説明

制振性を備えた防音カバーとその製造方法

【課題】グロメットなどの防振部材や制振層を用いることなく、吸音層によって遮音層の振動を確実に規制する。
【解決手段】 平均官能基数が5以上かつ平均分子量が1000未満のポリオールを全ポリオール中に10〜50重量%含むポリオール側液を用いて発泡成形することで形成された吸音層2を遮音層1と積層した。
吸音層2は、0℃〜60℃の範囲における tanδが 0.3以上であり、1kHz〜2kHzの周波数域における吸音率が 0.5以上であるので、広い温度範囲で高い制振性を備え、かつ自動車で特に問題となる周波数域で高い吸音特性を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のインテークマニホールドなどの騒音源などに配置される防音カバーとその製造方法に関し、詳しくは制振性を備えた吸音層をもつ防音カバーとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のエンジンルーム内には、騒音源からの放射音を抑えるために、板金製あるいは硬質樹脂製の遮音層を有するエンジンカバー、サイドカバー、オイルパンカバー、アンダーカバーなどが配置されている。これらのカバー類においては、硬質の遮音層と騒音源の間に所定形状に成形されたモールドポリウレタンフォームよりなる吸音層を介在させ、吸音と遮音によって防音することが行われている。
【0003】
特開平09−134179号公報には、吸音層をインテークマニホールドなどの騒音源の表面形状に合わせて成形し、吸音層を騒音源に密着させて配置する防音カバーが記載されている。このようにすることで、防音カバーと騒音源との間に隙間が生じることがないので、その隙間からの騒音の漏れを防止することができる。
【0004】
ところが従来のモールドポリウレタンフォームよりなる吸音層は、吸音性には優れているものの制振性が不十分であった。そこでゴムマウントあるいはグロメットなどの防振部材を介して遮音層を騒音源に固定すること、あるいは特開2002−028934号公報に記載されているように遮音層をT字状のカラー部材と吸音層の延長部分によりフローティング固定することも行われているが、部品点数が増大するとともに組付工数が増大しコストアップとなるという問題がある。
【0005】
そこで特開2003−029765号公報には、吸音層と遮音層との界面に遮音層の振動を制限する制振層を備えた防音カバーが提案されている。しかしこの場合も、制振層が余分に必要となるためにコストアップとなるという不具合は避けられない。
【特許文献1】特開平09−134179号
【特許文献2】特開2002−028934号
【特許文献3】特開2003−029765号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、吸音性とともに制振性を備えた吸音層とすることで、遮音層と吸音層のみで構成しつつ、吸音層によって遮音層の振動を確実に規制することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の防音カバーの特徴は、硬質の遮音層と軟質ウレタンよりなる吸音層とからなり、騒音源に当接して配置される防音カバーであって、吸音層は 0℃〜60℃の範囲における tanδが 0.3以上であり、1kHz〜2kHzの周波数域における吸音率が 0.5以上であることにある。
【0008】
吸音層は、 0℃における貯蔵弾性率(E')が5MPa以下であることが望ましい。
【0009】
そして本発明の防音カバーの製造方法の特徴は、平均官能基数が5以上かつ平均分子量が1000未満のポリオールを全ポリオール中に10〜50重量%含むポリオール側液と、ポリイソシアネートと、発泡剤と、を反応させて吸音層を形成することにある。
【発明の効果】
【0010】
本発明の防音カバーによれば、吸音層は 0℃〜60℃の範囲における tanδが 0.3以上であり、1kHz〜2kHzの周波数域における吸音率が 0.5以上の特性を備えている。すなわち吸音層は広い温度範囲で高い制振性を備えているので、遮音層の振動を確実に規制することができ遮音層自体が騒音源となるのを確実に防止することができる。また吸音層は、自動車で特に問題となる周波数域で高い吸音特性を備えているので、従来の吸音層と同等の吸音特性が発現される。
【0011】
したがって防振部材や制振層を不要としつつ遮音層の振動を確実に規制することができるので、部品点数及び組付工数の低減により安価とすることができる。
【0012】
そして本発明の製造方法によれば、上記特性をもつ吸音層を安定して確実にかつ容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の防音カバーは、硬質の遮音層と軟質ウレタンよりなる吸音層とからなる。遮音層としては、樹脂板あるいは金属板からなる硬質の板状のものを用いることができる。単位面積当たりにある程度大きな質量を有することが必要であるが、その形状は音源の形状及び配置スペースの形状によって決められ、特に制限されない。
【0014】
遮音層は、騒音源に固定される取付部を有している。この取付部は、遮音層が直接的に騒音源に固定できればよく、騒音源と機械的に係合する形状、ボルト穴など特に制限されない。本発明の防音カバーでは、このように遮音層を騒音源に直接固定しても、制振性を備えた吸音層によって遮音層を効果的に制振することが可能となる。
【0015】
本発明の最大の特徴をなす吸音層は、 0℃〜60℃の範囲における tanδが 0.3以上であり、1kHz〜2kHzの周波数域における吸音率が 0.5以上の特性を備えている。 0℃〜60℃の範囲における tanδは、動的粘弾性試験によって測定することができる。 tanδが 0.3以上であれば制振性に優れていると言えるので、吸音層は 0℃〜60℃の範囲である実使用温度において高い制振性を備え、遮音層の振動を規制することができる。 0℃〜80℃の範囲で tanδが 0.3以上であることがより望ましい。
【0016】
また吸音層は、1kHz〜2kHzの周波数域における吸音率が 0.5以上であり、自動車において問題となる1kHz〜2kHzの周波数域の騒音をよく吸音することができる。なお1kHz〜2kHzの周波数域における平均吸音率を 0.5以上とするには、吸音層の密度を 0.1g/cm3 以下とすればよい。
【0017】
吸音層は、 0℃における貯蔵弾性率(E')が5MPa以下であることがさらに望ましい。こうすることで、 0℃程度の低温域においても硬くならず、制振性がさらに向上する。この貯蔵弾性率(E')は、動的粘弾性試験によって測定することができる。
【0018】
本発明の防音カバーは、騒音源に当接するように配置されたものに有効である。上記したように吸音層は 0℃〜60℃の範囲における tanδが 0.3以上であるので、騒音源から遮音層へ伝わった振動が吸音層によって制振され、遮音層の振動による二次騒音が防止される。また吸音層は、騒音源の表面形状に対応する表面形状をもつように予め成形されたものとすれば、騒音源との接触面積が増え、騒音源自体の制振にも効果がある。また吸音層そのものに制振性が付与されているため、ゴムマウントあるいはグロメットなどを用いずに、騒音源に遮音層を直接あるいは吸音層を介在させた状態で取り付けることができる。
【0019】
吸音層は、遮音層と接合してもよいし、接合せずに遮音層と騒音源との間で挟持するだけでもよい。しかし組付工数を考慮すると、遮音層と吸音層とを一体とした防音カバーとするのが好ましい。したがって、吸音層の成形時に遮音層を発泡成形型内に配置して一体成形することが特に望ましい。
【0020】
この吸音層は、平均官能基数が5以上かつ平均分子量が1000未満のポリオールを全ポリオール中に10〜50重量%含むポリオール側液と、ポリイソシアネートと、発泡剤と、を反応させることで製造される。従来の吸音層を製造する場合は、官能基数が4以下かつ平均分子量が1000以上の軟質ウレタン用ポリオールが一般的である。しかし本発明のように、平均官能基数が5以上かつ平均分子量が1000未満のポリオールを全ポリオール中に10〜50重量%用いることで、 0℃〜60℃の範囲における tanδが 0.3以上であり、1kHz〜2kHzの周波数域における吸音率が 0.5以上の特性を備えた吸音層を製造することが可能となった。
【0021】
なお平均官能基数が5以上かつ平均分子量が1000未満のポリオールは、単一種であってもよいし、複数種のポリオールの混合物であってもよい。複数種のポリオールの混合物の場合、平均官能基数が5以上かつ平均分子量が1000未満のポリオール以外のポリオールとの組み合わせは種々取り得るので、組み合わせによって平均官能基数と平均分子量が異なることになる。しかし平均官能基数が5以上かつ平均分子量が1000未満となる組み合わせは限られ、その組み合わせの一つでも配合量が全ポリオール中の10〜50重量%となれば本発明の範囲に含まれる。
【0022】
平均官能基数が5以上かつ平均分子量が1000未満のポリオールの量が全ポリオール中の10重量%未満では、 0℃〜60℃の範囲における tanδが 0.3未満となり、吸音層の制振性が不十分となる。また平均官能基数が5以上かつ平均分子量が1000未満のポリオールの量が全ポリオール中の50重量%を超えると、低温域における貯蔵弾性率(E')がきわめて高くなって硬質ウレタンに近くなり、吸音性が低下する。
【0023】
また平均官能基数が5以上かつ平均分子量が1000未満のポリオール以外のポリオールは、全ポリオール中に50重量%を超え90重量%未満で用いられる。このポリオールとしては、一分子中の官能基数が2〜8、分子量が1000〜 10000のものを用いることができる。官能基数が2より少ないとポリウレタンフォームの成形が困難となる場合があり、官能基数が8より多いと得られるポリウレタンフォームの引張り伸びなどの物性が極端に低下するようになる。また分子量が 10000より大きくなると粘度が高く発泡が困難となってポリウレタンフォームの成形が困難となる。
【0024】
平均官能基数が5以上かつ平均分子量が1000未満のポリオール、及びこれ以外のポリオールとしては、多価ヒドロキシ化合物やポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリマーポリオール類、ポリエーテルエステルポリオール類、ポリエーテルポリアミン類、ポリエステルポリアミン類、アルキレンポリオール類、ウレア分散ポリオール類、メラミン変性ポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、アクリルポリオール類、ポリブタジエンポリオール類、フェノール変性ポリオール類など公知のポリオールの一種又は複数種を用いることができる。
【0025】
本発明の吸音層は、上記ポリオール混合物と、ポリイソシアネートと、発泡剤と、を反応させることで製造される。 ポリイソシアネートとしては、MDI系ポリイソシアネートの他、TDI(トリレンジイソシアネート)、TODI(トリジンジイソシアネート)、NDI(ナフタリンジイソシアネート)などの芳香族系ポリイソシアネート、HDI(HMDI)(ヘキサメチレンジイソシアネート)、IPDI(イソホロンジイソシアネート)、XDI(キシリレンジイソシアネート)、水添XDIなどの脂肪族系ポリイソシアネートを用いることができる。
【0026】
MDI系ポリイソシアネートとしては、ピュアMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)及びその変性品、ポリメリックMDI(ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート)及びその変性品、水添MDI(ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート)及びその変性品、4,4'−MDI、2,4'−MDI、粗製MDIあるいはこれらのカルボジイミド変性体、ウレトンイミン変性体などを用いることができる。
【0027】
ポリイソシアネートとポリオールとの混合比は、NCO/OH(インデックス)が 0.6〜 1.0の範囲となるようにするのが望ましい。インデックスが 0.6未満では、得られる吸音層の永久歪みなどの物性が低下して吸音性が低下し、 1.0を越えると架橋反応が進み過ぎて成形性が低下し吸音性が低下すると共に硬度が高すぎて制振性を十分発揮できない。
【0028】
発泡剤は、ガスを吹き込んだり昇華してガスとなるものを用いたりすることも可能であるが、従来の軟質ウレタンの製造方法と同様に、水を用いることが望ましい。
【0029】
また本発明においては、従来の製造方法と同様に、触媒、架橋剤、整泡剤、鎖伸長剤、減粘剤などの添加物を適宜に配合することができる。
【0030】
触媒としては、公知のアミン系触媒や有機金属系触媒を用いることができ、具体的にはビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N,N',N'-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N',N'-テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン、トリエチレンジアミン、N-メチル-N'-(ジメチルアミノ)エチルピペラジン、N-メチルモノフォリン、N-エチルモノフォリン、トリエチルアミン、ラウリン酸錫、オクタン酸錫などが例示される。この触媒の添加量は、ポリオール成分 100重量部に対して一般に0.01〜5重量部程度である。
【0031】
架橋剤としては、比較的低分子量のものが用いられ、例えばジオールやトリオール,多価アミン、又はこれらにエチレンオキシド、プロピレンオキシドを付加したもの、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどを用いることができる。架橋剤の添加量は、ポリオール成分 100重量部に対して一般に0〜20重量部程度である。整泡剤としては、一般に用いられているシリコーン系整泡剤を適宜用いることができる。なお、吸音層として要求される性能に応じて、難燃剤、充填材、帯電防止剤、着色剤、安定剤などを、必要に応じて本発明の目的を逸脱しない範囲で添加することができる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。各実施例及び比較例に用いたポリオール(ポリプロピレングリコール)A〜Gの組成を、表1に示す。ポリオールGは、三種のポリオールの混合物である。
【0033】
【表1】

【0034】
(実施例1)
表1に示すように、ポリオールBを20重量部と、ポリオールCを30重量部と、ポリオールDを15重量部と、ポリオールEを5重量部と、ポリオールGを30重量部と、架橋剤としてのジエチレングリコールを2重量部と、水を 2.5重量部と、触媒(トリエチレンジアミンなど) 1.5重量部と、シリコーン系整泡剤 1.5重量部とを混合し、ポリオール側液を調製した。
【0035】
一方、ポリイソシアネート側液として、MDI(NCO%=29〜33%)20重量部と、TDI(NCO%=43%)80重量部と、の混合物を用意した。
【0036】
ポリオール側液とイソシアネート側液とを、インデックスが 0.8となるように混合し、その所定量を発泡成形型に注入して発泡成形を行った。得られたウレタンフォームは、密度が 0.1g/cm3 であった。
【0037】
このウレタンフォームから、20mm×20mm×10mmの試験片を切り出し、「動的粘弾性装置」(ユービーエム製)を用いて、−50℃〜80℃まで3℃/分で昇温しながら、振動数10Hz、振幅10μmにて連続的に動的粘弾性測定を行った。各温度における tanδと貯蔵弾性率(E')を求め、結果を図1に示す。また JIS-A1405に規定された方法に従って各周波数で20℃における吸音率を測定し、結果を図3に示す。
【0038】
(実施例2)
表1に示すように、ポリオールAを50重量部と、ポリオールEを20重量部と、ポリオールGを30重量部と、架橋剤としてのジエチレングリコールを2重量部と、水を 2.5重量部と、触媒(トリエチレンジアミンなど) 1.5重量部と、シリコーン系整泡剤 1.5重量部とを混合し、ポリオール側液を調製した。
【0039】
そして実施例1と同様のイソシアネート側液を用いて、実施例1と同様にインデックスが 0.8となるように混合し、その所定量を発泡成形型に注入して発泡成形を行った。得られたウレタンフォームは、密度が 0.1g/cm3 であった。
【0040】
得られたウレタンフォームを用い、実施例1と同様にして各温度における tanδと貯蔵弾性率(E')を測定した結果を図1に示す。また JIS-A1405に規定された方法に従って各周波数で20℃における吸音率を測定し、結果を図3に示す。
【0041】
(比較例1)
表1に示すように、ポリオールCを 100重量部と、架橋剤としてのジエチレングリコールを2重量部と、水を 2.5重量部と、触媒(トリエチレンジアミンなど) 1.5重量部と、シリコーン系整泡剤 1.5重量部とを混合し、ポリオール側液を調製した。
【0042】
そして実施例1と同様のイソシアネート側液を用いて、実施例1と同様にインデックスが 0.8となるように混合し、その所定量を発泡成形型に注入して発泡成形を行った。得られたウレタンフォームは、密度が 0.1g/cm3 であった。
【0043】
得られたウレタンフォームを用い、実施例1と同様にして各温度における tanδと貯蔵弾性率(E')を測定した結果を図2に示す。また JIS-A1405に規定された方法に従って各周波数で20℃における吸音率を測定し、結果を図3に示す。
【0044】
(比較例2)
表1に示すように、ポリオールFを 100重量部と、架橋剤としてのジエチレングリコールを2重量部と、水を 2.5重量部と、触媒(トリエチレンジアミンなど) 1.5重量部と、シリコーン系整泡剤 1.5重量部とを混合し、ポリオール側液を調製した。
【0045】
そして実施例1と同様のイソシアネート側液を用いて、実施例1と同様にインデックスが 0.8となるように混合し、その所定量を発泡成形型に注入して発泡成形を行った。得られたウレタンフォームは、密度が 0.1g/cm3 であった。
【0046】
得られたウレタンフォームを用い、実施例1と同様にして各温度における tanδと貯蔵弾性率(E')を測定した結果を図2に示す。
【0047】
<評価>
従来一般に用いられている軟質ウレタンフォームである比較例1のウレタンフォームは、広い温度範囲で貯蔵弾性率(E')が5MPa以下であり、軟質で吸音特性に優れている。しかし広い温度範囲で tanδが低く、制振性はきわめて低い。
【0048】
また粘弾性ウレタンフォームである比較例2のウレタンフォームは、20℃以下で貯蔵弾性率(E')が急激に上昇し、低温で硬質となるため低温域の吸音特性に劣る。そして 0℃〜50℃では tanδが 0.3以上であるが、50℃を超えると tanδが急激に低下して制振性が低下してしまう。
【0049】
しかし実施例1及び実施例2のウレタンフォームは、 0℃〜60℃の範囲における tanδが 0.3以上であるので、実用温度域において高い制振性を発現する。また図3から明らかなように、実施例1のウレタンフォームは1kHz〜2kHzの周波数域における吸音率が 0.5以上であって、比較例1のウレタンフォームと同等の吸音特性を示している。
【0050】
さらに実施例1及び実施例2のウレタンフォームは、 0℃における貯蔵弾性率(E')が比較例1と同様に5MPa以下である。したがって低温域で硬くなるのが抑制され、低温域においても良好な吸音特性を発現する。
【0051】
したがって実施例1又は実施例2のウレタンフォームと、樹脂板あるいは金属板とを積層してなる本発明の防音カバーによれば、吸音性と制振性の両方に優れた吸音層を備えている。この防音カバーを自動車のエンジンなどの騒音源とともに図4に示す。
【0052】
この防音カバーは、樹脂製の遮音層1と、遮音層1の裏面側に一体的に接合された吸音層2とからなり、吸音層2が騒音源3の表面に当接して固定されている。吸音層2は、実施例1又は実施例2のウレタンフォームからなり、発泡成形型内に遮音層1を配置して発泡成形することで遮音層1と一体的に接合されている。遮音層1には表裏を貫通する取付穴10が複数個設けられ、取付穴10の周囲には吸音層2が形成されていない。騒音源3にはボルト穴をもつボス30が突設され、取付穴10に挿通されたボルト4によって遮音層1がボス30に固定されることで、防音カバーが騒音源3に固定されている。
【0053】
したがって騒音源3からの放射音は、吸音層2を通過して遮音層3及び騒音源3での反射を繰り返し、その間に音エネルギーが吸音層2の変形による熱エネルギーに変化することで吸音される。また騒音源3の振動がボス30から遮音層1に伝達されるが、遮音層1の振動は吸音層2の制振作用によって制振され、遮音層1が振動するのが規制される。したがって遮音層1の振動による二次騒音の発生を確実に防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の防音カバーは、船舶、列車、飛行機、自動車などの交通手段ばかりでなく、産業機械など、振動により騒音を発生する騒音源に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施例の防音カバーに用いた吸音層の、温度と貯蔵弾性率との関係と、温度と tanδとの関係とを示すグラフである。
【図2】比較例の防音カバーに用いた吸音層の、温度と貯蔵弾性率との関係と、温度と tanδとの関係とを示すグラフである。
【図3】各周波数における吸音率を示すグラフである。
【図4】実施例の防音カバーを騒音源に取り付けた状態で示す断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1:遮音層 2:吸音層 3:騒音源
10:取付穴 30:ボス 4:ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質の遮音層と軟質ウレタンよりなる吸音層とからなり、騒音源に当接して配置される防音カバーであって、
該吸音層は 0℃〜60℃の範囲における tanδが 0.3以上であり、1kHz〜2kHzの周波数域における吸音率が 0.5以上であることを特徴とする制振性を備えた防音カバー。
【請求項2】
前記吸音層は、 0℃における貯蔵弾性率(E')が5MPa以下である請求項1に記載の制振性を備えた防音カバー。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の制振性を備えた防音カバーの製造方法であって、
平均官能基数が5以上かつ平均分子量が1000未満のポリオールを全ポリオール中に10〜50重量%含むポリオール側液と、ポリイソシアネートと、発泡剤と、を反応させて前記吸音層を形成することを特徴とする制振性を備えた防音カバーの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−330570(P2006−330570A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−157200(P2005−157200)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】