説明

処理装置及び表面状態評価方法

【課題】 基板表面の溶融状態の評価精度が低下することを防止する。
【解決手段】 モニタ光出射装置5が、チャンバ1の外部から窓2を通して基板Wにモニタ光Lを入射させる。第1の光強度計測器8が、モニタ光Lのうち、基板Wの表面で反射し、窓2を通してチャンバ1の外部に出射した外部出射光LM0の強度を計測する。第2の光強度計測器9が、モニタ光Lのうち、チャンバ1の外部から窓2に入射し、窓2で反射された第1の反射光LM1の強度を計測する。第3の光強度計測器10が、モニタ光Lのうち、基板W表面で反射されてチャンバ1の内部から窓2に入射し、窓2で反射された第2の反射光LM2の強度を計測する。コンピュータ11が、第1〜第3の光強度計測器8、9、及び10の測定結果に基づいて、基板W表面の溶融状態を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物を処理する処理装置及び被処理物の表面の状態を評価する表面状態評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図2に、特許文献1に開示されたアニール処理装置の概略図を示す。チャンバ20の内部に保持台21が配置されている。保持台21は、基板22を保持している。基板22の表面は、アモルファスシリコンからなる。チャンバ20の上壁の一部は窓23及び24によって構成されている。レーザ出射装置25が、チャンバ20の外部から、窓23を通して基板22の表面に処理用レーザ光251を入射させる。すると、処理用レーザ光251が入射した位置のアモルファスシリコンが一旦溶融し、これが固化する。保持台21が図2の右方向に移動することにより、基板22の表面上における処理用レーザ光251の入射領域を基板22の表面上で移動させることができる。
【0003】
基板22が窓24と対向する位置に達したとき、検査装置26が、チャンバ20の外部から窓24を通して基板22の表面にモニタ光261を入射させる。また、検査装置26は、基板22の表面からの反射光262を受光し、その強度を測定する。基板22に入射させるモニタ光261の強度が一定の場合、基板22表面からの反射光262の強度は、基板22の表面の状態に依存する。そこで、検査装置26は、基板22表面からの反射光262の強度に基づいて、基板22表面の状態を評価することができる。
【0004】
【特許文献1】特開平11−265859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなアニール処理装置においては、窓23及び24が汚れることがある。この原因の一つとして、例えば処理用レーザ光251が入射した位置のシリコンの一部が蒸発し、蒸発したシリコンが窓23及び24の内面(チャンバ20の内部空間に臨む面)に付着することが考えられる。この場合、窓24の光反射率が変化するため、モニタ光261のうち、窓24を透過して基板22の表面に到達する光の強度、及び反射光262のうち、窓24を透過して検査装置26に入射する光の強度が、基板22の表面の状態によらずに変化することになる。その結果、基板22表面の状態の評価精度が悪化する。
【0006】
本発明の目的は、被処理物の表面状態の評価精度が悪化することを防止する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によれば、壁の一部が窓によって構成された処理室と、前記処理室の内部で前記窓と対向する位置に被処理物を保持する保持台と、前記処理室の外部から前記窓を通して前記被処理物にモニタ光を入射させるモニタ光出射装置と、前記モニタ光出射装置から出射されたモニタ光のうち、前記被処理物の表面で反射し、前記処理室の内部から前記窓を通して前記処理室の外部に出射した外部出射光の強度を計測する外部出射光強度計測器と、前記モニタ光出射装置から出射されたモニタ光のうち、前記処理室の外部から前記窓に入射し、該窓で反射された第1の反射光、及び前記被処理物の表面で反射されて前記処理室の内部から前記窓に入射し、該窓で反射された第2の反射光の少なくともいずれか一方の反射光の強度を計測する反射光強度計測器とを備えた処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
第1及び第2の反射光の少なくともいずれか一方の反射光の強度を考慮することにより、窓の汚れ等に起因した基板の表面状態の評価精度の悪化を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1に、実施例によるアニール処理装置の概略図を示す。チャンバ1の上壁の一部が、板状の窓2によって構成されている。窓2は石英からなる。保持台3が、チャンバ1の内部において、窓2と対向する位置に基板Wを保持している。基板Wの表面は、アモルファス半導体、具体的にはアモルファスシリコンからなる。チャンバ1の外部には、処理用レーザ光出射装置4と、モニタ用レーザ光出射装置5とが配置されている。
【0010】
処理用レーザ光出射装置4は、処理用レーザ光Lを出射する。処理用レーザ光Lは、例えばエキシマレーザ光である。なお、処理用レーザ光Lとして、固体レーザの高調波を用いてもよい。処理用レーザ光Lは、チャンバ1の外部から窓2を透過して基板Wの表面に入射する。すると、処理レーザ光Lが入射した位置のアモルファスシリコンが一旦溶融し、これが固化する。これにより、多結晶シリコン膜が形成される。
【0011】
モニタ用レーザ光出射装置5は、モニタ用レーザ光Lを出射する。モニタ用レーザとして、例えば波長632.8nmのHe−Neレーザが用いられる。モニタ用レーザ光Lは、第1のミラー6で反射され、窓2を透過して基板Wの表面に入射する。基板Wの表面における処理用レーザ光Lの入射位置と同一の位置に、モニタ用レーザ光Lが入射する。基板Wの表面に入射したモニタ用レーザ光Lは、基板Wの表面で反射され、窓2を透過してチャンバ1の外部に出射する。このチャンバ1の外部に出射した光LM0を外部出射光と呼ぶことにする。外部出射光LM0は、第2のミラー7で反射され、第1の光強度測定器8に入射する。第1の光強度測定器8は、外部出射光LM0の強度を計測する。
【0012】
モニタ用レーザ光出射装置5から出射されたモニタ用レーザ光Lのすべてが基板Wの表面に到達する訳ではない。第1のミラー6で反射され、窓2に入射したモニタ用レーザ光Lの一部は、窓2の外面(チャンバ1の外部空間に臨む面)2a及び内面(チャンバ1の内部空間に臨む面)2bで反射されるため、基板Wの表面に到達しない。このように、モニタ用レーザ光Lのうち、窓2の外面2a及び内面2bで反射され、基板Wに到達しない光LM1を第1の反射光と呼ぶことにする。第1の反射光LM1は、チャンバ1の外部に配置された第2の光強度計測器9に入射する。第2の光強度計測器9は、第1の反射光LM1の強度を計測する。
【0013】
また、基板Wの表面で反射されたモニタ用レーザ光Lのすべてがチャンバ1の外部に出射する訳ではない。基板Wの表面で反射されたモニタ用レーザ光Lの一部は、窓2の外面2a及び内面2bで反射されるため、チャンバ1の外部に出射しない。このように、基板Wの表面で反射したモニタ用レーザ光Lのうち、窓2の外面2a及び内面2bで反射され、チャンバ1の外部に出射しない光LM2を第2の反射光と呼ぶことにする。第2の反射光LM2は、チャンバ1の内部に配置された第3の光強度計測器10に入射する。第3の光強度計測器10は、第2の反射光LM2の強度を計測する。
【0014】
第1〜第3の光強度計測器8、9、及び10の計測結果は、コンピュータ11に送出される。コンピュータ11は、それらの計測結果に基づいて、処理用レーザ光Lの照射によって溶融した基板W表面の溶融状態を評価する。これにより、基板Wのアニール処理が適切に行われているか否かを判定することができる。第1の光強度計測器8の計測結果のみならず、第2及び第3の光強度計測器9及び10の計測結果をも考慮するようにしたことにより、基板W表面の溶融状態の評価精度の悪化を低減することができる。以下、この理由について説明する。
【0015】
まず、第1の光強度計測器8の測定結果のみに基づいて基板W表面の溶融状態を評価することを考える。基板Wの表面におけるモニタ用レーザ光Lが入射した位置の光反射率は、その位置の溶融状態に依存する。このため、モニタ用レーザ光出射装置5から出射されるモニタ用レーザ光Lの強度が一定の場合、外部出射光LM0の強度は基板W表面の溶融状態に依存する。そこで、第1の光強度計測器8の計測結果に基づいて、基板W表面の溶融状態を推定することは可能である。
【0016】
しかし、外部出射光LM0の強度は、基板W表面の溶融状態のみならず、窓2の光反射率にも依存する。例えば、窓2の内面2bの光反射率が増大し、第1の反射光LM1の強度が増大すると、その分だけ基板Wに到達する光の強度が低下するため、外部出射光LM0の強度も低下する。また、窓2の内面2bの光反射率が増大し、第2の反射光LM2の強度が増大すると、その分だけ外部出射光LM0の強度が低下する。なお、窓2の内面2bの光反射率が増大する原因の一つとして、処理用レーザ光Lが入射した位置のシリコンの一部が蒸発し、蒸発したシリコンが窓2の内面2bに付着することが考えられる。
【0017】
このように、外部出射光LM0の強度は、基板W表面の溶融状態のみならず、窓2の光反射率によっても変動するため、第1の光強度計測器8の計測結果のみに基づいて基板W表面の溶融状態の評価精度を向上させることには限界がある。
【0018】
これに対して、第1の光強度計測器8の計測結果のみならず、第3の光強度測定器10の測定結果も考慮する場合は、第1の光強度測定器8の測定結果に、第3の光強度測定器10の測定結果を加えた値(以下、第1の値という。)によって、実際に基板Wの表面で反射された光の強度を推定することができる。また、第2の光強度測定器9の測定結果を考慮することにより、予め既知であるモニタ用レーザ光出射装置5から出射されるモニタ用レーザ光Lの強度から、第2の光強度計測器9の計測結果を引いた値(以下、第2の値という。)によって、実際に基板Wに入射した光の強度を推定することができる。
【0019】
そこで、第1の値と第2の値との比によって、基板W表面の光反射率を求めることができる。なお、モニタ用レーザ光Lは、基板Wの表面における処理用レーザ光Lの入射位置と同一の位置に入射するため、処理用レーザ光Lの入射している位置の光反射率をリアルタイムで求めることができる。そして、求めた光反射率によって、基板W表面の溶融状態を評価することができる。第1の値と第2の値との比は、モニタ用レーザ光出射装置5から出射されるモニタ用レーザ光Lの強度と第1の光強度計測器8の計測結果との比に比べると、窓2の光反射率の変動の影響を受けにくいので、基板W表面の評価精度の悪化を低減することができる。
【0020】
以上、実施例について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、第1及び第2の反射光LM1及びLM2のうちいずれか一方の反射光の強度は必ずしも計測しなくてもよい。例えば、第3の光強度計測器10を省略することを考える。モニタ用レーザ光出射装置5から出射されるモニタ用レーザ光Lの強度と、第2の光強度計測器9の計測結果との比によって、現時点における窓2の光反射率を求めることができる。窓2の光反射率が窓2の外面2a及び内面2b内で一様であると仮定すれば、求めた窓2の光反射率と第1の光強度計測器8の計測結果とに基づいて、上記第1の値に相当する値を推定することができる。この結果、基板W表面の光反射率を推定することができる。このように、第3の光強度計測器10を省略する場合は、チャンバ1内に光強度計測器を配置しなくて済むので、チャンバ1のクリーニング作業が容易になるといった利点がある。
【0021】
同様に、第2の光強度計測器9を省略する場合であっても、第1の光強度計測器8の計測結果と、第3の光強度計測器10の計測結果との比によって窓2の光反射率を求めることができる。そして、求めた窓2の光反射率と、モニタ用レーザ光出射装置5から出射されるモニタ用レーザ光Lの強度とに基づいて、上記第2の値に相当する値を推定することができる。この結果、基板W表面の光反射率を推定することができる。
【0022】
コンピュータ11が、基板W表面の溶融状態の評価結果に基づいて、処理用レーザ光出射装置4を制御する構成としてもよい。例えば、コンピュータ11の評価結果により、アモルファス半導体の溶融が不充分であると判定された場合には、処理用レーザ光出射装置4から出射される処理用レーザ光Lの強度を増大させるようにしてもよい。また、実施例は、アモルファス半導体の結晶化アニールについて説明したが、処理用レーザ光の照射によって被処理物に施される処理は、被処理物の表面の反射率が変動するような処理、例えば、被処理物に注入された不純物を活性化するための活性化アニールであってもよい。この他、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例によるアニール処理装置の概略図である。
【図2】従来のアニール処理装置の概略図である。
【符号の説明】
【0024】
1…チャンバ(処理室)、2…窓、2a…外面、2b…内面、3…保持台、4…処理用レーザ光出射装置、5…モニタ用レーザ光出射装置(モニタ光出射装置)、6…第1の反射鏡、7…第2の反射鏡、8…第1の光強度計測器(外部出射光強度計測器)、9…第2の光強度計測器(反射光強度計測器)、10…第3の光強度計測器(反射光強度計測器)、11…コンピュータ(評価装置)、W…基板(被処理物)、L…モニタ用レーザ光(モニタ光)、LM0…外部出射光、LM1…第1の反射光、LM2…第2の反射光、L…処理用レーザ光、20…チャンバ、21…保持台、22…基板、23,24…窓、25…処理用レーザ光出射装置、251…処理用レーザ光、26…検査装置、261…モニタ光、262…反射光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁の一部が窓によって構成された処理室と、
前記処理室の内部で前記窓と対向する位置に被処理物を保持する保持台と、
前記処理室の外部から前記窓を通して前記被処理物にモニタ光を入射させるモニタ光出射装置と、
前記モニタ光出射装置から出射されたモニタ光のうち、前記被処理物の表面で反射し、前記処理室の内部から前記窓を通して前記処理室の外部に出射した外部出射光の強度を計測する外部出射光強度計測器と、
前記モニタ光出射装置から出射されたモニタ光のうち、前記処理室の外部から前記窓に入射し、該窓で反射された第1の反射光、及び前記被処理物の表面で反射されて前記処理室の内部から前記窓に入射し、該窓で反射された第2の反射光の少なくともいずれか一方の反射光の強度を計測する反射光強度計測器と
を備えた処理装置。
【請求項2】
前記反射光強度測定器が、前記第1の反射光及び前記第2の反射光の双方の強度をそれぞれ計測する請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
さらに、前記モニタ光出射装置から出射されるモニタ光の強度から前記反射光強度計測器によって計測された前記第1の反射光の強度を引いた値と、前記外部出射光強度計測器の計測結果に前記反射光強度計測器によって計測された前記第2の反射光の強度を加えた値とに基づいて、前記被処理物の表面の状態を評価する評価装置を備えた請求項2に記載の処理装置。
【請求項4】
さらに、前記処理室の外部から前記窓を通して前記被処理物に処理用レーザ光を入射させる処理用レーザ光出射装置を備え、
前記モニタ光出射装置が、前記被処理物の表面における前記処理用レーザ光の入射位置と同一の位置に、前記モニタ光を入射させる請求項1〜3のいずれかに記載の処理装置。
【請求項5】
(A)壁の一部が窓によって構成された処理室の内部に、前記窓と対向するように被処理物を配置する工程と、
(B)前記処理室の外部から、前記窓を通して前記被処理物にモニタ光を入射させる工程と、
(C)前記モニタ光のうち、前記被処理物の表面で反射され、前記処理室の内部から前記窓を通して前記処理室の外部に出射した外部出射光の強度と、前記モニタ光のうち、前記処理室の外部から前記窓に入射し、該窓で反射された第1の反射光、及び前記モニタ光のうち、前記被処理物の表面で反射されて前記処理室の内部から前記窓に入射し、該窓で反射された第2の反射光の少なくともいずれか一方の反射光の強度とを計測する工程と、
(D)前記工程(C)の計測結果に基づいて、前記被処理物の表面の状態を評価する工程と
を含む表面状態評価方法。
【請求項6】
前記工程(C)では、前記外部出射光の強度と、前記第1及び第2の反射光の双方の強度とを計測する請求項5に記載の表面状態評価方法。
【請求項7】
前記工程(D)では、前記処理室の外部から入射させるモニタ光の強度から前記第1の反射光の強度を引いた値と、前記外部出射光の強度に前記第2の反射光の強度を加えた値とに基づいて、前記被処理物の表面の状態を評価する請求項5又は6に記載の表面状態評価方法。
【請求項8】
さらに、前記工程(A)の後に、前記処理室の外部から前記窓を通して前記被処理物に処理用レーザ光を入射させる工程を含み、
前記工程(B)では、前記被処理物の表面における前記処理用レーザ光の入射位置と同一の位置に、前記モニタ光を入射させる請求項5〜7のいずれかに記載の表面状態評価方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−245282(P2006−245282A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−58832(P2005−58832)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】