説明

処理装置

【課題】 従来よりも腐食性ガスの侵入を抑制することのでき、かつ基材中の成分の表層への浸入を防止できる部材を用いたガス処理装置およびメカニカルポンプを提供する。
【解決手段】 本発明の処理装置は、内部をガスが通過または滞留する処理装置であり、ガスと接する部分は、鉄とクロム(Cr)を含有する基材と、基材表面に設けられ、少なくともイットリア(Y)を主成分とする表面保護膜とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面保護膜が設けられた接ガス部材を有する処理装置に関し、特にメカニカルポンプのような処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
メカニカルポンプ等の排気装置やプロセス処理にガスを用いた処理装置においては、排出すべき気体または処理に用いる気体と接触する接ガス部の部材は、その表面を保護膜で覆う必要がある。
【0003】
これは、例えば、減圧中で有毒ガスまたは腐食性ガス等を使用する半導体製造装置、大型薄型ディスプレイ製造装置、太陽電池製造装置における処理工程(プラズマエッチング、減圧気相成長)の装置やその排気部に用いられる真空ポンプ等において、これらのガスが装置やポンプ内などで反応して接ガス部を腐食させる恐れがあるためである。
【0004】
また、これらのガスが接ガス部表面を構成する材料の触媒作用によって分解解離し、反応生成物が蓄積して装置やポンプなどの正常な動作を阻害させるといった問題があるためである。
【0005】
より具体的には、例えば従来のメカニカルポンプの接ガス部はニッケル系の処理がなされている場合があるが、ニッケルは半導体製造装置、大型薄型ディスプレイ製造装置、太陽電池製造装置の処理工程(プラズマエッチング、減圧気相成長)におけるガスである、SiH、AsH、PH、B、等の水素化合物分子に対する触媒効果がある。
【0006】
そのため、半導体プロセスで頻繁に使用されるSiH、AsH、PH、B、等の水素化合物分子がポンプ内の接ガス部のニッケルの触媒効果で分解し、Si、As、P、B等が発生し、化学反応によって生成物としてメカニカルポンプ内に堆積するという問題があった。
【0007】
そのため、接ガス部の表面を、耐食性に優れ、触媒効果のないイットリア(酸化イットリウム、Y)膜で覆うことによって、ガスの分解解離を抑制し、ポンプ内への生成物の堆積を抑えた構造が提案されている(特許文献1)。
【0008】
さらに、イットリア(Y)膜の表面欠陥を減少させるために、イットリアにセリウムを含有した膜を用いることも提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−88912号公報
【特許文献2】特願2009−269201号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1、2記載の技術は、ガスの分解解離を抑制し、ポンプ内への生成物の堆積を抑える効果が得られるという点で、優れた技術である。
【0011】
しかしながら、本発明者等は、基材に鉄系の金属を用いた場合、その表面保護膜のイットリア膜(セリウム入りイットリア膜を含む。以下同じ)に基材からFeが侵入して、イットリア膜の耐腐食性を低下させる場合があるという知見を新たに得た。
【0012】
そのため、耐腐食性という観点からは、基材からのFeの浸入を防止できる構造がより望ましい。
【0013】
本発明は上記知見に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来よりも腐食性ガスの侵入を抑制することができ、かつ基材中の成分の表面保護膜への浸入を防止できる部材を用いた処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、内部をガスが通過または滞留する処理装置において、前記ガスと接する部分は、鉄とクロム(Cr)を含有する基材と、前記基材表面に設けられ、少なくともイットリア(Y)を主成分とする表面保護膜と、を有することを特徴とする処理装置が得られる。
【0015】
Cr含有鉄は表面に選択的に酸化クロム膜、または酸化クロムを含む膜ができるが、本発明者等は、表面の酸化クロム膜がFeの表面保護膜中への拡散を阻止する効果があることを見出した。これに対して、Crを含有しない鉄を素材にした場合は、Feが表面保護膜中に拡散し、表面保護膜の耐食性を悪化させてしまう。したがって、本発明によって、基材の鉄にCrを含有させることが必要である。Crの含有量は0.5〜25原子%が好ましく、10〜20%がより好ましい。
【0016】
また、基材は、鉄を主成分として、Si、C、Mnを2原子%乃至0.05原子%、好ましくは1%含有し、Crを0.5%〜25%、好ましくは10〜20原子%含有し、他の成分は0.05%以下に抑制された材料を用いるのが望ましい。このような材料としては、例えば、SUS316LやSUS440C等のステンレスを用いることができる。
【0017】
上記のような基材の接ガス部の表面にイットリア(Y)膜、またはCeOを酸化物換算の原子比で1%〜10%、望ましくは2%〜4%、さらに望ましくは3%程度、含有したイットリア(Y)膜が表面保護膜として設けられる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、従来よりも腐食性ガスの侵入を抑制することができ、かつ基材中の成分の表面保護膜への浸入を防止できる部材を用いたガス処理装置およびメカニカルポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係るスクリューポンプ(メカニカルポンプ)の一例を示した断面図である。
【図2】耐腐食性試験前の実施例1、比較例1〜3の試料の表面観察結果を示す図である。
【図3】耐腐食性試験前の実施例1の試料の表面の組成を示す図である。
【図4】耐腐食性試験前の比較例1の試料の表面の組成を示す図である。
【図5】耐腐食性試験前の比較例2の試料の表面の組成を示す図である。
【図6】耐腐食性試験前の比較例3の試料の表面の組成を示す図である。
【図7】耐腐食性試験に用いる反応管の概略図である。
【図8】耐腐食性試験前後の実施例1、比較例1〜3の試料の表面観察結果を示す図である。
【図9】耐腐食性試験前後の実施例1、比較例1〜3の試料の表面観察結果を示す図である。
【図10】耐腐食性試験後の実施例1の試料の表面の組成を示す図である。
【図11】耐腐食性試験後の比較例1の試料の表面の組成を示す図である。
【図12】耐腐食性試験後の比較例2の試料の表面の組成を示す図である。
【図13】耐腐食性試験後の比較例3の試料の表面の組成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0021】
まず、図1を参照して、本実施形態に係る処理装置としてのスクリューポンプ(メカニカルポンプ)の構造、および処理装置の接ガス部の構造について説明する。図1はスクリューポンプ本体Aの構成を断面図によって示したものである。スクリューポンプ本体Aには、複数の螺旋状の陸部と溝部を有し、互いにかみ合いながら実質的に平行な二軸の回りを回転する一対のスクリューロータa1(a2)が具備されている。
【0022】
また、スクリューロータa1(a2)は、ケーシングa3内に収納され、スクリューロータa1(a2)を支持するシャフトa4の一方のみの軸受けによって回転可能に支持されている。
【0023】
シャフトa4の一端部には、タイミングギアa6が取り付けられ、このタイミングギアa6を介して一対のスクリューロータa1(a2)が同期して回転されるように構成されている。なお、シャフトa4の他端部にはモータMが取り付けられる。
【0024】
一方、前記両スクリューロータa1(a2)を収納するケーシングa3の上端部には吸入ポートa7が形成されており、またケーシングa3の下端部側には吐出ポートa8が形成されており、モータMの回転により、前記スクリューロータa1(a2)が同期して回転することにより、気体を吸入ポートa7から吸入し、吐出ポートa8より排気する真空ポンプの作用がなされるように構成されている。
【0025】
さらに、スクリューロータの回転軸方向のほぼ中央部におけるケーシングa3の一部には、不活性ガス注入口a10が穿設されており、この不活性ガス注入口a10より注入されるガスは、一対のスクリューロータa1(a2)に侵入し、両者の間の隙間のガスを希釈し、分子量の小さなガスの排気性能を向上させると共に生成物の発生、腐食を抑える。
【0026】
ここで、スクリューポンプ本体Aのスクリューロータa1(a2)、ケーシングa3、吸入ポートa7、吐出ポートa8、内部等は排気ガスに接触する部材(接ガス部)に、鉄とクロムを含む基材の表面に表面保護膜がコーティングされたものを用いている。
【0027】
表面保護膜の一例は、イットリア(Y)膜である。この表面保護膜は、例えば構成部材の表面にイットリア(Y)をゾルゲルコーテング後、例えば窒素と酸素の比率が80:20の雰囲気下で250℃乃至1000℃の熱処理をしてイットリア(Y)を形成することによって得られる。このような保護膜は耐食性に優れ、触媒効果がないため、ポンプの接ガス部の部材の表面とすることで排気ガスの分解解離を抑制し、ポンプ内への生成物の堆積を抑える。即ち、前記のイットリア(Y)処理をメカニカルポンプ接ガス部の部材にすることによりポンプの信頼性を向上させ、ポンプの正常な動作を長期間保証することができる。
【0028】
なお、イットリア(Y)をポンプの接ガス部の部材に表面処理をしたメカニカルポンプ内部における、生成物の堆積をさらに抑制させるためには、メカニカルポンプ本体の温度を80℃以上の高温に維持するのが好ましい。
【0029】
一方、メカニカルポンプの性能を維持するためには、250℃以下の温度に維持するのが好ましい。したがって、メカニカルポンプ本体の温度を80℃乃至250℃の範囲内に維持することが好ましく、さらに好ましくは、メカニカルポンプ本体の温度を略150℃に維持するのが良い。
【0030】
接ガス部の温度を80〜250℃の範囲内に維持するために、スクリューポンプは、温度制御手段を有するのが望ましい。
【0031】
例えば、この温度制御手段としては、図示はしないが、電気ヒータと、冷却構造とを有するものが挙げられる。冷却構造は、例えばケーシングa3に空洞部を形成し、そこに冷却用の水やオイル等の冷媒を循環させるものである。電気ヒータと冷却構造は、スクリューポンプ本体Aの所定箇所に設けられた温度センサによる監視温度に基づいて、接ガス部の温度をフィードバック制御するようなものが挙げられる。
【0032】
なお、電気ヒータに代えて、スクリューポンプの動作によって発生する気体圧縮熱や動作部材の摩擦熱などを熱源として利用するものであってもよい。
【0033】
表面保護膜としてイットリア(Y)を用いる場合、セリウムを含有させるのが望ましい。より具体的には、酸化セリウム(CeO)を含有させる。
【0034】
この場合、セリウムの含有量は、酸化物換算の原子比で1%乃至10%が望ましく、より望ましくは1%乃至5%、さらに望ましくは2%乃至4%である。
【0035】
上記範囲で、酸化セリウムをイットリア(Y)に含有させることにより、イットリア膜中の微細なポアなどの欠陥を減少させることができ、従来のイットリア(Y)膜と比較して、腐食性ガスの侵入を抑制することができる。
【0036】
なお、表面保護膜のコーティング厚さは0.06μm乃至10μmとするのが望ましい。これはコーティング厚さが0.06μm未満の場合、貫通ポアにより下地が露出されるポイントが存在する可能性があり、10μm以上の場合は、膜ストレスにより膜剥離が発生する可能性があるからである。
【0037】
一方、基材としては鉄とクロムを含む材料が用いられる。より具体的には、鉄を主成分とし、Crを0.5〜25原子%、好ましくは10〜20原子%含有したものが好ましい。
【0038】
また、鉄とクロム以外の成分は、Si、C、Mnを2原子%乃至0.05原子%含有し、他の成分(鉄とクロムを除く)の含有量は0.05原子%以下とするのが望ましい。このような材料の一例はSUS316LやSUS440C等のステンレスである。
【0039】
このようなクロムを含む鉄系合金を基材として用いることにより、後述するように、表面保護膜へのFeの浸入を防止でき、Feの浸入による耐腐食性の低下を抑制できる。
【0040】
以上の説明で明らかなように、半導体製造装置、大型薄型ディスプレイ製造装置、太陽電池製造装置の処理工程(プラズマエッチング、減圧気相成長等)に用いられる処理装置、あるいはこれらの処理装置に接続された、メカニカルポンプの、処理ガスや排気ガスの接ガス部を、鉄とクロム(Cr)を含有する基材上にイットリア(Y)表面処理を行い、高温に維持することにより、接ガス部が耐食性に優れ、触媒効果のない処理装置あるいはメカニカルポンプとなる。
【0041】
メカニカルポンプ内部は耐食性があり、触媒効果が無く、またメカニカルポンプ本体を高温にすることにより、さらに生成物の堆積を抑えるためメカニカルポンプの正常な動作を長期間保証することができる。また前記メカニカルポンプを接続した半導体製造装置、大型薄型ディスプレイ製造装置、太陽電池製造装置は長時間安定した性能を維持するため、前記各装置の安定稼動ができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例に基づき、本発明をさらに詳細に説明する。
【0043】
<試料の作製>
まず、以下に示す手順に従って試料を作製した。
【0044】
(実施例1)
基材として平面寸法が6mm×20mmの長方形で厚さが1mmの表面研磨したSUS316Lを用意し、表面にYにCeOを3%含有させた保護膜を形成した。
【0045】
具体的には、まず基材を1500rpmで回転させながらY+3%CeO用コート材を60秒間塗布した。
【0046】
その後、公知の焼成装置を用いて、100%Nを1L/minの流速で流しながら圧力5torr(6.67×10Pa)の条件下で400℃まで5℃/minの昇温速度で昇温し、400℃に達したら、その状態で8時間保持して脱ガスを行った。
【0047】
脱ガス終了後、常圧、400℃、100%O雰囲気下で1L/minの流速でOを流しながら1時間保持して酸化焼成を行い、YにCeOを3%含有させた保護膜を得た。なお、塗布/焼成は2回繰り返し、膜厚が90nm(0.09μm)となるようにした。
【0048】
以上の手順により試料を作製した。
【0049】
(比較例1)
基材をS45Cとし、φ33mmのSi基板上に基材を両面テープで貼り付けた状態で、Y+3%CeO用コート材を塗布した他は実施例1と同様の条件で試料を作製した。
【0050】
(比較例2)
試料として平面寸法が6mm×20mmの長方形で厚さが1mmの表面研磨したSUS316Lを用意した。即ち、実施例1において保護膜を形成しないものを用意した。
【0051】
(比較例3)
試料として平面寸法が6mm×20mmの長方形で厚さが1mmの表面研磨したS45Cを用意した。即ち、比較例1において保護膜を形成しないものを用意した。
【0052】
実施例1および比較例1〜3の試料においてAFM(原子間力顕微鏡;Atomic Force Microscope)により測定した1μm角領域の表面粗さを表1に、電子顕微鏡写真を図2に示す。また、参考までにS45CとSUS316Lの組成(wt%)を表2に示す。各組成の残部はFeである。なお、表1におけるRaは算術平均粗さ(nm)、PVは断面曲線の最大谷深さ(nm)を意味する。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
<組成分析>
次に、実施例1および比較例1〜3の試料の深さ方向の組成分析を行った。分析には日本電子株式会社(JEOL)製の光電子分光装置(XPS、X-ray Photoelectron Spectroscopy)であるJPS-9010-MXを用い、表面から深さ250nmまでの組成を分析した。具体的には直径1mm範囲について面内任意3ケ所の測定を行い平均値をとった。
【0056】
結果を図3〜図6に示す。
【0057】
ここで注目すべき点は、図4に示すように、比較例1(S45C+保護膜)では厚さ35nmでFeが検出されている点である。
【0058】
前述のように、保護膜の厚さは90nmであるため、これはFeが保護膜内に浸入していることを示している。
【0059】
一方、図3に示すように、実施例1(SUS316L+保護膜)では厚さ90nmまではFeは検出されず、Feが保護膜内に浸入していないことが分かった。
【0060】
さらに、図5に示すように、比較例2(SUS316L単体)では厚さ4nmまでの範囲でO(とCr)が検出されており、これはステンレスの表面にCrの不動態皮膜が形成されていることを示していると考えられる。
【0061】
即ち、実施例1ではCrの不動態皮膜の存在により、Feが保護膜内に浸入するのが阻止されていると考えられる。
【0062】
なお、図6に示すように、比較例3(S45C単体)では表面からOが検出され、深さ13nm付近でOとFeの比率が等しくなっているため、深さ13nm付近までFe酸化膜が形成されていると考えられる。
【0063】
<耐腐食性試験>
次に、実施例1および比較例1〜3の試料を腐食雰囲気下に置いて、耐腐食性を評価した。具体的な手順は以下の通りである。
【0064】
まず、試料を6mm角の正方形に切断し、図7に示すような直径1/2インチ、長さ30cmのAl−SUS製の反応管内部に配置した。
【0065】
次に、Nを1L/minで反応管内に流しながら昇温速度5℃/minで温度200度まで上昇させ、この状態で1時間保持した。
【0066】
次に、ガスをClに切り替え、圧力3kgf/cm(2.9×10Pa)となるようにして、この状態で24時間保持した。
【0067】
その後、試料を取り出して、試験前と同じ条件で表面粗さの測定、表面観察、組成分析を行った。
【0068】
表面観察結果を図8および図9に、試験後の組成分析結果を図10〜図13に、段差計により測定長5mmで測定した表面粗さを表3に示す。なお、図10〜図13にはClの浸入深さも示している(3回測定した平均値)。
【0069】
【表3】

【0070】
図8〜図10から明らかなように、実施例1(SUS316L+保護膜)では表面が部分腐食にとどまっており、Clの浸入量も16nmと、保護膜内部にとどまり、基材まで浸入していないことが分かった。
【0071】
一方、図8〜図9、および図11〜13に示すように、比較例1〜3では、いずれも全体腐食が認められ、Clの進入量が保護膜の膜厚(90nm)を超えていた。
【0072】
以上の結果より、基材にCrを含む鉄系材料を用い、基材表面にY+3%CeO保護膜を形成することにより、保護膜中のFeの保護膜への浸入を阻止でき、耐腐食性を改善できることが分かった。
【0073】
なお、SUS440C(Crを16.0〜18.0%含有し、Niは含有せず、他は微量、残部はFe)を用いて同様の実験を行ったところ、耐食膜への基材からのFeの侵入もなく、耐食膜へのClの侵入は約15nm程度と表面部にしか侵入せず、実施例1と同様の効果を有することが確認された。すなわち、Crを含有するFe基材を用いることによって、腐食性ガスの侵入を抑制することができ、かつ基材中のFe成分の表面保護膜への浸入を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
上記した実施形態では本発明をスクリューポンプに適用した場合について説明したが、本発明は特にこれに限定されることはなく、例えばル−ツポンプ等のメカニカルポンプにも適用することができるし、減圧中で有毒ガスまたは腐食性ガス等を使用する半導体製造装置、大型薄型ディスプレイ製造装置、太陽電池製造装置における処理工程(プラズマエッチング、減圧気相成長)の装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0075】
A スクリューポンプ本体
a1、a2 スクリューロータ
a3 ケーシング
a4 シャフト
a6 タイミングギア
a7 吸入ポート
a8 吐出ポート
a10 不活性ガス注入口
M モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部をガスが通過または滞留する処理装置において、
前記ガスと接する部分は、
鉄とクロム(Cr)を含有する基材と、
前記基材表面に設けられ、少なくともイットリア(Y)を主成分とする表面保護膜と、
を有することを特徴とする処理装置。
【請求項2】
前記基材のクロム(Cr)含有量が0.5原子%乃至25原子%であることを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記基材のクロム(Cr)含有量が10原子%乃至20原子%であることを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
【請求項4】
前記基材は、鉄を主成分とし、Si、C、Mnを2原子%乃至0.05原子%含有し、他の成分(Crを除く)の含有量は0.05原子%以下であることを特徴とする請求項2乃至3のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項5】
前記表面保護膜はセリウムを含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項6】
前記表面保護膜のセリウム含有量は、酸化物換算の原子比で1%〜10%であることを特徴とする請求項5に記載の処理装置。
【請求項7】
前記表面保護膜のセリウム含有量は、酸化物換算の原子比で1〜5%であることを特徴とする請求項5に記載の処理装置。
【請求項8】
前記表面保護膜のセリウム含有量は、酸化物換算の原子比で2〜4%であることを特徴とする請求項5に記載の処理装置。
【請求項9】
前記表面保護膜の厚さは0.06μm乃至10μmであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項10】
前記処理装置は、ロータを収納したケーシングに気体の吸入ポートと吐出ポートを形成したメカニカルポンプであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項11】
前記処理装置は、ロータを収納したケーシングに気体の吸入ポートと吐出ポートを形成したメカニカルポンプであって、メカニカルポンプ本体の温度を80℃乃至200℃の範囲内に維持する温度制御手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項12】
前記処理装置は、メカニカルポンプと、該メカニカルポンプによってガスが排出される処理室と、前記処理室とメカニカルポンプとの間に設けられた配管とを有し、前記処理室、前記メカニカルポンプ、および前記配管の接ガス部に、前記表面保護膜を有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項13】
前記処理装置は、半導体製造装置、薄型ディスプレイ製造装置、および太陽電池製造装置の少なくとも一部であることを特徴とする請求項12に記載の処理装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図2】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−21508(P2012−21508A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161929(P2010−161929)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【出願人】(391005824)株式会社日本セラテック (200)
【Fターム(参考)】