説明

分光分析装置および光源電源

【課題】
重水素放電管に関して、最小の放電開始電圧,最短のフィラメントの予熱時間で点灯性を向上させた光源電源を提供する。
【解決手段】
図1に示す重水素放電管19の初期値の放電開始電圧で重水素放電管19が点灯しない場合、放電開始電圧を検出回路、及び放電電流を検知する回路から得た検出結果を光源電源制御部のCPU5へ取り込み、演算処理を実行し、再度、最適な重水素放電間の放電開始電圧を算出する。分析装置制御部上位マイコン22より光量の測定データと放電電圧を検出回路,放電電流検知回路,点灯電流検出回路、及び点灯電圧検出回路から得た検出結果を光源電源制御部のCPU5へ取り込み、演算処理を実行し、最適な重水素放電管19の放電電流値,タングステンランプの点灯電圧値を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分光分析装置およびそれに用いる光源電源に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分光分析装置において、紫外波長域分析の光源として重水素放電管、可視域から赤外域分析の光源としてタングステンランプ等が使用される。そして、分光光度計の測定中に光源の光量を安定化させるために電流値をフィードバック制御する技術がある(例えば、特許文献1参照。)。また、例えば、特許文献2に示される重水素放電管装置においては、重水素放電管の放電電流を検出して安定化する制御技術を有していない。また、例えば、特許文献3に示される重水素放電管電源においては、放電電流を検出して安定化する制御機能を有する。
【0003】
【特許文献1】特開平10−185686号公報
【特許文献2】特開平5−93752号公報
【特許文献3】特開2001−85186号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の1つの目的は、分光分析装置の光源用放電管に関して、点灯性を向上させた光源電源を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの特徴は、光源用放電管へ電力を供給する光源電源において、光源用放電管の放電開始電圧を制御する手段と、光源用放電管の放電電流を制御する手段とを有していることにある。
【0006】
また、本発明の他の1つの特徴は、光源電源が、直流電源から光源用放電管の放電開始電圧を生成する回路と、光源用放電管の放電維持電圧を生成する回路と、光源用放電管のフィラメントを予熱する回路と、光源用放電管の放電開始電圧を検出する第1の手段と、放電維持電圧を検出する第2の手段と、光源用放電管の放電電流を検出する第3の手段とを有し、前記第1の手段と、第2の手段と、第3の手段との検出結果に基づいて、光源用放電管の放電開始電圧を制御する手段と光源用放電管の放電電流を制御する手段とが制御されることにある。
【発明の効果】
【0007】
本発明の1つの実施形態によれば、分光分析装置の光源用放電管に関して、放電開始電圧、予熱時間に着目した点灯性を向上させた光源電源を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明を実施するための最良の形態としては、放電管のフィラメントを予熱し、放電管の放電開始電圧の初期値を設定し、放電開始電圧を生成する回路で放電開始電圧を充電し、放電開始電圧を印加する。放電管が点灯し、規定値の放電電流を検出することが出来れば、放電管を安定化する制御を実施する。未点灯の場合は、放電開始電圧検出の結果と放電電流の検出結果から再度放電開始電圧を設定し、放電開始電圧を生成する形態がある。
【0009】
また、分光分析装置の光量のデータと光源電源制御部で制御している重水素放電管の放電電流,タングステンランプの点灯電圧から、測定条件に合致した光量になる条件値を演算処理して、重水素放電管の放電電流とタングステンランプの点灯電圧を制御する形態がある。以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0010】
図1に本発明の実施例の説明図を示す。図1に示すように、重水素放電管/タングステンランプ光源電源1は、制御部のマイコン2,重水素放電管放電制御回路3,タングステンランプ制御回路4,重水素放電管19,タングステンランプ20,直流電源25で構成する。
【0011】
重水素放電管/タングステンランプ光源電源1の制御部のマイコン2は、CPU5とROM8とRAM9,I/O10,タイマ6,A/D変換器7、などを1つのチップに詰め込まれたシングルチップマイコンで構成する。
【0012】
重水素放電管放電制御回路3は、重水素放電管19の放電開始電圧を生成する放電開始電圧スイッチング電源12,放電維持電圧を生成する放電維持電圧スイッチング電源13,重水素放電管19の放電開始電圧と放電維持電圧を検出する重水素放電管電圧検出回路15,重水素放電管19の放電電流を検出する重水素放電管電流検出回路14、及び重水素放電管19のフィラメントを予熱する直流電源を生成するヒータ電圧スイッチング電源11で構成する。
【0013】
タングステンランプ制御回路4は、タングステンランプ20の直流電源を生成するタングステンランプ点灯電圧スイッチング電源16,タングステンランプ20の点灯電流を検出するタングステンランプ電流検出回路17,タングステンランプ20の点灯電圧を検出するタングステンランプ電圧検出回路18で構成する。
【0014】
重水素放電管19を点灯させるには重水素放電管19フィラメントを予熱し、アノード(陽極)とカソード(陰極)間に放電開始電圧を印加させアーク放電へ導き点灯させる。重水素放電管19は、種類,時間の経過により放電開始電圧のバラツキが発生する。また、重水素放電管19のフィラメントの予熱状態によっては同じ放電開始電圧を印加しても、点灯しない場合が発生する。
【0015】
これらの課題を改善するため、重水素放電管/タングステンランプ光源電源1の制御部のマイコン2はROM8に予め格納されているプログラムに従い、図2の重水素放電管点灯フローチャートを実行する。
【0016】
分析装置制御部上位マイコン22の上位マイコンCPU23が、上位マイコンI/O24を経由して重水素放電管/タングステンランプ光源電源1のマイコン2と通信可能であるか通信路21を介し通信する。
【0017】
通信可能のフラグを確認したら、分析装置制御部上位マイコン22の上位マイコンI/O24から重水素放電管ON信号が通信路21を介して送信され、そして、重水素放電管/タングステンランプ光源電源1のマイコン2のI/O10を介して、重水素放電管ON信号の受信(ステップ101)を行う。
【0018】
重水素放電管/タングステンランプ光源電源1のマイコン2のタイマ6を介し、ヒータ電圧スイッチング電源11を駆動させ、重水素放電管19のフィラメントの予熱(ステップ102)を実行する。重水素放電管19の放電開始電圧の設定(ステップ103)を実行する。この放電開始電圧は初期値である。
【0019】
重水素放電管/タングステンランプ光源電源1のマイコン2のタイマ6を介し放電開始電圧スイッチング電源12を駆動し、重水素放電管19の放電開始電圧の充電(ステップ104)を実行する。
【0020】
重水素放電管19の放電開始電圧を検出する手段は、重水素放電管電圧検出回路15で放電開始電圧値を検出し、マイコン2のA/D変換器7でその電圧値を取り込み、設定した放電開始電圧の到達を検出したら、放電開始電圧の印加(ステップ105)を実行する。
【0021】
プログラムの初期値の放電開始電圧で、重水素放電管電流検出回路14から出力される値を検出し、重水素放電管/タングステンランプ光源電源制御部2のA/D変換器7を介し、CPU5で規定の電流値(ステップ106)を判定すれば、分析装置制御部上位マイコン22に重水素放電管19のONステータス信号(ステップ107)を送信する。
【0022】
重水素放電管の点灯(ステップ107)した時点で、マイコン2のタイマ6のパルス幅変調機能(ステップパルスのONとOFF間隔を制御すること)を使用し、重水素放電管19の放電電流値(実施例では約300mA)に安定するように放電維持電圧スイッチング電源13を制御する。
【0023】
重水素放電管19は、分析装置制御部上位マイコン22から光量可変信号の受信(ステップ108)しない限り(ステップ108のNO)、ステップ108→ステップ106→ステップ107→ステップ108→ステップ106・・・の制御を実行し続けることにより定電流制御を実行する。光量可変信号の受信した場合(ステップ108のYES)、光量可変シーケンスを実行(ステップ109)する。光量可変シーケンスの内容については、図5のフローチャートを用いて、後述する。
【0024】
重水素放電管19が点灯中に、立ち消えした場合は、重水素放電管19の放電電流が、CPU5で規定の電流値(106)でないと判断し(ステップ106がNO)、更にONステータス信号送信済み(ステップ110)の判定を実行し、ステップ110がYESの場合、分析装置制御部上位マイコン22に重水素放電管の「立ち消え」のエラーを送信(ステップ111)し、制御は終了する。
【0025】
初期値の放電電圧にて、放電電流が規定の電流値(ステップ106)を検知できない場合(ステップ106がNO)、ONステータス信号送信済み(ステップ110)の判定を実行しステップ110がNOの場合、放電開始電圧上限値(ステップ112)であるか判断しステップ112がNOの場合、再度、重水素放電管19の放電開始電圧の設定(ステップ103)をする。
【0026】
この放電開始電圧を設定する手段は、予め、放電電流と放電開始電圧の関係のテーブルを設けておき、瞬間的に検知した重水素放電管19の放電電流の結果と、放電開始電圧の検出結果より、最適な重水素放電開始電圧値を算出するか、または放電開始電圧を段階的に上げていく。
【0027】
この制御は放電開始電圧の上限値を決定しておき、放電開始電圧の上限値(ステップ112)までに重水素放電管19の放電電流を検知できない場合(ステップ112がYESの場合)は、重水素放電管点灯エラー送信(ステップ113)をして、制御は終了する。
【0028】
上記の制御の実施により、重水素放電管/タングステンランプ光源電源1自体で適正な放電開始電圧するリトライ機能を持たすことが出来る為、重水素放電管19を点灯させることが可能になり、重水素放電管19のフィラメント予熱時間の制御に依存しなくなる。
【0029】
タングステンランプ20の点灯制御においては、重水素放電管/タングステンランプ光源電源1の制御部のマイコン2はROM8に予め格納されているプログラムに従い、図3のタングステンランプ点灯フローチャートを実行する。
【0030】
分析装置制御部上位マイコン22の上位マイコンI/O24からタングステンランプON信号が通信路21を介して送信され、重水素放電管/タングステンランプ光源電源1のマイコン2のI/O10を介して、タングステンランプON信号の受信(ステップ201)をする。
【0031】
ステップ201がONの場合、重水素放電管/タングステンランプ光源電源1のマイコン2のタイマ6を介し、タングステンランプ点灯電圧スイッチング電源16を駆動させる。
【0032】
タングステンランプ電流検出回路17から出力される値を検出し、重水素放電管/タングステンランプ光源電源制御部2のA/D変換器7を介し、CPU5で規定の電流値(ステップ202)を判定し、ステップ202がYESの場合、分析装置制御部上位マイコン22にタングステンランプ20のONステータス信号(ステップ203)を送信する。
【0033】
タングステンランプ20は分析装置制御部上位マイコン22から光量可変信号の受信(ステップ204)しない限り(ステップ204がNOの場合)、ステップ204→ステップ202→ステップ203→ステップ204→ステップ202・・・の制御を実行し続けることにより定電圧制御を実行する。
【0034】
タングステンランプ20が点灯中に、立ち消えした場合は、タングステンランプ20の点灯電流が、CPU5で規定の電流値(ステップ202)でないと判断し(ステップ202がNOの場合)、更にONステータス信号送信済み(ステップ206)の判断を実行し、ステップ206がYESの場合、分析装置制御部上位マイコン22にタングステンランプの「立ち消え」のエラーを送信(ステップ207)し、制御は終了する。
【0035】
初期値の点灯電圧にて、点灯電流が規定の電流値(ステップ202)を検知できない場合(ステップ202がNOの場合)は、ONステータス信号送信済み(ステップ206)の判定を実行し、ステップ206がNOの場合、タングステンランプ点灯のエラーを送信(ステップ208)し、制御は終了する。
【実施例2】
【0036】
図4を用いて、本発明の実施例2を説明する。図4は、本発明の実施例2を説明するための、重水素放電管/タングステンランプ光源電源1を分光光度計に組み込んだ構成例の説明図である。
【0037】
分光光度計用検出器における紫外波長域分析の光源として重水素放電管19が使用され、可視域から赤外域分析の光源としてタングステンランプ20が使用され、光源は分析条件に応じ、光源切替ミラー26で切り替える。
【0038】
分光分析装置本体制御部40は、通信路21を介し、重水素放電管19,タングステンランプ20を点灯させる為の制御信号,光量を可変する為の制御信号等を重水素放電管/タングステンランプ光源電源1に送信する。
【0039】
重水素放電管/タングステンランプ光源電源1は、重水素放電管19,タングステンランプ20のON/OFFステータス信号等を、通信路21を介し、分光分析装置本体制御部40に送信する。
【0040】
重水素放電管19,タングステンランプ20からの放射光は光源切替ミラー26を照射し、分光器27内の回折格子28で分光され、オペレータ指定波長光がスリット29,フィルター30を介してハーフミラー31に照射され、参照となるリファレンス光33と測定試料の存在するセル32への照射光となる。
【0041】
リファレンス光33はリファレンス光側検知器36とリファレンス光側増幅器38を介し、アナログ電気信号へ変換され、AD変換器39によりデジタルデータが生成され、分光分析装置本体制御部40へ入力される。
【0042】
セル32の試料に吸収されず透過されたサンプル光34はサンプル光側検知器35とサンプル光側増幅器37を介し、アナログ電気信号へ変換され、AD変換器39によりデジタルデータが生成され、分光分析装置本体制御部40へ入力される。分光分析装置本体制御部40では、リファレンス光33,サンプル光34のデジタルデータを基に吸光度演算処理を実行し、装置測定データとして出力する。
【0043】
分光光度計において、光源からの光量の調整する為、分光器27内のスリット29を可変する機構がある。この可変する機構は、主に、測定モードにより、ある波長域の測定データが飽和するのを回避することに使用する。分光分析装置本体制御部40内のマイコンからの指令に基づき、モータドライブ回路41を介し、スリット29の間隔を調整する。
【0044】
しかし、重水素放電管19,タングステンランプ20の使用条件により、測定データに再現性が得られないことが発生する。
【0045】
また、分光光度計/液体クロマトグラフ本体の波長校正をする際、重水素放電管19から照射される波長(486nm付近)の輝線を使用する(この輝線のスペクトルはピークが小さい)が、可視域から赤外域分析の光源としてタングステンランプ20を重水素放電管19と同時に使用している場合は、波長486nmの輝線を検出し難く、タングステンランプを消灯する必要が生じてくる。上記の課題を改善するため、重水素放電管/タングステンランプ光源電源1の制御部マイコン2で図5の制御を実行する。すなわち、図5は、図1で例示した重水素放電管側またはタングステンランプ側の光量を可変する為のフローチャートの一例である。
【0046】
図1の分析装置制御部上位マイコン22は、上位マイコンI/O24から、重水素放電管側光量可変信号またはタングステンランプ側光量可変信号が、通信路21を介して送信される。
【0047】
重水素放電管19側の光量を可変する場合、重水素放電管/タングステンランプ光源電源1制御部のマイコン2は、図2に例示するフローチャート中の光量可変信号の受信(ステップ108)の処理を実行し、ステップ108がYESの場合、図5に例示する光量可変フローチャートを実行(ステップ109)する。
【0048】
図5において、光量可変シーケンス開始となると、重水素放電管/タングステンランプ光源電源1の制御部マイコン2が重水素放電管19の光量を可変する信号を受信した場合(ステップ301から下方へ向かう重水素放電管と記されたルート)は、目標放電電流の設定(ステップ302)する。
【0049】
目標とする光量の放電電流を設定する手段は、分析装置制御部上位マイコン22にて吸光度演算処理しているデータから目標とする放電電流を設定する。具体的には、マイコン2を用いて設定処理を行う。
【0050】
マイコン2のCPU5は、重水素放電管19の目標の放電電流値になるようにタイマ6のパルス幅変調機能を使用し、重水素放電管19の放電維持電圧スイッチング電源13を制御する。
【0051】
目標の放電電流値(ステップ303)に到達したら(図中“=”の場合)、分析装置制御部上位マイコン22へ光量可変終了の送信(ステップ304)をする。
【0052】
目標の放電電流値(ステップ303)に到達しない場合(図中“≠”の場合)は、分析装置制御部上位マイコン22へ重水素放電管光量可変不能のエラーを送信(ステップ305)し、光量可変を実行せず(ステップ306)に、重水素放電管19が光量可変以前の状態に戻る(ステップ307)ように放電維持電圧スイッチング電源13の制御を実行する。
【0053】
同様に、タングステンランプ20側の光量を可変する場合、マイコン2は図3の光量可変信号の受信(ステップ204)の処理を実行し、図5の光量可変シーケンス(ステップ205)を実行する。
【0054】
重水素放電管/タングステンランプ光源電源1の制御部マイコン2がタングステンランプ20の光量を可変する信号を受信した場合(ステップ301から右方向へ向かうタングステンランプと記されたルート)は、目標点灯電圧の設定(ステップ308)する。
【0055】
目標とする光量の点灯電圧を設定する手段は、分析装置制御部上位マイコン22にて吸光度演算処理演算処理しているデータから目標とする点灯電圧を設定する。具体的には、マイコン2を用いて設定処理を行う。
【0056】
マイコン2のCPU5はタングステンランプ20が目標の点灯電圧値になるように、タングステンランプ点灯電圧スイッチング電源16を制御する。
【0057】
タングステンランプ20の点灯電圧を制御する手段、タングステンランプ点灯電圧スイッチング電源16において、点灯電圧を決定するフィードバック抵抗の値を可変させ、タングステンランプ電圧検出回路から出力される値を検出し、重水素放電管/タングステンランプ光源電源制御部2のA/D変換器7を介し、CPU5へ取り込み、制御する。
【0058】
目標の点灯電圧値(ステップ309)に到達したら(図中“=”の場合)、分析装置制御部上位マイコン22へ光量可変終了の送信(ステップ310)をする。
【0059】
目標の点灯電圧値(ステップ309)に到達しない場合(図中“≠”の場合)は、分析装置制御部上位マイコン22へタングステンランプ「光量可変不能」のエラーを送信(ステップ311)し、光量可変を実行せず(ステップ306)に、タングステンランプ20が光量可変以前の状態に戻る(ステップ307)ように、タングステンランプ点灯電圧スイッチング電源16の点灯電圧を決定するフィードバック抵抗の値を可変させる制御を実行する。
【0060】
目標とする放電電流値,点灯電圧値を検出された場合(ステップ304,ステップ310)は光源から最適な光量を照射していることになる。
【0061】
上記の制御を実行すれば、分光器27内のスリット29を可変せずに、光源の光量調整ができ、分光光度計本体のS/N比が向上する。また、タングステンランプを消灯せずに分光光度計の波長校正時が実行でき、短時間にて元の測定モードへ移行できる為、ドリフトが低減される。
【0062】
また、点灯開始時に重水素放電管のフィラメントの予熱時間、放電開始電圧値の依存せず、また、重水素放電管の劣化に影響なく点灯性を向上させることが可能になる。また、分光分析装置において、測定手段により光量を調整する機能を減らすことが可能になる。
【0063】
例えば、図1に示す重水素放電管19の初期値の放電開始電圧で重水素放電管19が点灯しない場合、放電開始電圧を検出回路、及び放電電流を検知する回路から得た検出結果を光源電源制御部のCPU5へ取り込み、演算処理を実行し、再度、最適な重水素放電間の放電開始電圧を算出する。分析装置制御部上位マイコン22より光量の測定データと放電電圧を検出回路,放電電流検知回路,点灯電流検出回路、及び点灯電圧検出回路から得た検出結果を光源電源制御部のCPU5へ取り込み、演算処理を実行し、最適な重水素放電管19の放電電流値,タングステンランプの点灯電圧値を算出する。これにより、重水素放電管に関して、最小の放電開始電圧,最短のフィラメントの予熱時間で点灯性を向上させた光源電源を提供することができる。
【0064】
以上述べたように、本発明の実施例として、例えば、重水素放電管に関しては、直流電源から重水素放電管の放電開始電圧を生成する回路と、重水素放電管の放電維持電圧を生成する回路と、重水素放電管のフィラメントを予熱する回路と、重水素放電管の放電開始電圧を検出する手段と放電維持電圧を検出する手段と、重水素放電管の放電電流を検出する手段を有し、その検出結果から重水素放電管の放電開始電圧と放電電流を制御する手段と、タングステンランプに関しては、直流電源からタングステンランプの点灯電圧を生成する回路と、タングステンランプの点灯電圧を検出する手段と、タングステンランプの点灯電流を検出する手段を有し、その検出結果から電球の点灯電圧を制御する手段を有していることを特徴とする光源電源が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施例1を説明する説明図。
【図2】図1の重水素放電管を点灯させるためのフローチャートの一例を説明する説明図。
【図3】図1のタングステンランプを点灯させるためのフローチャートの一例を説明する説明図。
【図4】本発明の実施例2を説明する説明図。
【図5】図1の重水素放電管側またはタングステンランプ側の光量を可変する為のフローチャートの一例を説明する説明図。
【符号の説明】
【0066】
1 重水素放電管/タングステンランプ光源電源
2 マイコン
3 重水素放電管放電制御回路
4 タングステンランプ制御回路
5 CPU
6 タイマ
7 A/D変換器
8 ROM
9 RAM
10 I/O
11 ヒータ電圧スイッチング電源
12 放電開始電圧スイッチング電源
13 放電維持電圧スイッチング電源
14 重水素放電管電流検出回路
15 重水素放電管電圧検出回路
16 タングステンランプ点灯電圧スイッチング電源
17 タングステンランプ電流検出回路
18 タングステンランプ電圧検出回路
19 重水素放電管
20 タングステンランプ
21 通信路
22 分析装置制御部上位マイコン
23 上位マイコンCPU
24 上位マイコンI/O
25 直流電源
26 光源切替ミラー
27 分光器
28 回折格子
29 スリット
30 フィルター
31 ハーフミラー
32 セル(試料)
33 リファレンス光
34 サンプル光
35 サンプル光側検知器
36 リファレンス光側検知器
37 サンプル光側増幅器
38 リファレンス光側増幅器
39 AD変換器
40 分光分析装置本体制御部
41 モータドライブ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源用放電管へ電力を供給する光源電源において、
光源用放電管の放電開始電圧を制御する手段と、
光源用放電管の放電電流を制御する手段とを有していることを特徴とする光源電源。
【請求項2】
請求項1において、
光源電源は、
直流電源から光源用放電管の放電開始電圧を生成する回路と、
光源用放電管の放電維持電圧を生成する回路と、
光源用放電管のフィラメントを予熱する回路と、
光源用放電管の放電開始電圧を検出する第1の手段と、
放電維持電圧を検出する第2の手段と、
光源用放電管の放電電流を検出する第3の手段とを有し、
前記第1の手段と、第2の手段と、第3の手段との検出結果に基づいて、光源用放電管の放電開始電圧を制御する手段と光源用放電管の放電電流を制御する手段とが制御されることを特徴とする光源電源。
【請求項3】
請求項1において、
光源用ランプの点灯電圧を制御する手段を有していることを特徴とする光源電源。
【請求項4】
請求項3において、
光源電源は、光源用ランプへ電力を供給するものであり、
直流電源から光源用ランプの点灯電圧を生成する回路と、光源用ランプの点灯電圧を検出する第4の手段と、光源用ランプの点灯電流を検出する第5の手段とを有し、
前記第4の手段と、第5の手段との検出結果に基づいて、光源用ランプの点灯電圧を制御する手段が制御されることを特徴とする光源電源。
【請求項5】
請求項3又は請求項4において、
光源用放電管は重水素放電管であり、
光源用ランプは、タングステンランプであることを特徴とする光源電源。
【請求項6】
請求項1において、
前記光源用放電管の放電開始電圧を制御する手段は、放電管の放電電流値を検出する手段の検出結果から、放電開始電圧を設定する手段であることを有している光源電源。
【請求項7】
請求項1において、
前記光源用放電管の放電開始電圧を制御する手段は、前記光源用放電管の放電開始電圧を検出する手段の検出結果から、放電開始電圧を設定する手段であることを特徴とする光源電源。
【請求項8】
請求項1において、
前記光源用放電管の放電電流を制御する手段は、前記光源用放電管の放電維持電圧を生成する回路を制御する手段であることを特徴とする光源電源。
【請求項9】
請求項3において、
前記光源用放電管の放電電圧と放電電流を制御する手段は、前記光源用放電管と前記光源用ランプの光源の光量を測定する手段と通信手段とを有していることを特徴とする光源電源。
【請求項10】
請求項3において、
前記光源用放電管の放電電流を制御する手段と前記光源用ランプの点灯電圧を制御する手段で放電管と電球の光量を調整することを可能とする制御手段を有していることを特徴とする光源電源。
【請求項11】
請求項3において、
前記光源用放電管と前記光源用ランプの光量を調整することを可能とする制御は、光源用放電管と前記光源用ランプの光源の光量を測定する手段によって得た測定値を基に、通信手段を使用し、前記光源用放電管の放電電流と前記光源用ランプの放電電圧の適正値を算出し、前記光源用放電管の放電電流と前記光源用ランプの放電電圧の値を制御する手段であることを特徴とする光源電源。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の光源電源と、
前記光源電源からの電力を供給され、試料に対して測定光を照射する発光手段と、
測定光を任意の波長に分光する分光手段と、
当該分光手段により分光された波長について光度検出を行う検出手段と、
前記検出手段において得られたデータを処理するデータ処理手段とを有する分光分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−14561(P2010−14561A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175173(P2008−175173)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】