冷却した流体を身体内の箇所に供給する方法
冷却した流体を身体の内部箇所に供給する装置及び方法が開示されている。カテーテルは、細長い部材であって、貫通して該細長い部材の末端まで長手方向に伸びる管腔を有する上記細長い部材を有している。温度センサは末端付近にて管腔を通って流れる流体の温度を検知する。再灌注前に虚血性組織領域を治療する方法は、虚血性組織領域へのアクセス部を提供する冠状静脈内にバルーンカテーテルを挿入するステップを含む。バルーンは冠状静脈を閉塞するよう拡張させ、また、冷却した流体はバルーンカテーテルからバルーンの末端方向に供給される。別の方法は、病変部が動脈を通る血流を妨害する箇所である冠状動脈内にカテーテルを挿入するステップを含む。カテーテルの末端は病変部の末端側の位置に配置され、また、カテーテルの末端から冷却した流体が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却した流体を身体内の箇所に供給することに関する。
【背景技術】
【0002】
酸素付与した血液の冠状動脈を通じての流れは、急性心筋梗塞(AMI)を発症させる、一般に、病変部と称される、動脈の根源的な狭窄化と関係した血栓又は塞栓によって減少し又は完全に遮断阻害することがある。組織に対する損傷が虚血性事象中に続くとき、早期の再灌注は虚血性組織の領域、すなわち、酸素付与した血液が存在しない組織の領域に対する損傷を劇的に減少させることは証拠によって明らかとなっている。このため、例えば、経皮的経血管的冠動脈形成術(PTCA)又は溶解(lytic)療法を用いて冠状血管の遮断阻害を早期に治療することが望まれる。冠状動脈の病変部が修復されたならば、虚血性組織領域に対する正常な血流を回復することができる。
【0003】
酸素のラジカル形成、微小血管の詰まり、炎症性反応、及び代謝作用の乱れを含む多数の因子のため、血流が再確立されたとき、再灌流による損傷が生ずる可能性がある。再灌注する前、組織を冷却させることにより虚血性組織領域に対する再灌流による損傷を減少させることが可能である。組織領域を通常の体温よりも約4゜低い33℃の温度まで僅かに冷却させることは、化学的反応率を減少させ且つ、組織の活性及び関係した代謝機能の必要量を減少させることで可能である、保護効果を提供する。目標冷却温度は33℃であるが、目標組織を28ないし36℃まで冷却することは、同様に、利点を提供することができる。また、血小板の凝結、及び微小血管の詰まりの可能性を減少させる好中球の接着を減少させるといったような、虚血性領域に入る血液を冷却させる利点もある。
【0004】
心臓内の虚血性領域を冷却させることのできる1つの方法は、氷パックを患者の心臓の上に配置することである。別の方法は、心膜に穴を開けるステップと、虚血性組織領域付近の心膜空間内に挿入されたリザーバに対し冷却した流体を提供するステップとを含む。別の冷却方法において、目標領域は、冷却した溶液にて直接、灌注する。例えば、カテーテルの末端の先端に配置された熱伝達要素を有するカテーテルを血管内に挿入して心臓内に且つ、心臓を通って流れる血液を冷却することができる。また、患者の冠状静脈洞内に配置されたカテーテルを通じて低温の血液を心臓に供給することにより虚血性組織領域を冷却することも可能である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、冷却した流体を身体の内部箇所に供給する装置及び方法を特徴とする。1つの形態において、カテーテルは、細長い部材を有し、該細長い部材は、該細長い部材の末端まで貫通して長手方向に伸びる管腔を有する。温度センサは、管腔を通って流れる流体の温度を検知する。
【0006】
1つの実施例において、カテーテルは、細長い部材の末端付近にバルーンを有することができる。バルーンは、拡散バルーン又は密封バルーンとすることができる。温度センサをバルーンの末端側に又はカテーテルの末端付近に配置することができる。該温度センサは、カテーテルの基端から伸び且つ、接続部を形成し得るよう末端にて接続された異なる材料から成る2つの導体を有する熱電対とすることができる。該接続部は、管腔を取り囲む内壁まで伸びて、流体が管腔を通って流れるとき、流体が接続部と熱的に連通するようにすることができる。温度センサは、サーミスタとしてもよい。管腔から出る流体の温度に関するフィードバックを温度センサから受け取るため温度制御装置を設けることができ、また、該温度センサは、温度センサにより提供されるフィードバックに応答して流体の温度を調節することが可能である。
【0007】
別の形態において、本発明は、再灌注する前に、虚血性組織領域を治療する方法を特徴とする。該方法は、虚血性組織領域へのアクセス部を提供する冠状静脈内に、バルーンを有するバルーンカテーテルを挿入するステップを含む。該バルーンは、拡散させて冠状静脈を閉塞させ、また、冷却した流体は、バルーンカテーテルからバルーンの末端まで供給する。
【0008】
該方法は、1つの実施例において、バルーンカテーテルを冠状静脈内に挿入する前に、ガイドカテーテルの末端を冠状静脈洞内に配置するステップと、バルーンカテーテルをガイドカテーテルの末端の開口部に通すステップとを含むことができる。
【0009】
更なる形態において、本発明は、再灌注する前に、虚血性組織領域を治療する方法を特徴とする。該方法は、病変部が動脈を通る血流を妨害する冠状動脈内にカテーテルを挿入するステップを含む。カテーテルの末端を病変部の末端側の位置に配置し、また、冷却した流体はカテーテルの末端から虚血性組織領域に提供される。
【0010】
冷却した流体の提供は、カテーテルを使用して行われる血管形成術を行う間、行うことができる。カテーテルをガイドカテーテルの管腔内に挿入するステップと、カテーテルの末端をガイドカテーテルの末端の開口部に通すステップとにより、カテーテルを冠状動脈内に挿入することができる。
【0011】
実施例は、1つ又はより多くの特徴を含むことが可能である。例えば、冷却した流体は、食塩水、血液又は血液代替物としてもよい。更に、冷却した流体は、D−Ala2−D−Leu5エンケファリンのようなデルタオピオイド配位子を含むことができる。更に、流体は、流体がバルーンカテーテル内の管腔を通って流れる間、ガイドカテーテルにより冷却することができる。該方法は、虚血性組織流域に供給される流体の温度を検知するステップを含むこともできる。
【0012】
本発明の1つ又はより多くの実施の形態に関する詳細は、添付図面及び以下の説明に記載されている。本発明のその他の特徴、目的及び有利な効果は、説明及び図面並びに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
色々な図面における同様の参照符号は同様の要素を示す。
図1において、カテーテル20は、末端34付近にて軸22内に幾つかの冷却部分26を有する細長い管状軸22を備えている。該カテーテル20は、組織領域に対する酸素付与した血液の流れが減少し又は完全に遮断阻害した冠状動脈の病変部を修復するため、介入的(interventional)カテーテル(図示せず)と共に使用することができる。酸素付与した血液が欠如すると、組織領域は虚血性となる。カテーテル20を使用して血液のような冷却した流体を虚血性組織領域に提供することができる。冷却部分26は、管状軸22を通って流れる流体を冷却し、また、冷却した流体はカテーテルの末端34から出る。冷却した流体を虚血性組織領域に供給することは、その領域に対する血液の灌注に伴う損傷を少なくすることになる。
【0014】
管状軸22は、可撓性であり、身体内の血管内に且つ血管を通じて挿入することを許容する。図1に示した実施例において、軸22は、その末端34付近にU字形部分30を有している。この形状は、以下に説明するように、カテーテル20の末端34を大腿部動脈を介して大動脈内に挿入し且つ、冠状静脈口内に配置し、冠状動脈へのアクセス部を提供することを許容する。図1の実施例は、心臓内にて使用し得る形状とされた軸22を有するが、該軸22は、頚動脈、右心房を介して冠状静脈洞、又は大動脈を介して腎動脈内に挿入するといったような、その他の用途に適した他の形状の構造としてもよい。
【0015】
この実施例における冷却部分26は、カテーテルの末端34付近、より具体的には、軸のU字形部分30の末端脚部32に配置することができる。冷却部分26は、円筒状の形状とされ且つ、軸22内に配置され、このため、流体が軸22を通って流れるとき、流体は冷却部分26を通って長手方向に流れる。図1の実施例において、互いに短い距離だけ隔てられた6つの冷却部分26がある。一例として、冷却部分26の各々は、約1ないし10ミリの長さであり、部分26間の隔たりは、ほぼ等距離である。冷却部分26の長さ及び隔たりは、例えば、冷却部分26を保持する軸22の部分に所望の可撓性、及び特定の用途に必要な冷却程度に依存するようにしてもよい。可撓性の管28は、冷却部分26間にて軸22に取り付けられ、末端34を身体の血管を通して操作すべく軸が撓むとき、冷却部分26を保持する軸22の部分を補強する。
【0016】
その他の実施例において、冷却部分26は、カテーテルの軸22に沿った他の箇所に配置することも可能である。例えば、図2Aに示した別の実施例において、カテーテル120の冷却部分26は、カテーテルの末端34から更に離れるが、依然として軸の基端よりも末端34に近い位置に配置される。また、図1の実施例には6つの冷却部分26があるが、例えば、冷却される流体の容積、軸22における冷却部分26の位置、特定の用途に必要な冷却程度に依存してより少ない又はより多くの冷却部分があるようにしてもよい。例えば、図2Aの実施例は、8つの冷却部分26を有する。
【0017】
再度、図1において、軸22のバルーン24を拡張させカテーテルの末端34と、例えば、冠状静脈口との間にシールを提供することができる。末端34が冠状静脈口内に着座したとき、冷却した流体を冠状動脈を介して虚血性組織領域に供給することができる。該シールは、以下に更に説明するように、虚血性組織領域に供給された冷却した流体が冠状動脈から逃げて大動脈に入るのを防止し、また、これと同時に、大動脈内の温まった血液が冠状動脈に入るのを防止する。図1の実施例におけるバルーン24は、拡張したとき、円筒状の外面を有するが、シールを形成すべき箇所の形状に依存して、必要とされる異なる形状をとる構造としてもよい。更に、その他の実施例において、バルーン24は、軸22に沿った異なる位置に配置するか又は割愛してもよい。
【0018】
アダプタ38は、カテーテル20の基端36にて軸22に取り付けられる。該アダプタ38は、軸22内の管腔にアクセスすることを許容し得るよう基端36に長手方向開口部37を有している(管腔は図1に図示せず)。この内部管腔は、軸22の全長を亙ってカテーテルの末端34の別の長手方向開口部まで延びている。この管腔は、以下により詳細に説明するように、冷却した流体を身体内の箇所に供給し又は注入するため使用されるため、注入管腔と称する。アダプタ38はまた、止血アダプタ又はY字形アダプタのような装置を取り付けるため取り付け部分40も有している。アダプタ38はまた、外科医が望むならば、カテーテル20を保持し且つ、カテーテル20にトルクを加える把持部42も有している。別の実施例において、異なるアダプタ38をカテーテル20の基端36に配置してもよい。例えば、カテーテル20は密封バルーン24を有するため、アダプタ38は、以下により詳細に説明するように、カテーテルの基端36からバルーン24まで長手方向に伸びる拡張管腔に対するアクセス部を提供する第二の開口部すなわちポートを有することが可能である。
【0019】
上記に簡単に説明した介入手順において、経皮的経血管的冠動脈形成術(PTCA)を行うため使用される従来の拡張カテーテル(図1に図示せず)のような介入カテーテルに対するガイドカテーテルとしてカテーテル20を使用することができる。具体的には、拡張カテーテルを基端36のガイドカテーテルの基端開口部37を通して上記に説明した内部注入管腔内に挿入することができる。次に、拡張カテーテルを軸22を通して伸ばし拡張カテーテルのバルーンが軸22の末端34から外に伸びるようにしてもよい。従って、拡張バルーンは治療すべき病変部に配置することができる。病変部を治療し且つ、拡張カテーテルをガイドカテーテル20から除去した後、血液のような流体を基端開口部37を通して注入管腔内に導入することができる。この流体は、注入管腔を通り且つ、冷却部分26を通って流れ、流体は該冷却部分にて冷却され、最終的に、虚血性組織領域に供給される。
【0020】
図2Bに示した1つの代替的な実施例において、カテーテルの軸22は、軸22の側部を貫通して注入管腔内に伸びる1つ又は一連の小さい穴44を有することができる。穴44は、冷却部分26の基端側の軸22に沿った任意の箇所に配置することができる。カテーテル20が血管内に配置されたとき、血液は穴44を通して注入管腔内に強制的に送り込まれる。心臓の送出によって血液に加わった圧力により血液は穴44内に強制的に送り込まれ且つ、注入管腔を通ってカテーテル20の末端34に向けて流れ、血液は、該カテーテルの末端にて冷却部分26により冷却され、次に、虚血性組織領域に供給される。
【0021】
図3には、その末端34付近にて図1のカテーテル20の一部分の長手方向平面における断面図が示されている。図3に示すように、密封バルーン24は、軸22の上で且つ軸の全周の周りに配置される。溶接部50がバルーン24の長手方向端部を軸22に対して固定し且つ密封し、これにより軸22とバルーン24との間に密封されたチャンバ52を形成する。拡張管腔54は、軸22を貫通してカテーテルの基端36のアダプタ38(図1に図示)からバルーンチャンバ52まで且つ、バルーンチャンバ52内に伸びている(図3)。拡張媒体(気体又は液体)をチャンバ52内に提供し且つ、除去することにより、バルーンチャンバ52を拡張させ且つ、収縮させることができる。上記に説明したように、バルーン24は、カテーテル軸22と、例えば、冠状静脈口のような血管壁との間にシールを提供する。従って、バルーン24は、ナイロン、ウレタン、シリコーン、ポリオレフィン共重合体又はその他の適宜な材料で出来たものとすることができる。バルーン24の製造材料及び寸法は、用途及びバルーン24が使用される身体部分に依存して異なるものとすることができる。
【0022】
図3には、出る冷却した流体の温度を測定すべくカテーテルの末端34付近に配置された、温度センサ56も示されている。この実施例において、温度センサ56は熱電対である。熱電対56は、互いに絶縁された異質材料から成る2つの導電線60にて出来ている。線60は、カテーテルのアダプタ38(図1に図示)からカテーテルの末端34付近の位置まで軸22を貫通して長手方向に伸びている。この末端の位置において、導電線60は互いに接続されて接続部62を形成する。接続部62は、軸22の内壁64内に伸びる表面領域を有しており、このため、接続部62は、軸22の注入管腔58を通って流れる流体と熱的に連通している。このようにして2つの異質の導体が接続されると、接続部62を亙って起電力(emf)が誘発され、この誘発されたemfの大きさは、接続部の温度の関数として変化する。誘発されたemfは、導電線62の基端(すなわち患者の外部)にて測定することができ、このため、注入管腔58を通って流れる流体の温度を流体がカテ―テルの末端34から出る直前に、決定することが可能である。流体が所望の温度でないならば、次に、以下に説明するように、冷却部分26は、所望の温度を実現し得るよう調節可能である。その他の実施例において、温度センサ56は、サーミスタ又はその他の適宜な温度検知機構とすることができる。更に、温度センサ56は、注入管腔58を通って流れる流体の温度を測定し得るよう軸22の異なる位置に配置できる。
【0023】
その一部分を図3に示した注入管腔58は、カテーテルの基端36(図1)からその末端34まで伸びている。管腔58の直径は用途に依存する。例えば、血液が管腔58を通して注入されるならば、管腔58の直径は、血液が管腔58を通って流れるときに発生されたせん断力により所望の率にて注入された血液細胞が破壊されないよう、十分大きくする必要がある。各種の既知のガイドカテーテルの管腔の直径は、この必要条件に合うのに十分に大きい(例えば、1.93mm(0.076インチ)ないし2.79mm(0.110インチ))。更に、拡張カテーテルが管腔58内にあるとき、同時に、血液を管腔58を通じて注入しようとするならば(例えば、冷却した血液がPCTA手順の間に注入されるならば)、カテーテルの管腔58の直径は、場合によっては、従来のガイドカテーテルの管腔の直径よりも大きくする必要があろう。他方、管腔58の最大直径は、カテーテル20を挿入すべき体腔の直径及びカテーテル20を患者の身体に挿入するときに通る切開部の寸法により制限される。
【0024】
図4ないし図6には、図1及び図2に示したカテーテルにて使用可能である冷却部分26の一例が示されている。この実施例において、冷却部分26は熱電気的冷却器(TEC)である。TEC26は、ペルチエ効果として知られた熱エネルギ過程を使用することにより、カテーテル20を通って流れる流体を冷却する。この過程を使用するため、以下に詳細に説明するように、低電圧の直流電源を熱電気モジュールに取り付けて熱をモジュールを通じて一方の側部から反対側部に除去することができる。図4はTEC26の斜視図である。図5は、カテーテル20を通って流れる流体を冷却する熱電気半導体要素対102の簡略図を提供するTEC26の側面図である。図6には、図4及び図5に示したTEC26を保持するカテーテル20の一部分の長手方向平面における断面図が示されている。
【0025】
図4において、TEC26は、第一のモジュール70と、第二のモジュール72とをそれぞれ有している。第一のモジュール70及び第二のモジュール72が互いに配置されたとき、これらのモジュールは、流体が通って流れることのできる管腔58を有する円筒体を形成する。この円筒形状の構造体を形成するため、第一のモジュール70及び第二のモジュール72の双方は、半円筒体の形状をしており、ここで、円筒体は等寸法の2つの部分に長手方向に分割されている。第一のモジュール70及び第二のモジュール72の長手方向端縁は小さい空隙91a、91bにより分離されている。この実施例におけるTEC26は、例えば1ないし10mmの長さとすることができる。これと代替的に、TEC26は、カテーテル20にて使用するのに適した狭小な平坦なモジュール又はその他の形状体から成るようにしてもよい。
【0026】
TEC26の第一のモジュール70は、第一のモジュールの基端90にて線74、76に接続され且つ、第一のモジュールの末端92にて線82、84に接続されている。この実施例において、線74、76は、カテーテルの軸を貫通してカテーテルの基端に向けて長手方向に伸びている。線74、76は、図6に示したTEC26の基端側の位置に配置されたカテーテルにおける別のTEC26の第一のモジュール70に接続することができる(接続部は図6に図示せず)。TEC26が軸における最基端側の冷却部分であるならば、線74、76は、軸を貫通してカテーテルの基端まで長手方向に伸びて患者の外部からアクセスし得るようにする。線82、84は、カテーテルの末端に向けて軸を貫通して長手方向に伸び且つ、図6に示した冷却部分の末端側に配置された別のTEC26における第一のモジュール70に接続することができる。
【0027】
TEC26の第二のモジュール72は、同様に、第一のモジュールの基端90にて線78、80に接続し且つ、第一のモジュールの末端92にて線86、88に接続される。線78、80、86、88は、軸を貫通して伸び且つ、第一のモジュール70について説明したのと同一の要領にてカテーテルにおける色々なTEC26の第二のモジュール72に接続される。
【0028】
図5において、線74、76、82、84は、接続点94にて第一のモジュール70に接続されている。同様に、線78、80、86、88は、接続点96にて第二のモジュール72に接続されている。第一のモジュール70及び第二のモジュール72は、多数の熱電気半導体要素対102を有している。第一のモジュール70における要素対102は、直流電圧を線74、76に印加することにより作動される。同様に、第二のモジュール72における要素対102は、直流電圧を線78、80に印加することにより作動される。第一のモジュール70及び第二のモジュール72内の要素対102は並列の形態に配置されている。このように、モジュール70、72の各々における要素対102の全てに対し同一の直流電圧を印加できる。線74、76は第一のモジュール70を介して線82、84に接続されている。この接続は、第一のモジュール70に印加された直流電圧をカテーテル20における第一のモジュール70の全てに印加することを許容する。その結果、第一のモジュールにおける要素対102の全ては、単一の電圧源にて制御可能である。同様に、線78、80は、線86、88に接続され、このことは第二のモジュール72における要素対102の全てを単一の電圧源にて作動することを許容する。その他の実施例において、モジュール70、72は直列の形態に配置することができる。更に、要素対102は、またモジュール70、72内にて直列の形態に配置することもできる。
【0029】
図6において、TEC内の要素対102は、TEC26の第一のモジュール70及び第二のモジュール72の全体に亙って隔てられ且つ、電気絶縁体104内に充填されている。この実施例において、要素対102は、電気的に直列に接続されたn型半導体と、p型半導体とを有している(半導体は図示せず)。しかし、半導体は、その他の適宜な材料にて置換することが可能である。導体は、要素対102内の半導体を要素対102の2側部にて基板に取り付けられたヒートシンクから電気的に絶縁する基板内に配置される(基板及びヒートシンクは図示せず)。要素対102は、一方のヒートシンクが第一のモジュール70及び第二のモジュール72の内面108に隣接し、その他のヒートシンクが外面106に隣接するよう配置されている。
【0030】
直流電圧をモジュール70、72に印加すると、電流は要素対102内のn型及びp型半導体を通って流れる。電流により、熱は内面108付近のヒートシンクから外面106付近のヒートシンクまで吸引される。この過程を通じて、内面108は冷却され、これと同時に、外面106は加熱される。第一のモジュール70及び第二のモジュール72の内面108を冷却することにより、管腔58を通って流れる流体も冷却することができる。
【0031】
モジュール70、72に印加される電圧を変化させ、これにより要素対102を通って流れる電流を変化させることにより、内面108の冷却程度を調節することが可能である。例えば、電流が増すならば、TEC26の冷却程度を増す一方、このことは管腔58を通って流れる流体の温度を更に降下させる。同様に、要素対102を通って流れる電流を減少させると、TEC26の冷却程度は低下する。
【0032】
可撓性の管28をTEC26の基端側にて軸22の領域に溶接部110によって長手方向端部に取り付けることができる。これと代替的に、可撓性の管28は、TECs26を保持する軸22の全領域に亙ってスリーブ状に軸22に取り付けてもよい。可撓性の管28は、TEC26の長手方向長さに依存してポリマーエンキャプシレーションを有するポリマー又は金属編上げ体にて形成することができる。上記に説明したように、可撓性の管28は、硬いTEC26の間における軸22の領域を補強し、それは、この領域は体内の血管を介してカテーテルの末端を操作し得るよう曲がるからである。冷却部分26が可撓性である実施例において、可撓性の管28は割愛してもよい。
【0033】
図7には、冷却部分26の方向を向いた図6の線7−7に沿ったカテーテル軸22の断面図が示されている。図示した実施例において、軸22は、3つの一次層112、114、118を有している。内層112は注入管腔58を内部に包み込み、また、従来通り、PTFE又はFEPにて出来ている。中間層114は、内層112を包み込み且つ、ステンレス鋼又はタングステンで出来た編上げ金属線から成っている。中間層116を包み込む外層118は、ナイロンのようなポリマーにて出来ている。その他の実施例において、ウレタン又はタンタル線のような、異なる材料を使用してカテーテル軸22の層112、114、118を製造することが可能である。
【0034】
図7にはまた、図6に示した可撓性の管の層28も示されている。この可撓性の管の層28は、冷却部分26の間にて軸の外層118を取り囲む。層112、114、118に対するカテーテルの軸22における冷却部分26の位置を示すため、図7の断面図に破線が加えられている。この実施例において、第一のモジュール70及び第二のモジュール72は、軸の内層112とその外層118との間に配置され、第一のモジュール70及び第二のモジュール72の内面108は注入管腔58を通って流れる流体と熱的に接触している。
【0035】
線82、84、86、88は、層118のカテーテル軸22を通って伸び且つ、線ホルダ116により所要位置に保持されている。更に、熱電対線60及び拡張管腔54は、カテーテル軸22の末端から外端縁122付近の層118を通って基端まで延びている。熱電対線60は、第一のモジュール70と第二のモジュール72との間の空隙91aを通る。同様に、拡張管腔54は空隙91bを通る。
【0036】
図8には、別のカテーテル220の末端部分の長手方向平面における断面図が示されており、該カテーテルは、流体がカテーテル200を通って流れるとき、該流体を冷却すべくジュール−トンプソン効果として知られた物理的過程を使用する。この過程を使用するため、流体は、熱冷却器のチャンバ148内に導入され且つ、気体に相変化することが許容され、このことは、熱冷却器チャンバ148の温度及びチャンバ148と熱的に接触してカテーテルを通って流れる流体の温度を降下させることになる。上述したカテーテル20と同様に、拡張カテーテル(図示せず)のような介入カテーテルと共にカテーテル220を使用し、虚血性組織領域に冷却した流体を提供することができる。
【0037】
カテーテル220は、カテーテル220の円周の周りを延びる熱冷却器チャンバ148と、注入管144と、排気管146とを有している。排気管146は、領域148の中身を除去してチャンバ148内に周囲圧力を維持する。CO2、N2O、N2又はHeのような極めて加圧された流体が注入管144及びオリフィス152を介してチャンバ148に入る。流体が熱冷却器チャンバ148内にて液体から気体に相変化すると、熱の形態によるエネルギが取り巻く領域から吸引され、このことは、熱冷却器チャンバ148及びカテーテル220の注入管腔158を通って流れる流体を冷却することになる。
【0038】
熱冷却器チャンバ148は、例えば、1ないし30cmの長手方向長さ及び約0.5ないし3mmの幅とすることができる。これら寸法は、所望の冷却程度及び熱冷却器チャンバ148内に導入すべき気体の圧力のような因子に依存して増大又は減少させることができる。熱冷却器チャンバ148の壁は非柔軟性であるが、気体をチャンバ148内に導入し且つ、気体を除去することに起因する圧力変化に対応するように可撓性を有する。この実施例において、壁は、PETにて出来ているが、ナイロンのような同様の性質を有する任意の材料にて製造してもよい。更に、熱冷却器チャンバ148は、軸222内の異なる位置に配置し、注入管腔158を通って流れる流体を冷却するようにしてもよい。冷却器チャンバ148は、その外部を身体の熱から絶縁すべくポリマーにて被覆することができる(図示せず)。これと代替的に、CO2の層を熱冷却器チャンバ148を取り巻く別個の外部空所に導入し絶縁効果を提供してもよい(図示せず)。
【0039】
排気管146は、カテーテル軸222を貫通して熱冷却器チャンバ148からカテーテル220の基端(図示せず)まで延びている。注入管144は、またカテーテル軸222を通って熱冷却器チャンバ148からカテーテル220の基端まで延びている。注入管144の末端は、熱冷却器チャンバ148内への流体の流れを制御する1つ又はより多くのオリフィス152を有することができる。その他の実施例において、注入管144は、流体の流れをチャンバ148に向け得るように異なる形状とすることができる。
【0040】
温度センサ164は、熱冷却器チャンバ148付近に配置され且つ、チャンバ148の温度を監視する。図8にはまた、冷却した流体が注入管腔158から出るときのその流体の温度を測定すべくカテーテル末端134付近に配置された温度センサ156も示されている。この実施例において、温度センサ156、164は熱電対である。上述したように、熱電対156、164は、異質な材料の2つの導電線にて出来ており且つ、互いに絶縁されている。導電線を互いに接続して接続部162、166を形成する。接続部162は、軸222の注入管腔158を通って流れる流体と熱的に接触しており、接続部166は、熱冷却器チャンバ148内の膨張する気体と熱的に接触している。その他の実施例において、サーミスタ又はその他の適宜な温度検知機構のような、熱電対以外の温度センサを使用してもよい。
【0041】
図9には、熱冷却器チャンバから離れる方向を見たときの図8の線9−9に沿ったカテーテル軸222の断面図が示されている。図示した実施例において、軸222は、3つの一次層212、214、216を有している。内層212は、注入管腔158を内部に包み込み且つ、従来通り、PTFE又はFEPにて出来ている。中間層214は、内層を包み込み且つ、ステンレス鋼又はタングステンにて出来た編上げ金属線から成っている。外層216は、中間層214を包み込み且つ、ポリマーにて出来ている。その他の実施例において、ウレタン又はタンタル線のような異なる材料を使用してカテーテル軸の層212、214、216を形成することが可能である。
【0042】
熱電対156用の線160、熱電対164用の線168、注入管144、排気管146は、カテーテル軸222を通って層216内のカテーテルの基端(図示せず)まで長手方向に伸びている。この実施例において、熱電対156に取り付けられた線160は、注入管144付近にて層216内に配置されている。同様に、温度センサ164に取り付けられた熱電対線168は、熱電対線160及び注入管144から180゜の位置にて排気管146付近に配置されている。その他の実施例において、熱電対線160、168、注入管144及び排気管146は、カテーテル軸222の異なる層又は図9に示した層216内の異なる位置に配置してもよい。
【0043】
図10には、温度センサ256を保持するカテーテルの末端252付近の拡張カテーテル250の一部分の長手方向平面における断面図が示されている。カテーテル250は、カテーテル20、120又は220のようなガイドカテーテルと共に使用してPTCA法のような介入法を行い、酸素付与した血液の組織領域への流れを減少させ又は完全に遮断阻害した冠状動脈内の病変部を修復することができる。カテーテル250は、ガイドカテーテル内に且つガイドカテーテルを通して挿入し、冠状動脈内の病変部にアクセスすることができる。次に、末端252を病変部を通して配置し、食塩水のような冷却した流体を虚血性組織領域に提供することができる。冷却した流体の供給は、拡張バルーン254が拡張し、病変部が修復され、カテーテル250が冠状動脈から除去される迄、続行することができる。
【0044】
カテーテル末端152付近に配置された温度センサ256は、組織領域に供給するためカテーテルから出る流体の温度を測定する。この実施例において、温度センサ256は熱電対である。上記に説明したように、熱電対256は、カテーテル250の注入管腔258を通って流れる流体と熱的に接触した表面領域を有する接続部260を備えている。流体が所望の温度(例えば、虚血性組織を冷却する場合、20℃)でないならば、その場合、所望に応じて温度を調節することができる。その他の実施例において、サーミスタ又はその他の適宜な温度検知機構のような、熱電対以外の温度センサを使用することが可能である。更に、注入管腔258を通って流れる流体の温度を測定すべく温度センサ256をカテーテル250内の異なる位置に配置してもよい。
【0045】
図11には、従来のガイドカテーテル300及び拡張カテーテル302のような介入カテーテルが互いに使用されて、低温の流体を身体内の箇所に供給するとき、使用可能である色々な外部装置が示されている。図11にはまた、互いに対し及びシステム内の外部装置に対する色々なアダプタ304、306、308の形態も示されている。
【0046】
PTCA法において、例えば、従来のY字形アダプタ306を従来のガイドカテーテル300の基端にてアダプタ304に取り付ける。該Y字形アダプタ306は、ポート310、312を通してガイドカテーテル300の注入管腔に対するアクセス部を提供する。拡張カテーテル302をポート312を通してガイドカテーテル300の注入管腔内に挿入する。次に、拡張カテーテル302をガイドカテーテル300内に且つ、ガイドカテーテル300を通して伸長させ、冠状動脈の血流を減少させた病変部にアクセスすることができる。図示した形態において、冷却した流体をポート310を通してガイドカテーテル300の注入管腔に導入し虚血性組織領域に供給することができる。
【0047】
拡張カテーテル302の基端におけるアダプタ308は、2つのポート314、316を有している。ポート314は拡張カテーテル302にて拡張バルーンに対するアクセス部を提供する。拡張バルーンは、拡張媒体314を提供し且つ、除去することにより、拡張させ且つ、収縮させることができる。別のポート316は拡張カテーテル302の注入内腔に対するアクセス部を提供し、このため、冷却した流体を、例えば、虚血性組織領域のような身体の内部箇所に供給することができる。
【0048】
この実施例において、拡張カテーテル302により供給された冷却した流体は食塩水溶液320である。食塩水溶液320は、酸化防止剤を保持し、又は一酸化窒素、リドカイン、ニトログリセリン、インスリン、アデノシン、アデノシン三リン酸、熱ショックタンパク質、β受容体遮断薬、カルシウムチャネル重合調整剤、カリウムチャネル重合調整剤、又は他の酵素又は新陳代謝重合調整剤のようなその他の脈管剤を保持することができる。炎症反応重合調整剤、膜透過輸送重合調整剤、乳酸濃度重合調整剤、又はその他の物質を含むこともできる。食塩水溶液320は、また、デルタオピオイドペプチド(例えば、D−Ala2−Leu5―エンケファリンDADLE)又は、他の冬眠麻酔誘導トリガー剤を保持することもできる。その他の実施例において、食塩溶液320は、血液、血液代替物又はその双方の混合体にて置換してもよい。更に、拡張カテーテル302を通して虚血性組織領域に提供される流体の型式は、PTCA法の全体に亙って変更することができる。
【0049】
食塩水溶液は、従来のポンプ322により拡張カテーテル302の注入管腔を通して強制的に送り込むことができる。例えば、食塩水溶液320を拡張カテーテル302の狭小な注入管腔を通して強制的に送り込むのに必要な圧力を提供するため定容積形ポンプを使用することができる。その他の実施例において、ポンプ322は、溶液320の注入量を制御すべく拡張可能な圧力カフを備える、食塩水溶液320を保持する、高く上げたバッグにて置換することができる。従来の注入モニタ324は、拡張カテーテル302の注入管腔を通して食塩水溶液320の圧力及び流量を監視する。PTCA法の例において、食塩水溶液320は、10ないし50ml/分の流量にて拡張カテーテル302の注入管腔を通って流れる。流量及び圧力は、異なる用途により必要とされるように増大又は減少させることができる。
【0050】
熱交換器を使用して食塩水溶液320を冷却することができる。次に、温度モニタ328を上述したように温度センサに連結して溶液320が拡張カテーテル302の末端から出るときの該溶液の温度を監視することもできる。温度モニタ328により提供されるフィードバックに基づいて、熱交換器326を調節して溶液320の温度を上昇又は降下させ、組織の損傷を更に減少させることができる。組織の冷却率は、注入温度、注入量の何れか一方又はその双方を調節することにより制御することが可能である。フィルタ330は、溶液320が供給のため拡張カテーテル302の注入管腔内に導入される前に、溶液320をろ過する。
【0051】
ガイドカテーテル300は、冷却した流体を身体の内部箇所に供給することもできる。PTCA法の例において、虚血性組織に供給された流体は、典型的に冷却した血液332である。血液332は、患者から直接採取するか又は外部供給源から得ることができる。PTCA法及びガイドカテーテル300を使用することのできるその他の適用例において、血液332は、上述した薬剤及び改質剤の何れかを保持する血液代替物又は食塩水溶液にて置換することができる。
【0052】
PTCA法の例において、ポンプ334は血液332をガイドカテーテル300の注入管腔を通して強制的に送り込む。例えば、病変部が修復された後、ローラポンプを使用して通常、心臓により提供される圧力にて血液を冠状動脈に提供することができる。その他の適用例において、その他のポンプを使用して注入管腔を通って流れる流体の圧力を必要に応じて上昇又は降下させてもよい。注入モニタ336は、カテーテル300の注入管腔を通って流れる血液の圧力及び流量を監視する。
【0053】
従来の熱交換器338を使用して虚血性領域に提供される血液332を33℃のような所望の温度に冷却することができる。また、ガイドカテーテル302の注入管腔から出る血液332の温度を監視するため温度モニタ340を含めることもできる。上記に説明したように、溶液332の温度を上昇又は降下させて虚血性事象と関係した組織の損傷を最小にし得るよう熱交換器338を調節することができる。更に、組織の冷却は、カテーテル300を通る溶液332の流量を調節することにより、制御することができる。フィルタ342は、血液332が供給のため注入管腔に導入される前に、該血液をろ過する。
【0054】
従来のガイドカテーテル300が上述したようにガイドカテーテル20、120又は220にて置換される実施例において、血液332は、カテーテル内にて冷却することができ、このことは熱交換器338を不要にする。更に、血液がカテーテル軸に沿って小さい穴を通してカテーテル20の注入管腔内に導入される実施例において、血液供給源332、ポンプ334、注入モニタ336及びフィルタ342は不要であろう。かかる実施例にて必要とされるであろう唯一の外部装置は、注入管腔から出る血液の温度を監視すべく温度センサに取り付けられた温度モニタ及びカテーテル軸内の冷却部分の冷却程度を制御する装置である。ガイドカテーテルが密封バルーンを備える実施例において、該密封バルーンを拡張及び収縮させる拡張媒体を提供し且つ、除去すべくカテーテルの基端に別のポートが必要とされよう。
【0055】
更に、ガイドカテーテル300がガイドカテーテル20、120又は220にて置換される実施例において、拡張カテーテル302を通って流れる流体は、ガイドカテーテル20、120又は200により冷却することができる。このような実施例において、熱交換器326は不要である。
【0056】
図12ないし図15には、組織領域366に対する酸素付与した血液の流れを減少させ又は完全に遮断阻害してその組織領域が虚血性となるようにした冠状動脈354の病変部350を修復すべくPTCA法を行う方法が示されている。この方法は、冠状動脈354の病変部350が正常な血流と同一方向、すなわち大動脈356からアクセスされるため、PTCAを行う「アンテグレード法(antegrade method)」と称することができる。
【0057】
図12には、冠状静脈口360内に着座した、ガイドカテーテル300の末端358の開口部を通って伸びる拡張カテーテル302の末端364が示されている。図示した実施例において、ガイドカテーテル300は、ガイドカテーテルの末端358と冠状動脈354の壁との間にシールを提供するよう拡張させた密封バルーン362を有している。ガイドカテーテル300の末端358が冠状静脈口360内に配置されたならば、冠状動脈354が病変部350により遮断阻害されているにも拘らず、冷却した血液332を冠状動脈354に供給することができる。ガイドカテーテル300により提供された冷却した血液は、分枝動脈355を介して虚血性組織領域366(図13に図示)を取り囲む組織領域を冷却することができ、このことは、虚血性組織に冷却効果を提供することを可能にする。病変部350を修復するため、外科医は、拡張カテーテル302の末端364をガイドカテーテル352に沿ってガイドカテーテル300を通して冠状動脈354内に且つ、図13に示すように病変部350の末端側の位置に導く。
【0058】
図13において、拡張カテーテルの末端364は、病変部350の末端側に配置され、カテーテル302は、食塩水溶液320のような冷却した流体を虚血性組織領域366に提供することができる。上述したように、拡張カテーテル302により虚血性組織領域に提供された食塩水溶液320は、任意の数の化学薬剤を保持することができる。更に、食塩水溶液320の中身はこの方法の全体に亙って変化させることができる。例えば、虚血性期間の間、蓄積する有害な遊離基又は代謝生成物を領域から除去するため、最初に第一の溶液を使用して虚血性組織領域を洗浄することができる。最初の洗浄が完了したならば、第二の溶液を提供して冷却過程を続行する。この方法の全体に亙って所望に応じて追加的な溶液を使用することが可能である。
【0059】
拡張カテーテル302が虚血性組織領域366に冷却した流体を提供するとき、外科医は、拡張バルーン368を拡張させ病変部350を修復することができる。病変部350を修復する間、拡張カテーテルは、虚血性組織領域366への冷却した溶液320の供給を続行することができる。病変部350が修復された後、外科医は、バルーン368を収縮させ且つ、拡張カテーテル302を冠状動脈354から除去することができる。ガイドカテーテル300は、図14に示すように、病変部350が修復された後、例えば、20分といったある期間、虚血性組織領域366への冷却した血液332の提供を続行することができる。
【0060】
図15には、ガイドカテーテル300の末端358の開口部を通って延びる二次的に選択可能なカテーテル400の末端が示されている。この実施例において、カテーテル300の末端358は冠状静脈口360から後方に引き出される。冠状静脈口360にてシールを除去することは、矢印で示すように、生理学的血流を回復することを許容する。カテーテル400を使用して虚血性組織領域366のような特定の組織領域内に冷却した血液又は冷却した溶液を注入することができる。
【0061】
図16には、動脈354を通る血流を減少させ又は完全に遮断阻害した病変部350に起因する虚血性組織領域を治療する方法が示されている。図16の方法は、虚血性組織領域は正常な血流と反対方向に向けて冠状静脈378を介してアクセスされるため、虚血性組織領域の逆行冷却方法と称することもできる。
【0062】
従来の密封カテーテル374の末端380は、冠状静脈洞370内に挿入される、従来のガイドカテーテル300の末端358の開口部を通って伸びている。密封カテーテル374の末端380は、冠状静脈378内に配置されて虚血性組織領域366を治療するため冷却した溶液を毛細血管床372に提供する。末端380付近に配置された密封バルーン376を拡張させて密封カテーテル374により提供された冷却した溶液320が冠状静脈378から流れ出て冠状静脈洞370内に入るのを防止することができる。
【0063】
逆行冷却方法を行う間、提供された冷却した溶液は、動脈血液又は酸素を運ぶ血液代替物を保持することができる。これと代替的に、冷却した溶液は、上述した任意の数の化学剤を保持することができる。更に、方法を行う間、冷却した溶液を交換することができる。
【0064】
図16に示した逆行冷却方法は、より局部的な療法を行うよう上述したアンテグレード冷却方法と共に使用して虚血性組織領域366を冷却することができる。例えば、虚血性組織領域366を標的とするため逆行方法を使用することができる一方、取り巻く組織を冷却するためアンテグレード冷却方法を使用することができる。これらの方法は、逐次的な要領にて使用してもよい。例えば、再灌流前に最初に組織を冷却するため逆行方法を使用することができ、また、再灌流時にアンテグレード方法を使用して虚血性組織領域を冷却した溶液にて更に洗浄し、虚血性事象の間、その領域内に蓄積する代謝生成物を除去することができる。
【0065】
多数の実施例について説明した。しかし、色々な形態変更が具体化可能であることが理解されよう。例えば、説明した装置及び方法は、脳、腎臓及び身体のその他の器官のような他の組織を冷却するため使用することができる。従って、特許請求の範囲にはその他の実施例が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】身体の内部箇所に供給するため流体を冷却するカテーテルの斜視図である。
【図2A】図1に示したカテーテルの1つの代替的な実施例を示す図である。
【図2B】図1に示したカテーテルの1つの代替的な実施例を示す図である。
【図3】カテーテルの末端付近のカテーテルの一部分の長手方向平面における断面図である。
【図4】流体がカテーテルを通って流れるとき、流体を冷却するために使用される冷却部分の斜視図である。
【図5】図4に示した冷却部分の側面図である。
【図6】冷却部分を保持するカテーテルの一部分の長手方向平面における断面図である。
【図7】図6に示した線7−7に沿ったカテーテルの断面図である。
【図8】カテーテルの末端付近にあるカテーテルの1つの代替的な実施例における一部分の長手方向平面における断面図である。
【図9】図8に示した線9−9に沿ったカテーテルの断面図である。
【図10】カテーテルの末端付近にある拡張カテーテルの一部分の長手方向平面における断面図である。
【図11】ガイドカテーテル及び拡張カテーテルの末端の接続部を示し、また、経皮的経血管的冠動脈形成術(PTCA)を行うためガイドカテーテル及び拡張カテーテルが共に使用されるときに必要とされる装置を示す図である。
【図12】冠状動脈の病変部に起因する虚血性組織領域を治療すべくPTCA法を行う方法を示す図である。
【図13】冠状動脈の病変部に起因する虚血性組織領域を治療すべくPTCA法を行う方法を示す図である。
【図14】冠状動脈の病変部に起因する虚血性組織領域を治療すべくPTCA法を行う方法を示す図である。
【図15】冠状動脈の病変部に起因する虚血性組織領域を治療すべくPTCA法を行う方法を示す図である。
【図16】冠状動脈の病変部に起因する虚血性組織領域を治療する方法を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却した流体を身体内の箇所に供給することに関する。
【背景技術】
【0002】
酸素付与した血液の冠状動脈を通じての流れは、急性心筋梗塞(AMI)を発症させる、一般に、病変部と称される、動脈の根源的な狭窄化と関係した血栓又は塞栓によって減少し又は完全に遮断阻害することがある。組織に対する損傷が虚血性事象中に続くとき、早期の再灌注は虚血性組織の領域、すなわち、酸素付与した血液が存在しない組織の領域に対する損傷を劇的に減少させることは証拠によって明らかとなっている。このため、例えば、経皮的経血管的冠動脈形成術(PTCA)又は溶解(lytic)療法を用いて冠状血管の遮断阻害を早期に治療することが望まれる。冠状動脈の病変部が修復されたならば、虚血性組織領域に対する正常な血流を回復することができる。
【0003】
酸素のラジカル形成、微小血管の詰まり、炎症性反応、及び代謝作用の乱れを含む多数の因子のため、血流が再確立されたとき、再灌流による損傷が生ずる可能性がある。再灌注する前、組織を冷却させることにより虚血性組織領域に対する再灌流による損傷を減少させることが可能である。組織領域を通常の体温よりも約4゜低い33℃の温度まで僅かに冷却させることは、化学的反応率を減少させ且つ、組織の活性及び関係した代謝機能の必要量を減少させることで可能である、保護効果を提供する。目標冷却温度は33℃であるが、目標組織を28ないし36℃まで冷却することは、同様に、利点を提供することができる。また、血小板の凝結、及び微小血管の詰まりの可能性を減少させる好中球の接着を減少させるといったような、虚血性領域に入る血液を冷却させる利点もある。
【0004】
心臓内の虚血性領域を冷却させることのできる1つの方法は、氷パックを患者の心臓の上に配置することである。別の方法は、心膜に穴を開けるステップと、虚血性組織領域付近の心膜空間内に挿入されたリザーバに対し冷却した流体を提供するステップとを含む。別の冷却方法において、目標領域は、冷却した溶液にて直接、灌注する。例えば、カテーテルの末端の先端に配置された熱伝達要素を有するカテーテルを血管内に挿入して心臓内に且つ、心臓を通って流れる血液を冷却することができる。また、患者の冠状静脈洞内に配置されたカテーテルを通じて低温の血液を心臓に供給することにより虚血性組織領域を冷却することも可能である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、冷却した流体を身体の内部箇所に供給する装置及び方法を特徴とする。1つの形態において、カテーテルは、細長い部材を有し、該細長い部材は、該細長い部材の末端まで貫通して長手方向に伸びる管腔を有する。温度センサは、管腔を通って流れる流体の温度を検知する。
【0006】
1つの実施例において、カテーテルは、細長い部材の末端付近にバルーンを有することができる。バルーンは、拡散バルーン又は密封バルーンとすることができる。温度センサをバルーンの末端側に又はカテーテルの末端付近に配置することができる。該温度センサは、カテーテルの基端から伸び且つ、接続部を形成し得るよう末端にて接続された異なる材料から成る2つの導体を有する熱電対とすることができる。該接続部は、管腔を取り囲む内壁まで伸びて、流体が管腔を通って流れるとき、流体が接続部と熱的に連通するようにすることができる。温度センサは、サーミスタとしてもよい。管腔から出る流体の温度に関するフィードバックを温度センサから受け取るため温度制御装置を設けることができ、また、該温度センサは、温度センサにより提供されるフィードバックに応答して流体の温度を調節することが可能である。
【0007】
別の形態において、本発明は、再灌注する前に、虚血性組織領域を治療する方法を特徴とする。該方法は、虚血性組織領域へのアクセス部を提供する冠状静脈内に、バルーンを有するバルーンカテーテルを挿入するステップを含む。該バルーンは、拡散させて冠状静脈を閉塞させ、また、冷却した流体は、バルーンカテーテルからバルーンの末端まで供給する。
【0008】
該方法は、1つの実施例において、バルーンカテーテルを冠状静脈内に挿入する前に、ガイドカテーテルの末端を冠状静脈洞内に配置するステップと、バルーンカテーテルをガイドカテーテルの末端の開口部に通すステップとを含むことができる。
【0009】
更なる形態において、本発明は、再灌注する前に、虚血性組織領域を治療する方法を特徴とする。該方法は、病変部が動脈を通る血流を妨害する冠状動脈内にカテーテルを挿入するステップを含む。カテーテルの末端を病変部の末端側の位置に配置し、また、冷却した流体はカテーテルの末端から虚血性組織領域に提供される。
【0010】
冷却した流体の提供は、カテーテルを使用して行われる血管形成術を行う間、行うことができる。カテーテルをガイドカテーテルの管腔内に挿入するステップと、カテーテルの末端をガイドカテーテルの末端の開口部に通すステップとにより、カテーテルを冠状動脈内に挿入することができる。
【0011】
実施例は、1つ又はより多くの特徴を含むことが可能である。例えば、冷却した流体は、食塩水、血液又は血液代替物としてもよい。更に、冷却した流体は、D−Ala2−D−Leu5エンケファリンのようなデルタオピオイド配位子を含むことができる。更に、流体は、流体がバルーンカテーテル内の管腔を通って流れる間、ガイドカテーテルにより冷却することができる。該方法は、虚血性組織流域に供給される流体の温度を検知するステップを含むこともできる。
【0012】
本発明の1つ又はより多くの実施の形態に関する詳細は、添付図面及び以下の説明に記載されている。本発明のその他の特徴、目的及び有利な効果は、説明及び図面並びに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
色々な図面における同様の参照符号は同様の要素を示す。
図1において、カテーテル20は、末端34付近にて軸22内に幾つかの冷却部分26を有する細長い管状軸22を備えている。該カテーテル20は、組織領域に対する酸素付与した血液の流れが減少し又は完全に遮断阻害した冠状動脈の病変部を修復するため、介入的(interventional)カテーテル(図示せず)と共に使用することができる。酸素付与した血液が欠如すると、組織領域は虚血性となる。カテーテル20を使用して血液のような冷却した流体を虚血性組織領域に提供することができる。冷却部分26は、管状軸22を通って流れる流体を冷却し、また、冷却した流体はカテーテルの末端34から出る。冷却した流体を虚血性組織領域に供給することは、その領域に対する血液の灌注に伴う損傷を少なくすることになる。
【0014】
管状軸22は、可撓性であり、身体内の血管内に且つ血管を通じて挿入することを許容する。図1に示した実施例において、軸22は、その末端34付近にU字形部分30を有している。この形状は、以下に説明するように、カテーテル20の末端34を大腿部動脈を介して大動脈内に挿入し且つ、冠状静脈口内に配置し、冠状動脈へのアクセス部を提供することを許容する。図1の実施例は、心臓内にて使用し得る形状とされた軸22を有するが、該軸22は、頚動脈、右心房を介して冠状静脈洞、又は大動脈を介して腎動脈内に挿入するといったような、その他の用途に適した他の形状の構造としてもよい。
【0015】
この実施例における冷却部分26は、カテーテルの末端34付近、より具体的には、軸のU字形部分30の末端脚部32に配置することができる。冷却部分26は、円筒状の形状とされ且つ、軸22内に配置され、このため、流体が軸22を通って流れるとき、流体は冷却部分26を通って長手方向に流れる。図1の実施例において、互いに短い距離だけ隔てられた6つの冷却部分26がある。一例として、冷却部分26の各々は、約1ないし10ミリの長さであり、部分26間の隔たりは、ほぼ等距離である。冷却部分26の長さ及び隔たりは、例えば、冷却部分26を保持する軸22の部分に所望の可撓性、及び特定の用途に必要な冷却程度に依存するようにしてもよい。可撓性の管28は、冷却部分26間にて軸22に取り付けられ、末端34を身体の血管を通して操作すべく軸が撓むとき、冷却部分26を保持する軸22の部分を補強する。
【0016】
その他の実施例において、冷却部分26は、カテーテルの軸22に沿った他の箇所に配置することも可能である。例えば、図2Aに示した別の実施例において、カテーテル120の冷却部分26は、カテーテルの末端34から更に離れるが、依然として軸の基端よりも末端34に近い位置に配置される。また、図1の実施例には6つの冷却部分26があるが、例えば、冷却される流体の容積、軸22における冷却部分26の位置、特定の用途に必要な冷却程度に依存してより少ない又はより多くの冷却部分があるようにしてもよい。例えば、図2Aの実施例は、8つの冷却部分26を有する。
【0017】
再度、図1において、軸22のバルーン24を拡張させカテーテルの末端34と、例えば、冠状静脈口との間にシールを提供することができる。末端34が冠状静脈口内に着座したとき、冷却した流体を冠状動脈を介して虚血性組織領域に供給することができる。該シールは、以下に更に説明するように、虚血性組織領域に供給された冷却した流体が冠状動脈から逃げて大動脈に入るのを防止し、また、これと同時に、大動脈内の温まった血液が冠状動脈に入るのを防止する。図1の実施例におけるバルーン24は、拡張したとき、円筒状の外面を有するが、シールを形成すべき箇所の形状に依存して、必要とされる異なる形状をとる構造としてもよい。更に、その他の実施例において、バルーン24は、軸22に沿った異なる位置に配置するか又は割愛してもよい。
【0018】
アダプタ38は、カテーテル20の基端36にて軸22に取り付けられる。該アダプタ38は、軸22内の管腔にアクセスすることを許容し得るよう基端36に長手方向開口部37を有している(管腔は図1に図示せず)。この内部管腔は、軸22の全長を亙ってカテーテルの末端34の別の長手方向開口部まで延びている。この管腔は、以下により詳細に説明するように、冷却した流体を身体内の箇所に供給し又は注入するため使用されるため、注入管腔と称する。アダプタ38はまた、止血アダプタ又はY字形アダプタのような装置を取り付けるため取り付け部分40も有している。アダプタ38はまた、外科医が望むならば、カテーテル20を保持し且つ、カテーテル20にトルクを加える把持部42も有している。別の実施例において、異なるアダプタ38をカテーテル20の基端36に配置してもよい。例えば、カテーテル20は密封バルーン24を有するため、アダプタ38は、以下により詳細に説明するように、カテーテルの基端36からバルーン24まで長手方向に伸びる拡張管腔に対するアクセス部を提供する第二の開口部すなわちポートを有することが可能である。
【0019】
上記に簡単に説明した介入手順において、経皮的経血管的冠動脈形成術(PTCA)を行うため使用される従来の拡張カテーテル(図1に図示せず)のような介入カテーテルに対するガイドカテーテルとしてカテーテル20を使用することができる。具体的には、拡張カテーテルを基端36のガイドカテーテルの基端開口部37を通して上記に説明した内部注入管腔内に挿入することができる。次に、拡張カテーテルを軸22を通して伸ばし拡張カテーテルのバルーンが軸22の末端34から外に伸びるようにしてもよい。従って、拡張バルーンは治療すべき病変部に配置することができる。病変部を治療し且つ、拡張カテーテルをガイドカテーテル20から除去した後、血液のような流体を基端開口部37を通して注入管腔内に導入することができる。この流体は、注入管腔を通り且つ、冷却部分26を通って流れ、流体は該冷却部分にて冷却され、最終的に、虚血性組織領域に供給される。
【0020】
図2Bに示した1つの代替的な実施例において、カテーテルの軸22は、軸22の側部を貫通して注入管腔内に伸びる1つ又は一連の小さい穴44を有することができる。穴44は、冷却部分26の基端側の軸22に沿った任意の箇所に配置することができる。カテーテル20が血管内に配置されたとき、血液は穴44を通して注入管腔内に強制的に送り込まれる。心臓の送出によって血液に加わった圧力により血液は穴44内に強制的に送り込まれ且つ、注入管腔を通ってカテーテル20の末端34に向けて流れ、血液は、該カテーテルの末端にて冷却部分26により冷却され、次に、虚血性組織領域に供給される。
【0021】
図3には、その末端34付近にて図1のカテーテル20の一部分の長手方向平面における断面図が示されている。図3に示すように、密封バルーン24は、軸22の上で且つ軸の全周の周りに配置される。溶接部50がバルーン24の長手方向端部を軸22に対して固定し且つ密封し、これにより軸22とバルーン24との間に密封されたチャンバ52を形成する。拡張管腔54は、軸22を貫通してカテーテルの基端36のアダプタ38(図1に図示)からバルーンチャンバ52まで且つ、バルーンチャンバ52内に伸びている(図3)。拡張媒体(気体又は液体)をチャンバ52内に提供し且つ、除去することにより、バルーンチャンバ52を拡張させ且つ、収縮させることができる。上記に説明したように、バルーン24は、カテーテル軸22と、例えば、冠状静脈口のような血管壁との間にシールを提供する。従って、バルーン24は、ナイロン、ウレタン、シリコーン、ポリオレフィン共重合体又はその他の適宜な材料で出来たものとすることができる。バルーン24の製造材料及び寸法は、用途及びバルーン24が使用される身体部分に依存して異なるものとすることができる。
【0022】
図3には、出る冷却した流体の温度を測定すべくカテーテルの末端34付近に配置された、温度センサ56も示されている。この実施例において、温度センサ56は熱電対である。熱電対56は、互いに絶縁された異質材料から成る2つの導電線60にて出来ている。線60は、カテーテルのアダプタ38(図1に図示)からカテーテルの末端34付近の位置まで軸22を貫通して長手方向に伸びている。この末端の位置において、導電線60は互いに接続されて接続部62を形成する。接続部62は、軸22の内壁64内に伸びる表面領域を有しており、このため、接続部62は、軸22の注入管腔58を通って流れる流体と熱的に連通している。このようにして2つの異質の導体が接続されると、接続部62を亙って起電力(emf)が誘発され、この誘発されたemfの大きさは、接続部の温度の関数として変化する。誘発されたemfは、導電線62の基端(すなわち患者の外部)にて測定することができ、このため、注入管腔58を通って流れる流体の温度を流体がカテ―テルの末端34から出る直前に、決定することが可能である。流体が所望の温度でないならば、次に、以下に説明するように、冷却部分26は、所望の温度を実現し得るよう調節可能である。その他の実施例において、温度センサ56は、サーミスタ又はその他の適宜な温度検知機構とすることができる。更に、温度センサ56は、注入管腔58を通って流れる流体の温度を測定し得るよう軸22の異なる位置に配置できる。
【0023】
その一部分を図3に示した注入管腔58は、カテーテルの基端36(図1)からその末端34まで伸びている。管腔58の直径は用途に依存する。例えば、血液が管腔58を通して注入されるならば、管腔58の直径は、血液が管腔58を通って流れるときに発生されたせん断力により所望の率にて注入された血液細胞が破壊されないよう、十分大きくする必要がある。各種の既知のガイドカテーテルの管腔の直径は、この必要条件に合うのに十分に大きい(例えば、1.93mm(0.076インチ)ないし2.79mm(0.110インチ))。更に、拡張カテーテルが管腔58内にあるとき、同時に、血液を管腔58を通じて注入しようとするならば(例えば、冷却した血液がPCTA手順の間に注入されるならば)、カテーテルの管腔58の直径は、場合によっては、従来のガイドカテーテルの管腔の直径よりも大きくする必要があろう。他方、管腔58の最大直径は、カテーテル20を挿入すべき体腔の直径及びカテーテル20を患者の身体に挿入するときに通る切開部の寸法により制限される。
【0024】
図4ないし図6には、図1及び図2に示したカテーテルにて使用可能である冷却部分26の一例が示されている。この実施例において、冷却部分26は熱電気的冷却器(TEC)である。TEC26は、ペルチエ効果として知られた熱エネルギ過程を使用することにより、カテーテル20を通って流れる流体を冷却する。この過程を使用するため、以下に詳細に説明するように、低電圧の直流電源を熱電気モジュールに取り付けて熱をモジュールを通じて一方の側部から反対側部に除去することができる。図4はTEC26の斜視図である。図5は、カテーテル20を通って流れる流体を冷却する熱電気半導体要素対102の簡略図を提供するTEC26の側面図である。図6には、図4及び図5に示したTEC26を保持するカテーテル20の一部分の長手方向平面における断面図が示されている。
【0025】
図4において、TEC26は、第一のモジュール70と、第二のモジュール72とをそれぞれ有している。第一のモジュール70及び第二のモジュール72が互いに配置されたとき、これらのモジュールは、流体が通って流れることのできる管腔58を有する円筒体を形成する。この円筒形状の構造体を形成するため、第一のモジュール70及び第二のモジュール72の双方は、半円筒体の形状をしており、ここで、円筒体は等寸法の2つの部分に長手方向に分割されている。第一のモジュール70及び第二のモジュール72の長手方向端縁は小さい空隙91a、91bにより分離されている。この実施例におけるTEC26は、例えば1ないし10mmの長さとすることができる。これと代替的に、TEC26は、カテーテル20にて使用するのに適した狭小な平坦なモジュール又はその他の形状体から成るようにしてもよい。
【0026】
TEC26の第一のモジュール70は、第一のモジュールの基端90にて線74、76に接続され且つ、第一のモジュールの末端92にて線82、84に接続されている。この実施例において、線74、76は、カテーテルの軸を貫通してカテーテルの基端に向けて長手方向に伸びている。線74、76は、図6に示したTEC26の基端側の位置に配置されたカテーテルにおける別のTEC26の第一のモジュール70に接続することができる(接続部は図6に図示せず)。TEC26が軸における最基端側の冷却部分であるならば、線74、76は、軸を貫通してカテーテルの基端まで長手方向に伸びて患者の外部からアクセスし得るようにする。線82、84は、カテーテルの末端に向けて軸を貫通して長手方向に伸び且つ、図6に示した冷却部分の末端側に配置された別のTEC26における第一のモジュール70に接続することができる。
【0027】
TEC26の第二のモジュール72は、同様に、第一のモジュールの基端90にて線78、80に接続し且つ、第一のモジュールの末端92にて線86、88に接続される。線78、80、86、88は、軸を貫通して伸び且つ、第一のモジュール70について説明したのと同一の要領にてカテーテルにおける色々なTEC26の第二のモジュール72に接続される。
【0028】
図5において、線74、76、82、84は、接続点94にて第一のモジュール70に接続されている。同様に、線78、80、86、88は、接続点96にて第二のモジュール72に接続されている。第一のモジュール70及び第二のモジュール72は、多数の熱電気半導体要素対102を有している。第一のモジュール70における要素対102は、直流電圧を線74、76に印加することにより作動される。同様に、第二のモジュール72における要素対102は、直流電圧を線78、80に印加することにより作動される。第一のモジュール70及び第二のモジュール72内の要素対102は並列の形態に配置されている。このように、モジュール70、72の各々における要素対102の全てに対し同一の直流電圧を印加できる。線74、76は第一のモジュール70を介して線82、84に接続されている。この接続は、第一のモジュール70に印加された直流電圧をカテーテル20における第一のモジュール70の全てに印加することを許容する。その結果、第一のモジュールにおける要素対102の全ては、単一の電圧源にて制御可能である。同様に、線78、80は、線86、88に接続され、このことは第二のモジュール72における要素対102の全てを単一の電圧源にて作動することを許容する。その他の実施例において、モジュール70、72は直列の形態に配置することができる。更に、要素対102は、またモジュール70、72内にて直列の形態に配置することもできる。
【0029】
図6において、TEC内の要素対102は、TEC26の第一のモジュール70及び第二のモジュール72の全体に亙って隔てられ且つ、電気絶縁体104内に充填されている。この実施例において、要素対102は、電気的に直列に接続されたn型半導体と、p型半導体とを有している(半導体は図示せず)。しかし、半導体は、その他の適宜な材料にて置換することが可能である。導体は、要素対102内の半導体を要素対102の2側部にて基板に取り付けられたヒートシンクから電気的に絶縁する基板内に配置される(基板及びヒートシンクは図示せず)。要素対102は、一方のヒートシンクが第一のモジュール70及び第二のモジュール72の内面108に隣接し、その他のヒートシンクが外面106に隣接するよう配置されている。
【0030】
直流電圧をモジュール70、72に印加すると、電流は要素対102内のn型及びp型半導体を通って流れる。電流により、熱は内面108付近のヒートシンクから外面106付近のヒートシンクまで吸引される。この過程を通じて、内面108は冷却され、これと同時に、外面106は加熱される。第一のモジュール70及び第二のモジュール72の内面108を冷却することにより、管腔58を通って流れる流体も冷却することができる。
【0031】
モジュール70、72に印加される電圧を変化させ、これにより要素対102を通って流れる電流を変化させることにより、内面108の冷却程度を調節することが可能である。例えば、電流が増すならば、TEC26の冷却程度を増す一方、このことは管腔58を通って流れる流体の温度を更に降下させる。同様に、要素対102を通って流れる電流を減少させると、TEC26の冷却程度は低下する。
【0032】
可撓性の管28をTEC26の基端側にて軸22の領域に溶接部110によって長手方向端部に取り付けることができる。これと代替的に、可撓性の管28は、TECs26を保持する軸22の全領域に亙ってスリーブ状に軸22に取り付けてもよい。可撓性の管28は、TEC26の長手方向長さに依存してポリマーエンキャプシレーションを有するポリマー又は金属編上げ体にて形成することができる。上記に説明したように、可撓性の管28は、硬いTEC26の間における軸22の領域を補強し、それは、この領域は体内の血管を介してカテーテルの末端を操作し得るよう曲がるからである。冷却部分26が可撓性である実施例において、可撓性の管28は割愛してもよい。
【0033】
図7には、冷却部分26の方向を向いた図6の線7−7に沿ったカテーテル軸22の断面図が示されている。図示した実施例において、軸22は、3つの一次層112、114、118を有している。内層112は注入管腔58を内部に包み込み、また、従来通り、PTFE又はFEPにて出来ている。中間層114は、内層112を包み込み且つ、ステンレス鋼又はタングステンで出来た編上げ金属線から成っている。中間層116を包み込む外層118は、ナイロンのようなポリマーにて出来ている。その他の実施例において、ウレタン又はタンタル線のような、異なる材料を使用してカテーテル軸22の層112、114、118を製造することが可能である。
【0034】
図7にはまた、図6に示した可撓性の管の層28も示されている。この可撓性の管の層28は、冷却部分26の間にて軸の外層118を取り囲む。層112、114、118に対するカテーテルの軸22における冷却部分26の位置を示すため、図7の断面図に破線が加えられている。この実施例において、第一のモジュール70及び第二のモジュール72は、軸の内層112とその外層118との間に配置され、第一のモジュール70及び第二のモジュール72の内面108は注入管腔58を通って流れる流体と熱的に接触している。
【0035】
線82、84、86、88は、層118のカテーテル軸22を通って伸び且つ、線ホルダ116により所要位置に保持されている。更に、熱電対線60及び拡張管腔54は、カテーテル軸22の末端から外端縁122付近の層118を通って基端まで延びている。熱電対線60は、第一のモジュール70と第二のモジュール72との間の空隙91aを通る。同様に、拡張管腔54は空隙91bを通る。
【0036】
図8には、別のカテーテル220の末端部分の長手方向平面における断面図が示されており、該カテーテルは、流体がカテーテル200を通って流れるとき、該流体を冷却すべくジュール−トンプソン効果として知られた物理的過程を使用する。この過程を使用するため、流体は、熱冷却器のチャンバ148内に導入され且つ、気体に相変化することが許容され、このことは、熱冷却器チャンバ148の温度及びチャンバ148と熱的に接触してカテーテルを通って流れる流体の温度を降下させることになる。上述したカテーテル20と同様に、拡張カテーテル(図示せず)のような介入カテーテルと共にカテーテル220を使用し、虚血性組織領域に冷却した流体を提供することができる。
【0037】
カテーテル220は、カテーテル220の円周の周りを延びる熱冷却器チャンバ148と、注入管144と、排気管146とを有している。排気管146は、領域148の中身を除去してチャンバ148内に周囲圧力を維持する。CO2、N2O、N2又はHeのような極めて加圧された流体が注入管144及びオリフィス152を介してチャンバ148に入る。流体が熱冷却器チャンバ148内にて液体から気体に相変化すると、熱の形態によるエネルギが取り巻く領域から吸引され、このことは、熱冷却器チャンバ148及びカテーテル220の注入管腔158を通って流れる流体を冷却することになる。
【0038】
熱冷却器チャンバ148は、例えば、1ないし30cmの長手方向長さ及び約0.5ないし3mmの幅とすることができる。これら寸法は、所望の冷却程度及び熱冷却器チャンバ148内に導入すべき気体の圧力のような因子に依存して増大又は減少させることができる。熱冷却器チャンバ148の壁は非柔軟性であるが、気体をチャンバ148内に導入し且つ、気体を除去することに起因する圧力変化に対応するように可撓性を有する。この実施例において、壁は、PETにて出来ているが、ナイロンのような同様の性質を有する任意の材料にて製造してもよい。更に、熱冷却器チャンバ148は、軸222内の異なる位置に配置し、注入管腔158を通って流れる流体を冷却するようにしてもよい。冷却器チャンバ148は、その外部を身体の熱から絶縁すべくポリマーにて被覆することができる(図示せず)。これと代替的に、CO2の層を熱冷却器チャンバ148を取り巻く別個の外部空所に導入し絶縁効果を提供してもよい(図示せず)。
【0039】
排気管146は、カテーテル軸222を貫通して熱冷却器チャンバ148からカテーテル220の基端(図示せず)まで延びている。注入管144は、またカテーテル軸222を通って熱冷却器チャンバ148からカテーテル220の基端まで延びている。注入管144の末端は、熱冷却器チャンバ148内への流体の流れを制御する1つ又はより多くのオリフィス152を有することができる。その他の実施例において、注入管144は、流体の流れをチャンバ148に向け得るように異なる形状とすることができる。
【0040】
温度センサ164は、熱冷却器チャンバ148付近に配置され且つ、チャンバ148の温度を監視する。図8にはまた、冷却した流体が注入管腔158から出るときのその流体の温度を測定すべくカテーテル末端134付近に配置された温度センサ156も示されている。この実施例において、温度センサ156、164は熱電対である。上述したように、熱電対156、164は、異質な材料の2つの導電線にて出来ており且つ、互いに絶縁されている。導電線を互いに接続して接続部162、166を形成する。接続部162は、軸222の注入管腔158を通って流れる流体と熱的に接触しており、接続部166は、熱冷却器チャンバ148内の膨張する気体と熱的に接触している。その他の実施例において、サーミスタ又はその他の適宜な温度検知機構のような、熱電対以外の温度センサを使用してもよい。
【0041】
図9には、熱冷却器チャンバから離れる方向を見たときの図8の線9−9に沿ったカテーテル軸222の断面図が示されている。図示した実施例において、軸222は、3つの一次層212、214、216を有している。内層212は、注入管腔158を内部に包み込み且つ、従来通り、PTFE又はFEPにて出来ている。中間層214は、内層を包み込み且つ、ステンレス鋼又はタングステンにて出来た編上げ金属線から成っている。外層216は、中間層214を包み込み且つ、ポリマーにて出来ている。その他の実施例において、ウレタン又はタンタル線のような異なる材料を使用してカテーテル軸の層212、214、216を形成することが可能である。
【0042】
熱電対156用の線160、熱電対164用の線168、注入管144、排気管146は、カテーテル軸222を通って層216内のカテーテルの基端(図示せず)まで長手方向に伸びている。この実施例において、熱電対156に取り付けられた線160は、注入管144付近にて層216内に配置されている。同様に、温度センサ164に取り付けられた熱電対線168は、熱電対線160及び注入管144から180゜の位置にて排気管146付近に配置されている。その他の実施例において、熱電対線160、168、注入管144及び排気管146は、カテーテル軸222の異なる層又は図9に示した層216内の異なる位置に配置してもよい。
【0043】
図10には、温度センサ256を保持するカテーテルの末端252付近の拡張カテーテル250の一部分の長手方向平面における断面図が示されている。カテーテル250は、カテーテル20、120又は220のようなガイドカテーテルと共に使用してPTCA法のような介入法を行い、酸素付与した血液の組織領域への流れを減少させ又は完全に遮断阻害した冠状動脈内の病変部を修復することができる。カテーテル250は、ガイドカテーテル内に且つガイドカテーテルを通して挿入し、冠状動脈内の病変部にアクセスすることができる。次に、末端252を病変部を通して配置し、食塩水のような冷却した流体を虚血性組織領域に提供することができる。冷却した流体の供給は、拡張バルーン254が拡張し、病変部が修復され、カテーテル250が冠状動脈から除去される迄、続行することができる。
【0044】
カテーテル末端152付近に配置された温度センサ256は、組織領域に供給するためカテーテルから出る流体の温度を測定する。この実施例において、温度センサ256は熱電対である。上記に説明したように、熱電対256は、カテーテル250の注入管腔258を通って流れる流体と熱的に接触した表面領域を有する接続部260を備えている。流体が所望の温度(例えば、虚血性組織を冷却する場合、20℃)でないならば、その場合、所望に応じて温度を調節することができる。その他の実施例において、サーミスタ又はその他の適宜な温度検知機構のような、熱電対以外の温度センサを使用することが可能である。更に、注入管腔258を通って流れる流体の温度を測定すべく温度センサ256をカテーテル250内の異なる位置に配置してもよい。
【0045】
図11には、従来のガイドカテーテル300及び拡張カテーテル302のような介入カテーテルが互いに使用されて、低温の流体を身体内の箇所に供給するとき、使用可能である色々な外部装置が示されている。図11にはまた、互いに対し及びシステム内の外部装置に対する色々なアダプタ304、306、308の形態も示されている。
【0046】
PTCA法において、例えば、従来のY字形アダプタ306を従来のガイドカテーテル300の基端にてアダプタ304に取り付ける。該Y字形アダプタ306は、ポート310、312を通してガイドカテーテル300の注入管腔に対するアクセス部を提供する。拡張カテーテル302をポート312を通してガイドカテーテル300の注入管腔内に挿入する。次に、拡張カテーテル302をガイドカテーテル300内に且つ、ガイドカテーテル300を通して伸長させ、冠状動脈の血流を減少させた病変部にアクセスすることができる。図示した形態において、冷却した流体をポート310を通してガイドカテーテル300の注入管腔に導入し虚血性組織領域に供給することができる。
【0047】
拡張カテーテル302の基端におけるアダプタ308は、2つのポート314、316を有している。ポート314は拡張カテーテル302にて拡張バルーンに対するアクセス部を提供する。拡張バルーンは、拡張媒体314を提供し且つ、除去することにより、拡張させ且つ、収縮させることができる。別のポート316は拡張カテーテル302の注入内腔に対するアクセス部を提供し、このため、冷却した流体を、例えば、虚血性組織領域のような身体の内部箇所に供給することができる。
【0048】
この実施例において、拡張カテーテル302により供給された冷却した流体は食塩水溶液320である。食塩水溶液320は、酸化防止剤を保持し、又は一酸化窒素、リドカイン、ニトログリセリン、インスリン、アデノシン、アデノシン三リン酸、熱ショックタンパク質、β受容体遮断薬、カルシウムチャネル重合調整剤、カリウムチャネル重合調整剤、又は他の酵素又は新陳代謝重合調整剤のようなその他の脈管剤を保持することができる。炎症反応重合調整剤、膜透過輸送重合調整剤、乳酸濃度重合調整剤、又はその他の物質を含むこともできる。食塩水溶液320は、また、デルタオピオイドペプチド(例えば、D−Ala2−Leu5―エンケファリンDADLE)又は、他の冬眠麻酔誘導トリガー剤を保持することもできる。その他の実施例において、食塩溶液320は、血液、血液代替物又はその双方の混合体にて置換してもよい。更に、拡張カテーテル302を通して虚血性組織領域に提供される流体の型式は、PTCA法の全体に亙って変更することができる。
【0049】
食塩水溶液は、従来のポンプ322により拡張カテーテル302の注入管腔を通して強制的に送り込むことができる。例えば、食塩水溶液320を拡張カテーテル302の狭小な注入管腔を通して強制的に送り込むのに必要な圧力を提供するため定容積形ポンプを使用することができる。その他の実施例において、ポンプ322は、溶液320の注入量を制御すべく拡張可能な圧力カフを備える、食塩水溶液320を保持する、高く上げたバッグにて置換することができる。従来の注入モニタ324は、拡張カテーテル302の注入管腔を通して食塩水溶液320の圧力及び流量を監視する。PTCA法の例において、食塩水溶液320は、10ないし50ml/分の流量にて拡張カテーテル302の注入管腔を通って流れる。流量及び圧力は、異なる用途により必要とされるように増大又は減少させることができる。
【0050】
熱交換器を使用して食塩水溶液320を冷却することができる。次に、温度モニタ328を上述したように温度センサに連結して溶液320が拡張カテーテル302の末端から出るときの該溶液の温度を監視することもできる。温度モニタ328により提供されるフィードバックに基づいて、熱交換器326を調節して溶液320の温度を上昇又は降下させ、組織の損傷を更に減少させることができる。組織の冷却率は、注入温度、注入量の何れか一方又はその双方を調節することにより制御することが可能である。フィルタ330は、溶液320が供給のため拡張カテーテル302の注入管腔内に導入される前に、溶液320をろ過する。
【0051】
ガイドカテーテル300は、冷却した流体を身体の内部箇所に供給することもできる。PTCA法の例において、虚血性組織に供給された流体は、典型的に冷却した血液332である。血液332は、患者から直接採取するか又は外部供給源から得ることができる。PTCA法及びガイドカテーテル300を使用することのできるその他の適用例において、血液332は、上述した薬剤及び改質剤の何れかを保持する血液代替物又は食塩水溶液にて置換することができる。
【0052】
PTCA法の例において、ポンプ334は血液332をガイドカテーテル300の注入管腔を通して強制的に送り込む。例えば、病変部が修復された後、ローラポンプを使用して通常、心臓により提供される圧力にて血液を冠状動脈に提供することができる。その他の適用例において、その他のポンプを使用して注入管腔を通って流れる流体の圧力を必要に応じて上昇又は降下させてもよい。注入モニタ336は、カテーテル300の注入管腔を通って流れる血液の圧力及び流量を監視する。
【0053】
従来の熱交換器338を使用して虚血性領域に提供される血液332を33℃のような所望の温度に冷却することができる。また、ガイドカテーテル302の注入管腔から出る血液332の温度を監視するため温度モニタ340を含めることもできる。上記に説明したように、溶液332の温度を上昇又は降下させて虚血性事象と関係した組織の損傷を最小にし得るよう熱交換器338を調節することができる。更に、組織の冷却は、カテーテル300を通る溶液332の流量を調節することにより、制御することができる。フィルタ342は、血液332が供給のため注入管腔に導入される前に、該血液をろ過する。
【0054】
従来のガイドカテーテル300が上述したようにガイドカテーテル20、120又は220にて置換される実施例において、血液332は、カテーテル内にて冷却することができ、このことは熱交換器338を不要にする。更に、血液がカテーテル軸に沿って小さい穴を通してカテーテル20の注入管腔内に導入される実施例において、血液供給源332、ポンプ334、注入モニタ336及びフィルタ342は不要であろう。かかる実施例にて必要とされるであろう唯一の外部装置は、注入管腔から出る血液の温度を監視すべく温度センサに取り付けられた温度モニタ及びカテーテル軸内の冷却部分の冷却程度を制御する装置である。ガイドカテーテルが密封バルーンを備える実施例において、該密封バルーンを拡張及び収縮させる拡張媒体を提供し且つ、除去すべくカテーテルの基端に別のポートが必要とされよう。
【0055】
更に、ガイドカテーテル300がガイドカテーテル20、120又は220にて置換される実施例において、拡張カテーテル302を通って流れる流体は、ガイドカテーテル20、120又は200により冷却することができる。このような実施例において、熱交換器326は不要である。
【0056】
図12ないし図15には、組織領域366に対する酸素付与した血液の流れを減少させ又は完全に遮断阻害してその組織領域が虚血性となるようにした冠状動脈354の病変部350を修復すべくPTCA法を行う方法が示されている。この方法は、冠状動脈354の病変部350が正常な血流と同一方向、すなわち大動脈356からアクセスされるため、PTCAを行う「アンテグレード法(antegrade method)」と称することができる。
【0057】
図12には、冠状静脈口360内に着座した、ガイドカテーテル300の末端358の開口部を通って伸びる拡張カテーテル302の末端364が示されている。図示した実施例において、ガイドカテーテル300は、ガイドカテーテルの末端358と冠状動脈354の壁との間にシールを提供するよう拡張させた密封バルーン362を有している。ガイドカテーテル300の末端358が冠状静脈口360内に配置されたならば、冠状動脈354が病変部350により遮断阻害されているにも拘らず、冷却した血液332を冠状動脈354に供給することができる。ガイドカテーテル300により提供された冷却した血液は、分枝動脈355を介して虚血性組織領域366(図13に図示)を取り囲む組織領域を冷却することができ、このことは、虚血性組織に冷却効果を提供することを可能にする。病変部350を修復するため、外科医は、拡張カテーテル302の末端364をガイドカテーテル352に沿ってガイドカテーテル300を通して冠状動脈354内に且つ、図13に示すように病変部350の末端側の位置に導く。
【0058】
図13において、拡張カテーテルの末端364は、病変部350の末端側に配置され、カテーテル302は、食塩水溶液320のような冷却した流体を虚血性組織領域366に提供することができる。上述したように、拡張カテーテル302により虚血性組織領域に提供された食塩水溶液320は、任意の数の化学薬剤を保持することができる。更に、食塩水溶液320の中身はこの方法の全体に亙って変化させることができる。例えば、虚血性期間の間、蓄積する有害な遊離基又は代謝生成物を領域から除去するため、最初に第一の溶液を使用して虚血性組織領域を洗浄することができる。最初の洗浄が完了したならば、第二の溶液を提供して冷却過程を続行する。この方法の全体に亙って所望に応じて追加的な溶液を使用することが可能である。
【0059】
拡張カテーテル302が虚血性組織領域366に冷却した流体を提供するとき、外科医は、拡張バルーン368を拡張させ病変部350を修復することができる。病変部350を修復する間、拡張カテーテルは、虚血性組織領域366への冷却した溶液320の供給を続行することができる。病変部350が修復された後、外科医は、バルーン368を収縮させ且つ、拡張カテーテル302を冠状動脈354から除去することができる。ガイドカテーテル300は、図14に示すように、病変部350が修復された後、例えば、20分といったある期間、虚血性組織領域366への冷却した血液332の提供を続行することができる。
【0060】
図15には、ガイドカテーテル300の末端358の開口部を通って延びる二次的に選択可能なカテーテル400の末端が示されている。この実施例において、カテーテル300の末端358は冠状静脈口360から後方に引き出される。冠状静脈口360にてシールを除去することは、矢印で示すように、生理学的血流を回復することを許容する。カテーテル400を使用して虚血性組織領域366のような特定の組織領域内に冷却した血液又は冷却した溶液を注入することができる。
【0061】
図16には、動脈354を通る血流を減少させ又は完全に遮断阻害した病変部350に起因する虚血性組織領域を治療する方法が示されている。図16の方法は、虚血性組織領域は正常な血流と反対方向に向けて冠状静脈378を介してアクセスされるため、虚血性組織領域の逆行冷却方法と称することもできる。
【0062】
従来の密封カテーテル374の末端380は、冠状静脈洞370内に挿入される、従来のガイドカテーテル300の末端358の開口部を通って伸びている。密封カテーテル374の末端380は、冠状静脈378内に配置されて虚血性組織領域366を治療するため冷却した溶液を毛細血管床372に提供する。末端380付近に配置された密封バルーン376を拡張させて密封カテーテル374により提供された冷却した溶液320が冠状静脈378から流れ出て冠状静脈洞370内に入るのを防止することができる。
【0063】
逆行冷却方法を行う間、提供された冷却した溶液は、動脈血液又は酸素を運ぶ血液代替物を保持することができる。これと代替的に、冷却した溶液は、上述した任意の数の化学剤を保持することができる。更に、方法を行う間、冷却した溶液を交換することができる。
【0064】
図16に示した逆行冷却方法は、より局部的な療法を行うよう上述したアンテグレード冷却方法と共に使用して虚血性組織領域366を冷却することができる。例えば、虚血性組織領域366を標的とするため逆行方法を使用することができる一方、取り巻く組織を冷却するためアンテグレード冷却方法を使用することができる。これらの方法は、逐次的な要領にて使用してもよい。例えば、再灌流前に最初に組織を冷却するため逆行方法を使用することができ、また、再灌流時にアンテグレード方法を使用して虚血性組織領域を冷却した溶液にて更に洗浄し、虚血性事象の間、その領域内に蓄積する代謝生成物を除去することができる。
【0065】
多数の実施例について説明した。しかし、色々な形態変更が具体化可能であることが理解されよう。例えば、説明した装置及び方法は、脳、腎臓及び身体のその他の器官のような他の組織を冷却するため使用することができる。従って、特許請求の範囲にはその他の実施例が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】身体の内部箇所に供給するため流体を冷却するカテーテルの斜視図である。
【図2A】図1に示したカテーテルの1つの代替的な実施例を示す図である。
【図2B】図1に示したカテーテルの1つの代替的な実施例を示す図である。
【図3】カテーテルの末端付近のカテーテルの一部分の長手方向平面における断面図である。
【図4】流体がカテーテルを通って流れるとき、流体を冷却するために使用される冷却部分の斜視図である。
【図5】図4に示した冷却部分の側面図である。
【図6】冷却部分を保持するカテーテルの一部分の長手方向平面における断面図である。
【図7】図6に示した線7−7に沿ったカテーテルの断面図である。
【図8】カテーテルの末端付近にあるカテーテルの1つの代替的な実施例における一部分の長手方向平面における断面図である。
【図9】図8に示した線9−9に沿ったカテーテルの断面図である。
【図10】カテーテルの末端付近にある拡張カテーテルの一部分の長手方向平面における断面図である。
【図11】ガイドカテーテル及び拡張カテーテルの末端の接続部を示し、また、経皮的経血管的冠動脈形成術(PTCA)を行うためガイドカテーテル及び拡張カテーテルが共に使用されるときに必要とされる装置を示す図である。
【図12】冠状動脈の病変部に起因する虚血性組織領域を治療すべくPTCA法を行う方法を示す図である。
【図13】冠状動脈の病変部に起因する虚血性組織領域を治療すべくPTCA法を行う方法を示す図である。
【図14】冠状動脈の病変部に起因する虚血性組織領域を治療すべくPTCA法を行う方法を示す図である。
【図15】冠状動脈の病変部に起因する虚血性組織領域を治療すべくPTCA法を行う方法を示す図である。
【図16】冠状動脈の病変部に起因する虚血性組織領域を治療する方法を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルにおいて、
細長い部材であって、貫通して該細長い部材の末端まで長手方向に伸びる管腔を有する前記細長い部材と、
末端付近にて管腔を通って流れる流体の温度を検知する温度センサとを備える、カテーテル。
【請求項2】
請求項1のカテーテルにおいて、温度センサは、細長い部材の末端部分に配置される、カテーテル。
【請求項3】
請求項1のカテーテルにおいて、細長い部材の末端部分に配置されたバルーンを更に備える、カテーテル。
【請求項4】
請求項3のカテーテルにおいて、温度センサは、バルーンの末端側に配置される、カテーテル。
【請求項5】
請求項3のカテーテルにおいて、バルーンは拡張バルーンである、カテーテル。
【請求項6】
請求項3のカテーテルにおいて、バルーンは密封バルーンである、カテーテル。
【請求項7】
請求項1のカテーテルにおいて、温度センサは熱電対を備える、カテーテル。
【請求項8】
請求項7のカテーテルにおいて、熱電対は、カテーテルの基端から伸び且つ、末端にて接続されて接続部を形成する、異なる材料で出来た2つの導体を備える、カテーテル。
【請求項9】
請求項8のカテーテルにおいて、接続部は、管腔を取り囲む側壁まで伸びて、流体は、該流体が管腔を通って流れるとき接続部と熱的に連通する、カテーテル。
【請求項10】
請求項1のカテーテルにおいて、温度センサはサーミスタを備える、カテーテル。
【請求項11】
請求項1のカテーテルにおいて、管腔から出る流体の温度に関するフィードバックを温度センサから受け取る温度制御装置を更に備える、カテーテル。
【請求項12】
請求項11のカテーテルにおいて、温度制御装置は、温度センサにより提供されたフィードバックに応答して流体の温度を調節し得るようにされた、カテーテル。
【請求項13】
再灌注前に、虚血性組織領域を治療する方法において、
バルーンを備えるバルーンカテーテルを冠状静脈内に挿入し虚血性組織領域へのアクセス部を提供するステップと、
バルーンを拡張させて冠状静脈を閉塞するステップと、
冷却した流体をバルーンカテーテルからバルーンの末端方向に供給するステップとを備える、再灌注前に、虚血性組織領域を治療する方法。
【請求項14】
請求項13の方法において、虚血性組織領域に供給された流体の温度を検知するステップを更に備える、方法。
【請求項15】
請求項14の方法において、検知するステップは、バルーンカテーテルの末端部分にて行われる、方法。
【請求項16】
請求項13の方法において、バルーンカテーテルを冠状静脈内に挿入する前に、ガイドカテーテルの末端を冠状静脈洞内に配置するステップを更に備える、方法。
【請求項17】
請求項16の方法において、バルーンカテーテルは、バルーンカテーテルをガイドカテーテルの管腔内に挿入するステップと、バルーンカテーテルをガイドカテーテルの末端の開口部に通すステップとにより冠状静脈内に挿入される、方法。
【請求項18】
請求項17の方法において、流体がバルーンカテーテルの管腔を通って流れる間、ガイドカテーテルにより流体を冷却するステップを更に備える、方法。
【請求項19】
請求項13の方法において、冷却した流体は食塩水を備える、方法。
【請求項20】
請求項13の方法において、冷却した流体は血液を備える、方法。
【請求項21】
請求項13の方法において、冷却した流体はバルーン代替物を備える、方法。
【請求項22】
請求項13の方法において、冷却した流体はデルタオピオイド配位子を備える、方法。
【請求項23】
請求項23の方法において、デルタオピオイド配位子は、D−Ala2−D−Leu5エンケファリンである、方法。
【請求項24】
再灌注前に、虚血性組織領域を治療する方法において、
病変部が動脈を通る血流を妨害する箇所である冠状動脈内にカテーテルを挿入するステップと、
カテーテルの末端を病変部の末端側の位置に配置するステップと、
冷却した流体をカテーテル末端から虚血性組織領域に提供するステップとを備える、再灌注前に、虚血性組織領域を治療する方法。
【請求項25】
請求項24の方法において、虚血性組織領域に提供された流体の温度を検知するステップを更に備える、方法。
【請求項26】
請求項24の方法において、冷却した流体を提供するステップは、カテーテルを使用して行われる血管形成法の間、行われる、方法。
【請求項27】
請求項24の方法において、カテーテルをガイドカテーテルの管腔内に挿入するステップと、カテーテルの末端をガイドカテーテルの末端における開口部を通すステップとにより、カテーテルは、冠状動脈内に挿入される、方法。
【請求項28】
請求項27の方法において、流体がカテーテルの管腔を通って流れる間、流体をガイドカテーテルにて冷却するステップを更に備える、方法。
【請求項29】
請求項24の方法において、冷却した流体は食塩水を備える、方法。
【請求項30】
請求項24の方法において、冷却した流体は血液を備える、方法。
【請求項31】
請求項24の方法において、冷却した流体は血液代替物を備える、方法。
【請求項32】
請求項24の方法において、冷却した流体はデルタオピオイド配位子を備える、方法。
【請求項33】
請求項32の方法において、デルタオピオイド配位子は、D−Ala2−D−Leu5エンケファリンである、方法。
【請求項1】
カテーテルにおいて、
細長い部材であって、貫通して該細長い部材の末端まで長手方向に伸びる管腔を有する前記細長い部材と、
末端付近にて管腔を通って流れる流体の温度を検知する温度センサとを備える、カテーテル。
【請求項2】
請求項1のカテーテルにおいて、温度センサは、細長い部材の末端部分に配置される、カテーテル。
【請求項3】
請求項1のカテーテルにおいて、細長い部材の末端部分に配置されたバルーンを更に備える、カテーテル。
【請求項4】
請求項3のカテーテルにおいて、温度センサは、バルーンの末端側に配置される、カテーテル。
【請求項5】
請求項3のカテーテルにおいて、バルーンは拡張バルーンである、カテーテル。
【請求項6】
請求項3のカテーテルにおいて、バルーンは密封バルーンである、カテーテル。
【請求項7】
請求項1のカテーテルにおいて、温度センサは熱電対を備える、カテーテル。
【請求項8】
請求項7のカテーテルにおいて、熱電対は、カテーテルの基端から伸び且つ、末端にて接続されて接続部を形成する、異なる材料で出来た2つの導体を備える、カテーテル。
【請求項9】
請求項8のカテーテルにおいて、接続部は、管腔を取り囲む側壁まで伸びて、流体は、該流体が管腔を通って流れるとき接続部と熱的に連通する、カテーテル。
【請求項10】
請求項1のカテーテルにおいて、温度センサはサーミスタを備える、カテーテル。
【請求項11】
請求項1のカテーテルにおいて、管腔から出る流体の温度に関するフィードバックを温度センサから受け取る温度制御装置を更に備える、カテーテル。
【請求項12】
請求項11のカテーテルにおいて、温度制御装置は、温度センサにより提供されたフィードバックに応答して流体の温度を調節し得るようにされた、カテーテル。
【請求項13】
再灌注前に、虚血性組織領域を治療する方法において、
バルーンを備えるバルーンカテーテルを冠状静脈内に挿入し虚血性組織領域へのアクセス部を提供するステップと、
バルーンを拡張させて冠状静脈を閉塞するステップと、
冷却した流体をバルーンカテーテルからバルーンの末端方向に供給するステップとを備える、再灌注前に、虚血性組織領域を治療する方法。
【請求項14】
請求項13の方法において、虚血性組織領域に供給された流体の温度を検知するステップを更に備える、方法。
【請求項15】
請求項14の方法において、検知するステップは、バルーンカテーテルの末端部分にて行われる、方法。
【請求項16】
請求項13の方法において、バルーンカテーテルを冠状静脈内に挿入する前に、ガイドカテーテルの末端を冠状静脈洞内に配置するステップを更に備える、方法。
【請求項17】
請求項16の方法において、バルーンカテーテルは、バルーンカテーテルをガイドカテーテルの管腔内に挿入するステップと、バルーンカテーテルをガイドカテーテルの末端の開口部に通すステップとにより冠状静脈内に挿入される、方法。
【請求項18】
請求項17の方法において、流体がバルーンカテーテルの管腔を通って流れる間、ガイドカテーテルにより流体を冷却するステップを更に備える、方法。
【請求項19】
請求項13の方法において、冷却した流体は食塩水を備える、方法。
【請求項20】
請求項13の方法において、冷却した流体は血液を備える、方法。
【請求項21】
請求項13の方法において、冷却した流体はバルーン代替物を備える、方法。
【請求項22】
請求項13の方法において、冷却した流体はデルタオピオイド配位子を備える、方法。
【請求項23】
請求項23の方法において、デルタオピオイド配位子は、D−Ala2−D−Leu5エンケファリンである、方法。
【請求項24】
再灌注前に、虚血性組織領域を治療する方法において、
病変部が動脈を通る血流を妨害する箇所である冠状動脈内にカテーテルを挿入するステップと、
カテーテルの末端を病変部の末端側の位置に配置するステップと、
冷却した流体をカテーテル末端から虚血性組織領域に提供するステップとを備える、再灌注前に、虚血性組織領域を治療する方法。
【請求項25】
請求項24の方法において、虚血性組織領域に提供された流体の温度を検知するステップを更に備える、方法。
【請求項26】
請求項24の方法において、冷却した流体を提供するステップは、カテーテルを使用して行われる血管形成法の間、行われる、方法。
【請求項27】
請求項24の方法において、カテーテルをガイドカテーテルの管腔内に挿入するステップと、カテーテルの末端をガイドカテーテルの末端における開口部を通すステップとにより、カテーテルは、冠状動脈内に挿入される、方法。
【請求項28】
請求項27の方法において、流体がカテーテルの管腔を通って流れる間、流体をガイドカテーテルにて冷却するステップを更に備える、方法。
【請求項29】
請求項24の方法において、冷却した流体は食塩水を備える、方法。
【請求項30】
請求項24の方法において、冷却した流体は血液を備える、方法。
【請求項31】
請求項24の方法において、冷却した流体は血液代替物を備える、方法。
【請求項32】
請求項24の方法において、冷却した流体はデルタオピオイド配位子を備える、方法。
【請求項33】
請求項32の方法において、デルタオピオイド配位子は、D−Ala2−D−Leu5エンケファリンである、方法。
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2006−513771(P2006−513771A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−568868(P2004−568868)
【出願日】平成15年12月23日(2003.12.23)
【国際出願番号】PCT/US2003/041171
【国際公開番号】WO2004/075747
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(500238446)ボストン サイエンティフィック リミテッド (53)
【氏名又は名称原語表記】Boston Scientific Limited
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年12月23日(2003.12.23)
【国際出願番号】PCT/US2003/041171
【国際公開番号】WO2004/075747
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(500238446)ボストン サイエンティフィック リミテッド (53)
【氏名又は名称原語表記】Boston Scientific Limited
【Fターム(参考)】
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