説明

分光光度計

【課題】 操作が簡単で分析時間が短縮可能な分光光度計を提供する。
【解決手段】 試料20を回転試料台12に設置した後、試料室カバー17を閉じる。このとき試料室1内部は暗室となるので、照明4により回転試料台12に光を照射する。次に、分光器部7をパーソナルコンピュータ24にて光束波長を目視可能な波長に設定し、光を発生させる。分光器部7からの光束が通過している部分をCCDカメラ3で撮影し、CCDカメラ3からの映像を表示機25に表示することにより試料20と光束との位置関係を確認する。光束の位置を確認し、回転試料台12およびステージ13により試料20を光束に対して所定の位置に移動した後、測定を開始する。測定開始直前に照明4は消灯する。測定開始後は回転試料台12およびステージ13が動作シーケンスファイルにしたがって連続的に測定点を移動させ、連続的な測定をおこなう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば深紫外領域を測定可能とする大型試料室を有する分光光度計に関する。
【背景技術】
【0002】
分光光度計において、たとえば深紫外領域(190nm以下の領域)での測定を高感度・低迷光で行うには、空気による深紫外光の吸収をさける必要があり、試料室と分光部を窒素ガスによるパージがおこなわれる。この手法での測定の場合、試料を試料室に設置後試料室を密閉し窒素ガスの供給を行う。この場合、試料室の大きさ(容量)にもよるが、通常このパージ操作に1時間程度、測定終了後に試料を交換する際、安全のために空気を10分以上供給した後試料室の試料室カバーを開けている。
【0003】
また、大面積の板状試料等を測定できる分光光度計においては、通常この板状試料を水平に設置する支持手段と、これをX軸、Y軸の二次元移動あるいは1軸方向のみの移動さらには水平面での回転などで移動できる駆動手段を収容する比較的大型の試料室を備え、大面積の板状試料などの多点測定を可能にしている。この駆動部は動作シーケンスプログラムにしたがって測定点を移動させながら、連続的に測定を行うことが可能になっている。そして分光光度計、試料室内の駆動部の作動についての制御は、分光光度計の装置とは別に設置されたコンピュータおよびそのソフトウエアにてコントロールされるよう有機的に結合されている。また、駆動部は操作者の安全のため、試料室の試料室カバーがあいているときは動作しないよう安全装置を保持している。
分光光度計に関する先行技術文献を調査したが発見されなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
試料室の駆動部は動作シーケンスファイルにしたがって連続的に作動し、試料の測定点を移動させることが可能で、連続的な測定が可能である。また、コンピュータのモニタ画面上にて測定点に試料の位置を前記X軸、Y軸、あるいは水平回転軸の数値にて確認、設定することが可能である。しかしながら実際に試料のどの位置に光束が照射されているかを知るためには、操作者はコンピュータから離れ、試料室の試料室カバーを開けて目視にて確認しなければならない。
【0005】
さらに、試料室の試料室カバーが開いているときは駆動部にロックがかかるような安全装置を保持する場合には、容易に試料室の試料室カバーを開閉することはできない。同様に、前述した深紫外領域での測定を行う場合には試料室を窒素ガスでパージしなければならないため、容易に試料室の試料室カバーを開閉できない。したがって、光束が照射されている位置を確認するために長時間を必要とし、結果として分光光度測定全体の測定時間が長くなり、操作者の負担も大きい。
【0006】
本発明は、試料室の試料室カバーを開けることなく、実際の試料室内の試料や光束の状態を確認できるようにすることで、操作が簡単で分析時間が短縮可能な分光光度計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の分光光度計は上記問題を解決するため、分光された光の光路に対して試料を移動させて光を試料に照射し試料から出力される光の強度によって試料を測定する分光光度計において、分光光度計の内部における試料の被測定部を照射する照明手段と、試料の被測定部を撮影する撮影手段と、この撮影手段の撮影像を表示する表示手段とを設けたものである。
【0008】
さらに、撮像手段としてカメラを用いたものである。あるいは、撮像手段が被測定部を撮像する光学系と、この光学系の出力端に設置され光学系からの出力像を撮影する撮影機で構成したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、試料室内にカメラと照明を設置し、撮影手段による撮像をコンピュータに表示するようにしたので、試料室の試料室カバーを開閉することなく光束の位置を確認することが可能となる。分光光度計と駆動部の制御はコンピュータソフトウエアで行うため、操作者は通常コンピュータ画面を見ながら操作しているが、試料室カバーの開閉や移動処理を待つ必要がないため、測定時間を短縮でき操作自体も簡単になる。また、光束の位置確認作業は試料室内の窒素ガスパージ操作と同時に行うことも可能であり、深紫外領域での分光光度測定においては、分析時間を大幅に短縮することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は試料室内に撮影手段、たとえばCCDカメラ等のカメラと照明手段、たとえばライトを設置する。CCDカメラは試料の移動範囲内における試料の状況を撮像するように設置し、カメラにより撮影された映像はソフトウエアによってコンピュータのモニターに表示する。試料室は試料室カバーを閉めた状態では暗室となるので、低照度(光束確認のため)、低発熱(装置の精度保持および試料の劣化防止のため試料室内の温度上昇を避けるため)のライトをCCDカメラの目的地点すなわち光が試料を透過する測定点とその近傍を照射するように設置する。このとき、分光光度計制御ソフトウエアにて光束波長を目視可能な波長に設定し、光束が通過している部分をCCDカメラからの映像にて確認する。これにより、試料室の試料室カバーを開閉することなく光束の位置を確認することが可能となる。
【0011】
試料がガラスなどの透明なものの場合は、目視可能な波長の光を照射しても光束が通過している部分は見えにくい。CCDカメラ等の撮影手段を固定しコンピュータ側の映像上で測定点を明示することで光束の位置を確認することができる。
【実施例1】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の第1の実施例の分光光度計の試料室の概略構成斜視図である。本発明の試料室1はCCDカメラ3と、照明4と、取り付け用梁5と、紫外・可視光あるいは可視・近赤外光を分光する分光器部7と、ミラー8、9と、回転試料台12と、ステージ13と、積分球ユニット14と、試料室カバー17およびシール材18から構成されている。分光器部7は重水素ランプ、ハロゲンランプ等の光源、回折格子、スリット、ミラーから構成されている。
【0013】
図2に本発明の分光光度計の概略構成図を示す。試料室1の詳細は図1に示す通りである。試料室1内には試料20を保持する回転試料台12と分光器部7そして光学系としてのミラー8、9および積分球ユニット14が内設されている。試料室カバー17の試料室1との接合部にはシール材18が付設されている。分光光度計はこれらの試料室1側とPCインターフェース22と、パーソナルコンピュータ24と、表示機25と、操作機26とから構成されている。
【0014】
分光器部7において単色化された光はミラー8により反射され、回転試料台12上に設置された試料20の下部から上部方向へと透過する。試料20により吸収された光はミラー9により反射され、積分球ユニット14により受光される。回転試料台12および回転試料台12が設置されているステージ13はPCインターフェース22を介してRS−232Cケーブルによりパーソナルコンピュータ24に接続されている。操作機26を用いてこのパーソナルコンピュータ24の制御によりステージ13はX軸、Y軸方向に移動し、回転試料台12は回転駆動する。試料20の異なる部分の吸光度を測定する場合は、駆動部である回転試料台12およびステージ13がパーソナルコンピュータ24の動作シーケンスファイルにしたがってX軸方向、Y軸方向および水平回転軸方向に連続的に測定点を移動させることが可能である。
【0015】
試料室1内にはCCDカメラ3と照明4が、試料室1内に設置されている取り付け用梁5に取り付けられている。CCDカメラ3はPCインターフェース22を介してUSB接続によりパーソナルコンピュータ24と接続されており、直接パーソナルコンピュータ24により制御可能となっており、回転試料台12全体を撮影可能なように設定されている。CCDカメラ3により撮影された画像はパーソナルコンピュータ24の表示機25に表示することができる。照明4は回転試料台12全体を照射するように設定されており、またPCインターフェース22を介してRS−232Cケーブルによりパーソナルコンピュータ24と接続されており、点灯、消灯および照度の調整は操作機26を用いパーソナルコンピュータ24により制御される。
【0016】
CCDカメラ3はUSB接続によりパーソナルコンピュータ24に接続されているが、USBに限らず、他の通信方法を用いることができる。また、回転試料台12等の制御はRS−232Cケーブルによりパーソナルコンピュータ24と接続され制御されるが、接続方法として他の通信方法を用いることができる。表示機25としてはたとえば液晶表示機が適用される。
【0017】
吸光度の測定開始に当たっては、試料20を回転試料台12に設置した後、試料室カバー17を閉じる。このとき試料室1内部は暗室となるので、照明4により回転試料台12に光を照射する。次に、分光器部7をパーソナルコンピュータ24にて光束波長を目視可能な波長に設定して光を発生させる。分光器部7からの光束がミラー8により反射されて試料20を通過している部分をCCDカメラ3で撮影し、CCDカメラ3からの映像を表示機25に表示することにより試料20と光束との位置関係を確認する。照明4は試料20の光束の当たる部分以外の外観を確認できればよいので、低照度にコントロールしておく。また、装置全体の精度保持および試料20の劣化防止のため、低発熱のものを用いる。光束の位置を確認し、ステージ13により試料20を光束に対して所定の位置に移動した後、測定を開始する。測定開始直前に照明4は消灯する。測定開始後は回転試料台12およびステージ13が動作シーケンスファイルにしたがって連続的に測定点を移動させ、連続的な測定をおこなう。
【0018】
深紫外領域の測定を行う場合は、試料室カバー17を閉じた後、上記の動作と並行して試料室1内部を窒素ガスにてパージする。試料室カバー17には前述したとおりシール材18が取り付けられており、試料室1内部を密閉構造に保てるようになっている。また、試料室カバー17が開いているときにはステージ13等の駆動部にロックがかかる安全装置を有している装置の場合にも同様に、試料室カバー17を閉じた後、試料室1内の試料20の位置や測定状況を確認する。
【0019】
光を透過しない試料を測定する場合は、分光器部7から出た光をミラー8で反射させることによりいったん試料20の上部に導いた後、試料20の上部から光を照射する。試料20に照射、反射された光をミラー9により積分球ユニット14に導入し光強度を測定することにより反射法で測定することができる。
【実施例2】
【0020】
本発明が提供する第2の実施例は図3、4に示すとおりである。この第2の実施例が前述の第1の実施例と異なる点は、測定点を撮影する手段を分割形にした点にある。図3に示すように測定点に対応して撮影用レンズ21が配設され、この撮影用レンズ21には撮影像を送信する光ファイバ23が接続されている。光ファイバ23は試料室1内から外部へ導出されて図4に示すように撮像機27に接続されている。撮像機27の出力はリード線28を介してパーソナルコンピュータ24に入力され、最終的には測定部位の画像が表示機25に表示される。なお、図1、図2と同一の符号で示される部品については図1、図2と同様であり、詳細な説明は省略する。本発明は以上実施例1、実施例2を示したが、これら実施例に限定されず、たとえばCCDカメラについてはデジタルカメラを代用できるなど種々の変形例を挙げることができ、これらを包含する。また、実施例1、実施例2においては回転試料台12、ステージ13が決まったシーケンスで動作するのを目視で確認するようにしているが、CCDカメラ3の撮像を見ながら、マニュアルで回転試料台12、ステージ13を移動することにより測定したい点を選んで測定するという使用方法も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0021】
大型試料を多点で測定する分析装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施例の分光光度計の試料室の概略構成斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施例の分光光度計の概略構成図である。
【図3】本発明の第2の実施例の分光光度計の試料室の概略構成斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施例の分光光度計の概略構成図である。
【符号の説明】
【0023】
1 試料室
3 CCDカメラ
4 照明
5 取り付け用梁
7 分光器部
8、9 ミラー
12 回転試料台
13 ステージ
14 積分球ユニット
17 試料室カバー
18 シール材
20 試料
22 PCインターフェース
24 パーソナルコンピュータ
25 表示機
26 操作機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分光された光の光路に対して試料を移動させて測定する分光光度計において、分光光度計の内部における試料の被測定部を照射する照明手段と、試料の被測定部を撮影する撮像手段と、前記撮像手段の撮影像を表示する表示手段とを有することを特徴とする分光光度計。
【請求項2】
撮像手段がカメラであることを特徴とする請求項1記載の分光光度計。
【請求項3】
撮像手段が被測定部を撮像する光学系と、この光学系の出力端に設置され光学系からの出力像を撮影する撮影機で構成したことを特徴とする請求項1記載の分光光度計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−250836(P2006−250836A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−70233(P2005−70233)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】