説明

分光モジュールの製造方法

【課題】 小型化を図り、ウェハプロセスによって容易に大量生産することのできる分光モジュールの製造方法を提供する。
【解決手段】 表面2aから入射した光を透過させる光透過部2,3と、光透過部2,3の凸曲面3a上に設けられ、光透過部2,3を透過した光を分光して表面2a側に反射する分光部と、表面2a側に設けられ、分光部によって分光されて反射された光を検出する光検出素子7と、を備える分光モジュール1の製造方法は、凸曲面3aに、回折層4を形成するための材料を配置し、材料にモールドを当接させ、材料を硬化させることにより、凸曲面3aに沿って回折層4を形成する工程と、回折層4の表面に反射層6を形成することにより、分光部を形成する工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を分光して検出する分光モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の分光モジュールとして、両凸レンズであるブロック状の支持体を備えており、支持体の一方の凸面に回折格子等の分光部が設けられ、支持体の他方の凸面側にフォトダイオード等の光検出素子が設けられたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような分光モジュールでは、他方の凸面側から入射した光が分光部で分光され、分光された光が光検出素子で検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−294223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、分光モジュールの小型化を図り、容易に大量生産することが要求されている。しかしながら、上述したような分光モジュールにおいては、両凸レンズであるブロック状の支持体を本体部として用いているため、小型化及び大量生産が困難である。
【0005】
そこで、本発明は、小型化を図ることができ、しかも容易に大量生産することのできる分光モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る分光モジュールの製造方法は、一方の面から入射した光を透過させる光透過部と、光透過部の他方の面上に設けられ、光透過部を透過した光を分光して一方の面側に反射する分光部と、一方の面側に設けられ、分光部によって分光されて反射された光を検出する光検出素子と、を備える分光モジュールの製造方法であって、他方の面に、回折層を形成するための材料を配置し、材料にモールドを当接させ、材料を硬化させることにより、他方の面に沿って回折層を形成する工程と、回折層の表面に反射層を形成することにより、分光部を形成する工程と、を備える。前述の材料は、光硬化性樹脂であってもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、分光モジュールの小型化を図ることができ、しかも、分光モジュールを容易に大量生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態に係る分光モジュールの平面図である。
【図2】図1に示す、II−II線に沿っての断面図である。
【図3】回折格子の形状を示す図であり、(a)にブレーズドグレーティング、(b)にバイナリグレーティング、(c)にホログラフィックグレーティングの形状を示す。
【図4】透光性板を製造する際に用いられるガラスウェハを示す図であり、(a)に平面図、(b)に側面図を示す。
【図5】透光性板に形成されるアライメントマークの位置を示す図であり、(a)に上側の透光性板のアライメントマーク、(b)に下側の透光性板のアライメントマークを示す。
【図6】透光性板にレンズ部と回折層と反射層を形成する製造プロセスを説明するための図である。
【図7】透光性板にレンズ部と回折層と反射層を形成する製造プロセスを説明するための図である。
【図8】透光性板にレンズ部と回折層と反射層を形成する製造プロセスを説明するための図である。
【図9】アライメントマークを基準として、上側の透光性板と下側の透光性板を貼り合わせるプロセスを示す図である。
【図10】第2の実施形態に係る分光モジュールを示す、図2に対応する断面図である。
【図11】透光性板にグレーティングレンズ部と反射層を形成する製造プロセスを説明するための図である。
【図12】透光性板にグレーティングレンズ部と反射層を形成する製造プロセスを説明するための図である。
【図13】第3の実施形態に係る分光モジュールを示す、図2に対応する断面図である。
【図14】第4の実施形態に係る分光モジュールを示す、図2に対応する断面図である。
【図15】第5の実施形態に係る分光モジュールを示す、図2に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る分光モジュールの好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[第1の実施形態]
【0010】
図1及び図2に示されるように、分光モジュール1は、長方形板状の本体部2と、本体部2の裏面2bに設けられたレンズ部(分光部)3と、レンズ部3の曲面に沿って形成された回折層(分光部)4と、回折層4の表面に形成された反射層(分光部)6と、本体部2の表面2a側の略中央部に設けられた光検出素子7と、表面2aの長手方向における端部に固定されたフレキシブル基板8とを備えている。この分光モジュール1は、表面2a側から入射した入射光L1を回折層4で回折して複数の回折光L2に分光し、反射層6で回折光L2を光検出素子7へ向けて反射し、光検出素子7で回折光L2を検出することによって、入射光L1の波長分布や特定波長成分の強度などを測定するものである。
【0011】
本体部2は、長方形薄板状の透光性板2c及び透光性板2dをそれぞれ貼りあわせることで形成されている。本体部2の表面2aには、吸光層11が形成されており、その吸光層11の表面には、配線12が形成されている。また、吸光層11の表面には、製造時の位置合わせのためのアライメントマーク13,14が形成され、裏面2bにはアライメントマーク13に対応する位置にアライメントマーク17(後述)が形成される。
【0012】
透光性板2c,2dは、BK7、パイレックス(登録商標)ガラスあるいは石英など光透過性材料からなり、入射光L1と回折光L2をその内部で進行させる性質を有する。なお、表面2a側の透光性板2cは、吸光層11及び配線12をウェハプロセスと同様の配線形成プロセスによって形成するために、その厚さを2mm以下とすることが好ましい。
【0013】
透光性板2cと透光性板2dとの間の所定の領域には、光を吸収する性質を有する吸光膜16が形成される。吸光膜16は、ブラックレジスト、CrO、CrOを含む積層膜からなり、入射光L1を通過させるためのスリット16aと、回折光L2を通過させるための開口部16bとを有している。
【0014】
吸光層11は、光を吸収する性質を有し、吸光膜16と同様の材質からなる。この吸光層11の表面(配線12側の面)は、粗面とされている。また、吸光層11は、外部からの入射光L1を通過させるためのスリット11aと、透光性板2c,2dから光検出素子7へ向かって進行する回折光L2を通過させるための開口部11bを有する。
【0015】
スリット11aは、本体部2の長手方向において光検出素子7と隣接する位置で、長手方向と略直交する方向に延在している。また、開口部11bは、本体部2の略中央部に光検出素子7の光検出面と対向するように形成されている。
【0016】
なお、吸光膜16のスリット16a及び開口部16bは、それぞれスリット11a及び開口部11bに対向するように形成されている。また、表面2a側から見て、スリット16aはスリット11aを取り囲む程度の大きさとされ、開口部16bは開口部11bを取り囲む程度の大きさとされている。スリット16aによれば、入射光L1を回折層4へ入射させる範囲に制限できる。また、仮に不要な箇所に入射光L1が進行して不要な箇所で反射光(迷光)が発生した場合であっても、開口部16bによって、光が通過する範囲が制限されているため、光検出素子7への迷光の入射を防止することができる。以上によって、分光モジュール1の精度を向上させることが可能となる。
【0017】
配線12は、光検出素子7と電気的に接続される複数の端子部12aと、フレキシブル基板8と電気的に接続される複数の端子部12bと、対応する端子部12aと端子部12bとを電気的に接続する配線部12cとから構成されている。また、端子部12a、端子部12b及び配線部12cは、アルミや金の単層膜、あるいは、Ti−Pt−Au、Ti−Ni−Au、Cr−Auなどの積層膜からなる。端子部12aは、開口部11bの縁部を取り囲んで配置されており、端子部12bは、表面2aの長手方向における端部に沿って配置されている。
【0018】
光検出素子7は、長方形薄板状に形成されており、本体部2の表面2aにおいて開口部11bと対向する位置に配置されている。光検出素子7は、本体部の表面2a側にフリップチップボンディングで実装され、光検出素子7の表面7aに形成された端子部(図示せず)と端子部12aとが電気的に接続される。表面7aの略中央部には開口部11bを通過した回折光L2を受光するための光検出面7bが形成されている。なお、光検出素子7としては、例えば、フォトダイオードアレイやC−MOSイメージセンサ、CCDイメージセンサが用いられる。そして、光検出素子7と本体部2の表面2aとの間にはアンダーフィル樹脂5が充填される。
【0019】
フレキシブル基板8は、柔軟性を有するプリント基板であり、端子部12bと、ワイヤボンディングによって接続されている。
【0020】
レンズ部3は、本体部2の裏面2bにおいて、スリット11aと対向する位置に設けられている。レンズ部3は、半球に近い形状のレンズであり、その表面は所定の曲率を有する凸曲面3aとされている。また、レンズ部3は、凸曲面3aの曲率中心とスリット11aの中央部が略重なるように配置されている。
【0021】
回折層4は、レンズ部3の凸曲面3aに沿って形成されている。この回折層4には、例えば、図3(a)に示すような断面が鋸歯状であるブレーズドグレーティング、(b)に示すような断面が矩形であるバイナリグレーティング、あるいは(c)に示すような断面が正弦波形状であるホログラフィックグレーティングなどのタイプのグレーティングが用いられる。この回折層4による回折光L2の分散方向に光検出素子7の光検出面が延在している。また、回折層4の表面には、アルミニウムや金などの蒸着により、反射層6が形成される。
【0022】
上述した分光モジュール1の製造方法について説明する。
【0023】
まず、透光性板2cの表面に、スリット11a及び開口部11bのパターンが形成されるように吸光層11をパターニングし、同時にその表面に配線12及びアライメントマーク13,14をパターニングする。これらのパターニングは、ウェハプロセスと同様の配線形成プロセスによって行う。
【0024】
透光性板2cの表面に、光検出素子7をフリップチップボンディングによって実装する。このとき、アライメントマーク14を基準として位置決めする。このように、スリット11aと同プロセスで形成されるアライメントマーク14を基準としているため、スリット11aと光検出素子7の光検出面7bを高精度に位置決めすることが可能となる。
【0025】
次に、透光性板2dの裏面にレンズ部3、回折層4及び反射層6を形成する。このプロセスは、大量生産を可能とするため、ウェハプロセスにより行われる。すなわち、図4(a)及び(b)に示すように、ガラスウェハに透光性板2dの大きさに区分けされたダイシングラインを設ける。そして、図5(b)に示すように、区画ごとにフォトエッチプロセスによってレンズ実装部15とアライメントマーク17を同時に形成する。
【0026】
レンズ実装部15は透光性板2dに円形の凹部を設けることにより形成される。また、アライメントマーク17は、透光性板2cと透光性板2dを貼りあわせた場合において、図5(a)に示す表面2a側のアライメントマーク13と厚さ方向に対向する位置に設けられる。
【0027】
そして、ガラスウェハの各レンズ実装部15に小型レンズを光学樹脂などで貼り付けることによって実装し、これによってレンズ部3を形成する。更に、レンズ部3に回折層4及び反射層6を形成した後、ダイシングラインに沿ってダイシングすることによってそれぞれの透光性板2dに分割する。
【0028】
ここで、図6から図8を参照して、ガラスウェハにレンズ部3等を実装するプロセスを説明する。
【0029】
図6(a)〜(c)に示すように、ガラスウェハ18の表面に感光性樹脂パターン19を形成することによって、レンズ実装部15及びアライメントマーク17を設ける。なお、このとき、レンズ実装部15は、ガラスウェハ18自身をエッチング加工することにより、あるいは金属膜をパターニングすることによって形成してもよい。このようにして形成したレンズ実装部15に、レンズを貼り付けるための光学樹脂21を塗布する。
【0030】
次に、図7(a)及び(b)に示すように、レンズ実装部15にレンズ22を実装することによってレンズ部3を形成する。実装したレンズ22の曲面に、回折層4を形成するための光硬化性樹脂25を塗布する。
【0031】
図8(a)及び(b)に示すように、塗布した光硬化性樹脂25に対し、石英などからなる光透過性モールド24を当接させる。その状態で光透過性モールド24の上方から光硬化性樹脂25に紫外線を照射することによってUV硬化処理を行い、レンズ22の曲面に回折層4を形成する。また、UV硬化処理の後に加熱キュアを行うことによって回折層4を安定化させることが好ましい。回折層4を形成した後、その外面にアルミや金を蒸着することによって反射層6を形成する。なお、回折層4は、感光性の樹脂やガラス、有機と無機のハイブリッド素材や、熱で変形するような樹脂やガラス、有機と無機のハイブリッド素材などで形成することができる。
【0032】
ここで、レンズ22の曲面の曲率半径は、回折層4の曲率半径より大きくされており、回折層4の曲率半径は、光透過性モールド24の曲率半径が反映されることとなる。又、回折層4の形成位置は光透過性モールド24を当接する位置が反映される。
【0033】
従って、レンズ22が曲率半径に公差を有している場合や、レンズ22のガラスウェハ18に対する実装位置に誤差を生じた場合にも、回折層4の形成位置(XYZ方向)を一定とすることができる。
【0034】
上述のようにして、それぞれの構成部品が設けられた透光性板2cと透光性板2dを貼り合わせる。貼り合わせは、透光性板2c,2dの間に吸光膜16を挟み込み、光学樹脂を塗布して硬化させることによって行う。また、貼り合わせる際は、図9に示すように、透光性板2cのアライメントマーク13と透光性板2dのアライメントマーク17を基準にして行う。これによって、スリット11aと回折層4と光検出素子7とを精度よく位置決めすることができる。
【0035】
上述した分光モジュール1の作用効果について説明する。
【0036】
この分光モジュール1では、本体部2が板状であるため、本体部2の薄型化により小型化を図ることができる。しかも、本体部2が板状であるため、例えば、ウェハプロセスを利用して分光モジュールを製造することができる。つまり、多数の本体部2となるガラスウェハに対し、マトリックス状にレンズ部3、回折層4、反射層6及び光検出素子7を設け、当該ガラスウェハをダイシングすることで、分光モジュール1を多数製造することができる。このようにして、分光モジュール1を容易に大量生産することが可能となる。
【0037】
また、本体部2の表面2aに配線12が形成されているため、外部の配線と光検出素子7とを直接接続せず、本体部2に設けられた配線12を介して、外部の配線と光検出素子7とを電気的に接続することができる。これによって、分光モジュール1を取り回す際や外部装置と接続する際、光検出素子7に局所的な応力がかかることが抑制されるため、分光モジュール1の小型化を図った場合であっても、光検出素子7の剥がれや分光モジュール1の破損を防止することができる。また、本体部2に設けられた配線12に光検出素子7を直接接続することによって、本体部2と光検出素子7の光検出面7bの距離を短くできるため、回折光L2の減衰や、迷光の入射を防止することができる。
【0038】
また、配線12と本体部2との間には、光を吸収する吸光層11が形成されているため、反射層6から反射した回折光L2が配線12と本体部2との間で乱反射するのを防止することができる。
【0039】
また、吸光層11の表面(配線12側の面)は粗面とされているため、本体部2側から吸光層11に入射した迷光が、仮に吸光層11を透過し、配線12により、本体部2側へ反射された場合にも、迷光を吸収し、配線12と本体部2との間の乱反射を一層防止することができる。
【0040】
更に、吸光層11の表面(配線12側の面)を粗面とすることで、吸光層11の表面上に形成される配線12の剥がれが防止される。
【0041】
また、フレキシブル基板8と光検出素子7とを直接接続せず、本体部2に設けられた配線12を介して電気的に接続することができるため、光検出素子7に応力がかかるのを抑制することができる。これによって、分光モジュール1の小型化を図った場合であっても、光検出素子7の剥がれや分光モジュール1の破損を防止することができる。
【0042】
また、本体部2は積層された透光性板2c及び2dを有しているため、光検出素子7を透光性板2cの表面に実装するプロセスと、レンズ部3、回折層4及び反射層6などの分光部を透光性板2dの裏面に実装させるプロセスと、これらの透光性板2c及び2dを貼り合わせるプロセスによって分光モジュール1を製造することができる。つまり、例えばガラスウェハに光検出素子7及び分光部を実装するプロセスを当該ガラスウェハの両面側から行うのではなく、各々片面側のみから行うプロセスに分けることができる。これによって、分光モジュール1の製造プロセスをウェハプロセスに最適なものとすることができ、一層容易に大量生産することができる。
【0043】
また、透光性板2c及び2dの間に設けられた、光を吸収する吸光膜16によって、本体部2内を進行する迷光を吸収することができるため、光検出素子7に入射する迷光を減少させ、ノイズを低減することが可能となる。
[第2の実施形態]
【0044】
第2の実施形態に係る分光モジュール31は、レンズ部3と回折層4が一体型で形成されている点で、第1の実施形態に係る分光モジュール1と主に相違している。
【0045】
すなわち、第2の実施形態に係る分光モジュール31においては、図10に示すように、本体部2の裏面2bにおける、スリット11aと対向する位置に、回折層部23aをレンズ部23bの凸曲面23c上に一体に有するグレーティングレンズ部23が設けられる。
【0046】
次に、グレーティングレンズ部23の製造方法について図11及び図12を参照して説明する。
【0047】
図11(a)〜(c)に示すように、ガラスウェハ18の表面に感光性樹脂パターン29を形成することによって、グレーティングレンズ実装部26及びアライメントマーク17を設ける。なお、このとき、グレーティングレンズ実装部26は、ガラスウェハ18自身をエッチング加工することにより、あるいは金属膜をパターニングすることによって形成してもよい。このグレーティングレンズ実装部26に、グレーティングレンズ部23を形成するための光硬化性樹脂33を塗布する。
【0048】
図12(a),(b)に示すように、塗布した光硬化性樹脂33に対し、石英などからなる光透過性モールド34を当接させる。その状態で光透過性モールド34の上方から光硬化性樹脂33に紫外線を照射することによってUV硬化処理を行い、グレーティングレンズ部23を形成する。また、UV硬化処理の後に加熱キュアを行うことによってグレーティングレンズ部23を安定化させることが好ましい。グレーティングレンズ部23を形成した後、その外面にアルミや金を蒸着することによって反射層6を形成する。なお、グレーティングレンズ部23は、感光性の樹脂やガラス、有機と無機のハイブリッド素材や、熱で変形するような樹脂やガラス、有機と無機のハイブリッド素材などで形成することができる。
【0049】
このような第2の実施形態に係る分光モジュール31は、レンズ部と回折層を一体型のモールドで形成することができるため、レンズ部と回折層を位置精度よく形成することができるとともに、製造工程を短くすることができる。
[第3の実施形態]
【0050】
第3の実施形態に係る分光モジュール41は、透光性板2cと透光性板2dとの間に吸光膜16が形成されていない点で、第1の実施形態に係る分光モジュール1と主に相違している。
【0051】
すなわち、第3の実施形態に係る分光モジュール41においては、図13に示すように、透光性板2cと透光性板2dを直接、光学樹脂やダイレクトボンディングにより接合させる。
[第4の実施形態]
【0052】
第4の実施形態に係る分光モジュール51は、本体部52が一枚の透光性板で形成されている点で、第1の実施形態に係る分光モジュール1と主に相違している。
【0053】
すなわち、第4の実施形態に係る分光モジュール51においては、図14に示すように、本体部52が、透光性板52aと、その表面52bに形成された吸光層11及び配線層12とから構成されている。
[第5の実施形態]
【0054】
第5の実施形態に係る分光モジュール61は、配線63の上に吸光層64が形成されている点で、第4の実施形態と主に相違している。
【0055】
すなわち、第5の実施形態に係る分光モジュール61においては、図15に示すように、透光性板65の表面65aに配線63を形成し、その上から吸光層64を形成する。なお、吸光層64にはスリット64aと開口部64bの他、配線層63における端子部63aと端子部63bを吸光層64から露出させるための開口部64cを形成する。
【0056】
このような第5の実施形態に係る分光モジュール61は、透光部材と密着性の高い配線63が透光性板65に直接形成されるため、配線63の強度を向上させることができる。
【0057】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態においては、スリットは吸光層に形成されているが、光検出素子にスリットを形成することによって設けてもよい。これによって、スリットと光検出素子が同一プロセスで作製されるため、スリットと光検出面の位置精度を向上させることができる。なお、光検出素子へのスリットは、アルカリを用いたウエットエッチングやシリコンディープドライエッチングあるいは、その複合技術により形成することができる。
【0058】
他の形態に係る分光モジュールは、一方の面から入射した光を透過させる板状の本体部と、本体部の他方の面側に設けられ、本体部を透過した光を分光して一方の面側に反射する分光部と、一方の面側に設けられ、分光部によって分光されて反射された光を検出する光検出素子と、を備えることを特徴とする。
【0059】
この分光モジュールでは、本体部が板状であるため、本体部の薄型化により小型化を図ることができる。しかも、本体部が板状であるため、例えば、ウェハプロセスを利用して分光モジュールを製造することができる。つまり、多数の本体部となるウェハに対し、マトリックス状に分光部及び光検出素子を設け、当該ウェハをダイシングすることで、分光モジュールを多数製造することができる。このようにして、分光モジュールを容易に大量生産することが可能となる。
【0060】
他の形態に係る分光モジュールにおいては、一方の面側には、光検出素子と電気的に接続された配線が設けられていることが好ましい。このような構成によれば、外部の配線と光検出素子とを直接接続せず、本体部に設けられた配線を介して、外部の配線と光検出素子とを電気的に接続することができる。これによって、分光モジュールを取り回す際や外部装置と接続する際、光検出素子に局所的な応力がかかることが抑制されるため、分光モジュールの小型化を図った場合であっても、光検出素子の剥がれや分光モジュールの破損を防止することができる。また、本体部に設けられた配線に光検出素子を直接接続することによって、本体部と光検出素子との距離が短くなるため、分光部によって分光されて反射された光の減衰や、迷光の入射を防止することができる。
【0061】
他の形態に係る分光モジュールにおいては、一方の面と配線との間には、光を吸収する吸光層が設けられていることが好ましい。このような構成によれば、分光部によって分光されて反射された光が配線と本体部との間で乱反射して光検出素子に入射するのを防止することができる。
【0062】
他の形態に係る分光モジュールにおいては、吸光層の表面(配線側の面)は粗面とされていることが好ましい。このような構成によれば、配線と本体部との間の乱反射光の光検出素子への入射を一層防止することができる。
【0063】
他の形態に係る分光モジュールにおいては、一方の面側には、配線と電気的に接続されたフレキシブル基板が設けられていることが好ましい。光検出素子にフレキシブル基板を直接接続すると、特に分光モジュールの小型化を図った場合には、光検出素子に局所的な応力がかかりやすくなる。しかし、このような構成によれば、本体部に設けられた配線を介して、フレキシブル基板と光検出素子とを電気的に接続することができるため、光検出素子に応力がかかるのを抑制することができる。これによって、分光モジュールの小型化を図った場合であっても、光検出素子の剥がれや分光モジュールの破損を防止することができる。
【0064】
他の形態に係る分光モジュールにおいては、本体部は、積層された少なくとも2枚の透光性板を有していることが好ましい。このような構成によれば、光検出素子を一方の透光性板に実装するプロセスと、分光部を他方の透光性板に実装するプロセスと、これらの透光性板を貼り合わせるプロセスとによって分光モジュールを製造することができる。つまり、例えばウェハに光検出素子及び分光部を実装するプロセスを当該ウェハの両面側から行うのではなく、各々片面側のみから行うプロセスに分けることができる。これによって、分光モジュールの製造プロセスをウェハプロセスに最適なものとすることができ、より一層容易に大量生産することができる。
【0065】
他の形態に係る分光モジュールにおいては、隣り合う透光性板同士(積層された透光性板同士)の間の所定の領域には、光を吸収する吸光膜が設けられていることが好ましい。このような構成によれば、本体部内を進行する迷光を吸光膜で吸収することができるため、光検出素子に入射する迷光を減少させ、ノイズを低減することが可能となる。
【符号の説明】
【0066】
1…分光モジュール、2…本体部、2c,2d…透光性板、3…レンズ部、4…回折層(分光部)、6…反射層(分光部)、7…光検出素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面から入射した光を透過させる光透過部と、
前記光透過部の他方の面上に設けられ、前記光透過部を透過した光を分光して前記一方の面側に反射する分光部と、
前記一方の面側に設けられ、前記分光部によって分光されて反射された光を検出する光検出素子と、を備える分光モジュールの製造方法であって、
前記他方の面に、回折層を形成するための材料を配置し、前記材料にモールドを当接させ、前記材料を硬化させることにより、前記他方の面に沿って前記回折層を形成する工程と、
前記回折層の表面に反射層を形成することにより、前記分光部を形成する工程と、を備えることを特徴とする分光モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記材料は、光硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1記載の分光モジュールの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2012−168184(P2012−168184A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−85071(P2012−85071)
【出願日】平成24年4月4日(2012.4.4)
【分割の表示】特願2011−252646(P2011−252646)の分割
【原出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【特許番号】特許第4990420号(P4990420)
【特許公報発行日】平成24年8月1日(2012.8.1)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】