説明

制御プログラム試験装置、制御プログラム試験システム、及び制御プログラムの試験方法

【課題】 被制御装置を模擬した装置模擬プログラムをダウンロードすることなく、制御プログラムの試験を可能とする。
【解決手段】 被制御装置を模擬した装置模擬プログラム30を有するパソコン3に接続されたコントローラ2に、被制御装置を制御する制御プログラム20、被制御装置に対して実際にデータを入出力する実I/O25、被制御装置に対して仮想的にデータを入出力する仮想I/O24、装置模擬プログラム30及び制御プログラム20のいずれか一方からの指令に応じて実I/O25と仮想I/O24とを切替えるI/O切替部23を備え、仮想I/O24からの指令を実行して値変化イベントが発生した場合、I/O切替部23が装置模擬プログラム30に値変化イベントを送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル入出力を有する制御装置に用いられる制御プログラムを試験する試験装置、試験システム、及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
FA(Factory Automation)等の分野では、制御プログラムに従い自動制御を行う制御装置が用いられている。このような制御装置において制御プログラムの動作確認を行うには、実際の入出力機器である被制御装置を接続しなければならない。
【0003】
制御装置に被制御装置が接続されていない状態で制御プログラムの試験を行う装置として、従来、制御装置と被制御装置間で実際のデータ入出力を行う実I/Oに割当てた実I/Oアドレス、制御装置内部のメモリに仮想的に設けられたデータ入出力機器の仮想I/Oアドレス、仮想I/Oアドレスの有効性を示すフラグ、並びに実I/Oアドレス及び仮想I/Oアドレスに対応するメモリアドレスを記憶するマッピングテーブルを備え、有効フラグにより仮想I/Oアドレスの無効が示されている場合は実I/Oとメモリアドレスとの間でデータ入出力を行い、仮想I/Oアドレスの有効が示されている場合は仮想I/Oアドレスとメモリアドレスとの間でデータ入出力を行うシーケンスコントローラがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−272409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のシーケンスコントローラにおいては、制御プログラムの制御対象である装置模擬プログラムを外部のパソコン等で作成し、コントローラにダウンロードした後に制御プログラムの試験を行うため、装置模擬プログラムを変更するたびにコントローラにダウンロードしなければならないという課題があった。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、装置模擬プログラムをダウンロードせず制御プログラムの試験をすることができる制御プログラム試験装置、制御プログラム試験システム、及び制御プログラムの試験方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る制御プログラム試験装置は、被制御装置を模擬した装置模擬プログラムを有する端末装置に接続され、被制御装置を制御する制御プログラム、被制御装置に対するデータの入出力を実際に行う実インタフェース部、被制御装置に対するデータの入出力を仮想的に行う仮想インタフェース部、装置模擬プログラム及び制御プログラムのいずれか一方からの指令に応じて実インタフェース部と仮想インタフェース部とを切替える切替部、を備え、仮想インタフェース部から指令を実行して値変化が発生した場合に切替部が装置模擬プログラムに値変化に関する情報を送信するものである。
【0008】
本発明に係る制御プログラム試験システムは、被制御装置を模擬した装置模擬プログラムを有する端末装置と、被制御装置を制御する制御プログラム、被制御装置に対するデータの入出力を実際に行う実インタフェース部、被制御装置に対するデータの入出力を仮想的に行う仮想インタフェース部、装置模擬プログラム及び制御プログラムのいずれか一方からの指令に応じて実インタフェース部と仮想インタフェース部とを切替える切替部、を有し、端末装置に接続されたコントローラと、を備え、仮想インタフェース部が指令を実行して値変化が発生した場合に、切替部が装置模擬プログラムに値変化に関する情報を送信するものである。
【0009】
本発明に係る制御プログラムの試験方法は、被制御装置を制御する制御プログラム、被制御装置に対するデータの入出力を実際に行う実インタフェース部、被制御装置に対するデータの入出力を仮想的に行う仮想インタフェース部、装置模擬プログラム及び制御プログラムのいずれか一方からの指令に応じて実インタフェース部と仮想インタフェース部とを切替える切替部、を有するコントローラと、コントローラに接続され、被制御装置を模擬した装置模擬プログラムを有する端末装置と、を備えた制御プログラム試験システムにおいて、制御プログラムまたは装置模擬プログラムが切替部に向けてデータ入出力に関する指令を送信する指令送信ステップと、指令送信ステップにより送信された指令に基づき、切替部が実インタフェース部と仮想インタフェース部とを切替えて実インタフェース部または仮想インタフェース部に指令を実行させる切替ステップと、切替ステップにより仮想インタフェース部が指令を実行した後、実行された指令により値変化が発生したか否かを切替部が判断する判断ステップと、判断ステップにより切替部が値変化が発生したと判断した場合に、切替部が装置模擬プログラムに対して値変化に関する情報を送信する値変化情報送信ステップと、値変化情報送信ステップにより送信された値変化に関する情報を受信した装置模擬プログラムが、被制御装置を模擬した装置模擬の処理を実行する装置模擬処理ステップと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上記構成を備えたことにより、コントローラに装置模擬プログラムをダウンロードすることなく制御プログラムの試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態1に係る制御プログラム試験システムの構成を示す図である。
【図2】実施の形態1に係る制御プログラム試験システムを示す機能ブロック図である。
【図3】実施の形態1に係る制御プログラム試験システムの動作シーケンス図である。
【図4】実施の形態1における制御プログラムのフローチャートである。
【図5】実施の形態1におけるI/O切替部のフローチャートである。
【図6】実施の形態1における装置模擬I/F部のフローチャートである。
【図7】実施の形態1における装置模擬I/F部の別のフローチャートである。
【図8】実施の形態1における装置模擬プログラムのフローチャートである。
【図9】実施の形態2に係る制御プログラム試験システムの動作シーケンス図である。
【図10】実施の形態2における装置模擬I/F部のフローチャートである。
【図11】実施の形態2における装置模擬プログラムのフローチャートである。
【図12】実施の形態2における装置模擬プログラムの別のフローチャートである。
【図13】実施の形態3に係る制御プログラム試験システムを示す機能ブロック図である。
【図14】実施の形態3に係る制御プログラム試験システムの動作シーケンス図である。
【図15】実施の形態3における装置模擬I/F部のフローチャートの一部である。
【図16】実施の形態3における装置模擬I/F部のフローチャートの一部である。
【図17】実施の形態3におけるI/O切替部のフローチャートである。
【図18】実施の形態3における連携動作タイミング調整部のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
本発明を実施するための実施の形態1に係る制御プログラム試験システムを図1〜図8を用いて説明する。図1において、制御プログラム試験システム1は、制御対象の被制御装置(図示しない)に接続され、これを制御するコントローラ2と、被制御装置を模擬した装置模擬プログラム30の開発・生成に用いられるパソコン3とで構成されている。
なお、コントローラ2は被制御装置に接続されない場合もある。
【0013】
コントローラ2には、記憶媒体200、RAM201、CPU202、被制御装置と接続され被制御装置に対するデータの入出力を実際に行う実インタフェース(以下、実I/Oと称する)25、パソコン3と接続するコントローラ側I/F部203、が設けられている。
RAM201には、被制御装置に対するデータの入出力を仮想的に行う仮想インタフェース(以下、仮想I/Oと称する)24が設けられ、記憶媒体200には、被制御装置を制御するための制御プログラム20、パソコン3の装置模擬プログラム30にアクセスする際に用いる装置模擬I/F部21、指令(Read/Write)に応じて仮想I/O24と実I/O25を切替る際に用いるI/O切替設定データ部22、I/O切替部23が保持されている。なお、制御プログラム20、装置模擬I/F部21、及びI/O切替部23はプログラムであり、I/O切替設定データ部22はデータベースである。記憶媒体200に保持されたプログラムは、コントローラ2で起動するOS(図示しない)によってRAM201に展開され、CPU202で実行される。また、I/O切替設定データ部22のデータはI/O切替部26によってRAM201に展開され使用される。
【0014】
パソコン3には、RAM301、開発・生成した装置模擬プログラム30やその他のデータを記憶する記憶媒体300、装置模擬プログラム30を読み出して動作させるCPU302、コントローラと接続するパソコン側I/F部303が設けられている。記憶媒体300に保持されたプログラムは、パソコン3上で起動するOS(図示しない)によってRAM301に展開され、CPU302で実行される。
コントローラ側I/F部203やパソコン側I/F部303としては、例えば、シリアル、USB、Ethernet(登録商標)に対応するインタフェースがある。
【0015】
図2は、制御プログラム試験システム1を機能ブロックで示す図である。
コントローラ2には制御プログラム20、装置模擬I/F部21、I/O切替設定データ部22、I/O切替部23、仮想I/O24、及び実I/O25が設けられ、パソコン3には装置模擬プログラム30が設けられている。
【0016】
・全体の動作
【0017】
ここで、制御プログラム試験システム1の動作について説明する。
図3は、制御プログラム試験システム1全体の動作シーケンスを示し、実線は実際の処理を伴う動作を、破線は繰り返し同じ動作に戻る場合を表している。
まず、制御プログラム試験システム1はI/O切替部23と装置模擬I/F部21を起動する。このとき、どちらを先に起動しても良い。次に、装置模擬プログラム30と制御プログラム20を起動する。装置模擬プログラム30と制御プログラム20の起動順序は、試験対象によって決まる。
【0018】
各機能ブロックを起動させると、制御プログラム試験システム1は、次の3つのケースいずれかにより試験を開始する。
ケース1:装置模擬プログラム30が装置模擬I/F部21へ指令(ReadまたはWrite)を送信する。
ケース2:制御プログラム20がI/O切替部23へ指令(ReadまたはWrite)を送信する。
【0019】
ケース1の場合、装置模擬プログラム30が装置模擬処理を行い(ステップS01)装置模擬I/F部21へ指令を送信すると(ステップS02)、装置模擬I/F部21はI/O切替部23へ転送する(ステップS03)。ケース2の場合は制御プログラム20が制御処理を行い(ステップS04)、I/O切替部23へReadやWriteの指令を送信する(ステップS05)。
【0020】
なお、図3の例ではケース1の動作(ステップS01〜ステップS03)を行った後、ケース2のステップS04、ステップS05を順次行っているが、制御プログラム20の制御処理(ステップS04)から始めても良い。
【0021】
ステップS04及びステップS05による指令の送信を終えると、制御プログラム20は制御が終了したか否かを判断し、処理が終了していないと判断した場合はステップS04及びステップS05より前の状態に戻る。
【0022】
I/O切替部23は、装置模擬I/F部21または/および制御プログラム20から指令を受信すると実I/O25と仮想I/O24のどちらに入力すべきかI/O切替設定データ部22を参照して判断し、判断結果に基づいて実I/O25および仮想I/O24の切替制御を行う(ステップS06)。そして、実I/O25または仮想I/O24のデータをReadしたり、Writeしたりする(ステップS07)。このとき、制御プログラム20からの指令に従いReadしたデータは、制御プログラム20へ送信する。
【0023】
I/O切替部23は、指令が被制御装置へのWriteであり、かつ、仮想I/O24を介してデータをWriteした結果により値が変化したか否かを判断し(ステップS08)、値が変化している場合は値変化イベントを装置模擬I/F部21へ送信する(ステップS09)。装置模擬I/F部21は、この値変化イベントを装置模擬プログラム30へ転送し(ステップS10)、その後、処理が終了したか否かを判断し、処理が終了していないと判断した場合はステップS01で指令を受信するより前の状態に戻る。
【0024】
装置模擬プログラム30は、装置模擬I/F部21から受信した値変化イベントにより起動条件が満たされた装置模擬処理があるか否かを判断し、起動条件が満たされた装置模擬処理がある場合はこれを起動し、別スレッドで実行する(ステップS11)。このステップS11の処理は、上記ステップS01と同じである。そして、この処理において装置模擬I/F部21へ指令を送信する(ステップS12)。指令の送信後、装置模擬プログラム30は実行すべき装置模擬処理が実行されたか否かを判断し、処理が終了していないと判断した場合はステップS10による値変化イベントを受信するより前の状態に戻る。
【0025】
装置模擬I/F部21がステップS12による指令を受信するとI/O切替部23に転送し(ステップS13)、コントローラ2の各機能ブロックは装置模擬I/F部21がステップS01で指令を受信した場合と同様の動作を繰り返す。
【0026】
このように、制御プログラム試験システム1は、上記の動作を繰り返し行うことで装置模擬プログラム30をコントローラ2へダウンロードすることなく、制御プログラム20の試験を、装置模擬プログラム30の開発に用いたパソコン3上で容易に実行できる。また、装置模擬プログラム30のダウンロード時間を削減することで、デバッグが何回も必要となる装置模擬プログラム30の開発工期を短縮することもできる。
【0027】
ここで、各機能ブロックそれぞれの動作の詳細を、フローチャートを用いて説明する。
【0028】
・制御プログラムの動作
【0029】
図4は制御プログラム20のフローチャートである。
制御プログラム20は、予めプログラム上に設定されたロジックに従いI/O切替部23へRead指令を送信し、実I/O25または仮想I/O24からデータの読み出しを行う(ステップS101、図3のステップS04、S05、S07に対応)。Read指令が無い場合、ステップS101の処理は省略できる。
【0030】
制御プログラム20はまた、予めプログラム上に設定されたロジックに従いI/O切替部23へ指令を出して実I/O25又は仮想I/O24に値のWriteを行う(ステップS102)。Readの場合と同様に、Write指令が無い場合はステップS102の処理を省略できる。
そして、Write及びReadの制御が終了したか否かを判断し(ステップS103)、制御処理が終了していない場合はステップS101の処理へ戻り、処理が終了している場合はこのフローを終了する。
【0031】
・I/O切替部の動作
【0032】
次に、図5を用いてI/O切替部23のフローを説明する。
I/O切替部23は、装置模擬I/F部21または制御プログラム20から指令(ReadまたはWrite)を受信すると(ステップS201、図3のステップS03、S05に対応)、この指令は実I/O25と仮想I/O24のどちらに対する指令かを判断する(ステップS202)。
【0033】
実I/O25への指令の場合はこの指令に従ってデータのReadまたはWriteを行い(ステップS203、図3のステップS07に対応)、仮想I/O24への指令の場合はこの指令に従ってReadまたはWriteを行う(ステップS204、図3のステップS07に対応)。
【0034】
仮想I/O24へWriteを行う場合、その指令が出力へのWrite指令であって、かつ、この指令によりWriteをした結果、値が変化したか否かを判断し(ステップS205、図3のステップS08に対応)、値変化している場合は装置模擬I/F部21へ値変化イベントを送信する(ステップS206、図3のステップS09に対応)。その後、処理が終了したかを判断し(ステップS207)、終了していなければステップS201の前の状態に戻り、処理が終了していればこのフローを終了する。
【0035】
一方、仮想I/O24への出力へのWrite指令であって値変化していない場合、及び仮想I/O24へのRead指令の場合は、ステップS206を行わずに上記ステップS207を行う。また、上記ステップS202で実I/O25への指令(ReadまたはWrite)と判断した場合も同様に、ステップS203の後、ステップS207で処理が終了したか否かを判断する。
【0036】
・装置模擬I/F部の動作
【0037】
次に、図6及び図7を用いて装置模擬I/F部21のフローを説明する。図6は1タスクで処理する場合を、図7は2タスクで処理する場合をそれぞれ示している。
図6において、装置模擬I/F部21は装置模擬プログラム30からの指令またはI/O切替部23からの値変化イベントを受信すると(ステップS301、図3のステップS02、S09、S12に対応)、装置模擬プログラム30からの指令かI/O切替部23からの値変化イベントかを判断する(ステップS302)。I/O切替部23からの値変化イベントの場合は装置模擬プログラム30へこれを転送し(ステップS303、図3のステップS10に対応)、装置模擬プログラム30からの指令の場合はI/O切替部23へこの指令を転送する(ステップS304、図3のステップS03、S13に対応)。そして、処理が終了したか否かを判断し(ステップS305)、終了していない場合はステップS301に戻り、処理が終了している場合はこのフローを終了する。
【0038】
装置模擬I/F部21のフローを2タスクで行う場合、図7のフロー1では装置模擬プログラム30からの指令を受信し(ステップS311、図3のステップS02、S12に対応)、受信した指令をI/O切替部23へ転送する(ステップS312、図3のステップS03、S13に対応)。そして、処理が終了したか否かを判断し(ステップS313)、処理が終了していない場合はステップS311に戻り、処理が終了している場合はフロー1を終了する。図7のフロー2では、装置模擬I/F部21はI/O切替部23からの値変化イベントを受信し(ステップS321、図3のステップS09に対応)、受信した値変化イベントを装置模擬プログラム30へ転送する(ステップS322、図3のステップS10に対応)。そして、処理が終了したか否かを判断し(ステップS323)、処理が終了していない場合はステップS321に戻り、処理が終了している場合はフロー2を終了する。
【0039】
・装置模擬プログラムの動作
【0040】
次に、図8を用いて装置模擬プログラム30のフローを説明する。
装置模擬プログラム30は、指令がある場合に装置模擬I/F部21へ送信し(ステップS401、図3のステップS02に対応)、装置模擬I/F部21から値変化イベントを受信する(ステップS402、図3のステップS10に対応)。そして、受信した値変化イベントによって起動条件が満たされた装置模擬処理があるか否かを判断し(ステップS403)、該当する装置模擬処理がある場合にはこれを起動して別スレッドで実行し、この処理の中で新たな指令を装置模擬I/F部21へ送信する(ステップS404、図3のステップS11、S12に対応)。その後、装置模擬プログラム30は装置模擬が終了したか否かを判断し(ステップS405)、終了していない場合はステップS402に戻り、処理が終了している場合はこのフローを終了する。なお、送信する指令が無い場合はステップS401の送信処理を省略できる。
【0041】
本実施の形態によれば、制御プログラム試験システム1は、コントローラ2に制御プログラム20、I/O切替部23、装置模擬I/F部21、実I/O25、及び仮想I/O24を備え、パソコン3に装置模擬プログラム30を備え、制御プログラム20または装置模擬プログラム30からの指令に基づき仮想I/O24に値変化が生じると装置模擬プログラム30が装置模擬処理を行う構成としたことにより、装置模擬プログラム30をパソコン3からコントローラ2にダウンロードすることなく制御プログラム20の制御プログラム試験(制御プログラム20による装置模擬プログラム30の装置模擬処理の実行)を行うことが可能となる。また、開発中にデバッグが何回も必要となる装置模擬プログラム30をコントローラ2にダウンロードする時間を削減できるため、開発工期を短縮できる。
また、装置模擬プログラム30に時間管理の機能を設けることにより、指令を所定の時刻に実行するよう自動制御することもできる。
【0042】
実施の形態2.
本発明を実施するための実施の形態2に係る制御プログラム試験システム1Aを図9〜図12を用いて説明する。構成は実施の形態1と同じで、装置模擬プログラム30Aと装置模擬I/F部21Aの機能が異なる。具体的には、装置模擬プログラム30Aは時間に関する情報を指令(ReadおよびWrite)に付与する機能を有し、装置模擬I/F部21Aはこの指令のリストを受信すると付与された時間情報に基づいて指令をI/O切替部23へ転送する機能を有する。
【0043】
・全体の動作
【0044】
ここで、制御プログラム試験システム1Aの動作について説明する。
図9は、制御プログラム試験システム1A全体の動作シーケンスを示し、実線は実際の処理を伴う動作を、破線は繰り返し同じ動作に戻る場合を表している。
まず、制御プログラム試験システム1AはI/O切替部23と装置模擬I/F部21Aを起動する。このとき、どちらを先に起動しても良い。次に、装置模擬プログラム30A、制御プログラム20の順に起動する。
【0045】
各機能ブロックを起動させると、制御プログラム試験システム1Aは、コントローラ2Aの装置模擬I/F部21Aからパソコン3Aの装置模擬プログラム30Aへ期間情報をつけて指令リスト取得要求を送信する(ステップS21)。この処理は予め定めた時刻に定期的あるいは不定期に行われる。
【0046】
装置模擬プログラム30Aは、指令リスト取得要求を受信すると指定された期間における指令の実行時刻を決定し、この時刻情報付きの指令リストを作成し(ステップS22)、その結果を装置模擬I/F部21Aへ送信する(ステップS23)。装置模擬I/F部21Aは、受信した指令リストの時刻情報を参照し、指定された時刻になるとI/O切替部23へ指令を送信する(ステップS24)。なお、時刻の計測はコントローラ2A内に設けられたタイマ(図示しない)等を用いて行う。
制御プログラム20は、制御処理(ステップS25)において、データのRead及びWriteの指令をI/O切替部23に送信する(ステップS26)。
なお、制御プログラム20からの指令と装置模擬I/F部21Aからの指令のどちらが先に行われるかは試験対象によって決まる。
【0047】
I/O切替部23は、装置模擬I/F部21Aや制御プログラム20から指令を受信すると実I/O25と仮想I/O24のどちらに入力すべきかI/O切替設定データ部22を参照して判断し、判断結果に基づいて実I/O25または仮想I/O24へ指令を入力する(ステップS27)。そして、実I/O25または仮想I/O24のデータRead及びWriteを行い、Readしたデータを制御プログラム20へ送信する(ステップS28)。
【0048】
I/O切替部23は、また、仮想I/O24を介してデータの読み書きをした結果、この指令が出力指令であって、かつ、この出力指令により値が変化したか否かを判断し(ステップS29)、値が変化している場合は値変化イベントを装置模擬I/F部21Aへ送信する(ステップS30)。
【0049】
装置模擬I/F部21Aは、この値変化イベントを装置模擬プログラム30Aへ転送する(ステップS31)。
装置模擬プログラム30Aは、値変化イベントを受信すると値変化イベントにより起動条件が満たされた新しい装置模擬処理があるか否かを判断し、起動条件が満たされた装置模擬処理がある場合はこれを起動して別スレッドで実行する(ステップS32)。
【0050】
装置模擬I/F部21Aは、装置模擬プログラム30Aに対してステップS21で要求した期間の指令リストの取得要求を再度送信し(ステップS33)、装置模擬プログラム30Aは受信した指令リストの取得要求に応答して指定期間における指令リストを指令に時刻を付けて作成し(ステップS34)、装置模擬I/F部21Aへ送信する(ステップS35)。その後、装置模擬プログラム30Aは指令リストにある処理が終了したか否かを判断し、処理が終了していないと判断した場合はステップS31の値変化イベントを受信するより前の状態に戻る。
【0051】
装置模擬I/F部21AはステップS35により指令リストを受信すると、保有していた指令リストを上書きし(ステップS36)、その後、指令リストにある処理が終了したか否かを判断し、処理が終了していないと判断した場合はステップS21の前の状態に戻り、予め設定された所定時刻になると再び指令リストの取得要求を送信し、以後、同様の動作を繰り返す。
【0052】
制御プログラム試験システム1Aは、上記の動作を繰り返し行うことで、装置模擬プログラム30Aが開発に用いたパソコン3Aからコントローラ2Aへのダウンロードすることなく、制御プログラム20の制御プログラム試験を行うことができる。また、指令に時刻情報を付与することにより、タイミング調整が必要な指令の実行時刻を自動制御することもできる。
【0053】
ここで、各機能ブロックそれぞれの動作を、フローチャートを用いて説明する。
【0054】
・装置模擬I/F部の動作
【0055】
図10は、装置模擬I/F部21Aの動作を示すフローチャートであり、3つのタスクフローで構成されている。
【0056】
フロー1は、パソコン3Aの装置模擬プログラム30Aから定期的に(不定期であってもよい)指定時刻つきの指令を取得するためのフローである。
フロー2は、装置模擬プログラム30Aから取得した指令リストに従い、付与された(指定された)時刻に指令をI/O切替部23へ送信するためのフローである。
フロー3は、I/O切替部23から値変化イベントを受信して装置模擬プログラム30Aへ転送し、次に指令リストの取得要求を送信するまでの期間の指令リストを取得しなおすためのフローである。
【0057】
フロー1において、装置模擬I/F部21Aは装置模擬プログラム30Aに対し、所定の期間情報を付して指令リストの取得要求を送信し、装置模擬プログラム30Aから指令リストを受信すると自装置に設けられた保有リストに新たに取得した指令リストを追加する(ステップS501、図9のステップS23に対応)。
【0058】
そして装置模擬I/F部21Aのフロー2がスリープ状態であればこれを解除し(ステップS502)、ステップS501で取得した指令リストの最後の指令で指定された時刻より所定時間前までの間、フロー1をスリープ状態にさせる(S503)。ステップS501で取得した指令リストの最後の指令で指定された時刻より所定時間前になるとフロー1のスリープ状態を解除して処理が終了したか否かを判断し(ステップS504)、処理が終了していなければステップS501の前の状態に戻り、処理が終了していればこのフローを終了する。
【0059】
フロー2では、装置模擬I/F部21Aは保有している指令リストに現在の時刻が指定時刻とされた指令があるか否かを判断し(ステップS511)、現在の時刻が指定時刻とされた指令がある場合はこの指令をI/O切替部23へ送信し、この指令を実行させる(ステップS512、図9のステップS24に対応)。
【0060】
現在の時刻が指定時刻とされた指令が無い場合、あるいはステップS512が終了すると、指令リストをチェックして次の指令で指定された時刻までこのフロー2をスリープ状態とする(ステップS513)。次の指令で指定された時刻になるとフロー2のスリープ状態を解除し、処理が終了したか否かを判断し(ステップS514)、処理が終了していなければステップS511の前の状態に戻り、処理が終了していればこのフローを終了する。
【0061】
フロー3では、装置模擬I/F部21AはI/O切替部23からの値変化イベントを受信し(ステップS521、図9のステップS30に対応)、装置模擬プログラム30Aへこれを転送する(ステップS522、図9のステップS31に対応)。そして、次に指令リスト取得要求を送信する所定時間までの間における指令リストを更新するために、装置模擬プログラム30Aへ指令リスト取得要求を送信して新たな指令リストを取得し、保有している指令リストを上書きする(ステップS523、図9のステップS36に対応)。
【0062】
装置模擬I/F部21Aは、その後、フロー2がスリープ状態にあればこれを解除し(ステップS524)、処理が終了したか否かを判断し(ステップS525)、終了していない場合はステップS521の前の状態に戻り、処理が終了している場合はこのフローを終了する。
【0063】
・装置模擬プログラムの動作
【0064】
次に、図11及び図12を用いて装置模擬プログラム30Aのフローを説明する。図11は1タスクで処理する場合を、図12は2タスクで処理する場合をそれぞれ示している。
図11において、装置模擬プログラム30Aは装置模擬I/F部21Aから指令リストの取得要求または値変化イベントを受信すると(ステップS601、図9のステップS21、S31、S33に対応)、受信したデータは値変化イベントか指令リストの取得要求かを判断し(ステップS602)、値変化イベントの場合はこの値変化イベントにより起動条件が満たされた装置模擬処理があるか否かを判断する(ステップS603)。
【0065】
該当する装置模擬処理がある場合にはこれを起動して別スレッドで実行し、この処理の中でこれより後の指令を時刻つきで計算する(ステップS604、図9のステップS32に対応)。ステップS601で受信したデータが指令リストの取得要求である場合、指令リスト取得要求で要求した所定期間分の指令リストを装置模擬プログラム30Aの各装置模擬処理から取得し、装置模擬I/F部21Aに送信する(ステップS605、図9のステップS23、S35に対応)。
【0066】
値変化イベントによって起動条件が満たされた装置模擬処理が無い場合や装置模擬処理の別スレッドで指令を実行した後、あるいは装置模擬I/F部21Aへ指令を送信した後、装置模擬プログラム30Aは装置模擬処理が終了したか否かを判断し(ステップS606)、装置模擬処理が終了していない場合はステップS601の前の状態に戻り、処理が終了している場合はこのフローを終了する。
【0067】
一方、図12に示すように2タスクで処理する場合、装置模擬プログラム30Aはフロー1において装置模擬I/F部21Aから値変化イベントを受信し(ステップS611、図9のステップS31に対応)、この値変化イベントにより起動条件が満たされた装置模擬処理があるか否かを判断する(ステップS612)。該当する装置模擬処理がある場合はこれを起動して別スレッドで実行し、この処理の中でこれより後の指令を時刻つきで計算する(ステップS613、図9のステップS32に対応)。
【0068】
その後、装置模擬処理が終了したか否かを判断し(ステップS614)、終了していない場合はステップS611の前の状態に戻り、処理が終了している場合はこのフローを終了する。
【0069】
装置模擬プログラム30Aは、また、図12のフロー2において、装置模擬I/F部21Aから所定期間分の指令リストの取得要求を受信し(ステップS621、図9のステップS21、S33に対応)、要求された指令リストを装置模擬プログラム30Aの各装置模擬処理から取得し、装置模擬I/F部21Aに送信する(ステップS622、図9のステップS23、S35に対応)。装置模擬I/F部21Aへ指令を送信した後、装置模擬プログラム30Aは装置模擬処理が終了したか否かを判断し(ステップS623)、終了していない場合はステップS621の前の状態に戻り、処理が終了している場合はこのフローを終了する。
【0070】
なお、制御プログラム20及びI/O切替部23は実施の形態1と同じであるため、説明を省略する。
【0071】
本実施の形態によれば、制御プログラム試験システム1Aは、装置模擬プログラム30Aと装置模擬I/F部21Aの機能を拡張して指令に指定時刻に実行する時刻情報を付与することにより、実施の形態1に記載の効果に加えて、指令を所定の時刻に自動制御で実行させることが可能となる。これは、実施の形態1における制御プログラム30に時間管理の機能を備えた場合と同様の効果を奏するものである。
【0072】
実施の形態3.
本発明を実施するための実施の形態3に係る制御プログラム試験システム1Bを図13〜図18を用いて説明する。図13に示すように、本実施の形態に係る制御プログラム試験システム1Bは、実施の形態2の構成に加えて、装置模擬I/F部21B、I/O切替部23、制御プログラム20それぞれに接続された連携動作タイミング調整部26を備えている。また、その他の構成については、装置模擬I/F部21Bは実施の形態2と機能が一部異なるものの、それ以外は同じであるため説明を省略する。
【0073】
・全体の動作
【0074】
ここで、制御プログラム試験システム1Bの動作について説明する。
図14は、制御プログラム試験システム1B全体の動作シーケンスを示し、実線は実際の処理を伴う動作を、破線は繰り返し同じ動作に戻る場合を表している。
まず、制御プログラム試験システム1BはI/O切替部23、装置模擬I/F部21B、連携動作タイミング調整部26を任意の順に起動する。次に、装置模擬プログラム30Aを起動し、制御プログラム20を起動する。
【0075】
各機能ブロックを起動させると、制御プログラム試験システム1Bは、コントローラ2Bの装置模擬I/F部21Bから連携動作タイミング調整部26へ制御プログラム20の停止指令を送信し(ステップS41)、連携動作タイミング調整部26は制御プログラム20を停止するAPI(Application Program Interface)を読んで制御プログラム20を停止する(ステップS42)。なお、連携動作タイミング調整部26は制御プログラムリストを有し、制御プログラム20を止める際にはこれを参照する。
【0076】
その後、連携動作タイミング調整部26は装置模擬I/F部21Bに装置模擬入力時刻停止指令を送信し(ステップS43)、装置模擬I/F部21Bはパソコン3Aの装置模擬プログラム30Aへ所定期間における指令リストを要求する指令リスト取得要求を送信する(ステップS44)。この処理は予め定めた時刻に定期的あるいは不定期に行われる。なお、この装置模擬入力時刻停止指令とは、装置模擬I/F部21B内の内部時刻を停止させる指令である。
【0077】
装置模擬プログラム30Aは、指令リスト取得要求を受信すると所定期間における指令の実行時刻を決定し、この時刻情報を付けた指令リストを作成して(ステップS45)装置模擬I/F部21Bへ送信する(ステップS46)。
【0078】
装置模擬I/F部21Bは、指令リストを受信すると連携動作タイミング調整部26へ制御プログラム20の再開指令を送信し(ステップS47)、連携動作タイミング調整部26は制御プログラム20を再開(もしくは開始)するAPIを読んで制御プログラム20を再開(もしくは開始)する(ステップS48)。
【0079】
連携動作タイミング調整部26は、ステップS48にて制御プログラム20を再開させた後、装置模擬I/F部21Bからの入力が行われるように、装置模擬I/F部21Bに装置模擬入力時刻進行指令を送信する(ステップS49)。なお、この装置模擬入力時刻進行指令とは、装置模擬I/F部21B内の内部時刻を進行させる指令である。
【0080】
制御プログラム20が再開し、制御処理(ステップS50)により制御プログラム20からI/O切替部23へ指令が送信されると(ステップS51)、I/O切替部23はI/Oを切替える(ステップS52)。連携動作タイミング調整部26へ制御プログラム20の停止指令を送信し(ステップS53)、連携動作タイミング調整部26は制御プログラム20を停止するAPIを読み制御プログラムリストを参照して制御プログラム20を停止し(ステップS54)、制御プログラム20が停止した後にI/O切替部23はデータのReadまたはWriteを行う(ステップS55)。
【0081】
例えば実I/O25への指令の場合、I/O切替部23はこの指令に従って実I/O25を介してデータのReadまたはWriteを行う。仮想I/O24へのWrite指令であれば実I/O25へ書き込んだ後に連携動作タイミング調整部26へ制御プログラム20の停止指令を送信し(ステップS53)、制御プログラム20の停止が完了した後、仮想I/O24にWriteを行う(ステップS55)。また、仮想I/O24へのRead指令であれば、仮想I/O24に対してReadを行う(ステップS55)。
【0082】
指令が仮想I/O24へのWrite指令であって、その指令の実行により値変化が発生した場合、I/O切替部23は値変化イベントを装置模擬I/F部21Bに送信する(ステップS57)。
【0083】
また、図示はしていないが、指令が仮想I/O24に対する出力へのWrite指令であって値変化イベントを送信しない場合は、I/O切替部23は連携動作タイミング調整部26に制御プログラム20の再開指令を送信し、連携動作タイミング調整部26は制御プログラム20を再開するAPIを読んでこれを再開する。
その後、連携動作タイミング調整部26は、装置模擬I/F部21Bに装置模擬入力時刻進行指令を送って、装置模擬I/F部21Bの内部時刻を進行させる。
【0084】
ステップS57により装置模擬I/F部21Bが値変化イベントを受信した場合、装置模擬I/F部21Bは装置模擬プログラム30Aへこれを転送する(ステップS58)。
装置模擬プログラム30Aは、値変化イベントを受信すると値変化イベントにより起動条件が満たされた新しい装置模擬処理があるか否かを判断し、起動条件が満たされた装置模擬処理がある場合はこれを起動し、指定期間における指令を時刻付きで作成する(ステップS59)。
【0085】
装置模擬I/F部21Bはその後、ステップS44で要求した期間の指令リストの取得要求を再度送信し(ステップS60)、装置模擬プログラム30Aはこの要求に応答して指令リストを作成し(ステップS61)、装置模擬I/F部21Bへ送信する(ステップS62)。そして、再び指令リストの取得要求や値変化イベントを受信する前の状態に戻る。
【0086】
装置模擬I/F部21BはステップS62にて指令リストを受信すると、保有していた指令リストを上書きする(ステップS63)。装置模擬I/F部21Bは、ステップS63にて指令リストを上書きする。その後、制御プログラム20の再開指令を装置模擬I/F部21Bから連携動作タイミング調整部26に送信する(ステップS47)。また、連携動作タイミング調整部26は制御プログラム20を再開し(ステップS48)、装置模擬入力時刻進行指令を装置模擬I/F部21Bに送信する(ステップS49)。そして、ステップS41以降の動作を繰り返す。
その後、装置模擬I/F部21Bは、装置模擬入力時刻進行指令を受信すると、内部時刻を進行させ、ステップS47以降の処理を繰り返す。
【0087】
装置模擬I/F部21Bは、また、内部時刻が進行している期間は装置模擬プログラム30Aの装置模擬処理を実行する。具体的には、ステップS46やステップS62にて受信した指令リストに従い、指定時刻より所定時間前になると連携動作タイミング調整部26へ制御プログラム20の再開指令を送信し、連携動作タイミング調整部26が制御プログラム20を再開するAPIを読んで制御プログラム20を再開させる(ステップS48)。なお、ここでいう所定時間とは、装置模擬I/F部21Bから連携動作タイミング調整部26を介して制御プログラム20へ停止指令が到達するのに要する時間である。
【0088】
制御プログラム20を再開させた後、装置模擬I/F部21Bは指定時刻になるとI/O切替部23に指令を送信し(図示しない)、I/O切替部23はステップS51にて制御プログラム20から指令を受信したときと同様に以降の処理を繰り返す。
【0089】
ここで、各機能ブロックそれぞれの動作を、フローチャートを用いて説明する。
【0090】
・装置模擬I/F部の動作
【0091】
装置模擬I/F部21Bの動作を4つのタスクフローで実施する場合を図15、図16を用いて説明する。図15はフロー1およびフロー2を、図16はフロー3およびフロー4を示している。
【0092】
フロー1は、パソコン3Aの装置模擬プログラム30Aから定期的に(不定期であってもい)指定時刻つきの指令を取得するためのフローである。このフローの処理前後において、制御プログラム20の停止指令や再開指令を連携動作タイミング調整部26へ送信する。
フロー2は、装置模擬プログラム30Aから取得した指令リストに従い、付与された(指定された)時刻に指令をI/O切替部23へ送信するためのフローである。指令を送る前に、制御プログラム20の停止指令を連携動作タイミング調整部26へ送信する。
【0093】
フロー3は、I/O切替部23から値変化イベントを受信して装置模擬プログラム30Aへ転送し、次に指令リストの取得要求を送信するまでの期間の指令リストを取得しなおすためのフローである。この処理後に、制御プログラム20の再開指令を連携動作タイミング調整部26へ送信する。
フロー4は、連携動作タイミング調整部26から装置模擬入力時刻の停止指令または進行指令を受信して装置模擬I/F部21Bの内部時刻を停止または進行再開させるためのフローである。
【0094】
フロー1において、装置模擬I/F部21Bは管理する内部時刻の進行状態を示す装置模擬入力時刻停止中フラグがONかOFFかを確認し(ステップS701)、OFFであれば連携動作タイミング調整部26に制御プログラム20の停止指令を送信する(ステップS702、図14のステップS41に対応)。
【0095】
装置模擬I/F部21Bは、その後、装置模擬プログラム30Aに対して所定の期間情報を付して指令リストの取得要求を送信し(図14のステップS44に対応)、装置模擬プログラム30Aから指令リストを受信すると自装置に設けられた保有リストに新たに取得した指令リストを追加する(ステップS703、図14のステップS46に対応)。そして、制御プログラム20の再開指令を連携動作タイミング調整部26に送信し、完了を待つ(ステップS704、図14のステップS47に対応)。
【0096】
装置模擬I/F部21Bのフロー2がスリープ状態であればこれを解除し(ステップS705)、ステップS703で取得した指令リストの最後の指令で指定された時刻より所定時間前までの間、フロー1をスリープ状態にさせる(ステップS706)。また、上述のステップS701において装置模擬入力時刻停止中フラグがONの場合、ステップS706において、フロー1を所定時間(例えば100ms程度)スリープ状態にさせる。
このとき、装置模擬I/F部21Bが管理する内部時刻は、タイマの現時刻から内部時刻の進行を停止させていた累積時間である累積時刻停止時間を差し引いて計算するものとする。
【0097】
装置模擬I/F部21Bは、最後の指令で指定された時刻より所定時間前になるとフロー1のスリープ状態を解除して処理が終了したか否かを判断し(ステップS707)、処理が終了していなければステップS701の前の状態に戻り、処理が終了していればこのフローを終了する。なお、ここでいう所定時間とは、装置模擬I/F部21Bから連携動作タイミング調整部26を介して制御プログラム20へ停止指令が到達するのに要する時間である。
【0098】
フロー2では、装置模擬I/F部21Bはタイマの値から算出される内部時刻から算出される装置模擬入力時刻の進行を停止する装置模擬入力時刻停止中フラグがONかOFFかを確認し(ステップS711)、OFFであれば保有している指令リストに現時刻が指定時刻よりも所定時間前の指令があるか否かを判断する(ステップS712)。
【0099】
現時刻が指令により指定された時刻よりも所定時間前であると判断した場合は制御プログラム20の停止指令を連携動作タイミング調整部26へ送信する(ステップS713)。そして、時間が経過し、現時刻が指定時刻になるとこの指令をI/O切替部23に送信し、この入力を実行させる(ステップS714)。なお、ここでいう所定時間とは、装置模擬I/F部21Bから連携動作タイミング調整部26を介して制御プログラム20へ停止指令を伝達するのに要する時間である。
【0100】
装置模擬I/F部21Bは、その後、指令リストをチェックし、現時刻が指定時刻より所定時間前の指令が無い場合、次の指令で指定された時刻より所定時間前までこのフロー2をスリープ状態とする(ステップS715)。また、上述のステップS711において装置模擬入力時刻停止中フラグがONの場合、ステップS715では、フロー2を所定時間(例えば100ms程度)スリープ状態にさせる。
このとき、装置模擬I/F部21Bが管理する内部時刻は、タイマの現時刻から内部時刻の進行を停止させていた累積時間である累積時刻停止時間を差し引いて計算するものとする。
【0101】
装置模擬I/F部21Bは、次の指令で指定された時刻より所定時間前になるとフロー2のスリープ状態を解除して処理が終了したか否かを判断し(ステップS716)、処理が終了していなければステップS711の前の状態に戻り、処理が終了していればこのフローを終了する。
【0102】
フロー3では、装置模擬I/F部21BはI/O切替部23からの値変化イベントを受信し(ステップS721、図14のステップS57に対応)、装置模擬プログラム30Aへこれを転送する(ステップS722、図14のステップS58に対応)。そして、次に指令リスト取得要求を送信する所定時間までの間の指令リストを更新するために、装置模擬プログラム30Aへ指令リスト取得要求を送信して新たな指令リストを取得し、保有している指令リストを上書きする(ステップS723)。
【0103】
装置模擬I/F部21Bは、指令リストが更新されると(図14のステップS46、ステップS62)、制御プログラム20の再開指令を連携動作タイミング調整部26へ送信し(ステップS724、図14のステップS47に対応)、フロー2がスリープ状態にあればこれを解除する(ステップS725)。そして、処理が終了したか否かを判断し(ステップS726)、終了していない場合はステップS721の前の状態に戻り、処理が終了している場合はこのフローを終了する。
【0104】
フロー4では、装置模擬I/F部21Bは連携動作タイミング調整部26から装置模擬入力時刻停止指令を受信し(ステップS731、図14のステップS43に対応)、装置模擬入力時刻停止中フラグをONにし、応答を返す(ステップS732)。
【0105】
装置模擬I/F部21Bは、連携動作タイミング調整部26から装置模擬入力時刻進行指令を受信すると(ステップS733、図14のステップS49に対応)、装置模擬入力時刻停止中フラグをOFFにし、装置模擬I/F部21Bのフロー1、フロー2のスリープ状態を解除し、その後、応答を返す(ステップS734)。
【0106】
装置模擬I/F部21Bは、装置模擬入力時刻停止指令受信から装置模擬入力時刻進行指令処理完了までの時間を累積時刻停止時間に加算し(ステップS735)、処理が終了したか否かを判断し(ステップS736)、終了していない場合はステップS731の前の状態に戻り、処理が終了している場合はこのフローを終了する。
【0107】
・I/O切替部の動作
【0108】
次に、図17を用いてI/O切替部23のフローを説明する。
I/O切替部23は、制御プログラム20または装置模擬I/F部21Bから指令を受信すると(ステップS801)、この指令は実I/O25と仮想I/O24のどちらに対する指令かを判断する(ステップS802)。
【0109】
実I/O25への指令の場合は指令に従ってデータのReadまたはWriteを行い(ステップS803)、仮想I/O24への指令の場合はWrite指令か否かを判断する(ステップS804)。仮想I/O24へのWrite指令の場合は一旦実I/O25へWriteを行い(ステップS805)、次に、装置模擬I/F部21B以外からの指令で、Write指令か否かを判断する(ステップS806)。
【0110】
ステップS806の判断の結果、指令が仮想I/O24へのWrite指令の場合、制御プログラム20の停止指令を連携動作タイミング調整部26へ送信して制御プログラム20を停止させ(ステップS807)、ステップS806の判断の結果、指令が仮想I/O24へのWrite指令でない場合はそのまま、指令に従って仮想I/O27にWriteやReadを行う(ステップS808)。
【0111】
その後、指令がWrite指令であり、かつ、このWrite指令により値が変化したか否かを判断し(ステップS809、図14のステップS56に対応)、値変化している場合は装置模擬I/F部21Bへ値変化イベントを送信し(ステップS810、図14のステップS57に対応)このフローを終了する。
【0112】
ステップS809にて、仮想I/O24のWrite指令であって値変化していない場合、あるいは仮想I/O24へのRead指令の場合、この指令がWrite指令か否かを判断し(ステップS811)、Write指令の場合は制御プログラム20の再開指令を連携動作タイミング調整部26へ送信し、制御プログラム20を再開させて完了を待つ(ステップS812)。ステップS810又はステップS812の後、処理が終了したか否かを判断し(ステップS813)、処理が終了していると判断すればこのフローを終了し、処理が終了していないと判断すればステップS801の前の状態に戻る。
【0113】
・連携動作タイミング調整部の動作
【0114】
続いて、図18を用いて連携動作タイミング調整部26のフローを説明する。
連携動作タイミング調整部26は、コントローラ2B内に備えられた受信停止指令リストが空でなければ受信停止指令リストから、空であれば連携動作タイミング調整部26以外の他のプログラムから制御プログラム20の停止指令を受信する(ステップS901、図14のステップS41に対応)。停止指令を受信すると装置内に設けられた制御プログラムリストを参照して制御プログラム20の処理を停止し(ステップS902)、装置模擬I/F部21Bに装置模擬入力時刻停止指令を送信し、応答が返ってくるのを待つ(ステップS903、図14のステップS43に対応)。そして、停止指令の送り元に停止完了の返信をする(ステップS904)。
【0115】
連携動作タイミング調整部26はその後、他のプログラムから制御プログラム20の再開指令または停止指令を受信すると(ステップS905)、再開指令を受信したか否かを判断する(ステップS906)。再開指令を受信していない場合は受信停止指令リストに停止指令を追加し(ステップS907)、ステップS905の前の状態に戻る。
【0116】
ステップS906で再開指令を受信したと判断した場合、制御プログラムリストを参照して制御プログラム20を再開し(ステップS908)、装置模擬I/F部21Bに装置模擬入力時刻進行指令を送信し、応答が返ってくるのを待つ(ステップS909、図14のステップS49に対応)。その後、再開指令の送り元に再開完了を返信し(ステップS910)、処理が終了したか否かを判断し(ステップS911)、処理が終了していなければステップS901の前の状態に戻り、処理が終了していればこのフローを終了する。
【0117】
本実施の形態によれば、制御プログラム試験システム1Bは、連携動作タイミング調整部26を備え、装置模擬をするために必要な動作、例えば装置模擬プログラム30が装置模擬処理を実行する間は制御プログラム20を停止して装置模擬入力時刻を一時停止することにより、実施の形態2に記載の効果に加えて、装置模擬プログラム30Aからの装置模擬入力とコントローラ2上の制御プログラム20の連携動作のタイミングが変わらないようにすることができる。装置模擬プログラム30Aと制御プログラム20の連携動作のタイミングへの影響を回避することができる。これにより、装置模擬プログラム30Aの代わりに実際の被制御装置をコントローラ2Bに接続した場合と同じタイミングで制御プログラムの動作試験を行うことができる。
【0118】
なお、上記実施の形態1ないし実施の形態3の説明において「〜部」と説明したものは、「〜手段」、「〜回路」、「〜機器」としても良い。すなわち、ソフトウェア、ファームウェア、素子・デバイス・基板・配線などのハードウェア、あるいはこれらの組合せによって実施することができる。
また、上記実施の形態のコントローラ2は、制御プログラム20を試験するための制御プログラム試験装置と言い換えても良い。
また、上記指令はReadとWriteの指令を総称するものである。
【符号の説明】
【0119】
1、1A、1B 制御プログラム試験システム
2、2A、2B コントローラ
20 制御プログラム
21、21A、21B 装置模擬I/F部
22 I/O切替設定データ部
23 I/O切替部
24 仮想I/O
25 実I/O
26 連携動作タイミング調整部
200 記憶媒体
201 RAM
202 CPU
203 コントローラ側I/F部
3、3A、3B パソコン
30、30A 装置模擬プログラム
300 記憶媒体
301 RAM
302 CPU
303 パソコン側I/F部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被制御装置を模擬した装置模擬プログラムを有する端末装置に接続され、
前記被制御装置を制御する制御プログラム、
前記被制御装置に対するデータの入出力を実際に行う実インタフェース部、
前記被制御装置に対するデータの入出力を仮想的に行う仮想インタフェース部、
前記装置模擬プログラム及び前記制御プログラムのいずれか一方からの指令に応じて前記実インタフェース部と前記仮想インタフェース部とを切替える切替部、を備え、
前記切替部は、前記仮想インタフェース部から前記指令を実行し値変化が発生した場合に前記装置模擬プログラムに値変化に関する情報を送信することを特徴とする制御プログラム試験装置。
【請求項2】
前記装置模擬プログラムから前記指令を受信し、該指令を前記切替部に送信する装置模擬インタフェース部を備え、
前記装置模擬プログラムは、前記指令に該指令を実行する時刻情報を付して前記装置模擬インタフェース部に送信し、
前記装置模擬インタフェース部は前記時刻情報に基づき前記指令を送信し、
前記切替部は前記指令を受信し、該指令に応じて前記実インタフェース部と前記仮想インタフェース部とを切替えることを特徴とする請求項1に記載の制御プログラム試験装置。
【請求項3】
前記装置模擬プログラムからの指令が前記仮想インタフェース部への指令である場合に、前記制御プログラムの処理を停止して前記切替部に前記装置模擬プログラムからの指令を実行させるタイミング調整部、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の制御プログラム試験装置。
【請求項4】
被制御装置を模擬した装置模擬プログラムを有する端末装置と、
前記被制御装置を制御する制御プログラム、
前記被制御装置に対するデータの入出力を実際に行う実インタフェース部、
前記被制御装置に対するデータの入出力を仮想的に行う仮想インタフェース部、
前記装置模擬プログラム及び前記制御プログラムのいずれか一方からの指令に応じて前記実インタフェース部と前記仮想インタフェース部とを切替える切替部、を有し、前記端末装置に接続されたコントローラと、を備え、
前記仮想インタフェース部から前記指令を実行して値変化が発生した場合に、前記切替部が前記装置模擬プログラムに値変化に関する情報を送信することを特徴とする制御プログラム試験システム。
【請求項5】
前記装置模擬プログラムから前記指令を受信し、該指令を前記切替部に送信する装置模擬インタフェース部を備え、
前記装置模擬プログラムは、前記指令に該指令を実行する時刻情報を付して前記装置模擬インタフェース部に送信し、
前記装置模擬インタフェース部は前記時刻情報に基づき前記指令を送信し、
前記切替部は前記指令を受信し、該指令に応じて前記実インタフェース部と前記仮想インタフェース部とを切替えることを特徴とする請求項4に記載の制御プログラム試験システム。
【請求項6】
前記コントローラは、前記装置模擬プログラムからの指令が前記仮想インタフェース部への指令である場合に、前記制御プログラムの処理を停止して前記切替部に前記装置模擬プログラムからの指令を実行させるタイミング調整部、を備えたことを特徴とする請求項4に記載の制御プログラム試験システム。
【請求項7】
被制御装置を制御する制御プログラム、
前記被制御装置に対するデータの入出力を実際に行う実インタフェース部、
前記被制御装置に対するデータの入出力を仮想的に行う仮想インタフェース部、
前記装置模擬プログラム及び前記制御プログラムのいずれか一方からの指令に応じて前記実インタフェース部と前記仮想インタフェース部とを切替える切替部、を有するコントローラと、
前記コントローラに接続され、前記被制御装置を模擬した装置模擬プログラムを有する端末装置と、を備えた制御プログラム試験システムにおいて、
前記制御プログラムまたは前記装置模擬プログラムが前記切替部に向けてデータ入出力に関する指令を送信する指令送信ステップと、
前記指令送信ステップにより送信された前記指令に基づき、前記切替部が前記実インタフェース部と前記仮想インタフェース部とを切替えて前記実インタフェース部または前記仮想インタフェース部に前記指令を実行させる切替ステップと、
前記切替ステップにより前記仮想インタフェース部が前記指令を実行した後、実行された前記指令により値変化が発生したか否かを前記切替部が判断する判断ステップと、
前記判断ステップにより前記切替部が前記値変化が発生したと判断した場合に、前記切替部が前記装置模擬プログラムに対して値変化に関する情報を送信する値変化情報送信ステップと、
前記値変化情報送信ステップにより送信された前記値変化に関する情報を受信した前記装置模擬プログラムが、前記被制御装置を模擬した装置模擬の処理を実行する装置模擬処理ステップと、を備えたことを特徴とする制御プログラムの試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−29914(P2013−29914A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164073(P2011−164073)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】