説明

分布型光ファイバセンサ

【課題】本発明は、歪みおよび/または温度を高空間分解能で測定可能としつつ、計測可能距離を伸ばしてより遠くまで測定することができる分布型光ファイバセンサを提供する。
【解決手段】本発明にかかる、ブリルアン散乱現象を利用して歪みおよび/または温度を測定する分布型光ファイバセンサSでは、スペクトル拡散方式を用いたメイン光パルスと無変調のサブ光パルスとが検出用光ファイバ15に入射され、そして、検出用光ファイバ15から射出されるこれら光の相互作用によって生じるブリルアン散乱現象にかかる光に基づいて検出用光ファイバ15に生じた歪みおよび/または温度が測定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバをセンサとして用い、その長尺方向について歪みおよび/または温度を高精度で測定し得る分布型光ファイバセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歪みや温度を測定する技術として、光ファイバ中で起こるブリルアン散乱現象に基づく方法がある。この方法において光ファイバは、当該光ファイバの置かれる環境における歪みおよび/または温度を検出する媒体として利用される。
【0003】
ブリルアン散乱現象とは、光が光ファイバへ入射された場合に光ファイバ中の音響フォノンを介してパワーが移動する現象であり、互いに周波数の異なる2つの光が光ファイバに入射され、これら2つの光の相互作用によって生じる誘導ブリルアン散乱現象と、光が光ファイバに入射され、この光と光ファイバ中の熱雑音によって生じている音響フォノンとの相互作用によって生じる自然ブリルアン散乱現象とがある。このブリルアン散乱現象の際に見られるブリルアン周波数シフトは、光ファイバ中の音速に比例し、そして、この音速が光ファイバの歪みおよび温度に依存する。このため、ブリルアン周波数シフトを測定することによって歪みおよび/または温度が測定される。
【0004】
このブリルアン散乱現象を利用した歪みや温度の分布を計測する代表的な方式として、BOTDA(Brillouin Optical Time Domain Analysis)およびBOTDR(Brillouin Optical Time Domain Reflectometer)がある。BOTDAでは、誘導ブリルアン散乱現象が利用され、互いに周波数の異なる2つのレーザ光がポンプ光およびプローブ光として検出用光ファイバへ対向して入射され、検出用光ファイバにおける、ポンプ光を入射した端部から射出される誘導ブリルアン散乱現象にかかる光の光強度が時間領域で測定される。このBOTDAでは、ポンプ光およびプローブ光の相互作用によって音響フォノンが励起されている。一方、BOTDRでは、1つのレーザ光がポンプ光として検出用光ファイバの一方端から入射され、前記一方端から射出される自然ブリルアン散乱現象にかかる光が光バンドパスフィルタによって検出され、この検出された自然ブリルアン散乱現象にかかる光の光強度が時間領域で測定される。このBOTDRでは、熱雑音によって生じている音響フォノンが利用されている。そして、これらBOTDAおよびBOTDRにおいて、このような測定がポンプ光の周波数またはBOTDAではプローブ光の周波数を順次に変化させながら周波数ごとに行われ、検出用光ファイバの長尺方向に沿った各部分のブリルアン・ゲイン・スペクトル(またはBOTDAではブリルアン・ロス・スペクトル)がそれぞれ求められ、この測定結果に基づいて検出用光ファイバの長尺方向に沿った歪み分布および/または温度分布が測定される。前記ポンプ光には、通常、光強度が矩形状である光パルスが用いられ、BOTDAにおけるプローブ光には、連続光(CW光)が用いられる。
【0005】
ここで、BOTDAでは、プローブ光を基準として、ポンプ光の周波数をプローブ光の周波数よりも高くすることによって、ブリルアン・ゲイン・スペクトルが検出される一方、プローブ光の周波数をポンプ光の周波数よりも高くすることによって、ブリルアン・ロス・スペクトルが検出される。また、BOTDRでは、ブリルアン・ゲイン・スペクトルが検出される。BOTDAでは、これらブリルアン・ゲイン・スペクトルおよびブリルアン・ロス・スペクトルのいずれを用いても歪みおよび/または温度が求められる。本明細書では、ブリルアン・ゲイン・スペクトルとブリルアン・ロス・スペクトルとを、BOTDAでは、適宜、単に「ブリルアンスペクトル」と呼称することとする。
【0006】
このBOTDAおよびBOTDRの空間分解能は、測定に用いられるポンプ光の光パルスのパルス幅で制限される。光ファイバの材質によって光ファイバ中の光の速度が若干異なるが通常使用される一般的な光ファイバでは、音響フォノンの完全な立ち上がりに約28nsが必要である。このため、ブリルアンスペクトルは、光パルスのパルス幅が約28ns以上までは、ローレンツ曲線(Lorentzain curve)であり、それよりも光パルス幅を短くすると広帯域な曲線となって中心周波数近傍で急峻さを失ったなだらかな形状となる。このため、中心周波数を求めることが難しくなって、その空間分解能は、通常、約2〜3mとされている。
【0007】
そこで、本願発明者は、前記光パルスを2つの成分から構成することによって、高精度(例えば200με以下)および高空間分解能(例えば1m以下)で歪みおよび/または温度の分布を測定する手法を特許文献1で提案した。本願発明者は、本方式をPPP−BOTDA/BOTDR(Pulse Pre-Pumped BOTDA/BOTDR)と呼んでいる。なお、100μεは、0.01%に相当する(100με=0.01%)。また、ブリルアン周波数シフトは、歪みに対して、約500MHz/%である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2006/001071号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、前記特許文献1に提案した手法では、サブ光パルスで予め音響フォノンを立ち上げているので、メイン光パルスのパルス幅を短くすることができ、これによって高空間分解能を可能にしている。しかしながら、メイン光パルスのパルス幅を短くすると、平均パワーが減少するため、検出用光ファイバによって数km程度しか歪みや温度を検出することができなかった。また、BOTDRでも同様に、メイン光パルスのパルス幅を短くすると、平均パワーが減少するため、検出用光ファイバによって数km程度しか歪みや温度を検出することができなかった。
【0010】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、歪みおよび/または温度を高空間分解能で測定可能としつつ、計測可能距離を伸ばしてより遠くまで測定することができる分布型光ファイバセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明にかかる一態様では、誘導ブリルアン散乱現象を利用して歪みおよび/または温度を測定する分布型光ファイバセンサにおいて、スペクトル拡散方式を用いたメイン光パルスと、無変調のサブ光パルスとを生成する光パルス光源と、連続光を生成する連続光光源と、前記メイン光パルスが前記サブ光パルスよりも時間的に先に入射されないように前記サブ光パルスおよび前記メイン光パルスが入射され、前記連続光が入射され、前記サブ光パルスおよび前記メイン光パルスと前記連続光との間で誘導ブリルアン散乱現象が生じる検出用光ファイバと、前記検出用光ファイバから射出される光をフィルタリングすることによって前記誘導ブリルアン散乱現象にかかる光を検出する、前記スペクトル拡散方式に対応する整合フィルタと、前記整合フィルタで検出された前記誘導ブリルアン散乱現象にかかる光に基づいてブリルアン・ゲイン・スペクトルまたはブリルアン・ロス・スペクトルを求め、この求めた前記ブリルアン・ゲイン・スペクトルまたはブリルアン・ロス・スペクトルに基づいて前記検出用光ファイバに生じた歪みおよび/または温度を測定するブリルアン時間領域検出計とを備えることを特徴とする。そして、好ましくは、上述の分布型光ファイバセンサにおいて、前記サブ光パルスおよび前記メイン光パルスは、前記検出用光ファイバの一方端から入射され、前記連続光は、前記検出用光ファイバの他方端から入射され、前記ブリルアン時間領域検出計は、前記検出用光ファイバの一方端から射出された前記誘導ブリルアン散乱現象にかかる光に基づいてブリルアン・ゲイン・スペクトルまたはブリルアン・ロス・スペクトルを求め、求めた前記ブリルアン・ゲイン・スペクトルまたはブリルアン・ロス・スペクトルに基づいて前記検出用光ファイバに生じた歪みおよび/または温度を測定することである。また、好ましくは、上述の分布型光ファイバセンサにおいて、前記サブ光パルスおよび前記メイン光パルスは、前記検出用光ファイバの一方端から入射され、前記連続光は、前記検出用光ファイバの一方端から入射され、前記検出用光ファイバは、伝播する前記連続光をその他方端で反射し、前記ブリルアン時間領域検出計は、前記検出用光ファイバの一方端から射出した前記誘導ブリルアン散乱現象にかかる光に基づいてブリルアン・ゲイン・スペクトルまたはブリルアン・ロス・スペクトルを求め、求めた前記ブリルアン・ゲイン・スペクトルまたはブリルアン・ロス・スペクトルに基づいて前記検出用光ファイバに生じた歪みおよび/または温度を測定することである。なお、Aおよび/またはBは、AおよびBのうち少なくとも一方を意味する。
【0012】
このような構成の分布型光ファイバセンサは、BOTDAであって、歪みおよび/または温度を高空間分解能で測定可能としつつ、計測可能距離を伸ばしてより遠くまで測定することができる。
【0013】
そして、本発明にかかる他の一態様では、自然散乱によるブリルアン散乱現象を利用して歪みおよび/または温度を測定する分布型光ファイバセンサにおいて、スペクトル拡散方式を用いたメイン光パルスと、無変調のサブ光パルスとを生成する光パルス光源と、前記サブ光パルスおよび前記メイン光パルスが入射され、前記サブ光パルスおよび前記メイン光パルスが熱雑音による音波によって自然ブリルアン散乱現象が生じる検出用光ファイバと、前記検出用光ファイバから射出される光をフィルタリングすることによって前記自然ブリルアン散乱現象にかかる光を検出する、前記スペクトル拡散方式に対応する整合フィルタと、前記整合フィルタで検出された前記自然ブリルアン散乱現象にかかる光に基づいてブリルアン・ゲイン・スペクトルを求め、この求めた前記ブリルアン・ゲイン・スペクトルに基づいて前記検出用光ファイバに生じた歪みおよび/または温度を測定するブリルアン時間領域検出計とを備えることを特徴とする。
【0014】
このような構成の分布型光ファイバセンサは、BOTDRであって、歪みおよび/または温度を高空間分解能で測定可能としつつ、計測可能距離を伸ばしてより遠くまで測定することができる。
【0015】
検出用光ファイバに入射する光にスペクトル拡散方式を用いた場合におけるブリルアン周波数シフトについて以下に説明する。
【0016】
スペクトル拡散方式、あるいはパルス圧縮方式は、いわゆるレーダ分野において、その計測可能距離を伸ばすために利用されている。これは、目標を探知するために空間に放射されるパルス内部で周波数変調や位相変調等を用いることによって前記パルスのスペクトルを拡散し、前記目標で反射された反射波にパルス圧縮と呼ばれる復調を施すことによって、前記目標までの距離を探知するものである。これによって前記パルスのエネルギーを大きくすることができ、計測可能距離を伸ばすことができる。スペクトル拡散は、一般に、信号を送信するために本来必要とされる帯域幅よりも意図的にその帯域幅を広くすることである。
【0017】
このスペクトル拡散方式をBOTDAやBOTDRへ適用する場合、ブリルアン周波数シフトが非線形なプロセスを経て生じるため、光パルスのスペクトルを広げる(拡散する)と、これによって、第1に、励起される音響フォノンのスペクトルが広がるとともに、第2に、周波数ごとの反射波の時系列信号におけるスペクトルも広がるという、スペクトルに二重の広がりが生じてしまう。このため、単純に、スペクトル拡散符号をBOTDAやBOTDRへ適用することができない。そこで、本願発明者は、以下に解析するように、光パルスをメイン光パルスとサブ光パルスとから構成し、メイン光パルスにスペクトル拡散方式を用いることによって、スペクトル拡散方式をBOTDAやBOTDRへ適用することができることを見出した。
【0018】
以下に、BOTDAの場合について説明するが、同様に、解析を行うことによってBOTDRについても解析を行うことができる。
【0019】
BOTDAでは、検出用光ファイバの一方端(z=0)からポンプ光が入射されるとともに、前記ポンプ光の周波数と異なる周波数のプローブ光が他方端から入射され、励起された音響フォノンの後方散乱がz=0の端点で観測される。ブリルアン・ゲイン・スペクトル(BGS)は、プローブ光のパワーの増分である。
【0020】
まず、このポンプ光A(0,t)は、複素包絡線が式1によって表される形状を持った光パルスとする。
【0021】
【数1】

【0022】
ここで、Pは、ポンプ光のパワーであり、f(t)は、時刻tにおけるポンプ光の振幅を表す関数であって、その絶対値の最大が1となるように規格化されている。
【0023】
また、式2によって関数を定義すると、そのフーリエ変換は、式3によって表される。この場合において、ブリルアン・ゲイン・スペクトルV(t、ν)は、2次元のコンボルーション(畳み込み、convolution)であり、式4によって表される。式4の右辺第1項が時変ローレンツスペクトルである。
【0024】
【数2】

【0025】
【数3】

【0026】
【数4】

【0027】
ここで、上付きの*は、複素共役であることを表し、iは、複素単位である(i=−1)。また、γは、利得係数であり、ν(z)は、位置zにおけるブリルアン周波数シフトである。そして、G(ν)は、ローレンツスペクトルであり、vは、ポンプ光の群速度である。演算子*は、コンボルーションを表し、その上付き文字t,νは、これらの変数に関しての2次元のコンボルーションであることを表している。なお、乗算の演算子・は、記載が省略されている。
【0028】
ここで、理想的には、式4の右辺第1項の時変ローレンツスペクトル自体が観測されることであるが、実際には、点広がり関数ψ(t、ν)とのコンボルーションでぼかされたブリルアン・ゲイン・スペクトルが観測される。このため、前記点広がり関数ψ(t、ν)が2次元デルタ関数もしくはそれに近いことが必要となる。したがって、ψ(t、ν)≒δ(t)δ(ν)となることが好ましい。
【0029】
ここで、ポンプ光をメイン光パルスf(t)とサブ光パルスf(t)とから構成する。すなわち、ポンプ光の振幅f(t)は、式5となる。
【0030】
【数5】

【0031】
このサブ光パルスは、メイン光パルスのために、音響フォノンを励起するように機能するものである。サブ光パルスのパルス幅Dsubは、少なくとも音響フォノンの寿命に較べて充分に長くする。音響フォノンの寿命は、通常、5ns程度である。
【0032】
このメイン光パルスは、音響フォノンで散乱されたエネルギーをプローブ光に渡すように機能するものである。このメイン光パルスは、時間方向に所定の時間幅で複数のセルに分割され、スペクトル拡散方式が用いられて広帯域化される。広帯域とは、音響フォノンのスペクトル線幅(約30〜40MHz)に較べてである。このセルの時間幅がBOTDAの空間分解能を決め、この逆数がスペクトルの幅になる。例えば、セル幅(セル時間幅)が0.1nsである場合には、空間分解能は、1cmとなり、スペクトル幅は、10GHzとなる。そして、メイン光パルスのパルス幅Dは、計測可能距離を伸ばすためにポンプ光に与えるエネルギー量を決める。ここで、BOTDAの空間分解能は、上述したように、メイン光パルスのセル幅で決まるため、メイン光パルスのパルス幅Dは、BOTDAの空間分解能とは独立に設定することができる。したがって、メイン光パルスのパルス幅Dは、所望の計測可能距離に応じて適宜に決定可能である。このため、計測可能距離を従来より伸ばすことが可能となる。
【0033】
このようにポンプ光を2成分で構成した場合に、ブリルアン・ゲイン・スペクトルV(t、ν)は、3つの成分から構成され、式6および式7(式7−1〜式7−3)によって表される。
【0034】
【数6】

【0035】
【数7】

【0036】
そして、その点広がり関数ψ(t、ν)は、式8によって表され、ポンプ光がメイン光パルスとサブ光パルスとから構成されることから、この点広がり関数ψ(t、ν)は、式9および式10によって表される。
【0037】
【数8】

【0038】
【数9】

【0039】
【数10】

【0040】
ここで、スペクトル拡散方式では、その復調に、そのスペクトル拡散方式に対応する整合フィルタ(マッチドフィルタ)が用いられ、整合フィルタのインパルス応答h(t)がf(D−t)とされる(h(t)=f(D−t))。整合フィルタは、例えば、スペクトル拡散に用いた信号(スペクトル拡散に符号系列を用いる場合ではその符号)を時間的に反転して、整合フィルタの入力とのコンボルーションを取るものである。
【0041】
メイン光パルスは、スペクトル拡散方式を用い、サブ光パルスは、無変調で、そのパルス幅が充分に長いとすることから、点広がり関数ψ(t、ν)の成分ψ1,2(t、ν)は、式11のように近似可能であり、前記好ましい型になる。
【0042】
【数11】

【0043】
ここで、Cは、メイン光パルスとサブ光パルスとの振幅比である。
【0044】
したがって、これに対応するブリルアン・ゲイン・スペクトルは、式12によって表される。
【0045】
【数12】

【0046】
なお、ブリルアン・ゲイン・スペクトルV(t、ν)における他の成分V1,1(t、ν)およびV2,1(t、ν)は、メイン光パルスが疑似乱数によってスペクトル拡散されている場合には、フラットなスペクトルとなる。また、他の成分V2,2(t、ν)は、復調の際における整合フィルタによって抑圧される。
【0047】
また、ブリルアン・ゲイン・スペクトルV(t、ν)における成分V1,1(t、ν)およびV2,2(t、ν)は、ポンプ光をメイン光パルスのみで構成、あるいはサブ光パルスのみで構成し、ブリルアン・ゲイン・スペクトルを計測することによって抽出可能である。
【0048】
以上の解析から、前記構成の分布型光ファイバセンサでは、検出用光ファイバに入射する光パルスを、スペクトル拡散方式を用いたメイン光パルスと無変調のサブ光パルスとの2成分で構成することによって、空間分解能と計測可能距離とを独立に設定することかができるから、歪みおよび/または温度を高空間分解能で測定可能としつつ、計測可能距離を伸ばしてより遠くまで測定することができる。
【0049】
また、上述のBOTDAの分布型光ファイバセンサにおいて、好ましくは、前記ブリルアン時間領域検出計は、前記サブ光パルスおよび前記メイン光パルスと前記連続光とが前記検出用光ファイバに入射された場合に前記検出用光ファイバから射出される第1誘導ブリルアン散乱現象にかかる光に基づいて求められた第1ブリルアン・ゲイン・スペクトルまたは第1ブリルアン・ロス・スペクトルと、前記メイン光パルスと前記連続光とが前記検出用光ファイバに入射された場合に前記検出用光ファイバから射出される第2誘導ブリルアン散乱現象にかかる光に基づいて求められた第2ブリルアン・ゲイン・スペクトルまたは第2ブリルアン・ロス・スペクトル、および/または、前記サブ光パルスと前記連続光とが前記検出用光ファイバに入射された場合に前記検出用光ファイバから射出される第3誘導ブリルアン散乱現象にかかる光に基づいて求められた第3ブリルアン・ゲイン・スペクトルまたは第2ブリルアン・ロス・スペクトルと、の差を求め、この求めた差に基づいて前記検出用光ファイバに生じた歪みおよび/または温度を測定することである。
【0050】
この構成によれば、ブリルアン周波数シフトを求める際に、ブリルアンスペクトルの不要成分を抑圧することができ、ブリルアン周波数シフトをより簡単により高精度に求めることができる結果、検出用光ファイバに生じた歪みおよび/または温度をより簡単により高精度に求めることが可能となる。
【0051】
また、これら上述のBOTDAの分布型光ファイバセンサにおいて、好ましくは、前記サブ光パルスは、前記メイン光パルスに対して時間的に先行して前記検出用光ファイバに入射されることである。
【0052】
この構成によれば、サブ光パルスがメイン光パルスに対して時間的に先行して検出用光ファイバに入射される分布型光ファイバセンサが提供される。サブ光パルスは、メイン光パルスと時間的に分離されていてもよく、また、メイン光パルスと時間的に連続していてもよく、さらにその一部がメイン光パルスと時間的に重なって(オーバラップして)いてもよい。サブ光パルスをメイン光パルスから時間的に分離する場合には、サブ光パルスのパルス幅は、音響フォノンが充分に励起されるように約30ns以上であることが好ましく、サブ光パルスとメイン光パルスとの時間的な間隔は、音響フォノンの寿命以下であることが好ましい。サブ光パルスをメイン光パルスにオーバラップさせる場合には、サブ光パルスのパルス幅もメイン光パルスのパルス幅も任意の長さとすることが可能である。したがって、ポンプ光のエネルギーを所望の値に設定することが可能となり、計測可能距離を適宜に設定することが可能となる。なお、この場合において、音響フォノンを充分に励起すべく、サブ光パルスは、メイン光パルスに対し30ns程度だけ先行させることが好ましい。
【0053】
また、これら上述のBOTDAの分布型光ファイバセンサにおいて、好ましくは、前記メイン光パルスと前記サブ光パルスとは、時間的に重なった部分が存在することである。
【0054】
この構成によれば、メイン光パルスとサブ光パルスとに時間的に重なった部分(オーバラップした部分)を持つ分布型光ファイバセンサが提供される。サブ光パルスがメイン光パルスと重ねることによって、上述したように、サブ光パルスのパルス幅を任意の長さとすることが可能となり、計測可能距離をより伸ばすことができる。時間的に重なった部分は、両者がその一部分で時間的に重なっていてもよく、また、両者が時間的に完全に一致するように重なっていてもよい。
【0055】
また、上述のBOTDRの分布型光ファイバセンサにおいて、好ましくは、前記ブリルアン時間領域検出計は、前記サブ光パルスおよび前記メイン光パルスが前記検出用光ファイバに入射された場合に前記検出用光ファイバから射出される第1自然ブリルアン散乱現象にかかる光に基づいて求められた第1ブリルアン・ゲイン・スペクトルと、前記メイン光パルスが前記検出用光ファイバに入射された場合に前記検出用光ファイバから射出される第2自然ブリルアン散乱現象にかかる光に基づいて求められた第2ブリルアン・ゲイン・スペクトル、および/または、前記サブ光パルスが前記検出用光ファイバに入射された場合に前記検出用光ファイバから射出される第3自然ブリルアン散乱現象にかかる光に基づいて求められた第3ブリルアン・ゲイン・スペクトルと、の差を求め、この求めた差に基づいて前記検出用光ファイバに生じた歪みおよび/または温度を測定することである。
【0056】
この構成によれば、ブリルアン周波数シフトを求める際に、ブリルアンスペクトルの不要成分を抑圧することができ、ブリルアン周波数シフトをより簡単により高精度に求めることができる結果、検出用光ファイバに生じた歪みおよび/または温度をより簡単により高精度に求めることが可能となる。
【発明の効果】
【0057】
本発明にかかる分布型光ファイバセンサでは、歪みおよび/または温度が高空間分解能で、そして、より遠くまで測定可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】実施形態における分布型光ファイバセンサの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す分布型光ファイバセンサを第1態様で動作させた場合における分布型光ファイバセンサの概略構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す分布型光ファイバセンサを第2態様で動作させた場合における分布型光ファイバセンサの概略構成を示すブロック図である。
【図4】光パルス生成部の構成およびその動作を説明するための図である。
【図5】ポンプ光(サブ光パルスおよびメイン光パルス)の構成および整合フィルタを説明するための図である。
【図6】図1に示す分布型光ファイバセンサをBOTDRに構成した場合における分布型光ファイバセンサの構成を示すブロック図である。
【図7】狭線幅光バンドパスフィルタを説明するための図である。
【図8】全体から構成要素を減算することによってブリルアン周波数シフトを求める方法を説明するための図ある。
【図9】図5(A)に示す構成のポンプ光を用いた場合における分布型光ファイバセンサの数値実験結果を示す図である。
【図10】ポンプ光(サブ光パルスおよびメイン光パルス)の他の構成を説明するための図である。
【図11】図10(B)に示す構成のポンプ光を用いた場合における分布型光ファイバセンサの数値実験結果を示す図である。
【図12】ポンプ光(サブ光パルスおよびメイン光パルス)のさらに他の構成および整合フィルタを説明するための図である。
【図13】図12(A)に示す構成のポンプ光を生成するための、光パルス生成部の構成およびその動作を説明するための図である。
【図14】点広がり関数の一計算結果を示す図である。
【図15】ブリルアン・ゲイン・スペクトルV(t、ν)における成分V2、1(t、ν)を取り除いてブリルアン・ゲイン・スペクトルV(t、ν)を求めるための信号処理部の構成を示すブロック図である。
【図16】メイン光パルスとサブ光パルスとが時間的に重なった部分を持つポンプ光を用いる場合であって比較的短い区間幅に歪みを与えている場合における分布型光ファイバセンサの数値実験結果を示す図である。
【図17】メイン光パルスとサブ光パルスとが時間的に重なった部分を持つポンプ光を用いる場合であって比較的長い区間幅に歪みを与えている場合における分布型光ファイバセンサの数値実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下、本発明にかかる実施の一形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
【0060】
図1は、実施形態における分布型光ファイバセンサの構成を示すブロック図である。図2は、図1に示す分布型光ファイバセンサを第1態様で動作させた場合における分布型光ファイバセンサの概略構成を示すブロック図である。図3は、図1に示す分布型光ファイバセンサを第2態様で動作させた場合における分布型光ファイバセンサの概略構成を示すブロック図である。
【0061】
本発明にかかる実施形態の図1に示す分布型光ファイバセンサS(S1)は、BOTDAであって、後述するように光スイッチ25を切り換えることによって第1態様(両端測定)として動作し、大略、図2に示すように、光パルス光源LSによって生成されたサブ光パルスおよびメイン光パルス光をポンプ光として、歪みおよび/または温度を検出するための検出用光ファイバOF(15)の一方端から入射するとともに、連続光光源LSCWによって生成された連続光をプローブ光としてこの検出用光ファイバOF(15)の他方端から入射して、ブリルアン時間領域検出計BD(14)によって検出用光ファイバOF(15)で生じた誘導ブリルアン散乱現象にかかる光を受光し、ブリルアン時間領域検出計BD(14)によってブリルアン・ゲイン・スペクトラム時間領域分析(BGain−OTDA)またはブリルアン・ロス・スペクトラム時間領域分析(BLoss−OTDA)を行うことにより、ブリルアン周波数シフトに基づいて歪みおよび/または温度の分布を検出するものである。光パルス光源LSでは、レーザ光源LDから射出されたレーザ光が光信号生成器OSGにおいて疑似乱数発生器RGからの疑似乱数で位相変調されることによって、スペクトル拡散方式を用いたメイン光パルスが生成される。疑似乱数発生器RGで生成した疑似乱数は、復調のために、ブリルアン時間領域検出計BD(14)へ通知される。そして、ブリルアン時間領域検出計BD(14)では、検出用光ファイバOF(15)から射出される誘導ブリルアン散乱現象にかかる光が、疑似乱数発生器RGからの疑似乱数に応じた整合フィルタMFでフィルタリングされ、信号処理部SPでBOTDAの信号処理が施されることによって、ブリルアン周波数シフトに基づいた歪みおよび/または温度の分布が検出される。なお、以下、ブリルアン・ゲイン・スペクトラム時間領域分析またはブリルアン・ロス・スペクトラム時間領域分析は、ブリルアンスペクトラム時間領域分析と適宜略記される。このブリルアンスペクトラム時間領域分析では、誘導ブリルアン散乱現象にかかる光は、ブリルアン増幅または減衰を受けた光である。
【0062】
そして、この図1に示す分布型光ファイバセンサS(S2)は、BOTDAであって、後述するように光スイッチ25を切り換えることによって第2態様(片端測定)として動作し、大略、図3に示すように、光パルス光源LSによって生成されたサブ光パルスおよびメイン光パルス光をポンプ光として、そして、連続光光源LSCWによって生成された連続光をプローブ光として、検出用光ファイバOF(15)の一方端から入射して、ブリルアン時間領域検出計BD(14)によって検出用光ファイバOF(15)で生じた誘導ブリルアン散乱現象にかかる光を受光し、ブリルアン時間領域検出計BD(14)によってブリルアン・ゲイン・スペクトラム時間領域分析(BGain−OTDA)またはブリルアン・ロス・スペクトラム時間領域分析(BLoss−OTDA)を行うことにより、ブリルアン周波数シフトに基づいて歪みおよび/または温度の分布を検出するものである。メイン光パルスには、スペクトル拡散方式が用いられる。
【0063】
このような分布型光ファイバセンサS(S1、S2)は、より具体的には、図1に示すように、第1光源1と、光カプラ2、5、8、21、23と、光パルス生成部3と、光スイッチ4、22と、光強度・偏光調整部6と、光サーキュレータ7、12と、光コネクタ9、26、27、28と、第1自動温度制御部(以下、「第1ATC」と略記する。)10と、第1自動周波数制御部(以下、「第1AFC」と略記する。)11と、制御処理部13と、ブリルアン時間領域検出計14と、検出用光ファイバ15と、温度検出部16と、基準用光ファイバ17と、第2自動温度制御部(以下、「第2ATC」と略記する。)18と、第2自動周波数制御部(以下、「第2AFC」と略記する。)19と、第2光源20と、光強度調整部24と、1×2光スイッチ25とを備えて構成される。
【0064】
第1および第2光源1、20は、それぞれ、第1および第2ATC10、18によって予め設定される所定温度で略一定に保持されると共に第1および第2AFC11、19によって予め設定される所定周波数で略一定に保持されることにより、所定周波数の連続光を生成し射出する光源装置である。第1光源1の出力端子(射出端子)は、光カプラ2の入力端子(入射端子)に光学的に接続される。第2光源20の出力端子(射出端子)は、光カプラ21の入力端子(入射端子)に光学的に接続される。
【0065】
このような第1および第2光源1、20は、それぞれ、例えば、発光素子と、発光素子の近傍に配置されこの発光素子の温度を検出する例えばサーミスタ等の温度検出素子と、発光素子の後方から射出されるバック光を受光して2つに分岐する例えばハーフミラー等の光カプラと、光カプラで分岐された一方の光を、周期的フィルタであるファブリペローエタロンフィルタ(Fabry-perotetalon Filter)を介して受光する第1受光素子と、光カプラで分岐した他方の光を受光する第2受光素子と、温度調整素子と、これら発光素子、温度検出素子、光カプラ、第1および第2受光素子、ファブリペローエタロンフィルタおよび温度調整素子が配設される基板とを備えて構成される。
【0066】
発光素子は、線幅の狭い所定周波数の光を発光すると共に素子温度や駆動電流を変更することによって発振波長(発振周波数)を変えることができる素子であり、例えば、多量子井戸構造DFBレーザや可変波長分布ブラッグ反射型レーザ等の波長可変半導体レーザ(周波数可変半導体レーザ)である。第1および第2光源1、20における各温度検出素子は、検出した各検出温度を第1および第2ATC10、18へそれぞれ出力する。第1および第2光源1、20における第1および第2受光素子は、例えばホトダイオード等の光電変換素子を備え、各受光光強度に応じた各受光出力を第1および第2AFC11、19へそれぞれ出力する。温度調整素子は、発熱および吸熱を行うことにより基板の温度を調整する部品であり、例えば、ペルチェ素子やゼーベック素子等の熱電変換素子を備えて構成される。
【0067】
第1および第2ATC10、18は、それぞれ、制御処理部13の制御に従って、第1および第2光源1、20における各温度検出素子の各検出温度に基づいて各温度調整素子を制御することによって、各基板の温度を所定温度に自動的に略一定に保持する回路である。これによって第1および第2光源1、20における各発光素子の温度が所定温度に自動的に略一定に保持される。このため、発光素子が発光する光の周波数が温度依存性を有する場合に、その温度依存性が抑制される。
【0068】
第1および第2AFC11、19は、それぞれ、制御処理部13の制御に従って、第1および第2光源1、20における第1および第2受光素子の各受光出力に基づいて各発光素子を制御することによって、各発光素子が発光する光の周波数を所定周波数に自動的に略一定に保持する回路である。
【0069】
これら第1および第2光源1、20における光カプラ、ファブリペローエタロンフィルタ、第1および第2受光素子と第1および第2AFC11、19とは、第1および第2光源1、20における発光素子が発光する光の波長(周波数)を略固定する所謂波長ロッカーをそれぞれ構成している。
【0070】
光カプラ2、5、21、23は、1個の入力端子から入射された入射光を2つの光に分配して2個の出力端子へそれぞれ射出する光部品である。光カプラ8は、2個の入力端子のうちの一方の入力端子から入射された入射光を1個の出力端子から射出すると共に他方の入力端子から入射された入射光を前記出力端子から射出する光部品である。光カプラ2、5、21、23、8は、例えば、ハーフミラー等の微少光学素子形光分岐結合器や溶融ファイバの光ファイバ形光分岐結合器や光導波路形光分岐結合器等を利用することができる。
【0071】
光カプラ2の一方の出力端子は、光パルス生成部3の入力端子に光学的に接続され、他方の出力端子は、光サーキュレータ12の第1端子に光学的に接続される。光カプラ5の一方の出力端子は、光強度・偏光調整部6の入力端子に光学的に接続され、他方の出力端子は、ブリルアン時間領域検出計14の第2入力端子に光学的に接続される。光カプラ21の一方の出力端子は、光スイッチ22の入力端子に光学的に接続され、他方の出力端子は、光コネクタ28を介して基準用光ファイバ17の他方端に光学的に接続される。光カプラ23の一方の出力端子は、光強度調整部24の入力端子に光学的に接続され、他方の出力端子は、ブリルアン時間領域検出計14の第4入力端子に光学的に接続される。光カプラ8の一方の入力端子は、光サーキュレータ7の第2端子に光学的に接続され、他方の入力端子は、1×2光スイッチ25の他方の出力端子に光学的に接続され、出力端子は、光コネクタ9を介して検出用光ファイバ15の一方端に光学的に接続される。
【0072】
光パルス生成部3は、第1光源1が射出した連続光が入射され、この連続光から、ポンプ光として、メイン光パルスとサブ光パルスとを生成する装置である。メイン光パルスは、スペクトル拡散方式が用いられた光パルスである。スペクトル拡散方式としては、例えば、周波数を変化させる周波数チャープ方式や、位相を変調する位相変調方式や、これら周波数チャープ方式と位相変調方式とを組み合わせたハイブリッド方式等を挙げることができる。周波数チャープ方式としては、例えば、周波数を単調に、例えば直線的に変化させる方式等が挙げられる。そして、位相変調方式としては、例えば、PN系列を用いて位相を変調する方式等が挙げられる。PN系列は、疑似乱数(pseudo-random number)系列であり、PN系列としては、例えば、M系列(maximal-length sequences)やGold系列等が挙げられる。M系列は、複数段のシフトレジスタとその複数段の各段における各状態の論理結合をシフトレジスタへフィードバックする論理回路とを備えて構成される回路によって生成することが可能である。また、Gold系列は、n次の原始多項式F1(x)およびF2(x)で発生されたM系列の0を−1に、1を+1に対応させた系列をそれぞれMi、Mjとすると、両者の積Mi・Mjによって生成することが可能である。また、位相変調方式の疑似乱数系列としてGolay符号系列を用いることもできる。このGolay符号系列は、自己相関関数のサイドローブが厳密に0になるという優れた特性を有している。サブ光パルスは、変調されていない無変調の光パルスであり、その最大光強度がメイン光パルスの光強度以下であるとともにパルス幅が音響フォノンの寿命よりも充分に長い。そして、光パルス生成部3は、制御処理部13の制御に従って、本実施形態のブリルアンスペクトラム時間領域分析(BOTDA)では、メイン光パルスがサブ光パルスよりも時間的に先に検出用光ファイバ15に入射されないように、サブ光パルスおよびメイン光パルスを生成する。このような光パルス生成部3によって生成されるポンプ光としてのサブ光パルスおよびメイン光パルスについては、後述でさらに詳述する。
【0073】
光スイッチ4、22は、制御処理部13の制御に従って、入力端子と出力端子との間で光をオンオフする光部品である。オンでは、光が透過され、オフでは、光が遮断される。光スイッチ4、22は、本実施形態では、例えばMZ光変調器や半導体電界吸収型光変調器等の、入射光の光強度を変調する光強度変調器が用いられる。光スイッチ4、22には、制御処理部13によって制御され、この光強度変調器を駆動するドライバ回路が含まれる。このドライバ回路は、例えば、光強度変調器を通常状態においてオフするための直流電圧信号を生成する直流電源と、通常オフされている光強度変調器をオンするための電圧パルスを生成するパルス発生器と、この電圧パルスの生成タイミングを制御するタイミング発生器とを備えて構成される。光スイッチ4の出力端子は、光カプラ5の入力端子に光学的に接続される。光スイッチ22の出力端子は、光カプラ23の入力端子に光学的に接続される。
【0074】
光強度・偏光調整部6は、制御処理部13によって制御され、入射光の光強度を調整すると共に入射光の偏光面をランダムに変更して射出する部品である。光強度・偏光調整部6の出力端子は、光サーキュレータ7の第1端子に光学的に接続される。光強度・偏光調整部6は、例えば、入射光の光強度を減衰して射出するとともにその減衰量を変更することができる光可変減衰器と、入射光の偏光面をランダムに変えて射出することができる偏光制御器とを備えて構成される。
【0075】
光サーキュレータ7、12は、第1乃至第3の3端子の光サーキュレータであり、入射光と射出光とがその端子番号に循環関係を有する非可逆性の光部品である。すなわち、第1端子に入射した光は、第2端子から射出されると共に第3端子からは射出されず、第2端子に入射した光は、第3端子から射出されると共に第1端子からは射出されず、第3端子に入射した光は、第1端子から射出されると共に第2端子からは射出されない。光サーキュレータ7の第1端子は、光強度・偏光調整部6の出力端子に光学的に接続され、第2端子は、上述したように、光カプラ8の一方の入力端子に光学的に接続され、第3端子は、ブリルアン時間領域検出計14の第3入力端子に光学的に接続される。光サーキュレータ12の第1端子は、上述したように、光カプラ2の他方の出力端子に光学的に接続され、第2端子は、光コネクタ27を介して基準用光ファイバ17の一方端に光学的に接続され、第3端子は、ブリルアン時間領域検出計14の第1入力端子に光学的に接続される。
【0076】
光コネクタ9、26、27、28は、光ファイバ同士や光部品と光ファイバとを光学的に接続する光部品である。
【0077】
光強度調整部24は、制御処理部13によって制御され、入射光の光強度を調整して射出する部品である。光強度調整部24の出力端子は、光スイッチ25の入力端子に光学的に接続される。光強度調整部24は、例えば、入射光の光強度を減衰して射出する光可変減衰器と、入力端子から出力端子へ一方向のみ光を透過する光アイソレータとを備えて構成される。光強度調整部24に入射した入射光は、光可変減衰器で光強度が所定光強度に調整されて光アイソレータを介して射出される。この光アイソレータは、分布型光ファイバセンサS内における各光部品の接続部等で生じる反射光の伝播やサブ光パルスおよびメイン光パルスの第2光源20への伝播を防止する役割を果たす。
【0078】
1×2光スイッチ25は、光路を切り換えることによって、入力端子から入射された光を2個の出力端子のうちの何れか一方から射出する1入力2出力の光スイッチであり、例えば、機械式光スイッチや光導波路スイッチ等が利用される。1×2光スイッチ25の一方の出力端子は、上述したように、光カプラ8の他方の入力端子に光学的に接続され、他方の出力端子は、光コネクタ26を介して検出用光ファイバ15の他方端に光学的に接続される。手動または制御処理部13の制御に従って、ブリルアンスペクトラム時間領域分析(BOTDA)の第1態様で動作させる場合には、入力端子から入射された光が光コネクタ26を介して検出用光ファイバ15の他方端へ入射されるように1×2光スイッチ25が切り換えられ、ブリルアンスペクトラム時間領域分析(BOTDA)の第2態様で動作させる場合には、入力端子から入射された光が光カプラ8および光コネクタ9を介して検出用光ファイバ15の一方端へ入射されるように1×2光スイッチ25が切り換えられる。
【0079】
検出用光ファイバ15は、歪みおよび/または温度を検出するセンサ用の光ファイバであり、サブ光パルスおよびメイン光パルスと連続光とが入射され、BOTDAでは、誘導ブリルアン散乱現象の作用を受けた光が射出される。ここで、配管、橋、トンネル、ダム、建物等の構造物や地盤等の計測対象物に生じた歪みおよび/または温度を測定する場合には、検出用光ファイバ15が接着剤や固定部材等によって計測対象物に固定される。
【0080】
基準用光ファイバ17は、第1および第2光源1、20がそれぞれ射出する各光の周波数を調整するために使用される光ファイバであって、誘導ブリルアン散乱現象を起こす第1および第2光における周波数差と誘導ブリルアン散乱現象にかかる光の光強度との関係が予め既知の光ファイバである。
【0081】
温度検出部16は、基準用光ファイバ17の温度を検出する回路であり、検出温度を制御処理部13へ出力する。
【0082】
ブリルアン時間領域検出計14は、制御処理部13と信号を入出力することによって、分布型光ファイバセンサS(S1、S2)の各部を制御する。ブリルアン時間領域検出計14は、光コネクタ27および光サーキュレータ12を介して第1入力端子に入射された、基準用光ファイバ17から射出した誘導ブリルアン散乱現象にかかる光の光強度を求め、この求めた光強度を制御処理部13へ出力する。ブリルアン時間領域検出計14は、制御処理部13と信号を入出力することによって、分布型光ファイバセンサSの各部を制御し、所定のサンプリング間隔で受光した誘導ブリルアン散乱現象にかかる光を検出することによって検出用光ファイバ15の長尺方向における検出用光ファイバ15の各領域部分のブリルアンスペクトルをそれぞれ求め、この求めた各領域部分のブリルアンスペクトルに基づいて各領域部分のブリルアン周波数シフトをそれぞれ求め、この求めた各領域部分のブリルアン周波数シフトに基づいて検出用光ファイバ15の歪み分布および/または温度分布を検出する。第1、第2および第4入力端子から入射された各入射光は、それぞれ、光電変換を行う受光素子によって受光光量に応じた電気信号に変換され、アナログ/ディジタル変換器によってこの電気信号がディジタルの電気信号に変換され、ブリルアンスペクトルを求めるために用いられる。そして、第3入力端子から入射された入射光は、誘導ブリルアン散乱現象にかかる光として、受光素子で電気信号に変換されることによって直接検波され、整合フィルタによってフィルタリングされ、アナログ/ディジタル変換器によってディジタルの電気信号に変換され、ブリルアンスペクトルを求めるために用いられる。また、必要に応じて、ディジタル変換される前に増幅回路によって電気信号が増幅される。ブリルアン時間領域検出計14は、光スイッチ、スペクトルアナライザおよびコンピュータ等を備えて構成される。
【0083】
制御処理部13は、ブリルアン時間領域検出計14と信号を入出力することによって、検出用光ファイバ15の長尺方向における検出用光ファイバ15の歪みおよび/または温度の分布を高空間分解能でかつより遠距離まで測定するように、第1および第2光源1、20、第1および第2ATC10、18、第1および第2AFC11、19、光パルス生成部3、光スイッチ4、22、光強度・偏光調整部6および光強度調整部24を制御する電子回路である。制御処理部13は、例えば、マイクロプロセッサ、ワーキングメモリ、および、検出用光ファイバ15の歪みおよび/または温度の分布を高空間分解能で測定するために必要な各データを記憶するメモリ等を備えて構成される。そして、制御処理部13は、基準用光ファイバ17における、誘導ブリルアン散乱現象を起こす第1および第2光における周波数差と誘導ブリルアン散乱現象にかかる光の光強度との関係が予め記憶される記憶部と、ブリルアン時間領域検出計14が求めた誘導ブリルアン散乱現象にかかる光の光強度と基準用光ファイバ17における既知の前記関係とに基づいて第1および第2光源1、20における第1および第2発光素子が発光する各光の周波数差が予め設定される所定周波数差となるように、第1AFC11および/または第2AFC19を制御する周波数設定部とを機能的に備えている。
【0084】
なお、これら第1および第2光源1、20、第1および第2ATC10、18、第1および第2AFC11、19、光強度・偏光調整部6、光強度調整部24および光強度変調器は、前記特許文献1を参考にすることができる。
【0085】
次に、実施形態にかかる分布型光ファイバセンサSの動作について説明する。
【0086】
まず、測定開始に当たって、第1および第2光源1、20から射出される各連続光の各周波数が基準用光ファイバ17を用いてそれぞれ調整(キャリブレーション)される。
【0087】
より具体的には、制御処理部13は、第1ATC10および第1AFC11ならびに第2ATC18および第2AFC19をそれぞれ制御することによって第1および第2光源1、20を各所定周波数で各連続光をそれぞれ発光させ、これら各連続光を基準用光ファイバ17に互いに対向するように入射させる。これら第1光源1からの連続光および第2光源20からの連続光は、基準用光ファイバ17で誘導ブリルアン散乱現象を起こし、この誘導ブリルアン散乱現象にかかる光は、基準用光ファイバ17から光サーキュレータ12を介してブリルアン時間領域検出計14に入射される。ブリルアン時間領域検出計14は、この誘導ブリルアン散乱現象にかかる光を受光し、この受光した誘導ブリルアン散乱現象にかかる光の光強度を検出し、この検出した光強度を制御処理部13へ通知する。制御処理部13には、基準用光ファイバ17における、誘導ブリルアン散乱現象を起こす第1および第2光における周波数差と誘導ブリルアン散乱現象にかかる光の光強度との関係がその記憶部に予め記憶されており、制御処理部13は、この通知を受けると、その周波数設定部によって、第1および第2光源1、20における第1および第2発光素子が発光する各光の設定すべき所定周波数差faに対応する基準光強度Paを前記関係から求め、ブリルアン時間領域検出計14が検出した測定光強度Pdがこの基準光強度Paと一致するように、第1AFC11および第2AFC19を制御する。これによって第1および第2光源1、20における第1および第2発光素子が発光する各光の周波数差は、設定すべき所定周波数差faに調整される。なお、本実施形態では、光強度Pdは、受光素子で光電変換された電圧値で与えられ、基準光強度Paは、この基準光強度Paに対応する電圧値となる。
【0088】
ここで、基準用光ファイバ17における、誘導ブリルアン散乱現象を起こす第1および第2光における周波数差と誘導ブリルアン散乱現象にかかる光の光強度との前記関係は、一般に、温度依存性を有している。本実施形態では、前記調整の際に、制御処理部13は、温度検出部16によって基準用光ファイバ17の温度を検出し、この検出温度に応じて基準用光ファイバ17における前記関係を補正している。このため、より高精度に前記調整を実行することが可能となる。
【0089】
このように動作することによって第1および第2光源1、20から射出される各連続光の各周波数が調整される。このような調整は、測定精度をより向上させる観点から、ブリルアンスペクトルを得る際に、掃引のために周波数が変更されるごとに実行されても良いし、あるいは、測定時間を短縮させる観点から、歪みおよび/または温度を測定ごとに、または、所定期間の経過ごとに、さらにまたは、分布型光ファイバセンサSの起動の際に、実行されても良い。
【0090】
次に、歪みおよび/または温度の測定動作について説明する。
【0091】
まず、制御処理部13は、第1ATC10および第1AFC11ならびに第2ATC18および第2AFC19を制御することによって、第1および第2光源1、20に各所定周波数で各連続光をそれぞれ発光させる。第1光源1から射出された連続光は、光カプラ2を介して光パルス生成部3に入射され、第2光源20から射出された連続光は、光カプラ21を介して光スイッチ22に入射される。
【0092】
次に、制御処理部13は、光パルス生成部3を制御することによって、所定のポンプ光(サブ光パルスおよびメイン光パルス)を生成させる。より具体的には、制御処理部13は、例えば、次のように光パルス生成部3を動作させることによって、ポンプ光を生成している。
【0093】
図4は、光パルス生成部の構成およびその動作を説明するための図である。図5は、ポンプ光(サブ光パルスおよびメイン光パルス)の構成および整合フィルタを説明するための図であり、図5(A)は、ポンプ光の構成を示し、図5(B)は、整合フィルタを示す図である。
【0094】
光パルス生成部3は、例えば、図4に示すように、入射光の光強度を変調するLN強度変調器101と、このLN強度変調器101を駆動するための第1駆動回路を構成する直流電源102、乗算器103およびタイミングパルス発生器104と、入射光の位相を変調するLN位相変調器111と、このLN位相変調器111を駆動するための第2駆動回路を構成する直流電源112、乗算器113および疑似乱数発生器114と、エルビウム添加光ファイバ増幅器(EDFA)121と、入射光の光強度を変調するLN強度変調器131と、このLN強度変調器131を駆動するための第3駆動回路を構成する直流電源132、乗算器133およびタイミングパルス発生器134とを備えて構成される。
【0095】
LN位相変調器111は、例えば電気光学効果を有するニオブ酸リチウムの基板に、光導波路と信号電極と接地電極とが形成されることで構成され、両電極間に所定の信号を印加することによって生じる電気光学効果による屈折率変化に伴う位相変化をそのまま用いることで、入射光の位相を変調する装置である。LN強度変調器101、131は、例えば、マッハツェンダ干渉計を構成して電気光学効果による屈折率変化に伴うこの位相変化を強度変化に変えることで、入射光の光強度を変調する装置である。なお、LN強度変調器101、131およびLN位相変調器111には、ニオブ酸リチウムの基板に代え、例えば、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム・タンタル酸リチウム固有体等の他の電気光学効果を有する基板が用いられてもよい。
【0096】
第1駆動回路において、直流電源102は、強度変調すべく、LN強度変調器101の信号電極に印加する直流電圧を生成する電源回路であり、タイミングパルス発生器104は、LN強度変調器101を動作させるべく、動作タイミングパルスを生成するパルス生成回路であり、そして、乗算器103は、直流電源102から入力される直流電圧とタイミングパルス生成器104から入力される動作タイミングパルスとを乗算し、動作タイミングパルスに応じた直流電圧をLN強度変調器101へ出力する回路である。
【0097】
また、第2駆動回路において、直流電源112は、位相変調すべく、LN位相変調器111の信号電極に印加する直流電圧を生成する電源回路であり、疑似乱数発生器114は、入射光をスペクトル拡散方式で変調するようにLN位相変調器111を動作させるべく、動作タイミングで疑似乱数を生成する疑似乱数生成回路であり、乗算器113は、直流電源112から入力される直流電圧と疑似乱数発生器114から入力される疑似乱数とを乗算し、疑似乱数に応じた直流電圧をLN強度変調器101へ出力する回路である。
【0098】
EDFA121は、エルビウムを添加した光ファイバを備えて構成され、入射光を増幅して射出する光部品である。EDFA121は、検出用光ファイバ15における歪みおよび/または温度の検出に適した光強度にすべく、入射光を予め設定された所定の増幅率で増幅する。これによって第1光源1から検出用光ファイバ15まで伝播する間において、損失(ロス)が発生する場合に、この損失も補償され、所定の計測範囲の測定が可能となる。
【0099】
そして、第3駆動回路において、直流電源132は、オン/オフ制御するようにLN強度変調器131を強度変調すべく、LN強度変調器131の信号電極に印加する直流電圧を生成する電源回路であり、タイミングパルス発生器134は、LN強度変調器131を動作させるべく、動作タイミングパルスを生成するパルス生成回路であり、乗算器133は、直流電源132から入力される直流電圧とタイミングパルス生成器134から入力される動作タイミングパルスとを乗算し、動作タイミングパルスに応じた直流電圧をLN強度変調器131へ出力する回路である。
【0100】
このような光パルス生成部3を動作させることによって、例えば、図5(A)に示す構成のポンプ光を生成することができる。
【0101】
図5(A)に示すポンプ光は、スペクトル拡散方式で符号化されたメイン光パルスと、無変調であって、このメイン光パルスと重なることなく(オーバラップすることなく)時間的に先行するサブ光パルスとから構成されている。メイン光パルスは、所定の時間幅(セル幅)で複数のセルに分割され、本実施形態では、それら各セルがM系列バイナリ符号によって変調(符号化)されている。セル幅は、所望の空間分解能に応じて設定され、メイン光パルスのパルス幅は、所望の計測距離に応じて設定される。また、サブ光パルスは、音響フォノンを完全に立ち上げることができるパルス幅とされ、図5(A)に示す例では、メイン光パルスの光強度と同レベルの光強度とされている。サブ光パルスとメイン光パルスとは、図5(A)に示す例では、時間的に連続しているが、時間的に分離していてもよい。時間的に分離している場合には、サブ光パルスによって立ち上げられた音響フォノンが消失しないうちに、メイン光パルスが前記音響フォノンに作用する時間間隔に設定されることが好ましい。通常、音響フォノンの寿命は、約5nsであるので、サブ光パルスとメイン光パルスとの時間間隔は、約5ns以内であることが好ましい。
【0102】
この図5(A)に示す構成のポンプ光を生成するために、図4において、まず、第1光源1から射出された連続光L1は、光カプラ2を介して光パルス生成部3のLN強度変調器101に入射される。
【0103】
光パルス生成部3では、ポンプ光の生成タイミングで、サブ光パルスのパルス幅Dsubとメイン光パルスのパルス幅Dとに相当するパルス幅(Dsub+D)の動作タイミングパルスがタイミングパルス発生器104から乗算器103へ出力され、直流電源102から入力された直流電圧と乗算され、パルス幅(Dsub+D)の直流電圧がLN強度変調器101の信号電極に印加される。これによってLN強度変調器101は、動作タイミングパルスに応じてそのパルス幅(Dsub+D)に相当する時間幅(Dsub+D)の間、オンされ、前記連続光L1は、LN強度変調器101で、パルス幅(Dsub+D)の光パルスL2となって射出される。
【0104】
そして、光パルス生成部3では、メイン光パルスの生成タイミングで、メイン光パルスのパルス幅Dに相当する時間幅Dの間、疑似乱数がセル幅の時間タイミングで疑似乱数発生器114から乗算器113へ順次に出力され、直流電源112から入力された直流電圧と乗算され、メイン光パルスの生成タイミングから時間幅Dで、M系列バイナリ符号で変調された直流電圧がセル幅の時間タイミングでLN位相変調器111の信号電極に順次に印加される。すなわち、M系列バイナリ符号で変調された直流電圧は、M系列バイナリ符号が“+”の場合に対応する直流電圧がLN位相変調器111に供給された場合にLN位相変調器111から射出される光の位相とM系列バイナリ符号が“−”の場合に対応する直流電圧がLN位相変調器111に供給された場合にLN位相変調器111から射出される光の位相とが互いに180度異なるような電圧値である。これによって前記光パルスL2は、LN位相変調器111で、無変調の部分(サブ光パルスに対応する)とM系列バイナリ符号で変調された部分(メイン光パルスに対応する)とからなる光パルスL3となって射出される。
【0105】
そして、EDFA121では、前記光パルスL3が所定の光強度となるまで増幅され、光パルスL4となって射出される。
【0106】
さらに、光パルス生成部3では、ポンプ光の生成タイミングに応じて、サブ光パルスのパルス幅Dsubとメイン光パルスのパルス幅Dに相当するパルス幅(Dsub+D)の動作タイミングパルスがタイミングパルス発生器134から乗算器133へ出力され、直流電源132から入力された直流電圧と乗算され、パルス幅(Dsub+D)の直流電圧がLN強度変調器131の信号電極に印加される。これによって前記光パルスL4は、LN強度変調器131で、EDFA121で光パルスL4に付随した自然放出光(ASE)等のノイズが除去され、パルス幅Dsubであって無変調であるサブ光パルスとパルス幅Dであってスペクトル拡散方式で符号化されたメイン光パルスとから成るポンプ光L5となって射出される。
【0107】
そして、制御処理部13は、光パルス生成部3におけるポンプ光(サブ光パルスおよびメイン光パルス、光パルスL4)の生成タイミングに応じて、光スイッチ4および光スイッチ22をオンする。制御処理部13は、ポンプ光(サブ光パルスおよびメイン光パルス)の生成タイミングをブリルアン時間領域検出計14に通知する。
【0108】
光スイッチ4がオンされると、ポンプ光(サブ光パルスおよびメイン光パルス)は、光カプラ5に入射され、2つに分岐される。分岐された一方のポンプ光は、光強度・偏光調整部6に入射され、光強度・偏光調整部6でその光強度が調整され、その偏光方向がランダム(無作為)に調整され、光サーキュレータ7、光カプラ8および光コネクタ9を介して検出用光ファイバ15の一方端に入射される。一方、光カプラ5で分岐された他方のサブ光パルスおよびメイン光パルスは、ブリルアン時間領域検出計14に入射される。
【0109】
ブリルアン時間領域検出計14は、ポンプ光(サブ光パルスおよびメイン光パルス)のスペクトルを計測し、ポンプ光の周波数および光強度を制御処理部13へ通知する。制御処理部13は、この通知を受けると、最適な測定結果が得られるように必要に応じて、第1ATC10、第1AFC11および光強度・偏光調整部6を制御する。
【0110】
一方、光スイッチ22がオンされると、連続光(プローブ光)は、光カプラ23に入射され、2つに分岐される。分岐された一方のプローブ光(連続光)は、光強度調整部24に入射され、光強度調整部24でその光強度が調整され、1×2光スイッチ25に入射される。1×2光スイッチ25は、第1態様でブリルアンスペクトラム時間領域分析(BOTDA)が実行される場合には、入力端子から入射された光が光コネクタ26を介して検出用光ファイバ15の他方端へ入射されるように切り換えられており、プローブ光(連続光)は、光コネクタ26を介して検出用光ファイバ15の他方端へ入射される。一方、1×2光スイッチ25は、第2態様でブリルアンスペクトラム時間領域分析(BOTDA)が実行される場合には、入力端子から入射された光が光カプラ8および光コネクタ9を介して検出用光ファイバ15の一方端へ入射されるように切り換えられており、プローブ光(連続光)は、光カプラ8および光コネクタ9を介して検出用光ファイバ15の一方端へ入射される。一方、光カプラ23で分岐された他方のプローブ光(連続光)は、ブリルアン時間領域検出計14に入射される。
【0111】
ブリルアン時間領域検出計14は、プローブ光(連続光)のスペクトルを計測し、プローブ光の周波数および光強度を制御処理部13へ通知する。制御処理部13は、この通知を受けると、最適な測定結果が得られるように必要に応じて、第2ATC18、第2AFC19および光強度調整部24を制御する。
【0112】
第1態様のブリルアンスペクトラム時間領域分析では、検出用光ファイバ15の一方端に入射したポンプ光(サブ光パルスおよびメイン光パルス)は、検出用光ファイバ15の他方端から入射され検出用光ファイバ15を伝播するプローブ光(連続光)と誘導ブリルアン散乱現象を生じさせながら検出用光ファイバ15の一方端から他方端へ伝播する。第2態様のブリルアンスペクトラム時間領域分析では、検出用光ファイバ15の一方端に入射したポンプ光(サブ光パルスおよびメイン光パルス)は、検出用光ファイバ15の一方端から入射され検出用光ファイバ15の他方端で反射して検出用光ファイバ15を伝播するプローブ光(連続光)と誘導ブリルアン散乱現象を生じさせながら検出用光ファイバ15の一方端から他方端へ伝播する。このようなポンプ光とプローブ光との相互作用に基づいて光スイッチ4および光スイッチ22におけるオン/オフのタイミングが制御処理部13によって調整される。
【0113】
誘導ブリルアン散乱現象にかかる光は、検出用光ファイバ15の一方端から射出され、光コネクタ9、光カプラ8および光サーキュレータ7を介してブリルアン時間領域検出計14に入射される。ブリルアン時間領域検出計14では、誘導ブリルアン散乱現象にかかる光は、上述したように直接検波によって抽出され、受光素子によって電気信号に変換され、整合フィルタによってフィルタリングされる。この整合フィルタは、例えば、図5(B)に示すように、光パルス生成部3のLN位相変調器111でM系列バイナリ符号によって位相変調した位相変調パターン(P・・・Pn−1)を時間的に反転した逆位相変調パターン(Pn−1・・・P)のフィルタである。例えば、メイン光パルスの各セルがM系列バイナリ符号によって“+−++−+・・・+−”の位相変調パターンで変調されている場合には、整合フィルタは、この位相変調パターンを時間的に反転した“−+・・・+−++−+”の逆パターンとなる。このような整合フィルタを用いることによって、スペクトル拡散符号化されたメイン光パルスに起因した誘導ブリルアン散乱現象にかかる光を精度よく検出することが可能となる。ブリルアン時間領域検出計14は、制御処理部13から通知された前記生成タイミングに基づいて、この受光した誘導ブリルアン散乱現象にかかる光を時間領域分析し、検出用光ファイバ15の長尺方向における誘導ブリルアン散乱現象にかかる光の光強度の分布を測定する。
【0114】
ここで、誘導ブリルアン散乱現象にかかるポンプ光(サブ光パルスおよびメイン光パルス)とプローブ光(連続光)との間における相互作用の程度は、これら各光の偏光面の相対関係に依存するが、本実施形態にかかる分布型光ファイバセンサSでは、測定ごとに光強度・偏光調整部6でポンプ光の偏光面がランダムに変わるので、測定を複数回実行してその平均値を採用することによって、この依存性を実質的に解消することができる。このため、精度よく誘導ブリルアン散乱現象にかかる光の光強度の分布を得ることができる。
【0115】
このような検出用光ファイバ15の長尺方向における誘導ブリルアン散乱現象にかかる光の光強度の分布が、例えば第2光源20から射出されるプローブ光(連続光)の周波数を制御処理部13の制御によって所定の周波数間隔で所定の周波数範囲で掃引することによって、各周波数において高精度かつ高空間分解能で測定される。その結果、検出用光ファイバ15の長尺方向の各領域部分におけるブリルアンスペクトルが高精度かつ高空間分解能で得られる。
【0116】
そして、ブリルアン時間領域検出計14は、検出用光ファイバ15に歪みを生じていない部分におけるブリルアンスペクトルのピークに対応する周波数を基準に、検出用光ファイバ15の長尺方向の各領域部分におけるブリルアンスペクトルのピークに対応する周波数の差を求めることによって、検出用光ファイバ15の長尺方向の各部分におけるブリルアン周波数シフトを高精度かつ高空間分解能で求める。
【0117】
そして、ブリルアン時間領域検出計14は、この各領域部分のブリルアン周波数シフトから検出用光ファイバ15の長尺方向の各領域部分における歪みおよび/または温度を高精度かつ高空間分解能で求める。この求めた検出用光ファイバ15の長尺方向の各領域部分における歪みおよび/または温度の分布は、CRT表示装置やXYプロッタやプリンタ等の不図示の出力部に提示される。
【0118】
このような構成に分布型光ファイバセンサS(S1、S2)では、ポンプ光を、スペクトル拡散方式を用いたメイン光パルスとサブ光パルスとで構成することによって、空間分解能と計測可能距離とを独立に設定することかができるから、歪みおよび/または温度を高空間分解能で測定可能としつつ、計測可能距離を伸ばしてより遠くまで測定することができる。計測可能距離は、従来、数kmであったが、本実施形態では、100km程度が可能である。
【0119】
なお、図1に示す構成の分布型光ファイバセンサSは、その構成要素の一部によって、BOTDRを構成することも可能である。
【0120】
図6は、図1に示す分布型光ファイバセンサをBOTDRに構成した場合における分布型光ファイバセンサの構成を示すブロック図である。図7は、狭線幅光バンドパスフィルタを説明するための図である。図7(A)は、狭線幅光バンドパスフィルタの構成を示すブロック図であり、図7(B)ないし(D)は、狭線幅光バンドパスフィルタの動作を説明するための図である。
【0121】
図6において、このBOTDRの分布型光ファイバセンサS(S3)は、第1光源1と、光パルス生成部3と、光スイッチ4と、光カプラ5と、光強度・偏光調整部6と、光サーキュレータ7と、光コネクタ9と、第1ATC10と、第1AFC11と、制御処理部13と、ブリルアン時間領域検出計14と、検出用光ファイバ15とを備えて構成されている。なお、図6では、第1光源1と光パルス生成部3との間に介在する光カプラ2、および、光サーキュレータ7と光コネクタ9との間に介在する光カプラ8は、図1に示す分布型光ファイバセンサSをBOTDRに構成した場合では、実質的に機能しないので、図6では、その図示を省略してある。
【0122】
BOTDRの場合では、ブリルアン時間領域検出計14は、制御処理部13と信号を入出力することによって、分布型光ファイバセンサS(S3)の各部を制御し、所定のサンプリング間隔で受光した自然ブリルアン散乱現象にかかる光を検出することによって検出用光ファイバ15の長尺方向における検出用光ファイバ15の各領域部分のブリルアン・ゲイン・スペクトルをそれぞれ求め、この求めた各領域部分のブリルアン・ゲイン・スペクトルに基づいて各領域部分のブリルアン周波数シフトをそれぞれ求め、この求めた各領域部分のブリルアン周波数シフトに基づいて検出用光ファイバ15の歪み分布および/または温度分布を検出する。第2入力端子から入射された各入射光は、光電変換を行う受光素子によって受光光量に応じた電気信号に変換され、アナログ/ディジタル変換器によってこの電気信号がディジタルの電気信号に変換され、ブリルアン・ゲイン・スペクトルを求めるために用いられる。第3入力端子から入射された入射光は、例えば図7に示す光バンドパスフィルタ(以下、「光BPF」と略記する。)によって自然ブリルアン散乱現象にかかる光が抽出され、受光素子によって電気信号に変換され、整合フィルタによってフィルタリングされ、アナログ/ディジタル変換器によってディジタルの電気信号に変換され、ブリルアン・ゲイン・スペクトルを求めるために用いられる。また、必要に応じて、ディジタル変換される前に増幅回路によって電気信号が増幅される。
【0123】
前記第3入力端子に光学的に接続される前記光BPFは、狭い所定の透過周波数帯域の光部品、すなわち、狭い所定の周波数帯域の光を透過すると共にこの所定の周波数帯域を除く帯域の光を遮断する光部品である。このような光BPF31は、例えば、図7(A)に示すように、第1ファブリペローエタロンフィルタ(以下、「EF」と略記する。)311と、第1EF311に光学的に接続される第2EF312とを備えて構成される。第1EF311は、図7(B)に示すように、その半値全幅FWHM1が、光BPF31における所定の透過周波数帯域に相当する周波数幅であるように設定されるとともに、その透過周波数帯域の中心周波数fa1の一つが、光BPF31における透過周波数帯域の中心周波数faと一致するように設定される。第2EF312は、図7(C)に示すように、そのFSR(Free Spectral Range、フリースペクトラムレンジ)2が光パルス(サブ光パルスおよびメイン光パルス)の周波数と自然ブリルアン後方散乱光の周波数との間の周波数間隔より広くなるように設定されるとともに、その透過周波数帯域が第1EF311の透過周波数帯域を含むようにするために、その半値全幅FWHM2が第1EF311の半値全幅FWHM1以上に設定され、そして、その透過周波数帯域の中心周波数fa2の一つが光BPF31における透過周波数帯域の中心周波数faと一致するように設定される。このような構成の光BPF31では、第1EF311で、前記所定の透過周波数帯域に相当する周波数の光が透過する。すなわち、第1EF311のFSR1ごとに半値全幅FWHM1に相当する周波数の光が透過する。そして、第1EF311を透過した光は、第2EF312で、第1EF311の中心周波数fa1の透過周波数帯域に相当する周波数の光のみが透過する。このため、このような構成の狭帯域な光BPF31の透過周波数特性は、図7(B)に示す第1EF311の透過周波数特性と図7(C)に示す第2EF312の透過周波数特性とを合成した特性となり、図7(D)に示すように、その透過周波数帯域の中心周波数faが周波数fa1(=fa2)で、その半値全幅FWHMが第1EF311の半値全幅FWHM1で、そして、そのFSRが第2EF312のFSR2となる。なお、第1EF311と第2EF312とは、逆に光学的に接続されてもよい。
【0124】
また、BOTDRの場合では、制御処理部13は、ブリルアン時間領域検出計14と信号を入出力することによって、検出用光ファイバ15の長尺方向における検出用光ファイバ15の歪みおよび/または温度の分布を高空間分解能でかつより遠距離まで測定するように、第1光源1、第1ATC10、第1AFC11、光パルス生成部3、光スイッチ4および光強度・偏光調整部6を制御する。
【0125】
このような構成のBOTDRの分布型光ファイバセンサS(S3)では、第1光源1および光パルス生成部3によって生成されたサブ光パルスおよびメイン光パルス光は、光スイッチ4、光カプラ5、光強度・偏光調整部6、光サーキュレータ7および光コネクタ9を介して、検出用光ファイバ15の一方端から入射される。メイン光パルスには、スペクトル拡散方式が用いられる。検出用光ファイバ15で自然ブリルアン散乱現象の作用を受けた光(自然ブリルアン後方散乱光)が検出用光ファイバ15の一方端から射出され、ブリルアン時間領域検出計14によって受光される。そして、ブリルアン時間領域検出計14によってブリルアン・ゲイン・スペクトラム時間領域反射分析(BGain−OTDR)が行われ、ブリルアン周波数シフトに基づいて歪みおよび/または温度が検出される。なお、自然ブリルアン散乱現象にかかる光は、自然ブリルアン後方散乱光である。
【0126】
このような構成のBOTDRの分布型光ファイバセンサS(S3)でも、光パルスを、スペクトル拡散方式を用いたメイン光パルスとサブ光パルスとで構成することによって、空間分解能と計測可能距離とを独立に設定することかができるから、歪みおよび/または温度を高空間分解能で測定可能としつつ、計測可能距離を伸ばしてより遠くまで測定することができる。
【0127】
図8は、全体から構成要素を減算することによってブリルアン周波数シフトを求める方法を説明するための図ある。図8の横軸は、MHz単位で表す周波数であり、その縦軸は、mW単位で表すブリルアン・ゲインである。図8(A)は、第1ないし第3ブリルアンスペクトルを示し、図8(B)は、全体から第2および第3ブリルアンスペクトルを減算した結果を示す。そして、図8(A)の実線は、全体のブリルアンスペクトルである第1ブリルアンスペクトルであり、破線は、その構成要素である第2ブリルアンスペクトルと第3ブリルアンスペクトルとの和である。
【0128】
なお、本実施形態にかかるBOTDAの分布型光ファイバセンサSにおいて、まず、制御処理部13の制御によって、検出用光ファイバ15に、ポンプ光としてのサブ光パルスおよびメイン光パルスとプローブ光としての連続光とを入射させ、ブリルアン時間領域検出計14は、この場合に検出用光ファイバ15から射出される第1誘導ブリルアン散乱現象にかかる光に基づいて第1ブリルアンスペクトルを求める。次に、制御処理部13の制御によって、検出用光ファイバ15に、ポンプ光としてのメイン光パルスとプローブ光としての連続光とを入射させ、ブリルアン時間領域検出計14は、この場合に検出用光ファイバ15から射出される第2誘導ブリルアン散乱現象にかかる光に基づいて第2ブリルアンスペクトルを求める。そして、ブリルアン時間領域検出計14は、これら第1ブリルアンスペクトルと第2ブリルアンスペクトルとの差を求め、この求めた差に基づいて検出用光ファイバ15に生じた歪みおよび/または温度を測定してもよい。あるいは、次に、制御処理部13の制御によって、検出用光ファイバ15に、ポンプ光としてのサブ光パルスとプローブ光としての連続光とを入射させ、ブリルアン時間領域検出計14は、この場合に検出用光ファイバ15から射出される第3誘導ブリルアン散乱現象にかかる光に基づいて第3ブリルアンスペクトルを求める。そして、ブリルアン時間領域検出計14は、これら第1ブリルアンスペクトルと第3ブリルアンスペクトルとの差を求め、この求めた差に基づいて検出用光ファイバ15に生じた歪みおよび/または温度を測定してもよい。このように構成することによって、BOTDAにおいて、ブリルアン周波数シフトを求める際に、ブリルアンスペクトルの不要成分を抑圧することができ、ブリルアン周波数シフトをより簡単により高精度に求めることができる結果、検出用光ファイバに生じた歪みおよび/または温度をより簡単により高精度に求めることが可能となる。
【0129】
あるいは、例えば、図8において、まず、分布型光ファイバセンサS(S1、S2)を上述のように動作させることによって、第1ブリルアンスペクトル(図8(A)の実線)を求める。次に、分布型光ファイバセンサS(S1、S2)を上述のように動作させることによって、第2および第3ブリルアンスペクトルをそれぞれ求める。次に、ブリルアン時間領域検出計14は、これら第1ブリルアンスペクトル(図8(A)の実線)と第2ブリルアンスペクトルおよび第3ブリルアンスペクトルの和(図8(A)の破線)との差(図8(B))を求める。そして、ブリルアン時間領域検出計14は、この求めた差に基づいて検出用光ファイバ15に生じた歪みおよび/または温度を測定してもよい。このように構成することによって、BOTDAにおいて、ブリルアン周波数シフトを求める際に、ブリルアンスペクトルの不要成分を抑圧することができ、ブリルアン周波数シフトをさらにより簡単にさらにより高精度に求めることができる結果、検出用光ファイバに生じた歪みおよび/または温度をさらにより簡単にさらにより高精度に求めることが可能となる。
【0130】
また、本実施形態にかかるBOTDRの分布型光ファイバセンサSにおいて、まず、制御処理部13の制御によって、検出用光ファイバ15に、サブ光パルスおよびメイン光パルスを入射させ、ブリルアン時間領域検出計14は、この場合に検出用光ファイバ15から射出される第1自然ブリルアン散乱現象にかかる光に基づいて第1ブリルアン・ゲイン・スペクトルを求める。次に、制御処理部13の制御によって、検出用光ファイバ15に、メイン光パルスを入射させ、ブリルアン時間領域検出計14は、この場合に検出用光ファイバ15から射出される第2自然ブリルアン散乱現象にかかる光に基づいて第2ブリルアン・ゲイン・スペクトルを求める。そして、ブリルアン時間領域検出計14は、これら第1ブリルアン・ゲイン・スペクトルと第2ブリルアン・ゲイン・スペクトルとの差を求め、この求めた差に基づいて検出用光ファイバ15に生じた歪みおよび/または温度を測定してもよい。あるいは、次に、制御処理部13の制御によって、検出用光ファイバ15に、サブ光パルスを入射させ、ブリルアン時間領域検出計14は、この場合に検出用光ファイバ15から射出される第3自然ブリルアン散乱現象にかかる光に基づいて第3ブリルアン・ゲイン・スペクトルを求める。そして、ブリルアン時間領域検出計14は、これら第1ブリルアン・ゲイン・スペクトルと第3ブリルアン・ゲイン・スペクトルとの差を求め、この求めた差に基づいて検出用光ファイバ15に生じた歪みおよび/または温度を測定してもよい。このように構成することによって、BOTDRにおいて、ブリルアン周波数シフトを求める際に、ブリルアン・ゲイン・スペクトルの不要成分を抑圧することができ、ブリルアン周波数シフトをより簡単により高精度に求めることができる結果、検出用光ファイバに生じた歪みおよび/または温度をより簡単により高精度に求めることが可能となる。
【0131】
あるいは、第2および第3ブリルアン・ゲイン・スペクトルをそれぞれ求め、そして、ブリルアン時間領域検出計14は、これら第1ブリルアン・ゲイン・スペクトルと第2ブリルアン・ゲイン・スペクトルおよび第3ブリルアン・ゲイン・スペクトルの和との差を求め、この求めた差に基づいて検出用光ファイバ15に生じた歪みおよび/または温度を測定してもよい。このように構成することによって、BOTDRにおいて、ブリルアン周波数シフトを求める際に、ブリルアン・ゲイン・スペクトルの不要成分を抑圧することができ、ブリルアン周波数シフトをさらにより簡単にさらにより高精度に求めることができる結果、検出用光ファイバに生じた歪みおよび/または温度をさらにより簡単にさらにより高精度に求めることが可能となる。
【0132】
このような無変調のサブ光パルスとスペクトル拡散方式を用いたメイン光パルスとからなる光パルスを用いた分布型光ファイバセンサSにおける数値実験結果(シミュレーション結果)について説明する。この数値実験結果は、例えば、BOTDAにおいて、第1ブリルアンスペクトルと第2ブリルアンスペクトルおよび第3ブリルアンスペクトルの和との差を求め、この求めた差に基づいて検出用光ファイバに生じた歪みおよび/または温度を測定した結果である。
【0133】
図9は、図5(A)に示す構成のポンプ光を用いた場合における分布型光ファイバセンサの数値実験結果を示す図である。図9(A)は、ブリルアン・ゲイン・スペクトルを示し、図9(B)は、ブリルアン周波数シフトを示す。図9(A)のx軸は、周波数(MHz)であり、y軸は、ブリルアンゲイン(nW)であり、z軸は、検出用光ファイバ15の長尺方向における距離(m)である。図9(B)の横軸は、前記距離(m)であり、その縦軸は、ピーク周波数(MHz)である。実線は、測定されたピーク周波数であり、破線は、ブリルアン周波数シフトである。
【0134】
本実験では、ポンプ光は、図5(A)に示すように、パルス幅30nsのサブ光パルスと、このサブ光パルスに連続して後続するパルス幅12.7nsのメイン光パルスとからなり、メイン光パルスは、セル幅0.1nsの127個のセルに分割されており、各セルは、M系列バイナリ符号で変調(符号化)され、スペクトル拡散符号化されている。
【0135】
検出用光ファイバ15には、表1に示すように、z=100cmからz=101cmまでの第1区間、z=200cmからz=202cmまでの第2区間、z=300cmからz=303cmまでの第3区間、z=400cmからz=404cmまでの第4区間の各区間のそれぞれに、ブリルアン周波数シフト換算で80MHzの歪み(=約1600με)が予め与えられている。
【0136】
【表1】

【0137】
このような検出用光ファイバ15にスペクトル拡散方式を一部に用いられた前記ポンプ光を入射させ、測定すると、図9(A)に示すブリルアン・ゲイン・スペクトルが得られ、その結果、図9(B)に示すブリルアン周波数シフトが得られる。
【0138】
図9に示すように、表1に示す各歪み位置に、予め与えられた大きさの歪みが測定されており、高精度かつ高空間分解能で歪みが求められていることが理解される。
【0139】
このようにメイン光パルスにスペクトル拡散方式を用いても高精度かつ高空間分解能で歪みを求めることができている。そして、上述したように、ポンプ光を、スペクトル拡散方式を用いたメイン光パルスとサブ光パルスとで構成することによって、空間分解能と計測可能距離とを独立に設定することができるから、歪みを高空間分解能で測定可能としつつ、計測可能距離を伸ばしてより遠くまで測定することができる。
【0140】
なお、上述の実施形態では、図5に示す態様のポンプ光(サブ光パルスおよびメイン光パルス)が用いられたが、これに限定されるものではなく、例えば、図10に示す態様のポンプ光(サブ光パルスおよびメイン光パルス)が用いられてもよい。
【0141】
図10は、ポンプ光(サブ光パルスおよびメイン光パルス)の他の構成を説明するための図であり、図10(A)は、ポンプ光の他の第1構成を示し、図10(B)は、ポンプ光の他の第2構成を示す。
【0142】
図5(A)に示すポンプ光は、サブ光パルスの光強度がメイン光パルスの光強度と同一レベルであったが、例えば、図10(A)に示すように、ポンプ光は、サブ光パルスの光強度がメイン光パルスの光強度よりも小さくてもよい。サブ光パルスは、上述したように、メイン光パルスに時間的に先行して音響フォノンを立ち上げる役割を果たすので、メイン光パルスのように大きな光強度が必要ではなく、メイン光パルスの光強度よりも小さくてよい。
【0143】
また、図5(A)および図10(A)に示す各ポンプ光は、サブ光パルスがメイン光パルスと重なることなくメイン光パルスに時間的に先行するように構成されたが、例えば、図10(B)に示すように、ポンプ光は、メイン光パルスとサブ光パルスとが時間的に重なった部分を持っていてもよい。このような構成のポンプ光では、メイン光パルスに時間的に先行してサブ光パルスによって音響フォノンを立ち上げる観点から、メイン光パルスと重なっていないサブ光パルスの部分がメイン光パルスに対して時間的に先行していることが好ましく、さらに、このメイン光パルスと重なっていないサブ光パルスの部分が音響フォノンを完全に立ち上げる時間以上、例えば約30ns以上であることがより好ましい。
【0144】
ここで、このようなスペクトル拡散方式を用いたメイン光パルスと前記メイン光パルスと重なった部分を持つサブ光パルスとからなるポンプ光を分布型光ファイバセンサSに用いた場合における数値実験結果について説明する。この数値実験結果は、図9に示す数値実験結果と同様に、例えば、BOTDAにおいて、第1ブリルアンスペクトルと第2ブリルアンスペクトルおよび第3ブリルアンスペクトルの和との差を求め、この求めた差に基づいて検出用光ファイバに生じた歪みおよび/または温度を測定した結果である。
【0145】
図11は、図10(B)に示す構成のポンプ光を用いた場合における分布型光ファイバセンサの数値実験結果を示す図である。図11(A)は、ブリルアン・ゲイン・スペクトルを示し、図11(B)は、ブリルアン周波数シフトを示す。図11(A)および(B)における各軸は、図9(A)および(B)とそれぞれ同じである。
【0146】
本実験では、ポンプ光は、図10(B)に示すように、パルス幅132.3nsのサブ光パルスと、このサブ光パルスに対し30nsだけ時間的に遅れてこのサブ光パルスと重なっているパルス幅102.3nsのメイン光パルスとからなり、メイン光パルスは、セル幅0.1nsの1023個のセルに分割されており、各セルは、M系列バイナリ符号で変調され、スペクトル拡散符号化されている。
【0147】
検出用光ファイバ15には、上述と同様に、表1に示すように、第1ないし第4区間の各区間のそれぞれに、ブリルアン周波数シフト換算で80MHzの歪み(=約1600με)が予め与えられている。
【0148】
このような検出用光ファイバ15に図10(B)に示す構成の前記ポンプ光を入射させ、測定すると、図11(A)に示すブリルアン・ゲイン・スペクトルが得られ、その結果、図11(B)に示すブリルアン周波数シフトが得られる。
【0149】
図11に示すように、表1に示す各歪み位置に、予め与えられた大きさの歪みが測定されており、高精度かつ高空間分解能で歪みが求められていることが理解される。
【0150】
このようにサブ光パルスとメイン光パルスとに重なった部分が存在する場合でも、高精度かつ高空間分解能で歪みを求めることができている。そして、上述したように、ポンプ光を、スペクトル拡散方式を用いたメイン光パルスとサブ光パルスとで構成することによって、空間分解能と計測可能距離とを独立に設定することかができるから、歪みを高空間分解能で測定可能としつつ、計測可能距離を伸ばしてより遠くまで測定することができる。
【0151】
さらに、本実施形態の分布型光ファイバセンサSに用いられるポンプ光(サブ光パルスおよびメイン光パルス)の他の態様について説明する。
【0152】
図12は、ポンプ光(サブ光パルスおよびメイン光パルス)のさらに他の構成および整合フィルタを説明するための図であり、図12(A)は、ポンプ光の構成を示し、図12(B)は、整合フィルタを示す図である。図13は、図12(A)に示す構成のポンプ光を生成するための、光パルス生成部の構成およびその動作を説明するための図である。
【0153】
図10(B)に示す構成のポンプ光は、メイン光パルスに時間的に先行する部分を持ちつつメイン光パルスと重なった部分を持ったサブ光パルスと、前記メイン光パルスとから構成されたが、図12(A)に示すように、ポンプ光は、メイン光パルスに時間的に先行する部分を持つことなくメイン光パルスと時間的に完全に一致するように重なったサブ光パルスと、前記メイン光パルスとから構成されてもよい。すなわち、サブ光パルスの立ち上がりタイミングおよびその立ち下がりタイミングは、メイン光パルスの立ち上がりタイミングおよびその立ち下がりタイミングとそれぞれ一致している。
【0154】
このような図12(A)に示す構成のポンプ光は、例えば、図13に示す構成の光パルス生成部3から生成することができる。図13に示す構成の光パルス生成部3では、その構成は、図4に示す光パルス生成部3および光スイッチ4の構成と一致し、その動作が、図4に示す光パルス生成部3の動作と異なるものである。このため、ここでは、その構成の説明を省略し、その動作について説明する。
【0155】
まず、図12(A)に示す構成のポンプ光を生成するために、LN強度変調器101は、サブ光パルスを生成するために、所定のレベルの光(漏れ光)が漏れ出す(射出する)ように、オンされている。
【0156】
第1光源1から射出された連続光L11(=L1)は、光カプラ2を介して光パルス生成部3のLN強度変調器101に入射される。連続光L11が入射されると、LN強度変調器101は、前記漏れ光を射出する。
【0157】
光パルス生成部3では、ポンプ光の生成タイミングで、メイン光パルスのパルス幅Dに相当するパルス幅Dの動作タイミングパルスがタイミングパルス発生器104から乗算器103へ出力され、直流電源102から入力された直流電圧と乗算され、パルス幅Dの直流電圧がLN強度変調器101の信号電極に印加される。これによって前記連続光L11は、LN強度変調器101で、パルス幅Dの光パルスが漏れ光に重畳された光パルスL12となって射出される。
【0158】
そして、光パルス生成部3では、メイン光パルスの生成タイミングで、メイン光パルスのパルス幅Dに相当する時間幅Dの間、疑似乱数がセル幅の時間タイミングで疑似乱数発生器114から乗算器113へ順次に出力され、直流電源112から入力された直流電圧と乗算され、メイン光パルスの生成タイミングから時間幅Dで、M系列バイナリ符号で変調された直流電圧がセル幅の時間タイミングでLN位相変調器111の信号電極に順次に印加される。これによって前記光パルスL12は、LN位相変調器111で、M系列バイナリ符号で変調された部分(メイン光パルスに対応する)が漏れ光に重畳された光パルスL13となって射出される。
【0159】
そして、EDFA121では、前記光パルスL13が所定の光強度となるまで増幅され、光パルスL14となって射出される。
【0160】
さらに、光パルス生成部3では、ポンプ光の生成タイミングに応じて、サブ光パルスのパルス幅Dsub(=メイン光パルスのパルス幅D)に相当するパルス幅Dsub(=D)の動作タイミングパルスがタイミングパルス発生器134から乗算器133へ出力され、直流電源132から入力された直流電圧と乗算され、パルス幅Dsub(=D)の直流電圧がLN強度変調器131の信号電極に印加される。これによって前記光パルスL14は、LN強度変調器131で、EDFA121で光パルスL14に付随した自然放出光等のノイズが除去されるとともに、光パルスL14の前後の漏れ光に起因する光(EDFA121で増幅された漏れ光)が除去され、パルス幅Dsub(=D)あって無変調であるサブ光パルスとパルス幅D(=Dsub)であってスペクトル拡散符号化されたメイン光パルスとから成り、サブ光パルス上にメイン光パルスが時間的に完全に一致して重なったポンプ光L15となって射出される。
【0161】
ここで、図10(B)や図12(A)に示すように、メイン光パルスとサブ光パルスとが時間的に重なった部分を持つポンプ光を用いる場合には、分布型光ファイバセンサS(S1、S2)は、ブリルアン・ゲイン・スペクトルV(t、ν)における成分V2、1(t、ν)に対応するブリルアン周波数シフトを時系列データとして複数求める場合に、現時点の成分V2、1(t、ν)を成分V2、1(t、ν)に対応する過去のブリルアン周波数シフトに基づいて所定の関数式を用いることによって推定し、上述した前記第1ブリルアンスペクトルから前記第2ブリルアンスペクトルおよび前記第3ブリルアンスペクトルを減算した結果から、さらに前記推定結果^V2、1(t、ν)を減算するように構成されてもよい。このように構成することによって、より高精度に検出用光ファイバ15に生じた歪みおよび/または温度を測定することが可能となる。
【0162】
このメイン光パルスとサブ光パルスとが時間的に重なった部分を持つポンプ光を用いる場合では、より正確には、ブリルアン・ゲイン・スペクトルV(t、ν)は、4つの成分から構成され、式13および式14(式14−1〜式14−4)によって表される。
【0163】
【数13】

【0164】
【数14】

【0165】
なお、式14−1、式14−2および式14−4は、それぞれ、上述の式7−1、式7−2および式7−3と同じである。
【0166】
そして、その点広がり関数ψ(t、ν)は、上述の式8によって表され、ポンプ光がメイン光パルスとサブ光パルスとから構成されることから、この点広がり関数ψ(t、ν)は、上述の式9および式10によって表される。なお、図14に、点広がり関数ψ(t、ν)の計算例を示す。図14(A)は、点広がり関数ψ1,1(t、ν)を示し、図14(B)は、点広がり関数ψ1,2(t、ν)を示し、図14(C)は、点広がり関数ψ2,1(t、ν)を示し、そして、図14(D)は、点広がり関数ψ2,2(t、ν)を示す。
【0167】
メイン光パルスとサブ光パルスから成るポンプ光と連続光のプローブ光とを検出用光ファイバ15に入射させた場合に、V1,1(t,ν)は、検出用光ファイバ15から射出される誘導ブリルアン散乱現象にかかる光のうち、メイン光パルスとプローブ光とにより励起されたフォノンにメイン光パルスが散乱されて生じる成分であり、V1,2(t,ν)は、前記場合に、検出用光ファイバ15から射出される誘導ブリルアン散乱現象にかかる光のうち、サブ光パルスとプローブ光とにより励起されたフォノンにメイン光パルスが散乱されて生じる成分であり、V2,1(t,ν)は、前記場合に、検出用光ファイバ15から射出される誘導ブリルアン散乱現象にかかる光のうち、メイン光パルスとプローブ光とにより励起されたフォノンにサブ光パルスが散乱されて生じる成分であり、そして、V2,2(t,ν)は、検出用光ファイバ15から射出される誘導ブリルアン散乱現象にかかる光のうち、サブ光パルスとプローブ光とにより励起されたフォノンにサブ光パルスが散乱されて生じる成分である。
【0168】
なお、このV1,1(t,ν)は、ポンプ光としてのメイン光パルスとプローブ光としての連続光とを検出用光ファイバ15に入射させ、この場合に検出用光ファイバ15から射出される誘導ブリルアン散乱現象にかかる光に基づくものであり、また、V2,2(t,ν)は、ポンプ光としてのサブ光パルスとプローブ光としての連続光とを検出用光ファイバ15に入射させ、この場合に検出用光ファイバ15から射出される誘導ブリルアン散乱現象にかかる光に基づくものである。
【0169】
例えば歪み区間の幅が比較的短くかつそれ以外では歪みがない場合には、[課題を解決するための手段]の欄で説明したように、ブリルアン・ゲイン・スペクトルV(t、ν)における成分V2,1(t、ν)は、メイン光パルスが疑似乱数によってスペクトル拡散されているため、フラットなスペクトルとなり、図11に示すように、高精度かつ高空間分解能で歪みが求められるが、より一般的には、歪みおよび/または温度を高精度かつ高空間分解能で求めるために、この成分V2,1(t、ν)を考慮する必要がある。この成分V2,1(t、ν)は、次のように考慮され、分布型光ファイバセンサS(S1、S2)は、メイン光パルスとサブ光パルスとが時間的に重なった部分を持つポンプ光を用いる場合に、より一般的に、歪みおよび/または温度を高精度かつ高空間分解能で求めること可能となる。
【0170】
この成分V2、1(t、ν)における点広がり関数ψ2,1(t、ν)は、式15のように表され、このうちのsに関する積分は、t<0である場合には、式16のように表される。ここで、t<0の場合には常にt−|τ|<0であることから、メイン光パルスがスペクトル拡散(パルス圧縮)される場合には、式16によって表される積分値は、0となる。したがって、この場合、点広がり関数ψ2,1(t、ν)は、0に近似される。このことは、図14(C)からも理解される。
【0171】
【数15】

【0172】
【数16】

【0173】
そして、この点広がり関数ψ2,1(t、ν)がt≧0の範囲においてのみ0ではない値を持つことは、式17が、ν(vs/2)、s≦tによって決定され、ν(vs/2)、s>tには、依存しないことを意味する。このことから、ブリルアン・ゲイン・スペクトルV(t、ν)における成分V2、1(t、ν)は、時間tにおいて、前記時間tまでのブリルアン周波数シフトν(s)、t−D≦s≦tから推定することが可能となる。すなわち、時間tにおけるブリルアン・ゲイン・スペクトルV(t、ν)における成分V2、1(t、ν)の推定値は、式18のように表され、メイン光パルスとサブ光パルスとが時間的に重なった部分を持つポンプ光を用いる場合におけるブリルアン・ゲイン・スペクトルV(t、ν)は、式19のように表され、ブリルアン・ゲイン・スペクトルV(t、ν)における成分V2,1(t、ν)の影響を略取り除くことが可能となる。
【0174】
【数17】

【0175】
【数18】

【0176】
【数19】

【0177】
なお、上記式中において、成分V2,1(t、ν)の推定値は、推定値であることを表す符号“^”をオーバラップさせた“V”で表記されている。
【0178】
上述の式18および式19によって表される処理は、例えば、次の信号処理部によって実現される。
【0179】
図15は、ブリルアン・ゲイン・スペクトルV(t、ν)における成分V2、1(t、ν)を取り除いてブリルアン・ゲイン・スペクトルV(t、ν)を求めるための信号処理部の構成を示すブロック図である。図15における添え字nは、時間を離散化してt=n△t(n=1、2、3、・・・)とした場合において、当該変数が時間tにおける値であることを表す。なお、時間刻み幅△tは、メイン光パスルを周波数拡散する場合における前記セル幅と同程度かそれ以下に設定される。
【0180】
この信号処理部41は、例えば、図15に示すように、減算部411と、ブリルアン周波数シフト推定部(BFS推定部)412と、ブリルアン周波数シフト推定値記憶部(BFS推定値記憶部)413と、V2,1成分推定部414とを備えて構成される。信号処理部41は、例えばブリルアン時間領域検出計14にさらに搭載され、メイン光パルスとサブ光パルスとが時間的に重なった部分を持つポンプ光を用いる場合に利用される。信号処理部41は、ハードウェア的に構成されてもよく、また、ソフトウェア的に構成されてもよい。ソフトウェア的に構成される場合には、信号処理部41は、ブリルアン時間領域検出計14に実装されたマイクロコンピュータ上に機能的に実現される。
【0181】
減算部411は、入力信号Y(ν)からV2,1成分推定部414からの出力信号^V2、1(tn−1、ν)を減算し、この減算結果X(ν)を出力する回路である。この入力信号Y(ν)は、上述した前記第1ブリルアンスペクトルから前記第2ブリルアンスペクトルおよび前記第3ブリルアンスペクトルを減算した信号である。すなわち、入力信号Y(ν)は、観測雑音(外乱雑音)をζ(ν)とすれば、式20のように表される。
【0182】
【数20】

【0183】
減算部411から出力される減算結果X(ν)は、観察雑音ζ(ν)や推定誤差が無ければ、ブリルアン・ゲイン・スペクトルV(t、ν)における成分V2,1(t、ν)となる。すなわち、減算部411から出力される減算結果X(ν)は、観察雑音ζ(ν)や推定誤差を含んだ、ブリルアン・ゲイン・スペクトルV(t、ν)における成分V2,1(t、ν)である。
【0184】
BFS推定部412は、減算部411から出力される減算結果X(ν)をブリルアン・ゲイン・スペクトルとして扱うことによって、減算結果X(ν)のピーク値からブリルアン周波数シフト(BFS)を求め、この求めたブリルアン周波数シフトを離散時間tにおけるブリルアン周波数シフトの推定値^νB,nとするものである。ここでは、記載の都合上、推定値であることを表す符号“^”は、“ν”の前に記載されているが、式中では、“^”は、“ν”にオーバラップさせて表記されている。以下、同様である。この推定では、減算結果X(ν)のピーク付近で減算結果X(ν)またはその対数に放物線を当てはめるようにすることによって、比較的精度よく推定することが可能となる。BFS推定部412の推定結果^νB,1、^νB,2、^νB,3、・・・、^νB,nは、信号処理部41の出力とされると共に、BFS推定値記憶部413へ出力される。
【0185】
BFS推定値記憶部413は、BFS推定部412から出力される推定結果^νB,1、^νB,2、^νB,3、・・・、^νB,nを記憶するものである。BFS推定値記憶部413は、これら記憶している全てのブリルアン周波数シフトの推定値^νB,1、^νB,2、^νB,3、・・・、^νB,nをV2,1成分推定部414へ出力する。
【0186】
2,1成分推定部414は、BFS推定値記憶部413に記憶されている離散時間tよりも前の時間に推定されたブリルアン周波数シフトの推定結果^νB,1、^νB,2、^νB,3、・・・、^νB,nに基づいて、ブリルアン・ゲイン・スペクトルV(t、ν)における成分V2,1(t、ν)を推定し、この推定したV2,1成分推定値^V2,1(t、ν)を減算部411へ出力するものである。この減算部411へ出力されるV2,1成分推定値^V2,1(t、ν)は、減算部411に入力されてくる次の入力信号Y(ν)に対し、1ステップ(=△t)の時間遅れ(Z−1)が生じており、離散時刻tn−1におけるV2,1成分推定値^V2,1(tn−1、ν)となる。より具体的には、V2,1成分推定部414は、式18を離散化した式21を演算することによって、ブリルアン・ゲイン・スペクトルV(t、ν)における成分V2,1(t、ν)の推定値^V2,1(t、ν)を求める。
【0187】
【数21】

【0188】
このV2,1成分推定値^V2,1(tn−1、ν)を用いると、減算部411の減算結果X(ν)は、式22のように表される。
【0189】
【数22】

【0190】
このように構成することによって、メイン光パルスとサブ光パルスとが時間的に重なった部分を持つポンプ光を用いる場合において、分布型光ファイバセンサS(S1、S2)は、より高精度に検出用光ファイバ15に生じた歪みおよび/または温度を測定することが可能となる。
【0191】
図16は、メイン光パルスとサブ光パルスとが時間的に重なった部分を持つポンプ光を用いる場合であって比較的短い区間幅に歪みを与えている場合における分布型光ファイバセンサの数値実験結果を示す図である。図16(A)および(B)は、図15に示す信号処理部41による信号処理を実行していない場合の結果を示し、図16(C)および(D)は、図15に示す信号処理部41による信号処理を実行している場合の結果を示す。図16(A)および(C)は、ブリルアン周波数シフトの推定値を示し、その横軸は、m単位で表す距離であり、その縦軸は、MHz単位で表すブリルアン周波数シフト値である。図16(B)および(D)は、その推定誤差を示し、その横軸は、m単位で表す距離であり、その縦軸は、MHz単位で表す誤差値である。CRBは、いわゆるクラメール・ラオの限界と呼ばれる理論的な性能限界であり、よい推定値ほど誤差がこの限界に近づくという性質を有している。
【0192】
図16に示す実験では、図5(A)等の場合と同様に、検出用光ファイバ15には、表1に示すように、z=100cmからz=101cmまでの第1区間、z=200cmからz=202cmまでの第2区間、z=300cmからz=303cmまでの第3区間、z=400cmからz=404cmまでの第4区間の各区間のそれぞれに、80MHzのブリルアン周波数シフトに対応する歪みが与えられ、これ以外の箇所では歪みが与えられていない(ブリルアン周波数シフトが0である)。
【0193】
図16(A)および(B)と図16(C)および(D)とを較べて見ると分かるように、区間幅2cmの第2区間および区間幅3cmの第3区間において、本信号処理部41による信号処理を実行した方がよい推定値が得られており、これら推定誤差は、略理論限界に近い。
【0194】
図17は、メイン光パルスとサブ光パルスとが時間的に重なった部分を持つポンプ光を用いる場合であって比較的長い区間幅に歪みを与えている場合における分布型光ファイバセンサの数値実験結果を示す図である。図17(A)および(B)は、図15に示す信号処理部41による信号処理を実行していない場合の結果を示し、図17(C)および(D)は、図15に示す信号処理部41による信号処理を実行している場合の結果を示す。図17(A)および(C)は、ブリルアン周波数シフトの推定値を示し、その横軸は、m単位で表す距離であり、その縦軸は、MHz単位で表すブリルアン周波数シフト値である。図17(B)および(D)は、その推定誤差を示し、その横軸は、m単位で表す距離であり、その縦軸は、MHz単位で表す誤差値である。
【0195】
図17に示す実験では、検出用光ファイバ15には、z=60cmからz=80cmまでの第11区間に10MHzのブリルアン周波数シフトに対応する歪みが与えられ、z=140cmからz=160cmまでの第12区間に20MHzのブリルアン周波数シフトに対応する歪みが与えられ、z=220cmからz=240cmまでの第13区間に30MHzのブリルアン周波数シフトに対応する歪みが与えられ、z=300cmからz=320cmまでの第14区間に40MHzのブリルアン周波数シフトに対応する歪みが与えられ、z=380cmからz=400cmまでの第15区間に50MHzのブリルアン周波数シフトに対応する歪みが与えられ、これ以外の箇所では歪みが与えられていない(ブリルアン周波数シフトが0である)。
【0196】
このような比較的長い区間幅(図17に示す例では20cm)である場合には、図17(A)および(B)と図16(C)および(D)とを較べて見ると分かるように、本信号処理部41による信号処理を実行しない場合には推定値に比較的大きな誤差が含まれているが、本信号処理部41による信号処理を実行した場合には、推定誤差がほとんどなく、よい推定値が得られている。
【0197】
また、これら図5(A)、図10(A)、図10(B)および図12(A)に示す構成の光パルス(サブ光パルスおよびメイン光パルス)は、上述のBOTDRの分布型光ファイバセンサS(S3)でも、BOTDAの分布型光ファイバセンサS(S1、S2)と同様に利用することが可能である。なお、BOTDRでは、上述したように、熱雑音によって励起されている音響フォノンを利用するため、サブ光パルスは、メイン光パルスに必ずしも時間的に先行する必要はない。もちろん、サブ光パルスがメイン光パルスよりも時間的に先行していてもよい。
【0198】
また、上述の実施形態におけるBOTDAの分布型光ファイバセンサS(S1、S2)は、ポンプ光(サブ光パルスおよびメイン光パルス)の周波数を固定し、プローブ光(連続光)の周波数を所定周波数範囲で掃引することによってブリルアンスペクトルを測定するものである。このため、第1光源1の発光素子は、必ずしも周波数可変半導体レーザである必要はなく、周波数固定の半導体レーザであってもよい。
【0199】
また、上述の実施形態におけるBOTDAの分布型光ファイバセンサS(S1、S2)では、ポンプ光(サブ光パルスおよびメイン光パルス)の周波数が固定され、プローブ光(連続光)の周波数が所定の周波数範囲で掃引されてブリルアンスペクトルが測定されたが、プローブ光の周波数が固定され、ポンプ光の周波数が所定の周波数範囲で掃引されてブリルアンスペクトルが測定されてもよい。
【0200】
また、上述の実施形態では、ブリルアンスペクトラム時間領域分析(BOTDA)とブリルアンスペクトラム時間領域反射分析(BOTDR)とが一体で実行可能なように分布型光ファイバセンサS(S1、S2、S3)が構成されたが、ブリルアンスペクトラム時間領域分析が実行可能な分布型光ファイバセンサS1、S2とブリルアンスペクトラム時間領域反射分析が実行可能な分布型光ファイバセンサS3とで別体で構成されても良い。
【0201】
また、本実施形態の分布型光ファイバセンサS(S1、S2、S3)では、セル幅は、任意の幅(秒)に設定することが可能である。前記実験では、セル幅は、0.1ns(ナノ秒)に設定されたが、例えばピコ秒オーダ等のさらに短く設定することが可能である。したがって、本実施形態の分布型光ファイバセンサSは、ミリメートルオーダの超高分解能を実現することが可能であり、光学部品の歪み、例えば光導波路の歪みを計測することに適用することも可能である。
【0202】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。従って、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0203】
S、S1、S2、S3 分布型光ファイバセンサ
3 光パルス生成部
13 制御処理部
14 ブリルアン時間領域検出計
111 LN位相変調器
114 疑似乱数発生器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導ブリルアン散乱現象を利用して歪みおよび/または温度を測定する分布型光ファイバセンサにおいて、
スペクトル拡散方式を用いたメイン光パルスと、無変調のサブ光パルスとを生成する光パルス光源と、
連続光を生成する連続光光源と、
前記メイン光パルスが前記サブ光パルスよりも時間的に先に入射されないように前記サブ光パルスおよび前記メイン光パルスが入射され、前記連続光が入射され、前記サブ光パルスおよび前記メイン光パルスと前記連続光との間で誘導ブリルアン散乱現象が生じる検出用光ファイバと、
前記検出用光ファイバから射出される光をフィルタリングすることによって前記誘導ブリルアン散乱現象にかかる光を検出する、前記スペクトル拡散方式に対応する整合フィルタと、
前記整合フィルタで検出された前記誘導ブリルアン散乱現象にかかる光に基づいてブリルアン・ゲイン・スペクトルまたはブリルアン・ロス・スペクトルを求め、この求めた前記ブリルアン・ゲイン・スペクトルまたはブリルアン・ロス・スペクトルに基づいて前記検出用光ファイバに生じた歪みおよび/または温度を測定するブリルアン時間領域検出計とを備えること
を特徴とする分布型光ファイバセンサ。
【請求項2】
前記サブ光パルスおよび前記メイン光パルスは、前記検出用光ファイバの一方端から入射され、
前記連続光は、前記検出用光ファイバの他方端から入射され、
前記ブリルアン時間領域検出計は、前記検出用光ファイバの一方端から射出された前記誘導ブリルアン散乱現象にかかる光に基づいてブリルアン・ゲイン・スペクトルまたはブリルアン・ロス・スペクトルを求め、求めた前記ブリルアン・ゲイン・スペクトルまたはブリルアン・ロス・スペクトルに基づいて前記検出用光ファイバに生じた歪みおよび/または温度を測定すること
を特徴とする請求項1に記載の分布型光ファイバセンサ。
【請求項3】
前記サブ光パルスおよび前記メイン光パルスは、前記検出用光ファイバの一方端から入射され、
前記連続光は、前記検出用光ファイバの一方端から入射され、
前記検出用光ファイバは、伝播する前記連続光をその他方端で反射し、
前記ブリルアン時間領域検出計は、前記検出用光ファイバの一方端から射出した前記誘導ブリルアン散乱現象にかかる光に基づいてブリルアン・ゲイン・スペクトルまたはブリルアン・ロス・スペクトルを求め、求めた前記ブリルアン・ゲイン・スペクトルまたはブリルアン・ロス・スペクトルに基づいて前記検出用光ファイバに生じた歪みおよび/または温度を測定すること
を特徴とする請求項1に記載の分布型光ファイバセンサ。
【請求項4】
前記ブリルアン時間領域検出計は、前記サブ光パルスおよび前記メイン光パルスと前記連続光とが前記検出用光ファイバに入射された場合に前記検出用光ファイバから射出される第1誘導ブリルアン散乱現象にかかる光に基づいて求められた第1ブリルアン・ゲイン・スペクトルまたは第1ブリルアン・ロス・スペクトルと、前記メイン光パルスと前記連続光とが前記検出用光ファイバに入射された場合に前記検出用光ファイバから射出される第2誘導ブリルアン散乱現象にかかる光に基づいて求められた第2ブリルアン・ゲイン・スペクトルまたは第2ブリルアン・ロス・スペクトル、および/または、前記サブ光パルスと前記連続光とが前記検出用光ファイバに入射された場合に前記検出用光ファイバから射出される第3誘導ブリルアン散乱現象にかかる光に基づいて求められた第3ブリルアン・ゲイン・スペクトルまたは第2ブリルアン・ロス・スペクトルと、の差を求め、この求めた差に基づいて前記検出用光ファイバに生じた歪みおよび/または温度を測定すること
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の分布型光ファイバセンサ。
【請求項5】
前記サブ光パルスは、前記メイン光パルスに対して時間的に先行して前記検出用光ファイバに入射されること
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の分布型光ファイバセンサ。
【請求項6】
前記メイン光パルスと前記サブ光パルスとは、時間的に重なった部分が存在すること
を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の分布型光ファイバセンサ。
【請求項7】
自然散乱によるブリルアン散乱現象を利用して歪みおよび/または温度を測定する分布型光ファイバセンサにおいて、
スペクトル拡散方式を用いたメイン光パルスと、無変調のサブ光パルスとを生成する光パルス光源と、
前記サブ光パルスおよび前記メイン光パルスが入射され、前記サブ光パルスおよび前記メイン光パルスが熱雑音による音波によって自然ブリルアン散乱現象が生じる検出用光ファイバと、
前記検出用光ファイバから射出される光をフィルタリングすることによって前記自然ブリルアン散乱現象にかかる光を検出する、前記スペクトル拡散方式に対応する整合フィルタと、
前記整合フィルタで検出された前記自然ブリルアン散乱現象にかかる光に基づいてブリルアン・ゲイン・スペクトルを求め、この求めた前記ブリルアン・ゲイン・スペクトルに基づいて前記検出用光ファイバに生じた歪みおよび/または温度を測定するブリルアン時間領域検出計とを備えること
を特徴とする分布型光ファイバセンサ。
【請求項8】
前記ブリルアン時間領域検出計は、前記サブ光パルスおよび前記メイン光パルスが前記検出用光ファイバに入射された場合に前記検出用光ファイバから射出される第1自然ブリルアン散乱現象にかかる光に基づいて求められた第1ブリルアン・ゲイン・スペクトルと、前記メイン光パルスが前記検出用光ファイバに入射された場合に前記検出用光ファイバから射出される第2自然ブリルアン散乱現象にかかる光に基づいて求められた第2ブリルアン・ゲイン・スペクトル、および/または、前記サブ光パルスが前記検出用光ファイバに入射された場合に前記検出用光ファイバから射出される第3自然ブリルアン散乱現象にかかる光に基づいて求められた第3ブリルアン・ゲイン・スペクトルと、の差を求め、この求めた差に基づいて前記検出用光ファイバに生じた歪みおよび/または温度を測定すること
を特徴とする請求項7に記載の分布型光ファイバセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図12】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図9】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−8400(P2010−8400A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41162(P2009−41162)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(303021609)ニューブレクス株式会社 (23)
【Fターム(参考)】