説明

冷却装置、この冷却装置を有する回路モジュールおよび電子機器

【課題】本発明は、半導体パッケージのような発熱体の熱を効率良く冷媒に伝えることができ、発熱体の冷却性能を高めることができる冷却装置の提供を目的とする。
【解決手段】冷却装置15は、半導体パッケージ7の熱を受ける受熱部20と、半導体パッケージの熱を放出する放熱部21と、これら受熱部および放熱部との間で液状の冷媒を移動させる管路22とを備えている。冷却装置は、受熱部と放熱部との温度差に基づいて冷媒を移動させることにより、受熱部に伝えられた発熱体の熱を放熱部に輸送する。そして、少なくとも受熱部は、その半導体パッケージに熱的に接続される外周部分がゴム状弾性体からなる柔軟な熱伝導シート26にて構成されこの熱伝導シートが半導体パッケージに直接接している。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば発熱する半導体パッケージを冷却する際に用いる冷却装置、この冷却装置を有する回路モジュールならびに回路モジュールを搭載したポータブルコンピュータのような電子機器に関する。
【0002】
【従来の技術】ポータブルコンピュータのような電子機器は、文字、音声および画像のような多用のマルチメディア情報を処理するためのMPU(Micro Processing Unit)を装備している。この種のMPUは、処理速度の高速化や多機能化に伴って消費電力が増加の一途を辿り、動作中の発熱量もこれに比例して急速に増加する傾向にある。
【0003】そのため、MPUの安定した動作を保証するためには、MPUの放熱性を高める必要があり、それ故、ヒートパイプやヒートシンクのような様々な放熱・冷却手段が必要不可欠な存在となる。
【0004】従来のヒートパイプおよびヒートシンクは、アルミニウム合金のような硬質な金属材料にて構成されているので、これをMPUに直接重ね合わせてもMPUとの密着性を充分に確保することができない。そのため、従来では、MPUとヒートパイプおよびヒートシンクとの間に柔軟な熱伝導シートを挟み込んだり、熱伝導性のペースト剤を充填することが行われている。
【0005】熱伝導シートは、熱伝導率の高い柔軟なゴム状弾性体にて構成されており、MPUとヒートシンクとを熱的に接続する際に、その表面粗さに起因する熱伝導率の悪化を補ったり、熱伝導の妨げとなる隙間を吸収するようになっている。この結果、MPUとヒートパイプおよびヒートシンクとの熱接続部分の熱抵抗が軽減され、MPUの熱をヒートパイプやヒートシンクに効率良く伝えることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、MPUの熱を受けるヒートパイプは、冷媒が封入された金属製の外管を有するので、MPUの熱は、熱伝導シートを介して外管に伝えられた後、この外管内の冷媒に伝えられる。
【0007】この従来の熱接続によると、MPUと冷媒との間に外管および熱伝導シートが介在されるので、これら外管や熱伝導シートの熱伝導率を高めたとしても、上記熱伝導シートのような介在物による伝熱ロスは防ぎようがなく、結果としてMPUからヒートパイプに伝えることができる熱量に限界が生じてくる。
【0008】近い将来、ポータブルコンピュータ用のMPUは、更なる消費電力の増加が予想され、それに伴いMPUの発熱量も飛躍的な増加が見込まれる。したがって、従来の熱伝導シートを用いた熱接続構造では、MPUの冷却性能が不足したり限界に達することが懸念され、近年のMPUの発熱量増大を鑑みた時に、いち早く改善すべき重要な事項となっている。
【0009】本発明は、このような事情にもとづいてなされたもので、回路部品のような発熱体の熱を効率良く冷媒に伝えることができ、発熱体の冷却性能を高めることができる冷却装置、冷却装置を有する回路モジュールおよび電子機器の提供を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、請求項1に係る本発明の冷却装置は、発熱体の熱を受ける受熱部と、発熱体の熱を放出する放熱部と、これら受熱部と放熱部との間で液状の冷媒を移動させる管路とを含み、上記少なくとも受熱部は、上記発熱体に熱的に接続される外周部分がゴム状弾性体からなる柔軟な熱伝導シートにて構成されていることを特徴としている。
【0011】上記目的を達成するため、請求項5に係る本発明の冷却装置は、発熱体の熱を受ける受熱部と、上記発熱体の熱を放出する放熱部と、上記受熱部と放熱部との間で液状の冷媒を循環させる循環経路とを含み、上記少なくとも受熱部は、上記発熱体に熱的に接続される外周部分がゴム状弾性体からなる柔軟な熱伝導シートにて構成されていることを特徴としている。
【0012】上記目的を達成するため、請求項14に係る本発明の電子機器は、発熱体を内蔵する筐体と、上記発熱体の熱を受ける受熱部と、上記発熱体の熱を放出する放熱部と、上記受熱部と放熱部との間で液状の冷媒を移動させる管路とを含み、上記受熱部に移された発熱体の熱を上記冷媒の移動により上記放熱部に輸送する冷却ユニットと、を備えている。そして、上記冷却ユニットの少なくとも受熱部は、上記発熱体に熱的に接続される外周部分がゴム状弾性体からなる柔軟な熱伝導シートにて構成されていることを特徴としている。
【0013】このような構成によれば、熱伝導シートは、柔軟で、しかも弾性を有するので、発熱体に対しその表面粗さに起因する熱伝導率の悪化を補ったり、熱伝導の妨げとなる隙間を吸収するように密着する。そのため、受熱部を発熱体に直に接触せることができ、それ故、発熱体と冷媒との間に介在される介在物が熱伝導シートのみとなって、発熱体から熱伝導シートに伝えられた熱の全てをそのまま冷媒に伝えることができる。
【0014】よって、発熱体から冷媒に至る熱伝導経路の熱抵抗を小さく抑えることができ、発熱体の熱を効率良く冷媒に伝えることができる。
【0015】また、上記目的を達成するため、請求項8に係る本発明の冷却装置は、発熱体の熱を受ける受熱部と、この受熱部に熱的に接続された放熱部とを有する熱伝導性の本体と、この本体に支持され、上記放熱部に冷却風を送風するファンと、上記本体に形成され、上記受熱部と放熱部との間で液状の冷媒を移動させる冷媒通路とを具備している。そして、上記冷媒通路の少なくとも受熱部に対応する部分は、ゴム状弾性体からなる柔軟な熱伝導シートにて構成され、この熱伝導シートが上記発熱体に接していることを特徴としている。
【0016】このような構成において、発熱体から受熱部に伝えられた熱は、放熱部への熱伝導により拡散されるとともに、受熱部から冷媒通路内の冷媒に伝えられる。また、放熱部は、ファンから送風される冷却風により強制的に空冷されるので、受熱部との間の温度差が大きくなる。このため、受熱部で加熱された冷媒は、蒸気となって冷媒通路を放熱部に向けて流れ、この放熱部での熱交換により冷却されて液体となる。この液化された冷媒は、毛細管力により冷媒通路を受熱部に戻り、再度発熱体の熱を受ける。このサイクルを繰り返すことで、発熱体の熱を受熱部から放熱部に輸送して、この放熱部からの自然空冷による拡散や冷却風の流れに乗じて効率良く放出することができる。
【0017】上記構成によると、熱伝導シートは、柔軟で、しかも弾性を有するので、発熱体に対しその表面粗さに起因する熱伝導率の悪化を補ったり、熱伝導の妨げとなる隙間を吸収するように密着する。そのため、受熱部を発熱体に直に接触せることができ、それ故、発熱体と冷媒との間に介在されるのは熱伝導シートのみとなる。よって、発熱体から熱伝導シートに伝えられた熱の全てをそのまま冷媒に伝えることができ、発熱体から冷媒に至る熱伝導経路の熱抵抗を小さく抑えて、多量の熱を効率良く冷媒に伝えることができる。
【0018】上記目的を達成するため、請求項10に係る回路モジュールは、実装面を有する回路基板と、この回路基板の実装面に実装された発熱する回路部品と、この回路部品の熱を受ける受熱部と、上記回路部品の熱を放出する放熱部と、上記受熱部と放熱部との間で液状の冷媒を移動させる管路とを含み、上記受熱部に移された回路部品の熱を上記冷媒の移動により上記放熱部に輸送する冷却ユニットとを備えている。そして、上記冷却ユニットの少なくとも受熱部は、上記回路部品に熱的に接続される外周部分がゴム状弾性体からなる柔軟な熱伝導シートにて構成され、この熱伝導シートは、上記回路部品よりも大きな形状を有するとともに、この熱伝導シートのうち上記回路部品の外周囲に張り出す外周部が上記回路基板の実装面に跨って接していることを特徴としている。
【0019】このような構成によれば、熱伝導シートは、柔軟で、しかも弾性を有するので、回路部品に対しその表面粗さに起因する熱伝導率の悪化を補ったり、熱伝導の妨げとなる隙間を吸収するように密着する。そのため、冷却ユニットの受熱部を回路部品に直に接触せることができ、それ故、回路部品と冷媒との間に介在される介在物が熱伝導シートのみとなって、回路部品から熱伝導シートに伝えられた熱の全てをそのまま冷媒に伝えることができる。よって、回路部品から冷媒に至る熱伝導経路の熱抵抗を小さく抑えることができ、回路部品の熱を効率良く冷媒に伝えることができる。
【0020】また、熱伝導シートの外周部は、回路基板の実装面に跨っているので、この熱伝導シートの外周部によって回路部品から実装面までの範囲を覆うことができる。この熱伝導シートの外周部は、冷媒が回路部品の熱を受けて膨張した時に、回路部品の外周部と実装面との間の隙間を埋めるように弾性変形し、熱伝導シートが回路基板の実装面に沿って密着する。
【0021】この結果、回路部品から回路基板に逃された熱の一部は、熱伝導シートを介して直接冷媒に伝わることになり、この回路部品の熱の多くを効率良く確実に吸収できるとともに、回路基板の温度上昇を抑えることができる。
【0022】上記目的を達成するため、請求項12に係る本発明の回路モジュールは、発熱する回路部品と、この回路部品の熱を受ける受熱部と、上記回路部品の熱を放出する放熱部と、上記受熱部と放熱部との間で液状の冷媒を移動させる管路とを含み、上記受熱部に移された回路部品の熱を上記冷媒の移動により上記放熱部に輸送する冷却ユニットとを備えている。そして、上記冷却ユニットの受熱部は、一端に上記管路が接続される接続口を有する袋状をなすとともに、柔軟な熱伝導性のゴム状弾性体にて構成され、この受熱部が上記回路部品に押し付けられていることを特徴としている。
【0023】このような構成によれば、袋状をなす柔軟な受熱部は、回路部品の形状に追従して滑らかに弾性変形し、この回路部品に熱伝導の妨げとなる隙間を吸収するように密着する。そのため、冷却ユニットの受熱部を回路部品に直に接触せることができ、それ故、回路部品と冷媒との間に介在される介在物が熱伝導シートのみとなって、回路部品から熱伝導シートに伝えられた熱の全てをそのまま冷媒に伝えることができる。よって、回路部品から冷媒に至る熱伝導経路の熱抵抗を小さく抑えることができ、回路部品の熱を効率良く冷媒に伝えることができる。
【0024】しかも、管路を受熱部の接続口に接続して、この管路の端部を受熱部で塞ぐことで簡単に冷媒を封入することができ、冷却ユニットの製造も容易に行うことができる。
【0025】
【発明の実施の形態】以下本発明の第1の実施の形態をポータブルコンピュータに適用した図1ないし図5に基づいて説明する。
【0026】図1に示すように、ポータブルコンピュータ1は、コンピュータ本体2と、このコンピュータ本体2に支持されたディスプレイユニット3とを備えている。
【0027】コンピュータ本体2は、外郭となる筐体4を有している。筐体4は、底壁4a、上壁4bを有する偏平な箱状をなしており、この筐体4の上壁4bにキーボード5が設置されている。また、ディスプレイユニット3は、筐体4の後端部にヒンジ装置6を介して回動可能に支持されている。
【0028】図1に示すように、筐体4の内部には、回路基板6が収容されている。回路基板6は、筐体4の底壁4aに支持されているとともに、この底壁4aに沿って水平に配置されている。回路基板6の上面の実装面6aには、発熱する回路部品としてのBGA形の半導体パッケージ7が実装されている。半導体パッケージ7は、ポータブルコンピュータ1の中枢となるMPU(Micro Processing Unit)を構成するものである。
【0029】図2に示すように、半導体パッケージ7は、矩形状のベース基板8と、このベース基板8にフリップチップ接続されたICチップ9と、このICチップ9を覆うカバープレート10とを備えている。ベース基板8は、多数の半田ボール11を介して回路基板6の実装面6aに半田付けされている。ICチップ9は、処理速度の高速化や多機能化により消費電力が増加しており、それに伴いICチップ9の発熱量も冷却を必要とする程に大きなものとなっている。カバープレート10は、熱伝導性に優れた金属材料にて構成され、スペーサ12を介してベース基板8に固定されている。このカバープレート10は、ベース基板8との間でICチップ9を挟み込んでいる。
【0030】このため、ICチップ9が発熱すると、このICチップ9の熱は、カバープレート10に伝わるとともに、ベース基板8や半田ボール11を介して回路基板6に伝わるようになっている。
【0031】図1に示すように、筐体4の内部には、半導体パッケージ7を冷却するための冷却装置15が収容されている。冷却装置15は、ヒートパイプ16とヒートシンク17とで構成されている。
【0032】図4に見られるように、ヒートパイプ16は、細長い本体19を有している。本体19は、例えばアルミニウム合金のような熱伝導性を有する薄肉な金属板にて構成されている。この本体19は、長手方向に離間された受熱部20と放熱部21およびこれら受熱部20と放熱部21との間を一直線状に結ぶ管路22とを有している。受熱部20および放熱部21は、管路22よりも幅広く形成されている。この本体19の受熱部20および放熱部21の平面形状は、半導体パッケージ7の平面形状と同等に設定されている。
【0033】本体19は、その中央部に全長に亘って延びる凹部24を有している。凹部24は、本体19に絞り加工を施すことにより構成され、本体19の受熱部20、放熱部21および管路22に連続して形成されている。そして、凹部24は、本体19の下方に向けて開放されており、この凹部24の外周縁部には、平坦なフランジ部25が周方向に連続して形成されている。
【0034】凹部24の開放端は、柔軟な熱伝導シート26によって塞がれている。熱伝導シート26は、例えば高熱伝導性の充填材が添加されたゴム状弾性体にて構成されており、その厚み寸法が0.1〜1mm程度に定められている。熱伝導シート26は、受熱部20に対応する大きさの第1の端部26aと、放熱部21に対応する大きさの第2の端部26bと、管路22に対応する大きさの中間部26cとを有している。
【0035】このため、熱伝導シート26は、上記本体19に合致するような外形状を有し、その長手方向に離間された第1および第2の端部26a,26bが中間部26cよりも幅広く形成されている。そして、熱伝導シート26は、図3の(A)に見られるように、その外周部分が接着剤27を介して本体19のフランジ部25に接着固定されている。
【0036】なお、熱伝導シート26とフランジ部25との接合強度を高めるためには、図3の(B)に示すように、フランジ部25の先端縁部に熱伝導シート26の外周縁部を巻き込むように折り返されたカーリング部28を形成し、このカーリング部28とフランジ部25との間で熱伝導シート26の外周部分を挟み込むことが望ましい。
【0037】熱伝導シート26は、本体19の凹部24と協働して冷媒通路29を構成している。冷媒通路29は、受熱部20、放熱部21および管路22上に位置されており、この冷媒通路29に水あるいはアルコールのような液状の冷媒Rが封入されている。そのため、熱伝導シート26は、冷媒通路29に露出されて冷媒Rに直に触れているとともに、上記受熱部20、放熱部21および管路22の外周面の一部を構成している。
【0038】図2や図4に示すように、ヒートパイプ16の受熱部20は、第1の押え金具30を介して半導体パッケージ7に押し付けられている。第1の押え金具30は、受熱部20や半導体パッケージ7を跨ぐ保持部31と、この保持部31の両端に連なるフランジ部32a,32bとを有し、これらフランジ部32a,32bが回路基板6の実装面6aにねじ33を介して固定されている。
【0039】第1の押え金具30の保持部31は、半導体パッケージ7のカバープレート10との間でヒートパイプ16の受熱部20を挟み込んでおり、この受熱部20の外周面の一部となる熱伝導シート26の第1の端部26aがカバープレート10に押し付けられている。このため、受熱部20の一部となる熱伝導シート26の第1の端部26aは、カバープレート10の表面に面接触されて、このカバープレート10に熱的に接続されている。
【0040】図1に示すように、ヒートパイプ16の管路22は、回路基板6の後端から後方に向けて突出されている。この管路22に連なる放熱部21は、管路22の長さ分だけ受熱部20から遠ざかっており、このヒートパイプ16の放熱部21に、第2の押え金具35を介して上記ヒートシンク17が取り付けられている。第2の押え金具35は、放熱部21を跨ぐ保持部36と、この保持部36の両端に連なるフランジ部37a,37bとを有し、これらフランジ部37a,37bがヒートシンク17にねじ38を介して固定されている。
【0041】第2の押え金具35の保持部36は、ヒートシンク17との間でヒートパイプ16の放熱部21を挟み込んでおり、この放熱部21の外周面の一部となる熱伝導シート26の第2の端部26bがヒートシンク17に押し付けられている。このため、放熱部21の一部となる熱伝導シート26の第2の端部26bは、ヒートシンク17に面接触されて、このヒートシンク17に熱的に接続されている。
【0042】このような構成のポータブルコンピュータ1において、半導体パッケージ7のICチップ9が発熱すると、このICチップ9の熱は、カバープレート10を介してヒートパイプ16の受熱部20に伝えられる。この熱伝達により、受熱部20内の冷媒Rが加熱されて蒸気となり、この蒸気は受熱部20から管路22を通じて放熱部21に流れる。この放熱部21は、半導体パッケージ7から遠ざかっているので、受熱部20に比べて温度が低く、かつ内部圧力が低く保たれている。
【0043】そのため、放熱部21に導かれた蒸気は、ここで放熱し凝縮する。この冷媒Rの凝縮により放出された熱は、放熱部21からヒートシンク17への熱伝導により拡散され、このヒートシンク17の表面から自然空冷により筐体4の内部に放出される。
【0044】放熱部21での熱交換により液化された冷媒Rは、毛細管力により管路22の内面を伝わって受熱部20に戻り、再度半導体パッケージ7の熱を受けて加熱され、蒸気となる。この冷媒Rの蒸発および凝縮の繰り返しにより、受熱部20の熱が放熱部21に積極的に輸送される。
【0045】ところで、上記構成によると、ヒートパイプ16の受熱部20は、半導体パッケージ7のカバープレート10と向かい合う外周部分が熱伝導シート26によって構成されている。この熱伝導シート26は、柔軟で、しかも弾性を有するので、熱伝導シート26の第1の端部26aを半導体パッケージ7のカバープレート10に直接接触させた場合に、この熱伝導シート26がカバープレート10の表面粗さに起因する熱伝導率の悪化を補ったり、熱伝導の妨げとなる隙間を吸収するようにカバープレート10に密着する。
【0046】そのため、発熱するカバープレート10と冷媒Rとの間に介在される介在物は熱伝導シート26のみとなり、カバープレート10から熱伝導シート26の第1の端部26aに伝えられた熱の全てをそのまま直に冷媒Rに伝えることができる。
【0047】よって、カバープレート10から冷媒Rに至る熱伝導経路の熱抵抗を小さく抑えることができ、カバープレート10から冷媒Rへの熱伝導効率を飛躍的に高めることができる。
【0048】また、熱伝導シート26の第1の端部26aは、回路基板6にねじ止めされた第1の押え金具30を介して半導体パッケージ7のカバープレート10に押し付けられているとともに、その大部分がカバープレート10に面接触されている。そのため、受熱部20での熱交換により冷媒Rが膨張しても、柔軟な熱伝導シート26の第1の端部26aが風船のように際限なく膨れることはなく、この熱伝導シート26の破損を未然に防止することができる。
【0049】それとともに、カバープレート10からの熱伝導により受熱部20の温度が上昇すると、冷媒Rの膨張に伴って受熱部20の内部圧力が上昇する。そのため、熱伝導シート26の第1の端部26aには、これをカバープレート10に押し付けようとする圧力が加わり、カバープレート10と熱伝導シート26との密着性が高まる。よって、カバープレート10から熱伝導シート26への熱伝導効率がより向上するといった利点がある。
【0050】また、ヒートパイプ16の放熱部21にしても、ヒートシンク17と向かい合う外周部分が熱伝導シート26によって構成され、この熱伝導シート26の第2の端部26bがヒートシンク17に直に接している。このため、熱伝導シート26がヒートシンク17の表面粗さに起因する熱伝導率の悪化を補ったり、熱伝導の妨げとなる隙間を吸収するようにヒートシンク17に密着する。
【0051】したがって、放熱部21からヒートシンク17に至る熱伝導経路の熱抵抗を小さく抑えることができ、その分、放熱部21からヒートシンク17への熱伝導効率を飛躍的に高めることができる。
【0052】さらに、上記構成のヒートパイプ16によると、柔軟な熱伝導シート26は直接冷媒通路29に臨み、受熱部20や放熱部21の外周部分そのものを構成しているので、受熱部20と半導体パッケージ7との熱接続部分および放熱部21とヒートシンク17との熱接続部分において、本体19と熱伝導シート26とが重なり合うことはなく、この本体19の厚みに相当する分だけ上記熱接続部分の厚み寸法を小さく抑えることができる。
【0053】この結果、大きさの限られた筐体4の内部に冷却装置15を組み込む上で好都合となるとともに、近年の筐体4の薄形化にも無理なく対応することができる。
【0054】なお、本発明は上記第1の実施の形態に特定されるものではなく、図6および図7に本発明の第2の実施の形態を示す。この第2の実施の形態は、ヒートパイプ16の受熱部20の構成が上記第1の実施の形態と相違しており、それ以外のヒートパイプ16の基本的な構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0055】図6や図7に示すように、本体19の受熱部20は、その凹部24の底の中央部に熱伝導シート26の第1の端部26aに向けて張り出す複数の凸部41を有している。凸部41は、ヒートパイプ16の長手方向に沿って直線状に延びるリブ状をなすとともに、受熱部20の幅方向に間隔を存して互いに平行に配置されている。
【0056】凸部41の先端は、平坦な支持部42をなしている。支持部42は、凹部24の開放端に位置されているとともに、この凹部24に連なるフランジ部25と同一面上に位置されている。そのため、支持部42は、熱伝導シート26の第1の端部26aの中央部に接しており、この第1の端部26aを冷媒通路29の方向から支えている。
【0057】このような構成によると、受熱部20に臨む熱伝導シート26の第1の端部26aは、その外周部ばかりでなく、この外周部で囲まれた中央部においても支持部42によって支えられるので、第1の端部26aの中央部が冷媒通路29に入り込むように凹むことはない。
【0058】すなわち、半導体パッケージ7が大きくなるに従い、この半導体パッケージ7のカバープレート10も大形化するので、効率の良い熱伝導を実現するためには、カバープレート10に接する熱伝導シート26の第1の端部26aの面積を広げる必要がある。
【0059】この際、柔軟な熱伝導シート26の第1の端部26aを、その外周部のみで本体19のフランジ部25に固定すると、この熱伝導シート26の第1の端部26aをカバープレート10に押し付けた時に、第1の端部26aの中央部分が凹む虞があり得る。そのため、熱伝導シート26の第1の端部26aとカバープレート10との間に隙間が生じ、これら両者の密着性が損なわれてしまう。
【0060】しかるに、上記第2の実施の形態のように、熱伝導シート26の第1の端部26aの中央部を冷媒通路29の方向から複数の支持部42で支えるようにすれば、たとえ熱伝導シート26とカバープレート10との接触面積が広げられても、この第1の端部26aの中央部を支持部42とカバープレート10とで挟み込むことができる。そのため、第1の端部26aの中央部とカバープレート10との密着性を充分に確保することができ、カバープレート10から冷媒Rへの熱伝導効率を高めることができる。
【0061】なお、上記凸部41は、本体19の受熱部20ばかりでなく放熱部21にも形成し、熱伝導シート26の第2の端部26bの中央部とヒートシンク17との密着性を確保するようにしても良い。
【0062】図8は、本発明の第3の実施の形態を開示している。
【0063】この第3の実施の形態は、ヒートパイプ16を用いて半導体パッケージ7の熱を受ける回路基板6も同時に冷却するようにしたものであり、ヒートパイプ16の基本的な構成は、上記第1の実施の形態と同様である。そのため、第3の実施の形態において、第1の実施の形態と同一の構成部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0064】図8の(A)に示すように、ヒートパイプ16の受熱部20は、回路基板6上の半導体パッケージ7を遥かに上回るような大きさを有している。具体的には、半導体パッケージ7に接する熱伝導シート26の第1の端部26aは、半導体パッケージ7のカバープレート10に対応する大きさの中央部51と、この中央部51から半導体パッケージ7の周囲に張り出す外周部52とを有している。
【0065】また、本体19の凹部24の底には、冷媒通路29に向けて突出する複数の凸部53が形成されている。凸部53の先端は、平坦な支持部54をなしており、この支持部54は、熱伝導シート26の中央部51と向かい合っている。
【0066】このような構成において、ヒートパイプ16の受熱部20を半導体パッケージ7や回路基板6に熱的に接続するには、熱伝導シート26の中央部51を半導体パッケージ7のカバープレ−ト10に重ね合わせ、この状態で受熱部20を第1の押え金具30を介して回路基板6に固定する。
【0067】すると、図8の(B)に見られるように、受熱部20が第1の押え金具30の保持部31と回路基板10との間で挟み込まれ、熱伝導シート26の第1の端部26aが半導体パッケージ7の厚み寸法に応じて上向きに弾性変形する。これにより、凹部24の底から突出する凸部53の支持部54が熱伝導シート26の中央部51に接触し、この中央部51をカバープレート10との間で挟み込む。そのため、熱伝導シート26の中央部51がカバープレート10に密着し、このカバープレート10に熱的に接続される。
【0068】また、熱伝導シート26の外周部52にあっては、その先端縁部が回路基板6の実装面6aに押し付けられるとともに、この外周部52の先端縁部を除いた部分が実装面6aと向かい合う。
【0069】したがって、受熱部20は、その熱伝導シート26の第1の端部26aで半導体パッケージ7から回路基板6の実装面6aまでを包み込んだ状態で回路基板6上に固定されることになる。
【0070】半導体パッケージ7のICチップ9が発熱すると、このICチップ9の熱は、カバープレート10を介して熱伝導シート26の第1の端部26aに伝えられ、受熱部20内の冷媒Rが加熱されて膨張する。すると、図8の(B)に矢印で示すように、柔軟な熱伝導シート26の外周部52にこれを回路基板6に向けて押圧するような圧力が加わる。この結果、図8の(C)に見られるように、熱伝導シート26の外周部52が回路基板6と受熱部20との間の隙間を埋めるように弾性変形し、回路基板6の実装面6aに密着する。
【0071】そのため、熱伝導シート26が半導体パッケージ7の周囲において回路基板6に熱的に接続され、この回路基板6の熱が熱伝導シート26を介して冷媒Rに伝えられる。
【0072】このような構成によれば、半導体パッケージ7から回路基板6に伝えられた熱をヒートパイプ16の受熱部20によって吸収することができる。このため、半導体パッケージ7の熱を効率良く冷媒Rに伝えることができ、その分、半導体パッケージ7の冷却性能を高めることができるとともに、回路基板6の温度上昇も抑えることができる。
【0073】また、回路基板6の実装面6aのうち半導体パッケージ7の周囲は、この半導体パッケージ7に電気的に接続される数多くの配線パターンが集中するので、その他のチップ部品等が存在しない比較的広いフラットな領域となっている。そのため、熱伝導シート26が密着し易く、回路基板6から熱伝導シート26への熱伝達を効率良く行うことができる。
【0074】図9および図10は、本発明の第4の実施の形態を開示している。
【0075】この第4の実施の形態に開示されたヒートパイプ60は、受熱部61、放熱部62およびこれら受熱部61と放熱部62とを連結する管路63とに分割されている。
【0076】受熱部61および放熱部62は、例えば高熱伝導性の充填材が添加されたゴム状弾性体にて構成されており、その厚み寸法が0.1〜1mm程度に定められた柔軟な袋状をなしている。そして、受熱部61および放熱部62は、夫々その袋の底と向かい合う一端に円筒状のネック部64,65を有し、これらネック部64,65には、夫々接続口66が開口されている。接続口66は、受熱部61および放熱部62の内部空間に連なっている。
【0077】管路63は、金属製の丸パイプにて構成されている。管路63の一端は、受熱部61の接続口66に嵌め込まれているとともに、管路63の他端は、放熱部62の接続口66に嵌め込まれている。この管路63の両端は、ネック部64,65を外側からベルト67で締め付けることによりネック部64,65に抜け止め保持されており、これら受熱部61、放熱部62および管路63の内部に冷媒Rが充填されている。
【0078】図10に示すように、ヒートパイプ60の受熱部61は、押え金具70を介して半導体パッケージ7に押し付けられている。押え金具70は、受熱部61や半導体パッケージ7を跨ぐ保持部71と、この保持部71の両端に連なるフランジ部72a,72bとを有し、これらフランジ部72a,72bが回路基板6の実装面6aにねじ73を介して固定されている。
【0079】押え金具70の保持部71は、半導体パッケージ7のカバープレート10との間でヒートパイプ60の受熱部61を挟み込んでいる。そのため、袋状をなす柔軟な受熱部61は、偏平状に押し潰されており、これにより、受熱部61がカバープレート10に密着されている。
【0080】なお、図示を省略するが、ヒートパイプ60の放熱部62も同様の押え金具70を介してヒートシンクのような放熱手段に密着されている。
【0081】このような構成によれば、ヒートパイプ60の受熱部61そのものが柔軟な袋状に形成されているので、この受熱部61は半導体パッケージ7の形状に追従して自由に変形することができ、この半導体パッケージ7との密着性が良好となる。また、放熱部62にしても柔軟な袋状に形成されているので、この放熱部62は放熱手段の形状に追従して自由に変形することができ、この放熱手段との密着性が良好となる。
【0082】したがって、半導体パッケージ7や放熱手段への組み付けを容易に行うことができ、使い勝手が向上する。
【0083】それとともに、上記第1の実施の形態と同様に、半導体パッケージ7から冷媒Rに至る熱伝導経路の熱抵抗を小さく抑えることができ、半導体パッケージ7から冷媒Rへの熱伝導効率が格段に向上する。
【0084】また、管路63の両端部を袋状の受熱部61および放熱部62で塞ぐことで、冷媒Rを封入することができ、ヒートパイプ60の組み立て作業を容易に行うことができる。
【0085】図11および図12は、本発明の第5の実施の形態を開示している。
【0086】この第5の実施の形態に開示されたヒートパイプ80は、金属製の細長い本体81を有している。本体81は、受熱部82、放熱部83、第1および第2の管路84a,84bを有している。
【0087】受熱部82および放熱部83は、本体81の長手方向に互いに離間して配置されており、第1および第2の管路84a,84bよりも幅広く形成されている。第1および第2の管路84a,84bは、受熱部82と放熱部83との間を一直線状に結ぶとともに、互いに平行に配置されている。
【0088】本体81は、第1および第2の管路84a,84bに沿って延びる第1および第2の凹部86a,86bを有している。第1および第2の凹部86a,86bは、本体81に絞り加工を施すことにより構成され、この本体81の下方に向けて開放されている。これら凹部86a,86bの外周縁部には、平坦なフランジ部87が連続して形成されている。
【0089】第1および第2の凹部86a,86bの一端は、夫々受熱部82に導かれている。これら凹部86a,86bの一端は、受熱部82上において反転するように折り曲げられた屈曲部88をなしており、第1および第2の凹部86a,86bの屈曲部88は、受熱部82上において隣り合っている。
【0090】第1および第2の凹部86a,86bの他端は、夫々放熱部83に導かれている。これら凹部86a,86bの他端は、放熱部83上において反転するように折り曲げられた屈曲部89をなしており、第1および第2の凹部86a,86bの屈曲部89は、放熱部83上において隣り合っている。
【0091】第1および第2の凹部86a,86bの開放端は、上記第1の実施の形態と同様の熱伝導シート90によって覆われている。熱伝導シート90は、本体81のフランジ部87に接着固定されており、上記凹部86a,86bと協働して第1および第2の冷媒通路91a,91bを構成している。そして、これら第1および第2の冷媒通路91a,91bに夫々冷媒Rが封入されている。
【0092】このような構成によると、ヒートパイプ60の受熱部82は、半導体パッケージ7の熱を受ける部分が熱伝導シート90によって構成されているので、この熱伝導シート90が半導体パッケージ7の表面粗さに起因する熱伝導率の悪化を補ったり、熱伝導の妨げとなる隙間を吸収するように半導体パッケージ7に密着する。
【0093】そのため、半導体パッケージ7から熱伝導シート90に伝えられた熱の全てをそのまま直に第1および第2の冷媒通路91a,91b内の冷媒Rに伝えることができ、二つの冷媒通路91a,91bを流れる冷媒Rを利用して受熱部82に伝えられた半導体パッケージ7の熱を効率良く放熱部83に輸送することができるなお、第1および第2の凹部86a,86bの屈曲部89を蛇行状に形成すれば、受熱部82および放熱部83に曲がりくねった長い流路を形成することができ、この流路を冷媒Rが通過する際の時間が長くなる。このため、受熱部82において、多量の熱を冷媒Rに伝えることができるとともに、放熱部83においては多量の熱を冷媒Rから放熱部83に伝えることができ、熱伝導効率が飛躍的に向上する。
【0094】また、図13は、本発明の第6の実施の形態を開示している。
【0095】この第6の実施の形態は、冷媒Rを強制的に循環させることで熱を輸送する冷却ユニット100を開示している。この冷却ユニット100は、受熱部101、放熱部102およびこれら受熱部101と放熱部102とを連結する循環経路103とで構成されている。
【0096】受熱部101および放熱部102は、例えば高熱伝導性の充填材が添加されたゴム状弾性体にて構成されており、その厚み寸法が0.1〜1mm程度に定められた柔軟な袋状をなしている。受熱部101は、夫々その袋の底と向かい合う一端に円筒状をなす一対のネック部104a,104bを有し、これらネック部104a,104bには、夫々接続口105が開口されている。接続口105は、受熱部101の内部空間に連なっている。同様に、放熱部102は、夫々その袋の底と向かい合う一端に円筒状をなす一対のネック部106a,106bを有し、これらネック部106a,106bには、夫々接続口107が開口されている。接続口107は、放熱部102の内部空間に連なっている。
【0097】循環経路103は、第1および第2の管路103a,103bを備えている。これら管路103a,103bは、金属製の丸パイプにて構成されている。第1および第2の管路103a,103bの一端は、受熱部101の接続口105に嵌め込まれているとともに、これらの管路103a,103bの他端は、放熱部102の接続口107に嵌め込まれている。
【0098】第1および第2の管路103a,103bの両端は、夫々ネック部104a,104b,106a,106bを外側からベルト108で締め付けることにより、ネック部104a,104b,106a,106bに抜け止め保持されている。そして、受熱部101、放熱部102および管路103a,103bの内部には、冷媒Rが充填されている。
【0099】第1の管路103aは、受熱部101での熱交換により加熱された冷媒Rを放熱部102に導くためのものである。第2の管路103bは、放熱部102での熱交換により冷却された冷媒Rを受熱部101に導くためのものであり、この第2の管路103bの途中に冷媒Rを受熱部101に向けて強制的に送り出す電動式のポンプ109が設置されている。
【0100】そのため、ポンプ109から吐出された冷媒Rは、受熱部101に送り込まれた後、ここから第1の管路103aを介して放熱部102に導かれるとともに第2の管路103bを介して再びポンプ109に戻されるようになっている。よって、冷媒Rは、受熱部101と放熱部102との間で強制的に循環される。
【0101】図13の(B)に示すように、冷却ユニット100の受熱部101は、第1の押え金具110を介して半導体パッケージ7のカバープレート10に押し付けられている。第1の押え金具110は、半導体パッケージ7との間で冷却ユニット100の受熱部101を挟み込んでいる。そのため、受熱部101は、偏平状に押し潰されて上記カバープレート10に密着されている冷却ユニット100の放熱部102は、第2の押え金具111を介してヒートシンク17に押し付けられている。第2の押え金具111は、ヒートシンク17との間で冷却ユニット100の放熱部102を挟み込んでいる。このため、放熱部102は、偏平状に押し潰されて上記ヒートシンク17に密着されている。
【0102】このような構成によると、受熱部101と放熱部102との間で冷媒Rを強制的に循環させることで、受熱部101に伝えられた半導体パッケージ7の熱を放熱部102に輸送し、ここでヒートシンク17への熱伝導による拡散により空気中に放出することができる。
【0103】この際、冷却ユニット100の受熱部101そのものが柔軟な袋状に形成されているので、この受熱部101は半導体パッケージ7の形状に追従して自由に変形することができ、この半導体パッケージ7との密着性が良好となる。また、放熱部102にしても柔軟な袋状に形成されているので、この放熱部102はヒートシンク17の形状に追従して自由に変形することができ、このヒートシンク17との密着性が良好となる。
【0104】このため、半導体パッケージ7から受熱部101および放熱部102からヒートシンク17への熱伝導効率が向上し、半導体パッケージ7の放熱性能が飛躍的に向上するといった利点がある。
【0105】なお、上記実施の形態では、冷媒Rを強制的に循環させるようにしたが、自然対流により循環させるようにしても良い。この場合は、受熱部101を放熱部102よりも低い位置に設置し、放熱部102で液化された 冷媒Rを受熱部101に戻す第2の連通管103bを冷媒Rの流れ方向に沿って下向きに傾斜させることが望ましい。それとともに、加熱されて蒸気となった冷媒Rを放熱部102に導く第1の連通管103aを第2の連通管103bよりも大径に形成し、受熱部101から放熱部102へと移動する蒸気の流通抵抗を小さくするようにしても良い。
【0106】また、半導体パッケージ7の近傍に、この半導体パッケージ7の温度を検出する温度センサを設置し、この温度センサからの信号に基づいてポンプ109の運転を制御するようにしても良い。すなわち、半導体パッケージ7の温度が予め規定された値を上回った時に温度センサからの温度信号に応じてポンプ109を駆動すれば、ポンプ109を常に運転する必要はなく、その分、省電力化を図れるとともに、ポンプ109の運転音を低減することができる。
【0107】図14および図15は、本発明の第7の実施の形態を開示している。
【0108】この第7の実施の形態に係る冷却ユニット120は、板状の本体121を有している。本体121は、例えばアルミニウム合金のような熱伝導性に優れた金属材料にて構成されている。本体121は、その外周縁部に下向きに延びる複数の脚部122を有し、これら脚部122の先端がねじ123を介して回路基板6の実装面6aに固定されている。そのため、本体121は、回路基板10と平行に配置されており、この本体121と回路基板10との間に半導体パッケージ7が介在されている。
【0109】本体121は、半導体パッケージ7の熱を受ける受熱部125と、この半導体パッケージ7の熱を放出する放熱部126とを一体に有している。受熱部125は、半導体パッケージ7の真上に位置されている。放熱部126は、半導体パッケージ7から外れた位置において、受熱部125に熱的に接続されている。
【0110】本体121の下面には、凹所127が形成されている。凹所127は、受熱部125と放熱部126とに跨るように連続して形成されており、この凹所127は、複数の区画壁128により複数の溝状の通路部129に仕切られている。通路部129は、受熱部125と放熱部126とに跨って直線状に延びている。
【0111】本体121の下面には、柔軟な熱伝導シート130が貼り付けられている。熱伝導シート130は、例えば高熱伝導性の充填材が添加されたゴム状弾性体にて構成されており、その厚み寸法が0.1〜1mm程度に定められている。熱伝導シート130は、凹所127の開放端を覆っており、上記通路部129との間に冷媒Rが封入される冷媒通路131を構成している。冷媒通路131は、その一端が受熱部125に位置されているとともに、他端が放熱部126に位置されている。そして、熱伝導シート130は、受熱部125に対応する位置において半導体パッケージ7に接しており、この半導体パッケージ7に熱的に接続されている。
【0112】なお隣り合う通路部129の間に位置する区画壁128の先端は、本体121の下面と同一平面上に位置され、冷媒通路131の側から熱伝導シート130に接している。
【0113】図14および図15に示すように、本体121の外周縁部には、上向きに延びる起立壁133が周方向に連続して形成されている。起立壁133の上端には、天板134が固定されている。天板134は、本体121の上面および起立壁133との間に冷却風通路135を構成している。この冷却風通路135は、受熱部125と放熱部126とに跨るとともに、本体121を間に挟んで上記冷媒通路131に熱的に接続されている。
【0114】本体121は、受熱部125に対応する位置にピン状の放熱フィン136を有している。放熱フィン136は、上記冷却風通路135に位置されている。また、天板134の冷却風通路135に臨む下面には、電動ファン138が取り付かれている。電動ファン138は、放熱部126と向かい合っており、この放熱部126に天板134の吸入口139から吸い込んだ冷却風を直接吹き付けるようになっている。この冷却風は、冷却風通路135を流れた後、起立壁133に開けた排気口140を通じて冷却ユニット120の外方に放出される。
【0115】このような構成の冷却ユニット120において、半導体パッケージ7が発熱すると、この半導体パッケージ7の熱は、本体121の受熱部125に伝えられる。この熱伝達により、冷媒通路131の一端の冷媒Rが加熱されて蒸気となり、この蒸気は受熱部125から放熱部126に流れる。この放熱部126は、半導体パッケージ7から遠ざかっているとともに、電動ファン138から送風される冷却風が吹き付けられるので、受熱部125に比べて温度が低く、かつ内部圧力が低く保たれている。
【0116】そのため、放熱部126に導かれた蒸気は、ここで放熱し凝縮する。この冷媒の凝縮により放出された熱は、放熱部126から冷却風の流れに乗じて冷却ユニット120の外方に放出される。
【0117】放熱部126での熱交換により液化された冷媒Rは、毛細管力により連通部129の内面を伝わって受熱部125に戻り、再度半導体パッケージ7の熱を受けて加熱され、蒸気となる。この冷媒Rの蒸発および凝縮の繰り返しにより、受熱部125の熱が放熱部126に積極的に輸送される。
【0118】このような構成によると、冷却ユニット120の受熱部125は、半導体パッケージ7の熱を受ける部分が熱伝導シート130によって構成されているので、この熱伝導シート130が半導体パッケージ7の表面粗さに起因する熱伝導率の悪化を補ったり、熱伝導の妨げとなる隙間を吸収するように半導体パッケージ7に密着する。
【0119】そのため、半導体パッケージ7から熱伝導シート130に伝えられた熱の全てをそのまま直に冷媒通路131内の冷媒Rに伝えることができ、この冷媒通路131内の冷媒Rを利用して受熱部125に伝えられた半導体パッケージ7の熱を効率良く放熱部126に輸送することができるよって、半導体パッケージ7から冷媒Rに至る熱伝導経路の熱抵抗を小さく抑えることができ、半導体パッケージ7から冷媒Rへの熱伝導効率を飛躍的に高めることができる。
【0120】
【発明の効果】以上詳述した本発明によれば、発熱体(回路部品)と冷媒との間に介在される介在物は熱伝導シートのみとなるので、発熱体から熱伝導シートに伝えられた熱の全てをそのまま直に冷媒に伝えることができる。よって、発熱体から冷媒に至る熱伝導経路の熱抵抗を小さく抑えて、熱伝導効率を飛躍的に高めることができ、発熱体を効率良く冷却できるといった利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るポータブルコンピュータの断面図。
【図2】半導体パッケージとヒートパイプとの熱接続部を示す断面図。
【図3】(A)は、本体と熱伝導シートとの接合構造を示すヒートパイプの断面図。(B)は、本体と熱伝導シートとの他の接合構造を示すヒートパイプの断面図。
【図4】ヒートパイプの受熱部と半導体パッケージとの位置関係を分解して示す冷却装置の斜視図。
【図5】本体と熱伝導シートとを位置関係を示すヒートパイプの斜視図。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るヒートパイプの斜視図。
【図7】半導体パッケージとヒートパイプとの熱接続部分を示す断面図。
【図8】(A)は、本発明の第3の実施の形態において、半導体パッケージとヒートパイプとを互いに分離させた状態を示す断面図。(B)は、半導体パッケージにヒートパイプの受熱部を固定した状態を示す断面図。(C)は、熱伝導シートが半導体パッケージと回路基板との双方に跨って接した状態を示す断面図。
【図9】本発明の第4の実施の形態に係るヒートパイプの斜視図。
【図10】半導体パッケージにヒートパイプの受熱部を固定した状態を示す断面図。
【図11】本発明の第5の実施の形態に係る冷却ユニットの斜視図。
【図12】半導体パッケージにヒートパイプの受熱部を固定した状態を示す断面図。
【図13】(A)は、本発明の第6の実施の形態に係る冷却ユニットの斜視図。(B)は、半導体パッケージおよびヒートシンクに冷却ユニットを熱的に接続した状態を示す断面図。
【図14】本発明の第7の実施の形態に係る冷却ユニットの断面図。
【図15】図14のF15−F15線に沿う断面図。
【符号の説明】
4…筐体
6…回路基板
6a…実装面
7…発熱体、回路部品(半導体パッケージ)
15…冷却装置
19,81,121…本体
20,61,82,101,125…受熱部
21,62,83,102,126…放熱部
22,63,84a,84b,103a,103b…管路
26,90,130…熱伝導シート
100,120…冷却ユニット
103…循環経路
109…ファン(電動ファン)
131…冷媒通路
R …冷媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】 発熱体の熱を受ける受熱部と、上記発熱体の熱を放出する放熱部と、これら受熱部と放熱部との間で液状の冷媒を移動させる管路とを含み、上記受熱部に伝えられた発熱体の熱を上記冷媒の移動により上記放熱部に輸送するようにした冷却装置において、上記少なくとも受熱部は、上記発熱体に熱的に接続される外周部分がゴム状弾性体からなる柔軟な熱伝導シートにて構成されていることを特徴とする冷却装置。
【請求項2】 請求項1の記載において、上記管路は、上記受熱部と上記放熱部とに跨る溝状の凹部を有する金属製の本体を含み、この本体の凹部の開放端が上記熱伝導シートで覆われているとともに、この熱伝導シートは、上記凹部と協働して上記冷媒が流れる冷媒通路を構成していることを特徴とする冷却装置。
【請求項3】 請求項2の記載において、上記受熱部の熱伝導シートは、上記管路よりも大きな平面形状を有し、この熱伝導シートと上記冷媒通路を間に挟んで向かい合う本体は、上記熱伝導シートに向けて突出する複数の凸部を備えていることを特徴とする冷却装置。
【請求項4】 請求項1の記載において、上記放熱部は、ヒートシンクに熱的に接続される外周部分を有し、この外周部分が上記熱伝導シートにて構成されていることを特徴とする冷却装置。
【請求項5】 発熱体の熱を受ける受熱部と、上記発熱体の熱を放出する放熱部と、上記受熱部と放熱部との間で液状の冷媒を循環させる循環経路とを含み、上記受熱部に伝えられた発熱体の熱を上記循環する冷媒により上記放熱部に輸送するようにした冷却装置において、上記少なくとも受熱部は、上記発熱体に熱的に接続される外周部分がゴム状弾性体からなる柔軟な熱伝導シートにて構成されていることを特徴とする冷却装置。
【請求項6】 請求項5の記載において、上記循環経路は、上記受熱部で加熱された冷媒を上記放熱部に導く第1の管路と、上記放熱部で放熱された冷媒を上記受熱部に導く第2の管路とを有し、これら第1および第2の管路のいずれか一方に冷媒を強制的に循環させるためのポンプを設置したことを特徴とする冷却装置。
【請求項7】 請求項5又は請求項6の記載において、上記放熱部は、ヒートシンクに熱的に接続されていることを特徴とする冷却装置。
【請求項8】 発熱体の熱を受ける受熱部と、この受熱部に熱的に接続された放熱部とを有する熱伝導性の本体と、この本体に支持され、上記放熱部に冷却風を送風するファンと、上記本体に形成され、上記受熱部と放熱部との間で液状の冷媒を移動させる冷媒通路と、を具備し、上記冷媒通路の少なくとも受熱部に対応する部分は、ゴム状弾性体からなる柔軟な熱伝導シートにて構成され、この熱伝導シートが上記発熱体に接していることを特徴とする冷却装置。
【請求項9】 請求項8の記載において、上記本体は、上記冷却風が流れる送風通路を有し、この冷却風通路は、上記冷媒通路に熱的に接続されていることを特徴とする冷却装置。
【請求項10】 実装面を有する回路基板と、この回路基板の実装面に実装された発熱する回路部品と、この回路部品の熱を受ける受熱部と、上記回路部品の熱を放出する放熱部と、上記受熱部と放熱部との間で液状の冷媒を移動させる管路とを含み、上記受熱部に移された回路部品の熱を上記冷媒の移動により上記放熱部に輸送する冷却ユニットと、を備えている回路モジュールにおいて、上記冷却ユニットの少なくとも受熱部は、上記回路部品に熱的に接続される外周部分がゴム状弾性体からなる柔軟な熱伝導シートにて構成され、この熱伝導シートは、上記回路部品よりも大きな形状を有するとともに、この熱伝導シートのうち上記回路部品の外周囲に張り出す外周部が上記回路基板の実装面に跨って接していることを特徴とする回路モジュール。
【請求項11】 請求項10の記載において、上記冷却ユニットの受熱部は、押え金具を介して上記回路基板に固定され、この受熱部の熱伝導シートが上記回路部品および上記実装面の双方に直に押し付けられていることを特徴とする回路モジュール。
【請求項12】 発熱する回路部品と、この回路部品の熱を受ける受熱部と、上記回路部品の熱を放出する放熱部と、上記受熱部と放熱部との間で液状の冷媒を移動させる管路とを含み、上記受熱部に移された回路部品の熱を上記冷媒の移動により上記放熱部に輸送する冷却ユニットと、を備えている回路モジュールにおいて、上記冷却ユニットの受熱部は、一端に上記管路が接続される接続口を有する袋状をなすとともに、柔軟な熱伝導性のゴム状弾性体にて構成され、この受熱部が上記回路部品に押し付けられていることを特徴とする回路モジュール。
【請求項13】 請求項12の記載において、上記冷却ユニットの放熱部は、一端に上記管路が接続される接続口を有する袋状をなすとともに、柔軟な熱伝導性のゴム状弾性体にて構成され、この放熱部がヒートシンクに押し付けられていることを特徴とする回路モジュール。
【請求項14】 発熱体を内蔵する筐体と、上記発熱体の熱を受ける受熱部と、上記発熱体の熱を放出する放熱部と、上記受熱部と放熱部とに間で液状の冷媒を移動させる管路とを含み、上記受熱部に移された発熱体の熱を上記冷媒の移動により上記放熱部に輸送する冷却ユニットと、を備えている電子機器において、上記冷却ユニットの少なくとも受熱部は、その発熱体に熱的に接続される外周部分がゴム状弾性体からなる柔軟な熱伝導シートにて構成されていることを特徴とする電子機器。
【請求項15】 請求項14の記載において、上記冷却ユニットの放熱部は、ヒートシンクに熱的に接続されているとともに、このヒートシンクは、上記筐体に収容されていることを特徴とする電子機器。
【請求項16】 請求項15の記載において、上記放熱部は、上記ヒートシンクに熱的に接続される外周部分がゴム状弾性体からなる柔軟な熱伝導シートにて構成されていることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図12】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図15】
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【図13】
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【公開番号】特開2002−100713(P2002−100713A)
【公開日】平成14年4月5日(2002.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−291291(P2000−291291)
【出願日】平成12年9月25日(2000.9.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】