説明

分流式流量計及び流量制御装置

【課題】分流比の誤認を防止可能な分流式流量計を提供する。
【解決手段】主流路11、及び主流路11に通じる一対の分流孔4a, 4bが設けられた主流路保持体10と、一対の分流孔4a, 4bを介して主流路11と連通する分流路25が設けられた、主流路保持体10に着脱可能な分流路保持体30と、主流路11及び一対の分流孔4a, 4bの流路抵抗に依存する分流路25と主流路11との分流比に関する情報を識別するための、主流路保持体10に設けられた識別部と、分流路25を流れる流体の流量を検出するための流れセンサ8と、識別部から読み出された分流比に関する情報を保存するための、分流路保持体30に固定された第1の分流比記憶装置400と、分流路25を流れる流体の流量、及び分流比に関する情報に基づいて、主流路11を流れる流体の流量を算出する算出回路301と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は計測技術に関し、特に分流式流量計及び流量制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工業炉、ボイラ、及び空調熱源機器等においては、適切な流量の流体が供給されることが求められている。そのため、流量を正確に計測するための流量計が種々開発されている(例えば、特許文献1参照。)。ここで、分流式流量計においては、流体が流れる主流路に分流路が接続されており、分流路を流れる流体の流量が計測される。その後、予め求められた分流比に基づいて、主流路を流れる流体の流量が計算される。
【特許文献1】特開2004-251686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
分流式流量計の分流路と主流路との分流比は、分流式流量計の構造に依存する。したがって、使用している流量計とは異なる流量計の分流比を誤って主流路の流量の算出に用いると、算出される主流路の流量が著しく不正確になる。そこで、本発明は、分流比の誤認を防止可能な分流式流量計及び流量制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の特徴は、(イ)主流路、及び主流路に通じる一対の分流孔が設けられた主流路保持体と、(ロ)一対の分流孔を介して主流路と連通する分流路が設けられた、主流路保持体に着脱可能な分流路保持体と、(ハ)主流路及び一対の分流孔の流路抵抗に少なくとも依存する分流路と主流路との分流比に関する情報を識別するための、主流路保持体に設けられた識別部と、(ニ)分流路を流れる流体の流量を検出するための流れセンサと、(ホ)識別部から読み出された分流比に関する情報を保存するための、分流路保持体に固定された分流比記憶装置と、(ヘ)分流路を流れる流体の流量、及び分流比に関する情報に基づいて、主流路を流れる流体の流量を算出する算出回路と、を備える分流式流量計であることを要旨とする。
【0005】
本発明に係る分流式流量計によれば、主流路保持体に設けられた識別部によって分流比に関する情報を識別可能であり、また、分流比に関する情報が、分流路保持体に固定された分流比記憶装置に保存可能である。そのため、分流比記憶装置に保存された情報に基づいて、主流路を流れる流体の流量を正確に計算することが可能である。したがって、誤った分流比に関する情報に基づいて流量を計算するリスクを回避することが可能となる。
【0006】
さらに、本発明の他の特徴は、(イ)主流路、及び主流路に通じる一対の分流孔が設けられた主流路保持体と、(ロ)一対の分流孔を介して主流路と連通する分流路が設けられた、主流路保持体に着脱可能な分流路保持体と、(ハ)主流路及び一対の分流孔の流路抵抗に少なくとも依存する分流路と主流路との分流比に関する情報を識別するための、主流路保持体に設けられた識別部と、(ニ)分流路を流れる流体の流量を検出するための流れセンサと、(ホ)識別部から読み出された分流比に関する情報を保存するための、分流路保持体に固定された分流比記憶装置と、(ヘ)分流路を流れる流体の流量、及び分流比に関する情報に基づいて、主流路を流れる流体の流量を算出する算出回路と、(ト)主流路を流れる流体の流量を制御するための制御弁と、(チ)算出された流量に基づき、制御弁を駆動し、主流路を流れる流体の流量を調節するコントローラと、を備える流量制御装置であることを要旨とする。
【0007】
本発明に係る流量制御装置によれば、主流路保持体に設けられた識別部によって分流比に関する情報を識別可能であり、また、分流比に関する情報が、分流路保持体に固定された分流比記憶装置に保存可能である。そのため、分流比記憶装置に保存された情報に基づいて、主流路を流れる流体の流量を正確に計算し、調節することが可能である。したがって、誤った分流比に関する情報に基づいて流量を調節するリスクを回避することが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、分流比の誤認を防止可能な分流式流量計及び流量制御装置を提供可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0010】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態に係る分流式流量計は、断面図である図1に示すように、主流路11、及び主流路11に通じる一対の分流孔4a, 4bが設けられた主流路保持体10と、一対の分流孔4a, 4bの間の主流路11内に配置された差圧発生構造12と、一対の分流孔4a, 4bを介して主流路11と連通する分流路25が設けられた、主流路保持体10に着脱可能な分流路保持体30とを備える。主流路保持体10の側面には、主流路11及び一対の分流孔4a, 4bの流路抵抗に少なくとも依存する分流路25と主流路11との分流比に関する情報を識別するための、図2に示す識別部15が設けられている。図1に示す主流路11の流路抵抗は、例えば、差圧発生構造12が配置された主流路11の断面積に依存する。また、一対の分流孔4a, 4bの流路抵抗は、例えば、一対の分流孔4a, 4bのそれぞれの断面積に依存する。
【0011】
さらに分流式流量計は、図1に示すように、分流路25を流れる流体の流量を検出するための分流路保持体30に配置された流れセンサ8と、流れセンサ8に電気的に接続され、分流路保持体30に配置された中央演算処理装置(CPU)300を備える。CPU300には、図2に示す識別部15から読み出された分流比に関する情報を保存するための、図1に示す分流路保持体30に固定された第1の分流比記憶装置400が接続されている。また、CPU300は、分流路25を流れる流体の流量、及び分流比に関する情報に基づいて、主流路11を流れる流体の流量を算出する算出回路301を備える。なお、図1は断面図であるが、CPU300及び分流比記憶装置400は模式的に描かれており、実際には、マイクロプロセッサ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、I/O回路等により構成される。
【0012】
上面図である図3、IV-IV方向から見た断面図である図4、及びV-V方向から見た断面図である図5に示すように、六面体の主流路保持体10の対向する二面に、注入口13及び排出口14が設けられている。注入口13及び排出口14のそれぞれには、ガスや液体等の流体を通す配管が挿入される。主流路保持体10の内部に設けられた主流路11は、注入口13から排出口14に貫通する。主流路11の一部に、主流路11の内径を狭める差圧発生構造12が設けられている。差圧発生構造12によって、主流路11の注入口13側と排出口14側の間で、流体の流速に応じた差圧が発生する。差圧発生構造12は、例えばオリフィス又はベンチュリーである。以下、主流路11の差圧発生構造12より注入口13側を上流と呼び、主流路11の差圧発生構造12より排出口14側を下流と呼ぶ。
【0013】
主流路保持体10の主流路11と平行な面には、凹部16が設けられている。凹部16から主流路11の上流に分流孔4aが貫通し、凹部16から主流路11の下流に分流孔4bが貫通している。主流路保持体10の材料には、金属又は樹脂等が使用可能である。
【0014】
図4に示す凹部16を覆うように、図1に示す分流路保持体30が着脱自在に配置される。このとき、分流路保持体30で覆われた凹部16が、分流孔4a, 4bを接続する分流路25の一部をなしてもよい。主流路11の上流から流れてきた流体は、差圧発生構造12によって一部が分流孔4aに流入する。分流孔4aに流入した流体は、分流路25を流れ、分流孔4bから主流路11に流出する。
【0015】
ここで、分流孔4a, 4bの断面積が小さい場合、分流孔4a、分流路25、及び分流孔4bを流れる流体の流量に対する、主流路11を流れる流体の流量の分流比は大きくなる。これに対し、分流孔4a, 4bの断面積が大きい場合、分流孔4a、分流路25、及び分流孔4bを流れる流体の流量に対する、主流路11を流れる流体の流量の分流比は小さくなる。このように、分流孔4a, 4bの断面積と、差圧発生構造12が設けられた箇所の主流路11の断面積に応じて、流体の流路抵抗が変化し、結果として分流比が変化する。なお、流体の流路抵抗は、必ずしも流路の断面積のみに依存しない。例えば、主流路11、及び分流孔4a, 4bのそれぞれの長さが変化した場合も、流体の流路抵抗が変化し、結果として分流比が変化する。
【0016】
図2に示す識別部15には、分流孔4a, 4bの流路抵抗、主流路11の流路抵抗、及び装着される分流路保持体30の分流路25の流路抵抗等によって決定される、主流路保持体10に固有の分流比に関する情報が記録されている。分流比に関する情報とは、例えば分流比の値そのものである。識別部15には、バーコード、集積回路(IC: Integrated Circuit)タグ等の情報チップ、及びその他の汎用の識別手段が使用可能である。図6に示すように、識別部15に記録されている分流比に関する情報は、読取装置115で読み取られる。例えば識別部15がバーコードである場合、読取装置115にはバーコードリーダが使用可能であり、識別部15に記録されている情報を光学的に読み取る。また、識別部15がICタグである場合、読取装置115にはICタグリーダが使用可能であり、電波を用いて、識別部15に記録されている情報を読み取る。
【0017】
図1に示す分流路25における流体の流速又は流量を検出する流れセンサ8は、分流路保持体30の凹部16を覆う面に配置されている。流れセンサ8は、斜視図である図7、及びVIII-VIII方向から見た断面図である図8に示すように、キャビティ66が設けられた基板60、基板60上にキャビティ66を覆うように配置された絶縁膜65、絶縁膜65に設けられたヒータ61、ヒータ61より上流側に設けられた上流側測温抵抗素子62、ヒータ61より下流側に設けられた下流側測温抵抗素子63、及び上流側測温抵抗素子62より上流側に設けられた周囲温度センサ64を備える。
【0018】
絶縁膜65のキャビティ66を覆う部分は、断熱性のダイアフラムをなしている。周囲温度センサ64は、図1に示す分流路25に流入してきた流体の温度を測定する。図7及び図8に示すヒータ61は、キャビティ66を覆う絶縁膜65の中心に配置されており、分流路25に流れる流体を、周囲温度センサ64が計測した温度よりも一定温度、例えば10℃高くなるよう、加熱する。上流側測温抵抗素子62はヒータ61より上流側の温度を検出するために用いられ、下流側測温抵抗素子63はヒータ61より下流側の温度を検出するために用いられる。
【0019】
ここで、図1に示す分流路25中の流体が静止している場合、図7及び図8に示すヒータ61で加えられた熱は、上流方向と下流方向へ対称的に拡散する。したがって、上流側測温抵抗素子62及び下流側測温抵抗素子63の温度は等しくなり、上流側測温抵抗素子62及び下流側測温抵抗素子63の電気抵抗は等しくなる。これに対し、図1に示す分流路25中の流体が上流から下流に流れている場合、図7及び図8に示すヒータ61で加えられた熱は、下流方向に運ばれる。したがって、上流側測温抵抗素子62の温度よりも、下流側測温抵抗素子63の温度が高くなる。そのため、上流側測温抵抗素子62の電気抵抗と、下流側測温抵抗素子63の電気抵抗に差が生じる。下流側測温抵抗素子63の電気抵抗と上流側測温抵抗素子62の電気抵抗の差は、図1に示す分流路25中の流体の速度と相関関係がある。そのため、下流側測温抵抗素子63の電気抵抗と上流側測温抵抗素子62の電気抵抗の差から、分流路25を流れる流体の流量が求められる。
【0020】
図7及び図8に示す基板60の材料としては、シリコン(Si)等が使用可能である。絶縁膜65の材料としては、酸化ケイ素(SiO2)等が使用可能である。キャビティ66は、異方性エッチング等により形成される。またヒータ61、上流側測温抵抗素子62、下流側測温抵抗素子63、及び周囲温度センサ64のそれぞれの材料には白金(Pt)等が使用可能であり、リソグラフィ法等により形成可能である。
【0021】
図1に示すように、流れセンサ8は、分流路保持体30内部に配置されたCPU300に接続されている。また、分流路保持体30内部には、CPU300に接続された入力装置251が配置されている。図9に示すように、読取装置115で読み取られた分流比に関する情報が、入力装置251を介して、図1に示す第1の分流比記憶装置400に入力される。なお、第1の分流比記憶装置400への分流比に関する情報の入力は、パーソナルコンピュータ等を介して行ってもよい。第1の分流比記憶装置400にはRAM等の揮発性メモリ等が使用可能である。CPU300の算出回路301は、分流比に関する情報を、第1の分流比記憶装置400から読み出す。さらに算出回路301は、流れセンサ8で検出した分流路25を流れる流体の流量、及び第1の分流比記憶装置400から読み出した分流比に関する情報に基づいて、主流路11を流れる流体の流量を算出する。
【0022】
分流路保持体30の上には、液晶ディスプレイ等の表示装置35が配置される。表示装置35は、算出回路301が第1の分流比記憶装置400から読み出した分流比に関する情報、及び算出回路301が算出した主流路11を流れる流体の流量を表示する。表示装置35により、ユーザ又はエンジニアが分流比に関する情報を確認することが可能となる。なお、表示装置35は、分流路保持体30から離れた位置に配置されてもよい。
【0023】
以上示した第1の実施の形態に係る分流式流量計によれば、図6に示すように、主流路保持体10に配置された分流比識別部15に記録されている分流比に関する情報を読取装置115で読み取り、図1に示す第1の分流比記憶装置400に保存することが可能である。したがって、第1の分流比記憶装置400に接続されたCPU300の算出回路301が、正確な分流比に関する情報に基づいて、主流路11を流れる流体の流量を算出可能である。
【0024】
従来においては、ユーザが主流路保持体を目視し、分流比に関する情報を分流路保持体のCPUに入力していた。そのため、分流比に関する誤った情報をCPUに入力する人為ミスが生じる場合があった。この場合、分流比に関する誤った情報に基づいて、CPUが主流路を流れる流体の流量を算出するという問題があった。これに対し、第1の実施の形態に係る分流式流量計によれば、分流比に関する誤った情報がCPU300に入力される人為ミスをなくすことが可能になる。
【0025】
また、主流路11及び分流孔4a, 4bの流路抵抗が異なる複数の主流路保持体10を用意することにより、流体の流量に応じて、適切な分流比の主流路保持体10を選択したり、交換したりすることが可能となる。この場合も、交換するたびに、図6に示す主流路保持体10に配置された分流比識別部15に記録されている分流比に関する情報を読取装置115で読み取り、図1に示す第1の分流比記憶装置400に保存しなおすことにより、正確な分流比に関する情報に基づいて、主流路11を流れる流体の流量を算出することが可能となる。
【0026】
なお、分流孔4a, 4bのそれぞれの断面積を一定にしたまま、金網や整流部材等を分流孔4a, 4bのそれぞれの内部に配置することによって、分流孔4a, 4bのそれぞれの断面積を実質的に変更し、分流比を変更することも可能である。
【0027】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係る分流式流量計は、図10に示すように、揮発性の第1の分流比記憶装置400に加えて、不揮発性の第2の分流比記憶装置401をさらに備える。不揮発性の第2の分流比記憶装置401にも、図9に示すように、読取装置115で読み取られた分流比に関する情報が、入力装置251を介して、入力される。不揮発性の第2の分流比記憶装置401には、EEPROM等が使用可能である。第2の実施の形態に係る分流式流量計のその他の構成要素は、第1の実施の形態に係る分流式流量計と同様であるので、説明は省略する。
【0028】
ここで、分流式流量計への電力供給が停止した場合、揮発性の第1の分流比記憶装置400に保存されていた分流比に関する情報は消去される。しかし、不揮発性の第2の分流比記憶装置401に保存されていた分流比に関する情報は消去されない。そのため、電力供給が再開された後、第2の分流比記憶装置401に保存されていた分流比に関する情報を、CPU300が第1の分流比記憶装置401に保存しなおすことにより、流量の算出を速やかに再開することが可能となる。
【0029】
あるいは、分流式流量計が電池で駆動されている場合、電池が消耗して必要な電圧が供給不可能になった場合にも、揮発性の第1の分流比記憶装置400に保存されていた分流比に関する情報が消去されうる。この場合も、電池を交換した後、第2の分流比記憶装置401に保存されていた分流比に関する情報を、CPU300が第1の分流比記憶装置401に保存しなおすことにより、流量の算出を速やかに再開することが可能となる。
【0030】
(第3の実施の形態)
第1の実施の形態においては、図6に示す識別部15に、分流比に関する情報として、分流比の値そのものが記録されている場合を説明した。これに対し、第3の実施の形態に係る識別部15には、分流比に関する情報として、主流路保持体10の識別番号や製品番号が記録されていてもよい。この場合、図11に示すように、識別部15に記録されている識別番号又は製品番号等が読取装置115で読み取られ、照合部116に転送される。照合部116は、識別番号又は製品番号に対応する分流比の値の対照表等を保持している。識別番号又は製品番号を受信した照合部116は、対照表を参照して、対応する分流比の値を抽出する。さらに照合部116は、抽出した分流比の値を、入力装置251に伝送し、抽出した分流比の値は、図1に示す第1の分流比記憶装置400に保存される。
【0031】
照合部116には、パーソナルコンピュータ、電子式調節器、及びプログラマブル・ロジックコンピュータ等の装置が使用可能である。第3の実施の形態に係る分流式流量計のその他の構成要素は、第1の実施の形態に係る分流式流量計と同様であるので、説明は省略する。第3の実施の形態に係る分流式流量計においては、分流比の値そのものを主流路保持体10上の識別部15に登録する手間を省略することが可能になる。
【0032】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態に係る分流式流量計は、図12に示すように、CPU300が照合部303をさらに備え、CPU300に照合情報記憶装置403が接続されている。第4の実施の形態においては、図6に示す識別部15に、分流比に関する情報として、主流路保持体10の識別番号や製品番号が記録されている。図6及び図9に示すように、識別部15に記録されている識別番号又は製品番号等は、読取装置115で読み取られ、図12に示す入力装置251を介してCPU300に入力される。照合情報記憶装置403は、識別番号又は製品番号に対応する分流比の値の対照表等を保存している。照合部303は、照合情報記憶装置403に保存されている対照表を参照して、CPU300が受信した識別番号又は製品番号に対応する分流比の値を抽出し、抽出した分流比の値を第1の分流比記憶装置400に保存する。第4の実施の形態に係る分流式流量計のその他の構成要素は、第1の実施の形態に係る分流式流量計と同様であるので、説明は省略する。第4の実施の形態に係る分流式流量計においても、分流比の値そのものを主流路保持体10上の識別部15に登録する手間を省略することが可能になる。
【0033】
(第5の実施の形態)
第5の実施の形態に係る流量制御装置は、図13に示すように、分流式流量計50、分流式流量計50の排出口14に接続された流路99、及び流路99に接続され、流体の流量を制御する制御弁41を備える。制御弁41は、例えばソレノイド弁である。制御弁41は、流路43及び流路44と、流路43及び流路44を連通する弁室45が設けられた弁座42、弁室45に収納され、流路44を開閉する弁体46、弁体46に連結された磁性体のプランジャ47、及び通電されてプランジャ47を上下させるソレノイドコイル48を備える。
【0034】
分流式流量計50は、第1の実施の形態に係る分流式流量計の構成要素に加えて、算出回路301で算出された流量に基づき、制御弁41を駆動し、主流路11及び流路99を流れる流体の流量を調節するコントローラ305をさらに備える。コントローラ305は、算出回路301及び制御弁41のソレノイドコイル48に電気的に接続されている。コントローラ305は算出回路301から流量の信号を受信し、流量が設定値よりも多い場合は、ソレノイドコイル48に通電して、流量を減少させる。また流量が設定値よりも少ない場合は、ソレノイドコイル48に通電して、流量を増加させる。
【0035】
第5の実施の形態に係る流量制御装置は、第1の実施の形態で説明した分流式流量計を採用しているため、誤りなく設定された分流比に基づいて算出された正確な流量の値に基づき、流量を制御することが可能となる。また、分流式流量計50と制御弁41を一体化してもよい。なお、第2乃至第4の実施の形態で説明した分流式流量計を採用してもよいことはもちろんである。
【0036】
(その他の実施の形態)
上記のように本発明を実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになるはずである。例えば、分流式流量計は、図1に示す算出回路301が第1の分流比記憶装置400から読み出した分流比に関する情報、及び算出回路301が算出した主流路11を流れる流体の流量を、外部のパーソナルコンピュータ等に送信する送信装置を備えていてもよい。また、図10に示す第2の分流比記憶装置401は、分流路保持体30から着脱可能であってもよい。着脱可能にすることにより、第2の分流比記憶装置401に保持されている情報を、外部の機器で読み出すことが可能となる。この様に、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ限定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る分流式流量計の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る主流路保持体の側面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る主流路保持体の上面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る主流路保持体の図3のIV-IV方向から見た断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る主流路保持体の図3のV-V方向から見た断面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る分流式流量計の第1の斜視図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る流れセンサの斜視図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る流れセンサの図7のVIII-VIII方向から見た断面図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る分流式流量計の第2の斜視図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る分流式流量計の断面図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る分流式流量計の斜視図である。
【図12】本発明の第4の実施の形態に係る分流式流量計の断面図である。
【図13】本発明の第5の実施の形態に係る流量制御装置の断面図である。
【符号の説明】
【0038】
4a, 4b・・・分流孔
8・・・流れセンサ
10・・・主流路保持体
11・・・主流路
12・・・差圧発生構造
13・・・注入口
14・・・排出口
15・・・識別部
16・・・凹部
25・・・分流路
30・・・分流路保持体
35・・・表示装置
41・・・制御弁
42・・・弁座
43, 44・・・流路
45・・・弁室
46・・・弁体
47・・・プランジャ
48・・・ソレノイドコイル
50・・・分流式流量計
60・・・基板
61・・・ヒータ
62・・・上流側測温抵抗素子
63・・・下流側測温抵抗素子
64・・・周囲温度センサ
65・・・絶縁膜
66・・・キャビティ
115・・・読取装置
116, 303・・・照合部
251・・・入力装置
300・・・CPU
301・・・算出回路
305・・・コントローラ
400・・・第1の分流比記憶装置
401・・・第2の分流比記憶装置
403・・・照合情報記憶装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主流路、及び前記主流路に通じる一対の分流孔が設けられた主流路保持体と、
前記一対の分流孔を介して前記主流路と連通する分流路が設けられた、前記主流路保持体に着脱可能な分流路保持体と、
前記主流路及び前記一対の分流孔の流路抵抗に少なくとも依存する、前記分流路と前記主流路との分流比に関する情報を識別するための、前記主流路保持体に設けられた識別部と、
前記分流路を流れる流体の流量を検出するための流れセンサと、
前記識別部から読み出された前記分流比に関する情報を保存するための、前記分流路保持体に固定された分流比記憶装置と、
前記分流路を流れる流体の流量、及び前記分流比に関する情報に基づいて、前記主流路を流れる流体の流量を算出する算出回路と、
を備えることを特徴とする分流式流量計。
【請求項2】
前記一対の分流孔の流路抵抗が、前記一対の分流孔のそれぞれの断面積に少なくとも依存することを特徴とする請求項1に記載の分流式流量計。
【請求項3】
前記主流路内の前記一対の分流孔の間の位置に配置された差圧発生構造を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の分流式流量計。
【請求項4】
前記主流路の流路抵抗が、前記差圧発生構造が配置された前記主流路の断面積に少なくとも依存することを特徴とする請求項3に記載の分流式流量計。
【請求項5】
前記識別部から前記分流比に関する情報を読み取る読取装置を更に備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の分流式流量計。
【請求項6】
前記分流比記憶装置に前記分流比に関する情報を入力するための入力装置を更に備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の分流式流量計。
【請求項7】
前記分流比に関する情報が、分流比の値であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の分流式流量計。
【請求項8】
前記分流比に関する情報に対応する分流比の値を照合する照合部を更に備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の分流式流量計。
【請求項9】
前記分流比に関する情報が光学的に識別されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の分流式流量計。
【請求項10】
前記分流比に関する情報が電波で識別されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の分流式流量計。
【請求項11】
前記分流比記憶装置が揮発性記憶装置であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の分流式流量計。
【請求項12】
前記分流比記憶装置が不揮発性記憶装置であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の分流式流量計。
【請求項13】
前記分流比に関する情報を表示する表示装置を更に備えることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の分流式流量計。
【請求項14】
前記分流比に関する情報を送信するための送信装置を更に備えることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の分流式流量計。
【請求項15】
前記分流比記憶装置が、前記分流路保持体に着脱可能に固定されていることを特徴とする請求項12に記載の分流式流量計。
【請求項16】
主流路、及び前記主流路に通じる一対の分流孔が設けられた主流路保持体と、
前記一対の分流孔を介して前記主流路と連通する分流路が設けられた、前記主流路保持体に着脱可能な分流路保持体と、
前記主流路及び前記一対の分流孔の流路抵抗に少なくとも依存する、前記分流路と前記主流路との分流比に関する情報を識別するための、前記主流路保持体に設けられた識別部と、
前記分流路を流れる流体の流量を検出するための流れセンサと、
前記識別部から読み出された前記分流比に関する情報を保存するための、前記分流路保持体に固定された分流比記憶装置と、
前記分流路を流れる流体の流量、及び前記分流比に関する情報に基づいて、前記主流路を流れる流体の流量を算出する算出回路と、
前記主流路を流れる流体の流量を制御するための制御弁と、
前記算出された流量に基づき、前記制御弁を駆動し、前記主流路を流れる流体の流量を調節するコントローラと、
を備えることを特徴とする流量制御装置。
【請求項17】
前記一対の分流孔の流路抵抗が、前記一対の分流孔のそれぞれの断面積に少なくとも依存することを特徴とする請求項16に記載の流量制御装置。
【請求項18】
前記主流路内の前記一対の分流孔の間の位置に配置された差圧発生構造を更に備えることを特徴とする請求項16又は17に記載の流量制御装置。
【請求項19】
前記主流路の流路抵抗が、前記差圧発生構造が配置された前記主流路の断面積に少なくとも依存することを特徴とする請求項18に記載の流量制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2010−107343(P2010−107343A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279363(P2008−279363)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】