説明

制御バルブを備えた空気式ブレーキアクチュエータ

【課題】スプリング式ブレーキアクチュエータが密閉され、かつ圧力上昇および真空生成の問題が改善される空気式ブレーキアクチュエータを提供する。
【解決手段】空気式ブレーキアクチュエータシステムはスプリング式および常用ブレーキアクチュエータを具備し、前者はスプリング室および圧力室を持つ気密ハウジングと、スプリング式ブレーキアクチュエータ内に配されると共にパーキングブレーキをかけるために軸方向に移動可能な中空ロッドを含み、後者は常用ブレーキをかけるための常用圧力室を含み、システム制御バルブは中空ロッド内に配置可能なバルブ本体を含み、バルブ本体は中空ロッドを経てスプリング室と常用圧力室との間の流体連通を可能とする開口部を含み、制御バルブは弾性材料からなる呼吸孔を有する膜を含み、この膜はバルブ本体の開口部内に配置され、それが閾値以上の流体圧力を受けていないときは呼吸孔を除いて開口部を密閉する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用の空気式(空気圧作動式)ダイアフラムブレーキに関し、さらに詳しくは常用およびスプリング式ブレーキアクチュエータアセンブリならびに気密スプリング空隙を提供するための内部通気バルブ機構に関し、このバルブ機構は大気および周囲の汚染物質に直接さらされることからの保護に役立つ。
【背景技術】
【0002】
たとえば、バス、トラック、トレーラーおよび他の高負荷車両といった車両用の空気式ブレーキシステムは、通常、ブレーキシューおよびドラムアセンブリを含み、これは、圧搾空気を選択的に作用させることによって作動させられるアクチュエータアセンブリによって動作させられる。従来型の空気式ブレーキアクチュエータは、通常の運転状況下で圧搾空気の作用によってブレーキを動作させるための常用ブレーキアクチュエータと、空気圧が解放された際にブレーキを作動させるスプリング式非常用ブレーキアクチュエータの両方を有する。非常用ブレーキアクチュエータは強力な圧縮スプリングを含み、これは、空気が放出された際に強制的にブレーキをかける。これは、たいていスプリング式ブレーキと呼ばれる。
【0003】
空気式ブレーキアクチュエータはピストン型かダイアフラム型のいずれかである。ダイアフラム型ブレーキアクチュエータにおいては、二つの空気式ブレーキアクチュエータが、通常、縦一列に並んだ状態で配置されるが、これは、車両の通常運転ブレーキをかけるための空気式常用ブレーキアクチュエータと、車両のパーキングまたは非常用ブレーキをかけるためのスプリング式ブレーキアクチュエータとを含む。常用ブレーキアクチュエータおよびスプリング式ブレーキアクチュエータはいずれもハウジングを含み、このハウジングは、その内部を二つの別個の流体室に分割する弾性ダイアフラムを有する。一方、ピストン式ブレーキアクチュエータは、基本的に上記原理と同じ原理に基づいて作動するが、ダイアフラムの代わりにピストンが、車両の通常および/またはパーキングブレーキを作動させるためにシリンダー内で往復動作する。
【0004】
通常の常用ブレーキアクチュエータにおいては、常用ブレーキハウジングは圧力室とプッシュロッド室とに分割される。圧力室は圧搾空気源に流体接続され、かつプッシュロッド室はプッシュロッド(これはブレーキアセンブリに連結されている)を備えており、加圧室内への圧搾空気の導入およびそこからの排気によって、プッシュロッドを上記ハウジングに出入りするよう往復動作させ、運転ブレーキを作動させたり解放したりするようになっている。
【0005】
通常のスプリング式ブレーキアクチュエータにおいては、スプリング式ブレーキハウジングは圧力室とスプリング室とに分割される。圧力プレートが、ダイアフラムと強力な圧縮スプリング(その逆側の端部はハウジングに当接する)との間においてスプリング室内に配置される。ある公知の形態では、アクチュエータロッドは、圧力プレートを貫通し、ダイアフラムを貫通し、圧力室内に入り、そしてスプリング式ブレーキアクチュエータを常用ブレーキアクチュエータから分離する分割壁を貫通して延在している。このアクチュエータの端部は、常用ブレーキアクチュエータの圧力室に流体的に接続されている。
【0006】
パーキングブレーキを作動させるとき、スプリング式ブレーキアクチュエータ圧力が圧力室から解放され、そして強力なスプリングが、スプリング式ブレーキアクチュエータと常用ブレーキアクチュエータとの間の分割壁に向って圧力プレートおよびダイアフラムを押しやる。この状態では、圧力プレートに連結されたアクチュエータロッドはパーキングまたは非常ブレーキを作動させるために押しやられ、これによって車両は強制的に移動できないようにされる。パーキングブレーキを解放するために、圧力室は大気に対して密閉されると共に、スプリング式ブレーキアクチュエータの圧力室内に、この圧力室を拡張させる圧搾空気が導入され、これによってダイアフラムおよび圧力プレートはスプリング式ブレーキアクチュエータハウジングの逆側端部に向かって移動し、この結果、強力な圧縮スプリングが押し縮められる。
【0007】
この構造のスプリング式ブレーキアクチュエータに関連する、あるよく知られた問題は、強力な圧縮スプリングが圧縮されるとき、圧力室は容積が増大し、スプリング室は容積が減少するが、この結果として、それがスプリング室内での圧力上昇を緩和する特別なシステムを具備していない限り、スプリング室内の圧力が増大することである。ブレーキ解放時のスプリング室内での圧力の上昇は極めて有害なものである。なぜなら、スプリングを完全に圧縮し、したがってブレーキを完全に解放するために、スプリング室内の圧力を増大させることによって、スプリング室内での圧力上昇を相殺する必要があるからである。
【0008】
スプリング室内での圧力上昇は、高負荷車両用のほとんどの圧搾空気システムが産業標準最大圧力で作動するために悪化する。スプリングとスプリング室内での空気圧力の増大に関して組み合わされた圧力は、ブレーキを適切に作動させるための最大値に達し得ない。スプリングの圧力およびスプリング室内での圧力上昇と関連付けられた組み合わされた力は、最大圧力によって作用させられる力に達するので、ブレーキが解放されないことや、部分的にしか解放されないことや、あるいは解放が非常にゆっくりしたものとなることがあり、これらは全て望ましいものではない。
【0009】
スプリング室内での圧力上昇問題に対処する一つの典型的な解決策は、スプリング室に適切な通気構造を設けるものである。ダイアフラムブレーキアクチュエータにおける、たいていの一般的な通気機構は、スプリング室の周りのハウジングに孔を配することである。そうした通気開口部の顕著な欠点は、スプリング室の内部がそれゆえに外部環境にさらされることである。したがって環境物質、たとえば埃、塩分および水分などがスプリング室に浸入し、スプリングのような、さまざまな内部ブレーキ要素の磨耗、腐食、および摩損を早める可能性がある。環境物質による内部ブレーキ要素へのダメージは、メンテナンスの手間を増やし、あるいはスプリングの早期破損を引き起こし、その結果、ブレーキアクチュエータの交換が必要になる。
【0010】
スプリング室の直接外的通気に伴う、さらなる問題は、トラクター/トレーラーのような車両はしばしばドックに隣接するベイに長時間にわたって駐車されることである。このベイは通常傾斜しており、しかも下り坂である。大雨あるいは雪の状況下では、ベイは通気開口部の上の高さまで水で満たされ、スプリング室内部に水が溢れることがある。ブレーキが解放された際に、水は、通常、通気開口部を経てスプリング室から排出されるが、浸水は腐食を早め、しかも他の環境的障害を引き起こし得る。ある環境条件では、水が凍ることがあり、これはブレーキの解放を完全に妨げる。
【0011】
通気開口部を経たスプリング室内への環境物質の侵入に関連する問題によって、さまざまな環境物質の侵入を防ぐため、スプリング室を密閉することが試みられた。だが、真空すなわち減圧が、この減圧を補償すなわち緩和するためのシステムが設けられない限り、パーキングブレーキを作動させたときスプリング室内に生じるために、スプリング室を密閉すると他の問題が生じる。減圧が著しいものであると、それによってパーキングブレーキの反応時間が遅くなることがあり、これは望ましいことではない。
【0012】
スプリング室内での圧力上昇および真空生成を排除し、その一方で環境物質が中に入らないようにする、いくつかの公知の試みとしては、たとえば、スプリング式ブレーキアクチュエータのスプリング室を常用ブレーキアクチュエータのいずれかの室に流体的に接続すること、通気開口部にフィルターを配置すること、そしてアクチュエータロッドを経てスプリング室から常用ブレーキ圧力室内へ内部流体流路を設けることが挙げられる。こうした解決策の全ては、完全な解決をもたらさないか、あるいはその代わりに他の問題を引き起こすので妥協に過ぎない。たとえばフィルター付き通気開口部は当然ながら外気がブレーキ内に流入するのを許容し、ブレーキが完全に密閉されていない状態とする。フィルターが開放されている限り、ブレーキアクチュエータが浸水したベイの中で水に浸かっているかのように、外的物質がフィルターを経てブレーキに侵入し得る可能性がある。
【0013】
フィルター付き通気開口部の例を2000年2月29日発行の米国特許第6,029,447号に見出すことができる(特許文献1参照)。アクチュエータを通って延在する内部流路は、複雑な構造の二方向バルブを必要とし、このバルブは、スプリング室内での圧力上昇を緩和するために流体の流れを制御し、一方で、スプリング室内が真空になるのを阻止するため加圧流体の導入を許容する。そうした二方向バルブの例は、1998年3月3日発行の米国特許第5,722,311号および1994年12月13日発行の米国特許第5,372,059号に開示されている(特許文献2および3参照)。
【0014】
一方、一方向バルブの例は、2003年7月8日発行の米国特許第6,588,314号に開示されており(特許文献4参照)、その全ての開示はこの引用によって本明細書に組み込まれる。この通気構造によれば、スプリング室から常用ブレーキ圧力室への内部通気を可能とすることにより、スプリング室内での圧力上昇の問題に対する効果的な解決策を提供可能である。だが、スプリング室内の圧縮スプリングは、スプリング式ブレーキを作動させる際にスプリング室内の減圧すなわち真空生成に打ち勝つために、スプリング室の従来型スプリングよりも極めて強力なものを選択しなければならない。さもなければ、スプリング式ブレーキは望ましい作動時間内に適切に動作することができない。
【特許文献1】米国特許第6,029,447号明細書
【特許文献2】米国特許第5,722,311号明細書
【特許文献3】米国特許第5,372,059号明細書
【特許文献4】米国特許第6,588,314号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
スプリング式ブレーキアクチュエータを含む空気式ブレーキアクチュエータであって、複雑なあるいはメンテナンスが高く付くバルブおよびフィルターシステムを必要とせず、しかも/あるいはスプリング室内に非常に強力なスプリングを設けることを要さずに、スプリング式ブレーキアクチュエータが密閉され、かつ圧力上昇および真空生成が改善されるスプリング式ブレーキアクチュエータを含む空気式ブレーキアクチュエータを提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は概して空気式の常用およびスプリング式ブレーキアクチュエータシステムを目的とする。このスプリング式ブレーキアクチュエータは密閉された空隙および制御バルブ機構を有し、これは大気および周囲の汚染物質に直接さらされることからの保護に役立ち得るものであり、その一方で、スプリング式ブレーキアクチュエータのスプリング室内での圧力上昇および真空生成を制御するための二方向呼吸バルブ機能を提供する。
【0017】
本発明の一態様によれば、車両のパーキングブレーキを作動させるための空気式ブレーキアクチュエータが提供され、このものは、第1の端壁、この第1の端壁と対向する第2の端壁、そして第1および第2の端壁間に延在する周側壁を含む気密(密閉)ハウジングであって、第1の端壁、第2の端壁、そして周側壁が共同でその中に内部空隙を形成しているハウジングと;この内部空隙内に展張され(内部空隙いっぱいに広がり)、かつこの内部空隙を、ダイアフラムと第1の端壁との間に配されたスプリング室と、ダイアフラムと第2の端壁との間に配された圧力室とに分割し、圧力室が流体によって加圧されたときに第1のポジションをとり、かつ圧力室から流体が排出されたときに第2のポジションをとるダイアフラムと;スプリング室内に配置されかつ第2の端壁に向う方向にダイアフラムを付勢するスプリングと;一端がダイアフラムの中央開口部に接続されかつ他端が第2の端壁を貫通して延在している中空アクチュエータロッドであって、ダイアフラムが第2のポジションにあるときにはパーキングブレーキを作動させる位置に置かれ、かつダイアフラムが第1のポジションにあるときにはパーキングブレーキを解放する位置に置かれるようになった中空アクチュエータロッドと;この中空アクチュエータロッド内に配置された制御バルブであって、中空アクチュエータロッドを介して、スプリング室と、第2の端壁の圧力室と反対の側との間の流体連通を可能にする、その内部に形成された開口部を備えたバルブ本体を含み、さらに弾性材料から形成されると共にそれを貫通するよう形成された呼吸孔を有する膜を含み、この膜は、バルブ本体の開口部内に配置されていると共に、それが所定レベルを超える流体圧力を受けていないときに呼吸孔を除いて開口部を密閉するよう構成されている制御バルブと;を具備してなる。
【0018】
好ましくは、バルブ本体の開口部は円形断面を有し、かつ膜は、バルブ本体の開口部によって形成された取り巻き壁に当接するよう構成された円形膜部分を有する。バルブ本体の開口部は、通常、バルブ本体の下側内部領域に形成された軸方向円筒形開口部と、この円筒形開口部から軸方向に延在する円錐形開口部と、この円錐形開口部からバルブ本体の上面へと延在する微小中央開口部とを含み、しかも上記膜は円筒形開口部と円錐形開口部との連結部において上記開口部内に配置されている。
【0019】
好ましくは、制御バルブはさらに円筒形開口部の下側部分内にしっかりと収容されたリテーナを含み、このリテーナはその周囲に形成された概して軸方向の、それを通って流体が流動するのを可能にする流路を有する。リテーナは、通常、その対向する側面に形成された二つの平坦な縁部を有する円形状を有し、しかもリテーナの流路は、平坦縁部とバルブ本体の円筒形開口部との間に画定された間隙に形成される。制御バルブのバルブ本体は、半径方向であってかつ平坦縁部とバルブ本体の円筒形開口部とによって形成される間隙に対応するよう、バルブ本体の底面に形成された流体チャネルを備えていてもよい。
【0020】
好ましくは、制御バルブはさらにバルブ本体の上面に取り付けられたフィルター部材を含み、しかも制御バルブのバルブ本体は、このバルブ本体の上面に形成された中央凹部を有する。
【0021】
本発明のある好ましい実施形態では、スプリング室および中空アクチュエータロッドの内部の流体圧力が閾値に達したとき、弾性膜の円形膜部分は、この円形膜部分の外周付近で流体が流動することを可能としかつスプリング室内での圧力上昇を緩和するために、リテーナに向って軸方向に変形する。
【0022】
本発明の他の好ましい実施形態では、制御バルブの膜は、この膜の中央に形成され、かつ膜が対応する方向に変形したときバルブ本体の微小中央開口部を閉塞するよう構成された球形ヘッド部を含む。ゆえに、第2の端壁の、圧力室と反対の側において流体圧力が閾値に達したとき、膜は円錐形開口部によって形成された内壁に対して押しやられ、制御バルブの開口部を密閉するために上記ヘッド部はバルブ本体の微小中央開口部を閉塞する。
【0023】
本発明のある態様によれば、車両の空気式ブレーキアクチュエータシステムにおいて使用される制御バルブが開示され、このブレーキアクチュエータシステムは、縦一列に配置されたスプリング式ブレーキアクチュエータおよび常用ブレーキアクチュエータを含む。スプリング式ブレーキアクチュエータは、スプリング室および圧力室を備えた気密ハウジングを含み、かつ中空アクチュエータロッドは概してスプリング式ブレーキアクチュエータ内に配置されかつパーキングブレーキを作動させるために常用ブレーキアクチュエータに向って軸方向に動作可能である。そして、常用ブレーキアクチュエータは常用ブレーキを作動させるための常用圧力室を含む。本発明の制御バルブは、中空アクチュエータロッド内に配置可能なバルブ本体を具備し、このバルブ本体は、中空アクチュエータロッドを経て、スプリング式ブレーキアクチュエータのスプリング室と常用ブレーキアクチュエータの常用圧力室との間の流体連通を可能にするためのその内部に形成された開口部を含み、制御バルブは弾性材料から形成されかつそれを貫通するよう設けられた呼吸孔(通気孔)を有する膜を備え、この膜は、バルブ本体の開口部内に配置されると共に、所定のレベルを超える流体圧力を受けていないとき、通気孔を除いて開口部を密閉するよう構成される。
【0024】
本発明のある好ましい実施形態では、スプリング室および中空アクチュエータロッドの内部の流体圧力が所定点に達するとき、弾性膜は、この膜の外周(周縁)部付近で流体が流動するのを可能とするために軸方向に変形し、この結果、スプリング室内の圧力上昇を緩和することが可能となる。
【0025】
本発明の他の好ましい実施形態では、制御バルブの膜は、この膜の外周部が上記開口部内でバルブ本体の壁に当接するよう変形した際、バルブ本体の開口部全体を閉塞するよう構成される。したがって常用圧力室内の流体圧力が閾値に達したとき、上記膜は、制御バルブのバルブ本体の開口部を閉塞および密閉するために、開口部の内壁に対して押し付けられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1および図2には、スプリング式ブレーキアクチュエータ14と組み合わされた常用ブレーキアクチュエータ12を具備してなるタンデム型空気式(空気圧作動式)ブレーキアクチュエータ10を示す。常用ブレーキアクチュエータ12は、車両の常用すなわち運転ブレーキを作動させたり解放したりする。スプリング式ブレーキアクチュエータ14は、車両の非常用あるいはパーキングブレーキを作動させるのに使用される。
【0027】
常用ブレーキアクチュエータ12およびスプリング式ブレーキアクチュエータ14の両方はハウジング16,18を具備してなり、これは、常用ブレーキカバー22およびスプリング式ブレーキカバー24がそれぞれ接続されるアダプターハウジング20によって形成される。アダプターハウジング20は、常用ブレーキハウジング16をスプリング式ブレーキハウジング18から離隔すると共に、それぞれの一部分をなす共有分割壁を形成している。アダプターハウジング20を、常用ブレーキカバー22およびスプリング式ブレーキカバー24によく似た別体のカバー要素で置き換えることも本発明の範疇に属する。
【0028】
可動部材(本実施形態では弾性ダイアフラム30,32を含む)が、ダイアフラムの周縁部をアダプターハウジング20と、対応する常用およびスプリング式ブレーキカバー22,24との間において圧潰状態で保持することによって、常用およびスプリング式ブレーキハウジング16,18それぞれの内部に広がっている(展張されている)。本発明はまたピストン型ブレーキ(ダイアフラムの代わりに、円筒形スプリング式ブレーキハウジングの内部にピストンがいっぱいに納まっている)にも適用されることが分かるであろう。
【0029】
特に常用ブレーキアクチュエータ12に注目すると、ダイアフラム30は常用ブレーキアクチュエータ12をプッシュロッド室36と圧力室38とに流体的に分割している。プッシュロッド40(一端に圧力プレートが配されている)は、圧力プレート42がダイアフラム30に当接し、かつプッシュロッド40が常用ブレーキカバー22の開口部46に配置されたベアリング44を貫通して延在した状態で、プッシュロッド室36内に設けられている。リターンスプリング48がベアリング44と圧力プレート42との間に配されており、圧力プレート42をプッシュロッド40と共に常用ブレーキハウジング16の内部に付勢するのを助けるようになっている。図示していないが、Sカムブレーキアセンブリにおいては、プッシュロッド40の端部はSカムブレーキアセンブリの弛みアジャスターに接続されており、これによって常用ブレーキハウジング16に対するプッシュロッド40の往復動作が常用ブレーキの作動および解放をもたらす。
【0030】
圧力室38は導入ポート50を経て圧搾空気源に流体的に接続されている。車両のオペレータがブレーキペダルを操作したとき、圧搾空気が導入ポート50を経て圧力室38に導入されるか、あるいはそこから排出されて、プッシュロッド40が往復動作する。圧搾空気を圧力室38内へ導入することによって、圧力プレート42およびプッシュロッド40はアダプターハウジング20から常用ブレーキカバー22に向って押しやられ、常用ブレーキが作動する。
【0031】
スプリング式ブレーキアクチュエータ14をさらに詳細に検討すると、ダイアフラム32はスプリング式ブレーキハウジング18を圧力室56とスプリング室58とに流体的に分割している。圧力室56は、図示していないが実質的にポート50と同一のポートを経て圧搾空気源に流体的に接続されている。通常、圧力室56は、常用ブレーキアクチュエータ12が供給を受ける圧搾空気システムとは物理的に別個の圧搾空気システムによって供給を受ける。
【0032】
圧力プレート60は、スプリング室58内において、この圧力プレート60とスプリング式ブレーキカバー24との間に配置された強力な圧縮スプリング62を備える。圧力プレート60は環状溝63を具備し、その中にダイアフラム32の内側半径方向縁部64が収容されている。ダイアフラム32の内側縁部64を圧力プレート60に対して保持するために、保持リング66を環状溝63に隣接して圧入状態で設けることができる。圧力プレート60は軸方向段付き開口部68をさらに含み、その内部には、たとえばアクチュエータロッドショルダーおよびベアリングショルダー72が形成されている。軸方向開口部68はスプリング式ブレーキカバー24の開口部74と整列している。
【0033】
環状ベアリングすなわちフランジガイド76が軸方向開口部68内に設けられ、かつベアリングショルダー72に接して配置されている。中空アクチュエータロッド78の一端は軸方向開口部68内に圧入され、かつ環状ベアリング76のフランジ部分に当接して配置されている。ダイアフラム32およびアクチュエータロッド78の圧力プレート60に対する接続構造は、スプリング式ブレーキアクチュエータ14の特別な設計次第では、上で説明したものと異なっていてもよい。環状ベアリング76および圧力プレート60には保持(caging)ボルト94に沿って、その内部に空気の流動を可能にする空気通路すなわちクリアランス(図示せず)が形成され、スプリング室58と中空アクチュエータロッド78の内部空隙との間で空気が相互に流動可能となる。
【0034】
アクチュエータロッド78の他端は、アダプターハウジング20に形成された開口部81内に配置されたベアリングおよびシールアセンブリ80を貫通して延在する。ベアリングおよびシールアセンブリ80は公知である。
【0035】
移送プレート82は、圧力プレート60の反対側にあるアクチュエータロッド78の端部を閉塞する。移送プレート82は、アクチュエータロッド78の内部に螺着可能に収容されるネジ付き突起84を含む。移送プレート82および突起84は共同でバルブ本体を形成すると共に、本発明による二方向呼吸バルブ(すなわち制御バルブ)86を収容する。半径方向に延在する流体チャネル87(図3および図4参照)が移送プレート82の下面に形成されているが、この下面は好ましくはアダプターハウジングの凹部88内に収まるようなサイズとされる。
【0036】
本ブレーキアクチュエータはさらに、保持ボルトアセンブリ90を具備してなり、この保持ボルトアセンブリ90は、保持ボルトヘッド96で終端をなしている保持ボルト94に螺着されかつ永久的に固定される調整ナット92を備える。保持ボルトアセンブリは、保持ボルト94および保持ボルトヘッド96をアクチュエータロッド78の内部に配置し、保持ボルト94の他端を軸方向開口部68を経て突出させ、キャップすなわちカラー97(これは実質的に密封様態でスプリング式ブレーキヘッド24にリベット留め(打ち潰し留め)されている)を経て保持ボルトを突き出させ、そして調整ナット92を保持ボルトに永久固定することによって、圧力プレートとアクチュエータロッドをスプリング式ブレーキアクチュエータ14に対して連結する。ナット92および保持ボルトヘッド96は直径に関して通路68の小さい方の直径よりも大きいので、保持ボルトは圧力プレートをスプリング式ブレーキヘッド24に連結する。
【0037】
保持ボルトヘッド96は好ましくは対向するカラー100間に配置されたベアリング98を含む。このベアリング98はアクチュエータロッド78の内面に当接し、カラー100および保持ボルト94がアクチュエータロッド78の内部に接触するのを防止し、その一方で、非常ブレーキの作動および解放中、アクチュエータの往復動作を案内するのを助ける。軸方向スロット99が上記ベアリングの表面に形成されており、このベアリングの周りに流体流路を形成している。
【0038】
保持ボルトアセンブリ90は、強力な圧縮スプリング62を機械的に圧縮し、かつそれを圧縮状態(特に図1に示される)で保持するのに使用される。調整ナット92を回転させることによって、スプリング式ブレーキハウジング18から保持ボルトをネジ方式で引き出すことが可能である。保持ボルトを引き出すとき、保持ボルトヘッド96はアクチュエータロッド78の上端においてベアリング76に当接して、アクチュエータおよび圧力プレートをそれと共に引き出し、これによってスプリングを圧縮する。強力圧縮スプリングの保持ボルトは公知であり、通常、ブレーキアクチュエータの組立て中および/または圧搾空気システムの故障あるいは不在の場合にブレーキを機械的に解放するために使用される。
【0039】
図3および図4を参照して制御バルブ86を詳細に説明する。ネジ付き凸部84および移送プレート82は共同でバルブ本体として効果的に機能し、その下側内部領域において軸方向円筒形開口部110を形成する。リテーナ112は、好ましくは開口部の環状ショルダーに当接した状態でかつそれを経て流体連通を可能にするその内部に形成された微小開口部すなわち流路を除いて上記開口部を実質的に閉塞するよう、開口部110の下端部に圧入されている。図3に示すように、リテーナ112は、その対向する側面(側部)に形成された平坦縁部113を有する円形状とすることができ、円形開口部110内に横方向間隙115を形成する。間隙115は、リテーナ112を通り、移送プレート82の下面に沿った連続した半径方向流路をもたらすための半径方向に延在する流体チャネル87と整列する。リテーナ112の底面は平坦であり移送プレート82の底面と面一となっており、しかもリテーナ112のアセンブリを開口部110内に案内するのに使用できる凹部114を含む。リテーナ112の上面はまた好ましくは平坦であり、しかも平坦縁部113においては、リテーナ112がバルブ本体82および84へと組み立てられた際にチャネル87と整列状態となる、半径方向に延在するスロット116を含む。スロット116、平坦縁部113およびチャネル87は、リテーナ112の側面を通りかつ移送プレート82に沿った連続した空気流路を形成する。だが、リテーナおよび流体チャネルの形状は図示するこの形態には限定されず、それが、その周りの空気の流動を可能にする制限された流路を備えた開口部110の実質的な閉塞を適切に実現できるならば、他の形状を採用することも可能である。円筒形開口部110は上側において、この開口部110から上方に延在する円錐形空隙118につながっており、しかもバルブ本体84の上面を貫通する微小中央開口部120が形成されている。バルブ本体84の上面は好ましくは中央凹部122を含み、しかもフィルター部材126はバルブ本体84の上面に堅固に取り付けられかつ軸方向開口部と重なり合っている。このフィルターは好ましくは、合成、高分子、あるいは他のフィルター素材から形成され、そしてフィルターを本体に対して固定するためのたとえば圧感接着剤裏当てを用いてバルブ本体に取り付けられる。好ましくは、フィルター部材126は多孔質の、ガス透過性高分子膜であり、この膜は疎水性および疎油性(oleophobic)特性および約1ミクロンの孔サイズを有する。許容可能なフィルター要素は、W. L. Gore and Associatesから入手可能であり、Gore-Tex(登録商標)の商標名で販売されている、処理され、膨脹させられたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる。
【0040】
円筒形開口部110の上側部分および円錐形空隙118によって形成される空隙内には、その円形外周部が円錐形空隙118および円筒形空隙110の壁の連結部に当接した状態で、上記開口部をシールするために、ダイアフラムすなわち膜130が図4に示すごとく着座している。膜130は、球形ヘッド部132と、このヘッド部132から半径方向外側に延在する円形膜部分134とを含むが、これは好ましくは、あるレベルを超える空気圧が膜130に作用したとき上記膜部分134が弾性変形するようにするために、適切な強度および弾性を有するゴムあるいは高分子素材からなる。膜132が外的空気圧を受けることなくバルブ本体84の空隙内に着座したとき、ヘッド部132の円形底部はリテーナ112の上面と接触し、かつ小さな環状スペース136が膜部分134の底面とリテーナ112の上面との間に形成される。これは、その中で膜部分134の弾性変形を許容するためのクリアランスを提供する。膜部分134はさらに一つあるいは複数の貫通孔(すなわち呼吸孔)140を含み、これはバルブ本体84の中央孔120よりも著しく小さなサイズを有する。
【0041】
ここで図4ないし図6を参照して、ブレーキアクチュエータおよび制御バルブ86の作動状況について以下で説明する。図4に示すように、弾性膜130の膜部分134は、円筒形開口部110と円錐形開口部118との連結部における側壁に自然に付勢されており、この結果、それは、上記開口部を通る、したがってスプリング室58と常用アクチュエータ圧力室38との間の空気の自由な流れを抑止するため上記開口部を密閉する。だが、この状態においても、制限された量の空気の流れは、膜130の微小貫通孔140を介してのみ許容される。
【0042】
パーキングブレーキを解放するとき、圧搾空気はスプリング式ブレーキアクチュエータ14の圧力室56内に流入する。圧力室56の容積が増大するとき、スプリング室58の容積は減少し、これによって、その中に含まれる空気の圧力が増大する。スプリング室内の圧搾空気は、圧力プレート60の軸方向開口部68およびアクチュエータロッド78の内部空隙を経て、制御バルブ86に流体的につながっている。スプリング室58内の圧力が増大するとき、外周がバルブ本体84の内壁に当接した状態の膜130の弾性力に打ち勝ち、そして膜部分134の弾性力に抗して弾性膜130の外周部分を軸方向に押しやるポイント(図5に示す)に達し得る。これによって、空気が、中央開口部120から、膜130の外周付近で、本体開口部または側方空隙115によって形成される流路を経て、そしてチャネル87に沿って、常用ブレーキ圧力室38内に流入することが可能となる(図5に矢印「a」を用いて示す)。このようにして、「気密」スプリング室58内での圧力上昇は、先に説明した従来型スプリング式ブレーキアクチュエータのようにスプリング室に通気開口部を設けることなく、本発明に係る制御バルブの作用によって効果的に緩和される。
【0043】
上昇した圧力がスプリング室58から解放された後、膜130は図4に示すようにその本来の形状に戻り、そして上記膜の微小呼吸孔140を除いて制御バルブ86の開口部を再度密閉する。図2は、パーキングブレーキアクチュエータの解放後に圧力上昇が緩和された状態を示す。
【0044】
逆に、スプリング式ブレーキアクチュエータの圧力室56から圧搾空気を排出することによってパーキングブレーキを作動させるとき、圧縮スプリング62は、スプリング式ブレーキアクチュエータ14と常用ブレーキアクチュエータ12との間の分割壁に向って圧力プレート60およびダイアフラム32を押しやる。その結果、圧力プレート60に接続されたアクチュエータロッド78はパーキングあるいは非常ブレーキを作動させるために押しやられ、これによって車両は、上述した従来公知の方式で強制的に動かないようにされる。だが、スプリング室58の拡張変化中は、ダイアフラム32の強制移動によって真空すなわち低圧状態が創出されるが、これはスプリング式ブレーキが利くまでの時間を遅延させることがあり、さもなければスプリング式ブレーキの適切な動作に悪影響を及ぼし得る。この操作において、パーキングブレーキをかける以前は、制御バルブの膜130は図4に示すような通常のすなわち応力を受けない状態にある。この状態では、制御バルブ86を通過する空気流は、上記膜の微小孔140のみを通過しなければならない。微小孔140は、スプリング式ブレーキが作動させられているとき、空気流が、スプリング室58の拡張した容積を満たすことを可能にする。この「呼吸」空気は、好ましくは、常用ブレーキアクチュエータ12が解放されたとき、たとえばポート50のような、関連するポートを経て供給可能である。車両の常用およびスプリング式ブレーキシステムの個別の仕様に応じて、孔140の寸法を適切に選択することにより、スプリング室内の真空生成問題が効果的に解決される。
【0045】
特に図6を参照して、本発明のブレーキシステムの別な作動様態について説明する。常用ブレーキを作動させるとき、圧搾空気は常用ブレーキアクチュエータ12の圧力室38内に流入する。この際、常用圧力室38内の圧搾空気の圧力が閾値を超え、膜130は開口部118の円錐形壁に押し付けられ、そしてヘッド部132はバルブ本体84の中央開口部140に対して着座させられ(嵌まり込み)、一方、膜部分134は変形させられて、円錐形壁に当接し、こうして制御バルブ86の開口部全体が密閉される。このようにして、スプリング室58内での流体圧力の望ましくない上昇を回避できる。反対に、常用ブレーキが解放されたとき、制御バルブ86は図4に示すように、その通常の(正規の)状態へと復帰する。
【0046】
上述したように、本発明による密閉された空気式ブレーキアクチュエータ10の一つの利点は、スプリング式ブレーキアクチュエータ14が完全に雰囲気(大気)に対して密閉されていることである。二方向連通すなわち呼吸能力を備えた制御バルブは、密封されたスプリング室内の圧力の緩和を可能とし、しかもそれはまた、ブレーキの作動および解放に応じたスプリング室内での真空生成問題を許容する。上記制御バルブの機構および構成は、上述した従来型の二方向あるいは一方向バルブに比べて相対的に簡素であり、本発明のブレーキシステムは、スプリング室の通気開口部、およびブレーキシステムの長時間にわたる使用中にしばしば誤作動を起こす、制御バルブ内に保持されたコイルスプリングを必要としない。さらに、たとえば米国特許第6,588,314号明細書に開示された従来型ブレーキシステムのように、パーキングブレーキを作動させた際に生じるスプリング室58内での真空生成の影響に打ち勝つために、増強されたスプリング力を有する強力な圧縮スプリング62を選択する必要はない。
【0047】
本発明について、ある特定の実施形態に関して詳しく説明してきたが、これは例証であって限定ではなく、しかも形状および細部に関して、さまざまな改変および変更が可能であり、そして特許請求の範囲は従来技術が許容する範囲で広く解釈されるべきであることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明によるタンデム型空気式ブレーキアクチュエータの断面ならびにスプリング室と常用圧力室との間の流体流動を制御するための二方向制御バルブを示す図であり、保持ボルトは引っ込められた状態となっている。
【図2】図1のタンデム型空気式ブレーキアクチュエータの断面を示す図であり、スプリング式ブレーキは作動しておらず、保持ボルトが突出位置にある状態を示している。
【図3】図1の制御バルブの拡大底面図である。
【図4】図3の線A‐Aに沿って取った制御バルブの拡大断面図であり、制御バルブ内に収容されたダイアフラムが、あるレベルを超える流体圧力を受けることなく通常状態にある様子を示している。
【図5】図3の線A‐Aに沿って取った制御バルブの拡大断面図であり、制御バルブ内に収容されたダイアフラムが、スプリング式ブレーキアクチュエータのスプリング室からの流体圧力を受けた状態にある様子を示している。
【図6】図3の線A‐Aに沿って取った制御バルブの拡大断面図であり、制御バルブ内に収容されたダイアフラムが、常用ブレーキアクチュエータの圧力室からの流体圧力を受けた状態にある様子を示している。
【符号の説明】
【0049】
10 タンデム型空気式ブレーキアクチュエータ
12 常用ブレーキアクチュエータ
14 スプリング式ブレーキアクチュエータ
16,18 ハウジング
20 アダプターハウジング
22 常用ブレーキカバー
24 スプリング式ブレーキカバー
30,32 弾性ダイアフラム
36 プッシュロッド室
38 圧力室
40 プッシュロッド
42 圧力プレート
44 ベアリング
46 開口部
48 リターンスプリング
50 導入ポート
56 圧力室
58 スプリング室
60 圧力プレート
62 圧縮スプリング
63 環状溝
64 縁部
66 保持リング
68 軸方向開口部
72 ベアリングショルダー
74 開口部
76 環状ベアリング
78 中空アクチュエータロッド
80 ベアリングおよびシールアセンブリ
81 開口部
82 移送プレート
84 バルブ本体
86 二方向呼吸バルブ(制御バルブ)
87 流体チャネル
88 凹部
90 保持ボルトアセンブリ
92 調整ナット
94 保持ボルト
96 保持ボルトヘッド
97 カラー
98 ベアリング
99 軸方向スロット
100 カラー
110 開口部
112 リテーナ
113 平坦縁部
114 凹部
115 間隙
116 スロット
118 円錐形空隙
120 微小中央開口部
122 中央凹部
126 フィルター部材
130 膜
132 球形ヘッド部
134 円形膜部分
136 環状スペース
140 微小貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のパーキングブレーキを作動させるための空気式ブレーキアクチュエータであって、
気密ハウジングであって、
第1の端壁と、
前記第1の端壁と対向する第2の端壁と、
前記第1の端壁と前記第2の端壁との間に延在する周側壁と、を含み、
前記第1の端壁と前記第2の端壁と前記周側壁とが共同で、その内部に内部空隙を形成している気密ハウジングと、
ダイアフラムであって、
前記内部空隙にわたって広がると共に、前記内部空隙を、このダイアフラムと前記第1の端壁との間に配されるスプリング室と、このダイアフラムと前記第2の端壁との間に配される圧力室とに分割し、前記圧力室が流体によって加圧されたときには第1のポジションとなると共に、前記圧力室から流体が排出されたときには第2のポジションとなるダイアフラムと、
スプリングであって、
前記スプリング室内に配置されると共に前記ダイアフラムを前記第2のポジションへと付勢するスプリングと、
中空アクチュエータロッドであって、
前記ダイアフラムの中央開口部に連結された一端部と、
前記第2の端壁を貫通して延在する他端部と、を有し、
前記ダイアフラムが前記第2のポジションにあるとき前記中空アクチュエータロッドは前記パーキングブレーキを作動させる位置にあり、かつ前記ダイアフラムが前記第1のポジションにあるとき前記中空アクチュエータロッドは前記パーキングブレーキを解放する位置にあるようにされた中空アクチュエータロッドと、
前記中空アクチュエータロッド内に配置された制御バルブであって、
前記中空アクチュエータロッドを経て、前記スプリング室と、前記第2の端壁の前記圧力室と反対の側との間の流体連通を可能にする、その内部に形成された開口部を備えたバルブ本体と、
弾性材料から形成され、かつそれを貫通するよう形成された呼吸孔を有する膜と、を含み、
前記膜は前記バルブ本体の前記開口部内に配置されると共に、前記膜が閾値以下の流体圧力を受けるとき前記呼吸孔を除いて前記開口部を密閉するよう構成されている制御バルブと、
を具備してなることを特徴とする空気式ブレーキアクチュエータ。
【請求項2】
前記制御バルブは、前記膜が閾値以上の流体圧力を受けたとき、前記スプリング室内の圧力上昇を緩和するために、流体が前記制御バルブを通過することを可能とするようになっていることを特徴とする請求項1に記載のブレーキアクチュエータ。
【請求項3】
前記バルブ本体の前記開口部は概ね円形断面を有し、かつ前記膜は、前記バルブ本体の前記開口部によって形成された取巻き壁に当接するよう構成された円形膜部分を有することを特徴とする請求項1に記載のブレーキアクチュエータ。
【請求項4】
前記バルブ本体の前記開口部は、
このバルブ本体の下側内部領域に形成された軸方向の円筒形開口部と、
前記円筒形開口部から軸方向に延在する円錐形開口部と、
前記円錐形開口部から前記バルブ本体の上面まで延在する微小中央開口部と、を含み、
かつ前記膜は、前記円筒形開口部と前記円錐形開口部との連結部において、前記開口部内に配置されていることを特徴とする請求項3に記載のブレーキアクチュエータ。
【請求項5】
前記制御バルブはさらに、前記円筒形開口部の下側部分内に固定的に収容されたリテーナを含み、前記リテーナは、その周囲に形成された概して軸方向の流路を有し、この流路を経て流体が流動することが可能となっていることを特徴とする請求項4に記載のブレーキアクチュエータ。
【請求項6】
前記リテーナはその対向する側面に形成された二つの平坦な縁部を持つ円形状を有し、かつ前記リテーナの前記流路は、前記平坦縁部と、前記バルブ本体の前記円筒形開口部との間に画定された間隙に形成されることを特徴とする請求項5に記載のブレーキアクチュエータ。
【請求項7】
前記制御バルブの前記バルブ本体は、このバルブ本体の底面に、半径方向であってかつ前記平坦縁部および前記バルブ本体の前記円筒形開口部によって画定される前記間隙に対応して形成された流体チャネルを含むことを特徴とする請求項6に記載のブレーキアクチュエータ。
【請求項8】
前記制御バルブはさらに、前記バルブ本体の前記上面に取り付けられたフィルター部材を具備してなることを特徴とする請求項5に記載のブレーキアクチュエータ。
【請求項9】
前記制御バルブの前記バルブ本体は、このバルブ本体の上面に形成された中央凹部を有することを特徴とする請求項8に記載のブレーキアクチュエータ。
【請求項10】
前記スプリング室および前記中空アクチュエータロッドの内部の流体圧力が閾値に達したとき、前記弾性膜の円形膜部分は前記リテーナに向って軸方向に変形可能であって、前記円形膜部分の外周付近での流体の流動を可能にすると共に、前記スプリング室内での圧力上昇を緩和するようになっていることを特徴とする請求項5に記載のブレーキアクチュエータ。
【請求項11】
前記制御バルブの前記膜は、この膜の中央に形成され、かつ前記膜が対応する方向に変形した際に前記バルブ本体の前記微小中央開口部を閉塞するよう構成された球形のヘッド部を含むことを特徴とする請求項5に記載のブレーキアクチュエータ。
【請求項12】
前記第2の端壁の、前記圧力室と反対の側における流体圧力が閾値に達したとき、前記膜は、前記制御バルブの前記開口部を密閉するため前記ヘッド部分が前記バルブ本体の前記微小中央開口部を閉塞した状態で、前記円錐形開口部によって画定される内壁に対して押し付けられるようになっていることを特徴とする請求項11に記載のブレーキアクチュエータ。
【請求項13】
車両の空気式ブレーキアクチュエータシステムにおいて使用される制御バルブであって、
前記ブレーキアクチュエータシステムは、縦一列に並んで配置されたスプリング式ブレーキアクチュエータおよび常用ブレーキアクチュエータを含み、
前記スプリング式ブレーキアクチュエータは、
スプリング室および圧力室を備えた気密ハウジングと、
概して前記スプリング式ブレーキアクチュエータ内に配置されると共にパーキングブレーキを作動させるために前記常用ブレーキアクチュエータに向って軸方向に動作可能な中空アクチュエータロッドと、を含み、
前記常用ブレーキアクチュエータは、常用ブレーキを作動させるための常用圧力室を含み、
制御バルブは、
前記中空アクチュエータロッド内に配置されたバルブ本体であって、前記中空アクチュエータロッドを経て、前記スプリング式ブレーキアクチュエータの前記スプリング室と前記常用ブレーキアクチュエータの前記常用圧力室との間の流体連通を可能にする、その内部に形成された開口部を備えたバルブ本体と、
弾性材料から形成され、かつそれを貫通するよう形成された呼吸孔を有する膜と、を含み、
前記膜は前記バルブ本体の前記開口部内に配置されると共に、前記膜が閾値以下の流体圧力を受けるとき前記呼吸孔を除いて前記開口部を密閉するよう構成されていることを特徴とする制御バルブ。
【請求項14】
前記膜が前記閾値以上の流体圧力を受けたとき、前記スプリング室内での圧力上昇を緩和するために、制御バルブを経て流体が流動することを可能とするようになっていることを特徴とする請求項13に記載の制御バルブ。
【請求項15】
前記バルブ本体の前記開口部は概ね円形断面を有し、かつ前記膜は、前記バルブ本体の前記開口部によって形成された取巻き壁に当接するよう構成された円形膜部分を有することを特徴とする請求項13に記載の制御バルブ。
【請求項16】
前記バルブ本体の前記開口部は、
このバルブ本体の下側内部領域に形成された軸方向の円筒形開口部と、
前記円筒形開口部から軸方向に延在する円錐形開口部と、
前記円錐形開口部から前記バルブ本体の上面まで延在する微小中央開口部と、を含み、
かつ前記膜は、前記円筒形開口部と前記円錐形開口部との連結部において、前記開口部内に配置されていることを特徴とする請求項15に記載の制御バルブ。
【請求項17】
さらに前記円筒形開口部の下側部分内に固定的に収容されたリテーナを含み、前記リテーナはその周囲に形成された概して軸方向の流路を有し、この流路を経て流体が流動することが可能となっていることを特徴とする請求項16に記載の制御バルブ。
【請求項18】
前記リテーナはその対向する側面に形成された二つの平坦な縁部を持つ円形状を有し、かつ前記リテーナの前記流路は、前記平坦縁部と前記バルブ本体の前記円筒形開口部との間に画定された間隙に形成されることを特徴とする請求項17に記載の制御バルブ。
【請求項19】
前記制御バルブの前記バルブ本体は、このバルブ本体の底面に、半径方向であってかつ前記平坦縁部および前記バルブ本体の前記円筒形開口部によって画定される前記間隙に対応して形成された流体チャネルを含むことを特徴とする請求項18に記載の制御バルブ。
【請求項20】
さらに前記バルブ本体の前記上面に取り付けられたフィルター部材を具備してなることを特徴とする請求項17に記載の制御バルブ。
【請求項21】
前記スプリング室および前記中空アクチュエータロッドの内部の流体圧力が閾値に達したとき、前記弾性膜の円形膜部分は前記リテーナに向って軸方向に変形可能であり、前記円形膜部分の外周付近の流体の流動を可能にすると共に、前記スプリング室内での圧力上昇を緩和するようになっていることを特徴とする請求項17に記載の制御バルブ。
【請求項22】
制御バルブの前記膜は、その中央に形成された球形ヘッド部を含むと共に、前記常用圧力室内の流体圧力が閾値に達したとき、前記膜が前記円錐形開口部によって形成された内壁に対して押し付けられると共に、前記ヘッド部は、制御バルブに形成された開口全体を密閉するために前記バルブ本体の前記微小中央開口部を閉塞するようになっていることを特徴とする請求項17に記載の制御バルブ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−62729(P2007−62729A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−236152(P2006−236152)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(504195554)ハルデックス・ブレイク・コーポレーション (16)
【Fターム(参考)】