説明

分離装置

【課題】B/F分離工程に要する時間の短縮化、装置構成の簡略化、廃液回収のための工程の省略、及び、検出効率の向上を実現できる分離装置を提供すること。
【解決手段】分離装置2は、試料を収容するためのキュベット3と、キュベット3の動作を制御するカローセル4と、を備え、キュベット3は、試料を収容するための反応槽及び廃液槽と、当該反応槽と廃液槽との相互間における試料の移動を制限するための分離堰とを有し、カローセル4は、反応槽と廃液槽との少なくとも一方に収容されている試料のうち、少なくとも一部の試料を、反応槽と廃液槽との少なくとも一方から分離堰を越えて他方に移動させるように、反応槽と廃液槽との少なくとも一方を動作させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析に供される試料の少なくとも一部を分離するための分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数種類の物質を内包する試料の中から所望の物質を分離・同定して分析を行うための分析方法や分析装置が種々開発されている。例えば、特定の物質にのみ選択的に結合する試薬をサンプルに投入し、当該サンプル中に含まれている標的物質と結合させ、結合によって生成された複合物質を、化学発光、蛍光、吸収、散乱等の現象を利用して定量的に検出する方法が用いられている。このような分析方法として、具体的にはEIA(Enzyme Immunoassay:酵素免疫測定法)、FIA(Fluorescence Immunoassay:蛍光免疫測定法)等が挙げられる。これらの方法においては、標的物質や複数種類の試薬の攪拌工程や、標的物質と所定の試薬、あるいは複数試薬間での結合工程、さらに、結合していない余剰のサンプルや試薬(Free)を、結合している複合物質(Bound)から分離するためのB/F分離工程(Bound/Free分離工程)等が必要となる。
【0003】
これらの工程の内、B/F分離工程の実施に際し、従来は、分注装置等を用いて、余剰の試料や試薬を分析用容器から吸引させていた。また、上述の工程に要する処理時間の短縮化や、分注装置等の構成の簡略化、さらに複数の検査項目の分析を実施可能とする分析装置として、分析対象物と結合する磁性粒子の保持が可能な回転部材と、この回転部材の回転面上に試料を供給する手段と、回転面の裏面から磁界を与える手段と、回転部材の回転数や磁界の印加強度等を制御する手段と、磁性粒子の表面の変化を光学的に検出する光学的検知手段とを備える分析装置が提案されている。この分析装置は、回転部材の表面上に直接試薬等を滴下し、当該表面上で所定の反応を行わせ、回転部材を高速で回転させることで余剰の試料液を遠心力で飛散させ除去した後、回転部材の表面上に残留した分析対象物の検出を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特許第3062347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年では、医療分野において患者から採取したサンプルの検査結果を治療に迅速に反映することや、環境分野において浄化工程にある土壌の分析結果を迅速に浄化作業計画に反映すること等、サンプルを採取した場所で即座に当該サンプルの分析を行うことへの要求が高まっており、分析装置の小型化・低コスト化が強く求められている。しかし、これらの要求に対して、上述の従来技術においては、次に示す問題があった。
【0006】
(1)分注装置を用いて試料の吸引をさせる場合の問題
分注装置等を用いて試料の吸引をさせる場合、吸引工程と攪拌工程との間における分析用容器の分注装置等に対する設置及び取り外しや、分注装置等による試料の吸引動作に、一定の時間を要していた。また、分注装置等によって吸引を行わせるためには、分析用容器における液面検出機能等の高度の機能を要するため、分注装置等の装置構成が複雑となっていた。さらに、試料のコンタミネーションを防止するため、吸引の度に吸引用ノズルの交換が必要であったり、分注装置等によって吸引された廃液の処理が別途必要であったりするなど、装置コストの増大を招いていた。
【0007】
(2)特許文献1によって例示した分析装置における問題
上述の特許文献1によって例示した分析装置の場合、B/F分離工程において、余剰の試料を回転部材の表面から飛散させるためには、一定以上の遠心力を試料に与える必要があった。このため、回転部材の大径化や、回転部材の回転数の高速化が必要であり、装置構成の大型化・複雑化を招いていた。特に、複数の試料を処理する場合、さらに大型化・複雑化するという問題を招いていた。また、回転部材を高速で回転させた際に、分析対象物が当該回転部材の表面において広範囲に分散するため、検知手段による検出効率が低下していた。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、(1)B/F分離工程に要する時間の短縮化、(2)装置構成の簡略化、(3)廃液回収のための工程の省略、(4)検出効率の向上、を実現できる分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の分離装置は、試料の少なくとも一部を分離するための分離装置であって、前記試料を収容するための収容手段と、前記収容手段の動作を制御する制御手段と、を備え、前記収容手段は、前記試料を収容するための複数の貯留槽と、当該複数の貯留槽の相互間における前記試料の移動を制限するための分離堰とを有し、前記制御手段は、前記複数の貯留槽の少なくとも一部の貯留槽に収容されている前記試料のうち、少なくとも一部の試料を、当該一部の貯留槽から前記分離堰を越えて他の前記貯留槽に移動させるように、少なくとも当該一部の貯留槽を動作させること、を特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の分離装置は、請求項1に記載の分離装置において、前記制御手段は、前記収容手段を回転させる回転手段であり、前記回転手段は、一つ以上の前記収容手段を保持する回転体と、前記回転体を回転させる駆動手段と、を有し、前記収容手段は、相互に隣接している前記複数の貯留槽の少なくとも一部の貯留槽と前記分離堰とが前記回転体の半径方向に沿って並設されるように、当該回転体に設置されること、を特徴とする。
【0011】
また、請求項3に記載の分離装置は、請求項1に記載の分離装置において、前記制御手段は、前記収容手段を所定の方向に沿って直線運動させる運動手段であり、前記運動手段は、一つ以上の前記収容手段を保持する運動体と、前記運動体を運動させる駆動手段と、を有し、前記収容手段は、相互に隣接している前記複数の貯留槽の少なくとも一部の貯留槽と前記分離堰とが前記所定の方向に沿って並設されるように、前記運動体に設置されること、を特徴とする。
【0012】
また、請求項4に記載の分離装置は、請求項1に記載の分離装置において、前記制御手段は、前記収容手段を任意の角度に傾斜させる傾斜手段であり、前記傾斜手段は、一つ以上の前記収容手段を保持する傾斜体と、前記傾斜体を傾斜させる駆動手段と、を有し、前記収容手段は、相互に隣接している前記複数の貯留槽の少なくとも一部の貯留槽と前記分離堰とが前記傾斜体の傾斜の方向に沿って並設されるように、前記傾斜体に設置されること、を特徴とする。
【0013】
また、請求項5に記載の分離装置は、請求項1から4のいずれか一項に記載の分離装置において、前記収容手段は、第1の貯留槽と第2の貯留槽との二つの前記貯留槽と、当該二つの貯留槽の間に配置された前記分離堰とを有するキュベットであり、前記制御手段は、一つ以上の前記キュベットを動作させること、を特徴とする。
【0014】
また、請求項6に記載の分離装置は、請求項5に記載の分離装置において、前記分離堰は、前記キュベットの外面の一部を当該キュベットの内側に向かって突出させた突出部であり、前記制御手段は、前記キュベットの外側から前記突出部に嵌合し当該キュベットを保持する保持手段を有すること、を特徴とする。
【0015】
また、請求項7に記載の分離装置は、請求項1から6のいずれか一項に記載の分離装置において、前記試料に含まれている磁性体を当該試料が収容されている前記貯留槽に保持するための磁場を発生させる、磁場発生手段を備えること、を特徴とする。
【0016】
また、請求項8に記載の分離装置は、請求項1から7のいずれか一項に記載の分離装置において、前記収容手段は、前記制御手段に着脱自在に設置され、前記複数の貯留槽の少なくとも一部の貯留槽は、当該貯留槽から他の前記貯留槽に流出可能に保留されている前記試料を収容していること、を特徴とする。
【0017】
また、請求項9に記載の分離装置は、請求項1から8のいずれか一項に記載の分離装置において、前記制御手段は、前記複数の貯留槽の少なくとも一部の貯留槽を加熱する加熱手段を有すること、を特徴とする。
【0018】
また、請求項10に記載の分離装置は、請求項1から9のいずれか一項に記載の分離装置において、前記収容手段を、当該収容手段の上面の少なくとも一部が開放されるように形成し、前記試料に含まれる所定物質を検出するための検出手段を、前記収容手段の上方に配置したこと、を特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の本発明によれば、制御手段によって貯留槽の少なくとも一部を動作させ、当該貯留槽に収容されている試料のうち、少なくとも一部の試料に所定の力を加え、当該試料を分離堰を越えて他の貯留槽へと移動させ、当該移動元の貯留槽に収容されている試料と分離することができる。このように、制御手段による貯留槽の動作によって試料の分離ができ、分注装置等による試料の吸排動作が不要となるので、B/F分離工程に要する時間を短縮できる。また、複雑な機構の分注装置等が不要となるので、装置コストの低減を図ることができる。また、廃液は貯留槽に貯留されるので、廃棄処分の際には廃液を収容した状態の収容手段をそのまま廃棄すればよく、当該収容手段の内部からの廃液回収のための工程を省略することができる。さらに、分析対象物は貯留槽の内部に留まり、広範囲に飛散することが無いので、検出対象物の検出効率を向上させることができる。
【0020】
また、請求項2に記載の本発明によれば、駆動手段によって回転体を回転させ、当該回転体に保持されている収容手段を回転させ、貯留槽に収容されている試料に遠心力を与えることにより、当該試料を分離堰を越えて他の貯留槽へと移動させ、当該移動元の貯留槽に収容されている試料と分離することができる。このように、回転手段による収容手段の回転というシンプルな動作によって試料の分離ができ、分注装置による試料の吸引動作が不要となるので、B/F分離工程に要する時間の短縮やコスト低減を図ることができる。
【0021】
また、請求項3に記載の本発明によれば、駆動手段によって運動体に直進運動をさせ、当該運動体に保持されている収容手段に直進運動をさせることにより、貯留槽に収容されている試料に慣性力を与えることができ、当該慣性力によって試料を分離堰を越えて廃液槽へと移動させ、当該移動元の貯留槽に収容されている試料と分離することができる。
【0022】
また、請求項4に記載の本発明によれば、駆動手段によって傾斜体を傾斜させ、当該傾斜体に保持されている収容手段を傾斜させることにより、貯留槽に収容されている試料に加わる重力の方向を変動させることができ、当該重力によって試料を分離堰を越えて他の貯留槽へと移動させ、当該移動元の貯留槽に収容されている試料と分離することができる。
【0023】
また、請求項5に記載の本発明によれば、第1の貯留槽、第2の貯留槽、及び、分離堰を有する一つ以上のキュベットを制御手段に保持させ、当該キュベットを制御手段によって動作させることができるので、複数の検体についての分析や、異なる項目の分析等を、同時に実施することができる。
【0024】
また、請求項6に記載の本発明によれば、キュベットの底面において分離堰に対応して形成されている凹部に、保持手段を嵌合させることで、当該保持手段にキュベットを保持させているので、キュベットの保持のための構造を当該キュベットに新たに付加する必要が無く、コストの低減を図ることができる。
【0025】
また、請求項7に記載の本発明によれば、磁場発生手段によって磁場を発生させ、磁性体を貯留槽に保持させるので、制御手段によって収容手段に所定の動作をさせた場合に、磁性体と結合している試料と、磁性を有しない他の試料とを、確実に分離させることができる。
【0026】
また、請求項8に記載の本発明によれば、予め試料を収容させている収容手段を、制御手段に着脱自在に設置することで、分析の際に分注手段を用いて試料を収容手段に滴下する工程を省略することができ、分析時間の短縮化や、作業の正確化、及び、単純化を実現することができる。
【0027】
また、請求項9に記載の本発明によれば、加熱手段によって収容手段の貯留槽を加熱することで、貯留槽の温度を試料の反応に適した温度範囲となるように調節することができる。
【0028】
また、請求項10に記載の本発明によれば、収容手段の上面を開放面とし、当該収容手段の上方に検出手段を配置しているので、試料との間に介在物が無い状態で検出手段によって当該試料に含まれる所定物質を検出させることができ、検出効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る分離装置の各実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕各実施の形態に共通の基本的概念を説明した後、〔II〕実施の形態の具体的内容について順次説明し、最後に、〔III〕各実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、各実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0030】
〔I〕各実施の形態に共通の基本的概念
まず、各実施の形態に共通の基本的概念について説明する。各実施の形態に係る分離装置は、分析に供される試料の一部を分離するためのものである。ここで、試料とは、分析の一連のプロセスの中で用いられる物質全般をいい、例えば、分析における検体となる血液や土壌等、及び、これらの検体と反応させるための試薬等を含む。
【0031】
各実施の形態に係る分離装置の設置対象や分析の内容は任意であり、例えば、医療分野において患者に近い場所(例えば、病院のベッドサイドや自宅)で行われる臨床検査(POCT:Point of Care Testing)用プラットフォームや、環境分野において水質や土壌の分析に用いられるオンサイト分析機器等に適用することができ、EIAやFIA等の分析方法によって分析を行う分析システムに適用することができる。
【0032】
各実施の形態に係る分離装置の特徴の一つは、概略的に、試料を収容する分析用容器が、試料を収容するための複数の貯留槽と、当該複数の貯留槽の相互間における試料の移動を制限するための分離堰とを有している点にある。また、この分析用容器の動作を制御する制御手段を備えている点にある。制御手段によって分析用容器に所定の動作をさせ、貯留槽に収容されている試料を、分離堰を越えて他の貯留槽に移動させることにより、当初貯留槽に収容されていた試料の一部を分離させることができる。
【0033】
従って、分注装置による試料の吸引動作が不要となるので、B/F分離工程に要する時間を短縮できる。また、複雑な機構の分注装置が不要となるので、装置コストの低減を図ることができる。また、廃液は分析用容器が有する一部の貯留槽に貯留されるので、廃液回収のための工程を省略することができる。さらに、分析対象物が広範囲に飛散することが無いので、検出対象物の検出効率を向上させることができる。
【0034】
〔II〕各実施の形態の具体的内容
次に、本発明に係る各実施の形態の具体的内容について説明する。なお、上述の如く各実施の形態に係る分離装置の設置対象や分析内容は任意であるが、以下では、血液検査用の分析システムに分離装置が設置され、EIAによって血液の分析が実施されるものと仮定して説明を行う。
【0035】
分析システムの具体的な構成は任意であるが、例えば、分離装置に対する所定の動作指示を入力するための入力手段、当該入力手段を介して入力された動作指示に基づいて分離装置の動作を制御するための制御手段、分離装置を用いて試料から検出された検出対象物の量や濃度等を分析するための分析手段、分析結果を表示・出力するための出力手段等を備えている(全て図示せず)。なお、ここでは一例として分析対象が血液である場合を仮定しているが、分析対象は特に血液に限定されるものではなく、細胞破砕液や尿等の種々の体液であっても構わない。
【0036】
〔実施の形態1〕
まず実施の形態1について説明する。この形態は、回転手段を備える基本的な形態である。
【0037】
(分離装置の構成)
まず、分離装置の構成を説明する。図1は本実施の形態1に係る分離装置を搭載する分析システムの概要図である。図1に示すように、分離装置2は、キュベット3、カローセル4、磁力源5、図示しない温度調節器、及び、検出器を備えており、分析システム1に設置されて使用される。
【0038】
(分離装置の構成−キュベット3)
キュベット3は、検体となる血液や、血液と反応させる試薬等を収容するための容器であり、特許請求の範囲における収容手段及びキュベットに対応している。図2は、キュベット3の側断面図である。図2に示すように、キュベット3は、上面が開放された容器として形成され、反応槽30、廃液槽31、及び、分離堰32を備えている。なお、キュベット3の具体的な材料は任意であるが、例えば、ガラス、石英、アクリル樹脂等の透明な材料を用いることで、当該キュベット3の壁面を介してキュベット3内部の物質に対する光学的な分析を行うことができる。
【0039】
反応槽30は、検体となる血液や、血液と反応させる試薬等を収容するものであり、特許請求の範囲における貯留槽及び第1の貯留槽に対応している。反応槽30の具体的な構成は任意であるが、反応させる検体の量や、使用する試薬の量等に対応させて、当該反応槽30の体積を調整することにより、B/F分離、検体や試薬等の攪拌、分析対象物の検出等を効率的に行うことができる。
【0040】
廃液槽31は、B/F分離によって分析対象物から分離された余剰の検体や試薬等を収容するものであり、特許請求の範囲における貯留槽及び第2の貯留槽に対応している。廃液槽31の具体的な構成は任意であるが、反応槽30と同様に、反応させる検体の量や、使用する試薬の量等に対応させて、当該廃液槽31の体積を調整することができる。
【0041】
分離堰32は、反応槽30と廃液槽31との間における検体や試薬等の移動を制限するためのものであり、反応槽30と廃液槽31との間に配置されている。分離堰32の具体的な形状は任意であるが、例えば、図2に示すように、分離堰32における反応槽30の側の側面を傾斜させ、廃液槽31の側の側面を鉛直方向に平行な面とすることができる。これにより、後述するようにカローセル4によってキュベット3に所定の動作をさせた場合に、反応槽30に収容されている試料に分離堰32を越えさせ易くすることができると共に、廃液槽31に収容された試料が分離堰32を越え、反応槽30へと逆流することを防止することができる。また、分離堰32の側面の傾きや高さ等は、当該分離堰32の表面粗さ、反応槽30に収容される試料の粘性、体積、磁力源5によって発生される磁場の強さ等に基づいて決定することが望ましい。
【0042】
特に、検体である血液をキュベット3に収容させる場合、分離堰32の水平面からの傾きは30°〜75°の範囲内であることが望ましく、45°〜70°であることがより望ましい。また、反応槽30の底面から分離堰32の頂部までの高さは、2mm〜10mmの範囲内であることが望ましく、5mm〜8mmであることがより望ましい。
【0043】
また、分離堰32の構成は任意であり、例えば、キュベット3の外壁とは別体として形成された分離堰32をキュベット3の底面に固定してもよい。一方、キュベット3の底面を当該キュベット3の内側に突出させた突出部として分離堰32を形成してもよい。特に、後者のように、分離堰32を形成するためにキュベット3の底面を当該キュベット3の内側に突出させ、キュベット3の外側における当該底面の形状を分離堰32の形状に沿った凹部32aとすることにより、当該凹部32aに、カローセル4の後述する保持部40bを嵌合させ、当該保持部40bによってキュベット3を保持させることができる。
【0044】
(分離装置の構成−カローセル4)
カローセル4は、キュベット3を回転させるためのものであり、特許請求の範囲における制御手段及び回転手段に対応している。カローセル4は、テーブル40、モータ41、及び、図示しないモータ制御部を備えている。
【0045】
テーブル40は、一つ以上のキュベット3を保持するものであり、特許請求の範囲における回転体に対応している。より詳細には、テーブル40は、本体40a、及び、保持部40bを備えている。本体40aは、略円板として形成され、当該略円板の円板面が略水平となるように設置されている。本体40aは、当該本体40aの中央近傍において、歯車等の所定の駆動力伝達手段を介してモータ41に接続され、当該モータ41によって回転される。保持部40bは、テーブル40と共にキュベット3を回転させるためにキュベット3を保持するためものであり、特許請求の範囲における保持手段に対応している。保持部40bは、キュベット3における反応槽30、分離堰32、及び、廃液槽31が、本体40aの内周から当該本体40aの半径方向に沿って、反応槽30、分離堰32、廃液槽31の順序にて並設されるように、当該キュベット3を着脱自在に保持している。また、保持部40bは、一つ以上のキュベット3を保持することができる。図1に示した例では、二つのキュベット3が、本体40aの周縁に沿って保持部40bによって保持されている。
【0046】
なお、保持部40bの具体的な形状は任意であるが、例えば、本体40aの周縁部において当該本体40aと略直交する方向に立設された突起体として形成することができる。この場合、キュベット3の外側から当該キュベット3の凹部32aに嵌合するように突起体を形成してもよい。例えば、上述のように、分離堰32における反応槽30の側の側面が傾斜するように形成されている場合には、保持部40bの頂部における本体40aの中心側の側面を傾斜させるように形成することで、当該保持部40bを凹部32aに嵌合させ、保持部40bによってキュベット3を着脱自在に保持させることができる。
【0047】
モータ41は、テーブル40を回転させるためのものであり、特許請求の範囲における駆動手段に対応している。モータ41による駆動力は、歯車等の所定の駆動力伝達手段を介してテーブル40に伝達され、当該テーブル40を回転させる。なお、モータ41の具体的な構成は任意であるが、モータ41の回転速度や回転量等を制御することでテーブル40の回転動作を制御し、キュベット3の位置や動作等を制御するためには、位置検出機能を有していることが望ましい。従って、位置検出器を有するパルスモータや、エンコーダ機能付のサーボモータを用いることが望ましい。この場合、位置検出器41aとしては、透過光式、反射光式、磁気式、超音波式、接触式、圧力式等の各方式を作動原理とする位置検出器41aを用いることができる。
【0048】
モータ制御部は、モータ41の動作を制御するためのものである。モータ制御部は、所定の入力手段を介した入力操作に基づいて、テーブル40に所定の回転動作をさせるために、モータ41の回転速度、回転数等を制御する。この際、位置検出器41aからの出力に基づいてモータ41の制御を行わせることによって、テーブル40の回転速度や位置決めを行わせることができる。
【0049】
なお、モータ41の回転数は任意であるが、分離堰32の表面粗さ、反応槽30に収容される試料の粘性、体積、磁力源5によって発生される磁場の強さ等に基づいて決定することが望ましい。具体的には、モータ41の最高回転数は100rpm〜1000rpmの範囲内であることが望ましく、200rpm〜400rpmの範囲内であることがより望ましい。
【0050】
(分離装置の構成−磁力源5)
磁力源5は、キュベット3の反応槽30や廃液槽31に収容されている試料に含まれている磁性体を当該反応槽30や廃液槽31に保持するための、磁場を発生させるためのものであり、特許請求の範囲における磁場発生手段に対応している。磁力源5の具体的な構成は任意であり、永久磁石、あるいは、電磁石を用いることができるが、磁場の発生のON/OFFの切替が可能であることや、発生させる磁場の強さの制御が可能であること等から、電磁石を用いることが望ましい。また、磁力源5の配置は任意であり、テーブル40の本体40aの内部、テーブル40の下方、側方、上方等、特にテーブル40に設置されたキュベット3の反応槽30の内部に収容されている試料の位置に所定強度の磁場を発生させられる位置であれば、任意の位置に磁力源5を配置することができる。また、複数の磁力源5を組合せて、異なる方向の磁場を発生させられるようにしてもよい。これにより、試料に含まれている磁性体を保持するための磁場を、より精密に制御することができる。
【0051】
(分離装置の構成−温度調節器)
温度調節器は、キュベット3を加熱することで試料の温度調節を行うためのものであり、特許請求の範囲における加熱手段に対応している。温度調節器の具体的な構成は任意であり、ペルチェ素子や、電気ヒータ等の固体式温度調節器や、空冷式温度調節器、あるいは、水冷式温度調節器等を用いることができ、所定の制御手段によって制御される。
【0052】
また、温度調節器の具体的な配置は任意であり、当該温度調節器の形式によって、キュベット3を効率的に加熱するために最適な配置を採用することが望ましい。例えば、温度調節器としてペルチェ素子や電気ヒータ等の固体式の温度調節器を用いる場合には、温度調節器をキュベット3に接触させ、当該キュベット3の壁面を介して内部の試料に熱を伝達させる必要がある。従って、キュベット3との接触面積を大きくすることができ、試料との間の伝熱距離を小さくすることができる配置が望ましい。この様な配置の例として、テーブル40の上面に温度調節器を配置し、キュベット3の底面を接触面とし、当該底面から温度調節器によって加熱を行わせることができる。
【0053】
(分離装置の構成−検出器)
検出器は、キュベット3に収容されている試料に含まれる検出対象物を検出するためのものであり、特許請求の範囲における検出手段に対応している。検出器の具体的な構成は任意であり、化学発光、蛍光、吸収、散乱、電気、示差屈折率等の各検出原理を利用する検出器を用いることができる。以下の説明では、一例として、検出対象物から発せられた光を検出するための検出器であるPMT6(Photomultiplier)を用いる場合について説明する。
【0054】
なお、検出器としてPMT6を用いる場合、キュベット3が石英のような透明材料によって形成されている場合には、キュベット3の上方、側方、又は下方のいずれの方向からでも、当該キュベット3に収容されている試料から発せられた光をPMT6によって検出することが可能である。従って、キュベット3との間に障害物が無い範囲における任意の位置に、PMT6を設置することができる。特に、上述のように上面が開放された容器としてキュベット3が形成されている場合には、キュベット3の上方にPMT6を配置することにより、試料との間に介在物が無い状態でPMT6によって当該試料から発せられた光を検出させることができ、検出効率を向上させることができる。
【0055】
(分離装置の動作)
次に、分離装置2の動作について説明する。上述したように、本実施の形態1においては、血液検査用の分析システム1に分離装置2が設置され、EIAによって血液の分析が実施される場合を例として説明する。図3から図9は、EIAによる血液の分析の各段階における、キュベット3に収容されている試料の状態を示した図である。分析を開始する前提として、カローセル4、磁力源5、温度調節器、PMT6等が、停止状態に設定されているものとする。
【0056】
(A)キュベット3の設置
まず、キュベット3をテーブル40に設置する。この際、図2に示したように、キュベット3の凹部32aにテーブル40の保持部40bが嵌合されるように設置する。
【0057】
(B)検体の滴下
続いて、図3に示すように、検体(全血、血清、血漿等)を、所定の分注手段99を用いてキュベット3の反応槽30に滴下する。
【0058】
(C)キュベット3の加熱
温度調節器によってキュベット3を加熱し、キュベット3の温度が以後の試料の反応に適した温度範囲となるように調節する。加熱を行う際には、キュベット3全体を加熱してもよく、反応槽30の部分のみを局所的に加熱してもよい。また、複数の温度調節器によって、キュベット3を局所的に異なる温度に調節してもよい。
【0059】
(D)磁性粒子試薬の滴下
図4に示すように、所定の分注手段99を用いて、磁性粒子試薬を反応槽30に滴下する。ここで、磁性粒子試薬とは、検体に対する特異的結合物質を担持した磁性粒子をいうものとする。
【0060】
(E)酵素標識抗体の滴下
図5に示すように、所定の分注手段99を用いて、酵素標識抗体を反応槽30に滴下する。ここで、酵素標識抗体とは、検体と特異的に結合する抗体に酵素を結合させたものであり、所定の基質との間で酵素反応を生じるものである。
【0061】
(F)免疫反応
以上のように、検体、磁性粒子試薬、及び、酵素標識抗体の三種の試料が反応槽30に収容された状態において、磁力源5を動作させ、磁場を発生させる。この時、磁力源5は、図6に示すように、磁性粒子試薬が反応槽30の底面に保持されるように磁場を発生させている。この状態において、モータ制御部によってモータ41の動作を制御し、テーブル40に回転、回転方向の反転、及び、回転の停止等をさせ、反応槽30に収容されている三種の試料に慣性力を加えることで、当該試料を攪拌し、相互に混合させる。これにより、検体と磁性粒子試薬とが結合し、さらに検体を介して磁性粒子試薬に酵素標識抗体が結合する。免疫反応終了後、モータ制御部によってモータ41の動作を制御し、テーブル40を回転させる。テーブル40と共にキュベット3が回転することで、図7に示すように、反応槽30に収容されている試料に遠心力が加わり、反応槽30の内部の試薬、及び、磁場によって底面に保持されていない酵素標識抗体や検体が、反応槽30から分離堰32を越えて廃液槽31へと分離される。
【0062】
(G)B/F分離及び洗浄
続いて、図8に示すように、所定の分注手段99を用いて、洗浄試薬を反応槽30に滴下する。この状態において、モータ制御部によってモータ41の動作を制御し、テーブル40に回転、回転方向の反転、及び、回転の停止等をさせ、攪拌を行う。十分に攪拌を行った後、モータ制御部によってモータ41の動作を制御し、テーブル40を回転させる。テーブル40と共にキュベット3が回転することで、図9に示すように、反応槽30に収容されている試料に遠心力が加わり、反応槽30の内部の洗浄試薬、及び、磁場によって底面に保持されていない酵素標識抗体や検体が、反応槽30から分離堰32を越えて廃液槽31へと分離される。このB/F分離及び洗浄動作を複数回(望ましくは8〜10回)繰り返す。
【0063】
(H)基質の滴下及び攪拌
図10に示すように、磁力源5を停止させ、磁場を消滅させた後、所定の分注手段99を用いて、基質を反応槽30に滴下する。続いて、磁力源5を動作させ、磁場を発生させ、磁性粒子試薬と、検体と、酵素標識抗体との結合体を、反応槽30の底面に保持させる。この状態において、モータ制御部によってモータ41の動作を制御し、テーブル40に回転、回転方向の反転、及び、回転の停止等をさせることで、基質を反応槽30の内部で拡散させ、酵素標識抗体と基質との酵素反応を行わせる。
【0064】
(I)検出、結果表示
次に、モータ制御部によってモータ41の動作を制御し、テーブル40を回動させ、キュベット3をPMT6に接近させる。図11に示すように、PMT6は、反応槽30の内部の反応を光学的に検出する。なお、PMT6の光軸上には一つのキュベット3のみが存在するように配置されているため、他のキュベット3での酵素−基質反応に起因する発光をPMT6が誤検出することはない。このようにPMT6によって得られた信号に基づき、分析システム1は検体の濃度算出や結果表示等を実行する。
【0065】
(実施の形態1の効果)
このように実施の形態1によれば、モータ41によってテーブル40を回転させ、当該テーブル40に保持されているキュベット3を回転させ、反応槽30に収容されている検体、酵素標識抗体、洗浄試薬等の試料に遠心力を与えることにより、当該試料を分離堰32を越えて廃液槽31へと移動させ、反応槽30に収容されている試料と分離することができる。このように、カローセル4によるキュベット3の回転というシンプルな動作によって試料の分離ができ、分注装置による試料の吸引動作が不要となるので、B/F分離工程に要する時間を短縮できる。また、複雑な機構の分注装置が不要となるので、装置コストの低減を図ることができる。また、廃液は廃液槽31に貯留されるので、廃棄処分の際には廃液を収容した状態のキュベット3をそのまま廃棄すればよく、キュベット3の内部からの廃液回収のための工程を省略することができる。さらに、分析対象物は反応槽30の内部に留まり、広範囲に飛散することが無いので、検出対象物の検出効率を向上させることができる。
【0066】
また、反応槽30、廃液槽31、及び、分離堰32を有する一つ以上のキュベット3をテーブル40に保持させ、当該テーブル40と共に回転動作させることができるので、複数の検体についての分析や、異なる項目の分析等を、同時に実施することができる。また、キュベット3をテーブル40の周縁に配置することにより、反応槽30に収容されている試料に効果的に遠心力を与えることができる。従って、テーブル40の大型化を防ぐことができる。
【0067】
また、キュベット3の底面において分離堰32に対応して形成されている凹部32aに、保持部40bを嵌合させることで、当該保持部40bにキュベット3を保持させているので、キュベット3の保持のための構造を新たに付加する必要が無く、コストの低減を図ることができる。
【0068】
また、磁力源5によって磁場を発生させ、磁性粒子試薬を反応槽30に保持させるので、カローセル4によってキュベット3に回転動作をさせた場合に、磁性粒子試薬や当該磁性粒子試薬と結合している試料と、磁性を有しない他の試料とを、確実に分離させることができる。
【0069】
また、温度調節器によってキュベット3を加熱することで、キュベット3の温度を試料の反応に適した温度範囲となるように調節することができる。
【0070】
また、キュベット3の上面を開放面とし、当該キュベット3の上方にPMT6を配置しているので、試料との間に介在物が無い状態でPMT6によって当該試料から発せられた光を検出させることができ、検出効率を向上させることができる。
【0071】
〔実施の形態2〕
次に、実施の形態2について説明する。この形態は、テーブル40にキュベット3の設置孔を設けた形態である。
【0072】
なお、実施の形態2の構成は、特記する場合を除いて実施の形態1の構成と略同一であり、実施の形態1の構成と略同一の構成についてはこの実施の形態1で用いたのと同一の符号及び/又は名称を必要に応じて付して、その説明を省略する。
【0073】
(キュベット3)
図12は、本実施の形態2に係るキュベット3及びカローセル4を示した分解斜視図である。なお、磁力源5や温度調節器、検出器、分析システム1については、実施の形態1と同様であり、図12においては図示していない。図12に示すように、本実施の形態2に係るキュベット3は、当該キュベット3の上面の端部に、テーブル40に対する固定用の突出部33を備えている。突出部33には、キュベット3をテーブル40に固定するための固定ネジ42を挿通させるための挿通孔33aが設けられている。
【0074】
(テーブル40)
テーブル40は、図12に示したように、設置孔40cを備えている。設置孔40cは、テーブル40と共にキュベット3を回転させるためにキュベット3を保持するためのものであり、特許請求の範囲における保持手段に対応している。具体的には、設置孔40cは、本体40aの円板面に穿設された孔部であり、当該設置孔40cにキュベット3を嵌込可能となっている。また、設置孔40cは、当該設置孔40cにキュベット3を設置した場合において、当該キュベット3における反応槽30、分離堰32、及び、廃液槽31が、本体40aの内周から当該本体40aの半径方向に沿って、反応槽30、分離堰32、廃液槽31の順序にて並設されるように、当該キュベット3を着脱自在に保持している。
【0075】
さらに、設置孔40cの近傍には、キュベット3とテーブル40とを相互に固定する固定ネジ42を螺合させるための固定ネジ孔40dが設けられている。固定ネジ孔40dは、キュベット3を設置孔40cに設置した場合に、当該固定ネジ孔40dの孔軸と挿通孔33aとの孔軸とが略一致するように、本体40aに穿設されている。
【0076】
(テーブル40に対するキュベット3の固定)
キュベット3をテーブル40に固定する場合には、キュベット3の反応槽30及び廃液槽31の部分を設置孔40cに嵌め込み、突出部33を本体40aの表面にて掛止させる。続いて、固定ネジ42を挿通孔33aを介して固定ネジ孔40dに螺合させ、キュベット3とテーブル40とを相互に固定させる。
【0077】
(実施の形態2の効果)
このように実施の形態2によれば、キュベット3を設置孔40cに嵌め込むと共に、固定ネジ42によってテーブル40と相互に固定させるので、当該キュベット3を確実にテーブル40に固定することができる。
【0078】
〔実施の形態3〕
次に、実施の形態3について説明する。この形態は、運動手段を備えた形態である。
【0079】
なお、実施の形態3の構成は、特記する場合を除いて実施の形態1の構成と略同一であり、実施の形態1の構成と略同一の構成についてはこの実施の形態1で用いたのと同一の符号及び/又は名称を必要に応じて付して、その説明を省略する。
【0080】
(直進運動台)
図13は、本実施の形態3に係る分離装置2を示した概要図である。なお、温度調節器や検出器、分析システム1については、実施の形態1と同様であり、図13においては図示していない。図13に示すように、本実施の形態3に係る分離装置2は、実施の形態1におけるカローセル4に代えて、直進運動台7を備えている。直進運動台7は、キュベット3を直進運動させるためのものであり、特許請求の範囲における運動手段に対応している。直進運動台7は、テーブル70、駆動部71、及び、図示しない駆動制御部を備えている。
【0081】
テーブル70は、一つ以上のキュベット3を保持するものであり、特許請求の範囲における運動体に対応している。より詳細には、テーブル70は、本体70a、及び、保持部70bを備えている。本体70aは略平板として形成され、当該略平板の平板面が略水平となるように設置されている。本体70aは、当該本体70aの任意の位置(図13に示した例では、本体70aの下面側)において、駆動部71に接続され、当該駆動部71によって直進運動される。保持部70bは、テーブル70と共にキュベット3を直進運動させるためにキュベット3を保持するものであり、特許請求の範囲における保持手段に対応している。保持部70bは、キュベット3における反応槽30、分離堰32、及び、廃液槽31が、本体70aが駆動部71によって直進運動される方向に沿って、反応槽30、分離堰32、廃液槽31の順序にて並設されるように、当該キュベット3を着脱自在に保持している。また、保持部70bは、一つ以上のキュベット3を保持することができる。図13に示した例では、四つのキュベット3が、保持部70bによって保持されている。
【0082】
なお、保持部70bの具体的な形状は任意であるが、例えば図13に示したように、本体70aの上面側において当該本体70aと略直交する方向に立設された突起体として形成することができる。この場合、実施の形態1の場合と同様に、キュベット3の外側から当該キュベット3の凹部32aに嵌合するように突起体を形成してもよい。
【0083】
駆動部71は、テーブル70を直進動作させるためのものであり、特許請求の範囲における駆動手段に対応している。駆動部71の具体的な構成は任意であり、例えば、モータにギアやベルト等を組み合わせた既知の送り機構を用いてもよく、あるいは、空気圧や油圧のピストンを用いてもよい。また、キュベット3の位置や動作等を制御するために、透過光式等の所定の位置検出器(図示せず)を用いることが望ましい。
【0084】
駆動制御部は、駆動部71の動作を制御するためのものである。駆動制御部は、所定の入力手段を介した入力操作に基づいて、キュベット3に所定の直進動作をさせるために、駆動部71によるテーブル70の直進動作の速度や距離等を制御する。この際、位置検出器からの出力に基づいて駆動部71の制御を行わせることができる。
【0085】
(分離装置の動作)
次に、分離装置2の動作について説明する。実施の形態1においては、例に挙げて説明したEIAによる分析の流れのうち、「(F)免疫反応」から「(H)基質の滴下及び攪拌」において、テーブル40の回転、回転方向の反転、及び、回転の停止等によって試料に慣性力を加えることで当該試料を攪拌し、テーブル40の回転によって試料に遠心力を加えることで当該試料を移動させている。これに対して本実施の形態3においては、駆動制御部によって駆動部71を制御し、テーブル70の直進、直進方向の反転、及び、直進動作の停止等によって試料に慣性力を加えることで、当該試料を攪拌させる。また、テーブル70に直進方向の反転動作をさせ、図13に示すように、反応槽30に収容されている試料に慣性力を加えることにより、当該試料を廃液槽31に移動させる。なお、分離装置2を用いて行われる分析の流れについては、実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
【0086】
(実施の形態3の効果)
このように実施の形態3によれば、駆動部71によってテーブル70に直進運動をさせ、当該テーブル70に保持されているキュベット3に直進運動をさせることにより、反応槽30に収容されている検体、酵素標識抗体、洗浄試薬等の試料に慣性力を与えることができ、当該慣性力によって試料を分離堰32を越えて廃液槽31へと移動させ、反応槽30に収容されている試料と分離することができる。
【0087】
〔実施の形態4〕
次に、実施の形態4について説明する。この形態は、傾斜手段を備えた形態である。
【0088】
なお、実施の形態4の構成は、特記する場合を除いて実施の形態1の構成と略同一であり、実施の形態1の構成と略同一の構成についてはこの実施の形態1で用いたのと同一の符号及び/又は名称を必要に応じて付して、その説明を省略する。
【0089】
(傾斜台)
図14は、本実施の形態4に係る分離装置2を示した概要図である。なお、温度調節器や検出器、分析システム1については、実施の形態1と同様であり、図14においては図示していない。図14に示すように、本実施の形態4に係る分離装置2は、実施の形態1におけるカローセル4に代えて、傾斜台8を備えている。傾斜台8は、キュベット3を任意の角度に傾斜させるためのものであり、特許請求の範囲における傾斜手段に対応している。傾斜台8は、テーブル80、駆動部81、及び、図示しない駆動制御部を備えている。
【0090】
テーブル80は、一つ以上のキュベット3を保持するものであり、特許請求の範囲における傾斜体に対応している。より詳細には、テーブル80は、本体80a、及び、保持部80bを備えている。本体80aは略平板として形成されている。本体80aは、当該本体80aの任意の位置(図14に示した例では、本体80aの端部)において、駆動部81に接続され、当該駆動部81によって傾斜される。保持部80bは、テーブル80と共にキュベット3を傾斜させるためにキュベット3を保持するものであり、特許請求の範囲における保持手段に対応している。保持部80bは、キュベット3における反応槽30、分離堰32、及び、廃液槽31が、本体80aが駆動部81によって傾斜された場合の傾斜方向に沿って、反応槽30、分離堰32、廃液槽31の順序にて並設されるように、当該キュベット3を着脱自在に保持している。また、保持部80bは、一つ以上のキュベット3を保持することができる。図14に示した例では、二つのキュベット3が、保持部80bによって保持されている。
【0091】
なお、保持部80bの具体的な形状は任意であるが、実施の形態4の保持部80bと同様に、本体80aの上面側において当該本体80aと略直交する方向に立設された突起体として形成することができる。
【0092】
駆動部81は、テーブル80を傾斜させるためのものであり、特許請求の範囲における駆動手段に対応している。駆動部81の具体的な構成は任意であり、例えば、モータの回転動作をギアを用いた伝達機構によってテーブル80に伝達させるようにしてもよく、あるいは、空気圧や油圧のピストンを用いてもよい。また、キュベット3の傾きを制御するために、透過光式等の所定の位置検出器(図示せず)を用いることが望ましい。
【0093】
駆動制御部は、駆動部81の動作を制御するためのものである。駆動制御部は、所定の入力手段を介した入力操作に基づいて、駆動部81の動作を制御し、テーブル80を所定角度に傾斜させる。この際、位置検出器からの出力に基づいて駆動部81の制御を行わせることができる。
【0094】
(分離装置の動作)
次に、分離装置2の動作について説明する。実施の形態1においては、例に挙げて説明したEIAによる分析の流れのうち、「(F)免疫反応」から「(H)基質の滴下及び攪拌」において、テーブル40の回転、回転方向の反転、及び、回転の停止等によって試料に慣性力を加えることで当該試料を攪拌し、テーブル40の回転によって試料に遠心力を加えることで当該試料を移動させている。これに対して本実施の形態4においては、駆動制御部によって駆動部81を制御し、テーブル80の傾斜を動的に変化させ、試料に慣性力を加えることで、当該試料を攪拌させる。また、テーブル80の角度を所定の角度として、反応槽30に収容されている試料に対して廃液槽31に向かう向きに重力を働かせることにより、当該試料を廃液槽31に移動させる。なお、分離装置2を用いて行われる分析の流れについては、実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
【0095】
(実施の形態4の効果)
このように実施の形態4によれば、駆動部81によってテーブル80を傾斜させ、当該テーブル80に保持されているキュベット3を傾斜させることにより、反応槽30に収容されている検体、酵素標識抗体、洗浄試薬等の試料に加わる重力の方向を変動させることができ、当該重力によって試料を分離堰32を越えて廃液槽31へと移動させ、反応槽30に収容されている試料と分離することができる。
【0096】
〔III〕各実施の形態に対する変形例
以上、本発明に係る各実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0097】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0098】
(各実施の形態の相互の関係について)
上記説明した各実施の形態は、任意の組み合わせで相互に組み合わせることができる。例えば、実施の形態1と実施の形態4とにおけるカローセル4と傾斜台8とを組み合わせて、キュベット3を任意の方向に、例えば、カローセル4のテーブル40の中心に向かう方向に傾斜させた状態で回転運動をさせるようにしてもよい。これにより、反応槽30から廃液槽31に試料を移動させやすい状態、あるいは、移動させにくい状態でキュベット3に回転運動をさせることができ、試料の分離をより詳細に制御することができる。
【0099】
(キュベット3の構成について)
上述の各実施の形態では、所定の分注手段99を用いて反応槽30に試料を滴下すると説明したが、反応槽30や廃液槽31、あるいは反応槽30及び廃液槽31とは別個に設けた貯留槽等に、予め試料を収容させていてもよい。この場合、ゼラチン等のゲル化剤によって試料をゲル化した状態で反応槽30等に収容させておくことで、分析の実施までの間は他の貯留槽に移動しないように反応槽30等に保持させることができる。また、分析時には、ゲル化させた試料を温度調節器を用いて加熱することにより、当該試料を溶解させ、他の試料と混合させたり、他の貯留槽へと流出させたりすることができる。
【0100】
あるいは、試料を収容させている反応槽30等を、プラスチックフィルム等でシールすることで、他の貯留槽に移動しないように当該貯留槽に保持させてもよい。この場合には、分析時にシールを除去することにより、保持されていた試料を他の試料と混合等させることができる。
【0101】
このように予め試料を収容させているキュベット3を、カローセル4等のテーブル40に着脱自在に設置することで、分析の際に分注手段を用いて試料を滴下する工程を省略することができ、分析時間の短縮化や、作業の正確化、及び、単純化を実現することができる。
【0102】
また、上述の各実施の形態では、キュベット3の外側における当該底面の形状を分離堰32の形状に沿った凹部32aとし、当該凹部32aに保持部80bを嵌合させることにより、キュベット3をカローセル4等のテーブル40に着脱自在としているが、他の構成によってキュベット3をテーブル40に設置してもよい。例えば、キュベット3の反応槽30の外形に対応させた窪みをテーブル40の表面に設け、当該窪みにキュベット3を嵌込させることで、キュベット3をテーブル40に着脱自在とすることもできる。あるいは、キュベット3の底面に固定用の脚部を設けると共に、テーブル40の表面には脚部を挿入するための挿入孔を設け、当該挿入孔に脚部を挿入することによってキュベット3をテーブル40に着脱自在としてもよい。
【0103】
また、キュベット3は、反応槽30と廃液槽31との二つの貯留槽と、これらの貯留槽の間に配置された分離堰32とを備えていると説明したが、三つ以上の貯留槽を備えるように構成してもよい。例えば、反応槽30と廃液槽31との間に、新たに第3の貯留槽を配置することができる。これにより、反応槽30及び第3の貯留槽のそれぞれにおいて異なる反応を行わせた後に、反応槽30の試料を第3の貯留槽に移動させ、さらに反応を行わせるなど、より複雑な反応工程を一つのキュベット3を用いて行わせることができる。
【0104】
(分注手段について)
上述の各実施の形態では、分析の際に所定の分注手段99を用いて試料を反応槽30に滴下させているが、分離装置2に分注手段を内蔵させてもよい。例えば、キュベット3の上方に分注手段を配置することにより、キュベット3の上面から反応槽30に試料を分注させることができる。これにより、試料の分注から、攪拌、分離、反応、検出等の各工程を、一つの分離装置2を用いて行うことができる。
【0105】
(磁力源5について)
上述の各実施の形態では、磁力源5として電磁石を用いているが、永久磁石を用いてもよい。この場合には、キュベット3と永久磁石との距離を調節することにより、キュベット3の反応槽30の内部に収容されている試料の位置における磁場の強度を調節することができる。例えば、実施の形態1の場合には、カローセル4におけるモータ41やその他の所定の駆動手段を用いて、テーブル40の位置を調節することで、試料の位置における磁場の強度を調節することができる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
この発明に係る分離装置は、分析に供される試料の一部を分離するための分離装置に適用でき、B/F分離工程に要する時間の短縮化、装置構成の簡略化、廃液回収のための工程の省略、及び、検出効率の向上を実現できる分離装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本実施の形態1に係る分離装置を搭載する分析システムの概要図である。
【図2】キュベット3の側断面図である。
【図3】検体の滴下段階における、キュベット3に収容されている試料の状態を示した図である。
【図4】磁性粒子試薬の滴下段階における、キュベット3に収容されている試料の状態を示した図である。
【図5】酵素標識抗体の滴下段階における、キュベット3に収容されている試料の状態を示した図である。
【図6】免疫反応段階における、キュベット3に収容されている試料の状態を示した図である。
【図7】免疫反応段階における、キュベット3に収容されている試料の状態を示した図である。
【図8】B/F分離及び洗浄段階における、キュベット3に収容されている試料の状態を示した図である。
【図9】B/F分離及び洗浄段階における、キュベット3に収容されている試料の状態を示した図である。
【図10】基質の滴下及び攪拌段階における、キュベット3に収容されている試料の状態を示した図である。
【図11】検出段階における、キュベット3に収容されている試料の状態を示した図である。
【図12】実施の形態2に係るキュベット3及びカローセル4を示した分解斜視図である。
【図13】実施の形態3に係る分離装置2を示した概要図である。
【図14】実施の形態4に係る分離装置2を示した概要図である。
【符号の説明】
【0108】
1 分析システム
2 分離装置
3 キュベット
4 カローセル
5 磁力源
6 PMT
7 直進運動台
8 傾斜台
30 反応槽
31 廃液槽
32 分離堰
32a 凹部
33 突出部
33a 挿通孔
40、70、80 テーブル
40a、70a、80a 本体
40b、70b、80b 保持部
40c 設置孔
40d 固定ネジ孔
41 モータ
41a 位置検出器
42 固定ネジ
71、81 駆動部
99 分注手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の少なくとも一部を分離するための分離装置であって、
前記試料を収容するための収容手段と、
前記収容手段の動作を制御する制御手段と、を備え、
前記収容手段は、前記試料を収容するための複数の貯留槽と、当該複数の貯留槽の相互間における前記試料の移動を制限するための分離堰とを有し、
前記制御手段は、前記複数の貯留槽の少なくとも一部の貯留槽に収容されている前記試料のうち、少なくとも一部の試料を、当該一部の貯留槽から前記分離堰を越えて他の前記貯留槽に移動させるように、少なくとも当該一部の貯留槽を動作させること、
を特徴とする分離装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記収容手段を回転させる回転手段であり、
前記回転手段は、一つ以上の前記収容手段を保持する回転体と、前記回転体を回転させる駆動手段と、を有し、
前記収容手段は、相互に隣接している前記複数の貯留槽の少なくとも一部の貯留槽と前記分離堰とが前記回転体の半径方向に沿って並設されるように、当該回転体に設置されること、
を特徴とする請求項1に記載の分離装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記収容手段を所定の方向に沿って直線運動させる運動手段であり、
前記運動手段は、一つ以上の前記収容手段を保持する運動体と、前記運動体を運動させる駆動手段と、を有し、
前記収容手段は、相互に隣接している前記複数の貯留槽の少なくとも一部の貯留槽と前記分離堰とが前記所定の方向に沿って並設されるように、前記運動体に設置されること、
を特徴とする請求項1に記載の分離装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記収容手段を任意の角度に傾斜させる傾斜手段であり、
前記傾斜手段は、一つ以上の前記収容手段を保持する傾斜体と、前記傾斜体を傾斜させる駆動手段と、を有し、
前記収容手段は、相互に隣接している前記複数の貯留槽の少なくとも一部の貯留槽と前記分離堰とが前記傾斜体の傾斜の方向に沿って並設されるように、前記傾斜体に設置されること、
を特徴とする請求項1に記載の分離装置。
【請求項5】
前記収容手段は、第1の貯留槽と第2の貯留槽との二つの前記貯留槽と、当該二つの貯留槽の間に配置された前記分離堰とを有するキュベットであり、
前記制御手段は、一つ以上の前記キュベットを動作させること、
を特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の分離装置。
【請求項6】
前記分離堰は、前記キュベットの外面の一部を当該キュベットの内側に向かって突出させた突出部であり、
前記制御手段は、前記キュベットの外側から前記突出部に嵌合し当該キュベットを保持する保持手段を有すること、
を特徴とする請求項5に記載の分離装置。
【請求項7】
前記試料に含まれている磁性体を当該試料が収容されている前記貯留槽に保持するための磁場を発生させる、磁場発生手段を備えること、
を特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の分離装置。
【請求項8】
前記収容手段は、前記制御手段に着脱自在に設置され、
前記複数の貯留槽の少なくとも一部の貯留槽は、当該貯留槽から他の前記貯留槽に流出可能に保留されている前記試料を収容していること、
を特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の分離装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記複数の貯留槽の少なくとも一部の貯留槽を加熱する加熱手段を有すること、
を特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の分離装置。
【請求項10】
前記収容手段を、当該収容手段の上面の少なくとも一部が開放されるように形成し、
前記試料に含まれる所定物質を検出するための検出手段を、前記収容手段の上方に配置したこと、
を特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−115752(P2009−115752A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−292096(P2007−292096)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(306008724)富士レビオ株式会社 (55)
【Fターム(参考)】