説明

制動制御装置及び制動制御方法並びにそのプログラム

【課題】固着の発生を減少させることのできる制動制御装置を提供する。
【解決手段】車輪の速度が0に達するまでの時間である固着余裕時間とブレーキ圧力を開放するまでの時間を示す全ゆるめ時間とを比較して車輪が固着に至る可能性を判断し、車輪が固着に至ると判定された場合に、制動力を減じて車輪が固着するのを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制動制御装置及び制動制御方法並びにそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ブレーキ動作中に、車輪の速度(車軸の回転数と車輪径との積)が鉄道車両の速度の低下に比べて低下することを「滑走」といい雨天時などに発生しやすい。なお、車輪の速度が大きく低下し車輪の回転が停止することを「固着」という。固着が発生したまま鉄道車両が軌道上を走行し続けると、車輪の円周部に「フラット」と呼ばれる平坦部が形成されてしまう。このような平坦部が形成されることを軽減するために、鉄道車両の車軸に取り付けられた回転センサの信号から速度を求め、複数の車軸間の速度差や、車軸ごとに求めた速度の時間変化(減速度(負の加速度))を算出し、当該速度差や速度の時間変化が一定の閾値を超えたときに滑走、固着が発生していると判断して、ブレーキの圧力をゆるめ、車輪の固着防止を図る技術が存在する。なお、車両の制動制御に関連する技術が非特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】長谷川 泉、外1名、「在来線140km/h化のためのブレーキ技術 −すべり率滑走制御方法の改良−」、鉄道総研報告 第13巻 第10号、財団法人研友社、平成11年年10月22日、p.35-40
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の従来の技術では、判断の比較対象である全ての車軸が滑走した場合には、固着に至るかどうかの正確な判定結果が得られず、ブレーキ圧力のゆるめ動作が遅れて固着が発生してしまうという問題があった。ブレーキ中に固着が発生して車輪の円周部にフラットが形成されると、走行中の異音や過大な振動、軌道への衝撃の原因となり、早急に車輪の円周部のフラット状態部分を削正しなければならない。しかしながら、当該車輪の削正によって車輪の寿命が短縮されるだけでなく、作業に多くの時間を要し、鉄道車両を運転する上で大きな損失が発生することとなる。
また、固着発生防止のために過剰にブレーキ力を緩めると、ブレーキ力が不十分となって、制動距離が必要以上に長くなるという課題があった。
【0005】
そこでこの発明は、車輪の回転が停止する固着の発生を減少させるとともに、制動距離が必要以上に長くなることを防止することのできる制動制御装置及び制動制御方法並びにそのプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、車輪の回転に基づいて車輪の速度を算出する速度算出部と、前記車輪の速度から前記車輪の滑走を検知する滑走検知部と、前記速度算出部によって得られた前記車輪の速度から車輪の減速度を算出する減速度算出部と、前記車輪の速度と前記車輪の減速度とから前記車輪の速度が0に達するまでの時間である固着余裕時間を算出する固着余裕時間算出部と、前記車輪に対する制動力を制御する制動制御部と、を備え、前記滑走検知部は、前記固着余裕時間と所与の基準時間とを比較して前記車輪が固着に至る可能性を判断し、前記制動制御部は、前記滑走検知部において前記車輪が固着に至ると判定された場合に、前記制動力を減じて前記車輪が固着するのを防止することを特徴とする制動制御装置である。
【0007】
また本発明は、上述の制動制御装置において、前記固着余裕時間算出部は、前記速度算出手段によって得られた車輪の速度を減速度で除すことによって固着余裕時間を算出することを特徴とする。
【0008】
また本発明は、上述の制動制御装置において、前記基準時間は、前記制動力が0に達するまでの時間を示す全ゆるめ時間であることを特徴とする。
【0009】
また本発明は、上述の制動制御装置において、前記制動制御部は、前記車輪と一体に回転する部材に摩擦力を作用させる機械ブレーキであることを特徴とする。
【0010】
また本発明は、上述の制動制御装置において、前記制動制御部は、前記車輪に駆動力を与える電動機の回生動作によって前記制動力を発生させることを特徴とする。
【0011】
また本発明は、車輪の回転に基づいて車輪の速度を算出する速度算出手段と、前記車輪の速度から前記車輪の滑走を検知する滑走検知手段と、前記速度算出手段によって得られた前記車輪の速度から車輪の減速度を算出する減速度算出手段と、前記車輪の速度と前記車輪の減速度とから前記車輪の速度が0に達するまでの時間である固着余裕時間を算出する固着余裕時間算出手段と、前記車輪に対する制動力を制御する制動制御手段と、を有する制動制御装置の制動制御方法であって、前記滑走検知手段は、前記固着余裕時間と所与の基準時間とを比較して前記車輪が固着に至る可能性を判断し、前記制動制御手段は、前記滑走検知手段において前記車輪が固着に至ると判定された場合に、前記制動力を減じて前記車輪が固着するのを防止することを特徴とする制動制御方法である。
【0012】
また本発明は、制動制御装置のコンピュータを、車輪の回転に基づいて車輪の速度を算出する速度算出手段、前記車輪の速度から前記車輪の滑走を検知する滑走検知手段、前記速度算出部によって得られた前記車輪の速度から車輪の減速度を算出する減速度算出手段、前記車輪の速度と前記車輪の減速度とから前記車輪の速度が0に達するまでの時間である固着余裕時間を算出する固着余裕時間算出手段、前記車輪に対する制動力を制御する制動制御手段、として機能させ、さらに、前記滑走検知手段に、前記固着余裕時間と所与の基準時間とを比較して前記車輪が固着に至る可能性を判断させ、前記制動制御手段に、前記滑走検知部において前記車輪が固着に至ると判定された場合に、前記制動力を減じて前記車輪が固着するのを防止させることを特徴とするプログラム。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、固着余裕時間(t)≒全ゆるめ時間(t)<ただし、固着余裕時間(t)≦全ゆるめ時間(t)>である場合にBC圧力の開放を示す制動信号を出力することにより、固着が発生する前に制動力をゼロにすることができ、固着の発生を減少させることができる。また、制動力をゆるめる動作を開始すると判定したとき以外には、制動力をかける制御を常に行っていることとなるため、固着発生防止のために過剰にブレーキ力を緩めることがなくなり、ブレーキ力が不十分となって、制動距離が必要以上に長くなるという問題を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】制動制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】制動制御装置の処理フローを示す図である。
【図3】制動制御装置の処理の概念図である。
【図4】滑走検知減速度閾値と車両速度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態による制動制御装置を図面を参照して説明する。
図1は同実施形態による制動制御装置の構成を示すブロック図である。
この図において、符号1は鉄道車両2に備えられた制動制御装置である。この制動制御装置1は、速度算出部11、減速度算出部12、固着余裕時間算出部13、全ゆるめ時間出力部14、制動制御部15、滑走検知部16の各処理部や記憶部を備えており、鉄道車両2に備えられた他の装置と信号ケーブルを介して接続されている。
より具体的には、速度算出部11は、鉄道車両2に備えられた車軸回転センサと信号ケーブルを介して接続され、当該車軸回転センサより車軸回転センサ信号を受信して、当該信号に基づいて車輪の速度を算出する処理部である。なお、この車輪の速度(km/h)は、車軸の単位時間当たりの回転数と車輪の円周とに基づいて算出される。また、この車輪の速度は、軸速度や車軸速度と呼ばれることもある。本実施形態においては車軸回転センサ信号によって速度を算出しているが、これ以外の公知の方法によって、速度を算出するようにしてもよい。
また、減速度算出部12は、鉄道車両2の制動時において、速度算出部11の算出した速度の単位時間あたりの変化に基づき、当該速度の負の加速度(以下、減速度と呼ぶこととする)を算出する処理部である。例えば、速度を微分して減速度を算出すればよい。
また、固着余裕時間算出部13は、速度と減速度とに基づいて、鉄道車両2の車輪の現在の速度から当該車輪が停止して車輪がレールに固着するまでの時間を示す固着余裕時間を算出する処理部である。
また、全ゆるめ時間出力部14は、車両の制動力をゼロに制御するまでの時間を示す全ゆるめ時間(所与の基準時間)を出力する処理部である。本実施形態においては、全ゆるめ時間は、制動力が最大を示す時点から当該制動力をゼロに制御するまでにかかる時間を示しているが、ある時点での最大より小さな制動力(例えば50%の制動力や、30%の制動力)から当該制動力をゼロに制御するまでにかかる時間を示すようにしてもよい。
また、滑走検知部16は、全ゆるめ時間等の所与の基準時間と固着余裕時間とに基づいて、固着(滑走)が発生しているかを判定する処理部である。
また、制動制御部15は、固着(滑走)が発生していると判断された場合に、制動力のゆるめ動作を開始する処理部である。制動制御部15は、制動力をゆるめる動作を開始する場合、信号ケーブルを介して接続された制動装置へ制動力をゆるめる制動信号を出力する。
【0016】
そして、制動制御装置1は、上述のような処理部の動作によって、車輪の現在の速度から当該車輪が停止して車輪がレールに固着する現象の発生を減少させる処理を行う。
【0017】
図2は、制動制御装置の処理フローを示す図である。
図3は、制動制御装置の処理の概念図である。
次に、図2、図3を用いて制動制御装置1の処理の詳細について、順を追って説明する。
まず、鉄道車両2の車輪の制動時には、制動制御部15が車掌等によって車掌室に備えられた入力部から入力された制動指示を受け付けて、制動を開始する(ステップS101)。例えば、制動装置が空気ブレーキであればBC(Brake Cylinder)圧力を加える制動信号を出力する(ステップS102)。これにより、図3(b)で示すように、BC圧力が増加すると共に、図3(a)で示すように、車両の速度が減速する。図3(a)においては、BC圧力を2回、一定に制御することにより3段階で当該BC圧力を減じている状態を表しているが、段階を経ずに(圧力一定となる時間帯がないよう)BC圧力を減じるようにしてもよい。なお、本実施形態においては、制動装置が空気ブレーキである場合について説明するが、鉄道車両2が制動装置として回生制動の機能を備える制動装置を備え、当該制動装置を制動信号によって制御するようにしてもよい。つまり、適用可能な制動装置としては、車輪と一体に回転する部材に摩擦力を作用させる機械ブレーキや、車輪に駆動力を与える電動機の回生動作によって制動力を発生させる電気ブレーキが存在する。具体的に、機械ブレーキとしては、制輪子を踏面に押し付ける踏面ブレーキ、ブレーキディスクをライニングで挟むディスクブレーキなどのがある。また、当該制動装置が、機械ブレーキと電気(回生)ブレーキの機能を併用したものであってもよい。
【0018】
一方、速度算出部11は、車軸回転センサから車軸回転センサ信号を受信している。そして、速度算出部11は、当該受信した信号に基づいて、単位時間当たりの車軸の回転数を検出し、その単位時間あたりの車軸の回転数と車輪の円周とから車軸の速度(当該車軸の回転によって得られる単位時間当たりに進む距離(km/h))を算出する。なお、速度として、単位時間当たりの車軸の回転数を用いるようにしてもよい。そして、速度算出部11は、当該速度を減速度算出部12へ出力する。次に、減速度算出部12は、例えば速度を微分して負の加速度(減速度)を算出する。また、固着余裕時間算出部13は、固着余裕時間(t)=(速度)÷(減速度)により、固着余裕時間(t)を算出する。そして、速度算出部11や、減速度算出部12や、固着余裕時間算出部13は、所定の間隔で速度や減速度、固着余裕時間の算出を繰り返す。
【0019】
そして、ステップS102において、制動制御部15がBC圧力を加える制動信号を出力した後、滑走検知部16は、固着余裕時間算出部13から固着余裕時間(t)を入力する(ステップS103)。また滑走検知部16は、全ゆるめ時間出力部14から車両の制動力をゼロに制御するまでの時間を示す全ゆるめ時間(t)を入力する(ステップS104)。次に、滑走検知部16は、固着余裕時間(t)と全ゆるめ時間(t)とを比較する(ステップS105)。そして、滑走検知部16は、「固着余裕時間(t)≦全ゆるめ時間(t)」であるかを判定し、その結果を示す信号を制動制御部15へ出力する。そして制動制御部15は、滑走検知部16において「固着余裕時間(t)≦全ゆるめ時間(t)」であると判定されたことを検知した場合には、制動力をゆるめる動作を開始すると判定し、BC圧力の開放を示す制動信号を鉄道車両2の制動装置へ出力する(ステップS106)。例えば、このBC圧力の開放を示す制動信号は、固着の発生を回避できる程度の圧力の開放を示す信号である。そして、制動制御終了でない場合には、ステップS101の処理へ移行し、ステップS101〜ステップS106の処理を繰り返す。
【0020】
制動制御装置1において、滑走検知部16が「固着余裕時間(t)≦全ゆるめ時間(t)」でないと判定した場合には、ステップS103の処理へ移行して、上記ステップS103〜ステップS105の処理を繰り返す。上述のステップS103〜ステップS105のループ処理を短時間で繰り返して行うことで、なるべく「固着余裕時間(t)=全ゆるめ時間(t)」となった瞬間にBC圧力の開放を示す制動信号を出力できるように制御する。これにより、固着余裕時間(t)≒全ゆるめ時間(t)<ただし、固着余裕時間(t)≦全ゆるめ時間(t)>である場合にBC圧力の開放(排気)を示す制動信号を出力することにより、固着が発生する前に制動力をゼロにすることができ、固着の発生を減少させることができるようになる。
【0021】
以上が、制動制御装置1の処理フローである。なお、全ゆるめ時間は、BC圧力を全排気するまでに要する時間に等しいが、当該全ゆるめ時間は、車両ごとの配管長やシリンダ容積などによって異なる。よって、当該全ゆるめ時間は、定置試験などによって予め求められて、全ゆるめ時間出力部14内に備えられた記憶部などに格納されている。
また、上述したように、全ゆるめ時間は、制動力が最大を示す時点から当該制動力をゼロに制御するまでにかかる時間や、ある時点での最大より小さな制動力から当該制動力をゼロに制御するまでにかかる時間であるが、これらの時間は、例えば、ブレーキハンドルのノッチの位置によって、異なる値が設定されており、当該ノッチの位置によって、全ゆるめ時間出力部が、対応する全ゆるめ時間を特定して出力する。または、全ゆるめ時間出力部14は、現在のBC圧力に基づいて全ゆるめ時間を算出して出力するようにしてもよい。
また全ゆるめ時間の代わりに、他の基準時間を利用するようにしてもよい。例えば、全ゆるめ時間に、特定の時間を加えて、当該基準時間と、固着余裕時間とを比較して、「基準時間≦全ゆるめ時間(t)」であると判定されたことを検知した場合に、制動力をゆるめる動作を開始するようにしてもよい。
つまり、固着余裕時間と比較する基準時間は、車輪の滑走、固着が発生しないように予め定めた値であればよい。
【0022】
図3においては、上述の処理によって、A点において「固着余裕時間(t)≦全ゆるめ時間(t)」でないと判定され、B点において「固着余裕時間(t)≦全ゆるめ時間(t)」であると判定された場合を示している。なお、図3内のA点が示す速度の時点での固着余裕時間は、図3内のB点が示す速度の時点での固着余裕時間よりも長い。つまり、減速度が大きい、または速度が小さくなると固着余裕時間は減少していくことを示している。
そして、図3におけるB点において、「固着余裕時間(t)≦全ゆるめ時間(t)」であると判定された場合、図3(b)で示すように制動制御装置1はBC圧力を弱める制動信号を制動装置へ出力する。また図3(b)においては、BC圧力が開放され、BC圧力が0に達するまでの時間が全ゆるめ時間であることを示している。
【0023】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述の処理によれば、なるべく「固着余裕時間(t)≒全ゆるめ時間(t)<ただし、固着余裕時間(t)≦全ゆるめ時間(t)>」となった瞬間にBC圧力の開放を示す制動信号を出力できるように制御する。これにより、固着余裕時間(t)≒全ゆるめ時間(t)<ただし、固着余裕時間(t)≦全ゆるめ時間(t)>である場合にBC圧力の開放を示す制動信号を出力することにより、固着が発生する前に制動力をゼロにすることができ、固着の発生を減少させることができるようになる。
【0024】
図4は滑走検知減速度閾値と車両速度との関係を示す図である。
この図が示すように、従来は、速度が増加しても滑走(固着)を発生させると判定する減速度の閾値は一定となっていた。しかしながら、上述の処理により、速度が比較的低速な場合においては、滑走が発生すると検知するための減速度の閾値が小さくなり、速度が比較的高速な場合においては、滑走が発生すると検知するための減速度の閾値が大きくなっている。つまり、このような処理により、速度が比較的低速であるときは、検知感度を上げ、速度が比較的高速であるときは従来よりも滑走を許容することとなる。従来、速度(車両速度)の低速時には制動力をゆるめる制御をしても間に合わずに固着が発生する場合があったが、このような処理を行うことにより比較的低速時において滑走検知感度を高めて低速時の固着の発生を減少させることができる。また、制動力をゆるめる動作を開始すると判定してBC圧力の開放を示す制動信号を出力した後は、基本的には、入力部から入力された制動指示を受け付けているため、所定の短期間で再び制動を開始するステップS101の処理を行うこととなる。これにより、制動力をゆるめる動作を開始すると判定したとき以外には、制動力をかける制御を常に行っていることとなるため、固着発生防止のために過剰にブレーキ力を緩めることがなくなり、ブレーキ力が不十分となって、制動距離が必要以上に長くなるという問題を改善することができる。
【0025】
上述の制動制御装置は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。
【0026】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0027】
上述の制動制御装置は、鉄道車両以外にも、滑走や固着が発生する車両に利用することができる。
【符号の説明】
【0028】
1・・・制動制御装置、2・・・鉄道車両、11・・・速度算出部、12・・・減速度算出部、13・・・固着余裕時間算出部、14・・・全ゆるめ時間算出部、15・・・制動制御部、16・・・滑走検知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪の回転に基づいて車輪の速度を算出する速度算出部と、
前記車輪の速度から前記車輪の滑走を検知する滑走検知部と、
前記速度算出部によって得られた前記車輪の速度から車輪の減速度を算出する減速度算出部と、
前記車輪の速度と前記車輪の減速度とから前記車輪の速度が0に達するまでの時間である固着余裕時間を算出する固着余裕時間算出部と、
前記車輪に対する制動力を制御する制動制御部と、
を備え、
前記滑走検知部は、前記固着余裕時間と所与の基準時間とを比較して前記車輪が固着に至る可能性を判断し、
前記制動制御部は、前記滑走検知部において前記車輪が固着に至ると判定された場合に、前記制動力を減じて前記車輪が固着するのを防止する
ことを特徴とする制動制御装置。
【請求項2】
前記固着余裕時間算出部は、前記速度算出手段によって得られた車輪の速度を減速度で除すことによって固着余裕時間を算出する
ことを特徴とする請求項1記載の制動制御装置。
【請求項3】
前記基準時間は、前記制動力が0に達するまでの時間を示す全ゆるめ時間であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の制動制御装置。
【請求項4】
前記制動制御部は、前記車輪と一体に回転する部材に摩擦力を作用させる機械ブレーキであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の制動制御装置。
【請求項5】
前記制動制御部は、前記車輪に駆動力を与える電動機の回生動作によって前記制動力を発生させることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の制動制御装置。
【請求項6】
車輪の回転に基づいて車輪の速度を算出する速度算出手段と、
前記車輪の速度から前記車輪の滑走を検知する滑走検知手段と、
前記速度算出手段によって得られた前記車輪の速度から車輪の減速度を算出する減速度算出手段と、
前記車輪の速度と前記車輪の減速度とから前記車輪の速度が0に達するまでの時間である固着余裕時間を算出する固着余裕時間算出手段と、
前記車輪に対する制動力を制御する制動制御手段と、
を有する制動制御装置の制動制御方法であって、
前記滑走検知手段は、前記固着余裕時間と所与の基準時間とを比較して前記車輪が固着に至る可能性を判断し、
前記制動制御手段は、前記滑走検知手段において前記車輪が固着に至ると判定された場合に、前記制動力を減じて前記車輪が固着するのを防止する
ことを特徴とする制動制御方法。
【請求項7】
制動制御装置のコンピュータを、
車輪の回転に基づいて車輪の速度を算出する速度算出手段、
前記車輪の速度から前記車輪の滑走を検知する滑走検知手段、
前記速度算出部によって得られた前記車輪の速度から車輪の減速度を算出する減速度算出手段、
前記車輪の速度と前記車輪の減速度とから前記車輪の速度が0に達するまでの時間である固着余裕時間を算出する固着余裕時間算出手段、
前記車輪に対する制動力を制御する制動制御手段、
として機能させ、
さらに、
前記滑走検知手段に、前記固着余裕時間と所与の基準時間とを比較して前記車輪が固着に至る可能性を判断させ、
前記制動制御手段に、前記滑走検知部において前記車輪が固着に至ると判定された場合に、前記制動力を減じて前記車輪が固着するのを防止させる
ことを特徴とするプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−240851(P2011−240851A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115651(P2010−115651)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 第16回鉄道技術連合シンポジウム 講演論文集(発行所:社団法人日本機械学会、発行日:平成21年12月2日)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】