説明

分析装置および容器

【課題】樹脂製の反応容器を用いた場合であっても紫外域の光の被曝に起因する反応容器の光劣化を低減した分析装置および容器を提供すること。
【解決手段】この発明にかかる分析装置は、容器に収容された検体の光学的特性を測定する分析装置において、測定に使用される波長を含む光を反応容器21に発する光源19Aと、測定に使用される波長の光が照射される反応容器21の外壁面と光源19Aとの間に設けられ、反応容器21の劣化原因となる波長の光を除去する紫外カットフィルタ19Bと、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、容器に収容された検体の光学的特性を測定する分析装置および検体の光学的特性測定のために使用される波長を含む光が照射される容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液や体液等の検体を自動的に分析する装置として、試薬が分注された反応容器に検体を加え、反応容器内の試薬と検体の間で生じた反応を光学的に検出する分析装置が知られている(特許文献1参照)。このような分析装置では、検体を収容した反応容器に、紫外域から可視帯域の光を照射後、反応容器内の液体を通過した所定波長の光の光量をもとに検体の分析を行っている。また、このような分析装置では、合成石英ガラスあるいは環状オレフィン系などの樹脂を材料として加工された反応容器を、分析と洗浄を繰り返して複数回使用している。
【0003】
【特許文献1】特開平5−164763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、人体への負担軽減や装置の運用コスト低減を目的として、反応容器を小型化し、反応容器への検体および試薬の分注量を低減することが求められている。ここで、反応容器を小型化した場合、反応容器における光照射面積が減少するため、測定用の光として、より断面積の小さな光束の光を反応容器に照射する必要がある。また、反応容器を通過した光を受光する受光素子の感度確保のため受光素子が受光する光量を従来と同等以上とする必要がある。このため、反応容器を通過する単位面積あたりの光量が多くなり、これにともない、光源から出力される光による紫外域の光の単位面積当たりのエネルギー量も増加することとなる。
【0005】
しかしながら、樹脂材料においては、紫外域の光にさらされた場合、光透過率の変化が生じることが知られている。したがって、樹脂製の反応容器を用いた場合、紫外域にさらされることによって光透過率の経時的減衰を伴う光劣化が起こる。上述したように反応容器を小型化した場合、反応容器を通過する紫外域の光の単位面積当たりのエネルギー量が増加するため、反応容器の紫外域の光の被曝量が増すこととなり、反応容器の光劣化の進行によって測光部の受光素子への光量が減衰し測定精度が劣化するという問題があった。
【0006】
本発明は、上記した従来技術の欠点に鑑みてなされたものであり、樹脂製の容器を用いた場合であっても、紫外域の光の被曝に起因する反応容器の光劣化を低減した分析装置および容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる分析装置は、容器に収容された検体の光学的特性を測定する分析装置において、測定に使用される波長を含む光を前記容器へ向けて発する光源と、前記測定に使用される波長の光が照射される前記容器の外壁面と前記光源との間に設けられ、前記容器の光学的特性の劣化原因となる波長の光を除去する除去手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、この発明にかかる分析装置は、前記除去手段は、紫外域の光を除去することを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかる分析装置は、前記除去手段は、前記測定に使用される波長よりも短い波長の光を除去することを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかる分析装置は、前記除去手段は、前記測定に使用される波長以外の光を除去することを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかる分析装置は、前記除去手段は、前記光源と前記容器との間に設けられたフィルタであることを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかる分析装置は、前記除去手段は、前記容器の外壁面上に設けられた被膜であることを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかる分析装置は、前記被膜は、少なくとも前記容器に光が照射される領域に設けられることを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる分析装置は、前記光源が発した光を前記容器に導く光学素子を有する導光光学系をさらに備え、前記除去手段は、前記光学素子表面に設けられた被膜であることを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかる分析装置は、前記光学素子は、レンズまたはミラーであることを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかる分析装置は、前記光源は、紫外域を含む波長の光を発することを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる分析装置は、前記容器の材質は、樹脂であることを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる容器は、検体の光学的特性測定のために使用される波長を含む光が照射される容器において、前記光が照射される壁面と、前記壁面外側に形成され、前記容器の光学的特性の劣化原因となる波長の光を除去する被膜と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、容器の劣化原因となる波長の光を除去する除去手段を容器の外壁面と光源との間に設けることによって、劣化原因となる波長の光を除去した光を容器本体に入射できるため、樹脂製の容器を用いた場合であっても容器における光劣化を低減することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態である分析装置について説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0021】
(実施の形態1)
まず、実施の形態1について説明する。図1は、本実施の形態1にかかる分析装置1の構成を示す模式図である。図1に示すように、分析装置1は、分析対象である検体および試薬を反応容器21にそれぞれ分注し、反応容器21内で生じる反応を光学的に測定する測定機構2と、測定機構2を含む分析装置1全体の制御を行うとともに測定機構2における測定結果の分析を行う制御機構3とを備える。分析装置1は、これらの二つの機構が連携することによって複数の検体の生化学的、免疫学的あるいは遺伝学的な分析を自動的に行う。また、分析装置1において使用される反応容器21の材質は、環状オレフィン系やアクリル系などの樹脂である。
【0022】
測定機構2は、大別して検体移送部11、検体分注機構12、反応テーブル13、試薬庫14、読取部16、試薬分注機構17、攪拌部18、測光部19および洗浄部20を備える。また、制御機構3は、制御部31、入力部32、分析部33、記憶部34および出力部35を備える。測定機構2および制御機構3が備えるこれらの各部は、制御部31に電気的に接続されている。
【0023】
検体移送部11は、血液や尿等、液体である検体を収容した複数の検体容器11aを保持し、図中の矢印方向に順次移送する複数の検体ラック11bを備える。検体移送部11上の所定位置に移送された検体容器11a内の検体は、検体分注機構12によって、反応テーブル13上に配列して搬送される反応容器21に分注される。
【0024】
検体分注機構12は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行うアーム12aを備える。このアーム12aの先端部には、検体の吸引および吐出を行うプローブが取り付けられている。検体分注機構12は、図示しない吸排シリンジまたは圧電素子を用いた吸排機構を備える。検体分注機構12は、上述した検体移送部11上の所定位置に移送された検体容器11aの中からプローブによって検体を吸引し、アーム12aを図中時計回りに旋回させ、反応容器21に検体を吐出して分注を行う。
【0025】
反応テーブル13は、反応容器21への検体や試薬の分注、反応容器21の攪拌、洗浄または測光を行うために反応容器21を所定の位置まで移送する。この反応テーブル13は、制御部31の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、反応テーブル13の中心を通る鉛直線を回転軸として回動自在である。反応テーブル13の上方と下方には、図示しない開閉自在な蓋と恒温槽がそれぞれ設けられている。
【0026】
試薬庫14は、反応容器21内に分注される試薬が収容された試薬容器15を複数収納できる。試薬庫14には、複数の収納室が配置されており、各収納室には試薬容器15が着脱自在に収納される。試薬庫14は、制御部31の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、試薬庫14の中心を通る鉛直線を回転軸として時計回りまたは反時計回りに回動自在であり、所望の試薬容器15を試薬分注機構17による試薬吸引位置まで移送する。試薬庫14の上方には、開閉自在な蓋(図示せず)が設けられている。また、試薬庫14の下方には、恒温槽が設けられている。このため、試薬庫14内に試薬容器15が収納され、蓋が閉じられたときに、試薬容器15内に収容された試薬を恒温状態に保ち、試薬容器15内に収容された試薬の蒸発や変性を抑制することができる。
【0027】
試薬容器15の側面部には、試薬容器15に収容された試薬に関する試薬情報が記録された記録媒体が付されている。記録媒体は、符号化された各種の情報を表示しており、光学的に読み取られる。試薬庫14の外周部には、この記録媒体を光学的に読み取る読取部16が設けられている。読取部16は、記録媒体に対して赤外光または可視光を発し、記録媒体からの反射光を処理することによって、記録媒体の情報を読み取る。また、読取部16は、記録媒体を撮像処理し、撮像処理によって得られた画像情報を解読して、記録媒体の情報を取得してもよい。
【0028】
試薬分注機構17は、検体分注機構12と同様に、検体の吸引および吐出を行うプローブが先端部に取り付けられたアーム17aを備える。アーム17aは、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行う。試薬分注機構17は、試薬庫14上の所定位置に移動された試薬容器15内の試薬をプローブによって吸引し、アーム17aを図中時計回りに旋回させ、反応テーブル13上の所定位置に搬送された反応容器21に分注する。攪拌部18は、反応容器21に分注された検体と試薬との攪拌を行い、反応を促進させる。
【0029】
測光部19は、所定の測光位置に搬送された反応容器21に光を照射し、反応容器21内の液体を透過した光を受光して透過光量の測定を行う。この測光部19による測定結果は、制御部31に出力され、分析部33において分析される。
【0030】
洗浄部20は、図示しないノズルによって、測光部19による測定が終了した反応容器21内の混合液を吸引して排出するとともに、洗剤や洗浄水等の洗浄液を注入および吸引することで洗浄を行う。反応容器21は、通常は傷や汚れの発生などを考慮した所定の交換時期が経過するまで分析と洗浄を繰り返して複数回使用される。
【0031】
つぎに、制御機構3について説明する。制御部31は、CPU等を用いて構成され、分析装置1の各部の処理および動作を制御する。制御部31は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行い、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行う。入力部32は、キーボード、マウス等を用いて構成され、検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等を外部から取得する。分析部33は、測光部19から取得した測定結果に基づいて吸光度等を演算し、検体の成分分析等を行う。記憶部34は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、分析装置1が処理を実行する際にその処理にかかわる各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを用いて構成され、検体の分析結果等を含む諸情報を記憶する。記憶部34は、CD−ROM、DVD−ROM、PCカード等の記憶媒体に記憶された情報を読み取ることができる補助記憶装置を備えてもよい。出力部35は、ディスプレイ、プリンタ、通信機構等を用いて構成され、検体の分析結果を含む諸情報を出力するほか、図示しない通信ネットワークを介して所定の形式にしたがった情報を図示しない外部装置に出力してもよい。
【0032】
以上のように構成された分析装置1では、列をなして順次搬送される複数の反応容器21に対して、検体分注機構12が検体容器11a中の検体を分注し、試薬分注機構17が試薬容器15中の試薬を分注した後、測光部19が検体と試薬とを反応させた状態の試料の分光測定を行い、この測定結果を分析部33が分析することで、検体の成分分析等が自動的に行われる。また、洗浄部20が測光部19による測定が終了した後に搬送される反応容器21を搬送させながら洗浄することで、一連の分析動作が連続して繰り返し行われる。
【0033】
つぎに、図2を参照して図1に示す測光部19について説明する。図2は、図1に示す測光部19における要部構成を説明する図である。図2に示すように、測光部19は、測定に使用される波長を含む光を反応容器21に発する光源19Aと、光源19Aが発した光を反応容器21に導く導光光学系を構成し反応容器21に光源19Aが発した光を集光するレンズ19C、19Dと、反応容器21を通過した光を受光器19Gに対して集光するレンズ19E,19Fと、反応容器21を通過した光を受光する受光器19Gとを有する。光源19Aは、フィラメントランプ、アークランプ、LED(Light-Emitting Diode)などによって構成され、紫外域を含む波長の光を発する。受光器19Gは、レンズ19E,19Fによって集光された光を絞るピンホール19Hと、ピンホール19Hから出力された光を所定の各波長に分光するグレーティング19Iと、グレーティング19Iによって分光された各波長の光を受光する受光素子19Jとを有する。受光素子19Jは、たとえば、所定の波長の光を受光し受光した光の光量を示す電気信号を出力するフォトダイオードを1次元または2次元に配列したフォトダイオードアレイによって構成される。
【0034】
図2に示すように、測光部19は、測定に使用される波長の光が照射される容器21の外壁面と光源19Aとの間に設けられた紫外カットフィルタ19Bをさらに備える。紫外カットフィルタ19Bは、樹脂製の反応容器21の劣化原因となる波長の光であって、測定に使用される波長以外の紫外域の光を除去する。ここで、主に紫外カットフィルタ19Bは、測定に使用される波長よりも短い波長の光を除去する。たとえば、分析装置1が測定に使用する最短波長が340nmである場合、紫外カットフィルタ19Bは、340nm未満の波長を除去し、入射した光のうち340nm以上の光を通過させる。このため、340nm以上の波長の光が反応容器21に照射されることとなる。したがって、紫外カットフィルタ19Bを設けた場合であっても測定に使用する波長を反応容器21に照射することができるため、分析装置1は必要な測定を行うことができる。紫外カットフィルタ19Bは、たとえば、半導体や金属の微粒子を吸収物質として分散させたガラスを材料として形成される。
【0035】
ところで、樹脂製の反応容器を用いた場合、紫外域の光にさらされることによって、光線透過率の経時的減衰が発生する光劣化が生じる。図3に、紫外カットフィルタを設けていない従来の分析装置における測光部と同様の構成を有する光学系において、樹脂製の反応容器に各波長の光を実際に連続照射した場合の光透過率の変化を示す。図3の横軸は、反応容器に対する光の連続照射時間を示し、図3に示す縦軸は、反応容器における各波長の光の透過率変化を示す。図3は、実験のために選択した340nm、380nm、410nm、450nm、520nm、600nm、700nmおよび800nmについて示す。図3に示す結果は、分析装置に搭載された樹脂製反応容器の交換時期までの間に反応容器に測定に用いられる各波長の光が照射される全照射時間を分析装置の稼働率をもとに算出し、全照射時間として算出した13時間の間、反応容器に対して各波長の光を実際に照射することによって求めたものである。また、図3に示す結果は、光源として300〜800nmの波長の光を発するXeランプと、上述した340nm、380nm、410nm、450nm、520nm、600nm、700nmおよび800nmの波長の光をそれぞれ受光するフォトダイオードとを用いて求めたものである。また、Xeランプが発する光量は、反応容器を小型化した場合に対応させたものである。
【0036】
図3に示すように、紫外カットフィルタを設けていない場合、反応容器においては、600〜800nmの波長の光においては大きな透過率の減衰が認められないものの、520nm以下の波長の光においては透過率の減衰が認められる。特に、波長が短い光については、透過率の大きな減衰が認められる。具体的には、340nmの光の透過率は1時間経過時にもかかわらず当初の透過率の7割以下にまで減少しており、13時間経過時においては当初の透過率の3割程度まで減少している。また、380nmの光の透過率は、13時間経過時においては、当初の透過率の5割程度までに減少している。さらに、410nmの光の透過率についても13時間経過時において当初の透過率の7割以下にまで減少し、450nmの光の透過率についても13時間経過時において当初の透過率の9割以下に減少している。このように、紫外カットフィルタを設けていない場合、紫外域のみならず可視域の光についても反応容器における透過率の減衰が認められる。
【0037】
ここで、分析装置における測定精度を確保するためには、交換時期経過時における反応容器は透過率減衰に変化のないことが望ましい。しかしながら、図3に示すように、紫外カットフィルタを持たない従来の構成のまま紫外域の光量を増大させると、反応容器において、紫外域において顕著な透過率減衰が生じることに加え、可視帯域においても10%以上の透過率減衰が生じていた。このため、従来の分析装置においては、反応容器の小型化に対応させて受光素子の受け取る光量をそのままに、光束の断面積を小さくした場合、光源から出力される光に含まれる紫外域の光の単位面積当たりのエネルギー量増加に起因した反応容器の光劣化の進行が無視できないものとなる。したがって、従来の分析装置においては、測定精度の劣化や受光素子における感度不足が生じることとなり、反応容器の小型化が困難であった。
【0038】
これに対し、分析装置1においては、光源19Aと反応容器21との間に、測定に使用される最短波長未満の紫外域の光を除去する紫外カットフィルタ19Bを設けて、反応容器21の劣化原因となる波長の光を除いた光を反応容器21に照射している。図4に、図3に示す場合と同様の光学系を用い、さらに光源と反応容器との間に紫外カットフィルタ19Bを設けた場合における反応容器の光の透過率変化を調べた結果を示す。この紫外カットフィルタ19Bとして、325nm以下の波長の光を除去するフィルタを用いている。
【0039】
図4に示すように、紫外カットフィルタ19Bを設けることによって、全ての波長の光において反応容器の光透過率の減衰が図3に示した場合と比較して抑制されていることがわかる。さらに、図4における透過率変化0.9〜1.1の範囲の拡大図を図5に示す。図5に示すように、紫外カットフィルタ19Bを設けた場合、600〜800nmの波長の光とともに410nmおよび450nmの可視域の光においても反応容器の透過率の減衰が2%以下に抑制されている。そして、図3において透過率減衰が顕著であった340nmおよび380nmの紫外域の光においても反応容器における透過率の減衰が4%以下に抑制されている。この結果、325nm以下の波長の光を除去する紫外カットフィルタ19Bを設けることによって、測定に使用される最短波長である340nm光の反応容器への照射を確保するとともに測定に使用される全ての波長光について反応容器における透過率の減衰を従来の構成に比べて抑制でき、分析装置1の測定精度を確保することが可能になる。
【0040】
したがって、紫外カットフィルタ19Bを設けた分析装置1においては、反応容器の小型化に対応させて受光素子の受け取る光の光量をそのままに光源から出力される光の断面積を小さくした場合であっても、光源から出力される光に含まれる紫外域の光の被曝に起因する反応容器の光劣化を低減することができる。この結果、分析装置1においては、反応容器の小型化が可能になり、反応容器への検体および試薬の分注量を低減できるため、被験者の負担軽減や装置の運用コスト低減を実現することができる。
【0041】
なお、実施の形態1においては、紫外カットフィルタ19Bを光源19Aとレンズ19Cとの間に設けた場合について説明したが、これに限らない。紫外カットフィルタ19Bは、レンズ19Cとレンズ19Dとの間、あるいは、レンズ19Dと反応容器21との間に設けてもよい。紫外カットフィルタ19Bを光源19Aと反応容器21との間に設けることによって、光源19Aから発せられる光の中から容器の劣化原因となる紫外域の光を除去した光を反応容器21に照射できるためである。
【0042】
また、実施の形態1においては、紫外カットフィルタ19Bを複数設けて、紫外域の光の除去を確実に行ってもよい。この場合、除去波長範囲が異なる複数の紫外カットフィルタ19Bを組み合わせて、光源19Aから発せられる光の中から容器の劣化原因となる紫外域の光を除去して反応容器21に照射してもよい。
【0043】
(実施の形態2)
つぎに、実施の形態2について説明する。図6は、実施の形態2にかかる分析装置における測光部の要部構成を説明する図である。なお、実施の形態2にかかる分析装置は、図1に示す分析装置1と同様の構成を有する。
【0044】
図6に示すように、実施の形態2にかかる分析装置においては、図2に示す反応容器21に代えて、反応容器の劣化原因となる波長の光を除去する被膜が外壁面上に設けられた反応容器221を使用する。また、実施の形態2における測光部は、図2に示す紫外カットフィルタ19Bを削除した構成を有する。
【0045】
つぎに、図6に示す反応容器221について詳細に説明する。図7は、図6に示す反応容器の斜視図である。図7に示すように、反応容器221は光源19Aが発する光が照射される壁面を有し、反応容器221の外壁面上には、反応容器の劣化原因となる波長の光を除去する除去膜219Bが設けられている。この除去膜219Bは、光源19Aから発せられた光Liが照射される壁面の外側の面のほぼ全面に設けられている。除去膜219Bは、図2に示す紫外カットフィルタ19Bと同様に、測定に使用される波長以外の紫外域の光を除去する。ここで、主に除去膜219Bは、測定に使用される波長よりも短い波長の光を除去する。たとえば、分析装置1が測定に使用する最短波長が340nmである場合、除去膜219Bは、入射光Liから340nm未満の波長を除去する。このため、反応容器221本体には、340nm以上の光のみが入射されることとなり、反応容器221からは、反応容器221を通過した340nm以上の光Loが出射する。この除去膜219Bは、たとえば、誘電体や金属を成分とする多層膜として形成される。
【0046】
このように、実施の形態2においては、容器の劣化原因となる波長の光を除去する被膜を反応容器の外壁面上に設けることによって、劣化原因となる波長の光を除去した光を反応容器本体に入射している。この結果、実施の形態2にかかる分析装置においては、反応容器本体が紫外域の光にさらされることがないため、反応容器における光劣化を低減することができ、実施の形態1と同様の効果を奏することが可能になる。
【0047】
なお、本実施の形態2として、光源19Aから発せられた光Liが照射される外壁面上のほぼ全面に除去膜219Bを設けた場合について説明したが、これに限らず、図8の反応容器221aに示すように、光が照射される領域に対応させて設けてもよい。この場合、照射領域のばらつきおよび反応テーブル13の駆動速度などを考慮して、光Liの照射領域に所定の余裕を加えた領域に、除去膜219Bと同様の機能を有する除去膜219Baを設けているが、少なくとも光Liが照射される領域に除去膜219Baが設けてあればよい。この場合も、図7に示す反応容器221と同様に、反応容器221a本体に劣化原因となる波長の光を除去した光を入射して反応容器本体が紫外域の光にさらされることを防止している。
【0048】
(実施の形態3)
つぎに、実施の形態3について説明する。図9は、実施の形態3にかかる分析装置における測光部の要部構成を説明する図である。なお、実施の形態3にかかる分析装置は、図1に示す分析装置1と同様の構成を有する。
【0049】
図9に示すように、実施の形態3にかかる分析装置においては、図2に示すレンズ19Cに代えて、反応容器21の劣化原因となる波長の光を除去する除去膜319Bが表面に設けられたレンズ319Cを使用する。また、実施の形態3における測光部は、図2に示す紫外カットフィルタ19Bを削除した構成を有する。
【0050】
図9に示す除去膜319Bは、レンズ319Cにおける光源19A側の面Sicのほぼ全面に設けられている。除去膜319Bは、図7に示す除去膜219Bと同様の機能を有し、たとえば分析装置1が測定に使用する最短波長が340nmである場合、除去膜319Bは、入射光Liから340nm未満の波長を除去する。このため、レンズ319Cから出力される光には340nm未満の波長が含まれておらず、反応容器21本体には340nm以上の光のみが入射されることとなる。除去膜319Bは、たとえば、誘電体や金属を成分とする多層膜として形成される。
【0051】
このように、実施の形態3においては、容器の劣化原因となる波長の光を除去する被膜を、光源19Aと反応容器21との間に備えられた導光光学系を構成する光学素子の表面上に設けることによって、劣化原因となる波長の光を除去した光を反応容器本体に入射している。この結果、実施の形態3にかかる分析装置においては、反応容器本体が紫外域の光にさらされることがないため、反応容器における光劣化を低減することができ、実施の形態1と同様の効果を奏することが可能になる。
【0052】
なお、本実施の形態3として、除去膜319Bをレンズ319Cの光源19A側の面Sic上に設けた場合について説明したが、除去膜319Bをレンズ319Cの反応容器21側の面Soc上に設けてもよい。また、除去膜319Bを、レンズ19Dの光源19A側の面Sid上あるいは反応容器21側の面Sod上に設けてもよい。導光光学系を構成するいずれかの光学素子上に除去膜319Bを設けることによって、反応容器21の劣化原因となる光を除去できるためである。もちろん、レンズ319Bの面Sic、面Socおよびレンズ19Dの面Sid、面Sodのいずれか複数の面上に除去膜319Bを設けて、紫外域の光の除去を確実に行ってもよい。また、除去波長範囲が異なる複数の除去膜319Bを組み合わせて、光源19Aが発する光の中から容器の劣化原因となる紫外域の光を除去して反応容器21に照射してもよい。
【0053】
また、図10に示すように、光源19Aから照射された光を反応容器21に対して反射するミラー319Kの反射面上に除去膜319Bと同様の機能を有する除去膜319Baを設けてもよい。また、光源19Aと反応容器21との間にグレーティングを設ける場合には、このグレーティングの表面上に除去膜319Bを設けてもよい。このように、導光光学系を構成するいずれかの光学素子表面に除去膜319B,319Baを設けることによって、光源19Aが発する光の中から容器の劣化原因となる紫外域の光を除去した光を反応容器21に照射できる。
【0054】
(実施の形態4)
つぎに、実施の形態4について説明する。図11は、実施の形態4にかかる分析装置における測光部の要部構成を説明する図である。なお、実施の形態4にかかる分析装置は、図1に示す分析装置1と同様の構成を有する。
【0055】
図11に示すように、実施の形態4にかかる分析装置においては、紫外域の光の出力量が低い光源419Aを用いる。この場合、光源419Aに加え、紫外域の光を発する紫外LEDなどによって構成された光源419aを設け、紫外域の測定波長の光の光量を補充している。また、光源419Aから出力された光と光源419aから出力された光を合成する合成用ミラー419Kを設けて、光源419A,419aから発せられた光を反応容器21に対して照射する。合成用ミラー419Kは、光源419Aが出力した光を透過し、光源419aが出力した光を反射することによって、光源419Aから出力された光と光源419aから出力された光とを合成している。また、実施の形態4では、紫外域の光を発する光源419aと合成用ミラー419Kとの間に、紫外カットフィルタ19Bを設け、光源419aが発した光の中から反応容器21の劣化原因となる波長の光を除去している。
【0056】
このように、実施の形態4においては、あらかじめ紫外域の光の出力量が低い光源を利用し、紫外域の波長の光を測定する場合には、LED等によってその波長の光の光量だけを補ってやることによって、反応容器に照射される紫外域の光の光量をあらかじめ少なくしている。さらに、光源を複数設けた場合も紫外域の光を発する光源と反応容器との間に紫外カットフィルタ19Bを設けることによって、劣化原因となる波長の光を除去した光を反応容器本体に入射できるため、実施の形態1と同様の効果を奏することが可能になる。
【0057】
(実施の形態5)
つぎに、実施の形態5について説明する。図12は、実施の形態5にかかる分析装置における測光部の要部構成を説明する図である。なお、実施の形態5にかかる分析装置は、図1に示す分析装置1と同様の構成を有する。
【0058】
図12に示すように、実施の形態5にかかる分析装置においては、レンズではなく反射ミラーを用いた導光光学系を用いる。光源19Aが発した光は、ミラー519C,519Dによって反射され、ピンホール519Eによって絞られた後、ミラー519F,519Gによって反射されて、反応容器21に照射される。そして、反応容器21を通過した光は、ミラー519H,519Iによって反射されて、受光器19Gに出力される。この場合、図11に示すように、光源19Aとミラー519Cとの間に紫外カットフィルタ19Bを設け、光源19Aが発した光の中から反応容器21の劣化原因となる波長の光を除去している。
【0059】
このように、実施の形態5においては、導光光学系として複数の反射ミラーを用いた場合も同様に、光源19Aと反応容器21との間に紫外カットフィルタ19Bを設けることによって、劣化原因となる波長の光を除去した光を反応容器本体に入射できるため、実施の形態1と同様の効果を奏することが可能になる。反射系の導光光学系を用いる場合には紫外域の光を多く発する光源19Aを用いることが多いため、レンズなどを有する集光系の導光光学系を用いる場合と比較し、紫外カットフィルタ19Bを設けることによって、さらに効果的に反応容器21の光劣化を低減することができる。
【0060】
なお、紫外カットフィルタ19Bは、光源19Aとミラー519Cとの間に限らず、光源19Aと反応容器21との間における光路上であれば、いずれの位置に設けてもよい。また、実施の形態5として、紫外カットフィルタ19Bを設けた場合について説明したが、これに限らず、導光光学系を構成する光学素子の表面上に被膜319B,319Baを設けてもよい。紫外カットフィルタ19Bおよび被膜319B,319Baは、導光光学系の種別によらず、光源19Aと反応容器21との間における光路上であれば、いずれの位置に設けてもよい。紫外カットフィルタ19Bの配置位置が光源19Aと反応容器21の外壁面との間における光路上であれば、光源19Aが発する光から反応容器21の劣化原因となる紫外域の光を除去した光を応容器21に照射できるためである。
【0061】
また、本発明においては、実施の形態1〜5において説明した紫外カットフィルタ19B、除去膜218B,218Ba,318Bを複数組み合わせることによって、紫外域の光の除去を確実に行ってもよい。
【0062】
また、実施の形態1〜5において使用する反応容器は、底無し容器であってもよい。また、実施の形態1〜5において使用する反応容器は、液体を乗せる板であってもよい。この場合も、光源19Aと反応容器との間に紫外カットフィルタ19Bあるいは除去膜219B,219Ba,319Bを設けることによって、光源19Aが発する光の中から反応容器の劣化原因となる紫外域の光を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実施の形態1にかかる分析装置の要部構成を示す模式図である。
【図2】図1に示す測光部の要部構成を説明する図である。
【図3】従来技術における反応容器の光透過率の時間変化を示す図である。
【図4】本発明における反応容器の光透過率の時間変化を示す図である。
【図5】本発明における反応容器の光透過率の時間変化を示す図である。
【図6】実施の形態2における測光部の要部構成を説明する図である。
【図7】図6に示す反応容器の斜視図である。
【図8】図6に示す反応容器の他の例の斜視図である。
【図9】実施の形態3における測光部の要部構成を説明する図である。
【図10】実施の形態3における測光部の要部構成の他の例を説明する図である。
【図11】実施の形態4における測光部の要部構成を説明する図である。
【図12】実施の形態5における測光部の要部構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0064】
1 分析装置
2 測定機構
3 制御機構
11 検体移送部
11a 検体容器
11b 検体ラック
12 検体分注機構
12a,17a アーム
13 反応テーブル
14 試薬庫
15 試薬容器
16 読取部
17 試薬分注機構
18 攪拌部
19 測光部
19A,419A,419a 光源
19B 紫外カットフィルタ
19C〜19F,319C レンズ
19G 分光器
19H,519E ピンホール
19I グレーティング
19J 受光素子
20 洗浄部
21,221,221Ba 反応容器
31 制御部
32 入力部
33 分析部
34 記憶部
35 出力部
219B,219Ba,319B,319Ba 除去膜
319K,519C,519D,519F〜519I ミラー
419K 合成用ミラー
519E ピンホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に収容された検体の光学的特性を測定する分析装置において、
測定に使用される波長を含む光を前記容器へ向けて発する光源と、
前記測定に使用される波長の光が照射される前記容器の外壁面と前記光源との間に設けられ、前記容器の光学的特性の劣化原因となる波長の光を除去する除去手段と、
を備えたことを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記除去手段は、紫外域の光を除去することを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記除去手段は、前記測定に使用される波長よりも短い波長の光を除去することを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項4】
前記除去手段は、前記測定に使用される波長以外の光を除去することを特徴とする請求項3に記載の分析装置。
【請求項5】
前記除去手段は、前記光源と前記容器との間に設けられたフィルタであることを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項6】
前記除去手段は、前記容器の外壁面上に設けられた被膜であることを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項7】
前記被膜は、少なくとも前記容器に光が照射される領域に設けられることを特徴とする請求項6に記載の分析装置。
【請求項8】
前記光源が発した光を前記容器に導く光学素子を有する導光光学系をさらに備え、
前記除去手段は、前記光学素子表面に設けられた被膜であることを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項9】
前記光学素子は、レンズまたはミラーであることを特徴とする請求項8に記載の分析装置。
【請求項10】
前記光源は、紫外域を含む波長の光を発することを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項11】
前記容器の材質は、樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項12】
検体の光学的特性測定のために使用される波長を含む光が照射される容器において、
前記光が照射される壁面と、
前記壁面外側に形成され、前記容器の光学的特性の劣化原因となる波長の光を除去する被膜と、
を備えたことを特徴とする容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−2849(P2008−2849A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−170427(P2006−170427)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】