説明

制御装置

【課題】十分な放熱効果を発揮させつつ製造コストを低減するとともに品質の良い制御装置を提供する。
【解決手段】制御装置は、同一方向に延びる複数の列に、発熱体が複数配列された電子基板を、筐体へ収納した状態で複数の列に対向し、複数の列と同一方向に延びる複数の凹部と、複数の凹部の相互間に複数の列と同一方向に延びる凸部と、を形成するため、筐体の体積を増加させて放熱効果を高めることができ、凹部に放熱シートを位置決めすることができ、更に、凸部の上にネジ穴を有するリブを形成しやすくできる。つまり、十分に放熱効果を発揮しつつ、コストが増加せず、かつ、品質を良くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置の構造の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
被制御対象(例えば、モータ)を制御する制御装置は、モータを駆動させるために電流をオン・オフ制御する電子部品(例えば、MOSトランジスタ、又は、マイコンなど)を実装した電子基板と、この電子基板を備えた筐体により構成される。
【0003】
制御装置が、高いトルクを出力するモータを制御する際は、MOSトランジスタによる電流のオン・オフ制御を頻繁に実行する必要があるため、MOSトランジスタが発熱してしまう。発熱したMOSトランジスタの影響により、電子基板に配線されたパターンや電子基板に実装された電子部品の端子などがショートする虞があるため、種々の対策を講じている。
(第1の対策)
第1の対策として、例えば、図1に示す制御装置1aのような構成がある。制御装置1aは、蓋体2a、第1電子基板3a1、第2電子基板3a2、及び、筐体4aから構成される。
【0004】
蓋体2aは、第1電子基板3a1及び第2電子基板3a2を覆って、筐体4aとネジにより固定するネジ穴などを備えた箱体である。
【0005】
第1電子基板3a1は、絶縁性を有する板状体であって、筐体へ収納される状態において筐体4a側の面(−Z側)にコンデンサ30aなどが実装され、実装されたコンデンサ30aなどの電子部品間を電気的に接続するパターンが配線されている。
【0006】
第2電子基板3a2は、アルミニウムをベースとした素材から成る第1層と、第1層の上面+Z側に熱伝導性及び絶縁性が優れている素材から成る第2層とを有する板状体であって、筐体4aへ収納される状態において蓋体2a側の面に発熱体である電子部品、つまり、MOSトランジスタ31aが実装され、実装されたMOSトランジスタ31aの電子部品間を電気的に接続するパターンが配線されている。
【0007】
筐体4aは、アルミニウムをベースとした素材から成る土台であって、第1電子基板3a1及び第2電子基板3a2を平置き固定するとともに、それらを覆う蓋体2aをネジにより固定するネジ穴などを備えている。
【0008】
第2電子基板3a2は、第2電子基板3a1と固定する際に第2電子基板3a1との間に空間を形成するための固定柱xaを介設している。また、固定柱xaは、第2電子基板3a2に実装された電子部品と、第1電子基板3A1に実装された電子部品とを電気的に接続可能にする電線の機能も備えている。
【0009】
つまり、制御装置1aは、MOSトランジスタを他の電子部品が実装された電子基板から離した位置に備えたことにより、MOSトランジスタが発生させた熱によって、他の電子部品に関連するショートの発生を防ぐことができ、かつ、MOSトランジスタが発生させた熱が伝わりやすいアルミニウムを素材とする第1層を備えた第2電子基板3a2及び筐体4aを備えることによってその熱を冷ませることができる。
(第2の対策)
第2の対策として、例えば、図3に示す制御装置1bのような構成がある。制御装置1bは、蓋体2b、電子基板3b、放熱シートstb、及び、筐体4bから構成される。
【0010】
蓋体2bは、電子基板3bを覆って、筐体4bとネジにより固定するネジ穴などを備えた箱体である。
【0011】
電子基板3bは、絶縁性を有する板状体であって、筐体へ収納される状態において蓋体2b側(+Z側)の面にコンデンサ30b及び発熱体である電子部品、つまり、MOSトランジスタ31bなどが実装され、実装されたコンデンサ30bなどの電子部品間を電気的に接続するパターンが配線されている。また、筐体4bと固定される際に筐体4bが形成するボスxb1を納めるボス穴xb3が形成されている。
【0012】
放熱シートは、図2に示すように、薄いシート状を成しており、更に、その素材は、シリコンとフィラーとのから成るものであって、熱伝導性と絶縁性が優れている。つまり、放熱シートは、図2に示すようなシートを、図3に示す放熱シートstbのようなものに加工される。
【0013】
筐体4bは、アルミニウムをベースとした素材から成る土台であって、電子基板3bを平置き固定して、それを覆う蓋体2bをネジにより固定するネジ穴などを備えている。
【0014】
筐体4bは、電子基板3bを固定する際に、電子基板3bへ実装されたMOSトランジスタ31bの裏側(−Z側)の面と面接触するエリア40bの上(+Z側)に放熱シートstbを備える。その際は、筐体4bは、エリア40bのボスxb1を放熱シートの第1固定穴xb2へ通して固定する。筐体4bは放熱シートstbを固定した状態で、その上(+Z側)へ電子基板3bを備える。その際は、放熱シートstbの第1固定穴xb2を貫通した筐体4bのボスxb1を、電子基板3bの第2固定穴xb3へ通して固定する。
【0015】
つまり、制御装置1bは、MOSトランジスタが発生させた熱が伝わりやすい素材であるアルミニウムから成る筐体4bを備えることによってその熱を冷ませることができる。
【0016】
また、MOSトランジスタが実装された電子基板3bの面の裏(−Z側)面と、その面と面接触する筐体4bのエリア40bとの間に、熱伝導性と絶縁性が優れている放熱シートxb2を備えることによって、MOSトランジスタが発生させた熱を素材がアルミニウムから成る筐体4bへ伝えることができるとともに、電子基板3bに実装された電子部品の端子やパターンなどがその筐体と接触してショートしないようにできる。
(第3の対策)
第3の対策として、例えば、図4に示す制御装置1cのような構成がある。制御装置1cは、蓋体2c、電子基板3c、放熱シートstc、及び、筐体4cから構成される。
【0017】
蓋体2cは、電子基板3cを覆って、筐体4cとネジにより固定するネジ穴などを備えた箱体である。
【0018】
電子基板3cは、絶縁性を有する板状体であって、筐体へ収納される状態において筐体4c側(+Z側)の面にコンデンサ30b及び発熱体である電子部品、つまり、MOSトランジスタ31bなどが実装され、実装されたコンデンサ30cなどの電子部品間を電気的に接続するパターンが配線されている。また、MOSトランジスタ31cは、直方体から成るパッケージが垂直より30%程度傾くような状態で電子基板31cへ実装される。
【0019】
放熱シートstcは、前述したように図2に示す薄いシート状のものを、図4に示す、長方形状の放熱シートを山折して加工される。
【0020】
筐体4cは、アルミニウムをベースとした素材から成る土台であって、電子基板3cを空間が形成されるように、つまり、電子基板3cが2階のエリアとなるように収納するように構成されるとともに、その電子基板3cを覆う蓋体2bをネジにより固定するネジ穴などを備えている。更に、MOSトランジスタ31のパッケージが電子基板3cにおいて、傾いて実装されたMOSトランジスタ31cと、面接触する山部40cを形成している。なお、山部40cは筐体4cと同様にアルミニウムをベースとした素材から成り、山折加工された放熱シートstcをその山部40cへ位置決めできるようにリブxcを形成している。
【0021】
筐体4cは、電子基板3cを収納して蓋体2cにより閉じられる際は、電子基板3cを2階のエリアとなるように収納した際に、MOSトランジスタ31cと面接触する山部40cとの間に、山折加工された放熱シートstcを挟む。
【0022】
つまり、制御装置1bは、MOSトランジスタが発生させた熱が伝わりやすいアルミニウムの素材から成る筐体4cを備えることによってその熱を冷ませることができる。
【0023】
また、MOSトランジス31cのパッケージの面をアルミニウムから成る山部40cの面へ、放熱シートstcを挟んで接触させることによって、MOSトランジスタ31cが発生させた熱をアルミニウムから成る山部40c及び筐体4cへ伝えることができるとともに、電子基板3c実装されたMOSトランジスタの端子やパターンなどがその筐体と接触してショートしないようにできる。
(第4の対策)
第4の対策として、例えば、図5に示す制御装置1dのような構成がある。制御装置1dは、ステアリングモータ2d、電子基板3d、放熱シートstd、及び、筐体4dから構成される。
【0024】
ステアリングモータ2dは、電子基板3dを覆って、筐体4dとネジにより固定するネジ穴などを備えた板状体と片軸の3相モータから構成される。
【0025】
電子基板3dは、絶縁性を有する板状体であって、筐体へ収納される状態においてステアリングモータ2d側(+Z側)の面にコンデンサ30d及び発熱体である電子部品、つまり、MOSトランジスタ31dなどが実装され、実装されたコンデンサ30dなどの電子部品間を電気的に接続するパターンが配線されている。
【0026】
放熱シートは、前述した放熱シートであり、図2に示すようなシートを、図5に示す放熱シートstdのようなものに加工される。
【0027】
筐体4dは、アルミニウムをベースとした素材から成る土台であって、電子基板3dを平置き固定して、それを覆うステアリングモータ2dをネジにより固定するネジ穴などを備えている。
【0028】
筐体4dは、電子基板3dを固定する際に、電子基板3dへMOSトランジスタ31dが実装された面と面接触するエリア40dの上(+Z側)に放熱シートstdを備える。筐体4dは放熱シートstdを備えた状態で、その上(+Z側)へ電子基板3dを備える。
【0029】
つまり、制御装置1dは、MOSトランジスタ30dが発生させた熱が伝わりやすい素材のアルミニウムから成る筐体4dを備えることによってその熱を冷ませることができる。
【0030】
また、MOSトランジスタ30dが実装された電子基板3dの面と、その面と面接触する筐体4dのエリア40dとの間に、熱伝導性と絶縁性が優れている放熱シートstdを備えることによって、MOSトランジスタ30dが発生させた熱を素材であるアルミニウムから成る筐体4dへ伝えることができるとともに、電子基板3dに実装された電子部品の端子やパターンなどがその筐体と接触してショートしないようにできる。
(第5の対策)
第5の対策として、例えば、図6に示す放熱フィン1eを前述した制御装置1a、制御装置1b、制御装置1c及び制御装置1dの夫々の筐体へ備えた構成がある。
【0031】
これによれば、放熱フィン1eの空気と触れる面積が増えるため、定常的に発生する各制御装置の熱を放熱させることができる。
【0032】
このように、MOSトランジスタなどの発熱体が発する熱を、制御装置において備えた放熱シートにより放熱する技術が、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0033】
【特許文献1】特開2008-192697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
しかし、上記のような制御装置を採用すると、コストが増加するとともに品質が低下するという問題が発生する。
【0035】
各対策を講じた制御装置における問題を具体的に説明する。第1対策においては、第2電子基板3a2及び、固定柱xaの製造コストが増加するという問題が発生する。
【0036】
第2対策においては、筐体4bの放熱シートstbを固定するボスxb1、放熱シートstbの第1固定穴xb2、及び電子基板3bの第2固定穴xb3を一定の規格を維持して製造することが難しいという品質の問題が発生する。
【0037】
つまり、筐体4bが放熱シートstb及び電子基板3bを納めて蓋体2bを塞いだ際に、電子基板3bと放熱シートstbと筐体4bのエリア40bを、放熱効果を高めるために密着させなければならないため、そのボスxb1の高さを放熱シートstbの第1固定穴xb2の厚さに応じた高さより少し高くし、かつ、電子基板3bの第2固定穴xb3の深さをその少し高くした分の深さにしなければならず、造型が難しく、品質を維持できないという問題が発生する。
【0038】
第3対策においては、直方体のパッケージから成るMOSトランジスタ31cを、そのパッケージが垂直より30%程度傾くような状態で電子基板31cへ実装させなければならず通常の実装と異なる実装が必要となり、かつ、このMOSトランジスタ31cと面接触する山部40cを形成しなければならないため製造コストが増加してしまうという問題が発生する。
【0039】
第4対策においては、筐体4dが備える電子基板3dを固定してネジ止めするリブ41dを一定の規格を維持して製造することが難しいという品質の問題が発生する。
【0040】
つまり、筐体4dにおいて、MOSトランジスタ31dが実装された電子基板3dの実装面を筐体4d側(−Z側)にして、電子基板3dを収納した際に、電子基板3dに実装されたMOSトランジスタ31dのパッケージ面が筐体4dのエリア40dの面に、放熱シートstdを挟んだ状態で面接触させる必要があるため、筐体4dに備わる、電子基板3dを固定してネジ止めするリブ41dの高さは、MOSトランジスタ31dの厚さ以上のものを必要とし、そのリブ41dは平面のエリア40dにおいて相応の高さを形成させなければならず、つまり、リブ41dは、小さく細長いリブ41dを形成させなければならず、高熱で溶かされたアルミニウムを所定の型へ流し込むという鋳造方法においては、小さく細長い型へは、そのアルミニウムが流れ込みにくいため、造型が難しく品質を維持できないという問題が発生する。
【0041】
第5対策においては、放熱フィン1eは、空気と触れる面積が増えるため、定常的に発生する制御装置の熱を放熱させやすいという効果はあるが、特定のタイミングでのみ発生する制御装置の熱を放熱させやすいという効果はないため、熱が特定のタイミングでのみ発生した場合の電子部品の端子などのショートを防ぐことができないという品質の問題が発生する。
【0042】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、十分な放熱効果を発揮させつつ製造コストを低減するとともに品質の良い制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0043】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、被制御対象を制御する制御装置であって、電子基板と、前記電子基板の基板面に、同一方向に延びる複数の列に配列された複数の発熱体と、前記電子基板を収納する筐体と、を備え、前記筐体は、前記電子基板を収納した状態で前記複数の列に対向し、前記複数の列と同一方向に延びる複数の凹部と、前記複数の凹部の相互間に、前記複数の列と同一方向に延びる凸部と、を備えることを特徴とする。
【0044】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の制御装置において、前記被制御対象は、車両に搭載されるステアリングを制御するステアリングモータであり、前記発熱体は、トランジスタであることを特徴とする。
【0045】
また、請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の制御装置において、前記筐体は、鋳造して形成されるものであり、前記凸部の上に突出し、前記電子基板を固定するためのリブ、をさらに備えることを特徴とする。
【0046】
また、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の制御装置において、前記筐体は、金属で構成されるものであり、熱伝導性と絶縁性とを備えた放熱シート、をさらに備え、前記放熱シートは、前記筐体が前記電子基板を収納した状態で、前記凹部と前記発熱体とにより挟まれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0047】
請求項1ないし4の発明によれば、制御装置は、同一方向に延びる複数の列に、発熱体が複数配列された電子基板を、筐体へ収納した状態で複数の列に対向し、複数の列と同一方向に延びる複数の凹部と、複数の凹部の相互間に複数の列と同一方向に延びる凸部と、を形成するため、筐体の体積を増加させて放熱効果を高めることができる。
【0048】
請求項2の発明によれば、前記制御装置は、車両に搭載されるステアリングを制御するステアリングモータを制御し、発熱体は、トランジスタである。従って、筐体の体積を増やしているため、ステアリングモータが特定のタイミングのみで発生させる熱を効果的に放熱させることができる。
【0049】
請求項3の発明によれば、前記制御装置において、筐体は、鋳造されるものであり、凸部の上に、電子基板を納めて筐体へ固定するためのネジ穴を有するリブが形成されるため、筐体の放熱効果を高めることができるとともに、鋳造する際のリブの形成がし易く、一定の規格を維持して製造することができる。
【0050】
請求項4の発明によれば、更に、制御装置は、筐体が鋳造して形成されるものであり、凸部の上に突出し、電子基板を固定するためのリブ、をさらに備えるため、凸部の上にネジ穴を有するリブを形成しやすくできる。
【0051】
請求項5の発明によれば、更に、制御装置は、筐体が金属で構成されるものであり、熱伝導性と絶縁性とを備えた放熱シートをさらに備え、放熱シートは、筐体が電子基板を収納した状態で、凹部と発熱体とにより挟まれるため、凹部に放熱シートを位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、制御装置を表す図である。
【図2】図2は、放熱シートを表す図である。
【図3】図3は、制御装置を表す図である。
【図4】図4は、制御装置を表す図である。
【図5】図5は、制御装置を表す図である。
【図6】図6は、放熱フィンを表す図である。
【図7】図7は、制御装置を表す図である。
【図8】図8は、制御装置を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。なお、図中においては三次元の直交座標軸(XYZ)を付し、説明において適宜この座標軸を用いて方向を示すこととする。
【0054】
<代表の形態>
(制御装置)
代表の形態における発明は、図7及び図8に示す車両に搭載された制御装置1であり、ステアリングを制御するステアリング3相モータを被制御対象とする。制御装置1は、ステアリング3相モータを制御することによって、ドライバーのハンドル操舵力をアシストする。その機能を発揮するための種々の電子部品を備え、例えば、制御用の演算を実行するマイコン、その機能を発揮するためのプログラムが記憶されたROM、演算のワーキングエリアとなるRAM、ステアリング3相モータを電気的に制御するMOSトランジスタ、及び、入出力信号を制御するI/Fなどである。
【0055】
更に、制御装置1は、蓋体2、電子基板3、放熱シートst、及び、筐体4から構成される。
【0056】
ユーザのハンドル操舵力をアシストするときとは、当然ユーザがステアリングを操作するときであり、特に、車両を駐車するときなどはステアリングを頻繁に操作するため、制御装置1は、頻繁にステアリングモータを制御してその操舵力をアシストする。一方で、ユーザは車両を一定車速(例えば、25km)以上で走行させる場合には、駐車するときほどステアリングを操作しないため、制御装置1は頻繁にステアリングモータを制御することはない。つまり、制御装置1が備える、ステアリング3相モータを電気的に制御する6つのMOSトランジスタは、その特定のタイミングで発熱する。そこで、制御装置1はこの発熱を抑えつつ、コストの増加を抑え、かつ、品質を良くするための構成を備えている。
(蓋体)
ステアリングモータ2は、電子基板3を覆って、筐体4とネジにより固定するネジ穴などを備える板状体と片軸の3相モータから構成される。
(電子基板)
電子基板3は、絶縁性を有する板状体であって、筐体へ収納される状態において筐体4側(−Z側)の面にコンデンサ30及び発熱体である電子部品、つまり、MOSトランジスタ31などが実装され、実装されたコンデンサ30などの電子部品間を電気的に接続するパターンが配線されている。
【0057】
MOSトランジスタ31は、ステアリングモータを駆動させるために、マイコンなどの他の電子部品と協働して、電流をオン・オフ制御する電子部品である。このMOSトランジスタ31の電子基板3への実装は、MOSトランジスタ31がマイコンにより制御されると発熱するため、他の電子部品から離すとともに、電子基板3の基板面に、同一方向に延びる複数の列に配列される。つまり、MOSトランジスタ31、MOSトランジスタ32及びMOSトランジスタ33から構成される1列(第1列)が電子基板3において配列(実装)され、この列に並行するように、MOSトランジスタ34、MOSトランジスタ35及びMOSトランジスタ36から構成される1列(第2列)が配列(実装)される。
(放熱シート)
放熱シートは、前述した放熱シートであり、図2に示すようなシートを、図7に示す長方形の第1放熱シートst1及び第2放熱シートst2に加工される。第1放熱シートst1は、筐体4に形成された第1凹部46へ備えられる。第2放熱シートst2は、筐体4に形成された第2凹部47へ備えられる。
【0058】
また、第1放熱シートst1及び第2放熱シートst2の大きさは、MOSトランジスタ31が発する熱を放熱させるとともにアルミニウムから成る筐体4との電気的接触を絶縁させる機能を発揮させる必要があるため、最低、第1放熱シートst1は第1列の領域と同等以上の大きさで、第2放熱シートst2も第2列の領域と同等以上の大きさに加工されている。
(筐体)
筐体4は、アルミニウムをベースとした素材から成る土台であって、電子基板3を平置き固定して、その状態で筐体4へ被さる蓋体2をネジにより固定するネジ穴などを備えている。
【0059】
筐体4は、電子基板3を収納した状態で、MOSトランジスタ31〜36により構成される複数の列(第1列、及び、第2列)に対向し、その複数の列と同一方向に延びる複数の凹部(第1凹部46及び第2凹部47)を形成する。
【0060】
更に、筐体4は、複数の凹部の相互間に、複数の列と同一方向に延びる凸部(第1凸部41、第2凸部42、第3凸部43、第4凸部44及び第5凸部45)が形成される。
【0061】
つまり、筐体4において、凹部と凸部は一体不可分の関係にあり、並列に形成される溝状の凹部間に、必然的に、山脈状の凸部(第3凸部43及び第4凸部44)が形成される。
【0062】
また、筐体4において、非凹部間、つまり、凹部と対向して他の凹部が形成されない側にも、凸部(第1凸部41、第2凸部42及び第5凸部45)が形成される。
【0063】
また、筐体4において、第1凹部46の大きさは、第1放熱シートst1が収まる大きさに形成される。つまり、第1凹部46は、筐体4が電子基板3を収納した状態で第1列が収まる大きさに形成される。更に、第1凹部46の深さは筐体4が電子基板3を収納した状態で第1列のMOSトランジスタのパッケージ面が、第1凹部46に備えた第1放熱シートst1と面接触できるような深さに形成されている。
【0064】
従って、第1放熱シートst1を筐体4へ備えた際の位置決めができる。
【0065】
また、筐体4において、第2凹部47の大きさは、第2放熱シートst2が収まる大きさに形成される。つまり、第2凹部47は、筐体4が電子基板3を収納した状態で第1列が収まる大きさに形成される。更に、第2凹部47の深さは筐体4が電子基板3を収納した状態で第1列のMOSトランジスタのパッケージ面が、第2凹部47に備えた第2放熱シートst2面と面接触できるような深さに形成されている。
【0066】
従って、第2放熱シートst2を筐体4へ備えた際の位置決めができる。
【0067】
また、筐体4において、第3凸部43の頂上(+Z側)に電子基板3を固定してネジ止めするための、ネジ穴を有するリブ40が形成される。リブ40の高さは、第3凸部43の高さを併せて、MOSトランジスタ31が実装された電子基板3を収納できるように、かつ、MOSトランジスタのパッケージ面と放熱シート面とが面接触できるようにするために、MOSトランジスタ31の厚さ以上のものが必要となる。つまり、リブ40の高さは、従来のリブ41eよりも第3凸部43の高さ分低い。
【0068】
なお、このような凹部、凸部、リブを形成する筐体4は、高熱で溶かされたアルミニウムを所定の型へ流し込むという方法によって鋳造される。
【0069】
つまり、高熱で溶かされたアルミニウムを所定の型へ流し込むという鋳造方法においては、細かい造型に応じた型へは、そのアルミニウムが流れ込みにくいため、造型が難しく品質を維持できないという問題が発生するが、リブ40は、従来の小さく細長いリブ41eよりも短いため、リブ40に応じた型へはそのアルミニウムは流れ込み易く、造型しやすく品質の維持が可能になる。
(制御装置の組立)
制御装置1の組立方法を図7及び図8に基づいて説明する。筐体4は、第1放熱シートst1並びに第2放熱シートst2、電子基板3の順にそれらが収納されるとともにネジによって固定され、これを蓋体2によって塞がれて、ネジによって固定される。更に、以降においてこの組立方法をより詳細に説明する。
【0070】
まず、第1放熱シートは、第1凸部41、第2凸部42、第3凸部43、第4凸部44、及び、筐体4の壁面により形成された第1凹部46へ収納される。また、第2放熱シートは、第3凸部43、第4凸部44、第5凸部及び筐体4の壁面により形成された第2凹部47へ収納される。
【0071】
次に、第1列及び第2列が筐体4側(−Z側)へ配列(実装)された電子基板3を、第1列及び第2列を構成するMOSトランジスタのパッケージ面が、筐体4の第1凹部及び第2凹部に収納された第1放熱シートst1及び第2放熱シートst2の面へ、面接触するように収納される。つまり、これらが面接触した状態において、第1列及び第2列の近傍は、筐体4の凸部41、凸部42、凸部43、凸部44並びに凸部45及び壁面により囲まれる。
【0072】
次に、電子基板3を筐体4へ収納させた状態で、蓋体2によって塞いで更にネジによって固定する。これで、制御装置1の組立が完成する。
【0073】
このように、制御装置1が組立られると、第1列及び第2列を構成する各MOSトランジスタのパッケージ面が、各凹部の底面に備わる各放熱シート面と面接触し、更に、第1列及び第2列の近傍に筐体4の凸部や壁面が位置するため、つまり、第1列及び第2列近傍における放熱機能を備える筐体4の体積が大きくなるため、各MOSトランジスタが電気的に制御される際の電気的接触を絶縁しつつ、その際に発する熱を筐体4へ放熱させるとともに、特定のタイミングのみ発生するその熱を効果的に冷ますことができる。
【0074】
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。以下では他の実施の形態について説明する。
【0075】
また、上記実施の形態では、車両に搭載されるステアリングモータを被制御対象とする制御装置を代表の実施の形態として説明したが、MOSトランジスタのような発熱体を備えている車両、電車若しくは航空機における制御装置、家電、製造装置又は実験装置などにおいて、上記実施の形態で説明した構成を適用しても良い。
【符号の説明】
【0076】
1 制御装置
2 ステアリングモータ
3 電子基板
4 筐体
30 コンデンサ
31 トランジスタ
32 トランジスタ
33 トランジスタ
34 トランジスタ
35 トランジスタ
36 トランジスタ
40 リブ
41 凸部
42 凸部
43 凸部
44 凸部
45 凸部
46 凹部
47 凹部
48 凹部
st1 放熱シート
st2 放熱シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被制御対象を制御する制御装置であって、
電子基板と、
前記電子基板の基板面に、同一方向に延びる複数の列に配列された複数の発熱体と、
前記電子基板を収納する筐体と、
を備え、
前記筐体は、
前記電子基板を収納した状態で前記複数の列に対向し、前記複数の列と同一方向に延びる複数の凹部と、
前記複数の凹部の相互間に、前記複数の列と同一方向に延びる凸部と、
を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置において、
前記被制御対象は、車両に搭載されるステアリングを制御するステアリングモータであり、
前記発熱体は、トランジスタであることを特徴とする制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の制御装置において、
前記筐体は、鋳造して形成されるものであり、前記凸部の上に突出し、前記電子基板を固定するためのリブ、
をさらに備えることを特徴とする制御装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の制御装置において、
前記筐体は、金属で構成されるものであり、
熱伝導性と絶縁性とを備えた放熱シート、
をさらに備え、
前記放熱シートは、前記筐体が前記電子基板を収納した状態で、前記凹部と前記発熱体とにより挟まれることを特徴とする制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−198951(P2011−198951A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63036(P2010−63036)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】