説明

分注機

【課題】 加温処理等をする装置をステージ以外の部分に設け得るようにして分注ヘッドのステージに対する高さや分注ヘッドの軌跡等に関する設計上の自由度を高め、ステージの占有面積をより有効に活用できるようにする。
【解決手段】分注された試料を受ける試料受け部12が複数個配設され、Y方向に移動可能に設けられたステージ8と、ステージ8の試料受け部12へ試料を供給する分注具32を一乃至複数備えた分注ヘッド30と、分注ヘッド30をステージ8より上にてY方向に移動可能に保持するヘッドガイド機構20と、を有し、ステージ8をY方向に、分注ヘッド30をX方向に移動させて分注具32により任意の試料受け部12に試料を分注できるようにした分注機であって、ヘッドガイド機構20に、ステージ8の少なくとも一部の試料受け部12内の試料に対して例えば結露防止のための加温をする装置(例えば上側加温装置)40を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分注機、より詳しくは、試料受け部が複数個配設されたステージのその試料受け部へ分注ヘッドの分注具によって試料を供給するようにし、更に、ステージの少なくとも一部の試料受け部内の試料に対して処理(例えば加温)乃至検査、計測をする装置を設けた分注機に関する。
【背景技術】
【0002】
分注機は、ピペットチップ或いはノズル等の分注具を用いて、例えば試験管等の容器に試薬等の液体の試料を供給し、その試料に対して各種の処理、測定等を行うものであり、特開2004−125649号公報、特許第3561891号公報には分注機の一例が紹介されている。
そして、従来の分注機は、一般に、位置が固定されたステージに分注を受ける試験管等の容器を多数個配設し、その一方、その容器に分注する分注具を1個乃至複数個備えた分注ヘッドを、それを上記ステージの上方にてX方向(横方向)及びY方向(奥行方向)に移動させるXY駆動機構に設け、このXY駆動機構により、その分注ヘッドをX方向及びY方向に移動させて上記ステージ上の任意の上記容器に上記分注具により試料を分注するようにされていた。
【0003】
そして、上記XY駆動機構は、一般に、分注機に対して例えばY方向(或いはX方向)に移動するY駆動部(或いはX駆動部)に、X方向(或いはY方向)に上記分注ヘッドを案内し、駆動するX駆動部を設けた構成を有している。
そして、分注機には、上記ステージの一部エリアの容器内の試料に対して例えば加温処理(加熱処理)を施したり、冷却処理を施したり、或いは、所定の検査、測定を行う装置を設けたものがある。
そのような分注機において、加温等の処理或いは検査、測定を行う装置は、一般に可動部分に設けることが不可能乃至非常に困難なので、従来においては、位置が固定された上記ステージ上に設けられていた。
【0004】
また、分注機には、ステージの一部領域に、容器(例えば試験管:チューブ)を納める、試料受け孔(試料受け部)が表面に形成されたブロック(チューブ収納ブロック)を収納するブロック収納凹部を設け、更にそのブロック収納凹部の下側に加温用ヒーターを埋設した加温領域を設け、この加温領域に上記ブロックを収納し、その各試料受け孔に収納された容器(例えばチューブ)内の試料を、或る所定の温度、例えば37℃に、或る所定時間、例えば十数時間加温するという機能を備えたものがある。
【特許文献1】特開2004−125649公報
【特許文献2】特許第3561891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記分注機には、先ず、加温等の処理或いは検査、測定を行う装置を上記ステージ上に設けたので、問題があった。その一つは、その装置を設けた部分がステージの他の部分よりも高くなり、その結果、分注ヘッドのステージに対する高さをその分だけより高くするとか、或いは、分注ヘッドのX、Y方向の位置制御による軌跡を必要に応じて装置部分を例えば迂回する等複雑なものにする必要性が生じるという問題があった。斯かる問題は、分注機の構造、寸法、制御プログラム等についての設計の自由度を著しく低めるので、看過できない。
また、本来、主として分注具を配設すべきステージ上に、分注具とは全く異質の装置を設けることは、ステージの占有面積を有効に活用することを阻む要因となるという問題もあった。
【0006】
また、上記加温領域を有する分注機には、加温処理される各容器(例えばチューブ)内の試料が蒸発し、容器内の試料が減少し、その後の計測等に支障を来すおそれがあるという問題があった。
そこで、加温処理される上記ブロック(チューブ収納ブロック)内の容器を上から覆う蒸発防止蓋を用意し、その蒸発防止蓋の一端片を、加温領域の一辺に、回動可能に設け、その回動により上記ブロック内の容器を上から塞ぐ閉じた状態にしたり、上記ブロック内の容器を塞がない開いた状態にしたりするというような試みが為された。
【0007】
しかし、その試みにも次の問題があった。先ず、加温領域を覆う蒸発防止蓋を回動させる機構を設けると、ステージの上にその蒸発防止蓋の回動を許容する高さの空間を余計に必要とし、分注ヘッドのステージに対する高さをその分だけより高くする必要となり、分注ヘッドに設けられた分注具(例えばノズル)の昇降ストロークを長くする必要があり、処理効率が悪くなるとか、分注機が大型化するという問題があった。
次に、蒸発防止蓋で上記ブロック内の各容器(チューブ)を覆った状態にすると、確かに蒸発を防ぐことができるが、しかし、加温領域の下側のヒーターで各容器(チューブ)内の試料を例えば37℃というような温度に加熱すると、各容器内の試料の温度が蒸発防止蓋の外側(室内)の温度(室内温度:例えば20℃)よりも高くなり、その結果、その試料による結露が蒸発防止蓋の裏面に生じ、その防止蓋の下面に結露した試料が付着する等の不都合が生じ、正常な加温、処理、計測が妨げられるという問題が生じた。
【0008】
本発明は、このような問題を解決すべく為されたものであり、試料受け部が複数個配設されステージの上記試料受け部へ分注ヘッドの分注具によって試料を供給するようにし、更に、ステージの少なくとも一部の試料受け部内の試料に対して処理乃至検査、計測をする装置を設けた分注機において、その装置を上記ステージ以外の部分に設けることができるようにし、以て分注ヘッドのステージに対する高さや、分注ヘッドの軌跡等に関する設計上の自由度を高め、また、ステージの占有面積をより有効に活用できるようにすることを目的とし、更には、ステージの加温領域にて加温される試料の蒸発を、分注機の大型化を伴うことなく防止し、更に、その蒸発防止を試料の結露を伴うことなく為し得るようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の分注機は、分注された試料を受ける試料受け部が複数個配設され、略水平な一つの方向であるY方向に移動可能に設けられたステージと、このステージの上記試料受け部へ試料を供給する分注具を一乃至複数備えた分注ヘッドと、この分注ヘッドを上記ステージより上にて略水平で上記Y方向と直交するX方向に移動可能に保持するヘッドガイド機構と、を有し、上記ステージをY方向に、上記分注ヘッドをX方向に移動させて上記分注ヘッドの上記分注具により任意の試料受け部に試料を分注できるようにした分注機であって、上記ステージの移動範囲の上方に、少なくとも一部の試料受け部内の試料に対して処理乃至計測をする装置を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項2の分注機は、分注された試料を受ける試料受け部が複数個配設され、略水平な一つの方向であるY方向に移動可能に設けられたステージと、このステージの上記試料受け部へ試料を供給する昇降制御可能な分注具を一乃至複数備えた分注ヘッドと、この分注ヘッドを上記ステージより上にて略水平で上記Y方向と直交するX方向に移動可能に保持するヘッドガイド機構と、を有し、上記ステージをY方向に、上記分注ヘッドをX方向に移動させて上記分注ヘッドの上記分注具により任意の試料受け部に試料を分注できるようにした分注機であって、上記ステージの一部に、所定数の範囲内の数の試料を受け入れてそれらの試料を下から加温する加温領域を設け、上記ステージの上記加温領域以外の部分の一部に、蒸発防止蓋待機領域を設け、上記分注ヘッドを、上記ステージと上記ヘッドガイド機構のY方向とX方向の位置制御により上記蒸発防止蓋待機領域に置かれた蒸発防止蓋上方に位置させ、上記一又は複数の分注具にその蒸発防止蓋を取着させ、その蒸発防止蓋を上昇させると共に、上記分注ヘッドを上記加温領域上方に位置移動させ、この加温領域の試料受け部上に上記蒸発防止蓋を置き、分注具を上昇させてこの蒸発防止蓋から離脱させ、上記蒸発防止蓋で加温領域内の各試料受け部内の蒸発を防止した状態で上記加温領域における上記加温をし得るようにしたことを特徴とする。
【0011】
請求項3の分注機は、請求項1又は2記載の分注機において、前記ステージの移動範囲の上方に、上記加温領域の試料受け部上の上記蒸発防止蓋を押さえ、且つこの蒸発防止蓋の上から加温する上側加温装置を設け、上記蒸発防止蓋を、上記加温領域内の試料受け部上に位置させた状態にし、更に上記ステージのY方向の位置制御により上記上側加温装置の下側に位置するところに移動させ、その上側加温装置により上記蒸発防止蓋を押さえ且つ加温し得るようにしたことを特徴とする。
【0012】
請求項4の分注機は、請求項3記載の分注機において、前記上側加温装置を、前記ヘッドガイド機構により前記分注ヘッドと一体にX方向に移動されるように設け、 前記加温領域内の試料受け部上に位置させた状態の前記蒸発防止蓋を、上記ステージのY方向の位置制御のみならず、上記ヘッドガイド機構によるX方向の位置制御によって上記上側加温装置の下側に位置するところに移動させて、その上側加温装置により上記蒸発防止蓋を押さえ且つ加温し得るようにしたことを特徴とする。
【0013】
請求項5の分注機は、分注された試料を受ける試料受け部が複数個配設され、略水平な一つの方向であるY方向に移動可能に設けられたステージと、このステージの上記試料受け部へ試料を供給する昇降制御可能な分注具を一乃至複数備えた分注ヘッドと、この分注ヘッドを上記ステージより上にて略水平で上記Y方向と直交するX方向に移動可能に保持するヘッドガイド機構と、を有し、上記ステージをY方向に、上記分注ヘッドをX方向に移動させて上記分注ヘッドの上記分注具により任意の試料受け部に試料を分注できるようにした分注機であって、上記ステージの一部に、所定数の範囲内の数の試料を受け入れてそれらの試料を下から加温する加温領域を設け、上記加温領域の試料受け部上に、蒸発防止蓋を置き、上記蒸発防止蓋で加温領域内の各試料受け部内の蒸発を防止した状態で上記加温領域における上記加温をし得るようにし、更に、上記加温領域を上記蒸発防止蓋の上から加温する上側加温装置を設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項6の分注機は、請求項3、4又は5記載の分注機において、前記加温領域に対する下側からの加温の温度よりも、前記上側加温装置による上側からの加温の温度を高めたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の分注機によれば、ステージをY方向に移動可能にしたので、ヘッドガイド機構を分注ヘッドをX方向のみに案内できるようにするだけで、分注ヘッドをステージに対して相対的にX、Y方向に移動させることができ、延いては、ヘッドガイド機構を位置移動させる必要がない。即ち、ヘッドガイド機構の位置を固定できる。
従って、従来、ステージ上に設けざるを得なかったところの処理乃至計測をする装置を、ヘッドガイド機構に設けることが可能になる。
依って、従来、そのような装置をステージ上に設けていた故に生じていた上記各問題は、一切なくなる。
勿論、ステージ上に上記の処理乃至計測をする装置を設けなくても良くなった分、ステージ上をより有効に利用することができる。
【0016】
請求項2の分注機によれば、請求項1の分注機による効果と同様の効果を享受することができるが、更に、下記の効果を享受する。
加温領域を有するので試料受け部内の試料を下側から加温できるが、その際の蒸発防止蓋による試料の蒸発の防止は、分注機の大型化を伴うことなく為し得るし、分注ヘッドに設けられた分注具(例えばノズル)の昇降ストロークを長くする必要がなく、処理効率が高くなる。
というのは、上記ステージの加温領域以外の部分の一部に、蒸発防止蓋待機領域を設け、そこに置いた蒸発防止蓋を、分注ヘッドに設けられた分注具を用いて加温領域上に移動させることができるので、蒸発防止蓋を回動させる機構を設けた場合と比較すると、ステージの上にその蒸発防止蓋の回動を許容する高さの空間を余計に設ける必要性が無くなり、分注ヘッドのステージに対する高さをその分だけ低くすることができ、分注ヘッドに設けられた分注具(例えばノズル)の昇降ストロークを短くすることができ、処理効率が高くなる。
また、蒸発防止蓋で加温領域上を覆ったり、加温領域上から蒸発防止蓋を外したりすることは、分注機に既存の分注ヘッド、分注具を用いることによって行うことができ、特別の専用機構を要することなく、延いては、分注機を徒に複雑化することなく為し得る。
【0017】
請求項3、4の分注機によれば、請求項2の分注機において、ヘッドガイド機構に、上側加温装置を設け、その上側加温装置により蒸発防止蓋を上から押さえ且つ加温するので、結露を防止することができる。
請求項5の分注機によれば、加温領域の試料受け部上に蒸発防止蓋を置いて加温できるので、加温に際して生じる蒸発を防止することができる。
そして、上側加温装置により上記蒸発防止蓋を押さえ、上から加温するので、結露を伴うことなく、蒸発防止を為し得る。
【0018】
請求項6の分注機によれば、請求項4又は5記載の分注機において、前記加温領域に対する下側からの加温の温度よりも、前記上側加温装置による上側からの加温の温度を高めたので、結露を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明分注機は、そのステージの一部に加温領域を設ける態様が多い。そして、加温領域以外の領域の一部、例えば加温領域の隣接領域に、蒸発防止蓋待機領域を設けると良い。
そして、上記ヘッドガイド機構に設けた分注具を用いて、その蒸発防止蓋待機領域に置いた蒸発防止蓋を、分注ヘッドの分注具により取着し、分注ヘッドのステージの加温領域上方に移動させ、分注具でその加温領域上に蒸発防止蓋を置き、蒸発防止蓋から分離させることにより加温領域上を蒸発防止蓋で覆うようにすると良い。
分注具としては、分注用のノズルが好適であり、蒸発防止蓋の分注ヘッドへの取着は、蒸発防止蓋側に設けた複数の取着用の嵌合孔に、分注ノズルを差し込んで嵌合させることにより行うようにすると良い。
【0020】
そして、蒸発防止蓋の各分注ノズルからの離脱(分離)は、分注ノズルに、例えばリング状の離脱具を外嵌状に遊嵌させ、そのリング状の離脱体を分注ノズルとは独立して昇降させる機構を設け、分注ノズルを蒸発防止蓋の上記孔に嵌合することにより蒸発防止蓋を取着した状態から、分注ノズルに対して相対的に離脱具を下降させることによりさせるようにすると良い。
また、ヘッドガイド機構の分注ヘッドを設けた側の反対側に上側加温装置を設け、その上側加温装置により上記蒸発防止蓋を押さえ、且つ加温するようにすると、加温領域に置かれ下側から加温される各試料受け部を蒸発防止蓋により塞いで試料の蒸発を防止することにより生じるおそれのある結露を、その上側加温装置による加温により防止することができる。
【0021】
その上側加温装置は、ヘッドガイド機構に固定(位置移動不能に)しても良いし、分注ヘッドと一体にX方向に移動可能に設けても良い。後述の実施例においては、前者に、即ちヘッドガイド機構に移動不能に設けるようにしている。しかし、分注ヘッドと一体にX方向に移動可能に設けるようにすると、上側加温装置により上側から加熱でき得るステージ上のX方向における範囲を広めることができる。
上記ヘッドガイド機構に、分注ヘッド以外の装置として設けるものとしては、上側加温装置が好適であり、後述する実施例1においてもその上側加温装置が設けられているが、それのみが最良というわけではなく、それには限定されない。例えば、反応を抑制するための冷却装置等、試料に対して何らかの処理を施すものと、試料を検査したり、計測したりするものが挙げられる。
【0022】
また、設ける装置の数は、後述の一つの実施例においては、1個であるが、必ずしもそれに限定されず、同じ働きをする或いは異なる働きをする装置を複数設けるようにしても良い。
そして、ヘッドガイド機構は、その一方の側、例えば正面側にガイド用のレールを設ける等して分注ヘッドをX方向に移動可能に保持し、他方の側、例えば裏側に、加温、処理、検査等を行う装置(一つの例が上側加温装置)を設けた構造にすることが最良の形態といえる。
【実施例1】
【0023】
以下、本発明の詳細を図示実施例に基いて説明する。
図面は本発明分注機の一つの実施例を示すもので、図1は斜め正面から視た斜視図、図2は斜め背面から視た斜視図、図3は加温領域、それに収まるチューブ収納ブロック及び蒸発防止蓋を示す分解斜視図、図4は上側加温装置の斜視図である。
図において、2は分注機、4はこの分注機2のベース、6はこのベース4上に固定されたテーブル、8はこのテーブル6上にY方向(分注機の奥行き方向)に移動可能に配置されたステージであり、駆動機構によりY方向に駆動される。
【0024】
上記ステージ8は複数の領域に分割され、そのうちの多くの領域(エリア)10、10、・・・にはチューブ(試験管)12が着脱自在に装着されるチューブ受け孔(試料受け部)14が複数個ずつ縦横(X、Y方向)に所定ピッチで配置されている。そのうちの一つの領域10aは加温領域とされ、別の一つの領域、具体的にはその加温領域10aに隣接する(より具体的には、正面から視て左側に隣接する)一つの領域10bは蒸発防止蓋16を待機させる蒸発防止蓋待機領域とされている。この加温領域10a及び蒸発防止蓋16については、後で図3を参照して詳細に説明する。
20はヘッドガイド機構で、一対の支柱22、22と、該支柱22・22間に支持されたガイド部24からなる。
上記支柱22、22は上記ベース2の上記テーブル6の左右外側に立設されており、それに支持されたガイド部24はX方向(横方向:左右方向)を向いている。
【0025】
30は上記ヘッドガイド機構20によりX方向に移動せしめられる分注ヘッドで、上記ガイド部24の正面側にX方向に移動可能に保持されている。尚、そのX方向に駆動する駆動機構は図面に現れない。32は該分注ヘッド30に設けられた分注ノズルであり、複数個配置され、分注ヘッド30内の図面に現れない駆動機構によりZ方向(垂直方向)に一斉に移動(昇降)せしめられる。
そして、各分注ノズル32には、図面に現れないリング状の離脱具を外嵌状に遊嵌させ、そのリング状の離脱体を分注ノズル32とは独立して昇降させるようにしてある。この駆動機構も図面に現れない。
【0026】
この分注ノズル32を、例えば上記蒸発防止蓋16の後述する取着用嵌合孔に或いはチューブに嵌合することにより蒸発防止蓋16を或いはチューブ12を取着した状態から、離脱具を下降させることにより分注ヘッド32から蒸発防止蓋16或いはチューブ12を分離(離脱)させるようにすることができるようにされている。
尚、本実施例においては、複数個のノズル32、32、・・・にて複数(例えば6)個の試験管に一斉に分注することができるようにされている。しかし、ノズル32の数は必ずしも複数個である必要はなく、ノズル32の数が1個の分注機に対しても本発明を適用することができる。
【0027】
40は上記ヘッドガイド機構20の裏側に設けられた上側加温装置であり、ステージ8上の上記加温領域10a内の各試料に対してそれを上から塞ぐ上記蒸発防止蓋16を押さえ、且つその状態で所定の加温処理を施すためのものであり、その加温処理を施す場合には、ステージ8をY方向に駆動してその加温領域10aがその上側加温装置40下に位置するようにし、その状態で、その上側加温装置40により上記蒸発防止蓋16を上から押圧し且つ所定の加温処理を施すようになっている。この上側加温装置40の詳細は後で図4を参照して説明する。
【0028】
次に、図3を参照して上記加温領域10aについて詳しく説明する。
50はチューブ収納ブロック52を納めるブロック収納凹部であり、この凹部の真下にはヒーターが埋設され、このヒーターにより加温処理をするようになっている。図面にはこのヒーターに関しては引き出し線54のみが現れる。
ブロック収納凹部50に収まるチューブ収納ブロック52は、例えばアルミニウムからなり、上側の表面には、チューブ12を受ける上記チューブ受け孔(試料受け部)14が複数個配設されている。56は上記チューブ収納ブロック52に例えばねじ止めにより着脱可能に取り付けられたプレートで、チューブ12が挿通されるチューブ挿通孔58、58、・・・が上記チューブ収納ブロック52のチューブ受け孔14、14、・・・に対応して設けられている。
【0029】
60は錘板で、チューブ収納ブロック52の各チューブ受け孔14、14、・・・に収納されたチューブ12、12、・・・の上部が通るチューブ挿通孔62、62、・・・を有し、各チューブ12の鍔状部分(図面に現れない)を通じてチューブ12、12、・・・に対する錘となり、チューブ12、12、・・・の浮き上がりを防止し、有効確実に各チューブ1212、12、・・・内の試料(図面に現れない)を上記ヒーターにより加温できるようにする。
上記蒸発防止蓋16は、例えばアルミニウムからなり、板状の主部70の長い方の一対の辺に下向きの垂直片72、72が一体に形成され、更に、その長い方の一方の側面には、突片74、74が形成され、その突片74、74には取着用嵌合孔76、76が形成されている。
【0030】
その取着用嵌合孔76、76は分注ノズル32、32が嵌合することによりその蒸発防止蓋16を分注ヘッド30に取着させるために形成したものである。尚、両突片74・74間の空隙78は上記取着用嵌合孔76、76に嵌合する分注ノズル以外の分注ノズルを逃げるノズル逃げとなる。
80はクッションで、蒸発防止蓋16の主部70の下面に設けられており、上記上側加温装置40で上記蒸発防止蓋16が上から押された時の衝撃を吸収してチューブ12、12、・・・の破損を防止する。
【0031】
次に、図4を参照して上側加温装置40について詳細に説明する。
90は加温装置支持板で、上記ヘッドガイド機構20の裏側(分注ヘッド30が設けられた側と反対側)に固定されており、上側加温装置40を支持している。この上側加温装置40のX方向における位置は、上記ステージ8をY方向に移動制御することにより上記加温領域10aが真下になり得るように設定されている。
尚、加温装置支持板90を上記分注ヘッド30と一体にX方向に移動するように設けるようにしても良いことは前述の通りである。
92は上記加熱装置支持板90の下側に位置する加熱ブロックで、内部に図面に現れないヒーターが設けられている。図4には、このヒーターに関しては引き出し線94、94のみが現れる。96は上記加熱ブロック92をモーターにより昇降させる昇降機構、98、98、・・・は加熱ブロック92を上下方向に案内するガイド軸、100は加熱ブロック92を昇降させる回転軸で、この回転軸100が回転すると、加熱ブロック92が昇降する。
【0032】
そして、上側加温装置40が上記加温領域10a上を覆う蒸発防止蓋16の上方に位置したとき、その加熱ブロック92を下降させてこのブロック92でその蒸発防止蓋16を押さえた状態にする。この状態で、加熱ブロック92内のヒーターで上から加温し、蒸発防止蓋16の下面側における試料による結露を防止することができる。
【0033】
以下に、この分注機2の動作について説明する。
この分注機2は、ステージ8をY方向に位置移動させ、上記ヘッドガイド機構20により分注ヘッド30をX方向に移動させることにより、分注ヘッド30をステージ8上の任意の領域10上に位置させることができ、延いては、分注ヘッド30に設けられた各ノズル32、32、・・・により任意の領域10内の試料受け部12、12、・・・に一斉分注ができる。
そして、加温領域10aを有するので、そこのブロック収納凹部50に納まったチューブ収納ブロック52の各チューブ受け孔14、14、・・・内の各チューブ12、12、・・・の試料を加温することができる。
【0034】
また、蒸発防止蓋待機領域10bに蒸発防止蓋16を待機させ、ステージ8及び分注ヘッド30のY方向及びX方向の移動によりその蒸発防止蓋16の上方に位置させ、その状態で上記分注ノズル32、32、・・・を一斉に下降させる。
すると、二つの分注ノズル32、32が蒸発防止蓋16の二つの取着用嵌合孔76、76に嵌合する。尚、残りのノズル32、32、・・・は逃げ空隙78内に入る。
その状態で、分注ノズル32、32、・・・を一斉に適宜上昇させ、その後、その分注ヘッド30を加温領域10aの上方に移動させる。
【0035】
そして、各分注ノズル32、32、・・・を一斉に下降させ、上記蒸発防止蓋16の主部70が上記チューブ収納ブロック52上を覆う状態にする。そして、各分注ノズル32、32、・・・に外嵌状に遊嵌された離脱具(図面に現れない)をその蒸発防止蓋16の上方を押さえる位置まで下降させ、その状態で各分注ノズル32、32、・・・を上昇させる。
すると、分注ノズル32、32、・・・が蒸発防止蓋16から分離した状態になる。その後、離脱具も上昇させて、分注ヘッド32が蒸発防止蓋16から完全に分離する。
【0036】
次に、ステージ8をY方向に移動させることにより、蒸発防止蓋16で覆われた加温領域10aが上記上側加温装置40の下側に位置するようにし、その後、その加温装置40の加熱ブロック92を下降させ、一定の圧力で加熱ブロック92にて上記蒸発防止蓋16を上から押さえる状態にする。
すると、その加熱ブロック92内のヒーターにより蒸発防止蓋16を加熱することができ、延いては、結露を防止することができる。この状態を所定時間、例えば十数時間継続する。すると、試料に対する加温処理が終了する。
【0037】
本実施例においては、上記加温領域10aのヒーターによる加温の温度よりも加熱ブロック92内のヒーターによる加温の温度の方を適宜高くしている。そのため、蒸発防止蓋16の下側において各チューブ14、14、・・・内において生じるおそれのあった結露を有効確実に防止することができる。
【0038】
尚、上側加温装置40を上記ヘッドガイド機構20により分注ヘッド30と一体にX方向に移動可能に設けるようにした場合には、蒸発防止蓋16で覆われた加温領域10aを上記上側加温装置40の下側に位置させるには、ステージ8をY方向に位置制御するのみならず、上記分注ヘッド30と一体に移動する上側加温装置40をX方向に位置制御することも必要となる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、試料受け部が複数個配設されたステージのその試料受け部へ分注ヘッドの分注具によって試料を供給するようにし、更に、ステージの少なくとも一部の試料受け部内の試料に対して処理(例えば加温)乃至検査、計測をする装置を設けた分注機に一般的に産業上の利用可能性があり、特に、ステージに加温領域を設け、その加温領域にて加温された各試料受け部内の試料を加温するようにし、更に、その加温により試料が蒸発することを、結露等のデメリットを伴うことなく防止することができるようにした分注機には、利用可能性が極めて強い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明分注機の一つの実施例を示す斜め正面から視た斜視図である。
【図2】上記実施例を示す斜め背面から視た斜視図である。
【図3】上記実施例の加温領域、それに収まるチューブ収納ブロック及び蒸発防止蓋を示す分解斜視図である。
【図4】上記実施例の上側加温装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
2・・・分注機、8・・・ステージ、10a・・・加熱領域、
10b・・・蒸発防止蓋待機領域、12・・・チューブ、
14・・・試料受け部(チューブ受け孔)、16・・・蒸発防止蓋、
20・・・ヘッドガイド機構、24・・・ガイド部、
30・・・分注ヘッド、32・・・分注具(ノズル)、40・・・装置(上側加温装置)、
92・・・加熱ブロック。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分注された試料を受ける試料受け部が複数個配設され、略水平な一つの方向であるY方向に移動可能に設けられたステージと、
上記ステージの上記試料受け部へ試料を供給する分注具を一乃至複数備えた分注ヘッドと、
上記分注ヘッドを上記ステージより上にて略水平で上記Y方向と直交するX方向に移動可能に保持するヘッドガイド機構と、
を有し、
上記ステージをY方向に、上記分注ヘッドをX方向に移動させて上記分注ヘッドの上記分注具により任意の試料受け部に試料を分注できるようにした分注機であって、
上記ステージの移動範囲の上方に、少なくとも一部の試料受け部内の試料に対して処理乃至計測をする装置を設けた
ことを特徴とする分注機。
【請求項2】
分注された試料を受ける試料受け部が複数個配設され、略水平な一つの方向であるY方向に移動可能に設けられたステージと、
上記ステージの上記試料受け部へ試料を供給する昇降制御可能な分注具を一乃至複数備えた分注ヘッドと、
上記分注ヘッドを上記ステージより上にて略水平で上記Y方向と直交するX方向に移動可能に保持するヘッドガイド機構と、
を有し、
上記ステージをY方向に、上記分注ヘッドをX方向に移動させて上記分注ヘッドの上記分注具により任意の試料受け部に試料を分注できるようにした分注機であって、
上記ステージの一部に、所定数の範囲内の数の試料を受け入れてそれらの試料を下から加温する加温領域を設け、
前記ステージの上記加温領域以外の部分の一部に、蒸発防止蓋待機領域を設け、
上記分注ヘッドを、上記ステージと上記ヘッドガイド機構のY方向とX方向の位置制御により上記蒸発防止蓋待機領域に置かれた蒸発防止蓋上方に位置させ、上記一又は複数の分注具にその蒸発防止蓋を取着させ、その蒸発防止蓋を上昇させると共に、上記分注ヘッドを上記加温領域上方に位置移動させ、この加温領域の試料受け部上に上記蒸発防止蓋を置き、分注具を上昇させてこの蒸発防止蓋から離脱させ、
上記蒸発防止蓋で加温領域内の各試料受け部内の蒸発を防止した状態で上記加温領域における上記加温をし得るようにした
ことを特徴とする分注機。
【請求項3】
前記ステージの移動範囲の上方に、上記加温領域の試料受け部上の上記蒸発防止蓋を押さえ、且つこの蒸発防止蓋の上から加温する上側加温装置を設け、
上記蒸発防止蓋を、上記加温領域内の試料受け部上に位置させた状態にし、更に上記ステージのY方向の位置制御により上記上側加温装置の下側に位置するところに移動させ、その上側加温装置により上記蒸発防止蓋を押さえ且つ加温し得るようにした
ことを特徴とする請求項1又は2記載の分注機。
【請求項4】
前記上側加温装置を、前記ヘッドガイド機構により前記分注ヘッドと一体にX方向に移動されるように設け、
前記加温領域内の試料受け部上に位置させた状態の前記蒸発防止蓋を、上記ステージのY方向の位置制御のみならず、上記ヘッドガイド機構によるX方向の位置制御によって上記上側加温装置の下側に位置するところに移動させて、その上側加温装置により上記蒸発防止蓋を押さえ且つ加温し得るようにした
ことを特徴とする請求項3記載の分注機。
【請求項5】
分注された試料を受ける試料受け部が複数個配設され、略水平な一つの方向であるY方向に移動可能に設けられたステージと、
上記ステージの上記試料受け部へ試料を供給する昇降制御可能な分注具を一乃至複数備えた分注ヘッドと、
上記分注ヘッドを上記ステージより上にて略水平で上記Y方向と直交するX方向に移動可能に保持するヘッドガイド機構と、
を有し、
上記ステージをY方向に、上記分注ヘッドをX方向に移動させて上記分注ヘッドの上記分注具により任意の試料受け部に試料を分注できるようにした分注機であって、
前記ステージの一部に、所定数の範囲内の数の試料を受け入れてそれらの試料を下から加温する加温領域を設け、
上記加温領域の試料受け部上に、蒸発防止蓋を置き、上記蒸発防止蓋で加温領域内の各試料受け部内の蒸発を防止した状態で上記加温領域における上記加温をし得るようにし、
更に、上記加温領域を上記蒸発防止蓋の上から加温する上側加温装置を設けた
ことを特徴とする分注機。
【請求項6】
前記加温領域に対する下側からの加温の温度よりも、前記上側加温装置による上側からの加温の温度を高めた
ことを特徴とする請求項3、4又は5記載の分注機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−300589(P2006−300589A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−119626(P2005−119626)
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【出願人】(502338292)ユニバーサル・バイオ・リサーチ株式会社 (23)
【Fターム(参考)】