説明

処理方法および記憶媒体

【課題】低誘電率膜のダメージ回復処理を行う際に、比誘電率やリーク電流値を低く維持しつつ内部の水分を除去することができる処理方法を提供すること。
【解決手段】被処理基板に形成された、表面部分にダメージ層を有する低誘電率膜に回復処理を施すにあたり、その分子が、低誘電率膜のダメージ層の内部に浸透できる程度に小さく、ダメージ層内の水分を除去することが可能な第1処理ガスと、ダメージ層の表面に疎水性で緻密な改質層を形成する第2処理ガスとを低誘電率膜のダメージ層に作用させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、層間絶縁膜として用いられる低誘電率膜に、エッチングやアッシングにより形成されたダメージを回復する処理を行う処理方法およびそのような処理方法を実行するプログラムが記憶された記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、半導体デバイスの高速化、配線パターンの微細化、高集積化の要求に対応して、配線間の容量の低下ならびに配線の導電性向上およびエレクトロマイグレーション耐性の向上が求められており、それに対応して、配線材料に従来のアルミニウム(Al)やタングステン(W)よりも導電性が高くかつエレクトロマイグレーション耐性に優れている銅(Cu)が用いられており、Cu配線を形成する技術として、予め層間絶縁膜等に配線溝または接続孔を形成し、その中にCuを埋め込むダマシン法が多用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、半導体装置の微細化にともない、層間絶縁膜のもつ寄生容量は配線のパフォーマンスを向上させる上で重要な因子となってきており、層間絶縁膜として低誘電率材料で構成された低誘電率膜(Low−k膜)が用いられつつある。Low−k膜を構成する材料としては、メチル基等のアルキル基を末端基として有するものが一般的に用いられている。
【0004】
ところで、上記のような従来のダマシンプロセスにおいては、エッチングやレジスト膜除去(アッシング)の際に、Low−k膜がダメージを受ける。このようなダメージは、Low−k膜の比誘電率やリーク電流値の上昇をもたらし、層間絶縁膜としてLow−k膜を用いる効果が損なわれてしまう。
【0005】
この種のダメージを回復させる技術として、特許文献2には、エッチングやレジスト膜除去後に、TMSDMA(N-Trimethylsilyldimethylamine)のようなシリル化剤等を用いて回復処理を行うことが提案されている。この処理は、ダメージを受けて末端基が−OH基となったダメージ層の表面をシリル化剤のようなメチル基を有する処理ガスで改質してメチル基またはメチル基を含む基を末端基とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−083869号公報
【特許文献2】特開2006−049798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、最近ではLow−k膜としては、より比誘電率の低い多数の気孔を有するポーラスなLow−k膜(以下、ポーラスLow−k膜という)が多用されているが、ポーラスLow−k膜は、ダメージを受けると、ダメージ層の表面のみならず内部のポア部分も親水性となり、内部のポアにも水分が吸着することになる。この状態でTMSDMA(N-Trimethylsilyldimethylamine)のようなシリル化剤等を用いて回復処理を行うと、Low−k膜の表面が改質され緻密化されるが、内部のポアに吸着した水分は閉じ込められてしまう。このようにして閉じ込められた水分がデバイス形成過程で何かの拍子に外部に排出されると、バリアメタルや配線等を酸化するといった悪影響を及ぼす。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、低誘電率膜のダメージ回復処理を行う際に、比誘電率やリーク電流値を低く維持しつつ内部の水分を除去することができる処理方法を提供することを課題とする。
また、これらの方法を実施するためのプログラムを記憶した記憶媒体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、被処理基板に形成された、表面部分にダメージ層を有する低誘電率膜に回復処理を施す処理方法であって、
その分子が、前記低誘電率膜の前記ダメージ層の内部に浸透できる程度に小さく、前記ダメージ層内の水分を除去することが可能な第1処理ガスと、前記ダメージ層の表面に疎水性で緻密な改質層を形成する第2処理ガスとを前記低誘電率膜の前記ダメージ層に作用させることを特徴とする処理方法を提供する。
【0010】
本発明において、前記第1処理ガスと前記第2処理ガスとを混合状態で前記ダメージ層に作用させることができる。また、前記第1処理ガスでの処理後、前記第2処理ガスでの処理を行うことができる。
【0011】
前記第1処理ガスとしては、その分子がダメージ層内部に入り込んで脱水反応を生じさせるものを用いることができる。また、前記第2処理ガスとしては、Siおよび/またはCを含有し、前記ダメージ層表面部分をメチル基により回復させるものや、前記ダメージ層表面部分により緻密な膜を形成するものを用いることができる。
【0012】
前記第1処理ガスとしてDMCを用い、前記第2処理ガスとしてTMSDMAを用いることができる。
【0013】
本発明は、また、コンピュータ上で動作し、処理装置を制御するためのプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、上記処理方法が行われるように、コンピュータに前記処理装置を制御させることを特徴とする記憶媒体を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第1処理ガスがダメージ層内に入り込んでその中の水分を除去し、第2処理ガスがダメージ層表面で疎水性で緻密な改質層を形成するので、ダメージ層表面でダメージを回復させて比誘電率やリーク電流値を低下するとともに、疎水性で緻密な改質層により、新たな水分が膜内に入り込まず、低誘電率層内の水分を少なく維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る方法を実施するための処理装置の一例を示す断面図である。
【図2】第1の実施形態の処理方法を示すフローチャートである。
【図3】第2の実施形態の処理方法を示すフローチャートである。
【図4】従来の回復処理および本発明の回復処理のモデルを示す模式図である。
【図5】従来の方法によりTMSDMAのみを用いて回復処理を行った場合と、本発明に従って第1処理ガスであるDMCと第2処理ガスであるTMSDMAを用いて回復処理を行った場合について、k値、リーク電流値、膜中の水分量を測定した結果を示す図である。
【図6】TMSDMAガスとDMCの比率を変えて回復処理を行った際のリーク電流値を把握した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0017】
<回復処理を実施するための装置>
図1は本発明の実施形態に係る方法を実施するための処理装置の一例を示す断面図である。
この処理装置1は、被処理基板であるウエハWに形成されたポーラスLow−k膜のダメージ回復処理を行うための装置であり、ウエハWを収容するチャンバ11を備えている。チャンバ11の内部には、被処理基板であるウエハWを水平に支持するための載置台12が設けられている。この載置台12は、チャンバ11の底部中央から上方に延びる円筒状の支持部材13により支持されている。また、載置台12には抵抗加熱型のヒータ15が埋め込まれており、このヒータ15はヒータ電源16から給電されることにより載置台12を加熱し、その熱で載置台12上のウエハWを加熱する。また、載置台12には、熱電対(図示せず)が挿入されており、ウエハWを所定の温度に制御可能となっている。載置台12には、ウエハWを支持して昇降させるための3本(2本のみ図示)のウエハ支持ピン18が載置台12の表面に対して突没可能に設けられている。
【0018】
チャンバ11の上部は開口部となっており、チャンバ11の上端部に沿ってリング状のリッド19が設けられている。そして、このリッド19に処理ガスおよび希釈ガスを導入するガス導入ヘッド20が支持され、このガス導入ヘッド20は、シール部材(図示せず)によりチャンバ11に対して気密にシールされている。このガス導入ヘッド20の上部の中央には、ガス供給配管21が接続されている。ガス導入ヘッド20の内部には、ガス供給配管21に繋がるガス流路22が形成されている。ガス供給配管21には、第1処理ガス配管23、第2処理ガス配管24および希釈ガス配管25が接続されている。
【0019】
第1処理ガス配管23には気化器26、処理ガスの流量を制御するためのマスフローコントローラ27およびバルブ28が介装されている。また、気化器26には、第1処理ガスを供給するための液体状の第1薬剤を貯留する第1薬剤貯留部30から延びる第1薬剤配管29が接続されており、第1薬剤配管29にはバルブ31が設けられている。そして、第1薬剤貯留部30から液体状の第1薬剤がガス圧送等により第1薬剤配管29を介して気化器26に送給され、気化器26で気化されて生成された第1処理ガスが第1処理ガス供給配管23に送給される。
【0020】
第2処理ガス配管24には気化器32、処理ガスの流量を制御するためのマスフローコントローラ33およびバルブ34が介装されている。また、気化器32には、第2処理ガスを供給するための液体状の第2薬剤を貯留する第2薬剤貯留部36から延びる第2薬剤配管35が接続されており、第2薬剤配管35にはバルブ37が設けられている。そして、第2薬剤貯留部36から液体状の第2薬剤がガス圧送等により第2薬剤配管35を介して気化器32に送給され、気化器32で気化されて生成された第2処理ガスが第2処理ガス供給配管24に送給される。
【0021】
希釈ガス供給配管25の他端には、希釈ガスを供給する希釈ガス供給源38が接続されている。また、希釈ガス供給配管25には、希釈ガスの流量を制御するマスフローコントローラ39およびその前後のバルブ40が介装されている。希釈ガスとしてはNガスを用いることができる。また、Arガス等の希ガスを用いることもできる。
【0022】
第1処理ガスは、その分子が、ポーラスLow−k膜のダメージ層の内部に浸透できる程度に小さく、ダメージ層内部で例えば脱水反応を生じさせる等により、ポア内部の水分を除去(固定)する作用を有するものであり、ジメチルカーボネート(Dimetylcarbonate;DMC)、ジアゾメタン(Diazomethan)等を挙げることができる。第1処理ガスとしては、その分子がダメージ層のポアよりも小さくダメージ層の内部に入り込んで脱水反応を生じさせるものであることが好ましい。
【0023】
第2処理ガスは、エッチングやアッシングによりダメージを受けたポーラスLow−k膜のダメージ層の表面部分を例えばメチル基(−CH)により回復(修復)させ、ポーラスLow−k膜の表面に緻密な膜を形成するものであり、Siおよび/またはCを含有するガスであり、TMSDMA(N-Trimethylsilyldimethylamine)、DMSDMA(Dimethylsilyldimethylamine)、TMDS(1,1,3,3-Tetramethyldisilazane)、TMSPyrole(1-Trimethylsilylpyrole)、BSTFA(N,O-Bis(trimethylsilyl)trifluoroacetamide)、BDMADMS(Bis(dimethylamino)dimethylsilane)等のシリル化剤を挙げることができる。シリル化剤を用いる場合には、膜表面のダメージ部分(Si−OH部分)をSi−CHに置換して、疎水性の緻密な膜を形成する。
【0024】
チャンバ11の側壁には、ウエハ搬入出口42が設けられており、このウエハ搬入出口42はゲートバルブ43により開閉可能となっている。そして、ゲートバルブ43を開にした状態で、チャンバ11に隣接する、搬送装置を備え、真空に保持された搬送室(図示せず)との間でウエハWの搬入出が行われるようになっている。
【0025】
チャンバ11の底部の周縁部には、排気口44が設けられており、この排気口44には排気管45が接続されている。排気管45には真空ポンプ等を有する排気機構46が接続されている。排気管45の排気機構46の上流側には自動圧力制御バルブ(APC)47および開閉バルブ48が設けられている。したがって、チャンバ11内の圧力を圧力センサ(図示せず)により検出しつつ、自動圧力制御バルブ(APC)47の開度を制御しつつ、排気機構46によりチャンバ11内を排気することにより、チャンバ11内を所定の圧力に制御することが可能である。また、処理の際にチャンバ11内の圧力が所定の値となった際に開閉バルブ48より処理ガスの封じ込めが可能である。
【0026】
処理装置1は、さらに制御部50を有している。制御部50は、処理装置1の各構成部を制御するためのものであり、これら各構成部を実際に制御するマイクロプロセッサ(コンピュータ)を有するプロセスコントローラ51を備えている。プロセスコントローラ51には、オペレータが処理装置1を管理するためにコマンド等の入力操作を行うキーボードや、処理装置1の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース52が接続されている。また、プロセスコントローラ51には、処理装置1の各構成部の制御対象を制御するための制御プログラムや、処理装置1に所定の処理を行わせるためのプログラムすなわち処理レシピが格納された記憶部53が接続されている。処理レシピは記憶部53の中の記憶媒体に記憶されている。記憶媒体は、ハードディスクのような固定的なものであってもよいし、CDROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース52からの指示等にて任意の処理レシピを記憶部53から呼び出してプロセスコントローラ51に実行させることで、プロセスコントローラ51の制御下で、所定の処理が行われる。
【0027】
<回復処理の実施形態>
次に、このように構成される処理装置1により、ダメージ形成されたポーラスLow−k膜を有するウエハWに対して回復処理を行う処理方法の実施形態について説明する。
【0028】
ここでは、デュアルダマシン法等により配線溝や接続孔を形成するためのエッチングやアッシングの際にポーラスLow−k膜が受けたダメージを第1処理ガスおよび第2処理ガスにより回復させる。
【0029】
ポーラスLow−k膜としては、SOD(Spin on Dielectric)装置で形成されるMSQ(methyl-hydrogen-SilsesQuioxane)、CVDで形成される無機絶縁膜の1つであるSiOC系膜(従来のSiO膜のSi−O結合にメチル基(−CH)を導入して、Si−CH結合を混合させたもので、Black Diamond(Applied Materials社)、Coral(Novellus社)、Aurora(ASM社)等がこれに該当する)等が適用可能である。
【0030】
(第1の実施形態)
図2は、第1の実施形態の処理方法を示すフローチャートである。
まず、ゲートバルブ43を開け、搬入出口42を介してエッチングダメージやアッシングダメージが形成されたポーラスLow−k膜を有するウエハWをチャンバ11に搬入し、所定の温度に加熱された載置台12の上に載置する(ステップ1)。そして、チャンバ11内を排気して所定圧力の真空状態にする(ステップ2)。
【0031】
次いで、第1薬剤貯留部30からガス圧送等により、第1薬剤を薬剤供給配管29を介して気化器26に供給し、気化器26で気化されて形成されたDMC等の第1処理ガスを第1処理ガス供給配管23を介してガス供給配管21に供給するとともに、第2薬剤貯留部36からガス圧送等により、第2薬剤を薬剤供給配管35を介して気化器32に供給し、気化器32で気化されて形成されたTMSDMA等の第2処理ガスを第2処理ガス供給配管24を介してガス供給配管21に供給し、これらをガス導入ヘッド20の処理ガス流路22を介してチャンバ11に導入する(ステップ3)。
【0032】
このとき、第1処理ガスおよび第2処理ガスとともに希釈ガス供給源38から希釈ガス供給配管25、ガス供給配管21およびガス流路22を介してチャンバ11内にNガス等の希釈ガスを導入する。
【0033】
ステップ3においては、第1処理ガスの流量を100〜2000sccmとし、第2処理ガスの流量を100〜2000sccmとし、希釈ガスの流量を0〜3000sccmとすることが好ましい。なお、これらの流量を踏まえて、所定の割合で第1処理ガス用薬剤と第2処理ガス用薬剤とを混合した混合薬剤を使用することも可能であり、これに希釈ガスを付加して使用することも可能である。
【0034】
チャンバ11内が処理圧力に達した時点で、第1処理ガスおよび第2処理ガスの供給を停止し、第1処理ガスおよび第2処理ガスをチャンバ11内に封じ込め、チャンバ11内の圧力を処理圧力に維持し、Low−k膜の回復処理を行う(ステップ4)。この回復処理におけるウエハWの温度は、150〜300℃であることが好ましい。また、回復処理の際のチャンバ内の圧力は667〜4000Pa(5〜30Torr)が好ましい。さらに、回復処理時間は、10〜420sec程度が好ましい。
【0035】
このようにして回復処理が終了後、排気機構46によりチャンバ11内を排気しつつ、希釈ガス供給源38からパージガスとして希釈ガスをチャンバ11内に導入してチャンバ11内のパージを行い(ステップ5)、その後ゲートバルブ43を開いて搬入出口42から回復処理後のウエハWを搬出する(ステップ6)。
【0036】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態の処理方法を示すフローチャートである。
本実施形態では、第1の実施形態と同様、ダメージが形成されたポーラスLow−k膜を有するウエハWをチャンバ11に搬入し、所定の温度に加熱された載置台12の上に載置し(ステップ1)、チャンバ11内を排気して所定圧力の真空状態にする(ステップ2)。
【0037】
次いで、第1薬剤貯留部30からガス圧送等により、第1薬剤を薬剤供給配管29を介して気化器26に供給し、気化器26で気化されて形成されたDMC等の第1処理ガスを第1処理ガス供給配管23を介してガス供給配管21に供給し、ガス導入ヘッド20の処理ガス流路22を介してチャンバ11に導入する(ステップ3−1)。このとき、第1処理ガスとともに希釈ガスを供給する。なお、第1処理ガスの流量を100〜2000sccm、希釈ガスの流量を0〜3000sccm、チャンバ内圧力を400〜13332Pa(3〜100Torr)にすることが好ましい。
【0038】
所定時間ステップ3−1を行った後、第1処理ガスを停止し、例えばチャンバ11内の圧力を維持したまま、第2処理ガスに切り替える。すなわち、第2薬剤貯留部36からガス圧送等により、第2薬剤を薬剤供給配管35を介して気化器32に供給し、気化器32で気化されて形成されたTMSDMA等の第2処理ガスを第2処理ガス供給配管24を介してガス供給配管21に供給し、ガス導入ヘッド20の処理ガス流路22を介してチャンバ11に導入する(ステップ3−2)。このとき、第2処理ガスとともに希釈ガスを供給する。なお、第2処理ガスの流量を100〜2000sccm、希釈ガスの流量を0〜3000sccmとすることが好ましい。第1処理ガスをパージしてから第2処理ガスを導入するようにしてもよい。
【0039】
チャンバ11内が処理圧力に達した時点で、第2処理ガスの供給を停止し、バルブ48を閉じて、第2処理ガスをチャンバ11内に封じ込め、チャンバ11内の圧力を処理圧力に維持し、Low−k膜の回復処理を行う(ステップ4′)。この回復処理におけるウエハWの温度は、150〜300℃であることが好ましい。また、回復処理の際のチャンバ内の圧力は667〜4000Pa(5〜30Torr)が好ましい。さらに、回復処理時間は、10〜420sec程度が好ましい。
【0040】
このようにして回復処理が終了後、第1の実施形態と同様にチャンバ11内のパージを行い(ステップ5)、その後回復処理後のウエハWを搬出する(ステップ6)。
【0041】
<メカニズムおよび効果>
図4は従来の回復処理および本発明の回復処理のモデルを示す模式図である。図4の(a)に示すように、ポーラスLow−k膜にエッチングやアッシングによりダメージが生じると元々1〜2nmのポアがダメージにより2nmよりも大きな径になり、内部のポア部分が親水性となり、そこに水分が吸着することになる。すなわち、ダメージが生じたダメージ層に水分が含まれることとなる。しかし、図4の(b)に示すように、この状態で従来から用いられているTMSDMAを気化させて回復処理を行っても、このような薬剤は分子が大きいためダメージ層の内部までは到達することができない。このため、図4の(c)に示すように、表面のみに疎水性の緻密な改質層が形成され、ダメージ層の内部はダメージを受けた親水性の状態のままであるため、緻密な改質層によって水分がダメージ層に閉じ込められた状態となる。
【0042】
これに対して、上記第1および第2の実施形態では、第1処理ガスとしてその分子がダメージ層の内部に浸透できる程度に小さく、ポア内で脱水反応を生じさせポア内部の水分を除去(固定)する作用を有するガス、例えばDMCを用い、第2処理ガスとして、従来から回復処理に用いているダメージ層の表面部分をメチル基(−CH)により回復(修復)させ、ポーラスLow−k膜の表面に緻密な膜を形成するガス、例えばTMSDMAを用いるので、図4の(d)に示すダメージ層が形成された状態から、図4の(e)に示すように、第1処理ガス(DMC)および第2処理ガス(TMSDMA)を供給した際に、第1処理ガス(DMC)はダメージ層内部に浸透し、第2処理ガス(TMSDMA)はダメージ層表面で反応し、図4の(f)に示すように、第1処理ガスがダメージ層内で水分を固定して脱水生成物を形成して水分を除去し、第2処理ガスがダメージ層表面で疎水性で緻密な改質層を形成する。このため、ダメージ層表面でダメージが回復してk値(比誘電率)やリーク電流値が低下するとともに、疎水性で緻密な改質層により、新たな水分が膜内に入り込まず、ポーラスLow−k膜内の水分を少なく維持することができ、Low−k膜の水分によるバリアメタルや配線等の酸化を防止することができる。
【0043】
従来は、DMCもメチル基を有するため、DMCは回復処理の処理ガスとして期待されていたが、弱酸物質であるため、実際にはほとんど解離せずダメージ層との反応はほとんど生じない。また、DMCのみを用いて処理した場合には、その後に大気雰囲気に取り出すとダメージ層中のDMCの分子は大気中に放出されて処理前の状態に戻り、再びダメージ層中の水分が取り入られる。
【0044】
なお、第1の実施形態のように、第1処理ガスおよび第2処理ガスを同時に導入した場合には、第1処理ガスのダメージ層への浸透と第2処理ガスによる回復処理が同時進行的に生じるが、第2処理ガスによる回復処理は、チャンバ内が所定の圧力になってから安定的に行われるため第1処理ガスがダメージ層に浸透して脱水反応が生じた後に第2処理ガスによる緻密な改質層を形成することができる。ただし、第2の実施形態のように、第1処理ガスの導入と第2処理ガスの導入とをシーケンシャルに行うほうが、第1処理ガスのダメージ層への取り込み量を増加させることができ、ダメージ層の脱水効果をより高くすることができる。
【0045】
<実験結果>
次に、本発明の効果を実験によって確認した結果について以下に説明する。
まず、Low−k膜としてBD2を用い(k値=2.5)、エッチングおよびアッシングによりダメージを与えた後、従来の方法によりTMSDMAのみを用いて圧力50Torrで回復処理を行った場合と、本発明に従って第1処理ガスであるDMCと第2処理ガスであるTMSDMAを体積比で80:20にして回復処理を行った場合について、k値、リーク電流値、膜中の水分量を測定した。
【0046】
その結果を図5に示す。なお、水分量はFT−IRにより測定した。図5に示すように、本発明に従って第1処理ガスであるDMCと第2処理ガスであるTMSDMAを用いた場合には、k値およびリーク電流値を従来と同等の低い値に維持しつつ、膜中の水分量を減少させることができることが確認された。
【0047】
次に、TMSDMAガスとDMCの比率を変えて回復処理を行った際のリーク電流値を把握した。その結果を図6に示す。この図に示すように第2処理ガスであるTMSDMAの濃度を小さくするほど、リーク電流が低下することがわかる。これは、第1処理ガスのDMCの濃度が高くなり、DMCの脱水効果により膜中の水分がより多く除去されたためであると推測される。
【0048】
なお、第1処理ガスとして上述のジアゾメタン(CH)を用いる場合には、ジアゾメタン(CH)でTMSDMAでは到達できない深い層まで疎水化処理(広義の脱水処理)し、これと組み合わせてTMSDMAによる緻密化処理を行うことが可能である。
<他の適用>
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、主に第1処理ガスとしてDMCを用い、第2処理ガスとしてTMSDMAを用いた例を示したが、上記作用を有していればこれに限るものではない。また、本発明に適用されるポーラスLow−k膜についても、上記例示のものに限らず、ダメージを受けてOH基が存在するようになるものであれば適用可能である。さらに、上記実施形態では、回復処理の際に、チャンバ内を封じきりとしたが、自動圧力制御バルブを用いて圧力制御を行いながら回復処理を行ってもよい。
【0049】
さらにまた、上記実施形態では、被処理基板として半導体ウエハを用いた例を示したが、これに限るものではなく、FPD(フラットパネルディスプレイ)用基板等、他の基板であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1;処理装置
11;チャンバ
12;載置台
15;ヒータ
20;ガス導入ヘッド
21;ガス供給配管
22;ガス流路
23;第1処理ガス供給配管
24;第2処理ガス供給配管
30;第1処理ガス貯留部
36;第2処理ガス貯留部
50;制御部
51;プロセスコントローラ
52;ユーザーインターフェース
53;記憶部(記憶媒体)
W;ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板に形成された、表面部分にダメージ層を有する低誘電率膜に回復処理を施す処理方法であって、
その分子が、前記低誘電率膜の前記ダメージ層の内部に浸透できる程度に小さく、前記ダメージ層内の水分を除去することが可能な第1処理ガスと、前記ダメージ層の表面に疎水性で緻密な改質層を形成する第2処理ガスとを前記低誘電率膜の前記ダメージ層に作用させることを特徴とする処理方法。
【請求項2】
前記第1処理ガスと前記第2処理ガスとを混合状態で前記ダメージ層に作用させることを特徴とする請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
前記第1処理ガスでの処理後、前記第2処理ガスでの処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の処理方法。
【請求項4】
前記第1処理ガスは、その分子がダメージ層内部に入り込んで脱水反応を生じさせることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の処理方法。
【請求項5】
前記第2処理ガスは、Siおよび/またはCを含有し、前記ダメージ層表面部分をメチル基により回復させるものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の処理方法。
【請求項6】
前記第1処理ガスはDMCであり、前記第2処理ガスはTMSDMAであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の処理方法。
【請求項7】
コンピュータ上で動作し、処理装置を制御するためのプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、請求項1から請求項6のいずれかの処理方法が行われるように、コンピュータに前記処理装置を制御させることを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−204669(P2012−204669A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68695(P2011−68695)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】