に溶解され、10mlのH2O中の2g(5.5mmol)のEuCl3×6H2Oが滴下された。製品は、180mlの水の滴下により、ろ過溶液から沈殿された。反応混合物は30分攪拌された。ろ過後、沈殿物は200mlのエタノール/H2O20:80、50mlのH2Oで洗浄され、真空中で一晩乾燥されて5.6g(77%生成)の無色の固体が得られた。
C66H59EuN2O18:予測値/実測値: C 60.05 / 60.16, H 4.5 / 4.52, N 2.1 / 2.3, Eu 11.51 / 11.81. 光冷光放射: 励起: λmax 367 nm; 放射:λmax 613 + 616 nm。
同様の方法が次の実施例2〜7の化合物を用意するために使われた。
【実施例2】
【0040】
[Eu(MEP)3 フェン] (フェンは、1,10−フェナントリン) 5.0g(78 %)
C54H47EuN2O18:予測値/実測値: C 55.72 / 54.59, H 4.07 / 3.83, N 2.41 / 2.18. 冷光放射:励起:λ max 270 + 348 nm; 発光:λ max 613 + 617 + 619 nm。
【実施例3】
【0041】
[Sm(MEP)3 x H2O]1.29g(57 %)
C54H47N2O18Sm:予測値/実測値: C 50.44 / 50.44, H 4.13 / 4.19, Sm 15.04 / 15.44. 冷光放射無し。
【実施例4】
【0042】
[Tb(MEP)3フェン]980mg(76 %)
C54H47N2O18Tb:予測値/実測値: C 55.39 / 54.75, H 4.05 / 4.09, N 2.39 / 2.20. 冷光放射:励起: λmax 270 + 348 nm; 発光: λmax 613 + 617 + 619 nm。
【実施例5】
【0043】
[Y(MEP)3フェン]969mg(75 %)
C54H47N2O18Y:予測値/実測値: C 58.92 / 57.45, H 4.30 / 4.01, N 2.54 / 2.35. 1H-NMR (300 MHz, CDCl3); 9.59 ppm (s, 2H), 8.09 (d, 2H), 7.67 (s, 2H), 7.48 (m, 5H), 7.08 (m, 9H), 5.8 (s, 3H), 5.4 (s, 3H)1.75 (s, 9H).冷光放射無し。
【実施例6】
【0044】
[Tb(MEP)3ビピリジル] (ビピリジルは、2,2’−ビピリジル) 810 mg(5
0%)
C52H58N2O18Tb:予測値/実測値: C53.94' 52.56, H 5.05 / 5.08, N 2.42 / 2.21, Tb 13.72 / 14.04. 冷光放射:励起: λmax 287 nm; 発光: λmax 543 nm。
【実施例7】
【0045】
[Tb(MEP)3tBu−ビピリジル](tBu−ビピリジルは、 4,4’−ジ−t−ブチル−2,2’−ビピリジル) 2.1g(29%)
C60H66N2O18Tb:予測値/実測値: C 57.1 / 56.3, H 5.27 / 5.14, N 2.22 / 2.18, Tb 12.59 / 12.64.冷光放射:励起:λ max 296 + 335 nm; 発光: λmax 542 nm。
【実施例8】
【0046】
[Eu(MEP)(IQA)2xH2O]
1.25g(4.5mmol)のモノ−2−(メタクリロイロキシ)エチルフタレン及び1.56g(9mmol)のイソキノリンカルボン(IQA)酸が5molのメタノールに溶解され、50℃で3mlのメタノール/H2O中の1.13g(13.5mmol)のNaHCO3溶液に加えられた。45分間攪拌した後、溶媒はろ過され、6mlメタノール中の1.65g(4.5mmol)のEuCl36H2Oの溶媒に滴下された。真空中での溶媒の蒸発後、THFに2回溶解され、ヘキサン中で沈殿させた。沈殿物は、真空中で一晩乾燥され、3.02g(85%生成)の製品が無色の固体として得られた。
C34H27EuN2O11 予測値/実測値: C 51.59 / 51.79, H 3.44 / 3.26, N 3.54 / 3.66, Eu 19.20 / 18.52. 冷光放射 (CH2Cl2): 発光:λ max 615 nm, excitation: λmax 339 nm。
同様の方法が次の実施例9〜13の化合物を用意するのに用いられた。
【実施例9】
【0047】
[Sm(MEP)(IQA)2x2O]3.01g(78%)
C34H27N2O11Sm 予測値/実測値: C 51.69 / 50.58, H 3.44 / 3.20, N 3 Sm 19.04 / 20.13. 冷光放射無し。
【実施例10】
【0048】
[Eu(MEP)(NA)2x2O]
C36H29EuO11予測値/実測値: C 54.76 / 55.12, H 3.70 / 3.73, Eu 19.25 / 19.07. 冷光放射 (CH2Cl2): 発光:λmax 613 nm, 励起: λmax 251 nm。
【実施例11】
【0049】
[Sm(MEP)(NA)2x2O]2.68g(81%)
C36H29O11Sm 予測値/実測値: C 54.87 / 55.19, H 3.71 / 3.88, Sm 19.09 / 19.15. 冷光放射無し。
【実施例12】
【0050】
[Tb(MEP)(TBA)2](TBAは、4−t−ブチル安息香酸)1.62g(41%)
C36H39O10Tb予測値/実測値: C 54.69 / 55.26, H 4.97 / 5.48, Tb 20.10 / 20.12. 冷光放射 (CH2Cl2): 発光: λmax 543 nm, 励起: λmax 253 nm。
【実施例13】
【0051】
[Dy(MEP)(TBA)2x2O]1.0g(27%)
C36H39O10Dy 予測値/実測値: C 53.24 / 53.04, H 5.09 / 5.01, Dy 20.01 / 21.12. 冷光放射無し。
【実施例14】
【0052】
[Eu(MEP)3浴]の光重合
[Eu(MEP)3浴]の光重合が、5重量%のジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイドと共に開始された。トルエン中のヨウロピウムモノマーの溶液(30mg/ml)がガラス基板上にスピンコートされた。ガラス基板に、その後、窒素雰囲気中でUV光を照射した。フォトマスクによって、基板のパターニングがなし遂げられた。露光後、未露光部のモノマーはトルエンによる基板の洗浄で除去され、100nmの厚さの高分子薄膜が得られた。
【実施例15】
【0053】
[Tb(MEP)3ビピリジル]及び[Eu(MEP)3浴]を有する、赤−緑冷光放射基板
CHCl3中の10%の1−ヒドロキシクロヘキシル−フェニルケトンと共に[Tb(MEP)3ビピリジル]がガラス上にスピンコートされた。窒素雰囲気中でのフォトマスクを使用したUV露光の後、未反応モノマーはCHCl3により洗浄除去された。10重量%の1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトンと共に[Eu(MEP)浴]がトルエン溶媒からスピンコートされた。露光後、フォトマスクを通じて、未反応モノマーがトルエンにより除去された。
【実施例16】
【0054】
[Eu(MEP)(IQA)2xH2O]とメチルメタクリレートMMAの共重合
アルゴン雰囲気中で[Eu(MEP)(IQA)2xH2O](5−30%)が抑制剤開放MMAに溶解される。AIBNがラジカル開始剤として添加された。封止されたチューブが60℃の油浴に置かれた。反応が完結(10−30分)された後、製品は真空中で30分間乾燥され無色透明なプラスチックが得られた。
【0055】
同様の態様で、[Eu(MEP)(IQA)2xH2O]がスチレン及びN−ビニルカルバゾールと共重合された。
(1)[Eu(MEP)(IQA)2xH2O]とMMA5、10、30重量%との共重合。冷光放射:最大発光:625nm、最大励起:374
(2)[Eu(MEP)(IQA)2xH2O]とスチレン10、30、50重量%との共重合。冷光放射:最大発光614nm、最大励起:365nm
(3)[Eu(MEP)(IQA)2xH2O]とN−ビニルカルバゾール1、5,10重量%との共重合。冷光放射:最大発光615nm、最大励起:390nm
【実施例17】
【0056】
[Eu(MEP)3 フェン]を有する有機発光ダイオード
スピンコートと従来の蒸着のコンビネーションにより形成された有機発光ダイオードが発光材料として上記に示された有機ランタニド化合物とともに調査された。
【0057】
パターン化されたITO基板がNH3/H22(1:1)の洗浄液中、次いで脱イオン水中で超音波処理され、その後炉の中で乾燥され、プラズマ処理(65W,4分)された。
典型的な実施装置は、次のように形成される。
【0058】
4−7%の[Eu(MEP)3 フェン]、PVK(ポリ−(9−ビニルカルバゾール))(1CHCl3中の4mgml−1)がスピンコートにより約膜厚80nm用意されたITO基板に積層された。薄膜は不活性雰囲気(70℃、2時間を超える)中のホットプレート上で乾燥された。スピンコート層の上に、Al(100nm)で被覆されたCa(20nm)からなる金属が蒸着(10−6mmHg及び蒸着速度0.1nms−1)された。
【0059】
図1に、電流密度に対する電圧の変化を示した。図2に発光波長を示した。電流/電圧、輝度/電圧の分析はKeithley2400を用いて行われた。ソースメータは、IBMコンパチブルPCからプログラムされた。ピーク電流は、40mAcm-2(25V)のオーダーであり、ピーク輝度は、1−2cdm-2(25V)である
。EL発光波長はccdカメラにより測定され、ヨーロピウムイオンの波長として典型的な発光波長(最大615nm)を生じた。
【実施例18】
【0060】
メタクリル酸−2−(8−ヒドロキシキノン−5−ylメトキシ)エチルエステルの合成H(MAEQ)
5−クロロメチル−8−ヒドロキシキノリン塩酸塩(5.0g,21.7mmol)及び2−ヒドロキシメタクリレート(20ml,143mmol)の混合物が2日間真空中60℃で加熱された。室温まで冷却された後、H2O(150ml)が加えられ、溶液は希薄NH3水溶液によってアルカリ化した。製品は沈殿し、フィルター上で回収され、希薄NH3水溶液によって洗浄され、真空中で一晩乾燥させた。この原製品はTHF(250ml)に抽出され不溶性の残留物からろ過された。真空中でのTHFの蒸発から、ヘキサンから2回再結晶された固体が得られ、釘状の純製品の無色の結晶が得られた(4.9g,17mmol,79%)。
Mp: 89 ℃. IR(薄膜): 3055 cm-1, 2955, 2857, 1713 (C=O), 1635 (C=C), 1581 (C=C環).1H-NMR (δ, 300 MHz, DMSO-d6): 8.86 ppm (m, 1H), 8.48 (m, 1H), 7.55 (dd, 1H, 3J= 4.1 ,8.5 Hz), 7.43 (d, 1H, 3J= 7.8 Hz), 7.0 (d, 1H, 3J= 8.2 Hz), 5.95 (m, 1H), 5.64 (m, 1H), 4.84 (s, 2H), 4.23 (m, 2H), 3.69 (m, 2H), 1.83 (s, 3H). 13C [1H] NMR (δ, 300 MHz, DMSO-d6): 166.3 ppm, 153.4, 147.8, 138.7, 135.6, 138.1, 128.5, 127.3, 125.6, 123.9, 121.6, 109.8, 69.9, 67.0, 63.5, 17.8. UV / Vis (CH2Cl2): 245 nm, 323。
【実施例19】
【0061】
アルミニウムトリ(メタクリル酸−2−(8−オキシキノリン−5−ylメトキシ)エチルエステル)Al(MAEQ)3の合成
窒素雰囲気中−80℃、乾燥トルエン(125ml)中のトリメチルアルミニウム(2.5mmolトルエン中2M溶液1.25ml)が乾燥トルエン(250ml)中メタクリル酸−2−(8−ヒドロキシキノリン−5−ylメトキシ)エチルエステル(2.15g、7.5mmol)に滴下された。混合物は、マイナス20℃で3時間保たれ、その時点でEtOH(3ml)の添加によってクエンチされ、室温まで暖められた。真空中での溶媒の蒸発後、残留物はトルエン(250ml)に溶解され、セライトのパッドを通過させてろ過され、次いで、ヘキサン(400ml)に滴下された。ろ過後、固体がトルエン(10ml)に溶解され、ヘキサン中で沈殿された。これを3回繰り返し、明るい黄色の固体1.54g(69%)が得られた。
C48H48AlN3O12: 予想値/実測値: C 65.08 / 63.68, H 5.46 / 5.32, N 4.74 / 4.81, Al 3.05 / 3.06. M.P.: no m.p., 60℃で重合開始。IR (薄膜): 2954 cm-1, 2864, 1713 (C=O), 1636 (C=C), 1604 (C=C環), 1580 (C=C環). 1H-NMR (δ, 300 MHz, DMSO-d6): 8.64 ppm (m, 6H), 7.49 (m, 6H), 6.75 (dd, 3H), 5.6 (m, 6H), 4.81 (m, 6H), 4.2 (m, 6H), 3.67 (m, 6H), 1.74 (m, 9H). FAB-MS: m/z = 885 (20 %, M+), 599 (100 %). UV / Vis (CH2Cl2): 261 nm, 390. 冷光放射 (CH2Cl2):発光: λmax 534 nm, 励起: λmax 381 nm. 冷光放射 (粉末): 発光: λmax 532 nm, 励起: λmax 381 nm。
【実施例20】
【0062】
Al(MAEQ)3を有する有機発光ダイオード
パターン化されたITO基板が洗浄液及びDI水中の超音波による通常の方法で予備処理され、炉中で乾燥された。40nmの厚さのPEDOT/PSSの正孔放出/輸送層が基板上のITO面にスピンコートにより積層された。薄膜は、20分間、120℃のホットプレート上で乾燥された。Al(MAEQ)3からなる発光/電子輸送層がトルエン(15mg/ml)からスピンコートにより積層された。1.5nmの厚さを有するLi発光層の上に、厚さ200nmを有するAlカソードが真空中で蒸着された。
【0063】
添付の図3及び4は、それぞれ、装置の電流−電圧(J−V)及び効率−電圧特性を示す。0.07lm/Wの電力効率及び0.25Cd/Aの光効率が達成された。起動電圧は8.5V及び11Vであり、輝度は6cd/m2であった。図5は、装置のEL(直線)、溶媒(CH2Cl)中のAl(MAEQ)3のPL(破線)及び固体状のAl(MAEQ)3のPL(点線)の発光波長を示す。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】実施例17に記載される装置における電流密度に対する電圧の変化を示す。
【図2】実施例17に記載される装置における発光波長を示す。
【図3】実施例20に記載される装置の電流−電圧(J−V)の変化を示す。
【図4】実施例20に記載される装置の効率−電圧特性を示す。
【図5】実施例20に記載される装置のEL(直線)、溶媒(CH2Cl)中のAl(MAEQ)3のPL(破線)及び固体状のAl(MAEQ)3のPL(点線)の発光波長を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起によって可視領域での冷光放射を行う、次の一般式で表される発光ポリマーの重合に使用されるモノマー。
(化1) Mn+(L)n-(CL)x
この式において、n+は、Mの価数を表し、(L)は、1又は2以上の総計−n価を有するアニオンリガンドを表し、前記リガンドの少なくとも1つは次の式を有する。
(化2) Ch−X−Y
この式において、Chは、キレート結合部及びキレート結合部が共役されたリガンドの残りの部分からなるリガンドの断片であるキレート/イオン結合基であり、Yは、オレフィン基を表し、Xは、少なくとも4つの炭素及び酸素原子を含むスペーサー又は結合部であり、xは0,1又は2であり、CLは中性コリガンドであり、Mはd−ブロック金属である。
【請求項2】
Chが酸素又は窒素電子供与体である請求項1に記載のモノマー。
【請求項3】
Chがカルボン酸、ジカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、β−ジケトネート基又はヒドロキシキノリン基である請求項1又は2に記載のモノマー。
【請求項4】
スペーサーが6から12までの原子からなる請求項1ないし3のいずれかに記載のモノマー。
【請求項5】
スペーサーが電子供与体又は配位基からなる請求項1ないし4のいずれかに記載のモノマー。
【請求項6】
Yがアクリル酸塩の一部又は置換アクリラート基である請求項1ないし5のいずれかに記載のモノマー。
【請求項7】
Yがメタクリラート基である請求項1ないし6のいずれかに記載のモノマー。
【請求項8】
Mがベリリウム、亜鉛、アルミニウム、イリジウム、オスミウム、プラチナ及びルテニウムを表す請求項1ないし7のいずれかに記載のモノマー。
【請求項9】
(L)がCh−X−Yではない1又は2のアニオンリガンドを含む請求項1ないし8のいずれかに記載のモノマー。
【請求項10】
前記Ch−X−Yではないアニオンリガンドがフェニルピリジンである請求項9に記載のモノマー。
【請求項11】
前記Ch−X−Yではないアニオンリガンドが、イソキノリンカルボン酸、1−ナフトエ酸又は4−t−ブチル安息香酸である請求項9に記載のモノマー。
【請求項12】
前記Ch−X−Yでないアニオンリガンドが8−ヒドロキシキノリンである請求項9に記載のモノマー。
【請求項13】
芳香族又はヘテロ芳香族基を有する請求項1ないし12のいずれかに記載のモノマー。
【請求項14】
フェニル増感基を有する請求項13に記載のモノマー。
【請求項15】
xが1又は2である請求項1ないし14のいずれかに記載のモノマー。
【請求項16】
前記Ch−X−Yが次の式を有する請求項1ないし15のいずれかに記載のモノマー。
(化3)

【請求項17】
請求項1において定義されるCh−X−Y化合物、及び、選択的に、1又は2の他のアニオンリガンド化合物を脱プロン化し、次いで、脱プロン化された化合物を、選択的に1又は2の中性リガンド化合物の存在下において、請求項1で定義されるMイオン塩と反応させることからなる、請求項1ないし16のいずれかに記載のモノマーを得るための方法。
【請求項18】
脱プロン化が炭酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物又はカルボン酸塩である金属塩によって行われる請求項18に記載の方法。
【請求項19】
請求項17又は18に記載の方法によって得られるモノマー。
【請求項20】
次の一般式で表される発光材料に使用されるモノマーをラジカル開始を受けさせることによる発光用高分子材料の製造方法。
(化1) Mn+(L)n-(CL)x
この式において、n+は、Mの価数を表し、(L)は、1又は2以上の総計−n価を有するアニオンリガンドを表し、前記リガンドの少なくとも1つは次の式を有する。
(化2) Ch−X−Y
この式において、Chは、キレート結合部及びキレート結合部が共役されたリガンドの残りの部分からなるリガンドの断片であるキレート/イオン結合基であり、Yは、オレフィン基を表し、Xは、少なくとも4つの炭素及び酸素原子を含むスペーサー又は結合部であり、xは0,1又は2であり、CLは中性コリガンドであり、Mはd−ブロック金属である。
【請求項21】
ラジカル開始がUV光若しくは可視光及び光開始剤によって達成される請求項20に記載の高分子材料の製造方法。
【請求項22】
化学的放射線にさらすことからなる請求項20又は21に記載の高分子材料の製造方法。
【請求項23】
高分子の存在が望まれる場所において重合が行われる請求項20ないし22のいずれかに記載の高分子材料の製造方法。
【請求項24】
モノマーの溶液がLED層を形成するためにスピンコートされ、次いで重合される請求項23に記載の高分子材料の製造方法。
【請求項25】
重合がフォトマスクを用いて行われ、未露光部がモノマーが溶解する有機溶媒を用いて除去される請求項24に記載の高分子材料の製造方法。
【請求項26】
請求項21ないし25のいずれかに記載の高分子材料の製造方法により高分子材料の層を形成することからなる発光装置の製造方法。
【請求項27】
前記発光装置が透明な基板層、透明な電極層、発光層及び背面電極を有し、前記発光層が前記高分子材料の層からなる請求項26に記載の発光装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−179798(P2008−179798A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331572(P2007−331572)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【分割の表示】特願2002−568657(P2002−568657)の分割
【原出願日】平成14年2月26日(2002.2.26)
【出願人】(502144729)アイシス イノベイシヨン リミテツド (18)
【Fターム(参考)】