説明

冷却風導入構造

【課題】パワーユニットの車両後側に配置される被冷却体に対し、外気を良好に導くことができるようにする。
【解決手段】車両前端に設けられた開口部と、車両前部20のエンジンコンパートメント22の車両下側に設けられるアンダカバー12と、車両前部20の前輪取付け部24の周囲に設けられるフェンダライナ14と、エンジンコンパートメント22に搭載されるパワーユニット36の側方に設けられ、アンダカバー12とフェンダライナ14とを組み合わせて構成され、開口部10に向けて前端16Aが開口し、パワーユニット36の車両後側に配置された被冷却体38に向けて後端16Bが開口するダクト部16と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行風を冷却風として被冷却体に導くための冷却風導入構造に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの車両前方に配置されたラジエータに対し、車両前端に設けられたグリルやバンパカバーの開口部を通じて冷却風を導く車体前部構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−69651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両前端のバンパカバー等の開口部と被冷却体との間にエンジン等のパワーユニットが配置される場合、該開口部から導入された外気がエンジンに遮られて被冷却体に至り難く、被冷却体を効率的に冷却する観点からは改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、パワーユニットの車両後側に配置される被冷却体に対し、外気を良好に導くことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、車両前端に設けられた開口部と、車両前部の車両下側に設けられるアンダカバーと、前記車両前部の前輪取付け部の周囲に設けられるフェンダライナと、前記車両前部のエンジンコンパートメントに搭載されるパワーユニットの側方に設けられ、前記アンダカバーと前記フェンダライナとを組み合わせて構成され、前記開口部に向けて前端が開口し、前記パワーユニットの車両後側に配置された被冷却体に向けて後端が開口するダクト部と、を有している。
【0007】
請求項1に記載の冷却風導入構造では、車両前端の開口部から取り入れられた外気が、パワーユニットに遮られることなく、ダクト部を通じて、該パワーユニットの車両後側に配置された被冷却体に導入される。このため、パワーユニットの車両後側に配置される被冷却体に対し、外気を良好に導くことができる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の冷却風導入構造において、前記ダクト部は、前記車両前部に設けられ車両前後方向に延びるフロントサイドメンバの車両下方に設けられる。
【0009】
請求項2に記載の冷却風導入構造では、ダクト部がフロントサイドメンバの車両下方に設けられているので、該フロントサイドメンバの車両下方のデッドスペースを有効に利用しつつ、外気を被冷却体に導入することができる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の冷却風導入構造において、前記ダクト部の前記後端の側壁部に、車幅方向中央側に向けて傾斜するガイド部が設けられている。
【0011】
請求項3に記載の冷却風導入構造では、ダクト部の後端から車両後方に流れ出る外気の流れが、該後端の側壁部に設けられ車幅方向内側に傾斜したガイド部により、車幅方向内側に偏向する。このため、被冷却体の車幅方向中央部により多くの外気を導入でき、該被冷却体を効率的に冷却することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の冷却風導入構造によれば、パワーユニットの車両後側に配置される被冷却体に対し、外気を良好に導くことができる、という優れた効果が得られる。
【0013】
請求項2に記載の冷却風導入構造によれば、フロントサイドメンバの車両下方のデッドスペースを有効に利用しつつ、外気を被冷却体に導入することができる、という優れた効果が得られる。
【0014】
請求項3に記載の冷却風導入構造によれば、被冷却体の中央部により多くの外気を導入でき、該被冷却体を効率的に冷却することができる、という優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】冷却風導入構造を示す斜視図である。
【図2】冷却風導入構造を示す分解斜視図である。
【図3】冷却風導入構造を示す正面図である。
【図4】冷却風導入構造において、ダクト部を通じた外気の流れを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。図1,図2において、本実施形態に係る冷却風導入構造Sは、開口部10と、アンダカバー12と、フェンダライナ14と、ダクト部16と、を有している。
【0017】
図2において、開口部10は、車両前端の一例たるバンパカバー18に設けられた外気の取入れ口である。この開口部10は、例えば車幅方向に長く形成されている。なお、開口部10の形状はこれに限られず、また開口部10内に整流用のグリル(図示せず)を設けてもよい。
【0018】
図1から図3において、アンダカバー12は、車両前部20の車両下側に設けられる保護部材及び整流部材であって、例えば該車両前部20のエンジンコンパートメント22の車両下側に取り付けられている。アンダカバー12の車幅方向両端には、車両上方へ延びる縦壁部12Aが設けられている。この縦壁部12Aの上端には、車幅方向外側へ延びる横壁部12Bが設けられている。縦壁部12Aの後端部には、車幅方向内側に傾斜した傾斜面12Cが設けられている。
【0019】
図1から図3において、フェンダライナ14は、車両前部20の前輪取付け部24の周囲に設けられる部材であって、該前輪取付け部24の形状に対応したアーチ部26を主体として構成されている。アーチ部26の車幅方向内側端には、前輪取付け部24とエンジンコンパートメント22とを仕切る仕切り部28が設けられている。図1に示されるように、仕切り部28には、例えば、ドライブシャフト32を通すための切欠き28Aと、ステアリングギヤボックス(図示せず)から延びるタイロッド34を通すための切欠き28Bとが形成されている。
【0020】
またアーチ部26の前端下部には、バンパカバー18と、アンダカバー12の縦壁部12Aと、該アーチ部26との間の空間に異物(図示せず)が侵入することを抑制するカバー部30が設けられている。このカバー部30は、底部30Aと、下側縦壁部30Bと、横壁部30Cと、上側縦壁部30Dとを有して構成されている。
【0021】
底部30Aは、略水平、又は車両のアプローチアングルを考慮して車両前方側に向かうに従って車両上方に傾斜している。底部30Aの車両前方側から車幅方向外側にかけての輪郭は、バンパカバー18の車幅方向端部の湾曲形状に対応して、弧状に形成されている。下側縦壁部30Bは、底部30Aの車幅方向内側端から車両上方へ延びている。横壁部30Cは、下側縦壁部30Bの上端から車幅方向外側へ張り出している。そして上側縦壁部30Dは、横壁部30Bの車幅方向外側端から車両上方へ延びて終端している。
【0022】
図1,図3に示されるように、下側縦壁部30B、横壁部30C及び上側縦壁部30Dは、車両正面視でクランク形状をなしている。アーチ部26の前端部の車幅方向内側端は、このクランク形状の車幅方向外側に沿うように形成されている。カバー部30における横壁部30C及び上側縦壁部30Dは、アーチ部26の前端部を跨いで、仕切り部28と車幅方向に重なる位置まで車両後方に延設されている。
【0023】
フェンダライナ14は、アーチ部26及び仕切り部28に、カバー部30を、例えばクリップ(図示せず)を用いて一体化することで構成されている。具体的には、アーチ部26の前端下部には、例えば車両後方側へ張り出したフランジ26Fが設けられており、底部30Aの後端部30Rが、該フランジ26Fの下面に、例えばクリップを用いて連結されている。また上側縦壁部30Dのうち仕切り部28と重なる後端部30Eが、該仕切り部28に、例えばクリップを用いて連結されている。なお、カバー部30、下側縦壁部30B、横壁部30B及び上側縦壁部30Dを、アーチ部26及び仕切り部28に一体成形してもよい。
【0024】
図1,図3に示されるように、カバー部30における底部30Aの下面は、アンダカバー12の下面と略面一とされている。これは、車両前部20の下側における円滑な空気の流れを考慮したものである。また下側縦壁部30Bの高さは、縦壁部12Aの高さよりも低く設定されている。横壁部30Cの幅は、横壁部12Bの幅と例えば同等に設定されている。そして上側縦壁部30Dは横壁部12Bよりも車両上方まで延設されている。
【0025】
図1から図3において、ダクト部16は、エンジンコンパートメント22に搭載されるパワーユニット36(図4)の側方に設けられ、アンダカバー12とフェンダライナ14とを組み合わせて構成されている。具体的には、ダクト部16は、縦壁部12A、横壁部12B、横壁部30C及び上側縦壁部30Dにより、断面矩形の筒状に構成されている。ダクト部16は、開口部10に向けて前端16Aが開口し、パワーユニット36の車両後側に配置された被冷却体38に向けて後端16Bが開口している。被冷却体38とは、ラジエータ、空調装置のコンデンサ、ハイブリッド車や電気自動車におけるインバータやモータ等である。
【0026】
カバー部30の下側縦壁部30Bは、アンダカバー12の縦壁部12Aと車幅方向に重なっており、これによってアンダカバー12とカバー部30(フェンダライナ14)とが閉断面化されている。
【0027】
図2に示されるように、車両前部20には、車両前後方向に延びるフロントサイドメンバ40が設けられている。図1,図3に示されるように、ダクト部16は、フロントサイドメンバ40の車両下方に、例えば上下に重なるように設けられている。
【0028】
フロントサイドメンバ40は、例えばエンジンコンパートメント22の左右に一対設けられている。フロントサイドメンバ40の後端側は、例えば、車両後方側に向かって斜め下方に傾斜する傾斜部42を経由して、車室(図示せず)の左右下部に設けられるサイドメンバ44へと連なっている。フロントサイドメンバ40の後部には、例えばサスペンションメンバ(図示せず)を取り付けるためのマウント部46が、車両下方に突出形成されている。またフロントサイドメンバ40の前端には、車幅方向に延びるバンパリインフォースメント48が取り付けられている。フロントサイドメンバ40の後部の車両上側には、車幅方向に延びるダッシュクロスメンバ50が設けられている。なお、フロントサイドメンバ40の周辺の車体構造は、これに限られない。
【0029】
ダクト部16の後端の側壁部には、車幅方向中央側に向けて傾斜するガイド部16Cが設けられている。このダクト部16は、例えば、アンダカバー12の縦壁部12Aの後端部に設けられた傾斜面12Cである。
【0030】
カバー部30の下側縦壁部30Bをアンダカバー12の縦壁部12Aに接合し、横壁部12Bの車幅方向外側端部にフランジ(図示せず)を設けて、該フランジを上側縦壁部30Dに接合することで、ダクト部16を閉断面構造とすることも可能である。
【0031】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図1,図4において、本実施形態に係る冷却風導入構造Sでは、エンジンコンパートメント22に搭載されるパワーユニット36の側方に、アンダカバー12とフェンダライナ14とを組み合わせて構成されるダクト部16が設けられている。ダクト部16の前端16Aは、車両前端におけるバンパカバー18の開口部10に向けて開口し、後端16Bは、パワーユニット36の車両後側に配置された被冷却体38に向けて後端16Bが開口している。従って、開口部10から矢印A方向に取り入れられた外気は、パワーユニット36に遮られることなく、ダクト部16を通じて、被冷却体38に導入される。このため、パワーユニット36の車両後側に配置される被冷却体38に対し、外気を良好に導くことができる。
【0032】
このとき、ダクト部16の後端16Bの側壁部に設けられたガイド部16Cにより、ダクト部16の後端16Bから車両後方に流れ出る外気の流れが、車幅方向内側に矢印B方向に偏向する。これにより、車両前方にパワーユニット36が位置しているため外気を導入し難い被冷却体38の車幅方向中央部に、より多くの外気を導入できる。そしてこの外気が、被冷却体38を矢印C方向に通過することで、該被冷却体38を効率的に冷却することができる。
【0033】
ダクト部16は、フロントサイドメンバ40の車両下方に設けられているので、該フロントサイドメンバ40の車両下方のデッドスペースを有効に利用することができる。
【0034】
これに加えて、図1,図3に示されるように、本実施形態では、アンダカバー12及びカバー部30(フェンダライナ14)が閉断面化されていることから、前輪(図示せず)が跳ね上げる石や泥等の異物(図示せず)に対する剛性が高まっており、該異物がエンジンコンパートメント22内へ侵入し難い。従って、該異物により被冷却体38が傷つくことを抑制する性能、いわゆる耐チッピング性能を向上させることができる。
【0035】
またこの閉断面化により、エンジンコンパートメント22とその車両側方との間に、アンダカバー12の縦壁部12Aと、カバー部30の下側縦壁部30B及び横壁部30Cとからなる2枚の壁部が存在することとなるため、エンジンコンパートメント22内で発生するエンジン音等が、車外に伝わり難くなる。このため、車外騒音の低減効果が得られる。
【0036】
(他の実施形態)
上記実施形態では、開口部10が設けられる車両前端の一例として、バンパカバー18を挙げたが、車両前端はこれに限られない。またダクト部16がフロントサイドメンバ40の車両下方に設けられるものとしたが、ダクト部16の配置はこれに限られるものではなく、例えばダクト部16を、フロントサイドメンバ40の車両上方や車幅方向内側等に設けてもよい。
【0037】
ダクト部16の後端のガイド部16Cの構成は、上記のものに限られず、例えばカバー部30の上側縦壁部30Dの後端部に、車幅方向中央側に向けて傾斜する傾斜面を設けてもよい(図示せず)。ダクト部16の車両後方に、サスペンション等の部品(図示せず)が存在する場合には、ダクト部16の後端16Bから車両後方に流れ出る外気を、該部品により車幅方向中央側へ偏向させることも可能である。従って、このような場合には、ダクト部16の後端にガイド部16Cを設けない構成としてもよい。
【0038】
ダクト部16は、断面矩形のものに限られない。またダクト部16は、閉断面構造のものに限られず、開断面構造であっても、実質的に被冷却体38に外気を導入できるものであればよい。
【符号の説明】
【0039】
10 開口部
12 アンダカバー
14 フェンダライナ
16 ダクト部
16A 前端
16B 後端
16C ガイド部
18 バンパカバー(車両前端)
20 車両前部
22 エンジンコンパートメント
24 前輪取付け部
36 パワーユニット
38 被冷却体
40 フロントサイドメンバ
S 冷却風導入構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前端に設けられた開口部と、
車両前部の車両下側に設けられるアンダカバーと、
前記車両前部の前輪取付け部の周囲に設けられるフェンダライナと、
前記車両前部のエンジンコンパートメントに搭載されるパワーユニットの側方に設けられ、前記アンダカバーと前記フェンダライナとを組み合わせて構成され、前記開口部に向けて前端が開口し、前記パワーユニットの車両後側に配置された被冷却体に向けて後端が開口するダクト部と、
を有する冷却風導入構造。
【請求項2】
前記ダクト部は、前記車両前部に設けられ車両前後方向に延びるフロントサイドメンバの車両下方に設けられる請求項1に記載の冷却風導入構造。
【請求項3】
前記ダクト部の前記後端の側壁部に、車幅方向中央側に向けて傾斜するガイド部が設けられている請求項1又は請求項2に記載の冷却風導入構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−183945(P2012−183945A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49186(P2011−49186)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】