説明

列車内画像表示システム

【課題】車外のリアルタイムの風景画像およびこれに対応する過去の風景画像を車両の振動や傾きの影響を受けずに表示する。
【解決手段】列車の各車両内に設置され画像表示を行うディスプレイと、各車両に設置され車両位置、振動、加速度といった変位情報を検出するセンサと、車外の画像データを取得するカメラと、予め当該カメラと同条件で撮影した過去の画像データを再生する画像再生部と、センサの各変位情報を時間および車両位置と関連付けて記録するセンサデータ記録部と、当該記録された各変位情報の平均値を変位予測値として算出する変位予測処理部と、カメラまたは画像再生部の画像データを選択する画像選択部と、選択された画像データに対して、振動、加速度の変位予測値に基づいて画像の振動および/もしくは傾きを除去する画像補正処理部を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば列車の車両内の窓をスクリーンとして画像を表示する列車内画像表示システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、乗用車内で画像を楽しんだり、列車内で画像による案内や広告を表示するために画像を表示する装置の搭載が普及している。しかし、これらの移動体は、振動、傾き、加速度といった変位が生じるため、この変位がディスプレイ上の再生画像の変位となって現れ、見る者に違和感を与え、特に長い間見続けると疲れや船酔い状態を起こすことがある。
ところで、携帯端末間でカメラ映像を送受信し、カメラで撮影しているときの臨場感(振動)を受信側にも伝えて再現するという技術がある(例えば特許文献1参照)。この場合、送信側からはカメラによる画像と振動センサで検出した撮影時の振動データが送られ、受信側では受信画像を再生するときに振動データに基づいて振動体を振動させている。これに対して、特許文献1の発明技術では、送信側の置かれている状況を正確に示す映像信号および振動データとするために、受信側において、受信した振動データを用いて、カメラにより撮影された画像における振動体の振動によるぶれを除去する補正を行うようにしている。
【0003】
【特許文献1】特開2007−36360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術は、画像撮影時の振動をキャンセルする目的で構成されており、表示するディスプレイが列車などの移動体に設置されている場合には見にくい画像になる。
【0005】
この発明は、列車の各車両に設けたディスプレイに、車外のリアルタイムの風景画像およびこれに対応する過去に撮影した風景画像を、車両の振動や傾きの影響を受けずに表示できるようにする列車内画像表示システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る列車内画像表示システムは、列車の各車両内に設置され、入力される画像データにより画像表示を行うディスプレイと、各車両に設置され、少なくとも車両位置、振動、加速度といった変位情報を検出するそれぞれのセンサと、現在の車外を撮影した画像データを取得するカメラと、予め当該カメラと同等の画角、時間、車両位置に応じて車外を撮影した過去の画像データを画像記録媒体からまたは通信により取得して再生する画像再生部と、各センサから得られる各変位情報をそれぞれ時間および車両位置と関連付けて逐次記録するセンサデータ記録部と、センサデータ記録部に記録された各変位情報の平均値を変位予測値として算出する変位予測処理部と、カメラの画像データまたは現在の車両位置もしくは時間に基づいて画像再生部の画像データを選択する画像選択部と、選択された画像データに対して、振動、加速度の変位予測値に基づいてディスプレイ上に現れる画像の振動および/もしくは傾きを除去する逆補正処理を行う画像補正処理部を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、同じ車両位置における現在および過去の車外の風景画像を選択して車内に設けたディスプレイ画面で表示できるようにしたので、現在の風景において曇りなどで遠景をみることができない場合、過去の鮮明な画像を表示して風景を楽しむことが可能である。また、何年も遡った風景画像を楽しむことも可能になる。さらに、車両の振動や傾きに影響を受けずに画像を表示するようにしたので、窓部をスクリーン画面とした場合には、窓から見る実際の景色であるかのような錯覚を与える効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による列車内画像表示システムの機能構成を示すブロック図である。図2は、列車内画像表示システムを適用する列車を表す説明図である。
列車は、図2に示すように、進行方向最前部に当たる車両1から進行方向最後部(例えば15両編成であれば15両目)に当たる車両nで編成されているものとする。各車両1,2,・・・,nには、GPSセンサ30、加速度センサ40、振動センサ50、列車情報インタフェース70がそれぞれ車内の所定位置に設置されている。
【0009】
GPSセンサ30は、GPS信号を受信して自車両の位置座標(以下、車両位置とする)を取得する。加速度センサ40は、3次元方向の加速度を測定する手段である。振動センサ50は、車両の3次元方向の振動周期と振れ幅(以下、振動とする)を測定する手段である。列車情報インタフェース70は、別の鉄道運行システムなどから提供される速度や車重の情報を取得する手段である。
上記センサ類による測定は時間的に同期を取り、なるべく同時に行うようにする。また、測定の周期については、後述するすべての処理を含めて画像表示のフレームレート以内(例えば1/30秒)で行うことが目標とされるので、これを満たす周期となることが望ましい。上記センサ類で取得された各データは、センサデータ記録部100と変位予測処理部110に与えられる。
【0010】
センサデータ記録部100では、上記センサ30,40,50,70で取得されるデータ、すなわち加速度、振動、車両位置、速度や車重を時間情報と関連付けて記録する。また、その際、加速度、振動、速度と車重の情報を、車両位置に関連付けて記録する。このことにより、時間に関連する情報を参照したり、車両位置に関連する情報を参照したりすることが可能となる。
ディスプレイ170は、各車両内に設置され、画像を表示する手段である。例えば窓部をスクリーンとしプロジェクタで画像を映し出す構造のものが使用される。そのため、スクリーンにはガラス窓を覆う日除け幕を用いたり、あるいは窓ガラスを瞬間調光ガラスやハーフミラーを用い、外の景色と表示画像を切り替えて可視できる構造としておくとよい。また、ディスプレイ170は、例えば車内の壁に設置したり、あるいは天井に宙吊りにする液晶などの平面型表示装置としてもよい。
【0011】
変位予測処理部110では、センサデータ記録部100の過去に測定された各変位情報の履歴データから平均値を算出して変位予測値として画像補正処理部150に出力する。列車は同じレールの上を同じように通過するため、毎回のデータを平均していくと、収束する値が得られるので、この処理時間を画像のデジタル処理で生じる遅延に対してバランスさせることができる。なお、すべての処理が画像表示のフレームレート以内(例えば1/30秒)で行われる場合、変位予測処理部110は30秒後の変位の予測を行う。
なお、車両位置、振動、加速度といった変位情報を検出するセンサを、列車の各車両に設置する代わりに先頭車両1にのみ設置し、当該各センサで検出された変位情報を後続車両2〜nのそれぞれに伝送して各後続車両の変位情報として用いるようにしてもよい。同じレールの上を列車の各車両は同じように通過するため、後続車両においても同じ変位情報が時間差をもって発生すると考えられる。この時間差を利用することで、後述する画像補正処理部150のデジタル処理で生じる遅延時間とバランスさせることができる。また、各車両に設置するセンサの数を削減することにもつながる。
【0012】
カメラ120は、車外を撮影しており、取得したライブ画像を画像データにしてリアルタイムに画像選択部180へ出力する。カメラ120は、車両ごとに設けてもよく、運行単位1台にしてもよい。例えば先頭車両で撮影した車窓に相当する画像データを各後続車両には必要な遅延を持って送る処理を行い表示するようにすればよい。
画像再生部130は、記録媒体から画像データを再生するDVD、VTR、ハードディスクなどの再生機器、あるいは通信によって提供される画像データを受信再生する受信装置である。画像再生部130で再生された画像データは、画像選択部180へ与えられる。なお、画像再生部130から得られる画像は、予めカメラ120と同等の画角、時間、車両位置および車速度に応じて車外を撮影した過去の画像データである。時間および車両位置に関連付けて予め整理されているため、時間あるいは車両位置を指定することで再生することができるようにしてある。
【0013】
画像選択部180は、カメラ120で取得する現在の画像データあるいは画像再生部130からの過去の画像データを選択し画像補正処理部150に出力する。
過去の画像データを選択する場合は、現在の車両位置あるいは時間に基づいて画像データを読み出す。これにより、例えば景色が見えない雨や曇りの日に、快晴の日の車窓の風景画像を再生表示したり、あるいは過去にタイムスリップしたように、30年前の同じ場所の車窓画像を再生することが可能となる。なお、画像の切り換え選択は、乗客が行うか、あるいは状況に応じて車掌が行うようにすればよい。
【0014】
画像補正処理部150は、画像選択部180で選択された画像データに対して、変位予測処理部110で求めた振動、傾き、加速度の変位予測値に基づいてディスプレイ上に現れる画像の振動および/もしくは傾きを除去する逆補正処理を行う。逆補正処理としては、フレーム切り出し処理、フレーム回転処理がある。
フレーム切り出し処理は、主に振動による影響を補正するのに用いられる。例えば図3(a)に示すように、画像効果生成部140から与えられる元画像の中から振動変化するフレームを切り出し、切り出したフレームを振動センサ50で測定された振動の変位予測値および/もしくは加速度センサ40で測定された加速度の変位予測値に基づいて逆移動させた補正画像を生成する。このことによって、図3(b)のようにディスプレイ170の窓部のスクリーンには、列車の振動や傾きの影響を受けない風景画像が表示され、見る者に対して車窓からの風景を直接見ているかのような錯覚効果を与えることができる。
【0015】
一方、フレーム回転処理は、ディスプレイの傾きによる影響を補正するのに使用される。まず、加速度センサ40で測定された加速度に基づいて車両の横揺れ角度を算出する。次に、画像効果生成部140から与えられた元画像のフレームを、算出した車両の角度と逆方向に回転し、この回転したフレームの画像データをディスプレイ170に出力する。このことによって、図4に示すように、中吊り広告と同じ位置に設置したディスプレイの傾きによる影響が補正される。図4(a)は車両が横揺れを受けていない状態を示し、図4(b)は車両が傾いてディスプレイも傾いているが、画像は補正されて傾いていない状態を示している。まお、加速度と横揺れ角度の間にギャップが感じられる場合は、3次元角度センサ(図示せず)による測定角度もフレーム回転処理に用いてもよい。
画像補正処理部150で補正処理された画像データはディスプレイ170に与えられ表示される。
【0016】
以上のように、この実施の形態1によれば、同じレール上を走る列車の同じ位置で見る現在および過去の風景画像を選択して列車の内部に設置されたディスプレイで表示できるようにし、その際、ディスプレイに振動、傾きといった変位が生じた場合には、ディスプレイに与える画像データに対して振動や傾きを補正して、振動や傾きに影響を受けない画像にしている。したがって、現在の風景において曇りなどで遠景をみることができない場合、過去の鮮明な画像を表示して風景を楽しむことが可能である。また、何年も遡った風景画像を楽しむことも可能になる。さらに、車両の振動や傾きに影響を受けずに画像を表示するようにしたため、窓部をスクリーン画面とした場合には、窓から見る実際の景色であるかのような錯覚を与える効果がある。
【0017】
実施の形態2.
図5は、この発明の実施の形態2による列車内画像表示システムの機能構成を示すブロック図である。この実施の形態2は、上記実施の形態1の図1の構成に人感センサ80および人の属性センサ90を加えた構成を備えている。
人感センサ80は、例えばディスプレイ170の周りに設置され、ディスプレイを見る範囲に人がどのように存在しているかを測定し、測定値に基づいて人の分布情報を生成する。センサデータ記録部100では、実施の形態1で述べた他のセンサと同様に、人の分布情報を時間および車両位置と関連付けて記録する。なお、列車情報インタフェース70から車重情報が得られる場合には、車重から乗車人数を推定して人感センサ80のデータを併せて乗客の分布を導き出すようにしてもよい。
【0018】
画像補正処理部150では、実施の形態1で行った振動補正、傾き補正後の画像データに対して射影変換処理を行って、ディスプレイの傾きと視点の角度による影響を補正する。そのため、まず人感センサ80で得られる人の分布情報の中から最も高い分布値の方角を視点位置として推定する。最も高い分布値とは、ディスプレイ170を見ている人が複数存在する場合、最も多くいる部分ということになるから、その複数人の中心的な位置の方角を新たな視点位置とする。次に、ディスプレイ170に映っている画像の本来の視点と新たな視点位置との差を視点の角度として算出する。さらに、与えられた元画像のフレームの形状およびサイズを、算出した視点の角度に基づいて、新たな視点から見たときの正常な画像形状となるように変形し、変形処理した画像データを出力する。この処理により、図6に示すように、視点の角度による影響が補正される。画像を窓のスクリーンに表示した場合、ディスプレイは見る人の方角によって斜めに置かれているため、画像は図6(a)のように歪んで見える。しかし、見る人の視線を視点として図6(b)のように画像全体が長方形に見えるように変形させることで、歪んで見えなくなる。例えば画像が景色である場合、視点の角度に影響を受けない画像を表示することができる。ただし、使用するスクリーンが、透過しない、画像のみを表示できる材質である場合に有効である。
【0019】
以上のように、この実施の形態2によれば、人感センサで得られる人の分布情報の中でディスプレイを見ていると考えられる人が最も多い方角を視点位置と推定して画像の本来の視点との差を視点の角度として求め、この視点の角度に基づいて、フレームの形状およびサイズを推定した視点から見たときに正常な画像形状、すなわち長方形として見えるように変形処理するようにしたので、最も多くの人に最適な形状の画像を提供できる。
【0020】
実施の形態3.
図7は、この発明の実施の形態3による列車内画像表示システムの機能構成を示すブロック図である。この実施の形態3は、上記実施の形態2の図5の構成に車外照度センサ60を加えた構成を備えている。
車外照度センサ60は、車外の明るさ(照度)を測定し、その測定値をセンサデータ記録部100と変位予測処理部110に与える。センサデータ記録部100では、他のセンサと同様に、車外照度センサ60で取得される車外の照度を時間情報および車両位置と関連付けて記録する。
【0021】
画像補正処理部150では、車外照度センサ60で測定した車外照度に基づいて振動補正、傾き補正、画像形状変更後にディスプレイ170に映す画像の明るさおよびコントラストの調整を行う。現在取得中のカメラ画像に対しては、例えば車外照度が高い場合には設定されている車内の明るさにマッチするように画像の明るさを落とし、コントラストを調整してビルなどを認識しやすくする。また、過去の画像に対しては、現在の車外照度や時間に合わせて、明るさおよびコントラストを調整してタイムスリップ感を出すように演出する。
【0022】
実施の形態4.
図8は、この発明の実施の形態4による列車内画像表示システムの機能構成を示すブロック図である。この実施の形態4では、上記実施の形態3の図7の構成に人の属性センサ90を加えた構成を備えている。
人の属性センサ90は、ディスプレイ170を見る人の範囲を撮影したカメラ画像(専用のカメラで撮った画像)を画像処理することで、予め用意した人の顔の特徴や体型の統計データに基づいて性別や年齢を推定し、人感センサ80で得られた人の分布情報に追加する属性情報として生成する。センサデータ記録部100では、実施の形態1で述べた他のセンサと同様に、人の属性情報を時間および車両位置と関連付けて記録する。
【0023】
画像補正処理部150では、人の属性センサ90で生成された人の属性情報に基づいて人の属性センサで生成された人の属性情報に基づいて振動補正、傾き補正および/もしくは画像の明るさ・コントラスト調整を制御する。人の属性情報において、例えばディスプレイを見ている人の年齢が高いと推定される場合には、明るさ・コントラスト調整で画像を明るめに設定したり、傾き補正処理における補正幅を制御して列車の傾きが小さく感じられるように調整する。これにより、年齢が高い乗客に対しては安心感を与える画像を提供できる。また、人の属性情報において年齢が若いと推定される場合には、傾き補正処理の補正幅を列車の傾きが大きく感じられるように制御する。これにより、年齢が若い乗客に対してはメリハリの利いた楽しめる画像を提供できる。
図9に示す例では、大きな画像の中心部分を切り出してニュートラル図9(a)、若者向きに列車の傾きが大きく感じられるように、列車のスピードアップに合わせて、大きな画像の中心部分を回転切り出してスピードアップ図9(b)としている。なお、列車情報インタフェース70から車速が得られる場合には、車速を加速度センサ40の出力と連携して人の属性情報に合わせた表示に用いるようにしてもよい。
【0024】
以上のように、この実施の形態4によれば、ディスプレイを見る人の属性情報に応じて振動補正、傾き補正および/もしくは画像の明るさ・コントラスト調整を制御するようにしたので、乗客に合った画像を提供できる。例えば、高齢者に対しては加速度や傾きなどの変位に影響を受けない画像もしくは変位を認識しにくくした画像を表示して三半規管を休ませることができる。一方、若者に対しては加速感を強調した画像を表示して三半規管を刺激させることができる。
【0025】
実施の形態5.
図10は、この発明の実施の形態5による列車内画像表示システムの機能構成を示すブロック図である。この実施の形態5は、上記実施の形態1の図1におけるカメラ120と画像選択部180の間に関連情報付加部140を加えた構成を備えている。
関連情報付加部140は、カメラ120でリアルタイムに取得した外の風景の画像データに、その画像内の対象物に併せて関連表示情報を重畳する処理を行う。この処理では、ディスプレイ170の表示画像において、カメラ画像である車外のライブ画像に写っているランドマークとなる対象物に併せて、その名称を付加表示する。例えば、カメラ画像に映っているビル、山、川の位置に重なるよう、そのビル、山、川の名前を表示する。そのため、関連情報付加部140には、予め関連表示情報を車両位置と対応付けて記憶したデータベース(図示せず)が準備されている。関連情報付加部140は、変位予測処理部110から与えられる車両位置の変位予測値に基づいてデータベースから対応する関連表示情報を読み出し、画像選択部180から与えられるカメラ120の画像データの対象物に併せて重畳する。
【0026】
図11は、窓のスクリーンにプロジェクタで映した車外の景色(ビル街)の対象物に併せて関連表示情報(ビル名)を表示している。この場合、映っている画像内の対象物の位置は列車の進行に伴い変わるので、対象物(ビル)と関連表示情報(ビル名)がずれないようにする必要がある。そのため、対象物(ビル)の座標が分かる3次元地図データと、カメラ視点からの画角と座標を使用して、リアルタイムに、スクリーン上に写されている対象物の画像座標を算出し、算出した画像座標に関連表示情報を付加すればよい。
なお、ディスプレイ170の表示画面として半透明のスクリーンを用い、透かして見える車窓の実物風景の対象物に対応させて関連表示情報のみをスクリーンに表示するようにしてもよい。ただし、この場合、見る位置によって関連付加の位置が変わってしまうので、正面以外では関連表示情報(ビル名)と対象物(ビル)は殆どずれてしまうため、適正な視点位置はガラス窓の正面に限定されることになる。
【0027】
以上のように、この実施の形態5によれば、カメラでリアルタイムに撮影した車窓の風景画像に映っている対象物に対して、その対象物の関連表示情報をカメラの画像データに重畳して表示するようにしたので、車窓の風景を見る乗客に対してガイドサービスを行うことができる。
【0028】
実施の形態6.
図12は、この発明の実施の形態6による列車内画像表示システムの機能構成を示すブロック図である。この実施の形態6は、上記実施の形態1の図1の構成に画像記録部160を加えた構成を備えている。
画像記録部160は、画像補正処理部150よって補正処理された画像データを車両位置および時間と対応付けて記録しておく。そして、画像補正処理部150からディスプレイ170へ出力する画像データが途絶えた場合、変位予測処理部110から与えられる車両位置または時間の変位予測値に対応した過去の記録画像データをディスプレイ170に出力して表示する。
列車は同じレールの上を同じように通過するので、同じ車両位置または同じ時間によってディスプレイは同じ振動や傾きの影響を受けると考えられる。したがって、予め用意した過去の補正処理済みの画像を表示すれば途絶えた画像を代用することができるので、デジタル処理の遅延などでリアルタイム処理が困難な場合に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の実施の形態1による列車内画像表示システムの機能構成を示すブロック図である。
【図2】この発明に係る列車内画像表示システムを適用する列車について示す説明図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るフレーム切り出し処理の方法を示す説明図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係るフレーム回転処理の方法を示す説明図である。
【図5】この発明の実施の形態2による列車内画像表示システムの機能構成を示すブロック図である。
【図6】この発明の実施の形態2に係る射影変換処理の方法を示す説明図である。
【図7】この発明の実施の形態3による列車内画像表示システムの機能構成を示すブロック図である。
【図8】この発明の実施の形態4による列車内画像表示システムの機能構成を示すブロック図である。
【図9】この発明の実施の形態4に係る加速度を感じる方向に画像補正の程度を強化する方法を示す説明図である。
【図10】この発明の実施の形態5による列車内画像表示システムの機能構成を示すブロック図である。
【図11】この発明の実施の形態5に係る関連表示情報を付加した画像の表示例を示す説明図である。
【図12】この発明の実施の形態6による列車内画像表示システムの機能構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0030】
1〜n 列車の車両、30 GPSセンサ、40 加速度センサ、50 振動センサ、60 車外照度センサ、70 列車情報インタフェース、80 人感センサ、90 人の属性センサ、100 センサデータ記録部、110 変位予測処理部、120 カメラ、130 画像再生部、140 付加関連情報生成部、150 画像補正処理部、160 画像記録部、170 ディスプレイ、180 画像選択部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車の各車両内に設置され、入力される画像データにより画像表示を行うディスプレイと、
前記各車両に設置され、少なくとも車両位置、振動、加速度といった変位情報を検出するそれぞれのセンサと、
現在の車外を撮影した画像データを取得するカメラと、
予め前記カメラと同等の画角、時間、車両位置に応じて車外を撮影した過去の画像データを画像記録媒体からまたは通信により取得して再生する画像再生部と、
前記各センサから得られる各変位情報をそれぞれ時間および車両位置と関連付けて逐次記録するセンサデータ記録部と、
前記センサデータ記録部に記録された各変位情報の平均値を変位予測値として算出する変位予測処理部と、
前記カメラの画像データまたは現在の車両位置もしくは時間に基づいて前記画像再生部の画像データを選択する画像選択部と、
前記選択された画像データに対して、現在の車両位置に対応する振動、加速度の変位予測値に基づいて前記ディスプレイ上に現れる画像の振動および/もしくは傾きを除去する逆補正処理を行う画像補正処理部を備えたことを特徴とする列車内画像表示システム。
【請求項2】
車両位置、振動、加速度といった変位情報を検出するセンサは、列車の各車両に設置する代わりに先頭車両にのみ設置し、当該各センサで検出された変位情報を後続車両のそれぞれに伝送して各後続車両の変位情報として用いるようにしたことを特徴とする請求項1記載の列車内画像表示システム。
【請求項3】
ディスプレイを見る人の分布情報を算出する人感センサを備え、
画像補正処理部は、前記人感センサで得られる人の分布情報の中から最も高い分布値の方角を視点位置として推定し、前記ディスプレイに映る画像の本来の視点と前記推定した視点位置との差を視点の角度として算出し、振動補正、傾き補正処理後の画像のフレームの形状およびサイズを、前記算出した視点の角度に基づいて、前記推定した視点から見たときに正常な画像形状となるように変形処理することを特徴とする請求項1または請求項2記載の列車内画像表示システム。
【請求項4】
車外の照度を測定する車外照度センサを備え、
画像補正処理部は、前記車外照度センサで測定された車外照度に基づいてディスプレイに映す画像の明るさ・コントラストの調整を行うことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の列車内画像表示システム。
【請求項5】
ディスプレイを見る人の年齢および/もしくは性別を推定して人の属性情報を生成する人の属性センサを備え、
画像補正処理部は、前記人の属性センサで生成された人の属性情報に基づいて振動補正、傾き補正および/もしくは画像の明るさ・コントラスト調整を制御することを特徴とする請求項4記載の列車内画像表示システム。
【請求項6】
カメラでリアルタイムに取得した外の風景画像内の対象物の関連表示情報を車両位置の変位予測値に基づいてデータベースから読み出し、当該風景画像の対象物に併せて画像データに重畳する関連情報付加部を備えたこと特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の列車内画像表示システム。
【請求項7】
画像補正処理部で処理された画像データを車両位置および時間と対応付けて記録しておき、前記画像補正処理部からディスプレイへの出力が途絶えた場合に、車両位置または時間の変位予測値に対応した過去の記録画像データをディスプレイに出力して表示する画像記録部を備えたことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の列車内画像表示システム。
【請求項8】
ディスプレイは、各車両の窓部をスクリーン画面としてプロジェクタで画像を映し出す構造としたことを特徴とする請求項1から請求項7のうちのいずれか1項記載の列車内画像表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−93076(P2009−93076A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−265705(P2007−265705)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】