分流式無段変速機のモード切り替え制御装置
【課題】分流式無段変速機のモード切り替えショックを軽減可能なモード切り替え制御を提案する。
【解決手段】バリエータのプーリ比がLow→Highモード切り替え開始判定用プーリ比Ip1未満(Ip1よりハイ側)になるt1よりローモードからハイモードへの切り替えを開始すべく、低速クラッチLow/Cをその締結油圧の低下により解放に向かわせ、高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cをその締結油圧の上昇により締結に向かわせる。t1から、バリエータプーリ比がLow→Highモード切り替え終了判定用プーリ比Ip2以上(Ip2よりロー側)になるt2までのモード切り替え時間ΔTm中に、Low/Cを締結油圧の更なる低下で解放させ、High&Rev/Cを締結油圧の更なる上昇で締結させ、これらクラッチの掛け替えによりモード切り替えを行う。ΔTm中には更に、バリエータ変速比を、時間軸(横軸)に対し放物線形状に時系列変化させて、バリエータをΔTcvt中、同期変速比(最ハイ変速比)に保つ。
【解決手段】バリエータのプーリ比がLow→Highモード切り替え開始判定用プーリ比Ip1未満(Ip1よりハイ側)になるt1よりローモードからハイモードへの切り替えを開始すべく、低速クラッチLow/Cをその締結油圧の低下により解放に向かわせ、高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cをその締結油圧の上昇により締結に向かわせる。t1から、バリエータプーリ比がLow→Highモード切り替え終了判定用プーリ比Ip2以上(Ip2よりロー側)になるt2までのモード切り替え時間ΔTm中に、Low/Cを締結油圧の更なる低下で解放させ、High&Rev/Cを締結油圧の更なる上昇で締結させ、これらクラッチの掛け替えによりモード切り替えを行う。ΔTm中には更に、バリエータ変速比を、時間軸(横軸)に対し放物線形状に時系列変化させて、バリエータをΔTcvt中、同期変速比(最ハイ変速比)に保つ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機が伝達すべきトルクを無段変速ユニットと、遊星歯車組などの回転伝動ユニットとに分流させて、変速機内部のトルク負担を軽減し、併せて変速機を軽量化した分流式無段変速機に関し、特にそのモード切り替え制御技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無段変速ユニットと、遊星歯車組などの回転伝動ユニットとを組み合わせた無段変速機としては従来、例えば特許文献1および特許文献2に記載のごときものが知られている。
特許文献1に記載の無段変速機は、いわゆる変速比無限大無段変速機である。
この変速比無限大無段変速機は、変速機ユニットのユニット入力軸とユニット出力軸との間に、トロイダル型の無段変速ユニットと変速操作し得ない減速機とを並列に設ける。
そして、これらユニット入力軸と無段変速ユニットの入力軸とを、動力循環モードクラッチを介して断接可能に結合する。
またユニット入力軸と減速機の出力軸とを結合し、無段変速ユニットの出力軸と、減速機の出力軸と、前記ユニット出力軸とを単純遊星歯車組を介して結合する。
更に、単純遊星歯車組のサンギヤとユニット出力軸との間には直結モードクラッチを挿置する。
【0003】
かかる変速比無限大無段変速機は、ユニット入力軸からユニット出力軸へ回転を伝達するに際しては、変速機ユニット内に設けた動力循環モードクラッチおよび直結モードクラッチの一方を締結し、他方を解放し、動力循環モードまたは直結モードを実現するものである。
【0004】
特許文献2に記載の無段変速機は、変速機の入力軸と出力軸との間に、トロイダル型の無段変速ユニットと、変速操作し得ない第二の動力伝達機構とを並列に設ける。
そして、これら変速機入力軸と無段変速ユニットの入力軸とを結合し、変速機入力軸と第二の動力伝達機構の入力軸とを結合する。
また無段変速ユニットの出力軸と、第二の動力伝達機構の出力軸と、前記変速機出力軸とを単純遊星歯車組を介して結合する。
更に単純遊星歯車組のリングギヤと第二の動力伝達機構の出力軸との間には高速用クラッチを挿置し、またリングギヤと無段変速ユニットの出力軸との間には低速用クラッチを挿置する。
そして遊星歯車組のキャリアと無段変速ユニットの出力軸とを結合し、リングギヤには回転を停止するためのブレーキを設ける。
【0005】
かかる無段変速機は、変速機の入力軸から出力軸へ回転を伝達するに際しては、低速用クラッチおよび高速用クラッチの一方を締結し、他方を解放し、低速モードまたは高速モードを実現するものである。
高速モードでは、エンジンから変速機の入力軸に入力されるトルクが、これら無段変速ユニットと、第二の動力伝達機構とを分流して、変速機の出力軸に伝達されることから、ダブルスプリット式無段変速機とも称せられる。
このようにトルクを分流することによって、無段変速ユニットを通過するトルクを小さくし、耐久性の向上と軽量化を図ることを狙ったものである。
【特許文献1】特開平9−89071号公報
【特許文献2】特開2002−21969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来のような変速比無限大無段変速機やダブルスプリット式無段変速機にあっては、以下に説明するような問題を生ずる。
【0007】
つまり、特許文献1に記載の変速比無限大無段変速機にあっては、高速走行時に用いられる直結モードで、エンジンからユニット入力軸に入力されるトルクが、無段変速ユニットのみを通過し、減速機には通過しない。
このため直結モードでは、減速機が何ら用をなさず、重量的に負担となる。
また、直結モードでは無段変速機のみがエンジントルクを伝達するため、その用に資するよう無段変速機の剛性および強度を十分確保しなければならず、変速機全体として耐久性の向上および軽量化、小型化を図ることができない。
【0008】
また、特許文献2に記載のダブルスプリット式無段変速機にあっては、低速モードで、エンジンから変速機入力軸に入力されるトルクが、無段変速機のみを通過し、第二の動力伝達機構には通過しない。
このため、特許文献1に記載の変速比無限大無段変速機におけると同様な上記の問題を生じる。
【0009】
このように特許文献1および2に記載の変速機にあっては、無段変速ユニットおよびこの無段変速ユニットを介せずエンジントルクを伝達する第二の動力伝達機構を、折角並列に配列したにもかかわらず、その分流効果を全ての速度領域で享受できないものとなっていた。
したがって、上記従来の変速機に用いられる無段変速ユニットとしてVベルト式無段変速機を採用した場合にあっては、分流式無段変速機でありながら、無段変速機単体の場合と同様にVベルトの強度や、トルク伝達中のVベルトを挟むためのクランプ圧を確保せざるを得ず、Vベルト式無段変速機の軽量化、小型化や、作動油を吐出するポンプの省力化を図ることができない。
【0010】
かかる問題解決のためには、1入力を2系統に分配出力する1入力2出力回転伝動ユニットと、一対の回転メンバ間の回転速度比を無段階に変化させ得る無段変速ユニットとを設け、
上記回転伝動ユニットの2出力系統を無段変速ユニットの一対の回転メンバにそれぞれ回転伝動可能に結合し、
上記回転伝動ユニットの一方の出力系統からのトルクと、他方の出力系統から上記無段変速ユニットを経由した後のトルクとの合計トルクを、無段変速ユニットによる変速下で共通な出力軸へ伝達可能にする第1モード用の第1クラッチと、
上記回転伝動ユニットの他方の出力系統からのトルクと、上記一方の出力系統から上記無段変速ユニットを経由した後のトルクとの合計トルクを、無段変速ユニットによる変速下で共通な出力軸へ伝達可能にする第2モード用の第2クラッチとを設け、
これら第1および第2クラッチの締結・解放による掛け替えにより第1モードおよび第2モード間でのモード切り替えを行うようにし、
これにより分流効果を全ての速度領域で享受することができるようにした分流式無段変速機が考えられる。
【0011】
ところで、かかる分流式無段変速機においては第1および第2クラッチの掛け替えにより第1モードおよび第2モード間でのモード切り替えを行うこととなり、当該クラッチの掛け替えに伴うショック、および無段変速ユニットの変速比の急変に伴うショックがそれぞれ、モード切り替えショックとなってモード切り替えショックが大きくなるという問題を生ずる。
【0012】
本発明は、上記型式の分流式無段変速機におけるモード切り替えショックを、無段変速ユニットの変速比の急変に伴うショックの軽減により緩和し得るようにしたモード切り替え制御装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的のため本発明による分流式無段変速機のモード切り替え制御装置は、請求項1に記載のごとくに構成する。
先ず前提となる分流式無段変速機を説明するに、これは、
1入力を2系統に分配出力する1入力2出力回転伝動ユニットと、一対の回転メンバ間の回転速度比を無段階に変化させ得る無段変速ユニットとを具え、
前記1入力2出力回転伝動ユニットの2出力系統を前記無段変速ユニットの一対の回転メンバにそれぞれ回転伝動可能に結合し、
前記1入力2出力回転伝動ユニットの一方の出力系統からのトルクと、他方の出力系統から前記無段変速ユニットを経由した後のトルクとの合計トルクを、無段変速ユニットによる変速下で共通な出力軸へ伝達可能にして第1モードを選択可能な第1クラッチと、
前記1入力2出力回転伝動ユニットの他方の出力系統からのトルクと、前記一方の出力系統から前記無段変速ユニットを経由した後のトルクとの合計トルクを、無段変速ユニットによる変速下で共通な出力軸へ伝達可能にして第2モードを選択可能な第2クラッチとを設け、
前記第1および第2クラッチの締結・解放による掛け替えにより第1モードおよび第2モード間でのモード切り替えを行うようにしたものである。
【0014】
本発明は、かかる分流式無段変速機において、
上記モード切り替え時に無段変速ユニットを所定時間中ほぼモード切り替え時変速比に保つよう構成した点に特徴づけられる。
【発明の効果】
【0015】
かかる本発明の構成によれば、モード切り替え時に無段変速ユニットを所定時間中ほぼモード切り替え時変速比に保つため、
モード切り替え時において無段変速ユニットの変速比が急変することがなく、これに伴うショックを緩和し得ることとなり、その分、分流式無段変速機におけるモード切り替えショックを軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例になるモード切り替え制御装置を具えた分流式無段変速機を例示するスケルトン図である。
この分流式無段変速機は、エンジンを横置きに搭載したフロントエンジン・フロントホイールドライブ車(FF車)用のトランスアクスルとして構成したもので、1入力2出力回転伝動ユニットであるラビニョオ型遊星歯車組1と、無段変速ユニットであるバリエータ2とを具える。
【0017】
バリエータ2は周知のVベルト式無段変速機とし、シャフト4を介して変速機ケースに回転自在に支持したプライマリプーリPriと、これに整列配置され、シャフト5を介して変速機ケースに回転自在に支持したセカンダリプーリSecと、これら両プーリ間に掛け渡したVベルト3とで構成する。
Vベルト式無段変速機2の変速のために、プライマリプーリPriおよびセカンダリプーリSecのそれぞれのV溝を形成するフランジのうち、一方の可動フランジを他方の固定フランジに対して相対的に接近してV溝幅を狭めたり、離反してV溝幅を広め得るようにし、
両可動フランジを、シリンダ室6,7へ供給するプライマリプーリ圧およびセカンダリプーリ圧間の差圧に応じた位置に変位させることで、無段変速機2の変速を無段階に行い得るものとする。
【0018】
プライマリプーリPriはエンジン(クランクシャフトのみを8で示す)に同軸に配置し、これらプライマリプーリPriおよびエンジンクランクシャフト8間にラビニョオ型遊星歯車組1を同軸に配置する。
ラビニョオ型遊星歯車組1は、プライマリプーリPriに近い側におけるシングルピニオン型遊星歯車組G1と、エンジンに近い側におけるダブルピニオン型遊星歯車組G2との組み合わせにより構成する。
【0019】
遊星歯車組G1は、サンギヤSun1と、遊星歯車組G1,G2に共通なロングピニオンPaと、遊星歯車組G1,G2に共通なリングギヤRingとよりなり、サンギヤSun1およびリングギヤRing間にロングピニオンPaを噛合させたものとする。
遊星歯車組G2は、サンギヤSun2と、ショートピニオンPbと、ロングピニオンPaと、リングギヤRingとよりなり、ショートピニオンPbおよびロングピニオンPaを相互に噛合させ、サンギヤSun1にショートピニオンPbを噛合させ、リングギヤRingにロングピニオンPaを噛合させたものとする。
そして、ロングピニオンPaおよびショートピニオンPbを共通なキャリアCarrに回転自在に支持する。
【0020】
以上の構成になるラビニョオ型遊星歯車組1は、リングギヤRingを後進時に反力要素として機能させ得るよう後進ブレーキRev/Bにより固定可能とし、キャリアCarrを入力要素として機能させるべく、変速機入力軸9および回転ダンパ10を順次介してキャリアCarrをエンジンクランクシャフト8に結合する。
そして、プライマリプーリシャフト4をサンギヤSun1の中心孔に挿通してサンギヤSun2に至らしめ、このサンギヤSun2に結合する。
【0021】
サンギヤSun1に第1分流歯車11を直接結合して設け、サンギヤSun2には、プライマリプーリシャフト4を介して第2分流歯車12を結合する。
第1分流歯車11と同じ軸直角面内に整列配置してセカンダリプーリシャフト5上に歯車13を回転自在に設けると共に、この歯車13を前進クラッチFwd/Cにより適宜セカンダリプーリシャフト5に結合可能とする。
第1分流歯車11および歯車13間に回転合わせのためアイドラギヤ14を介在させて、このアイドラギヤ14を第1分流歯車11および歯車13に噛合させる。
【0022】
プライマリプーリシャフト4およびセカンダリプーリシャフト5に対し平行に変速機出力軸15、および、ディファレンシャルギヤ装置16から突出する左右輪ドライブシャフト17a,17bを配置する。
なお図1は、分流式無段変速機をプライマリプーリシャフト4、セカンダリプーリシャフト5、変速機出力軸15、およびドライブシャフト17a,17bが全て同一面内に図示されるよう展開して示したが、実際はプライマリプーリシャフト4、セカンダリプーリシャフト5、変速機出力軸15、およびドライブシャフト17a,17bを図2に示す相関関係をもって配置するものとする。
【0023】
第1分流歯車11と同じ軸直角面内に整列配置して変速機出力軸15上に歯車18を回転自在に設けると共に、この歯車18を低速クラッチLow/Cにより適宜変速機出力軸15に結合可能とする。
第2分流歯車19と同じ軸直角面内に整列配置して変速機出力軸15上に歯車19を回転自在に設けると共に、この歯車19を高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cにより適宜変速機出力軸15に結合可能とする。
【0024】
変速機出力軸15上にはファイナルドライブピニオン21を結合して設け、ディファレンシャルギヤ装置16にはファイナルドライブリングギヤ22を結合して設け、これらピニオン21およびリングギヤ22を相互に噛合させて、ディファレンシャルギヤ装置16を駆動するファイナルドライブギヤ組を構成する。
【0025】
上記した分流式無段変速機の作用を以下に説明する。
この分流式無段変速機は、低速で前進走行するためのローモードと、高速で前進走行するためのハイモードと、後進走行用の後進モードとを具え、
図3に示すように、ローモードは、低速クラッチLow/Cおよび前進クラッチFwd/Cの締結により選択可能で、
ハイモードは、高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cおよび前進クラッチFwd/Cの締結により選択可能で、
後進モードは、高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cおよび後進ブレーキRev/Bの締結により選択可能である。
【0026】
これらモードの伝動状態を以下に順次説明する。
図4および図5はローモードでの伝動経路を示し、このローモードでは図4に●で示すように、低速クラッチLow/Cおよび前進クラッチFwd/Cを締結する。
この場合、後進ブレーキRev/Bが解放中(図3に○で示す)のため、リングギヤRingがトルク伝達に関与しないことから、エンジンクランクシャフト8からダンパー10および変速機入力軸9を介してラビニョオ型遊星歯車組1のキャリアCarrに入力されたエンジントルクTinは、サンギヤSun1,Sun2をそれぞれ回転させ、これらサンギヤSun1,Sun2への2系統へ分流トルクT1,T2として、図4および図5に破線矢印により示すごとくに分配出力される。
【0027】
サンギヤSun1からの分流トルクT1は歯車11にそのまま伝達される。
サンギヤSun2からの分流トルクT2は、プライマリプーリシャフト4からプライマリプーリPriに至ってVベルト3を連れ回し、その後このVベルト3を介してセカンダリプーリSecに伝達される。
セカンダリプーリSecに至った分流トルクT2はその後順次、セカンダリプーリシャフト5、締結中の前進クラッチFwd/C、歯車13、アイドラギヤ14を経て歯車11に至る。
これにより、キャリアCarrへの回転は、サンギヤSun2、バリエータ2、サンギヤSun1を順次経てキャリアCarrに戻り、分流式無段変速機内を循環する。
つまり、バリエータ2の変速比がサンギヤSun1,Sun2の回転数の関係を決定づける。
【0028】
サンギヤSun2に伝達される分流トルクT2は、上述したようにサンギヤSun1に戻り、サンギヤSun1から直接歯車11に伝達される分流トルクT1と合流して、この合流トルクToutが歯車18に伝達される。
歯車18に伝達された合流トルクToutは、締結中の低速クラッチLow/Cを介して変速機出力軸15に至り、その後ファイナルドライブギヤ組21,22およびディファレンシャルギヤ装置16を経てドライブシャフト17a,17bから図示せざる左右駆動輪に達する。
【0029】
なお上記のローモードにおいては、プライマリプーリシャフト4から歯車12を経て、変速機出力軸15上の歯車19にも回転が伝達されるが、当該ローモードでは高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cを解放させているため、歯車19は変速機出力軸15にトルクを伝達することなく、この軸上で空転するのみである。
【0030】
図6および図7はハイモードでの伝動経路を示し、このハイモードでは図6に●で示すように、高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cおよび前進クラッチFwd/Cを締結する。
この場合、後進ブレーキRev/Bが解放中(図3に○で示す)のため、リングギヤRingがトルク伝達に関与しないことから、エンジンクランクシャフト8からダンパー10および変速機入力軸9を介してラビニョオ型遊星歯車組1のキャリアCarrに入力されたエンジントルクTinは、サンギヤSun1,Sun2をそれぞれ回転させ、これらサンギヤSun1,Sun2への2系統へ分流トルクT1,T2として、図6および図7に破線矢印により示すごとくに分配出力される。
【0031】
サンギヤSun2からの分流トルクT2はプライマリプーリシャフト4を経て歯車12にそのまま伝達される。
サンギヤSun1からの分流トルクT1は、歯車11からアイドラギヤ14、歯車13、締結状態の前進クラッチFwd/C、セカンダリプーリシャフト5を経てセカンダリプーリSecに至ってVベルト3を連れ回し、その後このVベルト3を介してプライマリプーリPriに伝達される。
プライマリプーリPriに至った分流トルクT1はその後、セカンダリプーリシャフト5を経て歯車12に至る。
これにより、キャリアCarrへの回転は、サンギヤSun1、バリエータ2、サンギヤSun2を順次経てキャリアCarrに戻り、分流式無段変速機内を循環する。
つまり、バリエータ2の変速比がサンギヤSun1,Sun2の回転数の関係を決定づける。
【0032】
サンギヤSun1に伝達される分流トルクT1は、上述したようにサンギヤSun2に戻り、サンギヤSun2から直接歯車12に伝達される分流トルクT2と合流して、この合流トルクToutが歯車19に伝達される。
歯車19に伝達された合流トルクToutは、締結中の高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cを介して変速機出力軸15に至り、その後ファイナルドライブギヤ組21,22およびディファレンシャルギヤ装置16を経てドライブシャフト17a,17bから図示せざる左右駆動輪に達する。
【0033】
なお上記のハイモードにおいては、サンギヤSun1から歯車11を経て、変速機出力軸15上の歯車18にも回転が伝達されるが、当該ハイモードでは低速クラッチLow/Cを解放させているため、歯車18は変速機出力軸15にトルクを伝達することなく、この軸上で空転するのみである。
【0034】
図8および図9は後進モードでの伝動経路を示し、この後進モードでは図8に●で示すように、高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cおよび後進ブレーキRev/Bを締結する。
この場合、後進ブレーキRev/BによりリングギヤRingが固定され、反力要素として機能することから、エンジンクランクシャフト8からダンパー10および変速機入力軸9を介してラビニョオ型遊星歯車組1のキャリアCarrに入力されたエンジントルクTinは、サンギヤSun2を減速下に逆向き回転させ、このサンギヤSun2からの増大された逆向きトルクT2が、図8および図9に破線矢印により示すごとくに出力される。
【0035】
なお同時に、ラビニョオ型遊星歯車組1のキャリアCarrに入力されたエンジントルクTinは、サンギヤSun1をエンジンと同方向に回転させ、この回転が歯車11から、一方ではアイドラギヤ14を介して歯車13に至り、他方では歯車18に達するが、
これら歯車13,18は前進クラッチFwd/Cおよび低速クラッチLow/Cの解放によりセカンダリプーリシャフト5および変速機出力軸15から切り離されているため、これらセカンダリプーリシャフト5および変速機出力軸15にトルクを伝達することなく、対応する軸上で空転するのみである。
【0036】
サンギヤSun2からの減速逆回転トルクT2は、プライマリプーリシャフト4を経て歯車12にそのまま伝達され、その後歯車19に伝達される。
歯車19に伝達された減速逆回転トルクT2は、当該後進モードで締結されている高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cを介し出力トルクToutとして変速機出力軸15に至り、その後ファイナルドライブギヤ組21,22およびディファレンシャルギヤ装置16を経てドライブシャフト17a,17bから図示せざる左右駆動輪に達する。
【0037】
前記した前進用のローモードおよびハイモードにおいては、入力要素であるキャリアCarrの回転数を出力要素であるサンギヤSun1またはSun2の回転数で除算した値を、分流式無段変速機(トランスアクスル)の変速比と定義することができる。
また、バリエータ2(Vベルト式無段変速ユニット)のプーリ比(変速比)を、プライマリプーリPriの回転数/セカンダリプーリSecの回転数、と定義することができる。
このため、バリエータ変速比に対するトランスアクスル変速比の関係は、図10に示すようなものとなる。
【0038】
図10に示すように、ローモードではバリエータ変速比とトランスアクスル変速比とは比例関係になり、バリエータ2が最大(最ロー)変速比を選択している間は、トランスアクスルも最大(最ロー)変速比を選択する。
そして、図10に矢で示すようバリエータ2を最大(最ロー)変速比からアップシフトさせるにつれ、トランスアクスル変速比も最大(最ロー)変速比から徐々に小さくなってハイ側変速比となる。
【0039】
バリエータ2が引き続きのアップシフトにより最小(最ハイ)変速比になると、トランスアクスル変速比は1になり、この時、変速機出力軸15上の歯車18,19の回転数が同じになる。
この状態を表す図10上の点を一般にはRSP(同期点)と称し、この時におけるバリエータ2の変速比(プーリ比)を同期変速比(同期プーリ比)と称する。
【0040】
ハイモードでは同じく図10に示すように、バリエータ変速比とトランスアクスル変速比とはローモードの時とは逆の関係となり、バリエータ2が最小(最ハイ)変速比を選択している間はトランスアクスルが変速比1となり、
図10に破線矢印で示すようにバリエータ2を最小(最ハイ)変速比からダウンシフトさせるにつれ、トランスアクスル変速比は1から徐々に小さくなってハイ側変速比となる。
バリエータ2が引き続きのダウンシフトにより最大(最ロー)変速比になると、トランスアクスル変速比は最小(最ハイ)変速比になる。
【0041】
ところで、ローモードおよびハイモード間でのモード切り替えが、前記したモード説明から明らかなように、そして図3から明らかなように、低速クラッチLow/Cと高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cとの締結・解放による掛け替えによって行われることから、
これら低速クラッチLow/Cおよび高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cによって共通な変速機出力軸15に結合されるべき歯車18,19の回転数が同じになる図10の同期点RSPにおいて(バリエータ変速比が本例における同期変速比である最ハイ変速比である時に)上記のモード切り替えを行うのがショック対策上は最も好ましい。
【0042】
但し、同期点RSPでのモード切り替えが可能なのは、変速機出力回転速度変化(車速変化)に起因したオートアップシフトまたはオートダウンシフトに伴うモード切り替え時であり、
エンジントルクやエンジン回転数を急変させる運転操作の急変に起因した急変速に伴うモード切り替え時、例えば、バリエータ変速比が図10にAで示す変速比であってトランスアクスル変速比をXからYへと、若しくは逆にYからXへと変化させる必要のある急変速時などの場合は、急変速要求から同期点RSPでのモード切り替えは不可能であり、急変速要求時のバリエータ変速比Aでモード切り替えを行う必要がある。
【0043】
ところで、同期点RSPでのモード切り替えか、それ以外でのモード切り替えかを問わず、モード切り替えに際しては、低速クラッチLow/Cおよび高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cの締結・解放切り替えによって当該モード切り替えを行うことから、当該クラッチの掛け替えに伴うショックと、モード切り替え時における無段変速ユニットの変速比の急変に伴うショックとがそれぞれ、モード切り替えショックの原因となってモード切り替えショックが大きくなる傾向にある。
【0044】
そこで本実施例においては、変速機出力回転速度変化(車速変化)に起因したオートアップシフトまたはオートダウンシフトに伴うモード切り替え要求のために図10の同期点RSPでモード切り替えを行う場合は、図11に示すモード切り替え制御により、前記型式の分流式無段変速機におけるモード切り替えを図12および図13に示すごとくに行って、モード切り替えショックを軽減することとする。
【0045】
図11のステップS1においては、現在のモードがローモードか、ハイモードかをチェックする。
ローモードであればステップS2において、ローモードからハイモードへのモード切り替え中であるか否かをチェックする。
ローモードからハイモードへのモード切り替え中でなければステップS3において、バリエータプーリ比が図12に例示する当該モード切り替え(Low→Highモード切り替え)開始判定用プーリ比Ip1未満(Ip1よりハイ側)になったか否かにより、ローモードからハイモードへのモード切り替えを開始すべき図12の瞬時t1に至ったか否かをチェックする。
【0046】
ステップS3でバリエータプーリ比が未だLow→Highモード切り替え開始判定用プーリ比Ip1未満になっていないと判定する図12の瞬時t1よりも前の時点では、制御をステップS4に進めてローモードを維持する。
ステップS3でバリエータプーリ比がLow→Highモード切り替え開始判定用プーリ比Ip1未満になったと判定する図12の瞬時t1以後は、制御をステップS5に進めてローモードからハイモードへの切り替えを開始させる。
【0047】
このモード切り替えは前記したごとく、低速クラッチLow/Cの解放と、高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cの締結とによる、クラッチの掛け替えにより遂行するもので、従って、図12に示すごとく瞬時t1より低速クラッチLow/Cの締結油圧を低下させると同時に、高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cの締結油圧を上昇させる。
【0048】
これによりローモードからハイモードへの切り替えが開始された後は、当該モード切り替えの開始に呼応してステップS2が制御をステップS6へ進めるようになり、このステップS6においては、バリエータプーリ比が図12に例示する当該モード切り替え(Low→Highモード切り替え)終了判定用プーリ比Ip2以上(Ip2よりロー側)になったか否かにより、ローモードからハイモードへのモード切り替えを終了すべき図12の瞬時t2に至ったか否かをチェックする。
なお図12では、Low→Highモード切り替え開始判定用プーリ比Ip1と、Low→Highモード切り替え終了判定用プーリ比Ip2とを同じとしたが、異ならせてもよい。
【0049】
ステップS6でバリエータプーリ比がLow→Highモード切り替え終了判定用プーリ比Ip2以上になっていないと判定する図12の瞬時t2よりも前、つまり瞬時t1〜t2間のモード切り替え時間ΔTm中は、制御をステップS7に進めて上記したローモードからハイモードへのモード切り替え制御を継続させる。
これにより図12の瞬時t1〜t2間におけるモード切り替え時間ΔTm中、低速クラッチLow/Cがその締結油圧の更なる低下で解放を進行されると同時に、高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cがその締結油圧の更なる上昇で締結を進行され、これらクラッチLow/CおよびHigh&Rev/Cの掛け替えを瞬時t2に終了させるように低速クラッチLow/Cの締結油圧低下勾配および高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cの締結油圧上昇勾配を決定する。
【0050】
かかるクラッチLow/CおよびHigh&Rev/Cの掛け替えを行うモード切り替え時間ΔTm中においては同時に、バリエータ変速比を図12に示すごとく、横軸である時間軸に対し放物線形状に時系列変化させて、バリエータ2の変速速度が同期変速比である最ハイ変速比の時に最低となるようにし、これによりバリエータ2を所定時間ΔTcvt中ほぼ同期変速比(最ハイ変速比)に保つようにする。
【0051】
ところで、バリエータ変速比を図12に示すごとくモード切り替え時間ΔTm中に時間軸に対し放物線形状に時系列変化させる場合、当該モード切り替え時間ΔTm中においてトランスアクスル変速比が、図12の拡大詳細説明図である図13に示すようにローモード側ではハッチング部分だけハイ側傾向になり、ハイモード側ではハッチング部分だけロー側傾向になるため、トランスアクスル出力トルクが図13に破線で示すごとくにローモード側では不足傾向となり、ハイモード側では過大傾向となる。
これらの傾向は、モード切り替え中においてトランスアクスル出力トルクの不連続を生じさせたり、滑らかな変化を妨げてショックの原因となる。
【0052】
これを防止するため本実施例では図13に示すように、低速クラッチLow/Cおよび高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cの掛け替えによるモード切り替え時間ΔTm中、ローモード側ではトランスアクスル出力トルクの上記不足傾向を解消するエンジントルク増大量ΔTeだけエンジントルクを増大補正し、ハイモード側ではトランスアクスル出力トルクの上記過大傾向を解消するエンジントルク減少量ΔTeだけエンジントルクを低下補正する。
かかるエンジントルク補正量ΔTeによりトランスアクスル出力トルクは、図13に破線で示す時系列変化から実線で示すごとく滑らかに時系列変化するようなものとなり、モード切り替えショックを軽減することができる。
【0053】
図11のステップS6でバリエータ変速比が、図12に例示するモード切り替え(Low→Highモード切り替え)終了判定用プーリ比Ip2以上(Ip2よりロー側)になったと判定する時は、つまり、図12に示すローモードからハイモードへのモード切り替え終了瞬時t2に至ったと判定する時は、ステップS8において当該モード切り替え終了判定に呼応し、ハイモードを維持する。
【0054】
以上説明した本実施例のローモードからハイモードへのモード切り替え制御によれば、
モード切り替え時間ΔTm中にバリエータ2(無段変速ユニット)を所定時間ΔTcvtの間、ほぼモード切り替え時変速比(上記実施例ではバリエータ2の同期変速比である最ハイ変速比)に保つため、
モード切り替え時においてバリエータ2(無段変速ユニット)の変速比が急変することがなく、これに伴うショックを緩和し得ることとなり、その分、分流式無段変速機におけるモード切り替えショックを軽減することができる。
【0055】
なお本実施例では、モード切り替え時間ΔTm中にバリエータ2(無段変速ユニット)を所定時間ΔTcvtの間、ほぼモード切り替え時変速比(バリエータ2の同期変速比である最ハイ変速比)に保つに際し、バリエータ変速比をモード切り替え時間ΔTm中、時間軸に対し放物線形状に時系列変化させることにより所期の目的を達成することとしたため、
モード切り替え前後でバリエータ2が回転方向は不変に保たれるものの、トルクの入出力方向を逆転されることから、モード切り替え時に伝動要素間のガタ詰めショックに伴うモード切り替えショックが発生するところながら、このような伝動要素間のガタ詰めショックを緩和することができ、これに伴うモード切り替えショックを緩和することができる。
【0056】
ところで前記した実施例においては、モード切り替え時間ΔTmを決定するLow→Highモード切り替え開始判定用プーリ比Ip1およびLow→Highモード切り替え終了判定用プーリ比Ip2を固定値として説明したが、
これらLow→Highモード切り替え開始判定用プーリ比Ip1およびLow→Highモード切り替え終了判定用プーリ比Ip2は、モード切り替え時のエンジントルク(入力トルク)が大きいほど、また、エンジン回転数(入力回転数)が高いほど大きく(ロー側の変速比と)してモード切り替え時間ΔTmを長くし、
このモード切り替え時間ΔTm中に行う低速クラッチLow/Cおよび高速兼後進クラッチHigh&Rev/C間の締結・解放による掛け替えを、モード切り替え時のエンジントルク(入力トルク)が大きいほど、また、エンジン回転数(入力回転数)が高いほどゆっくりと行わせるのがよい。
【0057】
かようにすることにより、モード切り替え時のエンジントルク(入力トルク)が大きいほど、また、エンジン回転数(入力回転数)が高いほど低速クラッチLow/Cおよび高速兼後進クラッチHigh&Rev/C間の締結・解放による掛け替え時のショックが大きくなる傾向になるところながら、当該クラッチの掛け替えによるモード切り替えショックを緩和することができる。
【0058】
また、Low→Highモード切り替え開始判定用プーリ比Ip1およびLow→Highモード切り替え終了判定用プーリ比Ip2は作動油温が低いほど大きく(ロー側の変速比と)してモード切り替え時間ΔTmを長くし、
このモード切り替え時間ΔTm中に行う低速クラッチLow/Cおよび高速兼後進クラッチHigh&Rev/C間の締結・解放による掛け替えを、作動油温が低い時ほどゆっくりと行わせるのがよい。
かようにすることにより、作動油温が低い時ほど低速クラッチLow/Cおよび高速兼後進クラッチHigh&Rev/C間の締結・解放による掛け替え時のショックが大きくなる傾向になるところながら、当該クラッチの掛け替えによるモード切り替えショックを緩和することができる。
【0059】
上記はローモードからハイモードへのモード切り替え制御であるが、時間が図12および図13の時間軸(横軸)上で逆に右から左へ経過した場合に相当するハイモードからローモードへのモード切り替え時は、図11のステップS1から制御をステップS11へ進めることにより当該モード切り替え制御を行う。
なお以下では便宜上、時間が図12および図13の時間軸(横軸)上で右から左へ経過することとして説明を展開する。
【0060】
図11のステップS1で現在のモードがハイモードであると判定される時に選択されるステップS11においては、ハイモードからローモードへのモード切り替え中であるか否かをチェックする。
ハイモードからローモードへのモード切り替え中でなければステップS13において、バリエータプーリ比が図12に例示する当該モード切り替え(High→Lowモード切り替え)開始判定用プーリ比Ip4未満(Ip4よりハイ側)になったか否かにより、ハイモードからローモードへのモード切り替えを開始すべき図12の瞬時t2に至ったか否かをチェックする。
【0061】
ステップS13でバリエータプーリ比が未だHigh→Lowモード切り替え開始判定用プーリ比Ip4未満になっていないと判定する図12の瞬時t2よりも前の時点では、制御をステップS14に進めてハイモードを維持する。
ステップS13でバリエータプーリ比がHigh→Lowモード切り替え開始判定用プーリ比Ip4未満になったと判定する図12の瞬時t2以後は、制御をステップS15に進めてハイモードからローモードへの切り替えを開始させる。
【0062】
このモード切り替えは前記したごとく、低速クラッチLow/Cの締結と、高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cの解放とによる、クラッチの掛け替えにより遂行するもので、従って、図12に示すごとく瞬時t2より低速クラッチLow/Cの締結油圧を上昇させると同時に、高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cの締結油圧を低下させる。
【0063】
これによりハイモードからローモードへの切り替えが開始された後は、当該モード切り替えの開始に呼応してステップS11が制御をステップS16へ進めるようになり、このステップS16においては、バリエータプーリ比が図12に例示する当該モード切り替え(High→Lowモード切り替え)終了判定用プーリ比Ip3以上(Ip3よりロー側)になったか否かにより、ハイモードからローモードへのモード切り替えを終了すべき図12の瞬時t1に至ったか否かをチェックする。
なお図12では、High→Lowモード切り替え開始判定用プーリ比Ip4と、High→Lowモード切り替え終了判定用プーリ比Ip3とを同じとしたが、異ならせてもよい。
またHigh→Lowモード切り替え開始判定用プーリ比Ip4およびHigh→Lowモード切り替え終了判定用プーリ比Ip3をそれぞれ図示では、Low→Highモード切り替え開始判定用プーリ比Ip1およびLow→Highモード切り替え終了判定用プーリ比Ip2と同じとしたが、同じである必要はない。
【0064】
ステップS16でバリエータプーリ比がHigh→Lowモード切り替え終了判定用プーリ比Ip3以上になっていないと判定する図12の瞬時t1よりも前、つまり瞬時t2〜t1間のモード切り替え時間ΔTm中は、制御をステップS17に進めて上記したハイモードからローモードへのモード切り替え制御を継続させる。
これにより図12の瞬時t2〜t1間におけるモード切り替え時間ΔTm中、低速クラッチLow/Cがその締結油圧の更なる上昇で締結を進行されると同時に、高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cがその締結油圧の更なる低下で解放を進行され、これらクラッチLow/CおよびHigh&Rev/Cの掛け替えを瞬時t1に終了させるように低速クラッチLow/Cの締結油圧上昇勾配および高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cの締結油圧低下勾配を決定する。
【0065】
かかるクラッチLow/CおよびHigh&Rev/Cの掛け替えを行うモード切り替え時間ΔTm中においては同時に、バリエータ変速比を図12に示すごとく、横軸である時間軸に対し放物線形状に時系列変化させて、バリエータ2の変速速度が同期変速比である最ハイ変速比の時に最低となるようにし、これによりバリエータ2を所定時間ΔTcvt中ほぼ同期変速比(最ハイ変速比)に保つようにする。
【0066】
ところで、バリエータ変速比を図12に示すごとくモード切り替え時間ΔTm中に時間軸に対し放物線形状に時系列変化させる場合、当該モード切り替え時間ΔTm中においてトランスアクスル変速比が、図12の拡大詳細説明図である図13に示すようにハイモード側ではハッチング部分だけロー側傾向になり、ローモード側ではハッチング部分だけハイ側傾向になるため、トランスアクスル出力トルクが図13に破線で示すごとくにハイモード側では過大傾向となり、ローモード側では不足傾向となる。
これらの傾向は、モード切り替え中においてトランスアクスル出力トルクの不連続を生じさせたり、滑らかな変化を妨げてショックの原因となる。
【0067】
これを防止するため本実施例では図13に示すように、低速クラッチLow/Cおよび高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cの掛け替えによるモード切り替え時間ΔTm中、ハイモード側ではトランスアクスル出力トルクの上記過大傾向を解消するエンジントルク減少量ΔTeだけエンジントルクを低下補正し、ローモード側ではトランスアクスル出力トルクの上記不足傾向を解消するエンジントルク増大量ΔTeだけエンジントルクを増大補正する。
かかるエンジントルク補正量ΔTeによりトランスアクスル出力トルクは、図13に破線で示す時系列変化から実線で示すごとく滑らかに時系列変化するようなものとなり、モード切り替えショックを軽減することができる。
【0068】
図11のステップS16でバリエータ変速比が、図12に例示するモード切り替え(High→Lowモード切り替え)終了判定用プーリ比Ip3以上(Ip3よりロー側)になったと判定する時は、つまり、図12に示すハイモードからローモードへのモード切り替え終了瞬時t1に至ったと判定する時は、ステップS18において当該モード切り替え終了判定に呼応し、ローモードを維持する。
【0069】
以上説明した本実施例のハイモードからローモードへのモード切り替え制御によれば、
モード切り替え時間ΔTm中にバリエータ2(無段変速ユニット)を所定時間ΔTcvtの間、ほぼモード切り替え時変速比(上記実施例ではバリエータ2の同期変速比である最ハイ変速比)に保つため、
モード切り替え時においてバリエータ2(無段変速ユニット)の変速比が急変することがなく、これに伴うショックを緩和し得ることとなり、その分、分流式無段変速機におけるモード切り替えショックを軽減することができる。
【0070】
なお本実施例では、モード切り替え時間ΔTm中にバリエータ2(無段変速ユニット)を所定時間ΔTcvtの間、ほぼモード切り替え時変速比(バリエータ2の同期変速比である最ハイ変速比)に保つに際し、バリエータ変速比をモード切り替え時間ΔTm中、時間軸に対し放物線形状に時系列変化させることにより所期の目的を達成することとしたため、
モード切り替え前後でバリエータ2が回転方向は不変に保たれるものの、トルクの入出力方向を逆転されることから、モード切り替え時に伝動要素間のガタ詰めショックに伴うモード切り替えショックが発生するところながら、このような伝動要素間のガタ詰めショックを緩和することができ、これに伴うモード切り替えショックを緩和することができる。
【0071】
ところで前記した実施例においては、モード切り替え時間ΔTmを決定するHigh→Lowモード切り替え開始判定用プーリ比Ip4およびHigh→Lowモード切り替え終了判定用プーリ比Ip3を固定値として説明したが、
これらHigh→Lowモード切り替え開始判定用プーリ比Ip4およびHigh→Lowモード切り替え終了判定用プーリ比Ip3は、モード切り替え時のエンジントルク(入力トルク)が大きいほど、また、エンジン回転数(入力回転数)が高いほど大きく(ロー側の変速比と)してモード切り替え時間ΔTmを長くし、
このモード切り替え時間ΔTm中に行う低速クラッチLow/Cおよび高速兼後進クラッチHigh&Rev/C間の締結・解放による掛け替えを、モード切り替え時のエンジントルク(入力トルク)が大きいほど、また、エンジン回転数(入力回転数)が高いほどゆっくりと行わせるのがよい。
【0072】
かようにすることにより、モード切り替え時のエンジントルク(入力トルク)が大きいほど、また、エンジン回転数(入力回転数)が高いほど低速クラッチLow/Cおよび高速兼後進クラッチHigh&Rev/C間の締結・解放による掛け替え時のショックが大きくなる傾向になるところながら、当該クラッチの掛け替えによるモード切り替えショックを緩和することができる。
【0073】
また、High→Lowモード切り替え開始判定用プーリ比Ip4およびHigh→Lowモード切り替え終了判定用プーリ比Ip3は作動油温が低いほど大きく(ロー側の変速比と)してモード切り替え時間ΔTmを長くし、
このモード切り替え時間ΔTm中に行う低速クラッチLow/Cおよび高速兼後進クラッチHigh&Rev/C間の締結・解放による掛け替えを、作動油温が低い時ほどゆっくりと行わせるのがよい。
かようにすることにより、作動油温が低い時ほど低速クラッチLow/Cおよび高速兼後進クラッチHigh&Rev/C間の締結・解放による掛け替え時のショックが大きくなる傾向になるところながら、当該クラッチの掛け替えによるモード切り替えショックを緩和することができる。
【0074】
上記はいずれも、図10の同期点RSPでモード切り替えを行う、車速変化に起因したオートアップシフトまたはオートダウンシフトに伴うモード切り替え時の制御であるが、次に、エンジントルクやエンジン回転数を急変させる運転操作の急変に起因した急変速に伴うモード切り替え時、例えば、バリエータ変速比が図10にAで示す変速比であってトランスアクスル変速比をXからYへと、若しくは逆にYからXへと変化させる必要のある急変速時のモード切り替え制御を説明する。
【0075】
かかる急変速要求としては、高速走行から急ブレーキによる急減速を行った場合のダウンシフト要求(大きなエンジンブレーキや、再加速用に大きな駆動力が要求されるため)や、アクセルペダルから足を離した時の燃費向上用に行うアップシフトがある。
このような急変速に伴うモード切り替えは、同期点RSPでのモード切り替えは不可能であり、急変速要求時におけるバリエータ変速比A(モード切り替え時変速比)でモード切り替えを行う必要がある。
【0076】
かかる急変速時モード切り替えにおいても、前記したオート変速時モード切り替え時と同じく、低速クラッチLow/Cおよび高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cの締結・解放切り替えに伴うショックと、モード切り替え時における無段変速ユニットの変速比の急変に伴うショックとがそれぞれ、モード切り替えショックの原因となってモード切り替えショックが大きくなる傾向にある。
【0077】
そこで本実施例においては、この急変速時モード切り替えを図14に示すモード切り替え制御により図15に示すごとくに行って、モード切り替えショックを軽減することとする。
図14は、図11のステップS3をステップS23に置換し、ステップS13をステップS33に置換したもので、他のステップは図11におけると同様なものとする。
【0078】
ステップS1で現在のモードがローモードであると判定し、ステップS2でローモードからハイモードへのモード切り替え中でない判定する時に選択されるステップS23においては、Low→Highモード切り替えを伴う急変速要求があるか否かをチェックする。
なお以下では、Low→Highモード切り替えを伴う急変速要求として、バリエータ変速比が例えば図10にAで示す変速比である時にトランスアクスル変速比をXからYへと変化させる急変速要求を例にとり説明を展開することとする。
【0079】
ステップS23で急変速による上記のLow→Highモード切り替え要求がないと判定する時は、制御をステップS4に進めてローモードを維持する。
ステップS23で急変速による上記のLow→Highモード切り替え要求があると判定する時は、制御をステップS5に進めてローモードからハイモードへの切り替えを開始させる。
このモード切り替えは前記したごとく、低速クラッチLow/Cの解放と、高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cの締結とによる、クラッチの掛け替えにより遂行するもので、従って、急変速によるLow→Highモード切り替え要求があると判定する時より低速クラッチLow/Cの締結油圧を低下させると同時に、高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cの締結油圧を上昇させ、これらクラッチの掛け替えによりLow→Highモード切り替えを開始させる。
【0080】
これによりローモードからハイモードへの切り替えが開始された後は、当該モード切り替えの開始に呼応してステップS2が制御をステップS6へ進めるようになり、
このステップS6において、バリエータプーリ比が図15に例示する当該モード切り替え(Low→Highモード切り替え)終了判定用プーリ比Ip2以上(Ip2よりロー側)になったと判定する時、つまり、ローモードからハイモードへのモード切り替えを終了すべき図15の瞬時t2に至る時までの間、
ステップS7で上記したローモードからハイモードへのモード切り替え制御を継続させる。
【0081】
これにより、急変速によるLow→Highモード切り替え要求があった時から図15の瞬時t2までの間、低速クラッチLow/Cがその締結油圧の更なる低下で解放を進行されると同時に、高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cがその締結油圧の更なる上昇で締結を進行され、これらクラッチLow/CおよびHigh&Rev/Cの掛け替えを瞬時t2に終了させるように低速クラッチLow/Cの締結油圧低下勾配および高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cの締結油圧上昇勾配を決定する。
【0082】
かかるクラッチLow/CおよびHigh&Rev/Cの掛け替えによるモード切り替え中においては同時に、バリエータ変速比を図15に示すごとく、横軸である時間軸に対し放物線形状に時系列変化させて、バリエータ2の変速速度が急変速モード切り替え時変速比Aである時に最低となるようにし、これによりバリエータ2を所定時間ΔTcvt中ほぼ急変速モード切り替え時変速比Aに保つようにして、前記実施例と同様にモード切り替えショックの低減効果を図る。
【0083】
しかし、当該急変速モード切り替え時はこれによっても尚バリエータ2の変速速度を十分に低下し切れず、バリエータ2の変速がトランスアクスル変速比を図15に示すように不連続なものとなして、トランスアクスル出力トルクを図15に破線で示すごとくに不連続にする。
つまり、切り替え前のローモード側においては図15に示すごとくトランスアクスルのロー変速比傾向が強く、トランスアクスル出力トルクを図15に破線で示すごとくに過大傾向となし、切り替え後のハイモード側においては図15に示すごとくトランスアクスルのハイ変速比傾向が強く、トランスアクスル出力トルクを図15に破線で示すごとくに不足傾向となし、モード切り替え時におけるトランスアクスル出力トルク段差に起因したモード切り替えショックを発生する。
【0084】
そこで本実施例においてはこの問題を解決するため図15に示すように、モード切り替え中、ローモード側ではトランスアクスル出力トルクの上記過大傾向を解消すべくエンジントルク減少量ΔTeだけエンジントルクを低下補正し、ハイモード側ではトランスアクスル出力トルクの上記不足傾向を解消すべくエンジントルク増大量ΔTeだけエンジントルクを増大補正する。
かかるエンジントルク補正量ΔTeによりトランスアクスル出力トルクは、図15に破線で示す時系列変化から実線で示すごとく滑らかに時系列変化するようなものとなり、急変速モード切り替え時における上記したモード切り替えショックの問題を解消することができる。
【0085】
上記はローモードからハイモードへの急変速モード切り替え制御であるが、時間が図15の時間軸(横軸)上で逆に右から左へ経過した場合に相当するハイモードからローモードへの急変速モード切り替え時は、図11のステップS1から制御をステップS11へ進めることにより当該モード切り替え制御を行う。
なお以下では便宜上、時間が図12および図13の時間軸(横軸)上で右から左へ経過することとして説明を展開する。
【0086】
図14のステップS1で現在のモードがハイモードであると判定し、ステップS11でハイモードからローモードへのモード切り替え中でない判定する時に選択されるステップS33においては、High→Lowモード切り替えを伴う急変速要求があるか否かをチェックする。
なお以下では、High→Lowモード切り替えを伴う急変速要求として、バリエータ変速比が例えば図10にAで示す変速比である時にトランスアクスル変速比をYからXへと変化させる急変速要求を例にとり説明を展開することとする。
【0087】
ステップS33で急変速による上記のHigh→Low モード切り替え要求がないと判定する時は、制御をステップS14に進めてハイモードを維持する。
ステップS33で急変速による上記のHigh→Low モード切り替え要求があると判定する時は、制御をステップS15に進めてハイモードからローモードへの切り替えを開始させる。
このモード切り替えは前記したごとく、低速クラッチLow/Cの締結と、高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cの解放とによる、クラッチの掛け替えにより遂行するもので、従って、急変速によるHigh→Low モード切り替え要求があると判定する時より低速クラッチLow/Cの締結油圧を上昇させると同時に、高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cの締結油圧を低下させ、これらクラッチの掛け替えによりHigh→Low モード切り替えを開始させる。
【0088】
これによりハイモードからローモードへの切り替えが開始された後は、当該モード切り替えの開始に呼応してステップS11が制御をステップS16へ進めるようになり、
このステップS16において、バリエータプーリ比が図15に例示する当該モード切り替え(High→Low モード切り替え)終了判定用プーリ比Ip3以上(Ip3よりロー側)になったと判定する時、つまり、ハイモードからローモードへのモード切り替えを終了すべき図15の瞬時t1に至る時までの間、
ステップS17で上記したハイモードからローモードへのモード切り替え制御を継続させる。
【0089】
これにより、急変速によるHigh→Low モード切り替え要求があった時から図15の瞬時t1までの間、低速クラッチLow/Cがその締結油圧の更なる上昇で締結を進行されると同時に、高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cがその締結油圧の更なる低下で解放を進行され、これらクラッチLow/CおよびHigh&Rev/Cの掛け替えを瞬時t1に終了させるように低速クラッチLow/Cの締結油圧上昇勾配および高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cの締結油圧低下勾配を決定する。
【0090】
かかるクラッチLow/CおよびHigh&Rev/Cの掛け替えによるモード切り替え中においては同時に、バリエータ変速比を図15に示すごとく、横軸である時間軸に対し放物線形状に時系列変化させて、バリエータ2の変速速度が急変速モード切り替え時変速比Aである時に最低となるようにし、これによりバリエータ2を所定時間ΔTcvt中ほぼ急変速モード切り替え時変速比Aに保つようにして、前記実施例と同様にモード切り替えショックの低減効果を図る。
【0091】
しかし、当該急変速モード切り替え時はこれによっても尚バリエータ2の変速速度を十分に低下し切れず、バリエータ2の変速がトランスアクスル変速比を図15に示すように不連続なものとなして、トランスアクスル出力トルクを図15に破線で示すごとくに不連続にする。
つまり、切り替え前のハイモード側においては図15に示すごとくトランスアクスルのハイ変速比傾向が強く、トランスアクスル出力トルクを図15に破線で示すごとくに不足傾向となし、切り替え後のローモード側においては図15に示すごとくトランスアクスルのハイ変速比傾向が強く、トランスアクスル出力トルクを図15に破線で示すごとくに過大傾向となし、モード切り替え時におけるトランスアクスル出力トルク段差に起因したモード切り替えショックを発生する。
【0092】
そこで本実施例においてはこの問題を解決するため図15に示すように、モード切り替え中、ハイモード側ではトランスアクスル出力トルクの上記不足傾向を解消すべくエンジントルク増大量ΔTeだけエンジントルクを増大補正し、ローモード側ではトランスアクスル出力トルクの上記過大傾向を解消すべくエンジントルク減少量ΔTeだけエンジントルクを低下補正する。
かかるエンジントルク補正量ΔTeによりトランスアクスル出力トルクは、図15に破線で示す時系列変化から実線で示すごとく滑らかに時系列変化するようなものとなり、急変速モード切り替え時における上記したモード切り替えショックの問題を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の一実施例になるモード切り替え制御装置を具えた分流式無段変速機を例示するスケルトン図である。
【図2】図1に示す分流式無段変速機を軸線方向に見て示す正面図である。
【図3】図1に示す分流式無段変速機のクラッチおよびブレーキの締結・解放の組み合わせと、選択可能なモードとの関係を示す締結論理図である。
【図4】図1に示す分流式無段変速機のローモード選択時における伝動経路を示す、図1と同様なスケルトン図である。
【図5】図1に示す分流式無段変速機のローモード選択時における伝動経路を示す、図2と同様な正面図である。
【図6】図1に示す分流式無段変速機のハイモード選択時における伝動経路を示す、図1と同様なスケルトン図である。
【図7】図1に示す分流式無段変速機のハイモード選択時における伝動経路を示す、図2と同様な正面図である。
【図8】図1に示す分流式無段変速機の後進モード選択時における伝動経路を示す、図1と同様なスケルトン図である。
【図9】図1に示す分流式無段変速機の後進モード選択時における伝動経路を示す、図2と同様な正面図である。
【図10】図1に示す分流式無段変速機の変速パターン図である。
【図11】図1に示す分流式無段変速機のオート変速に伴うモード切り替えを実行する時の制御プログラムを示すフローチャートである。
【図12】図11に示すオート変速に伴うモード切り替え制御の動作タイムチャートである。
【図13】図12に示すオート変速モード切り替え時に実行すべきエンジントルク補正制御の動作タイムチャートである。
【図14】図1に示す分流式無段変速機の急変速に伴うモード切り替えを実行する時の制御プログラムを示すフローチャートである。
【図15】図14に示す急変速モード切り替え制御、および、これと共に実行すべきエンジントルク補正制御の動作タイムチャートである。
【符号の説明】
【0094】
1 ラビニョオ型遊星歯車組(1入力2出力回転伝動ユニット)
2 バリエータ(無段変速ユニット)
3 Vベルト
4 プライマリプーリシャフト
5 セカンダリプーリシャフト
Pri プライマリプーリ
Sec セカンダリプーリ
6,7 変速シリンダ室
8 エンジンクランクシャフト
G1 シングルピニオン型遊星歯車組
G2 ダブルピニオン型遊星歯車組
Sun1 サンギヤ
Sun2 サンギヤ
Pa ロングピニオン
Pb ショートピニオン
Ring リングギヤ
Carr キャリア
Rev/B 後進ブレーキ
Fwd/C 前進クラッチ
Low/C 低速クラッチ
High&Rev/C 高速兼後進クラッチ
9 変速機入力軸
10 回転ダンパ
11 第1分流歯車
12 第2分流歯車
13 歯車
14 アイドラギヤ
15 変速機出力軸
16 ディファレンシャルギヤ装置
17a,17b 左右輪ドライブシャフト
18 歯車
19 歯車
21 ファイナルドライブピニオン
22 ファイナルドライブリングギヤ
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機が伝達すべきトルクを無段変速ユニットと、遊星歯車組などの回転伝動ユニットとに分流させて、変速機内部のトルク負担を軽減し、併せて変速機を軽量化した分流式無段変速機に関し、特にそのモード切り替え制御技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無段変速ユニットと、遊星歯車組などの回転伝動ユニットとを組み合わせた無段変速機としては従来、例えば特許文献1および特許文献2に記載のごときものが知られている。
特許文献1に記載の無段変速機は、いわゆる変速比無限大無段変速機である。
この変速比無限大無段変速機は、変速機ユニットのユニット入力軸とユニット出力軸との間に、トロイダル型の無段変速ユニットと変速操作し得ない減速機とを並列に設ける。
そして、これらユニット入力軸と無段変速ユニットの入力軸とを、動力循環モードクラッチを介して断接可能に結合する。
またユニット入力軸と減速機の出力軸とを結合し、無段変速ユニットの出力軸と、減速機の出力軸と、前記ユニット出力軸とを単純遊星歯車組を介して結合する。
更に、単純遊星歯車組のサンギヤとユニット出力軸との間には直結モードクラッチを挿置する。
【0003】
かかる変速比無限大無段変速機は、ユニット入力軸からユニット出力軸へ回転を伝達するに際しては、変速機ユニット内に設けた動力循環モードクラッチおよび直結モードクラッチの一方を締結し、他方を解放し、動力循環モードまたは直結モードを実現するものである。
【0004】
特許文献2に記載の無段変速機は、変速機の入力軸と出力軸との間に、トロイダル型の無段変速ユニットと、変速操作し得ない第二の動力伝達機構とを並列に設ける。
そして、これら変速機入力軸と無段変速ユニットの入力軸とを結合し、変速機入力軸と第二の動力伝達機構の入力軸とを結合する。
また無段変速ユニットの出力軸と、第二の動力伝達機構の出力軸と、前記変速機出力軸とを単純遊星歯車組を介して結合する。
更に単純遊星歯車組のリングギヤと第二の動力伝達機構の出力軸との間には高速用クラッチを挿置し、またリングギヤと無段変速ユニットの出力軸との間には低速用クラッチを挿置する。
そして遊星歯車組のキャリアと無段変速ユニットの出力軸とを結合し、リングギヤには回転を停止するためのブレーキを設ける。
【0005】
かかる無段変速機は、変速機の入力軸から出力軸へ回転を伝達するに際しては、低速用クラッチおよび高速用クラッチの一方を締結し、他方を解放し、低速モードまたは高速モードを実現するものである。
高速モードでは、エンジンから変速機の入力軸に入力されるトルクが、これら無段変速ユニットと、第二の動力伝達機構とを分流して、変速機の出力軸に伝達されることから、ダブルスプリット式無段変速機とも称せられる。
このようにトルクを分流することによって、無段変速ユニットを通過するトルクを小さくし、耐久性の向上と軽量化を図ることを狙ったものである。
【特許文献1】特開平9−89071号公報
【特許文献2】特開2002−21969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来のような変速比無限大無段変速機やダブルスプリット式無段変速機にあっては、以下に説明するような問題を生ずる。
【0007】
つまり、特許文献1に記載の変速比無限大無段変速機にあっては、高速走行時に用いられる直結モードで、エンジンからユニット入力軸に入力されるトルクが、無段変速ユニットのみを通過し、減速機には通過しない。
このため直結モードでは、減速機が何ら用をなさず、重量的に負担となる。
また、直結モードでは無段変速機のみがエンジントルクを伝達するため、その用に資するよう無段変速機の剛性および強度を十分確保しなければならず、変速機全体として耐久性の向上および軽量化、小型化を図ることができない。
【0008】
また、特許文献2に記載のダブルスプリット式無段変速機にあっては、低速モードで、エンジンから変速機入力軸に入力されるトルクが、無段変速機のみを通過し、第二の動力伝達機構には通過しない。
このため、特許文献1に記載の変速比無限大無段変速機におけると同様な上記の問題を生じる。
【0009】
このように特許文献1および2に記載の変速機にあっては、無段変速ユニットおよびこの無段変速ユニットを介せずエンジントルクを伝達する第二の動力伝達機構を、折角並列に配列したにもかかわらず、その分流効果を全ての速度領域で享受できないものとなっていた。
したがって、上記従来の変速機に用いられる無段変速ユニットとしてVベルト式無段変速機を採用した場合にあっては、分流式無段変速機でありながら、無段変速機単体の場合と同様にVベルトの強度や、トルク伝達中のVベルトを挟むためのクランプ圧を確保せざるを得ず、Vベルト式無段変速機の軽量化、小型化や、作動油を吐出するポンプの省力化を図ることができない。
【0010】
かかる問題解決のためには、1入力を2系統に分配出力する1入力2出力回転伝動ユニットと、一対の回転メンバ間の回転速度比を無段階に変化させ得る無段変速ユニットとを設け、
上記回転伝動ユニットの2出力系統を無段変速ユニットの一対の回転メンバにそれぞれ回転伝動可能に結合し、
上記回転伝動ユニットの一方の出力系統からのトルクと、他方の出力系統から上記無段変速ユニットを経由した後のトルクとの合計トルクを、無段変速ユニットによる変速下で共通な出力軸へ伝達可能にする第1モード用の第1クラッチと、
上記回転伝動ユニットの他方の出力系統からのトルクと、上記一方の出力系統から上記無段変速ユニットを経由した後のトルクとの合計トルクを、無段変速ユニットによる変速下で共通な出力軸へ伝達可能にする第2モード用の第2クラッチとを設け、
これら第1および第2クラッチの締結・解放による掛け替えにより第1モードおよび第2モード間でのモード切り替えを行うようにし、
これにより分流効果を全ての速度領域で享受することができるようにした分流式無段変速機が考えられる。
【0011】
ところで、かかる分流式無段変速機においては第1および第2クラッチの掛け替えにより第1モードおよび第2モード間でのモード切り替えを行うこととなり、当該クラッチの掛け替えに伴うショック、および無段変速ユニットの変速比の急変に伴うショックがそれぞれ、モード切り替えショックとなってモード切り替えショックが大きくなるという問題を生ずる。
【0012】
本発明は、上記型式の分流式無段変速機におけるモード切り替えショックを、無段変速ユニットの変速比の急変に伴うショックの軽減により緩和し得るようにしたモード切り替え制御装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的のため本発明による分流式無段変速機のモード切り替え制御装置は、請求項1に記載のごとくに構成する。
先ず前提となる分流式無段変速機を説明するに、これは、
1入力を2系統に分配出力する1入力2出力回転伝動ユニットと、一対の回転メンバ間の回転速度比を無段階に変化させ得る無段変速ユニットとを具え、
前記1入力2出力回転伝動ユニットの2出力系統を前記無段変速ユニットの一対の回転メンバにそれぞれ回転伝動可能に結合し、
前記1入力2出力回転伝動ユニットの一方の出力系統からのトルクと、他方の出力系統から前記無段変速ユニットを経由した後のトルクとの合計トルクを、無段変速ユニットによる変速下で共通な出力軸へ伝達可能にして第1モードを選択可能な第1クラッチと、
前記1入力2出力回転伝動ユニットの他方の出力系統からのトルクと、前記一方の出力系統から前記無段変速ユニットを経由した後のトルクとの合計トルクを、無段変速ユニットによる変速下で共通な出力軸へ伝達可能にして第2モードを選択可能な第2クラッチとを設け、
前記第1および第2クラッチの締結・解放による掛け替えにより第1モードおよび第2モード間でのモード切り替えを行うようにしたものである。
【0014】
本発明は、かかる分流式無段変速機において、
上記モード切り替え時に無段変速ユニットを所定時間中ほぼモード切り替え時変速比に保つよう構成した点に特徴づけられる。
【発明の効果】
【0015】
かかる本発明の構成によれば、モード切り替え時に無段変速ユニットを所定時間中ほぼモード切り替え時変速比に保つため、
モード切り替え時において無段変速ユニットの変速比が急変することがなく、これに伴うショックを緩和し得ることとなり、その分、分流式無段変速機におけるモード切り替えショックを軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例になるモード切り替え制御装置を具えた分流式無段変速機を例示するスケルトン図である。
この分流式無段変速機は、エンジンを横置きに搭載したフロントエンジン・フロントホイールドライブ車(FF車)用のトランスアクスルとして構成したもので、1入力2出力回転伝動ユニットであるラビニョオ型遊星歯車組1と、無段変速ユニットであるバリエータ2とを具える。
【0017】
バリエータ2は周知のVベルト式無段変速機とし、シャフト4を介して変速機ケースに回転自在に支持したプライマリプーリPriと、これに整列配置され、シャフト5を介して変速機ケースに回転自在に支持したセカンダリプーリSecと、これら両プーリ間に掛け渡したVベルト3とで構成する。
Vベルト式無段変速機2の変速のために、プライマリプーリPriおよびセカンダリプーリSecのそれぞれのV溝を形成するフランジのうち、一方の可動フランジを他方の固定フランジに対して相対的に接近してV溝幅を狭めたり、離反してV溝幅を広め得るようにし、
両可動フランジを、シリンダ室6,7へ供給するプライマリプーリ圧およびセカンダリプーリ圧間の差圧に応じた位置に変位させることで、無段変速機2の変速を無段階に行い得るものとする。
【0018】
プライマリプーリPriはエンジン(クランクシャフトのみを8で示す)に同軸に配置し、これらプライマリプーリPriおよびエンジンクランクシャフト8間にラビニョオ型遊星歯車組1を同軸に配置する。
ラビニョオ型遊星歯車組1は、プライマリプーリPriに近い側におけるシングルピニオン型遊星歯車組G1と、エンジンに近い側におけるダブルピニオン型遊星歯車組G2との組み合わせにより構成する。
【0019】
遊星歯車組G1は、サンギヤSun1と、遊星歯車組G1,G2に共通なロングピニオンPaと、遊星歯車組G1,G2に共通なリングギヤRingとよりなり、サンギヤSun1およびリングギヤRing間にロングピニオンPaを噛合させたものとする。
遊星歯車組G2は、サンギヤSun2と、ショートピニオンPbと、ロングピニオンPaと、リングギヤRingとよりなり、ショートピニオンPbおよびロングピニオンPaを相互に噛合させ、サンギヤSun1にショートピニオンPbを噛合させ、リングギヤRingにロングピニオンPaを噛合させたものとする。
そして、ロングピニオンPaおよびショートピニオンPbを共通なキャリアCarrに回転自在に支持する。
【0020】
以上の構成になるラビニョオ型遊星歯車組1は、リングギヤRingを後進時に反力要素として機能させ得るよう後進ブレーキRev/Bにより固定可能とし、キャリアCarrを入力要素として機能させるべく、変速機入力軸9および回転ダンパ10を順次介してキャリアCarrをエンジンクランクシャフト8に結合する。
そして、プライマリプーリシャフト4をサンギヤSun1の中心孔に挿通してサンギヤSun2に至らしめ、このサンギヤSun2に結合する。
【0021】
サンギヤSun1に第1分流歯車11を直接結合して設け、サンギヤSun2には、プライマリプーリシャフト4を介して第2分流歯車12を結合する。
第1分流歯車11と同じ軸直角面内に整列配置してセカンダリプーリシャフト5上に歯車13を回転自在に設けると共に、この歯車13を前進クラッチFwd/Cにより適宜セカンダリプーリシャフト5に結合可能とする。
第1分流歯車11および歯車13間に回転合わせのためアイドラギヤ14を介在させて、このアイドラギヤ14を第1分流歯車11および歯車13に噛合させる。
【0022】
プライマリプーリシャフト4およびセカンダリプーリシャフト5に対し平行に変速機出力軸15、および、ディファレンシャルギヤ装置16から突出する左右輪ドライブシャフト17a,17bを配置する。
なお図1は、分流式無段変速機をプライマリプーリシャフト4、セカンダリプーリシャフト5、変速機出力軸15、およびドライブシャフト17a,17bが全て同一面内に図示されるよう展開して示したが、実際はプライマリプーリシャフト4、セカンダリプーリシャフト5、変速機出力軸15、およびドライブシャフト17a,17bを図2に示す相関関係をもって配置するものとする。
【0023】
第1分流歯車11と同じ軸直角面内に整列配置して変速機出力軸15上に歯車18を回転自在に設けると共に、この歯車18を低速クラッチLow/Cにより適宜変速機出力軸15に結合可能とする。
第2分流歯車19と同じ軸直角面内に整列配置して変速機出力軸15上に歯車19を回転自在に設けると共に、この歯車19を高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cにより適宜変速機出力軸15に結合可能とする。
【0024】
変速機出力軸15上にはファイナルドライブピニオン21を結合して設け、ディファレンシャルギヤ装置16にはファイナルドライブリングギヤ22を結合して設け、これらピニオン21およびリングギヤ22を相互に噛合させて、ディファレンシャルギヤ装置16を駆動するファイナルドライブギヤ組を構成する。
【0025】
上記した分流式無段変速機の作用を以下に説明する。
この分流式無段変速機は、低速で前進走行するためのローモードと、高速で前進走行するためのハイモードと、後進走行用の後進モードとを具え、
図3に示すように、ローモードは、低速クラッチLow/Cおよび前進クラッチFwd/Cの締結により選択可能で、
ハイモードは、高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cおよび前進クラッチFwd/Cの締結により選択可能で、
後進モードは、高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cおよび後進ブレーキRev/Bの締結により選択可能である。
【0026】
これらモードの伝動状態を以下に順次説明する。
図4および図5はローモードでの伝動経路を示し、このローモードでは図4に●で示すように、低速クラッチLow/Cおよび前進クラッチFwd/Cを締結する。
この場合、後進ブレーキRev/Bが解放中(図3に○で示す)のため、リングギヤRingがトルク伝達に関与しないことから、エンジンクランクシャフト8からダンパー10および変速機入力軸9を介してラビニョオ型遊星歯車組1のキャリアCarrに入力されたエンジントルクTinは、サンギヤSun1,Sun2をそれぞれ回転させ、これらサンギヤSun1,Sun2への2系統へ分流トルクT1,T2として、図4および図5に破線矢印により示すごとくに分配出力される。
【0027】
サンギヤSun1からの分流トルクT1は歯車11にそのまま伝達される。
サンギヤSun2からの分流トルクT2は、プライマリプーリシャフト4からプライマリプーリPriに至ってVベルト3を連れ回し、その後このVベルト3を介してセカンダリプーリSecに伝達される。
セカンダリプーリSecに至った分流トルクT2はその後順次、セカンダリプーリシャフト5、締結中の前進クラッチFwd/C、歯車13、アイドラギヤ14を経て歯車11に至る。
これにより、キャリアCarrへの回転は、サンギヤSun2、バリエータ2、サンギヤSun1を順次経てキャリアCarrに戻り、分流式無段変速機内を循環する。
つまり、バリエータ2の変速比がサンギヤSun1,Sun2の回転数の関係を決定づける。
【0028】
サンギヤSun2に伝達される分流トルクT2は、上述したようにサンギヤSun1に戻り、サンギヤSun1から直接歯車11に伝達される分流トルクT1と合流して、この合流トルクToutが歯車18に伝達される。
歯車18に伝達された合流トルクToutは、締結中の低速クラッチLow/Cを介して変速機出力軸15に至り、その後ファイナルドライブギヤ組21,22およびディファレンシャルギヤ装置16を経てドライブシャフト17a,17bから図示せざる左右駆動輪に達する。
【0029】
なお上記のローモードにおいては、プライマリプーリシャフト4から歯車12を経て、変速機出力軸15上の歯車19にも回転が伝達されるが、当該ローモードでは高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cを解放させているため、歯車19は変速機出力軸15にトルクを伝達することなく、この軸上で空転するのみである。
【0030】
図6および図7はハイモードでの伝動経路を示し、このハイモードでは図6に●で示すように、高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cおよび前進クラッチFwd/Cを締結する。
この場合、後進ブレーキRev/Bが解放中(図3に○で示す)のため、リングギヤRingがトルク伝達に関与しないことから、エンジンクランクシャフト8からダンパー10および変速機入力軸9を介してラビニョオ型遊星歯車組1のキャリアCarrに入力されたエンジントルクTinは、サンギヤSun1,Sun2をそれぞれ回転させ、これらサンギヤSun1,Sun2への2系統へ分流トルクT1,T2として、図6および図7に破線矢印により示すごとくに分配出力される。
【0031】
サンギヤSun2からの分流トルクT2はプライマリプーリシャフト4を経て歯車12にそのまま伝達される。
サンギヤSun1からの分流トルクT1は、歯車11からアイドラギヤ14、歯車13、締結状態の前進クラッチFwd/C、セカンダリプーリシャフト5を経てセカンダリプーリSecに至ってVベルト3を連れ回し、その後このVベルト3を介してプライマリプーリPriに伝達される。
プライマリプーリPriに至った分流トルクT1はその後、セカンダリプーリシャフト5を経て歯車12に至る。
これにより、キャリアCarrへの回転は、サンギヤSun1、バリエータ2、サンギヤSun2を順次経てキャリアCarrに戻り、分流式無段変速機内を循環する。
つまり、バリエータ2の変速比がサンギヤSun1,Sun2の回転数の関係を決定づける。
【0032】
サンギヤSun1に伝達される分流トルクT1は、上述したようにサンギヤSun2に戻り、サンギヤSun2から直接歯車12に伝達される分流トルクT2と合流して、この合流トルクToutが歯車19に伝達される。
歯車19に伝達された合流トルクToutは、締結中の高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cを介して変速機出力軸15に至り、その後ファイナルドライブギヤ組21,22およびディファレンシャルギヤ装置16を経てドライブシャフト17a,17bから図示せざる左右駆動輪に達する。
【0033】
なお上記のハイモードにおいては、サンギヤSun1から歯車11を経て、変速機出力軸15上の歯車18にも回転が伝達されるが、当該ハイモードでは低速クラッチLow/Cを解放させているため、歯車18は変速機出力軸15にトルクを伝達することなく、この軸上で空転するのみである。
【0034】
図8および図9は後進モードでの伝動経路を示し、この後進モードでは図8に●で示すように、高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cおよび後進ブレーキRev/Bを締結する。
この場合、後進ブレーキRev/BによりリングギヤRingが固定され、反力要素として機能することから、エンジンクランクシャフト8からダンパー10および変速機入力軸9を介してラビニョオ型遊星歯車組1のキャリアCarrに入力されたエンジントルクTinは、サンギヤSun2を減速下に逆向き回転させ、このサンギヤSun2からの増大された逆向きトルクT2が、図8および図9に破線矢印により示すごとくに出力される。
【0035】
なお同時に、ラビニョオ型遊星歯車組1のキャリアCarrに入力されたエンジントルクTinは、サンギヤSun1をエンジンと同方向に回転させ、この回転が歯車11から、一方ではアイドラギヤ14を介して歯車13に至り、他方では歯車18に達するが、
これら歯車13,18は前進クラッチFwd/Cおよび低速クラッチLow/Cの解放によりセカンダリプーリシャフト5および変速機出力軸15から切り離されているため、これらセカンダリプーリシャフト5および変速機出力軸15にトルクを伝達することなく、対応する軸上で空転するのみである。
【0036】
サンギヤSun2からの減速逆回転トルクT2は、プライマリプーリシャフト4を経て歯車12にそのまま伝達され、その後歯車19に伝達される。
歯車19に伝達された減速逆回転トルクT2は、当該後進モードで締結されている高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cを介し出力トルクToutとして変速機出力軸15に至り、その後ファイナルドライブギヤ組21,22およびディファレンシャルギヤ装置16を経てドライブシャフト17a,17bから図示せざる左右駆動輪に達する。
【0037】
前記した前進用のローモードおよびハイモードにおいては、入力要素であるキャリアCarrの回転数を出力要素であるサンギヤSun1またはSun2の回転数で除算した値を、分流式無段変速機(トランスアクスル)の変速比と定義することができる。
また、バリエータ2(Vベルト式無段変速ユニット)のプーリ比(変速比)を、プライマリプーリPriの回転数/セカンダリプーリSecの回転数、と定義することができる。
このため、バリエータ変速比に対するトランスアクスル変速比の関係は、図10に示すようなものとなる。
【0038】
図10に示すように、ローモードではバリエータ変速比とトランスアクスル変速比とは比例関係になり、バリエータ2が最大(最ロー)変速比を選択している間は、トランスアクスルも最大(最ロー)変速比を選択する。
そして、図10に矢で示すようバリエータ2を最大(最ロー)変速比からアップシフトさせるにつれ、トランスアクスル変速比も最大(最ロー)変速比から徐々に小さくなってハイ側変速比となる。
【0039】
バリエータ2が引き続きのアップシフトにより最小(最ハイ)変速比になると、トランスアクスル変速比は1になり、この時、変速機出力軸15上の歯車18,19の回転数が同じになる。
この状態を表す図10上の点を一般にはRSP(同期点)と称し、この時におけるバリエータ2の変速比(プーリ比)を同期変速比(同期プーリ比)と称する。
【0040】
ハイモードでは同じく図10に示すように、バリエータ変速比とトランスアクスル変速比とはローモードの時とは逆の関係となり、バリエータ2が最小(最ハイ)変速比を選択している間はトランスアクスルが変速比1となり、
図10に破線矢印で示すようにバリエータ2を最小(最ハイ)変速比からダウンシフトさせるにつれ、トランスアクスル変速比は1から徐々に小さくなってハイ側変速比となる。
バリエータ2が引き続きのダウンシフトにより最大(最ロー)変速比になると、トランスアクスル変速比は最小(最ハイ)変速比になる。
【0041】
ところで、ローモードおよびハイモード間でのモード切り替えが、前記したモード説明から明らかなように、そして図3から明らかなように、低速クラッチLow/Cと高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cとの締結・解放による掛け替えによって行われることから、
これら低速クラッチLow/Cおよび高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cによって共通な変速機出力軸15に結合されるべき歯車18,19の回転数が同じになる図10の同期点RSPにおいて(バリエータ変速比が本例における同期変速比である最ハイ変速比である時に)上記のモード切り替えを行うのがショック対策上は最も好ましい。
【0042】
但し、同期点RSPでのモード切り替えが可能なのは、変速機出力回転速度変化(車速変化)に起因したオートアップシフトまたはオートダウンシフトに伴うモード切り替え時であり、
エンジントルクやエンジン回転数を急変させる運転操作の急変に起因した急変速に伴うモード切り替え時、例えば、バリエータ変速比が図10にAで示す変速比であってトランスアクスル変速比をXからYへと、若しくは逆にYからXへと変化させる必要のある急変速時などの場合は、急変速要求から同期点RSPでのモード切り替えは不可能であり、急変速要求時のバリエータ変速比Aでモード切り替えを行う必要がある。
【0043】
ところで、同期点RSPでのモード切り替えか、それ以外でのモード切り替えかを問わず、モード切り替えに際しては、低速クラッチLow/Cおよび高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cの締結・解放切り替えによって当該モード切り替えを行うことから、当該クラッチの掛け替えに伴うショックと、モード切り替え時における無段変速ユニットの変速比の急変に伴うショックとがそれぞれ、モード切り替えショックの原因となってモード切り替えショックが大きくなる傾向にある。
【0044】
そこで本実施例においては、変速機出力回転速度変化(車速変化)に起因したオートアップシフトまたはオートダウンシフトに伴うモード切り替え要求のために図10の同期点RSPでモード切り替えを行う場合は、図11に示すモード切り替え制御により、前記型式の分流式無段変速機におけるモード切り替えを図12および図13に示すごとくに行って、モード切り替えショックを軽減することとする。
【0045】
図11のステップS1においては、現在のモードがローモードか、ハイモードかをチェックする。
ローモードであればステップS2において、ローモードからハイモードへのモード切り替え中であるか否かをチェックする。
ローモードからハイモードへのモード切り替え中でなければステップS3において、バリエータプーリ比が図12に例示する当該モード切り替え(Low→Highモード切り替え)開始判定用プーリ比Ip1未満(Ip1よりハイ側)になったか否かにより、ローモードからハイモードへのモード切り替えを開始すべき図12の瞬時t1に至ったか否かをチェックする。
【0046】
ステップS3でバリエータプーリ比が未だLow→Highモード切り替え開始判定用プーリ比Ip1未満になっていないと判定する図12の瞬時t1よりも前の時点では、制御をステップS4に進めてローモードを維持する。
ステップS3でバリエータプーリ比がLow→Highモード切り替え開始判定用プーリ比Ip1未満になったと判定する図12の瞬時t1以後は、制御をステップS5に進めてローモードからハイモードへの切り替えを開始させる。
【0047】
このモード切り替えは前記したごとく、低速クラッチLow/Cの解放と、高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cの締結とによる、クラッチの掛け替えにより遂行するもので、従って、図12に示すごとく瞬時t1より低速クラッチLow/Cの締結油圧を低下させると同時に、高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cの締結油圧を上昇させる。
【0048】
これによりローモードからハイモードへの切り替えが開始された後は、当該モード切り替えの開始に呼応してステップS2が制御をステップS6へ進めるようになり、このステップS6においては、バリエータプーリ比が図12に例示する当該モード切り替え(Low→Highモード切り替え)終了判定用プーリ比Ip2以上(Ip2よりロー側)になったか否かにより、ローモードからハイモードへのモード切り替えを終了すべき図12の瞬時t2に至ったか否かをチェックする。
なお図12では、Low→Highモード切り替え開始判定用プーリ比Ip1と、Low→Highモード切り替え終了判定用プーリ比Ip2とを同じとしたが、異ならせてもよい。
【0049】
ステップS6でバリエータプーリ比がLow→Highモード切り替え終了判定用プーリ比Ip2以上になっていないと判定する図12の瞬時t2よりも前、つまり瞬時t1〜t2間のモード切り替え時間ΔTm中は、制御をステップS7に進めて上記したローモードからハイモードへのモード切り替え制御を継続させる。
これにより図12の瞬時t1〜t2間におけるモード切り替え時間ΔTm中、低速クラッチLow/Cがその締結油圧の更なる低下で解放を進行されると同時に、高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cがその締結油圧の更なる上昇で締結を進行され、これらクラッチLow/CおよびHigh&Rev/Cの掛け替えを瞬時t2に終了させるように低速クラッチLow/Cの締結油圧低下勾配および高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cの締結油圧上昇勾配を決定する。
【0050】
かかるクラッチLow/CおよびHigh&Rev/Cの掛け替えを行うモード切り替え時間ΔTm中においては同時に、バリエータ変速比を図12に示すごとく、横軸である時間軸に対し放物線形状に時系列変化させて、バリエータ2の変速速度が同期変速比である最ハイ変速比の時に最低となるようにし、これによりバリエータ2を所定時間ΔTcvt中ほぼ同期変速比(最ハイ変速比)に保つようにする。
【0051】
ところで、バリエータ変速比を図12に示すごとくモード切り替え時間ΔTm中に時間軸に対し放物線形状に時系列変化させる場合、当該モード切り替え時間ΔTm中においてトランスアクスル変速比が、図12の拡大詳細説明図である図13に示すようにローモード側ではハッチング部分だけハイ側傾向になり、ハイモード側ではハッチング部分だけロー側傾向になるため、トランスアクスル出力トルクが図13に破線で示すごとくにローモード側では不足傾向となり、ハイモード側では過大傾向となる。
これらの傾向は、モード切り替え中においてトランスアクスル出力トルクの不連続を生じさせたり、滑らかな変化を妨げてショックの原因となる。
【0052】
これを防止するため本実施例では図13に示すように、低速クラッチLow/Cおよび高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cの掛け替えによるモード切り替え時間ΔTm中、ローモード側ではトランスアクスル出力トルクの上記不足傾向を解消するエンジントルク増大量ΔTeだけエンジントルクを増大補正し、ハイモード側ではトランスアクスル出力トルクの上記過大傾向を解消するエンジントルク減少量ΔTeだけエンジントルクを低下補正する。
かかるエンジントルク補正量ΔTeによりトランスアクスル出力トルクは、図13に破線で示す時系列変化から実線で示すごとく滑らかに時系列変化するようなものとなり、モード切り替えショックを軽減することができる。
【0053】
図11のステップS6でバリエータ変速比が、図12に例示するモード切り替え(Low→Highモード切り替え)終了判定用プーリ比Ip2以上(Ip2よりロー側)になったと判定する時は、つまり、図12に示すローモードからハイモードへのモード切り替え終了瞬時t2に至ったと判定する時は、ステップS8において当該モード切り替え終了判定に呼応し、ハイモードを維持する。
【0054】
以上説明した本実施例のローモードからハイモードへのモード切り替え制御によれば、
モード切り替え時間ΔTm中にバリエータ2(無段変速ユニット)を所定時間ΔTcvtの間、ほぼモード切り替え時変速比(上記実施例ではバリエータ2の同期変速比である最ハイ変速比)に保つため、
モード切り替え時においてバリエータ2(無段変速ユニット)の変速比が急変することがなく、これに伴うショックを緩和し得ることとなり、その分、分流式無段変速機におけるモード切り替えショックを軽減することができる。
【0055】
なお本実施例では、モード切り替え時間ΔTm中にバリエータ2(無段変速ユニット)を所定時間ΔTcvtの間、ほぼモード切り替え時変速比(バリエータ2の同期変速比である最ハイ変速比)に保つに際し、バリエータ変速比をモード切り替え時間ΔTm中、時間軸に対し放物線形状に時系列変化させることにより所期の目的を達成することとしたため、
モード切り替え前後でバリエータ2が回転方向は不変に保たれるものの、トルクの入出力方向を逆転されることから、モード切り替え時に伝動要素間のガタ詰めショックに伴うモード切り替えショックが発生するところながら、このような伝動要素間のガタ詰めショックを緩和することができ、これに伴うモード切り替えショックを緩和することができる。
【0056】
ところで前記した実施例においては、モード切り替え時間ΔTmを決定するLow→Highモード切り替え開始判定用プーリ比Ip1およびLow→Highモード切り替え終了判定用プーリ比Ip2を固定値として説明したが、
これらLow→Highモード切り替え開始判定用プーリ比Ip1およびLow→Highモード切り替え終了判定用プーリ比Ip2は、モード切り替え時のエンジントルク(入力トルク)が大きいほど、また、エンジン回転数(入力回転数)が高いほど大きく(ロー側の変速比と)してモード切り替え時間ΔTmを長くし、
このモード切り替え時間ΔTm中に行う低速クラッチLow/Cおよび高速兼後進クラッチHigh&Rev/C間の締結・解放による掛け替えを、モード切り替え時のエンジントルク(入力トルク)が大きいほど、また、エンジン回転数(入力回転数)が高いほどゆっくりと行わせるのがよい。
【0057】
かようにすることにより、モード切り替え時のエンジントルク(入力トルク)が大きいほど、また、エンジン回転数(入力回転数)が高いほど低速クラッチLow/Cおよび高速兼後進クラッチHigh&Rev/C間の締結・解放による掛け替え時のショックが大きくなる傾向になるところながら、当該クラッチの掛け替えによるモード切り替えショックを緩和することができる。
【0058】
また、Low→Highモード切り替え開始判定用プーリ比Ip1およびLow→Highモード切り替え終了判定用プーリ比Ip2は作動油温が低いほど大きく(ロー側の変速比と)してモード切り替え時間ΔTmを長くし、
このモード切り替え時間ΔTm中に行う低速クラッチLow/Cおよび高速兼後進クラッチHigh&Rev/C間の締結・解放による掛け替えを、作動油温が低い時ほどゆっくりと行わせるのがよい。
かようにすることにより、作動油温が低い時ほど低速クラッチLow/Cおよび高速兼後進クラッチHigh&Rev/C間の締結・解放による掛け替え時のショックが大きくなる傾向になるところながら、当該クラッチの掛け替えによるモード切り替えショックを緩和することができる。
【0059】
上記はローモードからハイモードへのモード切り替え制御であるが、時間が図12および図13の時間軸(横軸)上で逆に右から左へ経過した場合に相当するハイモードからローモードへのモード切り替え時は、図11のステップS1から制御をステップS11へ進めることにより当該モード切り替え制御を行う。
なお以下では便宜上、時間が図12および図13の時間軸(横軸)上で右から左へ経過することとして説明を展開する。
【0060】
図11のステップS1で現在のモードがハイモードであると判定される時に選択されるステップS11においては、ハイモードからローモードへのモード切り替え中であるか否かをチェックする。
ハイモードからローモードへのモード切り替え中でなければステップS13において、バリエータプーリ比が図12に例示する当該モード切り替え(High→Lowモード切り替え)開始判定用プーリ比Ip4未満(Ip4よりハイ側)になったか否かにより、ハイモードからローモードへのモード切り替えを開始すべき図12の瞬時t2に至ったか否かをチェックする。
【0061】
ステップS13でバリエータプーリ比が未だHigh→Lowモード切り替え開始判定用プーリ比Ip4未満になっていないと判定する図12の瞬時t2よりも前の時点では、制御をステップS14に進めてハイモードを維持する。
ステップS13でバリエータプーリ比がHigh→Lowモード切り替え開始判定用プーリ比Ip4未満になったと判定する図12の瞬時t2以後は、制御をステップS15に進めてハイモードからローモードへの切り替えを開始させる。
【0062】
このモード切り替えは前記したごとく、低速クラッチLow/Cの締結と、高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cの解放とによる、クラッチの掛け替えにより遂行するもので、従って、図12に示すごとく瞬時t2より低速クラッチLow/Cの締結油圧を上昇させると同時に、高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cの締結油圧を低下させる。
【0063】
これによりハイモードからローモードへの切り替えが開始された後は、当該モード切り替えの開始に呼応してステップS11が制御をステップS16へ進めるようになり、このステップS16においては、バリエータプーリ比が図12に例示する当該モード切り替え(High→Lowモード切り替え)終了判定用プーリ比Ip3以上(Ip3よりロー側)になったか否かにより、ハイモードからローモードへのモード切り替えを終了すべき図12の瞬時t1に至ったか否かをチェックする。
なお図12では、High→Lowモード切り替え開始判定用プーリ比Ip4と、High→Lowモード切り替え終了判定用プーリ比Ip3とを同じとしたが、異ならせてもよい。
またHigh→Lowモード切り替え開始判定用プーリ比Ip4およびHigh→Lowモード切り替え終了判定用プーリ比Ip3をそれぞれ図示では、Low→Highモード切り替え開始判定用プーリ比Ip1およびLow→Highモード切り替え終了判定用プーリ比Ip2と同じとしたが、同じである必要はない。
【0064】
ステップS16でバリエータプーリ比がHigh→Lowモード切り替え終了判定用プーリ比Ip3以上になっていないと判定する図12の瞬時t1よりも前、つまり瞬時t2〜t1間のモード切り替え時間ΔTm中は、制御をステップS17に進めて上記したハイモードからローモードへのモード切り替え制御を継続させる。
これにより図12の瞬時t2〜t1間におけるモード切り替え時間ΔTm中、低速クラッチLow/Cがその締結油圧の更なる上昇で締結を進行されると同時に、高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cがその締結油圧の更なる低下で解放を進行され、これらクラッチLow/CおよびHigh&Rev/Cの掛け替えを瞬時t1に終了させるように低速クラッチLow/Cの締結油圧上昇勾配および高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cの締結油圧低下勾配を決定する。
【0065】
かかるクラッチLow/CおよびHigh&Rev/Cの掛け替えを行うモード切り替え時間ΔTm中においては同時に、バリエータ変速比を図12に示すごとく、横軸である時間軸に対し放物線形状に時系列変化させて、バリエータ2の変速速度が同期変速比である最ハイ変速比の時に最低となるようにし、これによりバリエータ2を所定時間ΔTcvt中ほぼ同期変速比(最ハイ変速比)に保つようにする。
【0066】
ところで、バリエータ変速比を図12に示すごとくモード切り替え時間ΔTm中に時間軸に対し放物線形状に時系列変化させる場合、当該モード切り替え時間ΔTm中においてトランスアクスル変速比が、図12の拡大詳細説明図である図13に示すようにハイモード側ではハッチング部分だけロー側傾向になり、ローモード側ではハッチング部分だけハイ側傾向になるため、トランスアクスル出力トルクが図13に破線で示すごとくにハイモード側では過大傾向となり、ローモード側では不足傾向となる。
これらの傾向は、モード切り替え中においてトランスアクスル出力トルクの不連続を生じさせたり、滑らかな変化を妨げてショックの原因となる。
【0067】
これを防止するため本実施例では図13に示すように、低速クラッチLow/Cおよび高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cの掛け替えによるモード切り替え時間ΔTm中、ハイモード側ではトランスアクスル出力トルクの上記過大傾向を解消するエンジントルク減少量ΔTeだけエンジントルクを低下補正し、ローモード側ではトランスアクスル出力トルクの上記不足傾向を解消するエンジントルク増大量ΔTeだけエンジントルクを増大補正する。
かかるエンジントルク補正量ΔTeによりトランスアクスル出力トルクは、図13に破線で示す時系列変化から実線で示すごとく滑らかに時系列変化するようなものとなり、モード切り替えショックを軽減することができる。
【0068】
図11のステップS16でバリエータ変速比が、図12に例示するモード切り替え(High→Lowモード切り替え)終了判定用プーリ比Ip3以上(Ip3よりロー側)になったと判定する時は、つまり、図12に示すハイモードからローモードへのモード切り替え終了瞬時t1に至ったと判定する時は、ステップS18において当該モード切り替え終了判定に呼応し、ローモードを維持する。
【0069】
以上説明した本実施例のハイモードからローモードへのモード切り替え制御によれば、
モード切り替え時間ΔTm中にバリエータ2(無段変速ユニット)を所定時間ΔTcvtの間、ほぼモード切り替え時変速比(上記実施例ではバリエータ2の同期変速比である最ハイ変速比)に保つため、
モード切り替え時においてバリエータ2(無段変速ユニット)の変速比が急変することがなく、これに伴うショックを緩和し得ることとなり、その分、分流式無段変速機におけるモード切り替えショックを軽減することができる。
【0070】
なお本実施例では、モード切り替え時間ΔTm中にバリエータ2(無段変速ユニット)を所定時間ΔTcvtの間、ほぼモード切り替え時変速比(バリエータ2の同期変速比である最ハイ変速比)に保つに際し、バリエータ変速比をモード切り替え時間ΔTm中、時間軸に対し放物線形状に時系列変化させることにより所期の目的を達成することとしたため、
モード切り替え前後でバリエータ2が回転方向は不変に保たれるものの、トルクの入出力方向を逆転されることから、モード切り替え時に伝動要素間のガタ詰めショックに伴うモード切り替えショックが発生するところながら、このような伝動要素間のガタ詰めショックを緩和することができ、これに伴うモード切り替えショックを緩和することができる。
【0071】
ところで前記した実施例においては、モード切り替え時間ΔTmを決定するHigh→Lowモード切り替え開始判定用プーリ比Ip4およびHigh→Lowモード切り替え終了判定用プーリ比Ip3を固定値として説明したが、
これらHigh→Lowモード切り替え開始判定用プーリ比Ip4およびHigh→Lowモード切り替え終了判定用プーリ比Ip3は、モード切り替え時のエンジントルク(入力トルク)が大きいほど、また、エンジン回転数(入力回転数)が高いほど大きく(ロー側の変速比と)してモード切り替え時間ΔTmを長くし、
このモード切り替え時間ΔTm中に行う低速クラッチLow/Cおよび高速兼後進クラッチHigh&Rev/C間の締結・解放による掛け替えを、モード切り替え時のエンジントルク(入力トルク)が大きいほど、また、エンジン回転数(入力回転数)が高いほどゆっくりと行わせるのがよい。
【0072】
かようにすることにより、モード切り替え時のエンジントルク(入力トルク)が大きいほど、また、エンジン回転数(入力回転数)が高いほど低速クラッチLow/Cおよび高速兼後進クラッチHigh&Rev/C間の締結・解放による掛け替え時のショックが大きくなる傾向になるところながら、当該クラッチの掛け替えによるモード切り替えショックを緩和することができる。
【0073】
また、High→Lowモード切り替え開始判定用プーリ比Ip4およびHigh→Lowモード切り替え終了判定用プーリ比Ip3は作動油温が低いほど大きく(ロー側の変速比と)してモード切り替え時間ΔTmを長くし、
このモード切り替え時間ΔTm中に行う低速クラッチLow/Cおよび高速兼後進クラッチHigh&Rev/C間の締結・解放による掛け替えを、作動油温が低い時ほどゆっくりと行わせるのがよい。
かようにすることにより、作動油温が低い時ほど低速クラッチLow/Cおよび高速兼後進クラッチHigh&Rev/C間の締結・解放による掛け替え時のショックが大きくなる傾向になるところながら、当該クラッチの掛け替えによるモード切り替えショックを緩和することができる。
【0074】
上記はいずれも、図10の同期点RSPでモード切り替えを行う、車速変化に起因したオートアップシフトまたはオートダウンシフトに伴うモード切り替え時の制御であるが、次に、エンジントルクやエンジン回転数を急変させる運転操作の急変に起因した急変速に伴うモード切り替え時、例えば、バリエータ変速比が図10にAで示す変速比であってトランスアクスル変速比をXからYへと、若しくは逆にYからXへと変化させる必要のある急変速時のモード切り替え制御を説明する。
【0075】
かかる急変速要求としては、高速走行から急ブレーキによる急減速を行った場合のダウンシフト要求(大きなエンジンブレーキや、再加速用に大きな駆動力が要求されるため)や、アクセルペダルから足を離した時の燃費向上用に行うアップシフトがある。
このような急変速に伴うモード切り替えは、同期点RSPでのモード切り替えは不可能であり、急変速要求時におけるバリエータ変速比A(モード切り替え時変速比)でモード切り替えを行う必要がある。
【0076】
かかる急変速時モード切り替えにおいても、前記したオート変速時モード切り替え時と同じく、低速クラッチLow/Cおよび高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cの締結・解放切り替えに伴うショックと、モード切り替え時における無段変速ユニットの変速比の急変に伴うショックとがそれぞれ、モード切り替えショックの原因となってモード切り替えショックが大きくなる傾向にある。
【0077】
そこで本実施例においては、この急変速時モード切り替えを図14に示すモード切り替え制御により図15に示すごとくに行って、モード切り替えショックを軽減することとする。
図14は、図11のステップS3をステップS23に置換し、ステップS13をステップS33に置換したもので、他のステップは図11におけると同様なものとする。
【0078】
ステップS1で現在のモードがローモードであると判定し、ステップS2でローモードからハイモードへのモード切り替え中でない判定する時に選択されるステップS23においては、Low→Highモード切り替えを伴う急変速要求があるか否かをチェックする。
なお以下では、Low→Highモード切り替えを伴う急変速要求として、バリエータ変速比が例えば図10にAで示す変速比である時にトランスアクスル変速比をXからYへと変化させる急変速要求を例にとり説明を展開することとする。
【0079】
ステップS23で急変速による上記のLow→Highモード切り替え要求がないと判定する時は、制御をステップS4に進めてローモードを維持する。
ステップS23で急変速による上記のLow→Highモード切り替え要求があると判定する時は、制御をステップS5に進めてローモードからハイモードへの切り替えを開始させる。
このモード切り替えは前記したごとく、低速クラッチLow/Cの解放と、高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cの締結とによる、クラッチの掛け替えにより遂行するもので、従って、急変速によるLow→Highモード切り替え要求があると判定する時より低速クラッチLow/Cの締結油圧を低下させると同時に、高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cの締結油圧を上昇させ、これらクラッチの掛け替えによりLow→Highモード切り替えを開始させる。
【0080】
これによりローモードからハイモードへの切り替えが開始された後は、当該モード切り替えの開始に呼応してステップS2が制御をステップS6へ進めるようになり、
このステップS6において、バリエータプーリ比が図15に例示する当該モード切り替え(Low→Highモード切り替え)終了判定用プーリ比Ip2以上(Ip2よりロー側)になったと判定する時、つまり、ローモードからハイモードへのモード切り替えを終了すべき図15の瞬時t2に至る時までの間、
ステップS7で上記したローモードからハイモードへのモード切り替え制御を継続させる。
【0081】
これにより、急変速によるLow→Highモード切り替え要求があった時から図15の瞬時t2までの間、低速クラッチLow/Cがその締結油圧の更なる低下で解放を進行されると同時に、高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cがその締結油圧の更なる上昇で締結を進行され、これらクラッチLow/CおよびHigh&Rev/Cの掛け替えを瞬時t2に終了させるように低速クラッチLow/Cの締結油圧低下勾配および高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cの締結油圧上昇勾配を決定する。
【0082】
かかるクラッチLow/CおよびHigh&Rev/Cの掛け替えによるモード切り替え中においては同時に、バリエータ変速比を図15に示すごとく、横軸である時間軸に対し放物線形状に時系列変化させて、バリエータ2の変速速度が急変速モード切り替え時変速比Aである時に最低となるようにし、これによりバリエータ2を所定時間ΔTcvt中ほぼ急変速モード切り替え時変速比Aに保つようにして、前記実施例と同様にモード切り替えショックの低減効果を図る。
【0083】
しかし、当該急変速モード切り替え時はこれによっても尚バリエータ2の変速速度を十分に低下し切れず、バリエータ2の変速がトランスアクスル変速比を図15に示すように不連続なものとなして、トランスアクスル出力トルクを図15に破線で示すごとくに不連続にする。
つまり、切り替え前のローモード側においては図15に示すごとくトランスアクスルのロー変速比傾向が強く、トランスアクスル出力トルクを図15に破線で示すごとくに過大傾向となし、切り替え後のハイモード側においては図15に示すごとくトランスアクスルのハイ変速比傾向が強く、トランスアクスル出力トルクを図15に破線で示すごとくに不足傾向となし、モード切り替え時におけるトランスアクスル出力トルク段差に起因したモード切り替えショックを発生する。
【0084】
そこで本実施例においてはこの問題を解決するため図15に示すように、モード切り替え中、ローモード側ではトランスアクスル出力トルクの上記過大傾向を解消すべくエンジントルク減少量ΔTeだけエンジントルクを低下補正し、ハイモード側ではトランスアクスル出力トルクの上記不足傾向を解消すべくエンジントルク増大量ΔTeだけエンジントルクを増大補正する。
かかるエンジントルク補正量ΔTeによりトランスアクスル出力トルクは、図15に破線で示す時系列変化から実線で示すごとく滑らかに時系列変化するようなものとなり、急変速モード切り替え時における上記したモード切り替えショックの問題を解消することができる。
【0085】
上記はローモードからハイモードへの急変速モード切り替え制御であるが、時間が図15の時間軸(横軸)上で逆に右から左へ経過した場合に相当するハイモードからローモードへの急変速モード切り替え時は、図11のステップS1から制御をステップS11へ進めることにより当該モード切り替え制御を行う。
なお以下では便宜上、時間が図12および図13の時間軸(横軸)上で右から左へ経過することとして説明を展開する。
【0086】
図14のステップS1で現在のモードがハイモードであると判定し、ステップS11でハイモードからローモードへのモード切り替え中でない判定する時に選択されるステップS33においては、High→Lowモード切り替えを伴う急変速要求があるか否かをチェックする。
なお以下では、High→Lowモード切り替えを伴う急変速要求として、バリエータ変速比が例えば図10にAで示す変速比である時にトランスアクスル変速比をYからXへと変化させる急変速要求を例にとり説明を展開することとする。
【0087】
ステップS33で急変速による上記のHigh→Low モード切り替え要求がないと判定する時は、制御をステップS14に進めてハイモードを維持する。
ステップS33で急変速による上記のHigh→Low モード切り替え要求があると判定する時は、制御をステップS15に進めてハイモードからローモードへの切り替えを開始させる。
このモード切り替えは前記したごとく、低速クラッチLow/Cの締結と、高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cの解放とによる、クラッチの掛け替えにより遂行するもので、従って、急変速によるHigh→Low モード切り替え要求があると判定する時より低速クラッチLow/Cの締結油圧を上昇させると同時に、高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cの締結油圧を低下させ、これらクラッチの掛け替えによりHigh→Low モード切り替えを開始させる。
【0088】
これによりハイモードからローモードへの切り替えが開始された後は、当該モード切り替えの開始に呼応してステップS11が制御をステップS16へ進めるようになり、
このステップS16において、バリエータプーリ比が図15に例示する当該モード切り替え(High→Low モード切り替え)終了判定用プーリ比Ip3以上(Ip3よりロー側)になったと判定する時、つまり、ハイモードからローモードへのモード切り替えを終了すべき図15の瞬時t1に至る時までの間、
ステップS17で上記したハイモードからローモードへのモード切り替え制御を継続させる。
【0089】
これにより、急変速によるHigh→Low モード切り替え要求があった時から図15の瞬時t1までの間、低速クラッチLow/Cがその締結油圧の更なる上昇で締結を進行されると同時に、高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cがその締結油圧の更なる低下で解放を進行され、これらクラッチLow/CおよびHigh&Rev/Cの掛け替えを瞬時t1に終了させるように低速クラッチLow/Cの締結油圧上昇勾配および高速兼後進クラッチHigh&Rev/Cの締結油圧低下勾配を決定する。
【0090】
かかるクラッチLow/CおよびHigh&Rev/Cの掛け替えによるモード切り替え中においては同時に、バリエータ変速比を図15に示すごとく、横軸である時間軸に対し放物線形状に時系列変化させて、バリエータ2の変速速度が急変速モード切り替え時変速比Aである時に最低となるようにし、これによりバリエータ2を所定時間ΔTcvt中ほぼ急変速モード切り替え時変速比Aに保つようにして、前記実施例と同様にモード切り替えショックの低減効果を図る。
【0091】
しかし、当該急変速モード切り替え時はこれによっても尚バリエータ2の変速速度を十分に低下し切れず、バリエータ2の変速がトランスアクスル変速比を図15に示すように不連続なものとなして、トランスアクスル出力トルクを図15に破線で示すごとくに不連続にする。
つまり、切り替え前のハイモード側においては図15に示すごとくトランスアクスルのハイ変速比傾向が強く、トランスアクスル出力トルクを図15に破線で示すごとくに不足傾向となし、切り替え後のローモード側においては図15に示すごとくトランスアクスルのハイ変速比傾向が強く、トランスアクスル出力トルクを図15に破線で示すごとくに過大傾向となし、モード切り替え時におけるトランスアクスル出力トルク段差に起因したモード切り替えショックを発生する。
【0092】
そこで本実施例においてはこの問題を解決するため図15に示すように、モード切り替え中、ハイモード側ではトランスアクスル出力トルクの上記不足傾向を解消すべくエンジントルク増大量ΔTeだけエンジントルクを増大補正し、ローモード側ではトランスアクスル出力トルクの上記過大傾向を解消すべくエンジントルク減少量ΔTeだけエンジントルクを低下補正する。
かかるエンジントルク補正量ΔTeによりトランスアクスル出力トルクは、図15に破線で示す時系列変化から実線で示すごとく滑らかに時系列変化するようなものとなり、急変速モード切り替え時における上記したモード切り替えショックの問題を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の一実施例になるモード切り替え制御装置を具えた分流式無段変速機を例示するスケルトン図である。
【図2】図1に示す分流式無段変速機を軸線方向に見て示す正面図である。
【図3】図1に示す分流式無段変速機のクラッチおよびブレーキの締結・解放の組み合わせと、選択可能なモードとの関係を示す締結論理図である。
【図4】図1に示す分流式無段変速機のローモード選択時における伝動経路を示す、図1と同様なスケルトン図である。
【図5】図1に示す分流式無段変速機のローモード選択時における伝動経路を示す、図2と同様な正面図である。
【図6】図1に示す分流式無段変速機のハイモード選択時における伝動経路を示す、図1と同様なスケルトン図である。
【図7】図1に示す分流式無段変速機のハイモード選択時における伝動経路を示す、図2と同様な正面図である。
【図8】図1に示す分流式無段変速機の後進モード選択時における伝動経路を示す、図1と同様なスケルトン図である。
【図9】図1に示す分流式無段変速機の後進モード選択時における伝動経路を示す、図2と同様な正面図である。
【図10】図1に示す分流式無段変速機の変速パターン図である。
【図11】図1に示す分流式無段変速機のオート変速に伴うモード切り替えを実行する時の制御プログラムを示すフローチャートである。
【図12】図11に示すオート変速に伴うモード切り替え制御の動作タイムチャートである。
【図13】図12に示すオート変速モード切り替え時に実行すべきエンジントルク補正制御の動作タイムチャートである。
【図14】図1に示す分流式無段変速機の急変速に伴うモード切り替えを実行する時の制御プログラムを示すフローチャートである。
【図15】図14に示す急変速モード切り替え制御、および、これと共に実行すべきエンジントルク補正制御の動作タイムチャートである。
【符号の説明】
【0094】
1 ラビニョオ型遊星歯車組(1入力2出力回転伝動ユニット)
2 バリエータ(無段変速ユニット)
3 Vベルト
4 プライマリプーリシャフト
5 セカンダリプーリシャフト
Pri プライマリプーリ
Sec セカンダリプーリ
6,7 変速シリンダ室
8 エンジンクランクシャフト
G1 シングルピニオン型遊星歯車組
G2 ダブルピニオン型遊星歯車組
Sun1 サンギヤ
Sun2 サンギヤ
Pa ロングピニオン
Pb ショートピニオン
Ring リングギヤ
Carr キャリア
Rev/B 後進ブレーキ
Fwd/C 前進クラッチ
Low/C 低速クラッチ
High&Rev/C 高速兼後進クラッチ
9 変速機入力軸
10 回転ダンパ
11 第1分流歯車
12 第2分流歯車
13 歯車
14 アイドラギヤ
15 変速機出力軸
16 ディファレンシャルギヤ装置
17a,17b 左右輪ドライブシャフト
18 歯車
19 歯車
21 ファイナルドライブピニオン
22 ファイナルドライブリングギヤ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1入力を2系統に分配出力する1入力2出力回転伝動ユニットと、一対の回転メンバ間の回転速度比を無段階に変化させ得る無段変速ユニットとを具え、
前記1入力2出力回転伝動ユニットの2出力系統を前記無段変速ユニットの一対の回転メンバにそれぞれ回転伝動可能に結合し、
前記1入力2出力回転伝動ユニットの一方の出力系統からのトルクと、他方の出力系統から前記無段変速ユニットを経由した後のトルクとの合計トルクを、無段変速ユニットによる変速下で共通な出力軸へ伝達可能にして第1モードを選択可能な第1クラッチと、
前記1入力2出力回転伝動ユニットの他方の出力系統からのトルクと、前記一方の出力系統から前記無段変速ユニットを経由した後のトルクとの合計トルクを、無段変速ユニットによる変速下で共通な出力軸へ伝達可能にして第2モードを選択可能な第2クラッチとを設け、
前記第1および第2クラッチの締結・解放による掛け替えにより第1モードおよび第2モード間でのモード切り替えを行うようにした分流式無段変速機において、
前記モード切り替え時に無段変速ユニットを所定時間中ほぼモード切り替え時変速比に保つよう構成したことを特徴とする分流式無段変速機のモード切り替え制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の分流式無段変速機のモード切り替え制御装置において、
前記無段変速ユニットの回転メンバ間回転速度比を時間軸に対し放物線形状に時系列変化させて、前記モード切り替え時に無段変速ユニットの変速速度が最低となるようにすることにより、該無段変速ユニットを所定時間中ほぼ前記モード切り替え時変速比に保つよう構成したことを特徴とする分流式無段変速機のモード切り替え制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の分流式無段変速機のモード切り替え制御装置において、
前記第1および第2クラッチの締結・解放による掛け替えを、前記モード切り替え時の入力トルクが大きいほど、また、入力回転数が高いほど長時間をかけて徐々に行わせるよう構成したことを特徴とする分流式無段変速機のモード切り替え制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の分流式無段変速機のモード切り替え制御装置において、
前記第1および第2クラッチの締結・解放による掛け替えを、分流式無段変速機の作動油温が低いほど長時間をかけて徐々に行わせるよう構成したことを特徴とする分流式無段変速機のモード切り替え制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の分流式無段変速機のモード切り替え制御装置において、
変速機出力回転速度変化に起因したオートアップシフトまたはオートダウンシフトに伴うモード切り替え時は、前記無段変速ユニットのモード切り替え時変速比が、前記第1および第2モードの伝動系から前記共通な出力軸への回転速度が同じになる無段変速ユニットの同期変速比である分流式無段変速機のモード切り替え制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の分流式無段変速機のモード切り替え制御装置において、
前記モード切り替え制御中、低速用のモードが選択されている間は入力トルクを増大補正するよう構成したことを特徴とする分流式無段変速機のモード切り替え制御装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の分流式無段変速機のモード切り替え制御装置において、
前記モード切り替え制御中、高速用のモードが選択されている間は入力トルクを低下補正するよう構成したことを特徴とする分流式無段変速機のモード切り替え制御装置。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の分流式無段変速機のモード切り替え制御装置において、
前記入力の大きさを急変させる運転操作の急変に起因した急変速に伴うモード切り替え時は、前記無段変速ユニットのモード切り替え時変速比が無段変速ユニットの急変速時変速比である分流式無段変速機のモード切り替え制御装置。
【請求項9】
請求項8に記載の分流式無段変速機のモード切り替え制御装置において、
前記モード切り替え制御中、低速用のモードが選択されている間は入力トルクを低下補正するよう構成したことを特徴とする分流式無段変速機のモード切り替え制御装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載の分流式無段変速機のモード切り替え制御装置において、
前記モード切り替え制御中、高速用のモードが選択されている間は入力トルクを増大補正するよう構成したことを特徴とする分流式無段変速機のモード切り替え制御装置。
【請求項1】
1入力を2系統に分配出力する1入力2出力回転伝動ユニットと、一対の回転メンバ間の回転速度比を無段階に変化させ得る無段変速ユニットとを具え、
前記1入力2出力回転伝動ユニットの2出力系統を前記無段変速ユニットの一対の回転メンバにそれぞれ回転伝動可能に結合し、
前記1入力2出力回転伝動ユニットの一方の出力系統からのトルクと、他方の出力系統から前記無段変速ユニットを経由した後のトルクとの合計トルクを、無段変速ユニットによる変速下で共通な出力軸へ伝達可能にして第1モードを選択可能な第1クラッチと、
前記1入力2出力回転伝動ユニットの他方の出力系統からのトルクと、前記一方の出力系統から前記無段変速ユニットを経由した後のトルクとの合計トルクを、無段変速ユニットによる変速下で共通な出力軸へ伝達可能にして第2モードを選択可能な第2クラッチとを設け、
前記第1および第2クラッチの締結・解放による掛け替えにより第1モードおよび第2モード間でのモード切り替えを行うようにした分流式無段変速機において、
前記モード切り替え時に無段変速ユニットを所定時間中ほぼモード切り替え時変速比に保つよう構成したことを特徴とする分流式無段変速機のモード切り替え制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の分流式無段変速機のモード切り替え制御装置において、
前記無段変速ユニットの回転メンバ間回転速度比を時間軸に対し放物線形状に時系列変化させて、前記モード切り替え時に無段変速ユニットの変速速度が最低となるようにすることにより、該無段変速ユニットを所定時間中ほぼ前記モード切り替え時変速比に保つよう構成したことを特徴とする分流式無段変速機のモード切り替え制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の分流式無段変速機のモード切り替え制御装置において、
前記第1および第2クラッチの締結・解放による掛け替えを、前記モード切り替え時の入力トルクが大きいほど、また、入力回転数が高いほど長時間をかけて徐々に行わせるよう構成したことを特徴とする分流式無段変速機のモード切り替え制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の分流式無段変速機のモード切り替え制御装置において、
前記第1および第2クラッチの締結・解放による掛け替えを、分流式無段変速機の作動油温が低いほど長時間をかけて徐々に行わせるよう構成したことを特徴とする分流式無段変速機のモード切り替え制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の分流式無段変速機のモード切り替え制御装置において、
変速機出力回転速度変化に起因したオートアップシフトまたはオートダウンシフトに伴うモード切り替え時は、前記無段変速ユニットのモード切り替え時変速比が、前記第1および第2モードの伝動系から前記共通な出力軸への回転速度が同じになる無段変速ユニットの同期変速比である分流式無段変速機のモード切り替え制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の分流式無段変速機のモード切り替え制御装置において、
前記モード切り替え制御中、低速用のモードが選択されている間は入力トルクを増大補正するよう構成したことを特徴とする分流式無段変速機のモード切り替え制御装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の分流式無段変速機のモード切り替え制御装置において、
前記モード切り替え制御中、高速用のモードが選択されている間は入力トルクを低下補正するよう構成したことを特徴とする分流式無段変速機のモード切り替え制御装置。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の分流式無段変速機のモード切り替え制御装置において、
前記入力の大きさを急変させる運転操作の急変に起因した急変速に伴うモード切り替え時は、前記無段変速ユニットのモード切り替え時変速比が無段変速ユニットの急変速時変速比である分流式無段変速機のモード切り替え制御装置。
【請求項9】
請求項8に記載の分流式無段変速機のモード切り替え制御装置において、
前記モード切り替え制御中、低速用のモードが選択されている間は入力トルクを低下補正するよう構成したことを特徴とする分流式無段変速機のモード切り替え制御装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載の分流式無段変速機のモード切り替え制御装置において、
前記モード切り替え制御中、高速用のモードが選択されている間は入力トルクを増大補正するよう構成したことを特徴とする分流式無段変速機のモード切り替え制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−285475(P2007−285475A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−115804(P2006−115804)
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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