説明

冷延鋼板および溶融めっき鋼板ならびに該鋼板の製造方法

【課題】延性と曲げ性を両立させた高張力冷延鋼板及び溶融めっき鋼板を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.08〜0.25%、Si:0.7%以下、Mn:1.0〜2.6%、Al:1.5%以下、P:0.02%以下、S:0.02%以下、N:0.01%以下、かつ、SiとAlとの関係が、1.0%≦Si+Al≦1.8%を満足し、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有し、好ましくは、残留γ相を5体積%以上含む鋼組織を有し、表面から表面直下の0.1mmまでの深さの領域について、最大硬度と最小硬度の差がビッカース硬度で10以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、建築、電気機器等用の部材として主に使用される高張力の鋼板の中で、成形性、具体的には延性および曲げ性に優れる冷延鋼板および溶融めっき鋼板、ならびにこれらの鋼板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の技術分野においては、車体を軽量化させつつ衝突安全性を確保するための開発が盛んに行われている。車体を軽量化すべく鋼板厚を薄くすると、成形性のよい軟質な鋼板では安全性を維持できなくなってしまう。このため、強度を高めた高張力鋼板の需要が高まっている。
【0003】
しかしながら、強度が高くなると、一般的には、延性の低下および曲げ性の低下が発生しやすくなってしまう。このため、従来の高張力鋼板では部品加工時に割れが発生しやすく、部品設計の自由度を高めることができなかった。そこで、高強度でありながら、延性および曲げ性に優れた鋼板が必要とされている。
【0004】
ここで、鋼におけるSi含有量を多くすることは、良好な強度−延性バランスを確保する観点から非常に有効であり、さらに、フェライト生成元素のAlとオーステナイト生成元素のMnとを多量に含有させて、残留オーステナイトのTRIP効果を利用した高延性高張力鋼板の開発が行われている。
【0005】
このようなTRIP効果によって延性改善を図る鋼板は、塑性加工においてマルテンサイトを発生させることで高い延性を確保している。しかしながら、この生成するマルテンサイトが曲げ加工において障害となってしまうことから、このような鋼板では良好な曲げ性が得られないことが一般的であった。このため、自動車の足回り部品、補強部品を中心に、曲げ性は重要な特性の一つであるにも関わらず、曲げ性と延性とを両立させる高張力鋼板の開発はこれまでなされていない。
【0006】
例えば、特許文献1では、Si、Al添加型の残留γ型高強度鋼板が開示されており、実施例には引張強度TS(MPa)×全伸びEl(%)が開示されているが、部品加工に重要な曲げ性に関してはなんら言及されておらず、部品加工性に優れているかは不明である。
【0007】
一方、耐食性および外観の向上という市場の要求に応えて部材の表面処理鋼板化が進んでおり、現在では、溶融めっき法などによって形成されためっき被膜を供えためっき鋼板が多くの部材に用いられている。しかし、通常の溶融亜鉛めっき工程では、Si含有量が多い鋼板を基材として用いた場合には、通常の還元性の雰囲気下でもSiの酸化物が鋼板表面に濃化し、めっきぬれ性の低下、およびその結果としてめっき密着性の低下を招いてしまう。したがって、通常のSi含有鋼ではめっき密着性の劣化が懸念されるため、高い耐食性が求められる用途への適用は進んでいない。その一方で、欧州における車体の20年保証防錆の動きにみられるように、耐食性の要求は年々厳しくなっており、十分な耐食性を有する高張力溶融めっき鋼板の開発が切実に望まれている。
【0008】
このような要請に応えるべく、高張力鋼板についてめっき密着性の観点を含めた検討はこれまでもなされているが、さらに曲げ性をも考慮した例はない。
例えば、特許文献2には溶融亜鉛めっきの製造条件と特性の関係が開示されているが、上記の特許文献と同様にTS×Elの改善のための溶融亜鉛めっきの製造条件が検討されているに過ぎず、曲げ性を向上させるとの観点ではなんら検討がなされていない。
【特許文献1】特開2003−105486号
【特許文献2】特開平11−131145号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上述べたように、高い強度を有しつつ、良好な成形性、特に延性と曲げ性を両立させるとの課題を効率よく解決できる技術は未だ開示されておらず、高張力鋼板の適用を推進する上で、これらの課題の解決が求められていた。
【0010】
本発明の目的は、この課題を解決し、成形性、特に延性および曲げ性の双方に優れた引張強度590MPa以上の冷延鋼板および溶融めっき鋼板ならびにこれらの鋼板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記問題点を解決するため、化学組成および製造条件が鋼板の材質に及ぼす影響を詳細に調査した結果、以下の知見を得た。
【0012】
(a)TRIP効果による高延性を実現するためには、鋼板中の残留γ相の割合が5体積%以上であることが必要である。
【0013】
(b)5体積%以上の残留γ量を実現するためには、鋼板の化学組成において、SiおよびAlの含有量の和を所定の範囲以上に制御する必要がある。
【0014】
(c)さらに、次の2条件を満足する鋼板が良好な延性と曲げ性を両立しうる:
TS×El≧17500(TS:引張強度(MPa)、El:全伸び(%))、
ρ≦1.5×t(ρ:限界曲げ半径(mm)、t:板厚(mm))。
【0015】
(d)硬度が異なる相または組織の界面が亀裂起点となるため、組織の硬度ばらつきを抑制することで、限界曲げ半径を小さくすることが可能である。
【0016】
(e)残留γ相を安定化させるためには、主相(複合組織において体積率が最大の相または組織をいう。)をフェライト、第二相(上記の主相以外の相および組織をいう。)をベイナイトとすることが好ましく、この場合には、ベイナイトの硬度を低くすることで、限界曲げ半径を小さくすることが実現される。
【0017】
(f)上記特性を有する鋼板を安定的に製造する方法における特に重要な管理温度は次のとおりである:
ア)仕上温度、
イ)巻取温度、
ウ)均熱温度、
エ)合金化処理温度。
【0018】
上記の知見に基づき次の発明を完成するに至った。
(1)質量%で、C:0.08〜0.25%、Si:0.7%以下、Mn:1.0〜2.6%、Al:1.5%以下、P:0.03%以下、S:0.02%以下およびN:0.01%以下を含有し、かつ、SiとAlとの関係が1.0%≦Si+Al≦1.8%を満足し、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有し、TS≧590(TS:引張強度(MPa))、TS×El≧17500(El:全伸び(%))、およびρ≦1.5×t(ρ:限界曲げ半径(mm)、t:板厚(mm))を満たす機械特性を有することを特徴とする冷延鋼板。
【0019】
ここで、限界曲げ半径の測定は次のようにして行う。JIS Z2248(1996)に記載の押曲げ法に記載される曲げ方法により170°まで曲げた後に、複数の異なる曲げ半径での180°曲げおよび密着曲げを行って、曲げ部外側の表面を観察する。そして、亀裂およびくびれ(ネッキング)が観察されない最小の曲げ半径を限界曲げ半径とする。なお、上記の「くびれ」とは、周囲の板厚と比較して20%以上の局部的な板厚減少を伴うものをいう。
【0020】
(2)残留γ相を5体積%以上含む鋼組織を有し、表面から表面直下の0.1mmまでの深さの領域について、最大硬度と最小硬度との差がビッカース硬度で10以下である硬度分布を有する、上記(1)に記載の冷延鋼板。
【0021】
ここで、鋼板の板厚方向の表面から1/4板厚深さ位置までの断面について、最大硬度と最小硬度との差がビッカース硬度で10以下であることが好ましい。
また、残留γ量は20体積%以下であることが好ましく、15体積%以下であれば特に好ましい。
【0022】
さらに、鋼組織として、主相がフェライトであって、第二相がベイナイトおよび残留γ相であることが好ましい。
【0023】
(3)前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ni:1.0%以下およびCu:0.5%以下の1種または2種を含有する、上記(1)または(2)に記載の冷延鋼板。
【0024】
(4)前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.1%以下、Nb:0.1%以下およびV:0.2%以下からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有する、上記(1)から(3)のいずれかに記載の冷延鋼板。
【0025】
(5)前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Co:1.0%以下、Cr:1.0%以下、Mo:1.0%以下およびB:0.01%以下からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有する、上記(1)から(4)のいずれかに記載の冷延鋼板。
【0026】
(6)前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.01%以下を含有する、(1)から(5)のいずれかに記載の冷延鋼板。
【0027】
(7)前記化学組成のSiが、質量%で、Si:0.6%以下である化学組成を有する上記(1)から(6)のいずれかに記載の冷延鋼板の表面に、亜鉛を含む溶融めっき層を備えることを特徴とする溶融めっき鋼板。
【0028】
ここで、「亜鉛を含む溶融めっき層」とは、亜鉛のみによる溶融めっき層でもよいし、亜鉛に加えて、例えばアルミニウムが含まれた合金による溶融めっき層でもよい。また、溶融めっき処理後に鋼板構成元素との合金化処理が行われていてもよい。このように、「溶融めっき鋼板」とは、溶融めっき処理時に亜鉛を含む合金がめっきされたもの、および溶融めっき処理後にめっきが合金化されたものを含む。また、溶融めっき層における亜鉛の含有量が50質量%以下の場合も含む。
【0029】
(8)前記溶融めっき層が合金化溶融亜鉛めっき層である上記(7)記載の溶融めっき鋼板。
【0030】
(9)上記(1)から(6)のいずれかに記載される化学組成を有するスラブに、仕上温度:Ar点〜(Ar点+80℃)、巻取温度:450〜680℃の熱間圧延を施して熱延鋼板となし、前記熱延鋼板に酸洗および冷間圧延を施して冷延鋼板となし、前記冷延鋼板に、二相共存温度域で30秒以上保持し、次いで3℃/s以上の冷却速度で350〜600℃の温度域まで冷却し、該温度域に5秒以上保持する、連続焼鈍処理を施すことを特徴とする冷延鋼板の製造方法。
【0031】
ここで、「二相共存温度域」とは、フェライト(α)/オーステナイト(γ)の二相が共存するAc点〜Ac点の温度域である。
なお、上記二相共存温度域に保持した後の冷却における冷却速度を5〜30℃/sとしてもよい。また、仕上圧延の開始温度を1050℃以下とする条件を追加的に備えてもよい。
【0032】
(10)上記(1)から(6)のいずれかに記載される化学組成を有するスラブに、仕上温度:Ar点〜(Ar点+80℃)、巻取温度:450〜680℃の熱間圧延を施して熱延鋼板となし、前記熱延鋼板に酸洗および冷間圧延を施して冷延鋼板となし、前記冷延鋼板に、二相共存温度域で30秒以上保持し、次いで3℃/s以上の冷却速度で450〜600℃の温度域まで冷却し、該温度域に5秒以上保持し、さらに亜鉛を含む溶融めっき層を形成する、連続溶融めっき処理を施すことを特徴とする溶融めっき鋼板の製造方法。
【0033】
(11)前記連続溶融めっき処理で得られた溶融めっき鋼板に対して、580℃以下の合金化処理温度で合金化処理を行うことを特徴とする上記(10)記載の溶融めっき鋼板の製造方法。
【0034】
なお、合金化処理温度の下限は、めっき組成および鋼板組成、ならびに目的の合金組成、さらには経済性によって決定されるものであり、例えば450℃が挙げられる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、成形性に優れた、特に良好な延性と曲げ性とを兼ね備えた、引張強度590MPa以上の冷延鋼板および溶融めっき鋼板が提供される。この鋼板は、自動車、建築、電気機器等用の部材、特に自動車の足回り周辺の構造部材や補強備品用の部材の素材に好適であり、各技術分野において極めて有益である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下に、本発明の最良の形態や製造条件の範囲およびこれらの設定理由について説明する。なお、本明細書において、化学組成を示す「%」は、特にことわりが無い限り「質量%」である。
【0037】
1.化学組成
まず、本実施形態に係る鋼の化学組成について説明する。
C:本実施形態に係る鋼は、Cを含有させて残留γ相を生成させることにより強度−延性バランスを向上させる。Cの含有量は狙いとする強度に応じて調整すればよいが、本実施形態に係る鋼が狙いとする590MPa以上の引張強度を達成するためには、少なくとも0.08%以上とする必要がある。好ましくは0.10%以上である。一方、上限は、自動車の足回り部品や補強備品を本実施形態に係る鋼の典型的な用途として想定しているため、スポット溶接性の観点から0.25%以下とする。好ましくは0.20%以下である。
【0038】
Si:Siは、フェライト形成元素であり、オーステナイト中にCを濃縮させ、オーステナイトの安定度を調整して、TRIP効果による高延性を実現するために有効な元素である。しかしながら、鋼板表層に偏析しやすく易酸化元素でもあるため、含有量が多い場合には、酸洗後の表面性状を低下させる。したがって、その上限は0.7%以下とする。また、溶融めっきを行う場合には、めっきのぬれ性が極度に低下するため、その上限は0.6%以下とする。
【0039】
Al:Alは、Siと同じように、フェライト形成元素であり、オーステナイト中にCを濃縮させ、オーステナイトの安定度を調整して、TRIP効果による高延性を実現するために重要な元素である。しかしながら、過剰に含有してもその効果は飽和し、しかも、DCバット溶接時などに溶融金属界面に介在物としてAlが析出して著しく溶接強度を低下させる。したがって、その上限は1.5%以下とする。
【0040】
SiとAlとの和:前述のように、SiおよびAlはフェライト形成元素であり、残留γ相を安定化させるには必須元素であり、上記C含有量の範囲で、残留γ量を5体積%以上とするには、これらの元素の含有量の総和を1.0%以上とする必要がある。好ましくは1.2%以上である。一方、その和が1.8%超では効果が飽和し、むしろ、SiおよびAlそれぞれの含有量が多い場合に懸念される悪影響(表面性状の低下やめっき性の低下、溶接強度の低下)が顕在化するおそれが高まってしまう。したがって、SiおよびAlの含有量の和における上限を1.8%以下とする。経済性をも考慮すると好ましくは1.7%以下である。
【0041】
Mn:Mnは、鋼板の強度を高めるだけでなく、オーステナイトの安定化に作用する元素である。また、高温からの冷却中に炭化物の生成を抑制し、曲げ性を向上させる効果がある。これらの効果を発揮させるためには少なくとも1.0%以上のMnの含有が必要であり、狙いとする強度に応じてこの下限値以上でMnの含有量を調整すればよい。一方、上限は、曲げ性に悪影響を及ぼすバンド状組織の形成を抑制する観点や、さらには脆化抑制や経済性の観点から2.6%以下とする。好ましくは2.1%以下である。
【0042】
P:P含有量は極力低い方が好ましい。特にその含有量が0.03%を超えると鋼板のスポット溶接性が著しく劣化し、かつ延性が劣化する。したがって、P含有量は0.03%以下とする。
【0043】
S:S含有量も極力低い方が好ましい。特にその含有量が0.02%を超えると、オーステナイト安定化元素として含有させるMnを析出物(MnS)として消費してしまい、特性に大きな影響を与える。また、この析出物は、亀裂要因となって鋼板の曲げ性を低下させる。したがって、S含有量は0.02%以下とする。
【0044】
N:Nは0.01%を超えるとAlNとして消費されるAlの量が多くなり、上述したAlの効果が小さくなって鋼板の特性が低下してしまう。さらに、生成したAlNに起因する延性の劣化が顕在化しやすくなる。したがって、N含有量は0.01%以下とする。
【0045】
本実施形態に係る鋼板は次の元素を任意成分として含んでもよい。
Ni、Cu:これらの元素はMnと同じように、オーステナイト生成元素であり、オーステナイトの安定化に作用すると同時に、強度を向上させる作用も有する。また、めっき密着性および溶融めっき時のめっきのぬれ性を向上させる元素である。しかも、Feよりも酸化しにくい元素であるので、鋼板表層に濃化し、Siの酸化によるめっき密着性およびぬれ性の低下を抑制する。したがって、これらの元素の1種以上を含有させることができる。しかしながら、Ni含有量が過剰であると熱間圧延段階で厚く密着性の高いスケールが発生し、鋼板の表面疵の原因となる。また、Cu含有量が過剰であると熱間圧延時に割れを生じる。このため、Ni含有量は1.0%以下とし、経済性をも考慮すると好ましくは0.8%以下である。また、Cu含有量は0.5%以下とする。
【0046】
Ti、Nb、V:これらの元素は強度を向上させるだけでなく、亜鉛を含む溶融めっきを施して合金化処理を行う場合には合金化速度を向上させる作用を有する。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させることができる。しかしながら、過剰の添加はTiCなどの析出物を大量に析出させ、こうした析出物は延性の劣化をもたらすだけでなく曲げ性の劣化をも招く。また、これらの元素はめっき層中のFe%を増加させる作用も有するため、過剰の添加は合金化溶融亜鉛めっきを施した場合においてパウダリング性を劣化させる。したがって、TiおよびNbを含有させる場合にはそれぞれ0.1%未満とする。Vについては、TiやNbと比較すると同一量含有させた場合の効果が小さいため、その含有量は0.2%未満とする。
【0047】
Co、Cr、Mo、B:高温からの冷却過程で生成する可能性のあるパーライトは曲げ性に悪影響を及ぼすが、これらの元素はパーライトの生成を抑制するため曲げ性の向上に有効である。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかしながら、CoおよびCrの含有量についてはそれぞれ1.0%超、Mo含有量については1.0%超、B含有量については0.01%超含有させても効果は飽和するだけであるから、経済的観点から好ましくない。よって、これらの元素の含有量の上限は、CoおよびCrについてはそれぞれ1.0%以下、Mo含有量については1.0%以下、B含有量については0.01%以下とする。
【0048】
Ca:Caは、介在物の形態を制御して曲げ性を向上させる作用を有する。しかしながら、0.01%超含有させてもその効果は飽和して経済的に不利となる。このため、Caを含有させる場合には、その含有量を0.01%以下とする。
【0049】
上記以外の成分はFeおよび不純物である。
【0050】
2.機械特性、鋼組織、硬度分布
次に、本実施形態に係る鋼板の機械特性、鋼組織および硬度分布について説明する。
【0051】
(1)強度および延性と残留γ相
本実施形態に係る鋼板は、上記の化学組成を有し、引張強度(TS)が590MPa以上であって、さらに、TRIP効果によって優れた延性を発現させることで、次式を満たしている:
TS×El≧17500(TS:引張強度(MPa)、El:全伸び(%))。
【0052】
このため、鋼板内にγ相が残留していることが必要であり、この残留γ相の体積率は少なくとも5体積%以上であって、好ましくは、10体積%以上である。一方、この残留γ相が過剰である場合には、残留γ相から生成するマルテンサイトの体積率が多くなり、曲げ性に悪影響を及ぼす可能性が懸念される。したがって、残留γ相の体積率の上限は20%以下が好ましく、特に好ましくは15%以下である。
【0053】
なお、この残留γ相が多く残留しやすい化学組成からなる鋼板であっても、その残留γ相が不安定な場合、具体的には残留γ相に固溶する炭素濃度が低い場合には、例えば製造過程における熱処理(具体例としては合金化処理が挙げられる。)において残留γ相が分解してしまうことが懸念される。したがって、本実施形態に係る鋼板は、残留γ相の炭素濃度が高くなるように、ベイナイトを有することが好ましい。
【0054】
したがって、本実施形態に係る鋼板の鋼組織の特に好ましい態様は、主相がフェライトであって、第二相がベイナイトと5〜20体積%の残留γ相である。
(2)曲げ性および硬度分布
本実施形態に係る鋼板が上記のような主相および第二相を有する場合には、第二相におけるベイナイトの硬度を低くすることが、良好な曲げ性を維持するために重要である。
【0055】
主相であるフェライトに比べて、第二相のベイナイトは、含有する炭素濃度などによって硬度が変動しやすい。このため、ベイナイトの硬度が高い場合には、フェライトとの硬度差が大きくなり、この二相の界面が曲げ加工時に亀裂起点となって割れが発生し易くなる。この硬度差に起因する亀裂は、曲げ加工時に圧縮応力や引張応力が顕著に与えられる表面近傍の領域において特に顕著である。
【0056】
そこで、表面から表面直下の0.1mmまでの深さの領域の硬度ばらつきについては、ビッカース硬度で10以下とする。好ましくは、鋼板の板厚方向の表面から1/4板厚深さ位置までの断面について、最大硬度と最小硬度の差がビッカース硬度で10以下とする。鋼板全体について硬度差が10以下であれば特に好ましい。
【0057】
このとき、曲げ性能として、ρ≦1.5×t(TS:引張強度(MPa)、ρ:限界曲げ半径(mm)、t:板厚(mm))が得られ、優れた曲げ性を有する鋼板を得ることが実現される。
【0058】
なお、上記のように、本実施形態に係る鋼板が、フェライトを主相、ベイナイトを第二相として有する場合でない場合であっても、鋼板内の上記の表層領域における硬度ばらつきが抑制されていれば、同様に、優れた曲げ性を呈する。
【0059】
3.製造方法
本実施形態に係る鋼板は、上記のような化学組成や組織上の特徴を有し、引張強度が590MPaであって、さらに上記の2式で規定される機械特性を有するのであれば、製造方法には特に限定されない。ただし、次のような製造方法を採用すれば、本実施形態に係る鋼板を効率的に、かつ安定的に得ることが実現される。
【0060】
(1)熱間圧延
ア)粗圧延まで
上記の化学組成を有する鋼を常法により鋳造し、あるいはさらに分塊圧延し、得られたスラブを粗圧延する。スラブは常法により加熱して粗圧延されたのち、仕上圧延に供されるが、連続鋳造により得られたスラブを直送する場合や分塊圧延後のスラブを速やかに粗圧延に供する場合のように、鋳造もしくは分塊圧延後のスラブ温度が高く、後述する仕上圧延における仕上温度が確保できる場合には、スラブ加熱を省略して粗圧延しても構わない。また、薄スラブCCなど公知の方法により薄い鋳片が得られる場合には、粗圧延を省略しても構わない。
【0061】
イ)仕上圧延
本実施形態に係る鋼板を製造する際の熱延板は、曲げ性を劣化させるバンド状の組織を生じさせないように、極力均一な鋼組織を備えたものとすることが好ましい。
【0062】
仕上温度を、Ar点に満たない温度とすると、バンド状の組織が形成されてしまう。この組織は冷間圧延ならびに連続焼鈍処理または連続溶融めっき処理を施した後の鋼組織にも影響を及ぼし、不均一な鋼組織を形成するため、曲げ性の劣化をもたらす。したがって、仕上温度はAr点以上とすることが好ましい。一方、仕上圧延後のフェライト変態を促進して鋼組織の均一化を図る観点からは、仕上圧延においてオーステナイトに導入する圧延歪み量が多い程好ましいので、仕上温度はより低温とすることが好ましい。したがって、仕上温度は(Ar点+80℃)以下とすることが好ましい。
【0063】
なお、仕上圧延において、前述の仕上温度を鋼材の全長にわたって確保するように、必要に応じて補助加熱手段を用いることが望ましい。鋼材が長い場合には、圧延途中で鋼材温度が低下し、熱間圧延の後期などにおいて上記の仕上温度の下限(Ar点)が確保されないおそれがある。そこで、仕上圧延の入側で補助的に再加熱を施すのがよい。この補助再加熱方法は限定されないが、仕上圧延の入側における鋼材の温度分布に応じた加熱量の制御が容易である電磁誘導加熱方式が好ましい。
【0064】
ウ)巻取温度
巻取温度で決定される鋼組織は、その後の冷間圧延および連続焼鈍処理を施して得られる冷延鋼板、ならびに冷間圧延および連続溶融めっき処理を施して得られる溶融めっき鋼板の特性に大きく影響する。このため、巻取温度の制御は重要である。
【0065】
具体的には、巻取温度は高めにするのが好ましい。巻取温度を高めることによって、鋼板内の微視的な炭素濃度分布にばらつきが発生しやすくなる。この微視的に炭素濃度が高い領域は、冷間圧延後の連続焼鈍処理や連続溶融めっき処理において、二相共存温度域で保持する際に速やかにオーステナイト変態し、フェライト相からのCの排出とオーステナイト相へのCの濃縮が促進される。さらに、冷却後に所定の温度域で保持する際のベイナイト変態も促進され、ベイナイト組織からのCの排出とオーステナイト相へのCの濃縮が促進される。その結果、安定な残留γ相が形成される。また、ベイナイト組織からのCの排出も促進されてベイナイト組織がより軟質となり、隣接するフェライト相との硬度差も小さくなるので、曲げ性も向上する。
【0066】
逆に、巻取温度が低い場合には、最終製品におけるベイナイト組織の硬度が高くなる。このような硬質のベイナイトが生成すると隣接するフェライト相との硬度差が大きくなり、この硬度の異なる相の界面が亀裂起点となって曲げ性の低下要因となる。
【0067】
なお、巻取温度が低くなると熱間圧延鋼板におけるベイナイトの硬質化も招き、これにより後続する冷間圧延が困難になるという製造上の問題も生じる。
上記のような問題を回避しうる温度として、巻取温度は450℃以上とすることが好ましい。
【0068】
一方、巻取温度を過度に高くすると、鋼板の表面が脱炭し表面品質が劣化してしまう。これを防止するために巻取温度は680℃以下とするのが望ましい。
【0069】
(3)酸洗・冷間圧延
上記熱間圧延工程により得られた熱間圧延鋼板は、酸洗により脱スケール処理されたのちに冷間圧延が施され冷間圧延鋼板とされる。酸洗および冷間圧延は常法でかまわない。しかしながら、冷間圧延における圧下率を過度に大きくすると、加工硬化により板破断が生じ、生産能率が低下する。したがって、冷間圧延における圧下率は45%以上85%以下が好ましい。
【0070】
(4)連続焼鈍処理
本実施形態に係る鋼板を実現するためには、フェライト(α)/オーステナイト(γ)の二相共存温度域で30秒以上保持することが好ましい。この工程により、フェライトからのCの排出とオーステナイトへのCの濃縮が促進される。具体的には、還元性雰囲気中でAc点〜Ac点の二相共存温度域に加熱して、30秒以上保持する。特に好ましい保持時間は60秒以上である。このときの還元性雰囲気としては、水素が1〜30体積%、残部が窒素および不可避的な微量の水分からなることが好ましく、その水分量は、露点として−60〜0℃の範囲であればよい。特に好ましいのは、水素が2〜15体積%、残部が窒素および不可避的な微量の水分であって、その水分量が、露点として−50〜−0℃の範囲である場合である。保持時間の上限は、特に規定する必要はないが、長時間の保持は生産性の低下や連続焼鈍設備の長大化を招くので、600秒以下とすることが好ましく、300秒以下とすることがさらに好ましい。また、上述したように二相共存温度域で保持すればよいのであり、二相共存温度域内で昇温や降温などの温度変化があっても構わない。さらにまた、二相共存温度域で保持する前に、一旦Ac点超の温度域まで加熱しても構わない。
【0071】
上記二相共存温度域での保持に続く冷却工程は次のように行うことが好ましい。本実施形態に係る鋼板は最終製品において所定量の残留γ相を含有させるため、二相共存温度域からの冷却途中でのパーライトの生成を避ける必要がある。そこで、350〜600℃の温度域まで、3℃/s以上で冷却することが好ましく、特に好ましい冷却速度は5℃/s以上である。冷却速度の上限は特に規定する必要はないが、実用的には100℃/s以下であり、50℃以下とすることが特に好ましい。
【0072】
このようにして、パーライト生成を回避しつつ冷却し、350〜600℃の温度域で保持してベイナイトを生成させることにより、γ相中のC濃度を高め、常温までの冷却過程においてα相と炭化物とに分解しないようにγ相を安定化させる。また、ベイナイトからのCの排出を促進させ、ベイナイトをより軟質にして曲げ性を向上させる。したがって、この保持時間が短すぎるとベイナイトの生成が不十分となるので5秒以上とする。過時効帯を備える連続焼鈍設備を用いる場合には通常60秒以上である。保持時間の上限は特に規定する必要はないが、過度に長いと生産性が著しく低下したり、連続焼鈍設備の長大化を招いたりするので300秒以下とすることが好ましく、180秒以下とすることがさらに好ましい。
【0073】
(5)連続溶融めっき処理
連続溶融めっき処理における二相共存温度域での保持およびそれに続く冷却についての条件および理由は、上記連続焼鈍処理の項で述べたのと同一である。二相共存温度域の保持に続く冷却における冷却速度の上限も特に規定する必要はないが、連続焼鈍の場合と異なり連続溶融めっきの場合には設備制約上30℃/s以下となる。
【0074】
連続溶融めっき処理における前記冷却後に保持する温度域の上限および保持する時間の下限およびその理由も上記連続焼鈍処理の項で述べたのと同一である。前記温度域の下限は、連続焼鈍の場合と異なり、後続する溶融めっき処理を施す際の熱効率の観点から450℃以上とすることが好ましい。前記保持時間の上限も連続焼鈍の場合と同様に特に規定する必要はないが、連続溶融めっきの場合には90秒以下とすることが実用的である。
【0075】
連続溶融めっき処理における溶融めっき処理は常法にしたがって行えばよい。溶融めっきの材質は亜鉛のみでもよいし、例えばアルミニウムを含有する合金であってもよい。
めっき後に合金化処理をする場合には、合金化処理温度を580℃以下にすることが好ましい。合金化処理温度が580℃を超えると、安定化したγ相がフェライトと炭化物に分解し、鋼板の特性として延性と曲げ性とが極端に低下する傾向がある。先に述べたように、熱間圧延の条件、特に巻取条件によって連続溶融亜鉛めっき処理における熱処理後のベイナイトの硬さを制御することが可能であるから、合金化処理温度を580℃以下に制御しつつ熱間圧延の条件を適切に設定することで、所望の曲げ性を得ることが実現される。
【0076】
なお、合金化処理温度の下限は、めっき組成および鋼板組成、ならびに目的の合金組成、さらには経済性によって決定されるものであり、例えば450℃が挙げられる。
また、めっき処理以降は通常の冷却条件にて冷却を行えばよい。このとき、Nおよび工業用ガスを用い冷却を行ってもよいし、さらに通常のミスト冷却を行ってもよい。
【0077】
(6)その他
以上の製造方法により、本実施形態に係る冷延鋼板や溶融めっき鋼板が、安定的かつ効率的に得ることが実現される。
【0078】
なお、上記以外の製造工程については公知の方法によって製造すればよい。例えば連続焼鈍処理後または溶融めっき処理後に、表面粗度調整や平坦矯正を目的にして、公知の方法により調質圧延を施しても構わない。
【0079】
また、本実施形態に係る冷延鋼板は、上記の機械的な特性や鋼組織上の特徴を有していれば、その表面になんらかの処理が施されていてもよい。その処理には、化成処理、電気めっき処理、塗装処理が例示される。化成処理は、リン酸亜鉛系の化成処理でもよいし、リン酸マンガン系の化成処理でもよい。電気めっき処理は、亜鉛系でもよいし、スズ系でもよい。塗装処理は、塗液への単なる浸漬でもよいし、電着塗装処理でもよい。
【実施例】
【0080】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0081】
1.冷延鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造
表1に示す実施例の製造条件を説明する。
【0082】
【表1】

【0083】
表1に示される化学組成からなるスラブを、1100℃〜1350℃に加熱して粗熱間圧延を行って粗バーとなし、前記粗バーに誘導加熱装置を用いた補助加熱を適宜施して仕上圧延を行い得られた熱延鋼板をコイル状に巻き取った。仕上温度および巻取温度を表2に示す。
【0084】
【表2】

【0085】
このようにして製造された熱延鋼板を、酸洗し、表1に示される板厚になるまで圧下率50%の冷間圧延を実施した。
【0086】
続いて、冷間圧延された鋼板に次の条件の連続焼鈍処理または連続溶融めっき処理を施した。
(連続焼鈍処理)
均熱温度:表2参照
均熱雰囲気:露点−30℃、3%H−97%N
均熱時間:60秒
冷却速度:60℃/s
低温保持温度:表2参照
低温保持時間:110秒
低温保持雰囲気:露点−30℃、3%H−97%N
連続焼鈍処理は、上記均熱条件で均熱したのちに、上記冷却速度で上記低温保持温度まで冷却し、上記低温保持条件で低温保持する、熱処理を施した。
【0087】
(溶融めっき処理)
均熱温度:表2参照
均熱雰囲気:露点−30℃、10%H、残部N
均熱時間:120秒
冷却速度:20℃/s(ガス冷却)
低温保持温度:表2参照
低温保持時間:20秒
低温保持雰囲気:露点−40℃、7〜12%H−88〜93%N
連続焼鈍処理は、上記均熱条件で均熱したのちに、上記冷却速度で上記低温保持温度まで冷却し、上記低温保持条件で低温保持する熱処理を施した。さらに亜鉛めっき浴の浴温460℃とほぼ同等の温度まで冷却し、付着量が30〜50g/mの範囲になるように制御しながら溶融亜鉛めっきを行った。引き続いて、表2に示される合金化処理温度で、めっき層中のFe濃度が10%になるように種々合金化処理時間を調整しつつ、合金化処理を行った。その後、20℃/sの冷却速度で250℃以下に冷却し、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得た。
【0088】
得られた冷延鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、スキンパスを行って平坦度などの微調整を行った。
【0089】
2.評価
得られた種々の冷延鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板の評価は次のようにして行った。
【0090】
冷延鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板の鋼組織は、光学顕微鏡、SEMおよびX線回折装置により分析して、得られた光学顕微鏡画像、電子顕微鏡画像および結晶構造データに基づいて組織の評価を行った。
【0091】
機械試験値(TS:引張強度、El:全伸び)についてはJIS Z2201 に規定される5号試験片を用い、JIS Z2241 に準拠して引張試験を実施して求めた。
曲げ試験はJIS Z2248に規定されている方法に従って実施した。押曲げ法により170°まで曲げた後に、複数の異なる曲げ半径での180°曲げおよび密着曲げを行って、曲げ部外側の表面を観察した。そして、亀裂およびくびれ(ネッキング)が観察されない最小の曲げ半径を限界曲げ半径とした。
【0092】
また、硬度測定はマイクロビッカース硬度測定装置を用いて、ビッカース法により測定した(測定荷重:9.8kN)。硬度測定範囲は、測定する鋼板の断面についての板幅方向:5mmおよび板厚方向:表面〜0.1mm深さ位置の範囲とし、板幅方向について0.5mm間隔、板厚方向について0.01mm間隔で硬度測定を行った。なお、いずれの測定点についても3回の測定を行い、平均値をその測定点の硬度とした。こうして測定された断面の硬度のうちで、最大の硬度および最小の硬度を抽出してこれらの差を求め、その鋼板の硬度差とした。
【0093】
3.結果
得られた種々の冷延鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板を上記の方法で評価した結果を表3に示す。
【0094】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、C:0.08〜0.25%、Si:0.7%以下、Mn:1.0〜2.6%、Al:1.5%以下、P:0.03%以下、S:0.02%以下およびN:0.01%以下を含有し、かつ、
SiとAlとの関係が1.0%≦Si+Al≦1.8%を満足し、
残部Feおよび不純物からなる化学組成を有し、
TS≧590(TS:引張強度(MPa))、
TS×El≧17500(El:全伸び(%))、および
ρ≦1.5×t(ρ:限界曲げ半径(mm)、t:板厚(mm))
を満たす機械特性を有することを特徴とする冷延鋼板。
【請求項2】
残留γ相を5体積%以上含む鋼組織を有し、
表面から表面直下の0.1mmまでの深さの領域について、最大硬度と最小硬度との差がビッカース硬度で10以下である硬度分布を有する、
請求項1に記載の冷延鋼板。
【請求項3】
前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ni:1.0%以下およびCu:0.5%以下の1種または2種を含有する、請求項1または2に記載の冷延鋼板。
【請求項4】
前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.1%以下、Nb:0.1%以下およびV:0.2%以下からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有する、請求項1から3のいずれかに記載の冷延鋼板。
【請求項5】
前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Co:1.0%以下、Cr:1.0%以下、Mo:1.0%以下およびB:0.01%以下からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有する、請求項1から4のいずれかに記載の冷延鋼板。
【請求項6】
前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.01%以下を含有する、請求項1から5のいずれかに記載の冷延鋼板。
【請求項7】
前記化学組成のSiが、質量%で、Si:0.6%以下である化学組成を有する請求項1から6のいずれかに記載の冷延鋼板の表面に、亜鉛を含む溶融めっき層を備えることを特徴とする溶融めっき鋼板。
【請求項8】
前記溶融めっき層が合金化溶融亜鉛めっき層である請求項7記載の溶融めっき鋼板。
【請求項9】
請求項1から6のいずれかに記載される化学組成を有するスラブに、仕上温度:Ar点〜(Ar点+80℃)、巻取温度:450〜680℃の熱間圧延を施して熱延鋼板となし、前記熱延鋼板に酸洗および冷間圧延を施して冷延鋼板となし、前記冷延鋼板に、二相共存温度域で30秒以上保持し、次いで3℃/s以上の冷却速度で350〜600℃の温度域まで冷却し、該温度域に5秒以上保持する、連続焼鈍処理を施すことを特徴とする冷延鋼板の製造方法。
【請求項10】
請求項1から6のいずれかに記載される化学組成を有するスラブに、仕上温度:Ar点〜(Ar点+80℃)、巻取温度:450〜680℃の熱間圧延を施して熱延鋼板となし、前記熱延鋼板に酸洗および冷間圧延を施して冷延鋼板となし、前記冷延鋼板に、二相共存温度域で30秒以上保持し、次いで3℃/s以上の冷却速度で450〜600℃の温度域まで冷却し、該温度域に5秒以上保持し、さらに亜鉛を含む溶融めっき層を形成する、連続溶融めっき処理を施すことを特徴とする溶融めっき鋼板の製造方法。
【請求項11】
前記連続溶融めっき処理で得られた溶融めっき鋼板に対して、580℃以下の合金化処理温度で合金化処理を行うことを特徴とする請求項10記載の溶融めっき鋼板の製造方法。

【公開番号】特開2009−270126(P2009−270126A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113920(P2008−113920)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】