説明

冷熱システム

【課題】冷媒が膨張する際のエネルギーを用いて圧縮機構の駆動を補助することができ、しかも膨張機構によって膨張させる冷媒の量を任意に調整することのできる冷熱システムを提供する。
【解決手段】第2回転部材2の各プラネタリーギア51は第1回転部材1のリングギア41に歯合していることから、膨張機構20によって冷媒を膨張させることにより、第1回転部材1に回転力を付与することができる。また、第1回転部材1と第2回転部材2との回転速度差に応じて各プラネタリーギア51が自転するとともに、第2回転部材2と第3回転部材3との回転速度差に応じて各プラネタリーギア51が自転するので、電動モータ30によって第2回転部材2と第3回転部材3との回転速度差を変えることにより、第1回転部材1と第2回転部材2との回転速度差を任意に調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば給湯器、冷凍・冷蔵ショーケース、自動販売機、空気調和装置等に用いられる冷熱システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の冷熱システムとしては、冷媒を圧縮する圧縮機構と、圧縮機構を駆動する回転軸と、回転軸を回転させる電動モータと、圧縮機構によって圧縮された冷媒の熱を外部に放熱する放熱器と、放熱器を通過した冷媒を膨張させる膨張弁と、膨張弁を通過した冷媒を蒸発させて外部から熱を吸収する蒸発器とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
ところで、従来の圧縮機には冷媒としてフロンガスが用いられていたが、環境への影響を考慮し、近年では冷媒として二酸化炭素が用いられるようになってきている。しかしながら、二酸化炭素を用いると従来の冷媒を使う場合と比較して冷却運転の効率が低く、省エネルギー化を図ることができないという問題点があった。
【0004】
そこで、他の冷熱システムとしては、回転軸と、回転軸を回転させる電動モータと、回転軸の一端側に設けられ、回転軸が回転することにより冷媒を圧縮するスクロール型の圧縮機構と、回転軸の他端側に設けられ、冷媒を膨張させることにより回転軸を回転させるスクロール型の膨張機構と、圧縮機構によって圧縮された冷媒の熱を外部に放熱する放熱器と、膨張機構によって膨張した冷媒を蒸発させて外部から熱を吸収する蒸発器とを備え、圧縮機構によって圧縮された冷媒が放熱器を通過した後に膨張機構によって膨張するとともに、膨張機構によって膨張した冷媒が蒸発器を通過した後に再び圧縮機構によって圧縮されるようにし、冷媒が膨張する際のエネルギーを用いて圧縮機構の駆動を補助するようにしたものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2002−318019号公報
【特許文献2】特開2001−107881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記他の冷熱システムでは、圧縮機構によって圧縮した冷媒を膨張機構によって膨張させ、膨張機構によって膨張させた冷媒を圧縮機構によって圧縮するようにしているので、膨張機構によって膨張させる冷媒の量を圧縮機構によって圧縮する冷媒の量と等しくしなければならない。また、圧縮機構が1サイクル当たりに圧縮する冷媒の量は蒸発器を通過した後の冷媒の圧力によって変化し、膨張機構が1サイクル当たりに膨張させる冷媒の量は放熱器を通過した後の冷媒の圧力によって変化する。
【0006】
しかしながら、一般的に放熱器は空冷方式であることから、放熱器を通過した後の冷媒の温度は外気温により変化し、冷媒の温度によって冷媒の圧力が変化する。また、蒸発器において蒸発する冷媒の量は外気温により変化し、蒸発する冷媒の量によって蒸発器を通過した後の冷媒の圧力が変化する。さらに、圧縮機構の作動と膨張機構の作動とが回転軸を介して連動しているので、放熱器を通過した後の冷媒の圧力や蒸発器を通過した後の冷媒の圧力が外気温によって変化すると、膨張機構によって膨張させる冷媒の量を圧縮機構によって圧縮する冷媒の量と等しくすることができない。このため、例えば膨張機構によって膨張させる冷媒の量が圧縮機構によって圧縮する冷媒の量よりも少ない場合、蒸発器を通過した後の冷媒の圧力が徐々に低くなり、冷凍効率が低下するという問題点があった。
【0007】
また、膨張機構によって膨張させる冷媒の量が圧縮機構によって圧縮する冷媒の量よりも多い場合、蒸発器内の冷媒の量が徐々に増加して蒸発器内において気化しない冷媒が生じ、液冷媒が圧縮機構に流入して圧縮機構の耐久性を低下させるという問題点があった。
【0008】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、冷媒が膨張する際のエネルギーを用いて圧縮機構の駆動を補助することができ、しかも膨張機構によって膨張させる冷媒の量を任意に調整することのできる冷熱システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前記目的を達成するために、冷媒を圧縮する圧縮機構と、圧縮機構を駆動する第1回転部材と、冷媒を膨張させる膨張機構と、第1回転部材と同軸上に配置され、膨張機構によって冷媒を膨張させることにより回転する第2回転部材と、第1回転部材と同軸上に配置された第3回転部材と、第3回転部材を任意の回転速度で回転させる回転付与手段と、第1回転部材に設けられたリングギアと、第2回転部材に設けられ、リングギアに径方向内側から歯合するプラネタリーギアと、第3回転部材に設けられ、プラネタリーギアにリングギアの径方向内側から歯合するサンギアとを有する圧縮機と、圧縮機構によって圧縮された冷媒の熱を外部に放熱する放熱器と、膨張機構によって膨張した冷媒を蒸発させて外部から熱を吸収する蒸発器とを備え、放熱器を通過した冷媒を膨張機構によって膨張させ、蒸発器を通過した冷媒を圧縮機構によって圧縮するように構成している。
【0010】
これにより、膨張機構によって冷媒を膨張させることにより第2回転部材が回転し、第2回転部材のプラネタリーギアは第1回転部材のリングギアに歯合していることから、膨張機構によって冷媒を膨張させることにより、第1回転部材に回転力を付与することができる。また、第1回転部材のリングギアに第2回転部材のプラネタリーギアが歯合していることから、第1回転部材と第2回転部材との回転速度差に応じてプラネタリーギアが自転する。また、プラネタリーギアには第3回転部材のサンギアが歯合するとともに、回転付与手段によって第3回転部材を任意の回転速度で回転させることができるので、回転付与手段によって第2回転部材と第3回転部材との間に任意の回転速度差を設け、プラネタリーギアを任意の回転速度で自転させることができる。即ち、回転付与手段によって第3回転部材の回転速度を変えることにより、第1回転部材と第2回転部材との回転速度差を任意に調整することができる。
【0011】
また、本発明は、冷媒を圧縮する圧縮機構と、圧縮機構を駆動する第1回転部材と、冷媒を膨張させる膨張機構と、第1回転部材と同軸上に配置され、膨張機構によって冷媒を膨張させることにより回転する第2回転部材と、第1回転部材と同軸上に配置された第3回転部材と、第3回転部材を任意の回転速度で回転させる回転付与手段と、第2回転部材に設けられたリングギアと、第1回転部材に設けられ、リングギアに径方向内側から歯合するプラネタリーギアと、第3回転部材に設けられ、プラネタリーギアにリングギアの径方向内側から歯合するサンギアとを有する圧縮機と、圧縮機構によって圧縮された冷媒の熱を外部に放熱する放熱器と、膨張機構によって膨張した冷媒を蒸発させて外部から熱を吸収する蒸発器とを備え、放熱器を通過した冷媒を膨張機構によって膨張させ、蒸発器を通過した冷媒を圧縮機構によって圧縮するように構成している。
【0012】
これにより、膨張機構によって冷媒を膨張させることにより第2回転部材が回転し、第2回転部材のリングギアは第1回転部材のプラネタリーギアに歯合していることから、膨張機構によって冷媒を膨張させることにより、第1回転部材に回転力を付与することができる。また、第1回転部材のプラネタリーギアに第2回転部材のリングギアが歯合していることから、第1回転部材と第2回転部材との回転速度差に応じてプラネタリーギアが自転する。また、プラネタリーギアには第3回転部材のサンギアが歯合するとともに、回転付与手段によって第3回転部材を任意の回転速度で回転させることができるので、回転付与手段によって第1回転部材と第3回転部材との間に任意の回転速度差を設け、プラネタリーギアを任意の回転速度で自転させることができる。即ち、回転付与手段によって第3回転部材の回転速度を変えることにより、第1回転部材と第2回転部材との回転速度差を任意に調整することができる。
【0013】
また、本発明は、冷媒を圧縮する圧縮機構と、圧縮機構を駆動する第1回転部材と、冷媒を膨張させる膨張機構と、第1回転部材と同軸上に配置され、膨張機構によって冷媒を膨張させることにより回転する第2回転部材と、第1回転部材と同軸上に配置された第3回転部材と、第3回転部材を任意の回転速度で回転させる回転付与手段と、第3回転部材に設けられたリングギアと、第1回転部材に設けられ、リングギアに径方向内側から歯合するプラネタリーギアと、第2回転部材に設けられ、プラネタリーギアにリングギアの径方向内側から歯合するサンギアとを有する圧縮機と、圧縮機構によって圧縮された冷媒の熱を外部に放熱する放熱器と、膨張機構によって膨張した冷媒を蒸発させて外部から熱を吸収する蒸発器とを備え、放熱器を通過した冷媒を膨張機構によって膨張させ、蒸発器を通過した冷媒を圧縮機構によって圧縮するように構成している。
【0014】
これにより、膨張機構によって冷媒を膨張させることにより第2回転部材が回転し、第2回転部材のサンギアは第1回転部材のプラネタリーギアに歯合していることから、膨張機構によって冷媒を膨張させることにより、第1回転部材に回転力を付与することができる。また、第1回転部材のプラネタリーギアに第2回転部材のサンギアが歯合していることから、第1回転部材と第2回転部材との回転速度差に応じてプラネタリーギアが自転する。また、プラネタリーギアには第3回転部材のリングギアが歯合するとともに、回転付与手段によって第3回転部材を任意の回転速度で回転させることができるので、回転付与手段によって第1回転部材と第3回転部材との間に任意の回転速度差を設け、プラネタリーギアを任意の回転速度で自転させることができる。即ち、回転付与手段によって第3回転部材の回転速度を変えることにより、第1回転部材と第2回転部材との回転速度差を任意に調整することができる。
【0015】
また、本発明は、冷媒を圧縮する圧縮機構と、圧縮機構を駆動する第1回転部材と、冷媒を膨張させる膨張機構と、第1回転部材と同軸上に配置され、膨張機構によって冷媒を膨張させることにより回転する第2回転部材と、第1回転部材と同軸上に配置された第3回転部材と、第3回転部材を任意の回転速度で回転させる回転付与手段と、第3回転部材に設けられたリングギアと、第2回転部材に設けられ、リングギアに径方向内側から歯合するプラネタリーギアと、第1回転部材に設けられ、プラネタリーギアにリングギアの径方向内側から歯合するサンギアとを有する圧縮機と、圧縮機構によって圧縮された冷媒の熱を外部に放熱する放熱器と、膨張機構によって膨張した冷媒を蒸発させて外部から熱を吸収する蒸発器とを備え、放熱器を通過した冷媒を膨張機構によって膨張させ、蒸発器を通過した冷媒を圧縮機構によって圧縮するように構成している。
【0016】
これにより、膨張機構によって冷媒を膨張させることにより第2回転部材が回転し、第2回転部材のプラネタリーギアは第1回転部材のサンギアに歯合していることから、膨張機構によって冷媒を膨張させることにより、第1回転部材に回転力を付与することができる。また、第1回転部材のサンギアに第2回転部材のプラネタリーギアが歯合していることから、第1回転部材と第2回転部材との回転速度差に応じてプラネタリーギアが自転する。また、プラネタリーギアには第3回転部材のリングギアが歯合するとともに、回転付与手段によって第3回転部材を任意の回転速度で回転させることができるので、回転付与手段によって第1回転部材と第2回転部材との間に任意の回転速度差を設け、プラネタリーギアを任意の回転速度で自転させることができる。即ち、回転付与手段によって第3回転部材の回転速度を変えることにより、第1回転部材と第2回転部材との回転速度差を任意に調整することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、膨張機構によって冷媒を膨張させることにより、第1回転部材に回転力を付与することができるので、冷媒が膨張する際のエネルギーを用いて圧縮機構の駆動を補助することができる。また、回転付与手段によって第3回転部材の回転速度を変えることにより、第1回転部材と第2回転部材との回転速度差を任意に調整することができるので、膨張機構によって膨張させる冷媒の量を任意に調整することができ、例えば圧縮機構によって圧縮される冷媒の量よりも膨張機構によって膨張する冷媒の量が多く、蒸発器内の冷媒の量が増加し始めた場合には、第3回転部材の回転速度を変えて第1回転部材に対して第2回転部材の回転を遅くすることにより、蒸発器内の冷媒を適正な量まで減少させ、圧縮機構への液冷媒の流入を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1乃至図8は本発明の一実施形態を示すもので、図1は冷熱システムに用いる圧縮機の側面断面図、図2は図1におけるA−A線断面図、図3は冷熱システムの回路図、図4乃至図5は遊星歯車機構の動作説明図、図6は冷熱システムのブロック図、図7及び図8は制御部の動作を示すフローチャートである。
【0019】
本実施形態の冷熱システムは、冷媒を圧縮するための圧縮機構10と、圧縮機構10を駆動するための第1回転部材1と、冷媒を膨張させるための膨張機構20と、第1回転部材1と同軸上に配置され、膨張機構20によって冷媒を膨張させることにより回転する第2回転部材2と、第1回転部材1と同軸上に配置された第3回転部材3と、第3回転部材3を任意の回転速度で回転させるための回転付与手段としての電動モータ30と、第1回転部材1に設けられたリングギア41と、第2回転部材2に設けられた複数のプラネタリーギア51と、第3回転部材3に設けられたサンギア3aと、第1回転部材1、第2回転部材2、第3回転部材3、圧縮機構10、膨張機構20、電動モータ30、リングギア41、プラネタリーギア51及びサンギア3aを収容する円柱状の圧縮機本体70と、圧縮機構10によって圧縮された冷媒の熱を外部に放熱する放熱器100と、膨張機構20によって膨張した冷媒を蒸発させて外部から熱を吸収する蒸発器110とを備えている。尚、冷媒としては二酸化炭素を用いる。また、リングギア41、各プラネタリーギア51及びサンギア3aによって周知の遊星歯車機構が構成されている。
【0020】
圧縮機構10は圧縮機本体70の軸方向一端側に配置されている。また、圧縮機構10は、第1固定スクロール部材11と、一端面が第1固定スクロール部材11に対向するように設けられた第1可動スクロール部材12と、第2固定スクロール部材13と、一端面が第2固定スクロール部材13に対向するように設けられた第2可動スクロール部材14と、第1固定スクロール部材11と第2固定スクロール部材13との間に設けられたスペーサ15とを有する。第1固定スクロール部材11及び第1可動スクロール部材12によって第1圧縮機構P1が形成され、第2固定スクロール部材13及び第2可動スクロール部材14によって第2圧縮機構P2が形成されている。
【0021】
第1固定スクロール部材11は円板状に形成され、圧縮機本体70の軸方向一端側に渦巻状突起11aを有する。第1固定スクロール部材11は圧縮機本体70の内面に固定され、圧縮機本体70内を軸方向に仕切っている。第1固定スクロール部材11の外周面側には第1固定スクロール部材11を圧縮機本体70の軸方向に貫通する吸入孔11bが設けられている。即ち、吸入孔11bを介して第1固定スクロール部材11と第1可動スクロール部材12との間に冷媒が吸入される。
【0022】
第1可動スクロール部材12は円板状に形成され、圧縮機本体70の軸方向他端側に渦巻状突起12aを有する。渦巻状突起12aは第1固定スクロール部材11の渦巻状突起11aと係合している。第1可動スクロール部材12の中央部には吐出孔12bが設けられている。即ち、第1固定スクロール部材11と第1可動スクロール部材12との間で圧縮された冷媒が吐出孔12bから吐出される。
【0023】
第2固定スクロール部材13は円板状に形成され、圧縮機本体70の軸方向他端側に渦巻状突起11aを有する。第2固定スクロール部材13は第1固定スクロール部材11よりも圧縮機本体70の軸方向一端側に配置されている。第2固定スクロール部材13は圧縮機本体70の内面に固定され、圧縮機本体70内を軸方向に仕切っている。第2固定スクロール部材13の中央部には第2固定スクロール部材13を圧縮機本体70の軸方向に貫通する吐出孔13bが設けられている。即ち、第2固定スクロール部材13と第2可動スクロール部材14との間で圧縮された冷媒が吐出孔13bから吐出される。
【0024】
第2可動スクロール部材14は円板状に形成され、圧縮機本体70の軸方向一端側に渦巻状突起14aを有する。渦巻状突起14aは第2固定スクロール部材13の渦巻状突起13aと係合している。第2可動スクロール部材14の外周面側には吸入孔14bが設けられている。即ち、吸入孔14bを介して第2固定スクロール部材13と第2可動スクロール部材14との間に冷媒が吸入される。
【0025】
第1回転部材1は圧縮機本体70の軸方向に延びる円柱状のシャフトである。第1回転部材1の軸方向一端側は圧縮機本体70の軸方向一端側から突出している。即ち、図示しないエンジンからの動力を第1回転部材1の軸方向一端側に伝達することにより、第1回転部材1を回転させることができる。第1回転部材1の軸方向他端は圧縮機本体70の軸方向中央部に配置されている。第1回転部材1の軸方向一端側は周知のベアリング61aを介して第1仕切壁61に回転自在に支持されている。第1回転部材1の軸方向他端側は周知のベアリング62aを介して第2仕切壁62に回転自在に支持されている。各仕切壁61,62は圧縮機本体70の内面に固定され、それぞれ圧縮機本体70内を軸方向に仕切っている。また、第1仕切壁61は圧縮機構10よりも圧縮機本体70の軸方向一端側に配置され、第2仕切壁62は圧縮機構10よりも圧縮機本体70の軸方向他端側に配置されている。第1仕切壁61の外周面側には流路61bが設けられ、流路61bは第1仕切壁61の一端面側から他端面側に冷媒を流通させる。第2仕切壁62の外周面側には流路62bが設けられ、流路62bは第2仕切壁62の一端面側から他端面側に冷媒を流通させる。
【0026】
ベアリング61aとベアリング62aとの間の第1回転部材1には他の部分に対して偏心している偏心部1aが設けられている。偏心部1aは図示しないベアリングを介して第1可動スクロール部材12及び第2可動スクロール部材14に連結している。偏心部1aは各可動スクロール部材12,14に対して回転可能である。また、各可動スクロール部材12,14はそれぞれ図示しない回転規制部材によって回転を規制されている。即ち、第1回転部材1が回転すると、各可動スクロール部材12,14が所定の旋回運動を行う。
【0027】
第1回転部材1の他端側には円板状部40が設けられている。円板状部40は、第1回転部材1の他端側から径方向外側に延びる径方向延設部40aと、径方向延設部40aの外周面側から圧縮機本体70の軸方向他端側に延びる軸方向延設部40bと、軸方向延設部40bにおける圧縮機本体70の軸方向他端側から径方向内側に延びる先端部40cとを有する。先端部40cの内周面にリングギア41が形成されている。
【0028】
膨張機構20は、固定スクロール部材21と、一端面が固定スクロール部材21に対向するように設けられた可動スクロール部材22とを有する。
【0029】
固定スクロール部材21は円板状に形成され、圧縮機本体70の軸方向一端側に渦巻状突起21aを有する。固定スクロール部材21は圧縮機本体70の内面に固定され、圧縮機本体70内を軸方向に仕切っている。固定スクロール部材21の中央部には固定スクロール部材21を圧縮機本体70の軸方向に貫通する吐出孔21bが設けられている。即ち、各スクロール部材21,22の間で膨張した冷媒は吐出孔21bから吐出される。
【0030】
可動スクロール部材22は円板状に形成され、圧縮機本体70の軸方向他端側に渦巻状突起22aを有する。渦巻状突起22aは固定スクロール部材21の渦巻状突起21aと係合している。可動スクロール部材22の圧縮機本体70における軸方向一端側にはボス部22bが設けられ、ボス部22bは圧縮機本体70の軸方向に延びる円筒状である。
【0031】
第2回転部材2は圧縮機本体70の軸方向に延びる円柱状のシャフトである。第2回転部材2の軸方向一端は圧縮機本体70の軸方向中央部に配置され、第2回転部材2の軸方向他端は圧縮機本体70の軸方向他端側に配置されている。第2回転部材2の軸方向一端は周知のベアリング40dを介して円板状部40に回転自在に支持されている。第2回転部材2の軸方向他端側は周知のベアリング63aを介して第3仕切壁63に回転自在に支持されている。第2回転部材2はベアリング40dとベアリング63aとの間を周知のベアリング64aを介して第4仕切壁64に回転自在に支持されている。各仕切壁63,64は圧縮機本体70の内面に固定され、それぞれ圧縮機本体70内を軸方向に仕切っている。第3仕切壁63は一端面が可動スクロール部材22に沿うように設けられている。また、可動スクロール部材22には圧縮機本体70の軸方向他端側から当接部材63bが当接し、当接部材63bは第3仕切壁63に固定されている。第3仕切壁63の外周面側には流路63cが設けられ、流路63cは第3仕切壁63の一端面側から他端面側に冷媒を流通させる。
【0032】
第2回転部材2の軸方向他端には他の部分に対して偏心している偏心部2aが設けられている。偏心部2aは周知のベアリング2bを介して可動スクロール部材22のボス部22bに連結している。偏心部2aはボス部22bに対して回転可能である。また、可動スクロール部材22は図示しない回転規制機構によって回転を規制されている。即ち、各スクロール部材21,22の間で冷媒が膨張すると、可動スクロール部材22が所定の旋回運動を行う。また、可動スクロール部材22の旋回運動により第2回転部材2が回転する。
【0033】
第2回転部材2の軸方向一端側には円板状のプラネタリーキャリア50が設けられている。プラネタリーキャリア50は円板状部40の軸方向延設部40bの径方向内側に配置されている。プラネタリーキャリア50の外周面側には各プラネタリーギア51が設けられ、各プラネタリーギア51は互いにプラネタリーキャリア50の周方向に間隔をおいて設けられている。各プラネタリーギア51はそれぞれプラネタリーキャリア50に対して回転自在である。
【0034】
電動モータ30は周知のサーボモータから成る。電動モータ30は、第2回転部材2の外周面側に配置された円筒状のステータ31と、ステータ31の外周面側に配置された円筒状のロータ32とを有する。ステータ31は複数の巻芯を有し、第4仕切壁64に固定されている。ロータ32は永久磁石から成る。即ち、電動モータ30はロータ32を任意の回転速度で回転させることができる。
【0035】
第3回転部材3は、ロータ32の外周面側から圧縮機本体70の軸方向一端側に延びる円筒部3bと、円筒部3bの圧縮機本体70における軸方向一端側から径方向内側に延びる径方向延設部3cと、径方向延設部3cの径方向内側から圧縮機本体70の軸方向一端側に延びる軸方向延設部3dと、軸方向延設部3dの圧縮機本体70における軸方向一端側から径方向外側に延びる先端部3eとを有する。先端部3eの外周面にサンギア3aが形成され、サンギア3aは各プラネタリーギア51にリングギア41の径方向内側から歯合している。第3回転部材3は周知のベアリング65aを介して第5仕切壁65に回転自在に支持され、第5仕切壁65は圧縮機本体70の内面に固定されている。また、円筒部3bの内周面にロータ32が固定されている。即ち、電動モータ30によって第3回転部材3を任意の回転速度で回転させることができる。
【0036】
圧縮機本体70は、圧縮機本体70の軸方向に延びる円筒部70aと、円筒部70aの両端を閉鎖する一対の端面部70bとを有する。各端面部70bは溶接によって円筒部70aに固定されている。
【0037】
圧縮機本体70には第1吸入口71、第1吐出口72、第2吸入口73及び第2吐出口74とが設けられている。
【0038】
第1吸入口71は円筒部70aを径方向に挿通する管状部材から成り、圧縮機本体70外から円板状部40の外周面側に冷媒を吸入する。第1吐出口72は圧縮機本体70の軸方向一端側の端面部70bを軸方向に挿通する管状部材から成り、圧縮機本体70の軸方向一端側から圧縮機本体70外に冷媒を吐出する。即ち、第1吸入口71から圧縮機本体70内に吸入された冷媒は流路62b及び吸入孔11bを通過して第1固定スクロール部材11と第1可動スクロール部材12との間に流入し、第1固定スクロール部材11と第1可動スクロール部材12によって圧縮された冷媒は吐出孔12bから吐出される。また、吐出孔12bから吐出された冷媒は吸入孔14bから第2固定スクロール部材13と第2可動スクロール部材14との間に流入し、第2固定スクロール部材13と第2可動スクロール部材14によって圧縮された冷媒は吐出孔13bから吐出される。このように、冷媒を段階的に圧縮するようにしているので、フロンガスに比べて高い圧力まで圧縮する必要のある二酸化炭素を容易に圧縮することができる。
【0039】
第2吸入口73は円筒部70aを径方向に挿通する管状部材から成り、圧縮機本体70外から第3仕切壁63と第4仕切壁64との間に冷媒を吸入する。第2吐出口74は圧縮機本体70の軸方向他端側の端面部70bを軸方向に挿通する管状部材から成り、圧縮機本体70の軸方向他端側から圧縮機本体70外に冷媒を吐出する。即ち、第2吸入口73から圧縮機本体70内に吸入された冷媒は流路63cを通過して各スクロール部材21,22の間に流入し、各スクロール部材21,22の間で膨張した冷媒が吐出孔21bを通過して第2吐出口74から吐出される。
【0040】
各吸入口71,72及び各吐出口72,74は圧縮機本体70外に設けられた放熱器100及び蒸発器110に接続されている(図3参照)。即ち、圧縮機構10によって圧縮された冷媒が放熱器100に流入する。放熱器100はファン101によって空冷されている。放熱器100を通過した冷媒は膨張機構20によって膨張し、蒸発器110に流入する。冷媒は蒸発器110内で気化し、気化した冷媒は再び圧縮機構10に流入する。また、蒸発器110と圧縮機構10との間には圧力検出手段としての周知の圧力センサ150が設けられ、蒸発器110を通過した冷媒は圧力センサ150を通過して圧縮機構10に流入する。圧力センサ150は周知のマイクロコンピュータから成る制御部151に接続され、制御部151は電動モータ30に接続されている(図6参照)。
【0041】
また、放熱器100内を給湯器120の配管120aが挿通し、配管120a内の水が放熱器100内の冷媒と熱交換を行う。即ち、放熱器100内の冷媒の熱が配管120a内の水に放熱され、配管120a内の水は放熱器100内の冷媒から熱を吸収する。これにより、給湯器120内の水が加熱される。
【0042】
一方、蒸発器110内を室内機130の配管130aが挿通しており、配管130a内の流体が蒸発器110内の冷媒と熱交換を行う。即ち、蒸発器110内の冷媒を蒸発させて配管130a内の流体から熱を吸収し、室内機130の配管130a内の流体が冷却される。室内機130の配管130a内の流体はポンプ140によって流通する。
【0043】
次に、各回転部材1,2,3、リングギア41、各プラネタリーギア51及びサンギア3aの動作について説明する。
【0044】
先ず、第1回転部材1の回転を開始した直後について説明する(図4参照)。この場合、圧縮機構10によって圧縮された冷媒がまだ膨張機構20に流入していないので、膨張機構20によって第2回転部材2が回転しない。即ち、第2回転部材2が停止していることから、各プラネタリーギア51がサンギア3aの周りを公転しない。この状態で第1回転部材1が回転すると、各プラネタリーギア51が自転する。また、各プラネタリーギア51の回転力がサンギア3aに伝達され、第3回転部材3が第1回転部材1と反対方向に回転する。第3回転部材3が回転することにより、ステータ31の周りをロータ32が回転し、電動モータ30によって発電が行われる。電動モータ30によって発電された電気を図示しない蓄電装置に充電するとともに、充電された電気を電動モータ30の駆動等に用いることにより、省エネルギー化を図ることができる。
【0045】
続いて、圧縮機構10によって圧縮された冷媒が膨張機構20に流入する際について説明する。膨張機構20に圧縮された冷媒が流入すると、膨張機構20によって第2回転部材2が第1回転部材1と同一の方向に回転する。第2回転部材2の回転速度が第1回転部材1の回転速度よりも遅い場合は、各プラネタリーギア51はサンギア3aの周りを公転しながら公転方向に自転する(図5参照)。
【0046】
即ち、第1回転部材1のリングギア41に第2回転部材2の各プラネタリーギア51が歯合していることから、各プラネタリーギア51は第1回転部材1と第2回転部材2との回転速度差に応じて自転する。また、各プラネタリーギア51にサンギア3aが歯合していることから、各プラネタリーギア51の自転速度に応じて第2回転部材2と第3回転部材3との間に回転速度差が生ずる。
【0047】
また、第2回転部材2の各プラネタリーギア51は第1回転部材1のリングギア41に歯合していることから、膨張機構20によって冷媒を膨張させることにより、第1回転部材1に回転力を付与することができる。
【0048】
ここで、膨張機構20によって膨張する冷媒の量が圧縮機構10によって圧縮される冷媒の量よりも少ない場合、蒸発器110を通過する冷媒の圧力が低下する。また、蒸発器110を通過する冷媒の圧力が低下すると、圧縮機構10によって圧縮される冷媒の量が減少し、冷凍効率が低下する。
【0049】
また、膨張機構20によって膨張させる冷媒の量が圧縮機構10によって圧縮する冷媒の量よりも多い場合、蒸発器110内の冷媒の量が徐々に増加し、蒸発器110内において気化しない冷媒が生ずる。また、液冷媒が圧縮機構10に流入し、圧縮機構10の耐久性を低下させる。
【0050】
冷凍効率の低下や液冷媒の圧縮機構10への流入を防止するためには、第1回転部材1と第2回転部材2との回転速度差を変更し、膨張機構20によって膨張させる冷媒の量を調整する必要がある。
【0051】
各プラネタリーギア51は第1回転部材1と第2回転部材2との回転速度差に応じて自転する。また、各プラネタリーギア51は第2回転部材2と第3回転部材3との回転速度差に応じて自転する。さらに、電動モータ30は第3回転部材3を任意の回転速度で回転させることができる。これにより、電動モータ30によって第2回転部材2と第3回転部材3との間に任意の回転速度差を設けることにより、各プラネタリーギア51を任意の回転速度で自転させることができる。また、各プラネタリーギア51の自転速度に応じて、第1回転部材1と第2回転部材2との間に回転速度差が生ずる。即ち、電動モータ30によって第3回転部材3の回転速度を変えることにより、第1回転部材1と第2回転部材2との回転速度差を任意に調整することができる。
【0052】
例えば、第2回転部材2の回転速度を第1回転部材1の回転速度よりも小さくする場合は、第3回転部材3の回転速度を第2回転部材2の回転速度よりも小さくする。これにより、各プラネタリーギア51がサンギア3aの周りを公転しながら、第3回転部材3と第2回転部材2との回転速度差に応じて公転方向に自転する。また、第1回転部材1と第2回転部材2との間に各プラネタリーギア51の自転速度に応じた回転速度差が生ずる。
【0053】
また、制御部151は圧力センサ150の検出結果に応じて電動モータ30を制御する。
【0054】
例えば、膨張機構20によって膨張させる冷媒の量が圧縮機構10によって圧縮する冷媒の量よりも多い場合について、図7に示すフローチャートを参照しながら説明する。即ち、圧力センサ150によって検出される圧力が所定の上限値以上になると(S1)、電動モータ3の回転速度を所定の量だけ減速させる(S2)。また、膨張機構20によって膨張させる冷媒の量が圧縮機構10によって圧縮する冷媒の量よりも少ない場合について、図8に示すフローチャートを参照しながら説明する。即ち、圧力センサ150によって検出される圧力が所定の下限値以下になると(S11)、電動モータ3の回転速度を所定の量だけ増速させる(S12)。
【0055】
このように、本実施形態の圧縮機によれば、膨張機構20によって冷媒を膨張させることにより第2回転部材2が回転し、第2回転部材2の各プラネタリーギア51は第1回転部材1のリングギア41に歯合していることから、膨張機構20によって冷媒を膨張させることにより、第1回転部材1に回転力を付与することができる。即ち、冷媒が膨張する際のエネルギーを用いて圧縮機構10の駆動を補助することができる。
【0056】
また、第1回転部材1と第2回転部材2との回転速度差に応じて各プラネタリーギア51が自転するとともに、第2回転部材2と第3回転部材3との回転速度差に応じて各プラネタリーギア51が自転し、電動モータ30は第3回転部材3を任意の回転速度で回転させることができるので、電動モータ30によって第2回転部材2と第3回転部材3との回転速度差を変えることにより、第1回転部材1と第2回転部材2との回転速度差を任意に調整することができる。従って、例えば圧縮機構10によって圧縮される冷媒の量よりも膨張機構20によって膨張する冷媒の量が多く、蒸発器110内の冷媒の量が増加し始めた場合には、第3回転部材3の回転速度を変えて第1回転部材1に対して第2回転部材2の回転を遅くすることにより、蒸発器内の冷媒を適正な量まで減少させ、圧縮機構10への液冷媒の流入を防止することができる。
【0057】
また、圧縮機構10に流入する前の冷媒の圧力を圧力センサ150によって検知し、圧力センサ150の検出結果に基づき電動モータ30を制御するようにしたので、例えば膨張機構20によって膨張する冷媒の量が圧縮機構10によって圧縮される冷媒の量よりも多く、蒸発器110内の冷媒の量が徐々に増加し始めた場合でも、制御部151によって自動的に電動モータ30の回転速度を変更することにより、膨張機構20によって膨張させる冷媒の量を減少させ、圧縮機構10への液冷媒の流入を確実に防止することができる。
【0058】
また、放熱器100によって給湯器120の配管120a内の水を加熱するようにしたので、圧縮した冷媒の熱を有効に利用することができる。
【0059】
さらに、蒸発器110によって室内機130の配管130a内の流体を冷却するようにしたので、冷媒の蒸発潜熱を有効に利用することができる。
【0060】
また、圧縮機構10はスクロール型であることから、圧縮機本体70を軸方向に小型化する上で有利である。
【0061】
さらに、膨張機構20はスクロール型であることから、圧縮機本体70を軸方向に小型化する上で有利である。
【0062】
また、圧縮機構10を、圧縮機本体70内に吸入した冷媒を圧縮する第1圧縮機構P1と、第1圧縮機構P1によって圧縮された冷媒を圧縮する第2圧縮機構P2とから構成したので、フロンガスに比べて高圧に圧縮する必要のある二酸化炭素を段階的に圧縮することができ、第1回転部材1の駆動トルクの低減による省エネルギー化を図ることができる。
【0063】
尚、本実施形態では、蒸発器110を通過した冷媒を圧縮機構10によって圧縮し、圧縮機構10によって圧縮された冷媒を放熱器100に流入させるようにしたものを示したが、圧縮機構10によって圧縮した冷媒を他の圧縮機構によって圧縮し、他の圧縮機構によって圧縮した冷媒を放熱器100に流入させることも可能である。これにより、冷媒を段階的に圧縮することができるので、フロンガスに比べて高圧に圧縮する必要のある二酸化炭素を容易に圧縮することができ、第1回転部材1の駆動トルクの低減による省エネルギー化を図ることができる。
【0064】
また、蒸発器110を通過した冷媒を他の圧縮機構によって圧縮し、他の圧縮機構によって圧縮された冷媒を圧縮機構10によって圧縮することも可能である。これにより、冷媒を段階的に圧縮することができるので、フロンガスに比べて高圧に圧縮する必要のある二酸化炭素を容易に圧縮することができ、第1回転部材1の駆動トルクの低減による省エネルギー化を図ることができる。
【0065】
尚、本実施形態では、第1回転部材1の一端側を圧縮機本体70から突出させ、エンジン等の外部の動力源によって第1回転部材1を回転させるようにしたものを示したが、図9に示すように、第1回転部材1の一端を圧縮機本体70内に収容するとともに、第1回転部材1を駆動する駆動手段としての第2電動モータ80を圧縮機本体70内に設けることも可能である。
【0066】
この場合、第2電動モータ80は第2仕切壁62と円板状部40との間に配置されている。また、電動モータ80は、圧縮機本体70の内面に固定された円筒状のステータ81と、ステータ81の内周面側に配置され、第1回転部材1の外周面に固定されたロータ82とを有する。ステータ81は複数の巻芯を有する周知の構造であり、ロータ82は円筒状の永久磁石から成る。
【0067】
これにより、エンジン等の外部の動力源からの動力を用いることなく第1回転部材1を回転させることができるので、走行状態によってエンジンが停止するハイブリットカーに圧縮機を用いる場合に極めて有利である。
【0068】
尚、本実施形態では、リングギア41を第1回転部材1に設けるとともに、複数のプラネタリーギア51を第2回転部材に設け、サンギア3aを第3回転部材3に設けたものを示したが、図10に示すように、リングギア41を第2回転部材2に設けるとともに、複数のプラネタリーギア51を第1回転部材1に設け、サンギア3aを第3回転部材3に設け、各プラネタリーギア51をリングギア41に径方向内側から歯合させ、サンギア3aを各プラネタリーギア51にリングギア41の径方向内側から歯合させることも可能である。
【0069】
この場合は、膨張機構20によって冷媒を膨張させることにより第2回転部材2が回転し、第2回転部材2のリングギア41は第1回転部材1の各プラネタリーギア51に歯合しているので、膨張機構20によって冷媒を膨張させることにより、第1回転部材1に回転力を付与することができる。即ち、冷媒が膨張する際のエネルギーを用いて圧縮機構10の駆動を補助することができる。
【0070】
また、各プラネタリーギア51は第1回転部材1と第2回転部材2との回転速度差に応じて自転する。また、各プラネタリーギア51は第1回転部材1と第3回転部材3との回転速度差に応じて自転する。さらに、電動モータ30は第3回転部材3を任意の回転速度で回転させることができる。これにより、電動モータ30によって第1回転部材1と第3回転部材3との間に任意の回転速度差を生じさせることにより、各プラネタリーギア51を任意の回転速度で自転させることができ、第1回転部材1と第2回転部材2との間に各プラネタリーギア51の自転速度に応じた回転速度差が生ずる。即ち、電動モータ30によって第1回転部材1と第3回転部材3との回転速度差を変えることにより、第1回転部材1と第2回転部材2との回転速度差を任意に調整することができ、膨張機構20によって膨張させる冷媒の量を任意に調整することができる。
【0071】
また、図11に示すように、リングギア201を第3回転部材200に設けるとともに、複数のプラネタリーギア211を第1回転部材1に設け、サンギア220aを第2回転部材2に設け、各プラネタリーギア211をリングギア201に径方向内側から歯合させ、サンギア220aを各プラネタリーギア211にリングギア201の径方向内側から歯合させることも可能である。
【0072】
この場合、リングギア201は第3回転部材200の内周面に設けられている。第3回転部材200は圧縮機本体70の内面に周知のベアリング200aによって回転自在に支持され、第3回転部材200の内周面にロータ32が固定されている。
【0073】
また、各プラネタリーギア211は第3回転部材200の内周面側に配置された円板状のプラネタリーキャリア210に設けられている。プラネタリーキャリア210は第1回転部材1の他端側に設けられている。各プラネタリーギア211は互いにプラネタリーキャリア210の周方向に間隔をおいて設けられている。
【0074】
また、サンギア220aは各プラネタリーギア211の内側に配置された円板状部220の外周面に設けられ、円板状部220は第2回転部材2の一端に設けられている。また、第1回転部材1の端部は円板状部220に周知のベアリング220bを介して回転自在に支持されている。
【0075】
これにより、膨張機構20によって冷媒を膨張させることにより第2回転部材2が回転し、第2回転部材2のサンギア220aは第1回転部材1の各プラネタリーギア211に歯合しているので、膨張機構20によって冷媒を膨張させることにより、第1回転部材1に回転力を付与することができる。即ち、冷媒が膨張する際のエネルギーを用いて圧縮機構10の駆動を補助することができる。
【0076】
また、各プラネタリーギア211は第1回転部材1と第2回転部材2との回転速度差に応じて自転する。また、各プラネタリーギア211は第1回転部材1と第3回転部材200との回転速度差に応じて自転する。さらに、電動モータ30は第3回転部材200を任意の回転速度で回転させることができる。これにより、電動モータ30によって第1回転部材1と第3回転部材200との間に任意の回転速度差を生じさせることにより、各プラネタリーギア211を任意の回転速度で自転させることができ、第1回転部材1と第2回転部材2との間に各プラネタリーギア211の自転速度に応じた回転速度差が生ずる。即ち、電動モータ30によって第1回転部材1と第3回転部材3との回転速度差を変えることにより、第1回転部材1と第2回転部材2との回転速度差を任意に調整することができ、膨張機構20によって膨張させる冷媒の量を任意に調整することができる。
【0077】
また、図12に示すように、リングギア201を第3回転部材200に設けるとともに、複数のプラネタリーギア211を第2回転部材2に設け、サンギア220aを第1回転部材1に設け、各プラネタリーギア211をリングギア201に径方向内側から歯合させ、サンギア220aを各プラネタリーギア211にリングギア201の径方向内側から歯合させることも可能である。
【0078】
この場合、膨張機構20によって冷媒を膨張させることにより第2回転部材2が回転し、第2回転部材2の各プラネタリーギア211は第1回転部材1のサンギア220aに歯合しているので、膨張機構20によって冷媒を膨張させることにより、第1回転部材1に回転力を付与することができる。即ち、冷媒が膨張する際のエネルギーを用いて圧縮機構10の駆動を補助することができる。
【0079】
また、各プラネタリーギア211は第1回転部材1と第2回転部材2との回転速度差に応じて自転する。また、各プラネタリーギア211は第2回転部材2と第3回転部材200との回転速度差に応じて自転する。さらに、電動モータ30は第3回転部材200を任意の回転速度で回転させることができる。これにより、電動モータ30によって第2回転部材2と第3回転部材200との間に任意の回転速度差を生じさせることにより、各プラネタリーギア211を任意の回転速度で自転させることができ、第1回転部材1と第2回転部材2との間に各プラネタリーギア211の自転速度に応じた回転速度差が生ずる。即ち、電動モータ30によって第2回転部材2と第3回転部材3との回転速度差を変えることにより、第1回転部材1と第2回転部材2の回転速度差を任意に調整することができ、膨張機構20によって膨張させる冷媒の量を任意に調整することができる。
【0080】
尚、本実施形態では、冷媒として二酸化炭素を用いるようにしたものを示したが、冷媒としてイソブタンやプロパン等の炭化水素系冷媒を用いることも可能であり、フロンガスを用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の一実施形態を示す冷熱システムに用いる圧縮機の側面断面図
【図2】図1におけるA−A線断面図
【図3】冷熱システムの回路図
【図4】遊星歯車機構の動作説明図
【図5】遊星歯車機構の動作説明図
【図6】冷熱システムのブロック図
【図7】制御部の動作を示すフローチャート
【図8】制御部の動作を示すフローチャート
【図9】本実施形態における第1回転部材の他の駆動方法を示す圧縮機の側面断面図
【図10】本実施形態における遊星歯車機構の変形例を示す圧縮機の側面断面図
【図11】本実施形態における遊星歯車機構の他の変形例を示す圧縮機の側面断面図
【図12】本実施形態における遊星歯車機構のさらに他の変形例を示す圧縮機の側面断面図
【符号の説明】
【0082】
1…第1回転部材、2…第2回転部材、3…第3回転部材、3a…サンギア、10…圧縮機構、11…第1固定スクロール部材、12…第1可動スクロール部材、13…第2固定スクロール部材、14…第2可動スクロール部材、20…膨張機構、21…固定スクロール部材、22…可動スクロール部材、30…電動モータ、31…ステータ、32…ロータ、40…円筒状部、41…リングギア、50…プラネタリーキャリア、51…プラネタリーギア、61…第1仕切壁、62…第2仕切壁、63…第3仕切壁、64…第4仕切壁、65…第5仕切壁、70…圧縮機本体、80…第2電動モータ、81…ステータ、82…ロータ、100…放熱器、110…蒸発器、120…給湯器、130…室内機、140…ポンプ、150…圧力センサ、151…制御部、200…第3回転部材、201…リングギア、210…プラネタリーキャリア、211…プラネタリーギア、220…円板状部、220a…サンギア、P1…第1圧縮機構、P2…第2圧縮機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機構と、圧縮機構を駆動する第1回転部材と、冷媒を膨張させる膨張機構と、第1回転部材と同軸上に配置され、膨張機構によって冷媒を膨張させることにより回転する第2回転部材と、第1回転部材と同軸上に配置された第3回転部材と、第3回転部材を任意の回転速度で回転させる回転付与手段と、第1回転部材に設けられたリングギアと、第2回転部材に設けられ、リングギアに径方向内側から歯合するプラネタリーギアと、第3回転部材に設けられ、プラネタリーギアにリングギアの径方向内側から歯合するサンギアとを有する圧縮機と、
圧縮機構によって圧縮された冷媒の熱を外部に放熱する放熱器と、
膨張機構によって膨張した冷媒を蒸発させて外部から熱を吸収する蒸発器とを備え、
放熱器を通過した冷媒を膨張機構によって膨張させ、蒸発器を通過した冷媒を圧縮機構によって圧縮するように構成した
ことを特徴とする冷熱システム。
【請求項2】
冷媒を圧縮する圧縮機構と、圧縮機構を駆動する第1回転部材と、冷媒を膨張させる膨張機構と、第1回転部材と同軸上に配置され、膨張機構によって冷媒を膨張させることにより回転する第2回転部材と、第1回転部材と同軸上に配置された第3回転部材と、第3回転部材を任意の回転速度で回転させる回転付与手段と、第2回転部材に設けられたリングギアと、第1回転部材に設けられ、リングギアに径方向内側から歯合するプラネタリーギアと、第3回転部材に設けられ、プラネタリーギアにリングギアの径方向内側から歯合するサンギアとを有する圧縮機と、
圧縮機構によって圧縮された冷媒の熱を外部に放熱する放熱器と、
膨張機構によって膨張した冷媒を蒸発させて外部から熱を吸収する蒸発器とを備え、
放熱器を通過した冷媒を膨張機構によって膨張させ、蒸発器を通過した冷媒を圧縮機構によって圧縮するように構成した
ことを特徴とする冷熱システム。
【請求項3】
冷媒を圧縮する圧縮機構と、圧縮機構を駆動する第1回転部材と、冷媒を膨張させる膨張機構と、第1回転部材と同軸上に配置され、膨張機構によって冷媒を膨張させることにより回転する第2回転部材と、第1回転部材と同軸上に配置された第3回転部材と、第3回転部材を任意の回転速度で回転させる回転付与手段と、第3回転部材に設けられたリングギアと、第1回転部材に設けられ、リングギアに径方向内側から歯合するプラネタリーギアと、第2回転部材に設けられ、プラネタリーギアにリングギアの径方向内側から歯合するサンギアとを有する圧縮機と、
圧縮機構によって圧縮された冷媒の熱を外部に放熱する放熱器と、
膨張機構によって膨張した冷媒を蒸発させて外部から熱を吸収する蒸発器とを備え、
放熱器を通過した冷媒を膨張機構によって膨張させ、蒸発器を通過した冷媒を圧縮機構によって圧縮するように構成した
ことを特徴とする冷熱システム。
【請求項4】
冷媒を圧縮する圧縮機構と、圧縮機構を駆動する第1回転部材と、冷媒を膨張させる膨張機構と、第1回転部材と同軸上に配置され、膨張機構によって冷媒を膨張させることにより回転する第2回転部材と、第1回転部材と同軸上に配置された第3回転部材と、第3回転部材を任意の回転速度で回転させる回転付与手段と、第3回転部材に設けられたリングギアと、第2回転部材に設けられ、リングギアに径方向内側から歯合するプラネタリーギアと、第1回転部材に設けられ、プラネタリーギアにリングギアの径方向内側から歯合するサンギアとを有する圧縮機と、
圧縮機構によって圧縮された冷媒の熱を外部に放熱する放熱器と、
膨張機構によって膨張した冷媒を蒸発させて外部から熱を吸収する蒸発器とを備え、
放熱器を通過した冷媒を膨張機構によって膨張させ、蒸発器を通過した冷媒を圧縮機構によって圧縮するように構成した
ことを特徴とする冷熱システム。
【請求項5】
前記圧縮機構に流入する前の冷媒の圧力を検出する圧力検出手段と、
圧力検出手段の検出結果に基づき回転付与手段を制御する制御手段とを備えた
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の冷熱システム。
【請求項6】
前記第1回転部材、第2回転部材、第3回転部材、圧縮機構、膨張機構、回転付与手段、リングギア、プラネタリーギア及びサンギアを収容する圧縮機本体を備えた
ことを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の冷熱システム。
【請求項7】
前記圧縮機本体内に設けられ、第1回転部材を駆動する駆動手段を備えた
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載の冷熱システム。
【請求項8】
前記放熱器によって所定の流体を加熱するように構成した
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6または7記載の冷熱システム。
【請求項9】
前記蒸発器によって所定の流体を冷却するように構成した
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載の冷熱システム。
【請求項10】
前記圧縮機構はスクロール型である
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9記載の冷熱システム。
【請求項11】
前記膨張機構はスクロール型である
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9または10記載の冷熱システム。
【請求項12】
前記圧縮機構を、圧縮機本体内に吸入した冷媒を圧縮する第1圧縮機構と、第1圧縮機構によって圧縮された冷媒を圧縮する第2圧縮機構とから構成した
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11記載の冷熱システム。
【請求項13】
前記圧縮機構によって圧縮された冷媒を放熱器に流入する前に圧縮する他の圧縮機構を備えた
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12記載の冷熱システム。
【請求項14】
前記蒸発器を通過した冷媒を圧縮機構に流入する前に圧縮する他の圧縮機構を備えた
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12記載の冷熱システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−198180(P2007−198180A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−15465(P2006−15465)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】